データ配信システムおよび中継装置
【課題】複数の端末装置によるコンテンツの再生タイミングを制御する。
【解決手段】スピーカ装置20−2の再生に遅延が生じており、スピーカ装置20−1はその遅延時間Δt2を算出すると、遅延が生じていない自端末のオーディオデータの転送速度を、遅延時間に応じて、基本速度TからT2へ小さくするよう制御する。その一方で、スピーカ装置20−1は、遅延が生じていないスピーカ装置20−3に対して、オーディオデータの転送速度を、基本速度TからT2へ小さくするよう指示する遅延指示データを送信する。スピーカ装置20−3は、この遅延指示データに応じて、転送速度を基本速度TからT2へ小さくする。この構成によれば、スピーカ装置20−2の転送速度Tが、その他のスピーカ装置20による転送速度T2よりも相対的に大きいから、遅延時間は次第に小さくなり、再生タイミングの遅延が解消される。
【解決手段】スピーカ装置20−2の再生に遅延が生じており、スピーカ装置20−1はその遅延時間Δt2を算出すると、遅延が生じていない自端末のオーディオデータの転送速度を、遅延時間に応じて、基本速度TからT2へ小さくするよう制御する。その一方で、スピーカ装置20−1は、遅延が生じていないスピーカ装置20−3に対して、オーディオデータの転送速度を、基本速度TからT2へ小さくするよう指示する遅延指示データを送信する。スピーカ装置20−3は、この遅延指示データに応じて、転送速度を基本速度TからT2へ小さくする。この構成によれば、スピーカ装置20−2の転送速度Tが、その他のスピーカ装置20による転送速度T2よりも相対的に大きいから、遅延時間は次第に小さくなり、再生タイミングの遅延が解消される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末装置によるコンテンツの再生タイミングを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチチャネルフォーマットのオーディオ信号を再生して視聴するには、多数のスピーカが必要になる。例えば5.1チャネルフォーマットのオーディオ信号を忠実に再生するには、フロントL、フロントR、センタ、サラウンドL、サラウンドRといった5本のスピーカと、サブウーハと呼ばれる超低域音声成分(LFE)の再生のための専用スピーカが必要になる。なお、マルチチャネルオーディオ再生に関する技術文献として、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−112762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数チャネルからなるオーディオデータをストリーミング配信して再生する場合に、各チャネルに対応付けられたスピーカから放音される音声においては、理想的なタイミングがあるが、そのタイミングがずれてしまうことがある。これは各チャネルのオーディオデータがシリアルに配信され、さらに各種処理が行われるために、各チャネルにおける再生タイミングにずれが生じてしまうからである。なお、各チャネルにおける本来的な再生タイミングは、基本的には同時に放音されるように行われるが、受音位置とスピーカとの距離の関係を考慮した場合は適宜遅延時間が調整される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数の端末装置によるコンテンツの再生タイミングを制御するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係る端末装置は、ネットワークから取得したデータが自端末宛の情報であるか否かを判定し、自端末宛の情報である場合には当該データを取り込むデータ取得手段と、前記データ取得手段が取り込んだデータが放音用データである場合には、当該放音用データを順次蓄積するバッファ手段と、前記バッファ手段内の放音用データを順次読み出してオーディオ信号を生成して放音する放音手段と、前記データ取得手段が取り込んだデータに代表端末か子端末かを指定する指定情報が含まれていた場合に、当該指定情報に従い代表端末モードと子端末モードを設定するモード設定手段と、代表端末モードが設定された場合は、前記放音手段に対し所定時間待機させた後に放音を開始させ、かつ、子端末宛に放音開始を指示する放音開始指示を出力し、子端末モードが設定された場合は、前記データ取得手段が代表端末からの放音開始指示を取得したときに、前記放音手段による放音を開始させる制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の端末装置によるコンテンツの再生タイミングを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】配信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】部屋におけるスピーカ装置の設置の態様の一例を示す図である。
【図3】スピーカ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】転送速度テーブルの一例を示す図である。
【図5】管理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】配信システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【図7】配信システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【図8】先頭パケットデータのデータ構造を示す図である。
【図9】オーディオデータを含むパケットデータのデータ構造を示す図である。
【図10】タイムスタンプデータを含むパケットデータのデータ構造を示す図である。
【図11】(a)は管理装置においてオーディオデータが配信される様子を示すタイムチャートである。(b)はスピーカ装置においてオーディオデータの再生タイミングおよび転送速度の様子を示すタイムチャートである。
【図12】変形例における配信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<A:実施形態の構成>
まず、図1を参照して、本発明に係る配信システムについて説明する。図において、配信システム100は、例えば、店舗やスタジオあるいは住居に設置される。配信システム100は、管理装置10と、スピーカ装置20−1,20−2,20−3,20−4,20−5および20−6と、PLC専用アダプタ40とを備えている。以下では、スピーカ装置20のそれぞれを特に区別する必要の無い場合には、「スピーカ装置20」(第1の端末装置)と総称する。管理装置10とPLC専用アダプタ40とは、専用回線等のネットワーク1を介して通信可能に接続されている。PLC専用アダプタ40とスピーカ装置20とは電力線2を介して接続されている。
【0009】
管理装置10は、配信システム100を管理するためコンピュータ装置(CPU、メモリ、インタフェースなどから構成される)を有しており、スピーカ装置20に放音用データ等を配信する。管理装置10は、ネットワーク1、PLC専用アダプタ40及び電力線2を介して、スピーカ装置20のそれぞれにデータを送信する。PLC専用アダプタ40は、電力線2を介してPLC(Power Line Communications)方式でデータを伝送するためのアダプタである。具体的には、PLC専用アダプタ40は、管理装置10からネットワーク1を介して受信される信号を、電力線2を流れる給電電流に重畳させることによって、電力線2を介してスピーカ装置20に送信する。また、PLC専用アダプタ40は、電力線2を流れる給電電流に重畳された信号を抽出し、この信号を、ネットワーク1を介して管理装置10に送信する。スピーカ装置20は、放音用データを受信すると、それに応じて放音する機能を有する。
【0010】
次に、部屋3内におけるスピーカ装置20の設置態様の一例について、図2を参照しつつ説明する。図2において、部屋3にはスピーカ装置20−1〜20−6が設置されている。スピーカ装置20−1〜20−6は、電力を供給する給電レール200に取り付けられており、この給電レール200には図1に示す電力線2が設けられている。この給電レール200から供給される電力によりスピーカ装置20−1〜20−6の各部に電力が供給される。
【0011】
次に、スピーカ装置20の構成の一例について、図3を参照しつつ説明する。図3は、スピーカ装置20の構成の一例を示すブロック図である。制御部22は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶手段であるメモリを備え、ROMに記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介してスピーカ装置20の各部を制御する。PLC専用アダプタ23は、上述したPLC専用アダプタ40と同等の機能を有する。電源部24は、スピーカ装置20を駆動させるために、給電レール200から供給される電力を電力線21から受け取り、各部に供給する。通信インタフェース(以下、「通信IF部」という)25は、例えばモデム等を備える通信手段である。制御部22は、電力線21からPLC専用アダプタ23によって抽出されたデータを、通信IF部25を介して受信する。アドレス検出部26は、電力線2を流れる給電電流に重畳されて送信されてくるデータ(信号)を抽出し、抽出したデータの宛先アドレスを検出する。アドレス検出部26は、制御部22の制御の下、電力線2を介して伝送されてくるデータの宛先アドレスが自端末に割り当てられ、ROMに記憶されたIPアドレスと一致するか否かを判定し、一致した場合に当該データ(データストリーム)を取り込む。
【0012】
時計部32は、図示せぬクロックジェネレータから供給されるクロックに同期して作動するリアルタイムクロックであり、予め定められた時点からの経過時間(すなわち、時刻)を計測するとともに、その時刻を表す時刻情報を制御部22へ供給する。また、時計部32は、制御部22からの指示に応じて、計測する時刻をリセットする。
【0013】
第1データバッファ27および第2データバッファ28は、電力線2を介して伝送されてくるデータを一時的に記憶するための記憶手段である。第1データバッファ27には、アドレス検出部26が取り込んだデータが転送されて蓄積されていく。第2データバッファ28には、第1データバッファ27から転送され、音声の再生に用いられるオーディオデータが記憶される。このオーディオデータは、放音用データに挿入されている。本実施形態においては、第1データバッファ27は、外部装置から供給されるデータをある程度の時間長で記憶することができるようにその記憶容量は比較的大きく設定されている。一方で、第2データバッファ28は、放音処理に必要な分のオーディオデータを記憶すればよい容量に設定されている。D/A(Digital / Analog)変換部29は、第2データバッファ28に記憶されたデジタルデータをアナログ信号に変換する。オーディオ信号再生部30は、D/A変換部29から出力されるアナログ信号を増幅してオーディオ信号を生成(再生)し、スピーカ31に放音させる。
【0014】
また、制御部22のROMには、転送速度テーブル221が記憶されている。
図4は、転送速度テーブル221の一例を示した図である。この転送速度テーブル221においては、スピーカ装置20によって音声が再生された時刻が、基準となる時刻に対してどの程度遅れているか示す「遅延時間」と、データの転送速度(転送レート)である「転送速度」とが対応付けられている。「遅延時間」のフィールドには、「0ミリ秒〜50ミリ秒」」「51ミリ秒〜60ミリ秒」、「61ミリ秒〜70ミリ秒」、「71ミリ秒〜80ミリ秒」、「80ミリ秒〜100ミリ秒」「100ミリ秒以上」という具合に、所定の遅延時間の範囲を示す値が書き込まれている。「転送速度」には、それぞれの遅延時間に対応付けて、「T」(基本速度)、「T1」、「T2」、「T3」、「T4」、「T5」という転送速度が書き込まれている。ただし、各転送速度の関係は、基本速度T>T1>T2>T3>T4>T5であり、遅延時間が大きいほど転送速度は小さく、各転送速度は遅延時間の値に応じて適切に決められている。
【0015】
制御部22は、この転送速度テーブル221に応じた転送速度で、第1データバッファ27から放音用データを読み出し、これに含まれるオーディオデータを第2データバッファ28へ書き込むことにより、オーディオデータの転送を行う。また、制御部22は、これと同じ転送速度(読出速度)で第2データバッファ28からオーディオデータを読み出し、D/A変換部29、オーディオ信号再生部30を介してスピーカ31へ転送して再生・放音させる。ただし、初期状態では、転送速度を基本速度Tとする。これらの転送速度(読出速度)において、第2データバッファ28からの読出速度を大きくすると、第2データバッファ28に格納されるデータ量よりも読み出されるデータ量の方が大きくなるから、オーディオデータが第2データバッファ28に記憶されていない状態になり、放音されるべき音声が途切れてしまう虞がある。一方で、第1データバッファ27から第2データバッファ28への転送速度を大きくすると、上述したように第2データバッファ28の記憶容量は比較的小さいから、記憶容量を超えるオーディオデータが供給されてしまうと、データが消失してしまい、放音されない音声が生じる虞がある。よって、本実施形態ではこれらの転送速度(読出速度)を等しくしている。このような問題が起こらないのであれば、必ずしも転送速度を一致させる必要はない。
【0016】
このようにして制御部22が転送速度を制御することにより、再生タイミングを制御する。また、制御部22は、この転送速度テーブル221に書き込まれた転送速度で、他のスピーカ装置20にオーディオデータを転送させるよう指示する。
また、この実施形態では、スピーカ装置20を識別するための識別情報としてIPアドレスを用いるが、識別情報はIPアドレスに限らず、スピーカ装置20を識別するものであればどのようなものであってもよい。
【0017】
次に、管理装置10の構成について、図5を参照しつつ説明する。管理装置10は、各スピーカ装置20に対し、放音すべきオーディオ信号を生成するための放音用データをパケットによりストリーム配信する。
図5は、管理装置10の構成を示すブロック図である。図において、制御部11は、CPUやROM、RAMを備え、ROM又は記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介して管理装置10の各部を制御する。記憶部12は、制御部11によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばハードディスク装置である。表示部13は、液晶ディスプレイなどを備え、制御部11の制御の下で、管理装置10を操作するためのメニュー画面等を表示する。操作部14は、利用者による操作に応じた操作信号を制御部11に出力する。読取部15は、放音用データを配信するための各種データが格納された記憶媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc))からデータを読み出すデータ読み出し手段である。本実施形態では、この放音用データに含まれるオーディオデータは、マルチチャネルのデータを分割した内容である。通信IF部16は、例えばモデム等を備える通信手段であり、スピーカ装置20との間でネットワーク1、PLC専用アダプタ40及び電力線2を介して通信を行う。時計部17は、スピーカ装置20の時計部32と同等の機能を有し、制御部11の指示に応じて時刻の計測を開始する。例えば、放音用データの配信の開始時に、制御部11が読取部16に記憶媒体の読み取りを開始させるタイミングで、この指示を行う。
記憶部12には、スピーカ装置20を識別するために、スピーカ装置20−1〜20−6のそれぞれに割り当てられたIPアドレスが記憶されている。
【0018】
管理装置10とスピーカ装置20との間では所定の通信プロトコルに従って行われるデータ通信が行われる。本実施形態で用いられている通信プロトコルは、アプリケーション層の通信プロトコルとしては、RTP(Real-time Transport Protocol)が用いられており、トランスポート層の通信プロトコルとしては、UDP(User Datagram Protocol)が用いられており、ネットワーク層の通信プロトコルとしてはIP(Internet Protocol)が用いられている。RTPとは、オーディオデータや映像データをリアルタイムに送受信する通信サービスを提供するための通信プロトコルである。本実施形態において放音用データとして供給されるRTPパケットデータは、IPにおけるデータ転送単位であるパケットデータやTCPにおけるデータ転送単位であるセグメントと同様に、ヘッダ部とペイロード部とで構成されている。
【0019】
<B:実施形態の動作>
次に、この実施形態の動作の一例について、図6および図7に示すシーケンス図を参照しつつ説明する。管理装置10の利用者は、管理装置10の操作部14を介してオーディオデータの配信を開始することを指示する。制御部11は、操作部14から供給される操作内容に応じた操作信号に従い、読取部15にオーディオデータを格納した記録媒体を読み取らせ、配信のための処理を開始する。
【0020】
まず、管理装置10の制御部11は、記憶部12の所定領域に記憶されている属性情報を読み取る(ステップS1)。この属性情報には、複数チャネルのそれぞれについて、どのチャネルをどのスピーカ装置に割り当てるかを指定する情報が含まれている。制御部11は、この属性情報に基づいて各チャネルとスピーカ装置20とを対応付ける(ステップS2)。ここでは、楽曲のチャンネル数は「6」であるとし、配信システム100のスピーカ装置20の数も「6」である。以降においては、制御部11は、対応付けたスピーカ装置20へ各チャンネルのデータを送信する。
【0021】
続いて、制御部11は、各スピーカ装置20に所定のパケットデータ(以下、「先頭パケットデータ」という)を送信する(ステップS3)。この「先頭パケットデータ」の送信はオーディオデータの配信に先立って行われ、各スピーカ装置20が従うべき指示が含まれている。この楽曲の再生においては、各スピーカ装置20は先頭パケットデータの内容に基づいて制御を行う。
【0022】
図8は、先頭パケットデータのデータ構造を示す図である。図8に示したように、先頭パケットデータはヘッダ部とペイロード部とからなる。ヘッダ部には「送信先情報」、「データ種別情報」および「曲番号識別情報(以下、「楽曲ID」という)」が書き込まれている。「送信先情報」は、先頭パケットデータの送信先である各スピーカ装置20に割り当てられた宛先アドレス(IPアドレス)のことである。この内容によってパケットデータの送信先が特定される。「データ種別情報」は、管理装置10からスピーカ装置20に配信されるデータの種別を示す情報のことで、本実施形態ではオーディオデータを示す情報が書き込まれる。「楽曲ID」は、楽曲毎に割り当てられ、各楽曲を識別するための識別情報のことである。
【0023】
先頭パケットデータのペイロード部には「端末情報」、「チャネル情報」おょび「子端末情報」が書き込まれている。「端末情報」は、スピーカ装置20の動作モードを「代表端末モード」および「子端末モード」のいずれかに指定するための指定情報のことである。代表端末モードに設定されたスピーカ装置20は、自端末および子端末モードに設定されたスピーカ装置20の各種動作を制御する。本実施形態では、「端末情報」において、スピーカ装置20−1は代表端末モードに指定され、スピーカ装置20−2〜20−6は子端末モードに指定される。もちろん、「端末情報」による指定によって、スピーカ装置20−2等の他のスピーカ装置を代表端末モードに指定することもできる。「チャネル情報」は、楽曲のチャネル数のことである。本実施形態では、上述したようにチャネル数は「6」である。「子端末情報」は、子端末モードに割り当てられたスピーカ装置(スピーカ装置20−2〜20−6)の宛先アドレスのことである。
【0024】
各スピーカ装置20の制御部22は、アドレス検出部26を介して自端末宛の先頭パケットデータを受信すると、この内容をメモリ内の所定領域に記憶しておく。これに応じて、スピーカ装置20−1は代表端末モードとして制御を行い、スピーカ装置20−2〜20−6は子端末モードとして制御を行う。
【0025】
先頭パケットデータを送信した管理装置10の制御部11は、読取部15に記憶媒体を読み取らせ、読み取ったデータに基づいてRTPパケットデータを生成して、各チャネルに対応するスピーカ装置20に送信する(ステップS4)。
図9は、RTPパケットデータのデータ構造を示す図である。図9に示したように、RTPパケットデータのヘッダ部には、「送信先情報」、「データ種別情報」および「楽曲ID」が書き込まれている。これらの情報については先頭パケットデータと同じであり、その説明を省略する。RTPパケットデータのペイロード部には所定時間(本実施形態では、20ミリ秒)分のオーディオデータが書き込まれている。
【0026】
各スピーカ装置20の制御部22はRTPパケットデータを受信したら、これを第1データバッファ27に記憶させて待機する(ステップS5)。そして、代表端末モードのスピーカ装置20−1の制御部22は、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6に、放音を開始させるための指示を含むパケットデータ(以下、「放音開始指示」という)を送信する(ステップS6)。この放音開始指示を送信するタイミングは、例えばスピーカ装置20−1が最初のRTPパケットデータを受信してから所定時間経過した後であり、データ配信の速度にバラツキがあっても、全てのスピーカ装置20−1〜20−6にある程度のデータが蓄積できる時間が設定されている。なお、この所定時間を設定するデータを、管理装置10から配信するように構成してもよい。
【0027】
上述した放音開始指示には、送信元の情報であるスピーカ装置20−1に割り当てられたIPアドレスが含まれており、これを受信したスピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、どのスピーカ装置20が代表端末モードに設定されているかを知るとともに、このIPアドレスをメモリに記憶する(ステップS7)。そして、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、放音開始指示を取得したら、第1データバッファからオーディオデータを読み出して第2データバッファ28に転送し、音声の放音を開始する。
一方、スピーカ装置20−1の制御部22においては、放音開始指示を送信するとともに自端末においても放音を開始する。
【0028】
以上のように、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6は、代表端末モードのスピーカ装置20−1からの放音開始指示を待って再生を開始し、代表端末モードのスピーカ装置20−1は、放音開始指示を送信したタイミングで再生を開始する。この結果、全てのスピーカ装置20−1〜20−6によって同時に各チャネルのオーディオ信号が再生されて放音される。
また、代表端末モードのスピーカ装置20−1の制御部22は、最初のRTPパケットデータに応じたオーディオ信号の再生を開始する際に、時計部32が計測する時刻をリセットし(ステップS8)、これを再生開始時刻としてメモリの所定の領域に記憶する。ここで時刻をリセットすることにより、時計部32が計時する時刻は「0分00秒00」となり、時計部32が計測する時刻は、楽曲の再生開始時からの経過時間を示すこととなる。
【0029】
放音を開始すると、各スピーカ装置20の制御部22は、第1データバッファ27から順次RTPパケットデータを読み出す(ステップS9)。そして、制御部22は、このRTPパケットデータのヘッダ部にタイムスタンプデータが挿入されているか否かを判断する(ステップS10)。
ここで、図10は、ヘッダ部にタイムスタンプデータが挿入されたRTPパケットデータのデータ構造を示した図である。図10に示した「タイムスタンプ」には、管理装置10の時計部17が計測する時刻を表す時刻情報が書き込まれる。管理装置10の制御部11は、各チャネルで同時に放音されるべき音声に対応するRTPパケットデータに、時計部17から取得した同時刻を表す時刻情報を書き込み、各スピーカ装置20に所定のタイミング(例えば、10秒間隔)で送信する。このタイムスタンプデータは、各スピーカ装置20による再生タイミングを一致させるための同期信号としての機能を有することになるが、その詳細については後述する。
【0030】
図9に示したようなタイムスタンプデータが挿入されていないパケットデータを読み出しているときは、ステップS10の判定結果は「N」となり、ステップS11へ進む。
ステップS11において、各スピーカ装置20の制御部22は、RTPパケットデータに含まれているオーディオデータを第2データバッファ28へ転送する。このとき、制御部22は、転送速度テーブル221の内容に基づいて基本速度Tで転送する。そして、制御部22は、第2データバッファ28に記憶されたオーディオデータを、基本速度Tで順次読み出して転送して、再生した音声をスピーカ31に放音させる(ステップS12)。
【0031】
一方、上述のステップS10において「Y」となり、各スピーカ装置20の制御部22がRTPパケットデータにタイムスタンプデータが含まれていると判断すると、各スピーカ装置20は以下の処理を行う。
【0032】
まず、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、タイムスタンプデータを含むRTPパケットデータを受信すると、このタイムスタンプデータをスピーカ装置20−1に送信する(ステップS101)。代表端末モードのスピーカ装置20−1の制御部22は、スピーカ装置20−2〜20−6から受信したタイムスタンプデータの受信時刻を、時計部32の計時時刻を参照して特定し、自端末についてもタイムスタンプデータを受信した時刻を確認する(ステップS102)。
【0033】
続いて、スピーカ装置20−1の制御部22は、自端末を含めた各スピーカ装置20から取得したタイムスタンプデータを受信した受信時刻と、タイムスタンプデータが表す時刻との時間差を算出する(ステップS103)。そして、制御部22は、これらのうち最も小さい時間差であるΔtminとそれぞれ求めた時間差との差分を、各スピーカ装置20の遅延時間として算出する。
例えば、制御部22が、時計部32から取得した時刻情報が表す時刻がTAで、スピーカ装置20−1〜20〜6から時刻TBを表すタイムスタンプデータを受信(取得)した受信時刻が、それぞれTB1,TB2,TB3,・・・,TB6であったとする。この場合、制御部22は、TB1−TA,TB2−TA,TB3−TA,・・・,TB6−TAという演算を行って、タイムスタンプデータの受信時刻と、そのタイムスタンプデータが表す時刻との時間差を算出する。ここで、TB1−TA=Δtminとすると、制御部22はスピーカ装置20−1〜20−6の遅延時間Δt1,Δt2,Δt3,・・・,Δt6を、それぞれ0(=TB1−TA−Δtmin),TB2−TA−Δtmin,TB3−TA−Δtmin,・・・TB6−TA−Δtminと算出する。このように、再生の遅れが最も小さいスピーカ装置20(この場合、スピーカ装置20−1)を基準としたときの、再生の遅れ時間が、本実施形態における「遅延時間」である。
【0034】
スピーカ装置20−1の制御部22は、この遅延時間と、図4に図示した転送速度テーブル221とに基づいて、各スピーカ装置20のオーディオデータの転送速度を変更する制御を行う。例えば、スピーカ装置20−2による再生が遅れており、遅延時間Δt2が「62ミリ秒」であるとし、スピーカ装置20−1、20−3〜20−6の遅延時間が「0ミリ秒」であるとする。このとき、スピーカ装置20−1の制御部22は、この遅延時間Δt2と転送速度テーブル221とに基づいて、自端末のオーディオデータの転送速度を基本速度TからT2へ小さくするよう制御する(ステップS104)。また、スピーカ装置20−1の制御部22は、スピーカ装置20−3〜20−6に対しても、同様にオーディオデータの転送速度を、基本速度TからT2へ小さくするよう指示する遅延指示データを送信する(ステップS105)。この遅延指示データは、送信速度そのものを示すものであってもよいし、転送速度テーブル221に基づいて送信速度を特定できるから、遅延時間を示すものであってもよい。一方、スピーカ装置20−1の制御部22は、スピーカ装置20−2に対しては転送速度を指示する遅延指示データを送信しないか、または基本速度Tを維持するよう指示するデータを送信する。タイムスタンプデータの応答として受信した遅延指示データに応じて、スピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、オーディオデータの転送速度を基本速度TからT2へ変更する制御を行う(ステップS106)。
なお、代表端末モードのスピーカ装置20−1の再生タイミングが遅れている場合には、ステップS104は省略されるか、基本速度Tを維持するよう制御されることになる。
【0035】
以上のように、遅延が生じているスピーカ装置20−2以外は、遅延時間Δt2に応じて再生速度を小さくして楽曲を再生する。つまり、1のRTPパケットデータに応じた再生時間を20ミリ秒よりも大きくすることによって、次第に遅延時間Δt2を小さくする。
【0036】
この再生タイミング一致させる制御する処理について、図11に示す、配信システム100による再生タイミングの制御の様子を示すタイミングチャートを参照しつつ、より具体的に説明する。
図11(a)は、管理装置10による各RTPパケットデータの配信の様子を示すタイミングチャートで、同図(b)は、各スピーカ装置20によるオーディオデータの転送速度の様子を示すタイムチャートである。なお、同図においては、図が煩雑になることを防ぐために、スピーカ装置20−1,20−2,20−3のみについて図示しているが、ここでは、スピーカ装置20−4〜20−6に対する配信の様子や転送速度は、スピーカ装置20−3と同じである。
【0037】
同図(a)に示したように、管理装置10によってRTPパケットデータ「#A1」,「#B1」,「#C1」,・・・、「#A,n」,「#B,n」,「#C,n」,・・・,「#A,m」,「#B,m」,「#C,m」(n,m;自然数、m>n)という順で配信される。同図(a)において、代表端末モードのスピーカ装置20−1に配信されるパケットデータを「A」とし、再生の遅延が生じている子端末モードのスピーカ装置20−2に配信されるパケットデータを「B」とし、再生の遅延が生じていない子端末モードのスピーカ装置20−3に配信されるパケットデータを「C」とする。また、末尾の数字は各スピーカ装置20に配信されるパケットデータの順番を表す値であり、この値が一致するRTPパケットデータにおいては、理想的にはこれに応じた再生・放音が同時になされるべきものであることを意味する。
【0038】
同図(b)に示したように、スピーカ装置20−1の時計部32によって計測される時刻をtとする。また、各チャネルでn番目に配信されるRTPパケットデータ「#A,n」、「#B,n」、「#C,n」においては、それぞれ同じ時刻を表す時刻TIME0を表すタイムスタンプデータが挿入されている。各スピーカ装置20は、このRTPパケットデータ「#A,n」、「#B,n」、「#C,n」を受信すると、上記で説明したような転送速度を制御するための処理を行う。ここでは、スピーカ装置20−2によって転送されるRTPパケットデータ「#B,n」に応じた再生は、他のスピーカ装置20に対してΔt2=62ミリ秒だけ遅延しているから、上述のようにスピーカ装置20−1および20−3のオーディオデータの転送速度はT2とされ、スピーカ装置20−2については基本速度Tのままとされる。
【0039】
転送速度を変更するよう制御されると、RTPパケットデータ「#A,n+1」、「#B,n+1」、「#C,n+1」の転送速度も、図11(b)に示したように、それぞれT2、T、T2となる。さらに後で配信されるRTPパケットデータにおいても同様である。このようにすれば、スピーカ装置20−2によるオーディオデータの転送速度Tが、その他のスピーカ装置20の転送速度T2よりも相対的に大きくなるから、この転送速度の差分に応じて、次第に遅延時間Δt2は小さくなっていく。そして、RTPパケットデータ「#A,m」、「#B,m」、「#C,m」では、遅延時間Δt2=0ミリ秒となり、これらに応じた音声が再生されるタイミングは一致する。
【0040】
そして、スピーカ装置20−1の制御部22は、遅延時間Δt2が予め決められた所定量以下(例えば、10ミリ秒以下)になったと判断したら、スピーカ装置20−2に転送速度を小さくする前の速度に戻す(基本速度Tにする)よう指示する指示データを送信する。図11においては、時刻TIME1を表すタイムスタンプデータが挿入されたRTPパケットデータ「#A,m」、「#B,m」、「#C,m」が配信されたときに実行される。このように、再生の遅れが解消されたら、転送速度を基本速度Tに戻して各スピーカ装置20の転送速度を一致させることで、スピーカ装置20−2の再生タイミングが早い方にずれてしまうことを回避する。
【0041】
そして、各スピーカ装置20の制御部22は、上記で説明したステップS11以降の処理を行う。以降、各スピーカ装置20がRTPパケットデータを受信したら、上記処理ステップS5,S9〜S12を実行する。そして、各スピーカ装置20の制御部22は、タイムスタンプデータを検出するたびに遅延時間を算出して、上記の処理を実行する。そして、管理装置10から楽曲の再生の終了が通知されると、各スピーカ装置20の制御部22は、メモリに記憶しておいた先頭パケットデータに基づく情報をクリアして、楽曲の再生を終了する。
【0042】
以上の処理により、各スピーカ装置20がタイムスタンプデータを取得したタイミングに基づいて、遅れが最も大きいスピーカ装置20との相対的な再生タイミングを一致させる。配信システム100においては、タイムスタンプデータに基づいて各スピーカ装置20による再生タイミングが一致するよう制御を行うから、タイムスタンプデータは同期信号として機能すると言える。また、複数のスピーカ装置20の再生が遅延した場合にも、同じ方法で遅延時間を算出し、それに基づいて転送速度を制御することによって、再生タイミングを一致させることができる。
この構成によると、再生タイミングの遅延が検出されると、楽曲の再生速度(転送速度)を小さくするように制御するが、その速度の変化は僅かであり、かつ、そのような制御が行われる時間も短いから、放音された音声の聴取者にとっての聴取性は問題とならない。また、子端末モードのスピーカ装置20がタイムスタンプデータを受信してから送信するまでに要する時間や、代表端末モードのスピーカ装置20が遅延時間を検出して、転送速度を制御・指示するまでに要する時間は、聴取者の聴取性に影響を与えるような遅延時間に対して十分に小さく、再生タイミングの制御には影響を与えない。
【0043】
ところで、上述のステップS2において、スピーカ装置20の数と、楽曲のチャネル数とが一致しない場合には、管理装置10はこれらの数の関係に応じて各チャネルを割り当てるスピーカ装置20を決定する。
【0044】
オーディオデータのチャネル数がスピーカ装置20の数よりも多い場合で、例えば配信システム100を用いて6.1chサラウンドからなるオーディオデータを配信する場合を想定する。このとき、各チャネルに対してそれぞれ1ずつスピーカ装置20を割り当てると、スピーカ装置20が1だけ不足してしまう。よって、この場合、制御部11は、ある1チャネルのオーディオデータを配信しないようにする。例えば重要度の低いチャネルの音声を再生しないようにするべく、このチャネルを利用者に指定させればよい。利用者が不要と判断したチャネルを、操作部14を介して指定すると、この操作に応じて管理装置10の制御部11は、ステップS2において、この不要なチャネル除いたオーディオデータをそれぞれのスピーカ装置20に対応付けて、ステップS3以降の処理を行う。
また、上述の処理に代えて、スピーカ装置20の数に併せてダウンミキシング処理を行い、ダウンミキシングした後のデータを各スピーカ装置20に配信してもよい。
【0045】
一方、オーディオデータのチャネル数がスピーカ装置20の数よりも少ない場合、管理装置10の制御部11は、重要度の高いチャネルのオーディオデータを複数のスピーカ装置20に配信する。例えば、「6」のスピーカ装置に対して、「4」チャネルからなるオーディオデータを配信するのであれば、制御部11は、最も重要度の高いチャネルと、次に重要度の高いチャネルのオーディオデータを、複数のスピーカ装置20に対応付けて配信するようにして、ステップS3以降の処理を行う。このときの重要度においても、利用者に指定させればよい。
【0046】
また、オーディオデータが単数チャネル(モノラル)の場合、すべてのスピーカ装置20から同じチャネルの音声が放音される。この場合も、上記と同じようにして、各スピーカ装置20の再生タイミングを一致させるよう制御するが、1のスピーカ装置20のみを用いる場合には、このような制御を行わなくてもよい。後者の場合、管理装置10は代表端末モードや子端末モードを指定せずに、チャネル数が「1」であることを示す先頭パケットデータをスピーカ装置20に送信する。そして、この先頭パケットデータを受信したスピーカ装置20は、受信したオーディオデータを、順次第1データバッファ27から第2データバッファ28へと転送して、再生した音声をスピーカ31に放音させる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、複数のスピーカ装置20のうち、代表端末モードのスピーカ装置20−1は、遅延時間に応じた転送速度で自端末のオーディオデータを転送するよう制御し、かつ、子端末モードのスピーカ装置20に対しても遅延時間に応じた転送速度にするよう指示する。子端末モードのスピーカ装置20はこの指示に応じて転送速度を制御する。この構成によれば、遅延時間に応じて楽曲の再生速度を変化させることによって、複数のスピーカ装置20から放音される各チャネルの音声の再生タイミングを一致させることができる。
【0048】
<C:変形例>
上述した実施形態を以下のように変形してもよい。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
【0049】
(1)上述した実施形態では、代表端末モードのスピーカ装置20が、各スピーカ装置20の再生タイミングを制御していたが、これをルータ等の中継装置300(CPU、メモリ、通信インタフェース、時計部などから構成される)が実現してもよい。この中継装置300においても、上記所定の通信プロトコルにしたがって通信が行われる。この場合の配信システムの構成は図12に示したようになる。図12に示したように、配信システム100aにおいて、PLC専用アダプタ40はネットワーク4、中継装置300および電力線2を介して各スピーカ装置20と接続される。中継装置300は、上述したスピーカ装置20の制御部22と同等の機能を有する。具体的には、中継装置300は、管理装置10からネットワーク4および通信インタフェースを介して受信したデータを、通信インタフェースおよびネットワーク1を介して各スピーカ装置20へ配信する。スピーカ装置20−1〜20−6は、タイムスタンプデータを受信すると、これを中継装置300に送信する。中継装置300は、スピーカ装置20−1〜20−6からタイムスタンプデータを受信(取得)すると、これらを受信した受信時刻と、タイムスタンプデータが表す時刻とを比較する。そして、中継装置300は、遅延時間と転送速度テーブルに応じて転送速度決定し、これを指示するための遅延指示データを各スピーカ装置20へ送信する。各スピーカ装置20はこれに応じてオーディオデータの転送速度を制御する。この構成においても、各スピーカ装置20の遅延時間に応じて、再生タイミングの遅延を解消することができる。また、この場合、スピーカ装置20の時計部32に相当する構成は不要である。
【0050】
(2)また、聴取者の聴取(受音)位置に応じて、スピーカ装置20は再生タイミングを制御してもよい。例えば、コンサートホールなどの比較的大きな空間に配信システム100を適用する場合、空間における聴取者の位置によって各スピーカ装置20からの距離が大きく異なることがある。この場合、各スピーカ装置20による再生タイミングが一致していても、聴取位置では、各チャネルの音声のタイミングがずれて聴こえてしまう。
この具体的な実現方法として、管理装置10が聴取者の位置から各スピーカ装置20までの距離を、代表端末モードのスピーカ装置20−1に通知する。聴取者の位置からスピーカまでの距離は、例えば管理装置10の利用者によって操作部14を介して入力されるとよい。スピーカ装置20−1は、この距離と音声(音波)の伝搬速度との演算によって、聴取位置に音声が伝わるのに要する時間を算出する。そして、スピーカ装置20−1は、この時間分だけタイミングをずらすように遅延時間を発生させて再生する。つまり、聴取位置に近いスピーカ装置20ほど、遅延時間を大きくして再生させる。このようにすれば、聴取位置において各チャネルの音声が聴こえるタイミングを一致させることができる。
【0051】
(3)上述した実施形態では、音声の再生タイミングを制御していたが、映像と音声との再生タイミングや、複数の映像どうしの再生タイミングを制御する場合にも、本発明を適用することができる。この配信システムが音声とは違うコンテンツである映像を扱う場合であっても、配信したコンテンツを再生することができる構成を採ればよいだけで、その他の構成および動作は上述の実施形態と同じでよい。
具体的には、放映用の端末装置として、スピーカ装置20に代えてモニタ装置(第2の端末装置)を採用する。このモニタ装置は、スピーカ装置20のD/A変換部29、オーディオ信号再生部30およびスピーカ31の代わりに、放映するためのモニタや、映像データに応じて映像信号を生成(再生)し、モニタに映像を表示させるための表示制御手段を備える構成を有する。動作においては、代表端末モードに設定された端末装置が、子端末モードに設定されたモニタ装置に放映を開始させる放映開始指示を出力して放映を開始させたり、子端末モードのスピーカ装置20に放音開始指示を出力して放音を開始させたりする。以降、実施形態と同様にして、タイムスタンプデータを取得するたびに再生タイミングを制御すればよい。もちろん、モニタ装置が代表端末モードに設定されてもよく、この場合も、モニタ装置が、最初のRTPパケットデータを受信してから所定時間待機した後に放映を開始したり、子端末モードの端末装置に放音開始指示や放映開始指示を出力して、放音・放映を開始させればよい。この構成によれば、複数の映像の再生タイミングや、映像と音声との再生タイミングを一致させることができる。
【0052】
(4)上述した実施形態において、管理装置10が、楽曲の配信状況を記憶部12に記憶しておき、その配信実績に基づいて、楽曲に対する使用料を算出してもよい。具体的には、管理装置10は、楽曲を再生するたびにその楽曲に対応する楽曲IDを配信実績として記憶部12に記憶する。そして、管理装置10は、予め定められた日時(例えば、月末、週末、等)になったことを検知すると、配信実績に基づいて、予め決められた楽曲に対する使用料を算出する。管理装置10は、算出した使用料を示すデータを、例えば通信IF部16を介して図示せぬサーバ装置へ出力する。サーバ装置の管理者は、管理装置10から送信されてくる使用料情報を確認することで、楽曲の使用料を確認することができる。すなわち、この態様によれば、管理装置10が使用料の算出処理を行うから、システムの管理者は、コンテンツの使用料をそれぞれ算出する必要がなく、煩雑な作業を行う必要がない。
【0053】
(5)上述した実施形態では、代表端末モードのスピーカ装置20−1が、タイムスタンプデータの受信時刻とそのタイムスタンプデータが表す時刻との時間差に基づいて、各スピーカ装置20の遅延時間を算出していた。これに代えて、各スピーカ装置20は時計部32を有するから、子端末の各スピーカ装置20がこの時間差を算出してスピーカ装置20−1に送信してもよい。この場合、代表端末のスピーカ装置20−1は、受信した時間差に基づいて遅延時間を算出する。ただし、この場合、各スピーカ装置20の時計部32が計測する時刻が一致している必要があるため、スピーカ装置20−1又は管理装置10が、時計部32が計測する時刻を同期させる同期信号を、楽曲の再生開始前や再生中のあるタイミングで送信することが好ましい。
【0054】
(6)上述した実施形態では、管理装置10が先頭パケットデータを送信することによって各スピーカ装置20の動作モードを設定していたが、各スピーカ装置20の動作モードが予め決められていてもよい。例えば、スピーカ装置20−1が代表端末モードに固定されている場合、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6は、時刻を計測する必要がないから、時計部32を有さなくてよい。また、この場合、スピーカ装置20−1は、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6のIPアドレスを予めROMに記憶しておいてもよい。
【0055】
(7)上述した実施形態では、スピーカ装置20の数は「6」であったが、これよりも少なくてもよいし、さらに多くしてもよい。
【0056】
(8)上述した実施形態では、管理装置10は、読取部15が記憶媒体を読み取って取得したオーディオデータに基づいて配信を行っていたが、データの取得方法はこれ以外の方法であってもよい。例えば、ネットワークを介して接続された外部装置から取得してもよい。
【0057】
(9)上述した実施形態では、スピーカ装置20の数は「6」であったが、さらに多くしてもよく、少なくてもよく、「2」以上のスピーカ装置20を備えていれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…ネットワーク、10…管理装置、100,100a…配信システム、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…操作部、15…読取部、16…通信IF部、17,32…時計部、2,21…電力線、20…スピーカ装置、200…給電レール、300…中継装置、22…制御部、221…転送速度テーブル、23,40…PLC専用アダプタ、24…電源部、25…通信IF部、26…アドレス検出部、27…第1データバッファ、28…第2データバッファ、29…D/A変換部、3…部屋、30…オーディオ信号再生部、31…スピーカ、4…ネットワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末装置によるコンテンツの再生タイミングを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチチャネルフォーマットのオーディオ信号を再生して視聴するには、多数のスピーカが必要になる。例えば5.1チャネルフォーマットのオーディオ信号を忠実に再生するには、フロントL、フロントR、センタ、サラウンドL、サラウンドRといった5本のスピーカと、サブウーハと呼ばれる超低域音声成分(LFE)の再生のための専用スピーカが必要になる。なお、マルチチャネルオーディオ再生に関する技術文献として、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−112762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数チャネルからなるオーディオデータをストリーミング配信して再生する場合に、各チャネルに対応付けられたスピーカから放音される音声においては、理想的なタイミングがあるが、そのタイミングがずれてしまうことがある。これは各チャネルのオーディオデータがシリアルに配信され、さらに各種処理が行われるために、各チャネルにおける再生タイミングにずれが生じてしまうからである。なお、各チャネルにおける本来的な再生タイミングは、基本的には同時に放音されるように行われるが、受音位置とスピーカとの距離の関係を考慮した場合は適宜遅延時間が調整される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数の端末装置によるコンテンツの再生タイミングを制御するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係る端末装置は、ネットワークから取得したデータが自端末宛の情報であるか否かを判定し、自端末宛の情報である場合には当該データを取り込むデータ取得手段と、前記データ取得手段が取り込んだデータが放音用データである場合には、当該放音用データを順次蓄積するバッファ手段と、前記バッファ手段内の放音用データを順次読み出してオーディオ信号を生成して放音する放音手段と、前記データ取得手段が取り込んだデータに代表端末か子端末かを指定する指定情報が含まれていた場合に、当該指定情報に従い代表端末モードと子端末モードを設定するモード設定手段と、代表端末モードが設定された場合は、前記放音手段に対し所定時間待機させた後に放音を開始させ、かつ、子端末宛に放音開始を指示する放音開始指示を出力し、子端末モードが設定された場合は、前記データ取得手段が代表端末からの放音開始指示を取得したときに、前記放音手段による放音を開始させる制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の端末装置によるコンテンツの再生タイミングを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】配信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】部屋におけるスピーカ装置の設置の態様の一例を示す図である。
【図3】スピーカ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】転送速度テーブルの一例を示す図である。
【図5】管理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】配信システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【図7】配信システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【図8】先頭パケットデータのデータ構造を示す図である。
【図9】オーディオデータを含むパケットデータのデータ構造を示す図である。
【図10】タイムスタンプデータを含むパケットデータのデータ構造を示す図である。
【図11】(a)は管理装置においてオーディオデータが配信される様子を示すタイムチャートである。(b)はスピーカ装置においてオーディオデータの再生タイミングおよび転送速度の様子を示すタイムチャートである。
【図12】変形例における配信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<A:実施形態の構成>
まず、図1を参照して、本発明に係る配信システムについて説明する。図において、配信システム100は、例えば、店舗やスタジオあるいは住居に設置される。配信システム100は、管理装置10と、スピーカ装置20−1,20−2,20−3,20−4,20−5および20−6と、PLC専用アダプタ40とを備えている。以下では、スピーカ装置20のそれぞれを特に区別する必要の無い場合には、「スピーカ装置20」(第1の端末装置)と総称する。管理装置10とPLC専用アダプタ40とは、専用回線等のネットワーク1を介して通信可能に接続されている。PLC専用アダプタ40とスピーカ装置20とは電力線2を介して接続されている。
【0009】
管理装置10は、配信システム100を管理するためコンピュータ装置(CPU、メモリ、インタフェースなどから構成される)を有しており、スピーカ装置20に放音用データ等を配信する。管理装置10は、ネットワーク1、PLC専用アダプタ40及び電力線2を介して、スピーカ装置20のそれぞれにデータを送信する。PLC専用アダプタ40は、電力線2を介してPLC(Power Line Communications)方式でデータを伝送するためのアダプタである。具体的には、PLC専用アダプタ40は、管理装置10からネットワーク1を介して受信される信号を、電力線2を流れる給電電流に重畳させることによって、電力線2を介してスピーカ装置20に送信する。また、PLC専用アダプタ40は、電力線2を流れる給電電流に重畳された信号を抽出し、この信号を、ネットワーク1を介して管理装置10に送信する。スピーカ装置20は、放音用データを受信すると、それに応じて放音する機能を有する。
【0010】
次に、部屋3内におけるスピーカ装置20の設置態様の一例について、図2を参照しつつ説明する。図2において、部屋3にはスピーカ装置20−1〜20−6が設置されている。スピーカ装置20−1〜20−6は、電力を供給する給電レール200に取り付けられており、この給電レール200には図1に示す電力線2が設けられている。この給電レール200から供給される電力によりスピーカ装置20−1〜20−6の各部に電力が供給される。
【0011】
次に、スピーカ装置20の構成の一例について、図3を参照しつつ説明する。図3は、スピーカ装置20の構成の一例を示すブロック図である。制御部22は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶手段であるメモリを備え、ROMに記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介してスピーカ装置20の各部を制御する。PLC専用アダプタ23は、上述したPLC専用アダプタ40と同等の機能を有する。電源部24は、スピーカ装置20を駆動させるために、給電レール200から供給される電力を電力線21から受け取り、各部に供給する。通信インタフェース(以下、「通信IF部」という)25は、例えばモデム等を備える通信手段である。制御部22は、電力線21からPLC専用アダプタ23によって抽出されたデータを、通信IF部25を介して受信する。アドレス検出部26は、電力線2を流れる給電電流に重畳されて送信されてくるデータ(信号)を抽出し、抽出したデータの宛先アドレスを検出する。アドレス検出部26は、制御部22の制御の下、電力線2を介して伝送されてくるデータの宛先アドレスが自端末に割り当てられ、ROMに記憶されたIPアドレスと一致するか否かを判定し、一致した場合に当該データ(データストリーム)を取り込む。
【0012】
時計部32は、図示せぬクロックジェネレータから供給されるクロックに同期して作動するリアルタイムクロックであり、予め定められた時点からの経過時間(すなわち、時刻)を計測するとともに、その時刻を表す時刻情報を制御部22へ供給する。また、時計部32は、制御部22からの指示に応じて、計測する時刻をリセットする。
【0013】
第1データバッファ27および第2データバッファ28は、電力線2を介して伝送されてくるデータを一時的に記憶するための記憶手段である。第1データバッファ27には、アドレス検出部26が取り込んだデータが転送されて蓄積されていく。第2データバッファ28には、第1データバッファ27から転送され、音声の再生に用いられるオーディオデータが記憶される。このオーディオデータは、放音用データに挿入されている。本実施形態においては、第1データバッファ27は、外部装置から供給されるデータをある程度の時間長で記憶することができるようにその記憶容量は比較的大きく設定されている。一方で、第2データバッファ28は、放音処理に必要な分のオーディオデータを記憶すればよい容量に設定されている。D/A(Digital / Analog)変換部29は、第2データバッファ28に記憶されたデジタルデータをアナログ信号に変換する。オーディオ信号再生部30は、D/A変換部29から出力されるアナログ信号を増幅してオーディオ信号を生成(再生)し、スピーカ31に放音させる。
【0014】
また、制御部22のROMには、転送速度テーブル221が記憶されている。
図4は、転送速度テーブル221の一例を示した図である。この転送速度テーブル221においては、スピーカ装置20によって音声が再生された時刻が、基準となる時刻に対してどの程度遅れているか示す「遅延時間」と、データの転送速度(転送レート)である「転送速度」とが対応付けられている。「遅延時間」のフィールドには、「0ミリ秒〜50ミリ秒」」「51ミリ秒〜60ミリ秒」、「61ミリ秒〜70ミリ秒」、「71ミリ秒〜80ミリ秒」、「80ミリ秒〜100ミリ秒」「100ミリ秒以上」という具合に、所定の遅延時間の範囲を示す値が書き込まれている。「転送速度」には、それぞれの遅延時間に対応付けて、「T」(基本速度)、「T1」、「T2」、「T3」、「T4」、「T5」という転送速度が書き込まれている。ただし、各転送速度の関係は、基本速度T>T1>T2>T3>T4>T5であり、遅延時間が大きいほど転送速度は小さく、各転送速度は遅延時間の値に応じて適切に決められている。
【0015】
制御部22は、この転送速度テーブル221に応じた転送速度で、第1データバッファ27から放音用データを読み出し、これに含まれるオーディオデータを第2データバッファ28へ書き込むことにより、オーディオデータの転送を行う。また、制御部22は、これと同じ転送速度(読出速度)で第2データバッファ28からオーディオデータを読み出し、D/A変換部29、オーディオ信号再生部30を介してスピーカ31へ転送して再生・放音させる。ただし、初期状態では、転送速度を基本速度Tとする。これらの転送速度(読出速度)において、第2データバッファ28からの読出速度を大きくすると、第2データバッファ28に格納されるデータ量よりも読み出されるデータ量の方が大きくなるから、オーディオデータが第2データバッファ28に記憶されていない状態になり、放音されるべき音声が途切れてしまう虞がある。一方で、第1データバッファ27から第2データバッファ28への転送速度を大きくすると、上述したように第2データバッファ28の記憶容量は比較的小さいから、記憶容量を超えるオーディオデータが供給されてしまうと、データが消失してしまい、放音されない音声が生じる虞がある。よって、本実施形態ではこれらの転送速度(読出速度)を等しくしている。このような問題が起こらないのであれば、必ずしも転送速度を一致させる必要はない。
【0016】
このようにして制御部22が転送速度を制御することにより、再生タイミングを制御する。また、制御部22は、この転送速度テーブル221に書き込まれた転送速度で、他のスピーカ装置20にオーディオデータを転送させるよう指示する。
また、この実施形態では、スピーカ装置20を識別するための識別情報としてIPアドレスを用いるが、識別情報はIPアドレスに限らず、スピーカ装置20を識別するものであればどのようなものであってもよい。
【0017】
次に、管理装置10の構成について、図5を参照しつつ説明する。管理装置10は、各スピーカ装置20に対し、放音すべきオーディオ信号を生成するための放音用データをパケットによりストリーム配信する。
図5は、管理装置10の構成を示すブロック図である。図において、制御部11は、CPUやROM、RAMを備え、ROM又は記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介して管理装置10の各部を制御する。記憶部12は、制御部11によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばハードディスク装置である。表示部13は、液晶ディスプレイなどを備え、制御部11の制御の下で、管理装置10を操作するためのメニュー画面等を表示する。操作部14は、利用者による操作に応じた操作信号を制御部11に出力する。読取部15は、放音用データを配信するための各種データが格納された記憶媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc))からデータを読み出すデータ読み出し手段である。本実施形態では、この放音用データに含まれるオーディオデータは、マルチチャネルのデータを分割した内容である。通信IF部16は、例えばモデム等を備える通信手段であり、スピーカ装置20との間でネットワーク1、PLC専用アダプタ40及び電力線2を介して通信を行う。時計部17は、スピーカ装置20の時計部32と同等の機能を有し、制御部11の指示に応じて時刻の計測を開始する。例えば、放音用データの配信の開始時に、制御部11が読取部16に記憶媒体の読み取りを開始させるタイミングで、この指示を行う。
記憶部12には、スピーカ装置20を識別するために、スピーカ装置20−1〜20−6のそれぞれに割り当てられたIPアドレスが記憶されている。
【0018】
管理装置10とスピーカ装置20との間では所定の通信プロトコルに従って行われるデータ通信が行われる。本実施形態で用いられている通信プロトコルは、アプリケーション層の通信プロトコルとしては、RTP(Real-time Transport Protocol)が用いられており、トランスポート層の通信プロトコルとしては、UDP(User Datagram Protocol)が用いられており、ネットワーク層の通信プロトコルとしてはIP(Internet Protocol)が用いられている。RTPとは、オーディオデータや映像データをリアルタイムに送受信する通信サービスを提供するための通信プロトコルである。本実施形態において放音用データとして供給されるRTPパケットデータは、IPにおけるデータ転送単位であるパケットデータやTCPにおけるデータ転送単位であるセグメントと同様に、ヘッダ部とペイロード部とで構成されている。
【0019】
<B:実施形態の動作>
次に、この実施形態の動作の一例について、図6および図7に示すシーケンス図を参照しつつ説明する。管理装置10の利用者は、管理装置10の操作部14を介してオーディオデータの配信を開始することを指示する。制御部11は、操作部14から供給される操作内容に応じた操作信号に従い、読取部15にオーディオデータを格納した記録媒体を読み取らせ、配信のための処理を開始する。
【0020】
まず、管理装置10の制御部11は、記憶部12の所定領域に記憶されている属性情報を読み取る(ステップS1)。この属性情報には、複数チャネルのそれぞれについて、どのチャネルをどのスピーカ装置に割り当てるかを指定する情報が含まれている。制御部11は、この属性情報に基づいて各チャネルとスピーカ装置20とを対応付ける(ステップS2)。ここでは、楽曲のチャンネル数は「6」であるとし、配信システム100のスピーカ装置20の数も「6」である。以降においては、制御部11は、対応付けたスピーカ装置20へ各チャンネルのデータを送信する。
【0021】
続いて、制御部11は、各スピーカ装置20に所定のパケットデータ(以下、「先頭パケットデータ」という)を送信する(ステップS3)。この「先頭パケットデータ」の送信はオーディオデータの配信に先立って行われ、各スピーカ装置20が従うべき指示が含まれている。この楽曲の再生においては、各スピーカ装置20は先頭パケットデータの内容に基づいて制御を行う。
【0022】
図8は、先頭パケットデータのデータ構造を示す図である。図8に示したように、先頭パケットデータはヘッダ部とペイロード部とからなる。ヘッダ部には「送信先情報」、「データ種別情報」および「曲番号識別情報(以下、「楽曲ID」という)」が書き込まれている。「送信先情報」は、先頭パケットデータの送信先である各スピーカ装置20に割り当てられた宛先アドレス(IPアドレス)のことである。この内容によってパケットデータの送信先が特定される。「データ種別情報」は、管理装置10からスピーカ装置20に配信されるデータの種別を示す情報のことで、本実施形態ではオーディオデータを示す情報が書き込まれる。「楽曲ID」は、楽曲毎に割り当てられ、各楽曲を識別するための識別情報のことである。
【0023】
先頭パケットデータのペイロード部には「端末情報」、「チャネル情報」おょび「子端末情報」が書き込まれている。「端末情報」は、スピーカ装置20の動作モードを「代表端末モード」および「子端末モード」のいずれかに指定するための指定情報のことである。代表端末モードに設定されたスピーカ装置20は、自端末および子端末モードに設定されたスピーカ装置20の各種動作を制御する。本実施形態では、「端末情報」において、スピーカ装置20−1は代表端末モードに指定され、スピーカ装置20−2〜20−6は子端末モードに指定される。もちろん、「端末情報」による指定によって、スピーカ装置20−2等の他のスピーカ装置を代表端末モードに指定することもできる。「チャネル情報」は、楽曲のチャネル数のことである。本実施形態では、上述したようにチャネル数は「6」である。「子端末情報」は、子端末モードに割り当てられたスピーカ装置(スピーカ装置20−2〜20−6)の宛先アドレスのことである。
【0024】
各スピーカ装置20の制御部22は、アドレス検出部26を介して自端末宛の先頭パケットデータを受信すると、この内容をメモリ内の所定領域に記憶しておく。これに応じて、スピーカ装置20−1は代表端末モードとして制御を行い、スピーカ装置20−2〜20−6は子端末モードとして制御を行う。
【0025】
先頭パケットデータを送信した管理装置10の制御部11は、読取部15に記憶媒体を読み取らせ、読み取ったデータに基づいてRTPパケットデータを生成して、各チャネルに対応するスピーカ装置20に送信する(ステップS4)。
図9は、RTPパケットデータのデータ構造を示す図である。図9に示したように、RTPパケットデータのヘッダ部には、「送信先情報」、「データ種別情報」および「楽曲ID」が書き込まれている。これらの情報については先頭パケットデータと同じであり、その説明を省略する。RTPパケットデータのペイロード部には所定時間(本実施形態では、20ミリ秒)分のオーディオデータが書き込まれている。
【0026】
各スピーカ装置20の制御部22はRTPパケットデータを受信したら、これを第1データバッファ27に記憶させて待機する(ステップS5)。そして、代表端末モードのスピーカ装置20−1の制御部22は、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6に、放音を開始させるための指示を含むパケットデータ(以下、「放音開始指示」という)を送信する(ステップS6)。この放音開始指示を送信するタイミングは、例えばスピーカ装置20−1が最初のRTPパケットデータを受信してから所定時間経過した後であり、データ配信の速度にバラツキがあっても、全てのスピーカ装置20−1〜20−6にある程度のデータが蓄積できる時間が設定されている。なお、この所定時間を設定するデータを、管理装置10から配信するように構成してもよい。
【0027】
上述した放音開始指示には、送信元の情報であるスピーカ装置20−1に割り当てられたIPアドレスが含まれており、これを受信したスピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、どのスピーカ装置20が代表端末モードに設定されているかを知るとともに、このIPアドレスをメモリに記憶する(ステップS7)。そして、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、放音開始指示を取得したら、第1データバッファからオーディオデータを読み出して第2データバッファ28に転送し、音声の放音を開始する。
一方、スピーカ装置20−1の制御部22においては、放音開始指示を送信するとともに自端末においても放音を開始する。
【0028】
以上のように、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6は、代表端末モードのスピーカ装置20−1からの放音開始指示を待って再生を開始し、代表端末モードのスピーカ装置20−1は、放音開始指示を送信したタイミングで再生を開始する。この結果、全てのスピーカ装置20−1〜20−6によって同時に各チャネルのオーディオ信号が再生されて放音される。
また、代表端末モードのスピーカ装置20−1の制御部22は、最初のRTPパケットデータに応じたオーディオ信号の再生を開始する際に、時計部32が計測する時刻をリセットし(ステップS8)、これを再生開始時刻としてメモリの所定の領域に記憶する。ここで時刻をリセットすることにより、時計部32が計時する時刻は「0分00秒00」となり、時計部32が計測する時刻は、楽曲の再生開始時からの経過時間を示すこととなる。
【0029】
放音を開始すると、各スピーカ装置20の制御部22は、第1データバッファ27から順次RTPパケットデータを読み出す(ステップS9)。そして、制御部22は、このRTPパケットデータのヘッダ部にタイムスタンプデータが挿入されているか否かを判断する(ステップS10)。
ここで、図10は、ヘッダ部にタイムスタンプデータが挿入されたRTPパケットデータのデータ構造を示した図である。図10に示した「タイムスタンプ」には、管理装置10の時計部17が計測する時刻を表す時刻情報が書き込まれる。管理装置10の制御部11は、各チャネルで同時に放音されるべき音声に対応するRTPパケットデータに、時計部17から取得した同時刻を表す時刻情報を書き込み、各スピーカ装置20に所定のタイミング(例えば、10秒間隔)で送信する。このタイムスタンプデータは、各スピーカ装置20による再生タイミングを一致させるための同期信号としての機能を有することになるが、その詳細については後述する。
【0030】
図9に示したようなタイムスタンプデータが挿入されていないパケットデータを読み出しているときは、ステップS10の判定結果は「N」となり、ステップS11へ進む。
ステップS11において、各スピーカ装置20の制御部22は、RTPパケットデータに含まれているオーディオデータを第2データバッファ28へ転送する。このとき、制御部22は、転送速度テーブル221の内容に基づいて基本速度Tで転送する。そして、制御部22は、第2データバッファ28に記憶されたオーディオデータを、基本速度Tで順次読み出して転送して、再生した音声をスピーカ31に放音させる(ステップS12)。
【0031】
一方、上述のステップS10において「Y」となり、各スピーカ装置20の制御部22がRTPパケットデータにタイムスタンプデータが含まれていると判断すると、各スピーカ装置20は以下の処理を行う。
【0032】
まず、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、タイムスタンプデータを含むRTPパケットデータを受信すると、このタイムスタンプデータをスピーカ装置20−1に送信する(ステップS101)。代表端末モードのスピーカ装置20−1の制御部22は、スピーカ装置20−2〜20−6から受信したタイムスタンプデータの受信時刻を、時計部32の計時時刻を参照して特定し、自端末についてもタイムスタンプデータを受信した時刻を確認する(ステップS102)。
【0033】
続いて、スピーカ装置20−1の制御部22は、自端末を含めた各スピーカ装置20から取得したタイムスタンプデータを受信した受信時刻と、タイムスタンプデータが表す時刻との時間差を算出する(ステップS103)。そして、制御部22は、これらのうち最も小さい時間差であるΔtminとそれぞれ求めた時間差との差分を、各スピーカ装置20の遅延時間として算出する。
例えば、制御部22が、時計部32から取得した時刻情報が表す時刻がTAで、スピーカ装置20−1〜20〜6から時刻TBを表すタイムスタンプデータを受信(取得)した受信時刻が、それぞれTB1,TB2,TB3,・・・,TB6であったとする。この場合、制御部22は、TB1−TA,TB2−TA,TB3−TA,・・・,TB6−TAという演算を行って、タイムスタンプデータの受信時刻と、そのタイムスタンプデータが表す時刻との時間差を算出する。ここで、TB1−TA=Δtminとすると、制御部22はスピーカ装置20−1〜20−6の遅延時間Δt1,Δt2,Δt3,・・・,Δt6を、それぞれ0(=TB1−TA−Δtmin),TB2−TA−Δtmin,TB3−TA−Δtmin,・・・TB6−TA−Δtminと算出する。このように、再生の遅れが最も小さいスピーカ装置20(この場合、スピーカ装置20−1)を基準としたときの、再生の遅れ時間が、本実施形態における「遅延時間」である。
【0034】
スピーカ装置20−1の制御部22は、この遅延時間と、図4に図示した転送速度テーブル221とに基づいて、各スピーカ装置20のオーディオデータの転送速度を変更する制御を行う。例えば、スピーカ装置20−2による再生が遅れており、遅延時間Δt2が「62ミリ秒」であるとし、スピーカ装置20−1、20−3〜20−6の遅延時間が「0ミリ秒」であるとする。このとき、スピーカ装置20−1の制御部22は、この遅延時間Δt2と転送速度テーブル221とに基づいて、自端末のオーディオデータの転送速度を基本速度TからT2へ小さくするよう制御する(ステップS104)。また、スピーカ装置20−1の制御部22は、スピーカ装置20−3〜20−6に対しても、同様にオーディオデータの転送速度を、基本速度TからT2へ小さくするよう指示する遅延指示データを送信する(ステップS105)。この遅延指示データは、送信速度そのものを示すものであってもよいし、転送速度テーブル221に基づいて送信速度を特定できるから、遅延時間を示すものであってもよい。一方、スピーカ装置20−1の制御部22は、スピーカ装置20−2に対しては転送速度を指示する遅延指示データを送信しないか、または基本速度Tを維持するよう指示するデータを送信する。タイムスタンプデータの応答として受信した遅延指示データに応じて、スピーカ装置20−2〜20−6の制御部22は、オーディオデータの転送速度を基本速度TからT2へ変更する制御を行う(ステップS106)。
なお、代表端末モードのスピーカ装置20−1の再生タイミングが遅れている場合には、ステップS104は省略されるか、基本速度Tを維持するよう制御されることになる。
【0035】
以上のように、遅延が生じているスピーカ装置20−2以外は、遅延時間Δt2に応じて再生速度を小さくして楽曲を再生する。つまり、1のRTPパケットデータに応じた再生時間を20ミリ秒よりも大きくすることによって、次第に遅延時間Δt2を小さくする。
【0036】
この再生タイミング一致させる制御する処理について、図11に示す、配信システム100による再生タイミングの制御の様子を示すタイミングチャートを参照しつつ、より具体的に説明する。
図11(a)は、管理装置10による各RTPパケットデータの配信の様子を示すタイミングチャートで、同図(b)は、各スピーカ装置20によるオーディオデータの転送速度の様子を示すタイムチャートである。なお、同図においては、図が煩雑になることを防ぐために、スピーカ装置20−1,20−2,20−3のみについて図示しているが、ここでは、スピーカ装置20−4〜20−6に対する配信の様子や転送速度は、スピーカ装置20−3と同じである。
【0037】
同図(a)に示したように、管理装置10によってRTPパケットデータ「#A1」,「#B1」,「#C1」,・・・、「#A,n」,「#B,n」,「#C,n」,・・・,「#A,m」,「#B,m」,「#C,m」(n,m;自然数、m>n)という順で配信される。同図(a)において、代表端末モードのスピーカ装置20−1に配信されるパケットデータを「A」とし、再生の遅延が生じている子端末モードのスピーカ装置20−2に配信されるパケットデータを「B」とし、再生の遅延が生じていない子端末モードのスピーカ装置20−3に配信されるパケットデータを「C」とする。また、末尾の数字は各スピーカ装置20に配信されるパケットデータの順番を表す値であり、この値が一致するRTPパケットデータにおいては、理想的にはこれに応じた再生・放音が同時になされるべきものであることを意味する。
【0038】
同図(b)に示したように、スピーカ装置20−1の時計部32によって計測される時刻をtとする。また、各チャネルでn番目に配信されるRTPパケットデータ「#A,n」、「#B,n」、「#C,n」においては、それぞれ同じ時刻を表す時刻TIME0を表すタイムスタンプデータが挿入されている。各スピーカ装置20は、このRTPパケットデータ「#A,n」、「#B,n」、「#C,n」を受信すると、上記で説明したような転送速度を制御するための処理を行う。ここでは、スピーカ装置20−2によって転送されるRTPパケットデータ「#B,n」に応じた再生は、他のスピーカ装置20に対してΔt2=62ミリ秒だけ遅延しているから、上述のようにスピーカ装置20−1および20−3のオーディオデータの転送速度はT2とされ、スピーカ装置20−2については基本速度Tのままとされる。
【0039】
転送速度を変更するよう制御されると、RTPパケットデータ「#A,n+1」、「#B,n+1」、「#C,n+1」の転送速度も、図11(b)に示したように、それぞれT2、T、T2となる。さらに後で配信されるRTPパケットデータにおいても同様である。このようにすれば、スピーカ装置20−2によるオーディオデータの転送速度Tが、その他のスピーカ装置20の転送速度T2よりも相対的に大きくなるから、この転送速度の差分に応じて、次第に遅延時間Δt2は小さくなっていく。そして、RTPパケットデータ「#A,m」、「#B,m」、「#C,m」では、遅延時間Δt2=0ミリ秒となり、これらに応じた音声が再生されるタイミングは一致する。
【0040】
そして、スピーカ装置20−1の制御部22は、遅延時間Δt2が予め決められた所定量以下(例えば、10ミリ秒以下)になったと判断したら、スピーカ装置20−2に転送速度を小さくする前の速度に戻す(基本速度Tにする)よう指示する指示データを送信する。図11においては、時刻TIME1を表すタイムスタンプデータが挿入されたRTPパケットデータ「#A,m」、「#B,m」、「#C,m」が配信されたときに実行される。このように、再生の遅れが解消されたら、転送速度を基本速度Tに戻して各スピーカ装置20の転送速度を一致させることで、スピーカ装置20−2の再生タイミングが早い方にずれてしまうことを回避する。
【0041】
そして、各スピーカ装置20の制御部22は、上記で説明したステップS11以降の処理を行う。以降、各スピーカ装置20がRTPパケットデータを受信したら、上記処理ステップS5,S9〜S12を実行する。そして、各スピーカ装置20の制御部22は、タイムスタンプデータを検出するたびに遅延時間を算出して、上記の処理を実行する。そして、管理装置10から楽曲の再生の終了が通知されると、各スピーカ装置20の制御部22は、メモリに記憶しておいた先頭パケットデータに基づく情報をクリアして、楽曲の再生を終了する。
【0042】
以上の処理により、各スピーカ装置20がタイムスタンプデータを取得したタイミングに基づいて、遅れが最も大きいスピーカ装置20との相対的な再生タイミングを一致させる。配信システム100においては、タイムスタンプデータに基づいて各スピーカ装置20による再生タイミングが一致するよう制御を行うから、タイムスタンプデータは同期信号として機能すると言える。また、複数のスピーカ装置20の再生が遅延した場合にも、同じ方法で遅延時間を算出し、それに基づいて転送速度を制御することによって、再生タイミングを一致させることができる。
この構成によると、再生タイミングの遅延が検出されると、楽曲の再生速度(転送速度)を小さくするように制御するが、その速度の変化は僅かであり、かつ、そのような制御が行われる時間も短いから、放音された音声の聴取者にとっての聴取性は問題とならない。また、子端末モードのスピーカ装置20がタイムスタンプデータを受信してから送信するまでに要する時間や、代表端末モードのスピーカ装置20が遅延時間を検出して、転送速度を制御・指示するまでに要する時間は、聴取者の聴取性に影響を与えるような遅延時間に対して十分に小さく、再生タイミングの制御には影響を与えない。
【0043】
ところで、上述のステップS2において、スピーカ装置20の数と、楽曲のチャネル数とが一致しない場合には、管理装置10はこれらの数の関係に応じて各チャネルを割り当てるスピーカ装置20を決定する。
【0044】
オーディオデータのチャネル数がスピーカ装置20の数よりも多い場合で、例えば配信システム100を用いて6.1chサラウンドからなるオーディオデータを配信する場合を想定する。このとき、各チャネルに対してそれぞれ1ずつスピーカ装置20を割り当てると、スピーカ装置20が1だけ不足してしまう。よって、この場合、制御部11は、ある1チャネルのオーディオデータを配信しないようにする。例えば重要度の低いチャネルの音声を再生しないようにするべく、このチャネルを利用者に指定させればよい。利用者が不要と判断したチャネルを、操作部14を介して指定すると、この操作に応じて管理装置10の制御部11は、ステップS2において、この不要なチャネル除いたオーディオデータをそれぞれのスピーカ装置20に対応付けて、ステップS3以降の処理を行う。
また、上述の処理に代えて、スピーカ装置20の数に併せてダウンミキシング処理を行い、ダウンミキシングした後のデータを各スピーカ装置20に配信してもよい。
【0045】
一方、オーディオデータのチャネル数がスピーカ装置20の数よりも少ない場合、管理装置10の制御部11は、重要度の高いチャネルのオーディオデータを複数のスピーカ装置20に配信する。例えば、「6」のスピーカ装置に対して、「4」チャネルからなるオーディオデータを配信するのであれば、制御部11は、最も重要度の高いチャネルと、次に重要度の高いチャネルのオーディオデータを、複数のスピーカ装置20に対応付けて配信するようにして、ステップS3以降の処理を行う。このときの重要度においても、利用者に指定させればよい。
【0046】
また、オーディオデータが単数チャネル(モノラル)の場合、すべてのスピーカ装置20から同じチャネルの音声が放音される。この場合も、上記と同じようにして、各スピーカ装置20の再生タイミングを一致させるよう制御するが、1のスピーカ装置20のみを用いる場合には、このような制御を行わなくてもよい。後者の場合、管理装置10は代表端末モードや子端末モードを指定せずに、チャネル数が「1」であることを示す先頭パケットデータをスピーカ装置20に送信する。そして、この先頭パケットデータを受信したスピーカ装置20は、受信したオーディオデータを、順次第1データバッファ27から第2データバッファ28へと転送して、再生した音声をスピーカ31に放音させる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、複数のスピーカ装置20のうち、代表端末モードのスピーカ装置20−1は、遅延時間に応じた転送速度で自端末のオーディオデータを転送するよう制御し、かつ、子端末モードのスピーカ装置20に対しても遅延時間に応じた転送速度にするよう指示する。子端末モードのスピーカ装置20はこの指示に応じて転送速度を制御する。この構成によれば、遅延時間に応じて楽曲の再生速度を変化させることによって、複数のスピーカ装置20から放音される各チャネルの音声の再生タイミングを一致させることができる。
【0048】
<C:変形例>
上述した実施形態を以下のように変形してもよい。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
【0049】
(1)上述した実施形態では、代表端末モードのスピーカ装置20が、各スピーカ装置20の再生タイミングを制御していたが、これをルータ等の中継装置300(CPU、メモリ、通信インタフェース、時計部などから構成される)が実現してもよい。この中継装置300においても、上記所定の通信プロトコルにしたがって通信が行われる。この場合の配信システムの構成は図12に示したようになる。図12に示したように、配信システム100aにおいて、PLC専用アダプタ40はネットワーク4、中継装置300および電力線2を介して各スピーカ装置20と接続される。中継装置300は、上述したスピーカ装置20の制御部22と同等の機能を有する。具体的には、中継装置300は、管理装置10からネットワーク4および通信インタフェースを介して受信したデータを、通信インタフェースおよびネットワーク1を介して各スピーカ装置20へ配信する。スピーカ装置20−1〜20−6は、タイムスタンプデータを受信すると、これを中継装置300に送信する。中継装置300は、スピーカ装置20−1〜20−6からタイムスタンプデータを受信(取得)すると、これらを受信した受信時刻と、タイムスタンプデータが表す時刻とを比較する。そして、中継装置300は、遅延時間と転送速度テーブルに応じて転送速度決定し、これを指示するための遅延指示データを各スピーカ装置20へ送信する。各スピーカ装置20はこれに応じてオーディオデータの転送速度を制御する。この構成においても、各スピーカ装置20の遅延時間に応じて、再生タイミングの遅延を解消することができる。また、この場合、スピーカ装置20の時計部32に相当する構成は不要である。
【0050】
(2)また、聴取者の聴取(受音)位置に応じて、スピーカ装置20は再生タイミングを制御してもよい。例えば、コンサートホールなどの比較的大きな空間に配信システム100を適用する場合、空間における聴取者の位置によって各スピーカ装置20からの距離が大きく異なることがある。この場合、各スピーカ装置20による再生タイミングが一致していても、聴取位置では、各チャネルの音声のタイミングがずれて聴こえてしまう。
この具体的な実現方法として、管理装置10が聴取者の位置から各スピーカ装置20までの距離を、代表端末モードのスピーカ装置20−1に通知する。聴取者の位置からスピーカまでの距離は、例えば管理装置10の利用者によって操作部14を介して入力されるとよい。スピーカ装置20−1は、この距離と音声(音波)の伝搬速度との演算によって、聴取位置に音声が伝わるのに要する時間を算出する。そして、スピーカ装置20−1は、この時間分だけタイミングをずらすように遅延時間を発生させて再生する。つまり、聴取位置に近いスピーカ装置20ほど、遅延時間を大きくして再生させる。このようにすれば、聴取位置において各チャネルの音声が聴こえるタイミングを一致させることができる。
【0051】
(3)上述した実施形態では、音声の再生タイミングを制御していたが、映像と音声との再生タイミングや、複数の映像どうしの再生タイミングを制御する場合にも、本発明を適用することができる。この配信システムが音声とは違うコンテンツである映像を扱う場合であっても、配信したコンテンツを再生することができる構成を採ればよいだけで、その他の構成および動作は上述の実施形態と同じでよい。
具体的には、放映用の端末装置として、スピーカ装置20に代えてモニタ装置(第2の端末装置)を採用する。このモニタ装置は、スピーカ装置20のD/A変換部29、オーディオ信号再生部30およびスピーカ31の代わりに、放映するためのモニタや、映像データに応じて映像信号を生成(再生)し、モニタに映像を表示させるための表示制御手段を備える構成を有する。動作においては、代表端末モードに設定された端末装置が、子端末モードに設定されたモニタ装置に放映を開始させる放映開始指示を出力して放映を開始させたり、子端末モードのスピーカ装置20に放音開始指示を出力して放音を開始させたりする。以降、実施形態と同様にして、タイムスタンプデータを取得するたびに再生タイミングを制御すればよい。もちろん、モニタ装置が代表端末モードに設定されてもよく、この場合も、モニタ装置が、最初のRTPパケットデータを受信してから所定時間待機した後に放映を開始したり、子端末モードの端末装置に放音開始指示や放映開始指示を出力して、放音・放映を開始させればよい。この構成によれば、複数の映像の再生タイミングや、映像と音声との再生タイミングを一致させることができる。
【0052】
(4)上述した実施形態において、管理装置10が、楽曲の配信状況を記憶部12に記憶しておき、その配信実績に基づいて、楽曲に対する使用料を算出してもよい。具体的には、管理装置10は、楽曲を再生するたびにその楽曲に対応する楽曲IDを配信実績として記憶部12に記憶する。そして、管理装置10は、予め定められた日時(例えば、月末、週末、等)になったことを検知すると、配信実績に基づいて、予め決められた楽曲に対する使用料を算出する。管理装置10は、算出した使用料を示すデータを、例えば通信IF部16を介して図示せぬサーバ装置へ出力する。サーバ装置の管理者は、管理装置10から送信されてくる使用料情報を確認することで、楽曲の使用料を確認することができる。すなわち、この態様によれば、管理装置10が使用料の算出処理を行うから、システムの管理者は、コンテンツの使用料をそれぞれ算出する必要がなく、煩雑な作業を行う必要がない。
【0053】
(5)上述した実施形態では、代表端末モードのスピーカ装置20−1が、タイムスタンプデータの受信時刻とそのタイムスタンプデータが表す時刻との時間差に基づいて、各スピーカ装置20の遅延時間を算出していた。これに代えて、各スピーカ装置20は時計部32を有するから、子端末の各スピーカ装置20がこの時間差を算出してスピーカ装置20−1に送信してもよい。この場合、代表端末のスピーカ装置20−1は、受信した時間差に基づいて遅延時間を算出する。ただし、この場合、各スピーカ装置20の時計部32が計測する時刻が一致している必要があるため、スピーカ装置20−1又は管理装置10が、時計部32が計測する時刻を同期させる同期信号を、楽曲の再生開始前や再生中のあるタイミングで送信することが好ましい。
【0054】
(6)上述した実施形態では、管理装置10が先頭パケットデータを送信することによって各スピーカ装置20の動作モードを設定していたが、各スピーカ装置20の動作モードが予め決められていてもよい。例えば、スピーカ装置20−1が代表端末モードに固定されている場合、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6は、時刻を計測する必要がないから、時計部32を有さなくてよい。また、この場合、スピーカ装置20−1は、子端末モードのスピーカ装置20−2〜20−6のIPアドレスを予めROMに記憶しておいてもよい。
【0055】
(7)上述した実施形態では、スピーカ装置20の数は「6」であったが、これよりも少なくてもよいし、さらに多くしてもよい。
【0056】
(8)上述した実施形態では、管理装置10は、読取部15が記憶媒体を読み取って取得したオーディオデータに基づいて配信を行っていたが、データの取得方法はこれ以外の方法であってもよい。例えば、ネットワークを介して接続された外部装置から取得してもよい。
【0057】
(9)上述した実施形態では、スピーカ装置20の数は「6」であったが、さらに多くしてもよく、少なくてもよく、「2」以上のスピーカ装置20を備えていれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…ネットワーク、10…管理装置、100,100a…配信システム、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…操作部、15…読取部、16…通信IF部、17,32…時計部、2,21…電力線、20…スピーカ装置、200…給電レール、300…中継装置、22…制御部、221…転送速度テーブル、23,40…PLC専用アダプタ、24…電源部、25…通信IF部、26…アドレス検出部、27…第1データバッファ、28…第2データバッファ、29…D/A変換部、3…部屋、30…オーディオ信号再生部、31…スピーカ、4…ネットワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークから取得したデータが自端末宛の情報であるか否かを判定し、自端末宛の情報である場合には当該データを取り込むデータ取得手段と、
前記データ取得手段が取り込んだデータが放音用データである場合には、当該放音用データを順次蓄積するバッファ手段と、
前記バッファ手段内の放音用データを順次読み出してオーディオ信号を生成して放音する放音手段と、
前記データ取得手段が取り込んだデータに代表端末か子端末かを指定する指定情報が含まれていた場合に、当該指定情報に従い代表端末モードと子端末モードを設定するモード設定手段と、
代表端末モードが設定された場合は、前記放音手段に対し所定時間待機させた後に放音を開始させ、かつ、子端末宛に放音開始を指示する放音開始指示を出力し、子端末モードが設定された場合は、前記データ取得手段が代表端末からの放音開始指示を取得したときに、前記放音手段による放音を開始させる制御手段と
を具備することを特徴とする端末装置。
【請求項1】
ネットワークから取得したデータが自端末宛の情報であるか否かを判定し、自端末宛の情報である場合には当該データを取り込むデータ取得手段と、
前記データ取得手段が取り込んだデータが放音用データである場合には、当該放音用データを順次蓄積するバッファ手段と、
前記バッファ手段内の放音用データを順次読み出してオーディオ信号を生成して放音する放音手段と、
前記データ取得手段が取り込んだデータに代表端末か子端末かを指定する指定情報が含まれていた場合に、当該指定情報に従い代表端末モードと子端末モードを設定するモード設定手段と、
代表端末モードが設定された場合は、前記放音手段に対し所定時間待機させた後に放音を開始させ、かつ、子端末宛に放音開始を指示する放音開始指示を出力し、子端末モードが設定された場合は、前記データ取得手段が代表端末からの放音開始指示を取得したときに、前記放音手段による放音を開始させる制御手段と
を具備することを特徴とする端末装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−161088(P2012−161088A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84745(P2012−84745)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【分割の表示】特願2007−238431(P2007−238431)の分割
【原出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【分割の表示】特願2007−238431(P2007−238431)の分割
【原出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]