データ処理装置及び二酸化炭素濃度測定用センサーシステム
【課題】二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーを無線化し、かつ、当該二酸化炭素濃度の測定を長時間行うことを可能とする。
【解決手段】二酸化炭素センサー10は、二酸化炭素濃度測定素子101、無線送信部102、電源部104、素子制御部105及び無線制御部108を含む。二酸化炭素濃度測定素子101は、室内の二酸化炭素濃度を検知し、当該二酸化炭素濃度を測定する。無線送信部102は、測定された二酸化炭素濃度をデータ処理装置に対して無線通信により送信する。電源部104は、二酸化炭素濃度測定素子101及び無線送信部102に対して電力を供給する。素子制御部107は、予め設定された間隔で二酸化炭素濃度測定素子101に電力を供給するように、電源部104を制御する。無線制御部108は、予め設定された間隔で無線送信部102に電力を供給するように、電源部104を制御する。
【解決手段】二酸化炭素センサー10は、二酸化炭素濃度測定素子101、無線送信部102、電源部104、素子制御部105及び無線制御部108を含む。二酸化炭素濃度測定素子101は、室内の二酸化炭素濃度を検知し、当該二酸化炭素濃度を測定する。無線送信部102は、測定された二酸化炭素濃度をデータ処理装置に対して無線通信により送信する。電源部104は、二酸化炭素濃度測定素子101及び無線送信部102に対して電力を供給する。素子制御部107は、予め設定された間隔で二酸化炭素濃度測定素子101に電力を供給するように、電源部104を制御する。無線制御部108は、予め設定された間隔で無線送信部102に電力を供給するように、電源部104を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の二酸化炭素濃度を測定するデータ処理装置及び二酸化炭素濃度測定用センサーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばビル内等の居住スペースの空調を管理する空調システムが知られている。この空調システムにおいては、居住スペースの二酸化炭素濃度を予め定められた基準値以下に保つことを重要な目的の1つとしている。例えば建築物衛生法(通常、ビル管理法)では、不特定多数の人間が利用する相当程度の規模を有する建築物(特定建築物)における空調基準を「空気環境の管理基準値」として定めている。この建築物衛生法によれば、二酸化炭素濃度を1000PPM(Pert Per Million)以下にすることが求められる。
【0003】
このために、例えばビル等の居住スペースにおいて、室内の二酸化炭素濃度を測定することが行われている。この二酸化炭素濃度の測定は、例えばセンサーを用いて、1ヶ月〜2ヶ月に1回程度行われる。また、二酸化炭素濃度の測定が行われるのは、例えば各フロアーで1箇所程度であり、一日のうちに何回か測定し、その平均値を用いるのが一般的である。
【0004】
上記した二酸化炭素濃度の測定に用いられるセンサー(以下、二酸化炭素センサーと表記)は、例えば検知管を用いた検知管方式の大型で高価なものであり、常時測定を行うというものではない。
【0005】
近年では、例えばポータブルの二酸化炭素測定器も知られているが、この二酸化炭素測定器に用いられる電池の寿命は数時間というのが普通である。そのため、連続的な測定を行うためには、一般的には、外部電源としてAC電源が必要となる。
【0006】
一方、上記したような法的規制とは別に省エネの実現または快適性の向上のために二酸化炭素濃度を測定することも行われている。しかしながら、上記したように測定に用いられる二酸化炭素センサーの価格が高いことや、消費電力が大きいことから実現されている例は多くない。なお、価格の点を無視すれば、原理的には換気扇または空調機に二酸化炭素センサーを内蔵することは可能である。
【0007】
また、空調の分野では、主に配線等の工事費の削減を目的として、センサーの無線化へのニーズが大きい。これに関連して、上記した二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーについても無線化への期待が高まっている。
【0008】
しかしながら、上記したように例えば電源を確保する必要がある等の点から、実際に無線化された例は殆ど無いと思われる。
【0009】
例えば新築ビル、既存ビルでも容易に施工でき、適切な換気制御が実現でき、室内環境の快適性と省エネルギーの両立ができる技術(以下、先行技術と表記)が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この先行技術によれば、空調機の制御を目的として各部屋あるいは空調ゾーンごとに無線の炭酸ガスセンサー(二酸化炭素センサー)と、無線送信機及び受信機の一対とを備えることにより、配線レス化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−147574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ビル等の室内の二酸化炭素濃度は、在室人数が多いほど大きくなり、その値も在室人数によって敏感に変化する。よって、法的規制のための数値とは異なり、測定値をもとに分析または評価を行うためには、多くの場所で日常的に連続して測定することが必要となる。このような場合、少なくとも1時間に数回、1日以上連続して測定する必要がある。
【0012】
ここで、既存の建物に多くの二酸化炭素センサーを設置する場合、配線のコストが大きくなる。このため、二酸化炭素センサーの無線化が必要となる。しかしながら、この場合には、電源の確保が必要不可欠である。
【0013】
空調機または換気扇に内蔵された二酸化炭素センサーであれば電源の問題はあまり無い。しかしながら、二酸化炭素濃度は同じフロアーでも例えば部屋の場所によって異なり、また同じ室内でも高さまたは方向によって異なる。よって、空調機または換気扇に内蔵された二酸化炭素センサーでは正確な二酸化炭素濃度の測定ができず、正しい評価を行うことが難しい。
【0014】
このため、人のいる場所または測定した場所にセンサーを置くことが好ましい。しかしながら、例えば体育館のように広い空間の中央部付近または部屋の天井付近の空中のように、場所によっては電源を確保することが困難である。
【0015】
また、例えばレイアウト変更または設置コスト等を考慮すると、二酸化炭素センサーの無線化が望ましいが、現実的な無線の二酸化炭素センサーは知られていない。
【0016】
上記した先行技術では、無線の二酸化炭素センサーを用いるとしているが、電源の方式及びセンサーの原理については述べられていない。このため、無線の二酸化炭素センサーを実現することは困難である。
【0017】
また、先行技術では、各部屋または各空調ゾーンにセンサー受信部が有線で設けられる。このため、二酸化炭素センサーを無線化することによる配線工事費の低減の効果が小さい。また、先行技術では、人間の存在を把握するために人感センサーを設けるとしているが、これによるコストもかかる。
【0018】
また、二酸化炭素センサーには、大きく分けて「(非分散型)赤外線吸収式」及び「固体電解質方式」があるが、いずれも消費電力が大きく、無線化することは困難である。例えば、このような二酸化炭素センサーを無線化した場合、通常のアルカリ乾電池を数本用いて連続測定できる時間は1日程度である。先行技術においては、センサーの種類は特定されていないが、連続測定できる時間は上記と同様であるものと考えられる。
【0019】
本発明の目的は、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーを無線化し、かつ、当該二酸化炭素濃度の測定を長時間行うことを可能とするデータ処理装置及び二酸化炭素濃度測定用センサーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの態様によれば、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度測定手段と、前記二酸化炭素濃度に係る測定データを送信する送信手段と、前記二酸化炭素濃度を測定手段に対して電力を供給する電力供給手段と、前記二酸化炭素濃度測定手段に断続的に電力を供給するように、前記電力供給手段を制御する電力供給制御手段とを含む二酸化炭素センサーからの測定データを断続的に受信するデータ処理装置において、前記送信された測定データを受信する受信手段と、前記受信された測定データに基づいて、当該測定データが測定された時点での室内の換気量を算出する換気量算出手段と、前記受信された測定データ及び前記算出された換気量に基づいて、前記室内における在室人数を算出する在室人数算出手段とを具備するデータ処理装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーを無線化し、かつ、当該二酸化炭素濃度の測定を長時間行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す二酸化炭素センサー10の外観を示す図。
【図3】二酸化炭素センサー10の主として機能構成を示すブロック図。
【図4】無線親機20及びデータ処理装置30の主として機能構成を示すブロック図。
【図5】二酸化炭素センサー10における測定周期及び無線通信周期を示す図。
【図6】二酸化炭素濃度測定賞センサーシステムにおける二酸化炭素センサー10及び無線親機20が配置されるフロアーを示す図。
【図7】事務所ビル等のフロアーにおける二酸化炭素センサー10の配置を示す図。
【図8】図7に示す二酸化炭素センサー10a〜10dによる二酸化炭素濃度の測定結果の一例を示す図。
【図9】会議室内で二酸化炭素センサー10が配置された場所の一例を示す図。
【図10】図9に示される場所に配置された二酸化炭素センサー10による二酸化炭素濃度の測定結果を示す図。
【図11】図10に示す測定結果をフィッティングした結果の一例を示す図。
【図12】給気及び還気と換気の関係を説明するための図。
【図13】二酸化炭素センサー10を換気及び防犯のために利用する際のデータ処理装置30の処理手順を示すフローチャート。
【図14】移動体または浮遊体に二酸化炭素センサー10が配置された具体例を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの構成を示すブロック図である。図1に示す二酸化炭素濃度測定用センサーシステムは、二酸化炭素センサー10、無線親機20及びデータ処理装置30を有する。
【0025】
二酸化炭素センサー10は、例えばビル内等の居住スペース内(室内)に複数配置される。二酸化炭素センサー10は、自身が配置されている室内の二酸化炭素濃度(CO2濃度)を測定する。二酸化炭素センサー10は、測定された二酸化炭素濃度(を示すデータ)を無線通信により無線親機20に対して送信する機能を有する。ここで用いられる無線方式は、例えば特定小電力無線である。
【0026】
二酸化炭素センサー10は、無線通信可能であるため、例えば配線及び電源の確保等が困難な箇所に配置することができる。
【0027】
無線親機20は、二酸化炭素センサー10と無線通信可能に接続されている。無線親機20は、二酸化炭素センサー10のアクセスポイントとして機能する。また、無線親機20は、データ処理装置30と通信可能に接続されている。これにより、無線親機20は、二酸化炭素センサー10及びデータ処理装置30間で、データの送受信を行う。
【0028】
データ処理装置30は、二酸化炭素センサー10によって測定された二酸化炭素濃度に基づいて、各種処理を実行する。また、データ処理装置30は、二酸化炭素センサー10に対して、無線親機20を介して二酸化炭素濃度の測定に関する指示を送信する。データ処理装置30としては、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられる。また、データ処理装置30は、例えば上記した無線親機20を内蔵する構成であっても構わない。
【0029】
なお、上記したように本実施形態に係る二酸化炭素濃度測定用センサーシステムにおける無線方式は、特定小電力無線である。この特定小電力無線によれば、見通しができれば例えば100m〜150m以上であっても通信可能である。また、周波数は429MHz付近であり、例えばオフィスで多用されている無線LANなどに用いられる2.4GHz帯の電波との混信の恐れもない。
【0030】
図2は、図1に示す二酸化炭素センサー10の外観を示す。二酸化炭素センサー10は、電源スイッチ11、ディップスイッチ12、リセットボタン13、アンテナ14及び電池交換蓋15を備える。
【0031】
電源スイッチ11は、二酸化炭素センサー10の電源のオン/オフを切り替える。二酸化炭素センサー10により長時間にわたって測定を行わない場合には、例えば手動により電源を切ることができる。
【0032】
ディップスイッチ12は、二酸化炭素センサー10の測定モード(後述する)の設定に用いられる。また、リセットボタン13は、ディップスイッチ12で設定された測定モードを例えば手動によりリセットする際に用いられる。
【0033】
アンテナ14は、無線通信用アンテナ、例えばヘリカルアンテナである。二酸化炭素センサー10は、このアンテナ14により無線通信を行うことができる。
【0034】
また、電池交換蓋15は、二酸化炭素センサー10の電源である電池を交換する際に用いられる。例えば電池交換蓋15を開けることによって、電池を交換することができる。
【0035】
なお、二酸化炭素センサー10は、スリット部分16の内部に二酸化炭素濃度を測定するセンサー素子を有する。このセンサー素子は、例えば非分散型赤外線吸収式のセンサー素子である。
【0036】
図3は、二酸化炭素センサー10の主として機能構成を示すブロック図である。二酸化炭素センサー10は、二酸化炭素濃度測定素子(センサー素子)101、無線送信部102、無線信号受信部103、電源部104、外部電源用トランス105、測定モード設定部106、素子制御部107及び無線制御部108を含む。
【0037】
二酸化炭素濃度測定素子101は、二酸化炭素センサー10が配置されている室内の二酸化炭素濃度を検知し、当該二酸化炭素濃度を測定する。
【0038】
無線送信部102は、二酸化炭素濃度測定素子101によって測定された二酸化炭素濃度を、アンテナ14を介して無線通信により送信する。無線送信部102は、測定された二酸化炭素濃度を無線親機20に対して送信する。これにより、二酸化炭素濃度測定素子101によって測定された二酸化炭素濃度は、無線親機20を介してデータ処理装置30に送信される。
【0039】
無線受信部103は、例えば二酸化炭素センサー10による測定タイミングまたは無線の送信タイミングを設定するためのデータ(以下、設定データと表記)を、アンテナ14を介して受信する。無線受信部103は、データ処理装置30によって無線親機20を介して送信された設定データを受信する。
【0040】
電源部104は、二酸化炭素濃度測定素子101、無線送信部102及び無線受信部103に対して、これらが動作するために必要な電力を供給する。この電源部104としては、例えば乾電池または充電池が用いられる。電源部104には上記した電源スイッチ11が接続されており、この電源スイッチ11により電源を切ることができる。これにより、二酸化炭素センサー10が長期にわたって使用されない場合には、電池の消耗を防ぐことができる。
【0041】
なお、外部電源は、必要に応じて用いられる。この場合、外部電源用トランス105を介して電力が供給される。また、この外部電源により、上記した電源部104として用いられる例えば電池を充電することも可能である。
【0042】
測定モード設定部106は、二酸化炭素センサー10における二酸化炭素濃度の測定に関するモード(測定モード)を設定する。この測定モードには、例えば測定開始時刻、二酸化炭素濃度が測定される間隔(測定タイミング)及び二酸化炭素測定素子101によって測定された二酸化炭素濃度(測定データ)の送信タイミングが含まれる。
【0043】
測定モード設定部106は、例えば無線受信部103によって受信された設定データに基づいて、測定モードを設定する。また、測定モード設定部106は、当該測定モード設定部106に接続されたディップスイッチ12によってハード的に測定モードを設定することも可能である。通常、例えばディップスイッチ12を用いてハード的に設定された測定モードよりもデータ処理装置30からの設定データに基づいて設定された測定モードの方が優先される。この場合において、例えば測定モード設定部106に接続されたリセットボタン13を押すとハード的に設定された測定モードが有効となる。
【0044】
素子制御部107は、測定モード設定部106によって設定された測定モードに含まれる測定タイミング(間隔)で二酸化炭素濃度測定素子101に断続的に電力を供給するように、電源部104を制御する。これにより、二酸化炭素濃度測定素子101による二酸化炭素濃度の測定周期が断続的となる。
【0045】
無線制御部108は、測定モード設定部106によって設定された測定モードに含まれる送信タイミング(間隔)で無線送信部102に断続的に電力を供給するように、電源部104を制御する。これにより、無線送信部102による測定データ(測定された二酸化炭素濃度)の送信周期が断続的となる。
【0046】
図4は、無線親機20及びデータ処理装置30の主として機能構成を示すブロック図である。無線親機20は、無線データ送信部21及び無線データ受信部22を含む。
【0047】
無線データ送信部21は、データ処理装置30によって送信される設定データを二酸化炭素センサー10に対して送信する。無線データ送信部21は、無線通信により設定データを送信する。
【0048】
無線データ受信部22は、二酸化炭素センサー10によって送信される測定データを受信する。無線データ受信部22は、無線通信により測定データを受信する。この受信された測定データは、データ処理装置30に送信される。
【0049】
データ処理装置30は、計測管理部31、入力データ格納部32、送信部33、受信部34、変化率判定部35、換気量評価部36、在室人数評価部37、結果表示処理部38、表示部39、データ格納処理部40及びデータ格納部を含む。
【0050】
計測管理部31は、例えば二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの管理者によって指定されたデータを入力する。この入力されたデータ(以下、入力データと表記)には、例えば二酸化炭素センサー10が配置されている部屋(測定の対象となる室内)の容積、当該二酸化炭素センサー10によって二酸化炭素濃度が測定されるタイミング(測定間隔)、測定開始時刻または二酸化炭素センサー10における測定データの送信タイミング等が含まれる。入力データは、入力データ格納部32に格納される。
【0051】
また、計測管理部31は、計測管理部31は、入力データに含まれる測定開始時刻、測定タイミングまたは送信タイミングに応じて、二酸化炭素センサー10における設定データを、送信部33を介して送信する。
【0052】
受信部34は、無線親機20に含まれる無線データ受信部22によって受信された測定データを受信する。受信部34は、例えば二酸化炭素センサー10によって一定間隔毎に測定された複数の測定データを受信する。この二酸化炭素センサー10による測定間隔は、上記した計測管理部31によって送信された設定データに応じて設定される。
【0053】
変化率判定部35は、測定データを、例えば予め定められた一定時間(期間)比較する。これにより、変化率判定部35は、比較された測定データによって示される二酸化炭素濃度の変化率(状態)を判定する。変化率判定部35は、例えば測定データの値の変化が予め定められた一定値以内(例えば1000PPM:Part Per Million)であれば二酸化炭素濃度は定常状態にあると判定する。
【0054】
また、変化率判定部35は、例えば測定データの値が次第に増加していれば、測定されている室内にいる人の数(以下、在室人数と表記)が増加したか、または当該室内における換気量が減少したと判定する。
【0055】
また、変化率判定部35は、例えば測定データの値が次第に減少していれば、在室人数が減少したか、または測定対象の室内における換気量が増加したと判定する。
【0056】
換気量評価部36は、変化率判定部35によって判定された二酸化炭素濃度の変化率に基づいて、実効換気量を評価(算出)する。実効換気量は、二酸化炭素濃度測定時における実際の換気量である。この実効換気量は、二酸化炭素濃度の時系列データを例えば最小自乗法等を用いて指数関数でフィッティング(近似)し、このときのフィッティング係数及び入力データ格納部32に格納されている部屋の容積から計算される。また、換気量評価部36は、例えば在室人数が一定である場合には、実効換気量の時間変化を算出する。この実効換気量及び当該実効換気量の時間変化は、例えば一定時間毎に算出される。
【0057】
在室人数評価部37は、在室人数がわからない場合には、換気量評価部36によって算出された実効換気量に基づいて在室人数を評価(算出)する。この在室人数は、例えば一定時間毎に算出される。
【0058】
なお、上記した実効換気量、当該実効換気量の時間変化または在室人数の具体的な算出処理については後述する。
【0059】
結果表示処理部38は、換気量評価部36によって算出された実効換気量及び当該実効換気量の時間変化を、例えば二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの管理者に通知するために表示装置39に表示させる。また、結果表示処理部38は、在室人数評価部37によって算出された在室人数を、管理者に通知するために表示装置39に表示させる。
【0060】
データ格納処理部40は、換気量評価部36によって算出された実効換気量及び時間変化をデータ格納部41に格納する。また、データ格納処理部40は、在室人数評価部37によって算出された在室人数をデータ格納部41に格納する。
【0061】
図5は、二酸化炭素センサー10における測定周期(測定タイミング)及び無線通信周期(送信タイミング)を示す。
【0062】
ここで、二酸化炭素センサー10において二酸化炭素濃度を測定する場合には、正確な値が測定されるまで予熱を行う必要がある(電力を供給し始めてから時間を要する)場合がある。その他にも、素子の安定化のために測定に先立ち数分間の通電を必要とする場合がある。これは、二酸化炭素センサー10に含まれる二酸化炭素濃度測定用素子(センサー素子)101の種類によって異なる。図5では、二酸化炭素センサー10において測定を行うにあたって、予熱を行う必要があるセンサー素子101が用いられた場合を想定している。
【0063】
図5において、上段の線201は、二酸化炭素センサー10に含まれるセンサー素子101に対する電力供給を示す。以下、線201をセンサー素子電力供給線201と称する。また、下段の線202は、二酸化炭素センサー10に含まれる無線送信部102に対する電力供給を示す。以下、線202を無線送信部電力供給線202と称する。
【0064】
図5のセンサー素子電力供給線201に示すように、センサー素子101では、時間T1〜T2まで予熱が行われている。その後、時間T2〜T3まで二酸化炭素濃度の測定が行われる。そして、無線送信部102は、時間T3〜T4まで測定データを無線親機20に対して送信する。その後、一定時間が経ち、時間T5から次の測定のための予熱がセンサー素子101で行われ、時間T6から測定が行われる。
【0065】
つまり、図5に示すセンサー素子電力供給線201の例では、センサー素子101に対しては、時間T1〜T3まで電力が供給されている。また、無線送信部102に対しては、時間T3〜T4まで電力が供給されている。よって、図5に示すように、この例における測定周期は、時間T2〜T6となる。
【0066】
ここで、図5の無線送信部電力供給線202に示す無線送信に要する電力または起動に要する電力(例えば時間T3〜T4)を無視した場合を想定する。この場合、連続的に二酸化炭素濃度を測定する場合と比較すると、T5−T1/T3−T1倍に電池の寿命は長くなる。例えばT5−T1=30(分)、T3−T2≒0、T2−T1=1(分)とした場合、電池の寿命は、T5−T1/T3−T1=30/1=30倍になる。
【0067】
例えば単三乾電池6本で2〜3日程度の連続測定が可能である場合を想定する。この場合、上記したように断続的に測定することで、同様の電源(単三乾電池6本)であっても2〜3ヶ月程度の測定が可能になる。また、例えば夜間は測定しないものとし、測定周期を1時間とすると、1年程度の測定が可能となる。
【0068】
図6は、二酸化炭素濃度測定用センサーシステムにおける二酸化炭素センサー10及び無線親機20が配置されるフロアーを示す図である。
【0069】
図6に示すように、フロアー300には、例えば部屋(居室)300a〜300e及び空調機械室301が設けられている。各部屋300a〜300eの各々には、例えば部屋の大きさに応じて複数の二酸化炭素センサー10が配置されている。一方、例えば空調機械室301には、無線親機20(アクセスポイント)が配置されている。
【0070】
この場合、各部屋300a〜300eに配置されている二酸化炭素センサー10の各々によって測定された二酸化炭素濃度(測定データ)は、フロアー300の空調機械室301に配置された無線親機20まで無線により送信される。二酸化炭素センサー10の各々から送信された測定データは、例えばインターネット等のネットワーク50を介してデータ処理装置30(図示せず)に対して送られる。
【0071】
次に、図7及び図8を参照して、二酸化炭素センサー10によって測定された測定結果について説明する。図7は、例えば事務所ビル等のフロアーにおける二酸化炭素センサー10の配置を示す。
【0072】
図7に示す例では、例えば事務所ビルのフロアー400内の4箇所に二酸化炭素センサー10a〜10dが配置されている。なお、二酸化炭素センサー10aは、例えば会議中である会議室内に配置されている。一方、二酸化炭素センサー10b〜10cは、会議室以外の箇所(特に人が集まる場所以外の場所)に配置されているものとする。
【0073】
図8は、図7に示す二酸化炭素センサー10a〜10dによる二酸化炭素濃度の測定結果の一例を示す。図8においては、横軸は時間を示し、縦軸は測定された二酸化炭素濃度を示す。ここで、縦軸の二酸化炭素濃度は相対値である。
【0074】
図8に示す例では、会議を行っている会議室に配置されている二酸化炭素センサー10aによって測定された二酸化炭素濃度は、約1700と大きな値を示している。また、他の場所に配置された二酸化炭素センサー10b〜10dによって測定された二酸化炭素濃度でも、約1250〜1400とばらつきがある。
【0075】
また、図8に示す例では、時間18:00〜18:30に、全部の二酸化炭素センサー(10a〜10d)を用いて一箇所(例えば二酸化炭素センサー10dが配置されていた付近)の二酸化炭素濃度を測定している。この結果から、各二酸化炭素センサー10a〜10dの測定誤差は50程度であると考えられる。
【0076】
上記結果から、例えばオフィス内の二酸化炭素濃度を測定する場合には、場所による分布を考慮する必要があることがわかる。
【0077】
図9及び図10を参照して、1つの会議室内において複数箇所に配置された二酸化炭素センサー10による二酸化炭素濃度の測定結果の一例について説明する。
【0078】
図9は、会議室内で二酸化炭素センサー10が配置された場所の一例を示す。図9に示す例では、チャンネル0(CH0)の二酸化炭素センサー10は、床(高さ0cm)に配置されていることが示される。同様に、チャンネル1(CH1)の二酸化炭素センサー10は、テーブル(高さ70cm)に配置されている。チャンネル2(CH2)の二酸化炭素センサー10は、ホワイトボード上(高さ190cm)に配置されている。また、チャンネル3(CH3)の二酸化炭素センサー10は、天井(高さ270cm)に配置されている。このように、二酸化炭素センサー10は、会議室内の4箇所に配置されている。
【0079】
図10は、図9に示される場所に配置された二酸化炭素センサー10による二酸化炭素濃度の測定結果である。上記した図8と同様に、図10においても横軸は時間を示し、縦軸は測定された二酸化炭素濃度を示す。また、上記した図8と同様に、縦軸の二酸化炭素濃度は相対値である。
【0080】
図10に示すように、図9に示す4箇所に配置された二酸化炭素センサー10によって測定された二酸化炭素濃度は、会議を開始してから1時間程度でほぼ定常に達していることがわかる。また、二酸化炭素センサー10が配置されている高さによって二酸化炭素濃度が異なることがわかる。
【0081】
通常、屋外の二酸化炭素濃度は400PPM程度である。しかしながら、人間の呼気中の二酸化炭素濃度は、3〜5%(30000〜50000PPM)と極めて大きい。このため、二酸化炭素濃度の測定値は、当該測定の対象となる室内に人間がいることにより、極めて敏感に反応する。原理的には、二酸化炭素濃度分布を詳細に測定することで、二酸化炭素発生源(人間)の分布をかなりの程度まで推測することが可能となる。
【0082】
ここで、二酸化炭素濃度h(PPM)の時間変化は、1点モデルで、
【数1】
【0083】
と表すことができる。ここで、hは二酸化炭素濃度(PPM)、Vは測定対象となる部屋(室内)の体積(m3)、nは在室人数(人)、Sは例えば大人1人あたりの二酸化炭素排出量(m3/h/人)、houtは外気の二酸化炭素濃度(PPM)、Qは実効的な換気量(m3/h)である。以下、V=87.75(m3)、S=0.02(m3/h/人)、hout=400(PPM)であるものとして説明する。
【0084】
ここで、上記した式(1)の解は、
【数2】
【0085】
となる。ここで、h0は初期の二酸化炭素濃度であり、h∞は定常状態(時間t→∞)における二酸化炭素濃度である。また、h∞は、換気に用いる新鮮外気の二酸化炭素濃度houtを用いて、上記した式(1)より、
【数3】
【0086】
と表される。
【0087】
上記したように、S=0.02(m3/h/人)、hout=400(PPM)である。これにより、上記した式(3)を用いれば、n人が在室する部屋の定常状態における室内の二酸化炭素濃度h∞を一定値(例えば1000PPM)以下にするために必要な換気量Qが算出される。例えば測定対象となる部屋(室内)に5人が在室する、つまり、n=5の場合、式(3)により、Q=166(m3/h)となる。
【0088】
ここで、注意すべき点は、上記した式(3)を用いた場合では、部屋の広さなどの情報を必要としないことである。これは、部屋を1点モデルで近似したため当然であるが、明らかに実態とは異なる。例えば極めて広い部屋と非常に狭い部屋で必要な換気量が等しいということはありえない。これは、二酸化炭素濃度の分布を無視したために生じる誤差となる。実際には人が居る付近を換気すればよいだけであり、部屋全体を換気する必要はない。また、二酸化炭素は空気より重たいので部屋の下部で濃度が高くなるため、部屋の下部から換気する方が効率がよくなる。逆に、呼気は温度が高いため対流によって部屋の上部の濃度が高くなることも考えられる。よく循環された部屋であれば発生源(人間)付近の濃度が高くなりうる。このような分布は実際に測定してみないとわからない。
【0089】
一方、上記した式(2)を用いると、実効的な換気量が求まる。この場合、式(2)の指数関数部分を対数フィッティングすることにより勾配(−Q/V)が求まる。ここでは、部屋の体積Vが現れる。即ち、部屋が広いほど定常に達するのに時間がかかるということである。
【0090】
ここで、図11は、図10に示す測定結果(測定データ)をフィッティングした結果の一例を示す。このフィッティングした結果から傾きを求めることにより、Q/Vの値を求めることができる。図11に示す例で、例えばQ/V=2.2(1/h)であった場合、V=87.75(m3)であるから、Q=190(m3/h)となる。フィッティングの誤差もあるが、換気量を測定することは用意ではないので、この方法は極めて有効であると言える。つまり、上記したように本実施形態によれば、二酸化炭素濃度の分布(空間分布)を測定することにより、実効換気量を算出することが可能となる。
【0091】
なお、空調制御においては、場合によっては部屋の空調負荷がわかると都合がよい場合ある。これには空調機による吸気のパラメータ(例えば空調機が供給する空気の温度、湿度)、換気のパラメータ(部屋の温度、湿度に等しいと考えてよい)とともに、換気量を知る必要がある。この場合、上記したように部屋の換気量を評価することで、空調負荷(除去すべき熱量)を推定することもできる。
【0092】
図12は、給気及び還気と換気の関係を説明するための図である。なお、給気は、空調機から室内に供給される空気である。また、還気は、室内から空調機に戻る空気である。
【0093】
例えば給気の温度、湿度は容易に測定可能である。また、還気の温度及び湿度は部屋の湿度及び温度で代表される。なお、還気の温度及び湿度を直接に測定することも可能である。
【0094】
ところで、空調機から部屋に流入する空気の量は、空調機に戻る空気の量と等しくなく、戻る空気の量と部屋から外に漏れる空気の量の和になる。この場合、部屋から外に漏れる空気の量に等しい外気が導入されている。これらの空気の量がわかれば熱のバランスから空調負荷(室内での潜熱及び顕熱の発生量)を評価することができる。
【0095】
しかしながら、これらの量を正確に評価することは難しい。そこで、上記したように二酸化炭素濃度の測定データのみから実効的な換気量(実効換気量)を算出する。これにより、この実効換気量あるいは、この実効換気量と既知の外気導入量を用いることで、室内の空調負荷を評価(推定)することが可能となる。この実効換気量及び評価された空調負荷に基づいて、例えば室内の空調を管理する空調機を制御することによって換気量を調節することができる。
【0096】
また、上記した式(3)を用いると、大人1人あたりの二酸化炭素排出量Sを仮定(S=0.02(m3/h/人))することで測定対象となる部屋の在室人数を評価することができる。例えば、上記した図10から外気の二酸化炭素濃度を500PPMとし、定常状態での平均の二酸化炭素濃度を1150PPMとすると、これらの値及び算出された実効換気量Qから式(3)よりn(在室人数)≒6となる。これにより、部屋にいる人数は6人ということになる。上記したように、実際には5人であるが、二酸化炭素センサー10の測定値以外に何らの情報も用いていないことを考えると良い精度といえる。
【0097】
次に、図13のフローチャートを参照して、例えば上記したような手法により算出される値を用いて、例えばビル内等の指定されたエリアにおいて二酸化炭素センサー10を換気及び防犯のために利用する際のデータ処理装置30の処理手順について説明する。例えば昼間(換気実施必要時間帯)には、二酸化炭素センサー10は換気のために用いられる。一方、例えば夜間(換気実施不要時間帯)には二酸化炭素センサー10は防犯のために用いられる。ビル内には、n個の二酸化炭素センサー10が配置されているものとして説明する。
【0098】
なお、以下の説明で換気扇とあるのは、実効的に換気を行うことができる機器であれば他の機器であっても構わない。
【0099】
ここでは、指定されたエリアに配置されているn個の二酸化炭素センサー10により、当該エリアの二酸化炭素濃度は例えば24時間連続して測定されているものとする。
【0100】
まず、i(i=1、2、…、n)番目の二酸化炭素センサー10により、当該二酸化炭素センサー10が配置されている付近の二酸化炭素濃度を測定する(ステップS1)。このi番目の二酸化炭素センサー(以下、対象二酸化炭素センサーと表記)10によって測定された二酸化炭素濃度(測定データ)は、無線親機20を介してデータ処理装置30に送られる。この測定データは、データ処理装置30の受信部34によって受信される。
【0101】
測定データがデータ処理装置30の受信部34によって受信されると、当該測定データが測定された時間が換気実施必要時間帯(例えば、昼間)であるか否かが判定される(ステップS2)。
【0102】
換気実施必要時間帯でない、つまり換気実施不要時間帯(例えば、夜間)であると判定されると(ステップS2のNO)、受信部34によって受信された測定データの値が変動しているか否かが判定される(ステップS3)。
【0103】
測定データの値が変動していると判定された場合には(ステップS3のYES)、例えば二酸化炭素発生源(例えば、人間または小動物等)の侵入があったとみなして警報を発生する(ステップS4)。
【0104】
次に、指定されたエリアに配置されているn個の二酸化炭素センサー10の全てについて処理が完了したか否かが判定される(ステップS5)。
【0105】
全てについて処理が完了したと判定された場合(ステップS5のYES)、処理は終了される。一方、全てについて処理が完了していないと判定された場合(ステップS5のNO)、n個の二酸化炭素センサー10のうち、まだ処理されていない二酸化炭素センサー10についてステップS1に戻って処理が繰り返される。
【0106】
一方、ステップS3において、測定データの値が変動していないと判定された場合、警報は発生されず、ステップS5の処理が実行される。
【0107】
また、ステップS2において換気実施必要時間帯であると判定された場合、上記した受信部34によって受信された測定データの値が予め定められた基準値(例えば1000PPM)以上であるか否かが判定される(ステップS6)。
【0108】
測定データの値が予め定められた基準値以上でないと判定された場合(ステップS6のNO)、上記した対象二酸化炭素センサー10により例えば予め定められた一定時間、二酸化炭素濃度が測定される(ステップS7)。データ処理装置30の受信部34は、この間に測定された二酸化炭素濃度(測定データ)を受信する。これにより、データ処理装置30では、二酸化炭素濃度の時間変化(率)が取得される。
【0109】
次に、データ処理装置30は、取得された時間変化に応じて、二酸化炭素濃度の変化が定常状態であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0110】
二酸化炭素濃度の変化が定常状態であると判定された場合(ステップS8のYES)、当該定常状態となっている二酸化炭素濃度の値及び上記した式(3)を用いて、必要最小の換気量を算出する(ステップS9)。
【0111】
データ処理装置30は、算出された必要最小の換気量に応じて、例えば対象二酸化炭素センサー10の近くに配置されている換気扇を停止する(ステップS10)。これにより、換気量が低減され、省エネを図ることができる。
【0112】
なお、冷房を行う場合、換気によって外気を導入すると除湿負荷が増大する。一般に、室内の空気は外気より湿度が小さいので、これを循環して冷房することにより空調に必要な消費電力を大幅に低下することも可能になる。
【0113】
ステップS10の処理が実行されると、ステップS5の処理が実行される。
【0114】
一方、ステップS8において二酸化炭素濃度の変化が定常状態でないと判定された場合、つまり二酸化炭素濃度が変化している場合、対象二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の在室人数が増加したか、または当該部屋の換気量が減少したことを意味する。このため、データ処理装置30は、取得された時間変化を指数関数でフィッティングする(ステップS11)。
【0115】
データ処理装置30の実効換気量評価部36は、フィッティングされた結果に基づいて、上記した式(2)を用いて実効的な換気量(実効換気量)を算出する(ステップS12)。
【0116】
次に、データ処理装置30の在室人数評価部37は、算出された実効換気量及び式(3)を用いて、上記した対象二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の在室人数を算出(評価)する(ステップS13)。
【0117】
データ処理装置30では、算出された実効換気量及び在室人数に基づいて、予想される二酸化炭素濃度を算出する(ステップS14)。ここで、この算出された二酸化炭素濃度が、予め定められた基準値以下であるか否かが判定される(ステップS15)。
【0118】
このとき、予め定められた基準値以下でないと判定された場合(ステップS15のNO)、例えば対象二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の空調機を制御することによって、対象二酸化炭素センサー10に近い換気扇で換気する(ステップS16)。
【0119】
一方、ステップS15において予め定められた基準値以下であると判定された場合、ステップS10の処理が実行される。
【0120】
また、ステップS6において測定データの値が予め定められた基準値以上であると判定された場合、ステップS16の処理が実行される。
【0121】
ところで、本実施形態に係る二酸化炭素センサー10は、例えば室内に置かれた移動体または浮遊体に配置することで、当該室内の様々な箇所の二酸化炭素濃度を測定することが可能である。
【0122】
図14は、上記した移動体または浮遊体に二酸化炭素センサー10が配置された具体例を示す図である。
【0123】
図14に示すように、例えば室内400には、移動体401、浮遊体402及び浮遊体403がある。この移動体401、浮遊体402及び浮遊体403には、それぞれ二酸化炭素センサー10が配置されている。これにより、例えば二酸化炭素センサー10が1箇所に配置されている場合とは異なり、室内400に配置される二酸化炭素センサー10の数が当該室内400の広さに対して少ない場合でも、当該室内400の様々な箇所の二酸化炭素濃度を測定することが可能となる。
【0124】
上記したように本実施形態においては、二酸化炭素センサー10を無線化することにより、例えば電源確保または配線が困難な箇所であっても当該二酸化炭素センサー10を配置することができる。
【0125】
また、一般的に二酸化炭素濃度測定用のセンサー素子101は、消費電力が大きいため、連続的に使用すると単三アルカリ乾電池を例えば2〜4本用いても数時間程度の測定時間が限界である。無線送信自体にも電力を消費する。そこで、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10において二酸化炭素濃度の測定及び当該測定された二酸化炭素濃度(測定データ)の送信を断続的とすることで、二酸化炭素濃度の測定を長時間行うことができる。
【0126】
また、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10の無線化により、例えばビル等の各部屋または廊下等に当該二酸化炭素センサー10を多数配置できる。これにより、各部屋の実効的な換気量を算出することができる。このように、例えば各部屋の実効的な換気量を評価することにより、換気の最適化を図ることが可能となる。同様に、二酸化炭素センサー10を各部屋に複数配置することにより、当該部屋の居住者の位置における二酸化炭素濃度の測定が可能となる。
【0127】
また、本実施形態においては、室内に配置された複数の二酸化炭素センサー10を用いて当該室内の二酸化炭素濃度の空間分布を取得(測定)し、当該空間分布を用いて複数の空調機及び複数の吸引口を制御することができる。これにより、室内の二酸化炭素濃度の空間分布を調整することができる。
【0128】
本実施形態においては、二酸化炭素センサー10により断続的に測定された二酸化炭素濃度から、実効的な換気量及び当該二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の在室人数を算出することができる。これに応じて、例えば空調機または換気扇の制御を実行することにより、例えば換気量等を減少させることができる。
【0129】
また、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10を用いて二酸化炭素濃度を長期間測定することができるので、二酸化炭素濃度の変化を日常的に測定することにより、例えば夜間等の人のいないはずの時間において二酸化炭素濃度の変化が見られた場合、不審者の侵入や小動物の侵入とみなして、警報を発生することができる。これにより、防犯上の効果も得ることができる。
【0130】
また、例えば二酸化炭素センサー10を移動体または浮遊体に配置することにより、部屋に配置された二酸化炭素センサー10が少数であった場合でも、当該部屋の様々な箇所の二酸化炭素濃度を測定することができる。
【0131】
なお、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10に用いられるセンサー素子101は非分散型赤外線吸収式のセンサー素子であるものとして説明したが、固体電解質方式のセンサー素子が用いられる構成であっても構わない。
【0132】
なお、本願発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0133】
10…二酸化炭素センサー、20…無線親機、21…無線データ送信部、22…無線データ受信部、30…データ処理装置、31…計測管理部、32…入力データ格納部、33…送信部、34…受信部、35…変化率判定部、36…換気量評価部、37…在室人数評価部、38…結果表示処理部、39…表示装置、40…データ格納処理部、41…データ格納部、101…二酸化炭素濃度測定素子(二酸化炭素濃度測定手段)、102…無線送信部、103…無線受信部、104…電源部(電力供給手段)、105…外部電源用トランス、106…測定モード設定部、107…素子制御部(第1の制御部)、108…無線制御部(第2の制御部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の二酸化炭素濃度を測定するデータ処理装置及び二酸化炭素濃度測定用センサーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばビル内等の居住スペースの空調を管理する空調システムが知られている。この空調システムにおいては、居住スペースの二酸化炭素濃度を予め定められた基準値以下に保つことを重要な目的の1つとしている。例えば建築物衛生法(通常、ビル管理法)では、不特定多数の人間が利用する相当程度の規模を有する建築物(特定建築物)における空調基準を「空気環境の管理基準値」として定めている。この建築物衛生法によれば、二酸化炭素濃度を1000PPM(Pert Per Million)以下にすることが求められる。
【0003】
このために、例えばビル等の居住スペースにおいて、室内の二酸化炭素濃度を測定することが行われている。この二酸化炭素濃度の測定は、例えばセンサーを用いて、1ヶ月〜2ヶ月に1回程度行われる。また、二酸化炭素濃度の測定が行われるのは、例えば各フロアーで1箇所程度であり、一日のうちに何回か測定し、その平均値を用いるのが一般的である。
【0004】
上記した二酸化炭素濃度の測定に用いられるセンサー(以下、二酸化炭素センサーと表記)は、例えば検知管を用いた検知管方式の大型で高価なものであり、常時測定を行うというものではない。
【0005】
近年では、例えばポータブルの二酸化炭素測定器も知られているが、この二酸化炭素測定器に用いられる電池の寿命は数時間というのが普通である。そのため、連続的な測定を行うためには、一般的には、外部電源としてAC電源が必要となる。
【0006】
一方、上記したような法的規制とは別に省エネの実現または快適性の向上のために二酸化炭素濃度を測定することも行われている。しかしながら、上記したように測定に用いられる二酸化炭素センサーの価格が高いことや、消費電力が大きいことから実現されている例は多くない。なお、価格の点を無視すれば、原理的には換気扇または空調機に二酸化炭素センサーを内蔵することは可能である。
【0007】
また、空調の分野では、主に配線等の工事費の削減を目的として、センサーの無線化へのニーズが大きい。これに関連して、上記した二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーについても無線化への期待が高まっている。
【0008】
しかしながら、上記したように例えば電源を確保する必要がある等の点から、実際に無線化された例は殆ど無いと思われる。
【0009】
例えば新築ビル、既存ビルでも容易に施工でき、適切な換気制御が実現でき、室内環境の快適性と省エネルギーの両立ができる技術(以下、先行技術と表記)が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この先行技術によれば、空調機の制御を目的として各部屋あるいは空調ゾーンごとに無線の炭酸ガスセンサー(二酸化炭素センサー)と、無線送信機及び受信機の一対とを備えることにより、配線レス化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−147574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ビル等の室内の二酸化炭素濃度は、在室人数が多いほど大きくなり、その値も在室人数によって敏感に変化する。よって、法的規制のための数値とは異なり、測定値をもとに分析または評価を行うためには、多くの場所で日常的に連続して測定することが必要となる。このような場合、少なくとも1時間に数回、1日以上連続して測定する必要がある。
【0012】
ここで、既存の建物に多くの二酸化炭素センサーを設置する場合、配線のコストが大きくなる。このため、二酸化炭素センサーの無線化が必要となる。しかしながら、この場合には、電源の確保が必要不可欠である。
【0013】
空調機または換気扇に内蔵された二酸化炭素センサーであれば電源の問題はあまり無い。しかしながら、二酸化炭素濃度は同じフロアーでも例えば部屋の場所によって異なり、また同じ室内でも高さまたは方向によって異なる。よって、空調機または換気扇に内蔵された二酸化炭素センサーでは正確な二酸化炭素濃度の測定ができず、正しい評価を行うことが難しい。
【0014】
このため、人のいる場所または測定した場所にセンサーを置くことが好ましい。しかしながら、例えば体育館のように広い空間の中央部付近または部屋の天井付近の空中のように、場所によっては電源を確保することが困難である。
【0015】
また、例えばレイアウト変更または設置コスト等を考慮すると、二酸化炭素センサーの無線化が望ましいが、現実的な無線の二酸化炭素センサーは知られていない。
【0016】
上記した先行技術では、無線の二酸化炭素センサーを用いるとしているが、電源の方式及びセンサーの原理については述べられていない。このため、無線の二酸化炭素センサーを実現することは困難である。
【0017】
また、先行技術では、各部屋または各空調ゾーンにセンサー受信部が有線で設けられる。このため、二酸化炭素センサーを無線化することによる配線工事費の低減の効果が小さい。また、先行技術では、人間の存在を把握するために人感センサーを設けるとしているが、これによるコストもかかる。
【0018】
また、二酸化炭素センサーには、大きく分けて「(非分散型)赤外線吸収式」及び「固体電解質方式」があるが、いずれも消費電力が大きく、無線化することは困難である。例えば、このような二酸化炭素センサーを無線化した場合、通常のアルカリ乾電池を数本用いて連続測定できる時間は1日程度である。先行技術においては、センサーの種類は特定されていないが、連続測定できる時間は上記と同様であるものと考えられる。
【0019】
本発明の目的は、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーを無線化し、かつ、当該二酸化炭素濃度の測定を長時間行うことを可能とするデータ処理装置及び二酸化炭素濃度測定用センサーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの態様によれば、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度測定手段と、前記二酸化炭素濃度に係る測定データを送信する送信手段と、前記二酸化炭素濃度を測定手段に対して電力を供給する電力供給手段と、前記二酸化炭素濃度測定手段に断続的に電力を供給するように、前記電力供給手段を制御する電力供給制御手段とを含む二酸化炭素センサーからの測定データを断続的に受信するデータ処理装置において、前記送信された測定データを受信する受信手段と、前記受信された測定データに基づいて、当該測定データが測定された時点での室内の換気量を算出する換気量算出手段と、前記受信された測定データ及び前記算出された換気量に基づいて、前記室内における在室人数を算出する在室人数算出手段とを具備するデータ処理装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーを無線化し、かつ、当該二酸化炭素濃度の測定を長時間行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す二酸化炭素センサー10の外観を示す図。
【図3】二酸化炭素センサー10の主として機能構成を示すブロック図。
【図4】無線親機20及びデータ処理装置30の主として機能構成を示すブロック図。
【図5】二酸化炭素センサー10における測定周期及び無線通信周期を示す図。
【図6】二酸化炭素濃度測定賞センサーシステムにおける二酸化炭素センサー10及び無線親機20が配置されるフロアーを示す図。
【図7】事務所ビル等のフロアーにおける二酸化炭素センサー10の配置を示す図。
【図8】図7に示す二酸化炭素センサー10a〜10dによる二酸化炭素濃度の測定結果の一例を示す図。
【図9】会議室内で二酸化炭素センサー10が配置された場所の一例を示す図。
【図10】図9に示される場所に配置された二酸化炭素センサー10による二酸化炭素濃度の測定結果を示す図。
【図11】図10に示す測定結果をフィッティングした結果の一例を示す図。
【図12】給気及び還気と換気の関係を説明するための図。
【図13】二酸化炭素センサー10を換気及び防犯のために利用する際のデータ処理装置30の処理手順を示すフローチャート。
【図14】移動体または浮遊体に二酸化炭素センサー10が配置された具体例を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの構成を示すブロック図である。図1に示す二酸化炭素濃度測定用センサーシステムは、二酸化炭素センサー10、無線親機20及びデータ処理装置30を有する。
【0025】
二酸化炭素センサー10は、例えばビル内等の居住スペース内(室内)に複数配置される。二酸化炭素センサー10は、自身が配置されている室内の二酸化炭素濃度(CO2濃度)を測定する。二酸化炭素センサー10は、測定された二酸化炭素濃度(を示すデータ)を無線通信により無線親機20に対して送信する機能を有する。ここで用いられる無線方式は、例えば特定小電力無線である。
【0026】
二酸化炭素センサー10は、無線通信可能であるため、例えば配線及び電源の確保等が困難な箇所に配置することができる。
【0027】
無線親機20は、二酸化炭素センサー10と無線通信可能に接続されている。無線親機20は、二酸化炭素センサー10のアクセスポイントとして機能する。また、無線親機20は、データ処理装置30と通信可能に接続されている。これにより、無線親機20は、二酸化炭素センサー10及びデータ処理装置30間で、データの送受信を行う。
【0028】
データ処理装置30は、二酸化炭素センサー10によって測定された二酸化炭素濃度に基づいて、各種処理を実行する。また、データ処理装置30は、二酸化炭素センサー10に対して、無線親機20を介して二酸化炭素濃度の測定に関する指示を送信する。データ処理装置30としては、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられる。また、データ処理装置30は、例えば上記した無線親機20を内蔵する構成であっても構わない。
【0029】
なお、上記したように本実施形態に係る二酸化炭素濃度測定用センサーシステムにおける無線方式は、特定小電力無線である。この特定小電力無線によれば、見通しができれば例えば100m〜150m以上であっても通信可能である。また、周波数は429MHz付近であり、例えばオフィスで多用されている無線LANなどに用いられる2.4GHz帯の電波との混信の恐れもない。
【0030】
図2は、図1に示す二酸化炭素センサー10の外観を示す。二酸化炭素センサー10は、電源スイッチ11、ディップスイッチ12、リセットボタン13、アンテナ14及び電池交換蓋15を備える。
【0031】
電源スイッチ11は、二酸化炭素センサー10の電源のオン/オフを切り替える。二酸化炭素センサー10により長時間にわたって測定を行わない場合には、例えば手動により電源を切ることができる。
【0032】
ディップスイッチ12は、二酸化炭素センサー10の測定モード(後述する)の設定に用いられる。また、リセットボタン13は、ディップスイッチ12で設定された測定モードを例えば手動によりリセットする際に用いられる。
【0033】
アンテナ14は、無線通信用アンテナ、例えばヘリカルアンテナである。二酸化炭素センサー10は、このアンテナ14により無線通信を行うことができる。
【0034】
また、電池交換蓋15は、二酸化炭素センサー10の電源である電池を交換する際に用いられる。例えば電池交換蓋15を開けることによって、電池を交換することができる。
【0035】
なお、二酸化炭素センサー10は、スリット部分16の内部に二酸化炭素濃度を測定するセンサー素子を有する。このセンサー素子は、例えば非分散型赤外線吸収式のセンサー素子である。
【0036】
図3は、二酸化炭素センサー10の主として機能構成を示すブロック図である。二酸化炭素センサー10は、二酸化炭素濃度測定素子(センサー素子)101、無線送信部102、無線信号受信部103、電源部104、外部電源用トランス105、測定モード設定部106、素子制御部107及び無線制御部108を含む。
【0037】
二酸化炭素濃度測定素子101は、二酸化炭素センサー10が配置されている室内の二酸化炭素濃度を検知し、当該二酸化炭素濃度を測定する。
【0038】
無線送信部102は、二酸化炭素濃度測定素子101によって測定された二酸化炭素濃度を、アンテナ14を介して無線通信により送信する。無線送信部102は、測定された二酸化炭素濃度を無線親機20に対して送信する。これにより、二酸化炭素濃度測定素子101によって測定された二酸化炭素濃度は、無線親機20を介してデータ処理装置30に送信される。
【0039】
無線受信部103は、例えば二酸化炭素センサー10による測定タイミングまたは無線の送信タイミングを設定するためのデータ(以下、設定データと表記)を、アンテナ14を介して受信する。無線受信部103は、データ処理装置30によって無線親機20を介して送信された設定データを受信する。
【0040】
電源部104は、二酸化炭素濃度測定素子101、無線送信部102及び無線受信部103に対して、これらが動作するために必要な電力を供給する。この電源部104としては、例えば乾電池または充電池が用いられる。電源部104には上記した電源スイッチ11が接続されており、この電源スイッチ11により電源を切ることができる。これにより、二酸化炭素センサー10が長期にわたって使用されない場合には、電池の消耗を防ぐことができる。
【0041】
なお、外部電源は、必要に応じて用いられる。この場合、外部電源用トランス105を介して電力が供給される。また、この外部電源により、上記した電源部104として用いられる例えば電池を充電することも可能である。
【0042】
測定モード設定部106は、二酸化炭素センサー10における二酸化炭素濃度の測定に関するモード(測定モード)を設定する。この測定モードには、例えば測定開始時刻、二酸化炭素濃度が測定される間隔(測定タイミング)及び二酸化炭素測定素子101によって測定された二酸化炭素濃度(測定データ)の送信タイミングが含まれる。
【0043】
測定モード設定部106は、例えば無線受信部103によって受信された設定データに基づいて、測定モードを設定する。また、測定モード設定部106は、当該測定モード設定部106に接続されたディップスイッチ12によってハード的に測定モードを設定することも可能である。通常、例えばディップスイッチ12を用いてハード的に設定された測定モードよりもデータ処理装置30からの設定データに基づいて設定された測定モードの方が優先される。この場合において、例えば測定モード設定部106に接続されたリセットボタン13を押すとハード的に設定された測定モードが有効となる。
【0044】
素子制御部107は、測定モード設定部106によって設定された測定モードに含まれる測定タイミング(間隔)で二酸化炭素濃度測定素子101に断続的に電力を供給するように、電源部104を制御する。これにより、二酸化炭素濃度測定素子101による二酸化炭素濃度の測定周期が断続的となる。
【0045】
無線制御部108は、測定モード設定部106によって設定された測定モードに含まれる送信タイミング(間隔)で無線送信部102に断続的に電力を供給するように、電源部104を制御する。これにより、無線送信部102による測定データ(測定された二酸化炭素濃度)の送信周期が断続的となる。
【0046】
図4は、無線親機20及びデータ処理装置30の主として機能構成を示すブロック図である。無線親機20は、無線データ送信部21及び無線データ受信部22を含む。
【0047】
無線データ送信部21は、データ処理装置30によって送信される設定データを二酸化炭素センサー10に対して送信する。無線データ送信部21は、無線通信により設定データを送信する。
【0048】
無線データ受信部22は、二酸化炭素センサー10によって送信される測定データを受信する。無線データ受信部22は、無線通信により測定データを受信する。この受信された測定データは、データ処理装置30に送信される。
【0049】
データ処理装置30は、計測管理部31、入力データ格納部32、送信部33、受信部34、変化率判定部35、換気量評価部36、在室人数評価部37、結果表示処理部38、表示部39、データ格納処理部40及びデータ格納部を含む。
【0050】
計測管理部31は、例えば二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの管理者によって指定されたデータを入力する。この入力されたデータ(以下、入力データと表記)には、例えば二酸化炭素センサー10が配置されている部屋(測定の対象となる室内)の容積、当該二酸化炭素センサー10によって二酸化炭素濃度が測定されるタイミング(測定間隔)、測定開始時刻または二酸化炭素センサー10における測定データの送信タイミング等が含まれる。入力データは、入力データ格納部32に格納される。
【0051】
また、計測管理部31は、計測管理部31は、入力データに含まれる測定開始時刻、測定タイミングまたは送信タイミングに応じて、二酸化炭素センサー10における設定データを、送信部33を介して送信する。
【0052】
受信部34は、無線親機20に含まれる無線データ受信部22によって受信された測定データを受信する。受信部34は、例えば二酸化炭素センサー10によって一定間隔毎に測定された複数の測定データを受信する。この二酸化炭素センサー10による測定間隔は、上記した計測管理部31によって送信された設定データに応じて設定される。
【0053】
変化率判定部35は、測定データを、例えば予め定められた一定時間(期間)比較する。これにより、変化率判定部35は、比較された測定データによって示される二酸化炭素濃度の変化率(状態)を判定する。変化率判定部35は、例えば測定データの値の変化が予め定められた一定値以内(例えば1000PPM:Part Per Million)であれば二酸化炭素濃度は定常状態にあると判定する。
【0054】
また、変化率判定部35は、例えば測定データの値が次第に増加していれば、測定されている室内にいる人の数(以下、在室人数と表記)が増加したか、または当該室内における換気量が減少したと判定する。
【0055】
また、変化率判定部35は、例えば測定データの値が次第に減少していれば、在室人数が減少したか、または測定対象の室内における換気量が増加したと判定する。
【0056】
換気量評価部36は、変化率判定部35によって判定された二酸化炭素濃度の変化率に基づいて、実効換気量を評価(算出)する。実効換気量は、二酸化炭素濃度測定時における実際の換気量である。この実効換気量は、二酸化炭素濃度の時系列データを例えば最小自乗法等を用いて指数関数でフィッティング(近似)し、このときのフィッティング係数及び入力データ格納部32に格納されている部屋の容積から計算される。また、換気量評価部36は、例えば在室人数が一定である場合には、実効換気量の時間変化を算出する。この実効換気量及び当該実効換気量の時間変化は、例えば一定時間毎に算出される。
【0057】
在室人数評価部37は、在室人数がわからない場合には、換気量評価部36によって算出された実効換気量に基づいて在室人数を評価(算出)する。この在室人数は、例えば一定時間毎に算出される。
【0058】
なお、上記した実効換気量、当該実効換気量の時間変化または在室人数の具体的な算出処理については後述する。
【0059】
結果表示処理部38は、換気量評価部36によって算出された実効換気量及び当該実効換気量の時間変化を、例えば二酸化炭素濃度測定用センサーシステムの管理者に通知するために表示装置39に表示させる。また、結果表示処理部38は、在室人数評価部37によって算出された在室人数を、管理者に通知するために表示装置39に表示させる。
【0060】
データ格納処理部40は、換気量評価部36によって算出された実効換気量及び時間変化をデータ格納部41に格納する。また、データ格納処理部40は、在室人数評価部37によって算出された在室人数をデータ格納部41に格納する。
【0061】
図5は、二酸化炭素センサー10における測定周期(測定タイミング)及び無線通信周期(送信タイミング)を示す。
【0062】
ここで、二酸化炭素センサー10において二酸化炭素濃度を測定する場合には、正確な値が測定されるまで予熱を行う必要がある(電力を供給し始めてから時間を要する)場合がある。その他にも、素子の安定化のために測定に先立ち数分間の通電を必要とする場合がある。これは、二酸化炭素センサー10に含まれる二酸化炭素濃度測定用素子(センサー素子)101の種類によって異なる。図5では、二酸化炭素センサー10において測定を行うにあたって、予熱を行う必要があるセンサー素子101が用いられた場合を想定している。
【0063】
図5において、上段の線201は、二酸化炭素センサー10に含まれるセンサー素子101に対する電力供給を示す。以下、線201をセンサー素子電力供給線201と称する。また、下段の線202は、二酸化炭素センサー10に含まれる無線送信部102に対する電力供給を示す。以下、線202を無線送信部電力供給線202と称する。
【0064】
図5のセンサー素子電力供給線201に示すように、センサー素子101では、時間T1〜T2まで予熱が行われている。その後、時間T2〜T3まで二酸化炭素濃度の測定が行われる。そして、無線送信部102は、時間T3〜T4まで測定データを無線親機20に対して送信する。その後、一定時間が経ち、時間T5から次の測定のための予熱がセンサー素子101で行われ、時間T6から測定が行われる。
【0065】
つまり、図5に示すセンサー素子電力供給線201の例では、センサー素子101に対しては、時間T1〜T3まで電力が供給されている。また、無線送信部102に対しては、時間T3〜T4まで電力が供給されている。よって、図5に示すように、この例における測定周期は、時間T2〜T6となる。
【0066】
ここで、図5の無線送信部電力供給線202に示す無線送信に要する電力または起動に要する電力(例えば時間T3〜T4)を無視した場合を想定する。この場合、連続的に二酸化炭素濃度を測定する場合と比較すると、T5−T1/T3−T1倍に電池の寿命は長くなる。例えばT5−T1=30(分)、T3−T2≒0、T2−T1=1(分)とした場合、電池の寿命は、T5−T1/T3−T1=30/1=30倍になる。
【0067】
例えば単三乾電池6本で2〜3日程度の連続測定が可能である場合を想定する。この場合、上記したように断続的に測定することで、同様の電源(単三乾電池6本)であっても2〜3ヶ月程度の測定が可能になる。また、例えば夜間は測定しないものとし、測定周期を1時間とすると、1年程度の測定が可能となる。
【0068】
図6は、二酸化炭素濃度測定用センサーシステムにおける二酸化炭素センサー10及び無線親機20が配置されるフロアーを示す図である。
【0069】
図6に示すように、フロアー300には、例えば部屋(居室)300a〜300e及び空調機械室301が設けられている。各部屋300a〜300eの各々には、例えば部屋の大きさに応じて複数の二酸化炭素センサー10が配置されている。一方、例えば空調機械室301には、無線親機20(アクセスポイント)が配置されている。
【0070】
この場合、各部屋300a〜300eに配置されている二酸化炭素センサー10の各々によって測定された二酸化炭素濃度(測定データ)は、フロアー300の空調機械室301に配置された無線親機20まで無線により送信される。二酸化炭素センサー10の各々から送信された測定データは、例えばインターネット等のネットワーク50を介してデータ処理装置30(図示せず)に対して送られる。
【0071】
次に、図7及び図8を参照して、二酸化炭素センサー10によって測定された測定結果について説明する。図7は、例えば事務所ビル等のフロアーにおける二酸化炭素センサー10の配置を示す。
【0072】
図7に示す例では、例えば事務所ビルのフロアー400内の4箇所に二酸化炭素センサー10a〜10dが配置されている。なお、二酸化炭素センサー10aは、例えば会議中である会議室内に配置されている。一方、二酸化炭素センサー10b〜10cは、会議室以外の箇所(特に人が集まる場所以外の場所)に配置されているものとする。
【0073】
図8は、図7に示す二酸化炭素センサー10a〜10dによる二酸化炭素濃度の測定結果の一例を示す。図8においては、横軸は時間を示し、縦軸は測定された二酸化炭素濃度を示す。ここで、縦軸の二酸化炭素濃度は相対値である。
【0074】
図8に示す例では、会議を行っている会議室に配置されている二酸化炭素センサー10aによって測定された二酸化炭素濃度は、約1700と大きな値を示している。また、他の場所に配置された二酸化炭素センサー10b〜10dによって測定された二酸化炭素濃度でも、約1250〜1400とばらつきがある。
【0075】
また、図8に示す例では、時間18:00〜18:30に、全部の二酸化炭素センサー(10a〜10d)を用いて一箇所(例えば二酸化炭素センサー10dが配置されていた付近)の二酸化炭素濃度を測定している。この結果から、各二酸化炭素センサー10a〜10dの測定誤差は50程度であると考えられる。
【0076】
上記結果から、例えばオフィス内の二酸化炭素濃度を測定する場合には、場所による分布を考慮する必要があることがわかる。
【0077】
図9及び図10を参照して、1つの会議室内において複数箇所に配置された二酸化炭素センサー10による二酸化炭素濃度の測定結果の一例について説明する。
【0078】
図9は、会議室内で二酸化炭素センサー10が配置された場所の一例を示す。図9に示す例では、チャンネル0(CH0)の二酸化炭素センサー10は、床(高さ0cm)に配置されていることが示される。同様に、チャンネル1(CH1)の二酸化炭素センサー10は、テーブル(高さ70cm)に配置されている。チャンネル2(CH2)の二酸化炭素センサー10は、ホワイトボード上(高さ190cm)に配置されている。また、チャンネル3(CH3)の二酸化炭素センサー10は、天井(高さ270cm)に配置されている。このように、二酸化炭素センサー10は、会議室内の4箇所に配置されている。
【0079】
図10は、図9に示される場所に配置された二酸化炭素センサー10による二酸化炭素濃度の測定結果である。上記した図8と同様に、図10においても横軸は時間を示し、縦軸は測定された二酸化炭素濃度を示す。また、上記した図8と同様に、縦軸の二酸化炭素濃度は相対値である。
【0080】
図10に示すように、図9に示す4箇所に配置された二酸化炭素センサー10によって測定された二酸化炭素濃度は、会議を開始してから1時間程度でほぼ定常に達していることがわかる。また、二酸化炭素センサー10が配置されている高さによって二酸化炭素濃度が異なることがわかる。
【0081】
通常、屋外の二酸化炭素濃度は400PPM程度である。しかしながら、人間の呼気中の二酸化炭素濃度は、3〜5%(30000〜50000PPM)と極めて大きい。このため、二酸化炭素濃度の測定値は、当該測定の対象となる室内に人間がいることにより、極めて敏感に反応する。原理的には、二酸化炭素濃度分布を詳細に測定することで、二酸化炭素発生源(人間)の分布をかなりの程度まで推測することが可能となる。
【0082】
ここで、二酸化炭素濃度h(PPM)の時間変化は、1点モデルで、
【数1】
【0083】
と表すことができる。ここで、hは二酸化炭素濃度(PPM)、Vは測定対象となる部屋(室内)の体積(m3)、nは在室人数(人)、Sは例えば大人1人あたりの二酸化炭素排出量(m3/h/人)、houtは外気の二酸化炭素濃度(PPM)、Qは実効的な換気量(m3/h)である。以下、V=87.75(m3)、S=0.02(m3/h/人)、hout=400(PPM)であるものとして説明する。
【0084】
ここで、上記した式(1)の解は、
【数2】
【0085】
となる。ここで、h0は初期の二酸化炭素濃度であり、h∞は定常状態(時間t→∞)における二酸化炭素濃度である。また、h∞は、換気に用いる新鮮外気の二酸化炭素濃度houtを用いて、上記した式(1)より、
【数3】
【0086】
と表される。
【0087】
上記したように、S=0.02(m3/h/人)、hout=400(PPM)である。これにより、上記した式(3)を用いれば、n人が在室する部屋の定常状態における室内の二酸化炭素濃度h∞を一定値(例えば1000PPM)以下にするために必要な換気量Qが算出される。例えば測定対象となる部屋(室内)に5人が在室する、つまり、n=5の場合、式(3)により、Q=166(m3/h)となる。
【0088】
ここで、注意すべき点は、上記した式(3)を用いた場合では、部屋の広さなどの情報を必要としないことである。これは、部屋を1点モデルで近似したため当然であるが、明らかに実態とは異なる。例えば極めて広い部屋と非常に狭い部屋で必要な換気量が等しいということはありえない。これは、二酸化炭素濃度の分布を無視したために生じる誤差となる。実際には人が居る付近を換気すればよいだけであり、部屋全体を換気する必要はない。また、二酸化炭素は空気より重たいので部屋の下部で濃度が高くなるため、部屋の下部から換気する方が効率がよくなる。逆に、呼気は温度が高いため対流によって部屋の上部の濃度が高くなることも考えられる。よく循環された部屋であれば発生源(人間)付近の濃度が高くなりうる。このような分布は実際に測定してみないとわからない。
【0089】
一方、上記した式(2)を用いると、実効的な換気量が求まる。この場合、式(2)の指数関数部分を対数フィッティングすることにより勾配(−Q/V)が求まる。ここでは、部屋の体積Vが現れる。即ち、部屋が広いほど定常に達するのに時間がかかるということである。
【0090】
ここで、図11は、図10に示す測定結果(測定データ)をフィッティングした結果の一例を示す。このフィッティングした結果から傾きを求めることにより、Q/Vの値を求めることができる。図11に示す例で、例えばQ/V=2.2(1/h)であった場合、V=87.75(m3)であるから、Q=190(m3/h)となる。フィッティングの誤差もあるが、換気量を測定することは用意ではないので、この方法は極めて有効であると言える。つまり、上記したように本実施形態によれば、二酸化炭素濃度の分布(空間分布)を測定することにより、実効換気量を算出することが可能となる。
【0091】
なお、空調制御においては、場合によっては部屋の空調負荷がわかると都合がよい場合ある。これには空調機による吸気のパラメータ(例えば空調機が供給する空気の温度、湿度)、換気のパラメータ(部屋の温度、湿度に等しいと考えてよい)とともに、換気量を知る必要がある。この場合、上記したように部屋の換気量を評価することで、空調負荷(除去すべき熱量)を推定することもできる。
【0092】
図12は、給気及び還気と換気の関係を説明するための図である。なお、給気は、空調機から室内に供給される空気である。また、還気は、室内から空調機に戻る空気である。
【0093】
例えば給気の温度、湿度は容易に測定可能である。また、還気の温度及び湿度は部屋の湿度及び温度で代表される。なお、還気の温度及び湿度を直接に測定することも可能である。
【0094】
ところで、空調機から部屋に流入する空気の量は、空調機に戻る空気の量と等しくなく、戻る空気の量と部屋から外に漏れる空気の量の和になる。この場合、部屋から外に漏れる空気の量に等しい外気が導入されている。これらの空気の量がわかれば熱のバランスから空調負荷(室内での潜熱及び顕熱の発生量)を評価することができる。
【0095】
しかしながら、これらの量を正確に評価することは難しい。そこで、上記したように二酸化炭素濃度の測定データのみから実効的な換気量(実効換気量)を算出する。これにより、この実効換気量あるいは、この実効換気量と既知の外気導入量を用いることで、室内の空調負荷を評価(推定)することが可能となる。この実効換気量及び評価された空調負荷に基づいて、例えば室内の空調を管理する空調機を制御することによって換気量を調節することができる。
【0096】
また、上記した式(3)を用いると、大人1人あたりの二酸化炭素排出量Sを仮定(S=0.02(m3/h/人))することで測定対象となる部屋の在室人数を評価することができる。例えば、上記した図10から外気の二酸化炭素濃度を500PPMとし、定常状態での平均の二酸化炭素濃度を1150PPMとすると、これらの値及び算出された実効換気量Qから式(3)よりn(在室人数)≒6となる。これにより、部屋にいる人数は6人ということになる。上記したように、実際には5人であるが、二酸化炭素センサー10の測定値以外に何らの情報も用いていないことを考えると良い精度といえる。
【0097】
次に、図13のフローチャートを参照して、例えば上記したような手法により算出される値を用いて、例えばビル内等の指定されたエリアにおいて二酸化炭素センサー10を換気及び防犯のために利用する際のデータ処理装置30の処理手順について説明する。例えば昼間(換気実施必要時間帯)には、二酸化炭素センサー10は換気のために用いられる。一方、例えば夜間(換気実施不要時間帯)には二酸化炭素センサー10は防犯のために用いられる。ビル内には、n個の二酸化炭素センサー10が配置されているものとして説明する。
【0098】
なお、以下の説明で換気扇とあるのは、実効的に換気を行うことができる機器であれば他の機器であっても構わない。
【0099】
ここでは、指定されたエリアに配置されているn個の二酸化炭素センサー10により、当該エリアの二酸化炭素濃度は例えば24時間連続して測定されているものとする。
【0100】
まず、i(i=1、2、…、n)番目の二酸化炭素センサー10により、当該二酸化炭素センサー10が配置されている付近の二酸化炭素濃度を測定する(ステップS1)。このi番目の二酸化炭素センサー(以下、対象二酸化炭素センサーと表記)10によって測定された二酸化炭素濃度(測定データ)は、無線親機20を介してデータ処理装置30に送られる。この測定データは、データ処理装置30の受信部34によって受信される。
【0101】
測定データがデータ処理装置30の受信部34によって受信されると、当該測定データが測定された時間が換気実施必要時間帯(例えば、昼間)であるか否かが判定される(ステップS2)。
【0102】
換気実施必要時間帯でない、つまり換気実施不要時間帯(例えば、夜間)であると判定されると(ステップS2のNO)、受信部34によって受信された測定データの値が変動しているか否かが判定される(ステップS3)。
【0103】
測定データの値が変動していると判定された場合には(ステップS3のYES)、例えば二酸化炭素発生源(例えば、人間または小動物等)の侵入があったとみなして警報を発生する(ステップS4)。
【0104】
次に、指定されたエリアに配置されているn個の二酸化炭素センサー10の全てについて処理が完了したか否かが判定される(ステップS5)。
【0105】
全てについて処理が完了したと判定された場合(ステップS5のYES)、処理は終了される。一方、全てについて処理が完了していないと判定された場合(ステップS5のNO)、n個の二酸化炭素センサー10のうち、まだ処理されていない二酸化炭素センサー10についてステップS1に戻って処理が繰り返される。
【0106】
一方、ステップS3において、測定データの値が変動していないと判定された場合、警報は発生されず、ステップS5の処理が実行される。
【0107】
また、ステップS2において換気実施必要時間帯であると判定された場合、上記した受信部34によって受信された測定データの値が予め定められた基準値(例えば1000PPM)以上であるか否かが判定される(ステップS6)。
【0108】
測定データの値が予め定められた基準値以上でないと判定された場合(ステップS6のNO)、上記した対象二酸化炭素センサー10により例えば予め定められた一定時間、二酸化炭素濃度が測定される(ステップS7)。データ処理装置30の受信部34は、この間に測定された二酸化炭素濃度(測定データ)を受信する。これにより、データ処理装置30では、二酸化炭素濃度の時間変化(率)が取得される。
【0109】
次に、データ処理装置30は、取得された時間変化に応じて、二酸化炭素濃度の変化が定常状態であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0110】
二酸化炭素濃度の変化が定常状態であると判定された場合(ステップS8のYES)、当該定常状態となっている二酸化炭素濃度の値及び上記した式(3)を用いて、必要最小の換気量を算出する(ステップS9)。
【0111】
データ処理装置30は、算出された必要最小の換気量に応じて、例えば対象二酸化炭素センサー10の近くに配置されている換気扇を停止する(ステップS10)。これにより、換気量が低減され、省エネを図ることができる。
【0112】
なお、冷房を行う場合、換気によって外気を導入すると除湿負荷が増大する。一般に、室内の空気は外気より湿度が小さいので、これを循環して冷房することにより空調に必要な消費電力を大幅に低下することも可能になる。
【0113】
ステップS10の処理が実行されると、ステップS5の処理が実行される。
【0114】
一方、ステップS8において二酸化炭素濃度の変化が定常状態でないと判定された場合、つまり二酸化炭素濃度が変化している場合、対象二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の在室人数が増加したか、または当該部屋の換気量が減少したことを意味する。このため、データ処理装置30は、取得された時間変化を指数関数でフィッティングする(ステップS11)。
【0115】
データ処理装置30の実効換気量評価部36は、フィッティングされた結果に基づいて、上記した式(2)を用いて実効的な換気量(実効換気量)を算出する(ステップS12)。
【0116】
次に、データ処理装置30の在室人数評価部37は、算出された実効換気量及び式(3)を用いて、上記した対象二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の在室人数を算出(評価)する(ステップS13)。
【0117】
データ処理装置30では、算出された実効換気量及び在室人数に基づいて、予想される二酸化炭素濃度を算出する(ステップS14)。ここで、この算出された二酸化炭素濃度が、予め定められた基準値以下であるか否かが判定される(ステップS15)。
【0118】
このとき、予め定められた基準値以下でないと判定された場合(ステップS15のNO)、例えば対象二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の空調機を制御することによって、対象二酸化炭素センサー10に近い換気扇で換気する(ステップS16)。
【0119】
一方、ステップS15において予め定められた基準値以下であると判定された場合、ステップS10の処理が実行される。
【0120】
また、ステップS6において測定データの値が予め定められた基準値以上であると判定された場合、ステップS16の処理が実行される。
【0121】
ところで、本実施形態に係る二酸化炭素センサー10は、例えば室内に置かれた移動体または浮遊体に配置することで、当該室内の様々な箇所の二酸化炭素濃度を測定することが可能である。
【0122】
図14は、上記した移動体または浮遊体に二酸化炭素センサー10が配置された具体例を示す図である。
【0123】
図14に示すように、例えば室内400には、移動体401、浮遊体402及び浮遊体403がある。この移動体401、浮遊体402及び浮遊体403には、それぞれ二酸化炭素センサー10が配置されている。これにより、例えば二酸化炭素センサー10が1箇所に配置されている場合とは異なり、室内400に配置される二酸化炭素センサー10の数が当該室内400の広さに対して少ない場合でも、当該室内400の様々な箇所の二酸化炭素濃度を測定することが可能となる。
【0124】
上記したように本実施形態においては、二酸化炭素センサー10を無線化することにより、例えば電源確保または配線が困難な箇所であっても当該二酸化炭素センサー10を配置することができる。
【0125】
また、一般的に二酸化炭素濃度測定用のセンサー素子101は、消費電力が大きいため、連続的に使用すると単三アルカリ乾電池を例えば2〜4本用いても数時間程度の測定時間が限界である。無線送信自体にも電力を消費する。そこで、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10において二酸化炭素濃度の測定及び当該測定された二酸化炭素濃度(測定データ)の送信を断続的とすることで、二酸化炭素濃度の測定を長時間行うことができる。
【0126】
また、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10の無線化により、例えばビル等の各部屋または廊下等に当該二酸化炭素センサー10を多数配置できる。これにより、各部屋の実効的な換気量を算出することができる。このように、例えば各部屋の実効的な換気量を評価することにより、換気の最適化を図ることが可能となる。同様に、二酸化炭素センサー10を各部屋に複数配置することにより、当該部屋の居住者の位置における二酸化炭素濃度の測定が可能となる。
【0127】
また、本実施形態においては、室内に配置された複数の二酸化炭素センサー10を用いて当該室内の二酸化炭素濃度の空間分布を取得(測定)し、当該空間分布を用いて複数の空調機及び複数の吸引口を制御することができる。これにより、室内の二酸化炭素濃度の空間分布を調整することができる。
【0128】
本実施形態においては、二酸化炭素センサー10により断続的に測定された二酸化炭素濃度から、実効的な換気量及び当該二酸化炭素センサー10が配置されている部屋の在室人数を算出することができる。これに応じて、例えば空調機または換気扇の制御を実行することにより、例えば換気量等を減少させることができる。
【0129】
また、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10を用いて二酸化炭素濃度を長期間測定することができるので、二酸化炭素濃度の変化を日常的に測定することにより、例えば夜間等の人のいないはずの時間において二酸化炭素濃度の変化が見られた場合、不審者の侵入や小動物の侵入とみなして、警報を発生することができる。これにより、防犯上の効果も得ることができる。
【0130】
また、例えば二酸化炭素センサー10を移動体または浮遊体に配置することにより、部屋に配置された二酸化炭素センサー10が少数であった場合でも、当該部屋の様々な箇所の二酸化炭素濃度を測定することができる。
【0131】
なお、本実施形態においては、二酸化炭素センサー10に用いられるセンサー素子101は非分散型赤外線吸収式のセンサー素子であるものとして説明したが、固体電解質方式のセンサー素子が用いられる構成であっても構わない。
【0132】
なお、本願発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0133】
10…二酸化炭素センサー、20…無線親機、21…無線データ送信部、22…無線データ受信部、30…データ処理装置、31…計測管理部、32…入力データ格納部、33…送信部、34…受信部、35…変化率判定部、36…換気量評価部、37…在室人数評価部、38…結果表示処理部、39…表示装置、40…データ格納処理部、41…データ格納部、101…二酸化炭素濃度測定素子(二酸化炭素濃度測定手段)、102…無線送信部、103…無線受信部、104…電源部(電力供給手段)、105…外部電源用トランス、106…測定モード設定部、107…素子制御部(第1の制御部)、108…無線制御部(第2の制御部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度測定手段と、前記二酸化炭素濃度に係る測定データを送信する送信手段と、前記二酸化炭素濃度を測定手段に対して電力を供給する電力供給手段と、前記二酸化炭素濃度測定手段に断続的に電力を供給するように、前記電力供給手段を制御する電力供給制御手段とを含む二酸化炭素センサーからの測定データを断続的に受信するデータ処理装置において、
前記送信された測定データを受信する受信手段と、
前記受信された測定データに基づいて、当該測定データが測定された時点での室内の換気量を算出する換気量算出手段と、
前記受信された測定データ及び前記算出された換気量に基づいて、前記室内における在室人数を算出する在室人数算出手段と
を具備することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記算出された換気量に基づいて、前記室内の空調負荷を推定する推定手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記算出された換気量に基づいて、前記室内の空調を管理する空調機を制御する手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記受信された測定データまたは前記在室人数算出手段によって算出された在室人数に基づいて、前記室内への不審者の侵入を判定する手段と、
前記室内への不審者の侵入が判定された場合、警報を発生する警報発生手段と
を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記二酸化炭素センサーは、複数配置され、
前記複数の二酸化炭素センサーの各々からの測定データに基づいて、前記室内における二酸化炭素濃度の空間分布を取得する取得手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項6】
二酸化炭素センサーと、前記二酸化炭素センサーからの測定データを断続的に受信するデータ処理装置とからなる二酸化炭素濃度測定センサーシステムにおいて、
前記二酸化炭素センサーは、
前記二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度測定手段と、
前記二酸化炭素濃度に係る測定データを前記データ処理装置に対して送信する送信手段と、
前記二酸化炭素濃度測定手段に対して電力を供給する電力供給手段と、
前記二酸化炭素濃度測定手段に断続的に電力を供給するように、前記電力供給手段を制御する電力供給制御手段と
を含み、
前記データ処理装置は、
前記送信された測定データを受信する受信手段と、
前記受信された測定データに基づいて、当該測定データが測定された時点での室内の換気量を算出する換気量算出手段と、
前記受信された測定データ及び前記算出された換気量に基づいて、前記室内における在室人数を算出する在室人数算出手段と
を含む
ことを特徴とする二酸化炭素濃度測定用センサーシステム。
【請求項7】
前記データ処理装置は、
前記受信された測定データまたは前記在室人数算出手段によって算出された在室人数に基づいて、前記室内への不審者の侵入を判定する手段と、
前記室内への不審者の侵入が判定された場合、警報を発生する警報発生手段と
を更に含むことを特徴とする請求項6記載の二酸化炭素濃度測定用センサーシステム。
【請求項1】
二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度測定手段と、前記二酸化炭素濃度に係る測定データを送信する送信手段と、前記二酸化炭素濃度を測定手段に対して電力を供給する電力供給手段と、前記二酸化炭素濃度測定手段に断続的に電力を供給するように、前記電力供給手段を制御する電力供給制御手段とを含む二酸化炭素センサーからの測定データを断続的に受信するデータ処理装置において、
前記送信された測定データを受信する受信手段と、
前記受信された測定データに基づいて、当該測定データが測定された時点での室内の換気量を算出する換気量算出手段と、
前記受信された測定データ及び前記算出された換気量に基づいて、前記室内における在室人数を算出する在室人数算出手段と
を具備することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記算出された換気量に基づいて、前記室内の空調負荷を推定する推定手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記算出された換気量に基づいて、前記室内の空調を管理する空調機を制御する手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記受信された測定データまたは前記在室人数算出手段によって算出された在室人数に基づいて、前記室内への不審者の侵入を判定する手段と、
前記室内への不審者の侵入が判定された場合、警報を発生する警報発生手段と
を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記二酸化炭素センサーは、複数配置され、
前記複数の二酸化炭素センサーの各々からの測定データに基づいて、前記室内における二酸化炭素濃度の空間分布を取得する取得手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項6】
二酸化炭素センサーと、前記二酸化炭素センサーからの測定データを断続的に受信するデータ処理装置とからなる二酸化炭素濃度測定センサーシステムにおいて、
前記二酸化炭素センサーは、
前記二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度測定手段と、
前記二酸化炭素濃度に係る測定データを前記データ処理装置に対して送信する送信手段と、
前記二酸化炭素濃度測定手段に対して電力を供給する電力供給手段と、
前記二酸化炭素濃度測定手段に断続的に電力を供給するように、前記電力供給手段を制御する電力供給制御手段と
を含み、
前記データ処理装置は、
前記送信された測定データを受信する受信手段と、
前記受信された測定データに基づいて、当該測定データが測定された時点での室内の換気量を算出する換気量算出手段と、
前記受信された測定データ及び前記算出された換気量に基づいて、前記室内における在室人数を算出する在室人数算出手段と
を含む
ことを特徴とする二酸化炭素濃度測定用センサーシステム。
【請求項7】
前記データ処理装置は、
前記受信された測定データまたは前記在室人数算出手段によって算出された在室人数に基づいて、前記室内への不審者の侵入を判定する手段と、
前記室内への不審者の侵入が判定された場合、警報を発生する警報発生手段と
を更に含むことを特徴とする請求項6記載の二酸化炭素濃度測定用センサーシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−196683(P2011−196683A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126627(P2011−126627)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2007−151936(P2007−151936)の分割
【原出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2007−151936(P2007−151936)の分割
【原出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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