説明

トリアリールアミン誘導体

【課題】耐光性、耐湿熱性及び溶解性が良好な近赤外線吸収性のトリアリールアミン誘導体の提供。
【解決手段】トリアリールアミン誘導体(ジイモニウム化合物)であって、例えば、ビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミンとヘキサフルオロアンチモン酸銀とを反応させて得られる化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外領域に吸収を有するトリアリールアミン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トリアリールアミン誘導体の1種であるジインモニウム化合物は近赤外線吸収性化合物として広く知られおり(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1〜2参照)、光重合開始剤、電子写真感光体等に広く用いられてきた。しかし、一般に近赤外線吸収性化合物としてのジインモニウム化合物は耐湿熱性や溶解性に課題を残している。これに対して、対イオンである陰イオンを変更したり、ジインモニウムイオンのアミノフェニル基に結合しているアルキル基を変更したりすることで耐湿熱性や溶解性が改善できることが知られている(例えば、特許文献4〜6参照)。
【0003】
また、ジインモニウム化合物の対イオンとして六フッ化アンチモンイオンを用いることで耐熱性が向上することは知られている。しかしながら、アンチモンを含有する化合物は劇物に該当するため、環境への負荷を考慮すると産業分野においては、アンチモンを含まない高耐熱性のジインモニウム化合物が望まれている。この問題を解決するための手段として、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンなどを対イオンとするジインモニウム化合物が知られている。
【特許文献1】特開平4−146905号公報
【特許文献2】特開平5−142811号公報
【特許文献3】特開2002−82219号公報
【特許文献4】特開2005−325292号公報
【特許文献5】特開2005−336150号公報
【特許文献6】特開2006−143674号公報
【非特許文献1】デア・ドイチェン・ケミシュン・ゲゼルシャフト、92巻、245−251ページ(1959年)
【非特許文献2】スペクトロケミカ・アクタ、23巻、655−675ページ(1967年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のジインモニウム化合物では、対イオンとして過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンなどを用いても、耐湿熱性、溶解性の点で満足できるものとは言い難かった。また、ジインモニウム化合物の極大吸収波長を、所望の極大吸収波長に変化させることは困難であった。
本発明は、耐光性、耐湿熱性及び溶解性が良好な近赤外線吸収性のトリアリールアミン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(I)で表されるトリアリールアミン誘導体。
【0006】
【化1】

【0007】
一般式(I)中、R111、R112、R121及びR122はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基又は芳香族基を表し、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125及びR126はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。但し、R111とR121、R112とR122、R113とR123、R114とR124、R115とR125、及びR116とR126の各組のうち、少なくとも1組は互いに異なる基である。また、R111とR112、R111とR114、R113とR114、R113とR123、R123とR124、R121とR124、R121とR122、及びそれぞれが異なるフェニル基に結合している2つのR116は、互いに連結して環を形成していてもよい。Xm−はm価の陰イオンを表し、m及びnは1又は2を表し、mとnの積は2である。
【0008】
<2> 一般式(I)において、R111、R112、R121及びR122のうち少なくとも1つの基は、他の基と異なることを特徴とする前記<1>に記載のトリアリールアミン誘導体。
<3> 一般式(I)において、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125及びR126のうち少なくとも1つの基は、他の基と異なることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のトリアリールアミン誘導体。
【0009】
<4> 一般式(I)において、Xm−は、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又は下記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基を表す。
【0012】
<5> 一般式(I)におけるXm−は、一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される陰イオンであって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413が、ハロゲン原子を有する脂肪族基、ハロゲン原子を有する芳香族基又はハロゲン原子を有するヘテロ環基であることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体。
<6> 一般式(II)〜一般式(IV)におけるR211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413は、フッ素原子を有する脂肪族基、フッ素原子を有する芳香族基又はフッ素原子を有するヘテロ環基であることを特徴とする前記<5>に記載のトリアリールアミン誘導体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐光性、耐湿熱性及び溶解性が良好な近赤外線吸収性のトリアリールアミン誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のトリアリールアミン誘導体は下記一般式(I)で表されることを特徴とする。下記一般式(I)で表されるトリアリールアミン誘導体又はその互変異性体は、耐光性、耐湿熱性及び溶解性が良好な近赤外線吸収性のジインモニウム化合物である。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(I)中、R111、R112、R121及びR122はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基又は芳香族基を表し、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125及びR126はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。但し、R111とR121、R112とR122、R113とR123、R114とR124、R115とR125、及びR116とR126の各組のうち、少なくとも1組は互いに異なる基である。また、R111とR112、R111とR114、R113とR114、R113とR123、R123とR124、R121とR124、R121とR122、及びそれぞれが異なるフェニル基に結合している2つのR116は、互いに連結して環を形成していてもよい。Xm−はm価の陰イオンを表し、m及びnは1又は2を表し、mとnの積は2である。
【0017】
本発明において脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基又は置換アラルキル基を意味する。アルキル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることが更に好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等を挙げることができる。
【0018】
アルケニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルケニル基の炭素数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル基等を挙げることができる挙げることができる。
【0019】
アルキニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等を挙げることができる。
【0020】
アラルキル基及び置換アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基及び置換アラルキル基のアリール部分は下記アリール基と同様である。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基等を挙げることができる。
【0021】
置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を1個取り去った1価の基である。例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等)、更に環構造が多いトリシクロ構造のアルキル基を包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)も同様の概念のアルキル基を表す。]、
【0022】
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を1個持つビシクロアルケンから水素原子を1個取り去った1価の基である。例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル基等)を包含するものである。]、
【0023】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、
【0024】
ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等)、
【0025】
シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、
【0026】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、
【0027】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換又は無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、
【0028】
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換又は無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換又は無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等)、
【0029】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換又は無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等)、
【0030】
ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)を挙げることができる。
【0031】
上記置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記置換基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0032】
また、脂肪族基における置換アラルキル基のアリール部分の置換基の例としては、下記置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0033】
本発明において芳香族基は、アリール基及び置換アリール基を意味する。またこれらの芳香族基は脂肪族環、他の芳香族環又はヘテロ環が縮合していてもよい。アリール基の炭素原子数は6〜40が好ましく、6〜30が更に好ましく、6〜20が更に好ましい。またその中でもアリール基としては、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0034】
置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。また、置換アリール基の置換基の例としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例として挙げたものと同様である。
【0035】
本発明において、R111、R112、R121及びR122として好ましくは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基であり、更に好ましくは水素原子、総炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルキル基、総炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルケニル基、総炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキニル基、又は、総炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリール基であり、更に好ましくは総炭素数1〜10の置換若しくは無置換のアルキル基、総炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、総炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリール基であり、更に好ましくは総炭素数1〜8の置換若しくは無置換のアルキル基、又は、総炭素数6〜8の置換若しくは無置換のアリール基であり、最も好ましくは総炭素数2〜6の置換若しくは無置換のアルキル基である。
【0036】
また、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125及びR126として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イミド基、シリル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基であり、最も好ましくは水素原子、アルキル基である。
【0037】
本発明においては、R111とR121、R112とR122、R113とR123、R114とR124、R115とR125、及びR116とR126の各組のうち、少なくとも1組は互いに異なる基である必要がある。これにより耐光性、耐湿熱性及び溶解性が良好なトリアリールアミン誘導体となる。
また、R111とR112、R111とR114、R113とR114、R113とR123、R123とR124、R121とR124、R121とR122、及びそれぞれが異なるフェニル基に結合している2つのR116は、互いに連結して環を形成していてもよい。環を形成することにより、耐光性、耐湿熱性及び溶解性をより向上させることができる。
【0038】
また、本発明においては、耐光性、耐湿熱性及び溶解性の点から、R111、R121、R112及びR122のうち、少なくとも1つの基は、他の基と異なる基であることが好ましい。これにより、本発明のトリアリールアミン誘導体の極大吸収波長を、所望の極大吸収波長へ容易に変更することができる。
更に、耐光性、耐湿熱性及び溶解性の点から、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125及びR126のうち少なくとも1つの基は、他の基と異なることが好ましい。これにより、本発明のトリアリールアミン誘導体の極大吸収波長を、所望の極大吸収波長へ容易に変更することができる。
【0039】
一般式(I)においてXm−は1価又は2価の陰イオンを表す。Xm−の具体例としては、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン(TsO)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、及び下記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオン等を挙げることができる。
本発明においては、耐湿熱性及び溶解性の点から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又は下記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることが好ましく、下記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることがより好ましい。
【0040】
【化4】

【0041】
式中、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基を表す。脂肪族基、芳香族基については既述の通りである。また、ヘテロ環基としては、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル基部分の置換基の例として挙げたヘテロ環基を挙げることができる。これにより、より良好な耐湿熱性を有する赤外線吸収性のトリアリールアミン誘導体とすることができる。
【0042】
本発明においては、耐湿熱性及び溶解性の点から、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413は、ハロゲン原子を有する脂肪族基、ハロゲン原子を有する芳香族基又はハロゲン原子を有するヘテロ環基であることが好ましい。更に前記ハロゲン原子は、フッ素原子であることがより好ましい。これにより耐湿熱性及び溶解性がより向上する。
【0043】
211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基及び炭素数6〜20のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜10のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基であり、最も好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。中でも、C2n+1で表されるパーフルオロアルキル基であることが望ましい。ここでnは1〜6の整数を表す。
【0044】
本発明における一般式(I)で表される化合物は、耐光性、耐湿熱性及び溶解性の点から、R111、R112、R121及びR122はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であって、R111、R112、R121及びR122から選ばれる1つ又は2つの基が、残りの他の基とは異なる基であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は置換基であって、Xm−が、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又は上記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることが好ましく、R111、R112、R121及びR122はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は置換基であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413から選ばれる1つの基が、残りの他の基とは異なる基であって、Xm−が過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又は上記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることもまた好ましい。
【0045】
更に、R111、R112、R121及びR122はそれぞれ独立に、アルキル基であって、R111、R112、R121及びR122から選ばれる1つ又は2つの基が、残りの他の基とは異なる基であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413は、水素原子であって、Xm−が上記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることがより好ましく、R111、R112、R121及びR122はそれぞれ独立に、アルキル基であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シアノ基又はアシル基であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413から選ばれる1つの基が残りの他の基とは異なる基であって、Xm−が上記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることもまたより好ましい。
【0046】
以下に本発明の一般式(I)で表されるトリアリールアミン誘導体(ジイモニウム化合物)の具体例として、化合物1〜249を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(I)で表される化合物において、Xm−が無機酸の金属塩であるジイモニウム化合物の具体例(化合物1〜化合物50、化合物206〜化合物213)を下記表1、表2及び下記化学式に、一般式(I)で表される化合物において、Xm−が一般式(II)で表されるジインモニウム化合物の具体例(化合物51〜化合物100、化合物214〜化合物225)を下記表3、表4及び下記化学式に、Xm−が一般式(III)で表されるジインモニウム化合物の具体例(化合物101〜化合物150、化合物226〜化合物237)を下記表5、表6及び下記化学式に、Xm−が一般式(IV)で表されるジインモニウム化合物の具体例(化合物151〜化合物205、化合物238〜化合物249)を下記表7、表8及び下記化学式に、それぞれ例示する。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
本発明において、一般式(I)で表される化合物は、例えば、下記一般式(V)で表される化合物を、無機酸の金属塩(好ましくは銀塩)又は上記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される陰イオンの金属塩(好ましくは銀塩)で処理することにより合成することができる。
【0063】
【化12】

【0064】
一般式(V)中、R111〜R116及びR121〜R126は、上記一般式(I)におけるR111〜R116及びR121〜R126と同義である。
【0065】
一般式(V)で表される化合物は、例えば、デア・ドイチェン・ケミシュン・ゲゼルシャフト、92巻、245〜251ページ(1959年)に記載の方法に基づいて合成することができる。また、無機酸の金属塩は常法により調製することができ、一般式(II)〜(IV)で表される化合物の銀塩は、例えば、特開2006−143674号公報に記載の方法に基づいて合成することができる。
【0066】
一般式(I)で表される化合物の合成において、合成反応に用いる原料の比率としては、1モルの一般式(V)で表される化合物に対して、無機酸の銀塩又は一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される化合物の銀塩を、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは1〜6モル、更に好ましくは1.5〜5モル、特に好ましくは2〜4モル用いることで、一般式(I)で表される化合物を得ることができる。
【0067】
また、合成反応に用いる溶媒としては、例えば、水、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、スルホン系溶媒(例えば、スルホラン等)スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド等)、ウレイド系溶媒(例えば、テトラメチルウレア等)、エーテル系溶媒(例えば、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、シクロヘキサノン等)、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン、n−デカン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、フェノール等)、ピリジン系溶媒(例えば、ピリジン、γ−ピコリン、2,6−ルチジン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、カルボン酸系溶媒(例えば、酢酸、プロピオン酸等)及びニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)を挙げることができる。これらの溶媒は単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0068】
これらの溶媒のうち好ましくは、水、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレイド系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、ピリジン系溶媒、エステル系溶媒、カルボン酸系溶媒又はニトリル系溶媒であり、更に好ましくは水、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、ウレイド系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒又はニトリル系溶媒であり、更に好ましくは水、スルホン系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒又はニトリル系溶媒である。また、水と他の溶媒とを併用して用いることも好ましい。
【0069】
反応温度としては、−30〜250℃で行うことができるが、好ましくは−10〜150℃、更に好ましくは−5〜100℃、更に好ましくは0〜70℃、更に好ましくは10〜50℃であり、反応の開始時を−5〜20℃で行い、途中から25〜100℃に昇温して行うことも好ましい。
【0070】
本発明の一般式(I)で表されるトリアリールアミン誘導体は、耐光性、耐湿熱性及び溶解性が良好な近赤外線吸収性のジイモニウム化合物であることから、光重合開始剤、電子写真感光体等に広く用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0072】
(実施例1)
化合物6の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにヘキサフルオロアンチモン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物6を8.3g(91%)得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0073】
(実施例2)
化合物7の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(iso―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにヘキサフルオロアンチモン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物7を8.1g(89%)得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=917nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0074】
(実施例3)
化合物28の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メチルフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにヘキサフルオロアンチモン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物28を7.6g(92%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0075】
(実施例4)
化合物32の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メトキシフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにヘキサフルオロアンチモン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物32を7.2g(85%)得た。
マススペクトルを測定したところM=657であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=924nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0076】
(実施例5)
化合物34の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−2−クロロ−4−ジ(n−ブチル)アミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにヘキサフルオロアンチモン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物34を7.0g(82%)得た。
マススペクトルを測定したところM=661であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=914nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0077】
(実施例6)
化合物44の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)−2−メチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこに過塩素酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物44を6.2g(95%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0078】
(実施例7)
化合物45の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)−2−メチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにヘキサフルオロリン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物45を6.7g(93%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0079】
(実施例8)
化合物46の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)−2−メチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこに硝酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物46を5.3g(90%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0080】
(実施例9)
化合物47の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)−2−メチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにパラトルエンスルホン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物47を5.5g(87%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0081】
(実施例10)
化合物48の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)−2−メチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにトリフルオロメタンスルホン酸銀15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物48を6.6g(90%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0082】
(実施例11)
化合物56の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物56を6.8g(85%)得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0083】
(実施例12)
化合物57の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(iso―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにビス(トリフルオロメタンスルニル)イミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物57を7.0g(87%)得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=917nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0084】
(実施例13)
化合物79の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メチルフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにビス(トリフルオロメタンスルニル)イミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物79を6.9g(90%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0085】
(実施例14)
化合物83の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メトキシフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物83を7.0g(92%)得た。
マススペクトルを測定したところM=657であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=924nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0086】
(実施例15)
化合物85の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−2−クロロ−4−ジ(n−ブチル)アミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物85を7.0g(92%)得た。
マススペクトルを測定したところM=661であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=914nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0087】
(実施例16)
化合物106の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにN―トリフルオロアセチル−N−トリフルオロメタンスルホニルイミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物106を6.6g(90%)得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0088】
(実施例17)
化合物107の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(iso―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにN―トリフルオロアセチル−N−トリフルオロメタンスルホニルイミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物107を6.3g(86%)を得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=917nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0089】
(実施例18)
化合物129の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メチルフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにN―トリフルオロアセチル−N−トリフルオロメタンスルホニルイミド酸銀12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物129を6.4g(91%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0090】
(実施例19)
化合物133の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メトキシフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにN―トリフルオロアセチル−N−トリフルオロメタンスルホニルイミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物133を6.5g(93%)得た。
マススペクトルを測定したところM=657であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=924nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0091】
(実施例20)
化合物135の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−2−クロロ−4−ジ(n−ブチル)アミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにN―トリフルオロアセチル−N―トリフルオロメタンスルホニルイミド銀塩12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物135を5.9g(84%)得た。
マススペクトルを測定したところM=661であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=914nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0092】
(実施例21)
化合物156の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−(4−ジエチルアミノフェニル)アミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル銀12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物156を8.1g(90%)得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0093】
(実施例22)
化合物157の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(iso―ブチル)アミノフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル銀12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物157を8.2g(92%)得た。
マススペクトルを測定したところM=571であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=917nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0094】
(実施例23)
化合物179の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メチルフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル銀12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物179を8.1g(95%)得た。
マススペクトルを測定したところM=641であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0095】
(実施例24)
化合物183の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−4−ジ(n−ブチル)アミノ−2−メトキシフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル銀12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物183を7.5g(88%)得た。
マススペクトルを測定したところM=657であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=924nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0096】
(実施例25)
化合物185の合成
DMF40ml中にビス(4−ジ(n―ブチル)アミノフェニル)−2−クロロ−4−ジ(n−ブチル)アミノフェニルアミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル銀12gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物185を7.7g(91%)得た。
マススペクトルを測定したところM=661であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=914nm(ジクロロメタン)であった。
元素分析の結果を表9に示した。
【0097】
【表9】

【0098】
<評価>
上記で得られた本発明のトリアリールアミン誘導体、及び、下記表10に示す比較例トリアリールアミン誘導体について、下記の評価を行った。
(評価用サンプル)
PMMA2.5gと、トリアリールアミン誘導体0.125gとをジクロロメタン25mlに溶解し、これを100μmのPETフィルム上に塗布した。80℃、減圧下で2時間乾燥し、膜厚2〜3μmの評価用サンプルを作製した。尚、評価用サンプルにはPMMAに対して5質量%のトリアリールアミン誘導体が含まれている。
【0099】
(耐熱性)
上記で得られた評価用サンプルについて、80℃で400時間の熱処理を行った。トリアリールアミン誘導体(色素)の極大吸収波長における評価サンプルの吸光度を測定し、熱処理前の吸光度に対する熱処理後の吸光度の比率として色素残存率(%)を求めた。結果を表10に示した。
【0100】
(耐湿熱性)
上記で得られた評価用サンプルについて、60℃、相対湿度90%で200時間の湿熱処理を行った。トリアリールアミン誘導体(色素)の極大吸収波長における評価サンプルの吸光度を測定し、湿熱処理前の吸光度に対する湿熱処理後の吸光度の比率として色素残存率(%)を求めた。結果を表10に示した。
【0101】
(耐光性)
上記で得られた評価用サンプルについて、キセノンランプ(17万ルクス、UVカットフィルター使用)にて、170時間の照光処理を行った。トリアリールアミン誘導体(色素)の極大吸収波長における評価サンプルの吸光度を測定し、照光処理前の吸光度に対する照光処理後の吸光度の比率として色素残存率(%)を求めた。結果を表10に示した。
【0102】
(溶解性)
トリアリールアミン誘導体の、2−ブタノン(MEK)に対する溶解度(w/v%)を測定した。結果を表10に示した。
【0103】
【表10】

【0104】
表10から、本発明のトリアリールアミン誘導体は、耐光性、耐湿熱性及び溶解性に優れた近赤外線吸収性のトリアリールアミン誘導体であることが分かる。
また、R113〜R116、R123〜R126のうち1つの基を、他の基と異なる基とすることで極大吸収波長を変化させることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるトリアリールアミン誘導体。
【化1】


一般式(I)中、R111、R112、R121及びR122はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基又は芳香族基を表し、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125及びR126はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。但し、R111とR121、R112とR122、R113とR123、R114とR124、R115とR125、及びR116とR126の各組のうち、少なくとも1組は互いに異なる基である。また、R111とR112、R111とR114、R113とR114、R113とR123、R123とR124、R121とR124、R121とR122、及びそれぞれが異なるフェニル基に結合している2つのR116は、互いに連結して環を形成していてもよい。Xm−はm価の陰イオンを表し、m及びnは1又は2を表し、mとnの積は2である。
【請求項2】
一般式(I)において、R111、R112、R121及びR122のうち少なくとも1つの基は、他の基と異なることを特徴とする請求項1に記載のトリアリールアミン誘導体。
【請求項3】
一般式(I)において、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125及びR126のうち少なくとも1つの基は、他の基と異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトリアリールアミン誘導体。
【請求項4】
一般式(I)において、Xm−は、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又は下記一般式(II)〜一般式(IV)のいずれかで表される陰イオンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体。
【化2】


式中、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基を表す。
【請求項5】
一般式(I)におけるXm−は、一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される陰イオンであって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413が、ハロゲン原子を有する脂肪族基、ハロゲン原子を有する芳香族基又はハロゲン原子を有するヘテロ環基であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体。
【請求項6】
一般式(II)〜一般式(IV)におけるR211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413は、フッ素原子を有する脂肪族基、フッ素原子を有する芳香族基又はフッ素原子を有するヘテロ環基であることを特徴とする請求項5に記載のトリアリールアミン誘導体。

【公開番号】特開2008−260738(P2008−260738A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106372(P2007−106372)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】