説明

トナー

【課題】従来のものよりも帯電性が高く、粒状シェルの離脱とクリーニング不良抑制を両立させたトナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂と離型剤と着色剤を含む芯粒子と、前記芯粒子表面に樹脂微粒子がシェルとして埋没して存在するコアシェル構造を有するトナーであって、前記樹脂微粒子が前記芯粒子に埋没する比率である平均埋没率のBが、下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。式(1): A×0.3+15<B<A×0.1+75(上記式(1)において、Aは前記トナーの形状指数SF−2を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの製造方法として、従来から存在する混練粉砕法の他に、球形化や小粒径化に有利な、懸濁法や乳化法、懸濁重合法、凝集法などのケミカルトナー法と呼ばれる方法による製造法が知られている。ところで、球形トナーはクリーニング不良を発生させやすい。その対策として、ケミカルトナーにおいても異形化させる方法が知られている。(たとえば特許文献1参照)
【0003】
一方、従来のトナーに比べて、耐オフセット性、低温定着性、粉体流動性及び耐久性に優れた電子写真用球形トナーを提供することを課題として、特許文献2の発明が知られている。この特許文献2には、少なくとも着色材、離型材、結着樹脂および帯電制御樹脂を溶媒中に溶解または分散させ、O/W型湿式造粒方式で製造される円形度が0.970以上の静電荷現像用トナーにおいて、
前記帯電制御樹脂の有機概念図I/O値をI/Ocとしたとき、0.3<[I/Oc]<2.5の関係を満たすと共に、
前記トナーは、球状のトナー核表面に凹凸を有し、その凸部は粒状で平均粒径が100nm〜500nmであり、トナー核表面に対して被覆率10%〜80%で一体化されていることを特徴とする静電荷像現像用トナーの発明が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲参照)。
【0004】
このように、特許文献2に記載のトナーは、球状のトナー核表面に凹凸のシェルが形成される構造となっており、クリーニング不良を抑制することが出来る構造となっている。ただし、局所的にトナー同士のこすれや規制部でのストレスが大きくなってシェルが剥がれる可能性がある結果、帯電性が多少変化したり、また、規制ブレードへの融着や現像へのフィルミングの発生の可能性があるため、更なる改良が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、形状指数SF−2と粒状シェルの平均埋没率を規定することで、耐久時(印刷を繰り返した時)においても帯電性が高く、粒状シェルの離脱とクリーニング不良抑制を両立させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、以下の解決手段を講じた。
(1) 結着樹脂と離型剤と着色剤を含む芯粒子と、前記芯粒子表面に樹脂微粒子がシェルとして埋没して存在するコアシェル構造を有するトナーであって、
前記樹脂微粒子が前記芯粒子に埋没する比率である平均埋没率Bが、下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
式(1): A×0.3+15<B<A×0.1+75
(上記式(1)において、Aは前記トナーの形状指数SF−2を表す。)
(2) 前記(1)に記載のトナーにおいて、前記トナー表面から300nm以内のシェル含有率が、30〜80%の範囲であることを特徴とする。
(3) 前記(1)または(2)に記載のトナーにおいて、前記トナーのガラス転移温度Tgが、55℃以上70℃以下であるトナーを特徴とする。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載のトナーにおいて、前記樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが、60℃以上90℃以下であるトナーを特徴とする。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載のトナーにおいて、前記樹脂微粒子の重量平均分子量Mwが、30000以上50万以下であるトナーを特徴とする。
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載のトナーにおいて、前記樹脂微粒子が、ビニル系樹脂を含むトナーを特徴とする。
(7) 前記(6)に記載のトナーにおいて、前記ビニル系樹脂を構成するモノマーの60〜100モル%が、スチレンであるトナーを特徴とする。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載のトナーにおいて、さらに外添剤を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、帯電性が高く、粒状シェルの離脱とクリーニング不良抑制を両立させたトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<トナー粒子>
本実施形態のトナーは、結着樹脂、離型剤、着色材を含むトナーであり、前記トナーは結着樹脂、離型剤、着色材からなるコア粒子(以下、「芯粒子」という)と、前記芯粒子表面に埋没して存在する樹脂微粒子で構成される。
このような樹脂微粒子がコア粒子である芯粒子に埋没する比率である平均埋没率Bは、下記式(1)を満たすことを特徴としている。
式(1): A×0.3+15<B<A×0.1+75
【0009】
上記式中、Aはトナーの形状指数SF−2を表す。なお形状係数SF−2は、その粒子の周囲長(PERI)の2乗をその粒子の投影像の面積(AREA)で割った値を4πで割り、これに100を掛けた量として定義される。すなわち、以下の式で求められる。
SF−2=[(PERI)/(AREA)]×(1/4π)×100
【0010】
このようなトナーによって、帯電性が高く、しかも粒状シェルの離脱とクリーニング不良が抑制可能となる。
また、本実施形態のトナーは、流動性向上のために無機微粒子や帯電制御剤等を使用することが出来る。
以下、溶解懸濁法を例にしたトナーの製造方法について説明する。
【0011】
(溶解懸濁法)
溶解懸濁法を用いてトナーを製造する方法としては、少なくとも、樹脂及び着色剤からなるトナー組成物を、有機溶媒に溶解又は分散させることにより得られる溶解液又は分散液を、分散剤の存在する水性溶媒中で、通常の撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて、所望の粒度分布を有するトナー分散液が得られる。このように分散させた後、有機溶媒を除去することにより、トナースラリーを得る方法が挙げられる。トナーは、公知の方法に従い、洗浄・濾過により回収し、乾燥させることにより得られる。
【0012】
(使用される樹脂について)
溶解懸濁法では、溶媒に溶解させることができる樹脂であれば製造上利用することができる。このような樹脂としては、従来からトナーに用いられている樹脂が挙げられ、具体的には、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。このうち定着性の観点から、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。
本実施形態では、上記したポリエステル樹脂またはその変性物を用いることが好ましい。
【0013】
(イソシアネート変性ポリエステル)
本実施形態で用いられる上記ポリエステル樹脂の変性物としては、イソシアネート変性ポリエステルを挙げることができる。イソシアネート変性ポリエステルとしては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルを作製し、さらにこの活性水素基とポリイソシアネート(3)とを反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0014】
(ポリオール)
上記したポリエステルを作製するためのモノマー成分の1つであるポリオール(1)としては、ジオール(1−1)と3価以上のポリオール(1−2)が挙げられる。特に、ジオール(1−1)単独で、またはジオール(1−1)と少量の3価以上のポリオール(1−2)の混合物が、モノマー成分の1つであるポリオール(1)として好ましい。
ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0015】
3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0016】
(ポリカルボン酸)
ポリエステルを作製するためのモノマー成分のもう1つであるポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)と3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられる。このうち、ジカルボン酸(2−1)単独で、またはジカルボン酸(2−1)と少量の3価以上のポリカルボン酸(2−2)の混合物が、モノマー成分のもう1つであるポリカルボン酸(2)として好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いることができる。
【0017】
(ポリオールとポリカルボン酸の比)
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の使用比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0018】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;及びこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0019】
(イソシアネート基と水酸基の比)
ポリイソシアネート(3)と水酸基の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。
[NCO]/[OH]が5を超えると残留するポリイソシアネート化合物がトナーの帯電性に悪影響を及ぼす。
【0020】
(伸長剤)
イソシアネート変性ポリエステルを伸長させるために、伸長剤としてアミン類(B)を用いてもよい。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4′ジアミノジフェニルメタン、テトラフルオロ−p−キシリレンジアミン、テトラフルオロ−p−フェニレンジアミンなど)、脂環式ジアミン(4,4′−ジアミノ−3,3′ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど)及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカフルオロヘキシレンジアミン、テトラコサフルオロドデシレンジアミンなど)などが挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
【0021】
(アミノ基とイソシアネート基の比率)
アミン類(B)の比率は、イソシアネート変性ポリエステル中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満では、イソシアネート変性ポリエステルの伸長反応が十分に進行せず、本実施形態の粘弾性特性が得られないおそれがある。
【0022】
(イソシアネート変性ポリエステルの併用に関して)
イソシアネート変性ポリエステルは、1種類のみ用いてもよいが、例えば1種類以上の直鎖上のイソシアネート変性ポリエステルと、1種類以上の分岐構造を有するイソシアネート変性ポリエステルを組み合わせて使用することにより、トナーの粘弾性設計を好ましく行うことができる。特にトナー中に架橋点間距離を広く取った架橋構造を均一に存在させるためには、分岐構造を有するイソシアネート変性ポリエステルは比較的低分子量に設計し、それとともに直鎖上のイソシアネート変性ポリエステルを併用するのが好ましい。イソシアネート変性ポリエステルの分子鎖を長く設計すると、トナーの熱特性が悪化することがあるからである。その原因としては、トナー製造過程の油相中において分子鎖がランダムコイル状に収縮し、局所的に架橋構造を形成するか、分子内でイソシアネート基が反応を完結してしまい、トナー全体にわたって架橋構造を持たせることができないためであると考えられる。
【0023】
(未変性ポリエステル)
本実施形態においては、イソシアネート変性ポリエステルとともに、イソシアネート変性されていないポリエステル(未変性ポリエステル)を用いてもよい。未変性ポリエステルを用いることにより、トナーの粘弾性の設計がより行いやすくなる。未変性ポリエステルとしては、前述のポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられる。
【0024】
(有機溶媒)
有機溶媒は、容易に除去することを可能とするため、沸点が100℃未満であるものを用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、単独又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0025】
水性溶媒は、水単独でもよいが、水と混和可能な溶媒を併用することもできる。混和可能な溶媒としては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類等が挙げられる。トナー材料100質量部に対する水性溶媒の使用量は、通常、50〜2000質量部であり、100〜1000質量部が好ましい。水性溶媒の使用量が50質量部未満では、トナー材料の分散状態が悪くなるおそれがある。また、2000質量部を超えると経済的でない。
【0026】
(無機分散剤)
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ及びヒドロキシアパタイト等を用いることができる。
【0027】
(ワックス)
本実施形態に使用する離型剤としては、公知のものが使用できる。例えばポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。上記の内、極性が小さく溶融粘度が低いという理由から好ましいものはポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素であり、特に好ましいものはパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスである。
【0028】
(ワックス分散剤)
ワックス分散剤としては、公知のものを使用することができる。ワックスとの相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットがブロック体として存在するポリマーやオリゴマー、ワックスとの相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットのうち一方に他方がグラフトしているポリマーもしくはオリゴマー、エチレン、プロピレン、ブテン、スチレン、α−スチレン等の不飽和炭化水素と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルもしくはその無水物との共重合体、ビニル系樹脂とポリエステルとのブロックもしくはグラフト体、などが挙げられる。
【0029】
前記ワックスとの相溶性の高いユニットとしては、炭素数が12以上の長鎖アルキル基や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエンとそれらの共重合体などが挙げられる。前記樹脂との相溶性の高いユニットとしては、ポリエステル、ビニル系樹脂などが挙げられる。
樹脂微粒子の平均埋没率は分散剤によって調整することができる。例えば、樹脂微粒子と似た構造をもつワックス分散剤を用いれば、樹脂微粒子の平均埋没率を上げることができる。また、そのワックス分散剤の量を増やすことでも、更に平均埋没率を上げることが出来る。
【0030】
(着色剤)
本実施形態のトナーにおいて、従来からフルカラートナーで使用されている公知の着色剤を用いることができる。例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を挙げることができる。トナー粒子中における着色剤の含有量としては全バインダー樹脂100重量部に対し2〜15重量部の範囲が好ましい。着色剤は、使用樹脂との混合バインダー樹脂中に分散されたマスターバッチの形態で使用されることが分散性の観点から好ましい。マスターバッチの添加量は含有される着色剤の量が上記範囲内となるような量であればよい。マスターバッチ中の着色剤含有率は20〜40重量%が好適である。
【0031】
(樹脂微粒子)
樹脂微粒子はポリエステル樹脂やビニル系樹脂が挙げられる。
以下、ビニル系樹脂を用いた場合(ビニル系樹脂微粒子)について説明する。
本実施形態では、静電潜像現像用トナーなどを帯電させることにより機能する粒子として用いるために、粒子表面は帯電しやすい構造を有しているのがよい。そのためには芳香環構造のように電子を安定に存在できるような電子軌道を持つスチレン系モノマーが、モノマー混合物のうち60〜100重量%用いられるのが良い。
【0032】
ここで、スチレン系モノマーというのは、ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物のことを指す。重合可能な官能基としては、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0033】
具体的なスチレン系モノマーとしては、スチレン、αメチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、4−カルボキシスチレンもしくはその金属塩、4−スチレンスルホン酸もしくはその金属塩、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アリルベンゼン、フェノキシアルキレングリコールアクリレート、フェノキシアルキレングリコールメタクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールアクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
この中では、入手が容易で反応性に優れ帯電性の高いスチレンを主に用いるのが好ましい。
【0034】
また、ビニル系樹脂には、酸モノマーがモノマー混合物のうち0〜7重量%、好ましくは0〜4重量%使用するのがよく、より好ましくは酸モノマーを使用しないのが良い。酸モノマーが7重量%を超えて使用されると、得られるビニル系樹脂微粒子はそれ自身の分散安定性が高い。このため、油滴が水相中に分散された分散液中にこのようなビニル系樹脂微粒子を添加しても、常温では付着しにくいか、付着をしても脱離しやすい状態にあり、溶媒除去、洗浄、乾燥、外添処理を行う過程で容易に剥がれてしまう。さらに、酸モノマーの使用量が4重量%以下にすることで、得られる着色樹脂粒子が使用される環境によって帯電性の変化を少なくすることができる。
【0035】
ここで、酸モノマーというのは、ビニル重合性官能基と酸基を有する化合物のことをいい、酸基としては、カルボキシル酸、スルホニル酸、ホスフォニル酸などが挙げられる。
酸モノマーとしては、例えばカルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩((メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸、フマル酸モノアルキル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキル、桂皮酸等)、スルホン酸基含有ビニル系モノマー、ビニル系硫酸モノエステル及びこれらの塩、リン酸基含有ビニル系モノマー及びその塩などがある。この中では、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸、フマル酸モノアルキルが好ましい。
【0036】
ビニル系樹脂微粒子を得る方法としては特に限定されないが、以下の(a)〜(f)が挙げられる。
(a)モノマー混合物を懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の重合反応により反応させ、ビニル系樹脂微粒子の分散液を製造する。
(b)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を製造する。
(c)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を製造する。
(d)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に溶剤を添加するか、またはあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次いで、溶剤を除去して樹脂微粒子を製造する。
(e)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶剤を除去する。
(f)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する。
【0037】
この中で、製造が容易であり、樹脂微粒子を分散液として得られることから次工程への適用がスムーズに行うことができる(a)の方法が好ましい。
【0038】
上記(a)の方法において、重合反応を行う際には、水系媒体中に分散安定剤を添加する。もしくは重合反応を行うモノマー中に、重合してできた樹脂微粒子の分散安定性を付与できるようなモノマー(いわゆる反応性乳化剤)を添加する。またはこれら2つを併用し、できあがったビニル系樹脂微粒子に分散安定性を付与するのがよい。分散安定剤や反応性乳化剤を使用しないと、粒子の分散状態を維持できないためにビニル系樹脂を樹脂微粒子として得ることができなくなり、また得られた樹脂微粒子の分散安定性が低いために保存安定性に乏しく保管中に凝集してしまう。あるいは後述の樹脂微粒子付着工程での粒子の分散安定性が低下するために、芯粒子同士が凝集・合一しやすくなり、最終的に得られる樹脂微粒子の粒径や形状・表面などの均一性が悪くなるため、好ましくない。
分散安定剤としては、界面活性剤、無機分散剤などが挙げられる。また界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが用いられる。
【0039】
樹脂微粒子は、使用されるそのモノマーによって平均埋没率を変えることが出来る。例えば、モノマーがスチレンのみの場合は、樹脂との相溶性が悪く、平均埋没率が低くなるが、モノマーとして、スチレンにエステルモノマーを添加すれば、樹脂との相溶性が良くなり、平均埋没率が上がる。
【0040】
樹脂微粒子の重量平均分子量Mwは30,000〜500,000、好ましくは35,000〜100,000の範囲が良い。重量平均分子量Mwが30,000に満たないと、ビニル系樹脂の力学的強度が弱く脆弱であるため、最終的に得られる着色樹脂粒子のアプリケーションによっては使用状況によって着色樹脂粒子表面が容易に変化してしまう。例えば帯電性の著しい変化や周辺部剤への付着などの汚染、それに伴う品質問題の発生を引き起こすため好ましくない。また、500,000を超える場合、芯粒子との分子鎖の絡み合いが少なくなり、芯粒子への付着性が低下するため好ましくない。
【0041】
また、添加量は、油相100重量部に対して樹脂微粒子が2〜15重量部が好ましく、4〜11重量部がより好ましい。樹脂微粒子の添加量が低くなるとトナー表面から300nmの樹脂微粒子量が少なくなる。樹脂微粒子の添加量が2重量部より少ないと十分な耐熱保存性が得られず、15重量部より多いとトナー表面近傍の樹脂微粒子量が多くなりすぎ、定着時のワックス染み出し量が十分でなくなるため、定着性が悪くなる。
【0042】
<製造方法>
次に、製造工程に関して説明する。
(油相作成工程)
まず有機溶媒中に樹脂、着色剤などを溶解あるいは分散させた油相を作製する。この油相の作製方法としては、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。ただし、着色剤として顔料を用いる場合や、ワックスや帯電制御剤などのなかで有機溶媒に溶解しにくいようなものを添加する場合、有機溶媒への添加に先立って粒子を小さくしておいてもよい。
さらに別の手段として、有機溶媒の沸点未満で溶融するようなものを分散するのであれば、有機溶媒中で、必要に応じて分散助剤を添加し、分散質とともに攪拌しながら加熱を行い、一旦溶解させた後、攪拌もしくはせん断しながら冷却を行うことによって晶析を行い、分散質の微結晶を生成させる方法を行っても良い。
以上の手段を用いて分散された着色剤、ワックス、帯電制御剤は、有機溶媒中に樹脂とともに溶解あるいは分散された後、さらに分散が行われても良い。分散に際しては公知のビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
【0043】
(トナー粒子母体作製工程)
少なくとも界面活性剤を有する水系媒体中に前述の工程で得られた油相を分散させ、次いで油相からなるトナー粒子母体が分散した分散液を作成する。この作成方法としては、特に限定されるものではないが、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式分散機を用いるのが好ましい。
【0044】
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、油相と水相の粘度や材料と狙いの粒径によって好適な回転数を設定するのが好ましい。目的の粒径が小さい場合には、油相を細かく分散させるために回転数を上げる必要があるが、回転数を上げると形状係数SF−2が大きくなる傾向がある。また、油相の粘度が高い場合には、粘度が低い場合より回転数を高く設定するのが好ましいが、その場合も回転数を上げるとSF−2が大きくなる。
【0045】
分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。5分を超えて分散を行うと、望ましくない小径の粒子が残存してしまったり、分散が過分散状態になって系が不安定になり凝集体や粗大粒子が発生したりすることがあるので好ましくない。分散時の温度としては、通常、0〜40℃、好ましくは10〜30℃である。40℃を超えると分子運動が活発になることから分散安定性が低下し凝集体や粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、0℃未満になると分散体の粘度が高くなり、分散に必要なせん断エネルギーが増大するため製造効率が低下する。界面活性剤は、前述の樹脂微粒子の製造法に関する説明で記載したものと同じものが使用できるが、溶媒を含む油滴を効率よく分散するためには、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance:界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値)が高めのジスルホン酸塩のものが好ましい。界面活性剤は、水系媒体中での濃度が1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは3〜7重量%の範囲にあるのが良い。10重量%を超えると、油滴が小さくなりすぎたり、逆ミセル構造を形成して逆に分散安定性が低下して油滴の粗大化が発生したりするため好ましくない。また1重量%未満では油滴の分散を安定に行うことができずに油滴が粗大化してしまうため好ましくない。
【0046】
(シェル化工程)
得られた芯粒子分散液は、攪拌を行っている間は安定に芯粒子の液滴を存在させておくことができる。
その状態にビニル系樹脂微粒子分散液を投入して芯粒子上に付着させる。
樹脂微粒子分散液の投入は、30秒以上かけて行うのが良い。30秒未満で投入を行うと、分散系が急激に変化するために凝集粒子が発生したり、樹脂微粒子の付着が不均一になったりするため好ましくない。一方、闇雲に長い時間、例えば60分を超えて添加するのは生産効率の面から好ましくない。
樹脂微粒子分散液は、芯粒子分散液に投入する前に、適宜濃度調整のために希釈あるいは濃縮しても良い。樹脂微粒子分散液の濃度は、5〜30質量%が好ましく、8〜20質量%がより好ましい。樹脂微粒子分散液の濃度が低い程、分散液を投入したときの有機溶媒濃度が低くなり、樹脂微粒子の平均埋没率やトナー表面近傍の樹脂微粒子の濃度は低くなる。5%未満では、分散液の投入に伴う有機溶媒濃度の変化が大きすぎ、樹脂微粒子の付着が不十分になるため好ましくない。また30質量%を超えるような場合、樹脂微粒子が芯粒子分散液中に偏在しやすくなり、その結果、樹脂微粒子の付着が過剰になるため避けたほうが良い。
【0047】
芯粒子に対して樹脂微粒子が十分な強度で付着させるために、樹脂微粒子が芯粒子の液滴に付着したときに、芯粒子が自由に変形できるために樹脂微粒子界面と接触面を十分に形成することによるものと思われる。また、有機溶媒によって樹脂微粒子が膨潤もしくは溶解し、樹脂微粒子と芯粒子内の樹脂とが接着しやすい状況になることによるものと思われる。したがって、この状態において有機溶媒は系内に十分に存在することが必要である。具体的には、芯粒子分散液の状態において、固形分(樹脂、着色剤、および必要に応じて離型剤、帯電制御剤など)に対して50質量%〜150質量%、好ましくは70質量%〜125質量%の範囲にあるのがよい。150質量%を超えると、一度の製造工程で得られる着色樹脂粒子が少なくなり生産効率が低くなり、また有機溶媒が多いと分散安定性が低下して安定した製造が難しくなることなどから好ましくない。一方、50質量%未満であると、樹脂微粒子の膨潤もしくは溶解が十分に起こらずに、芯粒子に付着しにくくなるため、好ましくない。
【0048】
<脱溶工程>
得られた着色樹脂分散体から有機溶剤を除去するために、系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
あるいはまた、得られた着色樹脂分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶剤を完全に除去することも可能である。もしくは、着色樹脂分散体を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去しても良い。後の2つによる手段は、最初の1つ目の手段と併用することも可能である。
乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレードライヤー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分に目的とする品質が得られる。
【0049】
<熟成工程>
末端にイソシアネート基を有する変性樹脂を添加している場合には、イソシアネートの伸長・架橋反応を進めるために熟成工程を行っても良い。熟成時間は通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜65℃、好ましくは35〜50℃である。
【0050】
<洗浄工程>
上記の方法で得られた着色樹脂粒子の分散液には、着色樹脂粒子のほか、界面活性剤などの分散剤などの副材料が含まれている。このため、これから着色樹脂粒子のみを取り出すために洗浄を行う。着色樹脂粒子の洗浄方法としては、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本実施形態においては特に限定されるものではない。いずれの方法によっても着色樹脂粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合には、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法で着色樹脂粒子を取り出す工程を繰り返しても良いし、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて着色樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採っても良い。この洗浄に用いる水系溶媒は水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いるが、コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
【0051】
<乾燥工程>
洗浄された着色樹脂粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行い、水系媒体を除去することで着色樹脂粒子のみを得ることができる。乾燥方法としては、ドライヤー(スプレードライヤーを含む)、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。乾燥された着色樹脂粒子は最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。また、乾燥後の着色樹脂粒子は軟凝集をしており使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしても良い。
【0052】
<外添処理>
得られた乾燥後のトナー粉体は、これと帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子などの異種粒子とともに混合し、また混合粉体に機械的衝撃力を与える。これによって、トナー粉体表面に固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子(外添剤)の脱離を防止することができる。具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。なお本実施形態のトナーは、一成分現像剤として用いることもでき、またキャリアを含む二成分現像剤として用いることができる。二成分現像剤のキャリアとしては、公知のものを挙げることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下、「部」及び「%」は特にことわらない限り、それぞれ、質量部及び質量%を示す。
【0054】
[ポリエステル1の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物420部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物220部、テレフタル酸238部、アジピン酸46部、及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜18mmHgの減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸20部を添加し、常圧下、180℃で軟化点が100℃になるまで反応させて、[ポリエステル1]を合成した。得られた[ポリエステル1]は、ガラス転移温度Tgが56℃であった。
【0055】
[ポリエステル2の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物239部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物400部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部、及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜18mmHgの減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸20部を添加し、常圧下、180℃で軟化点が110℃になるまで反応させて、[ポリエステル2]を合成した。得られた[ポリエステル2]は、ガラス転移温度Tgが65℃であった。
【0056】
[ポリエステル3の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物50部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物630部、テレフタル酸260部、及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸20部を添加し、常圧下、180℃で軟化点が120℃になるまで反応させて、[ポリエステル3]を合成した。得られた[ポリエステル3]は、ガラス転移温度Tgが72℃であった。
【0057】
[プレポリマー1の合成]
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応させ、さらに1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、ガラス転移温度Tg55℃、酸価0.5、水酸基価49であった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]411部、イソホロンジイソシアネート89部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。
【0058】
[樹脂微粒子分散液1の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.8部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.5部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー170部、ブチルアクリレート30部、n−オクタンチオール1.4部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して固形分濃度が10%になるようにイオン交換水を追加し、[樹脂微粒子分散液1]を得た。得られた樹脂微粒子はガラス転移温度Tgが70℃、分子量Mwが42600であった。
【0059】
[樹脂微粒子分散液2の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.8部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.5部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー170部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート30部、n−オクタンチオール1.4部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して固形分濃度が10%になるようにイオン交換水を追加し、[樹脂微粒子分散液2]を得た。この樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが70℃、分子量Mwが42300であった。
【0060】
[樹脂微粒子分散液3の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム1.4部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.5部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー170部、ブチルアクリレート30部、n−オクタンチオール0.5部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して固形分濃度が10%になるようにイオン交換水を追加し、[樹脂微粒子分散液3]を得た。この樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが93℃、分子量Mwが98500であった。
【0061】
[樹脂微粒子分散液4の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.9部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム0.5部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー140部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート60部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して固形分濃度が10%になるようにイオン交換水を追加し、[樹脂微粒子分散液4]を得た。この樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが58℃、分子量Mwが427000であった。
【0062】
[樹脂微粒子分散液5の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.6部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.5部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー180部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート20部、n−オクタンチオール4.1部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して固形分濃度が10%になるようにイオン交換水を追加し、[樹脂微粒子分散液5]を得た。樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが58℃、分子量Mwが22000であった。
【0063】
[樹脂微粒子分散液6の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.6部、イオン交換水500部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.7部をイオン交換水100部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー180部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート20部のモノマー混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して固形分濃度が10%になるようにイオン交換水を追加し、[樹脂微粒子分散液6]を得た。樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが70℃、分子量Mwが109000であった。
【0064】
[マスターバッチ1の製造]
C.I.ピグメント・イエロー74:50部、ポリエステル2:50部、水:30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルベライザーで1mmの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【実施例1】
【0065】
(水相の調製)
イオン交換水970部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25wt%水性分散液60部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液180部、酢酸エチル100部を混合撹拌したところpH6.2となった。これに、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH9.5に調整し、[水相1]を得た。
【0066】
(ワックス分散液(WAX分散液とも言う)作製工程)
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[ポリエステル1]24部、[パラフィンワックス(融点72℃)]12部、酢酸エチル100部、ワックス分散剤として、スチレン・ポリエチレンポリマー(Tg=72℃、数平均分子量7100)8部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、ワックス(WAX)の分散を行い、[WAX分散液1]を得た。
【0067】
(油相作製工程)
[ポリエステル2]100部、[マスターバッチ1]18部、[WAX分散液1]30部、酢酸エチル80部をTKホモミキサー(特殊機化製)で8,000rpmにて30分間混合した後、[プレポリマー1]15部を加えTKホモミキサーで8,000rpmにて2分間混合して[油相1]を得た。得られた[油相1]の固形分を測定したところ60質量%であった。
【0068】
(芯粒子作成工程)
[油相1]100部に[水相1]100部を加え、ミキサーのせん断熱による温度上昇を抑えるために水浴で冷却をすることにより液中温度を20〜23℃の範囲になるように調整しながら、TKホモミキサーを用い回転数3,000で調整して2分間混合したのち、アンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数250rpmの間に調整しながら10分間攪拌し、芯粒子となる油相の液滴が水相に分散された[芯粒子スラリー1]を得た。
【0069】
(シェル化工程)
[芯粒子スラリー1]200部を、アンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数350rpmに調整して攪拌しながら、液温が22℃の状態で、[樹脂微粒子分散液1]40部を3分間かけて滴下した。30分間攪拌を続け、[複合粒子スラリー1]を得た。
【0070】
(脱溶工程)
撹拌機および温度計をセットした容器に、[複合粒子スラリー1]を投入し、攪拌を行いながら30℃で8時間脱溶剤を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0071】
(洗浄・乾燥工程)
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるように、この操作を繰り返した。
(3):(2)のリスラリー液のpHが4となる様に10%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで攪拌30分後、濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるように、この操作を繰り返し、[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[着色樹脂粒子1]を得た。
【0072】
(外添工程)
[着色樹脂粒子1]100質量部に対して無機微粒子であるキャボジル社製TS530を2.5質量部外添剤として添加し、ヘンシェルミキサーで混合処理し、トナー1を得た。
【0073】
実施例2〜10と比較例1〜3については、樹脂微粒子No.、結着樹脂No.、芯粒子作製工程のTKホモミキサー回転数、樹脂微粒子分散液の添加量、WAX分散液作製工程でのワックス分散剤の添加量を表1の通りにした以外は、実施例1と同様に作製した。
【0074】
【表1】

【0075】
<評価方法>
(形状指数SF−2)
トナーをエポキシ樹脂で包埋し、これをウルトラミクロトーム(ウルトラソニック)にて厚さ80nmにスライスしてトナーの薄片を作製し、トナー断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察し、得られた断面画像から画像解析式粒度分布測定ソフトウェア“Mac−View”(マウンテック社製)を用いて、20個以上のトナーに対してSF−2を計測した。
(トナー断面の形状を画像処理ソフトで解析する)
【0076】
(樹脂微粒子の平均埋没率)
トナーをエポキシ樹脂で包埋し、これをウルトラミクロトーム(ウルトラソニック)にて厚さ80nmにスライスしてトナーの薄片を作製して、四酸化ルテニウムで染色を施した。トナー断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察し、得られた断面画像から画像解析式粒度分布測定ソフトウェア“Mac−View”(マウンテック社製)を用いて、20個以上のトナーに対して埋没率を計測した。
芯粒子に埋没、もしくは付着しているコントラストの異なる樹脂微粒子の総面積と、そのうちトナー芯粒子に埋没している部分の面積を求め、両者から埋没率を導出した。第2の樹脂の粒径はトナー芯粒子の粒径より十分小さいとして、突起部の露出領域と埋没領域の境界は平面で近似した
(トナー断面から平均埋没率を計算する)
【0077】
(表面から300nm以内の樹脂微粒子含有率)
トナーをエポキシ樹脂で包埋し、これをウルトラミクロトーム(ウルトラソニック)にて厚さ80nmにスライスしてトナーの薄片を作製して、四酸化ルテニウムで染色を施した。これを走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察し、得られたトナーの断面画像から、トナー表面から300nmの距離になり得る領域におけるコントラストの異なる島状の樹脂の割合を算出した。計測には、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア[Mac−View](マウンテック社製)を用いた。サンプルとしては体積平均粒径に対して±10%以内のトナー100個を選択し、それぞれにトナー表面から300nmの領域における樹脂微粒子の存在割合を求め、平均した値を評価の値とした。
(トナー断面で計算)
【0078】
(ガラス転移点Tg)
ガラス転移温度TgはDSCを用いて測定した。
すなわち、セイコーインスツル社製のDSC6200を用い、150℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定した。
【0079】
(軟化点)
フローテスター(CFT−500/島津製作所社製)を用い、測定試料1.5gを秤量し、H1.0mm×φ1.0mmのダイを用いて、昇温速度3.0℃/min、予熱時間180秒、荷重30kg、測定温度範囲30〜160℃の条件で測定を行い、試料が1/2流出した時の温度をトナーの軟化点とした。
【0080】
(分子量Mw)
使用するポリエステル樹脂やビニル系共重合樹脂などの分子量は、通常のGPC(Gel Permeation Chromatography)によって以下の条件で測定した。
【0081】
・装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
・カラム:TSKgel SuperHZM−M x 3
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:0.35mL/分
・試料:濃度0.05〜0.6%の試料を0.01mL注入
【0082】
以上の条件で測定したトナー樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して質量平均分子量Mwを算出した。単分散ポリスチレン標準試料としては、5.8×10〜7.5×10の範囲のものを10点使用した。
【0083】
(クリーニング性)
リコー社製IpsioC220を用いて、5%チャートにて5000枚連続印字した際に、CCD顕微鏡カメラ(キーエンス社ハイパーマクロスコープ)によってクリーニング後の感光体のトナー付着を観察し、クリーニング時にトナーがブレードをすり抜けるクリーニング不良が発生したものを×、発生しなかったものを○としてクリーニング性の評価を行った。
【0084】
(固着評価方法)
フルカラープリンタLP−1500C(エプソン社製、非接触現像方式)を用いて、B/W比6%の所定のプリントパターンをN/N環境下(23℃、45%)で連続印字した。N/N環境下の2000枚連続複写後(耐久後)に現像器の現像ローラの状態および複写画像を目視により観察し、評価した。判定基準は以下の通りである。
◎:現像ローラ上にスジ、ムラの発生はなかった
○:現像ローラ上にスジあるいはムラが若干発生しているものの、複写画像上に縦スジがなく、実用上問題なかった
×:現像ローラ上にスジあるいはムラが多数発生しており、複写画像上に縦スジ状の抜けが発生し、実用上問題があった。
【0085】
(耐熱保管性)
ホソカワミクロン社製バウダーテスタ PT−Rを用いて、トナーの加速凝集度を測定した。篩は20μm、45μm、75μmの目開きのものを用いた。25℃50%環境24時間放置後と、40℃90%環境24時間放置後のトナーサンプルの加速凝集度を測定し、その値の差を評価した。
○・・・差が5.0%以内
△・・・差が5.0〜7.5%
×・・・差が7.5%以上
【0086】
(帯電性)
トナー(現像剤)をB/W(黒/白)比6%の所定のプリントパターンをN/N環境下(23℃、相対湿度45%)で連続印字した。N/N環境下の50枚および2000枚連続印字後(耐久後)に、白紙パターン印字中の現像ローラ上のトナーをトレック・ジャパン社製吸引式小型帯電量測定装置 MODEL 210HSで吸引し、電荷量を測定し、50枚後及び2000枚後の帯電量を評価した
○:帯電量差の絶対値が10μC/g未満
△:帯電量差の絶対値が10μC/g以上15μC/g未満
×:帯電量差の絶対値が15μC/g以上
【0087】
(定着分離性)
リコー製ipsio CX7500の定着機を取り外した改造機に、トナー5部とシリコーン樹脂コートキャリア95部を混合攪拌して作成した二成分現像剤を入れ、転写紙(リコー製タイプ6200Y目紙)に縦方向の先端余白3mmを有するベタ画像で、1.1±0.1 mg/cmのトナーが現像される様に調整を行ない、未定着状態の転写紙を6枚出力した。
【0088】
リコー製ipsio CX2500の定着部分のみを取り出し、定着ベルトの温度およびベルト線速度を所望の値になるように改造した定着試験装置を用い、ベルト線速度125mm/secに設定して、定着ベルトの温度を140℃から190℃の範囲で10℃刻みの温度で先端余白3mmのほうから転写紙の定着を行った。転写紙が定着ベルトに巻きついたり、定着機の出口で蛇腹のようになって詰まったりすることなく、正常に定着できた枚数によって、下記基準に基づき評価した。
○:正常に定着できた枚数が5枚以上
△:正常に定着できた枚数が4枚以下3枚以上
×:正常に定着できた枚数が2枚以下
【0089】
実施例及び比較例のトナー評価結果を表2に示す。また、品質評価結果を表3に示す。この表2において、前記式(1)の左辺(=A×0.3+15)と、右辺(=A×0.1+75)の値として示した。この表2において示されるように、実施例1〜10では、平均埋没率Bが式(1)に従い、全て、右辺より大きく、左辺より小さい範囲に入っている。
これに対し、比較例1では平均埋没率Bが左辺より大きくなっており、また比較例2では、平均埋没率Bが右辺より小さくなっている。よって比較例1〜3は外れていることが分かる。このように本実施形態では形状係数SF−2と粒状シェルの平均埋没率を規定することによって、帯電性が高く、耐久時においてもシェルの離脱を防止し、クリーニング不良の防止の両方を満足できる。なお左辺および右辺の2つずつの係数の算出方法は、それぞれ、左辺:A×α1+β1>B、右辺:B>A×α2+β2に実施例1〜10のA、Bを代入してそれぞれの2つの係数(左辺では係数α1とβ1、右辺では係数α2とβ2)の最適値を求めた。
【0090】
【表2】

【0091】
このようにして実施例1〜10は、前記式(1)で求められるAとBとの関係にある。
このような実施例1〜10および比較例1〜3の評価結果を以下に示す。
【0092】
【表3】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2006−276517
【特許文献2】特開2008−233430

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と離型剤と着色剤を含む芯粒子と、前記芯粒子表面に樹脂微粒子がシェルとして埋没して存在するコアシェル構造を有するトナーであって、
前記樹脂微粒子が前記芯粒子に埋没する比率である平均埋没率Bが、下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
式(1): A×0.3+15<B<A×0.1+75
(上記式(1)において、Aは前記トナーの形状指数SF−2を表す。)
【請求項2】
前記トナー表面から300nm以内のシェル含有率が、30〜80%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーのガラス転移温度Tgが、55℃以上70℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが、60℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記樹脂微粒子の重量平均分子量Mwが、30000以上50000以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記樹脂微粒子がビニル系樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記ビニル系樹脂を構成するモノマーの60〜100モル%が、スチレンであることを特徴とする請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
さらに外添剤を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のトナー。

【公開番号】特開2012−194511(P2012−194511A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60346(P2011−60346)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】