説明

トリアリールアミン化合物の製造方法

【課題】α,β−不飽和カルボニル置換基をもつトリアリールアミン化合物を、煩雑な工程を省略して少ない工程数で簡便に製造することができ、しかも特殊な基質によらずに汎用されている化合物を合成原料として採用することができるトリアリールアミン化合物の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】パラジウム及びアルキルホスフィンの存在下で、特定のハロゲン化トリアルキルアミン化合物と特定のオレフィンとを反応させて、特定のトリアリールアミン化合物を生成させるトリアリールアミン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリアリールアミン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無機材料に代え、有機化合物を機能性材料として用いた有機デバイスが開発され、注目を集めている。有機デバイスであれば、無機材料を用いたものでは困難であったほど機器を柔軟なものとすることができ、また機器の大幅な軽量化も可能となる。さらに、有機化合物は化学構造を修飾したり合成手法を変更したりしやすいため、設計自由度が高く、材料特性の改良はもとより、大量生産における製造効率の向上や製造コストの低減の可能性が大きく広がる。かかる利点を利用して携帯機器や画像関連機器等を中心に、次世代のデバイスとしてその開発が盛んに進められている。代表的なものとしては、有機電界発光素子、有機光電変換素子、有機トランジスター、タッチパネル、電子写真等が挙げられる。
上記有機デバイスには、その電気的ないし化学的な動作を制御する機能性有機材料として電荷輸送材料が用いられている。この電荷輸送材料には、電荷輸送性及び光安定性などの基本的な特性のほかに、材料の調製ないしデバイスに組み込む際の製造適性が求められる。さらには使用時の耐久性に直結する機械的な強度も必要とされる。
【0003】
有機デバイスの製造における有機材料の薄膜形成方法として、真空蒸着法や湿式塗布法などが提案されているが、真空蒸着法は大掛かりな機械が必要である。これに対し、湿式塗布法は簡易な設備で行なうことができ、大面積化が容易である。このため、製造効率を高めコストを低減しうる点で好ましく、工業的規模での生産に適合しうる製造方法である。したがって、上記電荷輸送材料についても、この湿式塗布法において製造適性を有するものであることが望まれる。具体的には、有機化合物からなる電荷輸送材料を溶かした塗布液を塗布し、次いでこの溶媒を除去して膜を作製するが、この塗布液の調製において電荷輸送材料の溶媒に対する溶解性が必要となる。そのために、電荷輸送材料をなす有機化合物に種々の置換基を導入するといった手法が採用されている(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、特許文献1では、作製した有機デバイスの強度を高める目的で、電荷輸送材料をなす有機化合物に架橋基を導入し、これを塗膜とした後に硬化させ、機械強度を高めることが提案されている。この架橋基としては、架橋性及び取扱の容易さから、アクリル基、メタクリル基が優れている。アクリル基、メタクリル基を導入する手法としては、アクリル酸もしくはアクリル酸ハラリドと電荷輸送材料をなす化合物のアルコール体とを縮合させて製造する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178813
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般的な合成方法を考慮したとき、上記電荷輸送材料をなす有機化合物の原料となるアルコール体を得るまでに手間がかかることとなり、またその基質として汎用的な化合物を用いることができない。下記スキーム1に一例を示すと、基質となる化合物A−1及びA−2は汎用的なものではなく、この化合物自体、合成ないし入手に手間を要する。またこれらを用いて化合物203を得る合成経路をとるため、それなりの手間と煩雑さを強いられていた。
そこで本発明者らは、電荷輸送材料をなすトリアリールアミン化合物の新規な合成方法を検討し、簡便でありかつ汎用的な材料を用いて対応しうる製造方法の提案を目的とした。
【0007】
【化1】

Et:エチルキ
Pr:イソプロピル基
Bu:ノルマルブチル基
Ac:アセチル基
*:ベンゼン環との結合部
【0008】
ところで、ハロゲン化アリールとオレフィン化合物とを反応させてスチレン誘導体を合成する反応が知られており、一般的にHeck反応と呼ばれている。この反応は、ハロゲン化アリールに置換基として電子供与基(例えばO原子,N原子)があると反応が進行しない。そのため、この問題を解決し、トリアリールアミン化合物に対して反応を進行させる手段として、パラジウム触媒にトリス(o−トリル)ホスフィンを組み合せたものを用いる方法が提案されている(Clemence Allainら,ChemBioChem.,2007,8,p.424 参照)。またパラジウムにアルキルホスフィンを配位させた触媒(Pd[P(tBu)3]2を用いる方法が開示されている(Md.A.Wahabら,Chem.Mater.,2008,20,p1855 参照)。しかし、これらの方法で導入されたオレフィン化合物(ピリジル基を有するオレフィン化合物又はビニルシラン)の残基からアルコール置換基への変換は容易でなく、この変換を速やかに行うことができるオレフィン化合物としてα,β−不飽和カルボニル置換基の導入が求められる。しかし、この置換基を導入する効率的な方法ないしその触媒はこれまで知られていなかった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、電荷輸送材料をなす有機化合物の合成に有用な有機材料であるα,β−不飽和カルボニル置換基をもつトリアリールアミン化合物を、煩雑な工程を省略して少ない工程数で簡便に製造することができ、しかも特殊な基質によらずに汎用されている化合物を合成原料として採用することができる、電荷輸送材料の工業的規模での生産に好適に対応しうるトリアリールアミン化合物の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は以下の手段によって解決された。
(1)パラジウム及びアルキルホスフィンの存在下で、下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(3)で表される化合物を生成させることを特徴とするトリアリールアミン化合物の製造方法。
【化2】

[一般式(1)において、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立に置換していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。Xは、Ar、Ar、及び/又はArに置換したハロゲン原子を表す。ただし、Xが複数あるとき、該複数のXは互いに異なるハロゲン原子であってもよい。mは自然数である。]
[一般式(2)において、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子もしくは置換基を表す。]
[一般式(3)において、Ar、Ar、Ar、X、及びmは一般式(1)と同義である。R、R、及びRは一般式(2)と同義である。nはm以下の自然数である。]
(2)下記一般式(4)で表される化合物をハロゲン化して上記一般式(1)で表される化合物を得ることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
【化3】

[一般式(4)において、Ar、Ar、及びArは一般式(1)と同義である。]
(3)上記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(5)で表されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の製造方法。
【化4】

[一般式(5)において、Ar、Ar、X、及びmは一般式(1)と同義である。Ar及びArはそれぞれ独立に置換していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。Arは置換していてもよいアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。]
(4)下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(3)で表される化合物を生成させる反応に用いられる触媒であって、パラジウムとアルキルホスフィンとを組み合わせたことを特徴とするトリアリールアミン化合物の製造用触媒。
【化5】

[一般式(1)において、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立に置換していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。Xは、Ar、Ar、及び/又はArに置換したハロゲン原子を表す。ただし、Xが複数あるとき、該複数のXは互いに異なるハロゲン原子であってもよい。mは自然数である。]
[一般式(2)において、R、R、及びRは置換基を表す。]
[一般式(3)において、Ar、Ar、Ar、X、及びmは一般式(1)と同義である。R、R、及びRは一般式(2)と同義である。nはm以下の自然数である。]
(5)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法により前記一般式(3)で表される化合物を製造し、該化合物の−C(R)=C(R)C(=O)Rで表される置換基を修飾して架橋性基とすることを特徴とする架橋性基を有する電荷輸送材料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトリアリールアミン化合物の製造方法によれば、電荷輸送材料をなす有機化合物の合成に有用な有機材料であるα,β−不飽和カルボニル置換基をもつトリアリールアミン化合物を、煩雑な工程を省略して少ない工程数で簡便に製造することができ、しかも特殊な基質によらずに汎用されている化合物を合成原料として採用することができ、電荷輸送材料の工業的規模での生産に好適に対応しうる。
また、本発明の触媒によれば、上記電荷輸送材料をなす有機化合物の合成に有用な有機材料の製造において、トリアリールアミン骨格を有する化合物にβ−不飽和カルボニル置換基を導入する反応を速やかに進行させ、高収率で目的の化合物を得ることができるという優れた作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の製造方法においては、アルキルホスフィンとパラジウムとの存在下で、上記一般式(1)で表される化合物と上記一般式(2)で表される化合物とを反応させて、上記一般式(3)で表される化合物を生成させる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明の製造方法において、上記反応の速やかな進行を可能とした触媒について説明する。本発明におけるトリアリールアミン化合物の製造用触媒は、パラジウムとアルキルホスフィンとを組み合わせてなる。
上記触媒においてパラジウムをパラジウム化合物として用いるときには、2価のパラジウムを含むものとして、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、パラジウムトリフルオロアセテート、アリルパラジウムクロライド−ダイマー、(2,2’−ビピリジン)ジクロロパラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2,5−ジエン)ジクロロパラジウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム、ジクロロ(1,10−フェナントロリン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィンパラジウム)、アンモニウムテトラクロロパラデート、ジアンミンジブロモパラジウム、ジアンミンジクロロパラジウム、ジアンミンジヨードパラジウム、ポタッシウムテトラブロモパラデート、ポタッシウムテトラクロロパラデート、ソジウムテトラクロロパラデート等、0価のパラジウムを含むものとしては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム等が挙げられる。中でも、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、又はアリルパラジウムクロライド−ダイマーを用いることが好ましく、酢酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、又はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを用いることが特に好ましい。
本発明の触媒は、パラジウムとアルキルホスフィンとを組み合わせた触媒であればよく、これらを反応系内に投入する実施態様は特に限定されない。例えば、(i)上記のパラジウム化合物と後述するアルキルホスフィンとを組み合わせた触媒であっても、(ii)パラジウムにアルキルホスフィンを配位させた金属錯体触媒であっても、(iii)前記金属錯体触媒の塩を用いてもよい。なお、本発明において、触媒は、活性炭素、ポリマー、無機固体(ゼオライト)等の固体に担持された固体担持触媒を用いてもよい。
【0014】
本発明においては、上記パラジウム化合物と組み合わせてアルキルホスフィンを触媒化合物として用いるが、具体的な化合物としては下記の例示化合物が挙げられ、中でもt−BuPが特に好ましい。なお、本発明においてアルキルホスフィンとは、リン原子と結合した有機基の少なくとも1つがアルキル基であればよく、残りの2つの基がアルキル基以外の基であってもよい。このアルキルホスフィンはパラジウムの配位子となるが、上述したとおり、これをあらかじめ配位させたものを用いても、両者を別に投入して反応系内で配位するようにしてもよい。取扱上の容易さからは、これらのアルキルホスフィンと酸(特に限定されないが、例えばHBF,HBPh等)を反応させることで、塩としたものを用いることが好ましい。
【0015】
【化6】

【0016】
上記式中、Phはフェニル基を表す。nBuはn−ブチル基を表す。
【0017】
次に、一般式(1)について説明する。
式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に置換していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。置換していてもよい置換基としては例えば下記の置換基群Aのものが挙げられる。Ar、Ar、Arの構成炭素は5〜12個であることが好ましい。中でも、これらはアリール基であることが好ましく、このとき芳香環の構成炭素が6〜12個であることが好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。また、Ar及びArは直接もしくは連結基を介して互いに結合していてもよい。
Xは、Ar、Ar、及び/又はArに置換したハロゲン原子を表す。ただし、Xが複数あるとき、該複数のXは互いに異なるハロゲン原子であってもよい。このハロゲン原子としては、目的化合物を得るための製造コストや反応性の観点から、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、臭素又はヨウ素がより好ましく、臭素が特に好ましい。
mは自然数であり、3〜4であることが好ましい。
【0018】
<置換基群A>
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0019】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの例示化合物により限定して解釈されるものではない。
【0020】
【化6】

【0021】
【化8】

【0022】
上記一般式(1)で表される化合物は、上記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。一般式(5)において、Ar、Ar、Ar、Arはそれぞ独立に置換していてもよいアリール基を表し、その好ましい範囲は一般式(1)におけるAr及びArと同じである。なお、Ar及びAr、Ar及びArは直接もしくは連結基を介して互いに結合していてもよい。置換していてもよい置換基としては上記の置換基群Aのものが挙げられる。Arは置換していてもよいアリーレン基を表す。置換してもよい置換基としては下記の置換基群Aのものが挙げられる。アリーレン基としては例えば、下記に示すものが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0023】
【化7】

式中*は結合部位を表す。
【0024】
次に、一般式(2)について説明する。
、R、Rは、それぞれ独立に水素原子もしくは置換基を表す。置換基としては、前述の置換基群Aが挙げられる。R及びRは、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。Rは水素原子ではない置換基であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは構成炭素数が12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。)、アミド基(好ましくは構成炭素数が12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。)、アルキル基(好ましくは構成炭素数が12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。)、アリール基(好ましくは構成炭素数が12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。)が好ましく、アルコキシ基、アミド基がより好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。以下に、この具体例を示すが、本発明が下記の例示化合物に限られるわけではない。
【0025】
【化9】

上記式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはイソブチル基、n−Hexylはn−ヘキシル基、n−Octylはn−オクチル基、n−Decylはn−デシル基を表す。
【0026】
前記一般式(3)において、Ar、Ar、Ar、X、及びmは一般式(1)と同義であり、R201、R202、及びR203は一般式(2)と同義である。nはm以下の自然数であり、3〜4であることが好ましい。
【0027】
次に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを反応させるときの条件について説明する。
本反応は塩基を共存させることが好ましい。塩基としては、無機塩基(金属炭酸塩、金属アルコキシドが挙げられる。金属としては特に限定されないが、カリウム、ナトリウム、セシウム、ルビジウム等が好ましい。)、有機塩基(ピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、DBU等が挙げられるが、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソピロピルアミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。)を用いることが可能であるが、有機塩であることが好ましい。用いる塩基の量としては、導入する側鎖の当量に対して、1当量以上用いることが好ましい。また、用いる塩基が反応温度にて液体の場合には、溶媒として用いてもよい。
【0028】
本発明において、上記反応には溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては特に限定されないが、例えば、芳香族系溶媒(トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メシチレン、p−シメン、ソルベントナフサ等が挙げられるが、トルエン、キシレンが好ましい)、脂肪族系高沸点溶媒(デカン等)、アミド溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられるが、NMPが好ましい)等が挙げられる。好ましい溶媒としては、芳香族系溶媒、アミド溶媒が好ましく、アミド溶媒がより好ましい。複数の溶媒を組み合わせて、用いてもよい。
【0029】
反応温度は特に限定されないが、室温から180℃であることが好ましく、70〜160℃である事がより好ましい。反応の進行を、TLC(薄層クロマトグラフィー)やHPLC(高速液体クロマトグラフー)で確認して、随意に反応温度を調整してよい。
【0030】
反応時間としては特に限定されないが、通常では5分〜10時間の範囲で行なわれる。反応の進行を、TLCやHPLCで確認して、随意に反応時間を調整してよい。反応の後処理として、各種の精製操作を行なってよい。抽出、カラム精製、蒸留、昇華精製、カラムクロマトグラフィー、溶媒による洗浄、再結晶、晶析等を適宜用いることができる。反応は大気下もしくは不活性雰囲気(窒素やアルゴン等の希ガス)下で行うことができるが、触媒が失活しないよう、不活性雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0031】
上記パラヂウムとアルキルホスフィンとの組合せ触媒の使用量は、反応基質の量や種類に応じて適宜調節することができるが、一般式(1)で表される化合物に対して0.0001重量%から10重量%の範囲で反応系内に共存させることが好ましい。
【0032】
前記一般式(1)で表される化合物は、前記一般式(4)で表される化合物をハロゲン化して得ることが好ましい。一般式(4)において、Ar、Ar、Arは一般式(1)と同義である。一般式(4)で表される化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されるわけではない。
【0033】
【化7】

【0034】
一般式(4)で表される化合物から一般式(1)で表される化合物を製造する方法について説明する。
ハロゲン化に用いるハロゲン原子は、上述のように、製造コストや反応性の観点から、塩素化、臭素化、ヨウ素化が好ましく、臭素化、ヨウ素化がより好ましく、臭素化が特に好ましい。ハロゲン化を行なう手法については、例えば、実験科学講座[第5版]13巻,341−474ページに記載の手法が挙げられる。ハロゲン化剤としては、ハロゲン単体(臭素、ヨウ素塩素ガス)、ハロゲン化金属(ハロゲン化カリウム、ハロゲン化ナトリウム等)と酸化剤(過塩素酸ナトリウム等の過酸化塩など)の組み合わせ、ハロゲン化イミド(たとえばハロゲン化サクシイミド等)、ハロゲン化アミド等が挙げられる。反応の活性化剤として、過酸化物を共存させることも好ましい。
【0035】
上記ハロゲン化反応は溶媒を用いて行うことが好ましい。溶媒としては特に限定されないが、例えば、芳香族系溶媒(クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メシチレン、p−シメン、ソルベントナフサ等が挙げられるが、トルエン、キシレンが好ましい)、脂肪族系高沸点溶媒(デカン等)、アミド溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられるが、NMPが好ましい)、ハロゲン系溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン1,1,2−トリクロロエタン)、酢酸等が挙げられる。好ましい溶媒としては、アミド溶媒、ハロゲン系溶媒、酢酸が好ましく、アミド溶媒、酢酸がより好ましい。複数の溶媒を組み合わせて、用いてもよい。
【0036】
反応温度は特に限定されないが、−10℃から100℃であることが好ましく、−5〜80℃である事がより好ましい。反応の進行を、TLCやHPLCで確認して、随意に反応温度を調整してよい。反応時間としては特に限定されないが、通常では5分から10時間の範囲で行なわれる。反応の進行を、TLCやHPLCで確認して、随意に反応時間を調整してよい。反応の後処理として、各種の精製操作を行なってよい。抽出、カラム精製、蒸留、昇華精製、カラムクロマトグラフィー、溶媒による洗浄、再結晶、晶析等を適宜用いることができる。反応は大気下もしくは不活性雰囲気(窒素やアルゴン等の希ガス)下で行うことができる。
【0037】
本発明の製造方法に得られる一般式(3)で表される化合物は、架橋性基を有する電荷輸送材料の原料化合物(反応中間体)として有用である。すなわち、前記一般式(3)で表されるトリアリールアミン化合物を製造し、該化合物の−C(R)=C(R)C(=O)Rで表される置換基を修飾して架橋性基として、架橋性基を有する電荷輸送材料をなす化合物を製造することができる。具体的には、この一般式(3)で表される化合物に導入された、一般式(2)で表される化合物の残基(α,β−不飽和カルボニル置換基)は、例えば上記反応スキーム1ないし後記スキーム2で示した化合物203−>205のように誘導してアルコール置換基を有する化合物(アルコール体)とすることができる。このトリアリールアミン骨格を有するアルコール体を用いて、該アルコール置換基に所定の架橋性基を有する化合物を結合させ、架橋性基を有するトリアリールアミン化合物とすることができる。この架橋性基を有するトリアリールアミン化合物を溶媒に溶解して塗布液とし、これを塗布して塗膜とする。その後に前記架橋性基を反応させてトリアリールアミン化合物の架橋体とすることで、強靭な電荷輸送材料の薄膜が得られる。
【0038】
上記の架橋性基としては、ラジカル種・カチオン種・アニオン種などにより、重合が進行する官能基が挙げられる。具体的には、アクリル基、メタクリル基、オキシラン基、ビニル基、オキセタン基等が挙げられる。架橋性基としては、架橋後の電気特性・機械強度の観点から、アクリル基、メタクリル基、ビニル基が好ましく、アクリル基、メタクリル器が特に好ましい。こういった架橋性基を有する置換基の導入方法としては下記のものがあるが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
<アクリル基、メタクリル基の導入法>
トリアリールアミン骨格を有する化合物のアルコール体(例えば後記スキーム2における化合物205)のアルコール部位と、(i)アクリル(メタクリル)酸との酸(パラトルエンスルホン酸等)触媒による脱水縮合、(ii)アクリル(メタクリル)酸クロリドとの縮合、(iii)アクリル(メタクリル)酸エステルとの酸性条件もしくは塩基性条件下でのエステル交換、等の手法によって導入することが可能である。
【0040】
<オキシラン基の導入法>
トリアリールアミン骨格を有する化合物のアルコール体(例えば後記スキーム2における化合物205)のアルコール部位と(ハロゲノメチル)オキシランを反応させることにより導入が可能である。
【0041】
<ビニル基の導入法>
トリアリールアミン骨格を有する化合物のアルコール体(例えば後記スキーム2における化合物205)のアルコール部位と、ベンゼン環上にハロゲノメチル基が置換したスチレンとを塩基(炭酸カリウム等)存在下で反応させ、ハロゲノ基を置換することにより、導入できる。
【0042】
<オキセタン基の導入法>
3−エチル−3−オキセタンメタノールのアルコール部位と、(i)一般式(3)で表される化合物の−CO−R部位(例えば後記スキーム2の化合物203のエステル部位)の酸性条件もしくは塩基性条件でのエステル交換反応、(ii)一般式(3)で表される化合物の−CO−R部位(例えば後記スキーム2の化合物203のエステル部位)を酸性もしくは塩基性条件下で加水分解しカルボン酸へと変化したものとの脱水縮合、(iii)一般式(3)で表される化合物の−CO−R部位(例えば後記スキーム2の化合物203のエステル部位)を酸クロリドへと変換したものとの縮合、などの手法により導入が可能である。
【0043】
本発明の製造方法により得られたトリアリールアミン化合物を用いて調製した電荷輸送材料は通常の方法によって電子デバイス等に適用することができる。例えば、上記架橋性基を有するトリアリールアミン化合物を所定の溶剤に溶解して塗布液とし、この塗布液を用いて、この種の材料において一般的な湿式塗布法を利用して、薄膜として製膜する実施態様が挙げられる。その後、薄膜内で上記化合物を架橋させ、電荷輸送機能を有する高強度の薄膜とすることができる。このような電荷輸送材料の製膜及びこれを適用したデバイスの利用については例えば、特開2007−178813などを参照することができる。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
(化合物202の合成)
大気下で、フラスコに化合物201(前記例示化合物4−4)(下記反応スキーム2参照)を97.7g、NMP(N−メチルピロリドン)を1.5Lを加え、80℃に加熱した。ここに、N−ブロモサクシイミド150gを少量ずつ加えた。反応液を80℃で3時間攪拌した。反応液を室温まで冷却したあと、メタノール2.5Lを加えた。析出した粉末をろ取することで、化合物202(前記例示化合物1−4)を133g得た。得られた化合物202のNMRスペクトルを下記に示す。
1H NMR:δ=6.95(d,8H),7.12(d,4H),7.37(d,8H),7.44(d,4H) 300 MHz in CDCl3
【0045】
前述の化合物202の合成において、反応溶媒をNMPからトルエン、臭素化剤N−ブロモサクシイミドから1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインに替えてそれぞれ上記と同じ反応を行なったところ、同様に化合物202が得られた。
【0046】
(化合物203の合成)
窒素雰囲気下、化合物202(一般式(1)で表される化合物)を30.0g、アクリル酸ブチル(一般式(2)で表される化合物)を24mL、トリエチルアミンを60mL、NMPを300ML、フラスコに加え、外温を150度に加熱した。ここにt−BuP・HBFを0.32g、酢酸パラジウムを82mgを加え、さらに2時間攪拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、反応液に塩酸300mLを加えた。酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を濃縮し、ヘキサンを加えることで、黄色の粉末を得た。この粉末をろ取することで化合物203(一般式(3)で表される化合物)を31g得た。得られた化合物203のNMRスペクトルを下記に示す。
1H NMR:δ=0.96(t,12H),1.47(tq,8H),1.68(dt,8H),4.23(t,8H),6.34(d,4H),7.12(d,8H),7.20(d,4H),7.45(d,8H),7.53(d,8H),7.63(d,4H) 300 MHz in CDCl3
【0047】
前述の化合物203の合成において、反応溶媒をNMPからトルエンに替えて上記と同じ反応を行なったところ、同様に化合物203を得ることができた。
【0048】
(化合物204の合成)
大気下で、化合物203を31g、パラジウム炭素1.7g、ギ酸アンモニウム32g、イソプロピルアルコール500mLをフラスコに加え、還流条件下で1時間攪拌した。得られた反応液をセライト濾過し、ろ液に食塩水500mLを加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮することで、化合物204を26.2g得た。得られた化合物204のNMRスペクトルを下記に示す。
1H NMR:δ=0.94(t,12H),1.38(tq,8H),1.63(dt,8H),2.63(t,8H),2.92(t,8H),4.10(t,8H),7.00-7.15(m,20H),7.42(d,4H) 300 MHz in CDCl3
【0049】
(化合物205の合成)
大気雰囲気下、化合物204を25.4g、塩化カルシウムを16.9g、エタノールを200mLフラスコに加え、これを加熱し、還流条件下で攪拌した。ここへ、還流条件下で、水素化ホウ素ナトリウム11.5gを少量ずつ注意深く加え、さらに3時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、濃塩酸を加えて反応液を酸性にした。ここに食塩水500mL、酢酸エチル300mLを加え抽出を行なった。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/エタノール=5/1)で精製することで、白色の固体として、化合物205を13.3g得た。得られた化合物205(トリアリールアミン化合物のアルコール体)のNMRスペクトルを下記に示す。
1H NMR:δ=1.72(dd,8H),2.56(t,8H),3.43(dt,8H),4.47(t,4H),6.90-7.00(m,12H),7.14(d,8H),7.49(d,4H) 300 MHz in DMSO-d6
【0050】
(化合物206の合成)
大気雰囲気下、フラスコに化合物205を8.75g、メタクリル酸を8.6mL、パラトルエンスルホン酸1水和物を1.9g、トルエンを100mL加え、ディーンスタークで水を除去しながら、外温160度で1時間加熱攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、有機層を100mLの5%水酸化ナトリウム水溶液2度、100mLの食塩水で1度洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製することで、白色の固体として、化合物206(架橋性基を有するトリアリールアミン化合物)を9.0g得た。得られた化合物206のNMRスペクトルを下記に示す。
1H NMR:δ=1.97(s,12H),2.03(tt,8H),2.69(bs,8H),4.20(t,8H),5.57(s,4H),6.12(s,4H),6.80-7.25(bs,20H),7.33-7.53(bs,4H) 300 MHz in CDCl3
【0051】
【化9】

【0052】
(実施例2〜4、比較例1,2)
上記実施例1の化合物203の合成において、酢酸パラジウムと組み合わせて用いる化合物をt−BuP・HBFに代え、下記表1に示したものとした以外同様にして化合物203を合成した。その結果、比較例のアリールホスフィンを用いたものでは化合物203の生成が確認されず、アルキルホスフィンを用いた実施例1〜3においてのみ化合物203の生成がみられた。
【0053】
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実験例 配位子 化合物203 反応時間
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
比較例1 PPh 生成せず ×
比較例1 下記化合物P−c1 生成せず ×
実施例1 tBuP・HBF 生成した ○
実施例2 tBuP 生成した ○
実施例3 前記例示化合物P−1 生成した △
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
* 反応時間
○は8時間未満を表す。
△は8時間以上50時間未満を表す。
×は50時間以上を表す。
【0054】
【化9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム及びアルキルホスフィンの存在下で、下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(3)で表される化合物を生成させることを特徴とするトリアリールアミン化合物の製造方法。
【化1】

[一般式(1)において、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立に置換していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。Xは、Ar、Ar、及び/又はArに置換したハロゲン原子を表す。ただし、Xが複数あるとき、該複数のXは互いに異なるハロゲン原子であってもよい。mは自然数である。]
[一般式(2)において、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子もしくは置換基を表す。]
[一般式(3)において、Ar、Ar、Ar、X、及びmは一般式(1)と同義である。R、R、及びRは一般式(2)と同義である。nはm以下の自然数である。]
【請求項2】
下記一般式(4)で表される化合物をハロゲン化して上記一般式(1)で表される化合物を得ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化2】

[一般式(4)において、Ar、Ar、及びArは一般式(1)と同義である。]
【請求項3】
上記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【化3】

[一般式(5)において、Ar、Ar、X、及びmは一般式(1)と同義である。Ar及びArはそれぞれ独立に置換していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。Arは置換していてもよいアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。]
【請求項4】
下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(3)で表される化合物を生成させる反応に用いられる触媒であって、パラジウムとアルキルホスフィンとを組み合わせたことを特徴とするトリアリールアミン化合物の製造用触媒。
【化4】

[一般式(1)において、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立に置換していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。Xは、Ar、Ar、及び/又はArに置換したハロゲン原子を表す。ただし、Xが複数あるとき、該複数のXは互いに異なるハロゲン原子であってもよい。mは自然数である。]
[一般式(2)において、R、R、及びRは置換基を表す。]
[一般式(3)において、Ar、Ar、Ar、X、及びmは一般式(1)と同義である。R、R、及びRは一般式(2)と同義である。nはm以下の自然数である。]
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により前記一般式(3)で表される化合物を製造し、該化合物の−C(R)=C(R)C(=O)Rで表される置換基を修飾して架橋性基とすることを特徴とする架橋性基を有する電荷輸送材料の製造方法。

【公開番号】特開2010−248099(P2010−248099A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97502(P2009−97502)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】