説明

データ送信装置及びデータ受信装置

【課題】盗聴者による多値信号レベルの遷移パターンに基づく解読を防止できる、Y−00プロトコルを用いたデータ送信装置及びデータ受信装置を提供する。
【解決手段】所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生する多値符号発生部と、受信装置との共有情報と多値符号列と情報データとに基づいて変換多値信号を生成し、変換多値信号を所定の変調形式で変調し、変調信号として出力する多値信号変調部とを備え、変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、多値信号変調部は、受信装置との共有情報に従って、変換多値信号の複数の信号点配置を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第三者による傍受(盗聴等)を防ぐ暗号通信を行う装置に関し、より特定的には、正規の送受信者間で、特定の符号化/復号化(変調/復調)方式を設定してデータ通信を行うデータ送信装置及びデータ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定者同士でのみ通信を行うためには、送信側と受信側との間で伝送すべき情報データである平文を数学的に演算(符号化)及び逆演算(復号化)するための元情報(以下、鍵情報という)を共有することによって暗号通信を実現する構成が一般的に採用されている。
【0003】
これに対して、近年、伝送路における物理現象を積極的に利用した暗号方式がいくつか提案されている。その方式の1つとして、伝送路で発生する量子雑音を利用して暗号通信を行うY−00プロトコルと呼ばれる方式がある。
【0004】
図11は、特開2005−57313号公報に示された、Y−00プロトコルを用いた従来の送受信装置の一例について説明するための図である。以下では、特開2005−57313号公報に示されている従来の送受信装置の構成及び動作について説明する。図11に示す通り、従来の送受信装置は、送信部901と、受信部902と、伝送路910とで構成される。送信部901は、第1の多値符号発生部911と、多値処理部912と、変調部913とで構成される。受信部902は、復調部915と、第2の多値符号発生部914と、識別部916とで構成される。なお、盗聴受信部903は、傍受者が用いる装置であり、従来の送受信装置を構成するものではない。
【0005】
まず、送信部901と受信部902とは、予め同じ内容の鍵情報である第1の鍵情報91と第2の鍵情報96とをそれぞれ保持しておく。以下では、まず、送信部901の動作について説明する。第1の多値符号発生部911は、第1の鍵情報91に基づいて、“0”から“M−1”(Mは、2以上の整数)までのM個の値を有する多値の疑似乱数系列である多値符号列92を、擬似乱数発生器を用いて生成する。多値処理部912は、受信部902へ送信する情報データ90及び多値符号列92に基づいて、以下に説明する信号フォーマットを用いて強度変調信号である多値信号93を生成する。
【0006】
図12は、多値処理部912が用いる信号フォーマットを示す図である。図12に示す通り、多値符号列92がM個の場合には、信号強度を2M個の信号強度レベル(以下、単に、レベルという)に分ける。そして、これらのレベルをM個のペア(以下、変調ペアという)にして、各変調ペアの一方のレベルに情報データ90の値“0”を割り当て、他方のレベルに情報データ90の値“1”を割り当てる。ここで、一般に、情報データ90の値が“0”のレベルと、情報データ90の値が“1”のレベルとを、2M個のレベル全体で均等に分布するように割り当てる。図12では、偶数番目の変調ペアの低い方のレベルには“0”を割り当てて高い方のレベルには“1”を割り当てる一方で、奇数番目の変調ペアの低い方のレベルには“1”を割り当てて高い方のレベルには“0”を割り当てることによって、2M個のレベルに、情報データ90の値“0”と“1”とを交互に割り当てている。
【0007】
多値処理部912は、入力した多値符号列92の各値に対応した変調ペアを選択した後に、情報データ90の値に対応する、変調ペアの一方のレベルを選択し、その選択したレベルを有する多値信号93を出力する。変調部913は、多値処理部912が出力した多値信号93を光強度変調信号である変調信号94に変換し、伝送路910を介して受信部902へ伝送する。(なお、特開2005−57313号公報では、第1の多値符号発生部911は「送信用疑似乱数発生部」、多値処理部912は「変調方式指定部」及び「レーザ変調駆動部」、変調部913は「レーザダイオード」、復調部915は「フォトディテクタ」、第2の多値符号発生部914は「受信用疑似乱数発生部」、識別部916は「判定回路」と記載されている。)
【0008】
次に、受信部902の動作について説明する。復調部915は、伝送路910を介して伝送された変調信号94を光信号から電気信号に変換(以下、光電変換という)し、多値信号95として出力する。第2の多値符号発生部914は、第2の鍵情報96に基づいて、多値符号列92と同じ多値の疑似乱数系列である多値符号列97を生成する。識別部916は、第2の多値符号発生部914から入力した多値符号列97の各値によって、多値信号95に用いられている各変調ペアを判断する。そして、識別部916は、判断した変調ペア及び復調部915から入力した多値信号95を用いて、2値識別を行い、情報データ90と等しい情報データ98を得る。
【0009】
図13は、従来の送受信装置の動作について具体的に説明するための図である。以下では、図13を参照して、多値符号列92が4値(M=4)の場合の従来の送受信装置の動作について具体的に説明する。図13の(a)及び(b)に示す通り、情報データ90の値が“0111”、多値符号列92の値が“0321”に変化する場合を一例として説明する。この場合には、送信部901の多値信号93のレベルは、図13の(c)に示すように“1472”と変化をする。
【0010】
具体的には、図13の(c)に示すt1の期間では、多値符号列92の値“0”に対応した第0の変調ペア(レベル1とレベル5とのペア)が選択される。その後に、情報データ90の値“0”に対応する、第0の変調ペアのレベル1が選択され、この選択されたレベル1がt1における多値信号93のレベルとなる。同様に、t2の期間では、多値符号列92の値“3”に対応した第3の変調ペア(レベル4とレベル8とのペア)が選択される。その後に、情報データ90の値“1”に対応する、第3の変調ペアのレベル4が選択され、この選択されたレベル4がt2における多値信号93のレベルとなる。t3及びt4の期間においても同様に多値信号93のレベルが設定される。この様に、多値符号列92の値が偶数であるt1及びt3の期間では、変調ペアの低い方のレベルが情報データの“0”に対応して高い方のレベルが情報データの“1”に対応し、多値符号列92の値が奇数であるt2及びt4の期間では、変調ペアの低い方のレベルが情報データの“1”に対応して高い方のレベルが情報データの“0”に対応している。
【0011】
次に、受信部902の識別部916が入力する多値信号95は、図13の(e)に示すように変化をし、復調部915で光電変換する際に発生するショット雑音等の雑音を含んだ信号である。識別部916は、多値符号列92と等しい多値符号列97(図13の(d)を参照)の各値に対応する各変調ペアを選択し、図13の(e)に示すように、当該各変調ペアの中間のレベルをそれぞれ識別レベルとして設定する。そして、識別部916は、多値信号95が識別レベルよりも高いか低いかを判断する。
【0012】
具体的には、図13の(e)に示すt1の期間では、識別部916は、多値符号列97の値“0”に対応した第0の変調ペア(レベル1とレベル5とのペア)を選択し、第0の変調ペアの中間のレベル3を識別レベルとして設定する。そして、識別部916は、t1において、多値信号95が概ね識別レベルより低いレベルに分布しているので、多値信号95は当該識別レベルよりも低いと判断する。同様に、t2の期間では、識別部916は、多値符号列97の値“3”に対応した第3の変調ペア(レベル4とレベル8とのペア)を選択し、第3の変調ペアの中間のレベル6を識別レベルとして設定する。そして、識別部916は、t2において、多値信号95が概ね識別レベルより低いレベルに分布しているので、多値信号95は当該識別レベルよりも低いと判断する。t3及びt4の期間においても同様に識別が行われ、識別部916の2値識別結果は、“低低高低”となる。
【0013】
次に、多値符号列97の値が偶数の場合(t1及びt3の期間の場合)には、識別部916は、選択した変調ペアの低い方のレベルを“0”と判断し、高い方のレベルを“1”と判断して、判断した値を情報データ98として出力する。一方で、多値符号列97の値が奇数の場合(t2及びt4の期間の場合)には、識別部916は、選択した変調ペアの低い方のレベルを“1”と判断し、高い方のレベルを“0”と判断して、判断した値を情報データ98として出力する。すなわち、多値符号列97の値は、“0321”であり“偶奇偶奇”(但し、偶は偶数を示し、奇は奇数を示す)であるので、識別部916は、情報データ90と等しい情報データ98である“0111”を出力する(図13の(f)を参照)。この様にして、識別部916は、多値符号列97の値が偶数か奇数かに応じて、変調ペアの高い方及び低い方のレベルに割り当てる情報データの値を異ならせている多値信号95から、情報データ98を得ることができる。
【0014】
なお、従来の送受信装置の説明では、上記した多値符号列97の各値が奇数か偶数かに応じて情報データ98の各値を得る具体的な処理方法については明示していないが、一般に、下記の処理方法が用いられる。まず、第2の多値符号発生部914が、多値符号列97“0321”を構成する各値の最下位ビットに相当する2値信号である反転信号99“0101”を生成する。そして、識別部916が、上記した2値識別の結果“低低高低”を現す信号“0010”と、反転信号99“0101”との排他的論理和演算を行い、その演算結果から情報データ98“0111”を得る処理方法である。
【0015】
ここで、以上で説明した通り、多値符号列97の値が偶数か奇数かに応じて、変調ペアの高い方及び低い方のレベルに割り当てる情報データの値が異なる信号フォーマットを使用する場合(図12を参照)には、識別部916は、上記したように、情報データ98を生成するために反転信号99を用いる。しかし、例えば、変調ペアの高い方のレベルに情報データ“1”が常に割当てられ、低い方のレベルに情報データ“0”が常に割当てられる信号フォーマットを使用する場合には、識別部916は、情報データ98を生成するために反転信号99を用いる必要はない。
【0016】
また、既に述べた通り、多値信号95には、復調部915での光電変換によって発生するショット雑音などの雑音が含まれているが、レベルの間隔(以下、ステップ幅という)等を適切に設定することで、上記した2値識別における誤りの発生は無視できる程度に抑えることができる。
【0017】
次に、想定される盗聴(傍受を含む)について説明する。図11に示す通り、盗聴者は、盗聴受信部903を用いて、送信者と受信者が共有する鍵情報を持たない状態で、変調信号94から情報データ90又は第1の鍵情報91の解読を試みる。盗聴受信部903は、復調部921と多値識別部922と解読処理部923とで構成され、伝送路910に接続されている。
【0018】
ここで、盗聴者が正規受信者(受信部902)と同様の2値識別を行う場合には、盗聴者は鍵情報を持たないために、鍵情報が取り得る全ての値に対して識別を試みる必要がある。しかし、この方法は、識別試行回数が鍵情報の長さの増加に伴い指数関数的に増大するために、鍵情報の長さが十分長い場合には現実的ではない。
【0019】
そこで、より効率的な方法として、盗聴者は、復調部921を用いて光電変換して得られる多値信号81を多値識別部922で多値識別し、得られた受信系列82を解読処理部923によって解読処理を行うことで、情報データ90若しくは第1の鍵情報91の解読を試みると考えられる。このような解読方法を用いた場合、仮に、盗聴受信部301が多値信号93を受信系列82として誤り無く受信(識別)することができれば、受信系列82を用いて1回の試行で第1の鍵情報91の解読を行うことが可能となる。
【0020】
ここで、復調部921での光電変換によって発生するショット雑音が変調信号94に重畳されるので、当該ショット雑音は、多値信号81に含まれる。このショット雑音は、量子力学の原理により必ず発生することが知られている。このことから、多値信号93のステップ幅をショット雑音の分布幅よりも十分小さくしておけば、雑音を含む多値信号81は、正しいレベル(多値信号93のレベル)ではない様々なレベルに渡り分布することとなる。例えば、図13の(g)に示す通り、t1において、多値信号81は、レベル0〜2に渡って分布している。従って、盗聴者は、正しいレベルが、識別によって得られた受信系列82のレベルではない可能性(識別誤りの可能性)を考慮した解読処理を行う必要がある。このため、識別誤りが無い場合と比較して解読処理に要する試行回数、すなわち計算量を増大することとなる。この結果として、盗聴に対する安全性は向上する。
【特許文献1】特開2005−57313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上述した従来の送受信装置では、光電変換によって発生するショット雑音の分布幅は小さいために、盗聴者による多値識別誤りのレベルは、多値信号93(正しい信号)のレベルの近傍のみに発生する。例えば、図13の(g)のt2の期間では、多値信号93のレベルは4であるが、盗聴者が誤る可能性のあるレベルは3又は5に限られる。また、多値信号93のレベルは擬似乱数発生器を用いて生成された多値符号列92に一意に対応付けられているので、複数のシンボルに渡るレベルの遷移パターンは、あらゆる遷移パターンであるわけではなく、多値符号列92の生成に用いた擬似乱数発生器の性質によって決まる幾つかの遷移パターンに限定される。
【0022】
これらのことから、盗聴者が、上記したように限定された遷移パターンの内、自らが受信した多値信号81のレベルの近傍に存在する遷移パターンを抽出することによって、効率的に多値信号93を特定できる可能性があるという問題がある。
【0023】
それ故に、本発明の目的は、盗聴者による多値信号レベルの遷移パターンに基づく解読を防止できる、Y−00プロトコルを用いたデータ送信装置及びデータ受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、所定の鍵情報を用いて情報データを多値化し、受信装置との間で秘密通信を行うデータ送信装置に向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明のデータ送信装置は、所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生する多値符号発生部と、受信装置との共有情報と多値符号列と情報データとに基づいて変換多値信号を生成し、変換多値信号を所定の変調形式で変調し、変調信号として出力する多値信号変調部とを備え、変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、多値信号変調部は、受信装置との共有情報に従って、変換多値信号の複数の信号点配置を切替える。
【0025】
また、好ましくは、複数の信号点配置は、多値符号列に対応した複数の信号レベルを有する第1の信号点配置と第2の信号点配置とを少なくとも含み、第1の信号点配置と第2の信号点配置とは、多値符号列に対応した複数の信号レベルの昇降順序を表す極性を互いに反転させた関係であるとよい。
【0026】
また、好ましくは、第1の信号点配置は、第1の信号フォーマットに基づいて形成され、第2の信号点配置は、第2の信号フォーマットに基づいて形成され、第1の信号フォーマット及び第2の信号フォーマットは、多値符号列に、情報データの値と複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットであり、多値符号列及び複数の信号レベルの昇降順序の関係が互いに逆であるとよい。
【0027】
また、第1の信号フォーマット及び第2の信号フォーマットの同一の信号レベルは、それぞれ、互いに異なる情報データの値に割当てられてもよい。
【0028】
また、多値信号変調部は、第1の信号フォーマットに従って、情報データ及び多値符号列に基づいた多値信号を生成する多値処理部と、受信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、多値信号を、切替乱数に応じて第2の信号フォーマットに従った多値信号に切替えて、変換多値信号として出力する信号点配置切替部と、変換多値信号を変調して、変調信号として出力する変調部とを備えてもよい。
【0029】
また、多値信号変調部は、第1の信号フォーマットに従って、情報データ及び多値符号列に基づいて、多値信号を生成する多値処理部と、受信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、電気信号である多値信号を、切替乱数に応じて第2の信号フォーマットに従った多値信号に切替えて、光信号である変調信号に変換する光変調部とを含み、光変調部は、同一の出力レベル領域に対応した少なくとも2つの異なる入力レベル領域を有し、2つの入力レベル領域は、入力の増加に対する出力の増減関係が互いに逆であり、切替乱数に従い、2つの入力レベル領域を切替えて使用してもよい。
【0030】
また、光変調部は、切替乱数を、2つの異なる電圧レベルを有する極性反転信号に変換する極性反転信号発生部と、無変調光を出力する半導体レーザと、無変調光を、多値信号及び極性反転信号によって変調し、変調信号として出力するマッハツェンダ光変調器とを含み、極性反転信号の2つの電圧レベルの差をマッハツェンダ光変調器の半波長電圧に略等しくすることで、多値信号を第2の信号フォーマットに従った多値信号に切替えてもよい。
【0031】
また、多値信号と極性反転信号とは、合波された後に、マッハツェンダ光変調器の同一の変調用電極に入力されてもよい。
【0032】
また、マッハツェンダ光変調器は、内部の干渉計のそれぞれの経路に対応した2つの変調用電極を有し、多値信号は一方の変調用電極に入力され、極性反転信号は他方の変調用電極に入力されてもよい。
【0033】
また、多値信号変調部は、受信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、多値符号列の符号を、切替乱数に応じて変換して、変換多値符号列として出力する符号切替部と、変換多値符号列に、情報データの値と複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットに従って、情報データ及び変換多値符号列に基づいて、変換多値信号を生成する多値処理部と、変換多値信号を所定の変調形式で変調して、変調信号として出力する変調部とを備え、変換が行われる場合の多値符号列の値と変換多値符号列の値との和は、常に多値符号列の最大値と最小値との和に等しくてもよい。
【0034】
また、多値符号列は、2値のパラレル信号であって、符号切替部は、多値符号列のビット数に等しい数の排他的論理和回路と、排他的論理和回路の出力信号を一括してD/A変換し、変換多値符号列として出力するD/A変換部とを有し、排他的論理和回路は、多値符号列の各ビットと切替乱数との排他的論理和演算を行い出力してもよい。
【0035】
また、本発明は、所定の鍵情報を用いて、受信した変調信号から情報データを再生し、送信装置との間で秘密通信を行うデータ受信装置にも向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明のデータ受信装置は、所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生する多値符号発生部と、変調信号を復調して変換多値信号を出力する復調部と、送信装置との共有情報と多値符号列と変換多値信号とに基づいて情報データを再生する信号再生部とを備え、変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、信号再生部は、送信装置との共有情報に従って、変換多値信号の複数の信号点配置を切替える。
【0036】
また、好ましくは、複数の信号点配置は、多値符号列に対応した複数の信号レベルを有する第1の信号点配置と第2の信号点配置とを少なくとも含み、第1の信号点配置と第2の信号点配置とは、多値符号列に対応した複数の信号レベルの昇降順序を表す極性を互いに反転させた関係であるとよい。
【0037】
また、第1の信号点配置は、第1の信号フォーマットに基づいて形成され、第2の信号点配置は、第2の信号フォーマットに基づいて形成され、第1の信号フォーマット及び第2の信号フォーマットは、多値符号列に、情報データの値と複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットであり、多値符号列及び複数の信号レベルの昇降順序の関係が互いに逆であってもよい。
【0038】
また、第1の信号フォーマット及び第2の信号フォーマットの同一の信号レベルは、それぞれ、互いに異なる情報データの値に割当てられてもよい。
【0039】
また、信号再生部は、送信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、変換多値信号を、切替乱数に応じて第1の信号フォーマットに従った信号に切替えて、多値信号として出力する信号点配置切替部と、多値符号列に基づいて多値信号を2値識別して、情報データとして出力する識別部とを備えてもよい。
【0040】
また、信号再生部は、送信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、多値符号列の符号を、切替乱数に応じて変換して、変換多値符号列を出力する符号切替部と、変換多値符号列に、情報データの値と複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットに従って、変換多値符号列に基づいて、変換多値信号を2値識別して、情報データとして出力する識別部とを含み、変換が行われる場合の多値符号列の値と変換多値符号列の値との和は、常に多値符号列の最大値と最小値との和に等しくてもよい。
【0041】
また、多値符号列は、2値のパラレル信号であって、符号切替部は、多値符号列のビット数に等しい数の排他的論理和回路と、排他的論理和回路の出力信号を一括してD/A変換し、変換多値符号列として出力するD/A変換部とを有し、排他的論理和回路は、多値符号列の各ビットと切替乱数との排他的論理和演算を行い出力してもよい。
【0042】
また、本発明は、2値の乱数である切替乱数に基づいて、複数の多値レベルを有する電気信号である多値信号を光信号である変調信号に変換する光変調装置にも向けられている。そして、本発明の光変調装置は、上記目的を達成させるために、同一の出力レベル領域に対応した少なくとも2つの異なる入力レベル領域を有し、2つの入力レベル領域は、入力の増加に対する出力の増減関係が互いに逆であり、切替乱数に従って2つの入力レベル領域を切替えて使用する。
【0043】
また、光変調装置は、切替乱数を、2つの異なる電圧レベルを有する極性反転信号に変換する極性反転信号発生部と、無変調光を出力する半導体レーザと、多値信号及び極性反転信号によって無変調光を変調し、変調信号として出力するマッハツェンダ光変調器とを備え、極性反転信号の2つの電圧レベルの差をマッハツェンダ光変調器の半波長電圧に略等しくすることで、多値信号の信号点配置を切替えてもよい。
【0044】
また、多値信号と極性反転信号とは、合波された後に、マッハツェンダ光変調器の同一の変調用電極に入力されてもよい。
【0045】
また、マッハツェンダ光変調器は、内部の干渉計のそれぞれの経路に対応した2つの変調用電極を含み、多値信号は一方の変調用電極に入力され、極性反転信号は他方の変調用電極に入力されてもよい。
【0046】
また、本発明は、所定の鍵情報を用いて情報データを多値化し、受信装置との間で秘密通信を行うデータ送信方法にも向けられている。そして、本発明のデータ送信方法は、上記目的を達成させるために、所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生するステップと、受信装置との共有情報と多値符号列と情報データとに基づいて変換多値信号を生成し、変換多値信号を所定の変調形式で変調し、変調信号として出力するステップとを備え、変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、変換多値信号の複数の信号点配置は、受信装置との共有情報に従って切替えられる。
【0047】
また、本発明は、所定の鍵情報を用いて、受信した変調信号から情報データを再生し、送信装置との間で秘密通信を行うデータ受信方法にも向けられている。そして、本発明のデータ受信方法は、上記目的を達成させるために、所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生するステップと、変調信号を復調して変換多値信号を出力するステップと、送信装置との共有情報と多値符号列と変換多値信号とに基づいて情報データを再生するステップとを備え、変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、変換多値信号の複数の信号点配置は、送信装置との共有情報に従って切替えられる。
【発明の効果】
【0048】
上記のように、本発明のデータ送信装置及びデータ受信装置(データ通信装置)によれば、複数の信号フォーマットをランダムに用いて多値信号の信号強度レベルを大きくずらすことができので、多値信号レベルの遷移パターンを用いた鍵情報の絞り込みを困難にし、盗聴に対する安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るデータ通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す通り、データ通信装置1は、データ送信装置(以下、送信部という)101と、データ受信装置(以下、受信部という)201とが、伝送路110を介して接続された構成である。送信部101は、第1の多値符号発生部111と、多値処理部113と、第1の切替乱数発生部114と、第1の信号点配置切替部115と、変調部116とで構成される。受信部201は、復調部211と、第2の多値符号発生部212と、第2の切替乱数発生部214と、第2の信号点配置切替部215と、識別部216とで構成される。なお、伝送路110は、LANケーブル及び同軸ケーブル等の金属路線、又は、光ファイバケーブル等の光導波路であってもよく、また、これらの有線ケーブルに限られず、無線信号を伝搬することが可能な自由空間であってもよい。また、盗聴受信部301は、傍受者が用いる装置であり、データ通信装置1を構成するものではない。
【0050】
まず、送信部101と受信部201とは、予め同じ内容の鍵情報である第1の鍵情報11と第2の鍵情報16とをそれぞれ保持し、また、同じ内容の鍵情報である第1の切替鍵情報21と第2の切替鍵情報31とをそれぞれ保持しておく。また、送信部101と受信部201とは、図2及び図5を例に挙げて後に説明する信号フォーマットをそれぞれ保持しておく。以下では、まず、送信部101の動作について説明する。第1の多値符号発生部111は、従来の第1の多値符号発生部911(図11を参照)と同様に、第1の鍵情報11に基づいて、“0”から“M−1”(Mは、2以上の整数)までのM個の値を有する多値の疑似乱数系列である多値符号列12を、疑似乱数発生器を用いて生成する。多値符号列12の信号形態は、多値のシリアル信号であってもよいし、2値のパラレル信号であってもよい。
【0051】
ここで、送信部101及び受信部201が保持して使用する信号フォーマットについて説明する。図2は、送信部101及び受信部201が用いる信号フォーマットの一例を示す図である。図2に示す通り、信号フォーマットAは、従来の送受信装置で説明した信号フォーマット(図12を参照)と同じであり、信号フォーマットBは、信号フォーマットAに対して、多値符号列の値の順序を昇順から降順に反転させたものである。つまり、信号フォーマットAは、レベル及び多値符号列の値の順序がいずれも昇順であり、信号フォーマットBは、レベルの値の順序は昇順であり多値符号列の値の順序は降順である。
なお、信号フォーマットA及び信号フォーマットBは、図示したものには限られず、一方は、レベル及び多値符号列の値の昇順と降順との関係が互いに同じであればよく、他方は、レベル及び多値符号列の値の昇順と降順との関係が互いに逆であればよい。ここで、信号フォーマットAのようにレベル及び多値符号列の値の昇順と降順との関係が互いに同じである信号フォーマットと、信号フォーマットBのようにレベル及び多値符号列の値の昇順と降順との関係が互いに逆である信号フォーマットとは、以下の説明において、信号フォーマットの極性が互いに逆であるという。
【0052】
多値処理部113は、図2の信号フォーマットAを用いて、従来の送受信装置の多値処理部912(図11、図13の(a)、(b)、(c)及びその説明を参照)と同様の処理を行う。つまり、多値処理部113は、入力された多値符号列12の値に対応した変調ペアを選択した後に、入力された情報データ10の値に対応する、変調ペアの一方のレベルを選択し、その選択したレベルを有する多値信号13を出力する。
【0053】
第1の切替乱数発生部114は、第1の切替鍵情報21に基づいて、2値の擬似乱数系列である切替乱数22を生成する。第1の信号点配置切替部115は、入力された切替乱数22の値が“1”の場合は、信号フォーマットAを用いて得られた多値信号13を、信号フォーマットAと極性が逆である信号フォーマットBを用いて得られる多値信号に切替えることによって信号点配置を切替えて、変換多値信号23として出力する。この様に、或る信号フォーマットを用いて得られた多値信号を、当該信号フォーマットと極性が逆である信号フォーマットを用いて得られる多値信号に切替えることを、以下では“極性を反転する”という。この極性の反転は、第1の信号点配置切替部115において、多値信号13の平均レベルを0として、切替乱数22の値が“0”のときは+1を、“1”のときは−1を多値信号13に乗算した後に、適切なバイアスを加算して変換多値信号23として出力することで行う。また、第1の信号点配置切替部115は、入力した切替乱数22の値が“0”の場合は、多値信号13を、極性を反転させないで変換多値信号23として出力する。変調部116は、入力した変換多値信号23を所定の変調形式で変調して、変調信号14として伝送路110に送出する。
【0054】
次に、受信部201の動作について説明する。復調部211は、伝送路110を介して伝送された変調信号14を光電変換して変換多値信号33として出力する。第2の切替乱数発生部214は、第1の切替乱数発生部114と同様に、第2の切替鍵情報31に基づいて、2値の擬似乱数系列である切替乱数32を生成する。第2の信号点配置切替部215は、第1の信号点配置切替部115と同様に、切替乱数32の値が“1”の場合は変換多値信号33の極性を反転させ、切替乱数32の値が“0”の場合は変換多値信号33の極性は反転させずに、多値信号15として出力する。
【0055】
第2の多値符号発生部212は、第2の鍵情報16に基づいて、“0”から“M−1”(Mは、2以上の整数)までのM個の値を有する多値の疑似乱数系列である多値符号列17を、送信部101の第1の多値符号発生部111と同様に生成し、また、多値符号列17の最下位ビットに相当する2値信号である反転信号35を生成する。識別部216は、図2に示す信号フォーマットAを用いて、第2の多値符号発生部212から入力した多値符号列17の各値に対応する変調ペアを判断する。そして、識別部216は、判断した変調ペア(レベルのペア)及び第2の信号点配置切替部215から入力した多値信号15を用いて2値識別を行い、当該2値識別で得られた信号と反転信号35との排他的論理和演算を行い、その演算結果を情報データ10と等しい情報データ18として出力する。
【0056】
なお、送信部101において、多値処理部113、第1の切替乱数発生部114、第1の信号点配置切替部115、及び変調部116をまとめて、情報データ10から得られる多値信号を変調する多値信号変調部112としてもよい。また、受信部201において、第2の切替乱数発生部214、第2の信号点配置切替部215、識別部216、及びデータ反転部217をまとめて、多値信号から情報データ18を得る信号再生部213としてもよい。
【0057】
図3は、データ通信装置1が備える送信部101の動作について具体的に説明するための図である。以下では、変調信号14が光信号である場合を例に、図3を参照して、図13に示す従来の送受信装置の動作説明と同様に、情報データ10の値が“0111”、多値符号列12の値が“0321”に変化する場合を一例に挙げて説明する。ここで、多値処理部113と従来の多値処理部912とは同様の処理を行う。このことから、多値信号13(図3の(c)を参照)と従来の多値信号93(図13の(c)を参照)とは同じであるので、多値信号13についての説明は省略する。
【0058】
まず、切替乱数22の値が“1001”である場合(図3の(d)を参照)には、既に説明した通り、変換多値信号23を生成するために用いられる信号フォーマットは、“BAAB”(図2、及び図3の(e)を参照)となる。このことによって、変換多値信号23は、図3の(f)に示す通り、信号フォーマットBが用いられたt1及びt4の期間では、多値信号13に対して極性が反転して信号点配置が切替わっている。この結果として、変換多値信号23において、t1の期間では信号レベルが1から8に変換され、t4の期間では信号レベルが2から7に変換されている。変換多値信号23は、既に説明した通り、変調部116で電気信号から光信号に変換(以下、電光変換という)されて、変調信号14として送出される。
【0059】
図4は、データ通信装置1が備える受信部201の動作について具体的に説明するための図である。復調部211は、伝送路110を介して伝送された変調信号14を光電変換して、ショット雑音等の雑音を含んだ変調多値信号33(図4の(g)を参照)として出力する。第2の信号点配置切替部215は、切替乱数22と等しい切替乱数32の値“1001”(図4の(h)を参照)に基づいて、入力された変換多値信号33に対して適切に極性の反転を行って、多値信号15(図4の(k)を参照)として出力する。具体的には、第2の信号点配置切替部215は、t1及びt4の期間の変換多値信号33に対しては極性の反転を行い、t2及びt3の期間の変換多値信号33に対しては極性の反転を行わずに多値信号15として出力する。第2の多値符号発生部212は、従来の第2の多値符号発生部914と同様に、第2の鍵情報16に基づいて、多値符号列12と同じ多値の疑似乱数系列である多値符号列17“0321”及び反転信号35“0101”を生成する。識別部216は、従来の識別部916が行う処理(図13の(d)〜(f)及びその説明を参照)と同様に、第2の多値符号発生部212から入力した多値符号列17“0321”を用いて、第2の信号点配置切替部215から入力した多値信号15に対して2値識別を行い(図4の(j)及び(K)を参照)、また、第2の多値符号発生部212から入力した反転信号35“0101”を用いて、当該2値識別によって得られた信号“0010”から情報データ10と等しい情報データ98(図4の(l)を参照)を得ることができる。
【0060】
なお、図11に示す従来の受信部902の説明に記載したのと同様に、例えば、変調ペアの高い方のレベルに情報データ“1”が常に割当てられ、低い方のレベルに情報データ“0”が常に割当てられる信号フォーマットを使用する場合には、識別部216は、情報データ18を生成するために反転信号35を用いる必要はない。
【0061】
以下では、盗聴(傍受を含む)が行われる場合について、図1及び図4の(m)を参照して説明する。従来の送受信装置の盗聴に関する説明で述べた通り、盗聴者は、盗聴受信部301を用いて、鍵情報及び切替鍵情報を持たない状態で、変調信号14から多値信号13を再生することによって、情報データ10の解読を試みると考えられる。なお、盗聴受信部301は、復調部311と多値識別部312と解読処理部313とで構成され、伝送路110に接続されている。
【0062】
この場合、受信した変調信号14を復調部311で光電変換することによって得られる多値信号41の多値信号レベルは、図4の(m)に示すように、量子ゆらぎによる雑音の影響により、正規の信号(変換多値信号23)の近傍のいくつかのレベルに渡り分布する。
【0063】
ここで、盗聴者が、送信部101の第1の多値符号発生部111に用いられている疑似乱数発生器の性質によって決まる多値信号の遷移パターンを限定し、当該限定された遷移パターンの内、多値信号41のレベルの近傍に存在する遷移パターンを抽出することによって、第1の鍵情報11の特定を試みる場合を考える。
【0064】
まず、盗聴者が、信号フォーマットAが多値信号41に用いられていると想定した場合、t1及びt4の期間の多値信号41に用いられている信号フォーマットBは、t2及びt3の期間の多値信号41に用いられている信号フォーマットAに対して、極性が逆の関係にある(図2を参照)。つまり、t1及びt4の期間の多値信号41は、t2及びt3の期間の多値信号41に対して極性が反転している。このことによって、t1及びt4の期間の多値信号41は、正規の信号である多値信号13から大きく外れたレベルをとる。つまり、t1及びt4の期間の多値信号41は、正しい第1の鍵情報11の値に対して取り得ないレベルをとることになる。この結果として、盗聴者は、第1の鍵情報11の絞り込みに失敗するので、情報データ10の解読をすることはできない。
【0065】
次に、盗聴者が、信号フォーマットBが多値信号41に用いられていると想定した場合、同様に、t2及びt3の期間の多値信号41は、t1及びt4の期間の多値信号41に対して極性が反転している。このことによって、t2及びt3の期間の多値信号41は、正規の信号である多値信号13から大きく外れたレベルをとる。つまり、t2及びt3の期間の多値信号41は、正しい第1の鍵情報11の値に対して取り得ないレベルをとることになる。この結果として、盗聴者は、信号フォーマットAが多値信号41に用いられていると想定した場合と同様に第1の鍵情報11の絞り込みに失敗するので、情報データ10の解読をすることはできない。
【0066】
ここで、図5を参照して、第1の実施形態における別の信号フォーマットの一例について説明する。信号フォーマットA1は、図2の信号フォーマットAと同じである。信号フォーマットB1は、図2の信号フォーマットBと同様に信号フォーマットA1に対して信号フォーマットの極性が逆であることに加えて、レベルと情報データとの対応をステップ幅だけずらしている。このことによって、信号フォーマットB1では、同じレベルに対して、信号フォーマットA1とは異なる情報データの値が対応する。そして、信号フォーマットA1及び信号フォーマットB1を用いることによって、前述した第1の鍵情報11の絞り込みを更に困難化する効果に加え、レベルから直接情報データ10の値の特定を試みることも不可能となる。信号フォーマットA1及び信号フォーマットB1を用いる場合の極性の反転は、第1の信号点配置切替部115において、前述した乗算処理に加えて、切替乱数22の値が“1”のときにステップ幅に相当する微小変化をレベルに与えることで実現できる。
【0067】
なお、図2及び図5を用いて説明した信号フォーマットは一例であり、多値信号13に対して極性を反転できる信号フォーマットであればよい。更に、用いられる信号フォーマットは2つに限らず、3つ以上の信号フォーマットを用いて、レベルを切替える構成としてもよい。この場合には、第1の切替乱数発生部114及び第2の切替乱数発生部214は、2値ではなく多値の切替乱数を生成する。また、図3及び図4では多値信号の多値数が8の場合を例に挙げて説明したが、多値数はこれには限らず、4以上の偶数であればいかなる値であってもよい。また、送信部101と受信部201とがそれぞれ保持する鍵情報及び切替鍵情報を、共通化した1つの鍵情報としてもよい。この場合、送信部及び受信部の多値符号発生部及び切替乱数発生部には、それぞれ、当該共通化した鍵情報が入力される。
【0068】
以上のように、第1の実施形態に係るデータ通信装置によれば、複数の信号フォーマットをランダムに用いて、多値信号の信号強度レベルを大きくずらすことによって、多値信号レベルの遷移パターンを用いた鍵情報の絞り込みを困難にし、盗聴に対する安全性を高めることができる。
【0069】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した多値信号変調部112の第1の信号点配置切替部115及び変調部116(図1を参照)を具体的な装置によって構成する一例について説明する。なお、多値信号変調部112を除く他の構成の説明は、第1の実施形態において記載した構成と同様であるで、省略する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る多値信号変調部125の構成の一例を示す図である。図6に示す通り、多値信号変調部125は、多値処理部113と、切替乱数発生部114と、光変調部121とで構成される。光変調部121は、極性反転信号発生部122と、半導体レーザ123と、マッハツェンダ光変調器124と、加算器126とで構成される。
【0070】
以下では、光変調部121を構成する各装置の具体的な動作について図6を参照して説明する。なお、多値処理部113及び第1の切替乱数発生部114についての説明は、第1の実施形態で行ったので、省略する。極性反転信号発生部122は、第1の切替乱数発生部114から入力された切替乱数22の値に対応した2つの所定の電圧レベルを有する極性反転信号24を出力する。半導体レーザ123は、無変調光25を出力する。加算器126は、多値処理部113から入力された多値信号13と、極性反転信号発生部122から入力された極性反転信号24とを加算して加算信号45を出力する。マッハツェンダ光変調器124は、加算器126から入力された加算信号45によって、半導体レーザ123から入力された無変調光25を変調して、変調信号14として出力する。
【0071】
ここで、マッハツェンダ光変調器124は、一般に、図7に示す周期的な入出力特性を備える。具体的には、出力光強度は入力電圧の増加に対して正弦波状に変化し、このことによって、或る領域では入力電圧の増加に対して出力光強度が増加し、また、他の或る領域では入力電圧の増加に対して出力光強度が減少する入出力特性を備える。従って、マッハツェンダ光変調器124に印加するバイアス電圧を切替乱数22に従って適切に切替えることによって、多値信号13に対して適切に極性の反転を行うと同時に、当該極性の反転によって得られる多値信号を電光変換して変調信号14として出力することができる。
【0072】
具体的には、光変調部121は、出力光強度が入力電圧に対して線形的に変化し、入力電圧の増加に対する出力光強度の増減が互いに逆の関係となり、更に、出力光強度が互いに等しい、マッハツェンダ光変調器124の2つの動作領域(図7のA及びBを参照)を選択する。そして、光変調部121は、多値信号13の電圧振幅をこの領域の電圧幅と同じに設定し、また、バイアス電圧に相当する極性反転信号の2つの電圧を、2つの動作領域における入力電圧の下限であるVb 及びVb +Vπ に設定する。ここで、Vπ はマッハツェンダ光変調器124の半波長電圧である。このことによって、光変調部121は、例えば信号フォーマットAを用いた多値信号を電光変換した変調信号と、例えば信号フォーマットBを用いた多値信号を電光変換した変調信号(図2を参照)とで構成される変調信号14を生成することができる。なお、極性反転信号24の2つの電圧レベルの電圧差を、半波長電圧Vπ よりステップ幅に相当する電圧分だけ小さく設定すれば、送信部101及び受信部201には、図5に示した信号フォーマットA1及びB1を用いることもできる。
【0073】
第2の実施形態における信号形態及び盗聴に対する効果は、第1の実施形態において図3及び図4を用いて説明したものと同じであるので、その説明は省略する。
【0074】
なお、マッハツェンダ光変調器には、内部の干渉計の2つの経路に対して独立に変調を加えることができる種類のものがある。このような種類のマッハツェンダ光変調器127を用いた場合には、光変調部121を、図8に示す構成とすることも可能である。すなわち、マッハツェンダ光変調器127は、内部の干渉計の2つの経路に対応した2つの電極を備えている。この電極の一方に多値信号13を入力し、他方に極性反転信号24を入力する。このことによって、多値信号13と極性反転信号24とを加算する加算器126が不要になる。
【0075】
以上の構成では、マッハツェンダ光変調器127の2つの電極において、入力電圧の増加に対する出力光強度(出力信号強度)の増減関係が互いに逆になる。よって、極性反転信号24のレベルVb が図7に示す動作領域Bに、レベルVb +Vπ が図7に示す動作領域Aに対応する。その他の入出力特性の関係は、図7を用いて説明したものと同じである。
【0076】
なお、図7に示した入出力特性では、入力電圧が“0”の時に出力光強度も“0”となる場合を示してあるが、実際に出力光強度が“0”となる入力電圧は使用する光変調器により異なる。よって、固定バイアスレベルVbは、使用する光変調器に応じて適切に設定する必要がある。また、図6及び図8では固定バイアスレベルVbを極性反転信号24に含める場合について説明したが、固定バイアスレベルVbは、多値信号13に加算し、極性反転信号24のレベルは0及びVπ に設定してもよい。また、図6及び図8ではマッハツェンダ光変調器を用いた構成を示したが、入出力特性が以下の条件を満たす素子を用いて光変調部121を構成することも可能である。
1.同一の出力レベルに対応した少なくとも2つの異なる入力レベル領域をもつ。
2.これら2つの入力レベル領域は、入力の増加に対する出力の増減関係が互いに逆である。
【0077】
以上に説明した通り、第2の実施形態に係るデータ送信装置及びデータ受信装置(データ通信装置)によれば、光信号の変調に使用する光変調器を用いることによって、第1の実施形態の第1の信号点配置切替部115及び変調部116をまとめて光変調部121とすることができる。この結果として、特に、外部部品である光変調器を使用して光信号を変調する場合においては、追加する部品点数を最小限に留めた上で、第1の実施形態と同様に、盗聴に対する安全性向上の効果を得ることができる。
【0078】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係るデータ通信装置3の構成の一例を示すブロック図である。ここで、第1の実施形態のデータ通信装置1は、多値処理部113が出力した多値信号13の信号点配置を変換することによって、信号点配置が変換された変換多値信号23を生成する。これに対して、データ通信装置3は、多値符号列12を変換して多値処理部113に入力することによって、信号点配置が変換された変換多値信号23を生成する。図9に示す通り、データ通信装置3は、データ送信装置(以下、送信部という)103と、データ受信装置(以下、受信部という)203とが、伝送路110を介して接続された構成である。送信部103は、第1の多値符号発生部111と、多値処理部113と、第1の切替乱数発生部114と、第1の符号切替部131と、変調部116とで構成される。受信部203は、復調部211と、第2の多値符号発生部212と、第2の切替乱数発生部214と、第2の符号切替部231と、識別部216とで構成される。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した構成要素と同じ構成要素については同じ参照符号を付してその説明は省略する。
【0079】
まず、送信部103の動作について説明する。図9に示す通り、第1の符号切替部131は、第1の多値符号発生部111から多値符号列12が入力され、第1の切替乱数発生部114から入力された切替乱数22の値が“0”の場合は多値符号列12の符号を変換せず、切替乱数22の値が“1”の場合は多値符号列12の符号を以下に説明する通りに変換して(符号化則を切り替えて)、変換多値符号列26を出力する。
【0080】
多値符号列12の多値数がMである(多値符号列の値が0〜M−1までの値をとる)場合の第1の符号切替部131の動作について、具体的に説明する。入力された切替乱数22の値が“1”の場合には、第1の符号切替部131は、多値符号列12の値と変換多値符号列26の値との和がM−1となるように、変換多値符号列26の値を決定する。入力された切替乱数22の値が“0”の場合には、第1の符号切替部131は、多値符号列12の値をそのまま変換多値符号列26の値にする。言い換えれば、切替乱数22の値が“1”の場合には、第1の符号切替部131は、多値符号列12の値と変換多値符号列26の値との和が、常に多値符号列12の最大値と最小値の和に等しくなるように変換多値符号列26を設定する。このことによって、第3の実施形態の多値処理部113は、第1の実施形態の第1の信号点配置切替部115と同様に、切替乱数22に従った信号点配置の切替を施された変換多値信号23を生成することができる。例えば、多値符号列12が4値“0321”であり、切替乱数22が“1001”の場合(図3の(b)及び(d)を参照)には、変換多値符号列26は“3322”となる。そして、多値処理部113は、第1の実施形態で説明した所定の手順に従い、図3に示す信号フォーマットAを用いて情報データ10“0111”と変換多値符号列26“3322”とを合成して、変換多値信号23“8477”(図3の(a)及び(f)を参照)を生成する。
【0081】
次に、受信部203の動作について説明する。図9に示す通り、第2の符号切替部231は、切替乱数32の値に応じて、第1の符号切替部131と同様の手順で、入力された多値符号列17の符号変換を行い、変換多値符号列26と等しい変換多値符号列36を出力する。識別部216は、第1の実施形態で説明した所定の手順に従って、入力した変換多値符号列36に基づいて変換多値信号33の識別(2値判定)を行い、当該識別結果と入力した反転信号35とから情報データ18を得る。
【0082】
なお、図11に示す従来の受信部902の説明に記載したのと同様に、例えば、変調ペアの高い方のレベルに情報データ“1”が常に割当てられ、低い方のレベルに情報データ“0”が常に割当てられる信号フォーマットを使用する場合には、識別部216は、情報データ18を生成するために反転信号35を用いる必要はない。
【0083】
第1の符号切替部131及び第2の符号切替部231の具体的動作(構成)は、多値符号列12(又は多値符号列17)の信号形態によって異なる。多値符号列12が多値のシリアル信号である場合は、第1の符号切替部131は、多値符号列12の平均レベルを0として、切替乱数22の値が“0”のときは+1を、“1”のときは−1を多値符号列12の値に乗算した後に、適切なバイアスを加算して変換多値符号列26として出力する。第2の符号切替部231も、同様の動作を行う。一方、多値符号列12が2値のパラレル信号である場合には、第1の符号切替部131は、図10に示すように構成される。この場合、第1の符号切替部131は、多値符号列12のビット数と同数の排他的論理和回路1321〜132Nと、D/A変換部133によって構成される。排他的論理和回路1321〜132Nは、それぞれ、多値符号列12の各ビットと切替乱数22とを入力され、排他的論理和演算を行った結果を出力する。D/A変換部133は、排他的論理和演算の結果を入力され、当該結果をD/A変換して変換多値符号列を出力する。第2の符号切替部231も、同様の構成をとる。
【0084】
以上に説明した通り、第3の実施形態に係るデータ通信装置によれば、第1の実施形態に係るデータ通信装置とは異なる構成でありながら、第1の実施形態に係るデータ通信装置と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、第三者による傍受を防ぐ暗号通信を行う装置等に利用可能であり、特に、伝送路上の変調信号からの解読を防止したい場合等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施形態に係るデータ通信装置1の構成の一例を示すブロック図
【図2】送信部101及び受信部201が用いる信号フォーマットの一例を示す図
【図3】データ通信装置1が備える送信部101の動作について具体的に説明するための図
【図4】データ通信装置1が備える受信部201の動作について具体的に説明するための図
【図5】送信部101及び受信部201が用いる別の信号フォーマットの一例を示す図
【図6】第1の実施形態の多値信号変調部112の第1の信号点配置切替部115及び変調部116を具体的な装置によって構成した多値信号変調部125を示す図
【図7】マッハツェンダ光変調器の一般な入出力特性を示す図
【図8】多値信号変調部125の別の構成を示す図
【図9】第3の実施形態に係るデータ通信装置3の構成の一例を示すブロック図
【図10】第1の符号切替部131の構成を示す図
【図11】特開2005−57313号公報に示された、Y−00プロトコルを用いた従来の送受信装置の一例について説明するための図
【図12】多値処理部912が用いる信号フォーマットの一例を示す図
【図13】従来の送受信装置の動作について具体的に説明するための図
【符号の説明】
【0087】
1、3 データ通信装置
10、18、90、98 情報データ
11、16、91、96 鍵情報
12、17、92、97 多値符号列
13、15、41、81、93、95 多値信号
14、94 変調信号
21、31 切替鍵情報
22、32 切替乱数
23、33 変換多値信号
24 極性反転信号
25 無変調光
26、36 変換多値符号列
35、99 反転信号
42、82 受信系列
101、103、901 送信部
201、203、902 受信部
110、910 伝送路
111、212、911、914 多値符号発生部
112 多値信号変調部
113、912 多値処理部
114、214 切替乱数発生部
115、215 信号点配置切替部
116、913 変調部
121 光変調部
122 極性反転信号発生部
123 半導体レーザ
124、127 マッハツェンダ光変調器
131、231 符号切替部
1321〜132N 排他的論理和回路
133 D/A変換部
211、311、915、921 復調部
213 信号再生部
216、312、916 識別部
301、903 盗聴受信部
313、923 解読処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の鍵情報を用いて情報データを多値化し、受信装置との間で秘密通信を行うデータ送信装置であって、
前記所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生する多値符号発生部と、
前記受信装置との共有情報と前記多値符号列と前記情報データとに基づいて変換多値信号を生成し、前記変換多値信号を所定の変調形式で変調し、変調信号として出力する多値信号変調部とを備え、
前記変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、
前記多値信号変調部は、前記受信装置との共有情報に従って、前記変換多値信号の複数の信号点配置を切替えることを特徴とする、データ送信装置。
【請求項2】
前記複数の信号点配置は、前記多値符号列に対応した複数の信号レベルを有する第1の信号点配置と第2の信号点配置とを少なくとも含み、
前記第1の信号点配置と前記第2の信号点配置とは、前記多値符号列に対応した前記複数の信号レベルの昇降順序を表す極性を互いに反転させた関係であることを特徴とする、請求項1に記載のデータ送信装置。
【請求項3】
前記第1の信号点配置は、第1の信号フォーマットに基づいて形成され、
前記第2の信号点配置は、第2の信号フォーマットに基づいて形成され、
前記第1の信号フォーマット及び前記第2の信号フォーマットは、
前記多値符号列に、前記情報データの値と前記複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットであり、
前記多値符号列及び前記複数の信号レベルの昇降順序の関係が互いに逆であることを特徴とする、請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項4】
前記第1の信号フォーマット及び前記第2の信号フォーマットの同一の信号レベルは、それぞれ、互いに異なる前記情報データの値に割当てられることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項5】
前記多値信号変調部は、
前記第1の信号フォーマットに従って、前記情報データ及び前記多値符号列に基づいた多値信号を生成する多値処理部と、
前記受信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、
前記多値信号を、前記切替乱数に応じて前記第2の信号フォーマットに従った多値信号に切替えて、前記変換多値信号として出力する信号点配置切替部と、
前記変換多値信号を変調して、前記変調信号として出力する変調部とを備えることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項6】
前記多値信号変調部は、
前記第1の信号フォーマットに従って、前記情報データ及び前記多値符号列に基づいて、前記多値信号を生成する多値処理部と、
前記受信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、
電気信号である前記多値信号を、前記切替乱数に応じて前記第2の信号フォーマットに従った多値信号に切替えて、光信号である変調信号に変換する光変調部とを含み、
前記光変調部は、
同一の出力レベル領域に対応した少なくとも2つの異なる入力レベル領域を有し、前記2つの入力レベル領域は、入力の増加に対する出力の増減関係が互いに逆であり、
前記切替乱数に従い、前記2つの入力レベル領域を切替えて使用することを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項7】
前記光変調部は、
前記切替乱数を、2つの異なる電圧レベルを有する極性反転信号に変換する極性反転信号発生部と、
無変調光を出力する半導体レーザと、
前記無変調光を、前記多値信号及び前記極性反転信号によって変調し、変調信号として出力するマッハツェンダ光変調器とを含み、
前記極性反転信号の2つの電圧レベルの差を前記マッハツェンダ光変調器の半波長電圧に略等しくすることで、前記多値信号を前記第2の信号フォーマットに従った多値信号に切替えることを特徴とする、請求項6に記載のデータ送信装置。
【請求項8】
前記多値信号と前記極性反転信号とは、合波された後に、前記マッハツェンダ光変調器の同一の変調用電極に入力されることを特徴とする、請求項7に記載のデータ送信装置。
【請求項9】
前記マッハツェンダ光変調器は、内部の干渉計のそれぞれの経路に対応した2つの変調用電極を有し、
前記多値信号は一方の変調用電極に入力され、前記極性反転信号は他方の変調用電極に入力されることを特徴とする、請求項7に記載のデータ送信装置。
【請求項10】
前記多値信号変調部は、
前記受信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、
前記多値符号列の符号を、前記切替乱数に応じて変換して、変換多値符号列として出力する符号切替部と、
前記変換多値符号列に、前記情報データの値と前記複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットに従って、前記情報データ及び前記変換多値符号列に基づいて、前記変換多値信号を生成する多値処理部と、
前記変換多値信号を所定の変調形式で変調して、前記変調信号として出力する変調部とを備え、
前記変換が行われる場合の前記多値符号列の値と前記変換多値符号列の値との和は、常に前記多値符号列の最大値と最小値との和に等しいことを特徴とする、請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項11】
前記多値符号列は、2値のパラレル信号であって、
前記符号切替部は、
前記多値符号列のビット数に等しい数の排他的論理和回路と、
前記排他的論理和回路の出力信号を一括してD/A変換し、前記変換多値符号列として出力するD/A変換部とを有し、
前記排他的論理和回路は、前記多値符号列の各ビットと前記切替乱数との排他的論理和演算を行い出力することを特徴とする、請求項10に記載のデータ送信装置。
【請求項12】
所定の鍵情報を用いて、受信した変調信号から情報データを再生し、送信装置との間で秘密通信を行うデータ受信装置であって、
前記所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生する多値符号発生部と、
前記変調信号を復調して変換多値信号を出力する復調部と、
前記送信装置との共有情報と前記多値符号列と前記変換多値信号とに基づいて前記情報データを再生する信号再生部とを備え、
前記変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、
前記信号再生部は、前記送信装置との共有情報に従って、前記変換多値信号の複数の信号点配置を切替えることを特徴とする、データ受信装置。
【請求項13】
前記複数の信号点配置は、前記多値符号列に対応した複数の信号レベルを有する第1の信号点配置と第2の信号点配置とを少なくとも含み、
前記第1の信号点配置と前記第2の信号点配置とは、前記多値符号列に対応した前記複数の信号レベルの昇降順序を表す極性を互いに反転させた関係であることを特徴とする、
請求項12に記載のデータ受信装置。
【請求項14】
前記第1の信号点配置は、第1の信号フォーマットに基づいて形成され、
前記第2の信号点配置は、第2の信号フォーマットに基づいて形成され、
前記第1の信号フォーマット及び前記第2の信号フォーマットは、
前記多値符号列に、前記情報データの値と前記複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットであり、
前記多値符号列及び前記複数の信号レベルの昇降順序の関係が互いに逆であることを特徴とする、請求項13に記載のデータ受信装置。
【請求項15】
前記第1の信号フォーマット及び前記第2の信号フォーマットの同一の信号レベルは、それぞれ、互いに異なる前記情報データの値に割当てられることを特徴とする、請求項14に記載のデータ送信装置。
【請求項16】
前記信号再生部は、
前記送信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、
前記変換多値信号を、前記切替乱数に応じて前記第1の信号フォーマットに従った信号に切替えて、多値信号として出力する信号点配置切替部と、
前記多値符号列に基づいて前記多値信号を2値識別して、前記情報データとして出力する識別部とを備えることを特徴とする、請求項14に記載のデータ受信装置。
【請求項17】
前記信号再生部は、
前記送信装置との共有情報である切替鍵情報に基づき、2値の乱数である切替乱数を発生する切替乱数発生部と、
前記多値符号列の符号を、前記切替乱数に応じて変換して、変換多値符号列を出力する符号切替部と、
前記変換多値符号列に、前記情報データの値と前記複数の信号レベルとを割当てた信号フォーマットに従って、前記変換多値符号列に基づいて、前記変換多値信号を2値識別して、前記情報データとして出力する識別部とを含み、
前記変換が行われる場合の前記多値符号列の値と前記変換多値符号列の値との和は、常に前記多値符号列の最大値と最小値との和に等しいことを特徴とする、請求項13に記載のデータ受信装置。
【請求項18】
前記多値符号列は、2値のパラレル信号であって、
前記符号切替部は、
前記多値符号列のビット数に等しい数の排他的論理和回路と、
前記排他的論理和回路の出力信号を一括してD/A変換し、前記変換多値符号列として出力するD/A変換部とを有し、
前記排他的論理和回路は、前記多値符号列の各ビットと前記切替乱数との排他的論理和演算を行い出力することを特徴とする、請求項17に記載のデータ受信装置。
【請求項19】
2値の乱数である切替乱数に基づいて、複数の多値レベルを有する電気信号である多値信号を光信号である変調信号に変換する光変調装置であって、
同一の出力レベル領域に対応した少なくとも2つの異なる入力レベル領域を有し、前記2つの入力レベル領域は、入力の増加に対する出力の増減関係が互いに逆であり、前記切替乱数に従って前記2つの入力レベル領域を切替えて使用することを特徴とする、光変調装置。
【請求項20】
前記光変調装置は、
前記切替乱数を、2つの異なる電圧レベルを有する極性反転信号に変換する極性反転信号発生部と、
無変調光を出力する半導体レーザと、
前記多値信号及び前記極性反転信号によって前記無変調光を変調し、変調信号として出力するマッハツェンダ光変調器とを備え、
前記極性反転信号の2つの電圧レベルの差を前記マッハツェンダ光変調器の半波長電圧に略等しくすることで、前記多値信号の信号点配置を切替えることを特徴とする、請求項19に記載の光変調装置。
【請求項21】
前記多値信号と前記極性反転信号とは、合波された後に、前記マッハツェンダ光変調器の同一の変調用電極に入力されることを特徴とする、請求項20に記載の光変調装置。
【請求項22】
前記マッハツェンダ光変調器は、内部の干渉計のそれぞれの経路に対応した2つの変調用電極を含み、
前記多値信号は一方の変調用電極に入力され、前記極性反転信号は他方の変調用電極に入力されることを特徴とする、請求項20に記載の光変調装置。
【請求項23】
所定の鍵情報を用いて情報データを多値化し、受信装置との間で秘密通信を行うデータ送信方法であって、
前記所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生するステップと、
前記受信装置との共有情報と前記多値符号列と前記情報データとに基づいて変換多値信号を生成し、前記変換多値信号を所定の変調形式で変調し、変調信号として出力するステップとを備え、
前記変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、
前記変換多値信号の複数の信号点配置は、前記受信装置との共有情報に従って切替えられることを特徴とする、データ送信方法。
【請求項24】
所定の鍵情報を用いて、受信した変調信号から情報データを再生し、送信装置との間で秘密通信を行うデータ受信方法であって、
前記所定の鍵情報を用いて、略乱数的に値が変化する多値符号列を発生するステップと、
前記変調信号を復調して変換多値信号を出力するステップと、
前記送信装置との共有情報と前記多値符号列と前記変換多値信号とに基づいて前記情報データを再生するステップとを備え、
前記変換多値信号は、互いに異なる複数の信号点配置を有する信号であり、
前記変換多値信号の複数の信号点配置は、前記送信装置との共有情報に従って切替えられることを特徴とする、データ受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−160178(P2008−160178A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343110(P2006−343110)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】