説明

トランスフォーミング増殖因子β−9の変異体及びその使用方法

新規な哺乳類のZtgfβ−9ポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び関連する組成物、並びに抗体及び抗イディオタイプ抗体を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞の増殖に対する最終分化という対立する過程、及びアポトーシスによるプログラムされた細胞死の適切な調節は、正常な発生及び恒常性維持における重要な側面の一つであり(Raff, M.C., Cell, 86: 173-175 (1996))、多くのヒトの疾病においてその異常が見出されている。例えば、Sawyers, CL. et al., Cell, 64:337-350 (1991); Meyaard, L. et al., Science, 257:217-219 (1992); Guo, Q. et al., Nature Med., 4:957-962 (1998); Barinaga, M. Science, 273:735-737 (1996); Solary, E. et al., Eur. Respir. J., 9: 1293-1305 (1996); Hamet, P. et al., J. Hypertension, 14:S65-S70, (1996); Roy, N. et al. Cell, 80: 167-178 (1995); 及びAmbrosini, G., Nature Med., 8:917-921 (1997)を参照されたい。このバランスの調節の理解に至る多くの進展がなされている。例えば、シグナル伝達系は、増殖因子、ペプチドホルモン、及び細胞‐細胞相互作用などの細胞外刺激が前駆細胞から特定の系統への傾倒、及びその後の増殖発展を調節することを通じて明らかにされてきた(Morrison, SJ. et al., Cell, 88:287-298 (1997))。更に、殆どの細胞種において、細胞周期からの逸脱及び最終分化は繋がっていることが見出されている。例えば、Coppola, J.A. et al. Nature, 320:760-763 (1986); Freytag, S.O., Mol. Cell. Biol. 8: 1614-1624 (1988); Lee, E.Y. et al., Genes Dev., 8:2008-2021 (1994); Morgenbesser, S.D., et al., Nature, 371 :72-74 (1994); Casaccia-Bonnefil, P. et al., Genes Dev., 11 :2335-2346 (1996); Zacksenhaus, E. et al., Genes Dev., 10:3051-3064 (1996);及びZhang, P. et al., Nature, 387: 151-158 (1997)を参照を参照されたい。アポトーシス(プログラムされた細胞死)もまた、多くの発生及び恒常性維持の過程において重要な役割を演じており(Raff, M. C, Nature, 356:397-400 (1992))、多くの場合、最終分化と協調して調節される(Jacobsen, K.A. et al., Blood, 84:2784-2794 (1994); Yan, Y. et al., Genes Dev., 11 :973-983 (1997))。ゆえに、各系統における細胞種、組織、器官又はさらには多細胞生物は、増殖による細胞生産の増加と最終分化及びアポトーシスに起因する細胞数の減少との間の微妙に調整されたバランスの結果であると考えられる。このバランスは、おそらく複数の調節経路の収束により、協調して制御されている。こなどのネットワークの新規な構成要素の同定は、正常な細胞のプロセス並びにヒトの病態の病因及び治療の両者において重要な洞察を提供し得る。
【0002】
インターロイキン-17(IL−17)は、免疫系の重要な調節因子の一つとして関与しているサイトカインである(Spriggs, M.K., J. Clinical Immunology, 17:366-369 (1997), Broxmeyer, H.E., J. Experimental Medicine, 183:2411-2415 (1996), Yao, Z., et al., J. Immunology, 155:5483-5486(1995), Yao, Z., et al., Immunity, 3:811-821 (1995))。ヒトIL−17は活性型のCD4陽性の記憶T細胞においてほぼ排他的に生産される(しかしながらマウスでは、CD4陰性/CD8陰性のT細胞もまたIL−17を発現する)(Aarvak, T., et al., J. Immunology, 162: 1246-1251 (1999), Kennedy, J., et al., J. Interferon Cytokine Research, 16:611-617 (1996))。対照的に、IL−17受容体(IL−17R)は偏在的な発現が認められる((Yao, Z., et al., Immunity, 3:811-821 (1995))。IL−17は様々な異なる間質細胞からのIL-6、IL-8、単球走化性ペプチド-1、及びG-CSFの分泌を誘導するが、リンパ球様細胞によるサイトカイン生産に対しては影響を有しない(Teunissen, M.B.M., J. Investigative Dermatology, 111 :645-649 (1998), Jovanovic, D.V., et al., J. Immunology, 160:3513-3521 (1998), Chabaud, M., et al., J. Immunology, 161 :409-414 (1998), Cai, X.-Y., et al., Immunology Letters, 62:51-58 (1998), Fossiez, F., et al., J. Experimental Medicine, 183:2593-2603 (1996))。IL−17はまた、線維芽細胞表面の接着分子ICAM‐1の発現を上昇させ、及び顆粒球生成を刺激し得る(Schwarzenberger P., et al., J. Immunology, 161 :6383-9 (1998).)。
【0003】
総合すると、これらの知見は、IL−17が炎症誘発性のサイトカインとして機能することを示唆している。IL−17はまた、樹状細胞の分化、破骨細胞形成を促進し、ヒト変形性関節炎下の軟骨組織において一酸化窒素の生産を誘導することができ、及び関節リウマチの患者から採取した滑液中に存在している(Antonysamy, M. A., et al., J. Immunology, 162:577-584 (1999), Kotake, S., et al., J. Clinical Investigation, 103: 1345-1352, (1999), Attur, M.G., et al., Arthritis & Rheumatism, 40: 1050-1053 (1997)。IL−17を可溶性IL−17受容体タンパク質で阻害すると、心臓における同種移植片拒絶を抑制することが見出され、これは、腎臓の同種移植片を受けている人からの腎生検中のIL−17 mRNAの増加と相関している(Antonysamy, M.A., et al., J. Immunology, 162:577-584 (1999))。IL−17のmRNA発現量の増加はまた、多発性硬化症のヒトにおいても認められる(Matusevicius, D. et al., Multiple Sclerosis, 5: 101-104 (1999))。更に、IL−17は、ヌードマウスにおけるヒト頸部腫瘍の腫瘍原性を高め得る(Tartour, E. et al., Cancer Res., 59:3698-36704 (1999))。よって、IL−17は、免疫系及び炎症の過程の制御において基本的な役割を担っていると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、増殖、分化、アポトーシス経路に関与する新規なタンパク質を発見することという必要性が存在する。生体内におけるこれらの経路の誘導因子及び阻害因子の両方の活性は、新規な増殖、分化、及びアポトーシスタンパク質、そのアゴニスト並びにアンタゴニストの大きな臨床的可能性及び必要性を示す。また、抗ウイルス活性を有する新規な薬物を発見するという必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる必要性をトランスフォーミング増殖因子ベータ‐9と呼ばれる新規な抗ウイルスポリペプチド(以下Ztgfβ−9と称する)、及びこれに関する組成物及び方法を提供することにより対処する。このポリペプチドは、下記の実施例10において示されるように抗ウイルス活性を有する。また、該ポリペプチドを用いて、ニューロンのグリア細胞、リンパ球、造血細胞及び間質細胞の増殖、分化及びアポトーシスを制御することができる。
【0006】
従って、本発明の一の側面においては、単離されたZtgfβ−9ポリペプチド及びポリヌクレオチドが提供される。ヒトの配列は配列番号1及び2により明示される。
【0007】
配列番号1のヌクレオチド配列は配列番号1及び配列番号2に示されるようにMetで始まる約202個のアミノ酸のポリペプチドをコードする読み取り枠を含む。予想されるシグナル配列は、アミノ酸残基1のメチオニンからアミノ酸残基15のアラニン(これを含む)まで伸長して構成される。従って、シグナル配列を切除した成熟配列は、配列番号2におけるアミノ酸残基16のアラニンからアミノ酸残基202のプロリン(これを含む)まで伸長する。この成熟配列はまた、配列番号3によって記載されている。他の一の態様においては、シグナル配列はアミノ酸残基16のアラニンまで伸長する。これは、配列番号2におけるアミノ酸残基17のグリシンからアミノ酸残基202のプロリンまで伸長する成熟配列を生産する。この成熟配列はまた、配列番号4によって記載されている。もう一つの態様においては、シグナル配列は、アミノ酸残基17のグリシン(これを含む)まで伸長する。これは、配列番号2におけるアミノ酸残基18のアラニンからアミノ酸残基202のプロリン(これを含む)まで伸長する成熟配列をもたらす。更に、この成熟配列は、配列番号5によって記載されている。Ztgfβ−9のもう一つの変異体は、配列番号16及び配列番号17に開示されている。成熟配列は、アミノ酸残基23のアラニンからアミノ酸残基209のプロリン(これを含む)まで伸長している。この成熟配列はまた、配列番号18により明示されている。
【0008】
マウスのZtgfβ−9は、配列番号8及び9によって明示されている。シグナル配列は、1位にあるメチオニンから22位にあるアラニンまで伸長している。従って、成熟配列は、配列番号9における23位にあるアラニンから205位にあるアルギニンまで伸長している。さらに、この成熟配列は、配列番号3によって明らかにされている。
【0009】
本発明の追加の態様は、前述したアミノ酸配列を有するZtgfβ−9ポリペプチドのエピトープを担持する部位のアミノ酸配列を有するペプチド又はポリペプチドに関する。本発明におけるZtgfβ−9ポリペプチドのエピトープを担持する部分のアミノ酸配列を有するペプチド又はポリペプチドは、少なくとも9個、好ましくは15個及び更に好ましくは30〜50個のアミノ酸を含む。もっとも、任意の長さであって、及び前述した本発明のポリペプチドの全アミノ酸配列(これを含む)までのエピトープを担持するポリペプチドもまた本発明に含まれる。こうしたエピトープを担持するポリペプチドの例は、配列番号13、14、15、19、20、21及び22が挙げられる。また、任意のこれらのポリペプチドであって、他のポリペプチド又は担体分子と融合されるこれらのペプチドのいずれかが請求される。また、Ztgfβ−9ポリペプチドのエピトープを担持する部分をコードする単離された核酸が請求される。
【0010】
本発明における更なる態様は、今回開示された核酸及びポリヌクレオチド配列の長鎖型及び短鎖型の変異体である。具体的には、短鎖型変異体の核酸配列は、配列番号23に、及びポリヌクレオチド配列は、配列番号24である。長鎖型変異体の核酸配列は、配列番号25であり、ポリヌクレオチド配列は、配列番号26である。
【0011】
さらに、本発明は、前述のペプチド又はポリペプチドの単離されたペプチド又はポリペプチドで構成され、1個以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/又は置換により修飾されたアミノ酸配列を有し、前記ペプチド又はポリペプチドの生物学的活性を維持している。
【0012】
本発明の更なる一の側面において、ペプチド結合によって連結された第一部分と第二部分から本質的になるキメラポリペプチドが提供される。キメラポリペプチドの第一部分は本質的には、(a) 前述のZtgfβ−9ポリペプチド、(b) 前述のポリペプチドの対立遺伝子変異体からなる。キメラポリペプチドの第二部分は、本質的には、アフィニティータグなどの他のポリペプチドからなる。一の態様において、このアフィニティータグは、イムノグロブリンFcポリペプチドである。また、本発明は、キメラポリペプチドをコードする発現ベクター及びキメラポリペプチドを生産するように遺伝子導入された細胞を提供する。
【0013】
本発明のもう一つの側面は、単離された核酸分子であって、(a) 前述のZtgfβ−9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び(b) (a)におけるヌクレオチド配列のいずれかに対し相補的なヌクレオチド配列からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む前記核酸分子を提供する。
【0014】
本発明の更なる態様には、単離された核酸分子であって、前記(a)若しくは(b)のヌクレオチド配列のいずれかと少なくとも90%の相同性、更に好ましくは95%、97%、98%、若しくは99%の相同性を有するポリヌクレオチド、又は前記(a)又は(b)のヌクレオチド配列のいずれかとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む前記核酸分子が含まれる。
【0015】
本発明の更なる態様には、前記Ztgfβ−9ポリペプチドのいずれかと少なくとも90%の相同性、更に好ましくは95%、97%、98%、又は99%の相同性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド、及びこれらのポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが含まれる。
【0016】
本発明のもう一つの側面において、発現ベクターであって、
(a)転写プロモーター;(b)前述のポリペプチドをコードするDNA断片、及び、(c)転写ターミネーターを含む発現ベクターが提供され、ここで、前記プロモーター、DNA断片、ターミネーターは操作可能な形で連結されている。
【0017】
本発明の第三の側面において、上記で開示された発現ベクターが導入された培養された有核細胞が提供され、ここで前記細胞は、DNA断片によってコードされたタンパク質ポリペプチドを発現する。
【0018】
本発明のもう一つの態様は、上述のZtgfβ−9ポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体である。また、Ztgfβ−9ポリペプチドに結合する抗体を生産する方法であって、哺乳類がそのポリペプチドに対する抗体を生産するように哺乳類にZtgfβ−9ポリペプチド又はZtgfβ−9のエピトープを担持するポリペプチドを接種し;及び前記抗体を単離する過程を含む前記方法が請求される。
【0019】
本発明におけるこれらの側面及び他の側面は、後に続く詳細な説明を参照することで明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書に引用されている全ての参考文献の教示は、その全てにおいて参照により本明細書中に援用される。
【0021】
後述の本説明において、多くの用語は広義に使用される。続く定義は本発明の理解を促すために提供される。
【0022】
本明細書中で使用するとき、「核酸」又は「核酸分子」は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、並びに連結反応、切断反応、エンドヌクレアーゼ作用、及びエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより生ずる断片を指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(DNA及びRNAなど)、又は天然に存在するヌクレオチドのアナログ(例えば、天然に存在するヌクレオチドのα-鏡像異性体)、又はその両者の組み合わせを含み得る。修飾されたヌクレオチドは、糖部分及び/又はピリミジン若しくはプリン塩基部分の改変を有し得る。糖修飾は、例えば、一以上のヒドロキシ基をハロゲン、アルキル基、アミン、及びアジド基で置換することを含み、あるいは糖は、エーテル又はエステルとして官能化され得る。更に、全ての糖部分は、アザ糖及び炭素環式の糖アナログなどの、立体的及び電子的に類似した構造物に置換され得る。塩基部分の修飾の例には、アルキル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリン若しくはピリミジン、又は他の周知な複素環式の置換基が含まれる。核酸の単量体は、ホスホジエステル結合、又このような連結のアナログによって連結され得る。ホスホジエステル連結のアナログには、ホスホロチオエート、ホソホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニリデート、ホスホロアミデートなどが含まれる。また、「核酸」なる用語には、いわゆる「ペプチド核酸」が含まれ、ポリアミド主鎖に結合した、天然に存在するか又は修飾された核酸塩基を含む。核酸は、一本鎖又は二本鎖のいずれのものでもよい。
【0023】
「核酸分子の相補体」なる用語は、相補的なヌクレオチド配列、参照ヌクレオチド配列と比較した場合の逆配向を有する核酸配列を指す。例えば、5’ATGCACGGG3’は、5’CCCGTGCAT3’と相補的である。
【0024】
「コンティグ」なる用語は、もう一つの核酸分子と同一の配列であるか又は相補的な配列の隣接する伸長を有する核酸分子を意味する。隣接する配列は、該核酸分子の全体において又はその一部に沿って、核酸分子の一定の伸長と「重複」するといわれる。
【0025】
「縮重ヌクレオチド配列」なる用語は、ポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド分子と比較したとき、1以上の縮重コドンを含むヌクレオチド配列を意味する。縮重コドンには、ヌクレオチドの異なるトリプレットを含むが、同一のアミノ酸残基をコードする (即ち、GAU及びGACのトリプレットはそれぞれAspをコードする)。
【0026】
「構造遺伝子」なる用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写される核酸分子を指し、次に、特異的なポリペプチドの特徴を有するアミノ酸配列に翻訳される。
【0027】
「単離された核酸分子」は、生物のゲノムDNAに組み込まれていない核酸分子である。例えば、細胞のゲノムDNAから分離された、増殖因子をコードするDNA分子は、単離されたDNA分子である。単離された核酸分子のもう一つの例は、生物のゲノムに組み込まれていない、化学的に合成された核酸分子である。特定の種から単離された核酸分子は、その種の染色体の完全なDNA分子よりも小さい。
【0028】
「核酸分子構築物」は、天然に存在しない配置で組み合わせられ並列された核酸の断片を含むように、ヒトの介入によって修飾された、一本鎖又は二本鎖の核酸分子である。
【0029】
「直鎖DNA」は、遊離状態の5’及び3’末端を有する、環状ではないDNA分子を意味する。直鎖DNAは、プラスミドなどの閉じた環状DNAを酵素消化、又は物理的な破壊によって調製され得る。
【0030】
「相補的DNA(cDNA)」は、酵素である逆転写酵素によりmRNAを鋳型として形成される、一本鎖のDNA分子である。典型的には、mRNAの一部分に相補的なプライマーが逆転写反応の開始に採用される。また、当業者は、「cDNA」なる用語をこのような一本鎖DNA分子、及びその相補的DNA鎖から成る二本鎖を指す用語としても使用する。また、「cDNA」なる用語は、RNAの鋳型から合成されたcDNA分子のクローンを指す。
【0031】
「プロモーター」は、構造的遺伝子の転写を指向するヌクレオチド配列である。典型的には、プロモーターは、遺伝子の5’非コード領域であって、構造遺伝子の転写開始部位に近接して位置する。転写開始に機能するプロモーター内の配列エレメントは、多くの場合、共通ヌクレオチド配列により特徴付けられる。これらのプロモーターエレメントは、RNAポリメラーゼ結合部位、TATA配列、CAAT配列、分化特異的エレメント(DSE; McGehee et al., Mol. Endocrinol. 7:551 (1993))、環状AMP応答エレメント(CRE)、血清応答エレメント(SRE;Treisman, Seminars in Cancer Biol. 1 :47 (1990))、グルココルチコイド応答エレメント(GRE)、及びCRE/ATF(O'Reilly et al., J. Biol. Chem. 267: 19938 (1992)), AP2 (Ye et al., J. Biol. Chem. 269:25728 (1994))、SP1、環状AMP応答エレメント結合タンパク質(CREB;Loeken, Gene Expr. 3:253 (1993))、及びオクタマー因子(一般的に、Watson et al., eds., Molecular Biology of the Gene, 4th ed. (The Benjamin/Cummings Publishing Company, Inc. 1987)、及びLemaigre and Rousseau, Biochem. J. 303: 1 (1994)を参照されたい)などの他の転写因子の結合部位を含む。プロモーターが誘導型のプロモーターであるとき、誘導因子に応答して転写率が上昇する。対照的に、プロモーターが構成的プロモーターであるときは、転写率は誘導因子により制御されない。抑制的プロモーターについても知られている。
【0032】
「コアプロモーター」は、プロモーターの機能の本質的なヌクレオチド配列を含み、TATAボックス及び転写開始点が含まれる。この定義により、コアプロモーターは、活性を上昇させ、又は組織特異的活性をもたらし得る特異的配列が無い場合には、検出可能な活性を持っていてもよく又は持っていなくてもよい。
【0033】
「調節エレメント」は、コアプロモーターの活性を調節するヌクレオチド配列である。例えば、調節エレメントは、特定の細胞、組織、又は細胞小器官において排他的又は選択的に転写を可能とする細胞性因子と結合するヌクレオチド配列を含み得る。これらの型の調節エレメントは、通常、「細胞特異的な」、「組織特異的な」、又は「細胞小器官特異的な」方法で発現される遺伝子と関連する。例えば、Ztgfβ‐調節エレメントは、脳、脊髄、心臓、骨格筋、胃、膵臓、副腎、唾液腺、肝臓、小腸、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、心臓、甲状腺、気管、睾丸、卵巣及び胎盤における遺伝子発現を選択的に誘導する。
【0034】
「エンハンサー」は、転写開始部位と比べてエンハンサーの距離また配向とは無関係に、転写の効率を上昇し得る型の調節エレメントである。
【0035】
「異種(heterologous)DNA」は、所定の宿主細胞内に天然には存在しないDNA分子又はDNA分子の集団を指す。特定の宿主細胞に対して異種であるDNA分子は、その宿主DNAが非宿主DNA(即ち、外来性DNA)と組み合わされる限り、宿主細胞種からのDNA(即ち、内在性DNA)を含み得る。例えば、転写プロモーターを含む宿主DNA断片と操作可能な形で連結されるポリペプチドをコードする非宿主DNA断片を含むDNA分子は、異種DNA分子であるとみなされる。逆に、異種DNA分子は、外来性プロモーターと操作可能な形で連結される内在性遺伝子を含み得る。もう一つの例証として、野生型細胞からの遺伝子を含むDNA分子は、そのDNA分子が野生型遺伝子を欠失する突然変異細胞中に導入される場合は、異種DNAとみなされる。
【0036】
「ポリペプチド」は、天然又は合成のいずれかによって生産されるかにかかわらず、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基のポリマーである。約10個未満のアミノ酸残基のポリペプチドは、一般的に「ペプチド」と称される。
【0037】
「タンパク質」は、1以上のポリペプチド鎖を含む高分子である。また、タンパク質は、炭水化物基などの非ペプチド成分を含み得る。炭水化物及び他の非ペプチド置換基は、タンパク質が生産される細胞によりタンパク質に付加され、そして細胞の型によって変わり得る。タンパク質は、それらのアミノ酸の骨格の構造の観点から本明細書中で定義される;炭水化物基などの置換基は一般に特定されないが、それにもかかわらず存在し得る。
【0038】
異種DNA分子によりコードされるペプチド又はポリペプチドは、「異種」ペプチド又はポリペプチドである。
【0039】
「組み込まれた遺伝子エレメント」は、エレメントがヒトの操作により細胞内に導入された後に、宿主細胞の染色体に組み込まれたDNAの断片である。本発明において、組み込まれた遺伝子エレメントは、最も一般的には、エレクトロポレーション法又は他の技法により細胞内に導入される、直鎖化されたプラスミドにからする。組み込まれた遺伝子エレメントは、元の宿主細胞からその子孫に受け継がれる。
【0040】
「クローニングベクター」は、プラスミド、コスミド又はバクテリオファージなどの核酸分子であって、宿主細胞中で自律的に複製する能力を有する。クローニングベクターは、典型的には、ベクターの本質的な生物学的機能の損失を伴わない決定可能な方法による核酸配列の挿入を可能にする1又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位、並びにクローニングベクターにより形質転換された細胞の同定及び選択に用いるのに適切なマーカー遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含む。マーカー遺伝子は、典型的には、テトラサイクリン耐性又はアンピシリン耐性を提供する遺伝子を含む。
【0041】
「発現ベクター」は、宿主細胞中で発現される遺伝子をコードする核酸分子である。典型的には、発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子、及び転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は、通常、プロモーターの制御下に置かれ、そしてこのような遺伝子は、プロモーターと「操作可能な形で連結される」と言われる。同様に、調節エレメント及びコアプロモーターは、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調節している場合、操作可能な形で連結されている。
【0042】
「組換え宿主」は、クローニングベクター又は発現ベクターなどの異種核酸分子を含む細胞である。ここでの状況においては、組換え宿主の一例は、発現ベクターからZtgfβ−9を生産する細胞である。対照的に、Ztgfβ−9は、Ztgfβ−9の「天然の供給源」であり、そして発現ベクターを欠いている細胞により生産され得る。
【0043】
「統合的形質転換体」は、細胞のゲノムDNAに異種DNAが組み込まれた組換え宿主細胞である。
【0044】
「融合タンパク質」は、少なくとも2つの遺伝子のヌクレオチド配列を含む核酸分子により発現されるハイブリッドタンパク質である。例えば、融合タンパク質は、親和性マトリックスと結合するポリペプチドと融合されるZtgfβ−9ポリペプチドの少なくとも一部を含み得る。このような融合タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーを用いて大量のZtgfβ−9を単離するための手段を提供する。
【0045】
「受容体」という用語は、「リガンド」と呼ばれる生物活性分子と結合する細胞結合型タンパク質を意味する。この相互作用は、細胞に及ぼすリガンドの効果を仲介する。受容体は、膜結合型受容体、細胞質受容体又は核受容体;単量体型受容体(例えば、甲状腺刺激ホルモン受容体、β‐アドレナリン作動性受容体)又は多量体型受容体(例えば、PDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL‐3受容体、GM‐CSF受容体、G‐CSF受容体、エリスロポエチン受容体及びIL‐6受容体)であり得る。膜結合型受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、並びに典型的にはシグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインを含むマルチドメイン構造により特徴付けられる。ある膜結合受容体では、細胞外リガンド結合ドメイン及び細胞内エフェクタードメインが、完全な機能性受容体を含む区分されたポリペプチド中に置かれる。
【0046】
一般に、リガンドと受容体との結合は、エフェクタードメインと細胞内の他の分子(単数又は複数)との間の相互作用を引き起こす受容体における立体構造の変化を生じ、次に細胞の代謝における変化が起こる。多くの場合受容体‐リガンド相互作用に結び付けられる代謝現象には、遺伝子の転写、リン酸化、脱リン酸化、環状AMP生産の増加、細胞内のカルシウムの動員、膜脂質の動員、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解、及びリン脂質の加水分解が含まれる。
【0047】
「分泌シグナル配列」という用語は、より大きいポリペプチドの一コンポーネントとして、それが合成される細胞の分泌経路を通してより大きいポリペプチドを指向するペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を意味する。より大きいポリペプチドは、一般に、分泌経路を通して輸送中に分泌ペプチドを取り出すために切断される。
【0048】
「単離されたポリペプチド」は、炭水化物、脂質、又は本来はポリペプチドと関連した他のタンパク性の汚染した細胞コンポーネントが本質的に含まれないポリペプチドである。典型的には、単離されたポリペプチドの調製物はポリペプチドを高純度の形態、即ち少なくとも約80%の純度、少なくとも約90%の純度、少なくとも約95%の純度、95%より高い純度、又は99%より高い純度で含む。特定のタンパク質調製物がある単離されたポリペプチドを含むことを示す一つの方法は、タンパク質調製物のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び該ゲルのクーマシーブリリアントブルー染色後の単一のバンドの出現による。しかしながら、「単離された」という用語は、二量体、又は選択的にグリコシル化、又は誘導された形態などの、選択的な物理的形態で同一ポリペプチドの存在を排除しない。
【0049】
「アミノ末端又はN−末端」及び「カルボキシル末端又はC−末端」という用語は、本明細書中では、ポリペプチド内の位置を意味するように使用される。状況が許す場合は、これらの用語は、接近性又は相対的な位置を表示するためのポリペプチドの特定の配列又は部分に関連して使用される。例えば、ポリペプチド内の基準となる配列に対しカルボキシル末端に位置するある配列は、基準となる配列のカルボキシル末端に近位に位置するが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端に位置しない。
【0050】
「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成を指す。例えば、構造遺伝子の場合、発現は、構造遺伝子のmRNAへの転写、及びmRNAの1以上のポリペプチドへの翻訳を含む。
【0051】
「スプライス変異体」という用語は、本明細書中では、遺伝子から転写されるRNAの選択的形態を意味するように使用される。スプライス変異は、転写されたRNA分子内、又はあまり一般的ではないが別個に転写されたRNA分子間における、選択的スプライシング部位の使用により天然に生じ、そして同一の遺伝子から転写された複数のmRNAをもたらし得る。スプライス変異体は、改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。また、スプライス変異体という用語は、本明細書中では、遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変異体にコードされるポリペプチドを意味するように使用される。
【0052】
本明細書中で使用するとき、「免疫刺激物質」という用語は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、共刺激分子、造血因子、及びこれらの分子の合成されたアナログを含む。
【0053】
「相補/抗相補対」という用語は、適切な条件下において非共有結合による、安定な対を形成する非同一な部分を意味する。例えば、ビオチン及びアビジン(又はストレプトアビジン)は、相補/抗相補対の原型的な構成要員である。他の例示的な相補/抗相補対は、受容体/リガンド対、抗体/抗原(又はハプテン若しくはエピトープ)対、センス/アンチセンスポリヌクレオチド対、及びこれに類するものなどを含む。相補/抗相補対のその後の解離が望ましい場合、相補/抗相補対は、好ましくは109-1未満の結合親和性を有する。
【0054】
「抗イディオタイプ抗体」は、イムノグロブリンの可変領域ドメインと結合する抗体である。本状況において、抗イディオタイプ抗体は、抗Ztgfβ−9抗体の可変領域と結合し、したがって、抗イディオタイプ抗体は、Ztgfβ−9のエピトープを模倣する。
【0055】
「抗体断片」は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、及びこれに類するものなどの抗体の部分である。構造にかかわらず、抗体断片は、無傷の抗体により認識されもの同じ抗原と結合する。例えば、抗Ztgfβ−9モノクローナル抗体断片は、Ztgfβ−9のエピトープと結合する。
【0056】
また、「抗体断片」という用語には、合成された又は遺伝子操作されたポリペプチド、例えば、特異的抗原と結合する、軽鎖可変領域からなるポリペプチド、本鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖及び本鎖可変領域がペプチドリンカーにより連結される組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、並びに超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小の認識単位が含まれる。
【0057】
「キメラ抗体」は、齧歯類の抗体からの可変ドメイン及び相補性決定領域を含み、抗体分子の残りの部分はヒト抗体にからする組換えタンパク質である。
【0058】
「ヒト化抗体」は、モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域がマウスのイムノグロブリンの重可変鎖及び軽可変鎖からヒト可変ドメインに移転された組換えタンパク質である。
【0059】
本明細書中で使用するとき、「治療剤」とは、治療に有用な複合体を生産するための抗体部分に結合される分子又は原子である。治療剤の例には、薬剤、毒素、免疫刺激物質、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤又は色素、及び放射性同位体が含まれる。
【0060】
「検出可能な標識」とは、診断に有用な分子を生産するための抗体部分に結合され得る分子又は原子である。検出可能標識の例には、キレート剤、光活性剤、放射性同位体、蛍光剤、常磁性イオン、又は他のマーカー部分が含まれる。
【0061】
「アフィニティータグ」という用語は、第二のポリペプチドの精製若しくは検出を提供する、又は第二のポリペプチドが基質に結合するための部位を提供する、第二のポリペプチドと結合し得るポリペプチド断片を意味するように本明細書中で使用される。原則的に、抗体若しくは他の特異的な結合剤が使用可能な任意のペプチド又はタンパク質が、アフィニティータグとして用いられ得る。アフィニティータグには、ポリヒスチジン配列(tract)、プロテインA(Nilsson et al., EMBO J. 4: 1075 (1985); Nilsson et al., Methods Enzymol. 198: 3 (1991))、グルタチオンSトランスフェラーゼ(Smith and Johnson, Gene 67: 31 (1988))、Glu‐Gluアフィニティータグ(Grussenmeyer et al., Pro. Natl. Acad. Sci. USA 82: 7952 (1985))、サブスタンスP、FLAGペプチド(Hopp et al., Biotechnology 6: 1204 (1988))、ストレプトアビジン結合ペプチド、又は他の抗原エピトープ又は結合ドメインが含まれる。一般的に、Ford et al., Protein Expression and Purification 2: 95 (1991)を参照されたい。アフィニティータグをコードするDNAは、商業的供給者(例えば、Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)から入手可能である。
【0062】
「無改変抗体」とは、抗体断片とは対照的に、治療剤と結合していない完全な抗体である。無改変抗体には、ポリクローナル及びモノクローナルの両方の抗体、並びにキメラ及びヒト化抗体等のある種の組換え抗体が含まれる。
【0063】
本明細書中で使用するとき、「抗体コンポーネント」という用語は、完全な抗体及び抗体断片の両方を含む。
【0064】
「免疫抱合体(immunoconjugate)」は、抗体コンポーネントと治療剤又は検出可能な標識の複合体である。
【0065】
本明細書中で使用するとき、「抗体融合タンパク質」という用語は、抗体コンポーネントと治療剤を含む組換え分子を指す。そのような融合タンパク質に適した治療剤の例としては、免疫刺激物質(「抗体‐免疫刺激物質融合タンパク質」)及び毒素(「抗体‐毒素融合タンパク質」)が含まれる。
【0066】
「癌関連抗原」とは、通常の対照物としての細胞において通常発現しない、又は低いレベルで発現するタンパク質である。癌関連抗原の例としては、アルファ‐フェトプロテイン、癌胎児性抗原、及びHer−2/neuが含まれる。多くの他の癌関連抗原の実例は、当業者には既知である。例えば、Urban et al., Ann. Rev. Immunol. 10:617 (1992)を参照されたい。
【0067】
本明細書中で使用するとき、「感染性抗原」とは、微生物及び寄生虫の両方を意味する。「微生物」にはウイルス、細菌、リケッチア、マイコプラズマ、原生生物、真菌、及び微小な生物等が含まれる。「寄生虫」とは、感染性の、一般に顕微鏡レベルの、若しくは極めて微小な多細胞の無脊椎動物、又はその卵あるいは幼生を意味し、それは免疫介在性の除去作用又は溶解若しくは食作用による分解に影響を受け易く、例えば、マラリア病原虫、スピロヘータ等が挙げられる。
【0068】
「感染性因子抗原」とは、感染性因子と結合する抗原である。
【0069】
「標的ポリペプチド」、又は「標的ペプチド」とは、少なくとも1つのエピトープを含み、そして腫瘍細胞、又は感染性因子抗原を担持する細胞等の標的細胞で発現されるアミノ酸配列である。T細胞は、主要組織適合複合体分子により提示される標的ポリペプチド又は標的ペプチドに対するペプチドエピトープを認識し、典型的には標的細胞を溶解、又は他の免疫細胞をその標的細胞のその部位に動員し、それにより標的細胞を死滅させる。
【0070】
「抗原ペプチド」とは、主要組織適合複合体分子と結合して、T細胞により認識されるMHC‐ペプチド複合体を形成し、それによりT細胞への提示時に細胞傷害性リンパ球応答を誘導するペプチドである。したがって、抗原ペプチドは、適切な主要組織適合性複合体分子と結合し、細胞溶解若しくは抗原を結合又は発現する標的細胞に対する特定のサイトカイン放出等の、細胞傷害性T細胞応答を誘導し得る。前記抗原ペプチドは、クラスI又はクラスII主要組織適合性複合体分子との関係で、抗原提示細胞上又は標的細胞上において結合され得る。
【0071】
真核生物において、RNAポリメラーゼIIは、mRNAを生産するための構造遺伝子の転写を触媒する。核酸分子は、RNA転写物が特定のmRNAの配列と相補的である配列を有するRNAポリメラーゼII鋳型を含むよう設計され得る。このRNA転写物は「アンチセンスRNA」と呼ばれ、そしてアンチセンスRNAをコードする核酸分子は「アンチセンス遺伝子」と呼ばれる。アンチセンスRNA分子は、mRNA分子と結合して、mRNAの翻訳の阻害、又は分解をもたらし得る。
【0072】
「Ztgfβ−9に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「Ztgfβ−9アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、(a)Ztgfβ−9遺伝子の一部分と安定な三重鎖を形成し得るか、又は(b)Ztgfβ−9遺伝子のmRNA転写物の一部分と安定な二重鎖を形成し得る配列を有するオリゴヌクレオチドである。
【0073】
「リボザイム」とは、触媒中心を含む核酸分子である。この用語には、RNA酵素、自己スプライシングRNA、自己切断RNA、及びこれらの触媒機能を実行する核酸分子が含まれる。リボザイムをコードする核酸分子は、「リボザイム遺伝子」と呼ばれる。
【0074】
「外部ガイド配列」は、特定種の細胞内mRNAに対し、内在性リボザイム、RNアーゼPに指向し、RNアーゼPによるmRNAの切断を引き起こす核酸分子である。外部ガイド配列をコードする核酸分子は、「外部ガイド配列遺伝子」と呼ばれる。
【0075】
「変異体Ztgfβ−9遺伝子」という用語は、配列番号2の修飾であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子を指す。このような変異体は、天然に生じるZtgfβ−9遺伝子の多形、及び配列番号2のアミノ酸配列の保存的アミノ酸置換を含む合成遺伝子を含む。付加的なZtgfβ−9遺伝子の変異体の形態は、本明細書中に記載されるヌクレオチド配列の挿入又は欠失を含む核酸分子である。変異体Ztgfβ−9遺伝子は、ストリンジェントな条件下において、その遺伝子が配列番号1のヌクレオチド配列、又はその相補体を有する核酸分子とハイブリダイズするか否かを判定することにより同定され得る。
【0076】
同様に、「変異体マウスZtgfβ−9遺伝子」という用語は、配列番号9の修飾であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子を指す。変異体マウスZtgfβ−9遺伝子は、ストリンジェントな条件下において配列番号8のヌクレオチド配列、又はその相補体を有する核酸分子とハイブリダイズする遺伝子であるか否かを判定することにより同定され得る。
【0077】
あるいは、変異体Ztgfβ−9遺伝子は、配列の比較により同定され得る。最大の対応となるように整列させたとき、もし2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が同一となるとしたら、2つのアミノ酸配列は「100%のアミノ酸配列同一性」を有する。同様に、最大の対応となるように整列させたとき、もし2つのヌクレオチド配列のヌクレオチド残基が同一となるとしたら、2つのヌクレオチド配列は「100%のヌクレオチド配列同一性」を有する。配列の比較は、DNASTAR(Madison, Wisconsin)により生産された、LASERGENEバイオインフォマティクス計算プロトコル群に含まれるような、一般的なソフトウェアプログラムを使用して実行され得る。最適な配列を判定することによる、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列を比較するための他の方法は、当業者には周知である(例えば、Peruski and Peruski, The Internet and the New Biology: Tools for Genomic and Molecular Research (ASM Press, Inc. 1997), Wu et al. (eds.), "Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins," in Methods in Gene Biotechnology, pages 123-151 (CRC Press, Inc. 1997), 及び Bishop (ed.), Guide to Human Genome Computing, 2nd Edition (Academic Press, Inc. 1998)を参照されたい)。配列の同一性を判定する詳しい方法は後述する。
【0078】
変異体Ztgfβ−9遺伝子又は変異体Ztgfβ−9ポリペプチドを同定するために用いられる詳しい方法にかかわらず、変異体遺伝子、又は変異体遺伝子にコードされる変異体ポリペプチドは、その抗ウイルス活性若しくは抗増殖活性のいずれか、又は抗Ztgfβ−9抗体に特異的に結合する能力により機能的に特徴付けられる。
【0079】
「対立遺伝子変異体」という用語は、同一の染色体遺伝子座を占める遺伝子の2以上の代替的形態のいずれか意味するように本明細書中で使用される。対立遺伝子変異は突然変異により天然に生じ、そして集団内に表現型多型をもたらし得る。遺伝子の変異はサイレント(コードされるポリペプチドに変化が無い)であり得るし、又は代替的なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。また、対立遺伝子変異体という用語は、遺伝子の対立遺伝子変異体によりコードされるタンパク質を意味するように本明細書中で使用される。
【0080】
「オルソログ」という用語は、異なる種からのポリペプチド又はタンパク質の機能的対応物である1の種から得られるポリペプチド又はタンパク質を意味する。オルソログ間の配列の違いは、種分化の結果である。
【0081】
「パラログ」とは、生物により作られる別個の、しかし構造的に関連するタンパク質である。パラログは、遺伝子の重複により生じると考えられている。例えば、α‐グロビン、β‐グロビン及びミオグロビンは、互いのパラログである。
【0082】
標準的な分析手法の不正確のため、ポリマーの分子量及び長さは近似値として理解される。このような値が「約」X、又は「およそ」Xと表現されるとき、表示されるXの値は正確に±10%にあると理解されよう。
【0083】
ヒト又はマウスのZtgfβ−9遺伝子をコードする核酸分子は、配列番号1又は配列番号8を基にしたポリヌクレオチドプローブを用いてヒト又はマウスのcDNA若しくはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより獲得し得る。これらの技術は、標準的なものであり、十分に確立されている。一の例証において、ヒトZtgfβ−9遺伝子をコードする核酸分子は、ヒトcDNAライブラリーから単離され得る。このとき、最初の段階は、当業者に周知の方法を使用して、脳、脊髄、心臓、骨格筋、胃、膵臓、副腎、唾液腺、肝臓、小腸、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、心臓、甲状腺、気管、睾丸、卵巣、又は胎盤からRNAを単離することによって、cDNAライブラリーを調製することである。一般的に、RNA分離技術は、細胞を破壊するための方法、RNアーゼ指向されたRNAの分解を阻害する手段、並びにRNAをDNA、タンパク質、及び多糖類の汚染物から分画する方法を提供しなければならない。例えば、トータルRNAは組織を液体窒素中で凍結し、凍結した組織を乳鉢と乳棒ですりつぶして細胞を溶解させ、タンパク質を除去するために挽き潰した組織をフェノール/クロロホルムの溶液で抽出し、そして塩化リチウムを用いた選択的な沈殿により、残った不純物からRNAを分画する(例えば、Ausubel et al. (eds.), Short Protocols in Molecular Biology, 3rd Edition, pages 4-1 to 4-6 (John Wiley & Sons 1995) ["Ausubel (1995)"]; Wu et al., Methods in Gene Biotechnology, pages 33-41 (CRC Press, Inc. 1997) ["Wu (1997)"]を参照されたい)。
【0084】
あるいは、トータルRNAは、脳、又は脊髄、あるいは心臓、骨格筋、胃、膵臓、副腎、唾液腺、肝臓、小腸、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、甲状腺、気管、睾丸、卵巣、又は胎盤から、グアニジウムイソチオシアネートで挽き潰した組織を抽出し、有機溶媒で抽出し、分画遠心法を用いて汚染物からRNAを分画することにより、分離され得る(例えば、Chirgwin et al., Biochemistry 18:52 (1979); Ausubel (1995) at pages 4-1 to 4-6; Wu (1997) at pages 33-41を参照されたい)。cDNAライブラリーを構築するために、ポリ(A)+RNAは、トータルRNAから分離されなければならない。ポリ(A)+RNAは、標準的なオリゴ(dT)‐セルロースクロマトグラフィーを用いてトータルRNAから分離され得る(例えば、Aviv and Leder, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69: 1408 (1972); Ausubel (1995) at pages 4-11 to 4-12を参照されたい)。二本鎖cDNA分子は、ポリ(A)+RNAから、当業者において周知の方法を用いて合成される。(例えば、Wu (1997) at pages 41-46を参照されたい)。その上、市販のキットを用いて、二本鎖cDNA分子を合成することができる。例えば、そのようなキットは、Life Technologies, Inc. (Gaithersburg, MD)、 CLONTECH Laboratories, Inc. (Palo Alto, CA)、 Promega Corporation (Madison, WI) 、及び STRATAGENE (La Jolla, CA)より入手可能である。
【0085】
様々なクローニングベクターがcDNAライブラリー構築に適用され得る。例えば、cDNAライブラリーは、λgt10ベクター等、バクテリオファージ由来のベクターにおいて調製され得る。例えば、Huynh et al., "Constructing and Screening cDNA Libraries in λgtlO and λ gtl 1," DNAクローニング: A Practical Approach Vol. I, Glover (ed.), page 49 (IRL Press, 1985); Wu (1997) at pages 47-52を参照されたい。あるいは、二本鎖cDNA分子はpBLUESCRIPTベクター(STRATAGENE; La Jolla, CA)、LAMDAGEM−4(Promega Corp.)、又は他の市販のベクター等の、プラスミドベクターに挿入され得る。また、適切なクローニングベクターも、American Type Culture Collection (Manassas, VA)からも収得し得る。クローニングされたcDNA分子を増幅するために、そのcDNAライブラリーは、標準的な技術を用いて、原核生物の宿主に挿入され得る。例えば、cDNAライブラリーは大腸菌(E. coli) DH5細胞に挿入され得て、これは、例えばLife Technologies, Inc. (Gaithersburg, MD)から入手可能である。
【0086】
ヒトゲノムライブラリーは、当該技術分野において周知の手段により調製され得る(例えば、Ausubel (1995) at pages 5-1 to 5-6; Wu (1997) at pages 307-327を参照されたい)。ゲノムDNAは、界面活性剤サルコシルによる組織の溶解、プロテイナーゼKによる溶解物の消化、遠心分離による前記溶解物からの不溶性の破片の除去、イソプロパノールを用いた前記溶解物からの核酸の沈殿、及び塩化セシウム密度勾配による再懸濁されたDNAの精製により単離され得る。ゲノムライブラリーの生産に適したDNA断片は、ゲノムDNAの無作為分配、又は制限エンドヌクレアーゼによるゲノムDNAの部分的消化により収得され得る。ゲノムDNA断片は、適切な末端を提供するための制限エンドヌクレアーゼ消化の使用、DNA分子の所望しない接続を避けるためのアルカリホスファターゼ処理の使用、及び適切なリガーゼによる連結反応等の、確立した技術に従って、バクテリオファージ又はコスミドベクター等のベクターに挿入され得る。このような操作の技術は、当該技術分野において周知である(例えば、Ausubel (1995) at pages 5-1 to 5-6; Wu (1997) at pages 307-327を参照されたい)。
【0087】
ヒトZtgfβ−9遺伝子をコードする核酸分子は、また、本明細書中で記載されているヒトZtgfβ−9遺伝子のヌクレオチド配列に基づくヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いても収得され得る。PCRによりライブラリーをスクリーニングする一般的な方法は、例えば、Yu et al., "Use of the Polymerase Chain Reaction to Screen Phage Libraries," Methods in Molecular Biology, Vol. 15: PCR Protocols: Current Methods and Applications, White (ed.), pages 211-215 (Humana Press, Inc. 1993)により提供される。更に、関連する遺伝子を単離するためにPCRを使用する技術は、例えば、Preston, "Use of Degenerate Oligonucleotide Primers and the Polymerase Chain Reaction to Clone Gene Family Members," in Methods in Molecular Biology, Vol. 15: PCR Protocols: Current Methods and Applications, White (ed.), pages 317-337 (Humana Press, Inc. 1993)により記載されている。あるいは、ヒトゲノムライブラリーは、Research Genetics (Huntsville, AL)及びAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA)等の商業的供給元から収得し得る。cDNA又はゲノムのクローンを含むライブラリーは、標準的な手法を用いて、配列番号1に基づく1以上のポリヌクレオチドプローブによりスクリーニングされ得る(例えば、(1995) at pages 6-1 to 6-11を参照されたい)。
【0088】
後述されるように生産される抗Ztgfβ−9抗体もまた、cDNAライブラリーからヒトZtgfβ−9遺伝子をコードするDNA配列を単離するために用いられ得る。例えば、前記抗体を用いてλgt11発現ライブラリーをスクリーニングすることができ、又は前記抗体は、ハイブリッド選択及び転写に続くイムノスクリーニングに用いられ得る(例えば、Ausubel (1995) at pages 6-12 to 6-16; Margolis et al., "Screening λ expression libraries with antibody and protein probes," in DNA Cloning 2: Expression Systems, 2nd Edition, Glover et al. (eds.), pages 1-14 (Oxford University Press 1995)を参照されたい)。
【0089】
代替として、Ztgfβ−9遺伝子は、双方にプライミングした長いオリゴヌクレオチド及び本明細書中に記載されたヌクレオチド配列を用いた核酸分子を合成することにより収得され得る(例えば、Ausubel (1995) at pages 8-8 to 8-9を参照されたい)。ポリメラーゼ連鎖反応を用いた確立された技術は、長さにして少なくとも2キロベースのDNA分子を合成し得る(Adang et al., Plant Molec. Biol. 21 :1131 (1993), Bambot et al., PCR Methods and Applications 2:266 (1993), Dillon et al., "Use of the Polymerase Chain Reaction for the Rapid Construction of Synthetic Genes," Methods in Molecular Biology, Vol. 15: PCR Protocols: Current Methods and Applications, White (ed.), pages 263-268, (Humana Press, Inc. 1993), 及び Holowachuk et al., PCR Methods Appl. 4:299 (1995))。Ztgfβ−9のcDNA、又はZtgfβ−9のゲノム断片の配列は、標準的な方法を用いて決定され得る。更に、Ztgfβ−9のプロモーター又は調節エレメントを含むゲノム断片の同定は、欠失解析等の確立した技術を用いて達成され得る(一般的に、Ausubel (1995)を参照されたい)。
【0090】
5’隣接配列のクローニングもまた、米国特許No. 5,641,670において開示される方法「遺伝子活性化」によりZtgfβ−9タンパク質の生産を促進する。要するに、細胞内における内在性のZtgfβ−9遺伝子の発現が、Ztgfβ−9遺伝子座への、少なくとも1つの標的配列、調節配列、エキソン、及び対になっていないスプライシング供与部位を含むDNA構築物の挿入により代替される。前記標的配列は、前記構築物と内在性Ztgfβ−9遺伝子座との相同組換えを可能にする、Ztgfβ−9の5’非コード配列であり、それにより前記構築物中の前記配列は、内在性のZtgfβ−9のコード配列に操作可能な形で連結されるようになる。このような方法で、内在性のZtgfβ−9プロモーターは、増強された、組織特異的な、又は他の制御された発現を提供する調節配列と置き換えられるか又は追加され得る。
【0091】
付加的に、本発明のポリヌクレオチドは、DNA合成装置の使用により合成され得る。現在選択される方法は、ホスホアミダイト法である。遺伝子又は遺伝子断片の合成等、化学的に合成された二本鎖DNAを所望する場合、各相補鎖は個別に作られる。短い遺伝子(60〜80bp)の生産は技術的に容易で、相補鎖を合成し、そしてそれらをアニーリングすることで完成することができる。しかしながら、より長い遺伝子(>300bp)を生産するためには、特別な方策が行使されなければならない。なぜなら、化学的なDNA合成中の各サイクルのカップリング効率が滅多に100%にならないからである。この問題を解決するため、合成遺伝子(二本鎖)は長さにして20〜100ヌクレオチドに一本鎖の断片からなるモジュールを組み立てて形成される。タンパク質をコードする配列に加え、合成遺伝子は、クローニングベクターの制限エンドヌクレアーゼ部位への挿入を促進する末端配列を用いて設計することができ、及び転写及び翻訳の好ましい開始又は終結のためのシグナルを含む他の配列もまた加えられる。Glick, Bernard R. and Jack J. Pasternak, Molecular Biotechnology, Principles & Applications of Recombinant DNA,(ASM Press, Washington, D. C. 1994), Itakura, K. et al. Synthesis and use of synthetic oligonucleotides. Annu. Rev. Biochem. 53 : 323-356 (1984),及びClimie, S. et al. Chemical synthesis of the thymidylate synthase gene. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 :633-637 (1990)を参照されたい。
【0092】
本発明の好ましい態様において、単離されたポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下において配列番号1のDNAの同様な大きさの領域、又はその相補的な配列とハイブリダイズするであろう。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度及びpHにおける特定の配列に対する熱融点(Tm)より約5℃低くなるよう選択される。Tmは(所定のイオン強度及びpHの下で)50%の標的配列が適切に適合するプローブとハイブリダイズする温度である。典型的なストリンジェントな条件は、pH7でその塩濃度が約0.02M以下、及び温度は少なくとも約60℃であるものである。前述のように、本発明における単離されたポリヌクレオチドはDNA及びRNAを含む。DNA及びRNAを単離する方法は、当該技術分野で周知である。トータルRNAは、グアニジン塩酸抽出法を用い、その後にCsCl勾配中の遠心分画によって調製され得る[Chirgwin et al., Biochemistry 18:52-94 (1979)]。ポリ(A)+RNAは、Aviv and Leder, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69: 1408-1412 (1972)の方法を用いて、トータルRNAから調製される。相補的DNA(cDNA)は既知の方法を使用してポリ(A)+RNAから調製される。そして、Ztgfβ−9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えばハイブリダイゼーション、又はPCR等により、同定され、単離される。
【0093】
当業者は、配列番号1及び2に開示した配列がヒトの単一の遺伝子座を示すことを認識するであろう。相異なる部位で切断されたリーダー配列を有する多くの天然に生じる成熟したN末端変異体がある。これらの配列の遺伝子座変異体は、cDNA探索、又は標準的な手順による異なる個体由来のゲノムライブラリーからクローニングされ得る。本発明は更に、他の種に由来する対応するタンパク質及びポリヌクレオチド(「種のオルソログ」)を提供する。特に注目すべきなのは、マウス、ブタ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、及び他の霊長類を含む他の哺乳類由来のZtgfβ−9ポリヌクレオチドである。ヒトZtgfβ−9タンパク質の種のオルソログは、本発明により提供される情報及び組成物を用い、確立したクローニング技術とを組み合わせてクローニングされ得る。例えば、cDNAは、その遺伝子を発現する組織、又は細胞から得られるmRNAを用いてクローニングされ得る。mRNAの適切な供給源は、本明細書中で開示される配列から設計されるプローブによるノザンブロット探索により同定され得る。そしてライブラリーは、陽性の組織又は細胞のmRNAから調製される。そして、タンパク質をコードするcDNAは、完全な若しくは部分的なヒトcDNA、又は前記開示された配列を基にした縮重プローブの1以上のセットによる探索等の、様々な方法により単離され得る。また、cDNAは、本明細書中に開示される配列から設計されるプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応、即ちPCR(Mullis, 米国特許No. 4,683,202)を用いてクローニングされる。付加的な方法において、前記cDNAライブラリーは、宿主細胞の形質転換又は遺伝子導入に用いられることができ、そして対象とするcDNAの発現は、上記タンパク質に対する抗体により検出され得る。また、使用され、主張されるとき、同様な技術がゲノムのクローンの同定に対しても適用され得る。「ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、配列番号2により定義される前記配列」という言葉には、配列番号2,3,4、及び5のポリペプチドの全ての遺伝子座変異体並びに種のオルソログが含まれる。
【0094】
本発明の好ましい態様において、ヒトZtgfβ−9をコードする単離された核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列を有する核酸配列、又はそれに相補的な配列を有する核酸分子と「ストリンジェントな条件」下でハイブリダイズし得る。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度及びpHにおける特定の配列に対する熱融点(Tm)より約5℃低くなるよう選択される。Tmは(所定のイオン強度及びpHの下で)50%の標的配列が適切に適合するプローブとハイブリダイズする温度である。
【0095】
一の例証において、変異体Ztgfβ−9ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子と、42℃で一昼夜、50%ホルムアミド、5xSSC(1xSSC:0.15Mの塩化ナトリウム、及び15mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハルト液(100xデンハルト液:2%(w/v)フィコール400、2%(w/v)ポリビニルピロリドン、及び2%(w/v)ウシ血清アルブミン)、10%のデキストラン硫酸、及び20μg/mlの変性され、寸断されたサケ精子DNAを含む溶液中においてハイブリダイズし得る。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件の変形を案出し得る。例えば、ハイブリダイゼーションの混合物は、ホルムアミドを含まない溶液において、65℃程度のより高い温度でインキュベーションされ得る。更に、混合済みのハイブリダイゼーション溶液が入手可能であり(例えば、ExpressHyb Hybridization Solution from Clontech Laboratories, Inc.)、又はハイブリダイゼーションは製造業者の取扱説明書に従って実行し得る。ハイブリダイゼーションに続いて、前記核酸分子は、ストリンジェントな条件下、又は高ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズしなかった核酸分子を除去するために、洗浄され得る。典型的なストリンジェントな洗浄条件には、55‐65℃で0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えた0.5x‐2xSSC中でする洗浄が含まれる。つまり、変異体Ztgfβ−9ポリペプチドをコードする核酸分子は、ストリンジェントな洗浄条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子とハイブリダイズし、この場合、該洗浄ストリンジェンシーは、55‐60℃で0.1%SDSを加えた0.5x‐2xSSCと同等であり、例えば、SSC55℃で0.1%SDSを加えた0.5xSSC、又は65℃で0.1%SDSを加えた2xSSCが挙げられる。当業者は、例えば、洗浄溶液のSSCのSSPEへの置換等による同等な条件を容易に案出し得る。
【0096】
典型的な高ストリンジェントな洗浄条件は、50‐65℃で0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えた0.1x‐0.2xSSC中でする洗浄を含む。言い換えると、変異体Ztgfβ−9ポリペプチドをコードする核酸分子は、ストリンジェントな洗浄条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子とハイブリダイズし、この場合、該洗浄ストリンジェンシーは、55‐60℃で0.1%SDSを加えた0.5x‐2xSSCと同等であり、例えば、高ストリンジェントな洗浄条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子とハイブリダイズし、この場合、該洗浄ストリンジェンシーは、50‐65℃で0.1%SDSを加えた0.1x‐0.2xSSCと同等であり、例えば、50℃で0.1%SDSを加えた0.1xSSC、又は65℃で0.1%SDSを加えた0.2xSSCが挙げられる。
【0097】
本発明は、また、配列番号2、3、4、5、9、12、17、18、又はそのオルソログのポリペプチドと実質的に類似の配列同一性を有する、単離されたZtgfβ−9ポリペプチドを提供する。「実質的に類似の配列同一性」という用語は、配列番号2、3、4、5、9、12、17、18、又はそのオルソログに開示される配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は95%より高く99%の配列同一性を有するポリペプチドを意味するように本明細書中では使用される。
【0098】
本発明はまた、2つの基準:コードされるポリペプチドと配列番号2、3、4、5、9、12、17、又は18のアミノ酸配列の類似性の判定、及び前記のようなハイブリダイゼーションアッセイを用いて同定される、Ztgfβ−9変異体の核酸分子も考慮される。そのようなZtgfβ−9変異体には、(1)洗浄ストリンジェンシーが55‐65℃で0.1%SDSを加えた0.5x‐2xSSCと同等であるストリンジェントな洗浄条件下において、配列番号1、配列番号9、又は配列番号16のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子とハイブリダイズし、及び(2) 配列番号2、3、4、5、9、12、17、又は18のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は95%より高い配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子が含まれる。あるいは、Ztgfβ−9変異体は、(1) 洗浄ストリンジェンシーが50‐65℃で0.1%SDSを加えた0.1x‐0.2xSSCと同等である高ストリンジェントな洗浄条件下において、配列番号1 のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子とハイブリダイズし、及び(2) 配列番号2、3、4、5、9、12、17、又は18のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは95%より高く又は99%より高い配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子として特徴付けられ得る。
【0099】
また、本発明は、配列番号2を参照して、ハイブリダイゼーション解析と配列同一性の判定の少なくとも1つにより同定されるヒトZtgfβ−9変異体核酸分子も考慮される。本発明は更に、配列番号8及び9を参照して、ハイブリダイゼーション解析と配列同一性の判定の少なくとも1つにより同定されるマウスZtgfβ−9変異体核酸分子が含まれる。例えば、先に論じた方法を使用する場合、マウスZtgfβ−9変異体核酸分子は、3の基準:(1) 洗浄ストリンジェンシーが55‐65℃で0.1%SDSを加えた0.5x‐2xSSCと同等であるストリンジェントな洗浄条件下で、配列番号8のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子とのハイブリダイゼーション、 (2) 洗浄ストリンジェンシーが50‐65℃で0.1%SDSを加えた0.1x‐0.2xSSCと同等である高ストリンジェントな洗浄条件下で、配列番号8のヌクレオチド配列(又はその相補体)を有する核酸分子とのハイブリダイゼーション、 及び (3)配列番号12のアミノ酸配列に対し、配列同一性が少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は95%より高いアミノ酸の同一性%、のうち少なくとも1つを用いて同定され得る。
【0100】
配列の同一性%は、確立した方法により判定される。例えば、Altshul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603 (1986)、及びHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1992)を参照されたい。要するに、2つのアミノ酸配列は、10個のギャップ開始ペナルティー、1個のギャップ伸長ペナルティー、及び表1に示されるようなHenikoff and Henikoff(同上)の「blosum 62」スコアリングマトリックスを用いて、対応のスコアが最大となるように整列させる(アミノ酸は、標準的な一文字コードにより表示される)。そして同一性%は、以下のように算出される:([同一整合の総数]/[より長い配列の長さ+2つの配列を揃えるために、より長い配列中に挿入されるギャップの数])(100)。
【0101】
【表1】

【0102】
当業者は、2つのアミノ酸配列を整列させるための入手可能な多くのアルゴリズムがあることを理解する。Pearson and Lipman の「FASTA」類似性検索アルゴリズムは、本明細書中で開示されるアミノ酸配列及び推定されるZtgfβ‐9変異体のアミノ酸配列により共有される同一性のレベルを試験するために適切なタンパク質整列方法である。FASTAアルゴリズムは、Pearson and Lipman, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)、及びPearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)によって記載されている。要するに、FastAは、先ず保存的なアミノ酸置換、挿入又は欠失を考慮せず、同一性の密度が最も高い(ktup値が1である場合)又は同一性の対(ktup=2である場合)を有するクエリー配列(例えば、配列番号2)及び試験配列により共有される領域を同定することにより、配列類似性を特徴付ける。そして、アミノ酸置換マトリックスを用いてすべての対となるアミノ酸の類似性を比較することにより、同一性の密度が最も高い10領域が再スコアされ、その領域の末端は、最も高いスコアに寄与する残基のみを含むように「刈り込まれる」。「カットオフ」値(配列の長さ及びktup値に基づいて予め定められた数式により算定される)より大きいスコアのいくつかの領域がある場合には、その領域がギャップを有するおよそのアラインメントを形成するよう連結され得るか否かを判定するために、前記刈り込まれた初期の領域が検査される。最後に、2つのアミノ酸配列の最も高いスコアの領域はNeedleman-Wunsch-Sellersアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 444 (1970);Sellers, SIAM J. Appl. Math. 26: 787 (1974))の変法を用いて整列させ、これにより、アミノ酸の挿入及び欠失が可能となる。FASTA分析のための例証的なパラメーターは:ktup=1、ギャップ開始ペナルティー=10、ギャップ伸長ペナルティー=1、及び置換マトリックス=blosum62である。これらのパラメーターは、Pearson, Meth. Enzymol. 183: 63 (1990)の付録2に説明されているように、スコアリングマトリックスファイル(「SMATRIX」)を修正することにより、FASTAプログラムに導入され得る。
【0103】
FASTAはまた、上記で開示されたような比率を用いて、核酸分子の配列同一性を判定するためにも用いられ得る。ヌクレオチド配列の比較については、ktup値は1〜6、好ましくは3〜6の範囲であり得て、最も好ましくは3であり、上記のような他のパラメーターのセットを伴う。
【0104】
本発明には、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号9、配列番号12、配列番号17又は配列番号18のアミノ酸配列と比較して、保存的アミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする核酸分子が含まれる。即ち、変異体は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号9若しくは配列番号12の1個以上のアミノ酸配列の置き換えを含む変異体が得られ、その場合、あるZtgfβ‐9アミノ酸配列においてアルキルアミノ酸はアルキルアミノ酸に置換され、あるZtgfβ‐9アミノ酸配列において芳香族アミノ酸は芳香族アミノ酸に置換され、あるZtgfβ‐9アミノ酸配列において硫黄を含むアミノ酸は硫黄を含むアミノ酸に置換され、あるZtgfβ‐9アミノ酸配列においてヒドロキシ基を有するアミノ酸はヒドロキシ基を有するアミノ酸に置換され、あるZtgfβ‐9アミノ酸配列において酸性アミノ酸は酸性アミノ酸に置換され、あるZtgfβ‐9アミノ酸配列において塩基性アミノ酸は塩基性アミノ酸に置換され、あるZtgfβ‐9アミノ酸配列において二塩基性アミノ酸は二塩基性アミノ酸に置換される。
【0105】
一般的なアミノ酸の間で、例えば、「保存的アミノ酸置換」は以下の群のそれぞれのアミノ酸の置換により例証される:(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(3)セリン及びトレオニン、(4)アスパラギン酸及びグルタミン酸、(5)グルタミン及びアスパラギン、(6)リシン、アルギニン及びヒスチジン。例えば、配列番号2、3、4、5又は12のいずれかと異なるアミノ酸配列を有する変異体Ztgfβ‐9ポリペプチドは、Serの代わりにトレオニン残基を使用することにより、Ileの代わりにバリン残基を使用することにより、Gluの代わりにアスパラギン酸残基を使用することにより、又はIleの代わりにバリン残基を使用することにより収得され得る。付加的な変異体は、これらのアミノ酸配列の2個以上の置換を有するポリペプチドを生産することにより収得され得る。
【0106】
ヒト又はマウスのZtgfβ‐9は、配列番号3及び配列番号12のアミノ酸配列を整列させ、対応するアミノ酸残基における相違を言及することにより案出され得る。
【0107】
BLOSUM62テーブルは、タンパク質配列断片の約2,000個の局所的多アラインメントに由来するアミノ酸置換マトリックスであって、関連するタンパク質の500個より多くの群の高度に保存された領域を表わす(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1992))。したがって、BLOSUM62の置換頻度を用いて、本発明のアミノ酸配列中に挿入され得る保存的アミノ酸置換を定義し得る。単に化学的性状(上記のような)のみに基づくアミノ酸置換を設計することは出来るが、しかし、「保存的アミノ酸置換」という用語は、好ましくは−1より大きなBLOSUM62値により表わされる置換を指す。例えば、アミノ酸置換は、もしその置換が0、1、2又は3のBLOSUM62値により特徴付けられる場合、保存的である。この系によれば、好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも1(例えば、1、2又は3)のBLOSUM62値により特徴付けられるが、より好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも2(例えば、2又は3)のBLOSUM62値により特徴付けられる。
【0108】
ヒト又はマウスZtgfβ‐9の特定の変異体は、対応するヒト(即ち、配列番号2、3、4、5若しくは17)又はマウス(即ち、9又は12)のアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は99%あるいはそれより高い配列同一性を有することにより特徴付けられ、ここで、アミノ酸配列の変更は、1個以上の保存的アミノ酸置換による。
【0109】
Ztgfβ‐9における保存的アミノ酸変化は、配列番号1又は9のいずれか1つに挙げられるヌクレオチドの代わりにヌクレオチドを使用することにより、導入され得る。このような「保存的アミノ酸」変異体は、例えば、オリゴヌクレオチド指向的突然変異誘発、リンカー‐スキャニング突然変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応を用いる突然変異誘発等により収得される(Ausubel (1995);およびMcPerson (ed.), Directed Mutagenesis: A Practical Approach (IRL Press 1991)を参照されたい)。そのような変異体が抗ウイルス、又は抗増殖活性を増強する能力は、本明細書中に記載される手法等の、標準的な方法を用いて判定され得る。あるいは、変異体Ztgfβ‐9ポリペプチドは、抗Ztgfβ‐9抗体と特異的に結合する能力により同定され得る。
【0110】
本発明のタンパク質には、天然に存在しないアミノ酸残基も含まれ得る。天然に存在しないアミノ酸残基としては、限定されないが、トランス‐3‐メチルプロリン、2,4‐メタノプロリン、シス‐4‐ヒドロキシプロリン、トランス‐4‐ヒドロキシプロリン、N‐メチルグリシン、アロ‐トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3‐及び4‐メチルプロリン、3,3‐ジメチルプロリン、tert‐ロイシン、ノルバリン、2‐アザフェニルアラニン、3‐アザフェニルアラニン、4‐アザフェニルアラニン、並びに4‐フルオロフェニルアラニンが含まれる。タンパク質中に天然に存在しないアミノ酸残基を組み入れるための技術分野では、いくつかの方法が知られている。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを用いて、ナンセンス突然変異が抑制されるインビトロ系が採用され得る。アミノ酸及びアミノアシル化tRNAを合成するための方法は、当該技術分野で既知である。ナンセンス突然変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、典型的には、大腸菌S30抽出物及び市販の酵素及び他の試薬を含む無細胞系で遂行される。タンパク質は、クロマトグラフィーにより精製される。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113: 2722 (1991),Ellman et al., Methods Enzymol. 202: 301 (1991)、Chung et al., Science 259: 806 (1993),及びChung et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90: 10145 (1993)を参照されたい。
【0111】
第二の方法において、翻訳は、突然変異化mRNA及び化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションにより、アフリカツメガエル (Zenopus)卵細胞において遂行される(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271: 19991 (1996))。第三の方法中において、大腸菌細胞は、置き換えられるべき天然に存在するアミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下、及び所望の天然に存在しないアミノ酸(単数または複数)(例えば、2‐アザフェニルアラニン、3‐アザフェニルアラニン、4‐アザフェニルアラニン、又は4‐フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養される。前記天然に存在しないアミノ酸は、その天然のコンポーネントの代わりにタンパク質中に組み入れられる。Koide et al., Biochem. 33: 7470 (1994)を参照されたい。天然アミノ酸残基は、インビトロ化学修飾により、天然に存在しない種に変換され得る。化学修飾は、置換の範囲を更に拡大するように、部位指向的突然変異誘発と組み合わされ得る(Wynn and Richards, Protein Sci. 2: 395 (1993))。
【0112】
限定数の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、及び非天然アミノ酸が、Ztgfβ‐9アミノ酸残基の代わりに置換され得る。
【0113】
本発明のポリペプチドにおける必須アミノ酸は、当該技術分野で既知である手法、例えば部位指向的突然変異誘発、又はアラニン‐スキャニング突然変異誘発に従って同定され得る(Cunningham and Wells, Science 244: 1081 (1989)、Bass et al., Pro. Nat’l Acad. Sci. USA 88: 4498 (1991),Coombs and Corey, “Site-Directed Mutagenesis and Protein Engineering,” Proteins: Analysis and Design, Angeletti (ed.), pages 259-311 (Academic Press, Inc. 1998))。後者の技法において、単一アラニン突然変異が分子中の全ての残基に導入され、そしてその結果生じる突然変異分子は、下記で開示されるように、分子の活性に重要であるアミノ酸残基を同定するために、生物学的活性が検査される(また、Hilton et al., J. Biol. Chem. 271: 4699 (1996)も参照されたい)。
【0114】
【表2】

【0115】
本発明のポリペプチドにおける必須アミノ酸は、当該技術分野で既知である手法、例えば部位指向的突然変異誘発、又はアラニン‐スキャニング突然変異誘発に従って同定され得る[Cunningham and Wells, Science 244: 1081 -1085(1989)、Bass et al., Pro. Nat’l Acad. Sci. USA 88: 4498 -4502(1991)]。後者の技法において、単一アラニン突然変異が分子中の全ての残基に導入され、そしてその結果生じる突然変異分子は、分子の活性に重要であるアミノ酸残基を同定するために、生物学的活性(例えば、リガンド結合及びシグナル伝達)が検査される。リガンド‐タンパク質相互作用の部位はまた、結晶解析によっても判定され得て、核磁気共鳴法、クリスタログラフィー、又は光親和性標識等の技術によって判定される。例えば、de Vos et al., Science 255:306-312 (1992); Smith et al., J. Mol. Biol. 224:899-904, 1992; Wlodaver et al., FEBS Lett. 309:59-64 (1992)を参照されたい。また、必須アミノ酸の同一性は、関連するタンパク質との相同性の分析からも推論され得る。
【0116】
多重アミノ酸置換は、Reidhaar-Olson and Sauer, Science 241 :53-57 (1988) 又は Bowie and Sauer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-2156 (1989)にて開示されるように、既知の突然変異誘発の方法及びスクリーニングの方法が用いられ、検査され得る。要するに、これらの著者は、ポリペプチドにおける2個以上の位置を同時に無作為化し、機能性ポリペプチドを選択し、その後、各位置における正当な置換の分布を判定するための突然変異したポリペプチドの配列を決定するための方法を開示する。使用できる他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30: 10832-10837 (1991); Ladner et al., 米国特許 No. 5,223,409; Huse, WIPO Publication WO 92/06204)、及びDerbyshire et al., Gene 46:145 (1986); Ner et al., DNA 7: 127 (1988)の領域指向的突然変異誘発が含まれる。
【0117】
上記で開示されるような突然変異誘発法は、宿主細胞におけるクローン化され、突然変異したタンパク質の活性を検出するためのハイスループットのスクリーニング方法と組み合わされ得る。この関係で好ましい手法には、細胞増殖アッセイ、及びバイオセンサーに基づくリガンド結合アッセイが含まれ、それらは後に記載される。活性タンパク質又はその一部(例えば、リガンド結合断片)をコードする突然変異したDNA分子は、宿主細胞から回収され、そして近代的設備を用いて速やかに配列が決定される。これらの方法は、対象とするポリペプチドにおける個々のアミノ酸残基の重要性の速やかな判定を可能とし、また未知の構造のポリペプチドにも適用され得る。
【0118】
前に論じた方法を使用して、当業者は、配列番号2、3、4、5、9、12、17若しくは18又はその遺伝子座変異体と実質的に同一であって、野生型のタンパク質の特性を保持する様々なポリペプチドが調製することができる。本明細書中で表され、及び主張されるとき、「配列番号2、3、4、5、9、12、17又は18により定義されるようなポリペプチド」という言葉には、そのポリペプチドの全ての遺伝子座変異体及び種のオルソログが含まれる。
【0119】
本発明のもう一つの態様は、本発明のポリペプチドのエピトープを担持する部分を含むペプチド又はポリペプチドを提供する。このポリペプチド部分のエピトープは、本発明のポリペプチドの免疫原性又は抗原性のエピトープである。抗体が結合し得るあるタンパク質のある領域は、「抗原性のエピトープ」と定義される。例えば、Geysen, H.M. et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 :3998-4002 (1984)を参照されたい。
【0120】
抗原性のエピトープを坦持する(即ち、抗体が結合し得るタンパク質分子の領域を含む)ペプチド又はポリペプチドの選択に関して、タンパク質配列の一部を模倣する比較的短い合成ペプチドが、部分的に模倣されたタンパク質と反応する抗血清の定常的な誘導を可能とすることは当該技術分野で周知である。Sutcliffe, J.G. et al. Science 219:660-666 (1983)を参照されたい。タンパク質反応性の血清の誘導を可能とするペプチドは、しばしばタンパク質の一次配列において表され、単純な化学規則のセットにより特徴付けられ、そして正常タンパク質の免疫優勢領域(即ち、免疫原性のエピトープ)、並びにアミノ末端及びカルボキシル末端のいずれにも限定されない。極端に疎水性で、6個以下の残基からなるペプチドは、一般的に、模倣されたタンパク質と結合する抗体の誘導に際し、効果が無い;より長い可溶性のペプチドで、特にプロリン残基を含むものが、通常は効果的である。
【0121】
したがって、本発明の抗原性のエピトープを坦持するペプチド又はポリペプチドは、本発明のポリペプチドと特異的に結合する、モノクローナル抗体を含む抗体を生じさせるために有用である。本発明の抗原性のエピトープを坦持するペプチド及びポリペプチドには、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列中に含まれる少なくとも9個の、好ましくは15個から約30個の間のアミノ酸が含まれる。しかしながら、本発明のアミノ酸配列のより大きな部分を含み、本発明のポリペプチドの30個から50個のアミノ酸、又は全アミノ酸配列の全長及びそれをを含む任意の長さのペプチド又はポリペプチドもまた、そのタンパク質と反応する抗体を誘導するために有用である。好ましくは、エピトープを担持するペプチドのアミノ酸配列は、水性溶媒における十分な溶解性を提供するものとして選択され (即ち、その配列が相対的に親水性の残基を含み、好ましくは疎水性の残基がなるべく避けられている);そして、プロリン残基を含む配列は特に好ましい。本配列表に示される全てのポリペプチドには、本発明により使用されるべき抗原性のエピトープが含まれる。
【0122】
本発明のポリヌクレオチド(一般的にはcDNA配列)は、前記のポリペプチドをコードする。本発明のポリペプチドをコードするcDNA配列は、一連のコドンで構成されている。即ち、そのポリペプチドの各アミノ酸残基はコドンによりコードされており、及び、各コドンは3個のヌクレオチドで構成されている。アミノ酸残基は、以下のようなそれらの各コドンによりコードされる。
アラニン (Ala) は、 GCA、GCC、GCG 又は GCTによりコードされる;
システイン (Cys) は、 TGC 又は TGTによりコードされる;
アスパラギン酸 (Asp) は、 GAC 又は GATによりコードされる;
グルタミン酸(Glu) は、 GAA 又は GAGによりコードされる;
フェニルアラニン (Phe) は、 TTC 又は TTTによりコードされる;
グリシン (Gly) は、 GGA、GGC、GGG 又は GGTによりコードされる;
ヒスチジン (His) は、 CAC 又は CATによりコードされる;
イソロイシン (Ile) は、 ATA、ATC 又は ATTによりコードされる;
リシン (Lys) は、 AAA、又は AAGによりコードされる;
ロイシン (Leu) は、 TTA、TTG、CTA、CTC、CTG 又は CTTによりコードされる;
メチオニン (Met) は、 ATGによりコードされる;
アスパラギン (Asn) は、 AAC 又は AATによりコードされる;
プロリン (Pro) は、 CCA、CCC、CCG 又は CCTによりコードされる;
グルタミン (Gln) は、 CAA 又は CAGによりコードされる;
アルギニン (Arg) は、 AGA、AGG、CGA、CGC、CGG又はCGTによりコードされる;
セリン (Ser) は、 AGC、 AGT、 TCA、 TCC、 TCG 又は TCTによりコードされる;
スレオニン (Thr) は、 ACA、 ACC、 ACG 又は ACTによりコードされる;
バリン (VaI) は、 GTA、 GTC、 GTG 又は GTTによりコードされる;
トリプトファン (Trp) は、 TGGによりコードされる;
チロシン (Tyr) は、 TAC 又は TATによりコードされる。
【0123】
本発明によると、cDNAが前記のように主張されるとき、主張されるものはセンス鎖、アンチセンス鎖、並びにそれらの各水素結合により互いがアニーリングしたセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方を有する二本鎖としてのDNAの両方であると理解されると認識されるべきである。また、本発明のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)が主張されるとき、そのmRNAは前述のcDNAによりコードされている。メッセンジャーRNA(mRNA)は、各チミンヌクレオチド(T)がウラシルヌクレオチド(U)に置き換えられていることを除き、前に定義されたものと同じコドンを用いてポリペプチドをコードするであろう。
【0124】
完全長のタンパク質、タンパク質断片(例えば、受容体結合断片)、及び融合ポリペプチドを含む、本発明のタンパク質ポリペプチドは、確立した技術によって、遺伝子組換え宿主細胞において生産され得る。適切な宿主細胞としては、外来性のDNAにより形質転換若しくは遺伝子導入が可能であり、培養下において増殖し得る細胞型であって、細菌、真菌細胞、並びに培養高等真核細胞が含まれる。真核細胞、特に多細胞生物の培養細胞が好ましい。クローン化したDNAの操作、及び外来性DNAの様々な宿主細胞への導入のための技術は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (2nd ed.) (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)により開示されている。
【0125】
一般的に、Ztgfβ‐9ポリペプチドをコードするDNA配列は、発現ベクター中において、その発現に必要な他の遺伝エレメント、一般的には転写プロモーター及びターミネーターを含む、遺伝エレメントと操作可能な形で連結されている。また、そのベクターには、通常1つ以上の選択可能なマーカー、及び1つ以上の複製開始点が含まれるであろうが、当業者は、ある種の系においては、個別のベクターによって選択マーカーが提供され得て、及び外来性のDNAの複製が宿主細胞のゲノムへの統合により提供され得ることを認識し得るであろう。プロモーター、ターミネーター、選択可能なマーカー、ベクター及び他のエレメントの選択は、当該技術分野における通常の技術レベル内の日常的な設計の問題である。多くのそのようなエレメントが文献に記載されており、商業的供給者を通じて入手可能である。
【0126】
Ztgfβ‐9ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路中に指向させるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても知られている)が発現ベクターにおいて提供される。分泌シグナル配列はそのタンパク質のものであり得て、又はもう一つの分泌性タンパク質[例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)]リーダー配列由来であり得て、又はデノボで合成されるものであり得る。分泌シグナル配列は正しい読み枠においてZtgfβ‐9DNA配列に結合される。分泌シグナル配列は、通常対象とするポリペプチドをコードするDNA配列の5’に配置されるが、ある種のシグナル配列は、対象とするDNA配列の他の部分に配置され得る(例えば、Welch et al., 米国特許No. 5,037,743; Holland et al., 米国特許 No. 5,143,830を参照されたい)。
【0127】
培養哺乳類細胞は、本発明中の好ましい宿主である。哺乳類宿主細胞に外来性DNAを導入する方法には、リン酸カルシウムを介した遺伝子導入、Wigler et al., Cell 14:725 (1978); Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7:603 (1981): Graham and Van der Eb, Virology 52:456 (1973)、エレクトロポレーション、Neumann et al., EMBO J. 1 :841-845 (1982)、DEAE−デキストランを介した遺伝子導入、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Inc., NY, 1987)、及びリポソームを介した遺伝子導入(Hawley-Nelson et al., Focus 15:73 (1993); Ciccarone et al., Focus 15:80 (1993)が含まれる。培養哺乳類細胞における組換えポリペプチドの生産は、例えば、Levinson et al., 米国特許No. 4,713,339; Hagen et al., 米国特許No. 4,784,950; Palmiter et al., 米国特許No. 4,579,821; 及びRingold, 米国特許No. 4,656,134により開示される。適切な培養哺乳類細胞には、COS−1 (ATCC No. CRL 1650)、COS−7(ATCC No. CRL 1651)、BHK(ATCC No. CRL 1632 5)、BHK570(ATCC No. CRL 10314)、293[ATCC No. CRL 1573; Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59-72 (1977)] 及び、チャイニーズハムスター卵巣(例えばCHO−K1; ATCC No. CCL 61)細胞株が含まれる。あるいは、適切な細胞株は、当該技術分野において既知であって、American Type Culture Collection, Rockville, Maryland等の公的な供託機関より入手可能である。一般的に、SV−40又はサイトメガロウイルス由来のプロモーター等の、強力な転写プロモーターが好ましい。例えば、米国特許No. 4,956,288を参照されたい。他の適切なプロモーターには、メタロチオネイン遺伝子(米国特許Nos. 4,579,821 及び4,601,978)及びアデノウイルス主要後期プロモーター由来のものが含まれる。
【0128】
植物細胞、昆虫細胞、及び鳥類の細胞を含む他の高等真核細胞もまた、宿主細胞として用いられ得る。植物細胞における遺伝子発現のためのベクターとしてのアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)の使用は、Sinkar et al., J. Biosci. (Bangalore) 11 :47 (1987)により概説される。昆虫細胞の形質転換、及びその中での外来ポリペプチドの生産は、Guarino et al米国特許No. 5,162,222 及びWIPO公報WO 94/06463により開示されている。昆虫細胞は、通常はアウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)由来の、組換えバキュロウイルスにより感染され得る。Ztgfβ‐9ポリペプチドをコードするDNAは、2つの方法のうち1つによりAcNPVポリヘドリン遺伝子コード配列の代わりにバキュロウイルスの中に挿入される。第一の方法は、野生型AcNPVと、AcNPV配列に隣接するZtgfβ‐9のcDNAを含む遺伝子移入ベクターとの間の相同的DNA組換えの伝統的方法である。例えばSF9細胞の適切な昆虫細胞は、野生型のAcNPVに感染し、AcNPVポリヘドリン遺伝子プロモーター、ターミネーター、及び隣接する配列と操作可能な形で連結するZtgfβ‐9ポリヌクレオチドを含む遺伝子移入ベクターが導入される。King, L.A. and Possee, R.D., The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide, (Chapman & Hall, London); O'Reilly, D. R. et al., Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual (Oxford University Press, New York, New York, 1994); 及び、 Richardson, C. D., Ed., Baculovirus Expression Protocols. Methods in Molecular Biology, (Humana Press, Totowa, NJ 1995)を参照されたい。昆虫細胞中に天然に生じる組換えは、結果的にポリヘドリンプロモーターにより駆動するZtgfβ‐9を含む組換えバキュロウイルスを生じるであろう。組換えウイルスのストックは、当該技術分野で慣用される方法により作製される。
【0129】
組換えバキュロウイルスを作製する第二の方法は、Luckow, V.A, et al., J Virol 67:4566 (1993)により記載される、トランスポゾンに基づく系を利用する。この系は、Bac‐to‐Bacキットとして販売される(Life Technologies, Rockville, MD)。この系は、Ztgfβ‐9ポリペプチドをコードするDNAを、「バクミド」と呼ばれる大きなプラスミドとして大腸菌中で維持されるバキュロウイルスゲノム中に移動させるためのTn7トランスポゾンを含む遺伝子移入ベクター、pFastBac1(商標)(Life Technologies)を利用する。前記pFastBac1(商標)遺伝子移入ベクターは、対象とする導入遺伝子(この場合はZtgfβ‐9)の発現を駆動するために、AcNPVポリヘドリンプロモーターを利用する。しかしながら、pFastBac1(商標)は、相当な程度に修飾を受け得る。上記ポリヘドリンプロモーターが除去され、バキュロウイルス感染においてより早期に発現され、そして、分泌性のタンパク質発現に有利であることが示されている、バキュロウイルス塩基性タンパク質プロモーター(Pcor、p6.9、又はMPプロモーターとしても知られる)で置換され得る。Hill-Perkins, M.S. and Possee, R.D., J Gen Virol 71 :971 (1990); Bonning, B.C. et al., J Gen Virol 75:1551 (1994);及び、Chazenbalk, G.D., and Rapoport, B., J Biol Chem 270: 1543 (1995)を参照されたい。そのような遺伝子移入ベクター構築物において、塩基性タンパク質プロモーターの短い又は長い種類のものが使用され得る。更に、遺伝子移入ベクターは、Ztgfβ‐9固有の分泌シグナル配列が昆虫のタンパク質由来の分泌シグナル配列に置換されて構築され得る。例えば、エクジステロイドグルコシルトランスフェラーゼ(EGT)、ミツバチメリチン(Invitrogen, Carlsbad, CA)、又はバキュロウイルスgp67(PharMingen, San Diego, CA)由来の分泌シグナル配列は、Ztgfβ‐9固有の分泌シグナル配列を置換するための構築に使用され得る。加えて、遺伝子移入ベクターには、発現されるZtgfβ‐9ポリペプチドのC又はN末端に配される、例えば、Grussenmeyer, T. et al., Proc Natl Acad Sci. 82:7952 (1985)のGlu−GluエピトープタグのエピトープタグをコードするDNAとのインフレームでの融合が含まれ得る。当該技術分野において既知の技術を使用して、Ztgfβ‐9を含む遺伝子移入ベクターは大腸菌に形質転換され、組換えバキュロウイルスの指標である遮断されたLacZ遺伝子を含むバクミドがスクリーニングされる。その組換えバキュロウイルスゲノムを含むバクミドDNAは、通常の技術を使用して単離され、そして、例えばSf9細胞のスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)の細胞への遺伝子導入に用いられる。Zthgβ‐9を発現する組換えウイルスは後に生産される。組換えウイルスのストックは、当該技術分野で慣用される方法により作製される。
【0130】
組換えウイルスは、宿主細胞、典型的にはトヨウムシ類(fall army worm)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)由来の細胞株を感染させるために用いられる。一般的には、Glick and Pasternak, Molecular Biotechnology: Principles and Applications of Recombinant DNA, ASM Press, Washington, D. C. (1994)を参照されたい。もう一つの適切な細胞株は、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)由来のHigh FiveO(商標)細胞株(Invitrogen)(米国特許 #5,300,435)である。市販の無血清培地が、細胞の増殖、及び維持に用いられる。適切な培地は、Sf9細胞には、SF900 II(商標) (Life Technologies)又はESF921(商標)(Expression Systems);及びT.ni細胞にはEx−CellO405(商標)(JRH Biosciences, Lenexa, KS)又は Express FiveO(商標)(Life Technologies)である。前記細胞をおよそ2〜5x10個の播種密度の細胞から1〜2x10個に増殖させ、その時点で、0.1から10、より典型的には3近くの感染の多重度(MOI)で組換えウイルスのストックが加えられる。上記組換えウイルスが感染した細胞は、典型的には感染後12〜72時間で組換えZtgfβ‐9ポリペプチドを生産し、上記培地中に様々な効率でそれを分泌する。培養物は、通常は感染後48時間で回収される。遠心分離が、培地(上澄み)から細胞を分画するために用いられる。z***ポリペプチドを含む上記上澄みは、微小孔フィルター、通常は0.45μmの孔径のものを通して濾過される。使用される手順は、一般的には、入手可能な研究室のマニュアルにおいて記載されている(King, L. A. and Possee, R.D., ibid.; O'Reilly, D. R. et al., ibid.; Richardson, C. D., ibid.)。後の上記上澄みからの上記Ztgfβー9ポリペプチドの精製は、本明細書中に記載される方法を使用して達成され得る。
【0131】
薬剤選択は一般的には外来DNAが挿入された培養哺乳類細胞の選択に用いられ得る。そのような細胞は通例、「トランスフェクタント」と称される。選択薬剤の存在下で培養され、対象とする遺伝子をその子孫に受け継ぐことが出来る細胞は、「ステーブルトランスフェクタント」と称される。好ましい選択可能なマーカーは、抗生物質ネオマイシンに対する耐性をコードする遺伝子である。選択はG‐418等の、ネオマイシン様の薬剤の存在下で実行される。選択の系はまた、対象とする遺伝子の発現レベルの上昇(「増幅」と称される過程)のために使用され得る。増幅は低レベルの選択薬剤存在下でトランスフェクタントを培養し、そして導入された遺伝子の産物を高いレベルで生産する細胞を選択するように、選択薬剤の量を上昇させる。増幅可能であって選択可能な好ましい薬剤は、ジヒドロ葉酸還元酵素であり、メトトレキサートに対する耐性を付与する。また、他の薬剤耐性遺伝子(例えばハイグロマイシン耐性、多重薬剤耐性、及びピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ)も使用され得る。
【0132】
また、昆虫細胞、植物細胞及び鳥類の細胞を含む他の高等真核細胞も、宿主として使用され得る。昆虫細胞の形質転換、及びその中における外来のポリペプチドの生産は、Guarino et al., 米国特許 No. 5,162,222; Bang et al., 米国特許 No. 4,775,624;及び WIPO publication WO 94/06463により開示される。植物細胞における遺伝子発現のベクターとしてのアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)の使用は、Sinkar et al., J. Biosci. (Bangalore) 11 :47-58 (1987)により概説される。
【0133】
また、酵母細胞、及び特にサッカロマイセス(Saccharomyces)属の細胞を含む真菌細胞も、タンパク質断片やポリペプチド融合の生産等のために本発明中で使用され得る。外来性のDNAによる酵母細胞の形質転換、及びそこからの組換えポリペプチドの生産の方法は、例えば、Kawasaki, 米国特許No. 4,599,311; Kawasaki et al., U.S. 米国特許4,931,373; Brake, 米国特許No. 4,870,008; Welch et al., 米国特許No. 5,037,743;及びMurray et al., 米国特許No. 4,845,075により開示される。形質転換した細胞は、通例薬剤耐性又は特定の栄養素(例えば、ロイシン)の非存在下における増殖能力の選択可能なマーカーにより判定される表現型により選択される。酵母において使用するための好ましいベクター系は、Kawasaki et al., 米国特許No. 4,931,373により開示されるPOT1ベクター系であり、形質転換細胞のグルコース含有培地における増殖による選択を可能とする。酵母において使用するための適切なプロモーター及びターミネーターには、解糖系酵素遺伝子(例えば、Kawasaki, 米国特許No. 4,599,311; Kingsman et al., 米国特許No. 4,615,974; and Bitter, 米国特許No. 4,977,092を参照されたい)及びアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子由来のものが含まれる。また、米国特許Nos. 4,990,446; 5,063,154; 5,139,936 及び4,661,454を参照されたい。ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロマイシス・ポムベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイウェロマイシス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイウェロマイシス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、ウスティラゴ・マイディス(Ustilago maydis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・ギレルモンディィ(Pichia guillermondii)、及びマカンジダ・マルトサ(Candida maltosa)を含む他の酵母のための他の形質転換系は、当該技術分野で既知である。例えば、Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132:3459-3465 (1986)及びCregg, 米国特許No. 4,882,279を参照されたい。アスペルギルス(Aspergillus)細胞は、McKnight et al., 米国特許No. 4,935,349の方法によって利用され得る。アクレモニウム・クリソゲヌム(Acremonium chrysogenum)を形質転換するための方法は、Sumino et al., 米国特許No. 5,162,228により開示される。ノイロスポラ(Neurospora)を形質転換するための方法は、Lambowitz, 米国特許No. 4,486,533により開示される。
【0134】
エスケリッチア・コリ(Escherichia coli)、バチルス(Bacillus)、及び他の属の細菌の系統を含む、原核生物の宿主細胞もまた、本発明中の有用な宿主細胞である。これらの宿主を形質転換し、その中でクローニングされた外来のDNAを発現させるための技術は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al., 同項を参照されたい)。大腸菌等の細菌においてZtgfβ‐9を発現させるとき、ポリペプチドは、典型的には不溶性の顆粒として細胞質に保持され、又は細菌の分泌シグナル配列により、ペリプラズム空間に指向され得る。前者の場合において、細胞は溶解され、そして前記顆粒は回収され、例えばグアニジンイソチオシアネート、又は尿素を用いて変性される。そして、変性されたポリペプチドは、尿素及び還元化したグルタチオンと酸化したグルタチオンとの組み合わせに対して透析し、その後に平衡化した塩溶液に対して透析する等により、変性剤を希釈することによりリフォールディングされ、二量体化され得る。後者の場合において、ポリペプチドは、ペリプラズム空間の内容物を開放させるために細胞を破壊(例えば、超音波破砕、又は浸透圧ショック)してタンパク質を回収し、それにより変性及びリフォールディングの必要を無くすことにより、水溶性で、及び機能的な形態でペリプラズム空間から回収され得る。
【0135】
形質転換又は遺伝子導入された宿主細胞は、確立された手順により、選択された宿主細胞の増殖に必要な栄養素及び他の組成物を含む培地中で培養される。合成培地、及び混合培地等の様々な適切な培地が当該技術分野では知られており、一般的には、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、及びミネラルが含まれる。また、培地は、必要に応じて、増殖因子又は血清等も含むであろう。外来的に加えられるDNAを含む細胞のため、増殖培地は、例えば薬剤選択、又は発現ベクターに一般に運ばれた、若しくは宿主細胞に共導入した選択可能なマーカーにより補足される必須栄養素の欠乏により、選択するであろう。
【0136】
本発明の一の側面の中で、新規なタンパク質が培養細胞により生産され、そしてその細胞、又はそのタンパク質は、天然の受容体を含む、タンパク質に対する受容体(単数又は複数)、あるいは二量体のパートナー等の相互作用するタンパク質、天然に生ずるリガンドのアゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニングに用いられる。
【0137】
タンパク質の単離
発現した組換えポリペプチド(又はキメラポリペプチド)は、分画法及び/又は確立された方法及び媒体を用いて精製され得る。硫酸アンモニウム沈殿法、及び酸又はカオトロピック剤による抽出は、試料の分画のために用いられ得る。模範的な精製工程には、ヒドロキシアパタイト、サイズ排除、FPLC及び逆相高速液体クロマトグラフィーが含まれ得る。適切なアニオン交換媒体には、誘導体化デキストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカ等が含まれる。PEI、DEAE、QAE、及びQ誘導体が好ましく、DEAE Fast−Flowセファロース(Pharmacia, Piscataway, NJ)は特に好ましい。模範的なクロマトグラフィー媒体には、フェニル、ブチル、又はオクチル基で誘導体化された媒体が含まれ、フェニル‐セファロースFF(Pharmacia)、Toyopearlブチル650(Toso Haas, Montgomeryville, PA)、オクチル‐セファロース(Pharmacia)等;若しくはAmberchrom CG71(Toso Haas)等ポリアクリル酸レジンが挙げられる。適切な固相支持体には、それらが使用される条件下において不溶性である、ガラスビーズ、シリカビーズレジン、セルロースレジン、アガロースビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリアクリルアミドレジン等が含まれる。これらの支持体は、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、及び/又は炭水化物部分によるタンパク質の結合を可能とする反応基により修飾されてもよい。共役化学反応の例には、臭化シアン活性化、N‐ヒドロキシスクシンイミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、並びにカルボジイミド共役化学反応のためのカルボキシル誘導体及びアミノ誘導体が含まれる。これらの固相媒体、及び他の固相媒体は、当該技術分野において周知であり、慣用されており、そして商業的供給者から入手可能である。支持媒体に受容体ポリペプチドを結合させる方法は、当該技術分野で周知である。特定の方法の選択は、日常的な設計の問題であって、選択される支持体の性質によりある程度決定される。例えば、Affinity Chromatography: Principles & Methods (Pharmacia LKB Biotechnology, Uppsala, Sweden, 1988)を参照されたい。
【0138】
本発明におけるポリペプチドは、それらの性質の利用により単離され得る。例えば、固定化金属イオン吸収(IMAC)クロマトグラフィーは、ヒスチジン‐リッチのタンパク質の精製に使用され得る。要するに、ゲルは、最初に、キレートを形成するため、二価の金属イオンで帯電される[E. Sulkowski, Trends in Biochem. 3: 1-7 (1985)]。ヒスチジン‐リッチのタンパク質は、使用された金属イオンに依存して異なる親和性でこのマトリックスに吸着され、そして競合的溶出、pHの低下、又は強いキレート剤の使用により溶出され得る。他の精製方法には、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィー[(Methods in Enzymol., Vol. 182:529-39, "Guide to Protein Purification", M. Deutscher, (ed.), (Acad. Press, San Diego, 1990)]によるグリコシル化タンパク質の精製が含まれる。あるいは、対象とするポリペプチド及びアフィニティータグ(例えば、ポリヒスチジン、マルトース結合タンパク質、イムノグロブリンドメイン)の融合物が、精製を容易にするため構築され得るであろう。その上、分泌性ポリペプチドの精製を容易にするため、ポリヒスチジンタグ、サブスタンスP、FLAG(登録商標)ペプチド(Hopp et al., Bio/Technology 6: 1204-1210 (1988); Eastman Kodak Co.、 New Haven, CTから入手可能)、Glu−Gluアフィニティータグ[Grussenmeyer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:7952-4 (1985)]、あるいは抗体、若しくは他の特異的な結合剤が利用可能であるもう一つのポリペプチド又はタンパク質等のアミノ末端、又はカルボキシル末端の伸長が、精製の際の助けとするためZtgfβと融合され得る。
【0139】
「トランスジェニックマウス」と称される、Ztgfβ‐9遺伝子を発現するように設計されるマウス、及び「ノックアウトマウス」と称される、Ztgfβ‐9遺伝子の機能の完全な喪失を見せるマウスもまた作り出され得る(Snouwaert et al., Science, 257: 1083 (1992); Lowell, et al., Nature, 366:740-742 (1993); Capecchi, M.R., Science, 244: 1288-1292, (1989); Palmiter, R.D. et al., Annu. Rev. Genet, 20:465-499, (1986))。例えば、恒常的な、又は組織特異的な、若しくは組織制限的なプロモーターの下のいずれかでZtgfβ‐9を過剰発現するトランスジェニックマウスを用いて、過剰発現がある表現型を引き起こすかどうか問うことができる。例えば、野生型のZtgfβ‐9ポリペプチド、ポリペプチド断片、又はその変異体の過剰発現は、通常の細胞プロセスを改変する結果、Ztgfβ‐9の発現が機能的に関係のある組織を同定する表現型をもたらし得て、Ztgfβ‐9タンパク質、遺伝子、そのアゴニスト又はアンタゴニストのための治療用の標的を示唆する場合がある。その上、そのような過剰発現は、ヒトの疾病との類似性を示す表現型をもたらし得る。同様に、ノックアウトZtgfβ‐9マウスは、Ztgfβ‐9が生体内において絶対的に要求される部位を判定するために用いられ得る。ノックアウトマウスの表現型により、Ztgfβ‐9のアンタゴニストの生体内における効果の予測が可能となる。ヒトZtgfβ‐9のcDNAは、マウスZtgfβ‐9のmRNA、cDNA、及びゲノムDNAを単離するために用いられ得て、それらは後にノックアウト、若しくはトランスジェニックマウスを作り出すために用いられる。これらのマウスは、生体内の系におけるZtgfβ‐9遺伝子、及びそれにコードされるタンパク質の研究に採用され得て、又は対応するヒトの疾病の生体内におけるモデルとしても使用され得る。その上、Ztgfβ‐9アンチセンスポリヌクレオチド、又はZtgfβ‐9に対して指向するリボザイム、又はZtgfβ‐9への一本鎖抗体のトランスジェニックマウスにおける発現は、Ztgfβ‐9の生物学を更に解明するために用いられ得る。
【0140】
使用
Ztgfβ‐9のノザンブロット解析により、Ztgfβ‐9が脳、及び脊髄において高く発現されることが明らかになっている。したがって、Ztgfβ‐9は、グリア細胞又はニューロンのいずれかを含む脊髄の維持に一定の役割を演じる場合がある。これは、Ztgfβ‐9が、筋萎縮側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病等の様々な神経変性疾患、及び末梢神経障害、又は多発性硬化症等の脱髄性の疾患の治療に用いられ得ることを示唆する。このZtgfβ‐9発現の組織特異性は、Ztgfβ‐9が脊髄、脳又は末梢神経系の障害の治療に使用され得る、脊髄及び脳における増殖因子及び/又は維持因子であり得ることを示唆する。また、Ztgfβ‐9はウイルス感染を治療するため、ヒトに投与され得る。
【0141】
また、本発明は、著しく治療価値のある試薬を提供する。(天然に生じる、又は組換えの)Ztgfβ‐9ポリペプチド、その断片、抗体及びそれに対する抗イディオタイプ抗体は、Ztgfβ‐9ポリペプチドに対し結合親和性を有するものとして同定される化合物と共に、異常な生理学又は発生に関連する疾患、例えば、癌性疾患、又は変性疾患等の異常増殖の治療において有用であろう。例えば、Ztgfβ‐9ポリペプチドによる異常な発現、又は異常なシグナルと関係するある疾病又は障害は、Ztgfβ‐9ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの適当な標的であろう。特に、Ztgfβ‐9は、炎症の治療に用いられ得る。炎症は、感染に対する免疫反応、又は自己抗原に対する自己免疫反応によりもたらされる。
【0142】
Ztgfβ‐9ポリペプチドに対する抗体は精製され、そして、患者に投与され得る。これらの試薬は、追加的に活性成分又は不活性成分、例えば、生理学的に無害な安定化剤及び賦形剤と共に、薬学的に許容できる担体又は希釈剤と共に治療的に使用するため組み合わせられ得る。これらの組合わせは、濾過滅菌され、調剤バイアル中で凍結乾燥されることにより調剤の状態で置かれ、又は安定化された水性調製物として保存され得る。また、本発明は、抗体、その結合断片、又は相補的な結合ではない状態を含む抗体の一本鎖抗体の使用を考慮する。
【0143】
効果的な治療のために必要な試薬の量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、及び他の投与される医薬を含む様々な要素に依存するであろう。したがって、治療投薬量は、安全性及び効率を最適化するように漸増されるであろう。典型的には、インビトロで用いられる量は、これらの試薬の生体内における投与のための有用な量において有用な指針を提供するであろう。特定の障害の治療のための効果的な用量の動物実験は、ヒトの場合の用量の更に予測可能な示唆を提供するであろう。投与の方法には、経口投与、静脈注射、腹腔内投与、筋肉内投与、又は経皮投与が含まれる。薬学的に許容できる担体には、数例を挙げると、水、塩、又は緩衝剤が含まれるであろう。用量の範囲は、通常1日あたり体重1kgに1μg〜1000μgが予想されるであろう。しかしながら、前記用量は、当該技術分野の通常の技術を有する医師により定められ得るように、より高い場合、又はより低い場合があり得る。製剤、及び用量の範囲の完全な議論については、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., (Mack Publishing Co., Easton, Penn., 1990), 及び Goodman and Gilman's: The Pharmacological Bases of Therapeutics^4 Ed. (Pergamon Press 1996)を参照されたい。
【0144】
核酸を基礎とする治療法
哺乳類が突然変異したZtgfβ‐9遺伝子を有するか、又はZtgfβ‐9遺伝子を欠失している場合、Ztgfβ‐9遺伝子はその哺乳類の細胞中に導入され得る。一の態様において、Ztgfβ‐9ポリペプチドをコードする遺伝子は、ウイルスベクターにより生体内に導入される。そのようなベクターには、限定されないが、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、エプステイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、SV40等の弱毒化又は欠損DNAウイルスが含まれる。全て又はほぼ全てのウイルス遺伝子が欠失している欠損ウイルスが好ましい。欠損ウイルスは、細胞内に導入された後の感染性が無い。欠損ウイルスベクターの使用は、そのベクターが他の細胞に感染することへの配慮無しに、特定の、局所的な領域における細胞への投与を可能とする。特定のベクターの例には、限定されないが、欠損ヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター[Kaplitt et al., Molec. Cell. Neurosci.,2 :320- 330 (1991)]、Stratford-Perricaudet et al., J. Clin. Invest, 90 :626-630 (1992)に記載されるベクター等の、弱毒化アデノウイルスベクター、及び、欠損アデノ関連ウイルスベクター[Samulski et al., J. Virol., 61 :3096-3101 (1987); Samulski et al. J. Virol., 63:3822-3828 (1989)]が含まれる。
【0145】
もう一つの態様において、遺伝子は、例えばAnderson et al., 米国特許No. 5,399,346; Mann et al., Cell, 33: 153 (1983); Temin et al., 米国特許 No. 4,650,764; Temin et al., 米国特許 No. 4,980,289; Markowitz et al., J. Virol., 62: 1120 (1988); Temin et al., 米国特許 No. 5,124,263; 国際特許公報 No. WO 95/07358, published March 16, 1995 by Dougherty et al.;及びBlood, 82:845 (1993)において記載される、レトロウイルスベクターにより導入され得る。
【0146】
あるいは、ベクターはリポソームを用いる生体内でのリポフェクションにより導入され得る。合成カチオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子の、生体内での導入のためのリポソームの調製に用いられ得る[Feigner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:7413-7417 (1987); Mackey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8027-8031 (1988)を参照されたい]。生体内における特定の器官中に外来性の遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は、幾つかの特段の利点を有する。特定の細胞に対するリポソームの分子ターゲティングは、利益の一つの領域を示す。特定の細胞種への指向的な遺伝子導入は、膵臓、肝臓、腎臓、及び脳等の、細胞的に不均質な組織において特に有利であろうことは明らかである。脂質はターゲティングの目的で、他の分子と化学的に結合され得る。標的となるペプチド、例えば、ホルモン、又は神経伝達物質、及び抗体等のタンパク質、非ペプチド分子が化学的にリポソームと結合され得る。
【0147】
生体から細胞を取り出し、無改変のDNAプラスミドの状態のベクターにより、又はウイルスベクターによりベクターを導入し、それから形質転換した細胞を生体内に再移植することが可能である。遺伝子治療のための無改変DNAベクターは、当該技術分野で既知の方法により、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、又はDNAベクタートランスポーターの使用[例えば、Wu et al., J. Biol. Chem., 267:963-967 (1992); Wu et al., J. Biol. Chem., 263:14621-14624 (1988)を参照されたい]等により、対象とする宿主細胞中に導入され得る。Ztgfβ‐9のウイルスベクター指向型遺伝子送達等の技術は、癌、免疫疾患及び自己免疫疾患、並びに中枢神経系及び末梢神経系の疾患等のヒトの疾病を治療するために用いられ得る。
【0148】
また、Ztgfβ‐9ポリペプチドは、Ztgfβ‐9ポリペプチドと特異的に結合する抗体の調製にも使用され得る。次に、これらの抗体は、抗イディオタイプ抗体を製造するために用いられ得る。本明細書中において使用されるとき、「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらの抗原結合断片であるF(ab’)2及びFab断片等が含まれ、それらには、例えば、遺伝子操作された抗体が含まれる。抗体は、それらが107/Mを超えるか又はそれと同等のKaでZtgfβ‐9ポリペプチドと結合し、先行技術のポリペプチドと実質的に結合しない場合、特異的に結合すると定義される。モノクローナル抗体の親和性は、例えば、Scatchard解析を用いることにより、当業者により容易に判定され得る。
【0149】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を調製するための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Second Edition) (Cold Spring Harbor, NY, 1989);及びHurrell, J. G. R., Ed., Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications (CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1982)を参照されたい)。ポリクローナル抗体は、Ztgfβ‐9ポリペプチド、又はそれらの断片をウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、ハムスター、モルモット、及びラット等の様々な温血動物に接種することにより生産され得る。Ztgfβ‐9ポリペプチドの免疫原性は、アジュバント、例えばalum(水酸化アルミニウム)、又はフロイト完全アジュバント若しくはフロイト不完全アジュバント等の使用により増強され得る。また、免疫付与に有用なポリペプチドには、Ztgfβ‐9若しくはその一部と、イムノグロブリンポリペプチド若しくはマルトース結合タンパク質の融合体等の、融合ポリペプチドが含まれる。ポリペプチドの免疫原は、完全長の分子又はその一部であろう。前記ポリペプチドの一部が「ハプテン様」である場合、そのような部分は、免疫付与のため、高分子担体(キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)又は破傷風トキソイド等)と有利に連結、又は接続されるであり得る。当業者に知られる様々な手法は、Ztgfβ‐9ポリペプチドに特異的に結合する抗体を特定するために利用され得る。例示的な手法は、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (Eds.), (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)において詳細に記載される。そのような手法の代表的な例には:並行免疫電気泳動(concurrent immunoelectrophoresis)、放射免疫測定、放射免疫沈降、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ドットブロットアッセイ、阻害アッセイ又は競合アッセイ、及びサンドイッチアッセイが含まれる。
【0150】
本明細書中で使用されるとき、「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、アフィニティー精製ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、並びに抗原結合断片であるF(ab’)2及びFabタンパク質分解断片等が含まれる。また、キメラ抗体、Fv断片、一本鎖抗体等、若しくは合成された抗原結合ペプチド及びポリペプチド等の遺伝子操作された無傷の抗体又は断片が含まれる。非ヒト抗体は、ヒトのフレームワーク領域、又は定常領域上に、非ヒトCDRを移植することにより、又は完全な非ヒト可変部領域を組み込む(随意的に、露出する残基の置換により、それらをヒト様表面で「覆い隠す」場合、その結果物は「ベニア化 (veneered)」抗体となる)ことによりヒト化され得る。ある場合において、ヒト化抗体は、適切な結合特性を高めるため、ヒト可変部領域フレームワークドメイン内の非ヒト残基を保持してもよい。抗体をヒト化することで、生物学的半減期は上昇し得て、ヒトへの投与における免疫反応といった悪影響の可能性は減少する。ヒト抗体は、Vaughan, et al. Nat. Biotech., 16:535-539 (1998)によると、ヒトイムノグロブリン遺伝子座を含むように操作されたマウスにおいて生産され得る。
【0151】
本明細書中で有用な抗体を生産し、又は選択するための代替的な技術には、リンパ球のZtgfβ‐9タンパク質又はペプチドへのインビトロでの曝露、及びファージ又は類似するベクターにおける抗体ディスプレイライブラリーの選択(例えば、固定された若しくは標識されたZtgfβ‐9タンパク質又はペプチドの使用による)が含まれる。潜在的なZtgfβ‐9ポリペプチド結合ドメインを有するポリペプチドをコードする遺伝子は、ファージ上に(ファージディスプレイ)又は大腸菌等の細菌上に表示されるランダムペプチドライブラリーのスクリーニングにより収得され得る。そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ランダム変異導入法及びランダムポリヌクレオチド合成等の、多くの手段により収得され得る。これらのランダムペプチドディスプレイライブラリーは、リガンド若しくは受容体等の、タンパク質又はポリペプチド、生物学的な又は合成された高分子、あるいは有機物又は無機物であり得る既知の標的と相互作用するペプチドのスクリーニングに使用され得る。そのようなランダムペプチドディスプレイライブラリーの構築及びスクリーニングのための技術は当該技術分野において知られており(Ladner et al., 米国特許NO. 5,223,409; Ladner et al., 米国特許NO. 4,946,778; Ladner et al., 米国特許NO. 5,403,484 and Ladner et al., 米国特許NO. 5,571,698)、そしてランダムペプチドディスプレイライブラリー及びそのようなライブラリーをスクリーニングするキットは、例えばClontech (Palo Alto, CA)、 Invitrogen Inc. (San Diego, CA)、 New England Biolabs Inc. (Beverly, MA) 、及びPharmacia LKB Biotechnology Inc. (Piscataway, NJ)より市販されている。ランダムペプチドディスプレイライブラリーは、Ztgfβ‐9に結合するタンパク質を同定するため、本明細書中で開示されたZtgfβ‐9配列を使用してスクリーニングされ得る。Ztgfβ‐9ポリペプチドと相互作用するこれらの「結合タンパク質」は、細胞の標識;アフィニティー精製によるホモログポリペプチドの単離;に用いられ得て、直接又は間接的に薬剤、毒素、放射性核種等と結合され得る。また、これらの結合タンパク質は発現ライブラリーのスクリーニング及び失活等の分析手法にも用いられ得る。また、結合タンパク質は、ポリペプチドの血中濃度の判定のため;内在する病理若しくは疾病のマーカーとしての可溶性ポリペプチドの検出又は定量のための診断手法にも用いられ得る。また、これらの結合タンパク質は、インビトロ及び生体内におけるZtgfβ‐9の結合及びシグナル伝達をブロックする、Ztgfβ‐9の「アンタゴニスト」としても振る舞い得る。
【0152】
また、抗体も遺伝子治療により生産され得る。動物は、Ztgfβ‐9をコードするDNA若しくはRNA又はその免疫原性の断片が投与される。その結果、その動物の細胞に上記核酸が導入され、それにより免疫原性の反応を引き起こすタンパク質を発現する。そしてその動物により生産された抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の形態で単離される。Ztgfβ‐9の抗体は、そのタンパク質を発現する細胞の標識に、アフィニティー精製に、診断手法の中では可溶性タンパク質ポリペプチドの血中濃度の判定に、並びにインビトロ及び生体内におけるリガンドの結合及びシグナル伝達の阻害のためのアンタゴニストとして用いられる場合がある。
【0153】
放射線ハイブリッドマッピングは、哺乳類の染色体の高解像度な隣接するマップを構築するために開発された体細胞遺伝学的技術である[Cox et al., Science 250:245-250 (1990)]。遺伝子配列の部分的な又は十分な知見により、染色体の放射線ハイブリッドマッピングパネルに使用するために適切なPCRプライマーの設計が可能である。Stanford G3 RH Panel及びGeneBridge 4 RH Panel(Research Genetics, Inc., Huntsville, AL)等の、ヒトゲノム全体を網羅する市販の放射線ハイブリッドマッピングパネルが入手可能である。これらのパネルにより、迅速な、PCRに基づく、遺伝子の、配列標識部位(STS)の、並びに対象とする領域内の他の非多型性及び多型性のマーカーの、染色体局在化及び秩序化が可能となる。これは、新たに見出された対象とする遺伝子と予めマッピングされたマーカーとの間の正比例する物理的距離の規定を含む。遺伝子の位置の正確な知見は、1)ある配列が、既存のコンティグの部分及びゲノムのYACクローン、BACクローン、ファージゲノムクローン、又はcDNAクローン等の様々な形態における付加的な周囲の遺伝的配列であるか否かの判定、2)同一の染色体領域との連結を示す遺伝性疾患の有力な候補遺伝子の提供、及び3)特定の遺伝子が有するであろう機能を判定するための際の助けとなる点において有益であり得る、マウス等の生物の相互参照モデルのため:を含む多くの手段において有用であり得る。
【0154】
また、本発明は、診断的応用における使用を見出し得る試薬を提供する。例えば、Ztgfβ‐9遺伝子は、染色体13q11.2‐q11上に位置している。あるZtgfβ‐9核酸プローブは、染色体13上の異常性を調べるために使用され得る。例えば、Ztgfβ‐9DNA若しくはRNA又はそれらのサブ配列で構成されるあるプローブは、Ztgfβ‐9遺伝子がヒト染色体13q11.2‐q11上に存在するか否か、又は突然変異が生じているか否かを判定するために使用され得る。Ztgfβ‐9遺伝子座の検出可能な染色体異常には、限定されないが、異数性、遺伝子コピー数の変化、挿入、欠失、制限部位の変化及び再構成が含まれる。そのような異常は、制限断片長多型(RFLP)解析、PCR技術を採用する縦列型反復配列(STR)解析、及び当該技術分野において既知の他の遺伝的関連性解析技術等の分子遺伝学的技術を採用することにより本発明のポリヌクレオチドを使用して特定され得る。ヒトZtgfβ‐9は、13q11.2‐q11領域に位置する。マウスZtgfβ‐9は、それぞれ22.0センチモルガン及び19.5センチモルガンで配置されたマウス染色体14の骨格マーカーd14mit64及びdmit82に位置する。上記19.5cm領域は、ギャップ結合遺伝子gja3及びgja2を含むヒト染色体遺伝子座とシンテニーであるように思われる。Mignon, C. et al., Cytogenet. Cell Genet. 72: 185-186 (1996)を参照されたい。
【実施例】
【0155】
本発明は、次の非制限的な実施例により更に例証される。
【0156】
実施例1‐Ztgfβ‐9のクローニング
ヒトZtgfβ‐9は、配列番号6及び7を使用するPCRスクリーニングにより、整列された脳下垂体cDNAプラスミドライブラリーから単離された。サーモサイクラーの条件は次のとおりであった。94℃で3分間が1サイクル、94℃で30秒、62℃で20秒、72℃で30秒が35サイクル、72℃で5分が1サイクル、続いて4℃を持続する。反応物は、陽性クローンのプールを同定するためゲル電気泳動にかけられ、このようにしてライブラリーは陽性クローンのプールにデコンボリュートされた。これらは大腸菌DH10B細胞中にエレクトロポレーションされ、そしてコロニーハイブリダイゼーションのためプレートに播種された。コロニーはHybond N フィルター(Amersham)に転写され、陽性コロニーが探索された。陽性クローンは、完全長のZtgfβ‐9のために配列が決定された。
【0157】
配列解析及びヒトZtgfβ‐9のcDNA(配列番号1及び16)の概念上の翻訳により、長さが202アミノ酸残基のタンパク質産物が予想された。このタンパク質は、IL‐17ファミリーのメンバーの2つである、Zcyto7(国際出願No. PCT/US98/08212)及びIL‐17と相同である。Lasergene MegAlignソフトウェアを使用するClustal Methodにより判定すると、Ztgfβ‐9はZcyto7と27.8%のアミノ酸同一性を有し、IL‐17とは20.6%の同一性を有する。Higgins and Sharp, CABIOS 5:151 (1989)を参照されたい。特に、Ztgfβ‐9は4つの保存されたシステイン(配列番号2におけるアミノ酸残基114、119、167、169)をZcyto7及びIL−17と共有する。これらのシステインは、TGF‐βタンパク質における知見に関連するシステインノット(cysteine−knot)様のタンパク質の折り畳みの形成に含まれると予想される。
【0158】
実施例2‐Ztgfβ‐9のノザン解析
組織区分解析は、2の成人及び1の胎児のヒト大脳ブロット[Clontech (Palo Alto, Ca )のHuman Multiple Tissue 及び Master Dot Blots]を使用するノザンブロット技術により遂行された。プローブは、cDNAプールにおける配列番号6及び7を使用するPCRにより取得された。サーモサイクラーの条件は次のとおりであった。94℃で3分間が1サイクル、94℃で10秒、66℃で20秒、72℃で30秒が35サイクル、72℃で5分が1サイクル、続いて4℃を持続する。反応混合物は、分離用アガロースゲル上で電気泳動にかけられ、市販のゲル精製試薬及び手順(QIAEX II Gel Extraction Kit; Qiagen, Inc., Santa Clarita, Ca)を使用して162bpの断片がゲル精製された。精製されたDNAは、市販のキット(Rediprime DNA labeling system; Amersham Corp., Arlington Heights, IL)を使用して32Pで放射活性標識された。プローブはプッシュカラム(Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA)を使用して精製された。EXPRESSHYB (Clonetech, Palo Alto, CA)溶液が、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションに使用された。ハイブリダイゼーション溶液は、8mlのEXPRESSHYB、80μlの寸断されたサケ精子DNA(10mg/ml,5 Prime-3 Prime, Boulder, CO)、48μlのヒトCot−1 DNA (lmg/mL,GibcoBRL)及び18μlの放射性標識されたプローブから構成された。ハイブリダイゼーションは50℃で1昼夜行われ、そしてブロットは室温で2X SSC、0.1%SDSで、そして60℃で2X SSC、0.1%SDSで洗浄され、続いて0.1X SSC、0.1%SDSで洗浄された。ブロットは1昼夜露光され現像された。主要な転写シグナルは大脳及び脊髄におけるMTNブロット上で観察された。
【0159】
Master Dotブロットシグナルは、全ての大脳組織(成人及び胎児)、脊髄、心臓、骨格筋、胃、膵臓、副腎、唾液腺、肝臓、小腸、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、心臓、甲状腺、気管、睾丸、卵巣及び胎盤において強くあった。
【0160】
実施例3‐マウスZtgfβ‐9のクローニング
完全長の配列は、整列されたマウス睾丸cDNA/プラスミドライブラリーから単離されたクローンから収得された。前記ライブラリーは、配列番号10及び配列番号11のオリゴヌクレオチドを用いたPCRによりスクリーニングされた。前記ライブラリーは、250クローンの陽性プールにデコンボリュートされた。大腸菌DH10B細胞(Gibco BRL)は、このプールでエレクトロポレーションにより形質転換された。前記形質転換された培養物は滴定され、〜20細胞/ウェルで96穴プレートに整列された。前記細胞は、37℃で1昼夜LBamp中で培養された。前記細胞の一部はペレット化され陽性プールを同定するためPCRが用いられた。陽性プールの残りの細胞はプレーティングされ、コロニーは、陽性クローンを同定するためPCRによりスクリーニングされた。前記クローンは配列が決定され、マウスZtgfβ‐9の推定完全長配列が含まれていた。マウスZtgfβ‐9の配列は、配列番号8及び9により定義される。
【0161】
実施例4‐マウスZtgfβ‐9ノザン解析
また、Mouse MTNブロット及びMaster Dotブロット(Clontech)及びMouse Embryoブロットにおいてノザン解析が行われた。完全長マウスZtgfβ‐9のcDNAクローン(クローニングの項を参照されたい)は、標準的な手順に従ってApaI及びEcoRIにより制限消化された。反応物はゲル電気泳動にかけられ、〜686bpの断片がQIAEX II Gel Extraction Kit(Qiagen, Valencia,CA)を使用してゲル精製された。cDNAは、Radiprime II Labeling Kit(Amersham)を用いてP32標識され、前述の試薬及び手順によりカラム精製された。ハイブリダイゼーション、洗浄、及び検出は、実施例2において述べた条件下で行われた。1つのバンドが、心臓、大脳、肺、肝臓、骨格筋、腎臓及び睾丸において認められた。Master Dotブロットは、甲状腺において強いシグナルを有し、他の殆どの組織においてシグナルはより微かであった。Mouse Embryoブロットに対するハイブリダイゼーションにより、Ztgfβ‐9は試験された全てのステージ(胚齢7日、11日、15日及び17日)において発現することが示唆された。
【0162】
定量RT−PCRにより、マウスZtgfβ‐9はHCL視床下部細胞株において高度に発現し、視床下部細胞株GT1−1及びGT1−7、並びに未分化P19テラトカルシノーマ細胞株において低いレベルにあることが見出された。定量RT−PCRを用いて、マウスZtgfβ‐9は海馬、小脳及び嗅覚の皮質のニューロンにおいて検出され、プルキンエ細胞及び他の神経系集団は大脳切片において非常に標識された。また、脈絡叢内皮も非常に陽性であった。脊髄において、標識は灰白質に集中しており、感覚ニューロン及び運動ニューロンに相当する後角ニューロン及び前角ニューロンにおいて一様に見出されるように思われた。また、後根神経節においても強い発現が観察された。
【0163】
実施例5‐抗体の生産
配列番号13、14及び15のポリペプチドが合成され、そしてウサギに注射され、続いて同種免疫原を使用したカラムクロマトグラフィーによりポリクローナル抗血清がアフィニティー精製された。また、完全長のヒト及びマウスZtgfβ‐9とマルトース結合タンパク質のC末端とが融合された融合タンパク質が大腸菌において発現され、アミロースレジンを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製された。精製されたタンパク質はウサギに注射され、続いて同種免疫原を使用したカラムクロマトグラフィーによりポリクローナル抗血清がアフィニティー精製された。
【0164】
実施例6‐免疫細胞化学法
実施例5の手順に従って生産されたアフィニティー精製されたヒトZtgfβ‐9に対するポリクローナル抗体は、正常COS細胞及びZtgfβ‐9哺乳類細胞発現構築物が遺伝子導入されたCOS細胞を用いて有効性が確認された。Ztgfβ‐9に対する抗体を用いた免疫細胞化学法により、サルの大脳及び脊髄におけるZtgfβ‐9の発現が確認された。免疫細胞化学的染色では細胞質内が染色され、そして多くの大型ニューロン及びプルキンエ細胞において染色が認められた。また、ヒト十二指腸における散在性の上皮細胞も陽性の染色を示した。
【0165】
実施例7‐哺乳類細胞のタンパク質生産
ヒトZtgfβ‐9タンパク質は、C末端にGlu−Gluアフィニティータグ[Grussenmeyer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:7952-4 (1985)]を有するもの及び有しないもののいずれも、Ztgfβ‐9発現がCMV前初期プロモーターにより駆動され、マウスイムノグロブリン重鎖遺伝子座の可変領域由来のコンセンサスイントロン、コード配列の挿入のための多重制限部位、終止コドン及びヒト成長ホルモンターミネーターを含む発現ベクターを用いてBHK細胞において発現された。また、前記プラスミドは、大腸菌の複製起点、SV40のプロモーター、エンハンサー及び複製起点、DHFR遺伝子及びSV40ターミネーター及び読み取り枠の5’末端にコザック配列を有する哺乳類の選択可能なマーカー発現単位を有する。
【0166】
ステーブル細胞トランスフェクタントの選択後、プールから単離された培地は、Ztgfβ‐9抗体又はEEエピトープタグに対する抗体を用いた還元条件及び非還元条件下におけるウエスタンブロットにより解析された。ヒトZtgfβ‐9は、還元条件下で29kDaに移動することが見出された。予想されるタンパク質の完全にプロセシングされた状態の分子量は20.31kDaであることから、これは、前記タンパク質は2つの潜在的なグリコシル化部位の1つ又は両方がグリコシル化されていることを示唆する。非還元条件下において、Ztgfβ‐9タンパク質は49kDaの種類として移動する。これらの結果は、ヒトZtgfβ‐9はジスルフィド架橋ホモダイマーの形成が可能であることを示す。しかしながら、C末端にEEタグを付したヒトZtgfβ‐9及びタグを付さないZcyto7の共発現と、続けてEEタグに対する抗体を用いてアフィニティー精製を行ったところ、両方のタンパク質が共に精製されたことから、Ztgfβ‐9のホモダイマーに加え、Ztgfβ‐9及びZcyto7も二量体化する場合があることが示唆された。Ztgfβ‐9及びZcyto7の相互作用は、タンパク質間の鎖間ジスルフィド結合によるものとは思われなかった。また、BHK細胞において発現されるC末端にEEタグが付されたヒトZtgfβ‐9もEEに対する抗体を用いてアフィニティー精製され、そしてそのN末端配列が決定された。シグナル開裂部位は、アミノ酸配列中のA23(proceeding amino acid A23)に生ずることが見出された。
【0167】
実施例8‐トランスジェニックマウス
完全長のマウスZtgfβ‐9をコードする読み取り枠は、最適な開始コドンを導入するためにPCRにより増幅され、Ztgfβ‐9の発現がメタロチオネインIプロモーターにより制御される遺伝子組換えベクターに導入された。遺伝子組換えインサートはNotIの消化によりプラスミドの骨格から切り離され、アガロースゲル精製され、そして交配したB6C3F1Tacマウスから回収した受精卵にマイクロインジェクションされ、偽妊娠した雌に移植される。ファウンダーは、尾のゲノムDNA(DNAeasy 96 kit; Qiagen)のPCRにより同定された。トランスジェニック系統はC57BL/6Tacマウスのファウンダーの交配により開始された。本研究において用いられた動物実験手順は、ZymoGenetics Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認されている。49頭の新生仔から僅かに8%がトランスジェニックである(同一のプロモーターにより駆動する他の様々なcDNAにおいては平均して20%が認められることと比較して)ことが見出され、マウスZtgfβ‐9の高度な発現は胎生致死となり得ることが示唆される。これに一致して、同定された4頭のファウンダーから、全てが肝臓においてZtgfβ‐9mRNAは低いレベルでしか発現していなかった。5頭目のファウンダーは誕生時点で死亡し、興味深いことに、この個体は肝臓においてZtgfβ‐9mRNAが非常に高いレベルで発現していた(8500コピー/細胞)。この個体の組織病理学的解析において、胸腺の著しいアポトーシス及び褐色脂肪の完全な脱空胞変性(devaculization)が同定された。発現する雄が野生型の雌と交配された。1頭のファウンダーは生殖系列細胞伝達が可能であったが、このファウンダーのトランスジェニックの子孫は誕生直後に死亡するか、発育不全で離乳直後に死亡した。これらの個体の解析により、胸腺の著しいアポトーシス、褐色脂肪の完全な脱空胞変性(devaculization)、肝臓の肝炎、及び末梢血リンパ球の低い細胞数を含む様々な表現型が同定された。これらの結果は、Ztgfβ‐9、そのアゴニスト及びアンタゴニスト、並びにZtgfβ‐9に対する抗体が免疫細胞、脂質生成、及び肝細胞の制御において有用なものであり得ることを示唆する。
【0168】
実施例9‐染色体位置
ヒトZtgfβ‐9は、2つの放射線ハイブリッドパネル上の染色体13q11.2に位置する。マウスZtgfβ‐9遺伝子は、22.0センチモルガン及び19.5センチモルガンに配置されたマウス染色体14の骨格マーカーd14mit64及びdmit82に連結する。
【0169】
実施例10‐Ztgfβ‐9によるアデノウイルス増殖の阻害
ヒト及びマウスのZtgfβ‐9コード領域はアデノウイルスシャトルベクター中にクローニングされ、組換えアデノウイルスゲノムが生産されるように組み換えられた。293A細胞内へのZtgfβ‐9アデノウイルスゲノムの遺伝子導入は、非常に小さなウイルスプラーク(遺伝子導入あたり1つ又は2つのプラークであり、少ない)を生じた。これらのプラークは、サイズを拡張しなかった。ウイルスは複製するため、通常プラークは1〜2日の期間で大いにそのサイズを拡張する。前記小さなプラークは回収され、本発明者らは293A細胞への感染によりウイルスの拡張を試みた。感染した単層は、またしても低いプラーク数を呈し、そのプラークのサイズは小さかった。これらのプラークは時間が経過してもサイズを拡張しなかった。そのウイルスを増幅するためにした2〜3周の試みの後に、ついに本発明者らは迅速に増殖するウイルス集団を収得した。この増幅の結果のウイルスは、なおもZtgfβ‐9配列を含んでいた。しかしながら、これらのウイルスによる細胞の感染はタンパク質の生産をもたらさなかった。ヒト及びマウスのZtgfβ‐9を含むウイルスの両方の最初の挙動は、本発明者らがこれまで見た他のいかなるcDNAにおけるものとも異なっていた。明らかに、ウイルスの増殖は阻害された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号24及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸残基の配列と少なくとも90%が相同であるアミノ酸残基の配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項2】
前記配列が配列番号24及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸残基の配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
前記配列が、配列番号24に示される18(Ala)から202(Plo)までの残基を示すポリペプチド及び配列番号26に示される16(Ala)から209(Plo)までの残基を示すポリペプチドからなる群から選択されるアミノ酸残基の配列からなる、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
配列番号24又は配列番号26の少なくとも14個の隣接するアミノ酸残基を含む単離されたポリペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項6】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項7】
発現ベクターであって、操作可能な形で連結された以下のエレメント:
(a)転写プロモーター;
(b)DNA断片であって:
(1)請求項1に記載のポリペプチド;
(2) 配列番号24に示される18(Ala)から202(Plo)までの残基を示すポリペプチド;
(3)配列番号26に示される16(Ala)から209(Plo)までの残基を示すポリペプチドからなる群から選択されるアミノ酸残基の配列を含むポリヌクレオチドをコードする前記DNA断片;そして
(c)転写ターミネーター
を含む前記発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターを含む培養細胞。
【請求項9】
タンパク質を生産する方法であって、以下:
請求項8に記載の細胞をDNA断片が発現する条件で培養し;そして
該DNA断片にコードされたタンパク質を回収する
ことを含む前記方法。
【請求項10】
抗Ztgfβ−9ポリペプチドに対する抗体を生産する方法であって、以下:
動物に、請求項1に記載のポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを接種し、該動物から抗体を単離する
ことを含む前記方法。
【請求項11】
前記抗体が、その内配列番号24又は配列番号26のポリペプチドに結合する、請求項10に記載の方法により生産される抗体。
【請求項12】
配列番号4又は配列番号26に示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体。

【公表番号】特表2010−508856(P2010−508856A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536486(P2009−536486)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084145
【国際公開番号】WO2008/058251
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(500049831)ザイモジェネティクス,インコーポレイティド (37)
【Fターム(参考)】