説明

トランスポンダ検査システム

【課題】恒温槽、専用試験器及び制御器の制御をシステム化し、温度サイクル試験を効率的に実施することが可能なトランスポンダ検査システムを提供する。
【解決手段】制御器11は、恒温槽制御器131に対して温度フローを設定する。制御器11は、所定のタイミングで専用試験器12にトランスポンダ20−1〜20−3の応答性能試験を実施させ、トランスポンダ20−1〜20−3にBIT制御を実施させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば温度サイクル試験時においてトランスポンダの応答性能を検査するトランスポンダ検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、航空機は、受信信号に応答した応答信号を送信するトランスポンダを搭載する。航空機は、低温環境及び恒温環境下を飛行する。このため、トランスポンダは、このような環境下であっても正常に動作しなくてはならない。
ところで、飛行中の航空機内のトランスポンダの周囲の環境を模擬的に構築する温度サイクル試験がある。温度サイクル試験では、低温及び恒温時の苛酷な温度環境を作り出し、この環境下でトランスポンダの正常起動及び応答性能に不良が発生していないか否かを測定する。温度サイクル試験は、低温又は恒温環境を作り出す恒温槽にトランスポンダを入れ、制御器によりトランスポンダの応答性能を検査する専用試験器を制御することにより行われる。このとき、温度サイクル試験の実施者は、恒温槽の温度フローを手動で設定し、制御器、専用試験器及びトランスポンダに対する試験項目を手動で入力する。そして、測定者は、表示画面に測定値を表示させ、測定値が閾値の範囲内に収まっていることを常に確認するようにしていた。
【0003】
なお、複数の測定器から試験結果データを自動的に取得し、取得した試験結果データを送信する自動試験システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1では、試験環境を設定する恒温槽及び専用試験器の両方を制御して試験を行うようなシステムに関してはなんら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−132999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来では、温度サイクル試験を行う、恒温槽、専用試験器及び制御器は、システム化されていなかった。そのため、試験の設定に手間がかかるという問題がある。また、試験の実施者は測定値を常に監視していなければならず、負担が大きいという問題がある。なお、測定値が閾値の範囲内に収まっていない状態を放置してしまうと、トランスポンダが故障してしまい、大きな損害となる。
【0006】
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、恒温槽、専用試験器及び制御器の制御をシステム化し、温度サイクル試験を効率的に実施することが可能なトランスポンダ検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るトランスポンダ検査システムは、複数のトランスポンダが内部に配置され、温度変化可能な恒温槽と、前記恒温槽の温度が指定された温度フローで周期的に変化するように、前記恒温槽の温度変化を制御する恒温槽制御器と、前記温度フロー下における前記複数のトランスポンダの応答性能の検査を、指定されたタイミングで開始する専用試験器と、前記恒温槽制御器に対して前記温度フローを設定する第1の制御と、前記温度フローにおけるピークの期間内で前記複数のトランスポンダの応答性能を検査するように、前記専用試験器に対して前記検査開始のタイミングを指定する第2の制御と、前記温度フローにおけるピークの期間内で前記複数のトランスポンダの自己診断機能を検査するように、前記複数のトランスポンダに対して前記自己診断機能の検査の開始のタイミングを指定する第3の制御とを行う制御器とを具備する。
【0008】
上記構成によるトランスポンダ検査システムでは、制御器により、恒温槽制御器、専用試験器及びトランスポンダが制御されるようになっている。これにより、ユーザは、制御器に対する操作のみで、恒温槽に配置されたトランスポンダに対する応答性能試験及びBIT試験を自動的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、恒温槽、専用試験器及び制御器の制御をシステム化し、温度サイクル試験を効率的に実施することが可能なトランスポンダ検査システムを提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るトランスポンダ検査システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の制御器の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1のトランスポンダ検査システムにおける処理を示すシーケンス図である。
【図4】図1の制御器へ温度フローに合わせて入力された試験項目及び順序の一例を示す模式図である。
【図5】図1の表示部で表示される試験結果の一例を示す模式図である。
【図6】図1の制御器へ温度フローに合わせて入力された試験項目及び順序の異なる例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係るトランスポンダ検査システムの実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るトランスポンダ検査システム10の機能構成を示すブロック図である。図1におけるトランスポンダ検査システム10は、制御器11、専用試験器12、恒温槽13、表示部14及び電源部15を具備する。
【0012】
恒温槽13は、恒温槽13の温度変化を制御する恒温槽制御器131を有する。また、恒温槽13内には、トランスポンダ20−1〜20−3が配置される。
制御器11は、専用試験器12、恒温槽制御機131、表示部14、電源部15及びトランスポンダ20−1〜20−3と接続する。制御器11は、電源部15から電力を受け、専用試験器12、恒温槽制御器131及びトランスポンダ20−1〜20−3へ電力を供給する。また、制御器11は、信号リレー部16を介して、トランスポンダ20−1〜20−3と接続する。
【0013】
制御器11は、例えばマイクロプロセッサからなるCPU111(Central Processing Unit)、タイマ112及びメモリ113を備える。制御器11は、CPU111、タイマ112及びメモリ113の処理により、図2に示す機能を実現する。すなわち、制御器11は、温度フロー設定機能114、応答性能試験制御機能115及びBIT(Built-In Test:自己診断)試験制御機能116を備える。
【0014】
制御器11は、温度フロー設定機能114により、恒温槽制御器131に対して温度フローを設定する。このとき、制御器11は、ユーザから入力された各種パラメータに基づいて温度フローの設定をする。ここで、各種パラメータとは、恒温槽制御器131に対して温度フローを決定するためのパラメータであり、恒温槽の温度、温度がピークの状態で温度変化を停止させる停止時間及び温度変化の周期等である。システムのユーザは、ここで設定した温度フローに基づいて試験項目等を決定することが可能である。決定された試験項目等は、メモリ113に記録される。
【0015】
また、制御器11は、応答性能試験制御機能115により、専用試験器12に対して、トランスポンダ20−1〜20−3のうちいずれかのトランスポンダの応答性能(必要に応じて受信性能も含む)の確認試験を開始するように指示を出す。
また、制御器11は、BIT試験制御機能116により、トランスポンダ20−1〜20−3のうちいずれかのトランスポンダに対して、BIT機能の確認試験を開始するように指示を出す。このとき、制御器11は、システムのユーザが指定する順序でトランスポンダ20−1〜20−3のBIT試験を行うように、信号リレー部16を介して、トランスポンダ20−1〜20−3を制御する。
【0016】
専用試験器12は、トランスポンダ20−1〜20−3の応答性能を試験するための専用の機器を備える。例えば、専用試験器12は、トランスポンダ20−1〜20−3からの応答信号の周波数を測定する周波数測定器(図示せず)及び応答信号の受信感度を測定する受信感度測定器(図示せず)等を備える。
【0017】
専用試験器12は、制御器11からの応答性能試験開始信号を受けると、トランスポンダ20−1〜20−3のうちいずれかの応答性能の試験を開始する。このとき、専用試験器12は、システムのユーザが指定する順序でトランスポンダ20−1〜20−3の応答性能試験を行うように信号リレー部17を制御し、トランスポンダ20−1〜20−3のうちいずれかの応答性能試験を開始させる。
【0018】
専用試験器12は、応答性能試験において、予め指定された周波数の送信信号を指定されたトランスポンダへ送信する。専用試験器12は、このトランスポンダからの応答信号を受信し、周波数測定器で周波数を測定し、受信感度測定器で受信感度を測定する。専用試験器12は、試験結果を制御器11へ送信する。
【0019】
トランスポンダ20−1〜20−3は、予め指定された周波数の信号を受信すると、その周波数に応じた周波数の応答信号を送信する機能を有する。トランスポンダ20−1〜20−3は、応答性能試験において、専用試験器12からの送信信号を受信すると、専用試験器12へ応答信号を送信する。
【0020】
また、トランスポンダ20−1〜20−3は、制御器11からのBIT試験開始信号を受けると、自機のBIT試験を開始する。トランスポンダ20−1〜20−3は、BIT試験の試験結果を制御器11へ送信する。
表示部14は、応答性能試験の結果及びBIT試験の結果を制御器11から受け取り、これらを表示する。このとき、制御器11は、応答性能試験の結果及びBIT試験の結果に対して数値判定を行い、その判定結果に基づいて処理を行った後、試験結果を表示部14へ出力するようにしている。
【0021】
次に、上記構成における動作を説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るトランスポンダ検査システムにおける処理を示すシーケンス図である。
まず、制御器11は、恒温槽制御器131に対して温度フローを設定する(S31)。恒温槽制御器13は、温度フローの設定が完了すると、その旨を制御器11へ通知する(S32)。
【0022】
ユーザは、設定された温度フローに基づいて、応答性能試験及びBIT試験を行う旨、及び、応答性能試験及びBIT試験を行うトランスポンダ20−1〜20−3の順序を決定する。ユーザは、決定した内容を制御器11へ入力する。これにより、メモリ113に、試験項目及びトランスポンダの順序が記録される。ここで、応答性能試験及びBIT試験にかかる時間は既知である。このため、CPU111は、メモリ113に記録された試験項目及びトランスポンダの順序と、タイマ112のカウント値とを参照して、応答性能試験開始信号及びBIT試験開始信号を適切なタイミングで生成することが可能となる。
【0023】
図4は、温度フローに合わせて決定された試験項目及び順序の一例を示す模式図である。図4では、温度がピークで一定となる期間に、トランスポンダ20−1,20−2,20−3の順序で応答性能試験及びBIT試験を行うようにしている。なお、以下では、図4の試験順序に従って図3のシーケンス図を説明する。
【0024】
制御器11は、タイマ112のカウントをスタートさせる(S34)。制御器11は、最初に設定されたトランスポンダ20−1の応答性能試験及びBIT試験を行うように、トランスポンダ20−1及び専用試験器12へ選択指示を出す(S35,S36)。トランスポンダ20−1は、S34の選択指示を認識した場合、選択完了を制御器11へ返す(S37)。また、専用試験器12は、S35の選択指示を認識した場合、選択完了を制御器11へ返す(S38)。
【0025】
制御器11は、タイマ112のカウント値が所定の値となると、選択完了の返信のあった専用試験器13に対して、応答性能試験開始信号を送信する(S39)。専用試験器12は、この開始信号に応じて、トランスポンダ20−1の応答性能試験を開始する(S310)。専用試験器13は、トランスポンダ20−1の応答性能試験が終了すると、その試験結果を制御器11へ送信する(S311)。
【0026】
制御器11は、応答性能試験の結果に対して数値判定を行った後、試験結果を表示部14へ表示させる(S312)。
続いて、制御器11は、タイマ112のカウント値が所定の値となると、選択完了の返信のあったトランスポンダ20−1に対して、BIT試験開始信号を送信する(S313)。トランスポンダ20−1は、この開始信号に応じて、BIT試験を開始する(S314)。トランスポンダ20−1は、BIT試験が終了すると、その試験結果を制御器11へ送信する(S315)。
【0027】
制御器11は、BIT試験の結果に対して数値判定を行った後、試験結果を表示部14へ表示させる(S316)。
制御器11は、以上のようにトランスポンダ20−1に対する応答性能試験及びBIT試験が終了した場合、トランスポンダ20−2に対する応答性能試験及びBIT試験を実施させる。そして、制御器11は、図4で示される全ての試験が終了するまで、S35からS316までの処理を繰り返す。制御器11は、全工程が終了した場合、温度サイクル試験を終了する。
【0028】
図5は、表示部14で表示される試験結果の一例を示す模式図である。図5において、送信周波数は、測定値が1091MHzであり、要求基準が1090±αMHzの範囲である。測定値が、要求基準の範囲内であれば、図5のように、試験結果は「良好」であると判定される。また、受信感度は、測定値が50dBであり、要求基準が40±βdBである。測定値が、要求基準の範囲外であれば、感度が不良であるため、図5のように試験結果は「否」であると判定される。試験結果が「否」と判定された場合、その項目は、視認できるように識別表示される。また、BIT機能は、測定値が良好であり、要求基準が良好である。そのため、試験結果は「良好」であると判定される。なお、各要求基準は予め設定され、メモリ113に記憶されている。
【0029】
なお、制御器11は、試験結果を「否」と判定した場合は、試験に異常が発生したとして、強制的に試験を中止することが可能である。
以上のように、上記一実施形態では、制御器11により、専用試験器12、恒温槽制御器13及びトランスポンダ20−1〜20−3を制御するようにしている。これにより、ユーザは、制御器11に対する操作のみで、恒温槽13に配置されたトランスポンダ20−1〜20−3に対する応答性能試験及びBIT試験を自動的に行うことが可能となる。すなわち、トランスポンダ検査システム10は、試験実施時のユーザの負担を軽減することが可能となる。また、ユーザは、試験の測定値を常に監視する必要もなくなる。
【0030】
また、上記一実施形態では、信号リレー部16,17により、試験が行われるトランスポンダを順次切り替えるようにしている。これにより、温度フローの1周期の間に複数のトランスポンダの試験を行うことが可能となる。
したがって、本発明に係るトランスポンダ検査システム10は、恒温槽、専用試験器及び制御器のシステム化が実現でき、温度サイクル試験を効率的に実施することができる。
【0031】
なお、この発明は上記一実施形態に限定されるものではない。例えば上記一実施形態では、専用試験器12が1台の場合を例に説明したが、専用試験器12の台数は、1台に限定される訳ではない。例えば、制御器11と複数の専用試験器とを信号リレー部とを介して接続し、それぞれの専用試験器とトランスポンダとを信号リレー部を介して接続する場合であっても同様に実施可能である。
【0032】
また、上記一実施形態では、恒温槽13内にトランスポンダが3台配置される場合を例に説明したが、トランスポンダの台数は、3台に限定される訳ではない。
また、上記一実施形態では、図4に示す順序で試験を実施する場合を例に説明したが、試験を実施する順序は図4に示されるものに限定される訳ではない。例えば、図6に示す順序で試験を実施しても良い。すなわち、トランスポンダ20−1の応答性能試験を実施している最中に、そのバックグラウンドでトランスポンダ20−2のBIT試験を実施する。続いて、トランスポンダ20−1のBIT試験を実施した後、トランスポンダ20−2の応答性能試験を実施している最中に、そのバックグラウンドでトランスポンダ20−3のBIT試験を実施する。そして、トランスポンダ20−3の応答性能試験を実施するようにしても良い。これにより、温度サイクル試験をより効率的に行うことが可能となる。
【0033】
さらに、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…トランスポンダ検査システム
11…制御器
111…CPU
112…タイマ
113…メモリ
114…温度フロー設定機能
115…応答性能試験制御機能
116…BIT試験制御機能
12…専用試験器
13…恒温槽
131…恒温槽制御器
14…表示部
15…電源部
16,17…信号リレー部
20−1〜20−3…トランスポンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランスポンダが内部に配置され、温度変化可能な恒温槽と、
前記恒温槽の温度が指定された温度フローで周期的に変化するように、前記恒温槽の温度変化を制御する恒温槽制御器と、
前記温度フロー下における前記複数のトランスポンダの応答性能の検査を、指定されたタイミングで開始する専用試験器と、
前記恒温槽制御器に対して前記温度フローを設定する第1の制御と、前記温度フローにおけるピークの期間内で前記複数のトランスポンダの応答性能を検査するように、前記専用試験器に対して前記検査開始のタイミングを指定する第2の制御と、前記温度フローにおけるピークの期間内で前記複数のトランスポンダの自己診断機能を検査するように、前記複数のトランスポンダに対して前記自己診断機能の検査の開始のタイミングを指定する第3の制御とを行う制御器と
を具備することを特徴とするトランスポンダ検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−66642(P2011−66642A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214957(P2009−214957)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】