説明

トナー及びそれを用いたトナー収容容器、現像剤及びそれを用いたプロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置

【課題】外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得るトナー及びそれを用いたトナー収容容器、現像剤及びそれを用いたプロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂及び離型剤を含む芯粒子と、結着樹脂及び平均分散径が50nm以上410nm以下の範囲内である離型剤を含む被覆層からなり、表面における前記離型剤の露出面積割合が30%以上65%以下の範囲内であるトナー母粒子に、少なくとも、一次粒子平均径が80nm以上300nm以下の範囲内である外添剤が添加されてなることを特徴とするトナー及びそれを用いたトナー収容容器、現像剤及びそれを用いたプロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びそれを用いたトナー収容容器、現像剤及びそれを用いたプロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化(現像)する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、例えば、帯電、露光工程により静電潜像保持体上に静電潜像を形成し(静電潜像形成工程)、これにトナーを供給して静電潜像を現像し(現像工程)、現像されたトナー像を、中間転写体を介してまたは介さずに、記録媒体に転写して(転写工程)、転写された転写像を定着する(定着工程)ことで可視化される。
【0003】
このような電子写真法等に使用されるトナーには、現像性、流動性、転写性、クリーニング性等の向上を図るために、各種外添剤が用いられる。特に、静電潜像保持体から中間転写体や記録媒体への転写や、中間転写体から記録媒体への転写の際の転写性の向上のために、比較的大粒径の外添剤をトナーに添加する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−66820号公報
【特許文献2】特開2005−265988号公報
【特許文献3】特開2005−202132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得るトナー及びそれを用いたトナー収容容器、現像剤及びそれを用いたプロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の<1>〜<8>に示す本発明により達成される。
<1> 少なくとも結着樹脂及び離型剤を含む芯粒子と、結着樹脂及び平均分散径が50nm以上410nm以下の範囲内である離型剤を含む被覆層からなり、表面における前記離型剤の露出面積割合が30%以上65%以下の範囲内であるトナー母粒子に、少なくとも、一次粒子平均径が80nm以上300nm以下の範囲内である外添剤が添加されてなることを特徴とするトナー。
【0007】
<2> 前記被覆層に含まれる結着樹脂の質量平均分子量が、70000以上200000以下の範囲内であることを特徴とする<1>に記載のトナー。
【0008】
<3> 前記被覆層に含まれる離型剤の内、分散径が500nm以上の個数割合が、15%以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載のトナー。
【0009】
<4> <1>〜<3>のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを含有することを特徴とする現像剤。
【0010】
<5> 表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面に保持された静電潜像をトナーにより現像して前記静電潜像保持体表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えた画像形成装置に対して脱着可能であり、
前記トナー像形成手段に供給するための<1>〜<3>のいずれかに記載のトナーを収容してなることを特徴とするトナー収容容器。
【0011】
<6> 画像形成装置に対して脱着可能であり、表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、<4>に記載の現像剤を収容すると共に前記静電潜像保持体表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0012】
<7> 表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、<4>に記載の現像剤を収容すると共に前記静電潜像保持体表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【0013】
<8> 表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像保持体表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着手段と、を備え、
前記静電潜像保持体と前記トナー像形成手段とが、脱着可能に搭載された<6>に記載のプロセスカートリッジにより構成されてなることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
<1>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得るトナーを提供することができる。
【0015】
<2>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、外添剤の埋没に起因する画質低下をも抑制し得るトナーを提供することができる。
【0016】
<3>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、流動性低下をも抑制し得るトナーを提供することができる。
【0017】
<4>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、トナーの外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得る現像剤を提供することができる。
【0018】
<5>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得るトナーを収容したトナー収容容器を提供することができる。
【0019】
<6>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、トナーの外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得る現像剤を収容したプロセスカートリッジを提供することができる。
【0020】
<7>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、トナーの外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得る現像剤を用いた画像形成装置を提供することができる。
【0021】
<8>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、トナーの外添剤離脱に起因する画質低下を抑制し得る現像剤を収容したプロセスカートリッジを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の画像形成装置の好適な一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジの好適な一例の基本構成を概略的に示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[トナー]
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂及び離型剤を含む芯粒子と、結着樹脂及び平均分散径が50nm以上410nm以下の範囲内である離型剤を含む被覆層からなり、表面における前記離型剤の露出面積割合が30%以上65%以下の範囲内であるトナー母粒子に、少なくとも、一次粒子平均径が80nm以上300nm以下の範囲内である外添剤が外添されてなることを特徴とするものである。
【0024】
本発明のトナーにおけるトナー母粒子の表面には、微分散された適度な平均分散径の離型剤が適度な露出面積割合で結着樹脂に囲まれて表出しており、比較的軟らかい離型剤のピットが、トナーに母粒子の表面に形成された状態になっている。その離型剤のピットに比較的大径の外添剤が半ば埋まり込むような状態で保持されるので、外添剤の離脱を抑制することができる。また、平均分散径が適切であり、また被覆層にのみ当該離型剤のピットが存在するので外添剤が埋まり込み過ぎることも無い。そして、当該離型剤のピットは適度な露出面積割合で存在するため、外添剤が適度な量均一に分散された状態でトナーの表面に存在することになる。
【0025】
そのため、大きなストレスが掛かってもトナー表面の離脱が生じ難く、外添剤による転写効率を損なうことなく、外添剤離脱による不具合、例えば帯電装置の汚染や静電潜像保持体への異物付着に伴う画質低下を抑制することができる。
【0026】
本発明のトナーの詳細を、まず、トナー母粒子について詳細に説明し、次いで外添剤について説明する。
【0027】
<<トナー母粒子>>
本発明のトナーにおいて、トナー母粒子は、芯粒子表面に被覆層が形成されてなるものである。
【0028】
<芯粒子>
本発明において、芯粒子には、少なくとも結着樹脂及び離型剤を含み、また、一般的には着色剤を含み、さらに必要に応じてその他の成分が含まれる。
【0029】
(結着樹脂)
本発明において芯粒子に用いる結着樹脂としては、特に制限は無く、公知の物を使用することができる。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂などを単独で用いること、または併用することができる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂が最も好ましい。
【0030】
結着樹脂に用いるポリエステル樹脂としては、結晶性のものでも非晶性のものでも構わない。
【0031】
本発明で芯粒子に使用されるポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂を使用することができる。また、ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、適宜合成したものを使用してもよい。
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。
【0032】
多価アルコール成分としては、例えば、2価のアルコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物等を用いることができる。
【0033】
また、3価以上のアルコール成分としては、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等を用いることができる。
【0034】
また、上記多価アルコール成分と縮合させる2価カルボン酸成分としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸及びこれらの酸の低級アルキルエステルを用いることができる。
【0035】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、さらにこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられる。
【0036】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0037】
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これら列挙はあくまでも例示であり、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記ポリエステル樹脂は、質量平均分子量が30000〜80000の樹脂を構成成分の一つとして含むことが好ましい。質量平均分子量が30000〜80000の樹脂を構成成分の一つとして含むことにより、後に詳述する平均円形度を制御することが容易となる。当該質量平均分子量の好ましい範囲としては30000〜70000であり、より好ましくは30000〜60000である。質量平均分子量が30000未満であると離型剤の影響を受けやすく、また80000を越えると樹脂そのものの粘度が高いことから、共に好ましい平均円形度を得るのが困難になる場合がある。
【0039】
(離型剤)
トナーにおける離型剤は、一般に、定着時に画像と定着部材との離型性を向上させる目的で使用される。本発明で芯粒子に使用可能な離型剤の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化する軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル、カルボン酸エステル等のエステル系ワックスなどが挙げられる。本発明において、これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
これらの離型剤の添加量としては、芯粒子の全量に対して、1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量%である。上記範囲内であると、離型剤の効果が十分であり、また、芯粒子あるいはトナー母粒子作製時の冷却に伴う離型剤の体積変化によるトナーの平均円形度の低下を制御することができる。離型剤の添加量が少な過ぎると離型剤添加の効果が発揮されないことがあり、一方、多過ぎると、極端に流動性が悪化すると共に帯電分布が非常に広くなることがある。
【0041】
(着色剤)
本発明のトナーの芯粒子には、所望の色味を付与するため、各種着色剤を配合することができる。ただし、画像光沢を付与するための無色透明画像を形成するトナー等のように、着色剤を必要としないトナーもあるため、本発明のトナーにおいて、着色剤は必須の構成要素ではない。
【0042】
本発明で使用可能な着色剤としては、特に制限は無く、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、プリリアンカーミン6B、デイボンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メリレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの各種顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、リオインジコ系、フタロシアニン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、リアジン系、リアゾール系、キサンテン系などの各種染料などを1種または2種以上を合せて使用することができる。
【0043】
前記芯粒子における、当該着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1〜30質量部の範囲が好ましい。また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用したりすることも有効である。前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等所望の色のトナーを得ることができる。
【0044】
(その他の成分)
本発明のトナーの芯粒子には、必要に応じて無機もしくは有機の粒子を添加することができる。
【0045】
添加可能な無機粒子としては、シリカ、疎水化処理シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、コロイダルシリカ、アルミナ処理コロイダルシリカ、カチオン表面処理コロイダルシリカ、アニオン表面処理コロイダルシリカなどが挙げられ、これらを単独で用いることもしくは併用することができ、中でもコロイダルシリカを用いることが望ましい。その粒径は、5nm以上100nm以下であることが好適である。また、粒径の異なる粒子を併用することも可能である。前記粒子はトナー製造の際、直接添加することもできるが、予め超音波分散機などを用いて水など水溶性媒体へ分散されたものを用いることが好ましい。分散においては、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基などを用いて分散性を向上させることもできる。
【0046】
その他、芯粒子には帯電制御剤などの公知の材料を添加してもよい。その際に添加される材料の個数平均粒径としては、1μm以下であることが望ましく、0.01μm以上1μm以下であるのがより好適である。かかる個数平均粒径は、例えばマイクロトラックなどを用いて測定することができる。
【0047】
(芯粒子の径)
芯粒子の径は、その外層として被覆層が形成されてトナー母粒子が得られた際の径が、後述する好ましい体積平均粒径になるように調整する。被覆層は、後述する通り比較的薄膜なので、実際には、芯粒子の径と最終的に得られるトナー母粒子の径との間に大差は無い。
【0048】
なお、芯粒子の径は、最終的に得られたトナー母粒子の径を求めることにより、製造時の芯粒子形成用の原料及び被覆層形成用の原料の割合から、理論上推定することができる。
【0049】
<被覆層>
本発明において、被覆層には、少なくとも結着樹脂及び離型剤を含んでなる。基本的には、これら2成分でなるが、さらに前記芯粒子と同様の各種成分が適宜選択されて配合されても構わない。
【0050】
(結着樹脂)
本発明において被覆層に用いる結着樹脂(以下、「被覆層用結着樹脂」という場合がある。)としては、特に制限は無く、前記芯粒子に用いたものと同様の物を用いることができる。
【0051】
被覆層用結着樹脂としては、具体的には例えば、スチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂等公知の樹脂材料が用いられるが、後述するΔSPrw制御の観点からポリエステル樹脂が特に望ましい。ポリエステル樹脂の詳細については、芯粒子の項で説明した通りである。
【0052】
本発明において、被覆層用結着樹脂の質量平均分子量としては、芯粒子用の結着樹脂と同程度でも構わないが、好ましくは70000以上200000以下の範囲内であり、90000以上150000以下の範囲内であることがより好ましい。このような高分子量の結着樹脂を離型剤の土台となる被覆層に用いることで、トナー母粒子の表面に露出した離型剤に保持された大径外添剤の離脱を防ぎつつ、当該大径外添剤が被覆層用結着樹脂に埋没するのを抑制する効果も発現する。ただし、被覆層用結着樹脂の質量平均分子量があまりに高過ぎると、トナーの形状制御性が低下したり、外添剤の付着が弱くなる場合があるため好ましくない。
【0053】
(離型剤)
本発明において、被覆層に含まれる離型剤の平均分散径は、50nm以上410nm以下の範囲内であることが求められる。平均分散径が50nm以上であれば、一次粒子平均径が80nm以上300nm以下の範囲内である外添剤(以下、単に「大径外添剤」という場合がある。)を保持するのに充分なスペースを確保することができ、410nm以下であれば外添剤が埋まり込むことによる転写効率の低下を抑制することができる。当該離型剤の平均分散径としては、80nm以上300nm以下の範囲が好ましく、100nm以上190nm以下の範囲がさらに好ましい。
【0054】
また、当該離型剤の分散径として、500nm以上の個数割合が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。500nm以上の比較的大きな分散径の離型剤は、染み出してしまう懸念があり、染み出した場合は勿論、保持されていてもトナー表面への露出面積が大きくなるので、トナーの流動性を低下させる原因になるため、その割合が少ないことが望ましい。
【0055】
本発明において、トナー母粒子の表面における離型剤の露出面積割合は、30%以上65%以下の範囲内であることが求められる。露出面積割合が30%以上であれば、必要量の大径外添剤を保持するのに充分なスペースをトナー母粒子の表面に確保することができ、65%以下であればトナーの付着力向上による静電潜像保持体へのトナーフィルミングの発生を抑制することができる。当該露出面積割合としては、40%以上60%以下の範囲が好ましく、50%以上60%以下の範囲がさらに好ましい。
【0056】
離型剤の分散状態は、トナー母粒子をルテニウム染色した上で、走査型電子顕微鏡(SEM)の5000倍程度の拡大画像によってトナー表面を観察することで確認することができる。SEM画像において、黒く見える部分が離型剤であり、これを画像解析することで、離型剤の平均分散径、500nm以上の個数割合、露出面積割合を求めることができる。本発明においては、トナー母粒子100個の平均値を採用する。
【0057】
なお、外添剤を添加した後のトナーの場合、外添剤の除去処理を施し、トナー母粒子を得た上で上記操作を行えばよい。
【0058】
トナー母粒子表面の離型剤の平均分散径を本発明に規定する所望の範囲に制御するためには、被覆層用の結着樹脂のSP値(溶解性パラメーター、SPr)と被覆層用離型剤のSP値(SPw)との差(ΔSPrw=SPr−SPw)が0.2以上1.5以下の範囲であることが好ましい。ΔSPrwが0.2以上であると結着樹脂と離型剤との過度な相溶を防ぐことでトナー母粒子表面に存在する離型剤の平均分散径の小径化を抑制することができ、50nm以上に制御することが容易になる。一方、ΔSPrwが1.5以下であると、結着樹脂と離型剤との適度な複合化が可能なためトナー母粒子表面に存在する離型剤の平均分散径の大径化を抑制することができ、410nm以下に制御することが容易になる。
【0059】
なお、SP値(溶解性パラメーター)を求める方法は、Smallの方法、Fedorsの方法など種々あるが、本発明においてはFedorsの方法により求めた。
【0060】
この場合のSP値δは下式(1)で定義される。
δ=(蒸発エネルギーEv/モル体積v)1/2=√(ΣΔei/Δvi)・・・式(1)
【0061】
上記式(1)において、Evは蒸発エネルギー(cal/mol)を表し、Vはモル体積(cm3/mol)を表し、Δeiはi番目の原子または原子団の蒸発エネルギー(cal/原子または原子団)を表し、Δviはi番目の原子または原子団のモル体積(cm3/原子または原子団)を表し、iは1以上の整数を表す。
【0062】
なお、式(1)で表されるSP値は、慣行としてその単位がcal1/2/cm3/2となるように求められ、且つ、無次元で表記されるものである。これに加えて、本発明においては、2つの化合物間におけるSP値の相対的な差が意義を持つため、上記した慣行に従い求められた値を用い、無次元で表記することとした。参考までに、式(1)で示されるSP値をSI単位(J1/2/m3/2)に換算する場合には、2046を乗ずればよい。
【0063】
本発明において被覆層に用いる離型剤の材料としては、特に制限は無く、前記芯粒子に用いたものと同様の物を用いることができるが、被覆層の結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合は、上記ΔSPrw制御の観点からエステルワックス、アミドワックス等が特に好ましい。
【0064】
ただし、後述する結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液の調製に用いる樹脂・離型剤溶解溶媒への溶解性の観点から、当該離型剤の融点が85℃以下であることが好ましい。また、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10(℃/min)で当該離型剤を測定した際の吸熱ピークの半値幅が12(℃)以内であることが好ましい。当該離型剤の融点が85℃以下で、半値幅が12℃以内だと、当該離型剤と被覆層用の結着樹脂との均一な複合化が可能となり、トナー表層に存在する離型剤の分散径のばらつきを抑制することができる。そのため、例えば、「離型剤の分散径500nm以上の個数割合15%以下」を達するように容易に制御することができる。
【0065】
(被覆層の層厚)
被覆層の層厚は、特に制限は無いが、トナーとしての基本的特性(発色性、帯電性、定着性等)を発現する芯粒子の機能への影響が少ないことが望ましいため、微分散した離型剤を保持し得る範囲内でできる限り薄膜であることが望ましく、具体的には、200nm〜600nmの範囲内とすることが好ましく、300nm〜500nmの範囲内とすることがより好ましい。
【0066】
なお、被覆層の層厚は、最終的に得られたトナー母粒子の径を求めることにより、製造時の芯粒子形成用の原料及び被覆層形成用の原料の割合から、理論上推定することができる。
【0067】
<トナー母粒子の製造>
(芯粒子の製造)
本発明において芯粒子の製造方法は、トナー母粒子の製造方法として一般な混練・粉砕製法(公知の球形化処理を施すことが好ましい。)や、乳化重合法、乳化凝集法、懸濁重合法等の化学製法等によって製造することができる。望まれる体積平均粒径、球形度乃至円形度、表面性に制御し易い点や、得率や低環境負荷の観点から、乳化凝集法で製造することが好ましい。
【0068】
乳化凝集法では、樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液、離型剤を分散した離型剤分散液、並びに、必要に応じて着色剤を分散した着色剤分散液及びその他の成分の分散液を混合した混合分散液に、凝集剤を添加し、加熱することにより凝集粒子を形成する凝集工程と、前記凝集粒子を、前記樹脂のガラス転移温度以上に加熱することにより融合する融合工程との少なくとも2つの工程を経て芯粒子を製造する。
【0069】
また、凝集工程の前に、凝集粒子を分散する工程(分散工程)や、凝集工程及び融合工程間に、凝集粒子分散液中に、粒子を分散させた粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に粒子を付着させて付着粒子を形成する工程(付着工程)を設けたものであってもよい。前記付着工程では、前記凝集工程で調製された凝集粒子分散液中に、前記粒子分散液を添加混合して、前記凝集粒子に前記粒子を付着させて付着粒子を形成するが、添加される粒子は、凝集粒子に凝集粒子から見て新たに追加される粒子に該当するので、「追加粒子」と称する場合がある。
【0070】
前記追加粒子としては、前記樹脂粒子のほかに離型剤粒子、着色剤粒子等を単独もしくは複数組み合わせたものであってもよい。追加粒子を追加混合する方法としては、特に制限はなく、例えば前記これらの粒子の分散液を徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。前記付着工程を設けることにより、擬似的なシェル構造を形成することができる。
【0071】
本発明における芯粒子においては、前記追加粒子を添加する操作によって、コアシェル構造を形成することが望ましい。前記追記粒子の主成分となる結着樹脂が、シェル層用樹脂である。この方法を用いれば、融合工程において、温度、攪拌数、pHなどの調整により、トナー形状制御を簡単に行うことができる。
【0072】
以下、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた例を挙げて、乳化凝集法による芯粒子の製造方法について述べる。
【0073】
−混合液の準備−
まず、凝集工程で用いられる各種分散液を用意する。用意する分散液としては、ポリエステル樹脂粒子分散液、着色剤分散液及び離型剤分散液が少なくとも用いられるが、必要に応じて帯電制御剤の如く他の分散液を混合することもできる。
これら各種分散液を、所定の割合で混合して混合分散液を準備する。
【0074】
これら4〜5種類の分散液を混合する場合、得られる混合分散液中に含まれる全固形分としては40質量%以下であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。混合分散液中に含まれる着色剤粒子の含有量としては20質量%以下であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましい。また、混合分散液中に含まれる離型剤粒子の含有量としては20質量%以下であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0075】
各種分散液の調製方法について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した方法を採用することができる。
【0076】
−分散装置−
分散の手段としては、特に制限はないが、使用可能な装置としては、例えばホモミキサー(特殊機化工業株式会社)、スラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホミジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタティックミキサー(ノリタケカンパニー)などのそれ自体公知の分散装置が挙げられる。また、前述したように樹脂であれば溶剤乳化や転相乳化法等も挙げることができる。
【0077】
−分散媒−
各種分散液の調製に用いられる分散媒としては、例えば、水系媒体が挙げられる。分散媒として好適な水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
−界面活性剤−
乳化凝集法においては、各種分散液に界面活性剤を添加混合しておくことが好ましい。好適な界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン性界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが好適に挙げられる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面橋性剤又はカチオン性界面活性剤と併用されるのが好ましい。これら界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク陵ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;などが挙げられる。
【0080】
前記カチオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;などが挙げられる。
【0081】
前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェエルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類;などが挙げられる
【0082】
ポリエステル樹脂粒子を分散したポリエステル樹脂粒子分散液は、水等の水系媒体中にポリエステル樹脂を界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散した後、樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて処理することにより調製することができる。また、溶剤に溶かし、これをイオン性界面活性剤と水の中で分散乳化後、脱溶媒して調製することもできる。さらに溶剤に溶かし、中和処理を行った後、攪拌下、水を添加して転相し、次いで、脱溶剤を行う転相乳化により調製することもできる。なお、ポリエステル樹脂は、複数の種類の樹脂を混合して用いることもできる。
【0083】
ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径としては、1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.5μmの範囲である。ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径が1μmを超えると、最終的に得られるトナーの粒度分布や形状分布が広くなったり、遊離粒子が発生してトナーの組成偏在を引き起こしたり等、性能や信頼性に影響を及ぼす場合がある。一方、ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径が1μm以下であると、上記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中での分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点が有利である。なお、ポリエステル樹脂粒子体積平均粒径は、例えば、マイクロトラック(商品名:LS13320、Beckmann−Coulter社製)等を用いて測定することができる。
【0084】
着色剤の粒子を分散した着色剤分散液は、水中に上記着色剤を、イオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に分散して調製することが好ましい。着色剤の分散には、公知の分散方法が利用でき、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル、アルティマイザーなどの一般的な分散手段を採用することができ、なんら制限されるものではない。
【0085】
着色剤分散液に分散させた着色剤粒子の体積平均粒径としては、1μm以下であることが好ましく、80〜500nmの範囲であれば、凝集性が良好で、且つトナー母粒子中の着色剤の分散が良好であるためより好ましい。
【0086】
−凝集工程−
凝集工程においては、まず、ポリエステル樹脂粒子分散液、着色剤分散液、さらに離型剤分散液や、その他の成分を混合し、得られた混合分散液に凝集剤を添加し、結着樹脂のガラス転移温度近辺の温度に加熱することにより、各々の成分からなる粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。
【0087】
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温で凝集剤を添加することにより行う。
【0088】
凝集工程に用いられる凝集剤は、各種分散液の分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤の他、2価以上の無機金属塩や2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、無機金属塩や金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量を低減でき、トナーの帯電特性を向上させることができるので好適である。
【0089】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が大きい方が、粒度分布の狭い凝集粒子を調製することができ、また同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。
【0090】
これら凝集剤の添加量は、凝集する時のイオン濃度により変わるが、概ね混合分散液の固形分(トナー母粒子の成分になる各材料成分)に対して0.05〜1.00質量%が好ましく、0.10〜0.70質量%がより好ましい。0.05質量%未満では凝集剤の効果が現れにくく、1.00質量%を超える場合は、過凝集が生じる懸念があり、粒径の大きいトナー母粒子が発生し易くなるため、転写不良に起因する画像欠陥が生じる場合がある。さらに、トナー母粒子の調製装置内で強凝集が発生し、生産上好ましくない。
【0091】
−付着工程−
コアシェル構造のトナー母粒子を製造する場合、付着工程として、上記した凝集工程を経て形成された凝集粒子の表面に、ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子を付着させることにより付着層を形成する(以下、凝集粒子表面にさらに付着層を設けた凝集粒子を「付着樹脂凝集粒子」と称する。)。ここでいう、この付着層は、本発明に特徴的な「被覆層」とは異なるものであり、芯粒子の最外層として、換言すれば「被覆層」の下層として設けられるものである。
【0092】
付着層の形成は、凝集工程において凝集粒子を形成した分散液中に、ポリエステル樹脂及び必要に応じて他の樹脂からなることにより行うことができ、必要に応じて凝集剤等の他の成分(例:pH調整剤、分散剤等)や、後述するようにトナー母粒子に付着させるべき前記樹脂微粒子を先にあるいは同時に添加してもよい。
【0093】
付着樹脂粒子分散液に使用するポリエステル樹脂粒子は、コアで使用されるポリエステル樹脂粒子と同一でもよいし、異なってもよい。変更する場合はコアで使用されるポリエステル樹脂よりもガラス転移温度が高い(+0〜20℃)ものが熱保管特性の観点より好適に使用される。
【0094】
前記付着樹脂粒子を、前記凝集粒子の表面に均一に付着させて付着層を形成して付着樹脂凝集粒子を得た後、後述する融合工程において加熱融合すると、付着樹脂凝集粒子の表面の付着層に含まれる結着樹脂からなる樹脂粒子が溶融してシェル層である付着層が形成される。このため、付着層の内側に位置するコアに含まれる離型剤や着色剤が芯粒子の表面へと露出することを効果的に防止することができる。
【0095】
付着工程における付着樹脂粒子分散液の添加混合方法としては、特に制限はなく、例えば、徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。このようにして、付着樹脂粒子分散液を添加混合することにより、微小な粒子の発生を抑制し、トナー表面の離型剤の量を制御することができると同時に、得られるトナー母粒子の粒度分布を狭くすることができる。
【0096】
本発明において、この付着工程が行われる回数としては、1回であってもよいし、複数回であってもよい。樹脂を変更することによって複数の付着層を形成することもできる。
【0097】
前記凝集粒子に付着層用の結着樹脂からなる付着樹脂粒子を付着させる条件は、以下の通りである。
【0098】
まず、付着工程における加熱温度としては、凝集粒子中に含まれるコア用のポリエステル樹脂のガラス転移温度近傍〜付着層用の結着樹脂のガラス転移温度近傍の温度域が好ましいが、その凝集温度は凝集剤の量等により上下するので一概には決まらない。大まかな目安として、コア用のポリエステル樹脂のガラス転移温度を基準として、−25℃〜+10℃の範囲内が好ましい。
【0099】
付着工程における加熱時間としては、加熱温度に依存するので一概に規定することはできないが、通常5分〜2時間程度である。
【0100】
付着工程においては、凝集粒子が形成された混合分散液に、付着樹脂粒子分散液を追添加した分散液は、静置されていてもよいし、ミキサー等により穏やかに攪拌されていてもよい。後者の場合の方が、均一な付着樹脂凝集粒子が形成され易い点で有利である。
【0101】
なお、付着工程において、付着樹脂粒子分散液の使用量は、これに含まれる樹脂粒子の粒径に依存するが、最終的に形成される付着層の厚みが20〜500nm程度になるように選択されることが好ましい。付着層の厚みが20nmより薄くなると、離型剤が芯粒子表面に多く存在してしまう場合があり、付着層の厚みが500nmを超えると、トナー母粒子の平均円形度が大きくなる場合があるため、それぞれ好ましくない。
【0102】
−融合工程−
融合工程においては、加熱を行うことにより、凝集工程で得られた凝集粒子、または、付着工程で得られた付着樹脂凝集粒子を融合させる。融合工程は、含まれるポリエステル樹脂等のガラス転移温度以上で実施することができる。融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分〜20時間である。
【0103】
なお、融合工程においては、加熱の際同時に架橋反応させてもよく、あるいは、融合が終了した後に別途架橋反応させてもよい。
融合の後、得られた粒子(融合粒子)は、室温になるまで静置して冷却する。
【0104】
−洗浄/乾燥工程−
融合工程を経て得られた融合粒子は、ろ過などの固液分離や、洗浄、乾燥を実施する。以上の操作によって、ポリエステル樹脂を結着樹脂とする乳化凝集法による芯粒子が得られる。
【0105】
(被覆層の形成)
本発明においてトナー母粒子は、上記芯粒子に前記被覆層を形成することで製造される。
【0106】
既述の通り、前記芯粒子の製法は特に限定されないが、被覆層は乳化重合法により形成することが好ましい。
【0107】
具体的には、前記芯粒子を界面活性剤等により水系分散媒に分散させ、温度・pHを調整しながら、凝集剤と共に被覆層用結着樹脂と被覆層用離型剤を含む複合微粒子分散液(以下、「結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液」と称する。)を加え、芯粒子に付着させ、被覆層用結着樹脂のガラス転移温度以上に加熱して融合することにより作製される。また、前記芯粒子が乳化重合法により作製される場合、前記芯粒子の融合工程の前に結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液を加え、芯粒子に付着させてもよい。このとき、被覆層用結着樹脂と被覆層用離型剤とを微粒子分散液作製時に予め複合させて結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液を調製した上で、被覆層形成時に添加して被覆層を形成することにより、本発明に特徴的な表層構造のトナー母粒子を製造することができる。
【0108】
結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液の調製は、例えば、機械的せん断力によって乳化させる方法や、転相乳化法を用いる方法等が挙げられるが、なかでも、転相乳化法を用いることが望ましい。転相乳化法を用いることにより、被覆層用結着樹脂と被覆層用離型剤との複合化の制御が容易となる。
【0109】
−転相乳化法−
転相乳化法による結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液の調製方法の一例として、例えば、以下の方法が挙げられる。具体的には、例えば、被覆層用結着樹脂と被覆層用離型剤とを、有機溶媒(良溶媒)と水溶性溶媒(水溶性の貧溶媒)との混合液に溶解させて樹脂・離型剤溶液を調製し、必要に応じて中和剤(例えば、アンモニア等)や分散安定剤を添加し、攪拌下にて水溶性溶媒(例えば水)を滴下して乳化粒子を得た後、樹脂粒子分散液中の溶媒を除去して、乳化液(樹脂粒子分散液)を得る。なお、中和剤及び分散安定剤の投入順は変更してもよい。
【0110】
被覆層用結着樹脂及び被覆層用離型剤を溶解させる有機溶媒(樹脂・離型剤溶解溶媒)としては、例えば、蟻酸エステル類、酢酸エステル類、酪酸エステル類、ケトン類、エーテル類、ベンゼン類、ハロゲン化炭素類等が挙げられる。具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、酪酸等のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン(MPK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルブチルケトン(MBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のメチルケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の複素環置換体類;四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭素類;などを単独であるいは2種以上組み合わせて用いればよい。なかでも、入手し易さや脱溶剤時の回収容易性の点から、低沸点溶媒である酢酸エステル類やメチルケトン類、エーテル類が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチルが特に好ましい。前記有機溶媒のなかでも、樹脂粒子中に有機溶媒が残存することを抑制する観点から、揮発性の比較的高いものを用いることが望ましい。
【0111】
また、被覆層用離型剤のような結晶性物質を樹脂・離型剤溶解溶媒に十分に溶解させるには、被覆層用離型剤の融点近傍まで加熱してやることが望ましい。被覆層用離型剤の融点、樹脂・離型剤溶解溶媒の沸点、及び、溶解時の温度を適切に調整することで、被覆層用結着樹脂と被覆層用離型剤の複合状態を制御することができ、最終的な状態であるトナー母粒子において、その表面に存在する離型剤の平均分散径を制御することができる。
【0112】
前記水溶性溶媒としては、基本的にはイオン交換水が用いられるが、油滴を破壊しない程度に水溶性有機溶媒を含んでも構わない。該水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の短炭素鎖アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エーテル類、ジオール類、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒のイオン交換水との混合比は、全水溶性溶媒量中の水溶性有機溶媒の割合として、質量基準で1%以上50%以下が望ましく、1%以上30%以下がより望ましい。また、水溶性有機溶媒は添加されるイオン交換水に混合するだけでなく、樹脂・離型剤溶解溶媒中に添加して使用しても構わない。水溶性有機溶媒を添加する場合には、被覆層用結着樹脂と樹脂・離型剤溶解溶媒との濡れ性が調整され、また、樹脂溶解後の液粘度を低下させる機能が期待される。
【0113】
前記乳化液が安定的に分散状態を保つよう、必要に応じて前記樹脂・離型剤溶液に分散安定剤を添加してもよい。該分散安定剤としては、水溶性溶媒中で親水性コロイドを形成するものが挙げられ、例えば、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルローズ等のセルローズ誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等の合成高分子類;ゼラチン、アラビアゴム、寒天等が挙げられる。また、分散安定剤として、シリカ、酸化チタン、アルミナ、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等の固体粉末も用いられる。
【0114】
これら分散安定剤の前記樹脂・離型剤溶液中の濃度としては、0.5質量%以上20質量%以下の範囲となるよう添加されることが望ましくは、1質量%以上10質量%以下の範囲となるよう添加されることがより望ましい。0.5質量%未満では分散安定剤を添加した効果が得られず、20質量%を超えると結着樹脂・離型剤複合微粒子の芯粒子への付着性が低下し、所望の被覆層を得ることが困難になる場合があるため、それぞれ好ましくない。
【0115】
前記樹脂・離型剤溶液に添加する分散安定剤としては、界面活性剤も挙げられる。当該界面活性剤としては、前記芯粒子の乳化凝集法による製造方法の説明にて述べた各種分散液に用いられる界面活性剤と同様のものを使用することができる。例えば、サポニンなどの天然界面活性成分の他に、アルキルアミン塩酸・酢酸塩類、4級アンモニウム塩類、グリセリン類等のカチオン系界面活性剤、脂肪酸石けん類、硫酸エステル類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、スルホン酸塩類、リン酸、リン酸エステル、スルホコハク酸塩類等のアニオン系界面活性剤などが挙げられ、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が望ましく用いられる。
【0116】
また、前記乳化液のpHを調整するために、中和剤を添加してもよい。当該中和剤としては、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなど一般の酸、アルカリが用いられる。
【0117】
前記乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、乳化液を常温(25℃)前後もしくは加熱下で有機溶剤を揮発させる方法や、これに減圧を組み合わせる方法が望ましく用いられる。
【0118】
結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液の調製において、被覆層用結着樹脂に対する被覆層用離型剤の混合比率は、トナー母粒子表面における前記離型剤の露出面積割合を制御する上で重要であり、所望の露出面積割合になるように当該混合比率を調整すればよい。ただし、当該混合比率(被覆層用結着樹脂を100質量%とした場合の被覆層用離型剤の割合)としては20質量%以下にすることが好ましい。20質量%を超えると、被覆層用結着樹脂との複合化に溢れる被覆層用離型剤が存在してしまう場合があり、その際には均一な結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液を得ることが困難になる。
【0119】
(トナー母粒子の形状)
本発明のトナーにおいて、トナー母粒子は、既述のように芯粒子に被覆層が形成されてなるものであるが、その形状に制限は無い。ただし、近年の画像の高精細化や転写性向上の要求より、トナーの小粒径化及び球形化が望まれている。それを踏まえた、本発明のトナー母粒子に望まれる平均粒径及び平均円形度について、以下に述べる。
【0120】
(平均粒径)
本発明のトナーは、その体積平均粒径が2μm以上9μm以下の範囲であることが望ましく、より望ましくは3μm以上7μm以下の範囲である。粒径が大き過ぎると高精細画像を再現することが困難になり、逆に粒径が小さ過ぎると逆極性トナーが生じて地汚れや色抜け等画質に影響を与える懸念があり、それぞれ好ましくない。
【0121】
勿論、それぞれのデメリットが克服できる場合や、それらデメリットが問題とならない場合には、上記範囲を外れた粒径の物であっても構わない。
【0122】
上記体積平均粒径の測定は、マルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて、100μmのアパーチャー径で行うことができる。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ(濃度:1質量%)、界面活性剤(商品名:コンタミノン)を添加し、超音波分散器により300秒以上分散させた後に行えばよい。
【0123】
(形状係数)
本発明のトナーは、形状係数SF1が110以上145以下の範囲の球形状であることが好ましい。形状がこの範囲の球形状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像形成を行うことができる。
上記形状係数SF1は110以上140以下の範囲であることがより好ましい。
【0124】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(2)により求められる。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100・・・式(2)
上記式(2)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0125】
形状係数SF1は、顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、画像解析装置で解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出することができる。すなわち、スライドガラス表面に散布したトナー粒子の光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じて画像解析装置(例えば、ルーゼックス社製の画像解析装置)に取り込み、100個以上のトナー粒子について、その最大長と投影面積を求め、上記式(2)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0126】
トナーの形状係数SF1が110より小さい、または140を超えると、長期にわたって、優れた帯電性、クリーニング性、転写性が得られないことがある。
【0127】
最近では、簡便に測定が可能であることから、シスメックス株式会社製のFPIA−3000を用いて形状係数を測定する場合が多い。FPIA−3000は、4000個程度の粒子像を光学的に測定し、粒子1個ずつの投影画像を画像解析する。具体的には、まず、粒子1個の投影画像から周囲長を算出する(粒子像の周囲長)。次に、その投影画像の面積を算出し、その面積と同面積を持つ円を仮定し、その円の円周を算出する(円相当径から求めた円の円周長)。円形度は、円形度=円相当径から求めた円の円周長/粒子像の周囲長、として算出され、数値が1.0に近いほど球形を表す。この円形度が、0.945以上0.990以下であることが好ましく、0.950以上0.975以下であることがより好ましい。円形度が0.950以下であると転写効率が低下し、0.975以上であるとクリーニング性が低下することがある。
【0128】
なお、装置間誤差があるものの、形状係数SF1の110は、概ねFPIA−3000の円形度0.990に相当する。また、形状係数SF1の140は、概ねFPIA−3000の円形度0.945に相当する。
【0129】
なお、ここで云うトナーの体積平均粒径や形状係数、円形度は、厳密には、外添剤が添加された状態の最終的なトナー(いわゆる外添トナー)ではなく、外添剤を添加していないいわゆるトナー母粒子について論じられるものであるが、トナーの径に比して外添剤の径は十分に小さく、トナーの径や形状を計測する際に無視し得る程度なので、測定に際して、外添剤を除してトナー母粒子にすることなく、そのまま外添トナーを用いても問題ない。
【0130】
<<外添剤>>
上記のようにして得られたトナー母粒子には、流動性助剤、クリーニング助剤、研磨剤等として、無機粒子及び有機粒子を大径外添剤として添加(外添混合)されて、本発明のトナーが製造される。
【0131】
大径外添剤の一次粒子平均径としては、80nm以上300nm以下の範囲内から選択され、120nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0132】
大径外添剤の一次粒子平均径が大き過ぎるとトナー母粒子から離脱しやすくなり、逆に小さ過ぎると現像機内のストレスによりトナー母粒子中に埋まりこみやすくなり、転写効率を損なう場合があるため、それぞれ好ましくない。
【0133】
なお、本明細書において「一次粒子平均径」「一次粒子径」と言う場合には、球相当の一次粒子径をいう。
【0134】
離型剤の平均分散径に対する大径外添剤の一次粒子平均径については、それぞれ本発明に規定される範囲内であれば問題なく本発明の効果が奏されるが、特に両者の関係が、離型剤の平均分散径(a)に対する大径外添剤の一次粒子平均径(b)の比(b/a)として、0.6以上2.5以下の範囲であることが好ましく、0.7以上2.0以下の範囲であることがより好ましい。
【0135】
大径外添剤として外添可能な無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、酸化セリウム等の通常トナー表面の外添剤として使用される全ての粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、その表面が疎水化されたものであることが好ましい。
疎水化は、疎水化処理剤により処理することにより為され、疎水化処理剤としてはクロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シリル化イソシアネートのいずれも使用可能である。具体的にはメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ter−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0136】
大径外添剤として外添可能な有機粒子としては、例えば、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、エチレン系重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される全ての粒子が挙げられる。
【0137】
本発明においては、大径外添剤の他に小径外添剤を別途加えることも好ましい態様である。小径外添剤は、トナーの流動性を向上させ、凝集度を低下させるとともに、熱凝集の抑制等の効果より環境安定性の向上に寄与する。小径外添剤の平均一次粒子径は、5nm以上30nm未満、より好ましくは5nm以上29nm未満、さらに好ましくは10nm以上29nm以下である。5nm未満であるとトナーが受けるストレスによりトナー母粒子表面に埋没しやすい。一方、30nm以上では、前述の大径外添剤の働きをするものとなってしまう。なお、必要に応じて、これら大小径の範囲内で複数の径の外添剤を添加してもよいし、前記大径外添剤の上限を超える径の外添剤をさらに添加しても構わない。
【0138】
小径外添剤としては、具体的には、メタチタン酸とシラン化合物との反応生成物などのチタン化合物、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化鉄などの金属酸化物、窒化チタンなどの窒化物等が挙げられ、特に、高度に疎水性であり、焼成処理が無いため凝集体を発生しにくく、外添時に分散性が良好であるメタチタン酸とシラン化合物との反応生成物であることが好ましい。また、その際のシラン化合物としては、トナーの帯電制御が良好であり、キャリアや潜像担持体への付着性を低減できるアルキルアルコキシシラン化合物及び/またはフルオロアルキルアルコキシシラン化合物が好ましく用いられる。
【0139】
一般的にトナーにおける外添剤は、V型ブレンダー、サンプルミルあるいはヘンシェルミキサーなどで機械的衝撃力を加えられてトナー母粒子の表面に付着または固着させられる。本発明においても、同様にして前記大径外添剤を前記トナー母粒子の表面に添加する。すると、既述の通り、前記トナー母粒子の表面に形成された離型剤のピットに大径外添剤が半ば埋まり込むような状態で保持される。
【0140】
一方、前記小径外添剤を添加する場合には、前記大径外添剤より先、あるいは同時に添加すると、離型剤のピットに埋まり込んでしまい小径外添剤の添加効果が発現しなくなってしまうため、まず、前記大径外添剤を添加して、トナー母粒子に十分に付着させてから、前記小径外添剤を添加処理するとよい。このような順序で外添剤を添加することによって、前記離型剤のピットに先ず前記大径外添剤を保持させて、小径外添剤にとっていわばマスキングした状態にしてから、前記小径外添剤が添加されるので、前記離型剤のピットに小径外添剤が埋まり込むことが無く、大径外添剤及び小径外添剤共に、添加効果を発現することができる。
【0141】
本発明のトナーには、さらに、滑剤を添加することもできる。滑剤として、例えばエチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩ユニリンなどの高級アルコールなどが挙げられる。その1次粒径は、0.5μm以上8.0μm以下のものが好ましい。
【0142】
[現像剤]
以上説明した本発明のトナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいはキャリアと混合されて二成分現像剤として用いられる。
【0143】
使用可能なキャリアとしては、特に制限は無いが、樹脂で被覆されたキャリア(一般に、「コートキャリア」「樹脂被膜キャリア」「樹脂被覆キャリア」等と称される。)であることが望ましく、窒素含有樹脂で被覆されたキャリアであることがさらに好適である。被覆に適した窒素含有樹脂としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含むアクリル系樹脂、ウレア、ウレタン、メラミン、グアナミン、アニリン等を含むアミノ樹脂、またアミド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらの共重合樹脂でも構わない。これらの中でも、特にウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂が好ましい。
【0144】
キャリアの被覆樹脂としては、前記窒素含有樹脂の中から2種以上を組み合わせて使用してもよいし、前記窒素含有樹脂と窒素を含有しない樹脂とを組み合わせて使用してもよい。また、前記窒素含有樹脂を粒子状にし、窒素を含有しない樹脂中に分散して使用してもよい。
【0145】
一般に、キャリアには、適度な電気抵抗値を有することが機能上求められ、具体的には109Ωcm以上1014Ωcm以下の電気抵抗値であることが望ましい。例えば、鉄粉キャリアのように電気抵抗値が106Ωcmと低い場合には、絶縁性(体積抵抗率が1014Ωcm以上)の樹脂を被覆し、樹脂被覆層中に導電性粉末を分散させることが望ましい。
【0146】
導電性粉末の具体例としては、金、銀、銅等の金属;カーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの;等が挙げられる。この中でもカーボンブラックが好ましい。
【0147】
上記樹脂被膜層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液とを混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を粒子化し被膜樹脂の融解温度以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被覆させるパウダーコート法等が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましい。
【0148】
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用すればよく、前記被膜樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用してもよい。
【0149】
上記方法により形成される樹脂被膜層の平均膜厚は、通常0.1μm以上10μm以下、より好適には0.2μm以上5μm以下の範囲である。
【0150】
キャリアに用いられる芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、特に磁気ブラシ法を用いる場合には、磁性金属が望ましい。キャリア芯材の個数平均粒径としては、一般的には10μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましい。
【0151】
前記二成分現像剤における本発明のトナーと上記キャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、質量比でトナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0152】
[画像形成装置、トナー収容容器、プロセスカートリッジ]
まず、本発明のトナーを用いた本発明の画像形成装置を説明し、その後に当該画像形成装置に搭載される本発明のトナー収容容器に言及し、別途プロセスカートリッジについて説明する。なお、以下の画像形成装置並びにトナー収容容器及びプロセスカートリッジは一例であって、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0153】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、本発明の現像剤を収容すると共に前記静電潜像保持体表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0154】
本実施形態では、転写手段として、中間転写部材を介して転写する中間転写方式の物が例示されており、現像されたトナー像を中間転写部材に一次転写する一次転写手段と、中間転写部材に転写されたトナー像を記録材に二次転写する二次転写手段と、を有する。さらに、本実施形態に係る画像形成装置は、一次転写手段による転写後の静電潜像保持体表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段を含む。
【0155】
本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図を図1に示す。画像形成装置200は、いわゆる感光体である静電潜像保持体201、帯電手段である帯電器202、静電潜像形成手段である像書込装置203、トナー像形成手段であるロータリー現像装置204、一次転写手段(転写手段)である一次転写ロール205、クリーニングブレードによる清浄化手段であるクリーニング装置206、記録用紙(記録媒体)Pに対して複数色のトナー像が積層され、一括して転写させる中間転写部材である中間転写体207、一次転写ロール205と共に中間転写体207を張架支持する3つの支持ロール208,209,210、二次転写手段(転写手段)である二次転写ロール211、二次転写後の記録用紙Pを搬送する搬送ベルト212、搬送ベルト212により搬送されてきた記録用紙Pを2つの加熱ロール213及び加圧ロール214で挟み込み、熱と圧力でトナー像を定着する定着装置(定着手段)215等を備えて構成されている。
【0156】
静電潜像保持体201は、全体としてドラム状に形成されたもので、その外周面(ドラム表面)に感光層を有している。この静電潜像保持体201は図1の矢印C方向に回転可能に設けられている。帯電器202は、静電潜像保持体201の表面を一様に帯電するものである。像書込装置203は、帯電器202によって一様に帯電された静電潜像保持体201に像様の光Xを照射することにより、静電潜像を形成するものである。
【0157】
ロータリー現像装置204は、それぞれイエロー用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用のトナーを収容する4つ現像器204Y,204M,204C,204Kを有するものである。本装置では、画像形成のための現像剤にトナーを用いることから、現像器204Yにはイエロートナー、現像器204Mにはマゼンタトナー、現像器204Cにはシアントナー、現像器204Kにはブラックトナーがそれぞれ収容されることになる。これら4つの現像器の内の少なくともいずれか1つに収容されるトナーとして、既述の本発明のトナーを用いることで、本発明の画像形成装置の要件を満たす。本実施形態においては、全てのトナーを本発明の要件を満たすトナーとした。
【0158】
このロータリー現像装置204は、上記4つの現像器204Y,204M,204C,204Kが順に静電潜像保持体201と近接、対向するように回転駆動することにより、それぞれの色に対応する静電潜像にトナーを転移してトナー像を形成するものである。
【0159】
ここで、必要とする画像に応じて、ロータリー現像装置204内の現像器を部分的に除去してもよい。例えば、現像器204Y、現像器204M、現像器204Cといった3つの現像器からなるロータリー現像装置であってもよい。また、これら現像器をブルー、グリーン、レッド等の所望する色の現像剤を収容した現像器に変換して使用してもよいし、新たに現像器を加えて、5つ以上の現像器を有するロータリー現像装置としてもよい。
【0160】
一次転写ロール205は、静電潜像保持体201との間で中間転写体207を挟持しつつ、静電潜像保持体201表面に形成されたトナー像をエンドレスベルト状の中間転写体207の外周面に転写(一次転写)するものである。クリーニング装置206は、転写後に静電潜像保持体201表面に残ったトナー等をクリーニング(除去)するものである。中間転写体207は、その内周面が複数の支持ロール208,209,210及び一次転写ロール205によって張架され、矢印D方向及びその逆方向に周回可能に支持されている。二次転写ロール211は、図示しない用紙搬送手段によって矢印E方向に搬送される記録用紙(記録媒体)Pを支持ロール210に巻回された中間転写体207との間で挟持しつつ、中間転写体207外周面に転写されたトナー像を記録用紙Pに転写(二次転写)するものである。
【0161】
画像形成装置200は、順次、静電潜像保持体201表面にトナー像を形成して中間転写体207外周面に重ねて転写するものであり、次のように動作する。すなわち、まず、静電潜像保持体201が回転駆動され、帯電器202によって静電潜像保持体201の表面が一様に帯電された(帯電工程)後、その静電潜像保持体201に像書込装置203による像光が照射されて静電潜像が形成される(潜像形成工程)。
【0162】
この静電潜像は例えばイエロー用の現像器204Yによって現像された(現像工程)後、そのトナー像が一次転写ロール205によって中間転写体207外周面に転写される(一次転写工程)。このとき中間転写体207に転写されずに静電潜像保持体201表面に残ったトナー等は、クリーニング装置206によりクリーニングされる。
【0163】
また、イエロー色のトナー像が外周面に形成された中間転写体207は、該外周面にイエロー色のトナー像を保持したまま矢印D方向に一回転(この時、静電潜像保持体201と中間転写体207及びクリーニング装置206とが離間するように構成されている。)し、次の例えばマゼンタ色のトナー像が、イエロー色のトナー像の上に積層されて転写される位置に備えられる。
【0164】
以降、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーについても、上記同様に帯電器202による帯電、像書込装置203による像光の照射、各現像器204M,204C,204Kによるトナー像の形成、中間転写体207外周面へのトナー像の転写が順次、繰り返される。
【0165】
本実施形態では、例えばレッドの画像を形成する場合、現像工程と一次転写工程とを経て中間転写体207上に形成されたイエロートナー像上に、現像器204Mによって静電潜像保持体201上に形成されたマゼンタトナー像が、一次転写工程において配置されるように転写される。
【0166】
こうして中間転写体207外周面に対する4色のトナー像の転写が終了すると、このトナー像は二次転写ロール211により一括して記録用紙Pに転写される(二次転写工程)。これにより、記録用紙Pの画像形成面には、画像形成面から順にブラックトナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、イエロートナー像が適宜積層された記録画像が得られる。二次転写ロール211によってトナー像が記録用紙P表面に転写された後に、定着装置215によって転写されたトナー像が加熱定着される(定着工程)。
【0167】
以下、図1の画像形成装置200における帯電手段、静電潜像保持体、静電潜像形成手段、トナー像形成手段、転写手段、中間転写部材、クリーニング手段、定着手段及び記録媒体について説明する。
【0168】
(帯電手段)
帯電手段である帯電器202としては、例えば、コロトロンなどの帯電器が用いられるが、導電性または半導電性の帯電ロールを用いてもよい。導電性または半導電性の帯電ロールを用いた接触型帯電器は、静電潜像保持体201に対し、直流電流を印加するか、交流電流を重畳させて印加してもよい。例えばこのような帯電器202により、静電潜像保持体201との接触部近傍の微小空間で放電を発生させることにより静電潜像保持体201表面を帯電させる。
【0169】
帯電手段によって静電潜像保持体201の表面は、通常、−300V以上−1000V以下に帯電される。また、前記の導電性または半導電性の帯電ロールは単層構造あるいは多重構造でもよい。さらに、帯電ロールの表面をクリーニングする機構を設けてもよい。
【0170】
(静電潜像保持体)
静電潜像保持体201は、潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。静電潜像保持体としては、電子写真感光体が好適なものとして挙げられる。静電潜像保持体201は、円筒状の導電性の基体外周面に有機感光層等を含む感光層が形成されてなる。この感光層は一般的に、基体表面に必要に応じて下引き層が形成され、さらに電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とがこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。
【0171】
これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質及び電荷輸送物質の両方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。なお、有機感光層に限らずアモルファスシリコン感光膜等他の種類の感光層を使用してもよい。
【0172】
(静電潜像形成手段)
静電潜像形成手段である像書込装置203としては、特に制限はなく、例えば、静電潜像保持体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッター光等の光源を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。
【0173】
(トナー像形成手段)
トナー像形成手段は、静電潜像保持体上に形成された潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有する。そのようなトナー像形成手段としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、静電荷像現像用のトナーをブラシ、ローラ等を用いて静電潜像保持体201に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。現像の際、静電潜像保持体201には、通常直流電圧が使用されるが、さらに交流電圧を重畳させて使用してもよい。
【0174】
(転写手段)
転写手段(本実施形態においては、一次転写手段及び二次転写手段の双方を指す。)としては、例えば、記録媒体の裏側からトナー像のトナーとは逆極性の電荷を与え、静電気力によりトナー像を記録媒体表面に転写するもの、あるいは記録媒体の裏面に直接接触して転写する導電性または半導電性のロール等を用いた転写ロール及び転写ロール押圧装置を用いればよい。
【0175】
転写ロールには、静電潜像保持体に付与する転写電流として、直流電流を印加してもよいし、交流電流を重畳させて印加してもよい。転写ロールは、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等に応じて、各種条件乃至諸元を適宜設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ロールとして単層の発泡ロール等が好適に用いられる。
【0176】
(中間転写部材)
中間転写部材としては、公知の中間転写部材を用いればよい。中間転写部材に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンテレフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料等が挙げられるが、機械的強度の観点から熱硬化ポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトが好ましい。
【0177】
(清浄化手段)
清浄化手段については、静電潜像保持体上の残留トナーを清掃するものであれば、ブレードクリーニング方式、ブラシクリーニング方式、ロールクリーニング方式を採用したもの等、適宜選定して差し支えない。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。中でも、耐摩耗性に優れていることから、特にポリウレタン弾性体を用いることが好ましい。
【0178】
なお、転写効率の高いトナーを使用する場合には、清浄化手段を使用しない態様であっても構わない。
【0179】
(定着手段)
定着手段(定着装置)としては、記録媒体に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧等より定着するものである。本実施形態のような2ロール方式のほか、加熱側または加圧側がベルト状で他方がロール状のベルト−ロールニップ方式、加熱側及び加圧側の双方ともベルト状の2ベルト方式等が挙げられる。ベルトについては、複数のロールでベルトを張架する方式のほか、ベルトを張架せずに用いるフリーベルト方式も挙げられる。本発明においては、いずれの方式の定着装置であっても構わない。
【0180】
(記録媒体)
トナー像を転写されて最終的な記録画像が形成される記録媒体(記録用紙)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録媒体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用される。
【0181】
本実施形態において、普通紙としては、例えば、JIS−P−8119で測定される平滑度が15から80秒の範囲のもの、かつ、JIS−P−8124で測定される坪量が80g/m2以下のものなどが挙げられる。コート紙としては、紙基材の一方の面に塗被層を有し、かつ、平滑度が150秒以上1000秒以下の範囲のものなどが挙げられる。
【0182】
以上説明した本実施形態の画像形成装置は、本発明に基づく優れた作用・効果を奏するトナー乃至現像剤を用いていることにより、外添剤による転写効率を損なうことなく、外添剤離脱による不具合、例えば帯電装置の汚染や静電潜像保持体への異物付着に伴う画質低下が抑制されたものとなる。
【0183】
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明の画像形成装置を詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では色数分の現像器を有するロータリー現像装置204によって、1つの静電潜像保持体201に各色の潜像を形成して、その都度中間転写体207に転写する構成の装置を例示しているが、色数分の静電潜像保持体、帯電手段、トナー像形成手段、クリーニング手段等を有する各色ユニットを中間転写体に対向させて並列に配置(物理的に直線状でなくても構わない。)して、それぞれのユニットで形成された各色のトナー像を中間転写媒体に一次転写して順次積層し、一括して記録媒体に二次転写する、一般的にタンデム方式と呼ばれる画像形成装置にも好適である。
【0184】
また、本発明の画像形成装置は、上記実施形態で説明した各構成要素に加えて、その他従来公知の、あるいは公知ではない各種構成を付加することができ、その付加によってもなお本発明の画像形成装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。例えば、クリーニング手段の後工程として、除電手段を設けることもできる。なお、除電手段については、プロセスカートリッジの項において概説する。
【0185】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の画像形成装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の画像形成装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0186】
<トナー収容容器>
本発明において、トナー収容容器とは、表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面に保持された静電潜像をトナーにより現像して前記静電潜像保持体表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えた画像形成装置に対して脱着可能であり、前記トナー像形成手段に供給するための本発明のトナーを収容してなることを特徴とするものであり、一般的には「トナーカートリッジ」と称されるものである。
【0187】
すなわち、図1に示した実施形態においては、各現像器204Y,204M,204C,204Kに供給するための本発明のトナーを収容してなるものがトナー収容容器であり、適当な容器にトナーが収容されたものである(不図示)。そのような容器の形状や材質は特に限定されないが、一般にポリスチレンやポリプロピレン、ポリカーボネートあるいはABS樹脂といったプラスチック材料からなる。
【0188】
<プロセスカートリッジ>
本発明において、「プロセスカートリッジ」とは、画像形成装置における構成要素の内の2つ以上を一体的に備え、メンテナンスや補修、消耗品の定期交換等の目的で、画像形成装置本体から脱着可能に構成されている構成要素の集合体を意味する。本発明においては、画像形成装置における構成要素の内、静電潜像保持体及びトナー像形成手段を含み、他の構成要素は任意である。
【0189】
図2は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一例の基本構成を概略的に示す模式断面図である。図2に示すプロセスカートリッジ300においては、静電潜像保持体307と共に、帯電器(帯電手段)308、現像装置(トナー像形成手段)311及びクリーニング装置(清浄化手段)313を含み、外装には露光のための開口部318及び除電露光のための開口部317が設けられ、さらに取付レール316が取り付けられて、これらが一体化してなるものである。なお、現像装置311には、先に述べた本発明の現像剤が収容されている。
【0190】
このプロセスカートリッジ300は、転写装置312と、定着装置315と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在になっており、画像形成装置本体と共に画像形成装置を構成する。
【0191】
静電潜像保持体307、帯電器(帯電手段)308及びクリーニング装置(クリーニング手段)313としては、既に画像形成装置の実施形態の項で説明しているため、詳細は割愛するが、プロセスカートリッジ300においても同様の物を用いることができる。
【0192】
静電潜像保持体307表面に現像されたトナー像を記録紙500に転写する転写装置312についても、画像形成装置の実施形態の項で、一次転写手段及び二次転写手段の双方をまとめて「転写手段」として説明した内容が、プロセスカートリッジ300においてもそのまま当てはまるため、詳細は割愛する。
【0193】
不図示の除電装置(光除電装置)としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、静電潜像保持体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
【0194】
本例のプロセスカートリッジ300においては、開口部317からこのような光除電装置からの光が取り込まれ、静電潜像保持体307表面が除電される。
【0195】
一方、不図示の露光装置(露光手段)からの像様の露光光は、本例のプロセスカートリッジ300において、開口部318から取り込まれ、静電潜像保持体307表面に照射されて静電潜像が形成される。
【0196】
図2で示すプロセスカートリッジ300では、静電潜像保持体307及び現像装置311と共に、帯電器308、クリーニング装置313、露光のための開口部318、及び、除電露光のための開口部317を備えているが、本発明においては、これら装置等は選択的に組み合わせることが可能である。本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像保持体及び現像装置311等の現像像形成手段を必須構成とし、他の構成は任意的要素である。
【0197】
このような本発明のプロセスカートリッジは、先に述べた画像形成装置(好ましくは、いわゆるタンデム方式の画像形成装置)に装着されるものであり、本発明に基づく優れた作用・効果を奏する現像剤を収容していることにより、外添剤による転写効率を損なうことなく、外添剤離脱による不具合、例えば帯電装置の汚染や静電潜像保持体への異物付着に伴う画質低下が抑制されたものとなる。
【実施例】
【0198】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、単に「部」「%」とあるのは全て質量基準である。
【0199】
−被覆層用結着樹脂(1)の調製−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.1):40質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2):320質量部
・フマル酸:70質量部
・テレフタル酸:49質量部
・トリメリット酸:10質量部
【0200】
以上の成分を混合・溶解した溶液を、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌しながら、窒素雰囲気下のまま、反応中に生成された水を系外へ除去しつつ190℃で18時間反応させ、徐々に減圧しながら220℃まで温度を上げて19時間反応させた後、冷却して、質量平均分子量が122500の被覆層用結着樹脂(1)を調製した。
【0201】
−被覆層用結着樹脂(2)〜(9)の調製−
上記「被覆層用結着樹脂(1)の調製」において、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、フマル酸、テレフタル酸、トリメリット酸の量、及び、220℃での反応時間を下記表1に示すように変更したこと以外は被覆層用結着樹脂(1)と同様にして、被覆層用結着樹脂(2)〜(9)を調製した。得られた被覆層用結着樹脂(2)〜(9)の質量平均分子量を下記表1に併せて示す。
【0202】
【表1】

【0203】
−結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液(1)の調製−
攪拌翼、コンデンサー、温度計、水滴下装置を備えた、2リットルセパラブルフラスコに、前記被覆層用結着樹脂(1)300質量部と被覆層用離型剤(スミライザーTPL−R、住友化学製)30質量部とメチルエチルケトン(溶剤)105質量部とイソプロピルアルコール(溶剤)90質量部とを入れ、湯バスにて70℃まで加温し、70℃で維持して、100rpmで攪拌混合しながら樹脂を溶解させた〔溶解液調製工程〕。その後攪拌回転数を150rpmにし、湯バスを66℃に設定して30分間放置し温度を安定させた。次に、10質量%アンモニア水(試薬)15質量部を1分間で投入し〔中和剤添加工程〕、10分間混合した後、66℃に保温されたイオン交換水(水系媒体)を7質量部/分の速度で、合計900質量部滴下し転相させて、乳化液を得た〔乳化液調製工程〕。
【0204】
水滴下終了後、乳化液は冷却せずに、乳化液800質量部とイオン交換水500質量部を2リットルナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械株式会社)にセットした。ナスフラスコを回転させながら湯バスにて60℃で30分間加温して液温を安定させた後、減圧を開始した。減圧条件は、101kPaから50kPaまでの間はポンプの能力限界速度で、50kPaから7kPaまでの間は172分かけて減圧した。7kPa到達後は7kPaを維持して、途中、内容物が突沸しないように真空度を調整しながら溶剤を回収した〔溶剤除去工程〕。
【0205】
溶剤回収量が850質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して、被覆層用結着樹脂と被覆層用離型剤とが複合した微粒子の分散液を得た。得られた分散液にイオン交換水を加えて、固形分濃度を30質量%に調整し、これを結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液(1)とした。
【0206】
−結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液(2)〜(42)の調製−
上記「結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液(1)の調製」において、被覆用結着樹脂、被覆用離型剤及び被覆用離型剤の量を下記表2に示すように変更したこと以外は結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液(1)と同様にして、結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液(2)〜(42)を得た。
【0207】
【表2】

【0208】
−結晶性結着樹脂粒子分散液(1)の調製−
・デカン酸ジメチル:100質量部
・1,9−ノナンジオール:75.0質量部
・ジブチルすずオキサイド:0.12質量部
【0209】
以上の成分を混合・溶解した溶液を、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌しながら、窒素雰囲気下のまま、反応中に生成された水を系外へ除去しつつ180℃で8時間反応させ、徐々に減圧しながら230℃まで温度を上げて7時間反応させた後、冷却して、質量平均分子量が22500の結晶性結着樹脂を得た。
【0210】
得られた結晶性結着樹脂100質量部と、メチルエチルケトン60質量部と、イソプロピルアルコール20質量部とを三口フラスコに収容し、攪拌しながら45℃に加熱して樹脂を溶解させた後、10%アンモニア水溶液25質量部を加え、さらにイオン交換水400質量部を徐々に加えて転相乳化を行い、その後減圧し、脱溶媒することで、体積平均粒径が174nmの結晶性結着樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液にイオン交換水を加えて、樹脂粒子濃度が30質量%となるように水分量を調整し、これを結晶性結着樹脂粒子分散液(1)とした。
【0211】
−非晶性結着樹脂粒子分散液(1)の調製−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.1):85質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2):217質量部
・フマル酸:80質量部
・テレフタル酸:49質量部
【0212】
以上の成分を混合・溶解した溶液を、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌しながら、窒素雰囲気下のまま、反応中に生成された水を系外へ除去しつつ190℃で18時間反応させ、徐々に減圧しながら220℃まで温度を上げて9時間反応させた後、冷却して、質量平均分子量が42500の非晶性結着樹脂を得た。
【0213】
得られた非晶性結着樹脂100質量部と、メチルエチルケトン45質量部と、イソプロピルアルコール10質量部とを三口フラスコに収容し、攪拌しながら45℃に加熱して樹脂を溶解させた後、10%アンモニア水溶液25質量部を加え、さらにイオン交換水400質量部を徐々に加えて転相乳化を行い、その後減圧し、脱溶媒することで、体積平均粒径が150nmの非晶性結着樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液にイオン交換水を加えて、樹脂粒子濃度が30質量%となるように水分量を調整し、これを非晶性結着樹脂粒子分散液(1)とした。
【0214】
−離型剤分散液(1)の調製−
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製:HNP9,融点77℃):60質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):4質量部
・イオン交換水:200質量部
【0215】
以上の成分を混合した溶液を120℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径が250nmである離型剤を分散させてなる離型剤の分散液を得た。得られた分散液にイオン交換水を加えて、離型剤濃度が30質量%となるように水分量を調整し、これを離型剤分散液(1)とした。
【0216】
−着色剤分散液(1)の調製−
・カーボンブラック(キャボット社製:BP1300):50質量部
・非イオン性界面活性剤ノニポール400(花王社製):5質量部
・イオン交換水:200質量部
【0217】
以上の成分を混合・溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散し、この分散液の着色剤濃度が25質量%となるように水分量を調整して、着色剤分散液(1)を得た。
【0218】
−トナー母粒子(1)の作製−
非晶性結着樹脂粒子分散液(1)600質量部と、結晶性結着樹脂粒子分散液(1)85質量部と、着色剤分散液(1)100質量部と、離型剤分散液(1)110質量部と、カチオン性界面活性剤(花王(株)製:サニゾールB50)1.5質量部とを丸型ステンレス製フラスコに収容し、0.05mol/l(0.1規定)の硫酸を添加してpHを3.7に調整した後、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの濃度が10質量%の硝酸水溶液30質量部を添加し、その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した。加熱用オイルバス中で1℃/分で45℃まで加熱し、45℃で2時間保持して芯粒子の分散液を得た。さらに、この分散液中に、結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液(1)340質量部を緩やかに追加して、さらに2時間保持して芯粒子に被覆層を形成した。
【0219】
その後、0.1mol/l(0.1規定)の水酸化ナトリウムを添加してpHを7.5に調整し、攪拌を継続しながら1℃/分で85℃まで加熱して3時間保持した。さらにその後、20℃/minの速度で20℃まで冷却し、これをろ過し、イオン交換水で洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥させてトナー母粒子(1)を得た。
【0220】
−トナー母粒子(2)〜(41)の作製−
上記「トナー母粒子(1)の作製」において、被覆層の形成に用いた結着樹脂・離型剤複合微粒子分散液及びその添加量を下記表3に示すように変更したこと以外はトナー母粒子(1)と同様にして、トナー母粒子(2)〜(41)を得た。
【0221】
【表3】

【0222】
−外添剤(1)の作製−
テトラメトキシシラン130質量部を、イオン交換水100質量部及び25質量%のアルコール100質量部に添加し、25質量%アンモニア水150質量部を30℃の環境下で3時間かけて滴下しながら150rpmで攪拌して反応させた。この反応で得られたシリカゾル懸濁液を遠心分離して、湿潤シリカゲルとアルコール、アンモニア水に分離し、さらに分離した湿潤シリカゲルを120℃で2時間乾燥し、未処理シリカを得た。
【0223】
得られた未処理シリカ100質量部とエタノール500質量部とをエバポレーターに入れ、温度を40℃に維持したまま15分間攪拌した。次に未処理シリカ100質量部に対して10質量部のジメチルジメトキシシランを入れ、さらに15分間攪拌した。
【0224】
最後に温度を90℃に上げてエタノールを減圧乾燥させ、処理物を取り出した後、さらに120℃で30分間真空乾燥を行った。乾燥されたシリカを粉砕し、一次粒子平均径が150nmの外添剤(1)を得た。
【0225】
−外添剤(2)〜(9)の作製−
上記「外添剤(1)の作製」において、テトラメトキシシランの添加量、25質量%アンモニア水の滴下時間、及び撹拌速度を下記表4に示すように変更したこと以外は外添剤(1)と同様にして、外添剤(2)〜(9)を作製した。得られた外添剤(2)〜(9)の一次粒子平均径を下記表4に併せて示す。
【0226】
【表4】

【0227】
<トナー(1)の製造>
トナー母粒子(1)を60質量部、外添剤(1)を2.0質量部、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、実施例1のトナー(1)を製造した。
【0228】
得られたトナー(1)の体積平均粒径は5.9μm、FPIA−3000による円形度は0.967であった。
【0229】
<トナー(2)〜(101)の製造>
上記「トナー(1)の製造」において、トナー母粒子、外添剤を下記表5〜7に示すように変更したこと以外はトナー(1)と同様にして、トナー(2)〜(101)を製造した。得られたトナー(2)〜(101)の体積平均粒径及びFPIA−3000による円形度を下記表5〜7に併せて示す。
【0230】
【表5】

【0231】
【表6】

【0232】
【表7】

【0233】
<キャリアの作製>
・フェライト粒子(平均粒径50μm、体積電気抵抗108Ω・cm):100質量部
・トルエン:14質量部
・パーフルオロオクチルエチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合比(モル比)20:80、質量平均分子量Mw=5万):1.6質量部
・カーボンブラック(VXC−72;キャボット社製):0.12質量部
・架橋メラミン樹脂粒子(数平均粒子径;0.3μm):0.3質量部
【0234】
上記成分のうち、フェライト粒子を除く成分を10分間スターラーで分散して被膜形成用液を調製し、この被膜形成用液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、60℃で30分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去して、フェライト粒子表面に樹脂被膜を形成して、キャリアを製造した。
【0235】
[実施例1]
キャリア94質量部と、トナー(1)6質量部とを混合し、V−ブレンダーを用い40rpmで20分間攪拌し、目開き177μmの網目を有するシーブで篩うことにより実施例1の現像剤(1)を製造した。
【0236】
[実施例2〜91]
実施例1において、用いたトナーを下記表8〜10に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜91の現像剤(2)〜(91)を製造した。
【0237】
なお、各実施例の現像剤(1)〜(91)で用いたトナー(1)〜(91)の表面における離型剤の平均分散径(a)、露出面積割合及び分散径500nm以下の個数割合の結果を下記表8〜10に併せて示す。これらの測定方法については後述する。
【0238】
また、これらトナー(1)〜(91)における外添剤の一次粒子平均径(b)、離型剤の平均分散径(a)に対する外添剤の一次粒子平均径(b)の比(b/a)及び被覆層用結着樹脂の質量平均分子量についても下記表8〜10に併せて示す。
【0239】
【表8】

【0240】
【表9】

【0241】
【表10】

【0242】
[比較例1〜10]
実施例1において、用いたトナーを下記表11に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1〜10の現像剤(92)〜(101)を製造した。
【0243】
なお、各比較例の現像剤(92)〜(101)で用いたトナー(92)〜(101)の表面における離型剤の平均分散径(a)、露出面積割合及び分散径500nm以下の個数割合の結果を下記表11に併せて示す。これらの測定方法については後述する。
【0244】
また、これらトナー(92)〜(101)における外添剤の一次粒子平均径(b)、離型剤の平均分散径(a)に対する外添剤の一次粒子平均径(b)の比(b/a)及び被覆層用結着樹脂の質量平均分子量についても下記表11に併せて示す。
【0245】
【表11】

【0246】
<トナー表面における離型剤の分散径及び露出面積割合の測定>
トナー表面における離型剤の分散径(平均分散径及び分散径500nm以上の個数割合)と露出総面積は、以下の方法によって測定した。
【0247】
測定対象となるトナー2質量部と、カチオン性界面活性剤(花王(株)製:サニゾールB50)1.5質量部と、イオン交換水50質量部とを300mlのビーカーに入れて混合し、超音波洗浄器に30分間かけた後、ろ過・乾燥して、外添剤を除去した外添剤除去トナー(トナー母粒子に相当)を得た。
【0248】
次に、得られた外添剤除去トナーについて、通常の方法によってルテニウム染色を実施した。具体的には、染色すべき外添剤除去トナーと四酸化ルテニウム0.05gとをデシケーターに入れ4時間放置した後、四酸化ルテニウムを取出し、さらに12時間デシケーター中で外添剤除去トナーを四酸化ルテニウム蒸気に曝し、外添剤除去トナーの表面を染色した。
【0249】
表面染色された外添剤除去トナーの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影し(倍率5000倍、視野を変えて100枚撮影)、コントラストから離形剤の判断を実施した。離型剤以外の結着樹脂は二重結合部分を多く有し四酸化ルテニウムによって染色されるため、離型剤部分と離型剤以外の樹脂部分を識別することができる。すなわち、ルテニウム染色により、離形剤が一番薄く染色され、次いで結晶性ポリエステル樹脂が染色され、非晶性ポリエステル樹脂が一番濃く染色される。
【0250】
得られたSEM画像を画像解析ソフトにより二値化し、外添剤除去トナー表面の離型剤の平均分散径と分散径500nm以上の個数割合と露出面積割合とを求めた。このとき、何れも100個の外添剤除去トナーに対する平均値を採用した。
【0251】
[評価試験]
<帯電部材汚染と画質評価・転写性評価>
実施例1〜91及び比較例1〜10の各現像剤((1)〜(101))を、Docu CentreIV C5570(富士ゼロックス(株)製)の改造機の現像装置に投入して、実際にプリントすることで、帯電部材汚染と画質及び転写性の評価を行った。
【0252】
評価テストは、30℃/90%RHの環境下で、A3サイズの用紙(富士ゼロックス社製、OKトップコート紙、坪量127g/m2)に対してベタ画像(トナーの面積当たり質量TMAは4.0g/m2)をプリントし、500枚目及び3000枚目のサンプルについて、帯電部材汚染と画質評価及び転写性評価を実施した。
【0253】
続けて、用紙中央部に「Fujixerox」の文字(Arial,12p)を5000枚(通算8000枚)プリントした後、再び、ベタ画像(TMA=4.0g/m2)をプリントし、文字プリントを含めた通算8005枚目及び通算10000枚目のサンプルについて、帯電部材汚染と画質評価及び転写性評価を実施した。
【0254】
このときの各評価の評価基準は以下に示す通りである。結果は、下記表12〜15にまとめて示す。
【0255】
−帯電部材汚染と画質(スジ)の評価−
G5.0:帯電部材に外添剤の脱離に起因した汚染が認められない。
G4.0:帯電部材に軽微な汚れ(外添剤/トナーが数個付着)はあるが、画質には影響なし
G3.0:帯電部材に軽微な汚れ(外添剤/トナーが10個以上付着)はあるが、画質には影響なし
G2.0:帯電部材に軽微な汚れがあり、軽微なスジが発生しているが実使用上問題ない
G1.0:帯電部材汚染、スジともに発生し、実使用上問題となる
【0256】
−転写性評価−
転写性評価は、使用トナー量に対する回収トナー量の割合で求めた。具体的には、評価で使用したトナー消費量cを評価前後のトナーカートリッジの質量変化から求め、転写残トナー量dを評価前後の廃トナー回収ボックスの質量変化から求め、以下の式で転写効率を求めた。
転写効率η(%)=[(c−d)/c]×100
【0257】
G4.0:95%≦η
G3.0:90%≦η<95%
G2.0:85%≦η<90%
G1.0:η<85%
【0258】
【表12】

【0259】
【表13】

【0260】
【表14】

【0261】
【表15】

【符号の説明】
【0262】
100:本発明のトナー、102:トナー母粒子、104:樹脂微粒子、200:画像形成装置、 201,307:静電潜像保持体、 202,308:帯電器(帯電手段)、 203:像書込装置(静電潜像形成手段)、 204:ロータリー現像装置(トナー像形成手段)、 204Y,204M,204C,204K,204R:現像器、 205:一次転写ロール(転写手段)、 206,313:クリーニング装置、 207:中間転写体、 208,209,210:支持ロール、 211:二次転写ロール、 212:搬送ベルト、 213:加熱ロール、 214:加圧ロール、 215,315:定着装置、 300:プロセスカートリッジ、 311:現像装置、 312:転写装置、 316:取付レール、 317:開口部、 318:開口部、 P:記録用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂及び離型剤を含む芯粒子と、結着樹脂及び平均分散径が50nm以上410nm以下の範囲内である離型剤を含む被覆層からなり、表面における前記離型剤の露出面積割合が30%以上65%以下の範囲内であるトナー母粒子に、少なくとも、一次粒子平均径が80nm以上300nm以下の範囲内である外添剤が添加されてなることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記被覆層に含まれる結着樹脂の質量平均分子量が、70000以上200000以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記被覆層に含まれる離型剤の内、分散径が500nm以上の個数割合が、15%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項5】
表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面に保持された静電潜像をトナーにより現像して前記静電潜像保持体表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えた画像形成装置に対して脱着可能であり、
前記トナー像形成手段に供給するための請求項1〜3のいずれかに記載のトナーを収容してなることを特徴とするトナー収容容器。
【請求項6】
画像形成装置に対して脱着可能であり、表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、請求項4に記載の現像剤を収容すると共に前記静電潜像保持体表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、請求項4に記載の現像剤を収容すると共に前記静電潜像保持体表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
表面に形成された静電潜像を保持し得る静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像保持体表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着手段と、を備え、
前記静電潜像保持体と前記トナー像形成手段とが、脱着可能に搭載された請求項6に記載のプロセスカートリッジにより構成されてなることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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