説明

データ送信装置及びデータ受信装置

【課題】 一対のデバイスが適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制すること。
【解決手段】 多機能機10は、指定設定WS2を用いて、通話デバイス70と通信可能であるのか否かを確認することを繰り返す。多機能機10は、通話デバイス70と通信不可能である場合に、指定設定WS2から初期設定WS1に変更する(S220)。通話デバイス70は、印刷対象のFAXデータが多機能機10に送信されるべき際に、指定設定WS3を用いて、多機能機10と通信可能であるのか否かを確認する。通話デバイス70は、多機能機10と通信不可能である場合に、指定設定WS3から初期設定WS1に変更する(S224)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれは、変更後の初期設定WS1を用いて、印刷対象のFAXデータの無線通信を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、データ受信装置にデータを無線で送信するデータ送信装置、及び、データ送信装置からデータを無線で受信するデータ受信装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、一対のデバイスがアクセスポイントを介して無線通信するためのシステムが開示されている。即ち、特許文献1には、インフラストラクチャの無線通信技術が開示されている。なお、一対のデバイスが、アクセスポイントを介さずに無線通信するための技術も知られている。即ち、アドホックの無線通信技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2007−288312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インフラストラクチャの無線通信技術でも、アドホックの無線通信技術でも、一対のデバイスが適切に無線通信するためには、一対のデバイスのそれぞれに同じ無線設定(例えば、認証方式、暗号化方式等)を設定する必要がある。即ち、一対のデバイスに異なる無線設定が設定された状態では、通常、一対のデバイスが適切に無線通信することができない。また、一対のデバイスに同じ無線設定が設定されていても、通信環境等の理由(例えばデバイスとアクセスポイントとの間の距離が遠い)によって、一対のデバイスが適切に無線通信することができないこともある。
【0005】
本明細書では、一対のデバイスが適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、第1無線設定を格納しているデータ受信装置にデータを無線で送信するデータ送信装置を開示する。データ送信装置は、メモリと、第1の確認部と、第1の変更部と、送信部と、を備える。メモリは、第1の無線設定を格納する。第1の確認部は、特定のデータがデータ受信装置に送信されるべき際に、データ送信装置の現在の無線設定である第2の無線設定であって、第1の無線設定と異なる第2の無線設定を用いて、データ受信装置と通信可能であるのか否かを確認する第1の確認処理を実行する。第1の変更部は、第1の確認処理において、データ受信装置と通信不可能であると確認される場合に、データ送信装置の現在の無線設定を、第2の無線設定から第1の無線設定に変更する。送信部は、データ送信装置の変更後の現在の無線設定である第1の無線設定を用いて、上記の特定のデータをデータ受信装置に無線で送信する。
【0007】
上記の構成によると、データ送信装置は、上記の特定のデータがデータ受信装置に送信されるべき際に、データ送信装置の現在の無線設定(即ち第2の無線設定)を用いた無線通信をデータ受信装置と実行可能であるのか否かを確認する。データ送信装置は、データ受信装置と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を第2の無線設定からメモリ内の第1の無線設定に変更する。データ受信装置が第1無線設定を格納しているために、データ送信装置は、変更後の現在の無線設定(即ち第1の無線設定)を用いて、上記の特定のデータをデータ受信装置に無線で送信し得る。従って、一対のデバイス(即ちデータ送信装置及びデータ受信装置)が適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る。
【0008】
第1の確認処理において、データ受信装置と通信可能であると確認される場合に、第1の変更部は、データ送信装置の現在の無線設定を、第2の無線設定から第1の無線設定に変更せず、送信部は、データ送信装置の現在の無線設定である第2の無線設定を用いて、上記の特定のデータをデータ受信装置に無線で送信してもよい。
【0009】
データ送信装置は、さらに、一般公衆回線が接続されるインターフェースと、インターフェースを用いて、一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備えていてもよい。上記の特定のデータは、FAX通信部が一般公衆回線を介して受信する特定のFAXデータを含んでいてもよい。この構成によると、データ送信装置は、データ送信装置自身が一般公衆回線を介して受信する上記の特定のFAXデータを、データ受信装置に無線で送信し得る。
【0010】
データ受信装置は、上記の特定のFAXデータによって表わされる特定の画像をユーザに提供する提供部を備えていてもよい。データ送信装置は、データ受信装置の付属装置であって、FAXデータによって表わされる画像をユーザに提供するための機能を備えていない付属装置であってもよい。
【0011】
データ受信装置は、一般公衆回線が接続されるインターフェースと、インターフェースを用いて、一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備えていてもよい。上記の特定のデータは、データ受信装置が一般公衆回線を介して送信すべき特定のFAXデータを含んでいてもよい。この構成によると、データ送信装置は、データ受信装置が一般公衆回線を介して送信すべき上記の特定のFAXデータを、データ受信装置に無線で送信し得る。
【0012】
データ送信装置は、さらに、特定の原稿をスキャンして上記の特定のFAXデータを生成するスキャン実行部を備えていてもよい。データ受信装置は、データ送信装置の付属装置であって、原稿をスキャンしてFAXデータを生成するための機能を備えていない付属装置であってもよい。
【0013】
第1の変更部は、データ送信装置の現在の無線設定を、第2の無線設定から第1の無線設定に変更した後に、少なくとも特定のタイミングまで、データ送信装置の現在の無線設定として第1の無線設定を維持してもよい。上記の特定のタイミングは、データ受信装置への上記の特定のデータの送信が完了するタイミングであってもよい。この構成によると、データ送信装置は、第1の無線設定を用いて、データ受信装置に上記の特定のデータを適切に無線で送信し得る。
【0014】
第1の変更部は、さらに、データ受信装置への上記の特定のデータの送信が完了した際に、データ送信装置の現在の無線設定を、第1の無線設定から第2の無線設定に変更してもよい。この構成によると、データ送信装置は、データ受信装置への上記の特定のデータの送信が完了した後に、第2の無線設定を用いて、無線通信を実行し得る。
【0015】
本明細書では、第1の無線設定を格納しているデータ送信装置からデータを無線で受信するデータ受信装置を開示する。データ受信装置は、メモリと、第2の確認部と、第2の変更部と、受信部と、を備える。メモリは、第1の無線設定を格納する。第2の確認部は、データ受信装置の現在の無線設定である第2の無線設定であって、第1の無線設定と異なる第2の無線設定を用いて、データ送信装置と通信可能であるのか否かを確認する第2の確認処理を繰り返し実行する。第2の変更部は、第2の確認処理において、データ送信装置と通信不可能であると確認される場合に、データ受信装置の現在の無線設定を、第2の無線設定から第1の無線設定に変更する。受信部は、データ受信装置の変更後の現在の無線設定である第1の無線設定を用いて、上記の特定のデータをデータ送信装置から無線で受信する。
【0016】
上記の構成によると、データ受信装置は、データ受信装置の現在の無線設定(即ち第2の無線設定)を用いた無線通信をデータ送信装置と実行可能であるのか否かを確認することを繰り返す。データ受信装置は、データ送信装置と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を第2の無線設定からメモリ内の第1の無線設定に変更する。データ送信装置が第1無線設定を格納しているために、データ受信装置は、変更後の現在の無線設定(即ち第1の無線設定)を用いて、上記の特定のデータをデータ送信装置から無線で受信し得る。従って、一対のデバイス(即ちデータ送信装置及びデータ受信装置)が適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る。
【0017】
第2の確認処理において、データ送信装置と通信可能であると確認される場合に、第2の変更部は、データ受信装置の現在の無線設定を、第2の無線設定から第1の無線設定に変更せず、受信部は、データ受信装置の現在の無線設定である第2の無線設定を用いて、上記の特定のデータをデータ送信装置から無線で受信してもよい。
【0018】
データ受信装置は、さらに、一般公衆回線が接続されるインターフェースと、インターフェースを用いて、一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備えていてもよい。上記の特定のデータは、データ受信装置が一般公衆回線を介して送信すべき特定のFAXデータを含んでいてもよい。この構成によると、データ受信装置は、データ受信装置自身が一般公衆回線を介して送信すべき上記の特定のFAXデータを、データ送信装置から無線で受信し得る。
【0019】
データ送信装置は、特定の原稿をスキャンして上記の特定のFAXデータを生成するスキャン実行部を備えていてもよい。データ受信装置は、データ送信装置の付属装置であって、原稿をスキャンしてFAXデータを生成するための機能を備えていない付属装置であってもよい。
【0020】
データ送信装置は、一般公衆回線が接続されるインターフェースと、インターフェースを用いて、一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備えていてもよい。上記の特定のデータは、データ送信装置が一般公衆回線を介して受信する特定のFAXデータを含んでいてもよい。この構成によると、データ受信装置は、データ送信装置が一般公衆回線を介して受信する上記の特定のFAXデータを、データ送信装置から無線で受信し得る。
【0021】
データ受信装置は、さらに、上記の特定のFAXデータによって表わされる特定の画像をユーザに提供する提供部を備えていてもよい。データ送信装置は、データ受信装置の付属装置であって、FAXデータによって表わされる画像をユーザに提供するための機能を備えていない付属装置であってもよい。
【0022】
データ送信装置は、上記の特定のデータがデータ受信装置に送信されるべき際に、データ送信装置の現在の無線設定を用いて、データ受信装置と通信可能であるのか否かを確認するための信号を無線で送信してもよい。データ受信装置は、さらに、データ受信装置の現在の無線設定が、第2の無線設定から第1の無線設定に変更された後の所定の期間内に、データ送信装置から上記の信号を無線で受信したのか否かを判断する判断部を備えていてもよい。第2の変更部は、さらに、所定の期間内に上記の信号を受信しなかったと判断される場合に、所定の期間の経過後に、データ受信装置の現在の無線設定を、第1の無線設定から第2の無線設定に変更してもよい。この構成によると、データ受信装置は、所定の期間内に上記の信号を受信しなかった場合に、現在の無線設定を第1の無線設定から第2の無線設定に戻す。従って、データ受信装置は、所定の期間の経過後に、第2の無線設定を用いて、無線通信を実行し得る。
【0023】
第2の変更部は、データ受信装置の現在の無線設定を、第2の無線設定から第1の無線設定に変更した後に、少なくとも特定のタイミングまで、データ受信装置の現在の無線設定として第1の無線設定を維持してもよい。上記の特定のタイミングは、データ送信装置からの上記の特定のデータの受信が完了するタイミングであってもよい。この構成によると、データ受信装置は、第1の無線設定を用いて、データ送信装置から上記の特定のデータを適切に無線で受信し得る。
【0024】
第2の変更部は、さらに、データ送信装置からの上記の特定のデータの受信が完了した際に、データ受信装置の現在の無線設定を、第1の無線設定から第2の無線設定に変更してもよい。この構成によると、データ受信装置は、データ送信装置からの上記の特定のデータの受信が完了した後に、第2の無線設定を用いて、無線通信を実行し得る。
【0025】
第1の無線設定は、データ送信装置及びデータ受信装置が、アクセスポイントを介さずに直接的に無線通信を実行するためのアドホックモードの無線設定であってもよい。
【0026】
なお、上記のデータ送信装置を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記憶媒体も新規で有用である。また、上記のデータ受信装置を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記憶媒体も新規で有用である。また、上記のデータ送信装置及びデータ受信装置を備える無線通信システムも新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例の無線通信システムの構成を示す。
【図2】多機能機によって実行される処理のフローチャートを示す。
【図3】通話デバイスによって実行される処理のフローチャートを示す。
【図4】多機能機及び通信デバイスの両方に同じ無線設定が設定されている場合に、通話デバイスがPSTNを介してFAXデータを受信する例を示す。
【図5】多機能機及び通信デバイスに異なる無線設定が設定されている場合に、通話デバイスがPSTNを介してFAXデータを受信する例を示す。
【図6】多機能機及び通信デバイスの両方に同じ無線設定が設定されている場合に、多機能機にFAX送信操作が実行される例を示す。
【図7】多機能機及び通信デバイスに異なる無線設定が設定されている場合に、多機能機にFAX送信操作が実行される例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(システムの構成)
図1に示されるように、無線通信システム2は、PC(パーソナルコンピュータ)4と、AP(アクセスポイント)6と、多機能機10と、通話デバイス70と、を備える。PC4は、AP6を介して、他のデバイス(例えば多機能機10)と無線通信可能である。多機能機10及び通話デバイス70は、AP6を介して、又は、AP6を介さずに、相互に無線通信可能である。即ち、多機能機10及び通話デバイス70は、インフラストラクチャの無線通信又はアドホックの無線通信を実行可能である。なお、本実施例では、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)の802.11の規格、及び、それに準ずる規格(例えば802.11a,11b等)に基づいて、無線通信が実行される。従って、後述の無線設定WS1,WS2,WS3は、上記の規格に適合する無線設定である。
【0029】
(多機能機10の構成)
多機能機(「親機」と呼んでもよい)10は、操作部12と、表示部14と、印刷実行部16と、スキャン実行部18と、無線インターフェース20と、制御部30と、を備える。操作部12は、複数のキーを備える。ユーザは、操作部12を操作することによって、様々な指示を多機能機10に入力することができる。表示部14は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。印刷実行部16は、インクジェット方式、レーザ方式等の印刷機構である。スキャン実行部18は、CCD、CIS等のスキャン機構である。無線インターフェース20は、無線通信を実行するためのインターフェースである。
【0030】
制御部30は、CPU32と、NVRAM(不揮発性メモリ)34と、VRAM(揮発性メモリ)40と、を備える。CPU32は、多機能機10のROM(図示省略)に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。CPU32が当該プログラムに従って処理を実行することによって、各部52〜62の機能が実現される。
【0031】
NVRAM34は、指定設定領域36と初期設定領域38とを備える。初期設定領域38は、多機能機10のベンダによって予め決められた無線設定(即ち、デフォルトの認証方式、デフォルトの暗号化方式、デフォルトのパスワード等)を格納するための記憶領域である。以下では、初期設定領域38に記憶される無線設定のことを「初期設定WS1」と呼ぶ。初期設定WS1は、多機能機10の出荷段階において、多機能機10に予め格納されている。初期設定WS1は、アクセスポイント6を介さない無線通信を実現するためのアドホックの無線設定である。
【0032】
ユーザは、多機能機10が初期設定WS1と異なる無線設定を利用することを望む場合に、例えば、多機能機10の操作部12を操作して、多機能機10が利用すべき無線設定(即ち、認証方式、暗号化方式、パスワード等)を指定することができる。以下では、ユーザによって指定される多機能機10の無線設定のことを「指定設定WS2」と呼ぶ。なお、USBケーブル等の有線によって、多機能機10とPC4とが通信可能に接続されている場合には、ユーザは、例えば、PC4の操作部を操作して、指定設定WS2を指定すてもよい。指定設定領域36は、指定設定WS2を格納するための記憶領域である。なお、本実施例では、指定設定WS2は、アクセスポイント6を介して無線通信を実現するためのインフラストラクチャの無線設定である。従って、指定設定WS2は、アドホックの無線設定である初期設定WS1と異なる。
【0033】
VRAM40は、無線設定ワーク領域42を備える。無線設定ワーク領域42は、多機能機10の現在の無線設定(即ち多機能機10が現在利用すべき無線設定)を格納するための記憶領域である。多機能機10が出荷されてから、ユーザによって指定設定WS2が指定されるまでの間には、初期設定WS1が無線設定ワーク領域42に格納される。ユーザによって指定設定WS2が指定された後には、通常、指定設定WS2が無線設定ワーク領域42に格納される。
【0034】
(通話デバイス70の構成)
通話デバイス(「子機」と呼んでもよい)70は、それ単体では出荷されず、多機能機10と共に出荷される。通話デバイス70は、マイク72と、スピーカ74と、PSTNインターフェース76と、無線インターフェース78と、制御部80と、を備える。通話デバイス70がマイク72とスピーカ74を備えるために、ユーザは、通話デバイス70を用いて、PSTN8を介した電話通信を実行することができる。PSTNインターフェース76は、一般公衆回線網であるPSTN(Public Switched Telephone Network)8に接続される。具体的には、PSTNインターフェース76には、PSTNケーブルの一端が接続される。PSTNケーブルの他端は、例えば、家庭内のPSTN用ソケットに接続される。無線インターフェース78は、無線通信を実行するためのインターフェースである。
【0035】
制御部80は、CPU82と、NVRAM84と、VRAM90と、を備える。CPU82は、通話デバイス70のROM(図示省略)に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。CPU82が当該プログラムに従って処理を実行することによって、各部102〜110の機能が実現される。
【0036】
NVRAM84は、指定設定領域86と初期設定領域88とを備える。初期設定領域88は、多機能機10と同じアドホックの初期設定WS1を格納するための記憶領域である。初期設定WS1は、通話デバイス70の出荷段階(即ち多機能機10の出荷段階)において、通話デバイス70に予め格納されている。
【0037】
ユーザは、通話デバイス70が初期設定WS1と異なる無線設定を利用することを望む場合に、例えば、多機能機10の操作部12を操作して、通話デバイス70が利用すべき無線設定(即ち、認証方式、暗号化方式、パスワード等)を指定することができる。以下では、ユーザによって指定される通話デバイス70の無線設定のことを「指定設定WS3」と呼ぶ。多機能機10は、通話デバイス70のための指定設定WS3が指定されると、多機能機10の現在の無線設定(例えば初期設定WS1)を用いて、指定設定WS3を通話デバイス70に無線で送信する。これにより、通話デバイス70は、指定設定WS3を取得することができる。なお、USBケーブル等の有線によって、多機能機10とPC4とが通信可能に接続されている場合には、ユーザは、例えば、PC4の操作部を操作して、指定設定WS3を指定してもよい。また、変形例では、ユーザが通話デバイス70の操作部(図示省略)を操作して、指定設定WS3を通話デバイス70に入力可能な構成を採用してもよい。
【0038】
指定設定領域86は、指定設定WS3を格納するための記憶領域である。なお、本実施例では、指定設定WS3は、インフラストラクチャの無線設定である。従って、指定設定WS3は、アドホックの初期設定WS1と異なる。
【0039】
VRAM90は、無線設定ワーク領域92を備える。無線設定ワーク領域92は、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち通話デバイス70が現在利用すべき無線設定)を格納するための記憶領域である。多機能機10と共に通話デバイス70が出荷されてから、ユーザによって指定設定WS3が指定されるまでの間には、初期設定WS1が無線設定ワーク領域92に格納される。ユーザによって指定設定WS3が指定された後には、通常、指定設定WS3が無線設定ワーク領域92に格納される。このように、多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれは、出荷段階において、自身の無線設定として初期設定WS1が設定されており、相互に通信可能な状態となっている。
【0040】
(FAX機能)
多機能機10及び通話デバイス70が協働して処理を実行することによって、FAX機能が実現される。例えば、通話デバイス70は、PSTNインターフェース76を介してFAXデータを受信する場合に、当該FAXデータを無線で多機能機10に送信する。多機能機10は、通話デバイス70から無線で送信されるFAXデータが、無線インターフェース20で受信される場合に、当該FAXデータによって表わされる画像の印刷を印刷実行部16に実行させる。これにより、FAXの受信動作が実行される。
【0041】
また、多機能機10は、スキャン実行部18が原稿をスキャンすることによって生成されるFAXデータを、通話デバイス70に無線で送信する。通話デバイス70は、多機能機10から無線で送信されるFAXデータが、無線インターフェース78で受信される場合に、ユーザによって予め指定された宛先に向けて、PSTN8を介して当該FAXデータを送信する。これにより、FAXの送信動作が実行される。
【0042】
なお、多機能機10は、PSTN8を介して受信したFAXデータによって表わされる画像をユーザに提供(即ち印刷)する機能を備えているが、通話デバイス70は、当該機能を備えていない。また、多機能機10は、原稿をスキャンして、PSTN8を介して送信されるべきFAXデータを生成する機能を備えているが、通話デバイス70は、当該機能を備えていない。即ち、通話デバイス70は、多機能機10に代わってPSTN8を介してFAXデータを受信可能であると共に、多機能機10に代わってPSTN8を介してFAXデータを送信可能である。従って、通話デバイス70は、多機能機10の付属装置であると言える。なお、本実施例では、多機能機10は、FAXデータによって表わされる画像を印刷することによって、当該画像をユーザに提供するが、変形例では、多機能機10は、FAXデータによって表わされる画像を表示することによって、当該画像をユーザに提供してもよい。一般的に言うと、「ユーザに提供」は、印刷と表示との少なくとも一方を含む。
【0043】
上述したように、通話デバイス70は、多機能機10の付属装置であり、印刷実行部16及びスキャン実行部18を備えていない。従って、通話デバイス70は、多機能機10と比べると、小さいサイズを有する。通常、家庭内では、PSTN用ソケットの位置が決められている。仮に、多機能機10にPSTNケーブルを接続しなければならない構成を採用すると、PSTN用ソケットの近傍に多機能機10を配置する必要がある。多機能機10は、比較的に大きいサイズを有するために、PSTN用ソケットの近傍にスペースが少ない環境では、PSTN用ソケットの近傍に多機能機10を配置するのが困難である。これに対し、本実施例では、比較的に小さいサイズを有する通話デバイス70にPSTNインターフェース76が設けられている。従って、PSTN用ソケットの近傍にスペースが少ない環境でも、PSTN用ソケットの近傍に通話デバイス70を容易に配置して、通話デバイス70をPSTN8に接続することができる。さらに、多機能機10をPSTN用ソケットの近傍に限らず、自由に配置することができる。
【0044】
(多機能機10が実行する処理)
続いて、図2のフローチャートを参照して、多機能機10が実行する処理の内容について説明する。多機能機10の電源がONされると、制御部30は、図2のフローチャートの処理を開始する。なお、多機能機10の電源がONされる際に、制御部30は、制御部30に内蔵されている確認タイマをリセットしてスタートさせる。また、多機能機10の電源がONされる際に、指定設定領域36に指定設定WS2が格納されている場合には、制御部30は、無線設定ワーク領域42に指定設定WS2を格納する。一方において、多機能機10の電源がONされる際に、指定設定領域36に指定設定WS2が格納されていない場合(即ち指定設定WS2が未だに指定されていない場合)には、制御部30は、無線設定ワーク領域42に初期設定WS1を格納する。
【0045】
(通信確認の送信に関する処理S10〜S20)
まず、S10において、確認部52(図1参照)は、確認タイマの値が所定値T1より大きいのか否かを判断する。確認タイマの値が所定値T1(例えば5分)以下である場合(S10でNO)には、S22に進み、確認タイマの値が所定値T1より大きい場合(S10でYES)には、S12に進む。S12では、確認部52は、無線設定ワーク領域42に格納されている多機能機10の現在の無線設定(即ち初期設定WS1又は指定設定WS2)を用いて、通信確認を無線で送信する。次いで、S13において、確認部52は、確認タイマをリセットしてスタートさせる。
【0046】
次いで、S14において、確認部52は、S12で送信した通信確認の応答を無線で受信したのか否かを判断する。即ち、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、通話デバイス70と通信可能であるのか否かを確認する。確認部52は、S12で通信確認を送信してから所定時間以内に応答を受信した場合に、通話デバイス70と通信可能であると確認し(S14でYES)、現在の無線設定(即ち初期設定WS1又は指定設定WS2)が変更されることなく、S22に進む。一方において、確認部52は、S12で通信確認を送信してから上記の所定時間以内に応答を受信しない場合に、通話デバイス70と通信不可能であると確認し(S14でNO)、S16に進む。
【0047】
S16では、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1であるのか否かを判断する。具体的には、確認部52は、無線設定ワーク領域42に格納されている無線設定と、初期設定領域38に格納されている初期設定WS1と、を比較する。確認部52は、前者と後者とが一致する場合に、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1であると判断し(S16でYES)、S22に進む。一方において、確認部52は、前者と後者とが一致しない場合に、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1でない、即ち、多機能機10の現在の無線設定が指定設定WS2である、と判断し(S16でNO)、S18に進む。
【0048】
S18では、変更部54(図1参照)は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定WS2から初期設定WS1に変更する。具体的に言うと、変更部54は、無線設定ワーク領域42に格納されている情報を、指定設定WS2から、初期設定領域38内の初期設定WS1に変更する。このように、確認部52が、通話デバイス70と通信不可能であると確認し、かつ、多機能機10の現在の無線設定が指定設定WS2であると判断した場合には、多機能機10の無線設定は、指定設定WS2から初期設定WS1に変更される。次いで、変更部54は、S20において、制御部30に内蔵されていている初期タイマをリセットしてスタートさせる。S20を終えた場合には、S22に進む。
【0049】
(通信確認の受信に関する処理S22及びS24)
後で詳しく説明するが、通話デバイス70は、多機能機10に通信確認を無線で送信する(図3のS112、S144、S152参照)。この場合、多機能機10と通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況では、多機能機10の制御部30は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、通信確認を無線で受信して、S22でYESと判断する。なお、上記の「多機能機10と通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況」は、例えば、以下のような場合である。例えば、多機能機10及び通話デバイス70の両方に同じ無線設定(初期設定WS1でも指定設定WS2でもよい)が設定されており、さらに、上記のS12の通信確認の際に、多機能機10が通話デバイス70から応答を受信した場合(S14でYES)である。また、例えば、多機能機10の無線設定として指定設定WS2が設定されていると共に、通話デバイス70の無線設定として初期設定WS1が設定されているために、上記のS12の通信確認の際に、多機能機10が通話デバイス70から応答を受信せず(S14でNO)、その結果、S18において多機能機10の無線設定が指定設定WS2から初期設定WS1に変更された場合である。S22でYESと判断すると、S24において、制御部30は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、当該通信確認の応答を無線で送信する。S22でNOの場合、又は、S24を終えた場合には、S26に進む。
【0050】
(PSTN8を介したFAXデータの受信に関する処理S26〜S30)
後で詳しく説明するが、通話デバイス70は、PSTN8を介して受信したFAXデータ(以下では「印刷対象のFAXデータ」と呼ぶ)を、多機能機10に無線で送信する(図3のS158参照)。この場合、多機能機10と通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況では、受信部58(図1参照)は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、通話デバイス70から印刷対象のFAXデータを無線で受信して、S26でYESと判断する。この場合、S28において、提供部60(図1参照)は、印刷対象のFAXデータによって表わされる画像の印刷を印刷実行部16に実行させる。これにより、当該画像がユーザに提供される。
【0051】
なお、上記のS18の処理が実行されたことによって、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1である場合には、S30において、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS2に変更する(即ち初期設定WS1から指定設定WS2に戻す)。具体的に言うと、変更部54は、無線設定ワーク領域42に格納されている情報を、初期設定WS1から、指定設定領域36内の指定設定WS2に変更する。このように、上記のS18において多機能機10の現在の無線設定が指定設定WS2から初期設定WS1に変更されても、多機能機10が通話デバイス70からFAXデータを受信した後(S26でYES)に、多機能機10の現在の無線設定は、変更前の指定設定WS2に戻される。S30では、さらに、変更部54は、初期タイマをリセットする。S26でNOの場合、又は、S30を終えた場合には、S32に進む。なお、上記のS18の処理が実行されずに、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1である場合(例えば指定設定WS2が未だに指定されていない場合等)には、S30をスキップしてS32に進む。
【0052】
(初期タイマの監視に関する処理S32及びS34)
S32では、判断部62(図1参照)は、初期タイマの値が所定値T2より大きいのか否かを判断する。初期タイマの値が所定値T2(例えば1分)以下である場合(S32でNO)には、S34を経ることなく、S40に進む。初期タイマの値が所定値T2より大きい場合(S32でYES)には、S34に進む。S34では、上記のS30と同様に、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS2に変更する。即ち、上記のS18において多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1に変更され、S20において初期タイマがスタートしてからT2経過するまでは、初期設定WS1が維持される。但し、初期タイマがスタートしてからT2経過するまでに、上記のS22で通信確認を受信し、かつ、S26でFAXデータを受信した場合には、FAXデータの印刷が完了するまで初期設定WS1が維持される。また、上記のS20において初期タイマがスタートしてからT2経過しても、通信確認を受信せず(S22でNO)、かつ、FAXデータを受信しない(S26でNO)場合には、多機能機10は、通話デバイス70から多機能機10へのFAXデータの転送がないものとして、現在の無線設定を指定設定WS2に戻す。S34では、さらに、変更部54は、初期タイマをリセットする。S34を終えた場合には、S40に進む。
【0053】
(PSTN8を介したFAXデータの送信に関する処理S40〜S60)
S40では、確認部52は、多機能機10の操作部12にFAX送信操作(即ち、宛先の指定のための操作、及び、スキャン実行ボタンの操作)が実行されたのか否かを判断する。FAX送信操作が実行されない場合(S40でNO)には、S10に戻り、FAX送信操作が実行された場合(S40でYES)には、S42に進む。S42では、制御部30は、原稿のスキャンをスキャン実行部18に実行させる。これにより、PSTN8を介して送信されるべきFAXデータ(以下では「送信対象のFAXデータ」と呼ぶ)が生成される。
【0054】
次いで、S44において、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、通話デバイス70に通信確認を無線で送信する。次いで、S46において、S14と同様に、確認部52は、S44で送信した通信確認の応答を無線で受信したのか否かを判断する。通話デバイス70と通信可能であると確認される場合(S46でYES)に、S58に進み、通話デバイス70と通信不可能であると確認される場合(S46でNO)に、S48に進む。
【0055】
S48では、S16と同様に、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1であるのか否かを判断する。多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1である場合(S48でYES)に、S52に進む。一方において、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1でない場合、即ち、多機能機10の現在の無線設定が指定設定WS2である場合(S48でNO)に、S50に進む。S50では、S18と同様に、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定WS2から初期設定WS1に変更する。このように、確認部52が、通話デバイス70と通信不可能であると確認し、かつ、多機能機10の現在の無線設定が指定設定WS2であると判断した場合には、多機能機10の無線設定は、指定設定WS2から初期設定WS1に変更される。
【0056】
次いで、S52において、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定(即ち初期設定WS1)を用いて、通信確認を無線で送信する。次いで、S54において、S14と同様に、確認部52は、S52で送信した通信確認の応答を無線で受信したのか否かを判断する。通話デバイス70と通信可能であると確認される場合(S54でYES)に、S58に進み、通話デバイス70と通信不可能であると確認される場合(S54でNO)に、S56に進む。S56では、制御部30は、エラー処理を実行する。具体的には、制御部30は、PSTN8を介したFAXデータの送信を実行不可能であることを示す情報を表示部14に表示させる。S56を終えた場合には、S10に戻る。
【0057】
S58では、送信部56(図1参照)は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、S42で生成された送信対象のFAXデータを通話デバイス70に無線で送信する。なお、上記のS50の処理が実行されたことによって、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1である場合には、S60において、上記のS30と同様に、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS2に変更する。S60を終えた場合には、S10に戻る。なお、上記のS50の処理が実行されずに、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1である場合(例えば指定設定WS2が未だに指定されていない場合等)には、S60をスキップしてS10に戻る。また、例えば、S18において、多機能機10の現在の無線設定が初期設定WS1に変更され、かつ、初期タイマの値が所定値T2以下である状態(S32でNO)でFAX送信操作が実行された場合(S40でYES)には、S48でYESと判断されるために、S50が実行されない。従って、このような場合も、S60が実行されない。この結果、初期タイマの値が所定値T2を経過するまで(S32でYES)、多機能機10の現在の無線設定として初期設定WS1が維持される。但し、S22で通信確認を受信し、かつ、S26で通話デバイス70からFAXデータを受信した場合には、FAXデータの印刷が完了するまで初期設定WS1が維持される。
【0058】
(通話デバイス70が実行する処理)
続いて、図3のフローチャートを参照して、通話デバイス70が実行する処理の内容について説明する。なお、多機能機10の場合と同様に、通話デバイス70の電源がONされる際に、制御部80は、制御部80に内蔵されている確認タイマをリセットしてスタートさせる。さらに、制御部80は、指定設定領域86に指定設定WS3が格納されている場合には、無線設定ワーク領域92に指定設定WS3を格納し、指定設定領域86に指定設定WS3が格納されていない場合には、無線設定ワーク領域92に初期設定WS1を格納する。
【0059】
なお、図3のS110〜S160の処理の中には、図2のS10〜S60の処理と同様のものが多いために、以下では、S110〜S160の処理の内容を簡単に説明する。図3のS110〜S160の処理の具体的な内容については、図2のS10〜S60の処理を参照すれば、容易に理解可能である。
【0060】
(通信確認の送信に関する処理S110〜S118)
まず、S110において、確認部102(図1参照)は、確認タイマの値が所定値T3より大きいのか否かを判断する。確認タイマの値が所定値T3(例えば5分)以下である場合(S110でNO)には、S122に進み、確認タイマの値が所定値T3より大きい場合(S110でYES)には、S112に進む。S112では、確認部102は、無線設定ワーク領域92に格納されている通話デバイス70の現在の無線設定(即ち初期設定WS1又は指定設定WS3)を用いて、通信確認を無線で送信する。次いで、S113において、確認部102は、確認タイマをリセットしてスタートさせる。
【0061】
次いで、S114において、確認部102は、S112で送信した通信確認の応答を無線で受信したのか否かを判断する。多機能機10と通信不可能であることが確認される場合(S114でNO)には、S116において、確認部102は、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定WS1であるのか否かを判断する。通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定WS1でない場合、即ち、通話デバイス70の現在の無線設定が指定設定WS3である場合(S116でNO)には、S118において、変更部104(図1参照)は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定WS3から初期設定WS1に変更する。このように、確認部102が、多機能機10と通信不可能であると確認し、かつ、通話デバイス70の現在の無線設定が指定設定WS3であると判断した場合には、通話デバイス70の無線設定は、指定設定WS3から初期設定WS1に変更される。なお、多機能機10の場合と異なり、通話デバイス70では、初期タイマが利用されない(図2のS20参照)。なお、S114でYESの場合、S116でYESの場合、又は、S118を終えた場合には、S122に進む。
【0062】
(通信確認の受信に関する処理S122及びS124)
上述したように、多機能機10は、通話デバイス70に通信確認を無線で送信する(図2のS12、S44、S52参照)。この場合、多機能機10と通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況では、通話デバイス70の制御部80は、S122でYESと判断し、S124において、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、通信確認の応答を無線で送信する。なお、上記の「多機能機10と通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況」は、例えば、次のような場合である。例えば、多機能機10及び通話デバイス70の両方に同じ無線設定(初期設定WS1でも指定設定WS2でもよい)が設定されており、さらに、上記のS112の通信確認の際に、通話デバイス70が多機能機10から応答を受信した場合(S114でYES)である。また、例えば、多機能機10の無線設定として初期設定WS1が設定されていると共に、通話デバイス70の無線設定として指定設定WS3が設定されているために、上記のS112の通信確認の際に、通話デバイス70が多機能機10から応答を受信せず(S114でNO)、その結果、S118において通話デバイス70の無線設定が指定設定WS3から初期設定WS1に変更された場合である。S122でNOの場合、又は、S124を終えた場合には、S126に進む。
【0063】
(PSTN8を介したFAXデータの送信に関する処理S126〜S130)
上述したように、多機能機10は、通話デバイス70に送信対象のFAXデータを無線で送信する(図2のS58参照)。この場合、多機能機10と通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況では、受信部108(図1参照)は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、多機能機10から送信対象のFAXデータを無線で受信して、S126でYESと判断する。なお、S126では、受信部108は、ユーザによって指定された宛先(即ちFAX識別情報(例えばFAX番号))も無線で受信する。次いで、S128において、FAX通信部110(図1参照)は、PSTNインターフェース76を用いて、多機能機10から受信した宛先に発呼する。これにより、通話デバイス70と宛先との間で呼が成立する。次いで、FAX通信部110は、送信対象のFAXデータをPSTN8を介して送信する。
【0064】
なお、上記のS118の処理が実行されたことによって、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定WS1である場合には、S130において、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS3に変更する。このように、上記のS118において通話デバイス70の現在の無線設定が指定設定WS3から初期設定WS1に変更されても、通話デバイス70が多機能機10からFAXデータを受信した後(S126でYES)に、通話デバイス70の現在の無線設定は、変更前の指定設定WS3に戻される。S126でNOの場合、又は、S130を終えた場合には、S140に進む。
【0065】
(PSTN8を介したFAXデータの受信に関する処理S140〜S160)
他のファクシミリ装置からPSTN8を介して印刷対象のFAXデータが通話デバイス70に送信される場合に、FAX通信部110は、印刷対象のFAXデータを受信して、S140でYESと判断する。この場合、S144において、確認部102は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、多機能機10に通信確認を無線で送信する。
【0066】
次いで、S146において、確認部102は、S144で送信した通信確認の応答を無線で受信したのか否かを判断する。多機能機10と通信不可能であることが確認される場合(S146でNO)には、S148において、確認部102は、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定WS1であるのか否かを判断する。通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定WS1である場合(S148でYES)には、S152に進む。一方において、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定WS1でない場合、即ち、通話デバイス70の現在の無線設定が指定設定WS3である場合(S148でNO)には、S150に進む。S150では、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定WS3から初期設定WS1に変更する。このように、確認部102が、多機能機10と通信不可能であると確認し、かつ、通話デバイス70の現在の無線設定が指定設定WS3であると判断した場合には、通話デバイス70の無線設定は、指定設定WS3から初期設定WS1に変更される。
【0067】
次いで、S152において、確認部102は、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち初期設定WS1)を用いて、通信確認を無線で送信する。次いで、S154において、確認部102は、S152で送信した通信確認の応答を無線で受信したのか否かを判断する。多機能機10と通信不可能であることが確認される場合(S154でNO)には、S156において、制御部80は、印刷対象のFAXデータの印刷を実行不可能であることを示す情報を、印刷対象のFAXデータの送信元に送信する。S156を終えた場合には、S110に戻る。なお、S146でYESの場合、又は、S154でYESの場合には、S158に進む。
【0068】
S158では、送信部106(図1参照)は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、印刷対象のFAXデータを多機能機10に無線で送信する。なお、上記のS150の処理が実行されたことによって、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定WS1である場合には、S160において、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS3に変更する。S160を終えた場合には、S110に戻る。
【0069】
(具体例)
続いて、多機能機10及び通話デバイス70によって実現される具体的なケースについて説明する。以下の各ケースは、多機能機10及び通話デバイス70が図2及び図3のフローチャートを実行することによって実現される。
【0070】
(ケースA)
まず、図4及び図5を参照して、PSTN8を介して印刷対象のFAXデータを受信するケースAについて説明する。上述したように、ユーザによって指定設定WS2及び指定設定WS3が指定される前には、多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれの現在の無線設定は、同じアドホックの初期設定WS1である。
【0071】
図4に示されるように、多機能機10の確認部52は、確認タイマの値が所定値T1より大きくなる毎に、初期設定WS1を用いて、通話デバイス70に通信確認を無線で送信する(図2のS10)。即ち、多機能機10の確認部52は、通話デバイス70に通信確認を無線で送信することを繰り返す。通話デバイス70の制御部80は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、多機能機10から通信確認を受信する(図3のS122でYES)。この場合、通話デバイス70の制御部80は、初期設定WS1を用いて、多機能機10に通信確認の応答を無線で送信する(図3のS124)。多機能機10の確認部52は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、通信確認の応答を受信する(図2のS14でYES)。この結果、多機能機10の現在の無線設定として、初期設定WS1が維持される。
【0072】
S200において、通話デバイス70のFAX通信部110は、PSTN8を介して印刷対象のFAXデータを受信する(図3のS140でYES)。この場合、通話デバイス70の確認部102は、初期設定WS1を用いて、多機能機10に通信確認を無線で送信する(図3のS144)。多機能機10の制御部30は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、通話デバイス70から通信確認を受信する(図2のS22でYES)。この場合、多機能機10の制御部30は、初期設定WS1を用いて、通話デバイス70に通信確認の応答を無線で送信する(図2のS24)。これにより、通話デバイス70の確認部102は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、通信確認の応答を受信する(図3のS146でYES)。
【0073】
次いで、通話デバイス70の送信部106は、初期設定WS1を用いて、多機能機10に印刷対象のFAXデータを無線で送信する(図3のS158)。多機能機10の受信部58は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、印刷対象のFAXデータを無線で受信する(図2のS26でYES)。次いで、S202において、多機能機10の提供部60は、印刷対象のFAXデータによって表わされる画像の印刷を印刷実行部16に実行させる(図2のS28)。
【0074】
(設定変更)
例えば、ユーザが、多機能機10及びPC4がAP6を介して無線通信可能なシステムを構築することを望むことがある。この場合、ユーザは、多機能機10の無線設定として、インフラストラクチャの指定設定WS2を指定する。そうすると、多機能機10の現在の無線設定である指定設定WS2と、通話デバイス70の現在の無線設定である初期設定WS1と、が異なるために、多機能機10と通話デバイス70とが通信不可能になってしまう。従って、ユーザは、さらに、通話デバイス70の無線設定として、インフラストラクチャの指定設定WS3を指定する。この際に、ユーザが、通話デバイス70の無線設定として、指定設定WS2と同じ指定設定WS3を適切に指定した場合には、次のケースA1が実現される。これに対し、ユーザが、通話デバイス70の無線設定として、指定設定WS2と異なる指定設定WS3を誤って指定した場合には、図5のケースA2が実現される。
【0075】
(ケースA1)
ケースA1では、多機能機10及び通話デバイス70は、指定設定WS2及びWS3を用いて、AP6を介して、適切に無線通信を実行可能である。従って、AP6を介して無線通信が実行される点を除くと、初期設定WS1を用いて無線通信が実行される上記のケースと同様である。即ち、多機能機10と通話デバイス70との間では、通信確認、通信確認の応答、及び、印刷対象のFAXデータが、AP6を介して、適切に通信される。従って、S210でPSTN8を介して受信される印刷対象のFAXデータによって表わされる画像が、S212で適切に印刷される。
【0076】
(ケースA2)
一方において、図5に示されるように、ケースA2では、多機能機10の確認部52は、指定設定WS2を用いて、通話デバイス70に通信確認を無線で送信しても(図2のS10)、通信確認の応答を受信することができない(図2のS14でNO)。この場合、S220において、多機能機10の変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定WS2から初期設定WS1に変更する(図2のS18)。そして、多機能機10は、初期タイマの値が所定値T2を経過するまでの間に、通話デバイス70から通信確認を受信したのか否かを判断する(図2のS22でNO、かつ、S26でNO、かつ、S32でNO)。一方、多機能機10は、初期タイマの値が所定値T2を経過するまでの間に、通話デバイス70から通信確認を受信した場合(図2のS22でYES)には、通話デバイス70から受信したFAXデータを印刷した後に、多機能機10の現在の無線設定を初期設定WS1から指定設定WS2に戻す。即ち、初期タイマの値が所定値T2を経過するまで、又は、印刷対象のFAXデータの印刷が完了するまで、多機能機10の現在の無線設定として、初期設定WS1が維持される。
【0077】
S222でPSTN8を介して印刷対象のFAXデータが受信される際に、通話デバイス70の確認部102は、指定設定WS3を用いて、多機能機10に通信確認を無線で送信しても(図3のS144)、通信確認の応答を受信することができない(図3のS146でNO)。この場合、S224において、通話デバイス70の変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定WS3から初期設定WS1に変更する(図3のS150)。次いで、通話デバイス70の確認部102は、初期設定WS1を用いて、多機能機10に通信確認を無線で送信する(図3のS152)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定WS1が設定されているために、多機能機10は、AP6を介さずに、当該通信確認を受信して応答を送信し(図2のS24)、通話デバイス70は、AP6を介さずに、当該応答を受信する(図3のS154でYES)。
【0078】
次いで、通話デバイス70の送信部106は、初期設定WS1を用いて、多機能機10に印刷対象のFAXデータを無線で送信する(図3のS158)。多機能機10の受信部58は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、印刷対象のFAXデータを無線で受信する(図2のS26でYES)。この結果、印刷対象のFAXデータの送信及び受信が完了する(S226,S228)。次いで、S230において、印刷対象のFAXデータによって表わされる画像の印刷が実行される。
【0079】
次いで、S232において、多機能機10の変更部54は、印刷対象のFAXデータの受信が完了した際に(より具体的には印刷が終了した際に)、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS2に変更する(図2のS30)。これにより、多機能機10は、指定設定WS2を用いて、AP6を介して、他のデバイス(例えばPC4)と無線通信を再び実行し得る。また、S234において、通話デバイス70の変更部54は、印刷対象のFAXデータの送信が完了した際に、通話デバイス70の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS3に変更する(図3のS160)。これにより、通話デバイス70の無線設定が、ユーザによって指定された変更前の指定設定WS3に戻る。
【0080】
なお、初期タイマの値が所定値T2より大きくなる(図2のS32でYES)ということは、以下のことを意味する。即ち、通話デバイス70が印刷対象のFAXデータを受信する際に多機能機10に送信する通信確認(以下では「特定の通信確認」と呼ぶ)を、初期タイマの値が所定値T2を経過するまでの間に、多機能機10が受信しないことを意味する。従って、図2のS32の処理は、多機能機10の判断部62が、初期タイマの値が所定値T2を経過するまでの間に、特定の通信確認を通話デバイス70から受信したのか否かを判断する処理であると言える。特定の通信確認を受信しなかったと判断される場合(図2のS32でYES)には、図5のS236に示されるように、多機能機10の変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS2に変更する(図2のS34)。この構成によると、多機能機10の現在の無線設定として初期設定WS1が維持され続けるのを抑制することができ、この結果、多機能機10は、指定設定WS2を用いて、AP6を介して、他のデバイス(例えばPC4)と無線通信を実行し得る。
【0081】
(ケースAの効果)
上記のケースA2から明らかなように、多機能機10は、多機能機10の現在の無線設定(即ち指定設定WS2)を用いて、通話デバイス70と通信可能であるのか否かを確認することを繰り返す。多機能機10は、通話デバイス70と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を指定設定WS2から初期設定WS1に変更する。一方において、通話デバイス70は、印刷対象のFAXデータが多機能機10に送信されるべき際(図3のS140でYES)に、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち指定設定WS3)を用いて、多機能機10と通信可能であるのか否かを確認する。通話デバイス70は、多機能機10と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を指定設定WS3から初期設定WS1に変更する。この結果、多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定WS1が設定されるために、通話デバイス70は、変更後の現在の無線設定(即ち初期設定WS1)を用いて、印刷対象のFAXデータを多機能機10に無線で送信することができ、多機能機10は、変更後の現在の無線設定(即ち初期設定WS1)を用いて、印刷対象のFAXデータを通話デバイス70から無線で受信することができる。従って、多機能機10及び通話デバイス70が適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る。
【0082】
(ケースB)
続いて、図6及び図7を参照して、PSTN8を介して送信対象のFAXデータを送信するケースBについて説明する。図6に示されるように、通話デバイス70の確認部102は、初期設定WS1を用いて、多機能機10に通信確認を無線で送信することを繰り返す(図3のS110)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定WS1が設定されているために、多機能機10は、AP6を介さずに、当該通信確認を受信して応答を送信し(図2のS24)、通話デバイス70は、AP6を介さずに、当該応答を受信する(図3のS114でYES)。この結果、通話デバイス70の現在の無線設定として、初期設定WS1が維持される。
【0083】
S240でFAX送信操作が実行されると(図2のS40でYES)、多機能機10の確認部52は、初期設定WS1を用いて、通話デバイス70に通信確認を無線で送信する(図2のS44)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定WS1が設定されているために、通話デバイス70は、AP6を介さずに、当該通信確認を受信して応答を送信し(図3のS124)、多機能機10は、AP6を介さずに、当該応答を受信する(図2のS46でYES)。
【0084】
次いで、多機能機10の送信部106は、初期設定WS1を用いて、通話デバイス70に送信対象のFAXデータを無線で送信する(図2のS58)。通話デバイス70の受信部108は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、送信対象のFAXデータを無線で受信する(図3のS126でYES)。次いで、S242において、通話デバイス70のFAX通信部110は、PSTN8を介して、送信対象のFAXデータを送信する(図3のS128)。
【0085】
ユーザが、多機能機10の無線設定として、指定設定WS2を指定し、さらに、通話デバイス70の無線設定として、指定設定WS2と同じ指定設定WS3を適切に指定した場合には、次のケースB1が実現される。これに対し、ユーザが、通話デバイス70の無線設定として、指定設定WS2と異なる指定設定WS3を誤って指定した場合には、図7のケースB2が実現される。
【0086】
(ケースB1)
ケースB1では、多機能機10及び通話デバイス70は、指定設定WS2及びWS3を用いて、AP6を介して、適切に無線通信を実行可能である。従って、S250でFAX送信操作が実行される場合に、多機能機10と通話デバイス70との間では、通信確認、通信確認の応答、及び、送信対象のFAXデータが、AP6を介して、適切に通信される。この結果、S252において、送信対象のFAXデータがPSTN8を介して送信される。
【0087】
(ケースB2)
一方において、図7に示されるように、ケースB2では、通話デバイス70の確認部102は、指定設定WS3を用いて、多機能機10に通信確認を無線で送信しても(図3のS110)、通信確認の応答を受信することができない(図3のS114でNO)。この場合、S260において、通話デバイス70の変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定WS3から初期設定WS1に変更する(図3のS118)。なお、通話デバイス70では、初期タイマが利用されない。即ち、通話デバイス70は、無線設定が初期設定WS1に変更されると(図3のS118)、送信対象のFAXデータを受信するまで、現在の無線設定として初期設定WS1を維持する。これにより、多機能機10は、より確実にFAXデータを送信することができる。所定時間経過後に通話デバイス70の無線設定が初期設定WS1から指定設定WS3に戻る構成と比べて、多機能機10及び通話デバイス70の無線設定が行き違いになること(異なること)を防ぐことができるためである。なお、通話デバイス70の現在の無線設定として初期設定WS1が長時間に亘って維持される可能性があるが、通話デバイス70は、多機能機10以外のデバイス(例えばPC4)と無線通信する必要がないために、不都合は生じない。
【0088】
S262でFAX送信操作が実行される際に、多機能機10の確認部52は、指定設定WS2を用いて、通話デバイス70に通信確認を無線で送信しても(図2のS44)、通信確認の応答を受信することができない(図2のS46でNO)。この場合、S264において、多機能機10の変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定WS2から初期設定WS1に変更する(図2のS50)。次いで、多機能機10の確認部52は、初期設定WS1を用いて、通話デバイス70に通信確認を無線で送信する(図2のS52)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定WS1が設定されているために、通話デバイス70は、AP6を介さずに、当該通信確認を受信して応答を送信し(図3のS124)、多機能機10は、AP6を介さずに、当該応答を受信する(図2のS54でYES)。
【0089】
次いで、多機能機10の送信部56は、初期設定WS1を用いて、通話デバイス70に送信対象のFAXデータを無線で送信する(図2のS58)。通話デバイス70の受信部108は、初期設定WS1を用いて、AP6を介さずに、送信対象のFAXデータを無線で受信する(図3のS126でYES)。この結果、送信対象のFAXデータの送信及び受信が完了する(S266,S268)。次いで、S270において、通話デバイス70のFAX通信部110は、PSTN8を介して送信対象のFAXデータを送信する(図3のS128)。
【0090】
次いで、S272において、多機能機10の変更部54は、送信対象のFAXデータの送信が完了した際に、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS2に変更する(図2のS60)。これにより、多機能機10は、指定設定WS2を用いて、AP6を介して、他のデバイス(例えばPC4)と無線通信を再び実行し得る。また、S274において、通話デバイス70の変更部54は、送信対象のFAXデータの受信が完了した際に、通話デバイス70の現在の無線設定を、初期設定WS1から指定設定WS3に変更する(図3のS130)。これにより、通話デバイス70の無線設定が、ユーザによって指定された変更前の指定設定WS3に戻る。
【0091】
(ケースBの効果)
上記のケースB2から明らかなように、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち指定設定WS3)を用いて、多機能機10と通信可能であるのか否かを確認することを繰り返す。通話デバイス70は、多機能機10と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を指定設定WS3から初期設定WS1に変更する。一方において、多機能機10は、送信対象のFAXデータが通話デバイス70に送信されるべき際(図2のS40でYES)に、多機能機10の現在の無線設定(即ち指定設定WS2)を用いて、通話デバイス70と通信可能であるのか否かを確認する。多機能機10は、通話デバイス70と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を指定設定WS2から初期設定WS1に変更する。この結果、多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定WS1が設定されるために、多機能機10は、変更後の現在の無線設定(即ち初期設定WS1)を用いて、送信対象のFAXデータを通話デバイス70に無線で送信することができ、通話デバイス70は、変更後の現在の無線設定(即ち初期設定WS1)を用いて、送信対象のFAXデータを多機能機10から無線で受信することができる。従って多機能機10及び通話デバイス70が適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る。
【0092】
なお、指定設定WS2及び指定設定WS3が同じであっても、例えば、多機能機10及び通話デバイス70の少なくとも一方とAP6との距離が大きい場合には、多機能機10及び通話デバイス70が、指定設定WS2及び指定設定WS3を用いて、インフラストラクチャの無線通信を実行することができない可能性がある。このような場合にも、多機能機10及び通話デバイス70の無線設定は、指定設定WS2及び指定設定WS3から初期設定WS1に変更される。これにより、多機能機10及び通話デバイス70は、初期設定WS1を用いて、アドホックの無線通信を実行し得る。従って、上記のケースA及びBの技術は、指定設定WS2及び指定設定WS3が異なることに起因して無線通信を実行できないケースA2,B2のみならず、多機能機10及び通話デバイス70の設置環境に起因して無線通信を実行できないケースにも適用できる。
【0093】
上記の説明から明らかなように、図4及び図5のケースAでは、多機能機10、通話デバイス70が、それぞれ、「データ受信装置」、「データ送信装置」の一例である。従って、ケースAでは、通話デバイス70の確認部102、変更部104が、それぞれ、「第1の確認部」、「第1の変更部」の一例であり、多機能機10の確認部52、変更部54が、それぞれ、「第2の確認部」、「第2の変更部」の一例である。また、ケースAでは、初期設定WS1が「第1の無線設定」の一例であるが、指定設定WS2が「データ受信装置の第2の無線設定」の一例であり、指定設定WS3が「データ送信装置の第2の無線設定」の一例である。
【0094】
また、図6及び図7のケースBでは、多機能機10、通話デバイス70が、それぞれ、「データ送信装置」、「データ受信装置」の一例である。従って、ケースBでは、多機能機10の確認部52、変更部54が、それぞれ、「第1の確認部」、「第1の変更部」の一例であり、通話デバイス70の確認部102、変更部104が、それぞれ、「第2の確認部」、「第2の変更部」の一例である。また、ケースBでは、初期設定WS1が「第1の無線設定」の一例であるが、指定設定WS2が「データ送信装置の第2の無線設定」の一例であり、指定設定WS3が「データ受信装置の第2の無線設定」の一例である。
【0095】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0096】
(1)上記の実施例では、アドホックの無線設定WS1から、インフラストラクチャの無線設定WS2,WS3に設定変更が行なわれる。ただし、上記の実施例の技術は、アドホックの無線設定WS1から、アドホックの無線設定に設定変更が行なわれる構成にも適用することができる。また、インフラストラクチャの無線設定WS1から、インフラストラクチャ又はアドホックの無線設定に設定変更が行なわれる構成にも適用することができる。即ち、一般的に言うと、「第1の無線設定」は、アドホックの無線設定でもよいし、インフラストラクチャの無線設定でもよい。さらに、「第1の無線設定」は、出荷段階において予め格納されている無線設定に限らず、ユーザによって指定(設定)されるアドホックの無線設定でもよいし、ユーザによって指定(設定)されるインフラストラクチャの無線設定でもよい。同様に、「第2の無線設定」は、アドホックの無線設定でもよいし、インフラストラクチャの無線設定でもよい。また、「第1の無線設定」と「第2の無線設定」とは、同じモードの無線設定でもよいし、異なるモードの無線設定でもよい。
【0097】
(2)上記の実施例では、多機能機10と通話デバイス70との間で通信される通信対象のデータは、FAXデータである。即ち、一般的に言うと、「特定のデータ」は、FAXデータを含む。しかしながら、「特定のデータ」は、音声データ(例えば留守番電話の音声データ)、FAXデータ以外の画像データ、その他の種類のデータ(例えばテキストデータ)等を含んでいてもよい。
【0098】
(3)上記の実施例では、多機能機10及び通話デバイス70が、「データ送信装置」及び「データ受信装置」の一例であるが、これに限られない。例えば、「データ送信装置」及び「データ受信装置」のそれぞれがPCであってもよい。この場合、一対のPCの間でデータを通信するために、本明細書によって開示される技術が利用されてもよい。また、例えば、「データ送信装置」がPCであり、「データ受信装置」がプリンタであってもよい。この場合、例えば、PCが多機能機10に印刷の実行を指示するための印刷データが「特定のデータ」の一例である。
【0099】
(4)また、上記の実施例では、各部52〜62、及び、各部102〜110は、CPU32,82がプログラムを実行することによって実現される。これに代えて、各部52〜62、及び、各部102〜110のうちの少なくとも一部は、論理回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0100】
(5)また、通話デバイス70は、1個のデバイスによって構成されてもよいし、別体の複数個のデバイスによって構成されていてもよい。具体的には、通話デバイス70は、マイク72とスピーカ74とを備える子機と、PSTNインターフェース76と無線インターフェース78と制御部80とを備える充電器と、によって構成されていてもよい。一般的に言うと、「データ送信装置」及び/又は「データ受信装置」は、1個のデバイスによって構成されてもよいし、別体の複数個のデバイスによって構成されてもよい。
【0101】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0102】
WS1:初期設定、WS2:指定設定、WS3:指定設定、10:多機能機、70:通話デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線設定を格納しているデータ受信装置にデータを無線で送信するデータ送信装置であって、
前記第1の無線設定を格納するメモリと、
特定のデータが前記データ受信装置に送信されるべき際に、前記データ送信装置の現在の無線設定である第2の無線設定であって、前記第1の無線設定と異なる前記第2の無線設定を用いて、前記データ受信装置と通信可能であるのか否かを確認する第1の確認処理を実行する第1の確認部と、
前記第1の確認処理において、前記データ受信装置と通信不可能であると確認される場合に、前記データ送信装置の前記現在の無線設定を、前記第2の無線設定から前記第1の無線設定に変更する第1の変更部と、
前記データ送信装置の変更後の前記現在の無線設定である前記第1の無線設定を用いて、前記特定のデータを前記データ受信装置に無線で送信する送信部と、
を備えるデータ送信装置。
【請求項2】
前記データ送信装置は、さらに、
一般公衆回線が接続されるインターフェースと、
前記インターフェースを用いて、前記一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備え、
前記特定のデータは、前記FAX通信部が前記一般公衆回線を介して受信する特定のFAXデータを含む、請求項1に記載のデータ送信装置。
【請求項3】
前記データ受信装置は、
前記特定のFAXデータによって表わされる特定の画像をユーザに提供する提供部を備え、
前記データ送信装置は、前記データ受信装置の付属装置であって、FAXデータによって表わされる画像を前記ユーザに提供するための機能を備えていない前記付属装置である、請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項4】
前記データ受信装置は、
一般公衆回線が接続されるインターフェースと、
前記インターフェースを用いて、前記一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備え、
前記特定のデータは、前記データ受信装置が前記一般公衆回線を介して送信すべき特定のFAXデータを含む、請求項1に記載のデータ送信装置。
【請求項5】
前記データ送信装置は、さらに、
特定の原稿をスキャンして前記特定のFAXデータを生成するスキャン実行部を備え、
前記データ受信装置は、前記データ送信装置の付属装置であって、原稿をスキャンしてFAXデータを生成するための機能を備えていない前記付属装置である、請求項4に記載のデータ送信装置。
【請求項6】
前記第1の変更部は、前記データ送信装置の前記現在の無線設定を、前記第2の無線設定から前記第1の無線設定に変更した後に、少なくとも特定のタイミングまで、前記データ送信装置の前記現在の無線設定として前記第1の無線設定を維持し、
前記特定のタイミングは、前記データ受信装置への前記特定のデータの送信が完了するタイミングである、請求項1から5のいずれか一項に記載のデータ送信装置。
【請求項7】
前記第1の変更部は、さらに、前記データ受信装置への前記特定のデータの送信が完了した際に、前記データ送信装置の前記現在の無線設定を、前記第1の無線設定から前記第2の無線設定に変更する、請求項1から6のいずれか一項に記載のデータ送信装置。
【請求項8】
前記第1の無線設定は、前記データ送信装置及び前記データ受信装置が、アクセスポイントを介さずに直接的に無線通信を実行するためのアドホックモードの無線設定である、請求項1から7のいずれか一項に記載のデータ送信装置。
【請求項9】
第1の無線設定を格納しているデータ送信装置からデータを無線で受信するデータ受信装置であって、
前記第1の無線設定を格納するメモリと、
前記データ受信装置の現在の無線設定である第2の無線設定であって、前記第1の無線設定と異なる前記第2の無線設定を用いて、前記データ送信装置と通信可能であるのか否かを確認する第2の確認処理を繰り返し実行する第2の確認部と、
前記第2の確認処理において、前記データ送信装置と通信不可能であると確認される場合に、前記データ受信装置の前記現在の無線設定を、前記第2の無線設定から前記第1の無線設定に変更する第2の変更部と、
前記データ受信装置の変更後の前記現在の無線設定である前記第1の無線設定を用いて、特定のデータを前記データ送信装置から無線で受信する受信部と、
を備えるデータ受信装置。
【請求項10】
前記データ受信装置は、さらに、
一般公衆回線が接続されるインターフェースと、
前記インターフェースを用いて、前記一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備え、
前記特定のデータは、前記データ受信装置が前記一般公衆回線を介して送信すべき特定のFAXデータを含む、請求項9に記載のデータ受信装置。
【請求項11】
前記データ送信装置は、
特定の原稿をスキャンして前記特定のFAXデータを生成するスキャン実行部を備え、
前記データ受信装置は、前記データ送信装置の付属装置であって、原稿をスキャンしてFAXデータを生成するための機能を備えていない前記付属装置である、請求項10に記載のデータ受信装置。
【請求項12】
前記データ送信装置は、
一般公衆回線が接続されるインターフェースと、
前記インターフェースを用いて、前記一般公衆回線を介したFAXデータの通信を実行するFAX通信部と、を備え、
前記特定のデータは、前記データ送信装置が前記一般公衆回線を介して受信する特定のFAXデータを含む、請求項9に記載のデータ受信装置。
【請求項13】
前記データ受信装置は、さらに、
前記特定のFAXデータによって表わされる特定の画像をユーザに提供する提供部を備え、
前記データ送信装置は、前記データ受信装置の付属装置であって、FAXデータによって表わされる画像を前記ユーザに提供するための機能を備えていない前記付属装置である、請求項12に記載のデータ受信装置。
【請求項14】
前記データ送信装置は、前記特定のデータが前記データ受信装置に送信されるべき際に、前記データ送信装置の現在の無線設定を用いて、前記データ受信装置と通信可能であるのか否かを確認するための信号を無線で送信し、
前記データ受信装置は、さらに、
前記データ受信装置の前記現在の無線設定が、前記第2の無線設定から前記第1の無線設定に変更された後の所定の期間内に、前記データ送信装置から前記信号を無線で受信したのか否かを判断する判断部を備え、
前記第2の変更部は、さらに、前記所定の期間内に前記信号を受信しなかったと判断される場合に、前記所定の期間の経過後に、前記データ受信装置の前記現在の無線設定を、前記第1の無線設定から前記第2の無線設定に変更する、請求項9、12、及び、13のいずれか一項に記載のデータ受信装置。
【請求項15】
前記第2の変更部は、前記データ受信装置の前記現在の無線設定を、前記第2の無線設定から前記第1の無線設定に変更した後に、少なくとも特定のタイミングまで、前記データ受信装置の前記現在の無線設定として前記第1の無線設定を維持し、
前記特定のタイミングは、前記データ送信装置からの前記特定のデータの受信が完了するタイミングである、請求項9から14のいずれか一項に記載のデータ受信装置。
【請求項16】
前記第2の変更部は、さらに、前記データ送信装置からの前記特定のデータの受信が完了した際に、前記データ受信装置の前記現在の無線設定を、前記第1の無線設定から前記第2の無線設定に変更する、請求項9から15のいずれか一項に記載のデータ受信装置。
【請求項17】
前記第1の無線設定は、前記データ送信装置及び前記データ受信装置が、アクセスポイントを介さずに直接的に無線通信を実行するためのアドホックモードの無線設定である、請求項9から16のいずれか一項に記載のデータ受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119757(P2012−119757A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265195(P2010−265195)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】