説明

トランス及びその製造方法

【課題】トランスの二次巻線の鋳造過程におけるろう材の溶損を防止する。
【解決手段】トランス10は、導線を巻回して形成される一次巻線16a、16bと、冷却流路体60を構成する銅パイプ62が鋳込まれている二次巻線18と、一次巻線16a、16bと二次巻線18を組み合わせる積層鋼板からなるカットコア14a、14bと、銅パイプ62の端部に継手として接合される銅カラー64a、64bとを備える。銅パイプ62と銅カラー64a、64bとはろう付部68でろう付け接合されている。銅パイプ62、銅カラー64a、64b及びろう付部68の全面には、酸化アルミニウム及びケイ酸ジルコニウムを含むコーティング層70が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電により生じる発熱を抑制するための冷却流路を銅パイプで構成したトランス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用の溶接機は、ロボットアームの先端に溶接トランス及び溶接チップを動作させるアクチュエータを取り付け、所定の溶接作業を行うように構成されている。溶接用ロボットは高速化や生産性向上の観点からトランスの軽量が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1記載の溶接トランスは、電流の通電による発熱を抑制するために、二次巻線に冷却通路が形成されている。この冷却通路を構成するために、鋳造材に冷却流路用のパイプを鋳込んで二次巻線を形成している。前記鋳造材としては、軽量化のためアルミニウムが使用されている。前記パイプの材質は前記鋳造材と同種のアルミニウムが馴染みがよい。しかしながら、冷却媒体が水である場合には、アルミニウムよりも耐腐食性の高い銅製のパイプを使用している。
【0004】
ところで、前記銅パイプの出入り口とアルミ鋳造材との境界部分に電蝕が発生することが懸念されてるが、前記銅パイプの端部に銅カラーを連結することにより電蝕を防止する技術が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献2は、溶接ガンに関し、アルミニウム材のモータハウジング内に冷却媒体用通路としての銅製管路が螺旋状に配設されるとともに、該銅製管路の出入口には、銅カラー部材が連結されている。銅製管路及び銅カラーはアルミニウムに鋳込まれている。銅製管路の入口および出口には、鋳込み前に予め銅カラーがろう付けにより固着されている。銅カラーは、所定の肉厚を有している。
【0006】
特許文献2記載の溶接ガンでは、冷却流路によってハウジングが効率的に冷却され、小型化できて好適である。
【0007】
【特許文献1】特開2002−343914号公報
【特許文献2】特開2002−346755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載の溶接ガンにおけるトランスでは、ハウジングに銅パイプを鋳込む前に銅カラーをろう付けにより固着している。一般的にろう材の融点はアルミニウム溶融温度よりも低く、鋳造時にろう材が溶融する場合があり、歩留まりが必ずしも高くない。アルミニウムの鋳込時にろう材が溶融してしまうと、銅カラーと銅パイプが一部剥離して冷却材を供給する外部ホースとの接続強度が低下し、又は剥離部に水分が進入して腐食が発生する懸念がある。
【0009】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、銅パイプの端部に銅カラーをろう付けで接合し、アルミニウムの鋳造材で鋳込むことにより形成した二次巻線を有するトランスであって、鋳造過程におけるろう材の溶損を防止することができるトランス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るトランスは、導線を巻回して形成される一次巻線と、銅パイプ及び該銅パイプの端部にろう付けされた継手としての銅カラーを含む冷却流路体と、少なくとも前記冷却流路体の銅パイプと該銅パイプのろう付部が鋳込まれているアルミニウム製の二次巻線と、前記一次巻線及び前記二次巻線と組み合わされる積層鋼板からなるコアとを備え、少なくとも前記ろう付部及び前記銅パイプの表面に、酸化アルミニウム及びケイ酸ジルコニウムの少なくとも一方を含むコーティング層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るトランスの製造方法は、銅パイプの端部に継手としての銅カラーをろう付けして冷却流路体を構成し、少なくとも前記ろう付部及び前記銅パイプの表面に、酸化アルミニウム及びケイ酸ジルコニウムの少なくとも一方を含むコーティング層を形成し、少なくとも前記冷却流路体の銅パイプと該銅パイプのろう付部をアルミニウムに鋳込んで二次巻線を形成し、導線を巻回して形成される一次巻線と前記二次巻線を、積層鋼板からなるコアと組み合わせてトランスを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るトランス及びその製造方法によれば、ろう付けした銅パイプ及び銅カラーの表面に、アルミニウム溶融温度よりも融点の高いコーティング剤を施すことにより、該コーティング剤が保護膜となって鋳造過程でろう材が溶損することを防止できる。
【0013】
したがって、銅カラーが銅パイプから剥離することがなく、冷却材を供給する外部ホースとの接続強度が十分に高くなる。また、剥離部に水分が進入して腐食が発生するおそれがない。
【0014】
さらにまた、銅カラーを設けることにより、冷却材を供給する外部ホースとの接続部に電蝕が発生することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るトランス及びその製造方法について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図7を参照しながら説明する。本実施の形態に係るトランス10(図1参照)は、例えば、スポット溶接の溶接ガンに対する電圧変換の用途に用いられ、溶接ガンとともにロボットアームの先端に設けられる。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るトランス10は、トランス本体12と、該トランス本体12の上部に設けられた半導体スタック13とを有する。以下、方向を特定するために、図1及び図3における矢印A1方向を右、矢印A2方向を左として特定する。
【0017】
トランス本体12は、積層鋼板からなるカットコア14a、14bと、導線を多数回巻回して得られる一次巻線16a、16bと、該一次巻線16a、16bの発生する磁力によって誘電される二次巻線18と、一次巻線16a、16bの端部に接続された一対の入力端子20と、支持台21とを有する。一次巻線16a、16b及び二次巻線18は、カットコア14a及び14bを介して支持台21によって支持されている。
【0018】
カットコア14a、14bは、それぞれ平面視(図示せず)で略「コ」字状の積層鋼板を2つ付き合わせて、平面視で四角枠形状となっている。二次巻線18は、2ターンのコイルであり、第1ターン部18aと、第2ターン部18bと、これらの第1ターン部18aと第2ターン部18bとを接続する横架部18cとを有する。第1ターン部18a及び第2ターン部18bの右側部はカットコア14aの四角枠の孔部に挿通しており、左側部はカットコア14bの四角枠の孔部に挿通している。二次巻線18についての詳細は後述する。
【0019】
一次巻線16a及び16bは、所定の巻線機によって予め巻回して形成しておき、二次巻線18と組合わせた後にカットコア14a及び14bを挟んで所定のバンドで固定する。一次巻線16aは、二次巻線18の第1ターン部18aの表面及び裏面に沿うように組み付けられ、一次巻線16bは、第2ターン部18bの表面及び裏面に沿うように組み付けられる。一次巻線16aと一次巻線16bの各一端部は、入力端子20に接続されており、各他端部は相互接続されている。
【0020】
半導体スタック13は、薄い4枚の半導体22a、22b、22c及び22dと、これらの半導体を挟持する冷却フィン24a、24b、24c、24d、24fと、これらの冷却フィンを接続するブロック26a、26b及び26cとを有する。冷却フィン24a〜24fと、ブロック26a〜26cの内部には冷却流路28がそれぞれ連通して設けられている。冷却流路28の入口側の一端は冷却フィン24aの側面に開口する入口ポート30aであり、出口側の他端は冷却フィン24fの側面に開口する出口ポート30bである。この半導体スタック13では、入口ポート30aから出口ポート30bに向けて冷却流路28内に冷却水を流通することにより、半導体22a〜22dを冷却することができる。
【0021】
図3に示すように、二次巻線18は、アルミニウム鋳造によって構成された2ターンのコイルであり、第1ターン部18aと、第2ターン部18bと、上部の横架部18cとを有する。二次巻線18はアルミニウム材自体が通電体となっている。また、二次巻線18は、一次巻線16a、16b及びカットコア14a、14bよりも大きく強固な部材であって、トランス本体12のベースの構造体となっている。二次巻線18には冷却水を流通させるための冷却流路体60が鋳込まれている。
【0022】
二次巻線18の表面には無電解ニッケルのめっき処理がなされており、銅製の部材(例えば、半導体スタック13、冷却フィン24及びマイナス電極等)を接触させた箇所に結露等により水分が付着しても電蝕等が発生することがない。
【0023】
第1ターン部18aは、中央にカットコア14a、14bの一部が挿通される四角孔40aを備え、側面視(図1参照)で略四角形状の扁平形状であって、下方の2隅は円弧状に面取りされている。四角孔40aの上部から第1ターン部18aの上面に向かって細いスリット42aが設けられており、第1ターン部18aは、上方に開口した略C字状となっている。
【0024】
第1ターン部18aの上面左端部には、やや突出した端子台44aが設けられている。該端子台44aには、図1の左方向に開口する2つのビス孔46aが並列して設けられており、2本のビス48によって端子50aが取り付けられる。端子50aの接続線は、図示しないトランスに接続される。
【0025】
端子台44aにおけるビス孔46aが設けられている面の下部は、斜め下方向に向かう傾斜面52aが設けられている。該傾斜面52aには、冷却流路体60の一端の入口ポート60aが開口している。
【0026】
第2ターン部18bは、第1ターン部18aと同形状で左右逆向きに構成されており、その詳細な説明は省略する。第2ターン部18bにおける各部の符号は、第1ターン部18aにおける符号の添え字「a」に代えて添え字「b」を付して示す。第2ターン部18bの傾斜面52bには、冷却流路体60の他端の出口ポート60bが開口している。
【0027】
なお、図1に示すように、入口ポート60aは、半導体スタック13の出口ポート30bと中継ホース100bによって接続されている。半導体スタック13の入口ポート30aは冷却水の供給ホース100aに接続されている。出口ポート60bは冷却水の排水ホース100cと接続されている。このような接続により、冷却水は、供給ホース100a、冷却流路28、中継ホース100b、冷却流路体60及び排水ホース100cの順に流通して、半導体スタック13及びトランス本体12を冷却する。
【0028】
図3に戻り、横架部18cは、第1ターン部18aの上面右部と第2ターン部18bの上面左部とを平面視で傾斜しながら接続する部分である。横架部18cの厚みは、第1ターン部18a及び第2ターン部18bの厚みと略同じに設定されている。第1ターン部18aの右上部で、横架部18cの正面部には2つのビス孔54aが設けられている。同様に、第2ターン部18bの左上部で、横架部18cの背面部には2つのビス孔(図示せず)が設けられている。ビス孔54aは、半導体スタック13の固定用に用いられ、背面側のビス孔には所定のマイナス電極が接続される。
【0029】
次に、二次巻線18を冷却するための冷却流路体60について図4及び図5を参照しながら説明する。
【0030】
図4に示すように、冷却流路体60は、銅パイプ62と、該銅パイプ62の一端に設けられた銅カラー64aと、他端に設けられた銅カラー64bとを有する。銅パイプ62は、銅カラー64aが設けられた一端部から、第1ターン部18aを反時計周りに略1周し(図1参照)、横架部18cを経由した後、第2ターン部18bを反時計回りに略1周して銅カラー64bが設けられた他端部に至る(図3参照)。銅パイプ62は、冷却効率向上の観点から、二次巻線18内の経路が長くなるように緩やかな波打ち形状に形成されている。
【0031】
冷却流路体60は、二次巻線18に鋳込まれており、銅カラー64aが設けられた一端が傾斜面52aに開口して入口ポート60aを形成し、銅カラー64bが設けられた他端が傾斜面52bに開口して出口ポート60bを形成している。
【0032】
図5に示すように、銅カラー64aは、短い筒形状であって開口側に雌ねじが66が設けられている。銅カラー64aは、内径が銅パイプ62の外径と略等しく、該銅パイプ62の一端に挿入された状態で、挿入側端部がろう付けされている。このろう付部68は、銅カラー64aの挿入側端部と銅パイプ62との接触部に対して隅肉を形成するように1周にわたって設けられている。
【0033】
このろう付部68によれば、銅カラー64aを銅パイプ62に確実に固着するすることができる。なお、詳細な説明を省略するが、他端の銅カラー64bについても同様の構成であり、同様の効果を有する。
【0034】
また、図5に示すように、冷却流路体60の表面にはコーティング層70が形成されている。該コーティング層70は冷却流路体60を二次巻線18に鋳込む前の段階で、コーティング剤を塗布及び加熱して形成されたものである。コーティング層70は、ろう付部68を含む冷却流路体60の全面に形成されている。
【0035】
コーティング剤は耐熱性のあるもので、例えば、酸化アルミニウム及びケイ酸ジルコニウムの少なくとも一方を含むものを用いるとよい。酸化アルミニウムは融点が2020℃と高く、表面の強度・耐熱衝撃性能を向上する効果を有する。ケイ酸ジルコニウムは融点が2550℃と高い。また、ケイ酸ジルコニウムは耐食性が高く、ほとんどの化学物質と反応しない性質をもち、溶融アルミニウムと銀ろうあるいは銅との反応を防ぐことができる。銅はアルミニウムと反応する性質があるが、ケイ酸ジルコニウム等を含むコーティング層70を設けることにより、侵食を防止することができる。
【0036】
これらのコーティング層70によれば、アルミニウムの溶湯に触れても溶解することがないため、冷却流路体60の表面でバリアとなり、内部を保護することができる。
【0037】
コーティング剤としては、これ以外にも、例えばケイ酸ソーダや酸化マグネシウムを含むものであってもよい。ケイ酸ソーダは界面活性剤として使用されるもので、石けんのように表面を滑らかにし、溶湯の流れをよくして表面のボイドの発生を抑制することができる。酸化マグネシムは熱伝導性付与剤として使用されるもので、銅パイプから熱放散を向上させることができる。二次巻線18では、冷却流路体60に冷却水を流してアルミニウムの熱抵抗で発生した熱を冷却水に伝えて冷却するので、銅パイプ62の表面で熱伝導が阻害されると冷却性能が低下するが、酸化マグネシウム等を含むコーティング層70を設けることにより、伝熱特性及び冷却特性を向上させることができる。
【0038】
次に、このように構成されるトランス10の製造方法について図6を参照しながら説明する。
【0039】
先ず、ステップS1において、銅のパイプ材から所定長さを切り出した後に曲げ加工をして銅パイプ62を形成する。
【0040】
ステップS2において、図7に示すように、銅パイプ62の両端に銅カラー64a及び64bを取り付けた後に、各銅カラー64a及び64bの挿入側端部を銅パイプ62の表面の1周にわたってろう付けを行い、ろう付部68を形成する。ろう材は、例えば銀ろうであって、融点が600℃程度である。
【0041】
ステップS3において、銅パイプ62、銅カラー64a及び64bの全面に前記のコーティング剤を薄く均一に塗布する。このコーティング剤は、前記のとおり酸化アルミニウム及びケイ酸ジルコニウムの少なくとも一方を含むものである。
【0042】
ステップS4において、コーティング剤を塗布した銅パイプ62、銅カラー64a及び64bを所定手段により加熱して余分な水分等を除き、コーティング層70を形成する。これにより冷却流路体60が得られる。
【0043】
ステップS5において、二次巻線18の形状のキャビティを有する鋳造金型(図示せず)を用いてアルミニウム鋳造を行う。このとき、鋳造金型のキャビティ部に冷却流路体60を配置しておき、アルミニウムに鋳込んで二次巻線18を形成する。ところで、アルミニウムの溶湯は、例えば、740℃程度に設定されており、ろう付部68の銀ろうの融点(600℃程度)よりも高温であるが、該ろう付部68は高融点の材質を含むコーティング層70によって覆われていることから耐熱性を有し、ろう付部68が溶損してしまうことがない。また、仮にろう付部68の表面の一部が溶融した場合であっても、コーティング層70が殻として覆っていることから、ろう材が流出することがない。
【0044】
さらに、コーティング層70が設けられていることにより、銅パイプ62の表面における湯流れ性が向上し、鋳造がスムーズに行われるとともに巣の発生が抑制される。
【0045】
この後、アルミニウムが凝固して冷却された後、鋳造金型を取り除き、所定のビス孔加工等を行い、二次巻線18を得る。
【0046】
ステップS6において、二次巻線18に対して、予め形成された一次巻線16aと一次巻線16b取り付ける。
【0047】
ステップS7において、二次巻線18及び一次巻線16a、16bの組み立て体カットコア14a、14bを挟み込みバンドにより固定する。また、前記のとおり、一次巻線16aと一次巻線16bの各一端部を入力端子20に接続し、各他端部を相互接続する。この後、組み立て体を支持台21に取り付けてトランス本体12が得られる。
【0048】
ステップS8において、トランス本体12の上部に半導体スタック13を取り付け、中継ホース100bを取り付ける。また、トランス本体12の使用時には、供給ホース100a及び排水ホース100cを取り付けて、冷却水を冷却流路28及び冷却流路体60に供給、循環させる。これにより、半導体スタック13及びトランス本体12を冷却することができる。
【0049】
上述したように、本実施の形態に係るトランス10及びその製造方法では、ろう付けした銅パイプ62及び銅カラー64a、64bの表面に、アルミニウム溶融温度よりも融点の高いコーティング剤を施してコーティング層70を設けている。このコーティング層70が保護膜となって鋳造過程でろう材が溶損することを防止できる。
【0050】
したがって、銅カラー64a、64bが銅パイプ62から剥離することがなく、冷却材を供給する中継ホース100b及び排水ホース100cとの接続強度が十分に高くなる。また、剥離部に水分が進入して腐食が発生するおそれがない。
【0051】
さらにまた、銅カラー64a、64bには雌ねじ66が形成されており、該銅カラー64a、64bに中継ホース100b及び排水ホース100cを接続するため、冷却水がアルミニウム母材と直接的に接触することがなく、電蝕を防止することができる。
【0052】
本実施の形態に係るトランス10及びその製造方法によれば、二次巻線18が主にアルミニウムで形成されていることから、銅が主体の二次巻線と比較して軽量である。銅が主体の二次巻線の場合、アルミニウムと比較すると鋳造が困難であって、冷却水の流路を形成するためには、純銅板にドリル加工をして水路を形成し、これをろう付けする。このような加工は、工程数が多く、しかも加工が難しく、ドリルの消耗も早い。一方、トランス10及びその製造方法によれば、アルミニウム鋳造時に冷却流路体60を鋳込むことから、工程数が少なく、処理が容易であって、しかも工具等の消耗がない。
【0053】
本発明に係るトランス及びその製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施の形態に係るトランスの正面図である。
【図2】本実施の形態に係るトランスの側面図である。
【図3】二次巻線の斜視図である。
【図4】冷却流路体の斜視図である。
【図5】冷却流路の開口部の断面図である。
【図6】本実施の形態に係るトランスの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図7】銅パイプと銅カラーの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
10…トランス 12…トランス本体
13…半導体スタック 14a、14b…カットコア
16a、16b…一次巻線 18…二次巻線
18a、18b…ターン部 18c…横架部
60…冷却流路体 60a…入口ポート
60b…出口ポート 62…銅パイプ
64a、64b…銅カラー 66…雌ネジ
68…ろう付部 70…コーティング層
100a…供給ホース 100b…中継ホース
100c…排水ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を巻回して形成される一次巻線と、
銅パイプ及び該銅パイプの端部にろう付けされた継手としての銅カラーを含む冷却流路体と、
少なくとも前記冷却流路体の銅パイプと該銅パイプのろう付部が鋳込まれているアルミニウム製の二次巻線と、
前記一次巻線及び前記二次巻線と組み合わされる積層鋼板からなるコアと、
を備え、
前記ろう付部及び前記銅パイプの表面に、酸化アルミニウム及びケイ酸ジルコニウムの少なくとも一方を含むコーティング層が形成されていることを特徴とするトランス。
【請求項2】
銅パイプの端部に継手としての銅カラーをろう付けして冷却流路体を構成し、
前記ろう付部及び前記銅パイプの表面に、酸化アルミニウム及びケイ酸ジルコニウムの少なくとも一方を含むコーティング層を形成し、
少なくとも前記冷却流路体の銅パイプと該銅パイプのろう付部をアルミニウムに鋳込んで二次巻線を形成し、
導線を巻回して形成される一次巻線と前記二次巻線を、積層鋼板からなるコアと組み合わせてトランスを得ることを特徴とするトランスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−243071(P2007−243071A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66740(P2006−66740)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】