説明

トナー保持装置および画像形成装置および物品支持装置

【課題】白抜けを発生しない画像を得るとともに、像担持体表面の磨耗による劣化を低減して像担持体の寿命を延ばすことを可能とする。
【解決手段】トナーによる潜像が形成される像担持体11のトナー転写後に位置するもので、前記像担持体11表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材21を備えたトナー保持装置20であって、バイアス電圧を印加することで前記像担持体11への押し圧が高くなるもので、前記バイアス電圧を印加した状態で前記トナー保持部材21が前記像担持体11表面を押し圧するように支持される押し当て部材22を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用してトナーを転写した後の像担持体表面のトナーを保持するトナー保持装置、およびそのトナー保持装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置もしくはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。また、物品を支持する物品支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の感光体ドラム表面に形成されたトナー画像を紙面に転写する電子写真方式の画像形成装置では、トナーを転写した後の感光体ドラム表面に残留したトナーの除去が行われている。例えば、研磨パッドを感光体ドラム表面に摺接するように配置して表面を微量研磨できるようにするため、研磨パッドを感光体表面に一定の圧力で押し圧できるように、ばねを設けた構成の感光体表面の清掃装置が提案されている。この清掃装置では、図7に示すように、研磨パッド121が感光体ドラム111表面を最良の押し圧でバネ付勢できるように、研磨パッド121を支持する支持体122の2箇所をバネ123,124で支持している。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記構成の清掃装置では、感光体ドラムの回転軸方向に対して左右2箇所に設けたバネの力で研磨パッドを押しているため、研磨パッドが感光体ドラム表面に常時接触していることによって、研磨パッド表面のへたりや磨耗がより生じやすくなっていた。また、軸方向の研磨パッド表面に局所的なへたりや磨耗などが発生した場合、補正することが困難であり、軸方向に均一な清掃機能を維持することが困難な状況であった。また、感光体ドラム表面が清掃する必要のないきれいな状態であっても、感光体ドラム表面が研磨パッドによって常に一定の押し圧で摺擦されているので、研磨パッド表面発生した局所的なへたりや磨耗などによって、感光体ドラム表面は不均一に不必要に削られるため、感光体ドラム表面の劣化を促進させていた。
【0004】
【特許文献1】特開平1−161283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、感光体ドラム(像担持体)表面の残留トナーを保持する際に、研磨パッド(トナー保持部材)が感光体ドラム表面に常時接触していることから、研磨パッド表面のへたりや磨耗がより生じやすくなっていた点である。またトナーが保持されるトナー保持部材のトナー保持面にへたりが生じた場合に補正することが困難な点である。又研磨パッド表面発生した局所的なへたりや磨耗などによって、感光体ドラム表面は不均一に不必要に削られるため、感光体ドラム表面の劣化を促進させてしまう点である。
【0006】
本発明は、トナー保持部材のトナー保持面に生じたへたり等を吸収して、像担持体にトナー保持部材が均一に接触することにより像担持体表面のトナーをむらなく保持することを課題とする。また本発明は、二つの部材を均一に接触させるように支持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るトナー保持装置は、トナーによる潜像が形成される像担持体のトナー転写後に位置するもので、前記像担持体表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材を備えたトナー保持装置であって、バイアス電圧を印加することで前記像担持体への押し圧が高くなるもので、前記バイアス電圧を印加した状態で前記トナー保持部材が前記像担持体表面を押し圧するように支持される押し当て部材を備えたことを特徴とする。
【0008】
または、トナーによる潜像が形成される像担持体のトナー転写後に位置するもので、前記像担持体表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材と、前記トナー保持部材を支持するもので前記トナー保持部材を前記像担持体方向に付勢する付勢手段を具備する支持部材とを備えたトナー保持装置であって、前記トナー保持部材と前記支持部材との間に前記トナー保持部材の変形を吸収する弾性部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る押し当て部材を備えたトナー保持装置では、バイアス電圧を押し当て部材に印加することで押し当て部材が硬化して押し圧が高くなり、トナー保持部材が像担持体表面を押し圧するので、常時、トナー保持部材が像担持体表面を押し圧することがなくなる。すなわち、必要なときのみトナー保持部材が像担持体を押し圧するので、不必要なときにトナー保持部材が像担持体を押し圧することが抑制される。このため、トナー保持部材表面のへたりや磨耗の発生が抑制でき、このためトナー保持部材の像担持体に摺擦する面は常に均一に像担持体表面に摺擦されるようになる。さらに、これによって、像担持体表面は不均一に不必要に摺擦されることが抑制されるため、像担持体表面の劣化が抑えられる。
【0010】
本発明に係る弾性部材を備えたトナー保持装置では、弾性部材の柔軟性によりトナー保持部材表面のへたりや磨耗による微小な変形が吸収される。すなわち、トナー保持部材はそれよりも硬い像担持体表面に摺擦されるので微小な変形はトナー保持部材の裏面側に反映されるが、柔軟性を有する弾性部材によって、その微小な変形は吸収されるので、トナー保持部材の像担持体に摺擦する面は常に均一に像担持体表面に摺擦されるようになる。これによって、像担持体表面は不均一に不必要に摺擦されることが抑制されるため、像担持体表面の劣化が抑えられる。
【0011】
本発明に係る物品支持装置は、第1の部材と、前記第1の部材に接触するように設けられた第2の部材と、バイアス電圧を印加することで前記第2の部材が前記第1の部材を押し圧する圧が高くなるもので、前記バイアス電圧を印加した状態で前記第2の部材が第1の部材表面を押し圧するように支持される押し当て部材とを備えた特徴とする。
【0012】
本発明に係る物品支持装置では、バイアス電圧を印加することで前記第2の部材が前記第1の部材を押し圧する圧が高くなり、第2の部材が第1の部材表面を押し圧するので、常時、第2の部材が像担持体表面を押し圧することがなくなる。すなわち、必要なときのみ第2の部材が第1の部材を押し圧するので、不必要なときに第2の部材が第1の部材を押し圧することが抑制される。また、第1の部材に接触するように第2の部材が設けられているので、二つの部材は均一に接触する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るトナー保持装置によれば、トナー保持部材表面のへたりや磨耗の発生が抑制されるため、白抜けを発生しない画像を得ることができるという利点がある。また、像担持体表面の磨耗による劣化が低減されるため、像担持体の寿命を延ばすことが可能になるという利点がある。また本発明に係る物品支持装置によれば、二つの物品を均一に接触させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のトナー保持装置に係る一実施の形態の第1例を、図1のトナー保持装置の概略構成を示した断面図及び図2の画像形成装置のトナー保持装置が設置される主要部を示した概略構成図によって説明する。又、図3には変形例を示した。
【0015】
まず、画像形成装置について説明する。図2に示すように、画像形成装置1は、画像書込部(図示せず)によって静電潜像が書き込まれるドラム状の像担持体11(例えば感光体ドラム)と、像担持体11の円周方向に沿って配設された像担持体11表面を帯電する帯電器12、帯電器12によって帯電された像担持体11の帯電面を露光して静電潜像を形成する露光器13と、静電潜像をトナーで現像する現像器14と、像担持体11に圧接されて像担持体11に形成されたトナー画像をシートに転写する転写器15(例えば転写ロール)と、シートに転写されたトナー画像を定着させる定着器(図示せず)等を備えているもので、像担持体11の回転方向(矢印方向)において転写器15と帯電器12との間にトナー保持装置20が備えられているものである。
【0016】
図1に示すように、上記トナー保持装置20は、像担持体11表面の残留トナーを保持するトナー保持部材21と、電源31よりバイアス電圧Vを印加することでトナー保持部材21の像担持体11への押し圧が変化して高くなるもので、バイアス電圧Vを印加した状態でトナー保持部材21が像担持体11表面を押し圧するように支持される押し当て部材22とを備えている。上記トナー保持部材21は、例えば像担持体11の軸方向にかつライン状に例えば化学繊維で構成された不織布が用いられる。例えばナイロン繊維とポリエステル繊維とで構成されて不織布を用いる。
【0017】
上記押し当て部材22は、電界強度の変化に応じて溶媒の粘度が変化する電気粘性流体23を内包した導電性弾性部材24で構成されている。具体的には、電気粘性流体23は導電性弾性部材23によって2層に分離されて内包されている。例えば、トナー保持部材21を支持するもので、バイアス電圧Vを印加した際にトナー保持部材21の変形を吸収する粘度が保持される第1電気粘性流体23(23A)を内包した第1導電性弾性部材24(24A)と、第1導電性弾性部材24Aを支持するもので、バイアス電圧Vに応じて溶媒の粘度が変化する第2電気粘性流体24(24B)を内包した第2導電性弾性材料24(24B)とで構成されている。したがって、第1導電性弾性部材24Aと第2導電性弾性部材24Bとは接合されている状態となっている。もしくは、第1導電性弾性部材24Aと第2導電性弾性部材24Bとは第1電気粘性流体23Aと第2電気粘性流体23Bとが分離して内包される空間が形成されているものであれば一体に形成されているものであってもよい。
【0018】
上記電気粘性流体232(第1電気粘性流体23Aおよび第2電気粘性流体23B)にバイアス電圧Vを印加するための電源31は上記第1導電性弾性部材24A側と第2導電性弾性部材24B側とに接続されている。この電源31は、上記第2電気粘性流体23Bを硬化させることができる電圧が印加できるもので、例えば500V程度のバイアス電圧が印加できるものである。
【0019】
上記導電性弾性部材24は、導電性を有し且つ弾性を有する薄膜で形成されている。例えば、そのような薄膜として、導電性ゴムが挙げられる。この導電性ゴムの場合、例えば50μmの厚さのものを用いた。この厚さは、バイアス電圧Vを印加した際に分散粒子が鎖状のクラスタを形成することにより流動抵抗が上昇して電気粘性流体が硬化しても破裂しない厚さが確保されていることが必要であり、また、トナー保持部材21のへたり等を吸収できるような柔軟性が損なわれない厚さを有する必要がある。このような材料として、上記導電性ゴムの他に、塩化ビニールに導電処理を施した物等を用いることができる。
【0020】
上記第1電気粘性流体23Aおよび第2電気粘性流体23Bは、分散媒中に絶縁性の分散粒子を分散したものからなる。例えば、分散媒に電気絶縁油であるシリコーンオイルを用い、分散粒子に平均粒径が約10μmのカルボキシメチルセルロース粒子を用いることができる。
【0021】
そして、上記第1電気粘性流体23Aは、その分散媒中に分散されている分散粒子の濃度がバイアス電圧Vを印加した際にトナー保持部材21の変形を吸収する粘度を保持する濃度に設定されている。例えばバイアス電圧Vを印加しても第1電気粘性流体23Aが発現する内部応力が例えば30Pa以下となるような分散粒子の濃度としてある。すなわち、バイアス電圧Vを印加しても第1導電性弾性部材24(24A)が十分な柔軟性を保持するように上記分散粒子の濃度が設定されている。
【0022】
一方、上記第2電気粘性流体23Bは、その分散媒中に分散されている分散粒子の濃度がバイアス電圧Vを印加した際に流体の粘度が高くなって硬化する濃度に設定されている。したがって、上記第1電気粘性流体23Aの分散粒子濃度よりも高い濃度となる。例えばバイアス電圧Vを印加した際に第2電気粘性流体23Bが発現する内部応力が例えば500Pa以上1000Pa以下となり、バイアス電圧Vを印加していない状態で第2電気粘性流体23Bが発現する内部応力が例えば100Pa以下となるような分散粒子の濃度としてある。
【0023】
上記分散媒には、シリコーン油、鉱油(例えばトランス油)、ハロゲン化オイル、二塩基酸エステル、ポリアルキレングリコールエステル、燐酸エステル等の電気絶縁油、塩化ジフェニール等を用いることができる。
【0024】
上記分散粒子には、電気絶縁性粒子を用いる。この電気絶縁性粒子としては、セルロース等の絶縁性有機物粒子、またはマイカ、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等の絶縁性無機物粒子、またはゼオライト、アモルファスシリカ、コロイダルシリカ、酸化アルミナ、カーボンブラック、炭素化合物等の絶縁性多孔質粒子、または絶縁被膜が施されたアルミニウム、イオン交換樹脂、ポリアニリン等の絶縁被膜粒子等を用いることができる。
【0025】
また、図3に示すように、上記第2導電性弾性部材24Bは、内部の第2電気粘性流体23Bにバイアス電圧を印加した際に、硬化による内部応力がトナー保持部材21方向に向くように、トナー保持部材21側に開口部42を設けた容器41に入れておいてもよい。その際、容器41より上記第1導電性弾性部材24Aおよびトナー保持部材21が容器41の外側になるようにする。
【0026】
上記トナー保持装置20は、トナー保持部材21の表面が像担持体11の表面を押し圧することなく摺接する状態に配置される。このように配置されているトナー保持装置20の動作の一例を説明する。像担持体11にはトナーによる潜像が形成されている。このような像担持体11の潜像を転写ロールによって記録用紙に転写する。その際、潜像を形成していたトナーは全てが記録用紙に転写されず、一部が像担持体11表面に残る。
【0027】
その残留トナーは、像担持体11の回転(図面矢印方向に回転)によって、トナー保持装置20のトナー保持部材21によって保持される。その際、像担持体11の回転によって残留トナーがトナー保持部材21の直前に来た時、例えば、現像と同期させて、電極31により導電性弾性部材24中の電気粘性流体23、特に第2電気粘性流体23Aにバイアス電圧Vを印加する。これによって、第2電気粘性流体23B中の分散粒子によって鎖状のクラスタが形成されることにより流動抵抗が上昇して第2電気粘性流体23Bが硬化される。このときの内部応力は500Pa〜1000Pa程度となる。
【0028】
この結果、トナー保持部材21が像担持体11表面に押し圧される。このとき、トナー保持部材21を支持する全面にわたって第1導電性弾性部材24Aの柔軟性が確保されているので、第1導電性弾性部材24Aがトナー保持部材21表面の微小な変形を吸収するための層となり、異物などによりトナー保持部材21表面が変形した際に、その変形を補正する役割を果たす。
【0029】
図4(1)は、第1導電性弾性部材24Aの柔軟性が確保されていることによるトナー保持部材21表面の微小な変形を吸収する状態を示している。例えば、トナー保持部材21表面に、へたり、磨耗等による微小な変形が生じていても、柔軟性を有する第1導電性弾性部材24Aを介してトナー保持部材21表面が像担持体11表面の押し圧されることにより、像担持体11表面ではトナー保持部材21表面が全面にわたって摺接することができる。これは、柔軟性を有する不織布からなるトナー保持部材21がこのトナー保持部材21より硬い表面を有する像担持体11表面に接した場合、硬い表面を有する像担持体11表面の形状にならう状態となり、それにともなって、トナー保持部材21表面の微小な変形はトナー保持部材21の裏面側に現れたとしても、柔軟性を有する第1導電性弾性部材24Aによって吸収されるため、結果的にトナー保持部材21表面の微小な変形が吸収される。よって、像担持体11表面にトナー保持部材21が均一に摺擦されるようになり、像担持体11表面の残留トナーを均一の保持することができる。それにともなって像担持体11表面に付着した放電生成物を除去することができる。
【0030】
他方、図4(2)に示すように、従来技術のような硬い支持部材61にトナー保持部材21を設けた構成では、トナー保持部材21表面に、へたり、磨耗等による微小な変形が生じていても、トナー保持部材21の裏面側が硬い支持部材61であるため、微小な変形は補正されない。このため、変形を生じた部分では、像担持体11表面の残留トナーを十分に保持することができないという不都合が生じる。
【0031】
このようにトナー保磁部材21の摺接面が像担持体11表面に均一に摺接するように補正されるので、接触不均一による白抜け(Defect)が防止される。また、像担持体11表面が清掃する必要のない状態のときには、バイアス電圧の印加を停止するだけで、トナー保持部材21による像担持体11表面への押し圧が緩和もしくは解除される。このため、像担持体11表面がトナー保持部材21によって常に一定の押し圧で摺擦されなくなる。すなわち、押し圧した摺擦が必要なときだけ行われ、それ以外のときは押し圧しない状態もしくは押し圧が緩和された状態となっているので、像担持体11表面の劣化が抑制される。
【0032】
また、上記第1導電性弾性部材24Aに内包される流体は、電気粘性流体に限らず、水等の流体であってもよい。要するに、トナー保持部材21の摺接表面に発生したへたり、磨耗等の変形を吸収するような弾性が全面にわたって発現されるものであればよい。したがって、流体は粘度が例えば30Pa以下であることが望ましい。
【0033】
次に、具体的な実施例について説明する。
【0034】
トナー保持装置20の第1実施例は、以下のような構成となっている。上記電気粘性流体23を内包する導電性弾性部材24は、伸縮可能な二層の導電性ゴム(例えば厚さが50μm)の容器で形成されている。この容器の高さは約4mmであり、例えば2mmの高さを有する第1導電性弾性部材24Aと2mmの高さを有する第2導電性弾性部材24Bとからなっている。バイアス電圧Vが印加されても常に柔軟性を保持する第1導電性弾性部材24Aは、粒子径10μmのセルロ―ス粒子をシリコーン油の溶媒に約10wt%の割合で分散させた第1電気粘性流体23Aを内包している。これにより、バイアス電圧Vを印加しても第1電気粘性流体23Aの内部圧力が30Pa以下に抑えられている。又、第2導電性弾性部材24Bには、粒子径10μmのセルロ―ス粒子をシリコーン油の分散媒に約30wt%の割合で分散させた第2電気粘性流体23Bを内包している。このように、分散粒子を30wt%分散させることで、例えばバイアス電圧を500Vで印加すると、第2電気粘性流体23Bは内部圧力(圧縮応力)が500Pa〜1000Pa程度に高まり硬化される。また、トナー保持部材21には例えばポリエステルとナイロンからなる不織布を用いる。このような不織布として、一例として日本バイリーン社製のWP8085がある。
【0035】
次に、トナー保持装置20の第2実施例を以下に説明する。この第2実施例のトナー保持装置20は、上記第1実施例のトナー保持装置20において、分散粒子に絶縁被膜が形成されたアルミニウム粒子を用いたものである。その他の構成は第1実施例と同様である。この第2実施例の構成ではバイアス電圧を印加した時の粘度上昇がより高くなり、第1実施例のものより高い内部圧力が得られた。このため、トナー保持部材21を像担持体11表面に第1実施例よりも強く押し圧することができた。
【0036】
比較例として、トナー保持部材21の下部に第1導電性弾性部材24Aを設けずに第2導電性弾性部材24Bのみとした。この第2導電性弾性部材24B中には、上記説明した第2電気粘性流体23Bが内包されている。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0037】
上記第1実施例、第2実施例および比較例のトナー保持装置を用いて印刷を行ない、白抜け(Defect)の発生状況を標準見本と比較する目視検査により行なった。その結果を表1に示す。表1中の丸印は白抜けの発生が無い場合、△印は白抜けの発生が1本以下の場合、×印は白抜けの発生が1本より多く3本以下の場合、××印は白抜けの発生が3本より多い場合を示している。
【0038】
【表1】

【0039】
上記表1に示すように、本発明の第1実施例および第2実施例では、印刷枚数の100kpvとなっても白抜けの発生は無かったが、比較例では10kpvで白抜けの発生が確認でき、50kpv以上となると白抜けの発生が1本よりも多くなり、印刷不良となった。この結果、本発明のトナー保持装置が白抜けを防止するうえで効果があることが確認できた。
【0040】
次に、上記本発明の第1実施例のトナー保持装置20と従来技術の感光体表面の清掃装置を用いた場合の印刷用紙枚数に対する像担持体11表面の膜減り量を調べた。その結果を図5に示した。図5は、縦軸に像担持体の膜減り量を示し、横軸に印刷用紙枚数を示した。
【0041】
図5に示すように、いずれも印刷枚数の増加とともに像担持体11表面の膜減り量は増大するが、本発明のトナー保持装置を用いた方が従来装置よりもまく減り量がおよそ1/3以下となった。このように、本発明のトナー保持装置20では、像担持体11表面の寿命を大幅に延ばすという大きな効果が得られた。
【0042】
次に、本発明のトナー保持装置に係る一実施の形態の第2例を、図6のトナー保持装置の概略構成を示した断面図によって説明する。なお、前記第1例と同様の構成部品には同一符号を付与して説明する。
【0043】
図6に示すように、第2例のトナー保持装置50は、トナーによる潜像が形成される像担持体11のトナー転写後に位置するもので、像担持体11表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材21と、このトナー保持部材21を支持するものでトナー保持部材21を像担持体11方向に付勢する付勢手段52を有する支持部材53とを備え、トナー保持部材21と支持部材53との間にトナー保持部材21の変形を吸収する弾性部材54を設けたものである。すなわち、従来技術の構成において、トナー保持部材21と支持部材53との間にトナー保持部材21の微小変形を吸収する弾性部材54を設けたものである。
【0044】
上記弾性部材54は、トナー保持部材21の支持面にわたって均一な弾性力を有するものからなる。そのような弾性体としては、例えば、多孔質弾性体がある。このような材料としてはスポンジ、発泡スチロールなどを適用することができる。
【0045】
または、上記弾性部材54は流体を内包した弾性膜容器からなる。この弾性膜容器は、弾性を有する薄膜で形成されるものであればよく、例えばゴム薄膜、導電処理を施した塩化ビニール類等を用いることができる。また、上記流体には、水、アルコール、油等の流体を用いることができる。要するに、トナー保持部材21の摺接表面に発生したへたり、磨耗等の変形を吸収するような弾性が全面にわたって発現されるものであればよい。したがって、流体は粘度が例えば30Pa以下であることが望ましい。
【0046】
上記付勢手段52は、例えばバネであってもよく、またスポンジ、発泡部材等の弾性部材であってもよい。また上記トナー保持部材21は、上記実施の形態の第1例と同様なものを用いることができる。
【0047】
第2例のトナー保持装置50では、弾性部材54の柔軟性によりトナー保持部材21表面のへたりや磨耗による微小な変形が吸収される。すなわち、トナー保持部材21はそれよりも硬い像担持体11表面に摺擦されるので微小な変形はトナー保持部材21の裏面側に反映されるが、柔軟性を有する弾性部材54によって、その微小な変形は吸収されるので、トナー保持部材21の像担持体11に摺擦する面は常に均一に像担持体11表面に摺擦されるようになる。よって、像担持体11表面の残留トナーを均一の保持することができる。それにともなって像担持体11表面に付着した放電生成物を除去することができる。また、像担持体11表面は不均一に不必要に摺擦されることが抑制されるため、像担持体11表面の劣化が抑えられる。
【0048】
よって、上記トナー保持装置20,50によれば、トナー保持部材21表面のへたりや磨耗の発生が抑制されるため、白抜けを発生しない画像を得ることができるという利点がある。また、像担持体11表面の磨耗による劣化が低減されるため、像担持体11の寿命を延ばすことが可能になるという利点がある。そして上記効果を奏するトナー保持装置20、50を用いた画像形成装置1では、良質な印刷画像を得ることができるようになる。また、上記態様では像担持体とトナー保持部材との例で説明したが、これらに限られるものではなく、二つの物品を接触させて配置するようなにした物品支持装置全般に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のトナー保持装置に係る実施の形態の第1例を示したトナー保持装置の概略構成断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置のトナー保持装置が設置される主要部を示した概略構成図である。
【図3】トナー保持装置の第1例の変形例を示した概略構成断面図である。
【図4】本発明のトナー保持装置と従来技術との作用の比較を説明する概略構成断面図である。
【図5】本発明の第1実施例のトナー保持装置と従来技術の感光体表面の清掃装置を用いた場合の像担持体表面の膜減り量と印刷用紙枚数との関係を説明する図である。
【図6】本発明のトナー保持装置に係る実施の形態の第2例を示したトナー保持装置の概略構成断面図である。
【図7】従来技術を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1…画像形成装置、20,50…トナー保持装置、21…トナー保持部材、22…押し当て部材、23A…第1電気粘性流体、23B…第2電気粘性流体、24A…第1導電性弾性部材、24B…第2導電性弾性部材、31…電源、54…弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーによる潜像が形成される像担持体のトナー転写後に位置するもので、前記像担持体表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材を備えたトナー保持装置であって、
バイアス電圧を印加することで前記像担持体への押し圧が高くなるもので、前記バイアス電圧を印加した状態で前記トナー保持部材が前記像担持体表面を押し圧するように支持される押し当て部材を備えた
ことを特徴とするトナー保持装置。
【請求項2】
前記押し当て部材は、電界強度の変化に応じて溶媒の粘度が変化する電気粘性流体を内包した導電性弾性部材からなる
ことを特徴とする請求項1記載のトナー保持装置。
【請求項3】
前記導電性弾性部材は、
前記トナー保持部材を支持するもので、前記バイアス電圧を印加した際に前記トナー保持部材の変形を吸収する粘度が保持される第1電気粘性流体を内包した第1導電性弾性部材と、
前記第1導電性弾性部材を支持するもので、前記バイアス電圧に応じて溶媒の粘度が変化する第2電気粘性流体を内包した第2導電性弾性材料とを備えた
ことを特徴とする請求項2記載のトナー保持装置。
【請求項4】
前記第1電気粘性流体は、該第1電気粘性流体中に分散されている分散粒子の濃度が前記バイアス電圧を印加した際に前記トナー保持部材の変形を吸収する粘度を保持する濃度に設定されたものからなり、
前記第2電気粘性流体は、該第2電気粘性流体中に分散されている分散粒子の濃度が前記バイアス電圧を印加した際に粘度が高くなる濃度に設定されたものからなる
ことを特徴とする請求項3記載のトナー保持装置。
【請求項5】
前記第2電気粘性流体は分散液に分散粒子を分散したものからなり、
前記分散液は電気絶縁油からなり、
前記分散粒子は電気絶縁性粒子からなる
ことを特徴とする請求項3または請求項4記載のトナー保持装置。
【請求項6】
前記第2電気粘性流体の分散粒子の濃度は前記第1電気粘性流体の分散粒子の濃度よりも高い、
ことを特徴とする請求項4記載のトナー保持装置。
【請求項7】
トナーによる潜像が形成される像担持体のトナー転写後に位置するもので、前記像担持体表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材と、
前記トナー保持部材を支持するもので前記トナー保持部材を前記像担持体方向に付勢する付勢手段を具備する支持部材とを備えたトナー保持装置であって、
前記トナー保持部材と前記支持部材との間に前記トナー保持部材の変形を吸収する弾性部材
を備えたことを特徴とするトナー保持装置。
【請求項8】
前記弾性部材が前記トナー保持部材の支持面にわたって均一な弾性力を有する
ことを特徴とする請求項7記載のトナー保持装置。
【請求項9】
前記弾性部材は弾性を有する多孔質体からなる
ことを特徴とする請求項7または請求項8記載のトナー保持装置。
【請求項10】
前記弾性部材は流体を内包した弾性膜容器からなる
ことを特徴とする請求項7記載のトナー保持装置。
【請求項11】
トナーによる潜像が形成される像担持体を備え、
前記像担持体のトナー転写後に位置するもので、前記像担持体表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材を備えた画像形成装置において、
バイアス電圧を印加することで前記像担持体への押し圧が高くなるもので、前記バイアス電圧を印加した状態で前記トナー保持部材が前記像担持体表面を押し圧するように支持される押し当て部材を備えた
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
トナーによる潜像が形成される像担持体を備え、
前記像担持体のトナー転写後に位置するもので、前記像担持体表面のトナーを一定量保持するトナー保持部材を備えた画像形成装置において、
前記トナー保持部材を支持するもので前記トナー保持部材を前記像担持体方向に付勢する付勢手段を具備する支持部材と前記トナー保持部材との間に前記トナー保持部材の変形を吸収する弾性部材を設けた
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
第1の部材と、
前記第1の部材に接触するように設けられた第2の部材と、
バイアス電圧を印加することで前記第2の部材が前記第1の部材を押し圧する圧が高くなるもので、前記バイアス電圧を印加した状態で前記第2の部材が前記第1の部材表面を押し圧するように支持される押し当て部材と
を備えたことを特徴とする物品支持装置。
【請求項14】
前記押し当て部材は、電界強度の変化に応じて溶媒の粘度が変化する電気粘性流体を内包した導電性弾性部材からなる
ことを特徴とする請求項13記載の物品支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−178710(P2007−178710A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376973(P2005−376973)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】