説明

トイレ装置

【課題】便座の座り心地を改善しつつ、切欠部の洗浄を行うことができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】ボウル部に臨む開口を有する切欠部が設けられた腰掛便器と、前記腰掛便器の上に設けられ、前記開口を介して前記ボウル部に進出可能とされた吐水ノズルの少なくとも一部を収納したケーシングと、前記ケーシングに対して回動可能に軸支された便座と、前記吐水ノズルへの給水路に接続され、内部に水を通水させることが可能な開放式タンクであって、前記開放式タンクの内部に水を流入させる流入口と、前記開放式タンクの内部の水を前記吐水ノズルへ流出させる流出口と、前記開放式タンクの内部からのオーバーフロー水を流出させる排水口と、を有する開放式タンクと、を備え、前記開放式タンクの排水口から流出する前記オーバーフロー水は、前記切欠部に導入されることを特徴とするトイレ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は一般的に、トイレ装置に関し、より具体的には、腰掛便器に腰かけた使用者の「おしり」などを水で洗浄可能としたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄水を噴射する吐水ノズルを進退自在に収納し、腰掛便器の便座に座った使用者の「おしり」などを洗浄する機能を設けたトイレ装置がある。吐水ノズルを収納したケーシングを腰掛便器の上面に設けると、便座の回転軸はケーシングの比較的手前側の上方に配置されることとなる。ところが、このような構成にすると、便座の後部がケーシングに乗り上げた状態となり上方に傾斜するために、便座の後方寄りに座る使用者や臀部の大きな使用者に対して便座の座面の水平部がやや狭い印象を与える場合があった。
便座の座り心地を良くするには、ケーシングの高さを低く抑えるのが一案である。これに関連して、腰掛便器の後部上面に、便鉢内空間に向かって下り勾配の凹溝部を設け、この凹溝部に吐水ノズル(洗浄ノズル)の一部を収納配置する局部洗浄便器が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】実公平2−13589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に開示された局部洗浄便器では、使用者が腰掛便器を使用して便鉢内で汚水が跳ねたり、腰掛便器に排水の詰まりが生じて便鉢内の水位が上昇した際に、凹溝部に汚水が浸入し汚損するおそれがあった。凹溝部の汚損が生じると、その奥まった形状ゆえ使用者の手作業による洗浄は容易ではなく、ケーシングを取り外すなどして洗浄を行わなければならなかった。
【0004】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便座の座り心地を改善しつつ、清潔な状態を維持できるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るトイレ装置は、ボウル部に臨む開口を有する切欠部が設けられた腰掛便器と、前記腰掛便器の上に設けられ、前記開口を介して前記ボウル部に進出可能とされた吐水ノズルの少なくとも一部を収納したケーシングと、前記ケーシングに対して回動可能に軸支された便座と、前記吐水ノズルへの給水路に接続され、内部に水を通水させることが可能な開放式タンクであって、前記開放式タンクの内部に水を流入させる流入口と、前記開放式タンクの内部の水を前記吐水ノズルへ流出させる流出口と、前記開放式タンクの内部からのオーバーフロー水を流出させる排水口と、を有する開放式タンクと、を備え、前記開放式タンクの排水口から流出する前記オーバーフロー水は、前記切欠部に導入されることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、切欠部に汚水が浸入して汚損することがあっても、開放式タンクの排水口から流出するオーバーフロー水を切欠部に導入することにより、切欠部の洗浄を行うことができる。すなわち、便座の座り心地を改善しながらも、開放式タンクのオーバーフロー水を切欠部の洗浄に有効利用することで、清潔な状態を維持するという工夫がなされたものである。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記開放式タンクの排水口は、前記切欠部の上方に配置され、前記排水口から流出したオーバーフロー水は、前記切欠部に直接落下する。
【0008】
本発明によれば、排水口から流出するオーバーフロー水は、直接落下して切欠部に導入されるため、落下により生じる強い水流によって高い洗浄効果を得ることができる。ここで、「直接落下」とは、排水口から流出して落下したオーバーフロー水が、その後鉛直方向には何物にも遮られることなく、排水口の下方の切欠部まで到達できる状態を意味する。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るトイレ装置は、ボウル部に臨む開口を有する切欠部が設けられた腰掛便器と、前記腰掛便器の上に設けられ、前記開口を介して前記ボウル部に進出可能とされた吐水ノズルの少なくとも一部を収納し、前記吐水ノズルの下方を覆うとともに前記切欠部に挿入される溝部を有するケーシングと、前記ケーシングに対して回動可能に軸支された便座と、前記吐水ノズルへの給水路に接続され、内部に水を通水させることが可能な開放式タンクであって、前記開放式タンクの内部に水を流入させる流入口と、前記開放式タンクの内部の水を前記吐水ノズルへ流出させる流出口と、前記開放式タンクの内部からのオーバーフロー水を流出させる排水口と、を有する開放式タンクと、を備え、前記開放式タンクの排水口から流出する前記オーバーフロー水は、前記溝部に導入されることを特徴とする。
【0010】
ケーシングに設けられた溝部により吐水ノズルの下方を覆うことで、ケーシングを腰掛便器より取り外して搬送する際などに、吐水ノズルが破損することを防止することができる。しかし、溝部は切欠部に挿入されるため、溝部に汚水が浸入して汚損するおそれがある。
【0011】
本発明によれば、開放式タンクの排水口から流出するオーバーフロー水を溝部に導入することにより、溝部の洗浄を行うことができる。すなわち、便座の座り心地を改善し、さらに吐水ノズルの保護を図りながらも、開放式タンクのオーバーフロー水を溝部の洗浄に有効利用することで、清潔な状態を維持するという工夫がなされたものである。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記開放式タンクの排水口は、前記溝部の上方に配置され、前記排水口から流出したオーバーフロー水は、前記溝部に直接落下する。
【0013】
本発明によれば、排水口から流出するオーバーフロー水は、直接落下して溝部に導入されるため、落下により生じる強い水流によって高い洗浄効果を得ることができる。ここで、「直接落下」とは、排水口から流出して落下したオーバーフロー水が、その後鉛直方向には何物にも遮られることなく、排水口の下方の溝部まで到達できる状態を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、便座の座り心地を改善しつつ、切欠部の洗浄を行うことができるトイレ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の第1の実施形態について説明する。
図1(a)は、本実施形態にかかるトイレ装置10の外観図であり、便座110および便蓋120を上げた状態を表す。図1(b)は、本トイレ装置10に用いられる腰掛便器200(以下、単に「便器200」という)の外観図である。
【0016】
本実施形態のトイレ装置10は、便器200と、便器200の上面に載置される衛生洗浄装置100とを備えている。また、衛生洗浄装置100は、便座110および便蓋120を回動自在に軸支して備えている。衛生洗浄装置100の外殻をなすケーシング130の内部には、衛生洗浄を実現するための衛生洗浄機能部が内蔵されている。すなわち、便座110が便器200のリム面210に当接した状態で、図示しない着座センサなどにより使用者が便座110に着座したことを検知し、使用者のスイッチ操作などに応じて、吐水ノズル140を便器200のボウル部220に進出させ、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、便座110に着座した使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱された温水も含むものとする。
【0017】
また、便器200の側面後部には、内方に向けて凹んだ側面凹部230が形成されている。この側面凹部230には、便座200に着座した状態の使用者の「おしり」などに温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥ユニット」や、ボウル部220内の空気を吸引して臭気成分を除去する「脱臭ユニット」や、温風を周囲に吹き出してトイレ空間を暖房する「室内暖房ユニット」などの各種の機構を適宜設けることもできる。さらに、側面凹部230に、便器200のボウル部220に洗浄水を流す「自動水洗ユニット」を設けてもよい。これは、便器200に洗浄水を供給するバルブを動作させることにより、便器200に自動的に洗浄水を流すユニットである。これらのユニットを側面凹部230に設けることにより、便器200の上面に載置される衛生洗浄装置100をコンパクトに構成することができる。なお、側面凹部230は側面パネル240で覆われるため、意匠性も確保できる。
【0018】
そして、本実施形態においては、便器200のリム面210に切欠部250が形成されている。より詳細には、便器200の上面はリム面210と略面一となるように形成され、切欠部250は、リム面210のうちボウル部220の後端にあたる位置で、下方に向けて切り欠かれて窪んだ形態を有する。この切欠部250は、衛生洗浄装置100の下方に位置しており、開口251でボウル部220に連通している。また、切欠部250の底面は、便器200の後方から開口251に亘って下方に傾斜している。後述するように、切欠部250には衛生洗浄装置100の吐水ノズル140が配置され、吐水ノズル140は開口251からボウル部220に進退可能とされている。
【0019】
図2(a)は、衛生洗浄装置100の内部構成を例示する透視図であり、図2(b)は、切欠部250に配置された吐水ノズル140を表す模式図である。
【0020】
衛生洗浄装置100のケーシング130は、便座110および便蓋120を回動自在に軸支する上ケーシング131と、上ケーシング131に覆われ便器200の上面に当接する板状の下ケーシング132とを有している。下ケーシング132には、吐水ノズル140のほか、吐水ノズル140をボウル部220に進退させる駆動部151や、サブタンク300など、衛生洗浄を行うために必要となる種々の要素が取り付けられる。さらに、下ケーシング132には、切欠部250の開口251を覆うシャッター152が軸支されている。シャッター152は、吐水ノズル140が衛生洗浄装置100内に収納された状態においては開口251を覆うが、吐水ノズル140からの吐水を行うときは、ボウル部220に進出する吐水ノズル140によって押し開けられ、開口251を開放する。
【0021】
下ケーシング132は便器200の後部に配置され、その前縁はボウル部220の後端よりもやや前方にせり出している。さらに、下ケーシング132には、便器200の切欠部250と対応する位置にノズル用切欠133が設けられている。吐水ノズル140は、吐水を行うときにこのノズル用切欠133、切欠部250および開口251を介してボウル部220に進出する。
【0022】
このように、便器200に形成された切欠部250に吐水ノズル140を配置し、且つ切欠部250および開口251を介してボウル部220に吐水ノズル140を進出させることにより、衛生洗浄装置100のリム面からの高さH1を抑制し、コンパクトにすることができる。また、衛生洗浄装置100の上ケーシング131に軸支されている便座110の高さH2も抑制し、便座110を前後方向に勾配の少ない形状とすることができる。特に、便座110の後方が上方に傾斜することを可及的に抑制できる。つまり、平坦な部分が広い便座110を実現できる。その結果として、便座110の位置が低く抑えられ、小柄な使用者であっても便座110に安定して着座することができる。また、臀部の大きな使用者であっても、座り心地を向上させることができる。
【0023】
一方、このように形成された便器200では、吐水ノズル140から吐水させている間にボウル部220で汚水が跳ねたり、便器200の排水詰まりが生じてボウル部220の水位が上昇した際などに、開口251から切欠部250に汚水が浸入するおそれがある。汚水が浸入して切欠部250が汚損すると、その奥まった形状ゆえ、使用者の手作業による洗浄は容易ではない。
【0024】
そこで、本実施形態にかかるトイレ装置10では、吐水ノズル140および切欠部250の後方にサブタンク300を配置し、サブタンク300から流出したオーバーフロー水を切欠部250に導入するよう構成されている。すなわち、このサブタンク300から流出するオーバーフロー水により、切欠部250の洗浄が行われる。切欠部250を流れて洗浄したオーバーフロー水は、開口251からボウル部220に落下し、便器200の排水時にボウル部220の水とともに流出する。
【0025】
以下、図面を参照しつつ、オーバーフロー水による切欠部250の洗浄と、サブタンク300について詳述する。
図3は本実施形態にかかるトイレ装置の水路構成を示すブロック図であり、図4は本実施形態にかかるトイレ装置で用いられるサブタンク300の形状と水の流れを示す模式図である。
【0026】
図3に表すように、水道管410に接続された止水栓420と、バルブユニット430と、が可撓性を有するフレキホース411で接続されている。バルブユニット430は、バルブユニット430から上流への水の逆流を防ぐ逆止弁431や、水中の異物を捕捉するストレーナ432、給水圧にかかわらず水の流量を一定に保つ定流量弁433、通電により下流への通水/止水を選択的に切り替える電磁弁434などを有する。バルブユニット430は、便器200の側面凹部230に配置されているため、便器200のリム面210よりも下方に位置する。
【0027】
電磁弁434を通過した水は、入口配管412によってリム面210よりも上方に送られ、下ケーシング132上に配置されたサブタンク300に供給される。サブタンク300は、内部に水を導入する流入口310が上方に、内部から水を流出させる流出口320が下方に設けられている。さらに、サブタンク300の側面には、オーバーフロー水を流出させる排水口330が設けられている。したがって、流出口320からサブタンク300の内部への水の逆流が生し、サブタンク300内に貯留された水の水位が上昇した場合でも、水は排水口330からオーバーフロー水として流出して流入口310まで至らないため、電磁弁434への水の逆流を防止できる。
【0028】
次に、サブタンク300の流出口320から流出する水の流れについて説明する。流出口320に接続される出口配管413の下流には、ポンプ440が接続されている。ポンプ440は、流出口320からサブタンク300内の水を汲み出し、付勢して下流へ送るとともに、流量(水勢)の調節も可能とされている。
【0029】
ポンプ440の下流には、熱交換器450が設けられている。熱交換器450は、例えばシーズヒータなどの加熱源を備えており、上流のポンプ440から送られてきた水の加熱を行う。なお、熱交換器450は、いわゆる瞬間式でも貯湯式でもよいが、以後、熱交換器450が瞬間式として説明を進める。
【0030】
熱交換器450の下流には、切替弁460、吐水ノズル140およびノズル洗浄流路414が設けられている。熱交換器450を通過した水は、切替弁460によって、その送られる先を吐水ノズル140またはノズル洗浄流路414に択一的に切り替えられる。便座110に着座した使用者が、図示しないリモコンなどにより「おしり」の洗浄を選択した場合には、熱交換器450は水の加熱を行い、切替弁460は水が吐水ノズル140へと送られるよう切り替える。これにより、吐水ノズル140から温水が吐出され、使用者は「おしり」の洗浄を行うことができる。吐水ノズル140から吐出される温水の水勢および温度は使用者の好みに応じて変更することが可能であり、使用者はリモコンなどによりポンプ440の駆動状態や熱交換器450の加熱量を調節する。
【0031】
また、「おしり」の洗浄後や、使用者がリモコンを操作して指示したときなどに、吐水ノズル140そのものの洗浄を行うことが可能とされている。この場合、熱交換器450による水の加熱は行うことなく、切替弁460は、水がノズル洗浄流路414へと送られるよう切り替える。ノズル洗浄流路414へと送られた水は吐水ノズル140に向けて吐出され、これにより吐水ノズル140の洗浄が行われる。
【0032】
一方、流入口310からサブタンク300内に流入する水の流量に対し、ポンプ440で汲み出され流出口320から流出する水の流量が小さいと、排水口330から矢印OFのようにサブタンク300内の水が流出する(オーバーフロー水)。このオーバーフロー水は便器200の切欠部250に導入され、切欠部250をボウル部220に向けて流れることにより、切欠部250の洗浄が行われる。切欠部250を流れて洗浄したオーバーフロー水は、開口251からボウル部220に落下し、便器200の排水時にボウル部220の水とともに流出する。
【0033】
次に、図4を参照しつつ、サブタンク300の形状について説明する。図4(a)はサブタンク300の斜視図を、図4(b)はサブタンク300の平面図を、図4(c)はサブタンク300のA−A断面図を、図4(d)はサブタンク300のB−B断面図を表す。サブタンク300は、その外殻をなすサブタンクケーシング301を有し、サブタンクケーシング301の内部には水の貯留が可能な空間が形成されている。サブタンクケーシング301の上面302には、入口配管412が接続される流入口310が設けられ、側面303の下部には、出口配管413が接続される流出口320が突設されている。サブタンクケーシング301の内部には、多数の穿孔341が穿設された平板状の整流板340がサブタンクケーシング301の底面304と略平行に配置されている。整流板340は、サブタンクケーシング301内を、断面が略L字状の第1室350と、その上方の第2室360と、に区画しており、多数の穿孔341が第1室350と第2室360とを連通するよう構成されている。
【0034】
サブタンクケーシング301の側面303のうち、第2室360に対応する一部には、サブタンクケーシング301外に連通する矩形の排水口330が開設されている。そして、排水口330を囲うように、側面303に包囲板370が設けられている。包囲板370の上下は開放されているほか、下方はサブタンクケーシング301の底板304よりやや突出しており、側面303との間にガイド水路380を形成している。
【0035】
続いて、サブタンク300における水の流れについて説明する。入口配管412を通って流入口310からサブタンクケーシング301内に流入した水は、まず、第1室350に流入する。第1室350の略L字状の形状に沿って、水は矢印F1で示すように流出口320に向かって流れる。
【0036】
衛生洗浄装置100が吐水ノズル140からの吐水を行う際は、出口配管412の下流に接続されたポンプ440が駆動することによって、サブタンクケーシング301内の水が流出口320から汲み出される。流出口320から汲み出される水の流量に比べて、流入口310から流入する水の流量が大きい場合、サブタンクケーシング301内に貯留された水の量が増加し、その水位が上昇していく。
【0037】
サブタンクケーシング301内に貯留された水の水位が上昇していくと、水は矢印F2で示すように穿孔341を通して第2室360に流入する。
【0038】
水が第2室360に流入した後もさらに水位が上昇すると、第2室360内の水は、矢印F3のように排水口330からサブタンクケーシング301外に流出する。排水口330から流出されたオーバーフロー水は、下方のガイド水路380を通して落下し、ガイド水路出口381から流出する。
【0039】
ここで、図2(b)に表したように、上述したようにサブタンク300は、吐水ノズル140および切欠部250の後方の下ケーシング132上に配置されている。そして、ガイド水路出口381から流出したオーバーフロー水は切欠部250へ導入され、切欠部250を流れてボウル部220に至るため、これによって切欠部250の洗浄を行うことができる。
【0040】
しかも、ガイド水路出口381は、切欠部250の真上に位置するように配置されているため、ガイド水路380内を落下してくるオーバーフロー水は、その落下の水勢を失うことなく切欠部250に導入されることとなる。したがって、オーバーフロー水の水勢による高い洗浄効果が期待できる。また、包囲板370は、排水口330と駆動部151とを仕切るよう配置されるため、排水口330から流出したオーバーフロー水の駆動部151側への飛散を防止する。すなわち、オーバーフロー水が吐水ノズル140や駆動部151側の故障の原因となることもない。
【0041】
このように、本実施形態は、いわゆる開放式タンクであるサブタンク300を水路中に配置し、そこから流出するオーバーフロー水によって便器200の切欠部250の洗浄が行われるよう構成されたものである。すなわち、逆流を防止する開放式タンクから流出するオーバーフロー水を、汚損しやすい便器の切欠部の洗浄に有効利用するという工夫がなされている。
【0042】
尚、このサブタンク300のオーバーフロー水による切欠部250の洗浄は、衛生洗浄装置100が吐水ノズル140からの吐水を行っているか否かにかかわらず、実行することが可能である。つまり、吐水ノズル140からの吐水が行われているとき(すなわち、ポンプ440が駆動しているとき)は、上述したように、サブタンクケーシング301内から汲み出される水の流量に対し、流入する水の流量が大きくなるようバルブユニット430に通水させることで、オーバーフロー水を得ることができる。また、吐水ノズル140からの吐水が行われていないとき(すなわち、ポンプ440が駆動していないとき)は、サブタンクケーシング301内から水が汲み出されないため、単にバルブユニット430が通水を行うことで、サブタンクケーシング301内に貯留された水の水位を上昇させ、オーバーフロー水を得ることができる。したがって、バルブユニット430に通水させる時間を調節することにより、切欠部250を洗浄するオーバーフロー水の量を適宜調節することができる。
【0043】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第2の実施形態について説明する。尚、第1の実施形態と同一の要素については符号も同一のものを付し、説明も適宜省略する。
図5は、本実施形態に係るトイレ装置20の、切欠部250に配置された吐水ノズル140を表す模式図である。
【0044】
本実施形態では、下ケーシング132に、切欠部250に挿入されるべく、その形状に対応して下方に凹ませた下ケーシング溝部154が形成されている。この下ケーシング溝部154は、吐水ノズル140の下方を覆って保護するものである。すなわち、衛生洗浄装置100を便器200から取り外して搬送する際などに、誤って衛生洗浄装置100を落下させたりして、吐水ノズル140が破損してしまうことを防ぐ。
【0045】
下ケーシング溝部154と切欠部250との間にはパッキン500が配置され、その間の水密性が保持されている。しかし、下ケーシング132にこのような下ケーシング溝部154が形成されると、吐水ノズル140から吐水させている間にボウル部220で汚水が跳ねたり、便器200の排水詰まりが生じてボウル部220の水位が上昇した際などに、開口251から下ケーシング溝部154に汚水が浸入するおそれがある。汚水が浸入して下ケーシング溝部154が汚損すると、その奥まった形状ゆえ、使用者の手作業による洗浄は容易ではない。
【0046】
そこで、本実施形態にかかるトイレ装置20では、吐水ノズル140および下ケーシング溝部154の後方に、水の逆流を防止するためのサブタンク300を配置し、サブタンク300から流出したオーバーフロー水を下ケーシング溝部154に導入するよう構成されている。すなわち、このサブタンク300から流出するオーバーフロー水により、下ケーシング溝部154の洗浄が行われる。下ケーシング溝部154を流れて洗浄を行ったオーバーフロー水は、開口251からボウル部220に流入し、便器200の排水時にボウル部220の水とともに落下する。
【0047】
次に、図面を参照しつつ、本発明の第3の実施形態について説明する。尚、上記実施形態と同一の要素については符号も同一のものを付し、説明も適宜省略する。
図6(a)は、本実施形態に係るトイレ装置30の、下ケーシング632上のサブタンク700の配置を示す模式図、図6(b)はサブタンク700から流出した水の流れを示す模式図である。また、図7は本実施形態に係るトイレ装置30で使用されるサブタンク700の形状と水の流れを示す模式図である。
【0048】
まず、図6に表すように、第2の実施形態と同様に、下ケーシング632に下ケーシング溝部654が凹設されており、サブタンク700から流出するオーバーフロー水によって下ケーシング溝部654の洗浄が行われるよう構成されている。本実施形態では、サブタンク700は、下ケーシング溝部654(および図示しない吐水ノズル140)の側方に配置されている。便器200の奥行サイズとの関係上、サブタンク700を下ケーシング溝部654(および吐水ノズル140)の後方に配置できない場合、このように側方に配置したサブタンク700からオーバーフロー水を導入させても、下ケーシング溝部654の洗浄が可能となる。
【0049】
以下、図7を参照しつつ、サブタンク700の構成について説明する。図7(a)はサブタンク700の斜視図を、図7(b)はサブタンク700の平面図を、図7(c)はサブタンク700の正面図を、図7(d)はサブタンク700の右側面図を、図7(e)はサブタンク700のC−C断面図を表す。サブタンク700は、その外殻をなすサブタンクケーシング701を有し、サブタンクケーシング701の内部には水の貯留が可能な空間が形成されている。サブタンクケーシング701の上面702には、入口配管412から供給される水が流入する流入口710が開設されている。また、下面704には、出口配管413が接続される流出口720が突設されている。サブタンクケーシング701の内部には隔壁740が設けられ、上部空間750と下部空間760とに区画されている。
【0050】
サブタンクケーシング701の側面703のうち、上部空間750に対応する一部には、サブタンクケーシング701外に連通する矩形の排水口730が開設されている。そして、側面703からは、排水口730の周縁に沿って鍔部731が突設されている。
【0051】
続いて、サブタンク700における水の流れについて説明する。入口配管412を通って、矢印F4のように流入口710からサブタンクケーシング701内に流入した水は、隔壁740に衝突してその水勢を弱められる。隔壁740は流入口412の直下で湾曲形成されて、さらに先端にかけてやや傾斜しているため、流入する水はその形状に沿って、矢印F5のように上部空間750から下部空間760へ回りこむように流れる。
【0052】
衛生洗浄装置が吐水ノズルからの吐水を行う際は、出口配管413の下流に接続されたポンプ440が駆動することによって、サブタンクケーシング701内の水が矢印F6のように流出口720から汲み出される。流出口720から汲み出される水の流量に比べて、流入口710から流入する水の流量が大きい場合、サブタンクケーシング701内に貯留される水の量が増加し、その水位が上昇していく。
【0053】
サブタンクケーシング701内の水の水位が上昇していくと、水は矢印F7で示すように排水口730からサブタンクケーシング701外に流出する(オーバーフロー)。排水口730から流出したオーバーフロー水は、落下して下方の下ケーシング溝部654へ導入される。
【0054】
このように、サブタンク700を下ケーシング溝部654の側方に配置した本実施形態においても、オーバーフロー水により下ケーシング溝部654の洗浄を行うことができる。また、排水口730から流出したオーバーフロー水は、排水口730の周縁に沿って突設された鍔部731によって、側面703からやや離れた位置で下方へ落下する。したがって、サブタンクケーシング701の側面703を下ケーシング溝部654の側方端部から離れた位置に設けなければならない場合にも、鍔部731によってオーバーフロー水を下ケーシング溝部654に導入することができる。
【0055】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。すなわち、本発明のトイレ装置に含まれる各要素については、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトイレ装置10と、それに用いられる便器200の外観図である。
【図2】衛生洗浄装置100の内部構成を例示する透視図と、切欠部250に配置された吐水ノズル140を表す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るトイレ装置10の水路構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るトイレ装置10で用いられるサブタンク300の形状と水の流れを示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るトイレ装置20の、切欠部250に配置された吐水ノズル140を表す模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るトイレ装置30の、下ケーシング632上のサブタンク700の配置を示す模式図と、サブタンク700から流出した水の流れを示す模式図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るトイレ装置30で用いられるサブタンク700の形状と水の流れを示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
10、20、30 トイレ装置、100 衛生洗浄装置、110 便座、120 便蓋、130 ケーシング、131 上ケーシング、132、632 下ケーシング、140 吐水ノズル、200 (腰掛)便器、210 リム面、220 ボウル部、230 側面凹部、240 側面パネル、250 切欠部、251 開口、310、710 流入口、320、720 流出口、330、730 排水口、340 整流板、350 第1室、360 第2室、370 包囲板、380 ガイド水路、410 水道管、420 止水栓、430 バルブユニット、440 ポンプ、450 熱交換器、460 切替弁、500 パッキン、654 下ケーシング溝部、740 隔壁、750 上部空間、760 下部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部に臨む開口を有する切欠部が設けられた腰掛便器と、
前記腰掛便器の上に設けられ、前記開口を介して前記ボウル部に進出可能とされた吐水ノズルの少なくとも一部を収納したケーシングと、
前記ケーシングに対して回動可能に軸支された便座と、
前記吐水ノズルへの給水路に接続され、内部に水を通水させることが可能な開放式タンクであって、
前記開放式タンクの内部に水を流入させる流入口と、
前記開放式タンクの内部の水を前記吐水ノズルへ流出させる流出口と、
前記開放式タンクの内部からのオーバーフロー水を流出させる排水口と、
を有する開放式タンクと、
を備え、
前記開放式タンクの排水口から流出する前記オーバーフロー水は、前記切欠部に導入されることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記開放式タンクの排水口は、前記切欠部の上方に配置され、前記排水口から流出したオーバーフロー水は、前記切欠部に直接落下することを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
ボウル部に臨む開口を有する切欠部が設けられた腰掛便器と、
前記腰掛便器の上に設けられ、前記開口を介して前記ボウル部に進出可能とされた吐水ノズルの少なくとも一部を収納し、前記吐水ノズルの下方を覆うとともに前記切欠部に挿入される溝部を有するケーシングと、
前記ケーシングに対して回動可能に軸支された便座と、
前記吐水ノズルへの給水路に接続され、内部に水を通水させることが可能な開放式タンクであって、
前記開放式タンクの内部に水を流入させる流入口と、
前記開放式タンクの内部の水を前記吐水ノズルへ流出させる流出口と、
前記開放式タンクの内部からのオーバーフロー水を流出させる排水口と、
を有する開放式タンクと、
を備え、
前記開放式タンクの排水口から流出する前記オーバーフロー水は、前記溝部に導入されることを特徴とするトイレ装置。
【請求項4】
前記開放式タンクの排水口は、前記溝部の上方に配置され、前記排水口から流出したオーバーフロー水は、前記溝部に直接落下することを特徴とする請求項3に記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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