説明

トナー、現像剤、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】結着樹脂としてポリ乳酸骨格を用いた場合においても、分散安定剤であるポリエステル樹脂の表面への付着を良好にせしめ、耐熱保存性を確保しつつ、低温定着性に優れ、画像濃度、温度・湿度等の使用環境変化に対する帯電安定性及び大量画像出力時の帯電安定性が良好なトナー、並びにこのトナーを用いた現像剤、画像形成方法及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)と、を有する樹脂粒子(C)を含むトナーであって、前記樹脂(a)が、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されており、前記樹脂(a)がポリエステル樹脂であって、前記樹脂(b)は、非結晶性のポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するものであり、前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)のSP値差が0.1〜2.3であることを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規且つ改良されたトナー並びに現像剤とその製法、該トナー並びに現像剤を用いた画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式の画像形成装置、静電記録装置等において、電気的又は磁気的潜像は、トナーによって顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成した後、トナーを用いて潜像を現像して、トナー画像を形成している。
トナー画像は、通常、紙等の記録媒体上に転写された後、加熱等の方法で定着される。
【0003】
静電荷像の現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤等を含有する着色粒子であり、その製造方法には、大別して粉砕法と重合法とがある。
【0004】
粉砕法では、熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤等を溶融混合により均一に分散させて得られるトナー組成物を粉砕し、分級することにより、トナーを製造する。この粉砕法によれば、ある程度優れた特性を有するトナーを製造することができるが、材料の選択に制限がある。例えば、溶融混合により得られるトナー組成物は、経済的に使用可能な装置により粉砕し、分級できるものでなければならない。この要請から、溶融混合により得られるトナー組成物は、充分に脆くせざるを得ない。このようなトナー組成物を粉砕する際には、粒径分布が広い粒子が形成されやすい。このとき、良好な解像度と階調性のある複写画像を得ようとすると、例えば、粒径5μm以下の微粉と、粒径20μm以上の粗粉とを、篩でなく、風力遠心分級により除去しなければならず、収率が非常に低くなるという問題がある。また、粉砕法では、着色剤、帯電制御剤等を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることが困難であり、得られるトナーは、流動性、現像性、耐久性、画像品質等に悪影響が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1の特開平9−319144号公報及び特許文献2の特開2002−284881号公報では、予め重合反応により合成した樹脂の有機溶剤溶液を、界面活性剤又は水溶性樹脂等の分散(助)剤及び無機微粒子、樹脂微粒子等の分散安定剤の存在下、水性媒体中に分散させ、加熱、減圧等によって溶剤を除去することによりトナーを得る溶解樹脂懸濁法が提案されている。この溶解樹脂懸濁法によれば、分級しなくても均一なトナーが得られる。
【0006】
また、電子写真方式の画像形成装置では、熱ローラ等の加熱部材を使用して行われる接触加熱方式による定着工程において、加熱部材に対する離型性(以下、耐オフセット性とも称する)が要求される。この耐オフセット性は、溶解樹脂懸濁法において、変性ポリエステル樹脂を用いることで解決が図られている(特許文献3の特許第3640918号公報参照)。
【0007】
ところで、トナーの構成成分の70%以上を占める結着樹脂は、そのほとんどが石油資源を原料としており、石油資源の枯渇問題、石油資源を大量消費して二酸化炭素を大気中へ排出することによる温暖化問題が懸念されている。そこで、結着樹脂として、大気中の二酸化炭素を取り込んで成長する植物を用いて、この植物由来の樹脂を使用すれば、生じる二酸化炭素は、環境中で循環するだけとなり、温暖化問題と石油資源の枯渇問題とを同時に解決できる可能性があり、このような植物由来の樹脂を結着樹脂として用いたトナーが種々提案されている。例えば、特許文献4の特許第2909873号公報では、結着樹脂として、ポリ乳酸を使用することが提案されている。しかし、この提案のようにポリ乳酸をそのまま用いた場合、ポリエステル樹脂に比べてエステル結合の濃度が高いため、トナーが非常に硬くなり、粉砕性に欠け、生産性が劣るという問題がある。そこで、特許文献1〜3のような溶解樹脂懸濁法を用いて、高硬度で粉砕性に乏しいポリ乳酸を、粉砕・分級することなくトナーを製造する方法が有効と考えられるが、ポリ乳酸は、L体又はD体のみでは結晶性が高いため、有機溶剤に対する溶解性が極めて低く、溶解樹脂懸濁法を用いることは困難である。
これに対して、我々は既に、特許文献5の特開2010−122667号公報において、ポリ乳酸のL体及びD体を混合して結晶性を低下させて、有機溶剤への溶解性を向上させ、溶解樹脂懸濁法によりトナーを製造する方法を提案している。
【0008】
すなわち、特許文献5の特開2010−122667号公報には、画像濃度、定着性、及び耐熱保存性に優れ、低温での離型性に優れ、フィルミングの発生が少なく、高画質な画像を安定に得ることができるトナー、及び該トナーの製造方法、並びに該トナーを用いた現像剤を提供することを目的として、樹脂が光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有し、前記光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格がモノマー成分換算で光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下であるトナーが開示されている。
【0009】
この公報記載の技術は、ポリヒドロキシカルボン酸骨格の具体例としてPLAを挙げており、|X(L体)−X(D体)|が80%以下である点では本発明とは確かに似ている点がある。しかし、前述の画像濃度不良、温度・湿度等の使用環境変化に対する帯電安定性不良、大量画像出力時の帯電安定性不良という問題は解消できていないことがその後の検討の結果判明した。
【0010】
つまり、ポリ乳酸は単位分子当たりの極性基の数が多いため、結晶性を低下させたポリ乳酸を用いてトナーを製造した場合、結晶性が高い場合よりも湿度の影響を大きく受ける。
そのためトナー耐熱保存性の悪化、吸湿によるトナー流動性の変動、帯電量制御の困難化につながる。特に、低温低湿度の条件と高温高湿度の条件との間において、帯電量の変化を低減させることは困難であり、そのため、帯電量、画像濃度が安定しないという問題がある。これら諸問題の解決のために、トナー製造時に有機微粒子を分散安定剤として使用し、それらをトナー粒子表面に付着させシェル化する試みがなされている。しかし、これらは優れた耐熱保存性が得られるものの、トナー結着樹脂の表面を樹脂微粒子が覆ってしまうため十分な低温定着性を得ることができない。また、ポリ乳酸は極性基の数が多いため、高い親水性を有しており、溶解樹脂溶剤液の水性媒体液中への懸濁法での造粒が比較的困難で、トナー粒子の粒度分布が不均一となりやすい。これによりトナー帯電量がばらつき、画像濃度が不均一になったり、転写チリが発生したりする。また、トナー微粉末が、キャリアや帯電部材へのフィルミングの原因となる。さらに、大量の画像出力時、現像ユニット内での長期撹拌により表面の樹脂微粒子が剥がれ落ちてシェルが帯電部材へフィルミングしたり、流動性が低下したりしてトナーの帯電安定性が悪化するという問題のあることがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、結着樹脂としてポリ乳酸骨格を用いた場合においても、分散安定剤であるポリエステル樹脂の表面への付着を良好にせしめ、耐熱保存性を確保しつつ、低温定着性に優れ、画像濃度、温度・湿度等の使用環境変化に対する帯電安定性及び大量画像出力時の帯電安定性が良好なトナー、並びにこのトナーを用いた現像剤、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、下記(1)〜(15)記載のトナー、現像剤及びこれらを用いた画像形成方法並びに画像形成装置によって解決される。
(1)「第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)と、を有する樹脂粒子(C)を含むトナーであって、前記樹脂(a)が、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されており、前記樹脂(a)がポリエステル樹脂であって、前記樹脂(b)は、非結晶性のポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するものであり、前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)のSP値差が0.1〜2.3であることを特徴とするトナー。」
(2)「前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)のSP値差が0.3〜0.8であることを特徴とする前記第(1)項に記載のトナー。」
(3)「前記樹脂(a)の体積平均粒径Dv(a)が、35nm〜400nmであることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載のトナー。」
(4)「前記樹脂(a)のガラス転移点Tg(a)が55〜100℃であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のトナー。」
(5)「前記樹脂(a)が少なくとも多塩基酸、多価アルコールより構成されるポリエステルユニットを有する樹脂であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載のトナー。」
(6)「前記樹脂(b)が、光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を有し、下記式(1)で示される樹脂(b)の光学純度X(%)が、80%以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載のトナー。
光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|・・・計算式(1)
〔ただし、X(L体)は、光学活性モノマー換算での前記樹脂(b)に含まれるL体比率(モル%)を表し、X(D体)は、光学活性モノマー換算での前記樹脂(b)に含まれるD体比率(モル%)を表す。〕」
【0013】
(7)「前記樹脂(b)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が、炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸が共重合した骨格であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載のトナー。」
(8)「前記樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)を含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載のトナー。」
(9)「前記樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)と前記ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)とを、伸長剤とともに反応させて得られる直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)を含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載のトナー。」
(10)「ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)と前記ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との質量比が、31:69〜90:10であることを特徴とする前記第(9)項に記載のトナー。」
(11)「前記樹脂(b)が、直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)と、前駆体(b0)が反応して得られる樹脂(b2)とを含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(10)項のいずれかに記載のトナー。」
(12)「前記第(1)項乃至第(11)項のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。」
(13)「更にキャリアを含む前記第(12)項に記載の現像剤。」
(14)「静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を前記第(1)項乃至第(11)項のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、を少なくとも有することを特徴とする画像形成方法。」
(15)「静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を前記第(1)項乃至第(11)項のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、を少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。」
【発明の効果】
【0014】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば、結着樹脂としてポリ乳酸骨格を用いた場合においても、分散安定剤であるポリエステル樹脂の表面への付着を良好にせしめ、耐熱保存性を確保しつつ、低温定着性に優れ、画像濃度、温度・湿度等の使用環境変化に対する帯電安定性及び大量画像出力時の帯電安定性が良好なトナー、並びにこのトナーを用いた現像剤、画像形成方法及び画像形成装置を提供できるという極めて優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成方法に用いる画像形成装置の一実施の形態における構成例を示す概略説明図である。
【図2】本発明に係る画像形成方法に用いるタンデム型カラー画像形成装置の一実施の形態における構成例を示す概略説明図である。
【図3】図2に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【図4】本発明で用いられるプロセスカートリッジの一実施の形態における構成例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【0017】
(トナー)
本発明に係るトナーは、第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)と、を有する樹脂粒子(C)を含むトナーであって、前記樹脂(a)が、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されており、前記樹脂(a)がポリエステル樹脂であって、前記樹脂(b)が、非結晶性のポリヒドロキシカルボン酸骨格を有し、前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)のSP値差が0.1〜2.3であることを特徴とする。また、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0018】
次に、本発明に係るトナーについてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
<樹脂粒子(B)及び第2の樹脂(b)>
樹脂粒子(B)は、第2の樹脂である樹脂(b)を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
【0020】
樹脂粒子(B)の形状、構造、大きさとしては、樹脂(b)を含有し、粒子の形態である限り、特に制限はない。例えば、樹脂粒子(B)の体積平均粒径(Dv)は、後述する樹脂粒子(A)のDvと当該樹脂粒子(B)のDvとの粒径比が得やすいことから、0.1〜15μmが好ましく、より好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜8μmであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
−第2の樹脂(b)−
第2の樹脂(b)は、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有すれば、特に制限はなく、ヒドロキシカルボン酸を種々の方法で重合して得たもの、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するものを形成し得る環状エステルを出発物質として重合して得たものが挙げられる。
【0022】
本発明では第2の樹脂(b)は、非結晶性のポリヒドロキシカルボンサン骨格を有してなるものである。ここで非結晶性とは、例えば示差走査型熱量計(DSC)を用いて、20℃〜250℃まで10℃/minで昇温し、次に20℃まで10℃/minで降温し、続いて20℃〜250℃まで10℃/minで昇温する二度の昇温過程において、どちらにも融解ピークを示さないものを示す。
【0023】
また、本発明における非結晶性とは、L体のポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂とD体のポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂とをラセミ化したものが特に好ましい。非結晶状態では高い透明性を有すると共に、有機酸や水酸基などの官能基がわずかでありながらも各種着色剤と高い親和性を得ることができ、またさらに溶剤への溶解性もよく取扱性に優れる。
【0024】
−−ヒドロキシカルボン酸及び環状エステル−−
ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)、芳香族ヒドロキシカルボン酸(サリチル酸、クレオソート酸、マンデル酸、バーリン酸、シリング酸等)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成し得る環状エステルとしては、開環重合によってポリヒドロキシカルボン酸骨格を生成するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、ラセミラクチド、グリコリド、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、6−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
これらのうち、後述の樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、より好ましくは炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸であり、特に好ましくはグリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチドであり、さらに特に好ましくは、グリコール酸、乳酸及びラクチドである。炭素数が2であるとポリヒドロキシカルボン酸骨格は光学活性を有することができなくなり、炭素数が1以下であると、実質的にポリヒドロキシカルボン酸骨格の形成は不可能となる。また、炭素数が7以上であると、メチレン鎖を多く含むため、ガラス転移点(Tg)が低くなり、トナーとして使用するのは困難となる可能性がある。
【0027】
樹脂(b)を合成する方法としては、上記の出発物質からポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するものを得ることができるものであれば、特に制限はなく、例えば、ヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合する方法、及び、対応する環状エステルを開環重合する方法が挙げられる。これらの重合法のなかでも、重合されるポリヒドロキシカルボン酸の分子量を大きくするという観点から環状エステルの開環重合が好ましい。なお、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを出発物質として開環重合により合成する場合、樹脂(b)のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、環状エステルを構成するヒドロキシカルボン酸が重合した骨格となる。例えばラクチドを用いて得られる樹脂(b)のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、乳酸が重合した骨格になる。また、モノマーとしてL型とD型のモノマーを適量併用することで、ラセミ体の非結晶性樹脂を得ることができる。ラクチドを用いる場合、L型ラクチド、D型ラクチドをそれぞれ混合して用いることができるが、さらにメソ型ラクチドを開環重合することや、D型、L型いずれかのラクチドとメソ型ラクチドを混合して用いることもできる。
【0028】
樹脂(b)に含まれるポリヒドロキシカルボン酸骨格を構成するモノマーは、光学活性を有するものである。下記式(1)で示される樹脂(b)の光学活性X(%)は、80%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以下である。この範囲であると、溶剤溶解性、樹脂の透明性が向上する。
光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|・・・計算式(1)
〔ただし、X(L体)は、光学活性モノマー換算での樹脂(b)に含まれるL体比率(%)を表し、X(D体)は、光学活性モノマー換算での樹脂(b)に含まれるD体比率(%)を表す〕
【0029】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーが乳酸のように光学活性モノマーの場合、特に樹脂(b)として後述のポリエステル系樹脂(b1)のみを用いる場合、光学純度X(%)が80%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以下である。この範囲であると、溶剤溶解性が向上し、好ましい製造方法である後述の(I)の製造方法を適用しやすい。
【0030】
ここで、光学純度Xの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、測定対象(例えばポリエステル骨格を有する高分子乃至トナー)を純水と1N水酸化ナトリウム及びイソプロピルアルコールとの混合溶媒に添加し、70℃で加熱攪拌して加水分解をする。次いで、ろ過して液中の固形分を除去した後硫酸を加えて中和して、ポリエステル樹脂から分解されたL−乳酸及び/又はD−乳酸を含有する水性溶液を得る。この水性溶液を、キラル配位子交換型のカラムSUMICHIRAL OA−5000(株式会社住化分析センター製)を用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定し、L−乳酸由来のピーク面積S(L)とD−乳酸由来のピーク面積S(D)とを算出し、このピーク面積から光学純度Xを次のようにして求めることができる。
X(L体)(%)=100×S(L)/(S(L)+S(D))
X(D体)(%)=100×S(D)/(S(L)+S(D))
光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|
【0031】
樹脂(b)を使用した場合には、顔料、ワックスの樹脂中への分散を均一とし易く、また透明性が高いため、顔料やワックスを内包するトナーに使用した場合には画像濃度やヘイズ度が良好になるという特徴がある。
【0032】
−−ポリエステル系樹脂(b1)−−
樹脂(b)に含有されるポリエステル系樹脂(b1)としては、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステル系樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、直鎖状のものや、分岐鎖を有するものが挙げられる。なかでも、直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)であることが好ましい。直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)であると、シャープメルト性に優れ、低温定着に有利である。また、分岐鎖を有するものに比べて、溶剤への溶解性が良く、溶剤へ溶解したときの粘性も低いことから、取扱性が良い。
【0033】
直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)の製法としては、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステル系樹脂が得られれば、特に制限はないが、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)と、このポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)とを、伸長剤とともに反応させることが好ましい。これにより、トナーの物性を自由に制御することができる。なかでも、樹脂の溶剤溶解性や保存性を向上させたり、定着温度幅を広げたりすることができる。
【0034】
−−−ポリエステルジオール(b11)−−−
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)としては、ポリヒドロキシカルボン酸骨格とジオールとを分子内に有するポリエステルであれば特に制限はなく、例えば、上記の樹脂(b)の重合に用いたヒドロキシカルボン酸や環状エステルとともに、ジオール(11)を添加して共重合して調製されてもよい。このジオール(11)としては、分子内に水酸基を2つ有するものであれば、特に制限はなく、例えば、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のアルキレンオキサイド(アルキレンオキサイドを以下AOと略記する、具体例としてはエチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、ブチレンオキサイド(以下BOと略記)などが挙げられる)付加物(付加モル数2〜30)、及びこれらの併用であり、好ましくは、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAのAO付加物であり、より好ましくは、1,3−プロピレングリコール及び1,3−プロパンジオールである。
【0035】
−−−ポリエステルジオール(b12)−−−
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)としては、ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオールであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(11)とジカルボン酸(13)との反応物と同様のものが使用可能である。即ち、重合時にジオールとジカルボン酸の仕込み比率を調整して、水酸基を過剰にすることで得られるものである。ポリエステルジオール(b12)の好ましいものとしては、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30)、及びこれらの併用から選ばれる1種以上と、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、及びこれらの併用から選ばれる1種以上との反応物である。
【0036】
ポリエステルジオール(b11)及びポリエステルジオール(b12)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は、ポリエステル系樹脂(b1)の物性調整(例えば、溶解度、ガラス転移温度)の観点から、500〜30,000が好ましく、より好ましくは、1,000〜20,000、特に好ましくは、2,000〜5,000である。
【0037】
ポリエステルジオール(b11)とポリエステルジオール(b12)との伸長に用いる伸長剤としては、ポリエステルジオール(b11)及びポリエステルジオール(b12)に含まれる水酸基と反応可能な官能基を少なくとも2つ有しているものであれば、特に制限されないが、ジカルボン酸(13)及びその無水物、ポリイソシアネート(15)、ポリエポキシド(19)のうち2官能のものが挙げられる。これらのうち、ポリエステルジオール(b11)及びポリエステルジオール(b12)との相溶性の観点から、好ましいものは、ジイソシアネート化合物、ジカルボン酸化合物であり、より好ましくはジイソシアネート化合物である。具体的には、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸(及び無水物)、フマール酸(及び無水物)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられ、これらのうち、好ましいものは、コハク酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸(及び無水物)、フマール酸(及び無水物)、HDI、並びにIPDIであり、より好ましくはマレイン酸(及び無水物)、フマール酸(及び無水物)、並びにIPDIである。
【0038】
(b1)中の伸長剤の含有量は、透明性と熱特性の観点から、ポリエステル系樹脂(b1)に対して、好ましくは0.1質量%〜30質量%であり、より好ましくは1質量%〜20質量%である。
【0039】
樹脂(b)に含有される直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)の含有量は、用途に応じて適宜調整すればよいが、樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、好ましくは、樹脂(b)の質量に対して、40質量%〜100質量%であり、より好ましくは60質量%〜90質量%である。40質量%未満であると、樹脂分が少なすぎてトナーとして機能しない場合がある。特に、60質量%未満であると、樹脂分が少なく定着性、顔料分散性、離型剤分散性が劣る場合があり、90質量%を超えると、樹脂以外の顔料、離型剤、帯電制御剤等が十分な量含ませることができなくなり、着色性、離型性、帯電性の点で劣る場合がある。ポリエステル系樹脂(b1)を構成するヒドロキシカルボン酸のモノマー成分換算での光学純度(X)が80%以下であれば、溶剤溶解性の観点から、光学活性モノマーで構成されるポリエステル系樹脂(b1)の樹脂(b)における含有量は、上記と同様の含有量が好ましい。モノマー成分換算で光学純度(X)が80%を越える場合は、溶剤溶解性の観点から、樹脂(b)中のポリエステル系樹脂(b1)の含有量(Y(%))は、光学純度Xとの関係で、Y≦−1.5X+220を満たすことが好ましい。この関係を満たさない場合には、ポリエステル系樹脂(b1)の溶剤に対する溶解性が著しく低下してしまう。
【0040】
直鎖状ポリエステル樹脂(b1)を構成する、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)と、ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との質量比は、好ましくは31:69〜90:10であり、樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、より好ましくは、40:60〜80:20である。
31:69よりもポリエステルジオール(b11)の質量比が下回ると、低温定着性の点で不利になる場合があり、90:10よりもポリエステルジオール(b11)の質量比が上回ると、保存性、環境安定性の点で不利になる場合がある。
【0041】
樹脂(b)に含有されるポリエステル系樹脂(b1)以外の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、各種樹脂が挙げられ、この各種樹脂を併用してもよい。
【0042】
−樹脂(b)に含有されるポリエステル系樹脂(b1)以外の樹脂−
樹脂(b)に含有されるポリエステル系樹脂(b1)以外の樹脂としては、上記のポリエステル系樹脂(b1)以外に、公知のいかなる樹脂を併用してもよい。ポリエステル系樹脂(b1)以外に併用する樹脂としては、用途・目的に応じて適宜好ましいものを選択することができる。また、このように併用する樹脂は、後述の樹脂粒子形成工程で後述の前駆体(b0)が反応して得られる樹脂(b2)であってもよく、粒子形成が容易であるという観点から、前駆体(b0)を用いて、併用する樹脂を含有させる方法が好ましい。
前駆体(b0)、及び、前駆体(b0)から樹脂(b2)を得る反応方法は後述のものが使用できる。
【0043】
その他、ポリエステル系樹脂(b1)以外に併用する樹脂として好ましいものは、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びそれらの併用であり、より好ましくは、ポリウレタン樹脂、及びポリエステル樹脂であり、特に好ましくは、1,2−プロピレングリコールを構成単位として含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂である。
【0044】
ポリエステル系樹脂(b1)以外の樹脂の含有量としては、用途に応じて適宜調整すればよいが、樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、樹脂(b)の質量に対して0質量%〜60質量%が好ましく、より好ましくは10質量%〜40質量%である。
【0045】
−−前駆体(b0)−−
本発明における前駆体(b0)としては、樹脂(b2)が得られるものであれば、特に制限はなく、例えば反応性基を有するプレポリマー(α)(以下、「反応性基含有プレポリマー(α)」と称する。)と硬化剤(β)との組み合わせが挙げられる。ここで「反応性基」とは、硬化剤(β)と反応可能な基のことをいう。この場合、樹脂粒子(C)の形成工程で前駆体(b0)を反応させて得られる樹脂(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成する方法としては、反応性基含有プレポリマー(α)及び硬化剤(β)並びに必要に応じて有機溶剤(u)を含む油相を、樹脂粒子(A)の水性分散液(W)中に分散させ、加熱により反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)とを反応させて樹脂(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成させる方法;反応性基含有プレポリマー(α)又はその有機溶剤溶液乃至分散液を樹脂粒子(A)の水性分散液(W)中に分散させ、ここに水溶性の硬化剤(β)を加え反応させて、樹脂(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成させる方法;反応性基含有プレポリマー(α)が水と反応して硬化するものである場合は、反応性基含有プレポリマー(α)又はその有機溶剤溶液乃至分散液を樹脂粒子(A)の水性分散液(W)に分散させることで水と反応させて、樹脂(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成させる方法等が例示できる。
【0046】
反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基と、硬化剤(β)との組み合わせとしては、下記組み合わせ〔1〕、〔2〕などが挙げられる。
組み合わせ〔1〕反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基が、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)であり、硬化剤(β)が活性水素基含有化合物(β1)であるという組み合わせ。
組み合わせ〔2〕反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基が、活性水素含有基(α2)であり、硬化剤(β)が、活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)であるという組み合わせ。
【0047】
−反応性基含有プレポリマー(α)及び硬化剤(β)−
これらのうち、水中での反応率の観点から、〔1〕の組み合わせが好ましい。上記組み合せ〔1〕において、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)としては、イソシアネート基(α1a)、ブロック化イソシアネート基(α1b)、エポキシ基(α1c)、酸無水物基(α1d)及び酸ハライド基(α1e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、イソシアネート基(α1a)、ブロック化イソシアネート基(α1b)及びエポキシ基(α1c)であり、より好ましいものは、イソシアネート基(α1a)及びブロック化イソシアネート基(α1b)である。
【0048】
ブロック化イソシアネート基(α1b)は、ブロック化剤によりブロックされたイソシアネート基のことをいう。このブロック化剤としては、オキシム類[アセトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、ジエチルケトオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルエチルケトオキシム等];ラクタム類[γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクタム等]:炭素数1〜20の脂肪族アルコール類[エタノール、メタノール、オクタノール等];フェノール類[フェノール、−クレゾール、キシレノール、ノニルフェノール等];活性メチレン化合物[アセチルアセトン、マロン酸エチル、アセト酢酸エチル等];塩基性窒素含有化合物[N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、ピリジンN−オキサイド、2−メルカプトピリジン等]:及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいのは、オキシム類であり、より好ましいものは、メチルエチルケトオキシムである。
【0049】
反応性基含有プレポリマー(α)の骨格としては、ポリエーテル(αw)、ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)及びポリウレタン(αz)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)及びポリウレタン(αz)であり、より好ましくは、ポリエステル(αx)及びポリウレタン(αz)である。
【0050】
ポリエーテル(αw)としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドポリテトラメチレンオキサイドなどが挙げられる。ポリエステル(αx)としては、ジオール(11)とジカルボン酸(13)との重縮合物、ポリラクトン(ε−カプロラクトンの開環重合物)などが挙げられる。エポキシ樹脂(αy)としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)とエピクロルヒドリンとの付加縮合物などが挙げられる。ポリウレタン(αz)としては、ジオール(11)とポリイソシアネート(15)との重付加物、ポリエステル(αx)とポリイソシアネート(15)との重付加物などが挙げられる。
【0051】
ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)、ポリウレタン(αz)などに反応性基を含有させる方法としては、下記〔1〕及び〔2〕が挙げられる。
【0052】
方法〔1〕二つ以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで構成成分の官能基を末端に残存させる方法。
方法〔2〕二つ以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで構成成分の官能基を末端に残存させ、さらに残存した官能基と反応可能な官能基及び反応性基を含有する化合物を反応させる方法。
【0053】
上記方法〔1〕では、水酸基含有ポリエステルプレポリマー、カルボキシル基含有ポリエステルプレポリマー、酸ハライド基含有ポリエステルプレポリマー、水酸基含有エポキシ樹脂プレポリマー、エポキシ基含有エポキシ樹脂プレポリマー、水酸基含有ポリウレタンプレポリマー、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーなどが得られる。構成成分の比率は、例えば、水酸基含有ポリエステルプレポリマーの場合、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との比率が、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/1、より好ましくは1.5/1〜1/1、特に好ましくは1.3/1〜1.02/1である。他の骨格、末端基のプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。
【0054】
上記方法〔2〕では、上記方法〔1〕で得られたプレポリマーに、ポリイソシアネートを反応させることでイソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ブロック化ポリイソシアネートを反応させることでブロック化イソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ポリエポキサイドを反応させることでエポキシ基含有プレポリマーが得られ、ポリ酸無水物を反応させることで酸無水物基含有プレポリマーが得られる。官能基及び反応性基を含有する化合物の使用量は、例えば、水酸基含有ポリエステルにポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを得る場合、ポリイソシアネートの比率が、イソシアネート基[NCO]と水酸基含有ポリエステルの水酸基[OH]との当量比[NCO]/[OH]として、好ましくは5/1〜1/1、より好ましくは4/1〜1.2/1、特に好ましくは2.5/1〜1.5/1である。他の骨格、末端基を有するプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。
【0055】
反応性基含有プレポリマー(α)中の1分子当たりに含有する反応性基としては、通常1個以上であり、好ましくは、平均1.5個〜3個であり、より好ましくは、平均1.8個〜2.5個である。上記範囲にすることで、硬化剤(β)と反応させて得られる硬化物の分子量が高くなり、耐ホットオフセット性の点で好ましい。反応性基含有プレポリマー(α)の数平均分子量(Mn)としては、特に制限はないが、好ましくは500〜30,000であり、より好ましくは1,000〜20,000であり、特に好ましくは2,000〜10,000である。Mnが500未満であると、樹脂(b2)は十分な分子量が得られず、耐ホットオフセット性に欠け、30,000を越えると、樹脂(b2)の軟化温度が上がり、低温定着性の点で不利となる。反応性基含有プレポリマー(α)の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はないが、好ましくは1,000〜50,000であり、より好ましくは2,000〜40,000であり、特に好ましくは4,000〜20,000である。Mwが1,000未満であると、樹脂(b2)は十分な分子量が得られず、耐ホットオフセット性に欠け、50,000を越えると、樹脂(b2)の軟化温度が上がり、低温定着性の点で不利となる。反応性基含有プレポリマー(α)の粘度は、特に制限はないが、100℃において、好ましくは2,000ポワズ以下であり、より好ましくは1,000ポワズ以下である。2,000ポワズ以下にすることで、少量の有機溶剤で粒度分布のシャープな樹脂粒子(C)が得られる点で好ましい。
【0056】
本発明において、硬化剤(β)は、反応性基含有プレポリマー(α)と反応して、樹脂(b2)を与えるものであれば、特に制限はなく、上記の通り、活性水素基含有化合物(β1)及び活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)が挙げられる。
【0057】
活性水素基含有化合物(β1)としては、脱離可能な化合物でブロック化されていてもよいポリアミン(β1a)、ポリオール(β1b)、ポリメルカプタン(β1c)及び水(β1d)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、ポリアミン(β1a)、ポリオール(β1b)及び水(β1d)であり、より好ましいものは、ポリアミン(β1a)及び水(β1d)であり、特に好ましいものは、ブロック化されたポリアミン類及び水(β1d)である。
【0058】
ポリアミン(β1a)としては、脂肪族ポリアミン類(C2〜Cl8):〔1〕脂肪族ポリアミン{C2〜C6アルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、へキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(C2〜C6)ポリアミン〔ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン,トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど〕};〔2〕これらのアルキル(C1〜C4)又はヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−へキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなど〕;〔3〕脂環又は複素環含有脂肪族ポリアミン〔3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど〕;〔4〕芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)、脂環式ポリアミン(C4〜C15):1,3−ジアミノシクロヘキサンイソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など、複素環式ポリアミン(C4〜C15):ピペラジン、N−アミノエチルビペラジン、1,4−ジアミノエチルビペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなど、並びに芳香族ポリアミン類(C6〜C20):〔1〕非置換芳香族ポリアミン〔1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフエール)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリアミン、ナフチレンジアミンなど;〔2〕核置換アルキル基〔メチル,エチル,n−及びi−プロピルブチルなどのC1〜C4アルキル基〕を有する芳香族ポリアミン、例えば2,4−及び2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3,5,5−テトラメチルベンジジン、3,3,5,5−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3,5,5−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノン、3,3,5,5−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3,5,5−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなど〕、及びこれらの異性体の種々の割合の混合物:〔3〕核置換電子吸引基(Cl、Br、I、Fなどのハロゲン;メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基:ニトロ基など)を有する芳香族ポリアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−ジフェニルメタン、3,3−ジクロロベンジジン、3,3−ジメトキシベンジジン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフイドビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフイド、4,4−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4−メチレンビス(2−フルオロアニリン)、4−アミノフェニル−2−クロロアニリンなど〕;〔4〕2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン〔上記〔1〕〜〔3〕の芳香族ポリアミンの−NHの一部又は全部が−NH−R’(R’はアルキル基例えばメチル,エチルなどの低級アルキル基)で置き換ったもの〕〔4,4−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど〕、ポリアミドポリアミン:ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミンなど、ポリエーテルポリアミン:ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物などが挙げられる。なかでも、ポリアミン(β1a)として好ましいものは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びそれらの混合物である。
【0059】
ポリアミン(β1a)が脱離可能な化合物でブロック化されたポリアミンである場合の例としては、前記ポリアミン類と炭素数3〜8のケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、炭素数2〜8のアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド)から得られるアルジミン化合物、エナミン化合物、及びオキサゾリジン化合物などが挙げられる。
【0060】
ポリオール(β1b)としては、ジオール及びポリオールが挙げられる。ジオールとしては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);炭素数4〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);上記アルキレングリコール又は脂環式ジオールのAO〔EO、PO、BOなど〕付加物(付加モル数1〜120);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(AO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30);ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオールなど);及びポリブタジエンジオールなどが挙げられる。ポリオールとしては、炭素数3〜36の3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、及びポリグリセリン;糖類及びその誘導体、例えばショ糖、及びメチルグルコシド);多価脂肪族アルコールのAO付加物(付加モル数2〜120);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)のAO付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)のAO付加物(付加モル数2〜30);アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など];などが挙げられる。なかでも、ジオール単独、又はジオールと少量のポリオールの混合物が好ましい。
【0061】
ポリメルカプタン(β1c)としては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
【0062】
必要により活性水素基含有化合物(β1)と共に反応停止剤(βs)を用いることができる。反応停止剤(βs)を活性水素基含有化合物(βl)と一定の比率で併用することにより、樹脂(b2)を所定の分子量に調整することが可能である。反応停止剤(βs)としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど);モノアミンをブロックしたもの(ケチミン化合物など);モノオール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノールなど);モノメルカプタン(ブチルメルカプタン、ラウリルメルカブタンなど);モノイソシアネート(ラウリルイソシアネートフェニルイソシアネートなど);モノエポキサイド(ブチルグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。
【0063】
上記組み合せ〔2〕における反応性基含有プレポリマー(α)が有する活性水素含有基(α2)としては、アミノ基(α2a)、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)(α2b)、メルカプト基(α2c)、カルボキシル基(α2d)及びそれらが脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、アミノ基(α2a)、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)(α2b)及びアミノ基が脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)であり、より好ましいものは、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)(α2b)である。アミノ基が脱離可能な化合物でブロック化された有機基としては、前記ポリアミン(β1a)の場合と同様のものが例示できる。
【0064】
活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)としては、ポリイソシアネート(β2a)、ポリエポキシド(β2b)、ポリカルボン酸(β2c)、ポリカルボン酸無水物(β2d)及びポリ酸ハライド(β2e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、ポリイソシアネート(β2a)及びポリエポキシド(β2b)であり、より好ましいものは、ポリイソシアネート(β2a)である。
【0065】
ポリイソシアネート(β2a)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート及び炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートである。
【0066】
ポリエポキシド(β2b)としては、芳香族系ポリエポキシ化合物、複素環系ポリエポキシ化合物、脂環族系ポリエポキシ化合物及び脂肪族系ポリエポキシ化合物が挙げられる。
これらのうち、好ましいのは、芳香族系ポリエポキシ化合物及び脂肪族系ポリエポキシ化合物である。
【0067】
ポリカルボン酸(β2c)としては、ジカルボン酸(β2c−1)及び3価以上のポリカルボン酸(β2c−2)が挙げられ、ジカルボン酸(β2c−1)単独、及びジカルボン酸(β2c−1)と少量の3価以上のポリカルボン酸(β2c−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(β2c−1)としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、デシルコハク酸など)及びアルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸など);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸、及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。ポリカルボン酸(β2c−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
【0068】
ポリカルボン酸無水物(β2d)としては、ピロメリット酸無水物などが挙げられる。
ポリ酸ハライド類(β2e)としては、前記(β2c)の酸ハライド(酸クロライド、酸ブロマイド酸アイオダイド)などが挙げられる。さらに、必要により活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)と共に上記の反応停止剤(βs)を用いることができる。
【0069】
上記の方法〔1〕及び〔2〕において、使用される硬化剤(β)の比率としては、反応性基含有プレポリマー(α)中の反応性基の当量[α]と、硬化剤(β)中の活性水素含有基[β]の当量の比[α]/[β]として、好ましくは1/2〜2/1、より好ましくは1.5/1〜1/1.5、特に好ましくは1.2/1〜1/1.2である。なお、硬化剤(β)が水(β1d)である場合は、水は2価の活性水素化合物として取り扱う。
【0070】
反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)とを含有する前駆体(b0)を水系媒体中で反応させた樹脂(b2)が樹脂粒子(B)及び樹脂粒子(C)の構成成分となる。
反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)とを反応させた樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はないが、低温定着性及び耐ホットオフセット性の点で、好ましくは3,000以上であり、より好ましくは3,000〜10,000,000であり、特に好ましくは,5,000〜1,000,000である。Mwが3,000未満であると、耐ホットオフセット性に欠け、1,000,000を超えると、低温定着性の点で不利となる。
【0071】
また、反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)との水系媒体中での反応時に、直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)等の反応性基含有プレポリマー(α)及び硬化剤(β)と反応しないポリマー、いわゆる[デッドポリマー]を系内に含有させることにより、樹脂(b)は、反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)とを水系媒体中で反応させて得られた樹脂(b2)と、直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)等の反応させていない樹脂との混合物となる。
【0072】
樹脂(b)100質量部に対する水性分散液(W)の使用量は、好ましくは50〜2,000質量部、より好ましくは100〜1,000質量部である。50質量部以上では(b)の分散状態が良好であり、2,000質量部以下であると経済的である。
【0073】
樹脂(b)の物性としては、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するものであれば、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択すればよい。このような物性としては、例えば、数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定。)、重量平均分子量(以下、Mwと略記する。)、融点(示差走査熱量計(DSC)にて測定)、ガラス転移点(以下、Tgと略記。)が挙げられる。
【0074】
なかでも、樹脂(b)のMnとしては、好ましくは、1,000〜5,000,000であり、より好ましくは、2,000〜500,000である。樹脂(b)のMwは、好ましくは、3,000〜7,000,000であり、より好ましくは、5,000〜600,000である。樹脂(b)の融点は、好ましくは、20℃〜300℃であり、より好ましくは80℃〜250℃である。樹脂(b)のTgは、好ましくは20℃〜200℃、より好ましくは40℃〜200℃である。
【0075】
本発明において、ポリウレタン樹脂以外のポリエステル樹脂等の各樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で求められる。
【0076】
装置(一例) :東ソー製HLC−8120
カラム(一例) :TSKgelGMHXL(2本)
:TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
試料溶液 :0.25%のTHF溶液
溶液注入量 :100μL
流量 :1mL/分
測定温度 :40℃
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :東ソー製標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)
【0077】
また、ポリウレタン樹脂のMn及びMwは、GPCを用いて以下の条件で求められる。
【0078】
装置(一例) :東ソー製HLC−8220GPC
カラム(一例) :GuardcolumnαTSKgelα−M
試料溶液 :0.125%のジメチルホルムアミド溶液
溶液注入量 :100μL
流量 :1mL/分
温度 :40℃
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :東ソー製標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)
【0079】
本発明における融点及びTgは、DSC測定又はフローテスター測定(DSCで測定できない場合)から求められる。
【0080】
DSCで測定する場合は、セイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0081】
フローテスター測定には、島津製作所製の高架式フローテスターCFT500型を用いる。フローテスター測定の条件は下記のとおりであり、以下測定は全てこの条件で行われる。
【0082】
(フローテスター測定条件)
荷重 :30kg/cm
昇温速度 :3.0℃/分
ダイ口径 :0.50mm
ダイ長さ :10.0mm
【0083】
<第1の樹脂(a);樹脂粒子(A)及び被膜(P)>
本発明によるトナーは、第1の樹脂(a)を有し、第1の樹脂(a)は、上記の樹脂粒子(B)の表面に付着され、第1の樹脂(a)は、ポリエステル樹脂より構成されていれば、その形状、構造、大きさに制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、樹脂粒子(A)又は被膜化して被膜(P)として、樹脂粒子(B)の表面に存在することが好ましい。樹脂粒子(B)の表面において、樹脂(a)が樹脂粒子(A)として存在する場合には、粒子の形態であればよく、被膜(P)として存在する場合には、膜の形態であればよい。なお、本発明によるトナーにおいて、第1の樹脂(a)が樹脂粒子(A)として存在するか、被膜(P)として存在するかは、第1の樹脂(a)のTg、体積平均粒径、樹脂粒子(C)の製造条件(脱溶媒温度等)により異なる。
【0084】
−樹脂粒子(A)−
樹脂粒子(B)の表面に付着される樹脂(a)は、公知の重合法を用いて形成することができ、樹脂粒子(A)として得ることが好ましい。これは、樹脂粒子とすることで、樹脂粒子(B)の表面に付着しやすくなるためである。
【0085】
本発明における樹脂粒子(A)は、有機溶媒、活性水素含有化合物(アミン類)、樹脂(b)が水系媒体中に分散されて有機分散微粒子が形成される際に、その表面部分に結合するものと考えられ、これにより得られるトナー粒子の主として表面部分に偏在するものと考えられる。
【0086】
前記樹脂(a)はポリエステル樹脂であり、多塩基酸、多価アルコール類から構成されているものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。以下にこれらのポリエステル樹脂(a)の構成成分について説明する。
【0087】
多塩基酸のうちの芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができ、必要に応じて耐水性を損なわない範囲で少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和ジカルボン酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)等を挙げることができる。
【0088】
全酸成分に占める芳香族多塩基酸の含有率の合計は、50モル%以上が好ましい。この値が50モル%未満の場合には脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸に由来する構造が樹脂骨格中の過半を占めるため、形成される被膜の硬度、耐汚染性、耐水性が低下する傾向があり、脂肪族及び/又は脂環族のエステル結合が芳香族エステル結合に比して耐加水分解性が低いために、水分散体の貯蔵安定性が低下することがある。水分散体の貯蔵安定性を確保するためには、全酸成分に占める芳香族多塩基酸の含有率は70モル%以上が好ましく、形成される被膜の他の性能とバランスをとりながらその加工性、耐水性、耐薬品性、耐候性を向上させることができる点において、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分の65モル%以上がテレフタル酸であることは、本発明の課題を達成するうえで特に好ましい。
【0089】
一方、多価アルコール成分については、グリコールとして炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコールを挙げることができる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。ただし、エーテル構造はポリエステル樹脂被膜の耐水性、耐候性を低下させることから、その使用量は全多価アルコール成分の10重量%以下、更には5重量%以下にとどめることが好ましい。
【0090】
本発明においては、ポリエステル樹脂の全多価アルコール成分の50モル%以上、特に65モル%以上がエチレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールで構成されていることが好ましい。エチレングリコール及びネオペンチルグリコールは工業的に多量に生産されているので安価であり、しかも形成される被膜の諸性能にバランスがとれ、エチレングリコール成分は特に耐薬品性を、ネオペンチルグリコール成分は特に耐候性を向上させるという長所を有する。
【0091】
本発明で樹脂(a)として使用されるポリエステル樹脂は、必要に応じて3官能以上の多塩基酸及び/又は多価アルコールを共重合することができるが、3官能以上の多塩基酸としては(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が使用される。一方、3官能以上の多価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上の多塩基酸及び/又は多価アルコールは、全酸成分あるいは全アルコール成分に対し10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲で共重合されるが、10モル%を越えるとポリエステル樹脂の長所である被膜の高加工性が発現されなくなる。
【0092】
また、必要に応じて、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等の高沸点のモノカルボン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等の高沸点のモノアルコール、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やそのエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0093】
かかるポリエステル樹脂は、前記のモノマー類より公知の方法を用いて合成される。例えば、(a)全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いて触媒の存在下、1Torr以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の溶融粘度に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法、(b)前記重縮合反応を、目標とする溶融粘度に達する以前の段階で終了し、反応生成物を次工程で多官能のエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物等から選ばれる鎖長延長剤と混合し、短時間反応させることにより高分子量化を図る方法、(c)前記重縮合反応を目標とする溶融粘度以上の段階まで進めておき、モノマー成分を更に添加し、不活性雰囲気、常圧〜加圧系で解重合を行うことで目標とする溶融粘度のポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
【0094】
水性化に必要なカルボキシル基は、樹脂骨格中に存在するよりも樹脂分子鎖の末端に偏在していることが、形成される被膜の耐水性の面から好ましい。副反応やゲル化等を伴わずに、高分子量のポリエステル樹脂の分子鎖末端に特定量のカルボキシル基を導入する方法としては、ポリエステル樹脂を製造する場合、前記の方法(a)において重縮合反応の開始時以降に3官能以上の多塩基酸成分を添加するか、或いは、重縮合反応の終了直前に多塩基酸の酸無水物を添加する方法、前記の方法(b)において大部分の分子鎖末端がカルボキシル基である低分子量ポリエステル樹脂を鎖長延長剤により高分子量化させる方法、前記の方法(c)において解重合剤として多塩基酸成分を使用する方法等が好ましい態様である。
【0095】
前記ポリエステル樹脂水分散体中におけるポリエステル樹脂の含有率はその使用される用途、乾燥膜厚、成形方法によって適宜選択されるべきであるが、一般には0.5〜50重量%、中でも1〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。後述するように、本発明のポリエステル樹脂水分散体はポリエステル樹脂の含有率が20重量%以上といった高固形分濃度であっても貯蔵安定性に優れるという長所を有する。しかし、ポリエステル樹脂の含有率が50重量%を越えるとポリエステル樹脂水分散体の粘度が著しく高くなり、実質的に成形が困難となってしまう場合がある。
【0096】
[塩基性化合物]
本発明における樹脂(a)のポリエステル樹脂は水媒体に分散させる際、塩基性化合物で中和される。本発明においてはポリエステル樹脂中のカルボキシル基との中和反応が水性化(樹脂微粒子の形成)の起動力であり、しかも生成したカルボキシアニオン間の電気反発力によって、後述のごく少量の保護コロイド作用を有する化合物との併用により、微粒子間の凝集を防ぐことができる。塩基性化合物としては被膜形成時、或いは硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が好ましく、このようなものとしてはアンモニア、沸点が250℃以下の有機アミン化合物等が挙げられる。望ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。塩基性化合物は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2〜1.5倍当量を添加することが好ましく、0.4〜1.3倍当量を添加することがより好ましい。0.2倍当量未満では塩基性化合物添加の効果が認められず、1.5倍当量を越えると、ポリエステル樹脂水分散体が著しく増粘する場合がある。
【0097】
[両親媒性の有機溶剤]
本発明においては、水性化処理速度を加速させる目的で、水性化工程では、ポリエステル樹脂に対して可塑化能力を有する両親媒性の有機化合物を必要とする。但し、沸点が250℃を越えるものは、あまりに蒸発速度がおそく、被膜の乾燥時にもこれを十分に取り除くことができないため、沸点が250℃以下であり、しかも毒性、爆発性や引火性の低い、いわゆる、有機溶剤と呼ばれる汎用の化合物が対象となる。
【0098】
本発明でいう有機溶剤に要求される特性は、両親媒性であること、ポリエステル樹脂に対して可塑化能力を有することである。ここで両親媒性の有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも5g/L以上、望ましくは10g/L以上であるものをいう。この溶解性が5g/L未満のものは、水性化処理速度を加速させる効果に乏しい。また、有機溶剤の可塑化能力は、次のような簡便な試験によって判断することができる。すなわち、対象とするポリエステル樹脂から3cm×3cm×0.5cm(厚さ)の角板を試作し、これを50mlの有機溶剤に浸して25〜30℃の雰囲気で静置する。3時間後に角板の形状が明らかに変形しているか、或いは、厚さ方向に対して1kg/cmの力を静的に加えながら0.2cm径のステンレス製の丸棒を接触させた際に、丸棒の0.3cm以上が角板に侵入する場合、その有機溶剤の可塑化能力はあると判断される。可塑化能力が無いと判断される有機溶剤は、水性化処理速度を加速させる効果に乏しい。
【0099】
かかる有機溶剤としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等を例示することができる。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を混合しても使用できる。
【0100】
これら例示した有機溶剤のうち、次に述べる2条件を満足する化合物を単一で使用するか、また2種以上を混合して使用する場合、水性化処理速度を加速させる効果が特に優れるばかりでなく、生成したポリエステル樹脂水分散体の貯蔵安定性に優れるので好ましい。
(条件1)分子中に、炭素原子が直接4個以上結合した疎水性構造を有すること
(条件2)分子末端に、ポーリング(Pauling)の電気陰性度が3.0以上の原子を1個以上含有する置換基を有し、該置換基中の電気陰性度が3.0以上の原子と直接結合している炭素原子の13C−NMR(核磁気共鳴)スペクトルのケミカルシフトが、室温、CDCl3中で測定した場合に50ppm以上であるような極性の置換基を有すること
【0101】
条件2で規定される置換基としては、アルコール性ヒドロキシル基、メチルエーテル基、ケトン基、アセチル基、メチルエステル基等を例示でき、前記2条件を満足する化合物のうち、特に好適な有機溶剤としては、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル等のエステル類、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノールを例示することができる。
【0102】
かかる有機溶剤は、沸点が100℃以下か、あるいは水と共沸可能であれば、水性化工程中、あるいはそれに続く工程でその一部又はその全てを系外に除去(ストリッピング)することができるが、最終的にはポリエステル樹脂水分散体に対して0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜8.0重量%、さらに好ましくは1.0〜5.0重量%含有させるべきである。0.5〜10重量%で含有させたポリエステル樹脂水分散体は貯蔵安定性に優れ、しかも被膜形成性に優れる。0.5重量%未満では水性化に長時間を要したり、望ましい粒径分布を有するポリエステル樹脂微粒子が生成しない場合があるといった問題もある。一方、10重量%を越えると、水性化本来の目的が損なわれるだけでなく、後述する水分散体中の二次粒子の存在割合が高くなるために水分散体の粘度が異常に高くなったり、貯蔵安定性に劣ったり、さらには被膜形成性に劣ったりするという不具合を生じることがある。
【0103】
[保護コロイド作用を有する化合物]
本発明では、前記した有機溶剤を系外に除去(ストリッピング)する工程、或いは貯蔵時の該水分散体の安定性を確保する目的で、必要に応じて保護コロイド作用を有する化合物を使用する。本発明でいう保護コロイドとは、水媒体中の樹脂微粒子の表面に吸着し、いわゆる、「混合効果」、「浸透圧効果」あるいは「容積制限効果」と呼ばれる安定化効果を示して樹脂微粒子間の吸着を防ぐ作用をいう。保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を一成分とするビニル単量体の重合物、ポリイタコン酸、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、膨潤性雲母等を例示することができる。かかる化合物は水溶性、或いは、塩基性化合物で部分的に中和することによって水溶化するが、形成される被膜の耐水性を損なわないためには、該塩基性化合物はアンモニア及び/又は前記の有機アミン化合物でなければならない。また、少量添加で保護コロイドとしての作用を発現し、形成される被膜の耐水性、耐薬品性等を損なわないためには、保護コロイド作用を有する化合物の数平均分子量は1,500以上のものが好ましく、2,000以上、更には2,500以上のものがより好ましい。
【0104】
かかる保護コロイド作用を有する化合物の使用量は、前記ポリエステル樹脂に対しては0.01〜3重量%、好ましくは0.03〜2重量%である。この範囲であれば、形成される被膜の諸性能を低下させることなく、水性化工程及び貯蔵時のポリエステル樹脂水分散体の安定性を著しく向上させることができる。また、かかる保護コロイド作用を有する化合物を使用することにより、ポリエステル樹脂の酸価及び前記有機溶剤の含有量を低減できる。また、前記ポリエステル樹脂(A’)に対しての使用量は0.05重量%以下、好ましくは0.03重量%以下であり、0.05重量%以下であれば形成される被膜の諸性能を低下させることなく、水性化工程及び貯蔵時のポリエステル樹脂水分散体の安定性を著しく向上させることができる。
【0105】
樹脂(a)に用いるポリエステル樹脂において、酸価は10〜40mgKOH/g、好ましくは10〜35mgKOH/gである。この酸価が40mgKOH/gを越えると、形成される被膜の耐水性が劣る傾向がある。一方、酸価が10mgKOH/g未満の場合は、水性化に寄与するカルボキシル基量が十分でなく、良好な水分散体を得ることができない傾向がある。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー,ポリスチレン換算)で測定される重量平均分子量が9,000以上、又はフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの等重量比混合溶媒中に1重量%の濃度で溶解させ、20℃で測定したときの相対粘度が1.20以上であることが好ましい。重量平均分子量が9,000未満又は相対粘度が1.20未満の場合、該ポリエステル樹脂の水分散体から形成される被膜に十分な加工性が付与されない傾向がある。さらに、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は12,000以上、更には15,000以上が特に好ましい。上限については45,000以下が好ましい。45,000を越えると、ポリエステル樹脂の製造時の操業性を悪化したり、このようなポリエステル樹脂を使用した水分散体では粘度が高くなり過ぎる傾向がある。また、相対粘度は1.22以上が好ましく、1.24以上がより好ましい。上限については1.95以下が好ましく、この値を越えると、ポリエステル樹脂の製造時の操業性を悪化させたり、このようなポリエステル樹脂を使用した水分散体では粘度が高くなり過ぎる傾向がある。
【0106】
トナーの粒度分布をシャープにするにはトナー表面へ有機微粒子を均一に付着させる必要があり、樹脂(a)と樹脂(b)のSP値差が重要である。樹脂(a)と樹脂(b)のSP値差は0.1〜2.3であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.8である。
樹脂(a)と樹脂(b)のSP値差が2.3を超えると、トナー粒度分布が広くなって、画像濃度にばらつきがみられたり、現像ユニット内での長期撹拌によりシェルがコア表面から剥がれ落ち、感光体へのフィルミングや流動性の低下が起こり、帯電安定性が悪化する可能性がある。また、樹脂(a)と樹脂(b)のSP値差が0.1未満であると、樹脂(a)が樹脂(b)に相溶してトナー内部に有機微粒子が取り込まれ、トナー粒度分布が広くなって、画像濃度のばらつきがみられる可能性がある。さらに、コアが露出されるので、コア樹脂の感光体へのフィルミングによる経時での帯電安定性の悪化、温度・湿度等の使用環境の変化に対する帯電安定性の悪化、耐熱保存性の悪化が引き起こされる可能性がある。また、樹脂(a)、(b)のSP値は8〜35が好ましく、この範囲外であると造粒性が悪化する可能性がある。
【0107】
ここで、上記SP値(溶解性パラメータ/Solubility Parameter)について説明する。
SP値とは、溶解性パラメータと言われるもので、どれだけ互いが溶けやすいかということを数値化したものである。
このSP値は、互いの分子間の引き合う力、すなわち凝集エネルギー密度CED(Cohesive Energy Density)の平方根で表される。
なお、CEDとは、1mlのものを蒸発させるのに要するエネルギー量である。
具体的には、本発明におけるSP値の計算は、Fedors法により下記式(3)を用いて行うことができる。
SP値(溶解パラメータ)=(CED値)1/2=(E/V)1/2・・・式(3)
【0108】
上記式(3)において、Eは分子凝集エネルギー(cal/mol)、Vは分子容(cm/mol)であり、原子団の蒸発エネルギーを△ei、モル体積を△viとしたとき、各々下式(4)、式(5)で表される。
E=Σ△ei・・・式(4)
V=Σ△vi・・・式(5)
【0109】
SP値の計算方法は諸説あるが、本発明においては一般的に用いられているFedorsの方法を用いた。
本計算方法、各原子団の蒸発エネルギー△ei及びモル体積△viの諸データは、「接着の基礎理論」(井本稔著、高分子刊行会発行、第5章)を参考文献として用いた。
また、−CF3基等示されていないものに関しては、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.14,147(1974)を参照した。
なお、参考までに、式(3)で示されるSP値を(J/cm)1/2に換算する場合には2.046を、SI単位(J/m)1/2に換算する場合には、2046を乗ずればよい。
【0110】
重合途中でモノマーを追加し樹脂骨格を変化させたケースなどでは、仕込み組成比からのSP値の算出は困難となる。
また、トナーそのものに含まれる樹脂についても、一般にその組成が不明であることからSP値の算出は困難である。
しかし、前記Fedors法によるSP値の算出は、樹脂を構成するモノマーの種類と比率とを特定すれば算出が可能となる。
そこで、詳しくは後述のように、GPCにより分離を行い、その分離した各成分について下記の分析手法を採ることで、SP値の算出が可能となる。
【0111】
すなわち、THF(テトラヒドロフラン)を移動相としたGPC測定において、溶出液についてフラクションコレクターなどにより分取を行い、前記溶出曲線の全面積分W1のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめる。
該まとめた溶出液をエバポレーターなどにより濃縮・乾燥した後、固形分を重クロロホルムあるいは重THFなどの重溶媒に溶解させ、1H−NMR測定を行い、各元素の積分比率から、溶出成分における樹脂の構成モノマー比率を算出することができる。
また、他の手法としては、溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウムなどにより加水分解を行い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析することでも構成モノマー比率を算出することができる。
【0112】
(トナーの成分分析)
以下トナーでの各構成成分の分析手段を示す。
まず、トナー1gを100mlのTHF中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得た。
これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにてろ過し、アセトンを留去してトナー中のTHF可溶分を得た。
次いで、これをTHFに溶解してGPC測定用の試料とし、前述の各樹脂の分子量測定に用いたGPCに注入した。
一方、GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置して、所定のカウントごとに溶出液を分取しておき、溶出曲線W1の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得た。
次いで、各溶出分について、1mlの重クロロホルムに30mgのサンプルを溶解させ、基準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を0.05体積%の濃度で添加した。
溶液を5mm径のNMR測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製JNM−AL400)を用い、23〜25℃の温度下、128回の積算を行い、スペクトルを得た。
含まれる樹脂(a)、樹脂(b)のモノマー組成、構成比率は得られたスペクトルのピーク積分比率から求めることができる。
【0113】
樹脂粒子(A)の粒径としては、通常、形成される樹脂粒子(B)の粒径よりも小さく、粒径均一性の観点から、粒径比[樹脂粒子(A)の体積平均粒径(Dv)]/[樹脂粒子(B)の体積平均粒径(Dv)]の値が0.001〜0.3の範囲であるのが好ましい。粒径比の下限は、より好ましくは0.003であり、上限は、より好ましくは0.25である。粒径比が、0.3を超えると、樹脂粒子(A)が樹脂粒子(B)の表面に効率よく吸着しないため、得られる樹脂粒子(C)の粒度分布が広くなったり、トナーの耐熱保存性が悪化したりする可能性がある。一方、粒径比が0.001未満であると生産性が悪化する。
【0114】
樹脂粒子(A)の体積平均粒径(Dv)は、後述の所望の粒径の樹脂粒子(C)を得るのに適した粒径になるように、上記の粒径比の範囲で適宜調整することができるが、樹脂粒子(A)の体積平均粒径(Dv)は、0.035〜0.4μmが好ましい。樹脂粒子(A)の体積平均粒径(Dv)が0.4μmを超えると、定着下限が悪化したり、トナー表面から樹脂粒子(A)がはがれやすくなって、感光体にフィルミングし経時での帯電性が悪化したりする可能性がある。また、樹脂粒子(A)の体積平均粒径(Dv)が0.035μm未満であるとトナー表面が樹脂微粒子に密に覆われてしまい定着下限が悪化したり、耐熱保存性が悪化したり、温度・湿度等の使用環境の変化に対する帯電安定性が悪化したりする可能性がある。なお、体積平均粒径は、レーザー式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所製)やマルチサイザーIII(コールター社製)、光学系としてレーザードップラー法を用いるELS−800(大塚電子社製)などで測定できる。各測定装置間で粒径の測定値に差を生じた場合は、ELS−800での測定値を採用する。
【0115】
樹脂(a)のガラス転移点(Tg)としては、特に制限はないが、50℃〜100℃であることが好ましく、より好ましくは、55℃〜90℃であり、特に好ましくは58℃〜75℃である。Tgが50℃未満では、トナーの保存性が悪化してしまい、保存時及び現像機内でブロッキングの発生が見られることがある。また、Tgが100℃を超えると、樹脂(a)を含有する樹脂粒子が定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られることがある。また、樹脂(a)のTgが水性樹脂分散液を作成する温度より低いと、樹脂粒子(C)の合一を防止したり、分裂を防止したりする効果が小さくなり、粒径の均一性を高める効果が小さくなったり、トナーの耐熱保存性が悪化する可能性がある。なお、本発明におけるTgは、前記の通り、DSC測定又はフローテスター測定(DSCで測定できない場合)から求められる値である。
【0116】
樹脂(a)のガラス転移点(Tg)を調整する場合、樹脂(a)の分子量及び/又は樹脂(a)を構成する単量体組成を変更することで容易に調整できる。樹脂(a)の分子量(分子量が大きくなるほど、これらの温度は高くなる。)を調整する方法としては、公知の方法でよく、例えば、逐次反応で重合する場合には、単量体の仕込み比の調整が挙げられる。
【0117】
<樹脂粒子(C)>
本発明によるトナーにおいて、樹脂粒子(C)は、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に、第1の樹脂(a)が付着してなるものであれば、その製造方法は、特に制限はない。
【0118】
樹脂粒子(C)の製造方法としては、上記の条件を満たす限り、どのような方法及び過程で製造された樹脂粒子であってもよいが、樹脂粒子を製造する方法として、例えば次のような製造方法(I)又は(II)が挙げられる。
【0119】
製造方法(I):樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)の水性分散液(W)と、[樹脂(b)若しくはそれらの有機溶剤溶液乃至分散液](以下(O1)という)、又は、[樹脂(b)の前駆体(b0)若しくはそれらの有機溶剤溶液乃至分散液](以下(O2)という)とを混合し、水性分散液(W)中に(O1)又は(O2)を分散し、前駆体(b0)の場合は前駆体(b0)が反応されて樹脂(b2)が形成され、水性分散液(W)中で樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)を形成する方法。この場合、樹脂粒子(B)の造粒と同時に樹脂粒子(B)の表面に、樹脂(a)(例えば、樹脂粒子(A)又は被膜(P))が付着して、樹脂粒子(C)の水性分散体(X)ができ、これから水性媒体を除去することによって造られる。
【0120】
製造方法(II):あらかじめ作製した樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)を、樹脂(a)を含有するコーティング剤(W’)でコーティングして樹脂粒子(C)を造る方法。この場合、コーティング剤(W’)は液体、固体、どのような形態であってもかまわず、さらに樹脂(a)の前駆体(a’)でコーティングした後に前駆体(a’)を反応させて樹脂(a)にしてもよい。また、用いる樹脂粒子(B)は、乳化重合凝集法などで作製された樹脂粒子であっても、粉砕法で作製された樹脂粒子であっても、どのような製造法で作製されたものでもかまわない。また、コーティング剤(W’)を用いたコーティング方法には、限定はなく、例えば、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)の水性分散液(W)中にあらかじめ作製した樹脂粒子(B)又は樹脂粒子(B)の分散体を分散させる方法や、樹脂粒子(B)に樹脂(a)の溶解液をコーティング剤として塗布する方法などが挙げられる。
【0121】
なかでも、樹脂粒子(A)をより強固に樹脂粒子(B)の表面に付着させることができる点で、上記製造方法(I)の製法が好ましい。また、製造方法(I)では樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)を吸着させることで、樹脂粒子(C)同士が合一するのを防ぎ、また、高剪断条件下で樹脂粒子(C)が分裂され難くする。これにより、樹脂粒子(C)の粒度分布を狭くして、粒径の均一性を高め、均一な粒子にする効果を発揮する。
【0122】
樹脂粒子(A)は、(i)分散する際の温度において、剪断により破壊されない程度の強度を有すること、(ii)水に溶解したり、膨潤したりしにくいこと、(iii)樹脂(b)若しくはその有機溶剤溶液乃至分散液、又は樹脂(b)と前駆体(b0)若しくはその有機溶剤溶液乃至分散液に溶解しにくいことが好ましい特性としてあげられる。
【0123】
トナー成分である、後述の帯電制御剤、異形化剤、着色剤等のその他の成分は、樹脂粒子(B)中に包含されてもよい。このため、水性分散液(W)と(O)(O1又はO2)との混合前に、(O)の溶液中にこれらの帯電制御剤、異形化剤、着色剤等を分散させておいてもよい。また、帯電制御剤は、樹脂粒子(B)に内包させてもよく、外添してもよい。
内包させる場合には着色剤等と同様に、(O)の溶液中に分散させておけばよく、また、外添する場合には樹脂粒子(C)の形成後に外添してもよい。
【0124】
樹脂粒子(C)の製造方法において、樹脂粒子(A)の水性分散液(W)中に、水以外に後述の有機溶剤(u)のうち水と混和性を有する有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン)等が含有されていてもよい。この混和性を有する有機溶剤としては、樹脂粒子(A)の凝集を引き起こさないもの、樹脂粒子(A)を溶解しないもの、及び樹脂粒子(C)の造粒を妨げることがないものであれば、特に制限はなく、また、この混和性の有機溶剤の含有量についても、同様である。例えば、水との合計量の40質量%以下を用いて、乾燥後の樹脂粒子(C)中に残らないものが好ましい。
【0125】
−有機溶剤(u)−
樹脂粒子(C)の調製には、樹脂粒子(C)の構成成分の溶解/分散を目的として、有機溶剤(u)を用いてもよい。有機溶剤(u)は、乳化分散の際に必要に応じて水性媒体中に加えても、被乳化分散体中[樹脂(b)を含む油相(O1)又は樹脂(b)、(b0)を含む油相(O2)中]に加えてもよい。有機溶剤(u)の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0126】
・トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤。
・n−ヘキサン、n−へブタン、ミネラルスピリットシクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤。
・塩化メチル、臭化メチルヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン系溶剤。
・酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテートエチルセロソルブアセテートなどのエステル系又はエステルエーテル系溶剤。
・ジエチルエーテル、テトラヒドロフランジオキサン、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤。
・アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤。
・メタノールエタノールn−プロパノールイソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤。
・ジメチルホルムアミドジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤。
・ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤。
・N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤。
・以上列記したものの2種以上の混合溶剤。
【0127】
−可塑剤(v)−
樹脂粒子(C)の調製には、樹脂を可塑化して定着下限を下げることを目的として、又は樹脂の溶剤への溶解性を向上させることを目的として、可塑剤(v)を用いてもよい。
可塑剤(v)は、乳化分散の際に必要に応じて水性媒体中に加えても、被乳化分散体中[樹脂(b)を含む油相(O1)又は樹脂(b)及び(b0)を含む油相(O2)中]に加えてもよい。可塑剤(v)としては、上記の目的を満たすものであれば、特に制限はなく、下記のものが例示される。
【0128】
(v1)フタル酸エステル[フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジルフタル酸ジイソデシル等]。
(v2)脂肪族2塩基酸エステル[アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸−2−エチルヘキシル等]。
(v3)トリメリット酸エステル[トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチル等]。
(v4)燐酸エステル[リン酸トリエチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジール等]。
(v5)脂肪酸エステル[オレイン酸ブチル等]。
(v6)及びこれらの2種以上の混合物。
【0129】
−乳化剤又は分散剤−
樹脂粒子(C)の調製には、構成成分の乳化/分散を目的として、乳化剤又は分散剤を用いてもよい。乳化剤又は分散剤としては、公知の界面活性剤(s)、水溶性ポリマー(t)等を用いることができる。また、乳化又は分散の助剤として、上記の有機溶剤(u)及び可塑剤(v)等を併用することができる。
【0130】
−−界面活性剤(s)−−
樹脂粒子(C)の調製には、構成成分の乳化/分散を目的として、界面活性剤(s)を用いてもよい。界面活性剤(s)としては、特に制限はなく、アニオン界面活性剤(s−1)、カチオン界面活性剤(s−2)、両性界面活性剤(s−3)、非イオン界面活性剤(s−4)などが挙げられる。界面活性剤(s)は、1種単独又は2種以上の界面活性剤を併用してもよい。(s)の具体例としては、以下に述べるもの等、前記特許文献2の特開2002−284881号公報に記載のものが挙げられる。
【0131】
−−−アニオン界面活性剤(s−1)−−−
アニオン界面活性剤(s−1)としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が用いられる。
【0132】
アニオン界面活性剤(s−1)のカルボン酸又はその塩としては、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸又はその塩が使用でき、例えば、カブリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸及びリシノール酸並びにヤシ油、パーム核油、米ぬか油及び牛脂などをケン化して得られる高級脂肪酸の混合物等が挙げられる。このカルボン酸塩の塩としては、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等)などの塩が挙げられる。
【0133】
アニオン界面活性剤(s−1)の硫酸エステル塩としては、高級アルコール硫酸エステル塩(炭素数8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩)、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩(炭素数8〜18の脂肪族アルコールのEO又はPO1〜10モル付加物の硫酸エステル塩)、硫酸化油(炭素数12〜50の天然の不飽和油脂又は不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和したもの)、硫酸化脂肪酸エステル(不飽和脂肪酸(炭素数6〜40)の低級アルコール(炭素数1〜8)エステルを硫酸化して中和したもの)及び硫酸化オレフィン(炭素数12〜18のオレフィンを硫酸化して中和したもの)等が使用できる。
硫酸エステル塩の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等)等が挙げられる。
高級アルコール硫酸エステル塩としては、例えば、オクチルアルコール硫酸エステル塩、デシルアルコール硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、ステアリルアルコール硫酸エステル塩、チーグラー触媒を用いて合成されたアルコール(例えば、商品名:ALFOL1214:CONDEA社製)の硫酸エステル塩及びオキソ法で合成されたアルコール(例えば、商品名:ドバノール23,25,45、ダイヤドール115、115H、135:三菱化学製:、商品名:トリデカノール:協和発酵製、商品名:オキソコール1213,1215,1415:日産化学製)の硫酸エステル塩等が挙げられる。
高級アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えば、ラウリルアルコールEO2モル付加物硫酸エステル塩及びオクチルアルコールEO3モル付加物硫酸エステル塩等が挙げられる。
硫酸化油としては、例えば、ヒマシ油、落花生油、オリーブ油、ナタネ油、牛脂及び羊脂などの硫酸化物の塩等が挙げられる。
硫酸化脂肪酸エステルとしては、例えば、オレイン酸ブチル及びリシノレイン酸ブチル等の硫酸化物の塩等が挙げられる。
硫酸化オレフィンとしては、例えば、商品名:ティーポール(シェル社製)等が挙げられる。
【0134】
カルボキシメチル化物の塩としては、炭素数8〜16の脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物の塩及び炭素数8〜16の脂肪族アルコールのEO又はPO1〜10モル付加物のカルボキシメチル化物の塩等が使用できる。
脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物の塩としては、例えば、オクチルアルコールカルボキシメチルイヒナトリウム塩、ラウリルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、ドバノール23のカルボキシメチル化ナトリウム塩、トリデカノールカルボキシメチルイヒナトリウム塩等が挙げられる。
脂肪族アルコールのEO又はPO1〜10モル付加物のカルボキシメチル化物の塩としては、例えば、オクチルアルコールEO又はPO3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、ラウリルアルコールEO又はPO4モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、及びトリデカノールEO又はPO5モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩などが挙げられる。
【0135】
スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩、イゲポンT型及びその他芳香環含有化合物のスルホン酸塩等が使用できる。
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
スルホコハク酸ジエステル塩としては、例えば、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩などが挙げられる。
芳香環含有化合物のスルホン酸塩としては、アルキル化ジフェニルエーテルのモノ又はジスルホン酸塩及びスチレン化フェノールスルホン酸塩などが挙げられる。
【0136】
リン酸エステル塩としては、高級アルコールリン酸エステル塩及び高級アルコールEO付加物リン酸エステル塩等が挙げられる。
高級アルコールリン酸エステル塩としては、例えば、ラウリルアルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩及びラウリルアルコールリン酸ジエステルナトリウム塩等が挙げられる。
高級アルコールEO付加物リン酸エステル塩としては、例えば、オレイルアルコールEO5モル付加物リン酸モノエステルジナトリウム塩等が挙げられる。
【0137】
−−−カチオン界面活性剤(s−2)−−−
カチオン界面活性剤(s−2)としては、第4級アンモニウム塩型界面活性剤及びアミン塩型界面活性剤等が使用できる。
【0138】
第4級アンモニウム塩型界面活性剤としては、炭素数3〜40の3級アミンと4級化剤(例えば、メチルクロライドメチルブロマイド、エチルクロライド、ベンジルクロライド及びジメチル硫酸などのアルキル化剤並びにEOなど)との反応等で得られ、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、セチルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド及びステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェートなどが挙げられる。
【0139】
アミン塩型界面活性剤としては、1〜3級アミンを無機酸(例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ヨウ化水素酸、リン酸及び過塩素酸など)又は有機酸(酢酸、ギ酸、膠酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、炭素数2〜24のアルキルリン酸、リンゴ酸及びクエン酸など)で中和すること等により得られる。
第1級アミン塩型界面活性剤としては、例えば、炭素数8〜40の脂肪族高級アミン(例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミン及び、ロジンアミンなどの高級アミン)の無機酸塩又は有機酸塩及び低級アミン(炭素数2〜6)の高級脂肪酸(炭素数8〜40、ステアリン酸、オレイン酸など)塩などが挙げられる。
第2級アミン塩型界面活性剤としては、例えば炭素数4〜40の脂肪族アミンのEO付加物などの無機酸塩又は有機酸塩が挙げられる。
また、第3級アミン塩型界面活性剤としては、例えば、炭素数4〜40の脂肪族アミン(例えば、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなど)、脂肪族アミン(炭素数2〜40)のEO(2モル以上)付加物、炭素数6〜40の脂環式アミン(例えば、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−メチルモルホリン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセンなど)、炭素数5〜30の含窒素へテロ環芳香族アミン(例えば、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール及び4,4’−ジピリジルなど)の無機酸塩又は有機酸塩及びトリエタノールアミンモノステアレ−ト、ステアラミドエチルジエチルメチルエタノールアミンなどの3級アミンの無機酸塩又は有機酸塩などが挙げられる。
【0140】
−−−両性界面活性剤(s−3)−−−
両性界面活性剤(s−3)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤などが使用できる。
【0141】
カルボン酸塩型両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤及びイミダゾリン型両性界面活性剤などが挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤としては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する両性界面活性剤であり、例えば、下記一般式(1)で示される化合物等が挙げられる。
[R−NH−(CH−COO]M・・・一般式(1)
【0142】
[式中、Rは、1価の炭化水素基;nは、1又は2;mは、1又は2;Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムカチオン、アミンカチオン、アルカノールアミンカチオンなどである。]
【0143】
一般式(1)で表される両面活性剤としては、例えば、アルキル(炭素数6〜40)アミノプロピオン酸型両性界面活性剤(ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなど);アルキル(炭素数4〜24)アミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
【0144】
ベタイン型両性界面活性剤は、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤であり、例えば、アルキル(炭素数6〜40)ジメチルベタイン(ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなど)、炭素数6〜40のアミドベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなど)、アルキル(炭素数6〜40)ジヒドロキシアルキル(炭素数6〜40)ベタイン(ラウリルジヒドロキシエチルベタインなど)などが挙げられる。
【0145】
イミダゾリン型両性界面活性剤としては、イミダゾリン環を有するカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤であり、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
【0146】
その他の両性界面活性剤として、例えば、ナトリウムラウロイルグリシン、ナトリウムラウリルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシン塩酸塩、ジオクチルジアミノエチルグリシン塩酸塩などのグリシン型両性界面活性剤;ペンタデシルスルホタウリンなどのスルホベタイン型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0147】
−−−非イオン界面活性剤(s−4)−−−
非イオン界面活性剤(s−4)としては、AO付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤などが使用できる。
【0148】
AO付加型非イオン界面活性剤は、炭素数8〜40の高級アルコール、炭素数8〜40の高級脂肪酸又は炭素数8〜40のアルキルアミン等に直接AO(炭素数2〜20)を付加させるか、グリコールにAOを付加させて得られるポリアルキレングリコールに高級脂肪酸などを反応させるか、又は多価アルコールに高級脂肪酸を反応して得られたエステル化物にAOを付加させるか、高級脂肪酸アミドにAOを付加させることにより得られる。
【0149】
AOとしては、例えばEO、PO及びBOが挙げられる。これらのうち好ましいものは、EO及びEOとPOのランダム又はブロック付加物である。AOの付加モル数としては10〜50モルが好ましく、このAOのうち、50〜100%がEOであるものが好ましい。
【0150】
AO付加型非イオン界面活性剤としては、例えば、オキシアルキレンアルキルエーテル(アルキレンの炭素数2〜24、アルキルの炭素数8〜40)(例えば、オクチルアルコールEO20モル付加物、ラウリルアルコールEO20モル付加物、ステアリルアルコールEO10モル付加物、オレイルアルコールEO5モル付加物、ラウリルアルコールEO10モルPO20モルブロック付加物など);ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル(アルキレンの炭素数2〜24、高級脂肪酸の炭素数8〜40)(例えば、ステアリル酸EO10モル付加物、ラウリル酸EO10モル付加物など);ポリオキシアルキレン多価アルコール高級脂肪酸エステル(アルキレンの炭素数2〜24、多価アルコールの炭素数3〜40、高級脂肪酸の炭素数8〜40)(例えば、ポリエチレングリコール(重合度20)のラウリン酸ジエステル、ポリエチレングリコール(重合度20)のオレイン酸ジエステルなど);ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(アルキレンの炭素数2〜24、アルキルの炭素数8〜40)(例えば、ノニルフェノールEO4モル付加物、ノールフェノールEO8モルPO20モルブロック付加物、オクチルフェノールEO10モル付加物、ビスフェノールA・EO10モル付加物、スチレン化フェノールEO20モル付加物など);ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル(アルキレンの炭素数2〜24、アルキルの炭素数8〜40)及び(例えば、ラウリルアミンEO10モル付加物、ステアリルアミンEO10モル付加物など);ポリオキシアルキレンアルカノールアミド(アルキレンの炭素数2〜24、アミド(アシル部分)の炭素数8〜24)(例えば、ヒドロキシエチルラウリン酸アミドのEO10モル付加物、ヒドロキシプロピルオレイン酸アミドのEO20モル付加物など)が挙げられる
【0151】
多価アルコール型非イオン界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物、多価アルコールアルキルエーテル及び多価アルコールアルキルエーテルAO付加物等が使用できる。多価アルコールの炭素数としては3〜24、脂肪酸の炭素数としては8〜40、AOの炭素数としては2〜24である。
【0152】
多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジオレート及びショ糖モノステアレートなどが挙げられる。
【0153】
多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物としては、例えば、エチレングリコールモノオレートEO10モル付加物、エチレングリコールモノステアレートEO20モル付加物、トリメチロールプロパンモノステアレートEO20モルPO10モルランダム付加物、ソルビタンモノラウレートEO10モル付加物、ソルビタンジステアレートEO20モル付加物及びソルビタンジラウレートEO12モルPO24モルランダム付加物などが挙げられる。
【0154】
多価アルコールアルキルエーテルとしては、例えば、ペンタエリスリトールモノブチルエーテル、ペンタエリスリトールモノラウリルエーテル、ソルビタンモノメチルエーテル、ソルビタンモノステアリルエーテル、メチルグリコシド及びラウリルグリコシドなどが挙げられる。
【0155】
多価アルコールアルキルエーテルAO付加物としては、例えば、ソルビタンモノステアリルエーテルEO10モル付加物、メチルグリコシドEO20モルPO10モルランダム付加物、ラウリルグリコシドEO10モル付加物及びステアリルグリコシドEO20モルPO20モルランダム付加物などが挙げられる。
【0156】
−−水溶性ポリマー(t)−−
水溶性ポリマー(t)としては、セルロース系化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びそれらのケン化物など)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)含有ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物、アクリル酸ナトリウム−アクリル酸エステル共重合体)、スチレン−無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物、水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)などが挙げられる。
【0157】
本発明において、樹脂粒子(C)の粒径均一性、保存安定性等の観点から、樹脂粒子(C)は、0.01質量%〜60質量%の樹脂(a)と、40質量%〜99.99質量%の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)とからなることが好ましく、より好ましくは、0.1質量%〜50質量%の樹脂(a)と、50質量%〜99.9質量%の樹脂粒子(B)とからなるものであり、特に好ましくは、1質量%〜45質量%の樹脂(a)と、55質量%〜99質量%の樹脂粒子(B)とからなるものである。樹脂(a)が0.01質量%以上であると、耐ブロッキング性が良好であり、60%質量以下であると、定着特性、特に低温定着性が良好である。また、40質量%以上の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)であると、定着特性、特に低温定着性が良好となり、99.99質量%以下であると、耐ブロッキング性が良好となる。
【0158】
また、樹脂粒子(C)の粒径均一性、粉体流動性、保存安定性等の観点からは、樹脂粒子(C)において、樹脂粒子(B)の表面の5%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上が、樹脂(a)(例えば、樹脂粒子(A)又は被膜(P))で覆われる。樹脂粒子(C)の表面被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)で得られる像の画像解析から下式に基づいて求めることができる。
【0159】
表面被覆率(%)=[樹脂(a)で覆われている部分の面積/樹脂(a)で覆われている部分の面積+樹脂粒子(B)が露出している部分の面積]×100
【0160】
粒径均一性の観点から、樹脂粒子(C)の体積分布の変動係数は、好ましくは、30%以下であり、より好ましくは、0.1%〜15%である。また、粒径均一性から、樹脂粒子(C)の[体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)]の値は、好ましくは、1.0〜1.5であり、より好ましくは、1.0〜1.3である。樹脂粒子(C)の[体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)]の値が1.5を超えると、トナーの帯電にばらつきがみられ、画像濃度が不均一になる可能性がある。樹脂粒子(C)の体積平均粒径(Dv)は、用途により異なるが、一般的には0.1μm〜16μmが好ましい。上限は、より好ましくは11μm、特に好ましくは9μmであり、下限は、より好ましくは0.5μm、特に好ましくは1μmである。なお、体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、マルチサイザーIII(コールター社製)で同時に測定することができる。
【0161】
本発明において、樹脂粒子(C)は、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)の粒径、及び、樹脂(a)を含有する被膜(P)による樹脂粒子(B)表面の被覆率を変えることで、粒子表面に所望の凹凸を付与することができる。粉体流動性を向上させ得る点で、樹脂粒子(C)のBET値比表面積が0.5〜5.0m/gであることが好ましい。
本発明において、BET比表面積は、比表面積計、例えばQUANTASORB(ユアサアイオニクス製)を用いて測定(測定ガス:He/Kr=99.9/0.1容量%、検量ガス:窒素)したものである。同様に粉体流動性の観点から、樹脂粒子(C)の表面平均中心線粗さRaが0.01μm〜0.8μmであることが好ましい。Raは、粗さ曲線とその中心線との偏差の絶対値を算術平均した値のことであり、例えば、走査型プローブ顕微鏡システム(東陽テクニカ製)で測定することができる。
【0162】
樹脂粒子(C)の形状は、粉体流動性、溶融レベリング性等の観点から球状であることが好ましい。その場合、樹脂粒子(B)も球状であるのが好ましい。樹脂粒子(C)の平均円形度は、0.95〜1.00であることが好ましく、より好ましくは0.96〜1.0、特に好ましくは0.97〜1.0である。なお、平均円形度は、光学的に粒子を検知して、投影面積の等しい相当円の周囲長で除した値である。具体的には、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000;シスメックス社製)を用いて測定する。所定の容器に、予め不純固形物を除去した水100mL〜150mLを入れ、分散剤として界面活性剤(ドライウエル;富士写真フィルム社製)0.1mL〜0.5mLを加え、さらに測定試料0.1g〜9.5g程度を加える。試料を分散した懸濁液を超音波分散器(ウルトラソニッククリーナモデルVS−150;ウエルボクリア社製)で約1〜3分間分散処理を行い、分散濃度を3,000個/μL〜10,000個/μLにして樹脂粒子の形状及び分布を測定する。
【0163】
<その他の成分>
本発明によるトナーは、上記の通り、第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)と、を有する樹脂粒子(C)を含むトナーであって、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。その他の成分としては、帯電制御剤、異形化剤、着色剤、離型剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、などが挙げられる。
【0164】
<<帯電制御剤>>
本発明によるトナーは、トナーの帯電性を制御することを目的として、帯電制御剤をトナー中に含有させることができる。帯電制御剤としては、特に制限はなく、下記の各材料が挙げられる。
【0165】
例えば、ニグロシン、炭素数2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報)、塩基性染料、例えばC.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Bas ic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など及びこれらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、ジブチル若しくはジオクチルなどのジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55−42752号公報、特公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう帯電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に使用される。
【0166】
帯電制御剤の含有量は、前記結着樹脂(樹脂粒子(B)中の樹脂分)の100質量部に対して、0.01質量部〜2質量部が好ましく、0.02質量部〜1質量部がより好ましい。含有量が、0.01質量部以上であると、帯電制御性が得られ、2質量部以下であると、トナーの帯電性が大きくなりすぎることがなく、帯電制御剤の効果を減退させることもなく、現像ローラとの静電的吸引力が増大してトナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くということもない。
【0167】
<<異形化剤>>
本発明によるトナーは、カラートナーの形状を異形化することを目的として、異形化剤を有してもよい。異形化剤としては、この目的が達成できるものであれば、目的に応じて適宜選択することができるが、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を含有することが好ましい。
本発明において異形化剤として用い得る層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性したものが望ましい。
また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属アニオンを導入することができる。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が望ましい。
【0168】
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物カチオン変性剤としては、有機物イオンでこのように変性し得るものであれば、特に制限はなく、第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩などが挙げられる。なかでも、第4級アルキルアンモニウム塩が望ましい。この第4級アルキルアンモニウムとしては、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0169】
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物アニオン変性剤としては、有機物イオンで上記のように変性し得るものであれば、特に制限はないが、さらに分岐、非分岐又は環状アルキル(C1〜C44)、アルケニル(C1〜C22)、アルコキシ(C8〜C32)、ヒドロキシアルキル(C2〜C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、又はリン酸塩が挙げられる。エチレンオキサイド骨格を持ったカルボン酸が望ましい。
【0170】
層状無機鉱物の少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物を含む前記油相(O1)及び(O2)が非ニュ−トニアン粘性を持ち、トナーを異形化することができる。このとき、トナー材料中の一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の含有量は、0.05質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0171】
また、一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を適宜選択することができ、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト及びこれらの混合物等が挙げられる。なかでも、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量とすることができることから、有機変性モンモリロナイト又はベントナイトが好ましい。
【0172】
一部を有機カチオンで変性した層状無機鉱物の市販品としては、Bentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone 27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイトが挙げられる。好ましいのは、クレイトンAF、クレイトンAPAが挙げられる。また一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としてはDHT−4A(協和化学工業社製)に下記一般式(2)で表される有機アニオンで変性させたものがより好ましい。下記一般式(2)は例えばハイテノール330T(第一工業製薬社製)が挙げられる。
(OROSOM・・・一般式(2)
【0173】
[一般式中、Rは炭素数13を有するアルキル基、Rは炭素数2から6を有するアルキレン基を表し、nは2から10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す]
【0174】
<<着色剤>>
本発明において、着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0175】
トナーの着色剤の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができるが、カラートナーであるのが好ましい。
【0176】
黒色用のものとしては、例えばファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
【0177】
マゼンタ用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、48:1、49、50、51、52、53、53:1、54、55、57、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、177、179、202、206、207、209、211;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35、などが挙げられる。
【0178】
シアン用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、60;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45又フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料、グリーン7、グリーン36、などが挙げられる。
【0179】
イエロー用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー0−16、1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、55、65、73、74、83、97、110、151、154、180;C.I.バットイエロー1、3、20、オレンジ36、などが挙げられる。
【0180】
トナー中における着色剤の含有量は、トナー質量に対して、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0181】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。このような樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。また、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステル系樹脂(b1)を用いてもよく、樹脂同士の相溶性が向上する点、及び植物度が向上する点で、好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0182】
マスターバッチは、高せん断力をかけて、樹脂と着色剤とを混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂との相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。フラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒と共に混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水及び有機溶媒を除去する方法である。混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
【0183】
<<離型剤>>
本発明によるトナーに用い得る離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、等が好適に挙げられる。このワックス類としては、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。
カルナウバワックスとしては、微結晶のものがよく、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散した時の粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。その理由は本発明のトナー結着樹脂に対してこれらのワックスは適度に微分散するため後述するようにオフセット防止性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なためである。これらワックス類は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0184】
その他の離型剤としては、固形シリコーンワックス、高級脂肪酸高級アルコール、モンタン系エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等、従来公知のいかなる離型剤をも混合して使用できる。
【0185】
離型剤のTgとしては、特に制限はないが、70〜90℃が好ましい。70℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、90℃超では低温での離型性が発現されず、耐コールドオフセット性の悪化、定着機への紙の巻付きなどが発生する。離型剤の使用量としては、特に制限はないが、トナー樹脂成分に対し、1質量%〜20質量%、好ましくは3質量%〜10質量%である。1質量%未満ではオフセット防止効果が不十分であり20質量%を超えると転写性、耐久性が低下する。
【0186】
<<無機微粒子>>
本発明によるトナーは、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として無機微粒子を有してもよい。
【0187】
無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。無機微粒子のトナーにおける含有量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。この範囲であると、トナーの流動性、現像性、帯電性が向上する。
【0188】
<<流動性向上剤>>
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが挙げられる。なかでも、シリカ及び酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが好ましい。
【0189】
<<クリーニング性向上剤>>
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。このポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好適である。
【0190】
<<磁性材料>>
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0191】
(現像剤)
本発明による現像剤は、上述の本発明によるトナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。本発明による現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で二成分現像剤が好ましい。
【0192】
<キャリア>
キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、この芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0193】
芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のもののなかから適宜選択することができる。例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている静電潜像担持体(感光体)への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0194】
芯材の粒径としては、平均粒径(重量平均粒径(D50))で、10〜200μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。平均粒径(重量平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、200μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0195】
芯材を被覆する樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂のなかから目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー(フッ化三重(多重)共重合体)、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、キャリアへのトナーフィルミング防止効果が高い点で、シリコーン樹脂が好ましい。
【0196】
樹脂層を構成するシリコーン樹脂としては、特に制限はなく、一般的に知られているシリコーン樹脂のなかから目的に応じて適宜選択することができる。例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂;アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等で変性したシリコーン樹脂、などが挙げられる。
【0197】
シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、ストレートシリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR271、KR255、KR152;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。
【0198】
変性シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学工業株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性);東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)、などが挙げられる。
【0199】
なお、シリコーン樹脂を単体で用いることも可能であるが、架橋反応する成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。
【0200】
芯材を被覆する樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、この導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0201】
芯材を被覆する樹脂層は、例えば、シリコーン樹脂等を有機溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、塗布溶液を芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、などが挙げられる。
【0202】
有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、などが挙げられる。
【0203】
樹脂層の焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0204】
樹脂層のキャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0205】
本発明による現像剤が二成分現像剤である場合には、二成分現像剤におけるキャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分系現像剤のトナーとキャリアとの好ましい混合割合は、一般にキャリア100質量部に対しトナー1〜10.0質量部である。
【0206】
(画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
本発明による画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0207】
本発明による画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0208】
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」、「像担持体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のもののなかから適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)、などが挙げられる。これらのなかでも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0209】
静電潜像の形成は、例えば静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0210】
帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。また、帯電器としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0211】
露光は、例えば、露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0212】
<現像工程及び現像手段>
現像工程は、静電潜像を、本発明のトナー又は現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。可視像の形成は、例えば、静電潜像を本発明のトナー乃至現像剤を用いて現像することにより行うことができ、現像手段により行うことができる。現像手段は、例えば、本発明のトナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、本発明のトナー乃至現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0213】
現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0214】
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0215】
<転写工程及び転写手段>
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、この可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体のなかから適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0216】
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0217】
<定着工程及び定着手段>
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、などが挙げられる。定着手段が、発熱体を具備する加熱体と、この加熱体と接触するフィルムと、このフィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着する手段であることが好ましい。加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。なお、本発明においては、目的に応じて、定着工程及び定着手段と共に或いはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0218】
<その他の工程及び手段>
<<除電工程及び除電手段>>
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器のなかから適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0219】
<<クリーニング工程及びクリーニング手段>>
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。クリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナのなかから適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0220】
<<リサイクル工程及びリサイクル手段>>
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0221】
<<制御工程及び制御手段>>
制御工程は、本発明による画像形成方法の各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0222】
本発明による画像形成装置により本発明による画像形成方法を実施する一の態様について、図1を参照しながら説明する。図1に示す画像形成装置(100)は、静電潜像担持体としての感光体ドラム(10)(以下「感光体(10)」という)と、帯電手段としての帯電ローラ(20)と、露光手段としての露光装置(30)と、現像手段としての現像装置(45)と、中間転写体(50)と、クリーニングブレードを有するクリーニング手段としてのクリーニング装置(60)と、除電手段としての除電ランプ(70)とを備える。
【0223】
中間転写体(50)は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ(51)によって、図1中の矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ(51)の一部は、中間転写体(50)へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体(50)には、その近傍に中間転写体用クリーニングブレードなどのクリーニング装置(90)が配置されており、また、転写紙などの記録媒体(95)に可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な転写手段としての転写ローラ(80)が対向して配置されている。中間転写体(50)の周囲には、この中間転写体(50)上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器(58)が、中間転写体(50)の回転方向において、感光体(10)と中間転写体(50)との接触部と、中間転写体(50)と記録媒体(95)との接触部との間に配置されている。
【0224】
現像装置(45)は、ブラック用現像ユニット(45K)、イエロー用現像ユニット(45Y)、マゼンタ用現像ユニット(45M)及びシアン用現像ユニット(45C)とから構成されている。なお、ブラック用現像ユニット(45K)は、現像剤収容部(42K)と現像剤供給ローラ(43K)と現像ローラ(44K)とを備えている。イエロー用現像ユニット(45Y)は、現像剤収容部(42Y)と現像剤供給ローラ(43Y)と現像ローラ(44Y)とを備えている。マゼンタ用現像ユニット(45M)は、現像剤収容部(42M)と現像剤供給ローラ(43M)と現像ローラ(44M)とを備えている。シアン用現像ユニット(45C)は、現像剤収容部(42C)と現像剤供給ローラ(43C)と現像ローラ(44C)とを備えている。
【0225】
図1に示す画像形成装置(100)において、例えば、帯電ローラ(20)が感光体(10)を一様に帯電させる。露光装置(30)が感光体(10)上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体(10)上に形成された静電潜像を、現像装置(45)からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。この可視像(トナー像)が、ローラ(51)から印加された電圧により中間転写体(50)上に転写(一次転写)され、更に転写紙などの記録媒体(95)上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙などの記録媒体(95)上には転写像が形成される。なお、感光体(10)上の残存トナーは、クリーニング装置(60)により除去され、感光体(10)における帯電は除電ランプ(70)により一旦、除去される。
【0226】
本発明による画像形成装置により本発明による画像形成方法を実施する他の態様について、図2を参照しながら説明する。図2に示すタンデム画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。このタンデム画像形成装置は、複写装置本体(150)と、給紙テーブル(200)と、スキャナ(300)と、原稿自動搬送装置(ADF)(400)とを備えている。尚、図3は図2に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【0227】
複写装置本体(150)には、無端ベルト状の中間転写体(50)が中央部に設けられている。そして、中間転写体(50)は、支持ローラ(14)、(15)及び(16)に張架され、図2中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ(15)の近傍には、中間転写体(50)上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置(17)が配置されている。支持ローラ(14)と支持ローラ(15)とにより張架された中間転写体(50)には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段(18)が対向して並置されたタンデム型現像器(120)が配置されている。タンデム型現像器(120)の近傍には、露光装置(21)が配置されている。
中間転写体(50)における、タンデム型現像器(120)が配置された側とは反対側には、二次転写装置(22)が配置されている。二次転写装置(22)においては、無端ベルトである二次転写ベルト(24)が一対のローラ(23)に張架されており、二次転写ベルト(24)上を搬送される記録媒体(転写紙)と中間転写体(50)とは互いに接触可能である。二次転写装置(22)の近傍には定着装置(25)が配置されている。定着装置(25)は、無端ベルトである定着ベルト(26)と、これに押圧されて配置された加圧ローラ(27)とを備えている。なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置(22)及び定着装置(25)の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために、転写紙を反転させるためのシート反転装置(28)が配置されている。
【0228】
次に、タンデム型現像器(120)を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)(400)の原稿台(130)上に原稿をセットするか、或いは原稿自動搬送装置(400)を開いてスキャナ(300)のコンタクトガラス(32)上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置(400)を閉じる。
【0229】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置(400)に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス(32)上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス(32)上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ(300)が駆動し、第1走行体(33)及び第2走行体(34)が走行する。このとき、第1走行体(33)により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体(34)におけるミラーで反射し、結像レンズ(35)を通して読取りセンサ(36)で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0230】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器(120)における各画像形成手段(18)(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器(120)における各画像形成手段(18)(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図3に示すように、それぞれ、感光体(10)(ブラック用感光体(10K)、イエロー用感光体(10Y)、マゼンタ用感光体(10M)、及びシアン用感光体(10C))と、感光体(10)を一様に帯電させる帯電装置(160)と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に感光体を露光(図3中、L)し、感光体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、この静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置(61)と、このトナー画像を中間転写体(50)上に転写させるための転写帯電器(62)と、クリーニング装置(63)と、除電器(64)とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラ(14)、(15)及び(16)により回転移動される中間転写体(50)上にそれぞれ、ブラック用感光体(10K)上に形成されたブラック画像、イエロー用感光体(10Y)上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用感光体(10M)上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用感光体(10C)上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。
そして、中間転写体(50)上にブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0231】
一方、給紙テーブル(200)においては、給紙ローラ(142)の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク(143)に多段に備える給紙カセット(144)の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ(145)で1枚ずつ分離して給紙路(146)に送出し、搬送ローラ(147)で搬送して複写装置本体(150)内の給紙路(148)に導き、レジストローラ(49)に突き当てて止める。或いは、給紙ローラ(142)を回転して手差しトレイ(54)上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ(145)で1枚ずつ分離して手差し給紙路(53)に入れ、同じくレジストローラ(49)に突き当てて止める。なお、レジストローラ(49)は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体(50)上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ(49)を回転させ、中間転写体(50)と二次転写装置(22)との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置(22)により合成カラー画像(カラー転写像)をシート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体(50)上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置(17)によりクリーニングされる。
【0232】
カラー画像が転写され形成されたシート(記録紙)は、二次転写装置(22)により搬送されて、定着装置(25)へと送出され、定着装置(25)において、熱と圧力とにより合成カラー画像(カラー転写像)がシート(記録紙)上に定着される。その後、シート(記録紙)は、切換爪(55)で切り換えて排出ローラ(56)により排出され、排出トレイ(57)上にスタックされ、或いは、切換爪55で切り換えてシート反転装置(28)により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ(56)により排出され、排出トレイ(57)上にスタックされる。
【0233】
<プロセスカートリッジ>
本発明で用いるプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、トナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、画像形成装置本体に着脱可能であり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
【0234】
現像手段としては、本発明の前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容された現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置に着脱可能に備えさせることができ、本発明で用いる画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが好ましい。
【0235】
プロセスカートリッジは、例えば、図4に示すように、静電潜像担持体(101)を内蔵し、帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(108)、クリーニング手段(107)を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図4中、符号(103)は露光手段による露光、符号(105)は記録媒体をそれぞれ示す。
【0236】
次に、図4に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、静電潜像担持体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(不図示)による露光(103)により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段(104)で現像され、得られた可視像は転写手段(108)により、記録媒体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の静電潜像担持体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例】
【0237】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0238】
[製造例1〜2]−第2の樹脂(b)の製造−
温度計、攪枠機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、下記表1のポリエステルジオール(b11)に示される原材料を120℃で20分間加熱溶融させた後、オクチル酸スズ2質量部を入れ、常圧で160℃3時間開環重合し、さらに常圧、130℃で1時間反応させた。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕粒子化しポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11−1)〜(b11−2)を得た。(b11−1)の数平均分子量Mnは、3,000、重量平均分子量Mwは、5,000であり、(b11−2)の数平均分子量Mnは、3,500、重量平均分子量Mwは、5,700であった。表1のポリエステルジオール(b12)に示される原材料を脱水縮合して得たポリエステルジオール(b12−1)〜(b12−2)と、先に得られたポリエステルジオール(b11−1)〜(b11−2)とをメチルエチルケトン中に溶解し、続いて伸長剤としてイソホロンジイソシアネート(IPDI)を加えて、50℃で6時間伸長反応を行い、残留ラクチドと溶媒を減圧留去して製造例1〜2の[樹脂(b−1)〜(b−2)]を得た。[樹脂(b−1)〜(b−2)]の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、SP値を表1に示した。
【0239】
【表1】

(表1中、数値は、質量部を示す。)
【0240】
[製造例3〜4]−樹脂(b−3)〜(b−4)−の製造
温度計、攪枠機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、下記表2のポリエステルジオール(b11)に示される原材料を120℃で20分間加熱溶融させた後、オクチル酸スズ2質量部を入れ、常圧で160℃10時間開環重合し、さらに常圧、130℃で1時間反応させた。その後、残留ラクチドを減圧留去して製造例3〜4の[樹脂(b−3)〜(b−4)]を得た。[樹脂(b−3)〜(b−4)]の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、SP値を表2に示した。
【0241】
【表2】

(表2中、数値は、質量部を示す。)
【0242】
[製造例5〜6]−樹脂(b−5)〜(b−6)−
下記表3に示される原材料を4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、オクチル酸スズ1質量部を入れ、190℃で3時間反応させた。その後、残留ラクチドとカプロラクトンを減圧下留去し、製造例5〜6の[樹脂(b−5)〜(b−6)]を得た。[樹脂(b−5)〜(b−6)]の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、SP値を表3に示した。
【0243】
【表3】

(表3中、数値は、質量部を示す。)
【0244】
[製造例7]−樹脂(b−7)の製造−
温度計、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、下記表4に示される原材料、及びジブチルスズオキシド2質量部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧下で5時間反応した後、反応槽中に無水トリメリット酸44質量部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、製造例7の[樹脂(b−7)]を得た。[樹脂(b−7)]の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、SP値を表4に示した。
【0245】
【表4】

(表4中、数値は、質量部を示す。)
【0246】
[製造例8]−ポリエステルプレポリマーの合成−
温度計、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器内に、下記成分を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた後、10〜15mmHgの減圧下で7時間反応させ、中間体ポリエステル樹脂を合成した。
【0247】
ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物 720質量部
ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物 90質量部
テレフタル酸 290質量部
無水トリメリット酸 25質量部
ジブチルスズオキシド 2質量部
【0248】
得られた中間体ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が2,500、重量平均分子量(Mw)が10,700、ピーク分子量が3,400、ガラス転移点(Tg)が57℃、酸価が0.4mgKOH/g、水酸基価49mgKOH/gであった。
【0249】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器内に、下記成分を入れ、100℃で8時間反応させ、[ポリエステルプレポリマー]を合成した。
【0250】
中間体ポリエステル樹脂 400質量部
イソホロンジイソシアネート 95質量部
酢酸エチル 580質量部
【0251】
得られたポリエステルプレポリマーは、遊離イソシアネートの含有量が1.42質量%であった。
【0252】
[製造例9]−ケチミン化合物の合成−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器内に、イソホロンジアミン30質量部、及びメチルエチルケトン70質量部を仕込み、50℃で5時間反応させ、ケチミン化合物を合成した。得られたケチミン化合物は、アミン価が423mgKOH/gであった。
【0253】
[製造例10]−マスターバッチの作製−
下記成分を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。ただし樹脂は、製造例1〜7で合成した[樹脂(b−1)〜(b−7)]をそれぞれ使用した。
【0254】
水 1,000質量部
カーボンブラック(Printex35、デグサ社製) 530質量部
(DBP吸油量:42mL/100g、pH:9.5)
樹脂 1,200質量部
【0255】
得られた混合物を、二本ロールを用いて150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マスターバッチを作製した。
【0256】
[製造例11〜20]−第1の樹脂(a)の製造−
テレフタル酸1,162質量部、イソフタル酸61.2質量部、エチレングリコール377質量部、ネオペンチルグリコール726質量部からなる混合物をオートクレープ中で、260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで二酸化ゲルマニウムを触媒として0.262部添加し、系の温度を30分で280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところでイソフタル酸36.8質量部、フタル酸24.9質量部、アジピン酸365質量部、無水トリメリット酸38質量部を添加し、255℃で30分撹拌し、シート状に払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画のポリエステル樹脂を[樹脂(a−1)]として得た。さらに同様の方法でポリエステル樹脂[樹脂(a−2)〜(a−10)]を得た。各樹脂の分析結果を表5に示す。
【0257】
【表5】

【0258】
[製造例21〜42](微粒子分散液(w)の製造)
ジャケット付きの2Lガラス容器に、樹脂(a)200部、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル35部、下記表6に示す部数のポリビニルアルコール(ユニチカ(株)「ユニチカポバール」050G)0.5重量%水溶液(以下、PVA−1)及び該ポリエステル樹脂中に含まれる全カルボキシル基量の1.2倍当量に相当するN,N−ジメチルエタノールアミン(以下、DMEA)を投入し、これを開放系で卓上型ホモディスパー(特殊機化工業(株)製,TKロボミックス)を用いて6,000rpmで撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ち、10分後にジャケットに熱水を通し、加熱した。そして容器内温度が68℃に達したところで撹拌を7,000rpmとし、容器内温度を68〜70℃に保って更に20分間撹拌し、乳白色の均一な水分散体を得た。そしてジャケット内に冷水を流して3500rpmで撹拌しながら室温まで冷却し、ステンレス製のフィルター(635メッシュ,平織)を用いて濾過したところ、フィルター上には樹脂粒子がほとんど残らなかった。得られた濾液[樹脂微粒子分散液(w−1)〜(w−22)]の分析結果を表6に示す。
【0259】
【表6】

(表6中、数値は、質量部を示す。)
【0260】
[製造例43〜64]−水系媒体の調製−
イオン交換水300質量部、製造例21〜142でそれぞれ製造した[微粒子分散液(w−1)〜(w−22)]それぞれ300質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を混合撹拌して均一に溶解させて、[水系媒体相(1)〜(22)]を調製した。なお、[水系媒体相(1)〜(22)]は、[微粒子分散液(w−1)〜(w−22)]から得たものにそれぞれ対応する。
【0261】
[製造例65〜71]−樹脂溶液の調製−
反応容器内に表7に示す部数で製造例1〜7でそれぞれ得た[樹脂(b−1)−(b−7)]、[ポリエステルプレポリマー]、及び酢酸エチル80質量部を加えて攪拌して、[樹脂溶液(1)〜(7)]を調製した。なお、[樹脂溶液(1)〜(7)]は、[樹脂(b−1)〜(b−7)]から得たものにそれぞれ対応する。
【0262】
【表7】

(表7中、数値は、質量部を示す。)
【0263】
[製造例72〜78]−油相の調製−
次に、製造例65〜71でそれぞれ得た樹脂溶液(1)〜(7)各400質量部に、カルナウバワックス(分子量1,800、酸価2.7mgKOH/g、針入度1.7mm(40℃))5質量部、及びマスターバッチ5質量部を仕込み、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒で、粒径が0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスし、[油相(1)〜(7)]を得た。ただし、油相(1)、(2)、(7)は更に、ケチミン化合物2.5質量部を加えて溶解させ油相を得た。なお、[油相(1)〜(7)]は、[樹脂溶液(1)〜(7)]から得たものにそれぞれ対応する。
【0264】
[製造例79]−トナー母体の調製−
次に、別の容器内に、製造例43〜64で得た[水系媒体相(1)〜(22)]各150質量部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmで攪拌しながら、下記表7で示したように製造例72〜78で得た[油相(1)〜(7)]100質量部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを得た。更に、攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、各乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら、30℃で10時間脱溶剤し、それぞれの分散スラリー1〜分散スラリー22を得た。
【実施例1】
【0265】
〔トナー母体粒子の作製〕
次に、前記分散スラリー1の100質量部を減圧濾過し、得られた濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%の水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、フッ素系第四級アンモニウム塩化合物フタージェントF−310(ネオス社製)を、フッ素系四級アンモニウム塩がトナーの固形分100質量部に対して0.1質量部相当になるよう5%メタノール溶液で添加し、10分間攪拌した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。循風乾燥機を用いて、得られた濾過ケーキを40℃で36時間乾燥し、目開きが75μmのメッシュで篩い、トナー母体粒子1を作製した。
【0266】
また、トナー母体1作製のための製造例と同様にして、トナー母体2〜22を作製した。これらを表8に示す。
【0267】
【表8】

【0268】
[製造例30]−キャリアの作製−
トルエン100質量部に、下記成分を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。
【0269】
シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン) 100質量部
γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5質量部
カーボンブラック 10質量部
【0270】
流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径が50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
【0271】
[トナー1の作製]
得られたトナー母体粒子1を100質量部と、外添剤としての疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて、周速30m/秒で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開きが35μmのメッシュで篩い、トナー1を作製した。
【実施例2】
【0272】
[トナー2の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー2を用いて得たトナー母体粒子2を用いた他は実施例1と同様にして、トナー2を作製した。
【実施例3】
【0273】
[トナー3の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー3を用いて得たトナー母体粒子3を用いた他は実施例1と同様にして、トナー3を作製した。
【実施例4】
【0274】
[トナー4の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー4を用いて得たトナー母体粒子4を用いた他は実施例1と同様にして、トナー4を作製した。
【実施例5】
【0275】
[トナー5の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー5を用いて得たトナー母体粒子5を用いた他は実施例1と同様にして、トナー5を作製した。
【実施例6】
【0276】
[トナー6の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー6を用いて得たトナー母体粒子6を用いた他は実施例1と同様にして、トナー6を作製した。
【実施例7】
【0277】
[トナー7の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー7を用いて得たトナー母体粒子7を用いた他は実施例1と同様にして、トナー7を作製した。
【実施例8】
【0278】
[トナー8の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー8を用いて得たトナー母体粒子8を用いた他は実施例1と同様にして、トナー8を作製した。
【実施例9】
【0279】
[トナー9の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー9を用いて得たトナー母体粒子9を用いた他は実施例1と同様にして、トナー9を作製した。
【実施例10】
【0280】
[トナー10の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー10を用いて得たトナー母体粒子10を用いた他は実施例1と同様にして、トナー10を作製した。
【実施例11】
【0281】
[トナー11の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー11を用いて得たトナー母体粒子11を用いた他は実施例1と同様にして、トナー11を作製した。
【実施例12】
【0282】
[トナー12の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー12を用いて得たトナー母体粒子12を用いた他は実施例1と同様にして、トナー12を作製した。
【実施例13】
【0283】
[トナー13の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー13を用いて得たトナー母体粒子13を用いた他は実施例1と同様にして、トナー13を作製した。
【実施例14】
【0284】
[トナー14の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー14を用いて得たトナー母体粒子14を用いた他は実施例1と同様にして、トナー14を作製した。
【実施例15】
【0285】
[トナー15の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー15を用いて得たトナー母体粒子15を用いた他は実施例1と同様にして、トナー15を作製した。
【実施例16】
【0286】
[トナー16の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー16を用いて得たトナー母体粒子16を用いた他は実施例1と同様にして、トナー16を作製した。
【実施例17】
【0287】
[トナー17の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー17を用いて得たトナー母体粒子17を用いた他は実施例1と同様にして、トナー17を作製した。
【実施例18】
【0288】
[トナー18の作製]
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー18を用いて得たトナー母体粒子18を用いた他は実施例1と同様にして、トナー18を作製した。
【0289】
〔比較例1;−トナー19の作製−〕
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー19を用いて得たトナー母体粒子19を用いた他は実施例1と同様にして、トナー19を作製した。
【0290】
〔比較例2;−トナー20の作製−〕
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー20を用いて得たトナー母体粒子20を用いた他は実施例1と同様にして、トナー20を作製した。
【0291】
〔比較例3;−トナー21の作製−〕
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー21を用いて得たトナー母体粒子21を用いた他は実施例1と同様にして、トナー21を作製した。
【0292】
〔比較例4;−トナー22の作製−〕
実施例1におけるトナー母体粒子1の代わりに、分散スラリー22を用いて得たトナー母体粒子22を用いた他は実施例1と同様にして、トナー22を作製した。
【実施例19】
【0293】
[現像剤1の作製]
トナー1を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤1を作製した。
【実施例20】
【0294】
[現像剤2の作製]
トナー2を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤2を作製した。
【実施例21】
【0295】
[現像剤3の作製]
トナー3を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤3を作製した。
【実施例22】
【0296】
[現像剤4の作製]
トナー4を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤4を作製した。
【実施例23】
【0297】
[現像剤5の作製]
トナー5を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤5を作製した。
【実施例24】
【0298】
[現像剤6の作製]
トナー6を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤6を作製した。
【実施例25】
【0299】
[現像剤7の作製]
トナー7を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤7を作製した。
【実施例26】
【0300】
[現像剤8の作製]
トナー8を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤8を作製した。
【実施例27】
【0301】
[現像剤9の作製]
トナー9を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤9を作製した。
【実施例28】
【0302】
[現像剤10の作製]
トナー10を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤10を作製した。
【実施例29】
【0303】
[現像剤11の作製]
トナー11を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤11を作製した。
【実施例30】
【0304】
[現像剤12の作製]
トナー12を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤12を作製した。
【実施例31】
【0305】
[現像剤13の作製]
トナー13を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤13を作製した。
【実施例32】
【0306】
[現像剤14の作製]
トナー14を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤14を作製した。
【実施例33】
【0307】
[現像剤15の作製]
トナー15を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤15を作製した。
【実施例34】
【0308】
[現像剤16の作製]
トナー16を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤16を作製した。
【実施例35】
【0309】
[現像剤17の作製]
トナー17を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤17を作製した。
【実施例36】
【0310】
[現像剤18の作製]
トナー18を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤18を作製した。
【0311】
[比較例5;−現像剤19の作製−]
トナー19を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤19を作製した。
【0312】
[比較例6;−現像剤20の作製−]
トナー20を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤20を作製した。
【0313】
[比較例7;−現像剤21の作製−]
トナー21を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤21を作製した。
【0314】
[比較例8;−現像剤22の作製−]
トナー22を5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、現像剤22を作製した。
【0315】
次に、得られた各現像剤を用いて、以下の評価方法に従って、平均粒径、定着性、耐熱保存性、画像濃度、経時帯電安定性、帯電環境変動を評価した。結果を下記表9に示す。
【0316】
<評価方法>
<<体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径並びに比(Dv/Dn)の測定>>
トナー(トナー母体粒子)の粒度分布は、コールターマルチサイザーを用いて行った。
即ち、測定装置としてはコールターマルチサイザーIII(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機株式会社製)及びパーソナルコンピューターを接続し、電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製した。測定法としては、この電解液としての水溶液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5mL加え、更に測定試料を2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分の分散処理を行った。更に、別のビーカーに電解水溶液100〜200mLを入れ、その中に前記サンプル分散液を所定の濃度になるように加え、前記コールターマルチサイザーIIIによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、50,000個の粒子の平均を測定することにより行った。
得られた体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)から両者の比(Dv/Dn)を求めた。
【0317】
<<定着性>>
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した電子写真方式の複写機(MF−200、株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、定着ベルトの温度を変化させて、普通紙及び厚紙の転写紙タイプ6200(株式会社リコー製)及び複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)に、トナーの付着量が0.85±0.1mg/cmのベタ画像を形成した。このとき、普通紙でホットオフセットの発生しない上限温度を定着上限温度とした。また、厚紙でベタ画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を定着下限温度とした。このようにして得た定着上限温度及び定着下限温度について、下記の評価基準に基づいて、評価した。
【0318】
〔定着上限温度の評価基準〕
A:定着上限温度が190℃以上
B:定着上限温度が180℃以上190℃未満
C:定着上限温度が170℃以上180℃未満
D:定着上限温度が170℃未満
〔定着下限温度の評価基準〕
A:定着下限温度が135℃未満
B:定着下限温度が135℃以上145℃未満
C:定着下限温度が145℃以上155℃未満
D:定着下限温度が155℃以上
【0319】
<<耐熱保存性(針入度)>>
50mLのガラス容器に各トナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した。このトナーを24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により針入度(mm)を測定し、下記基準に基づいて評価した。なお、針入度の値が大きいほど耐熱保存性が優れていることを示し、5mm未満の場合には、使用上問題が発生する可能性が高い。
【0320】
〔評価基準〕
A:針入度25mm以上
B:針入度15mm以上25mm未満
C:針入度5mm以上15mm未満
D:針入度5mm未満
【0321】
<<画像濃度>>
タンデム型カラー画像形成装置(imagio Neo 450、株式会社リコー製)を用いて、定着ローラの表面温度を160℃±2℃にして、複写紙TYPE 6000<70W>(株式会社リコー製)に、トナーの付着量が1.00±0.05mg/cmのベタ画像を形成した。得られたベタ画像の任意の6箇所の画像濃度を、分光計(938スペクトロデンシトメータ、X−Rite社製)を用いて測定し、画像濃度(平均値)を求め、得た画像濃度(平均値)について、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
A:画像濃度が2.2以上
B:画像濃度が2.0以上2.2未満
C:画像濃度が1.70以上2.0未満
D:画像濃度が1.70未満
【0322】
<<経時帯電安定性>>
市販のデジタルフルカラープリンター(リコー社製imagioNeo C455)改造機に現像剤をセットし、単色モードで50%画像面積の画像チャートにて300,000枚のランニング評価を行った。そして、このランニングを終えたキャリアの帯電低下量をもって判断した。ここでいう帯電量変化量とは、気温23℃、相対湿度50%の環境下(M/M環境)で30分間以上は開封系にて調湿し、初期のキャリア6.000gとトナー0.452gをステンレス製容器へ加えた後、密封し、YS−LD〔(株)ヤヨイ社製振とう機〕にて目盛150で5分間運転し、約1100回の振幅により摩擦帯電させたサンプルを、一般的なブローオフ法[東芝ケミカル(株)製:TB−200]にて測定した帯電量(Q1)から、ランニング後の現像剤中のトナーを前記ブローオフ装置にて除去し得たキャリアを、前記方法と同様の方法で測定した帯電量(Q2)を差し引いた量のことである(△Q=|Q1−Q2|)。
【0323】
〔評価基準〕
A:帯電量変化量が10μc/g未満
B:帯電量変化量が10μc/g以上15μc/g未満
C:帯電量変化量が15μc/g以上20μc/g未満
D:帯電量変化量が20μc/g以上
【0324】
<<帯電環境変動>>
得られた現像剤を気温23℃、相対湿度50%の環境下(M/M環境)にてボールミルで5分間攪拌した後に、現像剤1.0gを採取し、ブローオフ帯電量測定装置(京セラケミカル社製TB−200)を用い、1分間窒素ブローした後の測定値を帯電量として用いた。また、この測定を気温40℃、相対湿度90%の環境下(H/H環境)、及び気温10℃、相対湿度30%の環境下(L/L環境)の2つの条件にて各現像剤の帯電量を評価した。このようにして得た帯電量に基づいて下記式より環境変動率を算出し、算出した環境変動率について、下記の評価基準に基づいて、評価した。環境変動率が低いほど帯電性の安定な現像剤であると言うことができる。
【0325】
【数1】

【0326】
上記式(1)中、[L/L]はL/L環境での帯電量を示し、[H/H]はH/H環境での帯電量を示す。
【0327】
〔評価基準〕
A:環境変動率が40%未満
B:環境変動率が40%以上50%未満
C:環境変動率が50%以上60%未満
D:環境変動率が60%以上
【0328】
【表9】

【0329】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する樹脂(b)表面に、ポリエステル樹脂より構成される樹脂(a)の粒子を付着させ、樹脂(a)及び樹脂(b)のSP値差が0.1〜2.3であるトナーは、低温定着性と耐熱保存性を両立させると共に、粒径分布がシャープなトナーが得られ、画像濃度、経時帯電安定性、帯電環境変動が改善されることが確認された。一方、比較例1のように樹脂(a)及び樹脂(b)のSP値差が小さいトナーは、粒度分布が広くなり、耐熱保存性、画像濃度、経時帯電安定性、帯電環境変動が大きく悪化した。これは造粒時に樹脂(a)と(b)が相溶し、トナー表面が露出された状態であるためと推定される。比較例2,3のように樹脂(a)及び樹脂(b)のSP値差が大きいトナーは、粒度分布が広くなり、画像濃度、経時帯電安定性が悪化した。これは樹脂(a)と樹脂(b)が相溶しないので、現像ユニット内での長期撹拌によりシェルが剥がれ落ちたためと推定される。また、比較例4のような石油系樹脂を結着樹脂として用いたトナーはポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する樹脂を結着樹脂として用いたトナーのように低温定着性と耐熱保存性を両立することはできない。
【符号の説明】
【0330】
10 感光体
10K ブラック用感光体
10Y イエロー用感光体
10M マゼンタ用感光体
10C シアン用感光体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45 現像装置
45K ブラック用現像ユニット
45Y イエロー用現像ユニット
45M マゼンタ用現像ユニット
45C シアン用現像ユニット
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 コロナ帯電器
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
61 現像装置
62 転写帯電器
63 クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 記録媒体
100 画像形成装置
101 静電潜像担持体(感光体)
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
120 タンデム型現像器
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
160 帯電装置
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
L 露光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0331】
【特許文献1】特開平9−319144号公報
【特許文献2】特開2002−284881号公報
【特許文献3】特許第3640918号公報
【特許文献4】特許第2909873号公報
【特許文献5】特開2010−122667号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)と、を有する樹脂粒子(C)を含むトナーであって、前記樹脂(a)が、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されており、前記樹脂(a)がポリエステル樹脂であって、前記樹脂(b)は、非結晶性のポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するものであり、前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)のSP値差が0.1〜2.3であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)のSP値差が0.3〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記樹脂(a)の体積平均粒径Dv(a)が、35nm〜400nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記樹脂(a)のガラス転移点Tg(a)が55〜100℃であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記樹脂(a)が少なくとも多塩基酸、多価アルコールより構成されるポリエステルユニットを有する樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記樹脂(b)が、光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を有し、下記式(1)で示される樹脂(b)の光学純度X(%)が、80%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|・・・計算式(1)
〔ただし、X(L体)は、光学活性モノマー換算での前記樹脂(b)に含まれるL体比率(モル%)を表し、X(D体)は、光学活性モノマー換算での前記樹脂(b)に含まれるD体比率(モル%)を表す。〕」
【請求項7】
前記樹脂(b)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が、炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸が共重合した骨格であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
前記樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
前記樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)と前記ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)とを、伸長剤とともに反応させて得られる直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)を含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のトナー。
【請求項10】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステルジオール(b11)と前記ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との質量比が、31:69〜90:10であることを特徴とする請求項9に記載のトナー。
【請求項11】
前記樹脂(b)が、直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)と、前駆体(b0)が反応して得られる樹脂(b2)とを含有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のトナー。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項13】
更にキャリアを含む請求項12に記載の現像剤。
【請求項14】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を請求項1乃至11のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、を少なくとも有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を請求項1乃至11のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、を少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−168219(P2012−168219A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26788(P2011−26788)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】