説明

トナーおよびそれを用いる二成分現像剤、ならびに画像形成装置

【課題】 粒子径が小さいにも拘らず、遊離した離型剤の量が少なく、定着性、耐オフセット性および保存安定性に優れ、トナーの飛散などによる画像のかぶりを引起すことがなく、高品質で定着強度の高い画像を実現することのできるトナーおよびそれを用いる二成分現像剤、ならびに画像形成装置を提供する。
【解決手段】 画像形成装置100の現像ユニット8において潜像の現像に用いられるトナーの作製に際し、トナー粒子の体積平均粒子径を5.04μm以上7.00μm以下に調整し、粒子径が4.00μm未満であるトナー粒子の含有率を15.0個数%以下に調整し、粒子径が4.00μm以上5.04μm未満であるトナー粒子の含有率を18.0個数%以上に調整し、さらにトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径を0.10μm以上0.30μm以下に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式または磁気記録方式などの画像形成装置において静電潜像または磁気潜像などの潜像の現像に用いられるトナーおよびそれを用いる二成分現像剤、ならびに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどとして多用されている電子写真方式の画像形成装置では、電子写真感光体の表面を一様に帯電させ、該表面に光を照射して画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーと呼ばれる微粒子で現像して可視画像であるトナー像を形成し、形成されたトナー像を転写紙などの被転写体に転写して定着させることによって、被転写体上に画像を形成する。
【0003】
最近では、画像情報のデジタル化、画像処理技術などの周辺技術の発展に伴って画像形成装置と他の情報機器との複合化が進み、画像形成装置の多機能化が進んでいる。たとえば複写機能、印刷機能、ファクシミリ機能などの複数の機能を備える画像形成装置が実用化されており、使用者の多様な要望への対応が進んでいる。また電子写真方式の画像形成装置はカラー化も進展しており、広く普及しつつある。
【0004】
これに伴い、電子写真方式によって形成される電子写真画像の高画質化に対する要求が高まっている。電子写真画像の高画質化の手段としては、静電潜像の現像に用いられるトナーの小粒径化が代表的な手段として挙げられる。たとえば、図面原稿の再現性、印刷小文字の再現性、銀塩写真および網点印刷物などの多階調原稿の再現性、複写(コピー)した原稿をさらに複写するジェネレーションコピーの再現性、濃淡の差の小さいローコントラスト原稿の再現性などの複写機に要求される画像品質特性を満足するためには、トナーの小粒径化が有効な手段となる。特に、デジタル化された画像情報を用いて画像を形成するデジタルの画像形成装置では、微小なドットを組合せることによって画像を形成するので、各ドットを忠実に再現して解像度を向上させ、高品質の画像を得るために、トナーの小粒径化が必要となる。
【0005】
トナーは、結着樹脂と呼ばれる結着性を有する樹脂をマトリックスとして、結着樹脂中に着色剤などのトナーを構成する各成分が分散されて成る。トナーとしては、従来では平均粒子径10〜12μm程度のトナーが一般的であったけれども、前述のような画像品質の向上に対する要求の高まりに伴い、現在では平均粒子径8〜9μmのトナーが標準的になっている。さらに高精細な画像の再現が要求される分野では平均粒子径6〜7μmのトナーが用いられ始めている。
【0006】
また、トナーの粒子径分布についても種々の検討がなされている。たとえば、トナーの粒子径分布を調整することによる高画質化が検討されている(たとえば、特許文献1および2参照)。特許文献1では、高品質の画像を得るために、体積平均粒径4〜10μmのトナーにおいて、粒径5μm以下のトナー粒子の含有率を17〜60個数%にすることが提案されている。また特許文献2には、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤において、トナーの重量平均粒径を3〜7μmとし、さらに粒径4μm以下のトナー粒子の含有率を10〜70個数%にすることによって、高品質の画像が得られることが開示されている。
【0007】
特許文献2に開示のトナーには、粒子径4μm以下のいわゆる微粉が大量に含まれる。また特許文献1に開示のトナーのように、体積平均粒子径4〜10μmのトナーにおいて、粒径5μm以下のトナー粒子の含有率を17〜60個数%にするためには、粒子径4μm以下の微粉を多量に含有させることが必要である。このように粒子径4μm以下の微粉の割合が大きくなると、トナーの定着性が低下するという問題が生じる。
【0008】
たとえば、トナー像を転写紙上に転写し、加熱手段を備えるロール(以下、加熱ローラと称する)で加熱して定着させる場合、転写紙の凹部に転写されたトナーは加熱ローラとの接触が不充分になる。すなわち、転写紙の凹部に転写されたトナーは、加熱ローラとの接触による熱伝導をほとんど受けず、加熱ローラからの輻射熱または加熱ローラによって加熱された転写紙からの熱伝導による熱エネルギによって定着されることになる。このため、転写紙の凹部に転写されたトナーは、転写紙の凸部に転写されたトナーよりも定着強度が著しく低下する。特に、粒子径4μm以下の微粉は転写紙の凹部内に入り込みやすいので、トナーに含まれる微粉の割合が大きいほど定着性が低下することになる。
【0009】
トナーの定着性を向上させるための技術としては、トナーに含まれる結着樹脂の分子量および分子量分布などを調整することが提案されている。たとえば、加熱温度が低くても被転写体に充分に定着されるように、結着樹脂を低分子量化する試みがなされている。しかしながら、結着樹脂を極端に低分子量化すると、トナー自体が脆くなり、現像装置内部での撹拌などによって粉砕され、トナーの粒子径分布の変化、およびキャリアまたは現像スリーブへのトナーの融着などが生じやすくなる。このため、長期間にわたって画像形成を繰返すうちに、トナーの帯電量が変化し、画質の劣化、トナーの飛散による両面複写時の汚れおよび原稿自動送り装置内部における汚れが生じるという問題がある。また結着樹脂の分子量を小さくすると、一般にガラス転移点(Tg)が低くなり、トナーの保存安定性が低下しやすいので、夏期の保存、画像形成装置内部の温度上昇などによって、トナーが塊状に固まるブロッキングと呼ばれる現象が発生し、感光体表面にトナーを安定して供給することができないという問題も生じる。
【0010】
したがって、トナーの定着性の向上を実現するためには、結着樹脂に対して、低分子量化しても機械的強度が低下せず、またガラス転移点(Tg)が低下しないことが求められる。このような要求を満足する樹脂としては、ポリエステル樹脂が知られている。ポリエステル樹脂を用いることによって、トナーの機械的強度および保存安定性を低下させることなく、定着性を向上させることができる。しかしながら、ポリエステル樹脂を用いると、その定着性の高さに起因して、定着時にトナー像の一部が加熱ローラに付着して取去られる、いわゆるオフセット現象が発生しやすくなる。
【0011】
オフセット現象の発生を抑え、トナーの耐オフセット性を向上させる方法としては、トナーに離型剤を添加し、加熱ローラに対する離型性を付与する方法が知られている。離型剤としては、ポリエステル樹脂との相溶性が良く、またトナーの定着性の向上にも貢献するカルナウバワックスなどの低融点ワックスを用いることが検討されている。しかしながら、低融点ワックスを含有するトナーは、保存安定性が悪く、ブロッキングが発生しやすいという欠点を有する。トナーのブロッキングを防ぐ方法としては、外添剤を多量に添加することが提案されているけれども、長期間にわたる使用において、外添剤のトナー粒子からの脱離およびトナー粒子表面への埋まりこみが発生するおそれがあり、実使用上問題である。
【0012】
そこで、カルナウバワックスなどの低融点ワックスよりも高い融点を有するポリオレフィンワックスを離型剤に用いることが検討されている。しかしながら、ポリオレフィンワックスは、ポリエステル樹脂などの結着樹脂との相溶性に乏しいので、トナーを製造する際の溶融混練工程および粉砕工程などにおいて結着樹脂から遊離しやすい。特に、前述のように平均粒子径が7μm程度以下の小粒径トナーを作製する場合には、粉砕工程において離型剤などの各成分が分散された結着樹脂が微粉砕されるので、平均粒子径がたとえば7μmを超える大粒径トナーを作製する場合に比べ、遊離したワックスの生成確率が高くなる。このように粉砕時に遊離したワックス成分は、粒子径4μm以下の微粉に含まれる。したがって、前述の特許文献1および2に開示の技術のように、粒径4μm以下の微粉の割合を多くすると、遊離したワックスが多量に含まれることになり、この遊離ワックスに起因して画像にかぶりなどの画像欠陥が生じるという問題がある。
【0013】
また、粒径4μm以下の微粉の割合を多くした場合、流動性の観点からトナーに過剰に添加されるシリカなどの外添剤および微粉に含まれる前述の遊離ワックス、ならびにトナー粒子間のファンデルワールス力の影響などによって、トナーが感光体表面に皮膜状に付着するフィルミングと呼ばれる現象が発生するという問題もある。
【0014】
この問題を解決するために、別の先行技術では、特許文献1および2に開示の技術とは逆に、粒径5μm以下のトナー粒子の割合を1〜15個数%と非常に少なくすることが提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、このように粒径5μm以下のトナー粒子の割合を少なくすると、トナーの比表面積が減少するので、離型剤の溶出効率が低下し、加熱ローラの温度が高い領域および低い領域のいずれにおいてもオフセット現象が発生しやすくなる。
【0015】
また特許文献3には、離型剤の融点を65〜90℃に選択することによって、トナー保存時のブロッキングおよび加熱ローラの温度が低い領域でのオフセット現象の発生を防止できることが開示されているけれども、トナー中における離型剤の分散状態については考慮されていない。このため、離型剤の分散状態によってはトナーのブロッキングおよびオフセット現象が発生する。特に、離型剤としてポリオレフィンワックスを用いる場合には、その分散状態が重要になる。トナー中における離型剤の分散状態は、トナー中に分散された状態における離型剤の粒子径、すなわちトナー中における離型剤の分散粒径で表される。分散粒径が大きいほど、トナー中における分散性が悪いことになる。
【0016】
ポリオレフィンワックスは、前述のようにポリエステル樹脂などの結着樹脂との相溶性に乏しく、結着樹脂中に均一に分散させることが困難であるので、トナー中における分散粒径がたとえば1μm以上と大きくなりやすい。このように離型剤の分散粒径が大きく、分散性が悪いと、着色剤などのトナーを構成する他の成分の分散が妨げられるので、着色力の低下などのトナー性能の低下が生じる。また現像装置内部での撹拌によって離型剤が結着樹脂から遊離しやすくなるので、粒子径4μm以下の微粉に遊離ワックスが多く含有されることになり、保存安定性が低下するという問題も生じる。さらに離型剤の分散粒径が大きく、トナー中に離型剤が均一に分散されていないと、離型効果が充分に得られず、加熱ローラの高温域および低温域のいずれにおいてもオフセット現象が発生しやすくなる。一方、離型剤の分散粒径がたとえば0.05μm程度と極めて小さく、分散性が良好になりすぎても、離型効果が充分に発揮されず、耐オフセット性が著しく低下する。
【0017】
離型剤を含有するトナーの粒子径分布に関しては、離型効果を効率的に得るとともに、流動性の低下および離型剤の過剰な溶出によるフィルミングの発生を抑えるために、粒径5.08μm以下のトナー粒子の含有率を16〜50個数%にすることが提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、特許文献4に開示の技術においても、離型剤の分散粒径については考慮されていないので、離型剤の分散粒径によってはトナーのブロッキングおよびオフセット現象が発生するという問題がある。
【0018】
一方、前述のようにトナーを小粒径化すると、トナーの比表面積が増加するので、小粒径化されたトナーをキャリアとともに二成分現像剤として用いる場合には、キャリアの粒子径が問題となる。従来からキャリアとしては平均粒子径が90μm程度のものが用いられているけれども、このキャリアとともに前述の小粒径化されたトナーを用いると、トナーの比表面積に対するキャリアの比表面積、すなわちキャリアのトナーカバレージが増大する。このため、キャリアのトナーに対する帯電能力が不足し、トナーに付与される帯電量が安定しないので、トナーの飛散が発生し、画像にかぶりが生じるという問題がある。
【0019】
この問題を解決する方法としては、キャリアの比表面積を増加させるために、粒径50μm程度の小粒径キャリアを使用することが検討されている。しかしながら、キャリアを小粒径化することによって現像剤としての流動性が悪化し、現像装置内の現像剤の量を検知するセンサの出力の不安定化および現像剤の撹拌不良による画像のかぶりなどが発生しやすくなる。また、前述の特許文献2に開示の技術では、キャリアおよび現像剤の流動度、ならびにキャリアの流動度と現像剤の流動度との比を特定の範囲に選択しているけれども、画像形成装置において二成分現像剤を実使用する際には、消費された分のトナーを現像装置内に補充してキャリアと混合することになるので、現像剤の流動度を前述の範囲に調整することは困難である。
【0020】
以上のように、従来技術では、離型剤を含有するトナーを小粒径化した際の定着性、耐オフセット性および保存安定性の低下、ならびにトナーの飛散などによる画像のかぶりを充分に抑えることはできない。
【0021】
【特許文献1】特開平2−877号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平7−77825号公報(第2頁)
【特許文献3】特開2000−330327号公報(第2,7頁)
【特許文献4】特開2003−84478号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、粒子径が小さいにも拘らず、遊離した離型剤の量が少なく、定着性、耐オフセット性および保存安定性に優れ、トナーの飛散などによる画像のかぶりを引起すことがなく、高品質で定着強度の高い画像を実現することのできるトナーおよびそれを用いる二成分現像剤、ならびに画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、着色剤、離型剤および結着樹脂を含有するトナーであって、
トナー粒子は、
体積平均粒子径が5.04μm以上、7.00μm以下であり、
粒子径が4.00μm未満であるトナー粒子の含有率が15.0個数%以下であり、
粒子径が4.00μm以上、5.04μm未満であるトナー粒子の含有率が18.0個数%以上であり、
トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.10μm以上、0.30μm以下であることを特徴とするトナーである。
【0024】
また本発明は、結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする。
また本発明は、離型剤が、結着樹脂100重量部に対して1重量部以上、10重量部以下の割合で含有されることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、離型剤の融点が110℃以上、160℃以下であることを特徴とする。
また本発明は、離型剤がポリオレフィンワックスであることを特徴とする。
【0026】
また本発明は、前記本発明のトナーと、
体積平均粒子径が90μm以上、150μm以下であるキャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤である。
【0027】
また本発明は、像担持体と、
像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記本発明のトナーによって、像担持体に形成された潜像を現像する現像手段と、
現像によって形成されたトナー像を像担持体の表面から被転写体に転写する転写手段と、
転写されたトナー像を被転写体に定着させる定着手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0028】
また本発明は、転写手段は、像担持体と被転写体とを接触させてトナー像の転写を行う接触転写方式の転写手段であることを特徴とする。
【0029】
また本発明は、定着手段は、加熱部材を有し、加熱部材をトナー像に接触させることによってトナー像を加熱し、被転写体に定着させる接触加熱方式の定着手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、トナー粒子は、体積平均粒子径が5.04μm以上7.00μm以下であり、粒子径が4.00μm未満であるトナー粒子の含有率が15.0個数%以下であり、粒子径が4.00μm以上5.04μm未満であるトナー粒子の含有率が18.0個数%以上であるという特定の粒子径分布を有し、トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.10μm以上0.30μm以下である。ここで、トナー粒子とは、後述するトナーの製造工程において、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を含む混合物から造粒される粒子のことであり、トナーとは、トナー粒子に流動化剤などの外添剤が外添されない場合にはトナー粒子そのもののことであり、トナー粒子に流動化剤などの外添剤が外添される場合にはトナー粒子と外添剤とを含む組成物のことである。
【0031】
このようにトナー粒子の粒子径分布およびトナー粒子中における離型剤の分散状態を調整することによって、トナー粒子の体積平均粒子径が7.00μm以下と小さいにも拘らず、遊離した離型剤の量が少なく、また離型剤および離型剤以外の着色剤などの各成分が均一に分散されたトナーが実現される。したがって、本発明のトナーでは、結着樹脂および離型剤を適宜選択することによって、定着性、耐オフセット性および保存安定性に優れ、たとえば体積平均粒子径が90μm程度のキャリアと共に用いられても飛散せず、トナーの飛散などによる画像のかぶりを引起すことがなく、また感光体などの像担持体へのフィルミングを起こすことがなく、高品質で定着強度の高い画像を長期間にわたって安定して形成することのできるトナーを実現することができる。また生産性に優れ、歩留良く製造することのできるトナーが実現される。
【0032】
また本発明によれば、結着樹脂は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。結着樹脂にポリエステル樹脂を用いることによって、定着性に特に優れるトナーが実現される。
【0033】
また本発明によれば、離型剤は、結着樹脂100重量部に対して1重量部以上、10重量部以下の割合で含有されることが好ましい。離型剤の含有量を前記範囲に選択することによって、トナーに充分な耐オフセット性を付与するとともに、保存安定性を向上させることができる。
【0034】
また本発明によれば、離型剤の融点は、110℃以上160℃以下であることが好ましい。融点が前記範囲内にある離型剤を用いることによって、保存安定性が一層向上される。
【0035】
また本発明によれば、離型剤は、ポリオレフィンワックスであることが好ましい。離型剤としてポリオレフィンワックスを用いることによって、保存安定性に特に優れるトナーが実現される。
【0036】
また本発明によれば、二成分現像剤には前記本発明のトナーが含まれる。本発明のトナーは、トナー粒子が前述の特定の粒子径分布を有するので、キャリアとして体積平均粒子径が90μm以上150μm以下のものを用いても充分に帯電することができ、キャリアの帯電能力の不足による飛散が起こらない。また、キャリアとして体積平均粒子径が90μm以上150μm以下のものを用いることによって、現像剤としての流動性を良好にすることができるので、撹拌不良による画像のかぶりを防ぐことができる。したがって、前記本発明のトナーと体積平均粒子径90μm以上150μm以下のキャリアとを用いることによって、トナーの帯電安定性および現像剤の流動性に優れ、トナーの飛散などによるかぶりのない高品質の画像を形成することのできる二成分現像剤を得ることができる。
【0037】
また本発明によれば、画像形成装置の現像手段による潜像の現像には、前記本発明のトナーが用いられる。本発明のトナーは、前述のように定着性、耐オフセット性および保存安定性に優れ、トナーの飛散などによる画像のかぶりを引起すことがなく、また感光体などの像担持体へのフィルミングを起こすことがないので、高品質で定着強度の高い画像を長期間にわたって安定して形成することのできる画像形成装置が実現される。
【0038】
また本発明によれば、転写手段には、接触転写方式の転写手段が用いられる。トナー像の形成に使用される本発明のトナーは、トナー粒子の体積平均粒子径が5.04〜7.00μmと小さいので、トナー像の被転写体への転写時にトナー像の一部が転写されずに像担持体に残り、画像のトナーが付着すべき部分にトナーが付着されずに白い部分となる白抜けと呼ばれる現象が発生するおそれがあるけれども、前述のように接触転写方式の転写手段を用いることによって、トナー像の被転写体への転写効率を向上させ、白抜けなどの画像欠陥の発生を防ぐことができる。
【0039】
また本発明によれば、定着手段には、加熱部材をトナー像に接触させることによってトナー像を加熱し、被転写体に定着させる接触加熱方式の定着手段、たとえば、所定の温度に加熱される加熱ローラを備え、加熱ローラをトナー像に接触させてトナー像を加熱し、被転写材に定着させる熱ローラ定着方式の定着手段が用いられる。トナー像の形成に使用される本発明のトナーは、粒子径4.00μm未満のトナー粒子の含有率が15.0個数%以下と低いので、たとえば被転写体が紙(以下、転写紙と称する)である場合に、転写紙の凹部内に入り込むトナーは少ない。したがって、凹所に転写されたトナーであっても加熱部材と充分に接触し、加熱部材からの熱伝導による熱エネルギによって定着されるので、被転写体に転写されたトナー像を被転写体の全面にわたって優れた定着強度で定着させることができる。また本発明のトナーは耐オフセット性に優れるので、前述のように接触加熱方式の定着手段が用いられる場合であっても、オフセット現象の発生は抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明のトナーは、着色剤、離型剤および結着樹脂を必須成分として含有し、
トナー粒子が、
(a)体積平均粒子径が5.04μm以上、7.00μm以下であり、
(b)粒子径Rが4.00μm未満(R<4.00μm)であるトナー粒子の含有率が15.0個数%以下であり、
(c)粒子径Rが4.00μm以上、5.04μm未満(4.00μm≦R<5.04μm)であるトナー粒子の含有率が18.0個数%以上であるという特定の粒子径分布を有し、
トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径が、0.10μm以上、0.30μm以下であることを特徴とする。
【0041】
このように、トナー粒子の粒子径分布およびトナー粒子中における離型剤の分散状態を調整することによって、トナー粒子の体積平均粒子径が7.00μm以下と小さいにも拘らず、遊離した離型剤の量が少なく、また離型剤および離型剤以外の着色剤などの各成分が均一に分散されたトナーが実現される。
【0042】
したがって、本発明のトナーでは、結着樹脂および離型剤を適宜選択することによって、たとえば結着樹脂としてポリエステル樹脂を用い、離型剤としてポリオレフィンワックスを用いることによって、定着性、耐オフセット性および保存安定性に優れ、たとえば体積平均粒子径が90μm程度のキャリアと共に用いられても、トナーの飛散などによる画像のかぶりを引起すことがなく、また感光体などの像担持体へのフィルミングを起こすことがなく、高品質で定着強度の高い画像を長期間にわたって安定して形成することのできるトナーが実現される。また生産性に優れ、歩留良く製造することのできるトナーが実現される。
【0043】
以下に本発明のトナーにおける設計上の各範囲限定理由について説明する。
〔トナー粒子の粒子径分布〕
(a)トナー粒子の体積平均粒子径
トナー粒子の体積平均粒子径を5.04〜7.00μmの範囲に選択することによって、解像度が高く、かつかぶりのない高品質の画像を形成することのできるトナーが実現される。トナー粒子の体積平均粒子径が5.04μm未満では、粒子径Rが4.00μm未満のトナー粒子の含有率が15.0個数%を超えやすく、トナーの飛散が発生しやすくなり、また遊離した離型剤の量が増加しやすいので、画像にかぶりが発生するおそれがある。一方、トナー粒子の体積平均粒子径が7.00μmを超えると、粒子径Rが4.00μm≦R<5.04μmを満足するトナー粒子の含有率が18.0個数%未満になりやすく、画像の解像度が低下するおそれがある。
【0044】
(b)R<4.00μmのトナー粒子の含有率
粒子径Rが4.00μm未満のトナー粒子の含有率を15個数%以下にすることによって、遊離した離型剤の量を抑え、トナーの像担持体へのフィルミングを防ぐことができる。また本発明のトナーの定着性を良好なものとすることができる。またトナーの比表面積を極端に増大させることなく、トナー粒子の体積平均粒子径を5.04〜7.00μmと小さくすることができるので、キャリアのトナーカバレージの増大を防ぐことができる。したがって、本発明のトナーは、二成分現像剤として用いられる際に、たとえば体積平均粒子径が90μm程度以上である比較的大きいキャリアと共に用いられても充分に帯電されるので、キャリアとして体積平均粒子径が90μm未満であるキャリアを用いた際の流動性の低下を抑え、現像剤の撹拌不良による画像のかぶりの発生を防ぐことができる。
【0045】
これに対し、粒子径Rが4.00μm未満のトナー粒子の含有率が15.0個数%を超えると、流動性の低下およびトナーの飛散が発生しやすく、また遊離した離型剤の量が増加しやすいので、画像にかぶりが発生するおそれがある。また遊離した離型剤の増加によって、トナーの耐オフセット性の低下およびトナーの像担持体へのフィルミングが発生しやすくなる。
【0046】
(c)4.00μm≦R<5.04μmのトナー粒子の含有率
粒子径Rが4.00μm以上、5.04μm未満であるトナー粒子の含有率を18.0個数%以上にすることによって、トナーの定着性、耐オフセット性および生産性の低下、像担持体へのフィルミング、ならびにキャリアのトナーカバレージの増大を引起すことなく、トナー粒子の体積平均粒子径を5.04〜7.00μmとしてトナーの小粒径化を達成することができる。
【0047】
これに対し、粒子径Rが4.00μm以上、5.04μm未満であるトナー粒子の含有率を18.0個数%未満にすることは、所望の粒子径分布のトナー粒子を得るための粉砕分級工程における回収率の低下を招き、歩留が低下するので好ましくない。
【0048】
〔離型剤の平均分散粒径〕
トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、トナー粒子全量中における離型剤の分散状態を示す指標であり、その値が小さいほど、離型剤がトナー粒子全量中に均一に分散されていることを示す。
【0049】
トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径を0.10μm以上にすることによって、離型剤の離型効果が充分に発揮され、耐オフセット性に優れるトナーが実現される。これに対し、トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径が0.10μm未満では、離型剤の離型効果が充分に発揮されず、耐オフセット性が著しく低下するおそれがある。また定着性が低下するおそれもある。
【0050】
また、トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径を0.30μm以下にすることによって、粒子径4.00μm未満のトナー粒子に含まれる遊離した離型剤の量の増加を抑え、トナーの保存安定性および定着性の低下を防ぐことができる。またトナー粒子全量中に離型剤を均一に分散させるとともに、着色剤などの他の成分をトナー粒子全量中に均一に分散させることができるので、生産性を低下させることなく、均質で優れた性能を有するトナーを安定して作製することができる。一方、離型剤の平均分散粒径が0.30μmを超え、離型剤がトナー粒子全量中に均一に分散されていないと、離型効果が充分に得られず、耐オフセット性が低下するおそれがある。また粒子径4.00μm未満のトナー粒子に含まれる遊離した離型剤の量が増加し、トナーの保存安定性および定着性が低下するおそれもある。また着色剤などの他の成分の分散が妨げられ、着色力の低下などが生じる可能性もある。
【0051】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが好適に用いられる。結着樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
【0052】
本発明では、前述の結着樹脂の中でも、ポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。結着樹脂にポリエステル樹脂を用いることによって、定着性に特に優れるトナーが実現される。結着樹脂にポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂は、その好ましい特性を損なわない範囲内で、前述の塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などの1種または2種以上と併用することができる。
【0053】
ポリエステル樹脂としては、公知のものを使用でき、その中でも、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合させることによって得られるポリエステル樹脂が好ましい。ここで、多価アルコール成分とは、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物のことであり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。また、多価カルボン酸成分とは、カルボキシル基を2個以上有する化合物である多価カルボン酸およびその誘導体のことである。
【0054】
多価アルコール成分としては、ポリエステル樹脂の製造に常用されるものを使用でき、多価アルコール成分のうち、2価のアルコール成分としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、たとえば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。なお、ここで例示するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の名称において、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンなどのアルキレン基の直後に記載する括弧内の数値は、対応するアルキレン基のビスフェノールA1モルに対する平均付加モル数である。
【0055】
また多価アルコール成分のうち、3価以上のアルコール成分としては、たとえば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
【0056】
多価カルボン酸成分としても、ポリエステル樹脂の製造に常用されるものを使用でき、多価カルボン酸成分のうち、2価のカルボン酸成分としては、たとえば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸およびイソオクチルコハク酸、ならびにこれらの酸の無水物または低級アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール)とのエステルなどが挙げられる。
【0057】
また多価カルボン酸成分のうち、3価以上のカルボン酸成分としては、たとえば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(慣用名:トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸,1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸およびエンポール三量体酸、ならびにこれらの酸の無水物または低級アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール)とのエステルなどが挙げられる。
【0058】
ポリエステル樹脂は、たとえば、多価アルコール成分および多価カルボン酸成分を含む有機溶媒中にて、触媒の存在下に、脱水縮合反応またはエステル変換反応を行うことによって合成できる。有機溶媒としては、多価アルコール成分および多価カルボン酸成分を溶解または分散することができ、かつ脱水縮合反応およびエステル変換反応に不活性なものを適宜選択して用いればよい。触媒としては、ポリエステル樹脂の合成に常用されるエステル化触媒およびエステル変換触媒を使用でき、たとえば、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸鉛、三酸化アンチモンなどが挙げられる。触媒は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。反応温度は特に制限されないけれども、好ましくは150〜300℃である。
【0059】
また、ポリエステル樹脂としては、ポリエステル樹脂の原料モノマーと、ビニル樹脂の原料モノマーと、これらの両方の原料モノマーと反応するモノマーとの混合物を用い、同一容器中でポリエステル樹脂を製造するための縮重合反応とビニル樹脂を製造するためのラジカル重合反応とを並行して行わせることによって得られる樹脂(以下、このような樹脂をビニル系ポリエステル樹脂と称する)も好適に使用される。
【0060】
ビニル系ポリエステル樹脂の製造に用いられるポリエステル樹脂の原料モノマーとしては、前述の多価アルコール成分および多価カルボン酸成分が挙げられる。
【0061】
ビニル系ポリエステル樹脂の製造に用いられるビニル樹脂の原料モノマーとしては、ビニル樹脂の製造に常用されるものを使用でき、たとえば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどのエチレン性不飽和酸単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルニトリル類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類などのエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
【0062】
ビニル系ポリエステル樹脂の製造に用いられる、ポリエステル樹脂およびビニル樹脂の両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとしては、縮重合反応およびラジカル重合反応の両反応に使用し得るモノマー、すなわちポリエステル樹脂の原料モノマーである多価アルコール成分と縮重合反応し得るカルボキシ基または多価カルボン酸成分と縮重合反応し得るヒドロキシル基と、ビニル樹脂の原料モノマーとラジカル重合反応し得るビニル基とを有するモノマーを用いることができ、たとえば、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0063】
ポリエステル樹脂は、日本工業規格(JIS)K7121に規定される補外ガラス転移終了温度(Teg)(以下、単にガラス転移点(Tg)と称する)が、30℃以上、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは45℃以上、70℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上、70℃以下である。ガラス転移点(Tg)が30℃以上であるポリエステル樹脂を用いることによって、本発明のトナーの耐熱保存性、すなわち画像形成装置内部などの温度上昇を伴う環境下における保存安定性を向上させることができる。またガラス転移点(Tg)が80℃以下であるポリエステル樹脂を用いることによって、本発明のトナーの定着性を向上させ、定着手段の加熱部材による加熱温度が低い場合であっても充分な定着強度で定着させることのできる低温定着性に優れるトナーを実現することができるので、本発明のトナーの定着に必要な加熱温度(定着手段の加熱部材による加熱温度)を低減することができる。
【0064】
ポリエステル樹脂は、JIS K0070に規定される酸価が15〜30mgKOH/gであることが好ましい。酸価を前記範囲に調整したポリエステル樹脂を用いることによって、温度および湿度などの環境の変化による本発明トナーの特性の変動、特に帯電特性の変動を抑え、環境安定性を向上させることができるので、画像へのかぶりなどの発生を一層抑制することができる。
【0065】
ポリエステル樹脂は、JIS K0070に規定される水酸基価が10〜50mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価を前記範囲に調整したポリエステル樹脂を用いることによって、本発明のトナーの環境安定性をさらに向上させることができる。
【0066】
ポリエステル樹脂は、GPC測定法による重量平均分子量(Mw)が、5000以上、30000以下であることが好ましく、より好ましくは7000以上、20000以下である。重量平均分子量が5000未満であると、ポリエステル樹脂が脆くなりすぎ、製造時にトナー粒子の粒子径分布を前述の特定の粒子径分布に調整することが困難になるおそれがある。重量平均分子量が30000を超えると、本発明のトナーの定着性が低下するおそれがある。
【0067】
なお、ポリエステル樹脂の各種物性は、たとえば、原料モノマーである多価アルコール成分および多価カルボン酸成分の種類、配合比、反応温度、反応時間、触媒の種類などを適宜選択することによって、所望の範囲に設定することができる。
【0068】
本発明のトナーは、白黒画像の形成に用いられる黒色トナーまたはカラー画像の形成に用いられるカラートナーとして使用できる。本発明のトナーの色は、着色剤の色を適宜選択することによって調整することができる。本発明のトナーに含有される着色剤としては、この分野で常用される黒色または有彩色の着色剤を使用することができる。着色剤には、顔料および染料のいずれを用いてもよく、また磁性粉を用いてもよい。
【0069】
黒色着色剤としては、たとえば、アセチレンブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラックなどが挙げられ、これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0070】
有彩色着色剤のうち、黄色着色剤としては、たとえば、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタン黄、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ピグメントイエロー、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー、キノリンイエローレーキ、アンスラピリミジンイエローなどが挙げられ、特に好ましいものとして、カラーインデックス(Color Index;略称:C.I.)ナンバーで分類されるC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー12などが挙げられる。橙色着色剤としては、たとえば、パーマネントオレンジ、バルカンファストオレンジ、ベンジジンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジなどが挙げられる。
【0071】
褐色着色剤としては、たとえば、酸化鉄、アンバー、パーマネントブラウンなどが挙げられる。赤色着色剤としては、たとえば、ベンガラ、アンチモン末、パーマネントレッド、ファイヤーレッド、ブリリアントカーミン、ライトファスレッドトーナー、パーマネントカーミン、ピラゾロンレッド、ボルドー、ヘリオボルドー、ローダミンレーキ、チオインジゴレッド、チオインジゴマルーンなどが挙げられ、特に好ましいものとして、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントレッド109、C.I.ベイシックレッド12、C.I.ベイシックレッド1、C.I.ベイシックレッド3bなどが挙げられる。
【0072】
紫色着色剤としては、たとえば、コバルト紫、ファストバイオレット、ジオキサジンバイオレットなどが挙げられる。青色着色剤としては、たとえば、コバルトブルー、セルリアンブルー、無金属フタロシアニンブルーなどのフタロシアニンブルー、インダンスレンブルー、インジゴなどが挙げられ、特に好ましいものとして、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、銅フタロシアニンのフタロシアニン骨格にカルボキシベンズアミドメチル基(−CH−NH−CO−C−COOH)が2つまたは3つ置換した化合物のバリウム(Ba)塩などのフタロシアニン顔料が好ましい。
【0073】
緑色着色剤としては、クロムグリーン、コバルトグリーン、グリーンゴールド、フタロシアニングリーン、ポリクロムブロム銅フタロシアニンなどが挙げられる。
着色剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
【0074】
着色剤の本発明トナーにおける含有量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、染料または顔料を使用する場合には、本発明のトナー全量の2〜15重量%であり、磁性粉を使用する場合には、本発明のトナー全量の20〜70重量%である。
【0075】
本発明のトナーにおいて、離型剤としては、保存安定性の観点から、融点が110℃以上、160℃以下であるものが好適に用いられる。融点が前記範囲内にある離型剤としては、たとえば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックスなどのポリオレフィンワックスなどが挙げられる。これらのポリオレフィンワックスを用いることによって、保存安定性に特に優れるトナーが実現される。
離型剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
【0076】
離型剤の使用量は、結着樹脂100重量部に対して1重量部以上、10重量部以下の割合であることが好ましい。離型剤の使用量を前記範囲に調整することによって、トナーに充分な耐オフセット性を付与するとともに、保存安定性を向上させることができる。離型剤の使用量が1重量部未満では、離型剤の離型効果が充分に発揮されず、本発明トナーの耐オフセット性が低下するおそれがある。また離型剤の使用量が10重量部を超えると、本発明トナーの保存安定性が低下するおそれがある。
【0077】
本発明のトナーは、その好ましい特性を損なわない範囲内で、必須成分である前述の結着樹脂、着色剤および離型剤のほかに、荷電制御剤、流動化剤などの各種添加剤を1種または2種以上含んでもよい。
【0078】
荷電制御剤としては、公知のものを使用でき、たとえば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩化合物、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸金属塩、スルホン酸基含有ポリマー、含フッソ系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマーなどが挙げられる。荷電制御剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。荷電制御剤の本発明トナーにおける含有量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、本発明のトナー全量の0.1〜5重量%である。
【0079】
流動化剤は、本発明のトナーの流動性を向上させることを目的として添加される。流動化剤は、トナー粒子形成後にトナー粒子に外添されることが好ましい。本発明では、このようにトナー粒子の形成後にトナー粒子に外添される添加剤を外添剤と称する。流動化剤などの外添剤は、トナー粒子の表面に付着させてもよいし、その一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしてもよい。流動化剤としては、公知のものを使用でき、たとえば、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末などが挙げられる。流動化剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
【0080】
本発明のトナーは、乾式トナーであり、混練粉砕法、懸濁法、乳化凝集法、液中乾燥法などの公知の方法に従って製造できる。たとえば、混練粉砕法を用いる場合には、以下のようにしてトナー粒子を造粒することができる。まず、着色剤、離型剤および結着樹脂、ならびに必要に応じて前述の荷電制御剤などの各種添加剤を、ヘンシェルミキサなどの混合機で乾式混合した後、得られた混合物をエクストルーダなどの混練機で溶融混練する。得られた混練物を冷却した後、ジェットミル、スピードミルなどの粉砕機で粉砕してトナー粒子を造粒する。このようにして造粒されたトナー粒子または懸濁法、乳化凝集法、液中乾燥法などによって造粒されたトナー粒子を風力分級機などによって分級し、前述の所望の粒子径分布になるように調整する。トナー粒子に前述の流動化剤を外添しない場合には、以上のようにして本発明のトナーを得ることができる。
【0081】
トナー粒子に前述の流動化剤を外添する場合には、トナー粒子を分級して所望の粒子径分布に調整した後に、ヘンシェルミキサなどの粉体混合機、ハイブリダイザなどの表面改質機などを用いて流動化剤と混合することによって、本発明のトナーを得ることができる。
【0082】
トナー粒子における離型剤の平均分散粒径は、たとえば混練粉砕法を用いて本発明のトナーを製造する場合には、溶融混練条件を適宜選択することによって調整することができる。たとえば、エクストルーダを用いて溶融混練を行う場合には、シリンダ設定温度を80〜120℃、好ましくは90〜110℃に設定し、バレル回転数を毎分100〜500回転(100〜500rpm)、好ましくは毎分200〜400回転(200〜400rpm)に設定し、原料(混合物)供給速度を10〜30kg/時間、好ましくは15〜25kg/時間に設定することによって、トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径を前述の所望の値になるように調整することができる。
【0083】
本発明のトナーは、記録材料として、電子写真方式、静電記録方式または磁気記録方式などによる画像形成において静電潜像または磁気潜像などの潜像の現像に使用することができ、特に静電潜像の現像に好適に用いられる。たとえば、電子写真方式による画像形成では、電子写真感光体(以下、単に感光体とも称する)の表面を一様に帯電させ、該表面に画像情報に基づいて露光を施して静電潜像を形成した後、感光体表面に帯電処理された本発明のトナーを供給することによって静電潜像を現像してトナー像を形成し、このトナー像を加圧などの方法によって紙、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムなどの被転写体に転写し、たとえば加熱されたローラをトナー像に接触させることによってトナー像を加熱し、被転写材に定着させる熱ローラ定着法などの公知の定着法で被転写体に定着させることによって、被転写体上に画像が形成される。
【0084】
本発明のトナーを用いて潜像を現像する際には、本発明のトナーを単独で一成分現像剤として用いてもよく、またキャリアと混合して二成分現像剤として用いてもよい。二成分現像剤として用いられる場合、本発明のトナーは、体積平均粒子径が90μm以上、150μm以下のキャリアと共に使用されることが好ましい。以下、本発明のトナーと、体積平均粒子径が90μm以上、150μm以下のキャリアとを含む本発明の二成分現像剤について説明する。
【0085】
本発明の二成分現像剤では、キャリアとして体積平均粒子径が90μm以上150μm以下のものを用いるので、現像剤としての流動性を良好にすることができ、撹拌不良による画像のかぶりを防ぐことができる。また、本発明の二成分現像剤に含まれる本発明のトナーは、トナー粒子が前述の特定の粒子径分布を有し、体積平均粒子径が90μm以上150μm以下のキャリアによって充分に帯電することができるので、キャリアの帯電能力の不足によるトナーの飛散は起こらない。したがって、本発明のトナーと体積平均粒子径90μm以上150μm以下のキャリアとを組合せることによって、トナーの帯電安定性および現像剤の流動性に優れ、トナーの飛散などによるかぶりのない高品質の画像を形成することのできる二成分現像剤が実現される。
【0086】
本発明の二成分現像剤において、本発明のトナーと共に使用されるキャリアとしては、体積平均粒子径が前記範囲内にあるものであれば特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイトなどの粒子が挙げられる。また、これらの粒子の表面をアクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂で被覆したものを用いることもできる。
【0087】
次に、本発明の画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、前述の本発明のトナーを用いて潜像を現像することを特徴とする。図1は、本発明の画像形成装置の実施の一形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置正面図である。本実施の形態として例示する画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である。
【0088】
画像形成装置100は、画像形成装置100の外部に設けられ、画像形成装置100に接続される外部機器、たとえば、パーソナルコンピュータなどの画像処理装置から入力される画像データ(画像情報)、または後述する図2に示す画像読取装置55で読取られて入力される画像情報を、被転写体である記録材に画像として記録出力するものである。
【0089】
画像形成装置100は、画像形成部1と、記録材供給部2と、画像定着部3と、制御部4とを含んで構成される。
【0090】
画像形成部1は、像担持体である感光体ドラム5と、感光体ドラム5の周面に対向するように設けられる帯電手段6、露光ユニット7、現像手段である現像ユニット8、転写手段9、クリーニングユニット10および除電手段11とを含む。帯電手段6および露光ユニット7は、潜像形成手段を構成する。
【0091】
感光体ドラム5は、図示しない、円筒状または円柱状の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される光導電層とを含む。
【0092】
帯電手段6は、帯電ローラ、帯電チャージャなどの接触式または非接触式の帯電器によって構成され、感光体ドラム5の周面を所定の極性および電位に均一に帯電させる。
【0093】
露光ユニット7は、半導体レーザなどを含むレーザユニットを含んで構成され、制御部4から伝達される画像情報に基づいて、帯電手段6によって帯電された状態にある感光体ドラム5の周面を露光し、該周面に静電潜像を書き込む。
【0094】
現像ユニット8は、本発明のトナーが収容されるトナー補給容器13を含んで構成され、露光ユニット7によって感光体ドラム5の周面に書き込まれた静電潜像に、トナー補給容器13から供給される本発明のトナーを供給し、静電潜像を現像する。これによって、感光体ドラム5周面にトナー像が形成される。
【0095】
転写手段9は、転写ローラ12と、図示しない電圧印加手段とを含んで構成され、記録材の感光体ドラム5との当接面の反対側の表面から転写ローラ12を感光体ドラム5に対して押圧し、感光体ドラム5と記録材とを圧接した状態で転写ローラ12に電圧印加手段から電圧を印加して記録材をトナーと逆の極性に帯電させることによって、感光体ドラム5の周面上に形成されたトナー像を、記録材に転写する接触転写方式の転写手段である。転写手段9は、以上の構成に限定されず、たとえば、転写ローラ12に代えて、ベルト状に形成される転写ベルトを備える構成であってもよい。なお、記録材は、露光ユニット7による露光に同期して、記録材供給手段2によって転写手段9に供給される。
【0096】
クリーニングユニット10は、弾性材料からなるクリーニングブレードなどを含んで構成され、トナー像が記録材に転写された後に感光体ドラム5の周面に残留するトナーを除去し、清掃する。
【0097】
除電手段11は、除電ランプなどによって構成され、清掃後の感光体ドラム5の周面の電荷を除去する。
【0098】
画像形成部1では、感光体ドラム5の周面が、帯電手段6によって均一に帯電され、これに露光ユニット7から露光が行われ、静電潜像が書き込まれる。この静電潜像は、現像ユニット8から供給される現像剤により顕像化され、感光体ドラム5周面にトナー像が形成される。このトナー像は、転写手段9によって記録材に転写される。転写後、感光体ドラム5は、クリーニングユニット10による残留トナーの除去および除電手段11による電荷除去を受け、清浄化される。この一連の操作が繰り返し実行されることにより、複数の画像を形成することができる。
【0099】
記録材供給手段2は、画像形成装置100の下部に設けられ、記録材収容トレイ20と、ピックアップローラ21と、レジストローラ22とを含んで構成される。記録材収容トレイ20は、普通紙、カラーコピー用紙、OHP(Over Head Projector)用フィルムなどの記録材を収容するトレイである。記録材収容トレイ20への記録材の補給は、画像形成装置100の正面側(操作側)に、記録材収容トレイ20を引き出して行われる。ピックアップローラ21は、記録材収容トレイ20内の記録材を1枚ずつ分離してレジストローラ22に送給する。レジストローラ22は、画像形成部1における露光ユニット7の感光体ドラム5周面への露光に同期して、記録材を感光体ドラム5と転写手段9との間に順次送給する。記録材供給手段2によれば、記録材収容トレイ20に収容される記録材は、ピックアップローラ21およびレジストローラ22を介して、画像形成部1に供給される。
【0100】
画像定着部3は、定着手段である定着装置30と、搬送ローラ31と、切換えゲート32と、反転ローラ33と、積載トレイ34とを含んで構成される。定着装置30は、加熱部材である加熱ローラ35と、加熱ローラ35に当接して設けられる加圧部材である加圧ローラ36とを含む。加熱ローラ35は、加熱手段を備え、所定の温度に加熱される。本実施の形態では、加熱ローラ35は、記録材のトナー像が転写された面に接触することができるように設けられる。定着装置30は、以上の構成に限定されず、加熱ローラ35および加圧ローラ36に代えて、ベルト状の加熱部材および加圧部材を備える構成であってもよい。
【0101】
定着装置30は、熱圧着方式の定着手段であり、画像形成部1の転写手段9によりトナー像が転写された記録材を順次受取り、加熱ローラ35と加圧ローラ36との当接部を通過させ、加熱ローラ35および加圧ローラ36によって加熱および加圧してトナー像を記録材に定着させる。記録材は、加熱ローラ35および加圧ローラ36に挟持され、加熱ローラ35および加圧ローラ36の回転によって搬送される。本実施の形態では、定着装置30は、熱ローラ定着方式の定着手段であり、加熱ローラ35をトナー像に接触させることによってトナー像を加熱して記録材に定着させる。定着装置30の動作によって、記録材上に画像が形成(記録)される。
【0102】
搬送ローラ31は、定着装置30にて画像が形成された記録材を切換えゲート32に送給する。切換えゲート32は、画像記録済み記録材の送給経路を切換える。切換えゲート32を介して、画像記録済み記録材は、反転ローラ33または図示しない中継搬送装置もしくは記録材再供給搬送装置のいずれかに搬送される。なお、中継搬送装置および記録材再供給搬送装置については後述する。反転ローラ33は、記録材の排出トレイが積載トレイ34に設定される場合は、画像記録済み記録材を積載トレイ34に排出する。
【0103】
一方、両面画像形成または後処理が指定される場合には、反転ローラ33は、画像記録済み記録材を挟持した状態で、該記録材の一部を積載トレイ34に向けて排出した後逆回転し、該記録材を切換えゲート32から図示しない中継搬送装置に搬送する。このとき、切換えゲート32は、実線の状態から破線の状態に切換えられる。積載トレイ34は、画像形成装置100の上方に臨むトレイであって、画像形成装置100に含まれ、画像記録済み記録材を画像形成装置100の外部に排出し、貯留するためのトレイである。
【0104】
画像定着部3によれば、定着装置30によりトナー像が定着され、画像が記録された記録材は、搬送ローラ31および切換えゲート32を介して反転ローラ33に搬送され、設定に応じて積載トレイ34に排出されるかまたは再び切換えゲート32を介して図示しない中継搬送装置もしくは記録材再供給搬送装置に反転搬送される。
【0105】
制御部4は、画像形成装置100内部の、露光ユニット7の上下空間部に設けられ、図示しない、画像形成プロセスを制御する回路基板、外部機器からの画像データを受け入れるインターフェイス基板および電源装置を含んで構成される。電源装置は、回路基板およびインターフェイス基板だけでなく、画像形成部1、記録材供給部2および画像定着部3における各装置にも電力を供給する。
【0106】
なお、画像形成装置100の下面および側面には、搬送路37,38,39が設けられる。搬送路37,38,39は、その一端が外方に露出するように設けられ、画像形成装置100に外部装置を接続する際に、記録材を画像形成装置100の内部または外部に搬送するために利用される。
【0107】
画像形成装置100によれば、制御部4に入力される画像情報に基づいて、感光体ドラム5の周面に静電潜像が書き込まれ、この静電潜像が現像されて記録材に転写され、さらに定着されて、積載トレイ34に排出されるかまたは再度の画像形成工程に供される。
【0108】
本実施の形態の画像形成装置100では、現像ユニット8において、本発明のトナーが静電潜像の現像に用いられる。本発明のトナーは、トナー粒子が前述の特定の粒子径分布を有し、かつトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径が前記特定の範囲内にあるので、定着性、耐オフセット性および保存安定性に優れ、トナーの飛散などによる画像のかぶりを引起すことがなく、また感光体ドラム5へのフィルミングを起こすことがない。したがって、本実施の形態の画像形成装置100は、高品質で定着強度の高い画像を長期間にわたって安定して形成することができる。また、本実施の形態のように定着手段として接触加熱方式の1種である熱ローラ定着方式の定着装置30を用いると、加熱ローラ35にトナー像の一部が付着して取去られるオフセット現象が発生するおそれがあるけれども、本発明のトナーは耐オフセット性に優れるので、本実施の形態の画像形成装置100ではオフセット現象の発生を抑えることができる。
【0109】
ただし、本発明のトナーは、トナー粒子の体積平均粒子径が5.04〜7.00μmと小さいので、トナー像の記録材への転写時にトナー像の一部が転写されずに感光体ドラム5に残り、画像に白抜けが発生するおそれがある。しかしながら、本実施の形態では、転写手段として、接触転写方式の転写手段9が用いられるので、トナー像の記録材への転写効率を向上させ、白抜けなどの画像欠陥の発生を防ぐことができる。
【0110】
また、たとえば記録材が紙(転写紙)である場合には、転写手段9による転写時に、トナーが転写紙の凹部内に多量に入り込み、定着装置30による定着時に充分に定着されないおそれがある。しかしながら、本発明のトナーは、粒子径4.00μm未満のトナー粒子の含有率が15.0個数%以下と低いので、転写紙の凹部内に入り込むトナーは少なく、凹所に転写されたトナー像であっても加熱ローラ35と充分に接触し、加熱ローラ35からの熱伝導による熱エネルギによって定着される。したがって、本実施の形態では、転写紙に転写されたトナー像を転写紙の全面にわたって優れた定着強度で定着させることができる。
【0111】
以上に述べたように、本実施の形態の画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置であるけれども、本発明の画像形成装置は、これに限定されるものではなく、本発明のトナーを用いて潜像の現像を行うものであれば、他の異なる方式の画像形成装置であってもよい。たとえば、本発明の画像形成装置を静電記録方式の画像形成装置として構成する場合には、像担持体として誘電体を用い、潜像形成手段として、たとえばイオン発生器とイオン流制御部とを含む記録ヘッドを用い、画像情報に基づいて誘電体にイオンを照射することによって静電潜像を形成させる構成とする。また、本発明の画像形成装置を磁気記録方式の画像形成装置として構成する場合には、像担持体として、磁性体または基体上に磁性層が設けられたものを用い、潜像形成手段として、像担持体に磁界を加えて像担持体の磁化を変化させる磁気記録ヘッドまたは像担持体に熱を加えて像担持体の磁化を変化させる熱磁気記録ヘッドなどを用い、画像情報に基づいて像担持体の磁化を変化させることによって磁気潜像を形成させる構成とする。なお、磁気記録方式の画像形成装置の場合には、本発明のトナーとして、磁性粉などを添加することによって磁性が付与されたものを用いる。
【0112】
また、定着装置30の加熱ローラ35は、記録材のトナー像が転写された面の反対側の表面に接触することができるように設けられてもよい。この場合には、定着装置30は、加熱ローラ35を記録材のトナー像が転写された面の反対側の表面に接触させて記録材を加熱し、この加熱された記録材からの熱伝導による熱エネルギによってトナー像を加熱して記録材に定着させる。前述のように潜像の現像に用いられる本発明のトナーは耐オフセット性に優れるので、加熱ローラ35を記録材のトナー像が転写された面の反対側の表面に接触することができるように設ける場合にも、トナー像が接触する加圧ローラ36へのトナー像の付着を抑制し、オフセット現象の発生を抑えることができる。
【0113】
図2は、画像形成装置100の周囲に、第1記録材供給装置50、第2記録材供給装置51、記録材再供給搬送装置52、中継搬送装置53、後処理装置54および画像読取装置55が配置されて成る画像形成システム200の構成を簡略化して示す配置正面図である。画像形成装置100には、図2に示すように外部装置が接続されてもよい。
【0114】
記録材再供給搬送装置52は、画像形成装置100の一側面に近接して設けられ、3つの送給路61,62,63を含んで構成される。送給路61は、一方が、画像形成装置100に対向する側面上部において、画像形成装置100側面の搬送路39に接続され、他方が中継搬送装置53の側面に設けられる後述する送給路64に接続される。送給路62は、送給路61から枝分れしたものであり、送給路63と合流した後、画像形成装置100に対向する側面下部において、画像形成装置100側面の搬送路38に接続される。送給路63は、第2記録材供給装置51に対向する側面下部において、第2記録材供給装置51の側面上部に設けられる後述する送給路60に接続される。
【0115】
記録材再供給搬送装置52によれば、画像形成装置100の画像定着部3において、反転ローラ33により反転搬送される記録材を、送給路61を介して中継搬送装置53に送給するかまたは送給路61,62を介して再度画像形成装置100に送給する。中継搬送装置53への送給は、後処理を行う場合である。画像形成装置100への再度の送給は、記録材の両面に画像形成を行う場合である。また、記録材再供給搬送装置52は、送給路62,63を介して、第2記録材供給装置51に収容される記録材を画像形成装置100に送給する。
【0116】
第1記録材供給装置50は、画像形成装置100および記録材再供給搬送装置52の下方に設けられ、3つの記録材収容トレイ56a,56b,56cと、各記録材収容トレイ56a,56b,56cに接続される記録材送給路57とを含んで構成される。3つの記録材収容トレイ56a,56b,56cは同一サイズまたは異なるサイズの記録材を収容する。記録材収容トレイ56a,56b,56cに記録材を補給する場合または記録材収容トレイ56a,56b,56cに収容されている記録材を交換する場合には、記録材収容トレイ56a,56b,56cを、記録材供給装置50本体の正面側方向に引き出して行う。なお、本実施の形態では、第1記録材供給装置50には3つの記録材収容トレイ56a,56b,56cが設けられるけれども、1または2もしくは4以上の記録材収容トレイが設けられてもよい。
【0117】
記録材送給路57は、第1記録材供給装置50の上面において、画像形成装置100下面の搬送路37に接続され、記録材収容トレイ56a,56b,56cから送給される記録材を画像形成装置100に供給する。第1記録材供給装置50は、使用者によって指定された記録材を収容する記録材収容トレイ56a,56b,56cのいずれかを選択的に動作させるとともに、該記録材収容トレイ56a,56b,56cに収容された記録材を、記録材送給路57を介して、画像形成装置100に送給する。また、第1記録材供給装置50は、画像形成装置100を載置するデスク機能を有するユニットでもあり、画像形成装置100に着脱自在に構成される。第1記録材供給装置50によれば、記録材は、記録材送給路57を介して、画像形成装置100の搬送路37に受け渡され、画像形成部1に至る。
【0118】
第2記録材供給装置51は、記録材再供給搬送装置52の一側面および第1記録材供給装置50の一側面に近接し、かつ記録材再供給搬送装置52の上下方向下方側に設けられる。第2記録材供給装置51は、記録材収容トレイ58と、記録材収容トレイ58の内部に設けられる記録材供給手段59と、第2記録材供給装置51の側面上部に設けられる送給路60とを含んで構成される。
【0119】
記録材収容トレイ58は、画像形成装置100に設けられる記録材収容トレイ20および第1記録材供給装置50に設けられる記録材収容トレイ56a,56b,56cよりも大量の記録材を収容できる。記録材は、記録材供給手段59の上に載置される。記録材供給手段59は、図示しない駆動手段およびセンサによって、その上に載置される記録材の最上部が搬送路60の位置に来るように調整する。送給路60は、記録材再供給搬送装置52の側面下部に設けられる送給路63に接続され、さらに該送給路63は画像形成装置100の側面下部に設けられる搬送路38に接続される。第2記録材供給装置51によれば、記録材収容トレイ58に収容される記録材は、送給路60、送給路63および搬送路38を介して、画像形成部1に分離送給される。
【0120】
中継搬送装置53は、記録材再供給搬送装置52の一側面に近接し、かつ記録材再供給搬送装置52の上下方向上方側に設けられる。中継搬送装置53は、一端が記録材再供給搬送装置52に装着され、他の一端が後処理装置54の後述する受け取り搬送部65に装着され、搬送部65に設けられる回転支点66を中心にして回転可能に支持される。また、中継搬送装置53の内部には、送給路64が設けられ、送給路64は、一端が記録材再供給装置52の送給路61に接続され、他の一端が後処理装置54内部の送給路68に接続される。
【0121】
中継搬送装置53は、画像形成装置100から記録材再供給搬送装置52を介して供給される画像形成済み記録材を、後処理装置54に送給する装置である。なお、中継搬送装置53は、画像形成装置100と後処理装置54とを連結する連結部材(第1位置決め部材)に設けられる回転支点を中心に回転可能に設けられてもよい。
【0122】
後処理装置54は、中継搬送装置53の一側面および第2記録材供給装置51の一側面に近接して設けられ、記録材再供給搬送装置52および中継搬送装置53を介して、画像形成装置100に接続される。後処理装置54は、受け取り搬送部65と、受け取り搬送部65に設けられる回転支点66と、後処理部67と、受け取り搬送部65および後処理部67を貫通するように設けられる送給路68と、第1の記録材排出部69と、第2の記録材排出部70とを含んで構成される。
【0123】
受け取り搬送部65は、中継搬送装置53から供給される画像記録済み記録材を、送給路68を介して、後処理部67に送給する。
【0124】
後処理部67には、図示しないけれども、所定枚数の記録材をホッチキスで留めるステープル機能を有する後処理手段、記録材を所定サイズ(JIS P0138に規定されるA4判、B4判など)に紙折りする機能を有する後処理手段、ファイリング用の穴をあけるパンチ機能を有する後処理手段、数ビン〜数十ビンの範囲で排出位置を変更してソートまたは仕分けを行うソータ機能を有する後処理手段などの1または2以上を設けることができる。
【0125】
第1の記録材排出部69には、画像記録済み記録材が、後処理部67のソータ機能によって複数部に仕分けされて、またはソータ機能を利用せず、仕分けされることなく、排出される。第2の記録材排出部70には、画像記録済み記録材が、ステープル(ホッチキス留め)、パンチ(ファイル用穴開け)などの処理を施されて排出される。画像記録済み記録材が第1の記録材排出部69および第2の記録材排出部70のどちらに排出されるかは、使用者によって選択される。
後処理装置54によれば、画像記録済み記録材に所望の後処理が施される。
【0126】
画像読取装置55は、画像形成装置100および記録材再供給搬送装置52の上方に設けられ、原稿台75と、原稿台75の下方に設けられる光走査ユニット71と、光電変換素子72と、自動原稿搬送装置73と、画像読取装置支持台74と、図示しないメモリとを含んで構成される。
【0127】
原稿台75は、ガラスなどの透光性材料によって構成され、画像記録済みの原稿を載置するために設けられる。
【0128】
光走査ユニット71は、原稿台75の下面に沿って走査移動可能に設けられ、原稿台75に載置される原稿に露光走査し、その反射光像を光電変換素子72に伝達する。光走査ユニット71は、自動原稿搬送装置73によって自動原稿搬送経路に沿って原稿を搬送する過程において、原稿の下方から、原稿に光を走査して原稿からの反射光像を読取り、自動原稿搬送経路の所定の位置に停止した状態で、光電変換素子72まで原稿からの反射光像を導くことによって、原稿の画像情報を読取る。また、原稿の両面の画像情報を同時に読取る場合は、原稿面の上面に対向するように、原稿を露光する光源、反射光像を光電変換素子まで導く光学レンズ、反射光像を電気的信号に変換する光電変換素子などを含んで一体的に構成される密着イメージセンサ(CIS)が自動原稿搬送装置73に装着される構成にすることができる。このように構成されるとき、両面原稿の読取りモードが設定されると、自動原稿搬送装置73の図示しない供給部にセットされた原稿が順次搬送され、原稿両面の画像情報がほぼ同時に読取られる。
【0129】
光電変換素子72は、電荷結合素子(Charge Coupled Device;略称CCD)などで構成され、光走査ユニット71から導かれる反射光像を電気的信号に変換する。
【0130】
自動原稿搬送装置73は、図示しない供給部に載置される原稿を1枚ずつ順次原稿台75に送給する装置である。自動原稿搬送装置73は、画像読取装置55が自動読取モードに設定された場合に作動する。一方、画像読取装置55には、自動読取モードのほかに、手動読取モードが備えられる。手動読取モードは、書物、雑誌などのように複数の原稿が一括して綴じられた原稿、自動原稿搬送装置73による自動供給が不可能なシート状原稿を手作業により原稿台75に載置して原稿画像を読取る方式である。
【0131】
画像読取装置55によれば、原稿台75上に載置される原稿の画像情報を、露光ユニット71により露光走査して反射光像として読取り、光電変換素子72上に結像して電気的信号に変換し、メモリに格納した上で、画像データとして制御部4に出力する。
【実施例】
【0132】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するけれども、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0133】
なお、実施例および比較例で用いられる樹脂および離型剤の物性値、ならびに実施例および比較例のトナー粒子の粒子径分布、トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径およびキャリアの体積平均粒子径は以下のようにして測定した。
【0134】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070に準じて測定した。
【0135】
〔樹脂の重量平均分子量(Mw)〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(略称GPC)によって、試料のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。使用装置および条件は次のとおりである。なお分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
装置:SYSTEM−11(商品名、昭和電工株式会社製)
カラム:TSKgelαMXL(商品名、東ソー株式会社製)3本
測定温度:40℃
試料溶液:試料の0.10重量%テトラヒドロフラン溶液
注入量:100mL
検出器:屈折率検出器
【0136】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量分析計SSC−5200(商品名、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料を温度20℃から昇温速度毎分10℃で昇温させ、得られたDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度を融点として求めた。
【0137】
〔トナー粒子の粒子径分布〕
コールターカウンターTA−II(商品名、コールター社製)を用いて測定した。測定条件は以下のとおりである。
アパーチャ口径:100μm
測定粒子径範囲:2〜60μm
電解液:1重量%塩化ナトリウム水溶液
試料分散液:電解液100mLに、界面活性剤(商品名:エマルゲン109P、花王株式会社製)5mLおよび測定試料10mgを加え、超音波分散機で1分間分散させ、試料分散液とする。
測定方法:試料分散液を用いて測定を行い、体積分布および個数分布を算出し、体積平均粒子径(μm)、粒子径Rが4.00μm未満(R<4.00μm)であるトナー粒子の含有率(個数%)および粒子径Rが4.00μm以上、5.04μm未満(4.00μm≦R<5.04μm)であるトナー粒子の含有率(個数%)を求めた。
【0138】
〔離型剤の平均分散粒径〕
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:略称TEM)を用いてトナー粒子の断面TEM写真を撮影し、得られた断面TEM写真からトナー粒子中に含まれる離型剤粒子50個の長軸の長さをそれぞれ求め、それらの平均値を算出し、これを離型剤の平均分散粒径(μm)とした。
【0139】
〔キャリアの体積平均粒子径〕
レーザ回折式粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラック、日機装株式会社製)を用いて測定した。
[トナー]
(実施例1)
【0140】
【表1】

【0141】
上記表1に示す各成分が表1に示す割合になるように計量された原料10kgをヘンシェルミキサにて、撹拌羽根回転数毎分700回転(700rpm)、処理時間3分間の条件で混合した後、得られた混合物をエクストルーダ(商品名:PCM−30、池貝鉄工株式会社製)にて溶融混練した。エクストルーダの運転条件は、シリンダ設定温度100℃、バレル回転数毎分300回転(300rpm)、原料(混合物)供給速度20kg/時間とした。得られた混練物を冷却ベルトにて冷却した後、孔径(φ)2mmのスクリーンを有するスピードミルにて粗粉砕した。得られた粗砕物をI型ジェットミルにて粉砕した後、エルボージェット分級機を用いて分級を行い、表2の実施例1に示す粒子径分布を有するトナー粒子になるように調整した。得られたトナー粒子中において、離型剤であるポリオレフィンワックスの平均分散粒径は、0.30μmであった。
【0142】
得られたトナー粒子とコロイダルシリカ(商品名:R972、体積平均粒子径16nm、日本アエロジル株式会社製)とを、トナー粒子100重量部に対してコロイダルシリカ0.6重量部の割合になるように混合し、実施例1のトナーを得た。
【0143】
(実施例2)
表2の実施例2に示す粒子径分布を有するトナー粒子になるように、粉砕および分級の条件を調整する以外は実施例1と同様にして、実施例2のトナーを得た。得られたトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.30μmであった。
【0144】
(比較例1〜3)
表2の比較例1〜3に示す粒子径分布を有するトナー粒子になるように、粉砕および分級の条件を調整する以外は実施例1と同様にして、比較例1〜3のトナーを得た。得られたトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径を表2に示す。
【0145】
(比較例4)
溶融混練に際し、エクストルーダの運転条件を、シリンダ設定温度130℃、バレル回転数毎分300回転(300rpm)、原料供給速度20kg/時間に変更する以外は実施例1と同様にして、比較例4のトナーを得た。得られたトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、1.00μmであった。
【0146】
(比較例5)
溶融混練に際し、エクストルーダの運転条件を、シリンダ設定温度75℃、バレル回転数毎分300回転(300rpm)、原料供給速度20kg/時間に変更する以外は実施例1と同様にして、比較例5のトナーを得た。得られたトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.05μmであった。
【0147】
(比較例6)
離型剤として、ポリオレフィンワックスに代えて、カルナウバワックスを用いる以外は実施例1と同様にして、比較例6のトナーを得た。得られたトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.10μmであった。
【0148】
(比較例7)
ポリオレフィンワックスを用いないこと以外は実施例1と同様にして、比較例7のトナーを得た。
【0149】
(比較例8)
表1に示すポリオレフィンワックスの配合量を20重量部に変更する以外は実施例1と同様にして、比較例8のトナーを得た。得られたトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.30μmであった。
【0150】
(比較例9)
結着樹脂として、ポリエステル樹脂に代えて、スチレン−アクリル樹脂を用いる以外は実施例1と同様にして、比較例9のトナーを得た。得られたトナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.30μmであった。
以上のようにして、表2に示す実施例1,2および比較例1〜9のトナーを作製した。
【0151】
【表2】

【0152】
[評価1]
以上の実施例1,2および比較例1〜9で作製した各トナーと、キャリアとして体積平均粒子径が100μmであるフェライト粒子とを、トナー濃度が6重量%になるように混合し、二成分現像剤を作製した。
【0153】
得られた各二成分現像剤を用いて記録用紙上に画像を形成し、(a)耐オフセット性、(b)定着強度、(c)かぶり度合および(d)画質を以下のようにして評価した。画像形成装置には、市販の二成分現像方式の複写機(商品名:AR−620、定着時の加熱ローラの表面温度:190℃、シャープ株式会社製)を用いた。
【0154】
(a)耐オフセット性
複写機AR−620から定着装置を取除いて得られた試験用複写機を用い、記録用紙(普通紙、坪量80g/m)上に、縦3cm、横3cmの正方形状のべた部を含むサンプル画像を、べた部のトナー付着量が0.60〜0.70mg/cmとなるように調整して、未定着の状態で形成した。形成された未定着画像を別体の定着装置に通紙して定着し、定着された画像を目視によって観察し、オフセット現象の発生の有無を判断した。別体の定着装置には、前述の複写機AR−620から取除いた定着装置を外部駆動できるように、また定着時の加熱ローラの表面温度を任意の温度に制御できるように改造したものを用いた。
【0155】
この操作を、加熱ローラの表面温度を0℃から100℃まで10℃ずつ順次上昇させて繰返し行い、オフセット現象が発生しない加熱ローラの表面温度領域(以下、オフセットマージンと称する)を求めた。オフセットマージンの最大値Tmaxを評価指標として耐オフセット性を点数で評価した。耐オフセット性の評価基準は以下のようである。
3点:良好。Tmaxが80℃以上。
2点:実使用上問題なし。Tmaxが40℃以上80℃未満。
1点:不良。Tmaxが40℃未満。
【0156】
(b)定着強度
複写機AR−620を用い、記録用紙(普通紙、坪量80g/m)上に、縦3cm、横3cmの正方形状のべた部を含むサンプル画像を、べた部のトナー付着量が0.60〜0.70mg/cmとなるように調整して形成し、これを評価用画像とした。マクベス反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)を用い、形成された評価用画像の反射濃度を測定し、これを初期の画像濃度C1とした。次いで、評価用画像のべた部に粘着テープを貼付した後引き剥がし、初期と同様にして反射濃度を測定し、貼着後の画像濃度C2とした。初期すなわちテープ貼着前の画像濃度C1に対するテープ貼着後の画像濃度C2の百分率(C2/C1×100(%))を定着率ΔCとして求め、これを評価指標として定着強度を点数で評価した。定着強度の評価基準は以下のようである。
3点:良好。ΔCが80%以上。
2点:実使用上問題なし。ΔCが40%以上80%未満。
1点:不良。ΔCが40%未満。
【0157】
(c)かぶり度合
白色度計(商品名:ハンター白色度計、日本電色工業株式会社製)を用い、記録用紙への画像形成前に、記録用紙として用いる、JIS P0138に規定されるA4判用紙(普通紙、坪量80g/m)のJIS P8148に規定される白色度を予め測定し、これを第1測定値W1とした。次いで、複写機AR−620を用い、直径55mmの白円部とそれを取囲む黒べた部とを含むサンプル画像を記録用紙3枚に形成し、これらを評価用画像とした。前述の白色度計を用い、各評価用画像の白円部の白色度を測定し、それらの平均値を算出し、これを第2測定値W2とした。第1測定値W1から第2測定値W2を差し引いた値(W1−W2)をかぶり濃度ΔWとして求め、これらを評価指標としてかぶり度合を点数で評価した。かぶり度合の評価基準は以下のようである。
3点:良好。ΔWが0.40以下。
2点:実使用上問題なし。ΔWが0.40を超え1.00未満。
1点:不良。ΔWが1.00以上。
【0158】
(d)画質
複写機AR−620を用い、25.4mm(1インチ)当たり600個のドット潜像を形成し得る条件で、1ドットの黒ドット画像を形成し、これを評価用画像とした。評価用画像の黒ドットを100倍に拡大して観察し、黒ドットの鮮明性を判断し、これに基づいて画質を点数で評価した。画質の評価基準は以下のようである。
3点:良好。黒ドット鮮明。
2点:可。黒ドットが若干ぼやけているけれども、実使用上問題なし。
1点:不可。黒ドットがぼやけており、実使用上問題あり。
【0159】
また、実施例1,2および比較例1〜9の各トナーについて、保存安定性を以下のようにして評価した。実施例1,2および比較例1〜9の各トナー100gをポリエチレン製容器にそれぞれ入れて密閉し、温度50℃の恒温槽に48時間放置した後、#100メッシュの篩に通し、篩上に残留したトナーの重量S(g)を測定した。容器に入れたトナーの重量(100g)に対する篩上に残留したトナーの重量S(g)の百分率(S/100×100(%))をブロッキング率ΔSとして求め、これを評価指標として保存安定性を点数で評価した。保存安定性の評価基準は以下のようである。
3点:良好。ΔSが10%未満。
2点:実使用上問題なし。ΔSが10%以上20%未満。
1点:不良。ΔSが20%以上。
【0160】
また、実施例1,2および比較例1〜9の各トナーについて、歩留を以下のようにして評価した。実施例1,2および比較例1〜9の各トナーについて、製造時に粉砕分級工程に投入した混練物の重量M1(kg)に対する粉砕分級工程後に回収されたトナー粒子の重量M2(kg)の百分率(M2/M1×100)を回収率ΔMとして算出し、これを評価指標として歩留を点数で評価した。歩留の評価基準は以下のようである。
3点:良好。ΔMが80%以上。
2点:実使用上問題なし。ΔMが50%以上80%未満。
1点:不良。ΔMが50%未満。
【0161】
以上の耐オフセット性、定着強度、かぶり度合、画質、保存安定性および歩留の評価結果を合わせて、トナーの総合評価を行った。総合評価は、耐オフセット性、定着強度、かぶり濃度、画質、保存安定性および歩留の各評価項目の評価点数を加算して平均値を算出し、その平均値が2.50点以上であり、かつ評価点数が1点である評価項目が1つもないものを合格と評価し、それ以外のものを不合格と評価した。
【0162】
以上の評価結果を表3に示す。なお、以上の(b)定着強度、(c)かぶり度合および(d)画質の評価において、比較例7のトナーを用いた場合には、オフセット現象が発生し、評価用画像を形成することができなかったので、1点と評価し、表3のΔC、ΔWおよび黒ドットを「−」と記載した。
【0163】
【表3】

【0164】
表3から、本発明のトナーが、トナーに要求される各種性能を高水準で満足する優れたトナーであることが明らかである。
【0165】
[現像剤]
(現像剤1)
評価1に供した、実施例1のトナーと体積平均粒子径が100μmであるキャリア(フェライト粒子)とから成る二成分現像剤(トナー濃度6重量%)を現像剤1とした。
【0166】
(現像剤2)
実施例1のトナーとキャリアとして体積平均粒子径が50μmであるフェライト粒子とを、トナー濃度が6重量%になるように混合して二成分現像剤を作製し、これを現像剤2とした。
【0167】
[評価2]
得られた現像剤2について、評価1と同様にして、耐オフセット性、定着強度、かぶり度合、画質、保存安定性および歩留の評価、ならびに総合評価を行った。
【0168】
評価結果を表4に示す。なお表4では、評価1における実施例1の評価結果を現像剤1の評価結果として示す。
【0169】
【表4】

【0170】
表4から、本発明のトナーと、体積平均粒子径90〜150μmのキャリアとを含む本発明の二成分現像剤が、現像剤に要求される各種性能を高水準で満足する優れた現像剤であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の画像形成装置の実施の一形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置正面図である。
【図2】画像形成システム200の構成を簡略化して示す配置正面図である。
【符号の説明】
【0172】
1 画像形成部
2 記録材供給部
3 画像定着部
4 制御部
5 感光体ドラム
6 帯電手段
7 露光ユニット
8 現像ユニット
9 転写手段
10 クリーニングユニット
11 除電手段
12 転写ローラ
13 トナー補給容器
30 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、離型剤および結着樹脂を含有するトナーであって、
トナー粒子は、
体積平均粒子径が5.04μm以上、7.00μm以下であり、
粒子径が4.00μm未満であるトナー粒子の含有率が15.0個数%以下であり、
粒子径が4.00μm以上、5.04μm未満であるトナー粒子の含有率が18.0個数%以上であり、
トナー粒子中における離型剤の平均分散粒径は、0.10μm以上、0.30μm以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
【請求項3】
離型剤が、結着樹脂100重量部に対して1重量部以上、10重量部以下の割合で含有されることを特徴とする請求項1または2記載のトナー。
【請求項4】
離型剤の融点が110℃以上、160℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載のトナー。
【請求項5】
離型剤がポリオレフィンワックスであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載のトナー。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載のトナーと、
体積平均粒子径が90μm以上、150μm以下であるキャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項7】
像担持体と、
像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載のトナーによって、像担持体に形成された潜像を現像する現像手段と、
現像によって形成されたトナー像を像担持体の表面から被転写体に転写する転写手段と、
転写されたトナー像を被転写体に定着させる定着手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
転写手段は、像担持体と被転写体とを接触させてトナー像の転写を行う接触転写方式の転写手段であることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
定着手段は、加熱部材を有し、加熱部材をトナー像に接触させることによってトナー像を加熱し、被転写体に定着させる接触加熱方式の定着手段であることを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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