説明

トラック用ドア材

【課題】耐食性、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性及び耐摩耗性に優れるトラック用ドア材を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために本発明のトラック用ドア材1はトラック3の車体の一部、あるいはトラック3の貨物室7の一部として配設され、少なくとも芯材13と表面材15とを備えており、上記表面材15として基材17の表面にフッ素樹脂フィルム19を貼設した複合フィルムを適用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの車体の一部、あるいはトラックの貨物室の一部に設けられるドア材に係り、特に、耐食性、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性及び耐摩耗性等に優れる積層構造に特徴を有するトラック用ドア材に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍車、保冷車、バン型車等に適用されていた従来のトラック用ドア材には、表面材としてアルミ板やステンレス板等の金属製材料が多く使用されていた。
また、寒冷地では融雪剤や路面凍結防止剤として路面に塩化ナトリウムや塩化カルシウム等を散布することが行われており、このような融雪剤や路面凍結防止剤が路面から跳ね上がり、上記金属製材料によって形成されている表面材に付着すると表面材が腐食し、ピンホール状の穴が空いてトラック用ドア材の修理や交換が余儀なくされる。
【0003】
また、表面材としてガラス繊維強化プラスチック(以下FRPという)を適用したトラック用ドア材も登場してきている。FRPは上記金属製材料のような腐食は問題とならないが、耐候性に劣るため、変色や劣化を防止するために表面に塗装を施すことが行われている。
また、FRP自体は常温では耐衝撃性に優れるものの、衝撃によりあるいは低温下で表面の塗膜に割れや剥がれが生じた場合には上述した変色や劣化が起こり、FRPの耐衝撃性は大きく低下してしまう。
【0004】
一方、貯水槽等の壁材の分野では下記の特許文献1に示すようにFRPの表面にフッ素樹脂フィルムを貼設するという試みも実施されている。
フッ素樹脂フィルムは耐候性、耐薬品性に優れるが、単体では機械的強度に劣るため、単にFRPの表面に貼設しただけでは衝撃により上記塗膜と同様の割れや剥がれが生じてFRPの変色や劣化を招いてしまう。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−89322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はフッ素樹脂フィルムの有する上記耐候性、耐薬品性に着目し、該フッ素樹脂フィルムを衝撃や摩耗を受け易いトラック用ドア材の表面材として適用できるようにするために表面材の機械的強度を高めてトラック用ドア材の特性を向上させることを課題とする。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、耐食性、耐候性、耐薬品性に加え、耐衝撃性や耐摩耗性に優れ、汚れが付着しにくく、軽量化が可能で、安価、且つ廃棄が容易で環境にも優しいトラック用ドア材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1によるトラック用ドア材は、トラックの車体の一部、あるいはトラックの貨物室の一部として配設され、少なくとも芯材と、該芯材の表面側に貼設される表面材とを備えたトラック用ドア材において、上記トラック用ドア材は表面材として基材の表面にフッ素樹脂フィルムを貼設した複合フィルムを適用したことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2によるトラック用ドア材は、請求項1記載のトラック用ドア材において、上記フッ素樹脂フィルムはポリフッ化ビニリデンをベースにした複合プラスチックフィルムによって構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3によるトラック用ドア材は、請求項1または2記載のトラック用ドア材において、上記基材は、ポリプロピレンシートであることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4によるトラック用ドア材は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のトラック用ドア材において、上記芯材は、木製合板によって形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
そして上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、芯材の表面に直接、フッ素樹脂フィルムを貼設するのではなく、基材を介して貼設するようにしたことにより、トラック用ドア材に作用した衝撃は基材によって吸収され、低減される。
また、フッ素樹脂フィルムとしてポリフッ化ビニリデンをベースにした複合プラスチックフィルムを適用した場合には、トラック用ドア材に照射される紫外線等は当該複合プラスチックフィルムによって遮蔽される。
【0013】
あた、基材としてポリプロピレンシートを適用した場合にはフッ素樹脂フィルムに対するポリプロピレンシートの補強作用によって表面材全体の機械的強度が増強される。
また、芯材として木製合板を適用した場合には金属製材料を適用した場合と異なり、表面材が損傷した場合でも腐食は生じないからトラック用ドア材の耐食性の低下は起こらない。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトラック用ドア材によると、表面材として基材の表面にフッ素樹脂フィルムを貼設した複合フィルムを適用しているから、耐食性、耐候性、耐薬品性に優れ、しかも、衝撃によって最表面に位置するフッ素樹脂フィルムが損傷を受けたとしても、基材の存在によって芯材の露出が防止され、芯材が受けるダメージが大幅に低減されるからトラック用ドア材の耐衝撃性及び耐摩耗性が向上する。
【0015】
また、フッ素樹脂フィルムをポリフッ化ビニリデンをベースにした複合プラスチックフィルムによって構成した場合には、当該複合プラスチックフィルムの有する優れた遮蔽作用によって、トラック用ドア材の耐候性及び耐薬品性が向上し、トラック用ドア材に対する汚れの付着も低減される。
【0016】
また、基材をポリプロピレンシートによって構成した場合には、フッ素樹脂フィルムとの接着が容易であり、ポリプロピレンシートの有する衝撃吸収作用によってトラック用ドア材の耐衝撃性及び耐摩耗性が向上し、耐食性、耐候性及び耐薬品性も向上する。
【0017】
また、芯材を木製合板によって形成した場合には、腐食等の問題が生じないからトラック用ドア材全体の耐食性が格段に向上し、安価で廃棄が容易なトラック用ドア材が提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図示の実施の形態を例にとって、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明のトラック用ドア材をトラックの貨物室の後部ドアに適用した実施の形態を示すトラックを背後から見た状態の斜視図、図2は本発明のトラック用ドア材の積層構造を示す分解斜視図、図3はトラック用ドア材の積層構造を模式的に示す部分側断面図、図4はトラック用ドア材の他の積層構造を模式的に示す部分側断面図、図5はトラック用ドア材に適用可能が芯材の種々の態様を示す部分側断面図、図6は促進曝露試験の曝露前後の状態を示す表面劣化状態図、図7はディュー・サイクル試験機を使用した色差試験の結果を示すグラフ、図8は屋外集光式促進曝露試験機を使用した色差試験の結果を示すグラフである。
【0019】
本発明のトラック用ドア材1は、図1に示すようにトラック3の荷台5に搭載される貨物室7の後面部9に対して一例として設けられる。トラック3の種類は冷凍車、保冷車、バン型車等種々のタイプに適用でき、トラック3の大きさも軽自動車、普通車、中型車、大型車等、種々の大きさのトラック3に適用可能である。
また、貨物室7はトラック3の車体と一体になったワンボックスタイプ、トラック3の荷台5上に独立して固定設置される独立ボックスタイプ、貨物室7ごと荷上げ、荷下ろしができるコンテナタイプ、他に幌式、ウイング式等、種々のタイプの貨物室7に適用可能である。
【0020】
また、貨物室7の後面部9には荷台5の後端部から上方に向けて門型のフレーム11が立ち上げられており、このフレーム11に対して本発明のトラック用ドア材1が観音開き状に開閉するように左右一対、取り付けられている。
本発明のトラック用ドア材1は少なくとも芯材13と、該芯材13の表面側に貼設される表面材15とを備えており、更に表面材15として基材17の表面にフッ素樹脂フィルム19を貼設した複合フィルムを適用している。
【0021】
また、芯材13の裏面側には裏面材21が貼設されており、本実施の形態では裏面材21を上記表面材15と同様、基材17の表面にフッ素樹脂フィルム19を貼設した複合フィルムによって構成している。
フッ素樹脂フィルム19としては二フッ化のポリフッ化ビニリデン(以下PVDFという)をベースにした複合プラスチックフィルムが一例として適用できる。具体的には電気化学工業株式会社製造の商品名「デンカDXフィルム」が本発明のトラック用ドア材1における好適なフッ素樹脂フィルム19として使用可能である。
尚、フッ素樹脂には他に一フッ化、三フッ化、四フッ化のものがあるが、このうち一フッ化のものは条件が許せば本発明のトラック用ドア材1に使用するフッ素樹脂フィルム19として使用可能である。
【0022】
「デンカDXフィルム」はPVDF特有の耐候性、耐汚染性、耐薬品性に加え、従来のフッ素系フィルムでは困難とされていた基材17との接着をフィルムの多層化構造によって容易にしたものである。
「デンカDXフィルム」の特長は、耐候性に優れ、紫外線から基材17及び芯材13を保護し、耐薬品性、耐汚染性についても優れた効果を発揮する。また、接着性にも優れ塩化ビニル、アクリル、ポリカーボネート等との熱接着が可能になっており、トラック3の幌や自動車の内外装材料としては既に使用実績を有している。
そして、本実施の形態ではフィルム厚が約40μmの「デンカDXフィルム」をフッ素樹脂フィルム19として使用した。
【0023】
基材17としては、低温化でも安定した機械的強度を発揮でき、安価であり、環境に与える影響が少なく廃棄が容易なポリプロピレンシートが一例として適用できる。
そして本実施の形態では基材17として厚さが約0.6mmのポリプロピレンシートを一例として使用し、次に述べる芯材13の表裏両面に接着剤A(一例としてエポキシ系接着剤)を使用して接着した。
またそれぞれの基材17、17の表面には接着剤B(一例としてウレタン系接着剤)を使用して上記フッ素樹脂フィルム19、19を接着することで表面材15ないし裏面材21を形成している。
【0024】
そしてこのようにして形成された表面材15と裏面材21の厚さは接着剤A、Bの層の厚さを含めても約0.65mmと極めて薄く、比重も0.92と極めて軽くなっている。因みに0.6mm厚のホワイトアルミ板の比重が約2.73であるから、これと比較しても表面材15及び裏面材21の大幅な軽量化に貢献し得ることが容易に理解される。
尚、基材17としては、他にポリエステル、塩化ビニル、ABS樹脂、ナイロン等も適用可能であるが、このうち塩化ビニルは環境に与える影響が大きく廃棄が困難であり、ナイロンは高価であることから基材17の材料としては好適ではない。
【0025】
芯材13としては厚さ4〜21mm程度の木製合板23が図2、3、5(a)に示すように適用可能である。上記木製合板23は安価であり、広く流通しているから入手が容易である。また、金属製材料のような腐食の問題がなく、FRPのような低温化での機械的強度の低下も見られないことからトラック用ドア材1の芯材13として好適な材料ということが言える。
この他、芯材13としては図5(b)に示すようなプラスチック成形品25、図5(c)に示すようなポリスチレン等の発泡体27、図5(d)に示すような金属コルゲート板29等も適用可能である。そして、これらの材料を使用した場合には芯材13ないしトラック用ドア材1全体の軽量化が図られる。
【0026】
また、裏面材21については耐食性や耐候性あるいは耐衝撃性や耐摩耗性は必ずしも要求されないから図4に示すように単一な材料によって構成することも可能である。この場合には、裏面材21を例えば板厚が0.25〜0.6mm程度のアルミ板によって形成したり、ガルバリウム鋼板やステンレス鋼板によって形成することが可能である。また、単に芯材13の裏面を被覆するだけのFRPシートやポリプロピレンシート等のプラスチックシートによって裏面材21を構成することも可能である。裏面材21を芯材13に接着する接着剤としては上記接着剤A(一例としてエポキシ系接着剤)が使用できる。
【0027】
次に上記「デンカDXフィルム」の特性を明らかにするために行った比較試験の結果について説明する。尚、この比較試験では芯材13に鋼板を使用し、鋼板の表面に「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングしたものと、鋼板の表面にポリフッ化ビニル(以下PVFという)フィルムをラミネートコーティングしたものを比較対象とし、加工密着性、耐食性、耐薬品性、耐溶剤性、耐汚染性、耐摩耗性及び耐候性の各項目について比較試験を行った。そして表1に示すような試験結果が得られた。具体的には耐汚染性、耐摩耗性及び耐候性の項目について「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板の方がPVFフィルムをラミネートコーティングした鋼板よりも特性が優れていることが確認された。
【0028】
【表1】

【0029】
次に上記項目のうち、耐食性と、耐薬品性と、耐候性とをとり上げて、これらの項目について行った比較試験の内容と比較試験の結果について具体的に説明する。
耐食性については表2に示すようにJIS Z 2371に規定する塩水噴霧試験と、JIS Z 9117に規定する耐湿性試験を実施した。
【0030】
塩水噴霧試験では温度35±2℃の5%食塩水に2000時間「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板を浸して平坦部と90°折曲部とで異常の有無を確認した。いずれの部位でも異常は確認されなかった。
耐湿性試験では温度49℃、湿度98%RH以上の噴囲気下に2000時間「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板を浸して平坦部と90°折曲部とで異常の有無を確認した。上記塩水噴霧試験と同様、いずれの部位でも異常は確認されなかった。
【0031】
【表2】

【0032】
耐薬品性については表3に示すようにJIS K 6744に準拠して10%塩酸、10%硫酸、5%酢酸、10%カセイソーダ及びアセトンの5種類の薬品中に試験片を1000時間浸漬後、表面状態の変化の有無を調べた。尚、試験片の端部と裏面にはシールを施した。
10%塩酸、10%硫酸、5%酢酸、10%カセイソーダ中では、「デンカDXフィルム」でラミネートコーティングした鋼板と、PVFフィルムでラミネートコーティングした鋼板の2種類の試験片には共に異常は見られなかった。
【0033】
これに対し、アセトン中では「デンカDXフィルム」でラミネートコーティングした鋼板には表面に小じわが生じ、PVFフィルムでラミネートコーティングした鋼板にはフィルムの剥離が確認された。従って、耐薬品性については「デンカDXフィルム」でラミネートコーティングした鋼板の方がPVFフィルムでラミネートコーティングした鋼板より特性が優れているということが確認された。
【0034】
【表3】

【0035】
耐候性については図6に示す促進曝露試験による表面劣化状態の観察と、図7に示すディュー・サイクル試験機を使用した色差試験と、図8に示す屋外集光式促進曝露試験機を使用した色差試験を実施した。
促進曝露試験による表面劣化状態は図6に示すようになり、「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板では曝露前と曝露後とで大きな変化が見られなかった。一方、PVFフィルムをラミネートコーティングした鋼板では曝露前と曝露後とで表面状態に大きな変化が見られ、図示のように劣化の発生が明確に確認された。
【0036】
ディュー・サイクル試験機を使用した色差試験では図7に示すように厚さ40μmの「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板と、厚さ38μmのポリフッ化ビニルフィルムをラミネートコーティングした鋼板と、厚さ50μmのアクリルフィルムをラミネートコーティングした鋼板と、厚さ150μmの塩化ビニルフィルムをラミネートコーティングした鋼板との4つの試験片を使用した照射時間に対する色差の変化を計測した。
図7に示すように「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板の場合が最も色差変化が少ないことが確認された。
【0037】
屋外集光式促進曝露試験機を使用した色差試験では図8に示すように厚さ40μmのダークブルーの「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板と、厚さ40μmのライトグリーンの「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板と、厚さ40μmのダークブルーのPVFフィルムをラミネートコーティングした鋼板と、厚さ40μmのライトグリーンのPVFフィルムをラミネートコーティングした鋼板との4つの試験片を使用して照射量に対する色差の変化を計測した。
【0038】
図8に示すように照射量100(百万ラングレー)くらいから「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板と、PVFフィルムをラミネートコーティングした鋼板との間に徐々に変化が現れ、照射量200(百万ラングレー)以上では「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板の方がPVFフィルムをラミネートコーティングした鋼板よりも圧倒的に色差変化が少ないことが確認された。
また「デンカDXフィルム」の色はダークブルーよりもライトグリーンの方が色差変化が少ないことが確認された。以上の各試験によって耐候性については「デンカDXフィルム」をラミネートコーティングした鋼板がPVFフィルムをラミネートコーティングした鋼板に比べて特性が格段に優れていることが確認された。
【0039】
次に耐衝撃性と耐摩耗性について行った比較試験の内容と比較試験の結果について具体的に説明する。
試験片としては木製合板の表面に「デンカDXフィルム」を貼設した複合パネルと、表面に塗装を施したFRP合板とを使用し、試験機器としてはテスター産業製のテーバー式摩耗試験機(AB−101)と、島津製作所のデュポン式衝撃試験器を使用してJIS K 5400−1999に規定する耐摩耗試験と、JIS K 5400−1990に規定する耐衝撃性試験を実施した。
【0040】
そして耐摩耗試験では、ゴム製摩耗輪に研磨紙を巻いて1kgのおもりを荷重部に取り付けて耐摩耗試験を実施した。ゴム製摩耗輪の回転速度は70±3rpmであり、500回転後の試験片(各3枚)の質量変化を測定した。
また、耐衝撃試験では、撃ち型と受け台の寸法を6.35mmとし、1000gのおもりを50cmの高さから落下させて試験片(各3枚)の外観の変化を観察した。
【0041】
比較試験の結果は表4のようになり、「デンカDXフィルム」を貼設した複合パネルでは耐摩耗試験後の質量変化が1枚目が−0.049g、2枚目が−0.046g、3枚目が−0.045g、3枚の平均が−0.047gであった。
一方、FRP合板では耐摩耗試験後の質量変化が1枚目が−0.407g、2枚目が−0.214g、3枚目が−0.388g、3枚の平均が−0.336gであった。
従って「デンカDXフィルム」を貼設した複合パネルの質量変化はFRP合板の質量変化の約7分の1であり、「デンカDXフィルム」を貼設した複合パネルの方がFRP合板より耐摩耗性が格段に優れていることが確認された。
【0042】
また、耐衝撃試験後の試験片の外観変化は、「デンカDXフィルム」を貼設した複合パネルではすべての試験片について直径約17mm、深さ約0.28mmの凹みの発生が確認されたものの、表面の割れや剥れは確認されなかった。
一方、FRP合板ではすべての試験片について塗膜の割れと塗膜の剥れが確認された。
従って「デンカDXフィルム」を貼設した複合パネルの方がFRP合板より耐衝撃性が優れていることが確認された。
【0043】
【表4】

【0044】
以上の構成、比較試験の結果を踏まえ、本発明のトラック用ドア材1の作用を説明する。まず、芯材13の表面に直接、フッ素樹脂フィルム19を貼設するのではなく、基材17を介して貼設するようにしたことにより、トラック用ドア材1に作用した衝撃は基材17によって吸収され、低減される。
またトラック3の走行中、路面に散布されていた凍結防止剤等が跳ね上がってトラック用ドア材1に付着したとしてもフッ素樹脂フィルム19の有する優れた耐食性と耐薬品性とによって芯材13への進入は防止されている。
【0045】
また、フッ素樹脂フィルム19の有する優れた耐候性によって紫外線等を浴びることによって生ずる表面の劣化や色落ちも防止されている。
また、基材17としてポリプロピレンシートを適用したことによってフッ素樹脂フィルム19の補強作用が得られ、表面材15全体の機械的強度が増強されている。
また、芯材13として木製合板23を適用したことによって、金属製材料を芯材13に適用した場合と異なり、表面材15がたとえ損傷した場合でも芯材13の腐食は生じないからトラック用ドア材1の耐食性の低下は起こらない。
【0046】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。まず、表面材15として基材17の表面にフッ素樹脂フィルム19を貼設した複合フィルムを適用しているから、耐食性、耐候性、耐薬品性に優れ、しかも衝撃によって最表面に位置するフッ素樹脂フィルム19が損傷を受けたとしても、基材17の存在によって芯材13の露出が防止され、芯材13が受けるダメージが大幅に低減される。従って上記表面材15の存在によってトラック用ドア材1の耐衝撃性及び耐摩耗性は大幅に向上する。
【0047】
また、フッ素樹脂フィルム19をポリフッ化ビニリデンをベースにした複合プラスチックフィルムによって構成した場合には、当該複合プラスチックフィルムの有する優れた遮蔽作用によって、トラック用ドア材1の耐候性及び耐薬品性が向上し、トラック用ドア材1に対する汚れの付着も低減される。
また、基材17をポリプロピレンシートによって構成した場合には、フッ素樹脂フィルム19との接着が容易、且つ強固になる。また、ポリプロピレンシートの有する衝撃吸収作用によってトラック用ドア材1の耐衝撃性と耐摩耗性は一層向上し、耐食性、耐候性及び耐薬品性の向上にも寄与するようになる。
【0048】
また、芯材13を木製合板23によって形成した場合には、腐食等の問題が生じないから、トラック用ドア材1全体の耐食性が格段に向上し、安価で、廃棄が容易なトラック用ドア材1が提供できるようになる。
また、芯材13として、プラスチック成形品25や発泡体27、あるいは金属コルゲート板29等を適用すればトラック用ドア材1の軽量化を図ることも可能になる。
【0049】
尚、本発明のトラック用ドア材1は上記の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。例えば本発明のトラック用ドア材1はトラック3の貨物室7の後面部9に取り付けられるドア材に限らず、貨物室7の側面部31、33に取り付けられるドア材であってもよい。またトラック用ドア材1の開閉構造は上記実施の形態のような観音式の他、スライド式や嵌め込み式等、種々の開閉構造のドア材に適用可能である。
この他、本発明のトラック用ドア材1の構造をトラック3の車体フレームや貨物室7のパネル材に適用することも可能であり、このようにすればトラック3の車体や貨物室7を含めた総合的な耐食性、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性及び耐摩耗性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のトラック用ドア材は、トラックの車体の一部、あるいはトラックの貨物室の一部として配設され、少なくとも芯材と、表面材とを備える種々のタイプのトラック用ドア材の製造、使用分野等で利用可能性を有する。また、本発明のトラック用ドア材が適用されるトラックの種類や貨物室の構造は上記実施の形態のものに限定されることなく種々のタイプのトラックや貨物室に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のトラック用ドア材を適用したトラックを背後から見た状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のトラック用ドア材を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のトラック用ドア材の部分側断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、裏面材の構成を異ならせたトラック用ドア材の部分側断面図である。
【図5】本発明の実施の形態において適用可能な芯材の種類を示す図で芯材の部分側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の効果を確認するための比較試験の結果を示す図で、促進曝露試験の曝露前後の状態を示す表面劣化状態図である。
【図7】本発明の実施の形態の効果を確認するための比較試験の結果を示す図で、ディュー・サイクル試験機を使用した色差試験の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態の効果を確認するための比較試験の結果を示す図で、屋外集光式促進曝露試験機を使用した色差試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1 トラック用ドア材
3 トラック
5 荷台
7 貨物室
9 後面部
11 フレーム
13 芯材
15 表面材
17 基材
19 フッ素樹脂フィルム
21 裏面材
23 木製合板
25 プラスチック成形品
27 発泡体
29 金属コルゲート板
31 側面部
33 側面部
A 接着剤
B 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの車体の一部、あるいはトラックの貨物室の一部として配設され、少なくとも芯材と、該芯材の表面側に貼設される表面材とを備えたトラック用ドア材において、
上記トラック用ドア材は表面材として基材の表面にフッ素樹脂フィルムを貼設した複合フィルムを適用したことを特徴とするトラック用ドア材。
【請求項2】
上記フッ素樹脂フィルムはポリフッ化ビニリデンをベースにした複合プラスチックフィルムによって構成されていることを特徴とする請求項1記載のトラック用ドア材。
【請求項3】
上記基材は、ポリプロピレンシートであることを特徴とする請求項1または2記載のトラック用ドア材。
【請求項4】
上記芯材は、木製合板によって形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のトラック用ドア材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−184037(P2008−184037A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19464(P2007−19464)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(592225401)東名技建株式会社 (3)
【Fターム(参考)】