説明

トウモロコシ植物MON88017および組成物ならびにその検出方法

【課題】グリホサート耐性および昆虫抵抗性のトウモロコシ植物MON88017、ならびに植物試料および組成物中でのトウモロコシ植物MON88017 DNAのアッセイ方法およびその存在を検出する方法を提供する。
【解決手段】MON88017と指定されたトウモロコシ植物およびそれに含まれるDNA組成物。また、DNA配列に基づいたトウモロコシ植物MON88017の存在を検出するためのアッセイ方法ならびにDNA検出方法における分子マーカーとしてのこのDNA配列に基づいたトウモロコシ植物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年12月15日に出願された米国仮出願第60/529,477号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、植物分子生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、グリホサート耐性および昆虫抵抗性のトウモロコシ植物MON88017、ならびに植物試料および組成物中でのトウモロコシ植物MON88017 DNAのアッセイ方法およびその存在を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記載
トウモロコシは、世界の多くの領域において重要な作物であって、主食料源である。バイオテクノロジー手法は、その生成物の農業形質および質の改良のためにトウモロコシに適用されている。かかる1つの農業形質は、除草剤耐性、特に、グリホサート除草剤に対する耐性である。トウモロコシにおけるこの形質は、グリホサート抵抗性の5−エノールピルビル−3−シキミ酸リン酸合成酵素(CP4 EPSPSおよび米国特許第5,633,435号)を発現するトウモロコシ植物における挿入遺伝子の発現により与えられた。もう一つの農業形質は、昆虫抵抗性、例えば、遺伝子操作されたトウモロコシ植物のコーンボーラーおよびコーンルートワームに対する抵抗性である(米国特許第6,489,542号および米国特許第6,620,988号)。有性交雑の子孫が、注目する導入遺伝子/ゲノムDNAを含むかを決定するために特定の植物の導入遺伝子/ゲノムDNAの存在を検出できることは有利であろう。加えて、組換えの作物植物から由来した食品の市販前承認および標識を必要とする規制に従う場合に、特定の植物の検出方法は有用であろう。
【0004】
植物における外来遺伝子の発現は、恐らくクロマチン構造(例えば、ヘテロクロマチン)、または組込み部位に近接した転写調節エレメント(例えば、エンハンサー)の近接によりそれらの染色体の位置により影響されることが知られている(Weisingら, Ann. Rev. Genet 22:421-477, 1988)。この理由のために、導入された注目する遺伝子の最適な発現により特徴づけられた植物を同定するために多数の植物をスクリーニングすることがしばしば必要である。例えば、それは、植物中の導入された導入遺伝子の発現のレベルにおける広い変化が存在する植物および他の生物体中で観察された。また、空間または一時的なパターンの発現における差、例えば、様々な植物組織において導入遺伝子の相対的な発現の差が存在し、それは導入された遺伝子構築体に存在する転写調節エレメントから予期されたパターンに対応しなくてもよい。この理由のために、何百〜何千もの異なるトランスジェニック植物を生成し、商業目的のための所望の導入遺伝子発現レベルおよび発現型を有する単一の植物につきそれらの植物をスクリーニングすることが一般的である。導入遺伝子発現の所望のレベルまたはパターンを有する植物は、従来の育種方法を用いる有性交雑によりその導入遺伝子を他の遺伝的背景に遺伝子移入するのに有用である。かかる交雑の子孫は、本来の形質転換体の導入遺伝子発現の特徴を維持する。この戦略を用いて、局所的な生育条件および市場需要に良好に適応した多数の変種における信頼できる形質発現を保証する。
【0005】
ポリ核酸プローブを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびDNAハイブリダイゼーションのごときいずれかのよく知られた核酸検出方法により導入遺伝子の存在を検出することが可能である。これらの検出方法は、一般的に、DNA構築体の導入遺伝子の成分であるプロモーター、リーダー、イントロン、コード領域、3’転写ターミネーター、マーカー遺伝子等のごとき遺伝子エレメントに特異的であるDNAプライマーまたはプローブ分子を用いる。結果的に、かかる方法は、挿入された導入遺伝子DNAに隣接するゲノムDNAの配列が知られていない限りは、異なる導入遺伝子の事象、特に、同一の導入遺伝子DNA構築体を用いて生成したものを区別するのに有用ではないかもしれない。事象に特異的なDNA検出方法は、多数の導入遺伝子の作物植物導入、例えば、甜菜(米国特許第6,531,649号)、小麦(米国特許公開20020062503)、昆虫抵抗性トウモロコシ(米国特許公開20020102582)、およびグリホサート耐性トウモロコシ事象nk603(米国特許公開20020013960)につき開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、グリホサート耐性およびコーンルートワーム抵抗性のトウモロコシ植物MON88017、およびその中に含まれた組成物、ならびにこれらの組成物を含むトウモロコシ植物MON88017およびその子孫中の導入遺伝子/ゲノムの挿入領域の検出方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、受入番号PTA−5582を持つ米国培養菌保存施設(ATCC)に寄託された種子を有するMON88017と指定されたトランスジェニックトウモロコシ植物に関する。本発明のもう一つの態様は、植物MON88017の植物および種子の子孫植物もしくは種子または再生可能な器官を含む。また、本発明は、限定されるものではないが、花粉、胚珠、種子、根および葉を含むトウモロコシ植物MON88017の植物器官を含む。本発明は、グリホサート耐性の表現型およびコーンルートワーム抵抗性の表現型を有するトウモロコシ植物MON88017、およびMON88017のゲノムに含まれた新規な遺伝子組成物に関する。
【0008】
本発明の1つの態様は、トウモロコシ植物MON88017からの導入遺伝子/ゲノムの結合領域の存在を検出するDNA組成物および方法を提供する。配列番号:1および配列番号:2ならびにその相補体よりなる群から選択される少なくとも1つの導入遺伝子/ゲノムの結合DNA分子を含み、ここに、該結合分子は、トウモロコシゲノムに挿入された異種DNAおよびトウモロコシ植物MON88017中の挿入部位に隣接するトウモロコシゲノムDNAを含む導入遺伝子挿入部位にわたる単離されたDNA分子が提供される。これらのDNA分子のうちのいずれか1つを含むトウモロコシ種子およびその植物材料は、本発明の1つの態様である。
【0009】
導入遺伝子/ゲノム領域の配列番号:3またはその相補体である単離されたDNA分子が提供され、ここに、このDNAは、トウモロコシ植物MON88017のゲノムにおいて新規である。そのゲノム中に配列番号:3を含むトウモロコシ植物および種子は、本発明の1つの態様である。
【0010】
発明の他の態様により、導入遺伝子/ゲノム領域の配列番号:4またはその相補体である単離されたDNA分子が提供され、ここに、このDNA分子はトウモロコシ植物MON88017のゲノムにおいて新規である。そのゲノム中に配列番号:4を含むトウモロコシ植物および種子は、本発明の1つの態様である。
【0011】
MON88017の導入遺伝子/ゲノム領域、配列番号:5またはその相補体である単離されたDNA分子が提供され、ここに、このDNA分子はトウモロコシ植物MON88017のゲノムにおいて新規である。そのゲノム中に配列番号:5を含むトウモロコシ植物および種子は、本発明の1つの態様である。
【0012】
発明のもう一つの態様により、プライマー対を含む2つのDNA分子が、DNA検出方法における使用ために提供され、ここに、第1のDNA分子は、配列番号:3のDNA分子の導入遺伝子DNA領域またはその相補体のいずれかの部分の少なくとも11個以上の近接するポリヌクレオチドを含み、第2のDNA分子は、配列番号:3のトウモロコシゲノムDNA領域またはその相補体のいずれかの部分の少なくとも11個以上の近接するポリヌクレオチドを含み、一緒に用いられる場合にこれらのDNA分子は、アンプリコンを生成するDNA増幅方法におけるDNAプライマーセットを含む。DNA増幅方法におけるDNAプライマー対を用いて生成されたアンプリコンは、そのアンプリコンが配列番号:1を含む場合、トウモロコシ植物MON88017に特徴的である。アンプリコンが配列番号:1を含むMON88017 DNAから生成されたいずれの長さのアンプリコンも、本発明の1つの態様である。当業者は、第1および第2のDNA分子が、DNAよりだけからなることを必要としないだけではく、単独でRNA、DNAおよびRNAの混合物、あるいはDNA、RNAまたは1以上のポリメラーゼにつき鋳型として作用しない他のヌクレオチドもしくはそのアナログの組合せよりなり得ることを認識するであろう。加えて、当業者は、本明細書に記載されたプローブまたはプライマーが、長さが少なくとも約11、12、13、14、15、16、17、18、19および20の連続ヌクレオチドからのものであり、配列番号:1(任意に5’結合という)、配列番号:2(任意に3’結合という)、配列番号:3(任意に指定された5’フランキング配列の一部分)、配列番号:4(任意に指定された3’フランキング配列の一部分)、および配列番号:5(挿入されたヌクレオチド配列の全てまたは一部分)から選択されるべきであることを認識するであろう。長さが少なくとも約21から50以上の連続ヌクレオチドのプローブおよびプライマーは、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5に記載されたヌクレオチドの群から選択される場合に可能である。
【0013】
発明のもう一つの態様により、プライマー対を含む2つのDNA分子が、DNA検出方法における使用のために提供され、ここに、第1のDNA分子は、配列番号:4のDNA分子の導入遺伝子DNA領域またはその相補体のいずれかの部分の少なくとも11個以上の近接するポリヌクレオチドを含み、第2のDNA分子は、配列番号:4またはその相補体のトウモロコシゲノムDNA領域のいずれかの部分の少なくとも11個以上の近接するポリヌクレオチドを含み、ここに、一緒に用いられた場合にこれらのDNA分子は、アンプリコンを生成するDNA増幅方法におけるDNAプライマーセットを含む。DNA増幅方法においてDNAプライマー対を用いて生成されたアンプリコンは、それが配列番号:2を含む場合にトウモロコシ植物MON88017に特徴的である。アンプリコンが配列番号:2を含むMON88017 DNAから生成されたいずれの長さのアンプリコンも、本発明の1つの態様である。
【0014】
発明のもう一つの態様により、特に試料中のトウモロコシ植物MON88017 DNAに対応するDNAの存在を検出する方法が提供される。かかる方法は、(a)MON88017ゲノムDNAを含む試料とDNAプライマー対とを接触させ;次いで、(b)核酸増幅反応を行い、それによりアンプリコンを生成し;次いで、(c)アンプリコンを検出することを特徴とし、ここに、アンプリコンは配列番号:1または配列番号:2を含む。
【0015】
発明のもう一つの態様により、特に試料中のトウモロコシ植物MON88017 DNAに対応するDNAの存在を検出する方法が提供される。かかる方法は、(a)MON88017 DNAを含む試料と、配列番号:1または配列番号:2、あるいはトウモロコシ植物MON88017からのゲノムDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で非MON88017トウモロコシ植物DNAとハイブリダイズしない配列番号:1もしくは配列番号:2に実質的に相同的なDNA分子とを接触させ;(b)試料およびプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に付し;次いで、(c)トウモロコシ植物MON88017 DNAへのプローブのハイブリダイゼーションを検出することを特徴とする。
【0016】
発明のもう一つの態様により、グリホサートの適用に耐え、コーンルートワームに抵抗性であるトウモロコシ植物を生成する方法が提供され、その方法は、第1の親トウモロコシ植物MON88017と、グリホサート耐性およびコーンルートワーム抵抗性を欠く第2の親トウモロコシ植物とを有性交雑させ、それにより、グリホサート耐性およびコーンルートワーム抵抗性である雑種子孫植物を生成する工程を含む。
【0017】
発明のもう一つの態様は、(a)トウモロコシ事象MON88017からのゲノムDNAとの核酸増幅反応において用いる場合に、トウモロコシ事象MON88017に特徴的である第1のアンプリコンを生成する配列番号:32、配列番号:33および配列番号:34を含むプライマーセットと試料とを接触させ;次いで、(b)核酸増幅反応を行ない、それにより第1のアンプリコンを生成し;次いで、(c)第1のアンプリコンを検出し;次いで、(d)トウモロコシからのゲノムDNAとの核酸増幅反応において用いる場合に、トウモロコシ事象MON88017と同定された導入遺伝子挿入のトウモロコシゲノム領域に相同性である本来のトウモロコシゲノムDNAを含む第2のアンプリコンを生成する前記プライマーセットとトウモロコシDNAを含む試料を接触させ;次いで、(e)核酸増幅反応を行ない、それにより、第2のアンプリコンを生成し;次いで、(f)第2のアンプリコンを検出し;次いで、(g)試料中の第1および第2のアンプリコンを比較することを含むトウモロコシ事象MON88017の子孫の接合状態を決定する方法であり、ここに、双方のアンプリコンの存在は、試料が導入遺伝子挿入につき異型接合であることを示す。
【0018】
有効量のグリホサート含有除草剤をMON88017トウモロコシ植物の圃場に適用する工程を含む、トウモロコシ植物MON88017の圃場における雑草を制御する方法。
【0019】
少なくとも1つの親がMON88017である雑種トウモロコシ種子。
【0020】
pMON53616の植物発現カセットを含む植物DNA構築体で形質転換されたトウモロコシ植物。
【0021】
本発明の前記および他の態様は、以下の詳細な説明および添付図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】pMON53616のプラスミド地図。
【図2】トウモロコシ植物MON88017における挿入断片のゲノム構成。
【図3】MON88017 5’導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号3)。
【図4A】MON88017 3’導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号4)。
【図4B】MON88017 3’導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号4)。
【図5A】MON88017導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号5)。
【図5B】MON88017導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号5)。
【図5C】MON88017導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号5)。
【図5D】MON88017導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号5)。
【図5E】MON88017導入遺伝子/ゲノムDNA領域(配列番号5)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において「植物MON88017」または「MON88017」というトランスジェニックトウモロコシ植物は、鞘翅類害虫(Coleopteran pest)コーンルートワーム(Diabrotica spp.)による食害に抵抗性であり、かつグリホサートを含有する農業用除草剤の植物毒素作用に耐性である。この二重形質のトウモロコシ植物は、コーンルートワーム幼虫による食害に対する抵抗性、およびグリホサートに対する植物耐性を与えるAgrobacterium sp.株CP4からのグリホサート抵抗性5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素(CP4 EPSPS)蛋白質(米国特許第5,633,435号)を提供するBacillus thuringiensis(亜種 kumamotoensis)からのCRY3Bb1蛋白質(米国特許第6,501,009号)の改変変異体を発現する。二重形質トウモロコシの使用は、トウモロコシ生産者に主要な利点:a)世界の多数のトウモロコシ栽培領域における生育関連における主な害虫のコーンルートワーム幼虫による経済的な損失からの保護、ならびにb)広域スペクトルの雑草制御のためのトウモロコシ作物に対する農業用除草剤を含有するグリホサートを適用する能力を提供するであろう。加えて、コーンルートワームおよびグリホサート耐性形質をコードする導入遺伝子を、同一DNAセグメントに連結し、MON88017のゲノム中の単一座にて生じさせ、これは、育種効率の増強を提供し、育種集団およびその子孫における導入遺伝子挿入断片を追跡するための分子マーカーの使用を可能にする。
【0024】
トウモロコシ植物MON88017は、プラスミド構築体pMON53616での生来のトウモロコシ系のAgrobacterium媒介形質転換プロセスにより生成された(図1)。このプラスミド構築体は、トウモロコシ植物細胞中に、CRY3Bb1蛋白質およびCP4 EPSPS蛋白質の発現に必要な調節遺伝エレメントと連結した植物発現カセットを含む。トウモロコシ細胞は、無傷のトウモロコシに再生成され、個々の植物は、植物発現カセットの完全性、およびグリホサートおよびコーンルートワーム幼虫の食害に対する抵抗性を示すその植物集団から選択された。そのゲノム中にpMON53616の連結した植物発現カセットを含むトウモロコシ植物は、本発明の1つの態様である。
【0025】
トウモロコシ植物MON88017のゲノムに挿入されたプラスミドDNAは、詳細な分子の分析により特徴づけられた。これらの分析は、挿入断片数(トウモロコシゲノム内の組込みサイト数)、コピー数(1つの座内のT−DNAのコピー数)および挿入された遺伝子カセットの完全性を含んだ。無傷のCP4 EPSPSおよびCRY3Bb1コード領域およびそれらの各調節エレメント、植物発現カセットのプロモーター、イントロンおよびポリアデニル化配列、ならびにそのプラスミドpMON53616骨格DNA領域を含むDNA分子プローブを用いた。そのデータは、MON88017がCRY3Bb1およびCP4 EPSPSカセットの双方の1コピーを持つ単一のT−DNA挿入断片を含むことを示す。無傷の遺伝子カセットに連結されたかまたは連結されていない形質転換ベクターpMON53616からのさらなるエレメントは、MON88017のゲノム中に検出されなかった。最後に、PCRおよびDNA配列の分析を行い、5’および3’挿入断片−対−植物ゲノム結合を決定し、挿入断片内のエレメントの組成を確認し(図2)、トウモロコシMON88017中の挿入断片の完全なDNA配列を決定した(配列番号:5)。
【0026】
グリホサート耐性、コーンルートワーム抵抗性トウモロコシ植物は、MON88017から生長したトウモロコシ植物よりなる第1の親トウモロコシ植物と、グリホサート除草剤に対する耐性を欠く第2の親トウモロコシ植物とをまず有性交雑させて、それにより複数の雑種子孫植物を生成することにより育種できる。生来のトウモロコシ系は、反復親と戻し交雑し、グリホサート処置での選択を含むプロセスにより生成できる。異なった形質および作物に一般的に用いられる他の育種方法の記載は、当該技術分野において知られた参考文献、例えば、Fehr, Breeding Methods for Cultivar Development, Wilcox J. ed., American Society of Agronomy, Madison WI (1987)に見出すことができる。
【0027】
特記しない限りは、用語は、関連技術分野における当業者による伝統的な用法により理解すべきである。また、分子生物学における共通の用語の定義は、Riegerら, Glossary of Genetics: Classical and Molecular, 5th edition, Springer-Verlag: New York, 1991;およびLewin, Genes V, Oxford University Press: New York, 1994に見出すことができる。37CFR§1.822に記載されたDNA塩基についての命名法が用いられる。
【0028】
本願明細書に用いた「トウモロコシ」なる用語は、Zea maysを意味し、トウモロコシ植物MON88017で生育できるすべての植物変異体を含む。
【0029】
本願明細書に用いた「含む」なる用語は、「限定なくして含む」ことを意味する。
【0030】
「グリホサート」とは、N−ホスホノメチルグリシンおよびその塩をいう。N−ホスホノメチルグリシンは、広域スペクトルの植物種に対する活性を有するよく知られた除草剤である。グリホサートは、Roundup(Monsanto Co.)の有効成分であり、その環境において望ましい短い半減期を有する安全な除草剤である。グリホサートは、Roundup除草剤(Monsanto Co.)の有効成分である。「グリホサート除草剤」での処置とは、Roundup、Roundup Ultra、Roundup Pro除草剤またはグリホサートを含有するいずれかの他の除草製剤をいう。グリホサートの商業用製剤の例は、限定なくして、ROUNDUP、ROUNDUP ULTRA、ROUNDUP ULTRAMAX、ROUNDUP WEATHERMAX、ROUNDUP CT、ROUNDUP EXTRA、ROUNDUP BIACTIVE、ROUNDUP BIOFORCE、RODEO、POLARIS、SPARKおよびACCORD除草剤としてモンサント社により販売されるもの、その全てはそのイソプロピルアンモニウム塩としてのグリホサートを含有し;ROUNDUP DRYおよびRIVAL除草剤としてモンサント社により販売されるもの、それらはそのアンモニウム塩としてのグリホサートを含有し;ROUNDUP GEOFORCEとしてモンサント社により販売されるもの、それはそのナトリウム塩としてのグリホサートを含有し;およびTOUCHDOWN除草剤としてSyngenta Crop Protectionにより販売されるもの、それはそのトリメチルスルホニウム塩としてのグリホサートを含有するを含む。植物表面に適用された場合、グリホサートは植物を通って全体に移動する。グリホサートは、芳香族アミノ酸の合成のための前駆体を供するシキミ酸経路のその抑制による植物毒素である。グリホサートは、植物に見出される酵素5−エノールピルビル−3−ホスホシキマート合成酵素(EPSPS)を抑制する。グリホサート耐性は、グリホサートに対する低親和性を有する細菌性EPSPS変異体および植物EPSPS変異体の発現により達成でき、従って、グリホサートの存在下でそれらの触媒活性を保持する(米国特許第5,633,435号、第5,094,945号、第4,535,060号および第6,040,497号)。
【0031】
コーンルートワーム(CRW、Diabrotica spp)幼虫は、トウモロコシ植物を発育させる根を食べる。実質的な費用および時間は、この害虫により引き起こされた経済損害の制御に向けられる。有機燐化合物、カルバマートおよびピレスロイドを含めた化学殺虫剤は、CRWを制御するために、毎年1600万を超えるトウモロコシ・エーカーの土壌に取り込まれる。土壌殺虫剤から導入遺伝子のアプローチまで離れてシフトする利点はめざましく、潜在的なヒトの健康および安全性リスクにおける低下、非標的生物体に対する直接的な衝撃の低下、表面および地下水の供給の汚染の低下、減少した殺虫剤容器の処分問題、ならびに他の害虫管理および農業問題との一般的な適合を含む。
【0032】
本発明は、高レベルのCRY3Bb1デルタエンドトキシンを発現する少なくとも1つの発現カセットならびにグリホサート耐性酵素を発現する少なくとも1つの発現カセットを含むDNA構築体で形質転換されているDNAで形質転換されたトランスジェニック植物を提供する。本方法によるおよび本明細書に開示されたDNA構築体で形質転換されたトウモロコシ植物は、CRWに抵抗性である。また、同一トウモロコシ植物は、グリホサート除草剤に抵抗性である。連結した農業的形質は、育種集団中でこれらの形質をともに維持することにおいて容易さを供する。
【0033】
トランスジェニック「植物」は、異種のDNA、すなわち、注目する導入遺伝子を含むポリ核酸構築体での植物細胞の形質転換;その植物細胞のゲノムへの導入遺伝子の挿入に由来する植物の集団の再生、および特定のゲノム位置への挿入により特徴付けされた特定の植物の選択により生成される。「事象」なる用語とは、異種のDNAを含む本来の形質転換体植物および形質転換体の子孫をいう。また、「事象」なる用語は、その事象と、子孫が異種のDNAを含むもう一つの植物との間の性的外交雑により生じた子孫を含む。反復親への繰り返された戻し交雑の後でさえ、形質転換された親事象からの挿入されたDNAおよび隣接するゲノムDNAは、同一染色体の位置にてその交雑の子孫において存在する。また、「事象」なる用語は、挿入されたDNAおよび、挿入されたDNAに直ちに隣接したフランキングゲノム配列を含む本来の形質転換体からのDNAをいい、それは、挿入されたDNA、ならびに挿入されたDNAを含まない親系を含む一つの親系の有性交雑(例えば、自配に起因する本来の形質転換体および子孫)の結果としての注目する導入遺伝子を含む挿入されたDNAを受ける子孫に移されると予期されるであろう。本発明は、導入遺伝子の事象、トウモロコシ植物MON88017、その子孫、およびそこに含有されたDNA組成物に関する。
【0034】
「プローブ」は、従来の検出可能な標識またはリポーター分子、例えば、放射性同位体、リガンド、化学発光剤もしくは酵素に結合した単離核酸である。かかるプローブは標的核酸の鎖、本発明の場合に、MON88017植物、またはMON88017 DNAを含む試料からのいずれかのMON88017からのゲノムDNAの鎖に相補的である。本発明によるプローブは、デオキシリボ核酸またはリボ核酸だけではなく、標的DNA鎖に特異的に結合し、その標的DNA配列の存在を検出するために用いることができるポリアミドおよび他のプローブ物質を含む。
【0035】
DNAプライマーは、核酸ハイブリダイゼーションにより相補的な標的DNA鎖にアニーリングして、プライマーと標的DNA鎖との間のハイブリッドを形成し、次いで、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼにより標的DNA鎖に沿って伸長された単離ポリ核酸である。本発明のDNAプライマー対またはDNAプライマーセットとは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の従来のポリ核酸増幅方法により標的核酸配列の増幅に有用な2つのDNAプライマーをいう。
【0036】
DNAプローブおよびDNAプライマーは、一般的に長さが11個以上のポリヌクレオチドで、しばしば18個以上のポリヌクレオチド、24個以上のポリヌクレオチドまたは30個以上のポリヌクレオチドである。かかるプローブおよびプライマーは、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で標的配列に特異的にハイブリダイズするのに十分な長さのものであるように選択する。好ましくは、標的配列にハイブリダイズする能力を保持する標的配列とは異なるプローブは、通常の方法により設計し得るが、本発明によるプローブおよびプライマーは、標的配列と完全な配列類似性を有する。
【0037】
プローブおよびプライマーを調製および用いる方法は、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrookら, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989 (以下「Sambrookら, 1989」); Current Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubelら, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992 (with periodic updates) (以下「Ausubelら, 1992」);およびInnisら, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press: San Diego, 1990に記載されている。PCR DNAプライマー対は、例えば、Primer (Version 0.5, c 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA)のごときその目的を意図したコンピュータプログラムを用いることにより、公知の配列から誘導できる。
【0038】
本明細書に開示されたフランキングゲノムDNAおよび挿入配列に基づいたプライマーおよびプローブを用いて、例えば、通常の方法、かかるDNA分子を再クローニングおよび配列決定することにより、開示されたDNA配列を確認できる(および必要ならば修正できる)。
【0039】
本発明の核酸プローブおよびプライマーは、ストリンジェントな条件下、標的DNA分子にハイブリダイズする。いずれかの通常の核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅方法を用いて、試料中のトランスジェニック植物からのDNAの存在を同定できる。核酸セグメントともいわれるポリ核酸分子、またはその断片は、ある種の環境下で他の核酸分子に特異的にハイブリダイズできる。本願明細書に用いた2つのポリ核酸分子は、2つの分子がアンチパラレルの二本鎖の核酸構造を形成できるならば、相互に特異的にハイブリダイズできると考えられる。核酸分子は、それらが完全な相補性を示すならば、もう一つの核酸分子の「相補体」であると考えられる。本願明細書に用いた分子は、その分子のうちの1つのすべてのヌクレオチドが他方のヌクレオチドに相補的である場合に、「完全な相補性」を示すと考えられる。2つの分子が、それらが少なくとも通常の「低ストリンジェンシー」条件下で相互にアニーリングされるのを可能とするのに十分な安定性をもって、相互にハイブリダイズできるならば、「最小に相補的」であると考えられる。同様に、その分子が、それらが通常の「高ストリンジェンシー」条件下で相互にアニーリングされるのを可能とするのに十分な安定性をもって、相互にハイブリダイズできるならば、「相補的」であると考えられる。通常のストリンジェンシー条件は、Sambrookら, 1989、およびHaymesら, In: Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press, Washington, DC (1985)に記載されている。従って、完全な相補性からの逸脱は、かかる逸脱が二本鎖の構造を形成する分子の能力を完全には排除しない限りは、許容される。核酸分子がプライマーおよびプローブとして機能するために、それは使用された特定の溶媒および塩の濃度下で安定した二本鎖の構造を形成できるように単に十分に、配列において相補的であることを必要とする。
【0040】
本願明細書に用いた、実質的に相同性の配列は、高ストリンジェンシー条件下で比較されるべき核酸配列の相補体に特異的にハイブリダイズであろう核酸配列である。DNAハイブリダイゼーションを促す適当なストリンジェンシー条件、例えば、45℃での6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)に続いての50℃での2.0×SSCの洗浄が当業者に知られているか、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃の約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃の約0.2×SSCの高ストリンジェンシーで選択できる。加えて、洗浄工程の温度は、約22℃での低ストリンジェンシー条件から約65℃での高ストリンジェンシー条件に増加できる。温度および塩の双方は変更できるか、または温度または塩濃度のいずれかが一定に保持されていてもよく、一方、他方の変数が変更される。好ましい具体例において、本発明のポリ核酸は、例えば、約2.0×SSC、および約65℃にて中程度のストリンジェントな条件下にて、配列番号1、2、3、4もしくは5に記載された1以上の核酸分子、またはその相補体もしくはいずれかの断片に特異的にハイブリダイズするであろう。特に好ましい具体例において、本発明の核酸は、高ストリンジェンシー条件下にて、配列番号1、2、3、4もしくは5に記載された1以上の核酸分子、またはいずれかの相補体もしくは断片に特異的にハイブリダイズするであろう。本発明の1つの態様において、本発明の好ましいマーカー核酸分子は、配列番号:1もしくは配列番号:2に記載された核酸配列またはその相補体あるいはそのいずれかの断片を有する。本発明のもう一つの態様において、本発明の好ましいマーカー核酸分子は、配列番号:1もしくは配列番号:2に記載された核酸配列またはその相補体あるいはそのいずれかの断片と80%〜100%、または90%〜100%の配列同一性を共有する。本発明のさらなる態様において、本発明の好ましいマーカー核酸分子は、配列番号:1もしくは配列番号:2に記載された核酸配列またはその相補体あるいはそのいずれかの断片と95%〜100%の配列同一性を共有する。配列番号:1または配列番号:2を植物生育方法におけるマーカーとして用いて、「DNA markers: Protocols, applications, and overviews: (1997) 173-185, Cregan,ら, eds., Wiley-Liss NYにおける単純な配列反復DNAマーカー分析に記載された方法に類似する遺伝子交雑の子孫を同定し得る。標的DNA分子へのプローブのハイブリダイゼーションは、当業者に知られたいくつかの方法により検出でき、それらの方法は、限定されるものではないが、蛍光性タグ、放射活性タグ、抗体ベースのタグおよび化学発光タグを含む。
【0041】
特定の増幅プライマー対を用いた(例えば、PCRによる)標的核酸配列の増幅に関して、「ストリンジェントな条件」は、対応する野生型配列(またはその相補体)がDNA熱増幅反応において、ユニークな増幅生成物、アンプリコンに結合および好ましくはそれを生成するであろう標的核酸配列にだけプライマー対がハイブリダイズするのを可能とする条件である。
【0042】
「(標的配列)に特異的な」なる用語は、プローブまたはプライマーが標的配列を含む試料中の標的配列にだけストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを示す。
【0043】
本願明細書に用いた「増幅されたDNA」または「アンプリコン」とは、ポリ核酸の鋳型の一部である標的ポリ核酸分子に指向されたポリ核酸増幅方法の生成物をいう。例えば、有性交雑に起因するトウモロコシ植物が本発明のトウモロコシ植物MON88017植物からのトランスジェニック植物ゲノムDNAを含むかを決定するために、トウモロコシ植物組織試料から抽出されたDNAを、挿入された異種のDNA(導入遺伝子DNA)の挿入部位に隣接するMON88017植物のゲノムにおけるDNA配列に由来するプライマー、ならびにMON88017植物DNAの存在につき特徴的であるアンプリコンを生成するために挿入された異種のDNAに由来する第2のプライマーを含むプライマー対を用いて、ポリ核酸増幅方法に付してもよい。その特徴的なアンプリコンはある長さにあり、また、植物ゲノムDNAについて特徴的であるDNA配列を有し、そのアンプリコンのDNA配列は、配列番号:1または配列番号:2を含む。そのアンプリコンは、長さにおいて、そのプライマー対+一つのヌクレオチド塩基対、好ましくは、+約50個のヌクレオチド塩基対、より好ましくは、約250個のヌクレオチド塩基対、さらにより好ましくは、+約450個のヌクレオチドまたはそれらを超える、の組み合わせた長さの範囲に有り得る。あるいは、プライマー対は、完全な挿入断片ポリヌクレオチド配列を含むアンプリコンを生成するような挿入された異種のDNAの両側におけるゲノム配列から誘導できる(例えば、そのMON88017ゲノムに挿入されたpMON53616 DNA断片の2つの発現カセットを含み、その挿入断片が配列番号:5の約7125個のヌクレオチドを含むDNA分子を増幅する配列番号:3のゲノム部分から単離された前方プライマーおよび配列番号:4のゲノム部分から単離された逆プライマ―、図2および図5)。導入遺伝子挿入DNAに隣接する植物ゲノム配列から誘導されたプライマー対のメンバーは、挿入されたDNA配列からのある距離にて位置し、この距離は、1個のヌクレオチド塩基対から約20000ヌクレオチド塩基対までの範囲とできる。「アンプリコン」なる用語の使用は、DNAの熱増幅反応において形成されてもよいプライマー二量体を特に除外する。
【0044】
ポリ核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含めた当該技術分野において知られた様々なポリ核酸の増幅方法のいずれによっても達成できる。増幅方法は当該技術分野において知られており、とりわけ、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号ならびにPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, ed. Innisら, Academic Press, San Diego, 1990に記載されている。PCR増幅方法は、22kb(キロベース)までのゲノムDNAおよび42kbまでのバクテリオファージDNAを増幅するために開発された(Chengら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5695-5699, 1994)。DNA増幅の技術分野において知られたこれらの方法ならびに他の方法を本発明の実施に用いてもよい。その異種のDNA挿入断片の配列またはMON88017からのフランキングゲノムDNA配列は、本明細書に供された配列から誘導されたプライマーを用いて、受入番号PTA−5582を有するATCCに寄託されたMON88017種子、またはその種子から生育した植物からのかかるDNA分子を増幅し、続いてPCRアンプリコンまたはそのクローン化されたDNA断片の標準的なDNA配列決定により確認できる(および必要ならば修正できる)。
【0045】
DNA増幅方法に基づいたDNA検出キットは、標的DNAに特異的にハイブリダイズし、適当な反応条件下で特徴的なアンプリコンを増幅するDNAプライマー分子を含む。そのキットは、当該技術分野において知られたアガロースゲルベースの検出方法または特徴的なアンプリコンを検出するいずれかの方法を提供し得る。配列番号:3または配列番号:4のトウモロコシゲノム領域のいずれかの部分、および配列番号:5の導入遺伝子挿入領域のいずれかの部分に相同的または相補的であるDNAプライマーを含むキットは、本発明の目的である。特に、DNA増幅方法において有用なプライマー対であると確認されたのは、MON88017の5’導入遺伝子/ゲノム領域の一部分に相同的な特徴的なアンプリコンを増幅する配列番号:6および配列番号:7であり、ここに、そのアンプリコンは配列番号:1を含む。DNAプライマーとして有用な他のDNA分子は、DNA増幅の当該技術分野における当業者により、MON88017(配列番号:5)の開示された導入遺伝子/ゲノムDNA配列から選択できる。
【0046】
これらの方法により生成された特徴的なアンプリコンは、複数の技術により検出し得る。隣接した側面に位置するゲノムDNA配列および挿入されたDNA配列の双方をオーバーラップさせるDNAオリゴヌクレオチドが設計されている場合、かかる1つの方法は、遺伝子ビット分析(Nikiforov,ら Nucleic Acid Res. 22:4167-4175, 1994)である。オリゴヌクレオチドは、マイクロタイタープレートのウェルに固定化される。(挿入された配列における1つのプライマー、および隣接したフランキングゲノム配列における1つを用いて)注目する領域のPCR後、単鎖PCR生成物を固定化されたオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、次いで、DNAポリメラーゼを用いて単一の塩基伸長反応についての鋳型として機能させ、次いで、予期された次の塩基に特異的なジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTPs)で標識できる。読み出しは、蛍光またはELISAベースで有り得る。シグナルは、成功した増幅、ハイブリダイゼーションおよび単一の塩基伸長による導入遺伝子/ゲノムの配列の存在を示す。
【0047】
もう一つの方法は、Winge(Innov. Pharma. Tech. 00:18-24, 2000)により記載されたピロシーケンス手法である。この方法において、隣接したゲノムDNAおよび挿入DNA結合をオーバーラップさせたオリゴヌクレオチドが設計される。そのオリゴヌクレオチドは、注目する領域(挿入配列における1つのプライマーおよびフランキングゲノム配列における1つ)からの単鎖PCR生成物にハイブリダイズし、次いで、DNAポリメラーゼ、ATP、スルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、アピラーゼ、アデノシン5’フォスホスルフェートおよびルシフェリンの存在下でインキュベートされる。DNTPは個々に加えられ、取込の結果、光シグナルが測定される。光シグナルは、成功した増幅、ハイブリダイゼーションおよび単一または複数の塩基伸長による導入遺伝子/ゲノムの配列の存在を示す。
【0048】
Chen,ら, (Genome Res. 9:492-498, 1999)により記載された蛍光偏光法は、本発明のアンプリコンを検出するために用いることができる方法である。この方法を用いて、ゲノムのフランキングおよび挿入されたDNA結合をオーバーラップしたオリゴヌクレオチドが設計される。そのオリゴヌクレオチドは、注目する領域(挿入されたDNAにおける1つのプライマーおよびフランキングゲノムDNA配列の1つ)からの単鎖PCR生成物にハイブリダイズされ、次いでDNAポリメラーゼおよび蛍光標識されたddNTPの存在下でインキュベートされる。単一の塩基伸長はddNTPの取込みを生じる。取込みは、蛍光測定器を用いて、極性化における変化として測定できる。極性化における変化は、成功した増幅、ハイブリダイゼーションおよび単一の塩基伸長により導入遺伝子/ゲノムの配列の存在を示す。
【0049】
Taqman(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)は、DNA配列の存在を検出および定量する方法として記載され、それは製造者により供される説明書において十分に理解される。略言すると、ゲノムフランキングおよび挿入DNA結合をオーバーラップさせたFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。そのFRETプローブおよびPCRプライマー(挿入DNA配列における1つのプライマーおよびフランキングゲノム配列における1つ)は、熱安定性のポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環される。そのFRETプローブのハイブリダイゼーションの結果、FRETプローブ上のクエンチング部位から離れて、蛍光性の部位を切断および放出する。蛍光シグナルは、成功した増幅およびハイブリダイゼーションにより導入遺伝子/ゲノムの配列の存在を示す。
【0050】
分子ビーコン(Molecular Beacon)は、Tyangiら (Nature Biotech.14:303-308, 1996)に記載された配列検出において用いるために記載されている。略言すると、フランキングゲノムおよび挿入DNA結合をオーバーラップするFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。そのFRETプローブのユニークな構造の結果、それは、蛍光およびクエンチング部分を密接に近接したままとする二次構造を含む。FRETプローブおよびPCRプライマー(挿入DNA配列における1つのプライマーおよびフランキングゲノムの配列における1つ)は、熱安定性のポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環される。PCR増幅の成功後、標的配列に対するFRETプローブのハイブリダイゼーションの結果、プローブの二次構造を除去し、その蛍光およびクエンチング部分を空間的に分離する。蛍光シグナルが生じる。蛍光シグナルは、成功した増幅およびハイブリダイゼーションによりフランキング挿入断片配列の存在を示す。
【0051】
DNA検出キットは、本願明細書に示された組成物、およびDNA検出の当該技術分野においてよく知られた方法を用いて展開できる。そのキットは、試料中のトウモロコシ植物MON88017 DNAの同定に有用であり、MON88017 DNAを含むトウモロコシ植物を生育させる方法に適用できる。キットは、プライマーまたはプローブとして有用であり、かつ配列番号:1、2、3、4、または5の少なくとも一部分に相同的または相補的であるDNA分子を含む。DNA分子は、DNA増幅方法(PCR)において、またはポリ核酸ハイブリダイゼーション法、すなわち、サザン分析、ノーザン分析におけるプローブとして用いることができる。トウモロコシ事象MON88017を生成するために用いたプラスミドベクターpMON53616は、2つの発現カセットを含み:発現カセット1は、小麦Hsp17 3’ポリアデニル化配列に連結したCRY3Bb1コード領域に連結したコメアクチン1イントロンに連結した小麦CAB 5’リーダーに連結した複製されたエンハンサーを持つCaMV 35Sプロモーター;およびCP4 EPSPSコード領域に融合し、NOS 3’ポリアデニル化配列に連結した葉緑体シグナルペプチドの転写を駆動するコメアクチン1イントロンに連結したコメアクチン1プロモーターを含む発現ベクター2に連結し、その連結した発現カセットの配列は、配列番号:5に含まれる。
【0052】
以下の実施例は、発明のある好ましい具体例の実施例を示すために含まれる。以下の実施例において示された技術は、発明者らが発明の実施において良好に機能すると分かったアプローチを表し、かくして、その実施につき好ましい様式の実施例を構成すると考えることができることは当業者ならば十分に理解するであろう。しかしながら、当業者は、本開示に徴して、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多数の変更が開示された特定の具体例においてなすことができ、かつ同様または類似する結果を依然として得ると考えるであろう。
【実施例】
【0053】
実施例1
トランスジェニックトウモロコシ植物MON88017は、pMON53616から誘導されたDNA断片を用いてトウモロコシ細胞のAgrobacterium媒介形質転換により生成した(図1)。植物形質転換構築体pMON53616は、三親性(triparental)交雑手順を用いてAgrobacteriumに交雑させた(Dittaら, Proc. Natl. Acad. Sci. 77:7347-7351, 1980)。2つの導入遺伝子植物発現カセットを含むpMON53616のDNA断片は、トウモロコシ植物細胞のゲノムに挿入し、そのトウモロコシ植物細胞をトウモロコシ植物MON88017に再生した。MON88017のゲノム中への挿入断片の配置を(図2)に示す。MON88017およびその子孫は、グリホサートに対する耐性を有し、コーンルートワーム幼虫食害に抵抗性である。本願明細書に記載のように、トウモロコシ形質転換を本質的に行った。
【0054】
pMON53616を含むAgrobacteriumの液体培養物をグリセロールストック、または新たな縞状のプレートから開始し、次いで、振盪(約150毎分回転数、rpm)しつつ、50mg/l(ミリグラム/リットル)カナマイシン、および50mg/lストレプトマシンもしくは50mg/lスペクチノマイシンのいずれか、および200μMアセトシリンゴン(acetosyringone)(AS)を含む25mg/lクロラムフェニコールを含有するpH7.0の液体LB培地において中間対数増殖相まで26℃〜28℃にて一晩増殖させる。Agrobacterium細胞は、接種培地(米国特許第6,573,361号の表8に記載される液体CM4C)に再懸濁し、細胞密度を、その再懸濁された細胞が660nm(すなわち、OD660)の波長にて分光測光器中で測定される場合に1の光学密度を有するように調整する。新たに単離したタイプIIの未熟なHiIIxLH198およびHiIIトウモロコシ胚を、Agrobacteriumを接種し、23℃にて暗所で2〜3日間共培養する。次いで、胚を、500mg/lカルベニシリン(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)および20μM AgNOを補足した遅延(delay)培地(N6 1−100−12;米国特許第5,424,412号の表1に記載)に移し、28℃にて4〜5日間培養した。引き続いての全ての培養はこの温度に保つ。
【0055】
トウモロコシ子葉鞘は接種1週間後に取り出す。胚を、500mg/lカルベニシリンおよび0.5mMグリホサートを補足した第1の選択培地(米国特許第5,424,412号の表1に記載されたN61−0−12)に移す。2週間後に、残存する組織を、500mg/lカルベニシリンおよび1.0mMグリホサートで補足した第2の選択培地(N61−0−12)に移す。残存するカルスを1.0mMグリホサートで2週間毎に約3の継代培養の間継代する。グリホサート耐性組織を同定した場合、その組織を再生のために大きする。再生のために、カルス組織を、0.1μMアブシジン酸(ABA; Sigma-Aldrich, St Louis, MO)を補足した再生培地(米国特許第5,424,412号の表1に記載されるMSOD)に移し、次いで、2週間培養する。再生しているカルスを高スクロース培地に移し、2週間培養する。小植物を培養容器中でMSOD培地(ABA無し)に移し、2週間培養する。次いで、根を持つ植物を土壌に移す。トウモロコシ細胞の形質転換方法の当該技術分野における当業者は、この方法を変形して、本発明のDNA構築体を含むトランスジェニックトウモロコシ植物を提供できるか、またはトランスジェニック単子葉植物植物を提供することが知られた粒子銃のごとき他の方法を用いることができる。
【0056】
MON88017植物および種子は再生可能な器官を有する。その種子の再生可能な器官は、限定されるものではないが、胚、子葉、および苗条または、根分裂組織を含む。また、本発明は、限定されるものではないが、花粉、胚珠、苗条、根および葉を含めたトウモロコシ植物MON88017の植物器官を含む。また、本発明は、限定されるものではないが、蛋白質、ミール、粉末および油を含めたMON88017種子の抽出可能な成分を含む。
【0057】
実施例2
トウモロコシ植物MON88017を、グリホサートの栄養性および生殖性障害に対する耐性につき多数のトランスジェニックトウモロコシ植物から選択した。商業的に高品質のトランスジェニック植物の成功した生成は、現在、多数のトランスジェニック植物の生成を必要とする。本発明において、MON88017は、pMON53616を含む異なるDNA構築体で形質転換した約472R事象のうちの1つの植物であった。そのMON88017事象を、一連の分子分析、グリホサート耐性スクリーニング、昆虫抵抗性スクリーニングおよび発現分析スクリーニングにより多数の事象から選択した。
【0058】
トランスジェニックトウモロコシ植物を温室および圃場のスクリーニングによる食害に対するコーンルートワーム抵抗性につきアッセイした。根損傷は、Iowa State UniversityのOlesonおよびTollefsonにより開発された節−損傷スケール(Node-Injury Scale, NIS)を用いて評価し、このスケールは、0〜3の値を用いてトウモロコシの根になされた損傷を評価する。その0.00の値は、食害がないことを示し、最低の格付けであり、1.00は、1つの節、またはその茎の約2インチ内で摂食された節全体の等価物を記載し、2.00は、摂食された2つの完全な節を記載し、また、3.00は、摂食された3以上の節を記載し、最高の格付けである。摂食された完全な節の中間の損傷は、欠けた節のパーセンテージとして記載され、例えば、1.50は1 1/2節を記載し、0.25は、摂食された1つの節の1/4を記載する。圃場の小区画に、V3〜V4成長段階での作条の直線フィート当たり1500〜2000個の卵を適用することによりコーンルートワーム幼虫を人工的にはびこらせた。殺虫剤で処置した列は、1000フィートの列当たり5オンスの割合にて、テフルスリン(Tefluthrin)殺虫剤(Force 3G, Zeneca Ag Products)で処置した。MON88017は、複数のテストにおいて、0.08〜0.11の根損傷格付け(RDR)を示した。非殺虫剤処置した等値線(isoline)は、1.28の平均RDRを示した。殺虫剤処置した非殺虫性蛋白質を含むトウモロコシ植物は、0.44の平均RDRを示した。
【0059】
トランスジェニックトウモロコシ植物をグリホサート除草剤で処置して、除草剤に対する耐性のレベルを決定した。テストプロットにグリホサート(Roundup WeatherMax, Monsanto Co, St Louis, MO)を散布し、1.125および2.25ポンド/エーカーの有効成分の割合で、V4成長段階にて1回およびV8成長段階にて1回の生育期間に2回適用した。トウモロコシ種子における収率を、散布していない(WeatherMax 0)MON88017プロットに対しての収量パーセントとして収穫にて測定した。表1に示した結果は、MON88017がグリホサートに高度に耐性であり、かつ収量を低下させず、驚くべきことに、その処置された小区画は、その処置された小区画のそれより収率において平均するとより高くなることを示す。
【0060】
表1.未処置と比較したグリホサートで処置したMON88017の収量パーセント
【0061】
【表1】

【0062】
表1 説明文:V4からV8までの葉期での各WeatherMax処置の収量パーセントを、0からV4まで葉期でのWeatherMax処置についての収量パーセントに比較し、その結果、0−V4処置は、各処置反復につき100パーセントの収率ベースラインを確立した。
【0063】
実施例3
MON88017および対照物質からのゲノムDNAを、最初に細粉に粒を処理することによりトウモロコシ粒から抽出した。約6グラムの処理された粒は、50ml(ミリリッター)の円錐管に移し、次いで、約16mlのCTAB抽出緩衝液の[1.5%(w/v)CTAB、75mMトリス−HCl pH8.0、100mM EDTA pH8.0、1.05M NaClおよび0.75%(w/v)PVP(MW 40,000)]および8マイクロリットルのRNアーゼ(10mg/ml、Roche)をその処理した粒に加えた。試料を間欠性の混合を用いて65℃にて30〜60分間インキュベートし、次いで、室温まで冷却させた。約15mlクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1(v/v))を試料に加えた。その懸濁液を5分間混合し、次いでその2相を室温にて約16,000×gで5分間の遠心分離により分離した。水性の(上部)層をきれいな50mlの円錐管に移した。10%CTAB緩衝液[10%(w/v)CTABおよび0.7M NaCl]の約1/10容(約1.5ml)および当量のクロロホルム:イソアミルアルコール[24:1(v/v)]を水相に加え、次いで、それを5分間混合した。試料を約16,000×gで5分間遠心してそれらの相を分離した。水性(上部)層を取り出し、等容量(約15ml)のCTAB沈殿緩衝液[1%(w/v)CTAB、50mMトリス pH8.0および10mM EDTA pH8.0]と混合し、室温にて1〜2時間静置させた。その試料を室温にて10分間約10,000×gで遠心して、DNAをペレットとした。上清を捨て、ペレットを約2mlの高い塩TE緩衝液(10mMトリス−HCl pH8.0、10mM EDTA pH8.0および1M NaCl)に溶解した。37℃での穏やかな混合をペレットの溶解を援助するために行なった。要すれば、試料を室温にて約23,000×gで2分間遠心して、残骸をペレットとし、除去した。約1/10容(約150μl)の3M NaOAc(pH5.2)、および2容(上清に対して約4ml)の冷却した100%エタノールを加えて、DNAを沈殿させた。沈殿したDNAを70%エタノールを含む微量遠心試験管にスプールした。そのDNAを最高速度(約14,000rpm)にて約5分間の微量遠心機にてペレットとし、真空乾燥させ、TE緩衝液(pH8.0)に再溶解した。次いで、DNAを4℃冷蔵庫に貯蔵した。
【0064】
10μgのゲノムDNAを、選択した制限酵素、例えば、SspI、EcoRV、ScaIおよびSmaIで4時間を超える間37℃にて200μlの酵素制限緩衝液中で消化し、次いで、70〜80℃にて15分間酵素を不活性化した。DNAをフェノールおよびクロロホルムで抽出し、EtOHで沈殿し、次いで200μlに溶解した。次いで、そのDNAを4℃にて一晩1mlの連結反応緩衝液およびT4DNAリガーゼ中で自己連結した。連結反応を70〜80℃で15分間不活性化し、EtOHで沈殿させ、次いで200μlに溶解した。次いで、そのDNAを、High Fidelity Expand System (Roche)を用いて、その製造者により供給されたプロトコールに従い、pCP4 EPSPSまたはCRY3Bbコード領域内の特定のプライマーでPCRのための鋳型として用いた。ネステッドプライマーでの第2のPCRを特定の増幅に用いた。次いで、そのPCR生成物をシークエンシング分析のためにクローン化した。ユニバーサルGenomeWalkerキット(カタログ番号K1807-1, Clonetech, Palo Alto, CA)は、それに含まれたアダプターAP1およびAP2ならびにその製造者により提供されたプロトコールを用いて、5’および3’導入遺伝子/ゲノム領域の単離のために用いた。
【0065】
5’(配列番号:3、図3)および3’(配列番号:4、図4)導入遺伝子/ゲノム領域DNAをPCRを利用してMON88017ゲノムDNAから単離する。合計のゲノムDNA(約10μg)を制限酵素で消化する。37℃で一晩消化した後に、QIAquick PCR精製カラムを用いてそのDNAを精製する。そのDNAは50μlの水でカラムから溶出し、次いで、1mlに希釈する。希釈した溶離液(85μl)を10μlの緩衝液(10×)および5μlのT4リガーゼと組合せて、その断片を環状化させる。16℃、一晩のインキュベーション後、リガーゼを70℃で熱不活性化させる。その試料を一連のネステッドプライマーでPCRにより増幅させる。3’導入遺伝子/ゲノム領域の単離用のプライマーの組合せは、第1のプライマーとして配列番号:8、配列番号:9、およびAP1、ならびに第2のプライマーとして、配列番号:10およびAP2、ならびにシークエンシングプライマーとしての使用のための配列番号:11を含み;5’導入遺伝子/ゲノム領域の単離用のプライマー組合せは、第1のプライマーとして配列番号:12、配列番号:14、およびAP1、ならびに第2のプライマーとして、配列番号:13、配列番号:15、およびAP2を含んだ。
【0066】
そのPCRのための条件は:第1のPCR=2秒間の94℃、10分間の72℃の7サイクル;2秒間の94℃、10分間の67℃の37サイクル;10分間の67℃の1サイクル;第2、第3のPCR=2秒間の94℃、10分間の72℃の5サイクル;2秒間の94℃、10分間の67℃の24サイクル;10分間の67℃の1サイクルを含む。
【0067】
別法として、MON88017事象の5’および3’の導入遺伝子/ゲノム挿入領域のPCRによるDNA増幅は、25秒間の94℃の7サイクル、3分間の72℃;
25秒間の94℃、3分間の67℃の37サイクル;7分間の67℃の1サイクルを含む条件で行なうことができる。全ての引き続いての増幅は、以下の条件で行った:2秒間の94℃、4分間の72℃の7サイクル;2秒間の94℃、4分間の67℃の37サイクル;7分間の67℃の1サイクル。全てのアンプリコンは、臭化エチジウムで染色された0.8%のアガロースゲル上で視覚化される。そのDNAは、QIAquick PCR Purificationキット(カタログ番号 28104, Qiagen Inc., Valencia, CA)でPCR試料を直接的に精製することにより、またはそのゲルから適当な断片を抽出し、QIAquick Gel Extractionキット(カタログ番号28704、Qiagen Inc.)を用いるいずれかにより配列決定するために調製する。MON88017導入遺伝子/ゲノムの挿入断片のフランキング領域からのDNA断片をTOPO TA Cloningキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、サブクローニングした。5’導入遺伝子/ゲノム領域のDNA配列を図3に示し、3’導入遺伝子/ゲノム領域のDNA配列を図4に示し、完全な導入遺伝子挿入断片および連結したフランキングゲノムDNAを図5に示す。
【0068】
全長の導入遺伝子/ゲノムの挿入断片配列(配列番号:5、図5)を、PCR生成物をオーバーラップさせることによりMON88017ゲノムDNAから単離した。一連のDNAプライマーは、導入遺伝子挿入断片のDNA断片、およびMON88017ゲノムからの隣接したフランキングゲノム領域の一部分を含むアンプリコンを生成するように設計した。そのDNA断片を配列決定し、配列を組合せて、本発明の配列番号:5である断片配列のコンティグを創製した。そのDNAプライマー対の組合せは:配列番号:16および配列番号:17、配列番号:18および配列番号:17、配列番号:19および配列番号:20、配列番号:21および配列番号:22、配列番号:23および配列番号:24、配列番号:25および配列番号:26、配列番号:25および配列番号:27であった。合計のゲノムDNAを全てのPCR反応に用いた。すべてのアンプリコンを臭化エチジウムで染色した0.8%アガロースゲル上で視覚化した。DNAを、QIAquick PCR Purification キットでPCR試料を精製することにより、またはそのゲルから適当な断片を抽出し、QIAquick Gel Extractionキットを用いることによるいずれかにより配列決定するために調製した。DNA配列を、DNA塩基配列分析装置(ABI PrismTM 377, PE Biosystems, Foster City, CA)およびDNASTAR配列分析ソフトウェア(DNASTAR Inc., Madison, WI)を用いて生成した。
【0069】
実施例4
DNA事象プライマー対を用いて、トウモロコシ事象MON88017に特徴的なアンプリコンを生成する。MON88017に特徴的な1つのアンプリコンは、少なくとも1つの結合配列、配列番号:1または配列番号:2を含む。MON88017に特徴的なアンプリコンを生成する事象プライマー対は、ここに、そのプライマー対は、限定されるものではないが、表2に記載された5’アンプリコン配列についての配列番号:6および配列番号:7を含む。プライマー配列番号:6の位置は、ヌクレオチド952位にて始まる図3に示すトウモロコシゲノム中にある。プライマー配列番号:7の位置は、ヌクレオチド450位で始まる図5に示す導入遺伝子挿入断片中にある。MON88017 DNAでのDNA増幅方法における配列番号:6および配列番号:7を用いる予期されたアンプリコンサイズは、約550bpである。これらのプライマー対に加えて、DNA増幅反応がそのMON88017または子孫には特徴的なアンプリコンを生成する配列番号:3または配列番号:4から誘導されたいずれのプライマー対も、本発明の1つの態様である。MON88017に特徴的なアンプリコンを生成するDNA増幅方法に有用である配列番号:3の少なくとも11個の近接するヌクレオチドまたはその相補体を含むいずれかの単一の単離されたDNAポリヌクレオチドプライマー分子は、本発明の1つの態様である。MON88017に特徴的なアンプリコンを生成する方法に有用である配列番号:4の少なくとも11個の近接するヌクレオチドまたはその相補体を含むいずれの単一の単離されたDNAポリヌクレオチドプライマー分子も、本発明の1つの態様である。この分析のための増幅条件の一例を表2および表3に示すが、MON88017に特徴的なアンプリコンを生成するMON88017の導入遺伝子挿入断片(配列番号:5)に含まれた遺伝子エレメントの配列番号:3もしくは配列番号:4またはDNA配列に相同的または相補的なDNAプライマーのこれらの方法または使用のいずれの変更も当該技術分野内ものである。特徴的なアンプリコンは、少なくとも1つの導入遺伝子/ゲノムの結合DNA(配列番号:1または配列番号:2)に相同的または相補的であるDNA分子またはその実質的な部分を含む。
【0070】
事象MON88017植物組織試料についての分析は、事象MON88017からのポジティブな組織対照、事象MON88017ではないトウモロコシ植物からのネガティブ対照、およびトウモロコシゲノムDNAを含有しないネガティブ対照を含むであろう。内因性トウモロコシDNA分子を増幅するプライマー対は、DNA増幅条件のための内部対照として機能し、それらの例は、約239bp DNA断片を増幅する配列番号:28および配列番号:29である。さらなるプライマー配列を、表2および表3に示した方法によりアンプリコンの生成につき選択し、その結果、事象MON88017 DNAに特徴的なアンプリコンを生じるDNA増幅方法および条件の当該技術分野における当業者により配列番号:3、配列番号:4または配列番号:5から選択できる。表2および表3の方法に対する変形を含むこれらのプライマー配列の使用は、本発明の範囲内にある。MON88017に特徴的である配列番号:3、配列番号:4または配列番号:5から誘導された少なくとも1つのDNAプライマー配列により生成されたアンプリコンは、本発明の1つの態様である。
【0071】
DNA増幅方法に用いられる場合に、MON88017に特徴的なアンプリコンを生成する配列番号:3または配列番号:4または配列番号:5から誘導された少なくとも1つのDNAプライマーを含むDNA検出キットは、本発明の1つの態様である。DNA増幅方法においてテストされる場合に、そのゲノムがMON88017には特徴的なアンプリコンを生成するトウモロコシ植物または種子は、本発明の1つの態様である。MON88017アンプリコンについてのアッセイは、表3に示したStratagene Robocycler, MJ Engine, Perkin-Elmer 9700またはEppendorf Mastercycler Gradient サーモサイクラーを用いることにより、または当業者に知られた方法および装置により行なうことができる。
【0072】
表2.MON88017 5’導入遺伝子挿入断片/ゲノム結合領域の同定のためのPCR手順および反応混合条件。
【0073】
【表2】

【0074】
表3.種々の商業的に入手できるサーモサイクラーについての提案されたPCRパラメーター。
【0075】
【表3】

【0076】
Stratagene Robocycler, MJ Engine, Perkin-Elmer 9700またはEppendorf Mastercycler Gradient サーモサイクラーにおけるDNA増幅を以下のサイクリングパラメーターを用いて進める。MJ EngineまたはEppendorf Mastercycler Gradient サーモサイクラーをその計算様式で試行すべきである。Perkin-Elmer 9700サーモサイクラーを最大に設定された温度勾配(ramp)速度で試行する。
【0077】
実施例5
【0078】
サザンブロット分析を、実施例3に記載したMON88017および対照トウモロコシ組織から単離されたゲノムDNAに行った。DNA試料の定量は、DNA検量基準としてRoche分子サイズマーカーIXでHoefer DyNA Quant 200 Fluorometer (Pharmacia, Uppsala, Sweden)を用いて行った。
【0079】
検体からの約20μgのゲノムDNA、および対照物質からの10μgのゲノムDNAを、制限酵素消化に用いた。挿入断片安定性分析のために、検体からの約10μgのゲノムDNAを用いた。一晩の消化を、100単位の適当な制限酵素を用いて、約500μlの全容積中で37℃にて行った。消化後、試料を、1/10容(50μl)の3M NaOAc(pH5.2)、および2容(本来の消化容積に対して1ml)100%エタノールを添加し、少なくとも30分間−20℃のフリザー中でインキュベーションして沈殿させた。消化したDNAを微量遠心機中で最大速度にてペレットとし、70%エタノールで洗浄し、乾燥させ、TE緩衝液中で再溶解した。
【0080】
DNAプローブを、pMON53616鋳型DNAの植物発現カセット部分のPCR増幅により調製した。約25ngの各プローブ(NOS 3’およびTaHsp17 3’ポリアデニル化配列を除く)をランダムプライミング法(RadPrime DNA Labeling System, Life Technologies)により32P−dCTP(6000Ci/mmol)で標識した。そのNOS 3’およびTahsp17 3’ポリアデニル化配列を以下のように25ngのDNAプローブ鋳型を用いてPCRにより標識した:20mlの最終容積における、鋳型に特異的なセンスおよびアンチセンスのプライマー(各0.25mM);1.5 mm MgCl;各3mMのdATP、dGTPおよびdTTP;約100mCiの32P−dCTP(6000Ci/mmol);および2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ。サイクリング条件は、以下の通り:3分間の94℃での1サイクル;45秒間の94℃、30秒間の52℃、2分間の72℃での2サイクル;10分間の72℃での1サイクル。全ての放射標識したプローブは、Sephadex G-50 カラム(Roche, Indianapolis, IN)を用いて精製した。
【0081】
マーカーに支援された育種方法、または試料中のMON88017 DNAの検出用プローブとして用いる合成DNA分子を作成でき、それは配列番号:1および配列番号:2に記載した導入遺伝子/ゲノム結合DNA分子またはその実質的な部分のDNA配列を含む。
【0082】
実施例6
事象MON88017を含む同型接合体の子孫からの異型接合を識別するために用いた方法を、接合状態アッセイに記載し、その条件の例を表4および表5に記載する。接合状態アッセイに用いたDNAプライマーは、プライマー(配列番号:30)、(配列番号:31)、(配列番号:32)、6FAMTM標識プライマー(配列番号:33)およびVICTM標識プライマー(配列番号:34)であり、6FAMおよびVICは、そのDNAプライマーに結合したApplied Biosystems (Foster City, CA)の蛍光色素生成物である。
【0083】
これらの反応方法に用いた場合に、配列番号:30、配列番号:31および配列番号:32は、非トランスジェニックトウモロコシ用のDNAアンプリコン、事象MON88017 DNAを含む異型接合のトウモロコシ用の2つのDNAアンプリコン、および他の非MON88017トウモロコシ植物とは異なる同型接合体のMON88017トウモロコシ用のDNAアンプリコンを生成する。この分析のための対照は、事象MON88017 DNAを含む同型接合および異型接合のトウモロコシからのポジティブ対照、非トランスジェニックトウモロコシからのネガティブ対照、および鋳型DNAを含まないネガティブ対照を含むであろう。このアッセイ方法は、Stratagene Robocycler, MJ Engine, Perkin-Elmer 9700、またはEppendorf Mastercycler Gradientサーモサイクラーでの使用につき最適化される。MON88017植物で作成された交雑の子孫の接合状態を同定するアンプリコンを生成する当業者に知られた他の方法および装置は、当該技術分野における技量の範囲内にある。
【0084】
表4.接合状態アッセイ反応溶液
【0085】
【表4】

【0086】
表5.接合状態アッセイサーモサイクラー条件
【0087】
【表5】

【0088】
Stratagene Robocycler, MJ Engine, Perkin-Elmer 9700またはEppendorf Mastercycler Gradient サーモサイクラーにおけるDNA増幅を以下のサイクリングパラメーターを用いて進める。Eppendorf Mastercycler GradientまたはMJ EngineにおけるPCRを試行する場合、そのサーモサイクラーを、その計算様式で試行すべきである。Perkin-Elmer 9700におけるPCRを試行する場合、サーモサイクラーを最大に設定された温度勾配速度で試行する。
【0089】
前記に開示され、特許請求の範囲に引用されたトウモロコシMON88017種子の寄託は、ブダペスト条約下、米国培養菌保存施設(ATCC)、0801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110でなされた。そのATCC受入番号はPTA−5582である。その寄託は、30年間の期間、または最終の請求後5年、または特許の有効期間の間のいずれかの長期間寄託施設において維持され、その期間中の必要な場合に交換されるであろう。。
【0090】
実施例7
食料および商品のごとき生成物は、トウモロコシ事象MON88017から生成でき、かかる食料および商品は、かかる食料および商品において十分なレベルにて検出される場合、かかる商品および食料内のトウモロコシ事象MON88017物質の存在に特徴的になり得るヌクレオチド配列を含むと予期される。かかる食料および商品の例は、限定されるものではないが、動物による食料源として消費のための、さもなければ、バルキング剤(bulking agent)として意図された、または化粧品用途のためのメークアップ組成物における成分として意図されたトウモロコシ油、コーンミール、コーンフラワー、トウモロコシグルテン、コーンケーキ、コーンスターチおよび他の食料等を含む。配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5に記載された配列よりなる群から選択されるプローブまたはプライマー対に基づいた核酸検出方法および/またはキットが開発され、それは、生物学的試料中の配列番号:1および配列番号:2のごときMON88017ヌクレオチド配列の検出を可能とし、かかる検出は、かかる試料中のトウモロコシ事象MON88017に特徴的であろう。
【0091】
本発明の原理を説明および記載したことにより、本発明はかかる原理から逸脱なく、配置および細部において変更できることは当業者に明らかであろう。発明者らは、添付した特許請求の範囲の精神および範囲内にある全ての変形を特許請求する。
【0092】
本明細書に引用された全ての刊行物および公開された特許文書をここに出典明示して、個々の刊行物または特許出願が出典明示して組み込まれると具体的にかつ個々に示される同一の範囲にまで本明細書の一部とみなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA増幅方法に用いる場合に、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4ならびにその完全な相補体の少なくとも1つを含むアンプリコンを生成するDNAプライマー対として有用な組換えDNA分子対。
【請求項2】
少なくとも第1のDNA分子が、配列番号:3、配列番号:4もしくは配列番号:5またはその完全な相補体の少なくとも18の近接するヌクレオチドを含む請求項1記載の組換えDNA分子対。
【請求項3】
配列番号:6および配列番号:7;配列番号:16および配列番号:17;配列番号:18および配列番号:17;配列番号:19および配列番号:20;配列番号:21および配列番号:22;配列番号:23および配列番号:24;配列番号:25および配列番号:26;または配列番号:25および配列番号:27を含む請求項1または2記載の組換えDNA分子対。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組換えDNA分子対、または配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3もしくは配列番号:4またはその完全な相補体の少なくとも18の近接するヌクレオチドを含む組換えDNA分子を含むDNA検出キット。
【請求項5】
試料中のトウモロコシ事象MON88017に対応するDNAの存在の検出方法であって:
(a)DNAを含む試料と、請求項1〜3のいずれかに記載の組換えDNA分子対とを接触させ;
(b)核酸増幅反応を行い、それにより、アンプリコンを生成し;次いで
(c)該アンプリコンを検出する
ことを含み、ここに、該アンプリコンは配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、ならびにその完全な相補体の少なくとも1つを含むならば、トウモロコシ事象MON88017に対応するDNAが該試料中に存在することを特徴とする該検出方法。
【請求項6】
トウモロコシの鞘翅類害虫の食餌において、トウモロコシ事象MON88017を含むトウモロコシ植物の細胞もしくは組織、またはその器官の殺虫性有効量を提供することを含む昆虫寄生からのトウモロコシ植物の保護方法。
【請求項7】
該鞘翅類害虫が、コーンルートワームであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
トウモロコシ事象MON88017を含むトウモロコシ植物の圃場における雑草を制御する方法であって、
有効量のグリホサート含有除草剤をトウモロコシ植物の該圃場に適用することを含むことを特徴とする該方法。
【請求項9】
(i)該グリホサート含有除草剤が該圃場に散布され、次いで
(ii)該量が、該トウモロコシ植物に損傷を与えない
ことを特徴とする請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公開番号】特開2012−70734(P2012−70734A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−209535(P2011−209535)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【分割の表示】特願2006−545781(P2006−545781)の分割
【原出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】