説明

トラクタのキャビン

【課題】 キャビン38の縦枠42の上部に設けるバックミラー53の振れに起因して、操縦者がバックミラーを覗く場合に見にくいという課題を解決する。
【解決手段】 前部壁42の機体左右側にて上下に延びる縦枠42aの上部と、天井フレーム48の前部とに、それぞれ下端と上端を固定する補強アーム71を設け、当該補強アーム71によって縦枠42aの上部に設けるバックミラー53の取付部を補強することで、エンジン等の振動によるバックミラー53の振動振幅が小さくなり、操縦者にとってバックミラー53を介しての視認性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクタのキャビンに関し、詳しくはフロントガラスを支持する前部壁のバックミラー取付部を補強したトラクタのキャビンに関する。
【背景技術】
【0002】
キャビン付トラクタにおいては、例えば、特許文献1に記載されているように、クラッチハウジングの側面にその基部を固定された門形の支持体であるアシストバーに、ボンネットの後端とダッシュボードの前部が固設されていて、このアシストバーの上面より延長して肩状に、キャビンの横幅に略々等しい長さの安全バーを突出させたものが公知である。この安全バーは、操縦者がキャビンの幅を忘れて畦際に機体を寄せ過ぎてしまい、キャビンが障害物に干渉しないようにする目印としての役目をなしている。また、前記安全バーには、ブラケットを介してバックミラーを取付け、該ブラケットに取付けた防振弾性体に、バックミラーの支持杆の段付部を挿入して固定した構造を有している。
【特許文献1】特開昭61−94875号公報(第2頁、図5,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1に記載の技術によると、ブラケットに取付けた防振弾性体に、バックミラーの支持杆を挿入して固定しているが、この支持杆を補強する手段は何もないため、エンジンの振動等に起因してバックミラーも振れてしまい、操縦者がバックミラーを覗く場合に見にくいという課題があった。
【0004】
本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、キャビンの縦枠の上部と天井板を連結してバックミラーの振動を防止したトラクタのキャビンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、走行機体(16)の前部にてフロントガラス(40)を支持する前部壁(42)と、走行機体の後部にてリアガラス(44)を支持する後部支柱(46)と、前記前部壁(42)と前記後部支柱(46)の上部間に架設された天井フレーム(48)と、前記後部支柱(46)に回動自在に支持されて、ノブ(51)の操作により操縦部(22)の乗降口を開閉する左右1対のサイドドア(50)と、を有するトラクタ(10)のキャビン(38)において、
前記前部壁(42)の機体左右側にて上下に延びる縦枠(42a)の上部と、前記天井フレーム(48)の前部とに、それぞれ下端と上端を固定する補強アーム(71)を設け、当該補強アーム(71)によって同じく縦枠(42a)の上部に設けるバックミラー(53)の取付部(57)を補強して、バックミラー(53)の振動を防止するように構成した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、キャビンの前部壁の機体左右側にて上下に延びる縦枠の上部と、天井フレームの前部とに、それぞれ下端と上端を固定する補強アームを設け、当該補強アームによって同じく縦枠の上部に設けるバックミラーの取付部を補強して、バックミラーの振動を防止するように構成したので、エンジン等の振動によるバックミラーに伝達される振動振幅が小さくなるため、操縦者は機体の走行状態でも明瞭に後方を視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0008】
図1は、キャビン付きトラクタの外観図であり、トラクタ10は、前輪12及び後輪14にて支持された走行機体16を有し、機体前方にはエンジン18を覆うボンネット20が装着され、エンジン18の下部には、機体後方に向けて一体的に延びるミッションケース21が取付けられている。また、ボンネット20の後方には、操縦部22が設けられていて、該ボンネット20と操縦部22との間部分には、給油口24を有する燃料タンク(図示せず)が配設されている。
【0009】
操縦部22には、足載せ用のメインステップ26の上方にステアリングホイール(図示せず)と座席シート28等が配設されていて、座席シート28の側方でかつフェンダフレーム30の内側には、主変速レバー32及び副変速レバー34が設けられている。
【0010】
なお、エンジン18の動力はミッションケース21に伝達され、該ミッションケース21の走行用の副変速機構(図示せず)が、副変速レバー34により変速操作されて左右の後輪14に伝達され、また、該副変速機構から分岐された動力は、プロペラシャフト(図示せず)を介して左右の前輪12に伝達される。
【0011】
キャビン38は、走行機体16の上部で、メインステップ26とフェンダフレーム30の上部に、操縦部22を覆うように配置されている。このキャビン38は、図2及び図3に示すように、操縦部22の前部のフロントガラス40を支持する前部壁42と、リアガラス44を支持する後部支柱46と、前部壁42と後部支柱46の上部間に架設された金属製の天井フレーム48と、後部支柱46に回動自在に支持されて、ノブ51の操作により操縦部22の乗降口を開閉する左右1対のサイドドア50,50とを有している。そして、前部壁42は合成樹脂から成ると共に、金属製から成る天井フレーム48の上部には、合成樹脂製の天井板49が支持されている。
【0012】
図4に示すように、前部壁42は、フロントガラス40を支持し、機体左右側にて上下に延びる左右の縦枠42a,42aと、上横枠42b、及び中央横枠42cを有していて、中央横枠42cには、図示しないメータパネルの取付け位置に対応する機体左右方向の略々中央部に、燃料タンク(図示せず)の給油口24を外部に露出する密閉凹部52が形成されている。この密閉凹部52により、キャビン38の内側と外側は、略々気密状態に区画されることとなり、キャビン38内の防音性及び耐シール性が向上する。
【0013】
また、上下に延びる左右の縦枠42aには、中央横枠42cよりも上方の左右両側に、操縦者が後方を視認可能な左右1対のバックミラー53が取付けられている。更に、左右の縦枠42aにおける中央横枠42cよりも下方の左右両側には、ドアキャッチ部材60が取付けられている。このドアキャッチ部材60は、縦枠42aにリベット61で固定された金具62と、該金具62に一体固定された取付ブラケット63と、該取付ブラケット63にボルトで固定されたドアキャッチ64とを有している。そして、サイドドア50を閉止する際、このドアキャッチ64に、サイドドア50の図示しないロック装置が係合する。
【0014】
前記取付ブラケット63には、該取付ブラケット63の取付けを補強する補強アーム66が取り付けられていて、この補強アーム66は中央横枠42cを通って機体内側に向けて略々水平方向に延設され、更にその端部は、ボンネット20を支持するボンネットフレーム67に固定されている。このボンネットフレーム67はボンネット20を支持するものである。
【0015】
このように、金具62と取付ブラケット63(いずれも鉄製)を有するドアキャッチ部材60を、補強アーム66を介してボンネットフレーム67に固定したので、サイドドア50を開閉するときにドアキャッチ部材60に加わる衝撃が、この補強アーム66を介してボンネットフレーム67に伝達され、該ボンネットフレーム67で吸収されるので、ドアキャッチ部材60を取付けている縦枠42aには衝撃が加わらず、よって衝撃による前部壁42の変形を防止することができる。
【0016】
また、上述した前部壁42の左右縦枠42aは、フロントガラス40の下方の機体左右側において、夫々中央横枠42cを挟んでアクリル製のフロント下窓69,69を支持している。
【0017】
本実施の形態では、前記前部壁42は、機体左右側にて上下に延びる前記縦枠42aと、該縦枠42aに形成されたバックミラー取付部57とを有し、該バックミラー取付部57にバックミラー取付部材を取付け、該バックミラー取付部材を、補強部材を介して天井フレーム48に固定した。
【0018】
図5乃至図7に示すように、合成樹脂製の縦枠42aにはバックミラー取付部57が形成され、このバックミラー取付部57に、バックミラー取付部材としての金属製の取付プレート70と、補強部材としての補強アーム71とが、ボルト72により共締め固定されている。そして、この補強アーム71は、縦枠42aに沿って上方に延設され、その先端部が折曲されてボルト73により金属製の天井フレーム48に固定されている。
【0019】
すなわち、合成樹脂製のバックミラー取付部57に、直接的に、金属製の取付プレート70を取付けると、取付部の強度が弱くなると共に、縦枠42aに加わる振動がそのままバックミラー53に伝達されるおそれがあるため、本実施形態では、バックミラー取付部57と取付プレート70との間に補強アーム71を介装したものである。
【0020】
このため、バックミラー53の取付構造が強固になり、エンジン18等からバックミラー53に伝達される振動振幅が小さくなり、よって操縦者は、機体走行中でもこのバックミラー53を覗くことで明瞭に後方を視認することができる。
【0021】
また、本実施形態では、補強部材としての前記補強アーム71は、前部壁42の縦枠42aに沿って上方に延設され、該補強部材を操縦部22の座席部分から見えないように配置した。
【0022】
すなわち、図3及び図5に示すように、バックミラー取付部57から、縦枠42aに沿って上方に延設された補強アーム71は、縦枠42aに隠れて見えないように配置されている。これは、操縦者が座席シート28に座った状態で、補強アーム71が見えると、この補強アーム71によって視界が妨げられるため、補強アーム71を縦枠42aに隠れて見えないように配置したものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用されたトラクタの外観斜視図である。
【図2】同上のキャビンの外観図である。
【図3】同上のキャビンを後方下部から見た外観図である。
【図4】前部壁の正面図である。
【図5】キャビンの側面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 トラクタ
16 走行機体
22 操縦部
38 キャビン
40 フロントガラス
42 前部壁
42a 縦枠
44 リアガラス
46 後部支柱
48 天井フレーム
53 バックミラー
57 バックミラー取付部
70 取付プレート
71 補強アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(16)の前部にてフロントガラス(40)を支持する前部壁(42)と、走行機体(16)の後部にてリアガラス(44)を支持する後部支柱(46)と、前記前部壁(42)と前記後部支柱(46)の上部間に架設された天井フレーム(48)と、前記後部支柱(46)に回動自在に支持されて、ノブ(51)の操作により操縦部(22)の乗降口を開閉する左右1対のサイドドア(50)と、を有するトラクタ(10)のキャビン(38)において、
前記前部壁(42)の機体左右側にて上下に延びる縦枠(42a) の上部と、前記天井フレーム(48)の前部とに、それぞれ下端と上端を固定する補強アーム(71)を設け、当該補強アーム(71)によって同じく縦枠(42a) の上部に設けるバックミラー(53)の取付部(57)を補強して、バックミラー(53)の振動を防止するように構成した、
ことを特徴とするトラクタのキャビン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−44655(P2006−44655A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301898(P2005−301898)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【分割の表示】特願2002−320293(P2002−320293)の分割
【原出願日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】