説明

トナーの製造方法、トナー、二成分現像剤、及びそれらを用いた画像形成装置

【課題】
フィラーの高分散性とホットオフセット性を両立させることを課題とする。
【解決手段】
カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)とグリシジル基を有するビニル樹脂(B)の樹脂混合物に、架橋反応をさせるための反応触媒(D)を使用することを特徴とするトナーにより上記課題を解決する。
また、ビニル樹脂(A)のカルボキシル基とビニル樹脂(B)のグリシジル基が反応して得られた架橋体含有量が特定の割合以下のビニル樹脂(C)に、架橋反応をさせるための反応触媒(D)を使用することを特徴とするトナーにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式用のトナーの製造方法、トナー、二成分現像剤、及びそれらを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を利用した画像形成装置が、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等に汎用されている。例えば、電子写真方式の画像形成装置は、次の工程を経ることで画像を形成する。
【0003】
まず、像担持体として表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体ドラム上に種々の作像プロセスにて画像情報に基づく静電潜像を形成する。この静電潜像を、現像器から供給されるトナーを含む現像剤により現像して可視像(トナー像)とする。次に、このトナー像を紙のような記録媒体に転写する。この後、定着ローラによってトナーを加熱して溶融させることにより、記録媒体にトナー像を定着(融着)させている。
【0004】
近年、地球環境の温暖化を防止するために、画像形成装置においては消費電力の低減が進められており、それに関連して、低い定着温度であっても溶けやすいトナーが求められている。トナーの低温定着性を向上させるためには、バインダ樹脂の分子量を低くする方法が挙げられる。しかし、分子量を低くすると、ホットオフセットが発生しやすくなる。
【0005】
ホットオフセットを防止する技術として、例えば、特開平6−11890号公報(特許文献1)がある。この公報には、カルボキシル基を含むスチレン−アクリル系樹脂とグリシジル基を含むスチレン−アクリル系樹脂を用いて、160℃以上の温度で混練することにより架橋反応を生じさせ、高分子量化させることによって、ホットオフセット性を高めたバインダ樹脂を含むトナーの製造方法が開示されている。また、特開平3−63661号公報(特許文献2)には、アクリル酸を含むスチレンアクリル樹脂に多価金属化合物を反応させた後、溶融混練工程においてグリシジル基を有するスチレンアクリル樹脂と架橋させて得られるトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−11890号公報
【特許文献2】特開平3−63661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記いずれの方法でも、架橋反応させるための反応触媒が入っていないために、バインダ樹脂の架橋度が制御できないまま、トナーの製造における溶融混練が実施される場合があった。即ち、バインダ樹脂の架橋度が低い状態でトナーの製造における溶融混練を実施した場合、充分に架橋が進行せず、粘度の制御に困難な場合があった。その結果、ホットオフセット性に関して所望の特性を示すトナーではない場合があった。また、バインダ樹脂の架強度が高い状態でトナーの製造における溶融混練を実施した場合、溶融の際に樹脂の粘性が高くなり、フィラー(バインダ樹脂以外の他の成分)の分散が悪化する場合があった。その結果、帯電特性に優れたトナーではない場合があった。
【0008】
本願は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、架橋反応させるための反応触媒を入れることで、バインダ樹脂の架橋度を制御した状態で、トナーの製造における溶融混練が実施されるため、フィラーの分散性を損なうことなく、ホットオフセット性に優れたトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくともバインダ樹脂と着色剤を含むトナーの製造方法において、
バインダ樹脂の混練工程は、カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)とグリシジル基を有するビニル樹脂(B)の樹脂混合物に、反応触媒(D)を混練する工程であることを特徴とするトナーの製造方法であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、少なくともバインダ樹脂と着色剤を含むトナーの製造方法であって、バインダ樹脂の混練工程は、ビニル樹脂(A)のカルボキシル基とビニル樹脂(B)のグリシジル基が反応して得られた架橋体(テトラヒドロフラン不溶分)を含むビニル樹脂(C)に反応触媒(D)を混練する工程であることを特徴とするトナーの製造方法であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、上記トナーと、キャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、感光体ドラムと、前記感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記感光体ドラムの表面に形成される前記静電潜像を現像することによって、トナー像を形成させる現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含む画像形成装置を提供することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トナー中のバインダ樹脂の分子量が大きく、フィラーが高分散状態のトナーが得られることから、ホットオフセット性に優れかつ帯電安定性に優れたトナーが得られ、またこのトナーを用いた二成分現像剤や画像形成装置においては、長期に亙って安定した画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の全体の構成を示す概略説明図である。
【図2】図1におけるトナーカートリッジと現像装置周辺の構成を示す概略正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のトナーは、カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)とグリシジル基を有するビニル樹脂(B)の樹脂混合物に、反応触媒(D)を使用している。
【0016】
また、本発明のトナーは、ビニル樹脂(A)のカルボキシル基とビニル樹脂(B)のグリシジル基が反応して得られた架橋体含有量が特定の割合以下のビニル樹脂(C)に、架橋反応をさせるための反応触媒(D)を使用している。
[トナー材料]
まず、初めに、本発明のトナーに使用できるトナー材料について説明する。
(1)バインダ樹脂
トナーの原料として使用するバインダ樹脂には、カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)と、グリシジル基を有するビニル樹脂(B)が含まれる。
(1−1)カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)
ビニル樹脂(A)は、カルボキシル基含有ビニル単量体を重合させた樹脂である。ビニル樹脂(A)は、カルボキシル基含有ビニル単量体とカルボキシル基非含有ビニル単量体とを共重合させた樹脂であっても良い。
【0017】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和一塩基酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイヒ酸等の不飽和二塩基酸、及び、フマル酸メチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル等の不飽和二塩基酸のモノエステル類等が挙げられる。これらビニル単量体は、1種又は複数種組み合わせて使用しても良い。特に好ましいカルボキシル基含有ビニル単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチルである。
【0018】
カルボキシル基非含有ビニル単量体としては、例えば、スチレン類(スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等)、不飽和二塩基酸のジエステル類(フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル等)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アミド類(アクリルアミド、メタクリルアミド、N置換アクリルアミド、N置換メタクリルアミド等)が挙げられる。これらビニル単量体は、1種又は複数種組み合わせて使用しても良い。特に好ましいカルボキシル基非含有ビニル単量体は、スチレン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、不飽和二塩基酸のジエステル類、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドである。
【0019】
カルボキシル基含有ビニル単量体とカルボキシル基非含有ビニル単量体との重量比率は、1:0〜1:100の範囲であることが好ましく、1:1〜1:100の範囲であることがより好ましい。この範囲であることで、混練工程において、適正な割合のビニル樹脂(A)とビニル樹脂(B)との架橋体が生成される。より好ましい重量比率は、1:2〜1:50である。
【0020】
ビニル樹脂(A)は、5000≦Mw≦100000で表される範囲の重量平均分子量(Mw)を有していることが好ましい。この範囲のMwを有することで、ビニル樹脂(B)との反応による高分子量化やゲル化が、機械的強度と粘度のバランスがとれるように起こり、耐久性と定着性が良好に両立したトナーを提供できる。より好ましいMwの範囲は、10000≦Mw≦80000であり、特に好ましいMwの範囲は、10000≦Mw≦50000である。なお、Mwは、GPC法により求めたもので、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。
【0021】
ビニル樹脂(A)は、40〜75℃のガラス転移温度(Tg(A))を有していることが好ましい。更に好ましいガラス転移温度は、50〜60℃である。
ガラス転移温度は、JIS K−7121に準拠して測定した値である。ガラス転移温度をこの範囲とすることで、ホットオフセット性と低温定着性が両立したトナーを提供できる。
【0022】
また、ビニル樹脂(A)は、1〜30KOHmg/gの酸価を有していることが好ましい。より好ましい酸価は、5〜30KOHmg/gである。酸価は、樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数であり、JIS K−5601−2−1に準拠して測定した値である。酸価をこの範囲とすることで、ホットオフセット性と低温定着性が両立したトナーを提供できる。
(1−2)グリシジル基を有するビニル樹脂(B)
ビニル樹脂(B)は、グリシジル基含有ビニル単量体を重合させた樹脂である。ビニル樹脂(B)は、グリシジル基含有ビニル単量体とグリシジル基非含有ビニル単量体とを共重合させた樹脂であっても良い。
【0023】
グリシジル基含有ビニル単量体としては、アクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル等がある。
【0024】
グリシジル基非含有ビニル単量体としては、上記カルボキシル基非含有ビニル単量体と同じ単量体が挙げられる。
【0025】
グリシジル基含有ビニル単量体とグリシジル基非含有ビニル単量体との重量比率は、1:0〜1:100の範囲であることが好ましく、1:10〜1:100の範囲であることがより好ましい。より好ましい重量比率は、1:20〜1:50である。この範囲であることで、混練工程において、適正な割合のビニル樹脂(A)とビニル樹脂(B)との架橋体が生成される。
【0026】
ビニル樹脂(B)は、10000≦Mw≦1000000で表される範囲の重量平均分子量(Mw)を有していることが好ましい。この範囲のMwを有することで、ビニル樹脂(A)との反応による高分子量化やゲル化が、機械的強度と粘度のバランスがとれるように起こり、耐久性と定着性が良好に両立したトナーを提供できる。より好ましいMwの範囲は、15000≦Mw≦85000であり、特に好ましいMwの範囲は、25000≦Mw≦75000である。
【0027】
また、ビニル樹脂(B)は、40〜75℃のガラス転移温度(Tg(B))を有していることが好ましい。更に好ましいガラス転移温度は、50〜60℃である。ガラス転移温度をこの範囲とすることで、ホットオフセット性と低温定着性が両立したトナーを提供できる。
【0028】
また、ビニル樹脂(B)は1000g/Eq≦CEP≦20000g/Eqのエポキシ当量(CEP)を有していることが好ましい。より好ましいエポキシ当量は1000g/Eq≦CEP≦15000g/Eqであり、特に好ましいエポキシ当量は1000g/Eq≦CEP≦10000g/Eqである。なお、エポキシ当量とはエポキシ基1g当量当たりのエポキシ樹脂の質量(g数)をいう。この範囲のエポキシ当量を有することで、ビニル樹脂(A)との反応による高分子量化やゲル化が起こる。その結果、機械的強度と粘度のバランスがとれ、耐久性と定着性が良好に両立したトナーを提供できる。
(1−3)ビニル樹脂(A)とビニル樹脂(B)の重量比率
カルボキシル基含有のビニル樹脂(A)とグリシジル基含有のビニル樹脂(B)の重量比率は1:0.01〜1:1.0であることが好ましい。より好ましい重量比率は1:0.1〜1:1.0であり、特に好ましい重量比率は、1:0.1〜1:0.5である。この範囲とすることで、低温定着性と保存性に優れたトナーを製造できるバインダ樹脂を得ることができる。
(1−4)ビニル樹脂(C)
ビニル樹脂(A)のカルボキシル基とビニル樹脂(B)のグリシジル基が反応して得られたビニル樹脂(C)において、反応前のカルボキシル基含有のビニル樹脂(A)とグリシジル基含有のビニル樹脂(B)の重量比率は1:0.1〜1:1.0であることが好ましい。この範囲にあることで、低温定着性と保存性に優れたトナーを製造できるバインダ樹脂を得ることができる。より好ましい重量比率は1:0.1〜1:0.7である。また、ビニル樹脂(A)のカルボキシル基とビニル樹脂(B)のグリシジル基が反応して得られたビニル樹脂(C)の架橋体含有量が8.0重量%以下であることが好ましい。
【0029】
この範囲にあることで、フィラーの高分散化が達成でき、帯電特性に優れたトナーを製造できるバインダ樹脂を得ることができる。より好ましい架橋体成分量は5.0重量%以下である。
(1−5)反応触媒(D)
反応触媒(D)としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、ポリアミド、三級および二級アミン、イミダゾール類、酸無水物が使用できる。具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N−アミノエチルピペラジン、イソフルオロンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミンジフィニルアミン、ポリアミドアミン、トリエチレンジアミン、ピペラジン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸がある。上記反応触媒(D)の使用は一種類に限定されるものではなく、二種類以上を併用しても良い。使用量に関して、状況に応じて適宜選ばれる。使用量が多い場合、ビニル樹脂(B)と反応触媒(D)での硬化反応が過剰に発生し、ビニル樹脂(A)とビニル樹脂(B)の架橋反応が充分に起こらない場合がある。通常0.01〜2重量%の範囲である。
(2)他の成分
トナーには、バインダ樹脂以外の他の成分が含まれている。他の成分としては、顔料、離型剤、帯電制御剤、外添剤等が挙げられる。
(a)カーボンブラック
顔料であるカーボンブラックとしては、表面にカルボキシル基を有するカーボンブラックが使用できる。具体的には、チャンネルブラック、ロースブラック、ディスクブラック、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック等の従来公知の様々なカーボンブラックの中から、適宜選択できる。特にpH2〜6のカーボンブラックが、混練工程において、樹脂中での高分散化を達成しやすく好ましい。
(b)離型剤
離型剤をトナー中に含有させることにより、定着ローラ又は定着ベルトに対するトナーの離型性を高めることができ、定着時の低温定着性を高めるとともに、ホットオフセットの防止効果が得られる。
【0030】
離型剤としては、公知のものを使用できる。例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木蝋等の植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステル等の油脂系合成ワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、低分子量ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス等の炭化水素系合成ワックス、及びアルコール系合成ワックスやエステル系合成ワックス等が挙げられる。これら離型剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用して使用しても良い。
【0031】
離型剤の添加量は、特に制限されないが、一般的には、バインダ樹脂100重量部に対して5重量部以下であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。
(c)帯電制御剤
帯電制御剤としては、正及び負の帯電性をトナーに付与しうる当該分野で公知の帯電制御剤をいずれも使用できる。
【0032】
具体的には、負帯電性を付与する帯電制御剤としては、クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料、コバルトアゾ錯体染料、サリチル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ナフトール酸(ヒドロキシナフトエ酸)もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ベンジル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、長鎖アルキル・カルボン酸塩、長鎖アルキル・スルフォン酸塩等を挙げることができる。
【0033】
正帯電性を付与する帯電制御剤としては、ニグロシン染料、及びその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスフォニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等の誘導体等を挙げることができる。
【0034】
帯電制御剤の添加量は、バインダ樹脂100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、0.1〜20重量部の範囲であることがより好ましく、0.5〜5重量部の範囲内であることが更に好ましい。
(d)外添剤
外添剤としては、シリカ微粒子のような無機微粒子をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等の表面処理剤で疎水化処理することによって得られた表面処理シリカ微粒子が挙げられる。表面処理シリカ微粒子の一次粒子径(走査型電子顕微鏡を用いた測定した個数平均値)としては、5〜50nmのものが好適に使用できる。
【0035】
外添剤の体積抵抗率は、使用する表面処理剤の種類や、処理量を変えることによって調節できる。シランカップリング剤としてヘキサメチルジシラザンを用いてシリカ微粒子を処理して得られる外添剤は抵抗が高く、疎水性に優れている。そのため、高湿環境下においても帯電量が安定したトナーを提供できるので好ましい。
【0036】
外添剤の添加量は、バインダ樹脂100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。添加量が多過ぎると定着性が低下することがある。外添剤の効果を得るには、0.5重量部以上添加することが好ましい。また、外添剤の添加量は、バインダ樹脂表面が適度に覆われる程度の被覆率(20〜80%)となるように調整することが好ましい。
[トナーの製造方法]
上記トナーは、例えばビニル樹脂(A)とビニル樹脂(B)もしくは、ビニル樹脂(C)に、バインダ樹脂以外の他の成分及び反応触媒(D)を加えて加熱混練を行い、架橋体を生成させる混練工程を経ることで製造できる。以下にトナーの製造方法を具体的に説明する。
(3)混練工程
混練工程では、バインダ樹脂とバインダ樹脂以外の他の成分及び反応触媒(D)とともに、加熱混練機で加熱混練することにより、架橋体を生成する。バインダ樹脂以外の他の成分(顔料、離型剤、帯電制御剤等)は、あらかじめ、1mm程度に細かく粉砕した樹脂混合物と一緒に、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル、Q型ミキサ等の気流混合機を用いて混合しておくほうが、分散性が向上する点で好ましい。また、反応触媒(D)が液体・固体に関わらず、バインダ樹脂やバインダ樹脂以外の他の成分との混合後に添加することが、架橋反応を制御する上で好ましい。
【0037】
加熱混練機としては、樹脂を混練する際に使用する公知の加熱混練機が使用できる。そのうち、細やかな温度制御ができる点で二軸混練機が好ましい。加熱混練は、混練物の混練最高温度が150〜200℃の範囲内となるように行うことが好ましい。150℃未満では、グリシジル基とカルボキシル基の反応が進行しにくいため、ホットオフセット性が充分に得られないことがある。200℃を超えると、架橋体の分子鎖が切断されることで低分子化され、ホットオフセット性が充分に得られないことがある。
【0038】
得られたトナー中の架橋体成分量は、10〜40重量%であることが好ましい。好ましい架橋体成分量は、15〜35重量%である。架橋体成分量が10重量%未満では、トナーの保存期間を充分確保できないことがある。また、40重量%を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。架橋体は、主として、架橋度が高い架橋体が含まれると考えられる。
【0039】
なお、トナー中の架橋体成分量は、次の方法で測定した値を意味する。即ち、2.0gのトナーを200mlのテトラヒドロフランに入れて25±3℃で12時間撹拌し、可溶成分を完全に溶解させて溶液を調製する。この溶液の濃度を(RC)と表す。次いで、得られた溶液を遠心分離機を用いて不溶成分を分離させる。分離後、上澄み液の濃度(SC)を分析する。上澄み液の濃度(SC)は、上澄み液5gを採取し、120℃で1時間乾燥してテトラヒドロフランを除去した後、残った溶媒不溶成分の重量から計算する。得られたRC’値とSC’値とから、トナー中架橋体含有量の割合を下記の式によって求める。
トナー中架橋体成分量=[(RC−SC)/RC]×100(重量%)
(4)粉砕工程
得られた架橋体は、粉砕工程に付しても良い。粉砕工程では、混練工程で得られた架橋体を粉砕することによって粒子状のトナーを生成する。架橋体は、粉砕前に冷却固化し、ジェットミルのようなエア式粉砕機により粉砕できる。更に、粉砕物を必要に応じて分級することで粒度調整しても良い。
(5)外添工程
トナーは、外添剤を付着させる外添工程に付しても良い。外添工程では、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル、Q型ミキサ等の気流混合機を用いて、トナーと外添剤が混合される。
[現像剤]
本発明のトナーは、一成分現像剤にも二成分現像剤にも使用できる。二成分現像剤として用いる際は、上記トナーに加えてキャリアが使用される。
[キャリア]
キャリアとしては、ブリッジ法で測定した時の体積抵抗率が、1×10〜2×1011Ω・cmの範囲内にある微粒子が好適に使用できる。このようなキャリアは、磁性を有するコア粒子の表面を導電材を含む被覆材(樹脂)で被覆することによって得られる。体積抵抗率が1×10Ω・cm未満であると、現像時にキャリアが感光体ドラム表面と接触する際に、感光体ドラム表面の電荷がキャリアにリークしやすくなり、刷毛スジが出やすくなる。逆に、体積抵抗率が2×1011Ω・cmを超えると、トナーの帯電量が上昇し、画像濃度が低下しやすくなる。より好ましい体積抵抗率は、4×10〜1×1011Ω・cmの範囲内である。
【0040】
なお、ブリッジ法でのキャリアの体積抵抗率は、次の手順で測定した値である。即ち、気温20℃、湿度65%の環境条件において、6.5mmの間隙を設けて設置される幅30mm、高さ10mmの2枚の銅板電極間に0.2gのキャリアを充填する。N極とS極が対向するように各銅板電極の外側に配置される2つの磁石(100mT)の磁力線によって、キャリアによるブリッジを形成させる。この状態において、500Vの電圧印加15秒後の値が体積抵抗率である。
【0041】
このようなキャリアとして、フェライトのような磁性粒子の表面に被覆材を設けた体積平均粒子径が30〜100μmの被覆キャリアが挙げられる。キャリアの粒子径は、小さ過ぎると、現像時に現像ローラから感光体ドラムにキャリアが移動することにより、得られる画像に白抜けが発生することがある。また、大き過ぎるとトナーの帯電量が低下し、ドット再現性が悪くなり、画像が粗くなることがある。なお、キャリアの体積平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置HELOS(SYMPATEC社製)に乾式分散装置RODOS(SYMPATEC社製)を用いて、分散圧3.0barの条件下で行った時の値である。
【0042】
キャリアの飽和磁化は、低いほど感光体ドラムと接する磁気ブラシが軟らかくなるので、静電潜像に忠実な画像が得られる。しかし、飽和磁化が低過ぎると、感光体ドラム表面にキャリアが付着し、白抜け現象が発生しやすくなる。また、飽和磁化が高過ぎると、磁気ブラシの剛直化により、静電潜像に忠実な画像が得られにくくなる。そのため、キャリアの飽和磁化は、30〜100emu/gの範囲が好適である。
【0043】
コア粒子としては公知の磁性粒子が使用できるが、帯電性や耐久性の点でフェライト系粒子が好ましい。フェライト系粒子としては公知のものを使用でき、例えば、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、マンガン−銅−亜鉛系フェライト等が挙げられる。
【0044】
これらのフェライト系粒子は、公知の方法で作製できる。例えば、FeやMg(OH)等のフェライト原料を混合し、この混合粉を加熱炉で加熱して仮焼する。得られた仮焼品を冷却後、振動ミルで1μm程度の粒子となるように粉砕し、粉砕粉に分散剤と水を加えてスラリーを作製する。このスラリーを湿式ボールミルで湿式粉砕し、得られる懸濁液をスプレードライヤで造粒乾燥することによって、フェライト粒子が得られる。
【0045】
また、フェライト系粒子の体積平均粒子径としては、30〜100μmの範囲にあるものが、感光体へのキャリア付着に起因する画像の白抜けが発生せず、ドット再現性が良い画像が得られるという点で好適である。
【0046】
更に、フェライト系粒子の体積抵抗率としては、1×10〜5×1010Ω・cmの範囲にあるものが、電気絶縁性とキャリア表面に残るカウンタ電荷の除去能力の点で好適である。このようなフェライト系粒子は、カブリやベタ画像における周辺部のエッジ効果や画像濃度低下を防ぐことができる。
【0047】
被覆材としては公知の樹脂材料が使用でき、例えば、アクリル樹脂やシリコーン樹脂等が挙げられる。特に、シリコーン樹脂を被覆した被覆キャリアは、その表面にホウ素化合物がスペント(融着)しにくく、長期に亙ってトナーの帯電付与能力を維持できるので好ましい。
【0048】
被覆材は、キャリアの体積抵抗率を制御するために、導電材が添加されていても良い。導電材としては、例えば、酸化ケイ素、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。導電材は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。導電材の使用量としては、被覆材100重量部に対して0.1〜20重量部が使用される。
【0049】
これらの導電材の中でも、作製安定性、コスト、電気抵抗の低さという観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの種類は特に限定されないが、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が90〜170ml/100gの範囲にあるものが、作製安定性に優れる点で好ましい。また、一次粒子径として50nm以下のものが分散性に優れるため特に好ましい。
【0050】
被覆材をコア粒子に被覆するには、公知の方法が採用できる。例えば、被覆材の有機溶媒溶液中にコア粒子を浸漬させる浸漬法、被覆材の有機溶媒溶液をコア粒子に噴霧するスプレー法、コア粒子を流動エアにより浮遊させた状態で被覆材の有機溶媒溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコータ中でコア粒子と被覆材の有機溶媒溶液とを混合し溶剤を除去するニーダーコータ法等が挙げられる。この時、被覆材の有機溶媒溶液には被覆材とともに抵抗値制御用の導電材が添加される。
[二成分現像剤の製造方法]
二成分現像剤は、ナウターミキサのような混合機でトナーとキャリアを混合することによって作製できる。キャリアとトナーの混合割合は、通常、キャリア100重量部に対して、トナー3〜15重量部である。4〜12重量部の範囲であることが更に好ましい。混合割合がこの範囲であることで、保存安定性と流動性に優れたトナーを提供できる。
[画像形成装置]
図1は画像形成装置の全体の構成を示す概略説明図、図2は図1の画像形成装置を構成するトナーカートリッジと現像装置周辺を示す概略正面断面図である。
【0051】
画像形成装置30は、トナーカートリッジ10、現像装置20、感光体ドラム17、帯電装置25、露光装置22、クリーニング装置26、転写装置24、定着装置23、給紙カセット21、排紙トレイ29、及びスキャナユニット31を備える。
【0052】
感光体ドラム17は、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に支持され、その表面に静電潜像ひいてはトナー像が形成されるローラ状部材で構成されている。感光体ドラム17には、例えば、導電性基体と、導電性基体表面に形成されるローラ状部材を使用できる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状等の導電性基体を使用でき、その中でも円筒状導電性基体が好ましい。感光体ドラム17としては、有機感光体ドラム、無機感光体ドラム等が挙げられる。
【0053】
有機感光体ドラムとしては、電荷発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と、電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層との積層感光体ドラム、もしくは1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む単層感光体ドラム等が挙げられる。
【0054】
無機感光体ドラムとしては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコン等から選ばれる1種又は2種以上を含む膜が挙げられる。導電性基体と感光体ドラムとの間には、下地膜を介在させても良く、感光体ドラムの表面には主に感光体ドラムを保護するための表面膜(保護膜)を設けても良い。
【0055】
帯電装置25は、感光体ドラム17にコロナ放電を行うものであり鋸歯型帯電器が採用されている。この帯電装置25として、鋸歯型帯電器以外に、チャージャー型帯電器、帯電ブラシ型帯電器、ローラ状帯電器、磁気ブラシ等の帯電器等が使用できる。
【0056】
また、帯電装置25は、図示しない電源から電圧の印加を受けて、感光体ドラム17表面を所定の極性及び電位に帯電させる。
【0057】
露光装置22は、スキャナユニット31において読み取られる原稿の画像情報又は外部機器からの画像情報が入力され、画像情報に応じた信号光を帯電状態にある感光体ドラム17表面に照射する。これによって、感光体ドラム17表面に、画像情報に応じた静電潜像が形成される。この露光装置22として、光源を含むレーザスキャニング装置が用いられる。
【0058】
現像装置20は、トナーカートリッジ10、現像槽11、撹拌ローラ13、現像ローラ12、規制部材14及びトナー濃度検知センサ15を備えている。
【0059】
現像槽11は、内部空間を有する容器部材であり、撹拌ローラ13、現像ローラ12を回転自在に支持し、トナーとキャリアからなる二成分現像剤を収容する。
【0060】
撹拌ローラ13は、図示しない駆動手段によって回転駆動し、現像槽11内に収容される二成分現像剤を撹拌するものである。
【0061】
現像ローラ12は、ローラ状部材で構成され、二成分現像剤を感光体ドラム17へと搬送するものであり、図示しない駆動手段によって軸心回りに回転駆動する。また、現像ローラ12は、現像槽11の開口部16を介して感光体ドラム17に対向し、感光体ドラム17に対して間隙を有して離隔するように設けられる。
【0062】
現像ローラ12で搬送される二成分現像剤は、感光体ドラム17と接触する。この接触する領域が現像ニップ部であり、この現像ニップ部では、図示しない電源から現像ローラ12に対して現像バイアス電圧が印加され、現像ローラ12表面の現像剤から感光体ドラム17表面の静電潜像へトナーが供給される。
【0063】
規制部材14は、現像ローラ12の軸線方向に沿って平行に延びる板状部材で構成され、現像ローラ12の鉛直方向上方において、その短手方向の一端が現像槽11によって支持され、かつ他端が現像ローラ12表面に対して間隙を有して離隔するように設けられる。この規制部材14の材料としては、ステンレス鋼が使用できるが、アルミニウムや合成樹脂等も使用できる。
【0064】
トナー濃度検知センサ15は、撹拌ローラ13の鉛直方向下方の現像槽11底面に装着され、センサ面(上面)15aが現像槽11の内部に露出するように設けられる。トナー濃度検知センサ15は、図示しない制御手段に電気的に接続される。この制御手段は、トナー濃度検知センサ15による検知結果に応じて、トナー排出部材3を回転駆動させ、トナー排出口2を介して現像槽11内部にトナーを供給するように制御する。
【0065】
例えば、制御手段は、トナー濃度検知センサ15による検知結果がトナー濃度設定値よりも低いと判定されると、トナー排出部材3を回転駆動させる駆動手段に制御信号を送る。
【0066】
トナー濃度検知センサ15には一般的な検知センサを使用できる。例えば、透過光検知センサ、反射光検知センサ、透磁率検知センサ等が挙げられる。これらの中でも、透磁率検知センサが好ましい。
【0067】
透磁率検知センサは、制御電圧の印加を受けてトナー濃度の検知結果を出力電圧値として出力する型式のセンサであり、基本的に出力電圧の中央値近傍の感度がよいため、その付近の出力電圧が得られるような制御電圧を印加して用いられる。このような型式の透磁率検知センサとして、例えば、TS−L、TS−A、TS−K(いずれも商品名、TDK社製)等が挙げられる。
【0068】
透磁率検知センサを用いたトナー濃度検知センサ15には、図示しない電源が接続される。電源は、トナー濃度検知センサ15を駆動させるための駆動電圧及びトナー濃度の検知結果を制御手段に出力するための制御電圧をトナー濃度検知センサ15に印加する。電源によるトナー濃度検知センサ15への電圧の印加は、制御手段によって制御される。
【0069】
転写装置24は、ローラ状部材で構成され、図示しない支持部材によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって回転可能に設けられ、かつ感光体ドラム17に圧接するように設けられている。
【0070】
転写装置24には、例えば、直径8〜10mmの金属製芯金と、金属製芯金の表面に形成される導電性弾性層とを含むローラ状部材が用いられる。金属製芯金を形成する金属としては、ステンレス鋼、アルミニウム等を使用できる。導電性弾性層としては、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、発泡EPDM、発泡ウレタン等のゴム材料にカーボンブラック等の導電材を配合したゴム材料を使用できる。
【0071】
感光体ドラム17と転写装置24との圧接部(転写ニップ部)に、感光体ドラム17の回転によってトナー像が搬送されるのに同期して、給紙カセット21から給紙ローラ27を介して記録媒体が1枚ずつ供給される。Aは記録媒体の搬送方向を意味する。記録媒体が感光体ドラム17と転写装置24との転写ニップ部を通過することによって、感光体ドラム17表面のトナー像が記録媒体に転写される。
【0072】
転写装置24には図示しない電源が接続され、トナー像を記録媒体に転写する際に、トナー像を構成するトナーの帯電極性とは逆極性の電圧を転写装置24に印加する。これによって、トナー像が記録媒体に円滑に転写される。
【0073】
クリーニング装置26は、図示しないクリーニングブレードと、図示しないトナー貯留槽とを備えている。クリーニングブレードは、感光体ドラム17の軸線方向に沿って平行に延設された板状部材で構成され、この板状部材の短手方向の一端が感光体ドラム17表面に当接するように設けられている。このクリーニングブレードは、回転する感光体ドラム17表面に当接することで、記録媒体にトナー像を転写した後に感光体ドラム17表面に残留するトナー、紙粉等を感光体ドラム17表面から取り除くようになっている。トナー貯留槽は、内部空間を有する容器状部材で構成され、クリーニングブレードによって除去されたトナーを一時的に貯留する。このように構成されたクリーニング装置26によって、トナー像を転写した後の感光体ドラム17表面が清浄化される。
【0074】
定着装置23は、定着ローラ32と加圧ローラ33とを備えている。定着ローラ32は、ローラ状部材で構成され、図示しない支持部材によって回転自在に支持され、かつ図示しない駆動手段によって軸線回りに回転可能に設けられている。この定着ローラ32は、その内部に図示しない加熱部材を有し、転写ニップ部から搬送される記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱し、溶融させて記録媒体に定着させるようになっている。
【0075】
定着ローラ32は、円筒状の芯金と、その表面に弾性層を設けたローラ状部材により構成されている。芯金は、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属によって形成される。弾性層は、例えば、厚さが3〜10mmのシリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料で形成される。加熱部材は図示しない電源から電圧印加を受けて発熱する。加熱部材としてハロゲンランプ、赤外線ランプ等を使用できる。
【0076】
加圧ローラ33は、円筒状の芯金と、その表面に離型層を設けたローラ状部材により構成されている。芯金は、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属によって形成される。離型層は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の低表面エネルギーのフィルムで形成される。ローラ状部材で構成され、回転自在に支持されかつ図示しない加圧部材によって定着ローラ32に対して圧接するように設けられている。この加圧ローラ33は、定着ローラ32の回転に従動回転するようにされている。定着ローラ32と加圧ローラ33との圧接部が定着ニップ部である。
【0077】
加圧ローラ33は、定着ローラ32によるトナー像の記録媒体への加熱定着に際し、溶融状態にあるトナーを記録媒体に対して押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を促進する。加圧ローラ33として、定着ローラ32と同じ構成のローラ状部材を使用できる。また、加圧ローラ33の内部にも加熱部材を設けてもよい。この加熱部材として定着ローラ32内部の加熱部材と同様のものを使用できる。
【0078】
定着装置23においては、トナー像が転写された記録媒体が定着ニップ部を通過する際、トナー像を構成するトナーを溶融させるとともに記録媒体に押圧され、トナー像が記録媒体に定着する。画像が印刷された記録媒体は、排紙ローラ28を介して、排紙トレイ29に排出される。
【0079】
給紙カセット21は、普通紙、コート紙、カラーコピー用紙、OHPフィルム等の記録媒体を収容するトレイである。図示しないピックアップローラと、搬送ローラとによって、感光体ドラム17表面のトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、記録媒体が1枚ずつ送給される。
【0080】
スキャナユニット31には図示しない原稿セットトレイ、自動反転原稿搬送装置(RADF、Reversing Automatic Document Feeder)等が設けられるとともに、図示しない原稿読み取り装置が設けられる。
【0081】
トナーカートリッジ10は、トナー容器1、トナー撹拌部材8、トナー汲み上げブレード9、トナー排出部材3、及びトナー排出口2を備えている。トナー排出部材3、トナー撹拌部材8は、図示しない歯車伝達機構及び駆動モータからの駆動力により回転するように構成されている。
【0082】
トナー容器1は、内部空間を有する略半円筒状の容器部材であり、その内部にトナーを収容するとともに、トナー撹拌部材8、トナー排出部材3を回転自在に支持している。
【0083】
また、トナー容器1は、トナー排出部材3の軸方向一端部が突出して形成され、その突出部のトナー排出部材3の鉛直方向下部に矩形状に開口されたトナー排出口2が設けられている。
【0084】
トナー排出口2は、トナーカートリッジ10を画像形成装置30に装着した際に、画像形成装置30が備える現像装置20を臨む位置に配置されるようになっている。
【0085】
トナー撹拌部材8は、回転軸8a、トナー汲み上げブレード9及び図示しない撹拌ギアが一体的に設けられ、撹拌ギアを介して駆動力が伝達されて回転軸8aを中心に回転することにより、トナー容器1内に収容されるトナーを撹拌するものである。
【0086】
トナー汲み上げブレード9は、可撓性を有する0.5〜2mm程度の厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)シートからなり、トナー容器1内のトナーを汲み上げてトナー排出部材3へ搬送するために、トナー撹拌部材8の両端に取付けられる。
【0087】
本実施形態に係るトナーカートリッジ10は、回転することによりトナー容器(トナー収容部)1内のトナーをトナー容器1外部に排出するトナー排出部材3と、トナー容器1内のトナーを撹拌するトナー撹拌部材8とを備え、画像形成装置30に搭載された現像装置20に対して着脱可能に構成されている。
【0088】
トナー排出部材3は、トナー汲み上げブレード9によって搬送されたトナーをトナー排出口2から現像槽11に供給するもので、トナー排出部材回転軸3a、トナー搬送部6及び図示しない排出ギアを備える。
【0089】
トナー搬送部6は、螺旋状で連続した羽根体で形成された、いわゆるスクリューオーガ又はスパイラルコイルで構成され、排出ギアを介して図示しない駆動モータの駆動力によって回転するようになっている。
【0090】
トナー搬送部6の螺旋の向きは、トナー排出部材3の軸方向一端からトナー排出口2側に向けてトナーが搬送されるように設定されている。
【0091】
トナー排出部材3とトナー撹拌部材8との間には、トナー排出部材3の軸線方向に沿ってトナー容器1内部をトナー排出部材3側とトナー撹拌部材8側とに区分けするトナー排出部材隔壁(隔壁部)4が設けられる。このトナー排出部材隔壁4によって、トナー撹拌部材8によって汲み上げられたトナーがトナー排出部材3の周辺に適量保持されるようになっている。
【0092】
次に、画像形成装置30においてトナーカートリッジ10から現像装置20にトナー補給を行う動作について説明する。
【0093】
トナーカートリッジ10により現像装置20にトナーを補給する場合は、トナーカートリッジ10において、トナー撹拌部材8を矢印E方向に回転させてトナー容器1内のトナーを撹拌しながら、トナー汲み上げブレード9によってトナーをトナー排出部材3側へ汲み上げる。
【0094】
この時、トナー汲み上げブレード9は、ブレードを構成する素材の有する可撓性によってトナー容器1の内壁1aに摺接しながら変形しつつ回転し、回転方向下流側のトナー、即ち、トナー容器1内の右側(現像装置20寄り)でトナー汲み上げブレード9の上方に位置するトナーをトナー排出部材3側に供給する。
【0095】
トナー排出部材3側に供給されたトナーは、トナー排出部材隔壁4によりトナー排出部材3の上に所定量溜められ、余分なトナーはトナー撹拌部材8側へ落下する。これにより、トナー排出部材3で搬送されるトナー量を一定にすることができる。
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
<トナーT1−1>
カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)が、上述のような重量平均分子量を得るには、低分子量のものと高分子量のものの混合が好ましい。
低分子量重合液(AL)
スチレン80重量部、アクリル酸n−ブチル19重量部、カルボキシル基含有ビニル単量体であるメタクリル酸1.0重量部とキシレン溶媒80重量部からなる溶液にスチレン100重量部当たり3重量部のジ-t-ブチルパーオキサイドを均一に溶解したものを、内温190℃、内圧6kg/cmに保持した5Lの反応器に750ml/時間で連続的に供給して重合し、低分子量重合液(AL)を得た。
高分子量重合液(AH)
別にビニル単量体として、スチレン73重量部、アクリル酸n−ブチル24.7重量部、カルボキシル基含有ビニル単量体であるメタクリル酸2.3重量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後、同温度に保ち、バルク溶液重合を10時間行った。ついで、キシレン溶媒50重量部を加え、あらかじめ混合溶解しておいたジブチルパーオキサイドの0.1重量部キシレン溶媒50重量部を内温130℃に保ちながら8時間かけて連続添加した。更に、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.2重量部を加えて2時間反応を継続した。その後、更に、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.5重量部を加えて2時間保持することにより反応を完結して、高分子量重合液(AH)を得た。
ビニル樹脂A1
次いで、上記高分子量重合液(AH)150重量部と低分子量重合液(AL)120重量部とを混合した後、90℃、10mmHgのベッセル中にフラッシュして溶剤等を留去し、ガラス転移点:62℃、重量平均分子量:32000、酸化:10KOHmg/gのビニル樹脂A1を得た。
ビニル樹脂B1
キシレン溶媒80重量部を窒素置換したフラスコに仕込み、キシレン還流温度まで昇温した。キシレン還流下において、あらかじめ混合溶解しておいたスチレン71.5重量部、アクリル酸n−ブチル28重量部、グリシジル基含有ビニル単量体であるメタクリル酸グリシジル0.5重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.5重量部を5時間かけて連続添加し、更に1時間還流を継続した。その後、内温を130℃に保ち、ジ−t−ブチルパーオキサイドを0.5重量部を加えて2時間反応を継続することにより反応を完結して、重合液を得た。これを160℃、10mmHgのベッセル中にフラッシュして溶剤等を留去し、ガラス転移点:58℃、重量平均分子量:55000、エポキシ当量:10000g/Eqのグリシジル基含有ビニル樹脂B1を得た。
【0096】
材料を均一混合させるために、
・カルボキシル基を有する上記のビニル樹脂A1 80重量部
・グリシジル基を有する上記のビニル樹脂B1 20重量部
・カーボンブラック(pH=3.5、三菱化学社製MA100) 12重量部
・ポリプロピレンワックス(三洋化成社製:550P) 3重量部
・帯電制御剤(保土谷化学社製TRH) 2重量部
をヘンシェルミキサにて10分間混合した。得られた混合物に、反応触媒(D)であるポリアミド樹脂(スリーボンド社製Three Bond 2105)1重量部を加えて、二軸混練機(池貝社製:PCM30型)で混練最高温度を160℃、滞留時間を90秒で溶融混練することで、混練物を得た。
【0097】
得られた混練物をカッティングミルで粗粉砕した後、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業社製:IDS−2型)によって微粉砕した。微粉砕物を、風力分級機(日本ニューマチック工業社製:MP−250型)を用いて分級することによって、体積平均粒子径が6.0μmのトナーを得た。トナー中の架橋体の割合は10.3重量%であった。
【0098】
得られたトナー100重量部に、個数平均粒子径が7nmのヘキサメチルジシラザンで表面を処理したシリカ粒子(デグサ社製)1重量部を加えて、撹拌羽根の先端速度を15m/秒に設定した気流混合機(三井鉱山社製:ヘンシェルミキサ)で2分間撹拌することによって負帯電性のトナーT1−1を作製した。
<キャリア>
フェライト原料(関東電化社製)をボールミルにて混合した後、ロータリーキルンにて900℃で仮焼した。得られた仮焼粉を、湿式粉砕機(粉砕媒体としてスチールボール使用)により平均粒子径2μm以下にまで微粉砕した。得られたフェライト粉末をスプレードライ方式により造粒し、造粒物を1300℃で焼成した。焼成後、クラッシャを用いて解砕することで、体積平均粒子径が約45μm、体積抵抗率が1×10Ω・cmのフェライト成分からなるコア粒子を得た。
【0099】
次に、コア粒子を被覆する熱硬化性シリコーン樹脂層形成ための被覆用塗液S1を、ジメチルシリコーン樹脂(東芝シリコーン社製)100重量部と、硬化剤としてオクチル酸5重量部とをトルエン溶媒に溶解することで得た。被覆用塗液S1中にコア粒子を浸漬させる浸漬被覆装置により、コア粒子に樹脂層を被覆した。その後、トルエンを完全に蒸発除去した後に、190℃で30分間キュアリング(熱硬化)を行うことで、キャリアE1を作製した。
【0100】
キャリアE1は、体積平均粒子径が46μm、被覆率が100%、体積抵抗率が1×1012Ω・cm、飽和磁化が65emu/gであった。
<二成分現像剤>
キャリアE1をトナーT1−1と混合することによって、二成分現像剤を作製した。二成分現像剤は、トナー6重量部とキャリア94重量部とをナウターミキサ(商品名:VL−0、ホソカワミクロン社製)に投入し、25分間撹拌混合することによって作製した。
<トナーT1−2〜T1−15>
ビニル樹脂(A)とビニル樹脂(B)の重量平均分子量、反応触媒(D)の有無、混練最高温度、滞留時間が異なることを除き、トナーT1−1と同じ方法で、表1に示すトナーT1−2〜T1−15を作製した。重量平均分子量は、カルボキシル基含有ビニル単量体であるメタクリル酸及びグリシジル基含有ビニル単量体であるメタクリル酸グリシジルを配合する量、内温、反応させる時間等によって適宜調整される。トナーT1−1〜T1−8は実施例であり、トナーT1−9〜T1−15は比較例である。
【0101】
トナーT1−2は、混練最高温度が150℃の実施例、トナーT1−3は、混練最高温度が200℃の実施例、トナーT1−2は、トナー中の架橋体成分量が10重量%を超える実施例、トナーT1−8は、トナー中の架橋体成分量が40重量%を超えない実施例である。
【0102】
トナーT1−2は、ビニル樹脂(B)の重量平均分子量が10000を超える実施例、トナーT1−6は、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量が5000を超える実施例、トナーT1−7は、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量が100000より小さい実施例、トナーT1−8は、ビニル樹脂(B)の重量平均分子量が1000000より小さい実施例である。
【0103】
また、トナーT1−9は、混練最高温度が210℃の比較例、トナーT1−10は、混練最高温度が140℃の比較例、トナーT1−11は、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量が5000より小さい比較例、トナーT1−12は、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量が100000より大きい比較例、トナーT1−13は、ビニル樹脂(B)の重量平均分子量が10000より小さい比較例、トナーT1−14は、ビニル樹脂(B)の重量平均分子量が1000000より大きい比較例である。
【0104】
トナーT1−10は、トナー中の架橋体成分量が10重量%より少ない比較例、トナーT1−12は、トナー中の架橋体成分量が40重量%より多い比較例、トナーT1−15は、反応触媒(D)未使用での比較例である。
<トナーT2−1>
ビニル樹脂C1
・カルボキシル基を有する上記のビニル樹脂A1 80重量部
・グリシジル基を有する上記のビニル樹脂B1 20重量部
をヘンシェルミキサにて5分間混合した。得られた混合物を、二軸混練機(池貝社製:PCM30型)で溶融混練することで、架橋体含有量が6.5重量%のビニル樹脂C1を得た。
【0105】
得られたビニル樹脂C1をカッティングミルで粗粉砕した後、材料を均一混合させるために、
・ビニル樹脂C1 100重量部
・カーボンブラック(pH=3.5、三菱化学社製MA100) 12重量部
・ポリプロピレンワックス(三洋化成社製:550P) 3重量部
・帯電制御剤(保土谷化学社製TRH) 2重量部
をヘンシェルミキサにて10分間混合した。得られた混合物に、反応触媒(D)であるポリアミド樹脂(スリーボンド社製Three Bond 2105)1重量部を加えて、二軸混練機(池貝社製:PCM30型)を用いて混練最高温度を160℃、滞留時間を90秒で溶融混練することで、混練物を得た。
【0106】
得られた混練物をカッティングミルで粗粉砕した後、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業社製:IDS−2型)によって微粉砕した。微粉砕物を、風力分級機(日本ニューマチック工業社製:MP−250型)を用いて分級することによって、体積平均粒子径が6.0μmのトナーを得た。
【0107】
得られたトナー100重量部に、個数平均粒子径が7nmのヘキサメチルジシラザンで表面を処理したシリカ粒子(デグサ社製)1重量部を加えて、撹拌羽根の先端速度を15m/秒に設定した気流混合機(三井鉱山社製:ヘンシェルミキサ)で2分間撹拌することによって負帯電性のトナーT2−1を作製した。
【0108】
次に、トナーT1−1と同様にキャリアと混合して二成分現像剤を得た。
<トナーT2−2〜T2−11>
架橋体含有量、反応触媒(D)の有無、混練最高温度、滞留時間が異なることを除き、トナーT2−1と同じ方法で、表1に示すトナーT2−2からT2−11を作製した。架橋体含有量は、カルボキシル基含有ビニル単量体であるメタクリル酸及びグリシジル基含有ビニル単量体であるメタクリル酸グリシジルを配合する量、内温、反応させる時間等によって適宜調整される。トナーT2−1〜T2−6は実施例であり、トナーT2−7〜T2−11は比較例である。
【0109】
トナーT2−1〜T2−6はビニル樹脂(C)の架橋体含有量が8.0重量%以下の実施例であり、トナーT2−5は、混練最高温度が150℃の実施例、トナーT2−6は、混練最高温度が200℃の実施例である。トナーT2−5は、トナー中の架橋体成分量が10重量%を超える実施例、トナーT2−6は、トナー中の架橋体成分量が40重量%を超えない実施例である。
【0110】
また、トナーT2−7、T2−8は、ビニル樹脂(C)の架橋体含有量が8.0重量%を超える比較例、トナーT2−10は、混練最高温度が140℃の比較例、トナーT2−11は、混練最高温度が210℃の比較例である。
【0111】
トナーT2−10は、トナー中の架橋体成分量が10重量%より少ない比較例、トナーT2−11は、トナー中の架橋体成分量が40重量%より多い比較例、トナーT2−9は反応触媒(D)未使用での比較例である。
<評価>
連続プリントテスト
作製したトナーT1−1〜T2−11を、図1に示す画像形成装置を用いて、連続プリントテストを行い、トナー及び二成分現像剤の流動性変化、画像濃度の安定性を調査した。
【0112】
画像形成装置の現像条件として、感光体ドラムの周速を200mm/秒、現像ローラの周速を280mm/秒、感光体ドラムと現像ローラのギャップを0.4mm、現像ローラ12と規制ブレード14のギャップを0.5mmに設定した。更に、ベタ画像における紙上のトナー付着量を0.5mg/cmとし、非画像部におけるトナー付着量を最も少なくなる条件に、感光体ドラムの表面電位及び現像バイアスをそれぞれ調整した。
【0113】
画像形成装置の定着条件として、加熱ローラと加圧ローラの周速を200mm/秒、設定温度を180℃、定着ニップ幅を8mmに設定し、記録媒体として、A4サイズの電子写真用紙(普通紙)を使用した。
【0114】
連続プリントテストは、温度35℃、湿度60%環境下にて、電子写真用紙の上に記録されるプリント画像の画像面積率が6%となる文字画像を100枚間欠で10000枚の連続プリントテストを行った。
【0115】
トナー及び二成分現像剤の流動性変化については、画像に不具合が出たタイミングで、現像装置内の現像剤の状態を目視で観察し、現像剤の流動性が低下し、現像ローラに現像剤が正常に供給されていない状態を、現像剤の流動性低下と判断した。
【0116】
画像濃度等の画像評価は、初期、5000枚目、10000枚目に下記測定方法にて、トナー帯電量、画像濃度、カブリ濃度を測定することで行った。
【0117】
トナー帯電量の評価としては、初期、5000枚目、10000枚目の現像剤全てにおいて、吸引式小型帯電量測定装置(トレックジャパン社製:210HS−2A)を用いて測定し、トナー帯電量が20±3μC/gの範囲内にあれば良好、20±3μC/gの範囲外にあれば不良とした。
【0118】
画像濃度の評価としては、初期、5000枚目、10000枚目の画像全てにおいて、分光測色濃度計(日本平版印刷機材社製:X−Rite938)を用いて評価画像の光学濃度を測定し、画像濃度が1.2以上を良好、1.2未満を不良とした。
【0119】
カブリ濃度については、非画像部の濃度を次の手順により算出する。白度計(日本電色工業社製:Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)を用いて、あらかじめプリント前の電子写真用紙の白色度を測定した。次に、プリント後の電子写真用紙の非画像部における白色度を、白度計を用いて測定し、プリント前の白色度との差を求める。この差をカブリ濃度とした。
【0120】
カブリ濃度の評価としては、初期、5000枚目、10000枚目の画像全てにおいて、1.0未満を良好、1.0以上(肉眼でカブリが明確に見える状態)を不良とした。
定着性テスト
定着強度については、定着させた電子写真用紙のベタ画像部分を軽く折り、更に、重さ100g、直径10cm、幅2cmの円柱状ローラを転がしてきっちり折り目をつくった後、電子写真用紙の折り目を広げて清潔な布で折り目の脱落トナーを払い落とし、トナーの剥離が確認されなかった場合を良好、トナーの剥離が確認された場合を不良とした。
【0121】
ホットオフセット性については、定着ローラに付着したトナーが電子写真用紙に再転写されていないかどうかを目視で確認し、再転写されていない場合を良好とし、再転写されている場合を不良とした。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
表2に示すように、実施例に示されたトナーT1−1〜T1−8を用いた連続プリントテストにおいては、トナーの帯電量、画像濃度、カブリ濃度は安定しており、現像剤の流動性変化がなく良好な状態であった。また、表1に示すように、定着性テストにおいても、定着強度、ホットオフセット性ともに良好な結果が得られた。
【0125】
一方、表1に示すように、比較例に示されたトナーT1−9、T1−12、T1−14を用いた定着試験では、トナーT1−9では、トナー中の架橋体成分量が40重量%より多いことに起因する、トナーT1−12では、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量が100000より大きいことに起因する、トナーT1−14では、ビニル樹脂(B)の重量平均分子量が1000000より大きいことに起因する、低温定着性の不良がそれぞれ起こり、良好な結果は得られなかった。そのうち、トナーT1−9では、混練最高温度が200℃より高いことに起因するホットオフセットも発生した。
【0126】
また、比較例に示されたトナーT1−10、T1−11、T1−13、T1−13を用いた定着試験では、トナーT1−10では、トナー中の架橋体成分量が10重量%より少ないことに起因する、トナーT1−11では、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量が5000より小さいことに起因する、トナーT1−13では、ビニル樹脂(B)の重量平均分子量が10000より小さいことに起因する、トナーT1−15では、反応触媒(D)が添加されていないことに起因するホットオフセットがそれぞれ発生し、良好な結果は得られなかった。
【0127】
また、比較例に示されたトナーT1−10を用いた定着試験では、混練最高温度が150℃より低いことに起因するホットオフセットが発生した。
【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
次に、表4に示すように、実施例に示されたトナーT2−1〜T2−6を用いた連続プリントテストにおいては、トナーの帯電量、画像濃度、カブリ濃度は安定しており、現像剤の流動性変化がなく良好な状態であった。また、表3に示すように、定着性テストにおいても、定着強度、ホットオフセット性ともに良好な結果が得られた。
【0131】
一方、表3に示すように、比較例に示されたトナーT2−7、T2−8を用いた連続プリントテストにおいて、ビニル樹脂(C)の架橋体含有量が8.0重量%より多いことに起因するフィラーの分散不良のため、10000枚目で、トナー帯電量が20±3μC/gの範囲外となる帯電量の低下、画像濃度については、1.2未満となる程の画像濃度の低下、更にカブリ濃度に至っては、初期から1.0以上となるカブリ濃度の不良が起こり、良好な結果は得られなかった。トナー中の架橋体成分量が40重量%より多いことに起因する低温定着性の不良も発生した。
【0132】
また、比較例に示されたトナーT2−9を用いた定着試験では、反応触媒(D)が添加されていないことに起因するホットオフセットが発生し、良好な結果は得られなかった。
【0133】
また、比較例に示されたトナーT2−10、T2−11を用いた定着試験では、トナーT2−10で、混練最高温度が140℃と低いことに起因する、トナーT2−11で、混練最高温度が210℃と高いことに起因するホットオフセットがそれぞれ発生し、良好な結果は得られなかった。
【0134】
また、トナーT2−10では、架橋体成分量が10重量%より少ないことに起因する、トナーT2−11では、架橋体成分量が40重量%より多いことに起因する低温定着性の不良もそれぞれ発生した。
【符号の説明】
【0135】
1 トナー容器
1a 内壁
2 トナー排出口
3 トナー排出部材
3a トナー排出部材回転軸
4 トナー排出部材隔壁
6 トナー搬送部
8 トナー撹拌部材
8a 回転軸
9 トナー汲み上げブレード
10 トナーカートリッジ
11 現像槽
12 現像ローラ
13 撹拌ローラ
14 規制部材
15 トナー濃度検知センサ
15a センサ面(上面)
16 開口部
17 感光体ドラム
20 現像装置
21 給紙カセット
22 露光装置
23 定着装置
24 転写装置
25 帯電装置
26 クリーニング装置
27 給紙ローラ
28 排紙ローラ
29 排紙トレイ
30 画像形成装置
31 スキャナユニット
32 定着ローラ
33 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバインダ樹脂と着色剤を含むトナーの製造方法において、
バインダ樹脂の混練工程は、カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)とグリシジル基を有するビニル樹脂(B)の樹脂混合物に、反応触媒(D)を混練する工程であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
少なくともバインダ樹脂と着色剤を含むトナーの製造方法であって、
バインダ樹脂の混練工程は、ビニル樹脂(A)のカルボキシル基とビニル樹脂(B)のグリシジル基が反応して得られた架橋体(テトラヒドロフラン不溶分)を含むビニル樹脂(C)に反応触媒(D)を混練する工程であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項3】
前記反応触媒(D)が脂肪族アミン、芳香族アミン、ポリアミド、三級及び二級アミン、イミダゾール類、酸無水物である、請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂混合物に前記反応触媒(D)を混練する工程、または、前記ビニル樹脂(C)に前記反応触媒(D)を混練する工程は、150〜200℃の温度で行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のトナーの製造方法によって製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項6】
前記カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)と前記グリシジル基を有するビニル樹脂(B)の樹脂混合物が、前記反応触媒(D)を使用することにより得られた架橋体を含む請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記ビニル樹脂(C)は、前記カルボキシル基を有するビニル樹脂(A)のカルボキシル基と、前記グリシジル基を有するビニル樹脂(B)のグリシジル基が反応して得られた架橋体を含むことを特徴とする請求項5に記載のトナー。
【請求項8】
前記ビニル樹脂(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル及びフマル酸オクチルから選択される単量体に由来する樹脂である請求項5〜7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
前記ビニル樹脂(B)が、アクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸グリシジル及びメタクリル酸β−メチルグリシジルから選択される単量体に由来する樹脂である請求項5〜7のいずれかに記載のトナー。
【請求項10】
前記ビニル樹脂(A)が5000≦Mw≦100000の重量平均分子量Mwを、前記ビニル樹脂(B)が10000≦Mw≦1000000の重量平均分子量Mwを有する請求項5〜9のいずれかに記載のトナー。
【請求項11】
前記ビニル樹脂(C)の架橋体含有量が8.0重量%以下であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のトナー。
【請求項12】
前記混練工程を経て得られるトナー中の架橋体成分量は、10〜40重量%である請求項5〜11のいずれかに記載のトナー。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項14】
感光体ドラムと、前記感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光装置と、現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含み、前記現像装置は、請求項5〜12のいずれかに記載のトナーを収容して前記感光体ドラムの表面に形成される前記静電潜像を現像することによりトナー像を形成させる現像装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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