説明

トラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け構造

【課題】 トラバースシャーシに対するスピンドルモータの取付け位置を、ラジアル方
向では位置決めしつつ、タンジェンシャル方向では十分に調整できる安価な取付け構造を
提供する。
【解決手段】 スピンドルモータ2の底面には、主軸4を中心とした半径方向に延びる
長穴状の基準穴21が形成されるとともに、主軸4を中心とした周方向の3個所で互いに
間隔をあけてねじ穴22A、22B、22Cが形成されている。トラバースシャーシ1に
は、基準穴21がタンジェンシャル方向に延びるように配置された状態で、基準穴21に
係合する突起31が形成されるとともに、各ねじ穴22A、22B、22Cに対応した位
置にそれぞれタンジェンシャル方向に延びる長穴状の貫通穴32A、32B、32Cが形
成されている。突起31は、ラジアル方向での断面幅Aが基準穴21の幅と略同一であり
、タンジェンシャル方向での断面幅Bがラジアル方向での断面幅Aよりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体であるCDやDVD等の光ディスクに対して情報の再生や記録
を行う光ディスク装置に関し、特に、光ディスクを回転させるためのスピンドルモータを
トラバースシャーシ上に取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ディスク装置は、クランプした光ディスクを回転させ、その光ディスクの記
録面にレーザー光を出射してその記録面上に情報を書き込んだり(記録)、更に光ディス
クの記録面で反射したレーザー光を受光してその記録面上の情報を読み取ったり(再生)
する。その再生や記録は、光ディスクの記録面に沿う半径方向に往復移動する光ピックア
ップによって行われる。この光ピックアップの移動の案内は、一般には、その移動方向と
平行にトラバースシャーシ上に支持された一対のガイド軸でなされる。
【0003】
また、光ディスクのクランプは、ターンテーブルとこれに対向するクランパとの挟み込
みによってなされる。光ディスクの回転は、ターンテーブルが主軸の先端部に固定され、
トラバースシャーシ上に取り付けられたスピンドルモータの駆動によって行われる。
【0004】
ここでのトラバースシャーシは、光ディスクが収納されたメインシャーシに対して回動
することで、その光ディスクの記録面に対して接近/離間移動するように上昇/下降(昇
降)し、最上昇した状態で光ディスクがクランプされる。
【0005】
ところで、このような光ディスク装置においては、スピンドルモータをトラバースシャ
ーシ上に取り付ける際、光ピックアップの移動方向(光ディスクの半径方向いわゆるラジ
アル方向)と直角な方向(光ディスクの円周方向いわゆるタンジェンシャル方向)にその
取付け位置を調整できるようになっている。これを実現するトラバースシャーシへのスピ
ンドルモータの取付け構造に関し、その従来技術を図3〜図9を参照しながら説明する。
【0006】
先ず、スピンドルモータの本質的な構成について説明する。図3、図4に示すように、
スピンドルモータ2は、大きくは、主軸4と、この主軸4を回転可能に支持する軸受5と
、この軸受5の周囲に配設された静止の電磁石6と、この電磁石6を取り囲むように永久
磁石7が取り付けられ主軸4に固定されたロータハウジング8とより構成される。軸受5
としては、主軸4が挿入されてその主軸4の周面を支持するスリーブ状のラジアル軸受5
Aと、丸みを帯びた主軸4の下端面を支持する円板状のスラスト軸受5Bとを備え、これ
らのラジアル軸受5Aとスラスト軸受5Bは、下端が閉ざされた筒状の軸受ホルダ9内に
嵌め込まれて保持されている。
【0007】
主軸4は、その上端部が軸受ホルダ9から突出した状態で、スラスト軸受5Bによって
下方への移動が規制されながら、ラジアル軸受5Aによって回転可能に支持されている。
また、主軸4の下端部の周面には、周方向に沿って溝4aが形成されており、この溝4a
に装着されて軸受ホルダ9内に嵌め込まれたワッシャ10によって、主軸4の上方への抜
けが防止されている。軸受ホルダ9は、スピンドルモータ2の底面となる金属製のベース
板11に対してカシメ等で固定され、ベース板11から上方へ大きく突出している。その
ベース板11上には、スピンドルモータ2の駆動を制御する回路基板12が取り付けられ
ており、この回路基板12からはその回路に接続されたケーブル13が延び出している。
【0008】
ベース板11から上方へ突出した軸受ホルダ9の周囲には、支持された主軸4を中心と
して等角度間隔をあけて半径方向に延び出す複数のコア6Aが取り付けられており、これ
らの各コア6Aには、コイル6Bが巻かれている。コイル6Bは回路基板12の回路に接
続されている。これらのコア6Aとコイル6Bが電磁石6として機能する。
【0009】
ロータハウジング8は、金属板より成るものであって、電磁石6を取り囲む筒状部8a
と、この筒状部8aの上端を塞ぎつつカシメ等で主軸4に固定された鍔状部8bとを有す
る。こうして、主軸4は、その上端部が鍔状部8bから大きく突出している。また、筒状
部8aの内周面には、電磁石6に対して隙間をあけつつ、電磁石6に向けての個々の極性
がその周方向で互い違いになるように、複数の永久磁石7が取り付けられている。
【0010】
このようなスピンドルモータ2では、正負が順次切り換わる電流(交流電流)がコイル
6Bに流されると、コア6Aには向きが交互に反転する磁界が生じ、これにより、各永久
磁石7との磁気的な作用でロータハウジング8に回転力が与えられ、主軸4はロータハウ
ジング8と一体で回転駆動される。
【0011】
また、主軸4の上端部には、合成樹脂より成る円盤状のターンテーブル3が嵌め込まれ
て固定されている。こうして、ターンテーブル3は、その背後にロータハウジング8の鍔
状部8bが配置された格好で、主軸4及びロータハウジング8と一体で回転するようにな
る。
【0012】
ターンテーブル3は、その中央部が上方へ向けて大きく突出しており、光ディスクD(
図中の二点鎖線参照)は、その内周がその突出したターンテーブル3の中央部に案内され
る。また、ターンテーブル3上には、その周縁部に、適度な弾性を有しつつ摩擦係数の高
い環状のゴム板15が両面粘着テープや接着剤等で貼り付けられており、光ディスクDは
環状ゴム板15上に接触支持される。また、ターンテーブル3の中央部には、磁性片17
が埋め込まれている。この磁性片17は、不図示のクランパに一体的に設けられた磁石と
の引力の作用によってクランパを上方から引き込み、これにより、そのクランパの下面と
ターンテーブル3の環状ゴム板15上との間で光ディスクDを挟み込んで強固にクランプ
する役割を果たす。
【0013】
続いて、このようなスピンドルモータ2のトラバースシャーシへの取付けにまつわる構
成について説明する。図5に示すように、スピンドルモータ2の底面となるベース板11
には、軸受ホルダ9すなわち主軸4を中心とした半径方向に延びる長穴状の基準穴21が
形成されている。ここでの基準穴21は、主軸4を中心にケーブル13が延び出した方向
と直角な方向に配置されている。この基準穴21は、詳細は後述するトラバースシャーシ
1からの突起31が係合され、トラバースシャーシ1に対してのスピンドルモータ2の取
付け位置の位置決め基準に用いられる。
【0014】
また、ベース板11には、主軸4を中心とした周方向の3個所で互いに等角度間隔をあ
けてねじ穴22A、22B、22Cが形成されている。ここでは、3つのねじ穴22A、
22B、22Cのうち、1つのねじ穴22Aは、主軸4を中心に基準穴21とは直角な位
置で、且つケーブル13が延び出した方向と反対の方向に配置されている。従って、残り
の2つのねじ穴22B、22C同士は、互いに基準穴21が延びる方向と平行に配置され
ることになる。これらのねじ穴22A、22B、22Cは、それぞれ、詳細は後述するト
ラバースシャーシ1の貫通穴32A、32B、32Cを通じたねじ42A、42B、42
Cがねじ込まれ、トラバースシャーシ1に対してのスピンドルモータ2の固定に用いられ
る。
【0015】
また、ベース板11には、主軸4を間に挟んで基準穴21とは反対の位置に小径穴23
が形成されている。この小径穴23は、詳細は後述する調整用工具50のピン51が差し
込まれ、トラバースシャーシ1に対してのスピンドルモータ2の取付け位置の調整に用い
られる。
【0016】
一方、図6に示すように、トラバースシャーシ1には、スピンドルモータ2のベース板
11から突出する軸受ホルダ9の下端部を受け入れるための長穴状の中心穴34が形成さ
れている。この中心穴34は、光ピックアップの移動方向と直角な方向すなわちタンジェ
ンシャル方向に延びており、その幅は軸受ホルダ9の下端部の断面幅(径)とほぼ同一、
厳密には僅かに大きくなっている。
【0017】
また、トラバースシャーシ1には、光ピックアップの存在する側と反対側にスピンドル
モータ2からのケーブル13が延び出すようにスピンドルモータ2が配置された状態、す
なわちスピンドルモータ2のベース板11に形成された基準穴21がタンジェンシャル方
向に延びるように配置された状態で、その基準穴21に係合する突起31が形成されてい
る。ここでの突起31は、断面形状が円形であって、その断面幅(径)が基準穴21の幅
とほぼ同一、厳密には僅かに小さくなっている。
【0018】
また、トラバースシャーシ1には、スピンドルモータ2のベース板11に形成された各
ねじ穴22A、22B、22Cに対応した位置に、それぞれ長穴状の貫通穴32A、32
B、32Cが形成されている。これらの各貫通穴32A、32B、32Cは、タンジェン
シャル方向に延びており、その幅は各ねじ穴22A、22B、22Cの径、すなわち後述
する各ねじ42A、42B、42Cの径とほぼ同一、厳密には僅かに大きくなっている。
【0019】
また、トラバースシャーシ1には、スピンドルモータ2のベース板11に形成された小
径穴23に対応した位置に、長穴状の貫通穴33が形成されている。この貫通穴33は、
光ピックアップの移動方向すなわちラジアル方向に延びており、後述する調整用工具50
の軸部52が差し込まれて回転できるようになっている。
【0020】
このような構成のもと、トラバースシャーシ1へのスピンドルモータ2の取付けに際し
、図7、図8(a)、図8(b)に示すように、トラバースシャーシ1へスピンドルモー
タ2を重ね、ベース板11からの軸受ホルダ9の下端部を中心穴34に係合させるととも
に、ベース板11の基準穴21にトラバースシャーシ1からの突起31を係合させる。次
に、図8(c)に示すように、トラバースシャーシ1の各貫通穴32A、32B、32C
より、それぞれねじ42A、42B、42Cを差し込んでベース板11の各ねじ穴22A
、22B、22Cに軽くねじ込む。
【0021】
この状態では、突起31は、係合する基準穴21により、ラジアル方向の移動が規制さ
れつつ、基準穴21との長さ方向の隙間の分だけタンジェンシャル方向の移動が許容され
ている。もっとも、軸受ホルダ9の下端部は、係合する中心穴34により、ラジアル方向
の移動が規制されつつタンジェンシャル方向の移動が許容され、各ねじ穴22A、22B
、22Cにねじ込まれた各ねじ42A、42B、42Cは、各貫通穴32A、32B、3
2Cにより、ラジアル方向の移動が規制されつつタンジェンシャル方向の移動が許容され
ている。従って、スピンドルモータ2は、トラバースシャーシ1に対し、ラジアル方向で
は位置決めされ、タンジェンシャル方向ではその取付け位置が突起31と基準穴21との
長さ方向の隙間の分だけ調整できる状態にある。
【0022】
このような状態で標準の光ディスクを載せ、専用の試験機により、スピンドルモータ2
がトラバースシャーシ1に対してタンジェンシャル方向で正規の位置にあるか否かを検出
する。その位置が正規の位置から外れている場合は、スピンドルモータ2をトラバースシ
ャーシ1に対してタンジェンシャル方向にずらして調整する。
【0023】
その調整は、調整用工具50を用いて行う。具体的には、調整用工具50は、図9に示
すように、トラバースシャーシ1に形成された貫通穴33の幅とほぼ同径の軸部52と、
ベース板11に形成された小径穴23とほぼ同径でその軸部52の先端面から偏芯して突
出するピン51と、軸部52の後端に連結された柄部53とを有する。このような調整用
工具50の柄部53を持って、図8(d)に示すように、軸部52をトラバースシャーシ
1の貫通穴33に差し込むとともに、ピン51をベース板11の小径穴23に差し込み、
柄部53を回して、軸部52を貫通穴33内で回転させる。これにより、ピン51が貫通
穴33の領域内で振れ、これに追従して、ベース板11の小径穴23がタンジェンシャル
方向に強制的にずらされる。こうして、スピンドルモータ2がトラバースシャーシ1に対
してタンジェンシャル方向にずらされて調整される。
【0024】
そして、スピンドルモータ2がタンジェンシャル方向で正規の位置に調整されると、改
めて各ねじ42A、42B、42Cをベース板11の各ねじ穴22A、22B、22Cに
強くねじ込む。これにより、ベース板11がトラバースシャーシ1に強固に固定される。
こうして、トラバースシャーシ1へのスピンドルモータ2の取付けが完了する。
【0025】
なお、このような取付け構造に加え、光ピックアップから光ディスクへのレーザー光の
入射角度いわゆるスキューを調整できるように、トラバースシャーシ1へのスピンドルモ
ータ2の取付け高さや、光ピックアップを案内するガイド軸の高さを調整できるような構
造にしたものもある(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2005−63549号公報
【特許文献2】特開2004−87031号公報
【特許文献3】特開2003−85780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかし、上記したトラバースシャーシ1へのスピンドルモータ2の取付け構造では、タ
ンジェンシャル方向へのスピンドルモータ2の取付け位置の調整代が狭いため、十分な調
整を行えない事態が生じることがある。その調整代は、トラバースシャーシ1の突起31
とベース板11の基準穴21との長さ方向の隙間の分に限られるが、特にコスト低減を主
眼に汎用品のスピンドルモータ2を採用している場合、その基準穴21の寸法は標準的に
規定されているためである。仮に、その調整代が大きくなるように、その基準穴21の長
さ方向の寸法を変更すると、当然、スピンドルモータ2の調達コストの悪化を招く。
【0027】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、トラバースシャーシに対す
るスピンドルモータの取付け位置を、ラジアル方向では位置決めしつつ、タンジェンシャ
ル方向では十分に調整できる安価な取付け構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するため、本発明は、光ディスクの記録面に対して昇降するトラバース
シャーシと、このトラバースシャーシ上に取り付けられるスピンドルモータと、このスピ
ンドルモータの主軸の先端部に固定され前記光ディスクを保持するターンテーブルと、前
記トラバースシャーシ上に支持され前記光ディスクの記録面に沿う半径方向に往復移動す
る光ピックアップと、を備えた光ディスク装置におけるトラバースシャーシへのスピンド
ルモータの取付け構造であって、前記スピンドルモータの底面には、前記主軸を中心とし
た半径方向に延びる長穴状の基準穴が形成されるとともに、前記主軸を中心とした周方向
の3個所で互いに等角度間隔をあけてねじ穴が形成され、前記トラバースシャーシには、
前記基準穴が前記光ピックアップの移動方向と直角な方向に延びるように配置された状態
で、前記基準穴に係合する突起が形成されるとともに、前記各ねじ穴に対応した位置にそ
れぞれ前記光ピックアップの移動方向と直角な方向に延びる長穴状の貫通穴が形成されて
おり、前記突起は、断面形状が円形であって、断面幅が前記基準穴の幅と略同一であり、
前記スピンドルモータは、前記突起を前記基準穴に係合させながら、前記各貫通穴を通じ
て各ねじ穴にそれぞれねじをねじ込むことにより、前記トラバースシャーシに取り付けら
れるトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け構造において、次の点を特徴とす
る。前記突起は、断面形状が円形の前記突起に代えて、断面形状が楕円形であって、前記
光ピックアップの移動方向での断面幅が前記基準穴の幅と略同一であり、前記光ピックア
ップの移動方向と直角な方向での断面幅が前記光ピックアップの移動方向での断面幅より
も小さくなっている。
【0029】
このような構成にすると、スピンドルモータは、トラバースシャーシに対し、突起が基
準穴に係合することにより、光ピックアップの移動方向すなわちラジアル方向では移動が
規制されて位置決めされる一方、光ピックアップの移動方向と直角な方向すなわちタンジ
ェンシャル方向では突起と基準穴との長さ方向の隙間の分だけ移動が許容されてその取付
け位置が調整できるようになる。その取付け位置の調整代は、従来と比較して、突起にお
けるタンジェンシャル方向での断面幅がラジアル方向での断面幅よりも小さい分更に広が
る。従って、タンジェンシャル方向への取付け位置の調整を十分に行えるようになる。し
かも、スピンドルモータとしては、なんら変更を施すことなくそのまま汎用品を採用でき
るため、安価に実現できる。
【0030】
また、上記目的を達成するために、本発明は、光ディスクの記録面に対して昇降するト
ラバースシャーシと、このトラバースシャーシ上に取り付けられるスピンドルモータと、
このスピンドルモータの主軸の先端部に固定され前記光ディスクを保持するターンテーブ
ルと、前記トラバースシャーシ上に支持され前記光ディスクの記録面に沿う半径方向に往
復移動する光ピックアップと、を備えた光ディスク装置におけるトラバースシャーシへの
スピンドルモータの取付け構造であって、次の点を特徴とする。前記スピンドルモータの
底面には、前記主軸を中心とした半径方向に延びる長穴状の基準穴が形成されるとともに
、前記主軸を中心とした周方向の少なくとも3個所で互いに間隔をあけてねじ穴が形成さ
れ、前記トラバースシャーシには、前記基準穴が前記光ピックアップの移動方向と直角な
方向に延びるように配置された状態で、前記基準穴に係合する突起が形成されるとともに
、前記各ねじ穴に対応した位置にそれぞれ前記光ピックアップの移動方向と直角な方向に
延びる長穴状の貫通穴が形成されている。前記突起は、前記光ピックアップの移動方向で
の断面幅が前記基準穴の幅と略同一であり、前記光ピックアップの移動方向と直角な方向
での断面幅が前記光ピックアップの移動方向での断面幅よりも小さくなっている。そして
、前記スピンドルモータは、前記突起を前記基準穴に係合させながら、前記各貫通穴を通
じて各ねじ穴にそれぞれねじをねじ込むことにより、前記トラバースシャーシに取り付け
られる。
【0031】
このような構成にすると、スピンドルモータは、トラバースシャーシに対し、突起が基
準穴に係合することにより、光ピックアップの移動方向すなわちラジアル方向では移動が
規制されて位置決めされる一方、光ピックアップの移動方向と直角な方向すなわちタンジ
ェンシャル方向では突起と基準穴との長さ方向の隙間の分だけ移動が許容されてその取付
け位置が調整できるようになる。その取付け位置の調整代は、従来と比較して、突起にお
けるタンジェンシャル方向での断面幅がラジアル方向での断面幅よりも小さい分更に広が
る。従って、タンジェンシャル方向への取付け位置の調整を十分に行えるようになる。し
かも、スピンドルモータとしては、なんら変更を施すことなくそのまま汎用品を採用でき
るため、安価に実現できる。
【0032】
ここで、トラバースシャーシに突起を形成するにあたり、その形成の容易性を踏まえる
と、前記突起は、断面形状が楕円形であることが好ましい。
【0033】
また、実用的には、前記各ねじ穴は、前記主軸を中心として互いに等角度間隔をあけて
形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の光ディスク装置におけるトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け構
造によれば、トラバースシャーシに対するスピンドルモータの取付け位置を、安価な構成
で、ラジアル方向では位置決めしつつ、タンジェンシャル方向では十分に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の光ディスク装置におけるトラバースシャーシへのスピンドルモータの
取付け構造の一実施形態について、図面を参照しながら詳述する。図1は、本発明の一実
施形態である光ディスク装置におけるトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け
構造を示すトラバースシャーシの上面図、図2は、そのトラバースシャーシへスピンドル
モータを重ねた状態を示す下面図である。なお、これらの図中で図3〜図9と同じ名称で
同じ機能を果たす部分には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0036】
本実施形態では、スピンドルモータ2については、図3〜図5、図7に示すものとまっ
たく同様である。
【0037】
一方、トラバースシャーシ1については、図1、図2に示すように、スピンドルモータ
2のベース板11から突出する軸受ホルダ9の下端部を受け入れるための長穴状の中心穴
34と、スピンドルモータ2のベース板11に形成された各ねじ穴22A、22B、22
Cにねじ込まれる各ねじ42A、42B、42Cを通すための貫通穴32A、32B、3
2Cと、スピンドルモータ2のベース板11に形成された小径穴23に差し込まれる調整
用工具50を通すための貫通穴33とは、従来のトラバースシャーシ1の態様とまったく
同様であるが(図6、図7参照)、スピンドルモータ2のベース板11に形成された基準
穴21に係合する突起31は、従来のトラバースシャーシ1の態様と大きく異なる。
【0038】
具体的には、トラバースシャーシ1には、光ピックアップの存在する側と反対側にスピ
ンドルモータ2からのケーブル13が延び出すようにスピンドルモータ2が配置された状
態、すなわちスピンドルモータ2のベース板11に形成された基準穴21が光ピックアッ
プの移動方向と直角な方向すなわちタンジェンシャル方向に延びるように配置された状態
で、その基準穴21に係合する突起31が形成されている。この点は、従来のトラバース
シャーシ1の態様と同様である。
【0039】
但し、ここでの突起31は、断面形状が円形ではなく楕円形である。そして、光ピック
アップの移動方向すなわちラジアル方向での突起31の断面幅が、基準穴21の幅Aとほ
ぼ同一、厳密には僅かに小さくなっており、タンジェンシャル方向での突起31の断面幅
Bが、ラジアル方向での断面幅Aよりも小さくなっている。なお、このような形状の突起
31は、トラバースシャーシ1が例えばポリフェニレンエーテル(PPE)等の合成樹脂
の成型品である場合、これを成型するための金型の彫刻部形状を修正することで簡単に得
られる。
【0040】
このような構成にすると、スピンドルモータ2は、トラバースシャーシ1に対し、突起
31が基準穴21に係合することにより、ラジアル方向では移動が規制されて位置決めさ
れる一方、タンジェンシャル方向では突起31と基準穴21との長さ方向の隙間の分だけ
移動が許容されてその取付け位置が調整できるようになる。その取付け位置の調整代は、
従来と比較して、突起31におけるタンジェンシャル方向での断面幅Bがラジアル方向で
の断面幅Aよりも小さい分更に広がる。従って、タンジェンシャル方向への取付け位置の
調整を十分に行えるようになる。しかも、スピンドルモータ2としては、なんら変更を施
すことなくそのまま汎用品を採用できるため、安価に実現できる。
【0041】
その他本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々
の変更が可能である。例えば、スピンドルモータ2のベース板11に設けるねじ穴22A
、22B、22C、これらに対応するトラバースシャーシ1に設ける貫通穴32A、32
B、32C、及びねじ42A、42B、42Cの個数は、3個ずつに限らず、それ以上あ
ればよい。ねじ42A、42B、42Cによるねじ込み個所が3個所以上あれば、トラバ
ースシャーシ1にスピンドルモータ2を安定して取付け固定できるからである。
【0042】
また、スピンドルモータ2のベース板11に設けるねじ穴22A、22B、22C、及
びこれらに対応するトラバースシャーシ1に設ける貫通穴32A、32B、32Cの位置
は、主軸4を中心とした等角度間隔に限らず、トラバースシャーシ1にスピンドルモータ
2を安定して取付け固定できる限り、特に限定はない。
【0043】
また、ターンテーブル3を回転させるスピンドルモータとして、上記の実施形態では主
軸4と共にロータハウジング8が回転するスピンドルモータ2を採用しているが、これに
代えて、静止のハウジングから先端部が突出した主軸が回転するスピンドルモータを採用
しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、光ディスクに対して情報の再生や記録を行うための光ディスク装置に有用で
ある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態である光ディスク装置におけるトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け構造を示すトラバースシャーシの上面図である。
【図2】図1のトラバースシャーシへスピンドルモータを重ねた状態を示す下面図である。
【図3】本発明にも共通する一般的なスピンドルモータの側面図である。
【図4】図3のスピンドルモータの縦断面図である。
【図5】本発明にも共通する一般的なスピンドルモータの下面図である。
【図6】従来のトラバースシャーシの上面図である。
【図7】図6のトラバースシャーシへスピンドルモータを重ねた状態を示す下面図である。
【図8】図6のトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け手順を示す側面図である。
【図9】本発明にも共通する一般的な調整用工具の斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 トラバースシャーシ
2 スピンドルモータ
3 ターンテーブル
4 主軸
5 軸受
8 ロータハウジング
9 軸受ホルダ
11 ベース板
12 回路基板
13 ケーブル
21 基準穴
22A、22B、22C ねじ穴
23 小径穴
31 突起
32A、32B、32C 貫通穴
33 貫通穴
34 中心穴
42A、42B、42C ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録面に対して昇降するトラバースシャーシと、
このトラバースシャーシ上に取り付けられるスピンドルモータと、
このスピンドルモータの主軸の先端部に固定され前記光ディスクを保持するターンテー
ブルと、
前記トラバースシャーシ上に支持され前記光ディスクの記録面に沿う半径方向に往復移
動する光ピックアップと、を備えた光ディスク装置におけるトラバースシャーシへのスピ
ンドルモータの取付け構造であって、
前記スピンドルモータの底面には、前記主軸を中心とした半径方向に延びる長穴状の基
準穴が形成されるとともに、前記主軸を中心とした周方向の3個所で互いに等角度間隔を
あけてねじ穴が形成され、
前記トラバースシャーシには、前記基準穴が前記光ピックアップの移動方向と直角な方
向に延びるように配置された状態で、前記基準穴に係合する突起が形成されるとともに、
前記各ねじ穴に対応した位置にそれぞれ前記光ピックアップの移動方向と直角な方向に延
びる長穴状の貫通穴が形成されており、
前記突起は、断面形状が円形であって、断面幅が前記基準穴の幅と略同一であり、
前記スピンドルモータは、前記突起を前記基準穴に係合させながら、前記各貫通穴を通
じて各ねじ穴にそれぞれねじをねじ込むことにより、前記トラバースシャーシに取り付け
られるトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け構造において、
前記突起は、断面形状が円形の前記突起に代えて、断面形状が楕円形であって、前記光
ピックアップの移動方向での断面幅が前記基準穴の幅と略同一であり、前記光ピックアッ
プの移動方向と直角な方向での断面幅が前記光ピックアップの移動方向での断面幅よりも
小さくなっていることを特徴とするトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け構
造。
【請求項2】
光ディスクの記録面に対して昇降するトラバースシャーシと、
このトラバースシャーシ上に取り付けられるスピンドルモータと、
このスピンドルモータの主軸の先端部に固定され前記光ディスクを保持するターンテー
ブルと、
前記トラバースシャーシ上に支持され前記光ディスクの記録面に沿う半径方向に往復移
動する光ピックアップと、を備えた光ディスク装置におけるトラバースシャーシへのスピ
ンドルモータの取付け構造であって、
前記スピンドルモータの底面には、前記主軸を中心とした半径方向に延びる長穴状の基
準穴が形成されるとともに、前記主軸を中心とした周方向の少なくとも3個所で互いに間
隔をあけてねじ穴が形成され、
前記トラバースシャーシには、前記基準穴が前記光ピックアップの移動方向と直角な方
向に延びるように配置された状態で、前記基準穴に係合する突起が形成されるとともに、
前記各ねじ穴に対応した位置にそれぞれ前記光ピックアップの移動方向と直角な方向に延
びる長穴状の貫通穴が形成されており、
前記突起は、前記光ピックアップの移動方向での断面幅が前記基準穴の幅と略同一であ
り、前記光ピックアップの移動方向と直角な方向での断面幅が前記光ピックアップの移動
方向での断面幅よりも小さくなっていて、
前記スピンドルモータは、前記突起を前記基準穴に係合させながら、前記各貫通穴を通
じて各ねじ穴にそれぞれねじをねじ込むことにより、前記トラバースシャーシに取り付け
られることを特徴とするトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け構造。
【請求項3】
前記突起は、断面形状が楕円形であることを特徴とする請求項2に記載のトラバースシ
ャーシへのスピンドルモータの取付け構造。
【請求項4】
前記各ねじ穴は、前記主軸を中心として互いに等角度間隔をあけて形成されていること
を特徴とする請求項2又は3に記載のトラバースシャーシへのスピンドルモータの取付け
構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−58918(P2007−58918A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239592(P2005−239592)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】