説明

トナー及びその製造方法

【課題】本発明は、低温定着性及び耐熱保存性に優れるトナー及び該トナーの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該トナーを有する現像剤及び該現像剤を用いる画像形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】トナーは、ポリエステル及び/又は変性ポリエステルと、ラノリンワックスを含み、変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物と、該活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーを反応させることにより得られ、ラノリンワックスは、平均炭素数が18以上24以下のアルコールと平均炭素数が22以上28以下の脂肪酸のエステルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナーの製造方法、現像剤及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法による画像形成においては、熱定着方法によって画像支持体上にトナーを固着して恒久的な可視複写画像を得る。この場合に、オーバーヘッドプロジェクター用トランスペアレンシーシートに、トナー、特に、カラートナーを用いて、複写画像を形成する場合は、オーバーヘッドプロジェクターの投影像の光透過性を向上させるために、画像の表面を平滑な状態に定着して、投影時における画像の表面における透過光の散乱、乱反射等を防止することが要求されている。
【0003】
このため、溶融点において、黒色トナーよりも粘弾性が小さい溶融状態に急速に転移するカラートナーを用いて、加熱加圧することにより、画像の表面を平滑化させるように設計されている。
【0004】
しかしながら、トナーの粘弾性を小さくすると、現像器内で撹拌される時に機械的なストレスが印加されることにより、トナーの表面に存在する外添剤が埋没して、現像性及び転写性が低下するという問題があった。また、トナーがキャリアに固着する、いわゆるトナースペントが発生するという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、着色剤、結着樹脂、離型剤を含有し、結着樹脂は、一般式
−OCOC−R−COO−(CH
(式中、Rは、炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族基を示し、nは2〜20の整数を示す。)
で表される構造を、少なくとも樹脂全体における全エステル結合の60モル%含有する結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーが開示されている。
【0006】
しかしながら、トナーの耐熱保存性のさらなる向上が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、低温定着性及び耐熱保存性に優れるトナー及び該トナーの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該トナーを有する現像剤及び該現像剤を用いる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、トナーにおいて、ポリエステル及び/又は変性ポリエステルと、ラノリンワックスを含み、前記変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物と、該活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーを反応させることにより得られ、前記ラノリンワックスは、平均炭素数が18以上24以下のアルコールと平均炭素数が22以上28以下の脂肪酸のエステルであることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトナーにおいて、前記ラノリンワックスは、100℃における溶融粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のトナーにおいて、前記ラノリンワックスは、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が3.0以上8.0以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ラノリンワックスは、融点が60℃以上90℃以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ラノリンワックスは、25℃における針入度が7mm以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ポリエステルは、ガラス転移点が45℃以上60℃以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ポリエステルは、重量平均分子量が4000以上6000以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ラノリンワックスの含有量が0.5質量%以上15質量%以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、トナーの製造方法において、ポリエステル及び/又は変性ポリエステルの前駆体と、ラノリンワックスを含むトナー材料を有機溶媒中に溶解又は分散させて第一の液を調製する工程と、該第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させて第二の液を調製する工程と、該第二の液から前記有機溶媒を除去する工程を有し、前記変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物と、該活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーを含み、前記ラノリンワックスは、100℃における溶融粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、現像剤において、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトナーを有することを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、画像形成方法において、感光体を帯電させる工程と、該帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、該感光体に形成された静電潜像を、請求項10に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、該感光体に形成されたトナー像を被記録材に転写する工程を有することを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成方法において、前記感光体に形成されたトナー像を中間転写体に転写した後、該中間転写体に転写されたトナー像を前記被記録材に転写することを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の画像形成方法において、前記中間転写体に転写されたトナー像を前記被記録材に転写する線速度は、0.1m/s以上1m/s以下であり、前記中間転写体と前記被記録材が接触するニップ部における転写時間は、5×10−4s以上〜6×10−2s以下であることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の画像形成方法において、タンデム方式の画像形成装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低温定着性及び耐熱保存性に優れるトナー及び該トナーの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該トナーを有する現像剤及び該現像剤を用いる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明で用いられる画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の部分拡大図である。
【図3】図2の帯電装置の一例を示す図である。
【図4】図2の帯電装置の他の例を示す図である。
【図5】図2の帯電装置の他の例を示す図である。
【図6】図2の現像装置の一例を示す図である。
【図7】図1の定着装置の一例を示す図である。
【図8】図7の定着ベルトの層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0025】
本発明のトナーは、ポリエステル及び/又は変性ポリエステルと、ラノリンワックスを含む母体粒子を有し、変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物と、活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーを反応させることにより得られる。
【0026】
ラノリンワックスは、羊毛から抽出される高級アルコールと高級脂肪酸のエステルであり、高級アルコールは、分岐飽和であり、ステリンの含有量が70質量%であり、高級脂肪酸は、飽和脂肪酸であり、メチル分岐脂肪酸の含有量が60質量%、ヒドロキシ脂肪酸の含有量が30質量%である。ラノリンワックスは、炭素数の分布が広いため、平均炭素数を制御することにより、低分子量成分がポリエステル及び/又は変性ポリエステルに相溶し、高分子量成分がポリエステル及び/又は変性ポリエステルに相溶しないラノリンワックスを抽出することができる。即ち、ラノリンワックスの低分子量成分がポリエステル及び/又は変性ポリエステルに相溶するため、トナーのガラス転移点を低下させ、トナーの低温定着性を向上させることができる。一方、ポリエステル及び/又は変性ポリエステルに相溶しないラノリンワックスの高分子量成分は、離型剤として作用し、トナーの耐熱保存性を向上させることができる。
【0027】
高級アルコールの平均炭素数は、18〜24であり、20〜22が好ましい。高級脂肪酸の平均炭素数は、22〜28であり、24〜26が好ましい。高級アルコールの平均炭素数が18未満である場合又は高級脂肪酸の平均炭素数が22未満である場合は、トナーの耐熱保存性が低下したり、トナーの造粒性が低下したりする。一方、高級アルコールの平均炭素数が24を超える場合又は高級脂肪酸の平均炭素数が28を超える場合は、トナーの低温定着性が低下する。
【0028】
なお、高級アルコール及び高級脂肪酸の平均炭素数は、GC−MSを用いて測定することができる。
【0029】
ラノリンワックスの100℃における溶融粘度は、1〜50mPa・sであることが好ましく、1〜30mPa・sがさらに好ましい。ラノリンワックスの100℃における溶融粘度が1mPa・s未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、50mPa・sを超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0030】
なお、溶融粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定することができる。
【0031】
ラノリンワックスの数平均分子量に対する重量平均分子量の比は、3.0〜8.0であることが好ましく、3〜5がさらに好ましい。ラノリンワックスの数平均分子量に対する重量平均分子量の比が3.0未満であると、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させにくくなることがあり、8.0を超えると、トナーの造粒性が低下することがある。
【0032】
なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、展開溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)を用いて、GPCにより測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0033】
ラノリンワックスの融点は、60〜90℃であることが好ましく、60〜75℃がさらに好ましい。ラノリンワックスの融点が60℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、90℃を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0034】
なお、融点は、DSCを用いて測定することができる。
【0035】
ラノリンワックスの25℃における針入度は、7mm以下であることが好ましく、5mm以下がさらに好ましい。ラノリンワックスの25℃における針入度が7mmを超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0036】
なお、針入度は、針入度測定装置を用いて測定することができる。
【0037】
トナー中のラノリンワックスの含有量は、0.5〜15質量%であることが好ましく、3〜8質量%がさらに好ましい。トナー中のラノリンワックスの含有量が0.5質量%未満であると、トナーの低温定着性及び耐熱保存性が低下することがあり、15質量%を超えると、トナーの造粒性及び耐熱保存性が低下したり、キャリアを汚染したりすることがある。
【0038】
ポリエステルは、一般式
A(OH)m
(式中、Aは、置換基を有してもよい、炭素数が1〜20の脂肪族基又は芳香族基若しくはヘテロ芳香族基であり、mは、2〜4の整数である。)
で表されるポリアルコールと、一般式
B(COOH)n
(式中、Bは、置換基を有してもよい、炭素数が1〜20の脂肪族基又は芳香族基若しくはヘテロ芳香族基であり、nは、2〜4の整数である。)
で表されるポリカルボン酸を重縮合することにより得られる。
【0039】
ポリアルコールとしては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレン付加物、ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA酸化エチレン付加物、水素化ビスフェノールA酸化プロピレン付加物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0040】
ポリカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(トリメリット酸)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0041】
ポリエステルの重量平均分子量は、4×10〜6×10であることが好ましく、4.5×10〜5.5×10がさらに好ましい。ポリエステルの重量平均分子量が4×10未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、6×10を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0042】
ポリエステルのガラス転移点は、45〜60℃であることが好ましく、45〜50℃がさらに好ましい。ガラス転移点が45℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、60℃を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0043】
なお、ガラス転移点は、DSCを用いて測定することができる。
【0044】
活性水素基を有する化合物における活性水素基としては、特に限定されないが、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーと反応してウレア変性ポリエステルが得られることから、アミノ基が好ましい。
【0045】
アミノ基を有する化合物としては、特に限定されないが、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のポリアミンの混合物が好ましい。
【0046】
ジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0047】
3価以上のポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0048】
アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
【0049】
アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。
【0050】
アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。
【0051】
なお、アミノ基を有する化合物は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンによりアミノ基がブロックされていてもよい。
【0052】
活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーにおける活性水素基と反応することが可能な基としては、特に限定されないが、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、クロロカルボニル基等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、高分子成分の分子量を調節しやすく、トナーのオイルレス低温定着性、特に、定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できるウレア変性ポリエステルが得られることから、イソシアネート基が好ましい。
【0053】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーは、ヒドロキシル基を有するポリエステルとポリイソシアネートを反応させることにより得られる。また、ヒドロキシル基を有するポリエステルは、ポリアルコールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる。
【0054】
ポリアルコールとしては、特に限定されないが、ジアルコール、3価以上のアルコール、ジアルコールと3価以上のアルコールの混合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ジアルコール又はジアルコールと3価以上のアルコールの混合物が好ましい。
【0055】
ジアルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジアルコール;脂環式ジアルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等の脂環式ジアルコールのアルキレンオキサイド付加物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。中でも、炭素数が2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
【0056】
3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の多価脂肪族アルコール;トリスフェノール体(トリスフェノールPA(本州化学工業社製)等)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0057】
ジアルコールと3価以上のアルコールを混合して用いる場合は、ジアルコールに対する3価以上のアルコールの質量比は、0.01〜10であることが好ましく、0.01〜1がさらに好ましい。
【0058】
ポリカルボン酸としては、特に限定されないが、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と3価以上のカルボン酸の混合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ジカルボン酸又はジカルボン酸と3価以上のカルボン酸の混合物が好ましい。
【0059】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等のアルキレンジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等のアルケニレンジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。中でも、炭素数が4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0060】
3価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸等が挙げられる。中でも、炭素数が9〜20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。
【0061】
なお、ポリカルボン酸の代わりに、ポリカルボン酸の無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、特に限定されないが、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0062】
ジカルボン酸と3価以上のカルボン酸を混合して用いる場合は、ジカルボン酸に対する3価以上のカルボン酸の質量比が0.01〜10であることが好ましく、0.01〜1がさらに好ましい。
【0063】
ヒドロキシル基を有するポリエステルを合成する際のポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリアルコールのヒドロキシル基の当量比は、1〜2であることが好ましく、1〜1.5がさらに好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0064】
ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキルイソシアヌレート等のイソシアヌレート類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0065】
なお、ポリイソシアネートは、フェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等によりイソシアネート基がブロックされていてもよい。
【0066】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを合成する際のヒドロキシル基を有するポリエステルのヒドロキシル基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、1〜5であることが好ましく、1.2〜4がさらに好ましく、1.5〜3が特に好ましい。この当量比が1未満であると、耐オフセット性が低下することがあり、5を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0067】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%がさらに好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。この含有量が0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0068】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリアルコール由来の構成単位の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%がさらに好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。この含有量が0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性と低温定着性を両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0069】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー1分子当たりのイソシアネート基数は、1以上であることが好ましく、1.2〜5がさらに好ましく、1.5〜4が特に好ましい。イソシアネート基数が1未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0070】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーは、重量平均分子量が3×10〜4×10であることが好ましく、4×10〜3×10がさらに好ましい。重量平均分子量が3×10未満であると、耐熱保存性が低下することがあり、4×10を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0071】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物を反応させる際のアミノ基を有する化合物のアミノ基に対するポリエステルプレポリマーのイソシアネート基の当量比は、1/3〜3であることが好ましく、0.5〜2がさらに好ましく、2/3〜1.5が特に好ましい。この当量比が1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3を超えると、結着樹脂の分子量が小さくなって、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0072】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物の反応を停止させるためには、反応停止剤を用いることが好ましい。これにより、ウレア変性ポリエステルの分子量を制御することができる。
【0073】
反応停止剤としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等のモノアミン等が挙げられる。
【0074】
なお、モノアミンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンによりアミノ基がブロックされていてもよい。
【0075】
ウレア変性ポリエステルは、ウレタン結合を有していてもよい。この場合、ウレア結合に対するウレタン結合の当量比は、0〜9であることが好ましく、0.25〜4がさらに好ましく、2/3〜7/3が特に好ましい。この当量比が9を超えると、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0076】
ウレア変性ポリエステルとポリエステルの組み合わせとしては、以下の(1)〜(10)が挙げられる。
(1)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とイソフタル酸の重縮合物を、イソホロンジイソシアネートと反応させた後、イソホロンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とイソフタル酸の重縮合物の混合物
(2)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とイソフタル酸の重縮合物を、イソホロンジイソシアネートと反応させた後、イソホロンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物の混合物
(3)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物を、イソホロンジイソシアネートと反応させた後、イソホロンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物の混合物
(4)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物を、イソホロンジイソシアネートと反応させた後、イソホロンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物の混合物
(5)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物を、イソホロンジイソシアネートと反応させた後、ヘキサメチレンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物の混合物
(6)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物を、イソホロンジイソシアネートと反応させた後、ヘキサメチレンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物の混合物
(7)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物を、イソホロンジイソシアネートと反応させた後、エチレンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物の混合物
(8)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とイソフタル酸の重縮合物を、ジフェニルメタンジイソシアネートと反応させた後、ヘキサメチレンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とイソフタル酸の重縮合物の混合物
(9)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸及びドデセニルコハク酸無水物の重縮合物を、ジフェニルメタンジイソシアネートと反応させた後、ヘキサメチレンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸の重縮合物の混合物
(10)ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とイソフタル酸の重縮合物を、トルエンジイソシアネートと反応させた後、ヘキサメチレンジアミンと反応させたものと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とイソフタル酸の重縮合物の混合物
本発明のトナーは、着色剤、帯電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料等をさらに含んでもよい。
【0077】
着色剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0078】
トナー中の着色剤の含有量は、1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。トナー中の着色剤の含有量が1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15質量%を超えると、母体粒子中で顔料の分散不良が発生し、トナーの着色力が低下したり、トナーの電気特性が低下したりすることがある。
【0079】
着色剤は、顔料と樹脂が複合化されているマスターバッチであってもよい。
【0080】
樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステル;ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0081】
マスターバッチは、顔料と樹脂に、高せん断力を印加して混合混練することにより得られる。この際、顔料と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、顔料のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がないことから、フラッシング法を用いてマスターバッチを製造することが好ましい。フラッシング法は、顔料の水性ペーストを、樹脂と有機溶媒と共に混合混練し、顔料を樹脂に移行させた後、水及び有機溶媒を除去する方法である。顔料と樹脂を混合混練する際には、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることが好ましい。
【0082】
帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0083】
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩のモリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0084】
流動性向上剤としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等の処理剤により表面処理された疎水性シリカ、疎水性酸化チタンが好ましい。
【0085】
流動性向上剤の平均一次粒径は、5〜50nmであることが好ましく、10〜30nmがさらに好ましい。
【0086】
また、流動性向上剤は、BET比表面積が20〜500m/gであることが好ましい。
【0087】
トナー中の流動性向上剤の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%がさらに好ましい。
【0088】
クリーニング性向上剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等のソープフリー乳化重合により合成された樹脂粒子等が挙げられる。
【0089】
樹脂粒子は、体積平均粒径が0.01〜1μmであることが好ましい。
【0090】
磁性材料としては、特に限定されないが、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。
【0091】
本発明のトナーの重量平均粒径は、1〜6μmであることが好ましく、2〜5μmがさらに好ましい。重量平均粒径が1μm未満であると、転写時に、トナーのチリが発生しやすくなることがあり、6μmを超えると、ドットの再現性が不十分になって、ハーフトーン部分の粒状性が低下し、高精細な画像を形成できなくなることがある。
【0092】
本発明のトナーは、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.05〜1.25であることが好ましい。個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が、1.05未満であると、二成分現像剤として用いる場合に、現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力が低下したり、クリーニング性が低下したりすることがある。また、一成分現像剤として用いる場合に、現像ローラへのトナーのフィルミングが発生したり、トナーを薄層化するためブレード等の部材へのトナーの融着が発生したりすることがある。一方、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.25を超えると、高解像で高画質の画像を形成できなくなることがあり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒径の変動が大きくなることがある。また、トナーの帯電量の分布が広くなって、高品位な画像を形成できなくなることがある。さらに、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.05〜1.25であるトナーは、保存性、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れるトナーとなりやすい。特に、フルカラー複写機に使用した場合に、光沢性に優れる画像を形成することができる。
【0093】
なお、トナーの重量平均粒径及び個数平均粒径は、粒度測定器マルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【0094】
本発明のトナーは、平均円形度が0.95〜0.99であることが好ましい。平均円形度が0.95未満であると、現像時の画像均一性が低下したり、トナーの転写効率が低下したりすることがあり、0.99を超えると、クリーニング性が低下することがある。
【0095】
なお、トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社製)を用いて測定することができる。
【0096】
本発明のトナーの製造方法は、ポリエステル及び/又は変性ポリエステルの前駆体と、ラノリンワックスを含むトナー材料を有機溶媒中に溶解又は分散させて第一の液を調製する工程と、第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させて第二の液を調製する工程と、第二の液から有機溶媒を除去する工程を有する。このとき、変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物と、活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーを含む。また、トナー材料は、着色剤、帯電制御剤等をさらに含んでいてもよい。
【0097】
有機溶媒としては、特に限定されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、エステル系溶媒が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。
【0098】
有機溶媒は、除去することが容易なことから、沸点が150℃未満であることが好ましい。
【0099】
有機溶媒の添加量は、トナー材料100質量部に対して、40〜300質量部であることが好ましく、60〜140質量部がさらに好ましく、80〜120質量部が特に好ましい。
【0100】
第一の液を調製する前に、ポリエステルを含む有機溶媒中で、ラノリンワックスを予め分散させることが好ましい。
【0101】
ポリエステルに対するラノリンワックスの質量比は0.2〜1であることが好ましい。ポリエステルに対するラノリンワックスの質量比が0.2未満であると、ラノリンワックスの分散径が大きくなることがあり、1を超えると、第一の液を調製する際に、ラノリンワックスが凝集することがある。
【0102】
なお、活性水素基を有する化合物は、水系媒体に添加してもよいし、第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させる際に添加してもよい。また、第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させた後に、活性水素基を有する化合物を添加してもよい。この場合、母体粒子の表面近傍に、変性ポリエステルが生成するため、母体粒子に変性ポリエステルの濃度勾配を設けることができる。
【0103】
また、ポリエステル及び/又は変性ポリエステルの前駆体と、ラノリンワックスを除くトナー材料は、第一の液を調製する際に添加する代わりに、水系媒体に添加してもよいし、第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させる際に添加してもよいし、第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させた後に添加してもよい。
【0104】
第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させる際には、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機等の分散機を用いてせん断力を印加することが好ましい。
【0105】
水系媒体としては、特に限定されないが、水;メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール;ジメチルホルムアミド;テトラヒドロフラン;セロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、水が好ましい。
【0106】
水系媒体の使用量は、トナー材料100質量部に対して、50〜2000質量部であることが好ましく、100〜1000質量部がさらに好ましい。水系媒体の使用量が50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪くなり、所定の粒径の母体粒子が得られないことがあり、2000質量部を超えると、生産コストが高くなる。
【0107】
水系媒体は、アニオン性の樹脂を含む粒子と、アニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、母体粒子の粒径及び粒径分布を制御することができる。このとき、アニオン性の樹脂を含む粒子は、第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させることにより得られる液滴の表面に付着して融着、融合し、比較的硬い表面を形成する。また、アニオン性の樹脂を含む粒子は、液滴同士の合一を抑制することができる。さらに、アニオン性の樹脂を含む粒子は、トナーに負帯電性を付与することもできる。
【0108】
アニオン性の樹脂を含む粒子と、アニオン性界面活性剤を含む水系媒体は、アニオン性界面活性剤の存在下、アニオン性の樹脂を含む粒子を水系媒体中に分散させることにより得られる。アニオン性界面活性剤及びアニオン性の樹脂を含む粒子の添加量は、通常、水系媒体に対して、それぞれ0.5〜10質量%である。
【0109】
アニオン性の樹脂を含む粒子に含まれる樹脂としては、水系媒体中に分散させることが可能であれば、特に限定されないが、ビニル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、微細な球状の樹脂粒子が得られやすいことから、ビニル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂及びポリエステルが好ましい。
【0110】
ビニル樹脂としては、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであれば、特に限定されないが、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0111】
アニオン性の樹脂を含む粒子の体積平均粒径は、通常、5〜50nmであり、10〜25nmが好ましい。
【0112】
なお、アニオン性の樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)を用いて測定することができる。
【0113】
アニオン性の樹脂を含む粒子は、アニオン性界面活性剤を用いて重合したり、樹脂中にカルボキシル基、スルホン酸基等のアニオン性基を導入したりすることにより得られる。
【0114】
アニオン性の樹脂を含む粒子の製造方法としては、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
(1)ビニルモノマーを懸濁重合、乳化重合、シード重合又は分散重合する方法
(2)ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶液を、分散剤の存在下、水系媒体中に分散させた後、重合又は硬化させる方法
(3)ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶液中に乳化剤を添加した後、水系媒体を添加して転相乳化する方法
(4)樹脂を機械回転式、ジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、分級することにより得られた樹脂粒子を、分散剤の存在下、水系媒体中に分散させる方法
(5)樹脂溶液を霧状に噴霧することにより得られた樹脂粒子を、分散剤の存在下、水系媒体中に分散させる方法
(6)樹脂溶液に貧溶剤を添加又は加熱溶解させた樹脂溶液を冷却し、溶剤を除去することにより得られた樹脂粒子を、分散剤の存在下、水系媒体中に分散させる方法
(7)樹脂溶液を、分散剤の存在下、水系媒体中に分散させた後、加熱、減圧等により溶剤を除去する方法
(8)樹脂溶液中に乳化剤を添加した後、水系媒体を添加して転相乳化する方法
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0115】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜11)オキシ]−1−アルキル(C3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0116】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(DIC社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(トーケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)等が挙げられる。
【0117】
水系媒体は、難水溶性の無機分散剤をさらに含んでもよい。
【0118】
無機分散剤としては、特に限定されないが、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
【0119】
なお、リン酸カルシウム等の酸、アルカリに可溶な無機分散剤を用いる場合は、塩酸等の酸を用いて溶解させた後、水洗する方法、酵素を用いて分解する方法等を用いて、母体粒子から無機分散剤を除去することができる。
【0120】
水系媒体は、高分子系保護コロイドをさらに含んでもよい。
【0121】
高分子系保護コロイドとしては、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する単量体又はその誘導体;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等のビニルアルキルエーテル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルアルコールとカルボン酸のエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸のアミド化合物又はこれらのメチロール化物;アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物等の塩化カルボニル基を有する単量体;ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の窒素原子又はその複素環を有する単量体等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これら以外の高分子系保護コロイドとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン類;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類等が挙げられる。
【0122】
本発明において、第二の液を調製した後に、活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーと活性水素基を有する化合物を反応させて変性ポリエステルを生成させることが好ましい。これにより、母体粒子の機械的強度が高まり、アニオン性の樹脂を含む粒子の埋没を抑制することができる。また、活性水素基を有する化合物がカチオン性である場合は、アニオン性の樹脂を含む粒子を静電的に引き寄せることもできる。さらに、加熱定着時のトナーの流動性を調節でき、定着温度幅を広げることもできる。
【0123】
変性ポリエステルを生成させるための反応時間は、10分間〜40時間であることが好ましく、2〜24時間がさらに好ましい。
【0124】
第二の液から有機溶媒を除去する方法としては、特に限定されないが、第二の液を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発除去する方法、第二の液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を蒸発除去すると共に、水系媒体を蒸発除去する方法等が挙げられる。
【0125】
有機溶媒が除去された第二の液を、必要に応じて、洗浄した後、乾燥することにより、母体粒子が得られる。このとき、必要に応じて、分級してもよい。なお、乾燥する前に、サイクロン、デカンター、遠心分離等により分級してもよいし、乾燥した後に、分級してもよい。
【0126】
母体粒子は、着色剤、帯電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の粒子と共に混合した後、機械的衝撃力を印加してもよい。
【0127】
機械的衝撃力を印加する方法としては、特に限定されないが、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。
【0128】
機械的衝撃力を印加する装置としては、特に限定されないが、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0129】
本発明の現像剤は、本発明のトナーを有し、キャリアをさらに有してもよい。このとき、キャリアに対するトナーの質量比は1〜10%であることが好ましい。
【0130】
キャリアとしては、特に限定されないが、鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリア等が挙げられる。
【0131】
また、キャリアは、樹脂で被覆されていてもよい。このような樹脂としては、特に限定されないが、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等のアミノ樹脂;アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、スチレン−アクリル樹脂等のポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン−アクリル共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニル共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマーのポリビニル及びポリビニリデン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0132】
また、このような樹脂中には、必要に応じて、導電粉等が含まれていてもよい。導電粉としては、特に限定されないが、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0133】
導電粉は、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0134】
キャリアは、重量平均粒径が15〜40μmであることが好ましい。重量平均粒径が15μm未満であると、キャリア付着が発生しやすくなることがある。一方、重量平均粒径が40μmを超えると、現像剤中のトナーの濃度を大きくした場合に、地汚れが発生しやすくなることがある。また、静電潜像のドット径が小さい場合に、ドット再現性のバラツキが大きくなり、ハイライト部の粒状性が低下することもある。
【0135】
なお、キャリアの重量平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計モデルHRA9320−X100(Honewell社製)を用いて測定することができる。
【0136】
本発明で用いられる画像形成装置としては、本発明の画像形成方法を適用することが可能であれば、特に限定されないが、その一例として、タンデム方式の画像形成装置100を図1に示す。
【0137】
画像形成装置100は、複写装置本体110、給紙テーブル200、スキャナ300、原稿自動搬送装置(ADF)400を備える。
【0138】
複写装置本体110の中央に、3つのローラ14、15及び16に支持されている中間転写ベルト50が設けられており、図中、時計回りに搬送可能である。また、ローラ14及び15の間に張り渡された中間転写ベルト50上には、その搬送方向に沿って、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4つの画像形成ユニット18Bk、18C、18M及び18Yが横に並べて配置されている。さらに、図中、画像形成ユニット18の上には、露光装置21が設けられている。露光装置21は、4つの光路を有し、各色の画像信号に応じて、各色の感光体ドラム10が露光される。露光装置21としては、通常、レーザー光源、回転多面鏡等の偏向器、走査結像光学系及びミラー群からなるレーザー走査光学系が用いられている。一方、中間転写ベルト50を挟んで画像形成ユニット18の反対側には、二次転写装置22が設けられている。二次転写装置22には、2つのローラ23に支持されているベルト24が設けられている。また、二次転写装置22は、中間転写ベルト50を介して、ローラ16に押し当てて配置されており、中間転写ベルト50上のフルカラートナー像をシートに転写する。さらに、図中、二次転写装置22の左には、シートに転写されたフルカラートナー像を定着する定着装置25が設けられている。定着装置25は、2つのローラに支持されている加熱ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成されている。なお、フルカラートナー像が転写されたシートは、二次転写装置22により定着装置25に搬送される。また、図中、二次転写装置22及び定着装置25の下に、シートの両面に画像を形成するためにシートを反転させるシート反転装置28を備える。
【0139】
画像形成装置100を用いて複写する際には、まず、原稿自動搬送装置400の原稿台130上に原稿をセットする、または、原稿自動搬送装置400を開いて、スキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。次に、スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿台130上に原稿をセットした場合は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上に移動した後に、また、コンタクトガラス32上に原稿をセットした場合は、直ちに、スキャナ300を駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33は、光源から光を発射すると共に、原稿面からの反射光をさらに反射する。この光は、第2走行体34のミラーで反射された後、結像レンズ35を通して、読み取りセンサ36に入射し、原稿内容が読み取られる。このようにして得られた画像信号を元に、画像処理部(不図示)で画像処理が行われ、各色の画像信号に変換された後、各色の画像信号が露光装置21に送信される。
【0140】
また、スタートスイッチ(不図示)を押すと、駆動モータ(不図示)によりローラ14、15及び16の一つを回転駆動して、他の二つのローラを従動回転させ、中間転写ベルト50を搬送する。同時に、各色の画像形成ユニット18において、感光体ドラム10を回転させて、感光体ドラム10上に、各色のトナー像を形成する。そして、搬送された中間転写ベルト50に、各色のトナー像を順次重ね合わせて転写し、フルカラートナー像を形成する。
【0141】
一方、スタートスイッチ(不図示)を押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ142の一つが回転し、ペーパーバンク143に多段に備えられている給紙カセット144の一つからシートを繰り出す。さらに、分離ローラ145でシートを1枚ずつ分離して給紙路146に入れた後、搬送ローラ147でシートを搬送して複写機本体100内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。または、給紙ローラ52が回転し、手差しトレイ51からシートを繰り出した後、分離ローラ58でシートを1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、レジストローラ49に突き当てて止める。
【0142】
そして、中間転写ベルト50上のフルカラートナー像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写ベルト50と二次転写装置22の間にシートを送り込み、フルカラートナー像をシート上に転写する。このとき、二次転写の線速度は、0.1〜1m/sであることが好ましい。また、二次転写の転写時間は、5×10−4〜6×10−2sであることが好ましい。
【0143】
フルカラートナー像が転写されたシートは、二次転写装置22で搬送されて、定着装置25へと送り込まれた後、定着装置25が熱と圧力を印加してフルカラートナー像を定着する。さらに、切換爪55で切り換えて、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する、または、シート反転装置28でシートを反転した後、給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止め、シートの裏面に画像を形成した後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。なお、レジストローラ49は、一般に接地されるが、シートの紙粉を除去するために、バイアスを印加してもよい。
【0144】
図2に示すように、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー用の画像形成ユニット18Bk、18C、18M及び18Yは、感光体ドラム10を備え、感光体ドラム10としては、通常、OPC感光体が用いられる。感光体ドラム10の周囲には、帯電装置15、本発明の現像剤を用いて現像する現像装置20、一次転写装置40、クリーニング装置30が設けられており、必要に応じて、除電装置を設けてもよい。なお、Lは、露光装置21から各色の感光体ドラム10に照射される光である。また、各色の一次転写装置40の間には、導電性ローラ41、42及び43が設けられている。さらに、中間転写ベルト50が各色の感光体ドラム10と、一次転写装置40の間に介在し、中間転写ベルト50に各色の感光体ドラム10から各色のトナー像が順次重ね合わせて転写され、フルカラートナー像が形成される。このとき、本発明のトナーは、帯電性、耐久性及び環境安定性に優れるため、現像される各色のトナーの量が安定化し、色再現性に優れるフルカラー画像を形成することができる。
【0145】
中間転写ベルト50上のフルカラートナー像は、ハーフトーン部及びベタ部を含んでいたり、トナーの重ね合わせ量が異なる部分を含んでいたりするため、帯電量がばらついている場合がある。また、中間転写ベルト50の搬送方向に対して、一次転写装置40に隣接する下流側の空隙に発生する剥離放電により、中間転写ベルト50上のフルカラートナー像内に帯電量のばらつきが発生する場合もある。このようなフルカラートナー像内の帯電量のばらつきは、二次転写装置22における転写余裕度を低下させる。このため、中間転写ベルト50がイエローの一次転写装置40Yを通過した後で二次転写装置22を通過する前の位置に、プレ転写チャージャを設けることが好ましい。プレ転写チャージャは、中間転写ベルト50上のフルカラートナー像をシートに転写する前に、フルカラートナー像をフルカラートナー像と同極性に均一に帯電する。これにより、フルカラートナー像内の帯電量のばらつきを解消し、二次転写装置22における転写余裕度の低下を抑制し、フルカラートナー像を安定に転写することができる。
【0146】
なお、プレ転写チャージャで帯電される帯電量は、中間転写ベルト50の搬送速度に依存して変化する。具体的には、中間転写ベルト50の搬送速度が小さいと、中間転写ベルト50上のフルカラートナー像がプレ転写チャージャによる帯電領域を通過する時間が長くなるため、帯電量が大きくなる。したがって、中間転写ベルト50上のフルカラートナー像がプレ転写チャージャによる帯電領域を通過している途中に中間転写ベルト50の搬送速度が変化するような場合には、中間転写ベルト50の搬送速度に応じて、フルカラートナー像に対する帯電量が途中で変化しないようにプレ転写チャージャを制御することが好ましい。
【0147】
二次転写装置22でシートに転写される前の中間転写ベルト50上のフルカラートナー像は、現像時と同じマイナス極性であるため、ローラ23にプラスの転写バイアス電圧が印加されることにより、フルカラートナー像がシート上に転写される。このとき、ニップ圧が転写性に影響し、定着性に大きく影響する。また、中間転写ベルト50上に残留したトナーは、シートと中間転写ベルト50が離れる瞬間に、プラス極性に放電帯電される。なお、シートのジャム時や非画像領域に形成されたトナー像は、二次転写の影響を受けないため、マイナス極性のままである。
【0148】
中間転写ベルト50上に残留したトナーは、プラス電圧が印加された導電性ファーブラシ61及びマイナス電圧が印加された導電性ファーブラシ62で除去される。なお、導電性ファーブラシ62で除去されずにトナーが残留した場合、導電性ファーブラシ62のマイナス電圧により、トナーはマイナスに帯電される。このため、次の一次転写において、マイナスに帯電したトナーは、中間転写ベルト50に引き寄せられるため、感光体ドラム10へのトナーの移行を抑制することができる。
【0149】
一方、各色の現像装置20と、各色のクリーニング装置30は、各色のトナー移送管35で接続されている。各色のトナー移送管35の内部には、スクリュー(不図示)が入っており、各色のクリーニング装置30で回収されたトナーが、各色の現像装置20に移送される。
【0150】
以上のように、画像形成装置100では、中間転写ベルト50を使用し、感光体ドラム10とシートが当接しないため、クリーニング装置30で回収されたトナーへの紙粉の混入を抑制することに加え、二次転写時の中間転写ベルト50への紙粉の付着も抑制することができる。その結果、トナー抜け等の画像劣化を抑制することができる。また、各色の画像形成ユニット18が設けられているため、各色のトナーを回収する際に、トナーの混色を抑制することができる。
【0151】
中間転写ベルト50は、通常、単層の樹脂層であるが、必要に応じて、弾性層や表層が形成されていてもよい。
【0152】
樹脂層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、ポリカーボネート;ETFE、PVDF等のフッ素樹脂;ポリスチレン、ポリ(α−クロロスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロロアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体の単独重合体又は共重合体);メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂等のアクリル樹脂;シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等の変性アクリル樹脂;塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド、変性ポリフェニレンオキサイド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0153】
また、弾性層を構成する弾性材料(弾性材ゴム、エラストマー)としては、特に限定されないが、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム;ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系等の熱可塑性エラストマー等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0154】
さらに、表層を構成する材料としては、中間転写ベルト50へのトナーの付着力を小さくして二次転写性を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、表面エネルギーを小さくして潤滑性を向上させる材料を樹脂に分散させたものを用いることができる。樹脂としては、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。また、表面エネルギーを小さくして潤滑性を向上させる材料としては、フッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。このとき、表面エネルギーを小さくして潤滑性を向上させる材料として、粒径が異なるものを用いてもよい。また、表層を構成する材料として、フッ素系ゴム材料のように熱処理することにより、表面にフッ素リッチな層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものを用いてもよい。
【0155】
また、樹脂層や弾性層は、抵抗値調節用導電剤を含んでもよい。抵抗値調節用導電剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、グラファイト;アルミニウム、ニッケル等の金属粉末;酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化スズ複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化スズ複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。このとき、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性粒子で被覆されていてもよい。
【0156】
帯電装置15としては、特に限定されないが、一例として、接触式帯電装置の一種であるローラ式帯電装置15Aを図3に示す。感光体ドラム10は、矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動されるが、帯電ローラ151は、加圧手段(不図示)により感光体ドラム10に所定の押圧力で接触しており、感光体ドラム10の回転駆動に従動して回転する。帯電ローラ151は、芯金151aと、芯金151aの外周に同心一体に形成された導電ゴム層151bを基本構成とし、芯金151aの両端は、軸受け部材(不図示)等で回転可能に保持されている。また、電源152は、芯金151aと電気的に接続されており、帯電ローラ151に所定のバイアスを印加する。これにより、感光体ドラム10の周面が所定の極性、電位に一様に帯電される。
【0157】
図4に、帯電装置15の他の例として、ファーブラシ式帯電装置15Bを示す。感光体ドラム10は、矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動されるが、ファーブラシローラ153は、感光体ドラム10に所定の押圧力で接触しており、感光体ドラム10の回転方向と逆方向に所定の速度で回転駆動される。ファーブラシローラ153は、芯金153aと、芯金153aの外周に同心に形成されたファーブラシ153bを基本構成とし、芯金153aの両端は、軸受け部材(不図示)等で回転可能に保持されている。また、電源154は、芯金153aと電気的に接続されており、ファーブラシローラ153に所定のバイアスを印加する。これにより、感光体ドラム10の周面が所定の極性、電位に一様に帯電される。
【0158】
ファーブラシ153bは、カーボン、硫化銅、金属、金属酸化物等により導電処理されたファーを、金属や他の導電処理された芯金153aに巻き付けたり、張り付けたりすることにより得られる。ファーとしては、特に限定されないが、REC−B、REC−C、REC−M1、REC−M10(以上、ユニチカ社製)、SA−7(東レ社製)、サンダーロン(日本蚕毛社製)、ベルトロン(カネボウ社製)、クラカーボ(クラレ社製)、ローバル(三菱レーヨン社製)等が挙げられる。ファーは、線密度が3〜10デニール、毛足が1〜10mmであることが好ましい。また、ファーブラシ153bは、10〜100フィラメント/束、80〜600本/mmであることが好ましい。
【0159】
図5に、帯電装置15の他の例として、磁気ブラシ式帯電装置15Cを示す。感光体ドラム10は、矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動されるが、磁気ブラシローラ155は、感光体ドラム10に所定の押圧力で接触しており、感光体ドラム10の回転方向と逆方向に所定の速度で回転駆動される。磁気ブラシローラ155は、マグネットロール(不図示)を内包する非磁性の導電スリーブ155aと、導電スリーブ155aの外周に同心に形成された磁気ブラシ155bを基本構成とし、導電スリーブ155aの両端は、軸受け部材(不図示)等で回転可能に保持されている。また、電源156は、導電スリーブ155aと電気的に接続されており、磁気ブラシローラ155に所定のバイアスを印加する。これにより、感光体ドラム10の周面が所定の極性、電位に一様に帯電される。
【0160】
磁気ブラシ155bを構成する磁性粒子としては、Zn−Cuフェライト等のフェライトが挙げられる。
【0161】
現像装置20としては、特に限定されないが、その一例を図6に示す。現像装置20は、現像時に、直流電圧に交流電圧を重畳した振動バイアス電圧が電源202から現像スリーブ201に印加される。感光体ドラム10の非画像領域と画像領域の電位は、振動バイアス電圧の最大値と最小値の間であるため、現像領域Aに向きが交互に変化する交互電界が形成される。このため、現像領域Aにおいて、トナーとキャリアが激しく振動し、現像スリーブ201及びキャリアとの静電的拘束力を振り切ったトナーが感光体ドラム10に向かって飛翔し、静電潜像に付着する。
【0162】
振動バイアス電圧は、最大値と最小値の差(ピーク間電圧)が0.5〜5kVであることが好ましく、周波数が1〜10kHzであることが好ましい。振動バイアス電圧の波形としては、矩形波、sin波、三角波等が挙げられる。振動バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム10の非画像領域の電位と画像領域の電位の間の値であるが、画像領域の電位よりも非画像領域の電位に近い値であることが好ましい。これにより、感光体ドラム10の非画像領域へのトナーの付着を抑制することができる。
【0163】
振動バイアス電圧の波形が矩形波である場合は、デューティ比が50%以下であることが好ましい。デューティ比とは、振動バイアス電圧の1周期の中で、トナーが感光体ドラム10に向かおうとする時間の割合である。これにより、トナーが感光体ドラム10に向かおうとするピーク値と、振動バイアス電圧の時間平均値との差を大きくすることができるため、トナーの運動がさらに活発化し、トナーが静電潜像の電位分布に忠実に付着して、ざらつき感や解像力を向上させることができる。また、トナーとは逆極性の電荷を有するキャリアが感光体ドラム10に向かおうとするピーク値と、振動バイアス電圧の時間平均値との差を小さくすることができるので、キャリアの運動を沈静化し、感光体ドラム10の非画像領域へのキャリアの付着する抑制することができる。
【0164】
定着装置25としては、特に限定されないが、その一例として、オイルレスタイプのものを図7に示す。定着装置25は、誘導加熱手段251と、誘導加熱手段251の電磁誘導により加熱される加熱ローラ252と、加熱ローラ252と対向して配置された定着ローラ253と、加熱ローラ252と定着ローラ253に張り渡され、加熱ローラ252により加熱される定着ベルト254と、定着ベルト254を介して、定着ローラ253に圧接される加圧ローラ255から構成されている。なお、定着ベルト254は、加熱ローラ252又は定着ローラ253の回転により、図中、A方向に搬送され、加圧ローラ255は、定着ベルト254に対して順方向に回転する。
【0165】
加熱ローラ252は、磁性金属の中空円筒状の部材であり、外径が20〜40mm、肉厚が0.3〜1.0mmであることが好ましい。これにより、熱容量が小さく、昇温速度を大きくすることができる。磁性金属としては、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル又はこれら金属の合金等が挙げられる。
【0166】
定着ローラ253は、芯金253aと、芯金253aを被覆する弾性層253bから構成される。芯金253aの材質としては、特に限定されないが、ステンレススチール等の金属が挙げられる。弾性層253bは、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状又は発泡状にすることにより形成することができ、肉厚が4〜6mmである。定着ローラ253は、加圧ローラ255との間に所定幅の接触部を形成するために、外径が20〜40mmであり、加熱ローラ252の外径よりも大きい。
【0167】
定着ベルト254は、誘導加熱手段251により加熱される加熱ローラ252との接触領域W1で加熱される。そして、加熱ローラ252又は定着ローラ253の回転により、定着ベルト254の内面が連続的に加熱され、全体に亘って加熱される。
【0168】
図8に、定着ベルト254の層構成を示す。定着ベルト254は、基体254a上に、発熱層254b、弾性層254c及び離型層254dが順次積層されている。基体254aの材質としては、特に限定されないが、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS等の耐熱性樹脂が挙げられる。発熱層254bの材質としては、特に限定されないが、Ni、Ag、SUS等の導電材料が挙げられる。弾性層254cとしては、シート上のフルカラートナー像を均一に定着させることが可能であれば、特に限定されない。離型層254dの材質としては、特に限定されないが、フッ素樹脂等の樹脂が挙げられる。なお、基体254aを設けずに、発熱層254bを基体としてもよい。
【0169】
離型層254dは、厚さが10〜300μmであることが好ましい。これにより、シート上のフルカラートナー像を定着ベルト254の表層部が十分に包み込むため、フルカラートナー像を均一に加熱溶融することができる。離型層254dの厚さが10μm未満であると、経時耐磨耗性を確保できないことがある。一方、離型層254dの厚さが300μmを超えると、定着ベルト254の熱容量が大きくなって、昇温速度が小さくなることがある。また、定着ベルト254の表面温度が低下しにくくなって、トナーの凝集効果が得られず、トナーが定着ベルト254に付着することがある。
【0170】
加圧ローラ255は、芯金255aと、芯金255aを被覆する弾性層255bから構成される。芯金255aの材質としては、特に限定されないが、銅、アルミ等の熱伝導性の大きい金属、SUS等が挙げられる。弾性層255bの材質としては、耐熱性及び離型性が大きい弾性材料であれば、特に限定されない。加圧ローラ255は、外径が20〜40mmであって、定着ローラ253と同じであり、肉圧が0.5〜2.0mmであって、定着ローラ253よりも薄い。
【0171】
加圧ローラ255は、定着ベルト254を介して、定着ローラ253を押圧して定着ニップ領域Nを形成しているが、加圧ローラ255を定着ローラ253よりも硬くすることが好ましい。これにより、加圧ローラ255が定着ローラ253に食い込み、シートは、加圧ローラ255の表面の円周形状に沿うため、シートが定着ベルト254の表面から離れやすくすることができる。
【0172】
電磁誘導により加熱ローラ252を加熱する誘導加熱手段251は、半円筒形状のコイルガイド板251aに励磁コイル251aが形成されており、コイルガイド板251aは、加熱ローラ252の外周面に近接配置されている。また、励磁コイル251bは、一本の線材をコイルガイド板251bに沿って、加熱ローラ252の軸方向に交互に巻き付けたものである。なお、励磁コイル251bは、発振回路が周波数可変の駆動電源(不図示)に接続されている。また、半円筒形状の励磁コイルコア251cが、支持部材251dに支持された状態で、励磁コイル251bに近接配置されている。励磁コイルコア251cの材質としては、特に限定されないが、フェライト等の強磁性体が挙げられる。
【実施例】
【0173】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、実施例に限定されない。また、部は、質量部を意味する。
【0174】
(ポリエステルの合成)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物67部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物84部、テレフタル酸274部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。さらに、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル1を得た。ポリエステル1は、数平均分子量が2.1×10、重量平均分子量が5.6×10、ガラス転移点が55℃であった。
【0175】
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物43.5部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物6.5部、テレフタル酸30部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。さらに、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル2を得た。ポリエステル2は、数平均分子量が4.8×10、重量平均分子量が5.6×10、ガラス転移点が45℃であった。
【0176】
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物43.5部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物6.5部、テレフタル酸45部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。さらに、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル3を得た。ポリエステル3は、数平均分子量が5.4×10、重量平均分子量が5.6×10、ガラス転移点が60℃であった。
【0177】
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物43.5部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物6.5部、テレフタル酸41部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。さらに、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル4を得た。ポリエステル4は、数平均分子量が5.3×10、重量平均分子量が4×10、ガラス転移点が55℃であった。
【0178】
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物40部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物10部、テレフタル酸41部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。さらに、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル5を得た。ポリエステル5は、数平均分子量が5.2×10、重量平均分子量が6×10、ガラス転移点が55℃であった。
【0179】
(マスターバッチの調製)
水1000部、DBP吸油量が42ml/100g、pHが9.5のカーボンブラックPrintex35(デグサ社製)540部及び1200部のポリエステル1を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。得られた混合物を、二本ロールを用いて、150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)を用いて粉砕して、マスターバッチ1を得た。
【0180】
(ポリエステルプレポリマーの合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。さらに、10〜15mHgの減圧下、5時間反応させて、ヒドロキシル基を有するポリエステルを得た。ヒドロキシル基を有するポリエステルは、数平均分子量が2.1×10、重量平均分子量が9.6×10、ガラス転移点が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
【0181】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ヒドロキシル基を有するポリエステル411部、イソホロンジイソシアネート89部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させて、ポリエステルプレポリマー1を得た。ポリエステルプレポリマー1は、遊離イソシアネート基の含有量が1.6質量%であり、150℃で45分間放置することにより測定される固形分濃度が50質量%であった。
【0182】
(ケチミンの合成)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン30部及びメチルエチルケトン70部を入れ、50℃で5時間反応させ、ケチミン1を得た。ケチミン1は、アミン価が423mgKOH/gであった。
【0183】
(樹脂粒子の分散液の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)16部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部及び過硫酸アンモニウム1部を入れ、400rpmで15分間撹拌した後、75℃まで昇温し、5時間反応させた。次に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加えた後、75℃で5時間熟成して、樹脂粒子の分散液1を得た。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)を用いて、樹脂粒子の分散液1の体積平均粒径を測定したところ、42nmであった。
【0184】
(水系媒体の調製)
水660部、25部の樹脂粒子の分散液1、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)25部及び酢酸エチル60部を容器に入れて撹拌して、水系媒体1を得た。
【0185】
[実施例1]
ビーカー内に、5部の平均炭素数が21のアルコールと平均炭素数が25の脂肪酸のエステルであり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.5、融点が74℃、100℃における溶融粘度が37mPa・s、25℃における針入度が7mmであるラノリンワックス1、15部のポリエステル1及び酢酸エチル30部を入れ、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/h、ディスクの周速度を6m/sとして、粒径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして、ラノリンワックスの分散液1を得た。
【0186】
ビーカー内に、100部のポリエステル1及び酢酸エチル130部を入れて攪拌し、溶解させた。次に、100部のラノリンワックスの分散液1及び10部のマスターバッチ1を加え、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/時、ディスクの周速度を6m/秒として、粒径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスした。さらに、40部のポリエステルプレポリマー1及び2.2部のケチミン1を加えて攪拌して、第一の液1を得た。
【0187】
150部の水系媒体1を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、12000rpmで混合しながら、100部の第一の液1を添加して10分間混合して、第二の液1を得た。
【0188】
脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、100部の第二の液1を入れ、攪拌周速を20m/minとして、攪拌しながら、減圧下、30℃で12時間脱溶剤し、スラリー1を得た。
【0189】
得られたスラリー1を減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、12000rpmで10分間混合した後、減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、12000rpmで10分間混合し、減圧濾過する操作を3回繰り返した。
【0190】
得られた濾過ケーキを、順風乾燥機を用いて、45℃で48時間乾燥した後、目開きが75μmのメッシュを用いて篩い、母体粒子を得た。
【0191】
母体粒子100部、平均粒径が100nmの疎水性シリカ0.6部、平均粒径が20nmの酸化チタン1.0部及び平均粒径が15nmの疎水性シリカ0.8部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が49℃であった。
【0192】
[実施例2]
ラノリンワックスとして、平均炭素数が18のアルコールと平均炭素数が22の脂肪酸のエステルであり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.0、融点が60℃、100℃における溶融粘度が16mPa・s、25℃における針入度が1mmであるラノリンワックス2を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が47℃であった。
【0193】
[実施例3]
ラノリンワックスとして、平均炭素数が24のアルコールと平均炭素数が28の脂肪酸のエステルであり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が3.0、融点が90℃、100℃における溶融粘度が50mPa・s、25℃における針入度が5mmであるラノリンワックス3を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が51℃であった。
【0194】
[実施例4]
ラノリンワックスとして、平均炭素数が24のアルコールと平均炭素数が25の脂肪酸のエステルであり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.0、融点が77℃、100℃における溶融粘度が46mPa・s、25℃における針入度が4mmであるラノリンワックス4を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が50℃であった。
【0195】
[実施例5]
ラノリンワックスとして、平均炭素数が24のアルコールと平均炭素数が28の脂肪酸のエステルであり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1.5、融点が90℃、100℃における溶融粘度が28mPa・s、25℃における針入度が7mmであるラノリンワックス5を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が50℃であった。
【0196】
[実施例6]
ラノリンワックスの分散液1の添加量を5部にした以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が52℃であった。
【0197】
[実施例7]
ラノリンワックスの分散液1の添加量を150部にした以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が45℃であった。
【0198】
[実施例8]
ポリエステル1の代わりに、ポリエステル2を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が39℃であった。
【0199】
[実施例9]
ポリエステル1の代わりに、ポリエステル3を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が52℃であった。
【0200】
[実施例10]
ポリエステル1の代わりに、ポリエステル4を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が47℃であった。
【0201】
[実施例11]
ポリエステル1の代わりに、ポリエステル5を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が52℃であった。
【0202】
[比較例1]
ラノリンワックスとして、平均炭素数が25のアルコールと平均炭素数が29の脂肪酸のエステルであり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1.5、融点が92℃、100℃における溶融粘度が52mPa・s、25℃における針入度が7mmであるラノリンワックス6を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が53℃であった。
【0203】
[比較例2]
ラノリンワックスとして、平均炭素数が17のアルコールと平均炭素数が21の脂肪酸のエステルであり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.5、融点が58℃、100℃における溶融粘度が12mPa・s、25℃における針入度が6mmであるラノリンワックス7を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が41℃であった。
【0204】
[比較例3]
ラノリンワックスの代わりに、融点が74℃、100℃における溶融粘度が32mPa・s、25℃における針入度が4mmであるパラフィンワックスを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が55℃であった。
【0205】
[比較例4]
ラノリンワックスの代わりに、融点が205℃のセバシン酸ジブチルを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーは、ガラス転移点が42℃であった。
【0206】
(ガラス転移点及び融点)
TG−DSCシステムTAS−100(理学電機社製)を用いて、ガラス転移点及び融点を測定した。具体的には、まず、試料約10mgを入れたアルミニウム製の容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次に、昇温速度10℃/分で室温から150℃まで加熱した後、150℃で10分間放置した。さらに、室温まで冷却した後、10分間放置した。次に、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で150℃まで加熱し、DSC曲線を得た。DSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移点及び融点を求めた。
【0207】
表1に、実施例及び比較例で用いたワックスの特性を示す。
【0208】
【表1】

なお、Mw及びMnは、それぞれ重量平均分子量及び数平均分子量を表す。
【0209】
(キャリアの作製)
固形分が50質量%のアクリル樹脂溶液21部、固形分が70質量%のグアナミン溶液6.4部、平均粒径が0.3μm、体積固有抵抗が1×1014Ω・cmのアルミナ粒子7.6部、固形分が23質量%のシリコーン樹脂溶液SR2410(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)65部、アミノシランSH6020(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)1部、トルエン60部及びブチルセロソルブ60部を、ホモミキサーを用いて10分間分散させ、被覆層用塗布液を得た。
【0210】
平均粒径が25μmの焼成フェライト粉(MgO)1.8(MnO)49.5(Fe48.0に、スピラコーター(岡田精工社製)を用いて、被覆層用塗布液を塗布した後、乾燥した。次に、電気炉を用いて、150℃で1時間焼成した後、冷却し、目開きが106μmの篩を用いて解砕し、キャリアを得た。得られたキャリアは、重量平均粒径が35μmであり、被覆層の厚さが0.15μmであった。
【0211】
なお、被覆層の厚さ及び重量平均粒径の測定方法を以下に示す。
【0212】
(被覆層の厚さ)
透過型電子顕微鏡を用いて、キャリアの断面を観察することにより、被覆層の厚さを測定し、平均した。
【0213】
(重量平均粒径)
マイクロトラック粒度分析計モデルHRA9320−X100(Honewell社製)を用いて、重量平均粒径を測定した。なお、粒径範囲を8〜100μm、チャネル長さ(チャネル幅)を2μm、チャネル数を46、屈折率を2.42とした。
【0214】
(現像剤の作製)
容器が転動して攪拌される型式のターブラミキサーを用いて、キャリア100部及びトナー7部を均一に混合して、現像剤を得た。
【0215】
次に、トナー又は現像剤を用いて、低温定着性、離型性、耐熱保存性及びキャリア汚染性を評価した。
【0216】
(低温定着性)
imagioNeo450(リコー社製)を用いて、普通紙タイプ6200(リコー社製)に、トナーの付着量が1.0±0.1mg/cmのベタ画像が現像されるように調整し、定着ベルトの温度が変化させて、オフセットの発生しない下限温度を測定し、低温定着性を評価した。なお、比較例3のトナーを用いた場合に対して、定着下限温度が10℃以上低下する場合を○、5℃以上10℃未満低下する場合を△、0℃以上5℃未満低下する場合を×として、判定した。
【0217】
(離型性)
ipsio CX2500(リコー社製)の定着部分のみを取り出して、定着ベルトの温度及び線速度を調整できるように改造した定着試験装置を用いて、定着ベルトの線速度を125mm/sに設定し、定着ベルトの温度を140〜190℃の範囲で10℃刻みの温度で、転写紙の先端の余白3mmの方から定着させ、離型性を評価した。なお、転写紙が定着ベルトに巻きついたり、定着試験装置の出口で蛇腹のようになって詰まったりすることなく、正常に定着できた枚数が5枚以上である場合を○、3枚以上4枚以下である場合を△、2枚以下である場合を×として、判定した。
【0218】
(耐熱保存性)
40℃、70%RHの環境下に、トナーを2週間放置した後、トナーを75メッシュの篩にかけ、振動させた後、篩上に残った凝集トナー量を測定して、耐熱保存性を評価した。なお、凝集トナー量が0.5mg未満である場合を○、0.5mg以上1.0mg未満である場合を△、1.0mg以上である場合を×として、判定した。
【0219】
(キャリア汚染性)
DocuColor 8000 Digital Press(富士ゼロックス社製)を改造して、線速及び転写時間を調整できるように改造した評価機を用いて、トナーの付着量が0.6mg/cmのA4サイズのベタ画像を10万枚ランニングする試験を実施した。キャリア汚染性の代用指標として、1000枚毎に現像剤を一部サンプリングして、ブローオフ法により帯電量を測定し、トナーの帯電量の初期値からの減少を測定して、キャリア汚染性を評価した。なお、トナーの帯電量の初期値からの減少が5μC/g未満である場合を○、5μC/g以上10μC/g未満である場合を△、10μC/g以上である場合を×として、判定した。
【0220】
表2に、トナー又は現像剤の評価結果を示す。
【0221】
【表2】

表2より、実施例のトナーは、低温定着性、離型性、耐熱保存性及びキャリア汚染性が優れることがわかる。
【0222】
一方、比較例1のトナーは、ラノリンワックスにおけるアルコール及び脂肪酸の平均炭素数が大きいため、低温定着性が低下した。
【0223】
比較例2のトナーは、ラノリンワックスにおけるアルコールの平均炭素数が小さいため、耐熱保存性が低下した。
【0224】
比較例3のトナーは、パラフィンワックスがポリエステルに相溶しないため、低温定着性が低下した。
【0225】
比較例4のトナーは、セバシン酸ジブチルが離型剤として作用せず、可塑剤として作用するため、離型性、耐熱保存性及びキャリア汚染性が低下した。
【符号の説明】
【0226】
10 感光体ドラム
15 帯電装置
20 現像装置
21 露光装置
22 二次転写装置
30 クリーニング装置
40 一次転写装置
50 中間転写ベルト
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0227】
【特許文献1】特開2005−338814号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル及び/又は変性ポリエステルと、ラノリンワックスを含み、
前記変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物と、該活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーを反応させることにより得られ、
前記ラノリンワックスは、平均炭素数が18以上24以下のアルコールと平均炭素数が22以上28以下の脂肪酸のエステルであることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記ラノリンワックスは、100℃における溶融粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記ラノリンワックスは、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が3.0以上8.0以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ラノリンワックスは、融点が60℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記ラノリンワックスは、25℃における針入度が7mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記ポリエステルは、ガラス転移点が45℃以上60℃以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記ポリエステルは、重量平均分子量が4000以上6000以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記ラノリンワックスの含有量が0.5質量%以上15質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項9】
ポリエステル及び/又は変性ポリエステルの前駆体と、ラノリンワックスを含むトナー材料を有機溶媒中に溶解又は分散させて第一の液を調製する工程と、
該第一の液を水系媒体中に乳化又は分散させて第二の液を調製する工程と、
該第二の液から前記有機溶媒を除去する工程を有し、
前記変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物と、該活性水素基と反応することが可能な基を有するポリエステルプレポリマーを含み、
前記ラノリンワックスは、100℃における溶融粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトナーを有することを特徴とする現像剤。
【請求項11】
感光体を帯電させる工程と、
該帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、
該感光体に形成された静電潜像を、請求項10に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、
該感光体に形成されたトナー像を被記録材に転写する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
前記感光体に形成されたトナー像を中間転写体に転写した後、該中間転写体に転写されたトナー像を前記被記録材に転写することを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記中間転写体に転写されたトナー像を前記被記録材に転写する線速度は、0.1m/s以上1m/s以下であり、
前記中間転写体と前記被記録材が接触するニップ部における転写時間は、5×10−4s以上〜6×10−2s以下であることを特徴とする請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項14】
タンデム方式の画像形成装置を用いることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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