説明

データ転送を行う回路及び方法並びにクロックパルスを利用する回路及び方法

【課題】クロックパルスの伝送距離を低減することのできる技術を提供する。
【解決手段】アナログクロック生成回路120は、周期的なアナログ波形形状を有するアナログクロック信号を生成する。クロックパルス生成回路150は、アナログクロック信号に応じて、アナログクロック信号の周期の1/Nの周期を有するクロックパルス信号を生成する。クロック同期回路130,140は、クロックパルス生成回路150で生成されたクロックパルス信号に同期して動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ転送を行う回路及びその方法、及び、クロックパルスを利用する回路及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ転送は、デジタル信号を用いて実行されるのが普通である。但し、近年では、多値アナログ信号を用いてデータ転送を行おうとする試みもなされている(下記特許文献1〜4)。また、コンピュータシステムにおける消費電力を削減するために、システム内の各回路に供給する電源電圧を可変とする技術が利用されている(下記特許文献5)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−193605号公報
【特許文献2】特開2000−47768号公報
【特許文献3】特開2001−285388号公報
【特許文献4】特開2002−152029号公報
【特許文献5】特開平8−44465号公報
【0004】
しかしながら、可変電源電圧を用いた装置では、電源電圧が変化するため、多値アナログ信号を多値デジタル信号に一義的に変換することが困難であるという問題があった。
【0005】
ところで、よく知られているように、電子信号や光信号を用いるほとんどの装置は、クロックパルスに同期して個々の回路が動作するものである(例えば特許文献6)。
【0006】
【特許文献6】特開2006−259753号公報
【0007】
しかしながら、高周波数のクロックパルスを装置内の多数の回路に伝送すると、高調波ノイズが発生し易く、また、パルス波形が劣化し易いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、可変電源電圧を用いた回路において、多値アナログ信号を多値デジタル信号に適切に変換することを可能とする技術を提供することを第1の目的とする。
【0009】
本発明は、クロックパルスの伝送距離を低減することのできる技術を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
本発明の一局面による回路は、
データ転送を行う回路であって、
可変電源電圧を生成する可変電源電圧生成回路と、
前記可変電源電圧の下で動作し、多値アナログ信号を生成して他の回路に送信する送信回路と、
前記可変電源電圧の下で動作し、前記多値アナログ信号を受信しAD変換して多値デジタル信号を生成する受信回路と、
前記可変電源電圧、又は、前記可変電源電圧に比例する電圧値を有する信号から、前記AD変換に使用される閾値電圧を生成して前記受信回路に供給する閾値電圧生成回路と、
を備える。
【0012】
この回路によれば、可変電源電圧、又は、可変電源電圧に比例する電圧値を有する信号からAD変換に使用される閾値電圧を生成するので、受信回路において、多値アナログ信号を多値デジタル信号に適切に変換することが可能である。
【0013】
上記回路は、更に
前記可変電源電圧が低下するほど周期が長くなる正弦波クロック信号を生成して前記送信回路及び前記受信回路に送信する正弦波クロック生成回路を備え、
前記送信回路及び前記受信回路は、前記正弦波クロック信号を受信し、前記正弦波クロック信号の周期の1/N(Nは2以上の値)の周期を有するクロックパルス信号をそれぞれ生成するとともに、前記クロックパルス信号に応じて動作を実行するものとしてもよい。
【0014】
この構成によれば、可変電源電圧に応じて正弦波クロック信号及びクロックパルス信号の周期も変わるので、可変電源電圧とこれらのクロック信号の両方の作用によって消費電力を低減することができる。
【0015】
なお、前記正弦波クロック信号は、前記可変電源電圧に比例するピーク電圧を有し、
前記閾値電圧生成回路は、前記正弦波クロック信号のピーク電圧に基づいて前記閾値電圧を生成するものとしてもよい。
【0016】
この構成によれば、正弦波クロック信号からAD変換に用いる適切な閾値電圧を生成することが可能である。
【0017】
本発明の他の局面による回路は、
クロックパルスを利用する回路であって、
周期的なアナログ波形形状を有するアナログクロック信号を生成するアナログクロック生成回路と、
前記アナログクロック信号に応じて、前記アナログクロック信号の周期の1/N(Nは2以上の値)の周期を有するクロックパルス信号を生成するクロックパルス生成回路と、
前記クロックパルス信号に同期して動作するクロック同期回路と、
を備える。
【0018】
この回路によれば、クロック信号がアナログクロック信号として伝送され、このアナログクロック信号からクロックパルス信号が生成されてクロック同期回路で利用されるので、クロックパルスの伝送距離を低減することが可能である。
【0019】
前記アナログクロック生成回路は、前記アナログクロック信号の周期を変更可能であり、
前記クロックパルス信号の周期は、前記アナログクロック信号の周期の変更に応じて変更されるものとしてもよい。
【0020】
この構成によれば、消費電力の低減等の目的に合わせて、アナログクロック信号の周期を変更することによって、クロック同期回路で利用されるクロックパルス信号の周期を変更することが可能である。
【0021】
また、上記回路は、
第1と第2のクロック同期回路を含む複数の前記クロック同期回路を備えており、
前記クロックパルス生成回路は、各クロック同期回路毎に設けられているものとしてもよい。
【0022】
この構成によれば、クロックパルス生成回路が各クロック同期回路毎に設けられているので、クロックパルス信号の伝送距離をさらに短縮することが可能である。
【0023】
なお、前記Nの値は、各クロックパルス生成回路毎に独立に設定可能であるものとしてもよい。
【0024】
この構成では、個々のクロック同期回路に適した周期を有するクロックパルス信号を生成することが可能である。
【0025】
前記第1のクロック同期回路は、前記第1のクロック同期回路のために設けられた第1のクロックパルス生成回路で生成された第1のクロックパルス信号に同期して動作し、前記第2のクロック同期回路に転送すべきデジタル値を表す多値アナログ信号を生成する多値アナログ信号生成回路を備え、
前記第2のクロック同期回路は、前記第2のクロック同期回路のために設けられた第2のクロックパルス生成回路で生成された第2のクロックパルス信号に同期して動作し、前記多値アナログ信号を多値デジタル信号に変換する多値デジタル信号生成回路を備えるようにしてもよい。
【0026】
この構成によれば、第1と第2のクロック同期回路の間のデータ転送を多値アナログ信号を用いて行えるので、データ転送用の信号線の数を削減することができ、また、高調波ノイズを更に低減することができる。
【0027】
前記アナログクロック信号は正弦波波形を有するものとしてもよい。
【0028】
この構成では、高調波ノイズの低減と、パルス波形の劣化抑制との両方を最も効率良く達成することが可能である。
【0029】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、方法、回路、回路集合体、装置、それらの方法、回路、回路集合体または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.装置の構成と動作
B.特定位相信号生成部の内部構成と動作
C.変形例
【0031】
A.装置の構成と動作:
図1は、本発明の一実施例としてのコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。このコンピュータシステムは、可変電圧/可変クロック生成回路110と、正弦波クロック生成回路120と、CPU130と、メモリ回路140とを備えている。
【0032】
可変電圧/可変クロック生成回路110は、コンピュータシステム内の複数の回路において使用される可変電源電圧Vvarを生成するとともに、可変電源電圧Vvarのレベルに関連付けられた周波数を有する可変クロック信号VCLKを生成する。可変電源電圧Vvarは、他の回路の電源電圧端子Vddinに供給されている。正弦波クロック生成回路120は、可変クロック信号VCLKに応じて、可変クロック信号VCLKの周期に関連付けられた周期を有する正弦波クロック信号Swaveを生成する。
【0033】
CPU130とメモリ回路140内には、局所クロック生成回路150と多値信号処理回路160とがそれぞれ設けられている。局所クロック生成回路150は、正弦波クロック信号Swaveに応じて、正弦波クロック信号Swaveの周期の1/N(Nは2以上の値)の周期を有する局所クロックパルスを生成する。CPU130とメモリ回路140は、それぞれの局所クロック生成回路150で生成された局所クロックパルスに同期して動作する回路ユニットである。CPU130又はメモリ回路140内の多値信号処理回路160は、転送すべきデジタル値を表す多値アナログ信号Smultiを生成し、この多値アナログ信号Smultiを相手側の多値信号処理回路160に転送する。また、多値信号処理回路160は、多値アナログ信号Smultiを受けたときに、これを多値デジタル値に変換する。多値アナログ信号Smultiは、3値以上の多値の信号レベルを有する信号である。
【0034】
なお、CPU130及びメモリ回路140はそれぞれ1チップの半導体回路として構成されていることが好ましい。この場合に、局所クロック生成回路150も同じチップ内に実装されていることが好ましい。
【0035】
図2は、可変電圧/可変クロック生成回路110(図1)の内部構成を示すブロック図である。可変電圧/可変クロック生成回路110は、基準発振器112と、PLL回路114と、可変電圧生成回路116とを備えている。PLL回路114は、位相比較部210と、ループフィルタ(LPF)212と、電圧制御発振器(VCO)214と、分周器216とを備えている。
【0036】
分周器216は、バスを介してCPU130に接続されており、CPU130によって設定される分周値Maを記憶している。水晶振動子などの発振子を含む基準発振器112は、一定の周波数の基準クロック信号CLK0を生成する。
【0037】
基準クロック信号CLK0は、位相比較部210に基準信号として入力される。一方、分周器216によって生成される分周信号DVCLKは、位相比較部210に比較信号として入力される。位相比較部210は、これら2つの信号CLK0,DVCLKの位相差を示す誤差信号CPSを生成する。この誤差信号CPSは、チャ−ジポンプ回路を内蔵するループフィルタ212に送られる。ループフィルタ212は、誤差信号CPSのパルスレベルとパルス数とに応じた電圧レベルを有する電圧制御信号LPSを生成して出力する。
【0038】
電圧制御信号LPSは、電圧制御発振器(VCO)214と可変電圧生成回路116とに供給される。電圧制御発振器214は、電圧制御信号LPSの電圧レベルに応じた周波数を有する可変クロック信号VCLKを出力する。この可変クロック信号VCLKは、分周器216で1/Maに分周されて、分周信号DVCLKが生成される。この分周信号DVCLKは、前述したように、位相比較部210に送られて基準クロック信号CLK0と位相比較される。この結果、2つの信号CLK0,DVCLKの位相差が0になるように、可変クロック信号VCLKの周波数が収束する。収束後の可変クロック信号VCLKの周波数は、基準クロック信号CLK0の周波数に分周値Maを乗じた値となる。CPU130が、分周器216内の分周値Maの値を書き換えると、可変クロック信号VCLKの周波数を所望の値に設定することが可能である。例えば、消費電力がより低い動作モードに移行する場合には、分周値Maがより小さな値に設定される。
【0039】
可変電圧生成回路116は、ループフィルタ212から与えられた電圧制御信号LPSの電圧レベルに応じて出力電圧Vvarのレベルを制御している。この可変電圧生成回路116は、例えばDC−DCコンバータで実現可能である。こうして生成された可変電源電圧Vvarは、コンピュータシステム内のいくつかの回路120,130,140に供給される。すなわち、これらの回路は、電源電圧端子Vddinに供給された可変電源電圧Vvarの下で動作する。よく知られているように、各回路の消費電力は、電源電圧のレベルに依存する。従って、可変電源電圧Vvarのレベルを低下させることによって、これらの回路の消費電力を低下させることが可能である。
【0040】
なお、本実施例では、可変クロック信号VCLKの周波数も、電圧制御信号LPSの電圧レベルに応じて制御されている。換言すれば、可変クロック信号VCLKの周波数とシステムの可変電源電圧Vvarとは互いに関連付けられており、可変電源電圧Vvarが低くなるほど可変クロック信号VCLKの周波数が低下する。この可変クロック信号VCLKは、正弦波クロック生成回路120(図1)によって正弦波クロック信号Swaveに変換されて個々の局所クロック生成回路150に供給され、その回路150で局所クロックパルスに変換される。従って、局所クロックパルスは、可変クロック信号VCLKの周波数と比例した周波数を有するクロックである。この説明から理解できるように、コンピュータシステム内のいくつかの回路(例えばCPU130やメモリ回路140)は、可変電源電圧Vvarの下で動作し、かつ、可変クロック信号VCLKの周波数と比例した周波数を有する局所クロックパルスに同期して動作する。これらの回路は、可変クロック信号VCLKの周波数に比例した速度で動作するので、その消費電力も可変クロック信号VCLKの周波数の低下に応じて低減される。また、可変クロック信号VCLKの周波数の低下とともに可変電源電圧Vvarも低下するので、各回路130,140の消費電力をさらに低減することが可能である。
【0041】
図3は、正弦波クロック生成回路120(図1)の内部構成を示すブロック図である。正弦波クロック生成回路120は、RAM122と、ラッチ124と、DA変換器126と、電圧増幅器128と、分周器129とを備えている。RAM122には、正弦波波形を表すn個の波形値K1〜Knが格納されている。これらの波形値K1〜KnはCPU130によって必要に応じて書き換え可能である。
【0042】
なお、RAM122の代わりにEEPROMなどの不揮発性メモリを使用するようにしてもよい。不揮発性メモリを使用した場合には、波形形状を出荷時に書き込むことによって、システムに用いられている回路基板の波形特性に合わせた波形を実現できる。また、波形値K1〜Knとして、一周期(2πの期間)のうちの1/4(例えば位相0〜π/2の期間)の値のみを格納し、他の期間(π/2〜π、π〜3π/2、3π/2〜2π)の波形を演算等により決定するようにしてもよい。この場合には、メモリ容量を抑制することが可能である。
【0043】
分周器129は、可変クロック信号VCLKを1/Mbに分周することによって、タイミングクロックTCLKを生成する。分周値Mbは所定の一定値とすることが好ましい。但し、CPU130によって分周値Mbを任意に書き換えられるものとしてもよい。なお、分周器129は省略することも可能である。
【0044】
RAM122は、このタイミングクロックTCLKのパルスに同期して、読出アドレスj(j=1〜n)を1つずつ更新し、この読出アドレスjに応じて波形値Kjを出力する。なお、読出アドレスjが最大値nに達すると、次のパルスで読出アドレスjが1に戻る。従って、RAM122からは、n個の波形値K1〜Knが周期的に順次読み出される。
【0045】
RAM122から読み出された波形値Kjは、ラッチ124で保持され、DA変換器126でアナログ信号に変換される。DA変換器126の出力アナログ信号は、電圧増幅器128で増幅されて正弦波クロック信号Swaveとして出力される。
【0046】
正弦波クロック信号Swaveは、可変クロック信号VCLKに同期して生成されるので、可変クロック信号VCLKの周期に比例した周期を有していることが理解できる。なお、正弦波クロック生成回路120の全体はその電源電圧端子Vddinに供給された可変電源電圧Vvarの下で動作するので、正弦波クロック信号Swaveのピーク電圧Epも可変電源電圧Vvarに比例した値となる。より具体的に言えば、正弦波クロック信号Swaveのピーク電圧Epは、波形値Kjの最大値Kmaxと可変電源電圧Vvarとを乗じた値(Kmax・Vvar)、または、これに比例した値となる。
【0047】
図4は、局所クロック生成回路150(図1)の内部構成を示すブロック図である。局所クロック生成回路150は、特定位相信号生成部152と、PLL回路154と、閾値電圧生成部156とを有している。特定位相信号生成部152は、正弦波クロック信号Swaveの特定の位相を示す周期的な特定位相信号PCLKを生成する。「特定の位相」としては、例えば、正弦波クロック信号Swaveのピーク位置の位相や、中位点(ゼロクロス点)の位置の位相等を利用することができる。
【0048】
PLL回路154は、特定位相信号PCLKの周波数をNa倍することによって、局所クロックパルス信号LCLKを生成する。整数Naの値は所定の一定値とすることが好ましいが、CPU130によって整数Naの値を任意に設定できるものとしてもよい。後述するように、本実施例において、特定位相信号PCLKの周期は正弦波クロック信号Swaveの周期の1/2であり、従って、局所クロックパルス信号LCLKの周期は正弦波クロック信号Swaveの周期の1/(2・Na)倍となる。但し、一般には、局所クロックパルス信号LCLKの周期を、正弦波クロック信号Swaveの周期の1/N倍(Nは2以上の値)に設定することが可能である。Nの値を整数で無い値に設定したい場合には、PLL回路154の前段に分周器を追加するようにしてもよい。この構成では、追加した分周器における分周比と、PLL回路154の逓倍数Naとを調節することによって、Nの値を、小数を含む任意の値に設定することが可能である。なお、このNの値は、複数の局所クロック生成回路150に共通する値に設定されるようにしてもよく、また、個々の局所クロック生成回路150毎に独立に設定されるようにしてもよい。後者の場合には、各局所クロック生成回路150を含む回路ユニット毎に適切な周波数の局所クロックパルス信号LCLKを得ることができる。
【0049】
局所クロックパルス信号LCLKは、局所クロック生成回路150の近傍に設けられた他の回路要素に供給される。例えば、CPU130内の局所クロック生成回路150で生成された局所クロックパルス信号LCLKは、CPU130内の各回路要素に供給される。従って、CPU130内の回路要素は、この局所クロックパルス信号LCLKに同期して動作する。また、メモリ回路140内の局所クロック生成回路150で生成された局所クロックパルス信号LCLKはメモリ回路140内の各回路要素に供給され、この結果、メモリ回路140内の回路要素がこの局所クロックパルス信号LCLKに同期して動作する。本明細書では、局所クロックパルス信号LCLKに同期して動作する回路を、「局所クロック同期回路」、又は、単に「クロック同期回路」とも呼ぶ。
【0050】
閾値電圧生成部156は、正弦波クロック信号Swaveのレベル変化を解析することによって、複数の閾値電圧Vth1〜Vth3を生成する。これらの閾値電圧Vth1〜Vth3は、多値信号処理回路160(図1)に供給されて利用される。なお、このうちの1つの閾値電圧Vth2は、特定位相信号生成部152にも供給されている。
【0051】
図5(A)は、閾値電圧生成部156(図4)の内部構成を示すブロック図である。閾値電圧生成部156は、ピーク電圧フィルタ158と、分電圧回路159とを有している。ピーク電圧フィルタ158は、正弦波クロック信号Swaveのピーク電圧Epを検出する回路である。このピーク電圧Epは、分電圧回路159によって分圧されて、複数の閾値電圧Vth1〜Vth3が生成される。図5(B)は、分電圧回路159の一例を示している。ここでは、4つの抵抗R1によってピーク電圧Epから複数の閾値電圧Vth1〜Vth3が生成されている。なお、閾値電圧の数は、3に限らず任意の数に設定することが可能である。また、異なる数の閾値電圧を生成するための複数の分電圧回路を設けておき、これらの複数の分電圧回路の1つを選択して、選択された分電圧回路から出力される閾値電圧を利用するように回路を構成することも可能である。
【0052】
図6は、特定位相信号生成部152(図4)の動作例を示すタイミングチャートである。図6(a)は正弦波クロック信号Swaveを示している。図6(b)は、正弦波クロック信号Swaveと、閾値電圧Ep/2とを比較した結果として得られる比較信号S110を示している。この比較信号S110は、正弦波クロック信号Swaveの中位点(通常の交流正弦波信号のゼロクロス点に相当する点)において立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジが発生するパルス信号となる。図6(c)は、この比較信号S110から得られる上ピーク信号S111Uを示している。上ピーク信号S111Uは、正弦波クロック信号Swaveの上ピークの位置を示すパルス信号である。図6(d)は、比較信号S110の反転信号/S110を示し、図6(e)は、この反転信号/S110から得られる下ピーク信号S111Dを示している。下ピーク信号S111Dは、正弦波クロック信号Swaveの下ピークの位置を示すパルス信号である。図6(f)は、上ピーク信号S111Uと下ピーク信号S111Dとの論理和を取ることによって得られる特定位相信号PCLKである。この特定位相信号PCLKは、正弦波クロック信号Swaveの上ピークと下ピークの両方の位置を示すパルス信号である。換言すれば、この特定位相信号PCLKは、正弦波クロック信号Swaveの位相が(m+1/2)πとなるタイミング(ここでmは任意の整数)を示す信号である。
【0053】
図7は、特定位相信号生成部152の他の動作例を示すタイミングチャートである。この例では、比較信号S110の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに応じて特定位相信号PCLKのパルスを発生させている。この特定位相信号PCLKは、正弦波クロック信号Swaveの位相がmπとなるタイミング(ここでmは任意の整数)を示す信号であることが理解できる。図6(f)と図7(c)に示した2種類の特定位相信号PCLKは、いずれも正弦波クロック信号Swaveにおける特定の位相差(ここではπ)毎にパルスが発生する信号である。従って、これらのいずれかの特定位相信号PCLKの周波数を図4に示したPLL回路154でNa倍することによって、同じ局所クロックパルス信号LCLKが得られる。この局所クロックパルス信号LCLKは、複数の閾値電圧Vth1〜Vth3とともに多値信号処理回路160(図1)に供給される。
【0054】
図8は、多値信号処理回路160(図1)の内部構成を示すブロックである。多値信号処理回路160は、多値アナログ信号生成回路162と、多値デジタル信号生成回路164とを備えている。多値アナログ信号生成回路162は、多値デジタル信号Dmultiを内部回路から受信すると、この多値デジタル信号Dmultiを多値アナログ信号Smultiに変換して外部回路に出力する。ここで、「内部回路」とは、多値信号処理回路160が属する回路ユニット(例えば同じチップ)の中に存在する他の回路を意味する。具体的には、CPU130内に設けられている多値信号処理回路160にとっての「内部回路」は、CPU130内の他の回路を意味している。また、「外部回路」とは、多値信号処理回路160が属する回路ユニットの外部に存在する回路を意味する。具体的には、CPU130内に設けられている多値信号処理回路160にとっての「外部回路」は、CPU130以外の他の回路(例えばメモリ回路140)を意味している。多値デジタル信号生成回路164は、多値アナログ信号Smultiを外部回路から受信すると、この多値アナログ信号Smultiを多値デジタル信号Dmultiに変換して内部回路に送信する。なお、多値アナログ信号Smultiは、3値以上の多値の信号レベルを有する信号である。
【0055】
図9は、多値デジタル信号生成回路164(図8)の動作例を示すタイミングチャートである。多値アナログ信号Smultiは、局所クロックパルス信号LCLKの立ち下がりエッジにおいてAD変換される。このAD変換において、局所クロック生成回路150(図4)から供給された複数の閾値電圧Vth1〜Vth3が利用される。すなわち、多値アナログ信号Smultiのレベルが複数の閾値電圧Vth1〜Vth3と比較されてAD変換され、多値デジタル信号Dmultiが生成される。なお、多値デジタル信号生成回路164としては種々のタイプのAD変換器を利用することが可能である。多値アナログ信号生成回路162は、図9とほぼ逆の動作によって多値アナログ信号Smultiを生成する。
【0056】
なお、多値信号処理回路160内のAD変換やDA変換において、局所クロック生成回路150(図4)で得られた閾値電圧Vth1〜Vth3を利用する理由は、以下の通りである。多値信号処理回路160を含む回路ユニット(CPU130及びメモリ回路140)は可変電源電圧Vvarの下で動作しており、多値信号処理回路160もこの可変電源電圧Vvarの下で動作する。従って、多値アナログ信号生成回路162で生成される多値アナログ信号Smultiの多値レベルは、可変電源電圧Vvarに比例したものとなる。同様に、正弦波クロック生成回路120で生成される正弦波クロック信号Swaveのピーク電圧Epも、可変電源電圧Vvarに比例している(図3参照)。そこで、局所クロック生成回路150(図4)において、正弦波クロック信号Swaveのピーク電圧Epを検出し、このピーク電圧Epを分圧して得られる閾値電圧Vth1〜Vth3を利用すれば、多値アナログ信号Smultiに関するAD変換やDA変換を正しく実行することが可能である。
【0057】
なお、多値信号処理回路160で使用する閾値電圧は、可変電源電圧Vvarから生成するようにしてもよい。換言すれば、多値信号処理回路160で使用する閾値電圧は、可変電源電圧Vvarそのものか、又は、可変電源電圧Vvarに比例して変化する電圧(例えば正弦波クロック信号Swaveのピーク電圧Ep)を利用して生成することができる。
【0058】
なお、可変電源電圧Vvarを用いずに常に一定の電源電圧を用いるシステムにも多値信号処理回路160を利用可能である。この場合には、多値信号処理回路160で用いる1つ又は複数の閾値電圧として固定的な電圧レベルを使用してもよい。
【0059】
以上のように、本実施例では、装置内の複数の回路ユニット(CPU130及びメモリ回路140)にはクロック信号として正弦波クロック信号Swaveが伝送されており、これらの回路ユニットに高周波のクロックパルスを伝送する必要が無い。従って、高周波のクロックパルスを伝送することに起因する高調波ノイズを低減することができ、また、伝送に伴うクロックパルスの波形劣化という問題点も回避することができる。なお、高調波ノイズを低減する意味からは、可変電圧/可変クロック生成回路110と正弦波クロック生成回路120とを同一のチップ内に実装して、可変クロック信号VCLKの伝送距離を短くすることが好ましい。
【0060】
なお、正弦波クロック信号Swaveは、装置内のなるべく多数の回路に伝送することが好ましいが、すべての回路に正弦波クロック信号Swaveを伝送する必要は無く、予め選択された1つ又は複数の回路に正弦波クロック信号Swaveを伝送するようにしてもよい。
【0061】
また、上述したように、本実施例では、可変電源電圧Vvarの電圧レベルに比例して可変クロック信号VCLK及び居所クロック信号LCLKの周波数が変化する。従って、可変電源電圧Vvarの電圧レベルとクロック周波数の両方の作用によって、各回路の消費電力を効率よく低減することが可能である。
【0062】
さらに、本実施例では、CPU130とメモリ回路140とがそれぞれ多値信号処理回路160を有しており、多値アナログ信号Smultiを用いてデータ転送を実行している。従って、デジタル信号を転送する場合に比べて、各信号線上でより多くの情報を高速に転送することが可能である。なお、多値アナログ信号Smultiの転送用の信号線の数は、一度に転送すべき情報量(すなわち転送ビット幅)に応じて任意に設定可能である。
【0063】
B.特定位相信号生成部の内部構成と動作:
図10は、特定位相信号生成部152(図4)の内部構成の一例を示す説明図である。この特定位相信号生成部152は、上部ピーク検出部300と、下部ピーク検出部400と、比較器500と、PLL回路510と、制御部520と、OR回路530とを備えている。比較器500は、正弦波クロック信号Swaveと閾値電圧Ep/2とを比較して比較信号S110(図6(b)参照)を生成する。
【0064】
上部ピーク検出部300は、カウンタ部320と,カウンタ値記憶部330と,演算値記憶部340と,乗算回路350と,演算結果記憶部360と,比較部370とを備えている。下部ピーク検出部は、インバータ(NOT回路)410と、カウンタ部420と、カウンタ値記憶部430と、演算値記憶部440と、乗算回路450と、演算結果記憶部460と、比較部470とを備えている。下部ピーク検出部400は、上部ピーク検出部300に、インバータ410が追加された構成を有していることが理解できる。このインバータ410は、比較信号S110を反転してカウンタ値420に供給するためのものである。上部ピーク検出部300と下部ピーク検出部400の対応する要素は、それぞれ同じ機能を有している。PLL回路510は、ピーク信号生成部200内で使用されるクロック信号CLKを生成するためのクロック信号を生成するクロック信号生成部として機能する。制御部520は、このクロック信号CLKをカウンタ部320,420に供給するとともに、カウンタ値記憶部330,430や演算値記憶部360,460に適切な保持タイミング(ラッチタイミング)を供給する。上部ピーク検出部300は、正弦波クロック信号Swaveの上部ピーク位置を実質的に示す第1の検出信号S111U(「上部ピーク信号」とも呼ぶ)を生成する。下部ピーク検出部400は、正弦波クロック信号Swaveの下部ピーク位置を実質的に示す第2の検出信号S111D(「下部ピーク信号」とも呼ぶ)を生成する。OR回路は、これらの2つの検出信号S111U,S111Dの論理和を取ることによって、最終的な特定位相信号(「ピーク信号」とも呼ぶ)PCLKを生成する。上部ピーク検出部300と下部ピーク検出部400の動作はほぼ同じなので、以下では主に上部ピーク検出部300の動作について説明する。
【0065】
図11は、上部ピーク検出部300の動作を示すタイミングチャートである。上部ピーク検出部300は以下のように動作する。まず、カウンタ部320は、比較信号S110を入力すると共に、制御部520から供給されるクロック信号CLKに基づき、入力された比較信号S110がハイレベルの期間におけるクロック数を順次カウントすると共に、得られたカウンタ値を比較部370に順次出力する。そして、カウンタ部320は、比較信号S110がハイレベルからローレベルになった段階で、そのときのカウンタ値Ui(iは周期の番号)をカウンタ値記憶部330に記憶させる。
【0066】
なお、図11の例では正弦波クロック信号Swaveの周波数が極端に変化しているが、可変電圧/可変クロック生成回路110内の分周値Ma(図2)が変化しなければ、正弦波クロック信号Swaveは一定の周期を有するきれいな正弦波となる。これは図12〜図14でも同様である。
【0067】
演算値記憶部340は、CPU130により設定された演算値Kuを記憶する。乗算回路350は、カウンタ値記憶部330に記憶されたカウンタ値Uiと、演算値記憶部340に記憶された演算値Kuと、を掛合わせ、得られた演算結果を演算結果記憶部360に記憶させる。図10、図11の例では、Ku=0.4である。比較部370は、上部ピーク信号S111Uを生成して出力すると共に、カウンタ部320から順次入力されるカウンタ値と、演算結果記憶部360に記憶されている演算結果(=Ui×Ku)と、を比較し、これらが一致した場合に上部ピーク信号S111Uを所定期間だけハイレベルにする。
【0068】
図12は、下部ピーク検出部400の動作を示すタイミングチャートである。下部ピーク検出部400の動作は、比較信号S110を反転した信号を使用する点以外は上部ピーク検出部300の動作と同じなので、詳しい説明を省略する。
【0069】
図13は、本実施例における正弦波クロック信号Swaveの各周期の前半における特定位相検出の概要を示す説明図である。図13において、上部は正弦波クロック信号Swaveの波形を示し、下部は比較信号S110を示している。また、白抜きの三角の印はピーク位置を示し、黒い三角の印はピーク位置の代わりとして検出する、位相を比較するための基準となる位置(以下、「位相検出点」と呼ぶ。)を示す。
【0070】
図13の1番目の周期N(0〜2π)において、期間a1は、前半の1/2周期(0〜π)を示し、期間b1は、比較信号S110がハイレベルの期間を示す。なお、周期N+1における期間a2,b2、及び周期N+2における期間a3,b3は、前述の期間a1,b2と同様であるので説明を省略する。
【0071】
正弦波クロック信号Swaveは正弦波なので、期間a1の中心位置(π/2)であるピーク位置と、期間b1の中心位置と、は一致する。従って、期間b1を「1」としたときの中心位置から0.1だけずれた位置は、期間a1において、期間a1を「1」としたときの、ピーク位置から所定の割合となる期間d1だけずれた位置に相当する。ここで、期間b1において、中心位置から0.1だけずれた位置は、期間b1の開始位置から中心位置までの期間を100%とした場合の、中心位置から20%手前に相当し、比較的中心位置に近い位置となる。そして、この位置は、期間a1においても、ピーク位置に比較的近い位置となるために、前述の期間d1は、0.1に近い値となる。
【0072】
同様に、次の周期N+1についても、期間b2において、期間b2を「1」としたときの、中心位置から0.1だけずれた位置は、期間a2において、期間a2を「1」とした場合の、ピーク位置から期間d2だけずれた位置に相当し、この期間d2も0.1に近い値となる。また、周期N+2についても、同様に、図13に示す期間d3は0.1に近い値となる。
【0073】
このように、比較信号S110がハイレベルの期間について、中心位置から0.1だけずれた位置、すなわち、中心位置までの期間の20%手前となる位置を位相検出点とすると、各周期において、位相検出点は上部ピーク位置(位相π/2)から0.1だけずれた位置となり、上部ピーク位置に対する相対的な位置は一定となる。そこで、例えば、比較信号S110のハイレベルの期間の中心位置から0.1だけずれた位置を位相検出点として採用することができる。但し、比較信号S110がハイレベルの期間の中心位置を位相検出点としてもよい。
【0074】
図14は、上部ピーク信号S111Uの生成動作と、位相検出点の定め方と、を模式的に示す説明図である。図14において、上部は正弦波クロック信号Swaveの波形を示し、下部は比較信号S110,図10に示したPLL回路510が出力するクロック信号,カウンタ値記憶部330に記憶されるカウンタ値Ui,上部ピーク信号S111U,位相検出点及びピーク位置を示す。
【0075】
ここで周期N+1が開始する時点を考える。このとき、1つ前の周期Nにおいて、カウンタ部320(図10)は、図14に示す期間b1におけるクロック数をカウントし、得られたカウンタ値U1をカウンタ値記憶部330に記憶させると共に、乗算回路350は、このカウンタ値「U1」と、演算値記憶部340に記憶されている演算値「0.4」と、を掛け合わせて得られた「U1*0.4」を演算結果記憶部360に記憶させている。
【0076】
周期N+1が始まり正弦波クロック信号Swaveがしきい値Ep/2に達すると、比較信号S110はハイレベルとなり、カウンタ部320はクロック数のカウントを開始する。そして、比較部370は、カウンタ部320がカウントするカウンタ値と、演算結果記憶部360に記憶されている「U1*0.4」と、を順次比較していき、カウンタ値が「U1*0.4」となった段階で上部ピーク信号S111Uを所定期間だけハイレベルにする。そして、比較信号S110がハイレベルからローレベルになり、期間b2が終了した段階で、カウンタ部320は、そのときのカウンタ値(U2)をカウンタ値「U1」に上書きしてカウンタ値記憶部330に記憶させる。そして、乗算回路350は、このカウンタ値「U2」と、演算値記憶部340に記憶されている演算値「0.4」と、を掛け合わせ、得られた「U2*0.4」を、既に記憶されている「U1*0.4」に上書きして演算結果記憶部360に記憶させる。
【0077】
図14に示すように、隣り合う周期において、比較信号S110のハイレベルの期間の変化は小さく、特に、正弦波クロック信号Swaveの周波数が一定に保たれる状態においては、正弦波クロック信号Swaveの振幅も一定となるので、ハイレベルの期間も同じとなる。したがって、図14に示す期間d1〜d3は、1/2周期(0〜π)を「1」とした場合に、いずれもほぼ「0.1」となり、各位相検出点の上部ピーク位置に対する相対的な位置はほぼ一定となる。なお、上部ピーク信号S111Uのパルスを上部ピークそのものを示すタイミングで発生することも可能である。この場合には、演算値記憶部340に記憶されている演算値を「0.5」とすれば良い。下部ピーク位置に関しても同様である。
【0078】
図10に示したOR回路530は、こうして得られた上部ピーク信号S111Uと下部ピーク信号S111Dの論理和を取ることによって、特定位相信号PCLKを生成する。このように、特定位相信号生成部152は、ピーク位置に対する相対的な位置が一定である特定位相信号PCLKを生成することが可能である。
【0079】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0080】
C1.変形例1:
上記実施例では、下記の複数の特徴が互いに関連するものとしていたが、これらの特徴の一部のみを有する装置を任意に構成することが可能である。
(1)可変電源電圧Vvarの採用。
(2)可変クロック信号VCLKの採用。
(3)正弦波クロック信号Swaveの伝送と、正弦波クロック信号Swaveからの局所クロックパルス信号LCLKの生成。
(4)多値信号処理回路160の利用。
【0081】
具体的には、例えば、可変電源電圧Vvarのレベルと正弦波クロック信号Swaveの周期とが比例するものとしていたが、これらを別個に設定してもよい。具体的には、正弦波クロック信号Swaveの周期が、可変電源電圧Vvarのレベルに依らずに一定に維持されるようにしてもよい。この場合にも、正弦波クロック信号Swaveのピーク電圧Epは可変電源電圧Vvarのレベルに比例することが好ましい。また、可変電源電圧Vvarの代わりに常に一定の電源電圧を用いる装置において、正弦波クロック信号Swaveを利用することも可能である。
【0082】
また、上記実施例では、多値信号処理回路160が、正弦波クロック信号Swaveから生成されたクロック信号に同期して処理を実行するものとしていたが、正弦波クロック信号Swaveを利用しない装置内において多値信号処理回路160を利用することも可能である。
【0083】
C2.変形例2:
上記実施例では、正弦波クロック信号の周期(周波数)が可変であるものとしていたが、正弦波クロック信号の周期(周波数)が一定であるものとしてもよい。また、正弦波クロックの代わりに、正弦波以外の周期的なアナログ波形形状を有するアナログクロック信号を利用することも可能である。ここで、「アナログ波形形状」とは、矩形波でない曲線的な波形形状を意味する。なお、高調波ノイズを防止する観点からは、正弦波クロック信号を使用することが好ましい。
【0084】
C3.変形例3:
図1及び図8の例では、2つの回路ユニット(CPU130とメモリ回路140)内に設けられた多値信号処理回路160が、それぞれ多値アナログ信号生成回路162と多値デジタル信号生成回路164を備えており、2つの回路130,140のそれぞれが送信回路としても受信回路としても機能するものとしていた。但し、一般には、多値アナログ信号を他の回路に送信する送信回路内に多値アナログ信号生成回路162が設けられており、多値アナログ信号を受信して多値デジタル信号を生成する受信回路内に多値デジタル信号生成回路164が設けらていればよい。
【0085】
C4.変形例4:
図1〜図5及び図8に示す各回路の構成は単なる例示であり、各回路の内部構成や接続関係、設置位置等は任意に変更可能である。例えば、可変電圧/可変クロック生成回路110を可変電圧生成回路と可変クロック生成回路の2つに分離して実装してもよい。また、可変電圧/可変クロック生成回路110と正弦波クロック生成回路120を1つの回路(チップ)にまとめて実装してもよい。さらに、個々の多値信号処理回路160毎に局所クロック生成回路150を設ける代わりに、複数の多値信号処理回路160に共用される1つの局所クロック生成回路150を設けても良い。
【0086】
C5.変形例5:
上記実施例では、各種の信号が電気信号であるものとしていたが、光信号などの他の種類の信号を用いた装置にも本発明を適用可能である。
【0087】
C6.変形例6:
本発明による回路や装置は、携帯電話、携帯用パソコン、PDA等の携帯機器にも適用可能である。本発明を携帯機器に適用した場合には、上述した種々の効果(低消費電力、高周波ノイズ低減)が特に顕著である。同様に、本発明による回路や装置は、車両等の移動体にも適用可能であり、携帯機器に適用した場合と同様の効果を有する。
【0088】
図15は、本発明の実施例による回路を利用した携帯電話を示す説明図である。図15(A)は携帯電話700の外観を示しており、図15(B)は、内部構成の例を示している。携帯電話700は、携帯電話700の動作を制御する制御回路710と、燃料電池730とを備えている。燃料電池730は、制御回路710に電源を供給する。制御回路710は、MPU712と周辺回路714とを備えている。MPU712は図1のCPU130に相当し、周辺回路714は、図1の回路110,120,140を含んでいる。この制御回路710内において、上記実施例で説明した種々の処理を実現することが可能である。
【0089】
図16は、本発明の実施例による回路を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車800は、前輪にモータ810が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路820と充電池830とが設けられている。モータ810は、充電池830からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモータ810で回生された電力が充電池830に充電される。制御回路820は、モータの駆動と回生とを制御する回路であり、図1の回路110,120,130,140を含んでいる。この制御回路820内においても、上記実施例で説明した種々の処理を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施例としてのコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】可変電圧/可変クロック生成回路の内部構成を示すブロック図である。
【図3】正弦波クロック生成回路の内部構成を示すブロック図である。
【図4】局所クロック生成回路の内部構成を示すブロック図である。
【図5】閾値電圧生成部の内部構成を示すブロック図である。
【図6】特定位相信号生成部の動作例を示すタイミングチャートである。
【図7】特定位相信号生成部の他の動作例を示すタイミングチャートである。
【図8】多値信号処理回路の内部構成を示すブロック図である。
【図9】多値デジタル信号生成回路の動作例を示すタイミングチャートである。
【図10】特定位相信号生成部の内部構成を示す説明図である。
【図11】上ピーク検出部の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】下ビーク検出部の動作を示すタイミングチャートである。
【図13】正弦波クロック信号の各周期の前半における特定位相検出の概要を示す説明図である。
【図14】上部ピーク信号の生成動作と、位相検出点の定め方と、を模式的に示す説明図である。
【図15】本発明の実施例による回路を利用した携帯電話を示す説明図である。
【図16】本発明の実施例による回路を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0091】
110…可変電圧/可変クロック生成回路
112…基準発振器
114…PLL回路
116…可変電圧生成回路
120…正弦波クロック生成回路(アナログクロック生成回路)
122…RAM
124…ラッチ
126…DA変換器
128…電圧増幅器
129…分周器
130…CPU
140…メモリ回路
150…局所クロック生成回路(クロックパルス生成回路)
152…特定位相信号生成部
154…PLL回路
156…閾値電圧生成部
158…ピーク電圧フィルタ
159…分電圧回路
160…多値信号処理回路
162…アナログ信号生成回路
164…デジタル信号生成回路
200…ピーク信号生成部
210…位相比較部
212…ループフィルタ
214…電圧制御発振器
216…分周器
300…上部ピーク検出部
320…カウンタ部
330…カウンタ記憶部
340…U演算値記憶部
350…乗算回路
360…U演算結果記憶部
370…比較部
400…下部ピーク検出部
410…インバータ
420…カウンタ部
430…カウンタ記憶部
440…演算値記憶部
450…乗算回路
460…演算結果記憶部
470…比較部
500…比較器
510…PLL回路
520…制御部
530…OR回路
700…携帯電話
710…制御回路
712…MPU
714…周辺回路
800…電動自転車
810…モータ/発電機
820…制御回路
830…充電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ転送を行う回路であって、
可変電源電圧を生成する可変電源電圧生成回路と、
前記可変電源電圧の下で動作し、多値アナログ信号を生成して他の回路に送信する送信回路と、
前記可変電源電圧の下で動作し、前記多値アナログ信号を受信しAD変換して多値デジタル信号を生成する受信回路と、
前記可変電源電圧、又は、前記可変電源電圧に比例する電圧値を有する信号から、前記AD変換に使用される閾値電圧を生成して前記受信回路に供給する閾値電圧生成回路と、
を備える回路。
【請求項2】
請求項1記載の回路であって、更に
前記可変電源電圧が低下するほど周期が長くなる正弦波クロック信号を生成して前記送信回路及び前記受信回路に送信する正弦波クロック生成回路を備え、
前記送信回路及び前記受信回路は、前記正弦波クロック信号を受信し、前記正弦波クロック信号の周期の1/N(Nは2以上の値)の周期を有するクロックパルス信号をそれぞれ生成するとともに、前記クロックパルス信号に応じて動作を実行する、回路。
【請求項3】
請求項2記載の回路であって、
前記正弦波クロック信号は、前記可変電源電圧に比例するピーク電圧を有し、
前記閾値電圧生成回路は、前記正弦波クロック信号のピーク電圧に基づいて前記閾値電圧を生成する、回路。
【請求項4】
請求項1記載の回路を備える装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置であって、
前記装置は携帯機器である、装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置であって、
前記装置は移動体である、装置。
【請求項7】
データ転送方法であって、
可変電源電圧を生成する工程と、
前記可変電源電圧の下で動作する送信回路を用いて、多値アナログ信号を生成して他の回路に送信する工程と、
前記可変電源電圧の下で動作する受信回路を用いて、前記多値アナログ信号を受信してAD変換することによって多値デジタル信号を生成する工程と、
前記可変電源電圧、又は、前記可変電源電圧に比例する電圧値を有する信号から、前記AD変換に使用される閾値電圧を生成して前記受信回路に供給する工程と、
を備える方法。
【請求項8】
クロックパルスを利用する回路であって、
周期的なアナログ波形形状を有するアナログクロック信号を生成するアナログクロック生成回路と、
前記アナログクロック信号に応じて、前記アナログクロック信号の周期の1/N(Nは2以上の値)の周期を有するクロックパルス信号を生成するクロックパルス生成回路と、
前記クロックパルス信号に同期して動作するクロック同期回路と、
を備える回路。
【請求項9】
請求項8記載の回路であって、
前記アナログクロック生成回路は、前記アナログクロック信号の周期を変更可能であり、
前記クロックパルス信号の周期は、前記アナログクロック信号の周期の変更に応じて変更される、回路。
【請求項10】
請求項8又は9記載の回路であって、
第1と第2のクロック同期回路を含む複数の前記クロック同期回路を備えており、
前記クロックパルス生成回路は、各クロック同期回路毎に設けられている、回路。
【請求項11】
請求項10記載の回路であって、
前記Nの値は、各クロックパルス生成回路毎に独立に設定可能である、回路。
【請求項12】
請求項10記載の回路であって、
前記第1のクロック同期回路は、前記第1のクロック同期回路のために設けられた第1のクロックパルス生成回路で生成された第1のクロックパルス信号に同期して動作し、前記第2のクロック同期回路に転送すべきデジタル値を表す多値アナログ信号を生成する多値アナログ信号生成回路を備え、
前記第2のクロック同期回路は、前記第2のクロック同期回路のために設けられた第2のクロックパルス生成回路で生成された第2のクロックパルス信号に同期して動作し、前記多値アナログ信号を多値デジタル信号に変換する多値デジタル信号生成回路を備える、回路。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれかに記載の回路であって、
前記アナログクロック信号は正弦波波形を有する、回路。
【請求項14】
請求項8記載の回路を備える装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置であって、
前記装置は携帯機器である、装置。
【請求項16】
請求項14記載の装置であって、
前記装置は移動体である、装置。
【請求項17】
クロックパルスを生成する方法であって、
(a)周期的なアナログ波形形状を有するアナログクロック信号を生成する工程と、
(b)前記アナログクロック信号に応じて、前記アナログクロック信号の周期の1/N(Nは2以上の値)の周期を有するクロックパルス信号を生成する工程と、
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−160797(P2008−160797A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243339(P2007−243339)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】