説明

トリアジニルアミノスチルベンジスルホン酸混合物

本発明は、2種の対称型置換トリアジニルアミノスチルベンジスルホン酸および1種の非対称型置換トリアジニルアミノスチルベンジスルホン酸の混合物を含む蛍光漂白剤、新規の非対称型置換誘導体、その製造方法、ならびに合成もしくは天然有機材料、特に紙を白色化するため、および布地材料を蛍光漂白しそのサンプロテクトファクター(SPF)を向上させるための前記混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の対称型置換トリアジニルアミノスチルベンジスルホン酸および1種の非対称型置換トリアジニルアミノスチルベンジスルホン酸の混合物を含む蛍光漂白剤(fluorescent whitening agent)、新規の非対称型置換誘導体、その製造方法、ならびに合成もしくは天然有機材料、特に紙を白色化するため、および布地材料を蛍光漂白しそのサンプロテクトファクター(SPF)を改善させるための前記混合物の使用に関する。
【0002】
紙の増白のためのトリアジニルアミノスチルベンスルホン酸の混合物は、米国特許第3132106号に開示されている。しかし、このような化合物はテトラスルホン酸に限られており、これは、パルプ用途での紙の白色化に特に適しているが、コーティングもしくはサイズプレス用途といった現在の白色化技術にはあまり望ましいものではない。
【0003】
驚くべきことに、トリアジニルアミノスチルベンジスルホン酸の混合物が、パルプ用途のみならず、紙コーティングおよびサイズプレス用途での使用に非常によく適しており、極めて高い白化度(degrees of whiteness)を示し、さらには、安定な液体組成物として簡単に製造できることが分かった。
したがって、本発明は、次式
【0004】
【化6】

【0005】
[式中、RおよびRは異なっており、それぞれ−NH、−NHC〜Cアルキル、−N(C〜Cアルキル)、−NHC〜Cヒドロキシアルキル、−N(C〜Cヒドロキシアルキル)、−N(C〜Cアルキル)(C〜Cヒドロキシアルキル)、モルホリノ残基またはアミノ酸もしくはアミノ基から水素原子が除去されたアミノ酸アミド残基を表し、
Aで示された環のそれぞれは、1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい、5もしくは6員の飽和ヘテロ環を表し、
Mは、水素、アルカリ金属原子、アンモニウムもしくはアミンから形成されたカチオンを表す]の化合物の混合物を含む蛍光漂白剤に関する。
上記の5もしくは6員ヘテロ環Aは、好ましくは、ピロリジノ、ピペリジノ、または特にモルホリノ残基であり、好ましい蛍光漂白剤混合物は、次式
【0006】
【化7】

【0007】
[R、RおよびMは上と同義である]
の化合物を含む。
【0008】
および/またはRが、アミノ酸もしくはアミノ酸アミド残基を表している場合、それは、好ましくは、式
【0009】
【化8】

【0010】
[式中、RおよびR3’はそれぞれ独立して、水素、または式−CHRを有する基を表し、
およびRは独立して、水素、またはC〜Cアルキルである(ヒドロキシ、チオ、メチルチオ、アミノ、カルボキシ、スルホ、フェニル、4−ヒドロキシフェニル、3,5−ジヨード−4−ヒドロキシフェニル、β−インドリル、β−イミダゾイルおよびNH=C(NH)NH−からなる群から選択される1つまたは2つの置換基によって任意に置換される)]で表される。
【0011】
より好ましくは、残基Rおよび/またはRは、グリシン、アラニン、サルコシン、セリン、システイン、フェニルアラニン、チロシン(4−ヒドロキシフェニルアラニン)、ジヨードチロシン、トリプトファン((β−インドリルアラニン)、ヒスチジン(β−イミダゾリルアラニン)、α−アミノブタン酸、メチオニン、バリン(α−アミノイソ吉草酸)、ノルバリン、ロイシン(α−アミノイソカプロン酸)、イソロイシン(α−アミノ−β−メチル吉草酸)、ノルロイシン(α−アミノ−n−カプロン酸)、アルギニン、オルニシン(α,δ−ジアミノ吉草酸)、リジン(α,ε−ジアミノカプロン酸)、アスパラギン酸(アミノ琥珀酸)、グルタミン酸(α−アミノグルタル酸)、スレオニン、ヒドロキシグルタミン酸、およびタウリン、ならびにこれらの混合物および光学異性体から、あるいはアミノ二酢酸もしくはN−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンから誘導される。
【0012】
しかし、最も好ましくは、Rおよび/またはRは、−N(C〜Cアルキル)、−NHC〜Cヒドロキシアルキル、−N(C〜Cヒドロキシアルキル)、−N(C−Cアルキル)(C〜Cヒドロキシアルキル)、モルホリノ残基、またはグリシン、サルコシン、タウリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イミノ二酢酸もしくはN−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンから誘導された残基を表し、
特に、Rは、ジエチルアミノ、モノ−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ジ−(2−ヒドロキシプロピル)アミノ、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノ、モルホリノ、N−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、またはサルコシン残基を表し、Rは、アスパラギン酸またはグリシン残基を表す。
式(1a)〜(1c)の化合物においては、Mは、水素、リチウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、モノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ−C〜Cアルキルアンモニウム、モノ−、ジ−もしくはトリ−C〜Cヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC〜CアルキルおよびC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物で二置換もしくは三置換されたアンモニウムを表す、すなわち、H(C〜Cアルキル)(C〜Cヒドロキシアルキル)およびHN(C〜Cアルキル)(C〜Cヒドロキシアルキル)[nおよびmは1または2を表す]を表すが、好ましくは、Mは水素、カリウムもしくはナトリウムである。
【0013】
最も好ましい態様では、本発明は、式(2a)、(2b)および(2c)[これらの式中、Rは、モノ−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ジ−(2−ヒドロキシプロピル)アミノ、ジエチルアミノまたはN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノを表し、Rは、アスパラギン酸またはグリシン残基を表し、Mはナトリウムを表す]の化合物の混合物を含む蛍光漂白剤に関する。
【0014】
、Rおよび/またはRが、C〜Cアルキルラジカルを含む場合、これらは、分枝していても、分枝していなくてもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルであり、イソブチルもしくはt−イソブチルであり、一方、C〜Cアルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシもしくはt−ブトキシである。C〜Cヒドロキシアルキルは、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルもしくはヒドロキシブチルであってよい。
【0015】
式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物は、既知の反応条件下、塩化シアヌルを、連続的に、任意の所望の手順で、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、適切なヘテロ環化合物、例えばピロリジン、ピペリジン、または特にモルホリン、アミノ化合物RHおよびアミノ化合物RH、代わりにアミノ化合物RHおよびアミノ化合物RHの混合物[RおよびRは、上と同義である]のそれぞれと反応させることによって製造することができる。しかし、好ましくは、塩化シアヌルを、まず4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸と反応させ、続いてモルホリンと、最後にアミノ化合物RHおよびRHの混合物と反応させる。
【0016】
アミンRHおよびRHの量および割合、ならびにそれらを連続して添加するか、もしくは混合物として同時に添加するかによって、化合物(1a)、(1b)および(1c)の割合は、著しく変化する。よって、本発明は、化合物(1a)、(1b)および(1c)の混合物を含む蛍光漂白剤であって、その混合物中で、各成分が5〜80%のモル比で存在し、好ましくは、式(1a)の化合物が5〜45%、式(1b)の化合物が15〜60%、式(1c)の化合物が5〜45%のおおよそのモル比で存在しているものに関する。より好ましくは、化合物(1a)、(1b)および(1c)が、式(1a)の化合物20〜50%、式(1b)の化合物30〜60%および式(1c)の化合物10〜40%のおおよそのモル比で存在している。
【0017】
もちろん、そのような組成物を、個々の成分を所望の割合で単に機械的に混合することによって得ることもできる。その場合、個々の成分を純粋な物質として得ることが必要である。式(1a)および(1c)のいくつかの成分は既知の化合物であるが、このような対称型誘導体であって、RおよびRが、アミノ基から水素原子が除去されたアミノ酸残基を表すものの多く、ならびに式(1b)の化合物は新規である。
【0018】
したがって、本発明のさらなる態様は、式
【0019】
【化9】

【0020】
[式中のR、R、AおよびM、ならびにそれらの好ましい形態については、上と同義である]の化合物であり、本発明のさらなる第2の態様は、式
【0021】
【化10】

【0022】
[式中、残基Rは、アミノ酸またはアミノ基から水素が除去されたアミノ酸誘導体であり、その残基は、アラニン、サルコシン、セリン、システイン、フェニルアラニン、チロシン(4−ヒドロキシフェニルアラニン)、ジヨードチロシン、トリプトファン(β−インドリルアラニン)、ヒスチジン(β−イミダゾリルアラニン)、α−アミノブタン酸、メチオニン、バリン(α−アミノイソ吉草酸)、ノルバリン、ロイシン(α−アミノイソカプロン酸)、イソロイシン(α−アミノ−β−メチル吉草酸)、ノルロイシン(α−アミノ−n−カプロン酸)、アルギニン、オルニシン(α,δ−ジアミノ吉草酸)、リジン(α,ε−ジアミノカプロン酸)、アスパラギン酸(アミノ琥珀酸)、グルタミン酸(α−アミノグルタル酸)、スレオニンもしくはヒドロキシグルタミン酸、ならびにこれらの混合物および光学異性体から、あるいはイミノ二酢酸またはN−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンもしくは相応のプロピオン酸から誘導され、ヘテロ環Aおよび記号Mは、それらの好ましい態様と共に上と同義である。]の化合物に関する。
【0023】
式(1b)の化合物は、上記のように得られた混合物を精製することによって得ることができ、または例えば以下の手順によって、すなわち、
i)塩化シアヌルを、4−アミノ−4’−ニトロスチルベン−2−2’−ジスルホン酸と反応させ、
ii)ジクロロ中間体を、適切なヘテロ環化合物、例えば、ピロリジン、ピペリジン、または特にモルホリンと反応させ、
iii)モノクロロ中間体を、アミンRHまたはRHと反応させ、
iv)ニトロスチルベンをアミノスチルベンに還元し、
v)塩化シアヌルと反応させ、
vi)ジクロロ中間体を、適切なヘテロ環化合物、例えば、ピロリジン、ピペリジンまたは特にモルホリンと反応させ、さらに、
vii)モノクロロ中間体を、アミンRHまたはRHと反応させることによって、得ることができる。
【0024】
もちろん、この反応手順は、任意の望ましく、実用的な順序で行うことができる。
【0025】
本発明のさらなる態様は、合成もしくは天然の有機材料を白色化するための組成物であって、水、化合物(1a)、(1b)および(1c)の混合物を含む蛍光漂白剤、および任意に補助剤を含有する組成物の使用である。
【0026】
より詳細には、そのような増白剤組成物(brightener composition)は、水、および、以下いずれも調製物の重量に対して、上記の蛍光漂白剤混合物を3〜35重量%、好ましくは5〜25重量%、さらには補助剤を0〜60重量%、好ましくは5〜50重量%含有している。
【0027】
適切な補助剤は、例えば、脂肪アルコール、高級脂肪酸もしくはアルキルフェノールを含むエチレンオキシド付加化合物またはエチレンジアミンエチレンオキシド−プロピレンオキシド付加化合物の類からのアニオンもしくは非イオン分散液、N−ビニルピロリドンと3−ビニルプロピオン酸とのコポリマー、保水剤、例えばエチレングリコール、グリセロールもしくはソルビトール、あるいは殺生物剤である。
【0028】
さらに、安定な液体配合物の製造と、混合物の白化作用の向上との両方のために有用な補助剤は、例えば、ポリエチレングリコールである。そのようなポリエチレングリコールは、例えば約200〜約2000の広い範囲にわたる平均分子量を有していてよく、特に約1500の分子量が適切である。
【0029】
式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物を含むほとんどの組成物は、布地のような基質のための、洗剤組成物に添加するための、そして特に紙の蛍光漂白のための優れた蛍光漂白剤である。
【0030】
紙の蛍光漂白のために使用する場合には、水と、化合物(1a)、(1b)および(1c)の混合物を含む蛍光漂白剤と、任意に補助剤とを含有する上記組成物を、パルプ塊(pulp mass)の紙基質に、紙コーティング組成物の形態でまたはサイズプレスもしくは計測プレス(metering press)で直接的に塗布することができる。
【0031】
好ましい一態様では、本発明は、紙表面を蛍光白色化する方法であって、白色顔料と、バインダ分散液と、任意に水溶性コバインダと、本発明による式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物とを含む蛍光漂白剤の十分な量を含むコーティング組成物を紙表面に接触させ、処理された紙が、確実に白色顔料に対して蛍光漂白剤を0.01〜1重量%含むようになる方法を提供する。
【0032】
本発明の方法で使用される紙コーティング組成物の白色顔料成分としては、好ましい無機顔料、例えば、チャイナクレイおよびカオリンのようなケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウム、さらには、硫酸バリウム、サテンホワイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム(白亜)またはタルカム、ならびに白色有機顔料が挙げられる。
【0033】
本発明の方法で使用される紙コーティング組成物は、バインダとして、特に、ブタジエン/スチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、アクリル酸エステル、アクリル酸エステル/スチレン/アクリロニトリル、エチレン/塩化ビニルおよびエチレン/酢酸ビニルのコポリマー、またはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンおよびポリ酢酸ビニルもしくはポリウレタンのようなホモポリマーをベースとしたプラスチック分散液を含有していてよい。好ましいバインダは、スチレン/酢酸ブチルまたはスチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーまたはスチレン/ブタジエンゴムからなる。他のポリマーラテックス(polymer lattices)は、例えば、米国特許第3265654号、3657174号、3547899号および3240740号明細書に記載されている。
【0034】
任意の水溶性保護コロイドは、例えば、大豆タンパク、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、天然もしくは改質スターチ、キトサンまたはこれらの誘導体、あるいは特にポリビニルアルコールであってよい。好ましいポリビニルアルコール保護コロイド成分は、広範な鹸化レベルおよび分子量、例えば40〜100の鹸化レベルおよび10,000〜100,000の平均分子量を有していてよい。
【0035】
紙用のコーティング組成物の調製法は、例えば、J. P. Casey "Pulp and Paper"; Chemistry and Chemical Technology, 2nd edition, Volume III, pages 1684〜1649および"Pulp and Paper Manufacture", 2nd and 5th edition, Volume II, page 497 (McGraw-Hill)に記載されている。
【0036】
本発明の方法で使用される紙コーティング組成物は、好ましくは、白色顔料を10〜70重量%含有している。好ましくは、バインダを、ポリマー化合物の乾燥含有量が白色顔料の1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%までになるのに十分な量で使用する。本発明で使用される蛍光増白調製物の量は、蛍光増白剤が白色顔料に対して好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、特に0.05〜0.6重量%の量で存在するように算出される。
【0037】
本発明による方法で使用される紙コーティング組成物は、任意の所望の手順で、温度10〜100℃、好ましくは20〜80℃で成分を混合することによって製造することができる。上記成分は、レオロジー的特性、例えばコーティング組成物の粘度もしくは保水性を調整するために添加することのできる慣例的な補助剤も含む。そのような補助剤は、例えば、天然のバインダ、例えばスターチ、カゼイン、タンパク質もしくはゼラチン、セルロースエーテル、例えばカルボキシアルキルセルロースもしくはヒドロキシアルキルセルロース、アルギン酸、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシドもしくはポリエチレンオキシドアルキルエーテル、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、ホルムアルデヒドと尿素もしくはメラミンとの水溶性の縮合生成物、ポリリン酸塩もしくはポリアクリル酸塩である。
【0038】
本発明の方法で使用されるコーティング組成物は、好ましくは、コーティングされた印刷用紙もしくは筆記用紙、またはインクジェットもしくは写真用といった特別な紙、または厚紙を製造するために使用される。
【0039】
本発明の方法により使用されるコーティング組成物は、任意の従来の手法によって、例えばエアブレード、コーティングブレード、ローラ、ドクターブレードもしくはロッドによって、またはサイズプレスで基質に塗布することができ、その後、コーティングを、紙の表面温度70〜200℃、好ましくは90〜130℃で、残留含水量が3〜8%となるまで、例えば赤外線乾燥機および/または温風乾燥機で乾燥させる。これにより、低い乾燥温度でも、同等に高い白色度を得ることができる。
【0040】
本発明による方法を用いることによって、得られるコーティングは、全表面にわたる分散蛍光漂白剤の最適な分布、それにより達成される白色レベルの上昇、耐光性および耐熱性(例えば60〜100℃で24時間の安定性)、ならびに水に対する優れた耐ブリード性により特徴付けられる。
第2の好ましい態様では、本発明は、紙表面を蛍光漂白する方法であって、サイズプレスで、サイズと、無機もしくは有機顔料と、本発明による式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物を含む蛍光漂白剤0.1〜20g/Lとを含有する水溶液を紙に接触させることを含む方法を提供する。好ましくは、サイズは、スターチ、スターチ誘導体または合成サイズ剤、特に水溶性コポリマーである。
【0041】
本発明のさらなる一態様では、式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物により、布地繊維材料のSPF(サンプロテクションファクター)の等級を増大させるもしくは布地繊維材料を蛍光漂白する方法であって、布地繊維材料の重量に対して0.05〜0.5重量%の布地繊維材料を、上で定義した本発明の式(1a)、(1b)および(1c)の化合物のうちの1つ以上の混合物で処理することを含む方法が提供される。
【0042】
本発明の方法により処理される布地繊維は、天然もしくは合成繊維またはそれらの混合物であってよい。天然繊維の例は、植物繊維、例えば綿、ビスコース、フラックス、レーヨンまたはリネン、好ましくは綿、および動物繊維、例えばウール、モヘア、カシミア、アンゴラおよび絹、好ましくはウールを含む。合成繊維は、ポリエステル、ポリアミドおよびポリアクリロニトリル繊維を含む。好ましい布地繊維は、綿、ポリアミドおよびウール繊維である。
【0043】
好ましくは、本発明の方法により処理された布地繊維は、200g/m2未満の密度を有しており、予め深い色合いで染色されていない。
【0044】
本発明の方法で使用される式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物には、水に難溶性であり、分散の形態で塗布することが必要となりうるものもある。そのような分散のために、石英ボールおよび羽根車を都合よく利用して、混合物を適切な分散液とミリングして、1〜2ミクロンの粒径までにすることができる。
【0045】
そのような式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の難溶性混合物のための分散剤として、以下のものが挙げられる。
−アルキレンオキシド付加化合物の酸エステルまたはその塩、例えば、エチレンオキシド4〜40モルとフェノール1モルとのポリ付加化合物の酸エステルもしくはその塩、またはエチレンオキシド6〜30モルと、4−ノニルフェノール1モル、ジノニルフェノール1モル、もしくは特にスチレン1〜3モルをフェノール1モルに付加することによって製造される化合物1モルとの付加化合物のリン酸エステル、
−ポリスチレンスルホン酸、
−脂肪酸タウリド、
−アルキル化ジフェニルオキシド−モノ−またはジ−スルホン酸、
−ポリカルボン酸エステルのスルホン酸塩、
−エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド1〜60モル、好ましくは2〜30モルを、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪酸もしくは脂肪族アルコール(それぞれ8〜22個の炭素原子を有する)にまたは3〜6価のC〜Cアルカノールに付加させた生成物であり、有機ジカルボン酸もしくは無機多塩基酸により酸エステルに変換された付加生成物、
−リグニンスルホン酸、および特に、
−ホルムアルデヒド縮合生成物、例えば、リグニンスルホン酸および/またはフェノールとホルムアルデヒドとの縮合生成物、ホルムアルデヒドと芳香族スルホン酸との縮合生成物、例えばジトリルエーテルスルホン酸塩とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ナフタレンスルホン酸および/またはナフチルアミンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物、フェノールスルホン酸および/またはスルホン化されたジヒドロキシジフェニルスルホンおよびフェノールおよびクレゾールと、ホルムアルデヒドおよび/または尿素、またはジフェニルオキシドジスルホン酸誘導体とホルムアルデヒドとの縮合生成物。
【0046】
式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物の種類によって、中性、アルカリ性または酸性浴で処理を行うことが有利となりうる。この方法は、通常、温度20〜140℃で、例えば水性浴の沸点に近い温度、例えば約90℃で行う。
【0047】
式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物の溶液または有機溶剤中のそのエマルジョンを、本発明の方法で使用することもできる。例えば、染色機械での、いわゆる溶剤染色(パッドテルモフィックス適用、pad thermofix application)または吸尽染色法(exhaust dyeing method)を使用することができる。
【0048】
本発明の方法を、布地の処理もしくは仕上げ方法と組み合わせる場合には、そのような組み合わせられた処理を、式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物を、所望のSPFの向上もしくは白色度が達成される濃度で含有する適切な安定な調製物を使用することによって有利に実施することができる。
【0049】
特定の場合には、式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物は、後処理によって完全に効果的なものとなる。この後処理には、酸による処理のような化学的処理、熱処理、または組み合わせられた熱/化学処理を含む。
【0050】
式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物を、助剤もしくは増量剤、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム十水和物、炭酸ナトリウム、オルトリン酸ナトリウムもしくはオルトリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウムもしくはピロリン酸カリウムまたはトリポリリン酸ナトリウムもしくはトリポリリン酸カリウムのようなリン酸アルカリ金属、あるいはケイ酸ナトリウムのようなケイ酸アルカリ金属との混合剤中で使用することが有利であることが多い。
【0051】
式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物に加え、1つ以上の補佐剤をわずかな割合で本発明の方法に使用することもできる。その補佐剤の例は、漂白剤、酵素、着色染料、入白剤、光学白化剤、殺菌剤、非イオン界面活性剤、柔軟剤、抗ゲル化剤、例えば亜硝酸塩もしくは硝酸塩、特に硝酸ナトリウム、ならびに腐食阻止剤、例えばケイ酸ナトリウムを含む。
【0052】
上記の任意の各補佐剤の量は、処理される繊維に対して、1%を超えず、好ましくは、0.01〜1%であるのが望ましい。
【0053】
本発明の方法により、肌に対する保護が提供されるばかりでなく、本発明により処理される布地品の耐用年数も長くなる。特に、処理された布地繊維材料の引き裂き強さおよび/または耐光性が向上する。
【0054】
本発明により、本発明の方法により処理された繊維から製造される織物生地、ならびに前記布地から製造される衣料品も提供される。
【0055】
そのような織物生地およびその布地から製造された衣料品は、通常、20以上のSPF評価を有するが、未処理の綿のSPF評価は、一般に2〜4である。
【0056】
本発明の蛍光漂白剤は、極めて高い白化能、優れた持続性および耐性という特性を示すばかりでなく、さらに、多くの場合、望ましい高い水溶性を有し、これにより、濃縮された安定の液体調製物を素早く調製することが可能となるという点で、特に有利である。
【0057】
以下の例は、本発明を説明するものであり、制限的な意図は全くないものである。部および割合は、別途記載がなければ、重量で表す。
【0058】
調製例
例1A
塩化シアヌル120gをメチルエチルケトン753gに溶解させた溶液を、氷/水400gへと注ぎ、得られた懸濁液を、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸ジナトリウム塩の水溶液11%、1041gで70分間処理する。添加中、温度は10℃に上昇し、pHは、20%の水性炭酸ナトリウム溶液64mL全体を添加することによって、4.0に維持された。
【0059】
得られた懸濁液56.6gに、モルホリンをゆっくりと15℃で添加し、反応混合物を60分間で72℃に加熱する。撹拌をさらに30分間続け、pHを、水酸化ナトリウム50%水溶液を51mL添加することによって7.0〜7.5に維持した。メチルエチルケトンを留去した後、反応混合物を25℃に冷却し、沈殿した固体を濾過し、乾燥させた。4,4’−ビス[(4−モルホリノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ]スチルベン−2,2’−ジスルホン酸ジナトリウム塩251gが、活性含有量88.2%得られた。
【0060】
上記のようにして得られた4,4’−ビス[(4−モルホリノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ]スチルベン−2,2’−ジスルホン酸ジナトリウム塩9.2gを、水20mL中に懸濁させる。この得られた懸濁液中に、ジエタノールアミン1.26g、アスパラギン酸1.60gおよび水酸化ナトリウム30%水溶液2.93gを添加した。次に、混合物を94℃まで加熱し、その温度で5時間撹拌し、水酸化ナトリウム30%水溶液3.0gの全量を添加することによってpHを8.0〜8.5に維持した。さらに、混合物を冷却し、水を蒸発させ、残渣を真空下で乾燥させ、HPLC分析によれば、化合物(101a)25%、化合物(101b)47%および化合物(101c)22%ならびに水4.7%を含有する混合物を含む蛍光漂白剤(101)14.0gを得た。
【0061】
【化11】

【0062】
例2−9
例1に記載した手順と同じであるが、等量の適切なアミンRHおよびRHを最終反応ステップで使用し、以下に示す式(2a)〜(2c)
【0063】
【化12】

【0064】
[全ての式中、Mはナトリウムを表す]の蛍光漂白剤を得た。その結果は、表1にまとめた通りである。
【0065】
【表1】

【0066】
適用の例14−33
固体含有量70%であり、炭酸カルシウム70%およびクレイ30%からなるコーティング着色料に、顔料の重量に対して、ポリビニルアルコール0.2部およびSBRバインダ9部を添加し、続いて上記の例の蛍光漂白剤を様々な量で添加した。15分間撹拌してコーティング色を均質化し、蛍光漂白剤を含まないサイジング処理された85g/m2の中性原紙に、実験用ブレードコータを使用して6m/分のコーティング速度でコーティングを行い、コーティング重量13〜18±0.5g/m2が得られるようにした。乾燥後、CIE白色度およびISO蛍光値を、Datacolor Elrepho 3000分光光度計を用いて測定した。
【0067】
その結果を表2にまとめる。
【0068】
【表2】

【0069】
上の結果より、紙のコーティングに使用した場合、本発明の蛍光漂白剤によって優れた白色化作用が得られることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】


[式中、RおよびRは異なっており、それぞれ−NH、−NHC〜Cアルキル、−N(C〜Cアルキル)、−NHC〜Cヒドロキシアルキル、−N(C〜Cヒドロキシアルキル)、−N(C〜Cアルキル)(C〜Cヒドロキシアルキル)、モルホリノ残基またはアミノ酸もしくはアミノ基から水素原子が除去されたアミノ酸アミド残基を表し、
Aで示された環のそれぞれは、1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい、5もしくは6員の飽和ヘテロ環を表し、
Mは、水素、アルカリ金属原子、アンモニウムもしくはアミンから形成されたカチオンを表す]の化合物の混合物を含む、蛍光漂白剤。
【請求項2】

【化2】


[式R、RおよびMは請求項1と同義である]の化合物の混合物を含む、請求項1記載の蛍光漂白剤。
【請求項3】
脂肪族アミノ酸もしくはアミノ酸アミド残基が、式
【化3】


[式中、RおよびR3’はそれぞれ独立して、水素もしくは式−CHRを有する基を表し、
およびRは独立して、水素、またはC〜Cアルキルである(ヒドロキシ、チオ、メチルチオ、アミノ、カルボキシ、スルホ、フェニル、4−ヒドロキシフェニル、3,5−ジヨード−4−ヒドロキシフェニル、β−インドリル、β−イミダゾイルおよびNH=C(NH)NH−からなる群から選択される1つまたは2つの置換基によって任意に置換される)]である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
残基Rおよび/またはRが、グリシン、アラニン、サルコシン、セリン、システイン、フェニルアラニン、チロシン(4−ヒドロキシフェニルアラニン)、ジヨードチロシン、トリプトファン(β−インドリルアラニン)、ヒスチジン(β−イミダゾリルアラニン)、α−アミノブタン酸、メチオニン、バリン(α−アミノイソ吉草酸)、ノルバリン、ロイシン(α−アミノイソカプロン酸)、イソロイシン(α−アミノ−β−メチル吉草酸)、ノルロイシン(α−アミノ−n−カプロン酸)、アルギニン、オルニシン(α,δ−ジアミノ吉草酸)、リジン(α,ε−ジアミノカプロン酸)、アスパラギン酸(アミノ琥珀酸)、グルタミン酸(α−アミノグルタル酸)、スレオニン、ヒドロキシグルタミン酸、およびタウリン、ならびにこれらの混合物および光学異性体から、あるいはイミノ二酢酸もしくはN−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンから誘導される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
およびRが、−N(C〜Cアルキル)、−NHC〜Cヒドロキシアルキル、−N(C〜Cヒドロキシアルキル)、−N(C−Cアルキル)(C〜Cヒドロキシアルキル)、モルホリノ残基、またはグリシン、サルコシン、タウリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イミノ二酢酸もしくはN−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンから誘導された残基を表す、請求項1または2記載の組成物。
【請求項6】
が、モノ−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ジ−(2−ヒドロキシプロピル)アミノ、ジエチルアミノ、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノ、モルホリノ、N−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノまたはサルコシン残基を表し、Rは、アスパラギン酸またはグリシン残基を表す、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
Mが、水素、リチウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、モノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ−C〜Cアルキルアンモニウム、モノ−、ジ−もしくはトリ−C〜Cヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC〜CアルキルおよびC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物で二置換もしくは三置換されたアンモニウムを表す、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
Mが、水素、カリウムまたはナトリウムを表す、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
式(1a)、(1b)および(1c)の化合物混合物の製造方法であって、既知の反応条件下、塩化シアヌルを、連続的に、任意の所望の手順で、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、適切なヘテロ環化合物、アミノ化合物RHおよびアミノ化合物RH、代わりにアミノ化合物RHおよびアミノ化合物RHの混合物のそれぞれと反応させることによって行い、Rは、請求項1と同義である、方法。
【請求項10】

【化4】


[R、R、AおよびMは、請求項1と同義である]の化合物。
【請求項11】

【化5】


[式中、残基Rは、アミノ酸またはアミノ基から水素が除去されたアミノ酸誘導体であり、その残基は、アラニン、サルコシン、セリン、システイン、フェニルアラニン、チロシン(4−ヒドロキシフェニルアラニン)、ジヨードチロシン、トリプトファン((β−インドリルアラニン)、ヒスチジン(β−イミダゾリルアラニン)、α−アミノブタン酸、メチオニン、バリン(α−アミノイソ吉草酸)、ノルバリン、ロイシン(α−アミノイソカプロン酸)、イソロイシン(α−アミノ−β−メチル吉草酸)、ノルロイシン(α−アミノ−n−カプロン酸)、アルギニン、オルニシン(α,δ−ジアミノ吉草酸)、リジン(α,ε−ジアミノカプロン酸)、アスパラギン酸(アミノ琥珀酸)、グルタミン酸(α−アミノグルタル酸)、スレオニンもしくはヒドロキシグルタミン酸、ならびにこれらの混合物および光学異性体から、あるいはイミノ二酢酸またはN−(プロピオンアミド)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンもしくは対応するプロピオン酸から誘導され、ヘテロ環Aおよび記号Mは、請求項1と同義である)の化合物。
【請求項12】
水と、請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物(1a)、(1b)および(1c)の混合物、請求項10記載の式(1b)の化合物、または請求項11記載の化合物(1c)の化合物を含む蛍光増白剤と、任意に補助剤と、を含有する組成物の、合成もしくは天然有機材料を白色化するための使用。
【請求項13】
パルプ、サイズプレス、計測プレスもしくはコーティング適用における紙のための光学的増白剤としての、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項記載の式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物、請求項10に記載の式(1b)の化合物、または請求項11記載の式(1c)の化合物により、光学的に増白された紙。
【請求項15】
サンプロテクションファクター(SPF)等級を増大させるための、または布地繊維材料を蛍光増白するための、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか1項記載の式(1a)、(1b)および(1c)の化合物の混合物、請求項10記載の式(1b)の化合物または請求項11記載の式(1c)の化合物で処理された繊維から製造された織物生地。

【公表番号】特表2007−523229(P2007−523229A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550153(P2006−550153)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050070
【国際公開番号】WO2005/068597
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】