説明

トナー

【課題】高温高湿環境下でも、印字比率の高い画像を安定した画像濃度で得られ、低湿環境下における耐静電オフセット性に優れ、且つ少ないトナー消費量で画像を形成できるトナーを提供することにある。
【解決手段】少なくとも磁性体及び樹脂を含有するトナーであって、
該トナーの重量平均粒子径(D4)が3乃至12μmであり、該トナーの平均円形度が0.950以上であり、
該トナーを温度23℃湿度60%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ1、温度40℃湿度95%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ2とした時に式(A)を満たすことを特徴とする。
式(A) 0.80≦Q2/Q1≦1.40

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、又はトナージェット方式記録法の如き画像形成方法に用いられるトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、感光体上に電気的潜像を形成し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写し、熱・圧力等により定着することでトナー画像を得る方法が知られている。
【0003】
定着方式としては種々の方法や装置が開発されているが、現在最も一般的である方式は、加熱させたローラーやフィルムあるいはベルトによる圧着加熱方式である。特にフィルムを用いた圧着加熱は、比較的低熱量での定着が可能であるため、広く用いられている。
【0004】
近年、電子写真法を用いた複写装置やプリンターはより高速化、そして、より高画質化が求められており、装置のプロセススピードは加速する一方で高精細画像を提供しなければならない。しかし、高速化によってトナーへの負荷は大きくなり、且つトナーが帯電を得るための時間が短くなるため、トナーの磨耗及び帯電の不安定さに起因した画像濃度の低下や濃度ムラといった現像性能に関する問題が起こりやすい。特に高温高湿環境下では、熱による表面変質に加えて湿度の影響を受けるため、発生頻度が高くなる。
【0005】
一方、省エネ及び省スペースを考慮した本体の小型化が求められており、中でも定着装置の簡易化が重要である。その際には、上述のようなフィルム定着であると熱源及び装置構成の簡易化が容易であり、適用しやすい。しかし、簡易化に伴って、例えば定着フィルムに電圧を掛け、トナー付着を防止するための定着バイアス機構等を除去することもしばしばあるため、定着フィルムにトナーが静電的に付着する静電オフセットや定着尾引きといった現象が発生しやすくなる。これらの現象は、低湿下のようなトナーの帯電性が高まりやすい環境下で特に顕著となる。また、低湿環境下では高帯電成分が増加するために潜像に対するトナーの載り量は過剰になりやすく、トナー消費量(一枚の画像を形成するのに使われるトナーの量)は増加してしまう。
【0006】
これらの現象を極力防ぐことの出来るトナーはプリンターを高安定化、小型化する際に必須であり、改良が望まれている。
【0007】
上述の問題に対し例えば、特許文献1では温度50℃、湿度80%の環境下に2週間放置する前と後でのゼータ電位差が5mV未満となるよう調整し、トナーの環境変動による画質低下を抑えた発明がある。この発明では、得られる画像の濃度や感光体上カブリにのみ着目しており、静電オフセットのような定着時に発生する現象については課題を残している。
【0008】
また、特許文献2では、加熱加圧放置する前後の凝集度変化を小さくすることで高温高湿下での画像安定性を向上させた発明がある。ここでは、現像性は向上するものの、トナー消費量に関しては更なる改良が求められている。
【0009】
特許文献3では、オキシカルボン酸及びスルホン酸基を有する重合体を併用することによって、画質の環境安定性や過酷環境(温度40℃湿度85%)下に放置した際の現像性を改善する提案をしている。ここでは、定着器へのマッチング試験も実施しているものの、非印字部への静電オフセットを改善するまでには至っておらず、課題を残している。
【0010】
特許文献4では、トナー材料としてスルホン酸基を含有する重合体/ポリエステル樹脂を併用し、且つガラス転移温度、重量平均分子量、テトラヒドロフラン不溶分量、温度130℃及び170℃における貯蔵弾性率比を調整することで、環境に依らず安定した現像性を得る発明がなされているが、トナー消費量に関しては更なる改善が求められている。
【0011】
特許文献5では、微粒子を外添することによりトナーの帯電量が下がるよう調整することで、外添剤埋没による画像濃度低下やカブリを抑制する発明が為されている。しかし、画質やトナー消費量を含めた検討はされておらず、性能は不十分である。
【0012】
特許文献6では、導電性微粒子、非導電性微粒子を固着し、さらにトナー粒子の帯電量を±3μC/gを超えて変化させない範囲で、弱帯電性微粒子を外添することで、高い画像濃度を維持する、という提案がなされている。しかし、トナーの載り量を適正量とする点については、まだ不十分である。
【0013】
特許文献7では、非相溶の離型剤の分散径を0.2μm未満とし、無機微粒子添加前後のトナーの帯電量差が、トナーの帯電量に対して50%を超えないよう調整することで、環境に対する影響を受けにくい安定した現像性を達成する発明がなされている。しかし、静電オフセットに対しては性能が不十分であり、改善する余地を残している。
【0014】
特許文献8では、トナーの粒度分布及び外添前後での帯電量比の制御、更に荷電制御剤としての金属錯化合物が含有されない粒子数を5%以下に抑えることで耐久現像性を向上させた発明がある。しかし、現像性とともにトナー消費量は増加する方向であり、改善が求められている。
【0015】
特許文献9では、ポリエステル樹脂を使用した上で、外添剤、トナーの粒径、外添前と後の帯電量の関係式を満たすよう調整することで、環境安定性を達成している。しかし、潜像に対して適性量のトナーが載るような帯電性制御はしておらず、トナー消費量について課題を残している。
【0016】
特許文献10では、現像方法を規定した上で現像剤撹拌部入口及び出口の弱帯電成分及び/又は逆帯電成分量の関係式を満たすよう調整することで、環境安定性の向上、及び帯電分布をシャープ化した発明がなされている。しかし、トナー消費量に関する検討はなされておらず、改善が求められる。
【0017】
特許文献11では、トナーに対するシリカ微粒子の被覆率と、外添前後のトナーの帯電量比を制御することで帯電性や画像濃度を高める発明が為されている。しかし、ここではトナーの潜像への載り量や低湿環境下での帯電性については検討されておらず、トナー消費量、静電オフセットに関しては改善が求められる。
【0018】
【特許文献1】特開2005−107381
【特許文献2】特開2003−43738
【特許文献3】特登録3748510
【特許文献4】特開2003−156884
【特許文献5】特開平9−62026
【特許文献6】特開平11−44963
【特許文献7】特開2002−189309
【特許文献8】特開2002−278124
【特許文献9】特開2003−149850
【特許文献10】特開2006−17859
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、上記の如き問題点を解決したトナーを提供することにある。
【0020】
従って、本発明の目的は高温高湿環境下でも、印字比率の高い画像を安定した画像濃度で得られ、低湿環境下における耐静電オフセット性に優れ、且つ少ないトナー消費量で画像を形成できるトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、トナー表面形状及び温度40℃湿度95%で30日間放置した際の帯電性の制御、そして磁性体を表面近傍へ存在させることが耐久現像性、耐静電オフセット性を良化し、消費量低減に対して大きな効果があることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記目的は以下のトナーにより達成できる。
(1)少なくとも磁性体及び樹脂を含有するトナーであって、
該トナーの重量平均粒子径(D4)が3乃至12μmであり、
該トナーの平均円形度が0.950以上であり、
該トナーを温度23℃湿度60%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ1、温度40℃湿度95%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ2とした時に式(A)を満たすことを特徴とするトナー。
式(A) 0.80≦Q2/Q1≦1.40
(2)上記Q1の絶対値が20.0μC/g以上、60.0μC/g以下となることを特徴とする(1)記載のトナー。
(3)該トナーのガラス転移温度が30〜65℃であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のトナー。
(4)該トナーは、サリチル酸系のアルミニウム錯体を含有することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のトナー。
(5)該トナーの温度23℃湿度60%で30日間放置した際の比表面積が0.60〜1.10m2/gであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のトナー。
(6)該樹脂がポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂が、チタン含有触媒の存在下に形成されてなる樹脂であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のトナー。
(7)該磁性体が疎水化処理された磁性体であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載のトナー。
(8)該トナーが、水系媒体中で製造されるトナー粒子を含有することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載のトナー。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高温高湿環境下でも、印字比率の高い画像を安定した画像濃度で得られ、低湿環境下における耐静電オフセット性に優れ、且つ少ないトナー消費量で画像を形成できるトナーを提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明者らは、高温高湿における安定した現像性能、及び低湿環境下における耐静電オフセット性、消費量低減について鋭意検討を重ねた結果、トナーの表面形状と特殊環境下でのトナー物性変化率を制御することで著しい効果を発揮することを見出し、本発明に至った。すなわち、上記目的は以下のトナーにより達成できる。
【0024】
本発明のトナーは、少なくとも磁性体及び樹脂を含有するトナーであって、
該トナーの重量平均粒子径(D4)が3〜12μmであり、
該トナーの平均円形度が0.950以上であり、
該トナーを温度23℃湿度60%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ1、温度40℃湿度95%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ2とした時に式(A)を満たすことを特徴とする。
式(A) 0.80≦Q2/Q1≦1.40
【0025】
本発明者らは静電オフセット、定着尾引きの発生メカニズムと改善の方向性について検討した結果、これら現象に対する支配的因子が同一であり、且つ、現象を抑制する方向性を以下のように見出すことが出来た。
【0026】
静電オフセットは定着時に熱的ではなく、静電的に定着フィルムに付着する現象である。従って、いわゆる低温定着性や耐高温オフセット性といった、トナーの熱溶融特性を向上させるだけでは解決し得ない課題である。本発明者らは、定着プロセスにおいてトナーがどのように変化し、静電オフセットが発生するかを詳細に調査、検討した。定着時のトナーの状態を追跡すると、加熱部近傍に到達したトナーは一気に溶融するのではなく、まず、結着樹脂の表層部分が熱を受けて若干溶融した状態(以下、「半溶融状態」と呼ぶ。)となった後に、離型剤等の易溶融成分の溶融をきっかけとしてトナー全体が溶融し、加熱・加圧部を通過すると同時に紙へ定着していた。そこで、本発明者らは各状態のトナー及び静電オフセットしたトナーを分析することで、現象の解明を試みた。その結果、静電オフセットは、上述の表層部分のみが半溶融となった状態で発生していることが明らかとなった。半溶融状態では、外添剤は軟化した樹脂内にかなりの割合で取り込まれ、更にトナーの表面形状も熱を受けて滑らかとなっている。
【0027】
一方、定着尾引きとは、紙の進行方向とは逆側に、とげ状又は糸状の小さなささくれ線が横罫線から発生する現象を指している。定着尾引きに関しても同様な検討を行ったところ、静電オフセット同様、半溶融状態での現象発生を示唆する結果が得られた。これら諸現象の発生メカニズムに関し、定着の際にトナーが半溶融して外添剤の埋没や形状変化が起こることで帯電性の変化が生じる。そのことで紙への付着力、トナー間反発力、静電凝集力が大きく影響を受けることで静電オフセット、定着尾引き等の現象が起きていると推測している。
【0028】
更に、本発明者らは鋭意検討を重ね、トナーを温度40℃湿度95%の環境下で30日間放置した状態は、外添剤の埋め込みや表層の熱履歴、帯電性を始めとした諸物性において上述の「半溶融状態」を擬似的に再現していることを見出した。従って、この放置後のトナーを追跡することによって、定着時の半溶融状態をモニターすることが出来る。また、半溶融前の状態としては温度23℃湿度60%の通常環境において30日間放置したものが適正であり、物性、表面性共に安定した状態となっている。これら温度23℃湿度60%、温度40℃湿度95%の2条件で放置したトナーを半溶融前後のサンプルとして帯電性の変化率に着目し、検討した結果、変化率が小さいもの程、耐静電オフセット性のレベルが良いことを見出した。
【0029】
具体的にはトナーを、温度23℃湿度60%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ1、温度40℃湿度95%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ2とした時のQ2/Q1は、定着時の半溶融状態と通常状態の帯電性の変化率に相当している。本発明者らの検討の結果から、式(A)を満たすよう制御することによって本発明の課題である耐静電オフセット性、定着尾引きの抑制に対して著しい効果が得られることが分かった。
式(A) 0.80≦Q2/Q1≦1.40
【0030】
また、トナーを上述の式(A)を満たすように調整することで、通常状態における帯電安定性を大幅に向上させられる。特に、高温高湿下でのベタ画像連続出力の如き帯電性低下に伴う画像濃度低下が起き易い状況において大きな効果を発揮し、画像濃度の維持と濃度の均一性が飛躍的に向上する。
【0031】
また、上述の諸現象を抑制するためには、半溶融状態となる際に表面形状が大きく変化しないことも重要である。本発明者らの検討によると、半溶融で若干丸みを帯びることとなるため、初期の状態から高い円形度を持たせておき、熱による変化率を低く抑えることが重要であった。具体的には、平均円形度は0.950以上である必要があり、高ければ高いほど良化する傾向が見られる。
【0032】
本発明のトナーは磁性体を含有するものである。本発明者らの検討の中で、トナーが磁性体を含有すると、上述の半溶融状態において非常に高い帯電安定化効果を付与でき、本発明の効果を飛躍的に向上させることが明らかとなっている。
【0033】
本発明のトナーは、半熱溶融状態前後での物性変化が小さいことを特徴とし、それにより高温高湿環境下での画像濃度安定性、低湿環境下での耐静電オフセット性、トナーの低消費量化が達成できている。上記物性変化を小さくするためには、本発明者らの検討によると、極性基を持つ荷電制御剤をトナー内外に適度に存在させ、且つ、トナー表面組成、形状を調整することが有効な方法であった。そのための好ましい態様の一例を以下に述べるが、本発明を限定するものではない。
【0034】
本発明者らの検討によると、本発明のトナーは水系媒体中で製造する場合、表面性、表面組成が調整しやすく、好ましい。以下、水系媒体中で製造する際の好ましいトナー構成及びトナー製造方法について述べる。
【0035】
本発明者らの検討によると、トナー表面組成、表面形状、表面及び内面の帯電性を材料面及び製造条件を調整することにより行うことが重要であった。
【0036】
本発明のトナーにおいて、サリチル酸系の金属塩と、スルホン酸系官能基を有する重合体を併用し、且つ、サリチル酸系の金属塩はトナー内部に分散させた上でスルホン酸系官能基を有する重合体をトナー表面に存在させると、トナー表面では半溶融状態での帯電安定性が飛躍的に向上するため、好ましい。これは、半溶融状態において、内部をサリチル酸系の金属塩、表面をスルホン酸系官能基を有する重合体のスルホン酸系官能基がそれぞれ大きな帯電安定化効果を発揮するために得られる効果だと考えている。上記、サリチル酸系の金属塩及びスルホン酸系官能基を有する重合体の存在状態を制御する手法としては後述する。
【0037】
トナー表面組成としては、表面に極性基を有する成分が存在することが好ましく、中でもポリエステル樹脂が好ましく、更に好ましくはチタン系触媒を使用して製造されたポリエステル樹脂である。チタン系触媒を用いて製造したポリエステルは、上記水系媒体中で製造する際にトナー表層を均一に覆いやすいだけでなく、上述のサリチル酸系の金属塩及びスルホン酸系官能基を有する重合体との併用により、特に半溶融状態における著しい帯電安定化効果を付与する。本発明者らは、これはポリエステル中にチタンが含まれることで通常のポリエステルに比べて帯電保持力が上昇し、スルホン酸系官能基及びサリチル酸系金属塩の帯電をトナー表層部分全体に出来ているからと推察している。
【0038】
磁性体は表面処理、特に疎水化処理したものであると、磁性体の分散状態を制御しやすく、本発明のトナーを得やすいため好ましい。更に好ましくは、シランカップリング剤により表面処理された磁性体である。特に、上記磁性体を前述のチタン系触媒を用いて製造したポリエステル樹脂と組み合わせると、磁性体とポリエステル樹脂中のチタンとの相互作用により磁性体と樹脂の親和性が向上し、トナー表層近傍での磁性体の分散が向上するため、半溶融状態となってもトナー表面の帯電性が著しく安定化する。
【0039】
次に、水系媒体中で製造する際の好ましいトナー製造方法を述べる。
【0040】
まず、上述したトナー中のサリチル酸系の金属塩及びスルホン酸系官能基を有する重合体の存在状態を制御する手法としては、トナー粒子製造時のpH調整が有効である。本発明者らの検討により、製造時pHの範囲を4.0以上、8.0以下に制御することがトナー粒子を目的の状態と出来るため、好ましい。
【0041】
更に、トナーの形状制御の手法として好ましいものを述べる。本発明のトナーは、平均円形度が0.950以上のものである。この高い円形度とするためには、上記水系媒体中での製造手法を用いると、制御を容易に行うことが出来る。更に、本発明のトナーにおいては、熱溶融時に形状変化を最小とすることが重要である。本発明者らの検討によると、重合後半或いは重合終了後、該容器内の水系媒体に温度100℃以上の飽和水蒸気を導入する工程を有すると、半溶融状態となる前後でのトナー物性変化が小さくなるため、好ましい。
【0042】
本発明のトナー物性と各構成の関連性について概略を以下に述べる。
【0043】
本発明のトナーは、少なくとも磁性体及び樹脂を含有するトナーであって、
該トナーの重量平均粒子径(D4)が3乃至12μmであり、
該トナーの平均円形度が0.950以上であり、
該トナーを温度23℃湿度60%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ1、温度40℃湿度95%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ2とした時に式(A)を満たすことを特徴とする。
式(A) 0.80≦Q2/Q1≦1.40
【0044】
本発明のトナーは磁性体を含有するものである。磁性体は、結着樹脂100質量部に対して、10乃至200質量部用いることが好ましい。
【0045】
本発明のトナーは、帯電特性及び潜像再現性、製造安定性の観点から重量平均粒子径(D4)は3乃至12μmである必要がある。
【0046】
また、トナーの平均円形度は0.950以上でなければならない。平均円形度が0.950を下回ると、定着時の半溶融状態/通常状態の帯電性能差が大きくなり、本発明の効果が発現しない。
【0047】
本発明のトナーでは、温度23℃湿度60%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ1、温度40℃湿度95%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ2とした時のQ2/Q1の値が式(A)を満たす必要がある。
式(A) 0.80≦Q2/Q1≦1.40
【0048】
Q2/Q1が0.80を下回ると、熱によってトナーが半溶融状態となった場合に帯電性が大きく低下するため、紙への付着力が不足し、特に耐静電オフセット性が著しく悪化する。更に、耐久現像性が著しく低下し、帯電能も不安定化することから消費量も大幅に増大する。
【0049】
また、Q2/Q1が1.40を上回ると、定着時に帯電性が過剰となり、静電凝集力の増大に伴い、定着尾引きが著しく発生しやすくなる。更に、帯電分布はブロードになりやすく、濃度不安定化、消費量の増大を引き起こす。
【0050】
本発明の構成においてQ1の絶対値が20.0μC/g以上、60.0μC/g以下であると、熱溶融時の帯電量変化が小さく抑えられ、且つ、紙に対する付着性にも優れるため、好ましい。Q1の絶対値が20.0μC/gを下回ると、紙に対する静電的付着力の不足及び低帯電成分の増大が起こることで、耐静電オフセット性の低下、高湿環境下における濃度の不安定化や消費量の増大が起こりやすい。60.0μC/gを上回ると、熱溶融時に過剰帯電成分に起因した静電凝集や反撥力の増大が起こるため、定着尾引きが発生しやすくなる傾向がある。また、トナーの帯電分布がブロード化することで静電凝集や帯電ムラが起こりやすく、高湿環境下における濃度の不安定化や消費量の増大が起こりやすい。
【0051】
本発明のトナーは、ガラス転移点が30℃以上、65℃以下であると、熱溶融時のトナー物性変化の程度を適正領域に制御しやすく、且つ、トナーの高温環境下での安定性と適度な強度を付与できるため、好ましい。30℃を下回ると、高温環境でブロッキングしてしまうため、現像性は著しく低下する。また、熱溶融時の大きな形状変化及び帯電性低下によって、特に静電オフセットが低下する傾向がある。65℃を上回ると、表面が硬くなることで、トナーの欠損、又は現像剤担持体の削れに起因した現像性の低下が起こりやすくなる。
【0052】
本発明のトナーはサリチル酸系のアルミニウム錯体を含有すると、帯電安定性が向上するため、好ましい。特に、水系媒体中でトナーを製造する手法に適用すると、表面性の制御が容易になる。また、トナーにサリチル酸系のアルミニウム錯体を含有させると、半熱溶融状態のトナーの帯電分布をシャープ化し、静電オフセット、定着尾引きが抑制される傾向がある。また、現像時の帯電分布もシャープ且つ安定化する傾向であり、特に消費量の低減に効果が見られる。
【0053】
本発明のトナーは、温度23℃湿度60%で30日間放置した際に比表面積が0.60m2/g以上、1.10m2/g以下であると熱溶融時の形状変化が小さくなり、物性変化の程度を適正な領域に調整できるため、好ましい。比表面積が0.60m2/gを下回る場合、過剰帯電成分が増大するためにトナー消費量の増大や画像濃度ムラが起こりやすい。1.10m2/gを上回る場合、トナー表面の凹凸が多いために熱溶融時に表面形状が大きく影響を受けるため、帯電性が変化し、静電オフセット、定着尾引きが悪化する傾向がある。また、トナー表面に凹凸が存在することでトナー表面上の帯電分布がブロード化し、現像性が不安定化するとともに、消費量が増大する傾向がある。
【0054】
次に、本発明のトナーに使用される材料を説明する。
【0055】
本発明のトナーで使用される磁性体としては、従来公知の磁性材料が用いられる。磁性トナーに含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属あるいはこれらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0056】
具体的には、四三酸化鉄(Fe34)、三二酸化鉄(γ−Fe23)、酸化鉄亜鉛(ZnFe24)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe512)、酸化鉄カドミニウム(CdFe24)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe512)、酸化鉄銅(CuFe24)、酸化鉄鉛(PbFe1219)、酸化鉄ニッケル(NiFe24)、酸化鉄ネオジム(NdFe23)、酸化鉄バリウム(BaFe1219)、酸化鉄マグネシウム(MgFe24)、酸化鉄マンガン(MnFe24)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。本発明では磁性材料として、少なくとも磁性酸化鉄を含有し、必要に応じて一種又は二種以上の他の金属を任意に選択して使用することが可能である。
【0057】
また、磁性酸化鉄の形状としては、8面体、6面体、球状、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球状、不定形の如き異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。こういった形状は、SEMなどによって確認することができる。
【0058】
本発明のトナーにおいて磁性体として使用される磁性酸化鉄微粒子は、疎水化処理されたものであることが好ましい。この疎水化処理を調整することで、磁性酸化鉄のトナー中での存在状態を厳密にコントロールできる。
【0059】
磁性酸化鉄表面をカップリング剤等で処理する方法としては、乾式処理と湿式処理の二つがある。本発明ではどちらの方法で行っても良いが、水系媒体中での湿式処理方法は、気相中での乾式処理に比べ、酸化鉄粒子同士の合一が生じにくく、また疎水化処理による磁性酸化鉄間の帯電反発作用が働き、磁性酸化鉄はほぼ一次粒子の状態でカップリング剤による表面処理されるようになるため好ましい。
【0060】
本発明において磁性酸化鉄の表面処理に使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(A)
mSiYn (A)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1以上、3以下の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、メタクリル基、フェニル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示し、nは1以上、3以下の整数を示す。]
で示されるものである。例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0061】
特に、式(B)
p2p+1−Si−(OCq2q+13 (B)
[式中、pは2以上、20以下の整数を示し、qは1以上、3以下の整数を示す]
で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して磁性酸化鉄表面を疎水化処理するのが良い。
【0062】
本発明のトナーに用いられる磁性酸化鉄は、例えば下記方法で製造される。
【0063】
硫酸第一鉄水溶液などの第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムの如きアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上(好ましくはpH8以上、10以下)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
【0064】
次に、種晶を含むスラリー状の液に、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6以上、10以下に維持しつつ空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。酸化反応の終期に液のpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるよう十分に撹拌する。カップリング剤を添加して十分に混合撹拌し、撹拌後に濾過し、乾燥し、軽く解砕することで疎水化処理磁性酸化鉄が得られる。あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄を、乾操せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行っても良い。
【0065】
いずれにせよ、水溶液中で生成した未処理の磁性酸化鉄を、乾燥工程を経る前の含水スラリーの状態で疎水化することが好ましい。これは、未処理の磁性酸化鉄をそのまま乾燥してしまうと粒子同士の凝集による合一が避けられず、こういった凝集状態の粉末にたとえ湿式疎水化処理を行っても均一な疎水化処理が難しいためである。
【0066】
磁性酸化鉄の製造の際に第一鉄塩水溶液に用いる第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、硫酸第一鉄以外には更に塩化鉄等が可能である。
【0067】
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法では一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5mol/リットル以上、2mol/リットル以下の硫酸第一鉄水溶液が用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては、空気量が多い程、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
【0068】
こうして得られる磁性酸化鉄は表面が均一に疎水化処理されているため、重合性単量体組成物中における分散性が非常に良好であり、磁性酸化鉄の含有率が揃ったトナー母粒子を得ることができるようになる。
【0069】
本発明においては、このようにして製造された疎水性磁性酸化鉄を使用することが好ましい。本発明において、磁性体は特に熱溶融時における帯電均一性を高める働きを担っており、トナー粒子同士でバラツキがなく、均一に分散させることが効果を高める上で重要であり、磁性体の表面を疎水化処理すると、トナーに対する分散性が高まる傾向があるからである。疎水化処理されていない場合、トナー表面に磁性体が露出しやすく、電荷の低下に伴う画像濃度の低下や、静電オフセットが起き易い。疎水化処理としては、カップリング剤による処理が高湿下での現像性を高められるため、好ましい。
【0070】
本発明においては、磁性体に加えて他の着色材料を併用しても良い。併用し得る着色材料としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素を加えた合金、ヘマタイト、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニンが挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いても良い。
【0071】
また、本発明に使用される重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
【0072】
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドが挙げられる。
【0073】
これらの重合性単量体は単独または混合して使用し得る。上述の重合性単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいはほかの重合性単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
【0074】
上記した重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。例えば、油溶性開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等のパーオキサイド系開始剤が挙げられる。
【0075】
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素が挙げられる。
【0076】
本発明においては、重合性単量体の重合度を制御する為に、連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
【0077】
本発明において、架橋剤を用いることも出来る。2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独もしくは混合物として用いられる。
【0078】
本発明では、重合性単量体組成物に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基、グリシジル基、ニトリル基の如き親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体の如き共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミドの如き重縮合体、ポリエーテル、ポリイミンの如き重付加重合体の形で使用が可能となる。
【0079】
重合性単量体に添加する樹脂としては、2価以上のアルコールモノマー成分と2価以上のカルボン酸モノマー成分との重縮合物であるポリエステル樹脂や、ポリエポキシドなどを反応させて得られる変性ポリエステル樹脂、更にポリエステル樹脂をスチレンやブチルアクリレートのようなビニル系モノマーで変性したポリエステル樹脂を含有しても良い。特に、ポリエステル樹脂であると、懸濁重合法で製造する場合にポリエステル樹脂がトナーの表層近傍に偏在するため、表面部分の物性制御がしやすくなり、更に帯電性能の高いトナーが得られるため、好ましい。
【0080】
ポリエステル樹脂の2価以上のアルコールモノマー成分として、具体的には、2価アルコールモノマー成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0081】
3価以上のアルコールモノマー成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0082】
2価以上のカルボン酸モノマー成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6以上、18以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0083】
また、その他のモノマーとしては、グリセリン、ソルビット、ソルビタン、さらには例えばノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル等の多価アルコール類;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸類;ヒドロキシステアリン酸、硬化ヒマシ油脂肪酸等のヒドロキシカルボン酸類;カプロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
【0084】
それらの中でも、特に、下記一般式(ア)で表されるビスフェノール誘導体を2価アルコールモノマー成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸モノマー成分として、これらのポリエステルユニット成分で縮重合した樹脂が良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0085】
【化1】

【0086】
本発明に用いることの出来るポリエステル樹脂の製造例を以下に示す。
【0087】
不活性ガス(窒素ガスなど)雰囲気下で、エステル化触媒の存在下、反応温度を150乃至280℃で反応させることに得ることが出来る。また、反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、2乃至40時間程度とすることが好ましい。反応末期の反応速度を向上させるために減圧する(例えば1乃至50mmHg)ことも有効である。
【0088】
エステル化触媒の例としては、スズ含有触媒、三酸価アンチモン、チタン含有触媒(例えばチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンアルコキシド、シュウ酸チタニルカリウム、及びテレフタル酸チタン)、ジルコニウム含有触媒、ゲルマニウム含有触媒、アルカリ(土類)金属触媒、及び酢酸亜鉛等が挙げられる。中でも、チタン含有触媒はポリエステル樹脂の分子量分布をシャープに出来、特に水系媒体中でトナーを製造する際に使用すると、トナー表面を均一に覆うことが出来るため、トナーの耐湿性を向上させ、耐久現像性が高まるため好ましい。
【0089】
上述のチタン含有触媒は、下記式(I)又は(II)で表される化合物であり、2種以上を併用しても良い。
Ti(−X)m(−OH)n (I)
O=Ti(−X)p(−OR)q (II)
[式中、Xは炭素数2以上、12以下のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していても良く、他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していても良い。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2以上、5以下である。RはH、または1個以上、3個以下のエーテル結合を含んでいても良い炭素数1以上、8以下のアルキル基である。mは1以上、4以下の整数、nは0以上、3以下の整数、mとnの和は4である。pは1以上、2以下の整数、qは0以上、1以下の整数、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていても良い。]
【0090】
これらのチタン含有触媒は、例えばチタニウムジアルコキシビス(アルコールアミネート)を水存在下で70以上、90℃以下にて反応させることで安定的に得ることが出来る。
【0091】
チタン含有触媒として好ましいものは、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(ジエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)、これらの重縮合物、及びこれらの併用であり、更に好ましくは、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)である。特に、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)を使用して得たポリエステル樹脂をトナー表層部に分布させると表層部において磁性体が効果的に微分散し、半熱溶融時にもトナー表面における帯電分布がシャープに保たれるため、耐久現像性や消費量低減に大きな効果が得られる。
【0092】
ポリエステル樹脂の物性について、好ましい範囲を以下に述べる。
【0093】
重縮合ポリエステル樹脂のピークトップ分子量は、好ましくは1000乃至30000、更に好ましくは1500乃至25000、特に1800乃至20000である。これらの分子量範囲であると、安定的にトナーを製造することが出来、トナー性能も制御しやすいからである。
【0094】
ポリエステル樹脂の酸価は、3乃至10であることが好ましい。特に、水系媒体中にモノマー及び各種材料を分散させてトナーを製造する手法に適用すると、ポリエステル樹脂がトナー表面を均一に覆うため、トナーの帯電性が安定化することで耐久現像性が向上する傾向が見られるからである。更に、定着時に表面部に存在するポリエステルが均一に溶融するため、半溶融状態における帯電性も均一化でき、耐静電オフセット性が向上する傾向がある。
【0095】
本発明のトナーには、荷電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
【0096】
さらに、トナーを直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料もしくはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、その四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0097】
特に、サリチル酸系の金属塩、中でもアルミニウム錯体を用いることが好ましい。理由としては、まず、トナーに安定した帯電性を付与することができるからである。また同時に、重合法における水系媒体中への分散時に、エマルジョンを安定化する効果により粒度分布及び帯電分布がシャープ化し、そのことによって画像濃度の均一化、消費量低減効果が得られることが挙げられる。
【0098】
更に、本発明ではスルホン酸系官能基を有する重合体を含有することが好ましく、より好ましい態様として、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体を含有するものが挙げられる。
【0099】
上記重合体を構成する単量体としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸等或いは、マレイン酸アミド誘導体、マレイミド誘導体、スチレン誘導体がある。
【0100】
スルホン酸系官能基を有する重合体は、上記単量体の単重合体であっても構わないが、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
【0101】
上記高分子型化合物としては、上述の如き単量体を用いることができるが、スチレン誘導体を単量体として含有していることが、より好ましい。
【0102】
また、上記高分子型化合物の製造方法は任意の手法を用いることが出来るが、モノマーを溶液重合して得られた重合溶液を水と混合しながら、あるいは、水と混合した後に溶剤を加熱留去し、その後、水を除去して得る製造方法が好ましい。水中で分散する工程によって、高分子型化合物中の親水性低分子量成分が効率良く除去出来、高分子型化合物の持つ帯電付与性を高めるだけでなく、水系媒体中でのトナー製造法に適用した場合に、トナー表面を均一に覆うことで、トナーに安定した帯電性を付与し、静電オフセット、定着尾引きの低減効果が発揮されるためである。
【0103】
スルホン酸系官能基を有する重合体の酸価(mgKOH/g)は3乃至30であると、特に水系媒体中でトナーを製造する手法に適用した場合に、トナー表面を均一に覆うことで表面形状を均一化し、更に安定した帯電性能が得られるため、好ましい。酸価が3未満の場合には、磁性体の分散状態が悪化することで半熱溶融時の帯電分布がブロードになる傾向がある。このことによって、静電オフセットが発生しやすくなる。酸価が30を超える場合には、この様な重合体を含有する組成物を用いて、懸濁重合で粒子を造る場合、トナー粒子がいびつな形状を有する様になり、円形度が低下すると共に、半溶融前後における帯電量変化が増大しやすく、定着尾引きの悪化、消費量の増加傾向が見られる。
【0104】
スルホン酸系官能基を有する重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)が2000乃至100000が好ましい。
【0105】
荷電制御剤としては、サリチル酸系の金属塩と、スルホン酸系官能基を有する重合体を併用するのが好ましい。これにより、トナー表面に存在する極性基が増加することでエマルジョンの安定性が著しく増すだけでなく、トナー帯電能自体が大きく向上することで耐久後半の濃度低下を抑止出来る。
【0106】
これらの荷電制御剤は、重合性単量体100質量部に対して合計0.5乃至10質量部使用することが好ましい。
【0107】
本発明のトナーは、結着樹脂に対して1乃至50質量%の離型剤を含有することが好ましい。
【0108】
本発明のトナーに使用可能な離型剤としては、公知のワックスが使用できる。例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体などが含まれる。ここでの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。ワックスの酸価や、変性度などを調整することによって、トナー中での酸化鉄の分散状態を制御することも可能である。さらに、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸またはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。
【0109】
次に本発明におけるトナーの製造方法を説明する。
【0110】
本発明のトナーは、粉砕法によって製造することも可能であるが、粉砕法では本発明の円形度や濡れ性を満足させるためには多段階の工程を経る必要があるため、収率やコストの面から不利である。
【0111】
これに対して水系媒体中で単量体系(重合性単量体組成物)を直接重合して得られるトナーの製造方法(以下、重合法と表記)においては、水系媒体との親和性の観点から極性−非極性成分との間に局在/分離が生じやすいため、本発明の円形度及び帯電性を得ることが可能となり、好ましい。
【0112】
本発明のトナーを重合法で製造する際には、重合反応時に半減期0.5乃至30時間である重合開始剤を、重合性単量体の0.5乃至20質量%の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量1万乃至10万の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドの如き過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0113】
本発明では、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001乃至15質量%である。
【0114】
次に、直接重合法の1つである懸濁重合法によるトナーの製造について説明する。懸濁重合法では重合性単量体中に、磁性酸化鉄、着色剤、離型剤、可塑剤、結着剤、荷電制御剤、架橋剤等のトナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、分散剤等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させる。こうして得られた単量体系(単量体組成物)を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
【0115】
造粒後は通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
【0116】
懸濁重合法においては、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤が有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛の如き燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物が挙げられる。
【0117】
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。但し、この塩化ナトリウム塩は重合反応終期に残存重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩したほうが良い。無機分散剤は、重合終了後酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
【0118】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至20質量部を単独でまたは2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。平均粒径が5μm以下である様な、より微粒化されたトナーを目的とする場合には、0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
【0119】
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムが挙げられる。
【0120】
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般的には50乃至90℃の温度に設定される。この際、重合温度は重合時間に応じて複数設定してもよい。重合性単量体の重合は、後半に昇温することが好ましい。更に、未反応の重合性単量体や副生成物を除去する為に、重合反応の後半、又は重合反応の終了後に、液状分散媒体(水系分散媒体)の一部を留去することが好ましい。
【0121】
特に重合容器内に100℃以上の飽和水蒸気を投入して留去すると、未反応の重合性単量体及び副生成物を効率良く除去することができるだけでなく、トナーの表面形状を高円形度且つ均一に制御出来るため、好ましい。この工程は、トナーの帯電性や熱溶融特性を均一化する上で有用であり、耐久現像性、静電オフセット、消費量に対する効果が高まる傾向が見られる。
【0122】
本発明のトナーは、トナー母体に対して必要により流動性付与剤や研磨剤等の無機微粒子や樹脂微粒子を外添混合し表面に付着させることで、得ることができる。
【0123】
外添される材料としては、例えば無機微粉体等のようにトナーの流動性を向上させる流動性向上剤や、金属酸化物微粒子等のようにトナーの帯電性を調整するための外添剤が挙げられる。
【0124】
上記流動性向上剤としては、トナー母体に外添することによりトナーの流動性を向上し得るものが挙げられる。このような流動性向上剤としては、例えば湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ;これらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ;等が挙げられる。
【0125】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。このようなシリカは、例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のような式(3)で示されるものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl (3)
【0126】
この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、本発明で流動性向上剤として利用されるシリカ微粉体はそれらも包含する。その比表面積は100乃至400m2/gであることがより好ましい。
【0127】
本発明では、上記シリカ微粉体は、疎水化処理されていることが好ましい。シリカ微粉体の疎水化方法としては、例えばシリカ微粉体と反応し、又はシリカ微粒子に物理吸着する有機ケイ素化合物やシリコーンオイルでシリカ微粒子を化学的に処理する方法が挙げられる。より好ましくは、有機ケイ素化合物による疎水化処理である。ここで、上記有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位においてSiに結合する水酸基を有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは一種あるいは二種以上の混合物で用いられる。
【0128】
なお本発明において、好ましいシランカップリング剤としてはヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
【0129】
本発明においては、シリカ微粉体の表面疎水化処理に、前述したシランカップリング剤及びシリコーンオイルの両方を用いることが可能であり、このような表面疎水化処理方法としては、シリカ微粉体を予めシランカップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、又はシリカ微粉体をシランカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法等が挙げられる。
【0130】
さらに、本発明中のトナーには、必要に応じて流動性向上剤以外の外部添加剤を添加してもよい。
【0131】
例えば、クリーニング性や帯電性能を向上させる等の目的で、一次粒径が30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)微粒子、より好ましくは一次粒径が50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)で球状に近い無機微粒子または有機微粒子をさらにトナー母粒子に添加することも好ましい形態の一つである。例えば球状のシリカ粒子、球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状の樹脂粒子を用いるのが好ましい。
【0132】
更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;または酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤;ケーキング防止剤;または例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤;また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量加えることもできる。これらの添加剤も、その表面を疎水化処理して用いることも可能である。
【0133】
本発明で好ましく用いられる上述の無機微粒子について述べる。
【0134】
上記無機微粒子としては、酸化錫、チタニア、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロムなどの金属酸化物・カーボンブラック・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)が挙げられる。これらのうち、金属酸化物としてはシリカやチタン酸ストロンチウムが好ましく用いられる。
【0135】
ここで該無機微粉体の一つは、ペロブスカイト型の結晶構造を有していると、耐静電オフセット性、定着尾引きのレベルが良好となるため、好ましい。これは、ペロブスカイト型の規則正しい結晶格子により、均一な帯電が得やすく、熱溶融時にトナー内部に多少埋没しても効果を発揮できるためであると推測される。ペロブスカイト型結晶の無機微粉体の中でも特に好ましいものは、例えば、チタン酸ストロンチウム微粉体、チタン酸バリウム微粉体、チタン酸カルシウム微粉体であり、この中でもチタン酸ストロンチウム微粉体が更に好ましい。
【0136】
上述のペロブスカイト型結晶の無機微粉体は、一次粒子の平均粒径が30乃至300nmであることが好ましい。平均粒径が30nm未満では、外添時にトナー母体中に強く埋め込まれることで帯電性が低下しやすくなり、静電オフセットが悪化する傾向がある。一方、300nmを超えるとトナーからの遊離量が増加し、帯電性が不均一になることで濃度安定性が低下する傾向が見られる。
【0137】
また、無機微粉体の粒子形状については、球状又は球状に近い多面体状、立方体、直方体であることが好ましい。ここで本発明において詳細に検討したところ、立方体及び/又は直方体状の粒子形状であることが、より好ましく、焼結工程を経由しないチタン酸ストロンチウムであると、無機微粉体の形状が均一化しやすいため、さらに好ましいことが分かった。
【0138】
焼結工程を経由しないチタン酸ストロンチウムの製造方法の一例を示すと、硫酸チタニルから加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄する。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、チタニアゾル分散液を得る。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、含水酸化チタンを得る。含水酸化チタンにSr(OH)2・8H2Oを加えて窒素ガス置換を行い、蒸留水を加える。窒素雰囲気中で該スラリーを80℃まで昇温し、80℃で6時間反応を行う。反応後室温まで冷却し、洗浄をくり返し、その後、濾過、乾燥し、焼結工程を経由していないチタン酸ストロンチウム微粒子を得る。
【0139】
本発明におけるトナーに添加される無機微粉体の総添加量は、トナー粒子100質量部に対し0.5質量部以上、2.0質量部以下が好ましい。本発明では、無機微粉体を適正量添加することで、母体の優れた帯電性能が発揮される。無機微粉体の総添加量が0.5質量部未満であると、外添剤がトナー表面を均一に覆うことが出来ず、帯電分布がブロード化することで静電オフセットが悪化する傾向が見られる。逆に、総添加量が2.0質量部超であると、トナー表面に付着していない外添剤の余剰分が多く存在するため、過剰帯電成分が増加し、定着尾引きの悪化や消費量の増大傾向が見られる。
【0140】
本発明の磁性トナーは、以下のような画像形成方法に用いられるものである。
【0141】
コロトロン、スコロトロンなどのコロナ帯電器、導電性ローラ、ファーブラシ、磁気ブラシ等の帯電手段を用いて、電圧を印加して、感光体に接触又は非接触状態で帯電する。帯電された感光体をレーザ、LEDなどの露光手段により静電潜像を形成し、磁性トナーで現像する。
【0142】
感光体は、アモルファスシリコン等の電子写真無機感光体、感光層として電荷発生材と電荷輸送材を含有する単層構造、電荷発生材を含有する電荷発生層上に電荷輸送材を含有する電荷輸送層を設けた又は電荷輸送層上に電荷発生層を設けた機能分離型積層構造の電子写真有機感光体などが使用できる。更に、感光層上に保護層を設けることも可能である。
【0143】
現像手段としては、磁石を内包したスリーブをトナー担持体とし磁性ブレード又は弾性ブレードによりトナー層を規制する構成を含む磁性一成分現像手段を用い、一成分磁性トナーとして使用することが好ましい。特に、該スリーブは樹脂組成物によって形成された樹脂被覆層を有し、導電性物質及び正帯電性の第4級アンモニウム塩化合物を含有するものが好ましい。
【0144】
このように得られた磁性トナー像は、コロナ帯電器又はローラ、ブレード、ブラシ等の導電性部材を電圧印加手段とし、感光体と接触又は非接触の状態で転写材に転写するか、ベルト、ドラムなどを中間転写部材としてトナーの転写像を形成した後に、転写材に転写する。
【0145】
感光体又は中間転写部材に残留したトナーは、クリーニング手段より除去される。クリーニング手段の例としては、弾性ブレート、弾性ローラ、ファーブラシ、磁気ブラシを利用したクリーニング手段を挙げることができ、弾性ブレードを用いるのがこのましい構成である。
【0146】
転写材に形成したトナー像は、熱又は圧力等により定着される。
【0147】
本発明のトナーを、静電荷像を保持する潜像保持体と磁性トナーを表面に担持するトナー担持体とを現像部において一定の間隙を設けて配置し、磁性トナーをトナー担持体上に前記間隙よりも薄い厚さに規制して現像部に搬送し、現像部において直流バイアスと交流バイアスをトナー担持体と潜像保持体との間に印加することにより交流バイアス電界を形成し、現像側電圧成分と逆現像側電圧成分とを有する交流バイアス電界において現像側電圧成分を逆現像側電圧成分と同じかまたはより大きく設定している構成からなる現像方法に用いるのがより好ましい。
【0148】
本発明のトナーを適用出来る画像形成装置の一例を以下に説明する。
【0149】
図2の画像形成装置において、100は感光ドラムで、その周囲に一次帯電ローラー117、現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナ116、レジスタローラー124等が設けられている。そして感光体100は一次帯電ローラー117によって、例えば−700Vに帯電される(印加電圧は交流電圧−2.0kVpp、直流電圧−700Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光される。感光体100上の静電潜像は現像器140によって一成分磁性現像剤で現像され、転写材Pを介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像をのせた転写材Pは搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーニング手段116によりクリーニングされる。現像器140は図3に示すように感光体100に近接してアルミニウム、ステンレスの如き非磁性金属で作られた円筒状のトナー担持体102(以下現像スリーブと称す)が配設され、感光体100と現像スリーブ102との間隙は図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材等により約300μmに維持されている。現像スリーブ内にはマグネットローラー104が現像スリーブ102と同心的に固定、配設されている。但し現像スリーブ102は回転可能である。マグネットローラー104には図示のように複数の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吹き出し防止に影響している。トナーは、トナー塗布ローラ141によって、現像スリーブ102に塗布され、付着して搬送される。搬送されるトナー量を規制する部材として、弾性ブレード103が配設され弾性ブレード103の現像スリーブ102に対する当接圧により現像領域に搬送されるトナー量が制御される。現像領域では、感光体100と現像スリーブ102との間に直流及び交流の現像バイアスが印加され、現像スリーブ上現像剤は静電潜像に応じて感光体100上に飛翔し可視像となる。
【0150】
次に、本発明における各種材料、トナー物性データの測定法を以下に詳述する。
【0151】
(1)トナーの摩擦帯電量Q1,Q2測定
トナーの摩擦帯電量は、トナー10質量部に対しフェライトキャリア90質量部を混合したものを所望の環境下に30日間放置し、下記の要領で測定する。尚、本発明のQ1は温度23℃湿度60%で30日間放置後、Q2は温度40℃湿度95%で30日間放置後に測定する。
【0152】
測定の際には鉄粉キャリアを用い、250メッシュパス、350メッシュオンが70質量%以上になるようにしたものを使用する。
【0153】
図1はトナーの摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。先ず、底に500メッシュのスクリーン103のある金属製の測定容器102に摩擦帯電量を測定しようとするトナーとキャリアの質量比10:90の混合物を50ml容量のポリエチレン製のビンに入れ、やよい振とう機により2分間振とうした後、該混合物約0.5g以上、1.5g以下を入れ金属製のフタ104をする。このときの測定容器102全体の質量を秤りW1(g)とする。次に、吸引機101(測定容器102と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口107から吸引し風量調節弁106を調整して真空計105の圧力を250mmAqとする。この状態で2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。このときの電位計109の電位をV(ボルト)とする。ここで108はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。吸引後の測定容器全体の質量を秤りW2(g)とする。このトナーの摩擦帯電量(μC/g;mC/kg)は下式を用いて計算される。
【0154】
【数1】

【0155】
(2)トナーの平均円形度
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下記式により求める。更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
【0156】
【数2】

【0157】
(3)トナーの粒度分布
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
【0158】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0159】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
【0160】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0161】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0162】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0163】
(4)樹脂の酸価及び水酸基価測定
<酸価>
酸価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
【0164】
(A)試薬
(I)溶剤は、エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)を用い、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬として0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(II)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95vol%)100mlに溶かす。
(III)0.1mol/リットル水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとし、2乃至3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
【0165】
(B)操作:試料(トナーまたは結着樹脂)1乃至20gを正しくはかりとり、これに溶剤100mlと、指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これを0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
【0166】
(C)計算式 次式によって酸価を算出する。
【0167】
【数3】

【0168】
ここで、
A:酸価(mgKOH/g)
B:0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクターS:試料(g)
【0169】
<水酸基価>
水酸基価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
【0170】
(A)試薬
(I)アセチル化試薬:無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる。アセチル化試薬は、湿気、炭酸ガスおよび酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(II)フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95vol%)100mlに溶かす。
(III)N/2水酸化カリウム−エチルアルコール溶液 水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとし、2〜3日間放置後ろ過する。標定はJIS K 8006によって行う。
【0171】
(B)操作:試料0.5乃至2.0gを丸底フラスコに正しくはかりとり、これにアセチル化試薬5mlを正しく加える。フラスコの口に小さな漏斗をかけ、95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首が浴の熱を受けて温度の上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円盤をフラスコの首の付根にかぶせる。1時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗い、フェノールフタレイン溶液を指示薬としてN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定する。なお、本試験と並行して空試験を行う。
【0172】
(C)計算式 次式によって水酸基価を算出する。
【0173】
【数4】

【0174】
ここで、
A:水酸基価
B:空試験のN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:本試験のN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:N/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
D:酸価
【0175】
(5)トナー、ポリエステル樹脂及び荷電制御剤の分子量測定
本発明において、トナーの結着樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のTHFを溶媒としたGPC(ゲルパーメイションクロマトグラフィ)によるクロマトグラムの分子量分布は次の条件で測定される。
【0176】
測定試料の作製:トナーまたは樹脂サンプルとTHFとを約0.5〜5mg/ml(例えば約5mg/ml)の濃度で混合し、室温にて数時間(例えば5〜6時間)放置した後、充分に振とうしTHFと試料を良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に室温にて12時間以上(例えば24時間)静置する。このとき試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルタ(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンスジャパン社製などが好ましく利用できる)を通過させたものをGPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0177】
GPCの測定:40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えばPressure Chemical Co.製或いは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良く、本発明においては、次の条件で測定される。
【0178】
GPC測定条件:
装置 LC−GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム KF801,802,803,804,805,806,807(ショウデックス社製)の7連
カラム温度 40℃
solv. THF(テトラヒドロフラン)
【0179】
GPCクロマトグラムの測定では、高分子量側はベースラインからクロマトグラムが立上り開始点から測定を始め、低分子量側は分子量約400まで測定する。
【0180】
(6)トナー及び樹脂のガラス転移点測定
ASTM D3418−82に準拠して測定する。本発明においては、「DSC−7」(パーキンエルマー社製)を用いる。装置検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定試料は、10mg以下の量を正確に秤量する。測定サンプルをアルミニウム製パンに入れたものと、対照用にアルミニウム製パンのみのもの(空パン)をセットし、30〜200℃の測定領域を昇温速度10℃/minで昇温した時に得られるDSC曲線から主体吸熱ピーク値を、本発明で用いる離型剤の吸熱ピーク値として求める。吸熱ピークの半値幅とは、吸熱ピークにおけるベースラインからピーク高さの2分の1に当る部分の、吸熱チャートの温度幅である。
【0181】
(7)トナー及び無機微粉体の比表面積測定
島津製作所(株)製、自動比表面積測定装置GEMINI2375を使用し、吸着ガスに窒素を用い、BET多点法により求める。
【実施例】
【0182】
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
【0183】
[チタン含有触媒の合成]
冷却管、撹拌機及び液中バブリング可能な窒素導入管の付いた反応槽中に、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)1617質量部とイオン交換水126質量部を入れ、窒素にて液中バブリング下、90℃まで徐々に昇温し、90℃で4時間反応(加水分解)させることで、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)を得た。
【0184】
[ポリエステル樹脂1乃至5の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、下記成分を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。
ビスフェノールA EO 2モル付加物 350質量部
ビスフェノールA PO 2モル付加物 326質量部
テレフタル酸 278質量部
チタン含有触媒a−1 2質量部
次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸62質量部を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕してポリエステル樹脂1を得た。樹脂と触媒の対応及び樹脂物性を表1に示す。
【0185】
ポリエステル樹脂2はポリエステル樹脂1の製造において、無水トリメリット酸を添加しないこと以外は同様に操作し、合成した。
【0186】
ポリエステル樹脂3はポリエステル樹脂1の製造において、酸価をモニターしながら無水トリメリット酸を加え、酸価を12に調整したこと以外は同様に操作し、合成した。
【0187】
ポリエステル樹脂4はポリエステル樹脂1の製造において、触媒をチタンテトライソプロポキシドに置き換えたこと以外は同様に操作し、合成した。
【0188】
ポリエステル樹脂5はポリエステル樹脂1の製造において、触媒を三酸化アンチモンに置き換えたこと以外は同様に操作し、合成した。
【0189】
【表1】

【0190】
[磁性体1乃至3の製造]
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0191】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹込みながら酸化反応を進め、酸化反応の終期にpHを約6に調整し、シランカップリング剤[n−C613Si(OCH33]を酸化鉄100質量部に対し0.6質量部添加し、十分撹拌した。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、疎水性の磁性体1を得た。磁性体のBETは6.1m2/g、79.6kA/mにおける磁気特性は、σs=69.0Am2/kg、σr=3.0Am2/kgであった。
【0192】
磁性体2は、磁性体1の製造方法で、処理剤を[n−C613Si(OCH33]からプレンアクトKR TTS(味の素社製)に変更したこと以外は同様に行い、得た。
【0193】
磁性体3は、磁性体1の製造方法で、シランカップリング剤による処理を行わずに洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、得た。
【0194】
磁性体1乃至3の磁性体No.及び使用した表面処理剤を表2に示す。
【0195】
【表2】

【0196】
[荷電制御樹脂の製造]
(荷電制御樹脂1の製造)
還流管,撹拌機,温度計,窒素導入管,滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、溶剤として溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン150質量部及び2−プロパノール100質量部を仕込んだ。さらにスチレン85質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル10質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸5質量と、重合開始剤として重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート5質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して4時間撹拌を継続した。更にt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.50質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、撹拌、窒素導入下、65℃で12時間溶液重合反応行い、重合溶液1を得た。
【0197】
還流管,撹拌機,温度計,窒素導入管,滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、イオン交換水500質量部、重合溶液1を100質量部仕込み、95℃下の条件下において10時間加熱撹拌しながら脱溶剤を行った。得られた樹脂分散液を濾別して樹脂成分を得た。更に、揮発成分が0.5%以下になるまで樹脂成分を50℃で乾燥し、帯電制御樹脂1を得た。酸価は15mgKOH/g、重量平均分子量は30000であった。
【0198】
(荷電制御樹脂2の製造)
荷電制御樹脂2は、荷電制御樹脂1の製造工程における重合溶液1の製造において、スチレン89質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル10.8質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の添加量を0.2質量部としたこと以外は同様に操作し、得た。酸価は2.5mgKOH/g、重量平均分子量は31000であった。
【0199】
(荷電制御樹脂3の製造)
荷電制御樹脂3は、荷電制御樹脂1の製造工程における重合溶液1の製造において、スチレン81.5質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル9.5質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の添加量を9質量部としたこと以外は同様に操作し、得た。酸価は30.5mgKOH/g、重量平均分子量は21000であった。
【0200】
(荷電制御樹脂4の製造)
還流管,撹拌機,温度計,窒素導入管,滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン150質量部及び2−プロパノール100質量部、モノマーとしてスチレン90質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル5質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸5質量部を添加して撹拌しながら還流温度まで加熱した。重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート5質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して4時間撹拌を継続し、更にt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.50質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、更に5時間撹拌して重合を終了し、荷電制御樹脂4を得た。酸価は16.5mgKOH/g、重量平均分子量は20000であった。
【0201】
[ペロブスカイト型結晶無機微粉体の製造]
(無機微粉体Aの製造)
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.7に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを5.0に調整し、上澄み液の電気伝導度が70μS/cmになるまで洗浄をくり返しした。
【0202】
該含水酸化チタンに対し、0.98倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製の反応容器に入れ、窒素ガス置換した。更に、SrTiO3換算で0.5mol/リットルになるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で該スラリーを80℃まで7℃/時間で昇温し、80℃に到達してから6時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後、純水で洗浄をくり返し、その後、ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを乾燥し、焼結工程を経由していないペロブスカイト型の結晶構造を持ったチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。このチタン酸ストロンチウム微粒子を無機微粉体Aとした。無機微粉体Aを走査型電子顕微鏡(30000倍)で観察したところ、平均粒径は110nmであり、形状は立方体または直方体であった。
【0203】
(無機微粉体Bの製造)
炭酸ストロンチウム600gと酸化チタン350gをボールミルにて、8時間湿式混合した後、ろ過乾燥し、この混合物を980kPa(10kg/cm2)の圧力で成形して1200℃で7時間焼結した。これを、機械粉砕して、焼結工程を経由したチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。このチタン酸ストロンチウム微粒子を無機微粉体Bとした。無機微粉体Bを走査型電子顕微鏡(30000倍)で観察したところ、平均粒径は330nmであり、形状は不定形であった。
【0204】
[実施例1]
<トナー1の製造>
イオン交換水709質量部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液451質量部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
【0205】
一方、下記の処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
【0206】
スチレン 78質量部
n−ブチルアクリレート 22質量部
ポリエステル樹脂1 5質量部
磁性体1 90質量部
荷電制御剤1 1質量部
サリチル酸系のアルミニウム錯体
(ボントロンE88、オリエント化学工業社製) 1質量部
この単量体組成物を60℃に加温し、そこにHNP−9(日本精鑞株式会社製、融点78℃)15質量部を混合溶解した。これに重合開始剤ブチルパーオキサイド2質量部を溶解して重合性単量体組成物を得た。
【0207】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、70℃で4時間重合反応を行った。反応終了後、加熱を停止し、1時間当り75質量部の飽和水蒸気(スチーム圧力205kPa:温度120℃)を内容物中に直接導入した。飽和水蒸気の導入を開始してから10分後、容器内の内容物の温度は100℃に達した。重合用容器内温度が100℃に達した3時間後、容器内温度が100℃に達してから3時間後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えてCa3(PO42を溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子を得た。
【0208】
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した、処理後のBET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体(以下、「シリカ微粉体」と表記する。)0.8質量部と無機微粉体A0.5質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー1(重量平均粒径D4:7.0μm)を調製した。トナー1の物性を表3に示す。トナー1の性能を以下の評価1〜3により評価し、評価結果は表4に示した。
【0209】
評価1〜3によると、トナー1は非常に良好な現像性を示し、且つ静電オフセット及び尾引きのレベルにも非常に優れていた。
【0210】
評価1.現像性評価
画像濃度は、空気中の水分量が多い場合に帯電量不足による低下が起こりやすい。特にベタ画像のごとき現像剤の入れ替わりが激しい画像を出力する場合には、帯電立ち上げ時間が短いため、均一且つ充分な帯電量が得難く、画像濃度ムラが発生しやすい。更に、高温環境では湿度の影響からトナーの帯電能は低下する傾向であり、濃度低下・ムラが発生しやすい。そこで本発明では、厳しい条件下での性能を評価するため、高温高湿環境下でベタ黒画像を連続で画出しする評価法を採用した。
【0211】
トナー1を300g秤量し、市販の電子写真複写機IR6000(キヤノン株式会社製)とIR6000用現像器と共に高温高湿環境(32.5℃,82.5%、以下H/H)に12時間調温・調湿した。その後、トナー1を現像器へ投入し、IR6000へ設置し、現像スリーブを3分間空回転させた後、ベタ黒画像をA4で6000枚画出しした。得られたベタ黒画像を300枚毎にサンプリングし、反射濃度計RD918(マクベス社製)で一枚につき6点の濃度を測定した。なお、濃度の測定位置はA4用紙を長辺を3分割、短辺を2分割して出来る6つの長方形それぞれの中心部分とした。得られたデータ中での濃度最高値と最低値を記録した。
【0212】
評価2.耐静電オフセット性・定着尾引き評価
静電オフセットは、トナーの載った紙が定着器を通過する際、トナーが定着フィルムやローラーの如き定着部材側に静電気的に付着することにより発生する現象である。また、定着尾引きとは、定着ニップ部にトナーが近付いた際に、熱を受けたトナーの帯電性が変化することでトナー粒子同士が静電的に反撥し、発生する現象である。従って、低湿環境の如き帯電分布がブロードになりやすい環境下で、トナーを充填した後に出す最初の画像では、帯電が安定化しにくく、静電オフセット及び定着尾引きは発生しやすい。更に、定着部材が冷え切った状態で通紙する場合、定着部材の温度にムラが生じることでトナーに伝わる熱量は不均一になりやすく、定着時のトナー帯電量がブロード化することで、静電オフセット及び定着尾引きは厳しいものとなる。ところで、本体構成によっては定着時に定着フィルムにバイアスを印加させることで、定着フィルムへのトナー付着を抑制する機構があり、特に静電オフセットは大きく改善される。これらのことを考慮して本発明のトナーを評価した。
【0213】
トナー1を100g秤量し、レーザービームプリンターLBP3410用カートリッジ「トナーカートリッジ510」にトナー1を詰め替えたのものを、市販のレーザービームプリンターLBP3410(キヤノン社製)を改造して定着時に定着フィルムに対して電圧が掛からない構成としたものに設置した後、低温低湿環境(15℃,10%、以下L/L)で12時間調温・調湿した。
【0214】
その後、画像の前半半分がベタ黒、後半半分が白地の静電オフセット試験用チャートをA4コート紙(イメージコートグロス100、キヤノン株式会社製)で連続3枚の画出しを行い、目視にて耐静電オフセット性の評価を行った。
【0215】
なお、耐静電オフセット性の評価基準は以下のように定めた。
A 全くみられない。
B 白地部のごく一部にかすかに現れる。
C 白地部のごく一部に現れる。
D 白地部の広範囲に現れる。
E 白地部に著しく現れ、実用上困難である。
【0216】
耐静電オフセット用画像を出力した後、1時間L/L環境下で放置して定着器を十分冷却した。その後、5mm間隔の横罫線を連続3枚プリントし、紙の進行方向とは逆側に、とげ状又は糸状の小さなささくれ線が横罫線から発生するレベルにより定着尾引きを判定した。
【0217】
なお、定着尾引きの評価基準は以下のように定めた。
A 全く尾引きがない
B 軽微な尾引きが5点未満発生している。
C 軽微な尾引きが5点以上発生している。
D 軽微な尾引きに加えて、大きな尾引きも数点発生している。
E 大きな尾引きが多数見られ、実用上困難である。
【0218】
評価3.トナー消費量評価
トナー消費量は、低湿環境では帯電量が高まることから、潜像に対して過剰量のトナーが現像されやすくなる。さらに、プロセススピードが上がると、トナーは帯電の立ち上がり時間が短くなることで低帯電成分が増加し、潜像に対し、より過剰量のトナーが現像されやすくなる。これらのことを考慮して本発明のトナーを評価した。
【0219】
トナー1を300g秤量し、レーザービームプリンターLBP3410用カートリッジ「トナーカートリッジ510」にトナー1を詰め替えたのものを、市販のレーザービームプリンターLBP3410(キヤノン社製)を改造してプロセススピードを300mm/secとしたものに設置した後、L/L環境で12時間調温・調湿した。
【0220】
その後、印字率4%の画像をA4で3000枚画出しし、トナー消費量を算出した。なお、表4には画像1ページあたりに消費するトナーの量を示した。
【0221】
[実施例2、3]
<トナー2、3の製造>
実施例1において、荷電制御剤1を荷電制御剤2、3に変更すること以外は実施例1と同様に操作してトナー2、3を製造し、評価を行った。トナー物性は表3に示し、評価結果は表4に示した。
【0222】
評価1乃至3によると、トナー2は定着尾引き、トナー3は静電オフセットが若干悪化傾向であったが、実用上問題は無かった。
【0223】
[実施例4乃至6]
<トナー4乃至6の製造>
用いるポリエステル樹脂を表4のように変更すること以外は実施例3と同様に操作してトナー4乃至6を製造し、評価を行った。トナー物性は表3に示し、評価結果は表4に示した。
【0224】
評価1乃至3によると、トナー4は現像性が若干悪化傾向であり、消費量も若干増加傾向であったが、実用上問題は無かった。また、トナー5、6は現像性及び耐静電オフセット性が若干悪化傾向であったが、実用上問題は無かった。
【0225】
[実施例7]
<トナー7の製造>
実施例6において、用いるポリエステル樹脂をポリエステル樹脂5とし、イオン交換水709質量部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液353質量部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液53部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得ること以外は、同様に操作してトナー粒子を得た。
【0226】
更に、上記トナー粒子100質量部と、シリカ微粉体0.1質量部と無機微粉体A0.5質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー7を製造し、評価を行った。トナー物性は表3に示し、評価結果は表4に示した。
【0227】
評価1乃至3によると、現像性が若干悪化傾向であり、消費量も若干増加傾向であったが、実用上問題は無かった。
【0228】
[実施例8]
<トナー8の製造>
実施例2において、使用するポリエステル樹脂をポリエステル樹脂5とし、添加するシリカ微粉体を2.2質量部としたこと以外は同様に操作してトナー8を製造し、評価を行った。トナー物性は表3に示し、評価結果は表4に示した。
【0229】
評価1〜3によると、定着尾引きが若干悪化傾向であり、消費量も若干増加傾向であったが、実用上問題は無かった。
【0230】
[実施例9]
<トナー9の製造>
実施例3において、使用するポリエステル樹脂をポリエステル樹脂5とし、スチレンの仕込み量を86.2質量部、n−ブチルアクリレートの仕込み量を13.8質量部としたこと以外は同様に操作してトナー9を製造し、評価を行った。トナー物性は表3に示し、評価結果は表4に示した。
【0231】
評価1乃至3によると、現像性及び定着尾引きのレベルが若干悪化傾向であり、消費量も若干増加傾向であったが、実用上問題は無かった。
【0232】
[比較例1]
<比較用トナー1の製造>
イオン交換水709質量部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液451質量部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加して燐酸カルシウム塩を含む水系媒体を得た。
【0233】
一方、
・スチレン 78質量部
・n−ブチルアクリレート 22質量部
・ポリエステル樹脂5 5質量部
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・磁性体2 80質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
【0234】
この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス(mp.70℃)20質量部を混合溶解し、これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル[t1/2=140分,60℃条件下]9質量部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート[t1/2=270分,60℃条件下;t1/2=80分,80℃条件下]3質量部を溶解した。
【0235】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、70℃で1時間反応させた。その後液温を80℃とし更に10時間撹拌を続けた。
【0236】
次に、この水系懸濁液中に
・スチレン 4質量部
・n−ブチルアクリレート 1質量部
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 0.1質量部
・ベヘニン酸ナトリウム 0.025質量部
・水 20質量部
の混合物を添加し、再度、液温を80℃として10時間撹拌を続けた。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて燐酸カルシウム塩を溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子を得た。
【0237】
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後の一次平均粒径が15nmの疎水性シリカ微粉末1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較用トナー1を調製した。
【0238】
[比較例2]
<比較用トナー2の製造>
高速撹拌装置クレアミックス(エムテクニック社製)を具備した2リットル用4つ口フラスコ中に、イオン交換水700gと0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液800gを投入し、高速撹拌装置の回転数を15000rpmに設定し、70℃に加温せしめた。ここに1.0mol/リットル−CaCl2水溶液70質量部を添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO42を含む水系分散媒体を調製した。更に希塩酸により水系分散媒体のpHが5.3となるように再調製した。
【0239】
一方、分散質として、
・スチレン単量体 77質量部
・2−エチルヘキシルアクリレート単量体 23質量部
・ジビニルベンゼン単量体 0.3質量部
・磁性体2 100質量部
・ポリエステル樹脂5 2質量部
・荷電制御樹脂2 2質量部
・ジtert−ブチルサリチル酸 1質量部
・エステルワックス(融点=65℃) 9質量部
からなる混合物をアトライター(三井金属社製)を用い3時間分散させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を添加し、重合性単量体組成物を調製した。
【0240】
次に、前記水系分散媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、内温65℃のN2雰囲気下で、高速撹拌装置の回転数を15000rpmを維持しつつ、10分間撹拌し、該重合性単量体組成物を造粒した。その後、撹拌装置をパドル撹拌羽根を具備したものに換え、200rpmで撹拌しながら同温度に保持し、重合性ビニル系単量体の重合転化率が95%に達したところで0.1mol/リットルのNaOH水溶液を添加して水系分散媒体のpHを10に変更した。更に反応温度を85℃に昇温し、重合転化率がほぼ100%になったところで重合反応を完了した。
【0241】
重合終了後、加熱減圧下で残存モノマーを留去し、次いで、冷却後に希塩酸を添加して難水溶性分散剤を溶解せしめ、減圧濾過を行った。更に水洗浄を数回繰り返した後、再度、希塩酸洗浄と水洗浄を交互に繰り返した後、円錐型リボン乾燥機(大川原製作所製)を用い、乾燥処理を行い、トナー粒子を得た。
【0242】
上記トナー粒子100質量部と疎水性オイル処理シリカ微粉体(BET:200m2/g)2質量部をヘンシェルミキサー(三井金属社製)で乾式混合して比較用トナー2を得た。
【0243】
[比較例3]
<比較用トナー3の製造>
[ポリエステル6の製造]
前記式(ア)においてRがプロピレン、x+y=2.1で表わされるジオール成分
16mol%
フマル酸 24mol%
上記モノマーを重縮合させて数平均分子量(Mn)が880の線状のプレポリマーを生成した。次いで、線状プレポリマーと下記モノマーとを混合して重縮合(触媒として三酸化アンチモン使用)を行って、ポリエステル6を得た。
前記式(ア)においてRがエチレン、x+y=2.1で表わされるジオール成分
15mol%
前記式(ア)においてRがプロピレン、x+y=2.1で表わされるジオール成分
15mol%
フマル酸 14.5mol%
テレフタル酸 15mol%
トリメリット酸 0.5mol%
【0244】
ポリエステル6 100質量部
荷電制御樹脂2 2質量部
ボントロンE−88 4質量部
磁性体2 100質量部
上記成分をヘンシェルミキサーにより十分予備混合し、設定温度100℃の二軸押し出し混練機で溶融混練し、冷却後、ハンマーミルを用いて粉砕し、次いで、エアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。その後、多分割分級装置で微粉及び粗粉を同時に厳密に除去して、トナー粒子を得た。
【0245】
上記トナー粒子の100質量部に対して、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したBET比表面積200m2/gの疎水性シリカ微粉体を1.5質量部と、無機微粉体Bを0.5質量部を混合して比較用トナー3を調製した。
【0246】
[比較例4]
<比較用トナー4の製造>
スチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体(共重合比80/20) 85質量部
磁性体2 100質量部
ポリプロピレンワックス(ビスコール550P,三洋化成工業(株)製) 4質量部
荷電制御剤(N−07,オリエント化学工業(株)製) 1質量部
上記混合物を混練後、ジェットミルで粉砕し、分級して平均粒径10μmのトナー母粒子を得た。
【0247】
このトナー粒子に、以下の微粒子をヘンシェルミキサーで十分混合してトナー母粒子の表面に均一に静電付着させた。
カーボンブラック(粒径0.03μm)(商品名EC,アクゾ社製) 0.5質量%
ポリスチレン系ビーズ(粒径0.02μm) 3質量%
【0248】
ついで表面処理装置(ハイブリタイザー、奈良機械製作所製)を用い、機械的衝撃力によりトナー母粒子の表層にこれら微粒子を固着させ、「固着母粒子」を得た。
【0249】
この「固着母粒子」に、負帯電性疎水性シリカ(粒径0.2μm)(SS−10,日本シリカ(株)製)0.3質量%をヘンシェルミキサーで十分混合して静電付着させ、比較用トナー4を得た。
【0250】
[比較例5]
<比較用トナー5の製造>
◎ポリエステル樹脂7の製造
撹拌装置、温度計、窒素導入口、流下式コンデンサー、冷却管付き4つ口セパラブルフラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン740g、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン300g、テレフタル酸ジメチル466g、イソドデセニル無水コハク酸80g、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−ブチル114gをエステル化触媒(三酸化アンチモン)とともに加えた。窒素雰囲気下で前半210℃まで常圧昇温し、後半210℃減圧にて撹拌しつつ反応させた。酸価2.3KOHmg/g、水酸基価28.0KOHmg/g、軟化点106℃、Tg62℃のポリエステル樹脂7を得た。
【0251】
◎ポリオール樹脂Aの製造
撹拌装置、温度計、窒素導入口、冷却管付きセパラブルフラスコに、低分子ビスフェノールA型エポキシ樹脂(数平均分子量:約360)378.4g、高分子ビスフェノールA型エポキシ樹脂(数平均分子量:約2700)86.0g、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加体のグリシジル化物(前記一般式(ア)においてn+m:約2.1)191.0g、ビスフェノールF274.5g、p−クミルフェノール70.1g、キシレン200gを加えた。窒素雰囲気下で70〜100℃まで昇温し、塩化リチウムを0.1839g加え,更に160℃まで昇温し減圧下でキシレンを留去し、180℃の反応温度で6〜9時間重合させて、酸価0.0KOHmg/g、水酸基価70.0KOHmg/g、軟化点109℃、Tg58℃のポリオール樹脂を得た(以下ポリオール樹脂Aという)
【0252】
◎トナーの製造
ポリエステル樹脂7 40質量部
ポリオール樹脂A 60質量部
低密度ポリエチレンワックス(針入度25mm) 3質量部
磁性体2 100質量部
上記材料をブレンダーで十分混合した後、100〜110℃に加熱した2軸押し出し機で溶融混練した。混練物を放冷後カッターミルで粗粉砕し、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕後、風力分級装置を用いてトナー粒子を得た。さらに、トナー粒子100質量部に対してジメチルジクロルシランにて疎水化処理を行った疎水性シリカ0.4質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合し比較用トナー5を得た。
【0253】
[比較例6]
<比較用トナー6の製造>
ポリエステル樹脂7 80質量部
スチレン−メチルアクリレート共重合体 20質量部
カルナウバワックス 5質量部
磁性体2 100質量部
モノアゾ染料系のFe化合物 3質量部
上記の処方による混合物をヘンシェルミキサーで十分撹拌混合した後、ロールミルで130乃至140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、平均粒径8μmのトナー母体粒子を得た。更に、上記トナー母体粒子100質量部に対し、流動性付与剤として、ジメチルジクロルシランにて疎水化処理を行った疎水性シリカ(一次平均粒子径0.04μm)0.8質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、比較用トナー6を作製した。
【0254】
[比較例7]
<比較用トナー7の製造>
[ポリエステル樹脂8の製造]
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4.0モル、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.0モル、テレフタル酸4.5モル、無水トリメリット酸0.5モル、および酸化ジブチル錫4gを窒素雰囲気下、230℃、8.3kPaの圧力下で8時間かけて反応させ、軟化点120℃、ガラス転移点68℃のポリエステル樹脂8を得た。
【0255】
[トナー粒子の製造]
ポリエステル樹脂8 100質量部
磁性体2 100質量部
電荷制御剤(藤倉化成社製:FCA201PS) 4質量部
ワックス(三洋化成社製:ユーメックス110TS) 4質量部
各成分を上記配合比でヘンシェルミキサーにて混合し撹拌した後、2軸押出機にて溶融混錬し、粗粉砕し、衝突式気流粉砕機にて微粉砕してトナー粒子を得た。さらに、トナー粒子100質量部に対してジメチルジクロルシランにて疎水化処理を行った疎水性シリカ0.4部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合し比較用トナー7を得た。
【0256】
<比較用トナー8の製造>
ポリエステル樹脂5 100質量部
磁性体2 90質量部
荷電制御剤4 1質量部
エステルワックス(mp.73℃) 5質量部
上記の材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度150℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルを用いて1mm以下に粗粉砕した。この粗粉砕物を機械式粉砕機であるジェットミルを用い、中心粒径が12μm程度となるように微粉砕した。
【0257】
粉砕して得た微粉砕品を、気流式分級機で分級し、トナー粒子を得た。このトナー粒子100質量部と、シリカ微粉体2.0質量部と無機微粉体B3.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較用トナー8を調製し、実施例1と同様に評価した。トナー物性は表3に示し、評価結果は表4に示した。
【0258】
評価1乃至3によると、全ての項目において著しい悪化傾向が見られ、実用が困難なレベルであった。
【0259】
評価1乃至3によると、特に現像性の低下及び消費量の増大が著しく、実用が困難なレベルであった。
【0260】
[比較例9]
<比較用トナー9の製造>
比較例2において、使用する磁性体を磁性体3にすること以外は同様に操作して比較用トナー9を製造し、評価を行った。トナー物性は表3に示し、評価結果は表4に示した。
【0261】
評価1乃至3によると、特に現像性の低下が著しく、実用が困難なレベルであった。
【0262】
【表3】

【0263】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】トナーの摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。
【図2】本発明のトナーを適用できる画像形成装置の説明図である。
【図3】現像装置の説明図である。
【符号の説明】
【0265】
100 感光体(像担持体、被帯電体)
102 現像スリーブ(磁性トナー担持体)
114 転写ローラー(転写部材)
116 クリーナー
117 帯電ローラー(接触帯電部材)
121 レーザービームスキャナー(潜像形成手段、露光装置)
124 給紙ローラ
125 搬送部材
126 定着装置
140 現像装置
141 撹拌部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体及び樹脂を少なくとも含有するトナーであって、
該トナーの重量平均粒子径(D4)が3乃至12μmであり、
該トナーの平均円形度が0.950以上であり、
該トナーを温度23℃湿度60%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ1(μC/g)、温度40℃湿度95%で30日間放置した際の摩擦帯電量をQ2(μC/g)とした時に式(A)を満たすことを特徴とするトナー。
式(A) 0.80≦Q2/Q1≦1.40
【請求項2】
上記Q1の絶対値が20.0μC/g以上、60.0μC/g以下となることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
該トナーのガラス転移温度が30℃以上、65℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
該トナーは、サリチル酸系のアルミニウム錯体を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
該トナーの温度23℃湿度60%で30日間放置した際の比表面積が0.60m2/g以上、1.10m2/g以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
該樹脂がポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂が、チタン含有触媒の存在下に形成されてなる樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
該磁性体が疎水化処理された磁性体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
該トナーが、水系媒体中で製造されるトナー粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−304723(P2008−304723A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152219(P2007−152219)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】