説明

トランスファーベルト及びプレス用布の適用のための半透過性布

所定の様式で複数の層(120、130、140、150)を配置して形成された抄紙機用布(110)を開示する。この抄紙機用布において、少なくとも一つの層(140)は、織成され、編み込まれ、又は編成された材料を有し、この材料は、第1の融点温度を有し、残りの層(120、130、150)のそれぞれは、この第1の融点温度よりも高い融点温度を有し;上記の少なくとも1つの層が残りの層を溶融することなく溶融されるように、複数の層を、少なくとも上述の第1の溶融温度と同等の温度で且つ上記の残りの層のそれぞれの溶融温度未満の温度で加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙技術に関する。特に、本発明は、トランスファーベルト及びプレス用布に使用する抄紙機用布に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程中、セルロース製繊維ウェブは、繊維スラリー、つまりセルロース繊維の水性懸濁液を抄紙機の形成部に存在する移動する形成布上に堆積させることで、形成される。このスラリーからは、形成布を介して大量の水が排出され、形成布の表面上にセルロース製繊維ウェブが残存する。
【0003】
新規に形成されたセルロース製繊維ウェブは、形成部から一連のプレスニップが存在するプレス部へと進む。セルロース製繊維ウェブは、プレス布、又はしばしば斯かる2つのプレス布間で支持されたプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロース製繊維ウェブに圧縮力がかけられ、この圧力により、水が絞り出され、且つウェブにおけるセルロース製繊維が互いに接着してセルロース製繊維ウェブから紙シートとなる。上述の水は、プレス布又はその他の各種布に受容され、理想的には、紙シートに戻らない。
【0004】
紙シートは、最終的に、蒸気で内的に加熱される少なくとも一連の回転可能乾燥ドラム又はシリンダーを有する乾燥部へと進む。新規に形成された紙シートは、乾燥布により上述の一連のドラムのそれぞれを取り囲まれたセルペンタイン路(serpentine path)に向けられ、ここで、ドラムの表面に近接して紙シートを保持する。加熱されたドラムは、紙シートの水分含量を蒸発を介して所望のレベルにまで低減する。
【0005】
形成布、プレス布及び乾燥布は、抄紙機上で全て無端ループ(endless loop)の形成を取り、コンベアの様式で機能することに留意すべきである。さらに、製紙工程は、かなりの速度で進行する連続工程であることにも留意すべきである。即ち、繊維ウェブは、形成部の形成布上に連続的に堆積される一方、新規に製造された紙シートは、乾燥部を出た後、ロール上に連続的に巻き取られる。
【0006】
プレス用布は、紙製造工程中、重要な役割を演じる。その役割の一つは、上述したように、プレスニップを介して製造される紙製品を支持し運搬することである。
【0007】
プレス用布は、また、紙シートの表面の仕上げにも関与する。つまり、プレス用布は、プレスニップを通過する際、平滑でマークのない表面が紙に補完されるように、平滑な表面と均一な回復力(resilience)を有する構造とを有するように設計される。
【0008】
おそらく最も重要なことに、プレス用布は、プレスニップにおいて湿潤した紙から抽出される大量の水を受容する。この機能を満たすため、水が脱出するようにプレス用布の内部に、いわゆるボイド容量と一般的に称される空間を文字通り有する必要があり、且つプレス用布は、その全体的な耐用年数において、水に対して十分な透過性を有する必要がある。最終的に、プレス用布は、紙シートから受容した水が、プレスニップから脱出した紙に戻り且つ再度湿潤することを、阻止し得る必要がある。
【0009】
現代のプレス用布は、製造される紙のグレード用に導入される抄紙機の要件を満たすように設計された種々のスタイルに製造される。一般的に、プレス用布は、微細な不織の繊維材料のバットにニードリングされる織成基礎布を有する。この基礎布は、モノフィラメント、諸よりモノフィラメント、マルチフィラメント又は諸よりマルチフィラメントのヤーンから織成されてもよく、単層、多層又は積層体であってもよい。これらのヤーンは、抄紙機用布技術において当業者がこの目的で使用するポリアミド、ポリエステル樹脂などの複数の合成ポリマー樹脂のいずれかから典型的に成形される。
【0010】
この織成基礎布自体は、複数の異なる形態を取る。例えば、この基礎布は、無端(endless)に織成されてもよく、平織りにされた後に織成継目を有する無端の形態とされてもよい。代替的に、この基礎布は、改変無端織成として一般的に知られた工程により製造されてもよく、ここで、この基礎布には、この布の機械方向(MD)のヤーンを用いた継目ループを設けてもよい。この工程において、MDヤーンは、布の幅方向の端部間を連続的に行き来しながら織成され、端部において折り返され、継目ループを形成する。この様式で製造された基礎布は、抄紙機上に導入される間、無端の形態に載置される。そのため、この布は、機械上で継ぎ合わせ可能な布と称される。斯かる布を無端の形態に載置するため、その2つの幅方向の端部は、ともに合わされ、この2つの端部における継目ループは、互いに噛み合わされ、このように噛み合わされた継目ループに形成された通路を介して、継目ピン又はピントルを挿入する。
【0011】
さらに、この織成基礎布は、互いに形成された無端ループ内において1つの基礎布を載置し、且つ互いに結合するように両方の基礎布間を人造繊維(staple fiber)バットをニードリングすることで、積層されてもよい。織成基礎布のいずれか一方又は両方は、機械上で継ぎ合わせ可能なタイプであってもよい。
【0012】
いずれにしても、この織成基礎布は、無端ループの形態であり、或いは長手方向に測定した特定の長さと横方向に測定した特定の幅とを有する斯かる形態に継ぎ合わせ可能なものである。抄紙機の配置が非常に広範であるため、抄紙機用布の製造者は、プレス用布及びその他の抄紙機用布を、顧客の抄紙機において特定の位置に適合するのに必要な寸法に製造する必要がある。言うまでもなく、この要件は、プレス用布がオーダーメードである必要があることから、製造工程を能率化することを困難とするものである。
【0013】
プレス用布をより即座に且つ効率よく種々の長さ及び幅に製造する上述の必要性に応えて、プレス用布は、Rexfeltらによる特許文献1に開示のスパイラル技術を用いて近年製造されている。なお、この文献を参照して、本願に取り込む。
【0014】
特許文献1は、基礎布と、この基礎布にニードリングされた人造繊維材料の1つ以上の層とを有するプレス用布を開示する。この基礎布は、基礎布の幅よりも短い幅を有する織成布の螺旋巻きストリップからなる少なくとも1つの層を有する。この基礎布は、長手方向又は機械方向に無端である。この螺旋巻きストリップの長手スレッドは、プレス用布の長手方向に対して一定の角度を有する。この織成布のストリップは、抄紙機用布の製造に典型的に使用されるものよりも狭い織機上に平織りされてもよい。
【0015】
この基礎布は、相対的に狭い織成布ストリップの螺旋巻き取りされ結合された複数の巻き(turn)を有する。この布ストリップは、長さ方向のヤーン(縦糸)と横切る方向(横糸)ヤーンとから織成される。この螺旋巻き布ストリップの隣り合う巻きは、互いに接していてもよく、このように製造される螺旋状に連続した継目は、縫い付け、縫い合わせ、溶融し、鋳造し(例えば超音波などで)又は接着することにより閉鎖されてもよい。代替的に、隣接する螺旋巻きの隣り合う長手方向の端部は、重なり合う領域において厚みが増加しないように端部の厚みを減少させる限りは、互いに重なり合うように配置されてもよい。さらに、長手方向のヤーン間の空間は、隣接する螺旋巻きが重なり合うように配置される場合に重なり合う領域における長手方向のスレッド間の空間が変化しないように、ストリップの端部において増加してもよい。
【0016】
また、トランスファーベルトは、抄紙機において、セクション間、又はプレス部における個々のプレスのようにセクションの要素間の紙シートの移動に関連する。トランスファーベルトは、抄紙機の一部を介して紙シートを運搬し且つ紙の脱水を可能とするように、設計されてもよい。
【0017】
上述したように、全ての抄紙機用布の初期的な機能は、紙シートから水を除去することである。さらに、平滑な表面や均一性などの各種基準は、抄紙機用布について考慮されるべき重要な要素である。抄紙機用布の表面の幾何学性は、紙製品の質に寄与する。紙シートに、より平滑な接触表面を付与するための努力がなされている。しかしながら、抄紙機用布の表面平滑性や圧力均一性は、織成パターンや下部にニードリングされたバットのフィラメントの物理的特徴に由来する幾何学性により制約される。織成布(又は編み込み布(knitted fabric))において、平滑性は、交差ヤーンの交差点に形成されるナックル(knuckle)で本質的に制約される。従って、各種布に優れた平滑特性と均一性とを付与することが要求されている。
【0018】
従来技術では、繊維バット材料やスパンポンド材料の層などの抄紙機用布において不織の材料を溶融することを含む。ニードリングされたバットにおける繊維の位置や配置は、不均一であり、予測し得ず、且つ布から布へと繰り返され得ないものである。「溶融可能」な材料のフィルムをフィルムとして使用する場合、通常熱源の方向に流動することも事実である。しかしながら、この流動は、不均一に発生する傾向にある;また、これらのフィルム又は先行技術の「鞘(sheath)」は、プレス用布の支持構造を構成する基礎布に起因する布の分布の不均一性をマスクすること(masking)がほとんどできない。
【0019】
例えば、特許文献2は、織成基礎層の端部の一方又は両方にニードリングされた圧縮バット層を有する抄紙機用フェルトを開示する。このバット層は、少なくとも1つのタイプの繊維の混合物から形成される。この第1のタイプは、少量で存在し、バット層及び基礎布の残りよりも低い溶融温度を有するものである。このフェルトは、この低い溶融温度よりも高い温度に加熱され、第1の繊維は、残りのもの及び基礎布に結合するように溶融される。繊維において繊維結合が局所的に向上する一方で、基礎布の表面平滑又はマスキングが向上することは、ほとんどない。
【0020】
特許文献3は、不織のバット繊維の層とこれらに挿入されたポリマーメッシュの層とを交互に有する抄紙機用ウェットプレス用フェルトを開示する。このメッシュ層は、バット層の融点よりも低い融点を有する。これらの層は、ニードリング、縫い付け若しくは加熱又はこれらの組み合わせにより固定されてもよい。メッシュ層のそれぞれは、好ましくは不織の網体(non−woven netting)である。形成中、フェルトは、ポリマーメッシュの軟化温度以上の温度に加熱されてもよい。しかしながら、フェルトは、ポリマーメッシュの融点温度に加熱されることはないようである。結果として、平滑性及び/又は圧力均一性は、付与され得ない。
【0021】
特許文献4は、抄紙機に使用する可撓性バンドに関する。このバンドは、透過性層を有する少なくとも1つの側部を有し、回復力の高い圧縮性を特徴とするものであって、透過性層がバンドの一側部上で繊維構造の繊維を溶融することで形成されることを特徴とする繊維構造を有する。この繊維層又は不織マット構造物は、熱可塑性変形可能スレッド又は熱溶融接着スレッド(hot melt adhesive thread)の所定の一部を含む。上述したように、不織マットにおける繊維の位置及び配置は、不均一で、予測され得ず、或いは布と布との間で繰り返され得るものではない。また、この文献は、いわゆるバイコンポーネントスレッドから形成される織成層を開示する。これらのスレッドは、溶融可能ポリマーの鞘に載置される。熱の影響下、上述の鞘は、溶融する一方、スレッド自体は、影響されない。このように形成された溶融材料は、接着結合に関与する。上述の熱可塑性で変形可能なスレッドは、上述の鞘のみが溶融しコアは上述の溶融が起こった後もそのままの状態であるので、優れた平滑な特性を提供しない。
【0022】
また、特許文献5(登録者:Albany International Corporation)は、トランスファーベルトを開示する。なお、この文献を参照して、本願に取り込む。このトランスファーベルトは、プレスニップにおいて圧力をかけられた際、粗さの程度が低下するように、粗さの程度が圧力反応性で回復可能な程度であることを特徴とする表面幾何学性を有してもよく、これにより、プレスニップから脱出するとトランスファーベルトが紙シートを結合するように、トランスファーベルトと紙シートとの間に薄く連続的な水フィルムが形成され得る。もとの粗さがニップから脱出した後に回復する場合、紙シートは、おそらく乾燥用布などの透過性布への真空吸引又は吸引の最小限の補助により、トランスファーベルトから除去可能となる。
【0023】
特許文献5に開示のシートトランスファーベルトは、紙側と背面側とを有する強化基礎体を有してもよく、ポリマーコーティングを有してもよく、このコーティングは、少なくとも1つのポリマーのセグメントを有する均衡な分布を紙側に有するものである。この均衡な分布は、ポリマーマトリックスの形態を取り、疎水性及び親水性のポリマーセグメントの両方を有してもよい。このポリマーコーティングは、特定のフィラーを有してもよい。上述の強化基礎体は、トランスファーベルトの長手方向又は横方向の変形を阻害するように設計され、織成布であってもよく、また無端の形態であってもよく、抄紙機に導入される間、無端の形態に閉口してもよい。この強化基礎体は、背面側にニードリングすることにより結合された1つ以上の繊維バット層を有してもよい。この繊維バット層又は複数の層は、ニードリングウェブと称され得るが、製造中、上述のポリマーコーティングが紙側から強化基礎体へと含浸するのを制御するように、強化基礎体の背面側に結合される。抄紙機上のトランスファーベルトの寿命の間、上述のニードリングウェブは、強化基礎体の荷重曝露されるヤーンを摩耗による障害から防御する。
【特許文献1】米国特許第5,360,656号明細書
【特許文献2】米国特許第4,565,735号明細書
【特許文献3】米国特許第4,830,915号明細書
【特許文献4】西独国実用新案出願公開第29706427号明細書
【特許文献5】米国特許第5,298,124号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、トランスファーベルト又はプレス用布に関し、織成され(woven)、編み込まれ(knitted)、又は編成された(braided)少なくとも1つの層を有し、この層は、他の層よりも低い温度で溶融可能である。この布は、その後、溶融可能な層を溶融する温度にさらす一方、残りの構造を技術的に生(intact)な状態とする。斯かる層は、溶融可能材料を予測可能な位置及び配置とするという利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
従って、本発明は、抄紙機用布、及び以下のステップを有する抄紙機用布の形成方法に関する。つまり、所定の様式に複数の層を配置するステップであって、少なくとも1つの層が織成され、編み込まれ又は編成される、第1溶融点温度を有する材料であり、残りの層のそれぞれがこの第1の溶融点温度よりも高い溶融点温度を有する、ステップと;少なくとも1つの層が溶融し残りの層が溶融しないように、上述の複数の層を、少なくとも第1の溶融点温度と同一の温度で且つ残りの層のそれぞれの溶融点温度未満の温度で加熱するステップと;を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下の詳細な説明は、例示を目的とするものであって本発明をこれらにのみ限定することを意図するものではなく、添付した図面と組み合わせて最も良好に理解されるものであって、同様の要素及び部品には、同じ参照符号を付す。
【0027】
本発明は、抄紙機のプレス部及びその他の部に使用される各種布とともに、その他の工業用の設定条件に使用されるものに適用可能であって、限定しないが、トランスファー布、最後のプレス用布(last press fabric)、ティッシュピックアップ布(tissue pickup fabric)及び光沢布(glazing fabric)を含む。
【0028】
本発明の抄紙機用布は、真に無端で、或いは本技術分野の工業において公知の継目を有するプレス用布と同様の様式で製品に導入可能な継目を有する無端で連続的な布の製造を包含する。この布は、基礎布などのキャリア層を有してもよい。
【0029】
このキャリア層は、抄紙機用布類用の基礎体として使用される構造のいずれかであってもよく、例えば、織成布、不織布、編成布又は編み込み布、又はポリマー樹脂材料の成型シート、成型メッシュ布若しくは螺旋リンク型布などであってもよい。このキャリア層は、複数の巻きで螺旋状に巻かれた上述の材料のいずれかのストリップから製造されてもよく、各巻きは、連続する継目により隣り合うように結合されてもよい。
【0030】
このキャリア層は、2つ以上の布を有する積層構造であってもよく、これらのそれぞれは、上述の構造のいずれかであってもよい。このキャリア層が積層されるところでは、成分である基礎布のひとつは、抄紙機への導入の間、無端の形態に継ぎ合わせ得るように、機械上で継ぎ合わせ可能な布であってもよい。
【0031】
キャリア層は、人造繊維材料(staple fiber material)のバットでさらにニードリングされてもよい。人造繊維バット材料の1つ以上の層は、キャリア層にニードリングされてもよく、ウェブは、そこを介して部分的又は完全に延びていてもよい。人造繊維バット材料のウェブは、キャリア層の表面を覆う層を形成してもよい。
【0032】
キャリア層にニードリングされる人造繊維バット材料は、ポリアミドのように、当業者に使用される合成ポリマー樹脂のいずれかであってもよい。
【0033】
キャリア層は、抄紙機用布類及び工業用プロセス布の製造に使用される種々のヤーンのいずれかを有するヤーンから、織成され又はその他の方法で製造されてもよい。即ち、キャリア層は、モノフィラメント、諸よりモノフィラメント、マルチフィラメント、諸よりマルチフィラメント又は当業者に使用される合成ポリマー樹脂のいずれかの人造繊維から紡がれたヤーンを有してもよい。
【0034】
本発明による抄紙機用布における少なくとも1つの層は、溶融可能な層を有し、これは、織成され、編み込まれ、又は編成されたものであり、この抄紙機用布のその他の層のそれぞれの溶融点温度よりも低い溶融点温度を有する。この溶融可能層は、抄紙機用布の製造に使用される種々のいずれかのヤーンを有するヤーンから、織成され、編成され、又はその他の方法で製造されてもよい。即ち、溶融可能層は、いわゆる「低融点材料」などその他の残りの構造のそれぞれよりも低い溶融点温度を有する材料を含む。例えば、溶融可能層は、以下の材料のヤーンから製造されてもよい:ポリエチレン、ポリプロピレン、低融点ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン又は当業者に使用されるその他の材料が挙げられる。溶融可能層は、100%の低溶融材料を有してもよく、低溶融材料と、より高い溶融点温度を有するその他の材料との組み合わせを有してもよい。例えば、100%の低融点材料を有する溶融可能層は、シート状のトランスファーベルトに使用されてもよい。しかしながら、所望の空隙率(透過性)を得るように、完全に溶融された状態が所望されない適用例であってもよい。従って、溶融可能層は、100%未満の低融点材料を有してもよい。つまり、溶融可能層は、非溶融材料を有してもよい。さらに、上述の織成され、編み込まれ、又は編成された材料は、この目的に適した、単層編み、又は多層構造であってもよい。
【0035】
これらの層は、少なくとも1つの層が上述の残りの層よりも有意に低い溶融点温度を有する材料を有する条件で、所定の様式に配列されてもよい。この溶融可能繊維層又は複数の層は、この構造のいずれの層であってもよく、例えば、キャリア層の上部又は下部に配置される層であってもよく、又は上述のニードリングされたバット構造のいずれに配置されてもよく、バット繊維の上部層の下部に直接配置されてもよいし、他の層間に配置されてもよい。また、溶融可能層は、本発明による布の種々の表面上に直接配置されてもよい。
【0036】
上述の各層は、ニードリング、積層、又は当業者に使用されるその他の方法で組み合わされてもよい。
【0037】
このようにして得た構造は、その後、溶融可能層を溶融しその他の構造の層を技術的に生(intact)の状態、つまりこの工程の結果として障害を受けたり溶融しない状態に維持する温度に曝露される。つまり、これらの層は、この構造における少なくとも1つの溶融可能層が溶融しその他の層が溶融しないように、上述の第1の溶融点温度と少なくとも同一の温度で且つ残りの層のそれぞれの溶融点温度未満の温度に加熱される。得られる製品は、優れた平滑性及び/又は圧力均一性を有する透過性を有する布を提供する。溶融可能層が織成され、編み込まれ、又は編成されているので、溶融可能材料は、不織繊維材料と比較して、得られる構造の内部に均一で予測可能に分散される。さらに、不織繊維溶融材料とは異なり、上述の織成され、編み込まれ、又は編成された溶融可能層は、溶融可能材料の位置を正確に提供する。また、所望であれば、不透過性構造も創出され得る。さらに、溶融可能材料は、先行技術における布とは異なる「溶融」後であっても、一定の剛性(integrity)を保持する。
【0038】
従って、本発明による布は、透過性であっても不透過性であってもよい。さらに、本発明による布は、キャリア層において本質的な不均一性を「マスクする(masking)」上述の織成され、編み込まれ、又は編成された溶融可能層に起因して、圧力均一性が向上される。
【0039】
ここで特に図面を参照すると、図1は、抄紙機用布(110)の垂直断面図を示す。有利なことに、本発明は、広範な抄紙機用布に適用可能であって、限定しないが、トランスファーベルト、最終的なプレス用布、ティッシュピックアップ布及び光沢布などが挙げられ、製紙工業において種々の異なる適用例に係る可撓性の範囲を有する。
【0040】
図1に示す例において、抄紙機用布(110)は、キャリア層(120)と、ニードリングバット繊維層(130及び150)と、織成され、編成され、又は編み込まれた溶融可能層(140)とからなる。この例において、溶融可能層(140)は、織成され、編み込まれ、又は編成され、且つ第1の溶融点温度を有する材料を有する。また、キャリア層(120)並びにニードリングバット繊維層(130及び150)は、溶融可能層(140)よりも高い溶融点温度を有する材料からそれぞれなる。これらの層を配置した後、ニードリングや積層などの当業者に使用される各種の方法のいずれかで組み合わされてもよい。これらの層を組み合わせた後、この構造体を、第1の溶融点温度に加熱する。
【0041】
図2は、抄紙機用布210の垂直断面図を示す。抄紙機用布(210)は、キャリア層(220)と、ニードリングバット繊維層(230及び250)と、編成され、又は編み込まれた溶融可能層(240及び260)とからなる。溶融可能層(240及び260)は、織成され、編み込まれ、又は編成され、且つキャリア層(220)並びにニードリングバット繊維層(230及び250)のそれぞれよりも低い溶融点温度をそれぞれ有する。上述したように、各層は、互いに組み合わされて配置され、その後、加熱される。
【0042】
図3は、抄紙機用布(310)の垂直断面図を示す。抄紙機用布(310)は、キャリア層(320)と、ニードリングバット繊維層(330)と、ヤーン層(370)(織成され、又は不織状態又は螺旋に巻かれたもの)と、不織層(350)と、織成され、編成され、又は編み込まれた溶融可能層(340及び360)とからなる。本例において、ヤーン層(370)は、螺旋に巻かれたものであってもよく、且つ不織布材料を有していても有していなくてもよい。溶融可能層(340及び360)は、織成され、編み込まれ、又は編成され、且つキャリア層(320)、ニードリングバット繊維層(330)、ヤーン層(370)及び不織層350のそれぞれよりも低い溶融点温度を有する材料を有する。上述したように、各層は、互いに組み合わされて配置され、その後、加熱される。
【0043】
図4は、抄紙機用布(410)の垂直断面図を示す。抄紙機用布(410)は、キャリア層(420)と、不織状態、スパンボンドされ、又はファイバーバットであり得る層(430、450及び470)と、溶融可能層(440及び460)とからなる。本例において、キャリア層(420)は、縦糸編み込み布である。溶融可能層(440及び460)は、織成され、編成され、又は編み込まれ、且つキャリア層(420)並びに層(430、450及び470)のそれぞれよりも低い溶融点温度を有する材料を有する。上述したように、各層は、互いに組み合わされて配置され、その後、加熱される。
【0044】
図5は、抄紙機用布(510)の垂直断面図を示す。抄紙機用布(510)は、キャリア層(520)と、不織状態、スパンボンドされ、又はファイバーバットであり得る層(530及び550)と、溶融可能層(540及び560)とからなる。本例において、キャリア層(520)は、螺旋巻きのストリップ材料から製造されてもよい。溶融可能層(540及び560)は、織成され、又は編成され、且つキャリア層(520)並びに層(530及び550)のそれぞれよりも低い溶融点温度を有する材料を有する。上述したように、各層は、互いに組み合わされて配置され、その後、加熱される。
【0045】
図6は、抄紙機用布(610)の垂直断面図を示す。抄紙機用布(610)は、キャリア層(620)と、不織状態又は繊維バットであり得る層(630)と、溶融可能層(640)とからなる。溶融可能層(640)は、織成され、編み込まれ、又は編成され、且つキャリア層(620)及び層(630)のそれぞれよりも低い溶融点温度を有する材料を有する。上述したように、各層は、互いに組み合わされて配置され、その後、加熱される。
【0046】
本発明の種々の変更は、この開示の内容に鑑み当業者に容易であるが、添付の特許請求の範囲を越えて本発明を改変するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】織成され、編成され、又は編み込まれた1つの溶融可能層を有する複数の層からなる、本発明による抄紙機用布の断面図である。
【図2】織成され、編成され、又は編み込まれた2つの溶融可能層を有する複数の層からなる、本発明による抄紙機用布の第1代替実施例の断面図である。
【図3】織成され、編成され、又は編み込まれた2つの溶融可能層を有する複数の層からなる、本発明による抄紙機用布の第2代替実施例の断面図である。
【図4】織成され、編成され、又は編み込まれた2つの溶融可能層を有する複数の層からなる、本発明による抄紙機用布の第3代替実施例の断面図である。
【図5】織成され、編成され、又は編み込まれた2つの溶融可能層を有する複数の層からなる、本発明による抄紙機用布の第4代替実施例の断面図である。
【図6】織成され、編成され、又は編み込まれた溶融可能層を有する複数の層からなる、本発明による抄紙機用布の第5代替実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
110 抄紙機用布
120 キャリア層
130 ニードリングバット繊維層
140 溶融可能層
150 ニードリングバット繊維層
210 抄紙機用布
220 キャリア層
230 ニードリングバット繊維層
240 溶融可能層
250 ニードリングバット繊維層
260 溶融可能層
310 抄紙機用布
320 キャリア層
330 ニードリングバット繊維層
340 溶融可能層
350 不織層
360 溶融可能層
370 ヤーン層
410 抄紙機用布
420 キャリア層
430 層
440 溶融可能層
450 層
460 溶融可能層
470 層
510 抄紙機用布
520 キャリア層
530 層
540 溶融可能層
550 層
560 溶融可能層
610 抄紙機用布
620 キャリア層
630 層
640 溶融可能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機用布の形成方法であって、
所定の様式で複数の層を配置するステップであって、少なくとも1つの層は、織成され、編み込まれ、又は編成され、且つ第1の融点温度を有する材料を有し、且つ残りの層のそれぞれは、前記第1の融点温度よりも高い融点温度を有する、ステップと、
前記の複数の層を、前記少なくとも1つの層が溶融し前記残りの層が溶融しないように、前記第1の溶融点温度と少なくとも同一で且つ前記残りの層のそれぞれの前記溶融点温度未満の温度に、加熱するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
第1層は、キャリア層を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2層は、繊維バットを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維バットは、前記キャリア層にニードリングされ、該キャリア層を介して少なくとも部分的に延びていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリア層は、織成され、不織状態であり、編み込まれ、編成され、スパイラルリンクされ、又は螺旋巻きされたストリップの材料であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン及びポリオレフィンからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抄紙機用布は、プレス用布であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抄紙機用布は、トランスファーベルトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの層は、無端織成、平織り、又は螺旋巻きストリップの材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの層は、織成され、編み込まれ、又は編成され、且つ第1の融点温度を有する材料を有し、且つ残りの層のそれぞれは、前記第1の融点温度よりも高い融点温度を有する、複数の層を所定の様式で有する抄紙機用布であって、
前記少なくとも1つの層は、前記少なくとも1つの層が溶融し前記残りの層が溶融しないように、前記第1の溶融点温度と少なくとも同一で且つ前記残りの層のそれぞれの前記溶融点温度未満の温度に加熱された際、溶融されることを特徴とする抄紙機用布。
【請求項11】
第1層は、キャリア層を有することを特徴とする請求項10に記載の抄紙機用布。
【請求項12】
第2層は、繊維バットを有することを特徴とする請求項11に記載の抄紙機用布。
【請求項13】
前記繊維バットは、前記キャリア層にニードリングされ、該キャリア層を介して少なくとも部分的に延びていることを特徴とする請求項12に記載の抄紙機用布。
【請求項14】
前記キャリア層は、織成され、不織状態であり、編み込まれ、編成され、スパイラルリンクされ、又は螺旋巻きされたストリップの材料であることを特徴とする請求項11に記載の抄紙機用布。
【請求項15】
前記材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン及びポリオレフィンからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項10に記載の抄紙機用布。
【請求項16】
前記抄紙機用布は、プレス用布であることを特徴とする請求項10に記載の抄紙機用布。
【請求項17】
前記抄紙機用布は、トランスファーベルトであることを特徴とする請求項10に記載の抄紙機用布。
【請求項18】
前記少なくとも1つの層は、無端織成、平織り、又は螺旋巻きストリップの材料であることを特徴とする請求項10に記載の抄紙機用布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−507635(P2008−507635A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522599(P2007−522599)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/025253
【国際公開番号】WO2006/020097
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】