説明

データ記録装置、及び、データ記録方法

【課題】事故に繋がる可能性のある位置を特定する。
【解決手段】データ記録装置1においては、各種の情報取得装置42〜48を用いて車両のドライバの生体情報を取得し、その生体情報に基づいてドライバの緊張感が高まる心理状態の変化を生体イベントとしてイベント検出部23が検出する。一方で、車両の現時点の位置を特定可能な位置情報として車外画像及び経緯度情報も取得される。そして、生体イベントが発生した場合は、記録制御部24が、イベントの発生時点において取得された位置情報をメモリカード9に記録する。したがって、運転中のドライバの緊張感が高まった位置を事後的に把握することができ、事故に繋がる可能性のある位置を特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両においてデータを記録する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されて所定のイベントが発生した場合に、各種のデータを記録するドライブレコーダとも呼ばれるデータ記録装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。例えば、データ記録装置は、車両に加わる衝撃の大きさを示す加速度が所定の閾値を超えたことをイベント(事故)として検出し、そのイベントの発生前後の車両の周辺の様子を示す画像データを記録媒体に記録する。
【0003】
このようなデータ記録装置を利用することで、事故が発生した原因を事後的に検証できるようになっている。また、近年では、データ記録装置で取得されたデータを、事故の原因究明のみならず、ドライバの安全教育にも利用されている。すなわち、いずれの位置でどのような事故が発生したかをドライバに伝えることで、事故の再発を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−293536号公報
【特許文献2】特開2008−210375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、事故の発生を防止するためには、実際には事故には至らなかったものの事故に直結してもおかしくないニアミス事例を、ドライバで共有することが重要であるといわれている。このようなニアミス事例には、ドライバが運転中において危険を感じて(ヒヤリとしたりハッとしたりして)緊張感が高まるような事例(いわゆるヒヤリハット)が含まれる。
【0006】
しかしながら、従来のデータ記録装置は、実際に車両に衝撃が加わった場合、すなわち、実際に事故が発生した場合にデータを記録することが一般的であり、どのような位置でニアミス事例が発生したかを記録することはできなかった。したがって、事故は生じていないものの、将来、事故が発生する可能性のある位置を特定することはできなかった。
【0007】
なお、特許文献1,2には、ドライバの眠気が大きい場合(すなわち、緊張感が低下する場合)に画像データを記録することが記載されているが、ドライバの緊張感が高まる場合については、なんら言及されていない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、事故に繋がる可能性のある位置を特定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両に搭載されるデータ記録装置であって、前記車両のドライバの生体情報を取得する情報取得手段と、前記生体情報に基づいて前記ドライバの緊張感が高まる心理状態の変化をイベントとして検出するイベント検出手段と、前記車両の現時点の位置を特定可能な位置情報を取得する位置取得手段と、前記イベントの発生時点において取得された前記位置情報を記録する記録手段と、を備えている。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のデータ記録装置において、前記記録手段は、前記イベントの発生時点において取得された前記生体情報をさらに記録する。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載のデータ記録装置において、前記記録手段は、前記イベントの発生時点の前、及び、前記イベントの発生時点の後を含む期間において取得された前記生体情報をさらに記録する。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のデータ記録装置において、前記ドライバの前記車両の運転操作の内容を取得する操作取得手段、をさらに備え、前記イベント検出手段は、前記運転操作の異常を前記イベントとしてさらに検出する。
【0013】
また、請求項5の発明は、車両においてデータを記録するデータ記録方法であって、前記車両のドライバの生体情報を取得する工程と、前記生体情報に基づいて前記ドライバの緊張感が高まる心理状態の変化をイベントとして検出する工程と、前記車両の現時点の位置を特定可能な位置情報を取得する工程と、前記イベントの発生時点において取得された前記位置情報を記録する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし5の発明によれば、運転中のドライバの緊張感が高まった位置を事後的に把握することができ、事故に繋がる可能性のある位置を特定することができる。
【0015】
また、特に請求項2の発明によれば、イベントの発生時点における生体情報が記録されるため、ドライバの心理状態を事後的に検証することができる。
【0016】
また、特に請求項3の発明によれば、イベントの発生時点の前後における生体情報が記録されるため、ドライバの心理状態がどのように変化したかを事後的に詳細に検証することができる。
【0017】
また、特に請求項4の発明によれば、運転操作の異常をイベントとして検出するため、事故に繋がる可能性のある位置をより多く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、データ記録装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、データ記録装置で記録されたデータの受け渡しを示す図である。
【図3】図3は、データ記録装置の処理の流れを示す図である。
【図4】図4は、記録されるデータが取得される時点とイベントの発生時点との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
<1.構成>
図1は、本実施の形態に係るデータ記録装置1の構成を示す図である。このデータ記録装置1は、自動車などの車両に搭載され、所定のイベントが発生した場合に各種データを記録媒体に記録する機能を有している。
【0021】
データ記録装置1は、本体部5と、各種データを取得する複数の情報取得装置41〜48とを備えている。本体部5は車両の車室内に配置される一方で、複数の情報取得装置41〜48は本体部5とは独立して車両における適位置にそれぞれ配置される。本体部5と情報取得装置41〜48とは通信ケーブルで接続されており、情報取得装置41〜48のそれぞれで取得されたデータは通信ケーブルを介して本体部5に入力される。
【0022】
情報取得装置41〜48には、車外カメラ41、車内カメラ42、マイク43、発汗センサ44、着座センサ45、呼吸センサ46、脈拍センサ47及び脳波センサ48が含まれている。
【0023】
車外カメラ41は、車両の外部を撮影して、車両の前方の様子を示すデジタル形式の画像データ(以下、「車外画像」という。)を取得する。車外カメラ41は、レンズと撮像素子とを備えており、レンズの光軸が車両の前方に向けられた状態で車両の車室内に配置される。車外画像は、車両の周辺の様子を示すことになるため、撮影時点の車両の位置を特定可能な位置情報であるともいえる。
【0024】
車内カメラ42は、車両の内部を撮影して、車両のドライバの顔の様子を主に示すデジタル形式の画像データ(以下、「ドライバ画像」という。)を取得する。車内カメラ42は、レンズと撮像素子とを備えており、ドライバを撮影できるように車両のダッシュボードに固定されている。
【0025】
マイク43は、車室内の音を集音して、ドライバの声を主に示す音声データを取得する。マイク43は、ドライバの声を集音できるようにドライバーズシートの直上の天井等に固定される。
【0026】
発汗センサ44は、ドライバの「発汗量」を取得する。発汗センサ44は、例えば、2つの電極を備えており、これら2つの電極はドライバーズシートやハンドル(ステアリングホイール)などのドライバが触れる位置に配置される。発汗センサ44は、ドライバの発汗に伴って生じる2つの電極間の静電容量の変化に基づいてドライバの発汗量を検出する。
【0027】
着座センサ45は、ドライバのドライバーズシートにおける「着座位置」を取得する。着座センサ45は、例えば、ひずみゲージを備えた複数の荷重計を備えており、これら複数の荷重計はドライバーズシートに分散して配置される。着座センサ45は、ドライバーズシートにおける各荷重計の検出値に基づいて、ドライバの重心がある着座位置を検出する。
【0028】
呼吸センサ46は、ドライバの単位時間(例えば「10秒」)当たりの「呼吸数」を取得する。呼吸センサ46は、例えば、マイクロ波を用いるドップラーセンサを備えており、このドップラーセンサはドライバーズシートの背もたれの内部に配置される。呼吸センサ46は、マイクロ波の送信波と反射波との周波数の差に基づいてドライバの体表面の動きを検出することで、ドライバの呼吸を検出する。
【0029】
脈拍センサ47は、ドライバの単位時間(例えば「10秒」)当たりの「脈拍数」を取得する。脈拍センサ47は、例えば、赤外線を発光するLEDと赤外線を受光するフォトダイオードとを備えており、これらはドライバが手を触れるハンドルに配置される。脈拍センサ47は、ドライバの手で反射した赤外線を受光するフォトダイオードの受光量に基づいて血液の流れの変化を検出することで、ドライバの脈拍を検出する。
【0030】
脳波センサ48は、ドライバの「脳波」を取得する。脳波センサ48は、ドライバの頭部に装着するヘッドセット部を備え、ドライバの頭皮表面に接触するようにヘッドセット部に複数の電極が設けられている。脳波センサ48は、複数の電極間の電位差に基づいてドライバの脳波を検出する。
【0031】
また、本体部5は、装置全体を制御するコンピュータである制御部10を備えている。制御部10は、演算処理を行うことで各種の制御機能を実現するCPU11、演算処理の作業領域となるRAM12、及び、各種データを記憶するROM13を備えている。ROM13には、制御用のプログラムやデータなどが記憶される。
【0032】
また、RAM12には、情報取得装置41〜48で取得されたデータが記憶される。RAM12の記憶領域のうちの一部は、リングバッファとして利用される。このリングバッファに対して、所定の周期ごとに情報取得装置41〜48で取得されたデータが記憶される。リングバッファでは、最後の領域までデータが記憶されると最初の領域に戻って新たなデータが記憶される。これにより、リングバッファでは、最も古いデータに対して新たなデータが順次に上書きされていく。このため、RAM12においては、情報取得装置41〜48で取得されたデータが、常に過去一定時間分(例えば20秒分)以上、記憶された状態とされる。
【0033】
また、本体部5は、カードスロット31、計時回路32、GPS受信部33及び信号受信部34をさらに備えている。
【0034】
カードスロット31は、例えば、フラッシュメモリなどを備える可搬性の記録媒体であるメモリカード9を着脱可能に構成されている。カードスロット31は、メモリカード9からのデータの読み取りや、メモリカード9へのデータの書き込みを行う。所定のイベントが発生した場合においては、カードスロット31に装着されたメモリカード9に各種のデータが記録される。
【0035】
図2に示すように、車両7に搭載されたデータ記録装置1において記録されたデータは、メモリカード9を介して車両7外部の他のコンピュータ8に受け渡すことが可能である。これにより、コンピュータ8を利用してデータ記録装置1で記録されたデータを事後的に検証することができる。
【0036】
図1に戻り、計時回路32は、現時点の日付及び時刻を示す時刻情報を取得する。計時回路32は、内蔵電池を有し、外部から電力供給を受けなくとも作動して正確な時刻を計時する。計時回路32で取得された時刻情報は、制御部10に入力される。
【0037】
GPS受信部33は、複数のGPS衛星からの信号を受信して、現時点の車両の位置を特定可能な緯度及び経度を示す位置情報である経緯度情報を取得する。GPS受信部33で取得された経緯度情報は、制御部10に入力される。
【0038】
信号受信部34は、車両に設けられる車内LAN70と接続され、データ記録装置1以外の車両に設けられた各種装置から出力される信号を車内LAN70を介して受信する。信号受信部34は、ハンドル制御装置71及びブレーキ制御装置72から出力される信号を受信して、ドライバの運転操作の内容を示す情報を取得する。
【0039】
ハンドル制御装置71は、ドライバのハンドルの操作に応じて前輪の向きを変更する。信号受信部34は、ハンドル制御装置71から、ドライバのハンドルに対する運転操作の内容を示す情報である「操舵角」を取得する。
【0040】
ブレーキ制御装置72は、ドライバのブレーキペダルの操作に応じてブレーキ圧を変更する。信号受信部34は、ブレーキ制御装置72から、ドライバのブレーキペダルに対する運転操作の内容を示す情報である「踏込量」を取得する。
【0041】
以上のように構成されるデータ記録装置1の各部を制御する機能は、ROM13に予め記憶されたファームウェアとしてのプログラムに従ってCPU11が演算処理を実行することにより実現される。図中に示す画像処理部21、音声処理部22、イベント検出部23及び記録制御部24は、CPU11が演算処理を実行することで実現される機能の一部を示している。
【0042】
画像処理部21は、車内カメラ42で取得されたドライバ画像に対して画像処理を行うものである。画像処理部21は、ドライバ画像からドライバの顔の像を認識する顔認識機能を有している。この顔認識機能によって、画像処理部21は、ドライバの「目の開閉度」、及び、ドライバの「顔の向き」を取得することができる。
【0043】
音声処理部22は、マイク43で取得された音声データに対して音声処理を行うものである。音声処理部22は、音声データの信号のレベルに基づいて、ドライバの「声の音量」を取得することができる。また、音声処理部22は、音声データに基づいてドライバが「発声した単語」を認識する音声認識機能を有している。
【0044】
イベント検出部23は、所定のイベントが発生したか否かを検出する。イベント検出部23は、ドライバの生体情報に基づいてドライバの緊張感が高まる心理状態の変化を、イベントとして検出する。すなわち、イベント検出部23は、ドライバが運転中において危険を感じて緊張感が高まる事例(いわゆるヒヤリハット)をイベントとして検出することになる。さらに、イベント検出部23は、ドライバの運転操作の異常もイベントとして検出する。イベント検出部23は、これらのイベントを検出することで、実際には事故には至らなかったものの事故に直結してもおかしくないニアミス事例を検出する。イベント検出部23が、これらのイベントを検出する手法の詳細については後述する。
【0045】
また、記録制御部24は、イベント検出部23がイベントの発生を検出した場合に、そのイベントの発生時点で取得された各種のデータを、カードスロット31に装着されたメモリカード9に記録する。
【0046】
<2.イベントの検出>
次に、イベント検出部23がイベントを検出する手法について説明する。前述のように、イベント検出部23は、ドライバの緊張感が高まる心理状態の変化と、ドライバの運転操作の異常とをそれぞれイベントとして検出する。以下、ドライバの緊張感が高まる心理状態の変化に係るイベントを「生体イベント」といい、ドライバの運転操作の異常に係るイベントを「運転イベント」という。
【0047】
生体イベントは、ドライバの生体情報に基づいて検出される。この生体情報には、「目の開閉度」、「顔の向き」、「声の音量」、「発声した単語」、「発汗量」、「着座位置」、「呼吸数」、「脈拍数」及び「脳波」が含まれている。イベント検出部23は、これらの生体情報のいずれかが所定の条件を満足した場合に、生体イベントが発生した(すなわち、ドライバの緊張感が高まる心理状態の変化が生じた)と判断する。具体的には、以下の(A)〜(I)のいずれかの事象が発生した場合に、生体イベントが発生したと判断される。
【0048】
(A)「目の開閉度」が大きくなった場合。より具体的には、画像処理部21が取得する「目の開閉度」が、過去の平均値に対して所定割合(例えば20%)以上大きくなった状態が、所定時間(例えば1秒)以上継続した場合。
【0049】
(B)「顔の向き」が急に変更された場合。より具体的には、画像処理部21が取得する「顔の向き」が、所定時間(例えば0.5秒)以内に、所定角度(例えば30度)以上変更された場合。
【0050】
(C)「声の音量」が大きくなった場合。より具体的には、音声処理部22が取得する「声の音量」が、過去の平均値に対して所定割合(例えば20%)以上大きくなった状態が、所定時間(例えば0.5秒)以上継続した場合。
【0051】
(D)「発声した単語」に危険を感じた場合に発する単語が含まれる場合。より具体的には、音声処理部22が取得する「発声した単語」に、予め定められた単語(例えば「キャー」「ワッ」など)が含まれる場合。
【0052】
(E)「発汗量」が急に増加した場合。より具体的には、発汗センサ44が取得する「発汗量」が、所定時間(例えば0.5秒)以内に、過去の平均値に対して所定割合(例えば20%)以上大きくなった場合。
【0053】
(F)「着座位置」が急に変更された場合。より具体的には、着座センサ45が取得する「着座位置」が、所定時間(例えば0.5秒)以内に、所定距離(例えば10cm)以上変更された場合。
【0054】
(G)「呼吸数」が急に増加した場合。より具体的には、呼吸センサ46が取得する「呼吸数」が、所定時間(例えば10秒)以内に、過去の平均値に対して所定割合(例えば20%)以上大きくなった場合。
【0055】
(H)「脈拍数」が急に増加した場合。より具体的には、脈拍センサ47が取得する「脈拍数」が、所定時間(例えば10秒)以内に、過去の平均値に対して所定割合(例えば20%)以上大きくなった場合。
【0056】
(I)「脳波」が急に乱れた場合。より具体的には、脳波センサ48が取得する「脳波」に含まれるベータ波の量が、所定時間(例えば0.5秒)以内に、過去の平均値に対して所定割合(例えば20%)以上大きくなった場合。
【0057】
また、運転イベントは、信号受信部34が取得するドライバの運転操作の内容を示す情報(以下、「運転操作情報」という。)に基づいて検出される。この運転操作情報には、「操舵角」及び「踏込量」が含まれている。イベント検出部23は、これら運転操作情報のいずれかが所定の条件を満足した場合に、運転イベントが発生した(すなわち、ドライバの運転操作の異常が生じた)と判断する。具体的には、以下の(J)及び(K)のいずれかの事象が発生した場合に、運転イベントが発生したと判断される。
【0058】
(J)「操舵角」が急に変更された場合(いわゆる急ハンドルの場合)。より具体的には、信号受信部34が取得するハンドルに対する運転操作の内容を示す「操舵角」が、所定時間(例えば0.1秒)以内に、所定角度(例えば30度)以上変更された場合。
【0059】
(K)「踏込量」が急に変更された場合(いわゆる急ブレーキの場合)。より具体的には、信号受信部34が取得するブレーキペダルに対する運転操作の内容を示す「踏込量」が、所定時間(例えば0.1秒)以内に、所定量(例えば5cm)以上変更された場合。
【0060】
<3.処理の流れ>
次に、イベント検出部23がイベントを検出した場合におけるデータ記録装置1の処理の流れについて説明する。図3は、データ記録装置1の処理の流れを示す図である。
【0061】
データ記録装置1は、起動中は所定の周期(例えば、1/30秒周期)で、各種データを取得する処理(ステップS11)を繰り返すことになる。取得するデータは、車外画像、ドライバ画像、音声データ、生体情報、運転操作情報、時刻情報、及び、経緯度情報などである。前述のように、生体情報には、「目の開閉度」、「顔の向き」、「声の音量」、「発声した単語」、「発汗量」、「着座位置」、「呼吸数」、「脈拍数」及び「脳波」が含まれる。また、運転操作情報には、「操舵角」及び「踏込量」が含まれる。
【0062】
より具体的には、車外カメラ41が車外画像、車内カメラ42がドライバ画像、マイク43が音声データをそれぞれ取得する。そして、取得されたドライバ画像に基づいて画像処理部21が「目の開閉度」及び「顔の向き」を取得し、取得された音声データに基づいて音声処理部22が「声の音量」及び「発声した単語」を取得する。
【0063】
また、発汗センサ44が「発汗量」、着座センサ45が「着座位置」、呼吸センサ46が「呼吸数」、脈拍センサ47が「脈拍数」、脳波センサ48が「脳波」をそれぞれ取得する。また、信号受信部34が、ハンドル制御装置71から「操舵角」、ブレーキ制御装置72から「踏込量」をそれぞれ取得する。さらに、計時回路32がその時点の時刻情報を取得し、GPS受信部33がその時点の車両の位置を示す経緯度情報を取得する。
【0064】
このようにして取得された各種のデータは、相互に関連付けられてRAM12のリングバッファに記憶される。そして、このようなステップS11の処理が所定の周期で繰り返されることにより、RAM12においては、過去一定時間分(例えば20秒分)のデータが記憶されることになる。
【0065】
また、このようにデータが継続的に取得される一方で、取得されたデータに基づいて生体イベント及び運転イベントのいずれかが発生したか否かが、イベント検出部23によって判定される(ステップS12,13)。イベント検出部23が、イベントを検出する手法は前述のとおりである。このようなイベントの検出は、データの取得周期と同一の周期(例えば、1/30秒周期)でなされる。
【0066】
生体イベントあるいは運転イベントが発生した場合は(ステップS12またはステップS13にてYes)、そのイベントの発生時点から所定時間(例えば、8秒間)が経過するまで、各種データを取得する処理が継続される(ステップS14)。このデータを取得する処理は、ステップS11と同様にしてなされる。
【0067】
そして、イベントの発生時点から所定時間(例えば、8秒間)が経過すると(ステップS15にてYes)、イベントの発生時点の前及び後を含む一定期間(例えば20秒間)に取得されたデータが、RAM12のリングバッファから記録制御部24により読み出される。そして、読み出されたデータが、記録制御部24によりメモリカード9に記録されることになる(ステップS16)。
【0068】
これにより、例えば、図4に示すように、イベント発生前(時点t1〜時点t2)の12秒間と、イベント発生後(時点t2〜時点t3)の8秒間とを合わせた合計20秒間に取得されたデータがメモリカード9に記録されることになる。メモリカード9に記録されるデータには、イベントの発生時点t2において取得されたデータももちろん含まれる。
【0069】
このようにしてメモリカード9に記録されるデータは、車外画像、ドライバ画像、音声データ、生体情報、運転操作情報、時刻情報、及び、経緯度情報などである。したがって、メモリカード9に記録される車外画像や経緯度情報などの位置情報に基づいて、イベントが発生した位置(すなわち、ニアミス事例が発生した位置)を事後的に把握することができる。その結果、実際には事故が発生していなくとも、事故に繋がる可能性のある位置を事後的に特定することができることになる。
【0070】
このようにして特定した位置は、インターネット上の地図や、車載装置(カーナビゲーション装置等)や携帯端末で表示する地図などに表示することによって、他のドライバにも提供することができる。これにより、当該位置の近傍を走行するドライバは、事故を意識して慎重な運転をすることができるため、事故の発生を有効に防止することができる。
【0071】
また、メモリカード9には、イベントの発生時点及びイベントの発生時点の前後において取得された生体情報が記録される。このため、この生体情報を参照することで、ニアミス事例が発生した時点においてドライバの心理状態がどのような心理状態であったか、あるいは、ニアミス事例の発生の前後においてドライバの心理状態がどのように変化したかも事後的に詳細に検証することができる。また、車外画像と生体情報とを合わせて参照することで、ドライバの体調不良などの他の要因によってイベントが誤検出されていないかなども検証することができる。
【0072】
以上のように、本実施の形態のデータ記録装置1においては、各種の情報取得装置42〜48を用いて車両のドライバの生体情報を取得し、その生体情報に基づいてドライバの緊張感が高まる心理状態の変化を生体イベントとしてイベント検出部23が検出する。一方で、車両の現時点の位置を特定可能な位置情報として車外画像及び経緯度情報も取得される。そして、生体イベントが発生した場合は、記録制御部24が、イベントの発生時点において取得された位置情報をメモリカード9に記録する。したがって、運転中のドライバの緊張感が高まった位置を事後的に把握することができ、事故に繋がる可能性のある位置を特定することができる。
【0073】
また、データ記録装置1では、信号受信部34がドライバの運転操作の内容を示す運転操作情報を取得し、その運転操作情報に基づいて運転操作の異常を運転イベントとしてイベント検出部23が検出する。このため、事故に繋がる可能性のある位置をより多く特定することができる。
【0074】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態で説明した形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0075】
上記実施の形態において説明した生体情報に含まれるデータは一例である。このため、ドライバの「視線の向き」、「血圧」及び「心拍数」など、上記実施の形態で説明したデータ以外のデータが生体情報に含まれていてもよい。また逆に、上記実施の形態で説明したデータの一部は生体情報に含まれていなくてもよい。「視線の向き」は、例えば、画像処理部21が有する顔認識機能によって、ドライバ画像に基づいて取得することができる。
【0076】
また、上記実施の形態では、イベントの発生時点の前及び後を含む一定期間において取得されたデータを記録すると説明したが、イベントの発生時点において取得されたデータのみを記録するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、車両の現時点の位置を特定可能な位置情報として、車外画像及び経緯度情報の2つが記録されていたが、これらのうちの一方のみを記録するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、(A)〜(I)のいずれかの一つの事象が発生した場合に生体イベントが発生したと判断するようにしていたが、(A)〜(I)のうちの所定数の事象が同時期に発生した場合に生体イベントが発生したと判断するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、生体イベントと運転イベントとのいずれか一方が発生すればデータを記録するようにしていたが、生体イベントと運転イベントとの双方が同時期に発生したときのみデータを記録するようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 データ記録装置
9 メモリカード
21 画像処理部
22 音声処理部
23 イベント検出部
24 記録制御部
33 GPS受信部
34 信号受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるデータ記録装置であって、
前記車両のドライバの生体情報を取得する情報取得手段と、
前記生体情報に基づいて前記ドライバの緊張感が高まる心理状態の変化をイベントとして検出するイベント検出手段と、
前記車両の現時点の位置を特定可能な位置情報を取得する位置取得手段と、
前記イベントの発生時点において取得された前記位置情報を記録する記録手段と、
を備えることを特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ記録装置において、
前記記録手段は、前記イベントの発生時点において取得された前記生体情報をさらに記録することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデータ記録装置において、
前記記録手段は、前記イベントの発生時点の前、及び、前記イベントの発生時点の後を含む期間において取得された前記生体情報をさらに記録することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のデータ記録装置において、
前記ドライバの前記車両の運転操作の内容を取得する操作取得手段、
をさらに備え、
前記イベント検出手段は、前記運転操作の異常を前記イベントとしてさらに検出することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項5】
車両においてデータを記録するデータ記録方法であって、
前記車両のドライバの生体情報を取得する工程と、
前記生体情報に基づいて前記ドライバの緊張感が高まる心理状態の変化をイベントとして検出する工程と、
前記車両の現時点の位置を特定可能な位置情報を取得する工程と、
前記イベントの発生時点において取得された前記位置情報を記録する工程と、
を備えることを特徴とするデータ記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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