説明

トナー

【課題】低速から高速のいずれのプロセスにおいても、画像不具合および薄層形成不良の発生を長期間にわたって抑えることができる磁性トナーを提供する。
【解決手段】結着樹脂および磁性微粒子を含むトナー母粒子を含むトナーであり、前記結着樹脂が、環状オレフィンコポリマーを含み、前記磁性微粒子が、リン元素を含み、398kA/m(5kOe)の磁界下における前記トナーの残留磁化が、5.0〜8.0Am/gであり、398kA/m(5kOe)の磁界下における前記トナーの保磁力が、11〜17.5kA/mであり、前記残留磁化と前記保磁力との積が、60〜140kAm/gであるトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置における静電潜像の現像に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電潜像の現像方式としては、磁性トナー(磁性一成分現像剤)を用いた磁性一成分ジャンピング現像方式がある。
該現像方式は、磁力を有する現像スリーブに磁性トナーを担持させ、薄層規制ブレードにより均一なトナー薄層を形成し、該トナー薄層から磁性トナーを、静電潜像が形成された感光体の表面に飛翔させて静電潜像をトナー像として現像する方式である。
【0003】
磁性トナーとしては、例えば、下記のものが知られている。
(1)鉄以外の二価金属の酸化物を含むフェライトで構成されている表面層を有する球形磁性粒子を含む磁性トナー(特許文献1)。
(2)二価金属原子と鉄原子とを含み、残留磁化と保磁力との積が特定の範囲にある磁性微粒子を含む磁性トナー(特許文献2)。
(3)鉄−亜鉛酸化物の薄膜で被覆され、残留磁化と保磁力との積が特定の範囲にある磁性微粒子を含む磁性トナー(特許文献3)。
【0004】
(1)の磁性トナーは、磁気特性(残留磁化および保磁力)の比較的低い磁性微粒子を用いているため、高速プロセスに用いた場合、画像不具合(トナー飛散、かぶり等。)、薄層形成不良(薄層ムラ等。)等が発生する可能性が高い。
(2)、(3)の磁性トナーは、高速プロセス向きであるものの、磁性トナーの耐久性に問題があり、現像器内に長期間滞留した場合、薄層規制ブレードや撹拌搬送ローラに接触して微粉化しやすい。微粉化した磁性トナーは、帯電量が低下するため、かぶりが発生しやすくなる。
【特許文献1】特開平3−67265号公報
【特許文献2】特許第3127345号公報
【特許文献3】特許第3273302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低速から高速のいずれのプロセスにおいても、画像不具合および薄層形成不良の発生を長期間にわたって抑えることができる磁性トナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトナーは、結着樹脂および磁性微粒子を含むトナー母粒子を含むトナーであり、前記結着樹脂が、環状オレフィンコポリマーを含み、前記磁性微粒子が、リン元素を含み、398kA/m(5kOe)の磁界下における前記トナーの残留磁化が、5.0〜8.0Am/gであり、398kA/m(5kOe)の磁界下における前記トナーの保磁力が、11〜17.5kA/mであり、前記残留磁化と前記保磁力との積が、60〜140kAm/gであることを特徴とする。
【0007】
前記リン元素の量は、前記磁性微粒子に含まれる鉄元素100質量部に対して、0.1〜0.6質量部であることが好ましい。
前記磁性粉粒子の量は、前記結着樹脂100質量部に対して、70〜110質量部であることが好ましい。
【0008】
本発明のトナーは、現像スリーブに磁性トナーを担持させ、薄層規制ブレードにより均一なトナー薄層を形成し、該トナー薄層から磁性トナーを、静電潜像が形成された感光体の表面に飛翔させて静電潜像をトナー像として現像する現像手段を具備する画像形成装置に用いられるトナーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトナーによれば、低速から高速のいずれのプロセスにおいても、画像不具合および薄層形成不良の発生を長期間にわたって抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(トナー)
本発明のトナーは、トナー母粒子および必要に応じて外添剤を含み、398kA/m(5kOe)の磁界下における残留磁化が、5.0〜8.0Am/gであり、398kA/m(5kOe)の磁界下における保磁力が、11〜17.5kA/mであり、残留磁化と保磁力との積が、60〜140kAm/gであるものである。
【0011】
トナーの残留磁化が5.0Am/g未満では、トナー飛散が生じる。トナーの残留磁化が8.0Am/gを超えると、トナーが現像されにくくなり、濃度低下を生じる。
【0012】
トナーの保磁力が11kA/m未満では、トナー飛散が生じる。トナーの保磁力が17.5kA/mを超えると、トナーが現像されにくくなり、濃度低下を生じる。
【0013】
残留磁化と保磁力との積が60kAm/g以上であれば、磁気拘束力が高くなるため、高速プロセスにおいても現像スリーブに形成されるトナー薄層が均一となり、低湿環境下においてもかぶりが抑えられる。残留磁化と保磁力との積が140kAm/g以下であれば、磁気拘束力が高すぎることがないため、十分な画像濃度を確保できる。
【0014】
磁気特性(残留磁化および保磁力)は、振動試料型磁力計(例えば、東英工業社製のVSMP−1型、VSM−P7−15型)によって測定される。磁気特性の測定は、常温常湿(20℃、65%RH)で保管しておいたトナーを50mg程度採取し、円筒形のセルに挿入して、測定磁場398kA/m(5kOe)において1分間でヒステリシスカーブを描かせて行う。
【0015】
トナー母粒子は、結着樹脂および磁性微粒子を含み、必要に応じて、電荷制御剤、離型剤、着色剤等を含む。
【0016】
結着樹脂は、環状オレフィンコポリマー(COC)を含む。
環状オレフィンコポリマーは、環状構造を有するポリオレフィン樹脂である。
環状オレフィンコポリマーとしては、α−オレフィンと二重結合を有する脂環式化合物(シクロオレフィン)との共重合体が挙げられる。
【0017】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
脂環式化合物としては、シクロヘキサン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン等が挙げられる。
環状オレフィンコポリマーの市販品としては、ティコナ社製の「TOPAS(登録商標)」(エチレンとノルボルネンとの共重合体)が挙げられる。
【0018】
結着樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、環状オレフィンコポリマーを除く結着樹脂(以下、他の結着樹脂と記す。)を含んでいてもよい。
他の結着樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂等。)、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0019】
磁性微粒子は、磁性材料中にリン元素を含む微粒子である。
磁性材料としては、強磁性鉄酸化物、フェライト類、強磁性金属または合金類、これらを組み合わせたもの等が挙げられる。
強磁性鉄酸化物としては、四三酸化鉄(Fe)、三二酸化鉄(γ−Fe)等が挙げられる。
【0020】
フェライト類としては、酸化鉄亜鉛(ZnFe)、酸化鉄イットリウム(YFe12)、酸化鉄カドミウム(CdFe)、酸化鉄ガドリウム(GdFe12)、酸化鉄銅(CuFe)、酸化鉄鉛(PbFe1219)、酸化鉄ネオジウム(NdFeO)、酸化鉄バリウム(BaFe1219)、酸化鉄マンガン(MnFe)、酸化鉄ランタン(LaFeO)、これらの複合物等が挙げられる。
フェライトの具体例としては、マンガン−マグネシウム系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、銅−亜鉛系フェライト、リチウム系フェライト等が挙げられる。
強磁性金属または合金類としては、鉄、コバルト、ニッケル、これらの合金等が挙げられる。
【0021】
リン元素の量は、前記磁性微粒子に含まれる鉄元素100質量部に対して、0.1〜0.6質量部が好ましく、0.3〜0.5質量部がより好ましい。リン元素の量が0.1質量部以上であれば、トナーの磁力が十分高くなるため、現像スリーブにおける薄層ムラが発生しにくくなる。リン元素の量が0.6質量部以下であれば、トナーの磁力が高すぎることがないため、トナーの帯電量が上昇し、十分な画像濃度を確保できる。
【0022】
リン元素の量は、例えば、下記のようにして測定できる。
ビーカーに数Lの脱イオン水を入れ、45〜50℃になるようにウォーターバスで加温する。数百mLの脱イオン水でスラリーとした磁性微粒子数十gを脱イオン水で水洗しながら、この脱イオン水とともにビーカー中に加える。ついで、温度を60℃、撹拌スピードを数百rpmに保ちながら、特級水酸化ナトリウムを加え、磁性微粒子に含まれるリン化合物を溶解する。溶解開始から、例えば、30分後にサンプリングし、メンブランフィルターでろ過し、ろ液を採取し、プラズマ発光分光(ICP)によってリン元素の定量を行う。
【0023】
磁性微粒子は、例えば、下記のようにして製造できる。
第一鉄塩を主成分とする水溶液に、鉄元素に対して当量以上のアルカリ水溶液を加える。さらに、この水溶液に、鉄元素(100質量部)に対するリン元素の量が0.1〜0.6質量部となるように、リン酸塩溶液を添加し、pHを9前後に維持しながら空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行う。得られた磁性微粒子のスラリー液を洗浄、ろ過、乾燥、粉砕する。
【0024】
磁性微粒子は、表面処理剤(チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤等。)によって表面処理されていてもよい。
磁性微粒子の平均粒子径は、0.1〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。平均粒子径は、磁性微粒子の透過型電子顕微鏡写真から100個の粒子を選定し、それらの粒子径を測定し、個数平均で表したものである。
【0025】
磁性微粒子の量は、結着樹脂100質量部に対し、70〜110質量部が好ましく、80〜90質量部がより好ましい。磁性微粒子の量が70質量部未満では、磁力が不足し、トナー飛散やカブリが生じる。磁性微粒子の量が110質量部を超えると、定着性が悪化する。
【0026】
正電荷制御剤としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロールイド等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウム塩を有する樹脂またはオリゴマー;カルボン酸塩を有する樹脂またはオリゴマー;カルボキシル基を有する樹脂またはオリゴマー等が挙げられる。
【0027】
負電荷制御剤としては、有機金属錯体またはキレート化合物が挙げられ、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシヤリーブチルサリチル酸クロム等が挙げられ、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体または塩が好ましい。
電荷制御剤の量は、結着樹脂100質量部に対し、0.5〜5.0質量部が好ましく、1.0〜2.0質量部がより好ましい。
【0028】
離型剤としては、ワックス類、低分子量オレフィン系樹脂が挙げられる。ワックス類としては、例えば、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸の高級アルコールエステル、アルキレンビス脂肪酸アミド化合物、天然ワックス等が挙げられる。低分子量オレフィン系樹脂としては、数平均分子量が1000〜10000、好ましくは2000〜6000の範囲にあるポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体等が挙げられ、低分子量ポリプロピレンが好ましい。
離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対し、1.0〜10.0質量部が好ましく、3.0〜7.0質量部がより好ましい。
【0029】
本発明のトナーは、磁性微粒子により着色されるため、通常、着色剤は不要である。なお、トナーの色味を調整するために、公知の着色剤(例えば、黒色顔料として、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等)を補助的に添加してもよい。
着色剤の量は、結着樹脂100質量部に対し、1〜10質量部が好ましい。
【0030】
トナー母粒子の製造方法としては、粉砕分級法、重合法、溶融造粒法、スプレー造粒法等の公知の製造方法が挙げられる。
トナー母粒子の平均粒子径は、6.0〜10.0μmが好ましく、7.0〜8.0μmがより好ましい。平均粒子径は、トナー母粒子の透過型電子顕微鏡写真から100個の粒子を選定し、それらの粒子径を測定し、個数平均で表したものである。
【0031】
トナー母粒子には、外添剤を外添してもよい。
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、各種脂肪酸の金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等。)等が挙げられる。
外添剤の量は、トナー母粒子100質量部に対し、0.5〜3.0質量部が好ましい。
【0032】
(画像形成装置)
本発明のトナーは、磁性一成分ジャンピング現像方式の画像形成装置に用いられる。
画像形成装置としては、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ、これらの複合機等が挙げられる。
【0033】
図1は、画像形成装置の一例を示す概略構成図である。複写機30(画像形成装置)は、画像形成ユニット31、排紙ユニット32、画像読取ユニット33、および原稿給送ユニット34を有して概略構成される。
【0034】
画像形成ユニット31は、画像形成部31aおよび給紙部31bを有する。
画像形成部31aは、ドラム状の感光体41、ならびに該感光体41の回転方向に沿って、感光体41の周囲に配置された、帯電器42(帯電手段)、露光器43(露光手段)、現像器44(現像手段)、転写ローラ45(転写手段)、およびクリーニング装置46(クリーニング手段)を有する。
現像器44は、現像スリーブ44a、第1の撹拌搬送ローラ44b、第2の撹拌搬送ローラ44c、および薄層規制ブレード44dを有する。
【0035】
排紙ユニット32は、中間トレイ32aおよび排紙トレイ32bを有する。なお、中間トレイ32aおよび排紙トレイ32bは、いわゆる胴内排紙部として構成されている。
画像読取ユニット33は、光源33aおよび光学素子33bを有する。
原稿給送ユニット34は、原稿載置トレイ34a、原稿給送機構34b、および原稿排出トレイ34cを有する。
【0036】
複写機30においては、原稿載置トレイ34a上に載置された原稿が、原稿給送機構34bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ34cに排出される。
原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、光源33aからの光を利用して、CCD等の光学素子33bにて原稿上の画像が読み取られ、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部31bに積載された用紙S(被転写体)は、一枚ずつ画像形成部31aに送られる。
【0037】
画像形成部31aにおける感光体41は、図中、実線矢印で示す方向に回転駆動されて、帯電器42により、その表面が均一に帯電される。その後、画像信号に基づいて、露光器43により感光体41に対して露光プロセスが実施され、感光体41の表面に静電潜像が形成される。
一方、現像器44においては、現像スリーブ44aに磁性トナーが担持され、薄層規制ブレード44dにより均一なトナー薄層が形成される。
感光体41の静電潜像に、現像器44の現像スリーブ44aに形成されたトナー薄層からトナーを飛翔させて現像し、感光体41の表面にトナー像を形成する。そして、トナー像は、感光体41と転写ローラ45とのニップ部に搬送される用紙Sに転写される。転写が行われた後、感光体41に残留する残留トナーについては、クリーニング装置46で除去される。
【0038】
トナー像が転写された用紙Sは、定着ユニット47(定着手段)に搬送されて、定着プロセスが行われる。
定着後の用紙Sは、排紙ユニット32に送られる。後処理(例えば、ステイプル処理等。)を行う場合には、用紙Sは中間トレイ32aに送られた後、後処理が行われる。その後、用紙Sは、画像形成装置の側面に設けられた排出トレイ部(図示略)に排出される。一方、後処理を行わない場合には、用紙Sは中間トレイ32aの下側に設けられた排紙トレイ32bに排紙される。
【0039】
以上説明した本発明のトナーにあっては、磁性微粒子がリン元素を含むため、リン元素を含まず、かつ同等の磁気特性を有する磁性微粒子に比べ、トナーの帯電量が高くなり、かぶりが抑えられる。また、磁性微粒子がリン元素を含むため、トナーの磁気特性(残留磁化および保磁力)を高めることができ、かつリン元素の量を調整することにより、容易に残留磁化、保磁力およびこれらの積を所定の値に設定できる。そして、残留磁化、保磁力およびこれらの積が所定範囲に設定されることにより、画像濃度を十分に確保でき、低湿環境下においてもかぶりを抑えることができ、さらに、高速プロセスにおいても現像スリーブのトナー薄層を均一に形成できるため、高速プロセスにおいても画像不具合および薄層形成不良の発生を抑えることができる。
また、本発明のトナーにあっては、結着樹脂として環状オレフィンコポリマーを用いているため、トナーの耐久性が向上し、現像器内で長期間撹拌された場合でも微粉化しにくい。そのため、画像不具合および薄層形成不良の発生を長期間にわたって抑えることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(磁気特性)
磁気特性(残留磁化および保磁力)は、振動試料型磁力計(東英工業社製、VSM−P7−15型)を用い、常温常湿(20℃、65%RH)で保管しておいたトナーを50mg程度採取し、円筒形のセルに挿入して、測定磁場398kA/m(5kOe)において1分間でヒステリシスカーブを描かせて測定した。
【0042】
(画像濃度)
画像濃度(ID)は、反射濃度計(東京電色社製、TC−6DS型)により測定した。IDが1.3以上を合格とした。
【0043】
(余白部分のかぶり濃度)
余白部分のかぶり濃度(FD)は、画像の白紙相当部のIDの値からベースペーパーのIDを引いた値とした。FDが0.008未満を合格とした。
【0044】
(薄層ムラ)
低温低湿(温度10℃、相対湿度20%)の環境下にて、磁性一成分ジャンピング現像方式の複写機(京セラミタ社製、KM−3530)にトナーを充填した後、耐刷前に現像スリーブの表面を目視にて観察した。判定基準は下記の通りである。
○:現像スリーブに形成されたトナー薄層にムラがない。
×:現像スリーブに形成されたトナー薄層にムラがある。
【0045】
(帯電性)
トナーの帯電性は、Q/m Meter Model210HS−2A(Trek社製)を用いて帯電量を測定し、下記判定基準にて評価した。
○:3〜10μC/g。
×:3μC/g未満または11μC/g以上。
【0046】
〔実施例1〕
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素と当量の水酸化ナトリウム水溶液加え、さらに鉄元素(100質量部)に対するリン元素の量が0.35質量部となるようにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を加え、水溶液のpHを9前後に維持しながら空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行った。磁性微粒子のスラリー液を、洗浄、濾過、乾燥、粉砕して、平均粒子径 μm、鉄元素100質量部に対するリン元素の量が0.35質量部の磁性微粒子を得た。
【0047】
環状オレフィンコポリマー(ティコナ社製、TOPAS(登録商標)TB)100質量部、磁性微粒子80質量部、電荷制御剤(ニグロシン染料、オリエント化学工業社製、N−01)5.0質量部、および離型剤(低分子量ポリプロピレン、三洋化成工業社製、ユーメックス100TS)3.0質量部をヘンシェルミキサ(三井鉱山社製、20B)にて回転数250rpmで5分間混合し、二軸押出機(池貝社製、PCM−30)にて回転数200rpm、シリンダ温度120℃、投入量6kg/時間で混練し、ドラムフレーカ(三井鉱山社製)にて速度140mm/秒で板厚3〜4mmに調整しながら冷却し、ターボミル(ターボ工業社製、T−250型)にて粉砕した後、アルピネ分級機にて分級を行ない、平均粒子径7.8μmのトナー母粒子を得た。
【0048】
トナー母粒子100質量部に対して、外添剤であるシリカ(ワッカー社製、H2050EP)0.8質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製、20B)にて回転数250rpmで3分間混合し、トナーを得た。トナーの磁気特性を評価した。結果を表1に示す。
【0049】
トナーを、磁性一成分ジャンピング現像方式の複写機(京セラミタ社製、KM−3530)に充填し、薄層ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
ついで、低濃度(0.4%)にて1万枚まで連続耐刷を行った。ID、FDの測定結果および帯電性の評価結果を表1に示す。
【0050】
〔実施例2〕
鉄元素(100質量部)に対するリン元素の量が0.20質量部となるようにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を加えた以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径7.8μm、鉄元素100質量部に対するリン元素の量が0.20質量部の磁性微粒子を得た。
該磁性微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子およびトナーを得た。
該トナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
〔実施例3〕
磁性微粒子の量を90質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
該トナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例1〕
磁性微粒子の量を65質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
該トナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
〔比較例2〕
鉄元素(100質量部)に対するリン元素の量が0.10質量部となるようにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を加えた以外は、実施例1と同様にして、鉄元素100質量部に対するリン元素の量が0.10質量部の磁性微粒子を得た。
該磁性微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子およびトナーを得た。
該トナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例3〕
磁性微粒子の量を100質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
該トナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
〔比較例4〕
リン元素を含まず、かつ実施例1の磁性微粒子と同等の物性を有する磁性微粒子を用意した。
該磁性微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子およびトナーを得た。
該トナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
〔比較例5〕
結着樹脂をスチレン−アクリル系樹脂に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
該トナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1〜3のトナーは、帯電性に優れ、現像スリーブに薄層ムラがなく、画像濃度が高く、かぶりが抑えられていた。
比較例1のトナーは、残留磁化、および残留磁化と保磁力との積が小さいため、かぶりおよび薄層ムラが発生した。
比較例2のトナーは、残留磁化と保磁力との積が小さいため、かぶりが若干発生し、また、薄層ムラが発生した。
比較例3のトナーは、残留磁化、および残留磁化と保磁力との積が大きいため、画像濃度が低下した。
比較例4のトナーは、磁性微粒子がリン元素を含まないため、帯電性に劣り、かぶりが発生した。
比較例5のトナーは、結着樹脂が環状オレフィンコポリマーを含まないため、耐刷によってしだいにがぶりが多くなり、帯電性にも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のトナーは、高速プロセスの磁性一成分ジャンピング現像方式の画像形成装置用のトナーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0061】
30 複写機(画像形成装置)
41 感光体
44 現像器(現像手段)
44a 現像スリーブ
44d 薄層規制ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および磁性微粒子を含むトナー母粒子を含むトナーであり、
前記結着樹脂が、環状オレフィンコポリマーを含み、
前記磁性微粒子が、リン元素を含み、
398kA/m(5kOe)の磁界下における前記トナーの残留磁化が、5.0〜8.0Am/gであり、
398kA/m(5kOe)の磁界下における前記トナーの保磁力が、11〜17.5kA/mであり、
前記残留磁化と前記保磁力との積が、60〜140kAm/gである、トナー。
【請求項2】
前記リン元素の量が、前記磁性微粒子に含まれる鉄元素100質量部に対して、0.1〜0.6質量部である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記磁性粉粒子の量が、前記結着樹脂100質量部に対して、70〜110質量部である、請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
現像スリーブに磁性トナーを担持させ、薄層規制ブレードにより均一なトナー薄層を形成し、該トナー薄層から磁性トナーを、静電潜像が形成された感光体の表面に飛翔させて静電潜像をトナー像として現像する現像手段を具備する画像形成装置に用いられるトナーである、請求項1〜3のいずれかに記載のトナー。

【図1】
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【公開番号】特開2008−268563(P2008−268563A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111494(P2007−111494)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】