説明

トイレ装置

【課題】超節水タイプのトイレ装置を提供する。
【解決手段】便器ボウル部1、及び便器ボウル部の底面からサイフォントラップ構造の排出部2、及び便器ボウル部に排出洗浄水を供給する給水部3を備えた便器部と、便器部下方に位置して排出部に連続して形成すると共に、上方に脱臭機能を備えた空気孔部41を設けて便器部のサイフォン作用を実現することができる半密閉式の貯留室4、及び貯留室内の底面近傍に開口して、貯留室に所定以上の排出対象流動物に溜まった際に排出作用をなす排出サイフォン部5を備えた貯留部とで構成して、少ない水量で便器部からの汚物排出並びに洗浄を実施しても、下水における充分な汚物搬送能力を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節水を目的としたトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水洗トイレでは、便器ボウル部内からの汚物排出を行う排出水及び便器ボウル部の洗浄を行う洗浄水が使用されており、通常は一回の連続吐水で汚物排出・便器洗浄を連続的に行っている。しかし水洗トイレにおける排出洗浄水の使用水量を少なくすることは水資源の有効利用の点から望まれているものであり、従前より種々の提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1(特開平6−173323号公報)には、排出トラップを備えた水洗トイレ装置において、排出洗浄水のリム吐水を少なくして節水すると共に、節水のために生ずる便器からの排出能力の低下を、排出トラップ個所のサイフォン作用を補助し、便器ボウル部からの汚物水(汚物と排出洗浄水をいう)の完全排出を目的として、サイフォン部に向けてジェット吐水を行うことでカバーすることが開示されている。
【0004】
また特許文献2(実公昭56−17588号公報)には、便器ボウル部の洗浄水の使用水量を少なくするために、便器ボウル部内に対して3方向に噴射する給水ノズルの採用が開示されている。
【0005】
更に便器ボウル部内の汚物の排出及び便器ボウル部の洗浄に使用する水量を少なくすると、汚物の搬送能力が低下してしまい、特に下水管の横引き配管を採用した場合に問題点がより顕著となる。この対策として特許文献3(登録実用新案3147472号公報)には、汚物水を一旦溜め、所定量以上(磁気遮蔽弁に磁気吸着力以上の荷重が加わる)になると排出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−173323号公報。
【特許文献2】実公昭56−17588号公報。
【特許文献3】登録実用新案3147472号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
洗浄水及び汚物排出水を節水しようとして、特許文献1記載の構成を採用した場合には、リム吐水(洗浄水)の水量を節約すると、便器洗浄が必ずしも良好に行われるとは云えない。また特許文献2記載の噴射洗浄を実施すると便器洗浄は良好に行われるが、汚物の下水搬送能力の不足が生じてしまう。
【0008】
特許文献3に記載されているように、汚物下水搬送能力確保の手段として、汚物水の一定量貯留は有効な手段であるが、同文献開示構造では種々の問題がある。即ち磁気遮蔽弁を採用した際に、固形物が挟まった場合の水密性を確保できなくなり、貯留汚物水のうち水分の流出が生じ、固形分が貯留室に残る虞があり、逆に搬送能力が低下してしまう。
【0009】
そこで本発明は、汚物排出水及び洗浄水の使用水量を少なくしても、汚物の下水搬送能力を確実に確保できるトイレ装置、並びに更に汚物排出水及び洗浄水の使用水量を少なくできる新規なトイレ装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)に係るトイレ装置は、適宜容量の便器ボウル部、及び便器ボウル部の底面からサイフォントラップ構造の排出部、及び便器ボウル部に排出洗浄水を供給する給水部を備えた便器部と、便器部下方に位置して排出部に連続して形成すると共に、上方に脱臭機能を備えた空気孔部を設けて便器部のサイフォン作用を実現することができる半密閉式の貯留室、及び貯留室内の底面近傍に開口して、貯留室に所定以上の排出対象流動物が溜まった際に排出作用をなす排出サイフォン部を備えた貯留部とで構成してなることを特徴とするものである。
【0011】
而して通常通りトイレを使用した後は、従前通り給水部から排出洗浄水の給水がなされ、便器ボウル部内に排泄された汚物は、排出洗浄水と共に排出部から貯留室に排出され、汚物水(排出対象流動物)として貯留室に一旦貯留される。数回のトイレ使用によって貯留室に汚物水が溜まり、貯留室が一杯になる最後の汚物排出と当時に排出サイフォン部のサイフォン作用によって貯留室内の汚物水が一挙に下水排出されることになる。
【0012】
従って便器ボウル部からの汚物排出に必要な水量のみが給水部から供給され、下水管における汚物搬送能力に足らなくとも、トイレ使用数回分の汚物水が貯められ一挙に排出されるので、便器ボウル部における使用水量を極力抑えることができる。
【0013】
また本発明(請求項2)に係るトイレ装置は、前記した貯留部を備えたトイレ装置において、給水部が、所定の圧力を以て噴射する便器ボウル部上部に設けた第一噴射ノズルと、便器ボウル部底部に設けた第二噴射ノズルを備え、第一噴射ノズルが便器ボウル部内両側面に添って噴射する噴射口、及びノズル下方面に添って噴射する噴射口を設け、第二噴射ノズルが排出部の上り流路に向けて噴射する噴射口を設けたものであって、第一噴射ノズルによる洗浄水の噴射作動後に第二噴射ノズルの排出水の噴射作動を行い、更に第二噴射ノズル作動終了後に再度第一噴射ノズルの再噴射がなされる制御手段を備えてなるものである。
【0014】
従ってリム吐水に比較して、便器ボウル部の内側面の洗浄が、第一噴射ノズルからの所定の圧力(一般的な水道水の圧力を利用)で噴射される少量の水で、便器ボウル部からの汚物の剥離並びに内側面の洗浄が可能となる。更に洗浄水を少なくして便器ボウル部からの汚物水の排出が困難となったとしても、第二噴射ノズルから排出部の上り流路に向かって排出水を噴射するので、これに伴って便器ボウル部内の汚物水が貯留室に送り出されるものである。
【0015】
そして前記排出水の噴射を終えると、第一噴射ノズルからの洗浄水の噴射で、便器ボウル部内側面を更に洗浄すると共に、この洗浄水が便器ボウル部の底面に溜まり、トラップ機能を果たし、次の使用に対する待機状態となるものである。
【0016】
また本発明(請求項3)に係るトイレ装置は、貯留室の排出サイクルが、便器部の排出作動4〜5回分程度となるように貯留室容積を定めると共に、貯留室底面形状を、排出サイフォン部の開口位置に流れ込み易い傾斜面に形成してなるもので、トイレ一回の使用水量を1L程度(従前のリム吐水による排出洗浄水の1/4程度)にし、汚物の下水搬送に必要な4L程度の容量とすることで、汚物下水搬送能力を確保しながら貯留室をコンパクト化することができる。
【0017】
また本発明(請求項4)に係るトイレ装置は、便器部と貯留部とを一体の便器に形成してなるもので、既存のトイレ装置に置き換えて設置することが可能となるものである。
【0018】
また本発明(請求項5)に係るトイレ装置は、更に貯留室の底部における排出サイフォン部の開口部近傍に、サイフォン排出部の上り流路に向けて排出補助噴射する第三噴射ノズルを設け、貯留室の排出対象流動物の貯留量が一定以上となった後に、第二噴射ノズルの作動と対応して第三噴射ノズルを作動させる制御手段を備えるもので、貯留室からの汚物水の下水排出(サイフォン作用)を確実に且つスムーズに行えるようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記のとおりで、サイフォントラップ構造の排出構造を有する便器部に連続して、サイフォン排出機能を備えた貯留部を備えたトイレ装置で、便器部における一回の使用水量を少なくしても、下水排出能力の低下を阻止することで、一回の使用水量を減少させることができたものであり、前記の構成に組み合わせて更に便器部の給水構造として、便器ボウル部の洗浄並びに排出に、所定の圧力による排出水の噴射を採用することで、少ない水量で、便器ボウル部の洗浄並び汚物水の排出を効果的に実施することができ、貯留室を採用したダブルサイフォン構造の利点がより高められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の全体断面図。
【図2】同貯留排出の説明図。
【図3】同給水部の全体説明図。
【図4】同給水部のノズル構造説明図。
【図5】同給水部のノズルの噴射方向を示す説明図。
【図6】同別の実施形態の全体説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示したトイレ装置は、便器部Aと貯留部Bを一体の便器に形成したものである。
【0022】
便器部Aは、便器ボウル部1と、排出部2と、給水部3を備えているもので、便器ボウル部1はありふれた一般的な椀状であり、底部が排出部2と連続するように形成されているものである。
【0023】
排出部2は、上り流路21と下り流路22を逆U字状の頂部流路23で連続した公知のものである。
【0024】
給水部3は、第一噴射ノズル31と第二噴射ノズル32と、前記各噴射ノズルに所定時に所定の圧力で給水する給水制御部33を備えている。
【0025】
第一噴射ノズル31は、便器ボウル部1の上部に設けたもので、便器ボウル部1の内両側面に添って噴射する左右の側面噴射口311,312と、ノズル下方面に添って噴射する下方噴射口313を設けたものである。この前記の各噴射口311,312,313は、各々後述する所定の圧力を以て洗浄水aを噴射する際に、便器ボウル部1の内側面を急流状態で流れるように、各噴射口の形状及び大きさを選択して使用する。特に、必要に応じて(便器ボウル部1の内側面形状に応じて)種々の形状の噴射口を備えたノズルを選択使用できるように、給水管34に着脱可能な構造を採用しても良い。
【0026】
第二噴射ノズル32は、便器ボウル部1の底部に設置したものであって、排出部2の上り流路21に向けて噴射する噴射口321を設けたものである。この噴射口321は、上り流路21内の汚物水(洗浄水a+汚物c)dのサイフォン作用による排出がスムーズになされるように、頂部流路23の上部空間が汚物水などで満たされるように、縦長形状としているものである。
【0027】
給水制御部33は、第一噴射ノズル31及び第二噴射ノズル32の噴射制御を行うものであり、原則として水道水圧力を噴射圧として使用するので、それぞれの給水管34と水道管35との間に、開閉弁331,332を介設し、各々の開閉動作制御を行うものである。具体的な噴射制御(動作順)は、トイレ装置の使用で説明する。
【0028】
特に水道水圧が低いところや水圧変動が生じ易い地域においては、図3で示したようにポンプ部36を付設しておいても良い。また前記ポンプ部36は電動ポンプを採用しても良いし、或いは手動ポンプを備えたアキュームレーターによる加圧水発生機構を付設しても良い。
【0029】
尚給水部3には、後述する排出補助部6の第三噴射ノズルの噴射制御手段も一緒に組み込むものである。
【0030】
貯留部Bは、貯留室4と、排出サイフォン部5と、排出補助部6とを備えたものである。
【0031】
貯留室4は、便器部Aの下方に位置して排出部2に連続して形成されるもので、その有効容積がトイレ使用4〜5回分程度に対応する大きさとし、特に底面形状を、後述する排出サイフォン部5の開口位置に流れ込み易い傾斜面に形成してなり、上方(有効容積分より上方位置)に脱臭機能を備えた空気孔部41を設けて、便器部Aの排出部2のサイフォン作用が実現すると共に、貯留室4内の悪臭が外部に漏洩しないようにする。
【0032】
排出サイフォン部5は、貯留室4内の底面近傍に開口して、貯留室4の汚物水dが所定量以上(有効容積以上)に達すると、サイフォン作用で下水管Cに放流するように設けたものである。
【0033】
排出補助部6は、第三噴射ノズル61と、水位センサ62と、補助給水部63で構成されるもので、第三噴射ノズル61は、貯留室4の底部における排出サイフォン部5の開口部近傍に、排出サイフォン部5の上り流路51に向けて放流水eを噴射するように設置したものである。
【0034】
また水位センサ62は、貯留室4の有効容積に近い高さに設置したものであり、補助給水部63は、前記給水部3に接続して、給水部3の給水制御に基づいて制御されるものである。
【0035】
次に前記トイレ装置の動作について説明する。便器部Aにおける動作は、図5に示すように、使用前には、洗浄水aが便器ボウル部1の底に滞留して、トラップ作用がなされており、トイレ使用後に、使用者の作動スイッチオンで、給水制御部33の制御手順に添って開閉弁331,332の開閉動作がなされる。
【0036】
即ちトイレ使用後に、第一噴射ノズル31から洗浄水aが噴射され、洗浄水aで便器ボウル部1内の汚物cを便器ボウル部1の底方へ洗い流す。この洗浄水aと汚物cがボウル部1の底方に流れ込むと、第二噴射ノズル32から排出水bが上り流路21に向かって噴射し、便器ボウル部1の底方に滞留する汚物水(洗浄水a+汚物c)dを排出水bと共に、貯留室4に送り込む。
【0037】
便器ボウル部1の底方に滞留する汚物水dを排出水bと共に貯留室4に排出して便器ボウル部1が空になると、再度洗浄水aを噴射して便器ボウル部1の内側面を洗浄し、この洗浄水aが便器ボウル部1の底面に溜まり、トラップ機能を果たし、次の使用に対する待機状態となるものである(図2の2)。
【0038】
特に前記の第一噴射ノズル31による便器ボウル部1の洗浄は、所定以上の圧力による洗浄水aの噴射によるため、少ない水量でも汚物cの洗い流しが可能となるので、従前より多用されているリム吐水に比較して、著しく使用水量を少なくすることができる。
【0039】
前記のトイレ使用を4〜5回繰り返すと貯留室4が満杯になり、排出サイフォン部5の上がり流路51の終端から溢れでることになるが、便器部Aからの汚物水dの排出が一気になされると、排出サイフォン部5がサイフォン排出状態となり、貯留室4内の汚物水dは一気に下水管Cに放出される。
【0040】
特に本実施形態においては排出補助部6を付設して、前記の一気放流をより確実なものとしたものである。即ち満杯水位より少し低い水位に水位センサ62を設け、当該水位センサ62で所定以上の水位を確認した際に、第三噴射ノズル61を待機状態とし、待機状態時にトイレが使用され、第二噴射ノズル32から排出水bの噴射直後(便器部Aから汚物水dの排出)に、第三噴射ノズル61から放流水eを噴射して、一気放流を実現するものである(図2の3)。
【0041】
従ってトイレ使用時の一回の使用水量が少なくても、貯留室4でトイレ使用4〜5回分の汚物水dが貯められ、一挙に下水管Cに排出されるので、十分な汚物搬送能力を備えて下水管放流できるもので、結果的には全体のトイレ使用水量を激減させることが可能となるものである。
【0042】
尚前記の実施形態は、便器部Aと貯留部Bを一体の便器として形成した例を示したが、図6に示すように便器部を独立した便器A0とし、当該便器A0の設置個所の下方(例えば床下)に独立した貯留部B0を形成しても良い。この実施形態の別例で示した図6における番号表示は、一体型便器の実施形態の番号と同一の意味を有するものである。
【符号の説明】
【0043】
A 便器部
B 貯留部
C 下水管
1 便器ボウル部
2 排出部
21 上り流路
22 下り流路
23 頂部流路
3 給水部
31 第一噴射ノズル
311,312 側面噴射口
313 下方噴射口
32 第二噴射ノズル
321 噴射口
33 給水制御部
331,332 開閉弁
34 給水管
35 水道管
36 ポンプ部
4 貯留室
41 空気孔部
5 排出サイフォン部
51 上り流路
6 排出補助部
61 第三噴射ノズル
62 水位センサ
63 補助給水部
a 洗浄水
b 排出水
c 汚物
d 汚物水
e 放流水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜容量の便器ボウル部、及び便器ボウル部の底面からサイフォントラップ構造の排出部、及び便器ボウル部に排出洗浄水を供給する給水部を備えた便器部と、
便器部下方に位置して排出部に連続して形成すると共に、上方に脱臭機能を備えた空気孔部を設けて便器部のサイフォン作用を実現することができる半密閉式の貯留室、及び貯留室内の底面近傍に開口して、貯留室に所定以上の排出対象流動物が溜まった際に排出作用をなす排出サイフォン部を備えた貯留部と、
で構成してなることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
給水部が、所定の圧力を以て噴射する便器ボウル部上部に設けた第一噴射ノズルと、便器ボウル部底部に設けた第二噴射ノズルを備え、第一噴射ノズルが便器ボウル部内両側面に添って噴射する噴射口、及びノズル下方面に添って噴射する噴射口を設け、第二噴射ノズルが排出部の上り流路に向けて噴射する噴射口を設けたものであって、第一噴射ノズルによる洗浄水の噴射作動後に第二噴射ノズルの排出水の噴射作動を行い、更に第二噴射ノズル作動終了後に再度第一噴射ノズルの再噴射がなされる制御手段を備えてなる請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
貯留室の排出サイクルが、便器部の排出作動4〜5回分程度となるように貯留室容積を定めると共に、貯留室の底面形状を、排出サイフォン部の開口位置に流れ込み易い傾斜面に形成してなる請求項2記載のトイレ装置。
【請求項4】
便器部と貯留部とを一体の便器に形成してなる請求項1乃至3記載の何れかのトイレ装置。
【請求項5】
貯留室の底部における排出サイフォン部の開口部近傍に、サイフォン排出部の上り流路に向けて排出補助噴射する第三噴射ノズルを設け、貯留室の排出対象流動物の貯留量が一定以上となった後に、第二噴射ノズルの作動と対応して第三噴射ノズルを作動させる制御手段を備える請求項2乃至4記載の何れかのトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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