説明

トラックボール装置

【課題】ボールへの所定操作によって各種入力操作が可能なトラックボール装置に関し、非接触による回転検知が行われながら回転操作時のクリック感触も得られるものを提供する。
【解決手段】ボール10への回転操作時に、ローラ4に固定されて共廻りする磁石5の磁束変化をホールIC20により非接触で検出すると共に、その磁石5に磁性材料を含む吸引部材50の板状部52を近接配置して上記磁石5と上記板状部52との間の吸引力で上記ローラ4への回転規制力が働くようにし、それが上記ボール10を介して回転操作時のクリック感触として感じられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部に塔載され、ボールへの所定操作によって各種入力操作が可能なトラックボール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種入力操作用として用いられるトラックボール装置は、各種電子機器に多く搭載されるようになってきた。
【0003】
このような従来のトラックボール装置について、以下に図面を用いて説明する。
【0004】
図9は従来のトラックボール装置の断面図、図10は同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図、図11は同機構構成部の分解斜視図、図12は同トラックボール装置の上面図、図13は同トラックボール装置の左側面図である。
【0005】
同図を用いて当該トラックボール装置の機構構成部から説明していく。
【0006】
同図において、1は、略十字状に形成された樹脂製の上ケース、2は、上ケース1の下方に重ねて配置された同じく略十字状に形成された樹脂製の取付台である。
【0007】
上ケース1の上方には、重ねて金属板からなり中央部分に孔を有するカバー3の平板部が配されている。そのカバー3は、図10や図11などに示すように、平板部における側端部の一方の対向位置から各々垂下する第1脚部3A、またそれと直交する他方の対向位置から各々垂下する第2脚部3Cを有している。その第1脚部3Aの先端部には貫通孔3Bが配設されている。また第2脚部3Cの下端は、側方に延設されたカシメ爪部3Dとして構成されている。
【0008】
そして、そのカバー3における第1脚部3Aの貫通孔3B内に、取付台2の側面部に突設された突起2Aが嵌め込まれると共に、第2脚部3Cのカシメ爪部3Dが取付台2の側面段部に係止するようにカシメられることによって上ケース1と取付台2は結合状態となっている。
【0009】
そして、上ケース1の略十字状をなす側方への突出部分の各々には、下方開口の鉤形に形成された鉤状部1Aがそれぞれ一対で設けられている。その鉤状部1Aの下方開口部分が、ローラ保持部1B(図11参照)としてなり、ローラ保持部1Bの各々には、略円柱形状のローラ4が回転可能に収納保持されている。そのローラ4は、上面視で対向する二本ずつの二組が互いに直交する正方形状で四本配されている。各ローラ4の下方部分は、取付台2の上面で回転可能に支持されている。上記各ローラ4の中央部は、凹凸を有する当接部として構成されている。
【0010】
また、各ローラ4の一端部には、図13に示すように、所定角度ピッチ毎にN極とS極が交互に着磁された円形リング状の磁石5がそれぞれ各ローラ4と共廻りするように同軸状で固定されている。そして、その磁石5が、上ケース1および取付台2の十字における窪み部分に位置するように各ローラ4は配置されている。つまり、各ローラ4で構成される矩形の角部にそれぞれの磁石5は配されている。
【0011】
そして、10は、上ケース1と取付台2とで構成される内部空間内に配されているボールである。
【0012】
ここで上ケース1と取付台2とで構成される内部空間の構成について説明する。まず、上記内部空間における底部側を構成する取付台2の十字状中央位置には円形孔2Bが設けられている。その円形孔2B内には、一端側が円形孔2Bの側壁部分に埋設固定された片持ち状の板ばね6の他端側が配されている。その板ばね6の他端側は、下方への突出部6Aを備えた外形円形に形成され、その他端側によって上記ボール10は下方から押し上げられている。
【0013】
一方、上記内部空間を構成する上ケース1は、上方に突出した筒状部を有し、その筒状部の上端位置の円形に形成された上方孔部1Cの径は、上ケース1の上面中央位置でボール10径よりも少し小さい径で設定されている。そして、上方に板ばね6で付勢されたボール10は、上記上方孔部1Cの端部で上方への位置規制がなされ、その上部部分は、上方孔部1Cから外方に突出している。上記ボール10の配置状態で、ボール10と各ローラ4の当接部との間には、所定間隔が空く設定となっている。
【0014】
そして、上記ボール10は、下方向への押し下げ力が加わったときには、ボール10下端で板ばね6を押し下げて上ケース1と取付台2によって構成される内部空間内で上下移動可能となっている。
【0015】
当該トラックボール装置における機構構成部は、以上のように構成され、その機構構成部の下方位置には、配線基板15が配置され、図10や図13に示すように、その配線基板15の上面には磁気センサとしてのホールIC20と自力復帰型で節度付きのプッシュスイッチ25が実装されている。当該構成部分を配線基板構成部として呼称して以下に説明する。
【0016】
上記配線基板構成部のホールIC20は、各磁石5の配置位置に応じた上下で対向する位置のそれぞれに配置され、対応するローラ4の回転時に共廻りする各磁石5からの磁束変化に反応してオンオフ出力がなされるものである。
【0017】
また、上記配線基板構成部のプッシュスイッチ25は、ボール10の下方位置に対応する配線基板15上、つまりホールIC20で囲まれる中央部にあたる位置に配置されている。
【0018】
このプッシュスイッチ25は、図9に示すように、スイッチケース内に配された中央固定接点26Aおよび外側固定接点26Bと、中央部下面が中央固定接点26Aに所定間隔を空けて対峙するように、その外周下端が外側固定接点26B上に載せられた上方凸型ドーム状に構成された金属薄板製の可動接点27とからなるスイッチ接点部を備えている。上記可動接点27としては、中央部の反転動作時に節度感触が得られるものとなっている。
【0019】
上記のように当該トラックボール装置は構成されている。
【0020】
次に、当該トラックボール装置の動作について説明する。
【0021】
まず、トラックボール装置を操作していない図9に示す通常状態から、上ケース1の上方孔部1Cより上方に突出したボール10の上部を指等で触れてボール10を左方向に回転操作すると、図14に示すように、ボール10が板ばね6の他端側を押し下げ若干下方位置に下がりつつ左側に移動し、上記回転操作方向に対応する同図中の左側のローラ4の当接部とのみ当接して当該左側のローラ4を回転させる。この時、その他のローラ4は回転せず、またプッシュスイッチ25も作動されない。
【0022】
そして、この左側のローラ4の回転に伴い、左側のローラ4に固定された磁石5も共廻りして、当該磁石5に対応するホールIC20に、当該磁石5のNまたはS極が交互に接近を繰り返し、それに応じてホールIC20から所定出力が得られる。
【0023】
同様に、ボール10を右方向や前後方向に回転操作する場合は、上記と同様な動作をなし、所定のホールIC20から所定の出力が得られる。
【0024】
また、斜め方向にボール10を回転操作した場合は、ボール10は直交関係で位置する二つのローラ4に当接して両者を回転させ、同様に、二つのホールIC20から所定の出力が得られる。
【0025】
次に、図9に示す通常状態からボール10の上部を指などで押し下げ操作すると、ボール10は、板ばね6の他端側を押し下げつつ取付台2の円形孔2B方向に下がっていく。これに伴い、板ばね6の他端側に設けられた突出部6A下面でプッシュスイッチ25の中央部が下方に押圧される。
【0026】
そして、その押し下げ力が所定の値を超えると、図15に示すように、プッシュスイッチ25の可動接点27が節度感を伴いながら反転動作して、中央固定接点26Aと外側固定接点26B間が可動接点27を介して電気的に接続されたスイッチオン状態になる。
【0027】
その後、ボール10に加えた押し下げ力を除くと、プッシュスイッチ25の可動接点27が自らの弾性復元力により元の上方凸型のドーム形状に復元し、プッシュスイッチ25の中央固定接点26Aと外側固定接点26Bとの間は再び電気的な独立状態に戻ると共に、板ばね6の他端側も元の位置に復帰していき、板ばね6の復帰に伴ってボール10は上方に押し戻される。ボール10は、上ケース1の上方孔部1C端部に当接して停止し、元の図9に示す通常状態に戻るものであった。
【0028】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002−373055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、上記従来のトラックボール装置は、磁石5の回転状態をホールIC20により非接触で検出する構成であったため、ボール10への回転操作時に操作感触的に明快なものが得られず、操作性向上の観点より機器メーカー側からもボール10への回転操作時にクリック感触が得られるものへの開発要望が高まっていた。
【0030】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ボールへの回転操作時に発生する磁束変化を非接触で検出してローラの回転検知が行われつつ、その回転操作時にボールを介してクリック感触も得ることができる構成とされたトラックボール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0032】
本発明の請求項1に記載の発明は、ボールと、上記ボールへの回転操作時に上記ボールに接して回転する磁石付きローラと、上記ローラの回転に伴う磁束変化を検出するローラ回転検出用の検出素子と、上記ローラの磁石に対し所定間隔をあけて近接配置された磁性材料を含む吸引部材とを備え、上記ボールへの非操作時には上記磁石と上記吸引部材との間に発生する吸引力で上記磁石が引き付けられて上記ローラの停止状態が維持され、上記ボールへの回転操作時には、上記磁石と上記吸引部材との間に発生する吸引力が上記ローラの回転状態に影響を与えてその影響が上記ボールを介して回転操作時のクリック感触として感じられるトラックボール装置であり、ボールへの回転操作時に発生する磁束変化を非接触で検出してローラの回転検知が行われつつ、その回転操作時にボールを介してクリック感触も得られるものを実現することができるという作用を有する。
【0033】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、吸引部材が、板材からなる板状部で構成され、その板状部の先端が、ローラに固定されたN極とS極が所定角度ピッチで交互に着磁されたリング状の磁石の幅方向に対峙して配されたものであり、吸引部材が簡素な構成のものであるため、回転操作時に良好なクリック感触が得られるものを安価に提供できるという作用を有する。
【0034】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、板状部の端部が側面視くの字状に曲げ形成され、そのくの字の先端が磁石の回転中心軸方向に向けて配されたものであり、磁石の回転に伴う磁束変化が効率よく板状部に作用するものにでき、良好なクリック感触が得られるものにできるという作用を有する。
【発明の効果】
【0035】
以上のように本発明によれば、ボールの回転に追従し磁石付きのローラが回転した際の磁束変化を非接触状態で検出してローラの回転検知が行われつつ、その回転操作時にボールを介してクリック感触も得られるトラックボール装置を提供できるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0037】
なお、従来の技術の項で説明した構成と略同一構成の部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態によるトラックボール装置の外観斜視図、図2は同上面図、図3は同左側面図、図4は同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図、図5は同分解斜視図である。
【0039】
同図に示すように、本発明によるトラックボール装置は、上ケース1から上方に突出しているボール10の上部が操作部分となり、その機構構成部は、上ケース1、取付台2、磁石5付きのローラ4、板ばね6、ボール10から構成され、その構成や配置状態はほぼ従来と同じであるため詳細説明は省略する。なお、同図のものは、従来の金属製のカバーを用いず、上ケース1の外側壁に設けた係止突起31を取付台2の側板部に形成された窓部32内にスナップ係合して上ケース1と取付台2とが結合できる構成のものを例として図示している。
【0040】
また、上記ボール10は、非操作状態である通常状態では、取付台2に固定された板ばね6の他端側で上方に付勢され、正方形状に配置された四つの各ローラ4とは所定間隔が空く設定となり、かつその上方への付勢力に抗してボール10が押し下げ操作された際に上ケース1と取付台2によって構成される内部空間内で上下移動可能となっていることも従来と同じである。
【0041】
一方、上記機構構成部に組み合わせられる配線基板構成部は、図4などに示すように、配線基板40およびその配線基板40に配された四つのホールIC20とプッシュスイッチ25から構成されている。なお、上記ホールIC20やプッシュスイッチ25は、従来と同じもので、またそれらの配置位置としても従来と同じである。なお、図示した配線基板40のように外形を所定形状に加工されたものとする際には、コネクタなどを介して外部回路に電気的に接続可能な構成とすればよい。また、配線基板40をFPCで構成してもよく、この場合にはテール部付きのものとして外部回路に電気的に接続可能なものに容易に構成できる。
【0042】
そして、50は、配線基板40の下面から重ねて配されたSUS430などの磁性材料を含む板材からなる吸引部材であり、その形状としては、略正方形に形成された矩形部51の角部近傍位置に各磁石5に対応する板状部52が所定幅で上方に曲げ形成されている。上記各板状部52は、それぞれに応じて配線基板40に配された長方形孔部41に下方から挿入されている。なお、この吸引部材50は、取付台2の底部に突設されたカシメ用突起を配線基板40および矩形部51に同軸で設けた孔に挿通させ、そのカシメ用突起の下端部を矩形部51の下面側にカシメ固定することにより結合されている。
【0043】
そして、板状部52は、上端中間位置で側面視くの字状に曲げ形成され、そのくの字の先端が、対応する磁石5の幅方向側の外周面に僅かな隙間をあけてその外方位置に近接配置されている。このとき、図6や図7にも示すように、板状部52の先端が磁石5の回転中心軸線に向けられ、かつ、磁石5の外周面の幅方向における全長の殆ど全てに亘って上記先端が対峙する構成としておくと、上記磁石5からの磁束が板状部52の先端に効率よく作用するようになる。
【0044】
以上のように本発明のトラックボール装置は構成され、その回転操作時には、突出したボール10上部を指等で触れてボール10を回転操作、またはボール10を押し下げ操作して使用される。なお、ボール10への押し下げ操作に応じた動作は従来と同じであるため説明は省略する。
【0045】
まず、当該トラックボール装置が操作されていない通常状態である非操作状態から説明する。
【0046】
この非操作状態では、ボール10は、板ばね6の他端側で押し上げられて上ケース1の上方孔部IC端部に当接して停止しており、ボール10と各ローラ4の当接部との間、またボール10とプッシュスイッチ25との間には所定間隔が維持されている。
【0047】
また、この非操作状態では、各ローラ4に設けられたそれぞれの磁石5は、図6にも示すように、一つのN極(またはS極)と板状部52の先端との間での吸引状態となっている。すなわち、この状態では、上記磁石5のN極(またはS極)に僅かな間隔をあけ、かつその回転中心軸に向かって対峙する板状部52の先端面などを介して上記磁石5のN極(またはS極)表面から垂直に発生する磁束が板状部52の先端に大きく作用し上記先端がS極(またはN極)に磁化されて上記磁石5のN極(またはS極)との吸引状態となると共に、その先端の磁化に応じて、くの字の曲げ部分近傍がN極(またはS極)に磁化された状態となる。
【0048】
そして、上記板状部52の磁化状態に応じて発生する吸引力でローラ4は外方の板状部52側に引き寄せられる。これにより、ローラ4は、回転可能に保持された内壁面などに強く当接した状態となって回転規制力が働いた停止状態で安定的に維持され、各ローラ4の不要な回転の防止がなされる。
【0049】
なお、吸引部材50の板状部52の形状であれば、板状部52の先端側の端部部分は、磁石5からの磁束が通りやすくて大きく磁化され、当該部分以外は上記磁石5から離れた位置でその磁束の影響を受け難い角度配置のものにもなるため、例えば板状部52の根元部分や矩形部51は上記磁束の影響を余り受けず、板状部52どうしでの間の影響は殆ど発生しない。なお、板状部52としては、上記吸引力にまけてその配置状態などが変わらないように、その材厚や幅寸法などを適宜設定し、板状部52の固定状態が維持されるようにしておくことも重要である。
【0050】
そして、ボール10を回転操作すると、機構構成部が従来同様の動作をなし、ボール10と当接した操作方向に対応するローラ4およびそれに固定された磁石5が回転する。これにより、その下方に対向して配されたホールIC20に上記磁石5のNまたはS極が交互に接近を繰り返し、その磁束変化によりホールIC20から所定出力が得られ、その信号でローラ4つまりボール10の回転方向や回転量が非接触状態で検出できる。
【0051】
また、上記回転操作時に、磁石5のN極またはS極は板状部52の先端にも交互に接近を繰り返して回転操作時のクリック感触が生成されることとなる。
【0052】
その詳細を以下に説明する。
【0053】
まず、非操作状態では、上述したように、磁石5は一つの磁極の中心角度位置が板状部52の先端に対峙した吸引状態で安定して停止している。例えば、上記の図6に示した状態では、磁石5のN極に対峙した上記板状部52の先端はS極に磁化され、それに対峙する磁石5のN極との吸引力による作用でローラ4には回転規制力が働いた状態となっている。
【0054】
上記状態から回転操作を行ってローラ4つまり磁石5を回転させていくと、図7に示すように上記N極に隣り合うS極との境の位置に板状部52の先端が対峙する状態となり、この状態では、板状部52の先端付近の磁束方向は、板状部52を上下方向に貫通していく方向となる。その磁束方向では、板状部52の先端は、上面側がS極、下面側がN極に若干磁化された状態になるが、その磁化状態では磁石5との大きい吸引力は働かず、これにより、磁石5と板状部52間での吸引状態が解除された状態、つまりローラ4に働く回転規制力が小さくローラ4が軽く回転可能な状態となる。尚、図8に板状部52の先端付近に働く磁束密度とローラ4に働く回転規制力の関係を示す。
【0055】
さらに続いて磁石5が回転すると、上記S極の中心角度位置が板状部52の先端に対峙する状態となる。この状態では上記磁石5のS極に僅かな間隔をあけて対峙した板状部52の先端面などを介して再び板状部52の先端に磁束が大きく作用するようになり、板状部52の先端がN極に磁化されて上記磁石5のS極との吸引状態となると共に、くの字の曲げ部分近傍が先端の磁化に応じてS極に磁化された状態となる。これにより、ローラ4は、再び回転可能に保持された内壁面などに強く当接する状態、つまり再びローラ4に回転規制力が働く状態となる。
【0056】
さらに磁石5が回転すると、上記S極と次のN極の境の位置に板状部52の先端が対峙し、上記同様に磁束方向の変化に伴いローラ4の回転規制力が小さくなり、続いて上記N極に板状部52の先端が対峙するとローラ4の回転規制力が大きくなる。
【0057】
上記動作の繰り返し中に発生するローラ4の回転規制力の差は、当該ローラ4に当接したボール10を介して操作する指などに回転操作時のクリック感触として感じられるものとなる。このとき、上記板状部52の形状や配置状態とすれば、磁石5の回転に伴う磁束変化が効率よく板状部52の先端に作用するものにでき、良好なクリック感触が得られるものにできる。
【0058】
以上のように、当該トラックボール装置は、ローラ4の回転検出が非接触で行えると共に、その回転検出時に発生する磁束変化を有効利用して回転操作時のクリック感触が得られるものとして実現することができる。そして、上記クリック感触を得るための構成部分としても、簡素に構成された吸引部材50の板状部52を磁石5に近接配置するのみというものであるため、コスト的にも安価に構成できる。なお、上記にはローラ4の回転検出をホールIC20で行うものを説明したが、その検出素子は他のものであってもよい。
【0059】
そして、吸引部材50も、SUS430以外に、鉄・ニッケルなどの磁性材料を含むもので形成されてあってもよい。場合によっては、それらがメッキ処理されたものでもよい。さらには、磁石で構成されていてもよい。
【0060】
そして、上述したように当該トラックボール装置の下面をほぼ全面で覆う矩形部51を有する吸引部材50の形状であれば、下方側への磁気遮蔽もなされたものにでき好ましい。また、磁石5毎に対応する板状部52を上記矩形部51に一体で設けると、板状部52を高精度に容易に構成できると共に、各磁石5に対して一括して板状部52を精度よく配置することも容易にできるため、組み立て性なども良好なものとなる。また、各板状部52をそれぞれの磁石5の外方位置に配すると、若干投影面積は大きくなるものの側方への磁気遮蔽もなされて好ましい。
【0061】
なお、板状部52の形状としても、側面視くの字に曲げ形成されたもののみに限定されることはない。
【0062】
また、上記には板状部52を備えた吸引部材50を事例として説明したが、吸引部材の形状はそれに限定されることもない。例えば、吸引部材となる磁性材料を含む部材が機構構成部の構成部材にインサート成形などで固定されて磁石に近接配置されたものなど、磁石の回転に伴って発生する磁束変化を基にローラの回転規制力の大小が発生するように配置されたものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によるトラックボール装置は、ボールへの回転操作時に発生する磁束変化を非接触で検出してローラの回転検知が行われつつ、その回転操作時にボールを介してクリック感触も得られるものが実現でき、各種電子機器の入力操作部を構成する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態によるトラックボール装置の外観斜視図
【図2】同上面図
【図3】同左側面図
【図4】同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図
【図5】同分解斜視図
【図6】同要部である板状部の先端に磁石のN極が近接した状態を示す部分拡大側面図
【図7】同要部である板状部の先端に磁石の隣り合うN極とS極の境が近接した状態を示す部分拡大側面図
【図8】同要部である板状部の先端に働く磁束密度とローラに働く回転規制力の関係を示す図
【図9】従来のトラックボール装置の断面図
【図10】同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図
【図11】同機構構成部の分解斜視図
【図12】同トラックボール装置の上面図
【図13】同トラックボール装置の左側面図
【図14】同回転操作状態を示す断面図
【図15】同押し下げ操作状態を示す断面図
【符号の説明】
【0065】
1 上ケース
1C 上方孔部
2 取付台
4 ローラ
5 磁石
6 板ばね
10 ボール
20 ホールIC
25 プッシュスイッチ
31 係止突起
32 窓部
40 配線基板
41 長方形孔部
50 吸引部材
51 矩形部
52 板状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールと、上記ボールへの回転操作時に上記ボールに接して回転する磁石付きローラと、上記ローラの回転に伴う磁束変化を検出するローラ回転検出用の検出素子と、上記ローラの磁石に対し所定間隔をあけて近接配置された磁性材料を含む吸引部材とを備え、上記ボールへの非操作時には上記磁石と上記吸引部材との間に発生する吸引力で上記磁石が引き付けられて上記ローラの停止状態が維持され、上記ボールへの回転操作時には、上記磁石と上記吸引部材との間に発生する吸引力が上記ローラの回転状態に影響を与えてその影響が上記ボールを介して回転操作時のクリック感触として感じられるトラックボール装置。
【請求項2】
吸引部材が、板材からなる板状部で構成され、その板状部の先端が、ローラに固定されたN極とS極が所定角度ピッチで交互に着磁されたリング状の磁石の幅方向に対峙して配された請求項1記載のトラックボール装置。
【請求項3】
板状部の端部が側面視くの字状に曲げ形成され、そのくの字の先端が磁石の回転中心軸方向に向けて配された請求項2記載のトラックボール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−26026(P2007−26026A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206449(P2005−206449)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】