説明

トナー供給ローラ用成形型の洗浄方法及び、トナー供給ローラの製造方法

【課題】トナー供給ローラ用成形型の成形面に固着したウレタンやワックス系離型剤残渣を簡単に除去することができるトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法を提供すること。
【解決手段】芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなり、該芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム層を形成してなるトナー供給ローラを製造するために該内部円筒状部分にワックス系離型剤を塗布して使用するトナー供給ローラ用成形型を洗浄する方法において、(1)40℃以上100℃以下の水(H2O)を用いて、少なくとも該成形型の内面を洗浄する工程と、(2)少なくとも該内面を風乾するエアーブロー工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー供給ローラ用成形型の洗浄方法及び、該洗浄方法により洗浄した成形型を用いるトナー供給ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター及びファクシミリ等の画像形成装置においては、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像装置により現像している。このような現像装置には、ホッパー内に収容された所定のトナー(現像剤)を、該現像担持体表面上にムラ無く均一に供給し、かつ現像後に該現像担持体表面上の残存トナーを掻き取るためにトナー供給ローラが内蔵されている。この現像機構においては、該現像担持体のトナー保持性能に加え、トナー供給ローラの表面性能が重要になってくる。
【0003】
上記要求を満足できる良好なトナー供給ローラとして、弾性発泡体ローラが挙げられる。そして、柔軟性や強度面等の観点から好適なトナー供給ローラとして使用できる弾性発泡体ローラの製造方法には以下の方法がある。まず、金型からの成形品の脱型を容易にするため離型剤が塗布されたトナー供給ローラ成形型を準備する。離型剤が塗布された成形型内に、イソシアネートとポリオール成分(ポリオール、整泡剤、触媒及び水等)とを含有する組成物を混合した後で注入し、これを型内で発泡させ、トナー供給ローラを成形し、脱型することによりローラ表面セルが開口したトナー供給ローラを製造することができる。
【0004】
成形を繰り返し行っていると、成形型の成形面にウレタンや離型剤残渣が固着するために、離型性の低下や、成形後ローラ表面のセル開口性の低下が起こるために、成形型内面の洗浄が必要になる。これまで、成形型の付着物の除去方法としては、へらのような道具を用い剥離させる方法などの物理的な除去が用いられてきた。物理的な除去を行うことで洗浄効率は上がるが、成形型の付着物を完全に除去する為には、成形型を傷つけ易いと共に、手間と時間が係るため、より実用的な方法が望まれる。
【0005】
また、トナー供給ローラの成形には円筒状成形型を使用するため、へらの使用は困難であり、ブラシ等を使用することになるが、近年、画像形成装置の高性能化に伴い、トナー供給ローラの形状も多様化しており、ブラシをはじめとする物理的な除去では十分な除去が困難である。例えば、ウレタンフォーム層の外周面が、ローラ周方向に歯車形状の断面をもって、回転軸方向に平行な直線状、又は螺旋状に延びる複数の凸条によって凹凸化される等の複雑な形状を有するトナー供給ローラが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような複雑な形状の外周面を有するトナー供給ローラを成形するには金型内面形状も複雑化する。
【0006】
そこで、以前から成形型の洗浄方法として、化学的な除去方法も提案されている。化学的な除去では、ウレタン材料重合物が付着した被洗浄物を溶剤系洗浄液に浸漬し、揺動、攪拌、熱及び超音波等の機械的力を併用させながら洗浄除去していた。
【0007】
これらの溶剤洗浄では、通常、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びジクロロメタン等の塩素系炭化水素を主成分とする溶剤を使用していた。しかし、塩素系炭化水素の毒性や使用規制(環境規制)により使用が困難となる方向にあり、付着したウレタン付着物の除去方法として、例えば、N−メチル−2−ピロリドンをはじめとするラクトン類及びアルカリ溶液による洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【0008】
この場合、ウレタン付着物をN−メチル−2−ピロリドンにて膨潤させ、アルカリ溶液で溶解させる方法である。この方法は成形型内面に付着したウレタンは除去できるが、成形型内面の離型剤の除去が難しく、付着した離型剤の劣化が始まり、残渣離型剤の劣化層上に新規離型剤が均一な塗布が困難になり、繰り返し成形すると、成形型の成形面にウレタンや離型剤残渣が固着し、離型性の低下や、成形後ローラ表面のセル開口性の低下が起こる。
【0009】
よって、ウレタンや残渣離型剤の除去のために、徹底した洗浄が必要であるが、工程の増加はコストアップとなり、更なる技術手段を必要とされている。
【特許文献1】特開平05−61350号公報
【特許文献2】特許第02834716号公報
【特許文献3】特開平8−244040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術における課題を解決するためのものであり、トナー供給ローラ用成形型の成形面に固着したウレタンやワックス系離型剤残渣を簡単に除去することができるトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、トナー供給ローラ成形型における離型性の低下や、成形後トナー供給ローラ表面のセル開口性の低下を防止し、工程削減および装置コストの削減に有利なトナー供給ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従って、芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなり、該芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム層を形成してなるトナー供給ローラを製造するために該内部円筒状部分にワックス系離型剤を塗布して使用するトナー供給ローラ用成形型を洗浄する方法において、
(1)40℃以上100℃以下の水(H2O)を用いて、少なくとも該成形型の内面を洗浄する工程と、
(2)少なくとも該内面を風乾するエアーブロー工程と、
を有することを特徴とするトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法が提供される。
【0013】
また、本発明に従って、芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなるトナー供給ローラ用成形型を用いて、電子写真装置の現像装置に搭載され、適正量の現像剤を現像ローラに配置するトナー供給ローラを製造する方法であって、
上記のトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法により洗浄した該トナー供給ローラ用成形型を準備する工程と、
該内部円筒状部分にワックス系離型剤を塗布した後、該芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム層を形成させる工程と、
を有することを特徴するトナー供給ローラの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたところから明らかなように、本発明によれば、トナー供給ローラ用成形型の成形面に固着したウレタンやワックス系離型剤残渣を簡単に除去し、離型性の低下や、成形後トナー供給ローラ表面のセル開口性の低下を防止し、工程削減、装置コストに有利なトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法及び、該洗浄方法によるトナー供給ローラ用成形型により得られるトナー供給ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の本発明について詳細に説明する。
【0016】
その方法は、芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなり、該芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム層を形成してなるトナー供給ローラを製造するために該内部円筒状部分にワックス系離型剤を塗布して使用するトナー供給ローラ用成形型を洗浄する方法において、
(1)40℃以上100℃以下の水(H2O)を用いて、少なくとも該成形型の内面を洗浄する工程と、
(2)少なくとも該内面を風乾するエアーブロー工程と、
を有することを特徴とするトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法である。
【0017】
以下、詳細に説明する。
【0018】
(洗浄工程の説明)
第(1)工程は40℃以上100℃以下の水(H2O)を用いて洗浄する工程である。具体的に(1)工程において、水(H2O)に成形型を浸積させる、あるいは水を成形型内を循環させる工程である。この工程において、トナー供給ローラ用成形型の駒はパイプ状の成形型から取外して洗浄することが望ましく、超音波、攪拌及び振動等の機械的作用やブラシやへら等の物理的除去とを併用することにより、洗浄効率が上がりさらに好ましい。水温が40℃未満の場合、ウレタンフォームの膨潤速度に時間がかかり好ましくない。また、ワックスを含有する離型剤は通常、融点が40℃から100℃付近であり、水温を離型剤の融点より上に保ち、離型剤を溶融した状態で洗浄することで、洗浄効率が上がる。よって、成形型の温度も40℃〜120℃にすることが好ましく、40℃未満の場合、ワックス系離型剤が溶融せずに成形型に残存しやすく好ましくない。また、型温が120℃を超えて長時間放置すると成形型の寸法精度が落ちる場合があるので好ましくない。また、洗浄工程において、成形型を水に浸漬させる、又は水を循環させる時間は20sec以上であれば、離型剤がほぼ溶融された状態で洗浄することができる。ワックスは、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ワックス、天然ワックス及び流動パラフィン等のワックス成分が挙げられ、公知のワックス類の中から適宜選択して使用することができ、一種又は二種以上を組み合せて用いてもよい。また、離型剤を型に塗布するには通常公知の方法を用いればよく、例えば離型剤を型に浸漬、吹付、刷毛塗り等により、或いはエアゾール化して噴射したり、布に浸み込ませて塗り付けることにより塗布して、媒体を蒸発除去すればよい。
【0019】
第(2)工程はエアーブロー工程であり、ここでのエアーブローの役割は、型内面に残存している水滴を完全に除去することであり、水滴が成形型内面に残存していると、水は発泡剤の役割をしているために、次の成形時に異常発泡することがある。エアーブロー方法としては、特に制限はないが、該内形円筒型の内部に長軸エアーノズルを挿入しながら、成形型内面により近い位置でエアーブローすることが好ましく、さらには、金型温度や残存水滴量にあわせて、長軸エアーノズルの移動スピードを設定することが好ましい。(2)工程は、エアーブロー流量が50L/min〜150L/minであることが好ましい。50L/min未満の場合、残存している成形型内面の水滴を除去することが難しく、150L/minを超える流量をエアーブローすることは機械的に困難である。上記エアブロー流量の範囲において、エアブローの方向は、内部円筒状の内壁に対して、略垂直(90°)で当てることが好ましい。
【0020】
また、エアーブローを行う時間は金型温度や残存水滴量にあわせて適宜に設定することが望ましい。
【0021】
本発明のトナー供給ローラ用成形型は、芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなるものであれば、特に限定されず、従来公知の材質、形状の中から適宜選択して使用することが出来る。
例えば、ステンレス(SUS304等)製で、ベントホール(型内にガスが溜まり発泡体に欠肉を生じるのを未然に防止するため設けられた孔径約1mm程度の成形型内外に連通する小孔)を有する円筒パイプ状成形型等がある。
【0022】
トナー供給ローラは円柱状の芯金と、芯金の両端部を除いて芯金の周りに設けられたポリウレタンフォーム層を備える。本発明における洗浄方法により洗浄されたトナー供給ローラ用成形型を用いてトナー供給ローラを成形することで、適正量の現像剤を現像ローラに配置するために必要な開口セルを得ることができ、セル開口率は50〜90%であることが好ましい。前記セル開口率とは、全表面積に対する開口部分(セル)の割合である。セル開口率が50%未満の場合、トナー搬送量が不安定化し、トナーを均一に供給することが出来ないため好ましくない。また、トナー供給ローラのセル開口率を90%超過とすることは、製造手法上では容易なことではない。
【0023】
(トナー供給ローラの組成について)
本発明に係るトナー供給ローラは、ポリウレタンフォームからなる弾性体層を有するトナー供給ローラであり、前記ポリウレタンフォームが、少なくともポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン原料から形成されたものである。
【0024】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては特に制限は無く、従来公知の各種ポリエーテルポリオールの中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、そのような液状のポリウレタン原料を構成するポリエーテルポリオール成分としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられているポリエーテルポリエーテルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオール及びポリマーポリエーテルポリオール等の公知のポリエーテルポリオール類の中から適宜選択して使用することが出来、一種又は二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0025】
なお、上記ポリエーテルポリオールを用いると、耐湿熱耐久性に優れた軟質高弾性ポリウレタン製造に好適である。更に、エチレンオキシドを5モル%以上含有するポリエーテルポリエーテルポリオールを使用すると、成形性が良く好ましい。また、予めポリイソシアネートと重合させたプレポリマーとして用いても構わない。
【0026】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することが出来る。例えば2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が、単独で又は二種以上を組み合せて用いてもよい。なお、前記ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種又は2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーも、ポリイソシアネートとして使用することもできる。
【0027】
(NCOインデックス)
ポリウレタン原料のNCOインデックスは、60〜120であることが好ましく、70〜100であることがより好ましい。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数をイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除したものに100を乗じた値とする。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。
【0028】
(その他のポリウレタンフォーム用原料)
触媒としては特に制限は無く、従来公知の各種触媒の中から適宜選択して使用することが出来る。トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン及びビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル等、従来公知の触媒が使用できる。
【0029】
整泡剤としては特に制限は無く、従来公知の各種整泡剤の中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、ポリジメチルシロキサンとエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサン、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩やこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物などが挙げられる。
【0030】
また、これらポリエーテルポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタン原料には更に、従来と同様に架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、破泡剤等が、目標とする発泡成形後のポリウレタンスポンジ層の構造、即ち、連続気泡型若しくは独立気泡型の何れか一方を生ぜしめ易い公知の配合となるように添加されて、反応性の発泡原料とされる。また、そのような原料には必要に応じて所望の導電性を付与するための導電性付与剤や帯電防止剤等も、従来と同様に公知のものが添加せしめられる。
【0031】
導電付与剤は公知の物を使用することができ、例えば導電付与剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタンや酸化錫等の導電性の金属酸化物、CuやAg等の金属、これら導電性材料を粒子表面に被覆して導電化した粒子等が挙げられる。これらの導電付与剤は、単独あるいは複数種を組み合わせて用いることができる。特に、カーボンブラックは、比較的少量(質量比)の添加によって、所望の導電性を付与できる点で好ましい。その他添加剤として、難燃剤、減粘剤、顔料、安定剤、着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、酸化防止剤等を必要に応じて配合することが出来る。架橋剤としては、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の従来公知のものが挙げられる。
【0032】
そして、混合操作の容易性や得られるポリウレタンフォームの特性の見地から、ポリイソシアネート、ポリエーテルポリオール及び整泡剤の好適な組み合わせは、ポリイソシアネートとしてはジフェニルメタンジイソシアネートとTDIを混合したものを用い、ポリエーテルポリオールとしてはポリエーテルポリエーテルポリオールを用い、整泡剤としては水溶性ポリエーテルシロキサンとを用いた組み合わせである。
【0033】
(トナー供給ローラの製造方法)
本発明にかかる電子写真装置の現像装置に搭載され、適正量の現像剤を現像ローラに配置するトナー供給ローラを製造する方法は、本発明にかかるトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法により洗浄したトナー供給ローラ用成形型を使用することを特徴とする。すなわち、少なくとも、
(1)本発明のトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法により洗浄した該トナー供給ローラ用成形型を準備する工程と、
(2)該内部円筒状部分にワックス系離型剤を塗布した後、該芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム層を形成させる工程と、を有する。トナー供給ローラ成形型としては、芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなるものであれば、特に限定されない。以下でより具体的にトナー供給ローラの製造方法を説明する。
【0034】
本発明のトナー供給ローラの製造方法は、まず円筒状成形型に離型剤をスプレーを用いて均一に塗布し例えば50℃に加温乾燥する。この加熱乾燥の温度は、離型剤の融点未満で行うことが好ましく、離型剤塗布面を十分に乾燥させることが好ましい。前記ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び所望により用いられる整泡剤、水、その他助剤等を均質に混合してウレタン原料を調製した後、これを型に注入し、加熱して反応硬化させることによりポリウレタンフォームを形成することができる。
【0035】
前記ウレタン原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無いが、混合温度は、通常10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、混合時間は、通常1秒〜10分間、好ましくは3秒〜5分間程度である。
【0036】
また、加熱して反応硬化させる際、従来公知の方法により、発泡させることにより、ポリウレタンフォームからなるトナー供給ローラを作製することが出来る。発泡方法については特に制限は無く、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法等、いずれの方法をも用いることが出来る。この発泡時の成形型の温度を35〜100℃にすることが好ましく、40〜80℃にすることがより好ましい。なお、発泡倍率は適宜定めればよく、特に制限はない。
【0037】
(トナー供給ローラ)
本発明のトナー供給ローラは、このようにして得られたポリウレタンフォームを用いたものであって通常、鉄にメッキを施したものやステンレス鋼等からなる例えば直径が4〜6mm、長さが200〜400mmの芯金を、前記ポリウレタンフォームで被覆して弾性体層を形成することにより製造することができる。用途によっては、導電性や半導電性、或いは絶縁性の塗料により、その外側を塗装してもよい。本発明のトナー供給ローラの外径は特に限定されず、その目的によりさまざまな外径を有するものとすることができるが、一般的には10〜20mmの外径を有する。芯金とポリウレタンフォームとの接合方法については特に限定されないが、芯金を予めモールド(成形型)内部に配設しポリウレタン原料を注型し硬化する方法や、ポリウレタンフォームを所定の形状に成形した後に接着する方法等を用いることが出来る。どちらの方法においても、必要に応じて芯金とポリウレタンフォームの間に接着層を設けることが出来る。この接着層としては、接着剤やホットメルトシート等の公知の材料を用いることが出来る。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが理解されるべきである。
【0040】
(実施例1〜8及び比較例1〜3)
図1に示されるように、原料を注入するための容器7と1箇所以上の注入孔5を有する該下駒が嵌合連結することにより、パイプ型1内に原料を発泡させる構造の成形型を準備し、成形面が脱脂、洗浄された未使用の内形円筒型を有するパイプ型(ステンレス製:SUS304)の型内面にワックス系離型剤(商品名:フリリース600、ネオス(株)製)を塗布せしめた。
【0041】
次に、ポリエーテルポリオール(商品名:アクトコールEP−553、三井化学ポリウレタン株式会社製、OH価=56mgKOH/g、Mw=3,000、末端のエチレンオキシド結合量=7モル%)100質量部、3級アミン触媒(商品名:TOYOCAT ET、東ソー株式会社製、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70%ジプロピレングリコール溶液)0.05質量部、3級アミン触媒(商品名:Dabco 33LV、エアプロダクツ・ジャパン株式会社製、トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液)0.2質量部、シリコーン整泡剤(商品名:NIAX SILICONE L−3640、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)1.0質量部、発泡剤として水2質量部を攪拌混合し、その中に、イソシアネート(商品名:コスモネートTM−50、三井化学ポリウレタン株式会社製、NCO=40%、MDI=50モル%含有)をNCOインデックス100となる量を加え、ミキシングチャンバー内で5秒撹拌した後、60℃に温調したトナー供給ローラ用成形型に注入し、成形型内で発泡硬化した。さらに、硬化終了後、ポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラを成形型から脱型し、該成形型の成形面をナイロンブラシで清掃し、再度、ワックス系離型剤を塗布せしめ、上記成形条件で20回成形を繰り返し、その後、該成形型を下記条件にて洗浄を行った。
【0042】
なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数を、配合したポリオール、発泡剤等の成分中の水酸基等のイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除した値である。イソシアネート基と反応する活性水素数とイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100と定義されている。
【0043】
「セル開口性及び総合評価」
上記成形方法にて、トナー供給ローラの成形・脱型を計20回繰り返し行った後、表1に示される(1)水を用いて成形型の成形面を洗浄する工程を1分間行った後、(2)エアーブロー工程を行った。(1)工程においては水(H2O)に成形型を浸積させ、ナイロンブラシによる物理的除去を併用し、(2)工程においては、該内形円筒型の内部中心に長軸エアーノズル(ノズルヘッド径Φ10mm)を40mm/secの移動スピードで挿入しながら、表1に示すエアーブロー流量にて水滴除去を行った。洗浄後、再度、上記成形方法にてトナー供給ローラを成形し、ウレタンフォーム層の表面のセル開口について、リアルタイム走査型レーザー顕微鏡を用いて表面の画像を取り込み画像解析により2値化処理を行いセル開口面積率を求め、表1に示した。
【0044】
セル開口面積率[%]=セル開口面積/画像範囲×100%
また、上記トナー供給ローラについて、画像評価(ベタ濃度均一性)を行なった。それらの結果を表1に示した。なお、画像評価は次のように行なった。すなわち、フルカラーレーザービームプリンタ(キヤノン(株)製;LBP−2510)の各色カートリッジに上記トナー供給ローラを組み込み、このカートリッジを取り付けた前記フルカラーレーザービームプリンタを用いて、組込み後、1晩以上放置してから各色ハーフトーン画像を作像して濃度均一性を目視により調べ、◎(良好)、○(濃度ムラ、色抜けがやや見られるものの使用には問題ない程度)、△(濃度ムラ、色抜けがやや見られ、使用するには気になる程度)及び×(濃度ムラ、色抜けが観察され、使用不可)の4段階で評価した。なお、濃度ムラとは、画像が不均一であることをいい、色抜けとは、イメージのあるところにトナーが供給されていないことをいう。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1〜9は、(1)40℃以上100℃以下の水(H2O)を用いて成型面を洗浄する工程と、(2)エアーブロー工程からなる洗浄方法が施されているため、成形型内面の付着物を除去でき、トナー供給ローラのセル開口面積率も高い。(1)の工程の洗浄時間は、20secである。(2)の工程のエアブローを行った時間は8secである。よって、トナー供給ローラによるトナー搬送量が安定し、トナーが均一に供給され、画像評価においても、良好な画像を得ることが出来る。その中でも、実施例1、3、6、9においてはセル開口面積率が非常に高く、画像評価も濃度ムラや色抜けが全く見られず良好であった。
【0047】
比較例1は、水を用いた洗浄を行わず、ナイロンブラシによる物理的洗浄のみ行ったため、成形型内面にウレタン及び離型剤付着が多数見られ、洗浄後の成形品においてもセル開口面積率は低い結果であった。また、比較例2においても、洗浄後の成形型内面に部分的なウレタン及び離型剤付着が見られ、成形を行うと、セル開口率が低い結果であった。画像評価においては、トナー搬送量が不安定化し、トナーを均一に供給することが出来ないため、濃度ムラや色抜けが発生した。
【0048】
比較例3は、エアーブローを用いて成型面を洗浄する工程を有しないために、成形型内面の水分を除去することができず、ウレタンフォームの異常発泡が発生し、セル開口率が低い結果となった。よって、画像評価においても、トナーが供給されない部分が発生し、濃度ムラや色抜けが見られた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明におけるトナー供給ローラ成形型の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1‥‥パイプ型
2‥‥上駒
3‥‥下駒
4‥‥芯金
5‥‥注入孔
6‥‥ガス抜き用隙間
7‥‥容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなり、該芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム層を形成してなるトナー供給ローラを製造するために該内部円筒状部分にワックス系離型剤を塗布して使用するトナー供給ローラ用成形型を洗浄する方法において、
(1)40℃以上100℃以下の水(H2O)を用いて、少なくとも該成形型の内面を洗浄する工程と、
(2)少なくとも該内面を風乾するエアーブロー工程と、
を有することを特徴とするトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法。
【請求項2】
該(1)工程において、該成形型を40℃〜120℃にすることを特徴とする請求項1に記載のトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法。
【請求項3】
該(2)工程の該エアーブローの流量が50L/min〜150L/minである事を特徴とする請求項1又は2に記載のトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法。
【請求項4】
芯金を把持する部位を有する少なくとも1つの駒と該駒により封印される内部円形状を有するパイプ状の成形型からなるトナー供給ローラ用成形型を用いて、電子写真装置の現像装置に搭載され、適正量の現像剤を現像ローラに配置するトナー供給ローラを製造する方法であって、
請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー供給ローラ用成形型の洗浄方法により洗浄した該トナー供給ローラ用成形型を準備する工程と、
該内部円筒状部分にワックス系離型剤を塗布した後、該芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム層を形成させる工程と、
を有することを特徴するトナー供給ローラの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−134044(P2010−134044A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307716(P2008−307716)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】