説明

トリアリールスルホニウムおよびアリールスルフィン酸イオンを有する光開始剤

ラジカル重合反応のための光開始剤系を含む組成物が提供される。さらに具体的には、その光開始剤は、アリールスルフィン酸イオンおよびトリアリールスルホニウムイオンを含む。光重合性組成物中に光開始剤を含む重合法もまた提供される。さらに、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トリアリールスルホニウムイオンおよびアリールスルフィン酸イオンを含有する、ラジカル重合反応の光開始剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合反応は、光によって開始することができる。光開始剤系は、種々の化学的手法に基づく。例えば、ラジカル重合反応は、電子受容体、電子供与体、および増感化合物を含む3成分光開始剤系を使用して、光で開始することができる。増感化合物は通常、化学線を吸収し、その結果、励起した増感化合物が形成する。電子供与体は、励起した増感化合物に電子を供与することができる。つまり、増感化合物は還元され、電子供与体は酸化される。還元された増感化合物は、電子受容体に電子を供与して、重合反応の開始ラジカルを生成することができるラジカルアニオンである。開始ラジカルは、還元された電子受容体である。3成分光開始剤系の一部の例において、酸化された電子供与体は、開始ラジカルとして機能することもできるラジカル種である。
【0003】
他の光開始剤系は、増感化合物および電子供与体を含有するが、電子受容体を含有しない。増感化合物は通常、有機染料、有機顔料、または無機顔料である。増感化合物は、化学線を吸収して、励起した増感化合物を形成することができる。電子供与体は一般に、励起した増感化合物に電子を供与し、その結果、電子供与体が酸化される。酸化された電子供与体は、重合反応に開始ラジカルとして機能するラジカル種である。
【0004】
他のラジカル光重合反応では、トリアリールスルホニウム塩などの塩が開始ラジカルを生成することができる。トリアリールスルホニウム塩は一般に、紫外線を吸収して、励起したトリアリールスルホニウムイオンを形成する。次いで、励起したトリアリールスルホニウムイオンは、光分解し、組成物中に存在する他の種から水素原子を引き抜き、最終的に、重合反応に開始ラジカルとして機能することができるラジカルを形成する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ラジカル重合反応のための光開始剤系を含有する組成物を提供する。さらに具体的には、その光開始剤は、アリールスルフィン酸イオンおよびトリアリールスルホニウムイオンを含有する。光重合性組成物における光開始剤を含む、重合方法もまた提供する。さらに、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩が開示される。
【0006】
本発明の一態様は、アリールスルフィン酸塩およびトリアリールスルホニウム塩を含有する組成物を提供する。アリールスルフィン酸塩は、式I:
【化1】

のアニオンと、少なくとも1つの炭素原子および正に荷電した窒素原子または正に荷電したリン原子のいずれかを有するカチオンと、を有する。式IにおけるAr1基は、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールである。置換Ar1基は、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有することができる。
【0007】
本発明の第2の態様は、エチレン性不飽和モノマーおよびトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩を含有する組成物を提供する。トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、式I
【化2】

(式中、Ar1は、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールである)のアニオンを有する。置換Ar1基は、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有することができる。
【0008】
本発明の第3の態様は、光重合性組成物がゲル化または硬化するまで、重合性組成物に化学線を照射することを含む、光重合の方法を提供する。その光重合性組成物は、エチレン性不飽和モノマー、アリールスルフィン酸塩、およびトリアリールスルホニウム塩を含む。
【0009】
本発明の第4の態様は、光重合性組成物がゲル化または硬化するまで、重合性組成物に化学線を照射することを含む、光重合の方法を提供する。その光重合性組成物は、エチレン性不飽和モノマーおよびトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩を含む。
【0010】
本発明の第5の態様は、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩を提供する。
【0011】
上記の概要は、本発明の開示されるそれぞれの実施形態または本発明のすべての実現を説明することを意図するものではない。以下の詳細な説明のセクションは、さらに詳しくこれらの実施形態を例証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ラジカル重合反応のための光開始剤系を含有する組成物を提供する。さらに具体的には、その光開始剤は、アリールスルフィン酸イオンおよびトリアリールスルホニウムイオンを含む。ラジカル重合反応を用いてポリマー材料を製造するための重合方法もまた提供する。重合反応は、光によって開始される。さらに、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩が開示される。
【0013】
定義
本明細書において使用される、単数形(「a」、「an」、および「the」)の用語は、記載の要素のうち1つまたは複数を指すために、「少なくとも1つの(1種類の)」と同義で使用される。
【0014】
本明細書において使用される、「アシル」という用語は、式−(CO)Ra(Raは、アルキルまたはアリール基である)の一価の基を意味する。
【0015】
本明細書において使用される、「化学線」という用語は、光化学活性を生成することができる電磁放射を意味する。
【0016】
本明細書において使用される、「アルケニル」という用語は、アルケン(つまり、アルケンは、少なくとも1つの炭素間二重結合を有する脂肪族化合物である)の一価ラジカルを意味する。
【0017】
本明細書において使用される、「アルコキシ」という用語は、式−OR(Rは、アルキル基である)の一価の基を意味する。
【0018】
本明細書において使用される、「アルコキシカルボニル」という用語は、式−(CO)OR(Rは、アルキル基である)の一価の基を意味する。
【0019】
本明細書において使用される、「アルコキシカルボニルオキシ」という用語は、式−O(CO)OR(Rは、アルキル基である)の一価の基を意味する。
【0020】
本明細書において使用される、「アルコキシスルホニル」という用語は、式−SO3R(Rは、アルキル基である)を有する一価の基を意味する。
【0021】
本明細書において使用される、「アルキル」という用語は、アルカンの一価ラジカルを意味する。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状、またはその組み合わせであり、一般に炭素原子1〜30個を含有する。一部の実施形態において、アルキル基は、炭素原子1〜20、1〜14、1〜10、4〜10、4〜8、または1〜4個を含有する。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−オクチル、n−ヘプチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、エチルヘキシル等が挙げられる。
【0022】
本明細書において使用される、「アルキルカルボニルアミド」という用語は、式−NRb(CO)R(Rは、アルキルであり、Rbは、水素、アルキル、またはアリール基である)の一価の基を意味する。
【0023】
本明細書において使用される、「アルキルカルボニルオキシ」という用語は、式−O(CO)R(Rは、アルキルである)の一価の基を意味する。
【0024】
本明細書において使用される、「アルキルスルホンアミド」という用語は、式−NRbSO2R(Rは、アルキルであり、Rbは、水素、アルキル、またはアリール基である)の一価の基を意味する。
【0025】
本明細書において使用される、「アルキニル」という用語は、アルキン(つまり、アルキンは、少なくとも1つの炭素間三重結合を有する脂肪族化合物である)の一価ラジカルを意味する。
【0026】
本明細書において使用される、「アルキルスルホニル」という用語は、式−SO2R(Rは、アルキル基である)の一価の基を意味する。
【0027】
本明細書において使用される、「アルキルチオ」という用語は、式−SR(Sは、硫黄であり、Rは、アルキルである)の一価の基を意味する。
【0028】
本明細書において使用される、「アミノ」という用語は、式−N(Rb2(Rbがそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリール基である)の一価の基を意味する。第一級アミノ基において、各Rb基は水素である。第二級アミノ基において、Rb基のうちの1つは、水素であり、他のRb基は、アルキルまたはアリールのいずれかである。第三級アミノ基において、Rb基のどちらも、アルキルまたはアリールである。
【0029】
本明細書において使用される、「アミノカルボニル」という用語は、式−(CO)N(Rb2(Rbがそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリールである)の一価の基を意味する。
【0030】
本明細書において使用される、「アラルキル」という用語は、式−RAr(Arは、アリール基であり、Rは、アルキレンである)の一価の基を意味する。
【0031】
本明細書において使用される、「芳香族」という用語は、炭素環式芳香族化合物または炭素環式芳香族基およびヘテロ芳香族化合物またはヘテロ芳香族基のどちらも意味する。炭素環式芳香族化合物は、芳香族環構造において炭素原子のみを含有する化合物である。ヘテロ芳香族化合物は、芳香族環構造において、S、O、N、またはその組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する化合物である。
【0032】
本明細書において使用される、「アリール」という用語は、一価芳香族炭素環式ラジカルを意味する。アリールは、1つの芳香族環を有するか、あるいは、芳香族環に連結された、または縮合された5個までの環構造を含む。他の環構造は、芳香族、非芳香族、またはその組み合わせであることができる。アリール基の例としては、限定されないが、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル(perylenyl)、およびフルオレニルが挙げられる。
【0033】
本明細書において使用される、「アリールカルボニルアミド」という用語は、式−NRb(CO)Ar(Rbは、水素、アルキル、またはアリールであり、Arは、アリールである)の一価の基を意味する。
【0034】
本明細書において使用される、「アリールカルボニルオキシ」という用語は、式−O(CO)Ar(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0035】
本明細書において使用される、「アリールオキシ」という用語は、式−OAr(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0036】
本明細書において使用される、「アリールオキシカルボニル」という用語は、式−(CO)OAr(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0037】
本明細書において使用される、「アリールオキシカルボニルオキシ」という用語は、式−O(CO)OAr(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0038】
本明細書において使用される、「アリールオキシスルホニル」という用語は、式−SO3Ar(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0039】
本明細書において使用される、「アリールスルホニル」という用語は、式−SO2Ar(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0040】
本明細書において使用される、「アリールチオ」という用語は、式−SAr(Arは、アリール基である)を有する一価の基を意味する。
【0041】
本明細書において使用される、「アゾ」という用語は、式−N=N−の二価の基を意味する。
【0042】
本明細書において使用される、「ボリル」という用語は、式−B(Ar)2(Bは、ホウ素であり、Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0043】
本明細書において使用される、「カルボニル」という用語は、式−(CO)−(炭素原子が、二重結合によって酸素原子に結合する)の二価の基を意味する。
【0044】
本明細書において使用される、「カルボキシ」という用語は、式−COOHの一価の基を意味する。
【0045】
本明細書において使用される、「共役」という用語は、少なくとも2つの炭素間二重もしくは三重結合を有し、炭素間単結合と炭素間二重もしくは三重結合とが交互にある不飽和化合物を意味する。
【0046】
本明細書において使用される、「シアノ」という用語は、式−CNの一価の基を意味する。
【0047】
本明細書において使用される、「ジアルキルホスホナト」という用語は、式−(PO)(OR)2(Rは、アルキルである)の一価の基を意味する。本明細書で使用される、式「(PO)」は、リン原子が二重結合で酸素原子に結合することを示す。
【0048】
本明細書において使用される、「ジアリールホスホナト」という用語は、式−(PO)(OAr)2(Arは、アリールである)の一価の基を意味する。
【0049】
本明細書において使用される、「ジアリールスチビノ」という用語は、式−Sb(Ar)2(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0050】
本明細書において使用される、「ジアリールアルシノ」という用語は、式−As(Ar)2(Arは、アリール基である)の一価の基を意味する。
【0051】
本明細書において使用される、「電子供与(性)」という用語は、電子を供与することができる置換基を意味する。適切な例としては、限定されないが、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、またはその組み合わせが挙げられる。
【0052】
本明細書において使用される、「電子吸引(性)」という用語は、電子を吸引することができる置換基を意味する。適切な例としては、限定されないが、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせが挙げられる。
【0053】
本明細書において使用される、「フルオロアルキル」という用語は、フッ素原子で置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキル基を意味する。
【0054】
本明細書において使用される、「ホルミル」という用語は、式−(CO)H(炭素原子が、二重結合で酸素原子に結合する)の一価の基を意味する。
【0055】
本明細書において使用される、「ハロ」という用語は、ハロゲン基(つまり、F、Cl、Br、またはI)を意味する。一部の実施形態では、ハロ基はFまたはClである。
【0056】
本明細書において使用される、「ハロカルボニル」という用語は、式−(CO)X(Xが、ハロゲン基(つまり、F、Cl、Br、またはIである)の一価の基を意味する。
【0057】
本明細書において使用される、「ヘテロアリール」という用語は、環において、S、O、N、またはその組み合わせから独立して選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む5〜7員芳香族環の一価ラジカルを意味する。かかるヘテロアリール環は、芳香族、脂肪族、またはその組み合わせである、5つまでの環構造に連結または縮合することができる。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル(cinnolinyl)、ベンゾフラニル、ベンゾメルカプトフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、フタラジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、フェナジニル、フェナントリジニル(phenanthridinyl)、アクリジニル、およびインダゾリル等が挙げられる。
【0058】
本明細書において使用される、「複素環式」という用語は、飽和または不飽和であり、かつ環においてS、O、N、またはその組み合わせから独立して選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む環構造を有する一価ラジカルである。複素環式基は、単一環、二環式であるか、または他の環式または二環式基に縮合する。縮合された環式または二環式基は、飽和または不飽和であり、かつ炭素環式であるか、またはヘテロ原子を含有する。
【0059】
本明細書において使用される、「ヒドロキシ」という用語は、式−OHの一価の基を意味する。
【0060】
本明細書において使用される、「イミノ」という用語は、式−N(Rb)−(Rbは、水素、アルキル、またはアリールである)の二価の基を意味する。
【0061】
本明細書において使用される、「メルカプト」という用語は、式−SHの一価の基を意味する。
【0062】
本明細書において使用される、「メチレン」という用語は、式−C(Rb2−(Rbがそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリールである)の二価の基を意味する。
【0063】
本明細書において使用される、「N−アルキルアミノカルボニル」という用語は、式−(CO)NRdR(Rdは、アルキルまたは水素であり、Rは、アルキルである)の一価の基を意味する。
【0064】
本明細書において使用される、「N−アルキルスルファミル」という用語は、式−SO2NRdR(Rdは、アルキルまたは水素であり、Rは、アルキルである)の一価の基を意味する。
【0065】
本明細書において使用される、「N−アリールアミノカルボニル」という用語は、式−(CO)NRcAr(Rcは、アリールまたは水素であり、Arは、アリールである)の一価の基を意味する。
【0066】
本明細書において使用される、「N−アリールスルファミル」という用語は、式−SO2NRcAr(Reは、アルキルまたは水素であり、Arは、アリールである)の一価の基を意味する。
【0067】
本明細書において使用される、「オキソ」という用語は、式−O−の二価の基を意味する。
【0068】
本明細書において使用される、「パーフルオロアルキル」という用語は、そのすべての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味する。パーフルオロアルキルは、フルオロアルキルのサブセットである。
【0069】
本明細書において使用される、「パーフルオロアルキルスルホニル」という用語は、式−SO2f(Rfは、パーフルオロアルキルである)の基を意味する。
【0070】
本明細書において使用される、「重合」という用語は、モノマーまたはオリゴマーから、高分子量の材料を形成することを意味する。重合反応は、架橋反応も含み得る。
【0071】
開始剤系および光重合性材料を含有する組成物に言及する場合に、本明細書で使用される「安定な(安定性の)」という用語は、室温で目に見えるゲルの形成が生じることなく、組成物を少なくとも1日間保存することができることを意味する。
【0072】
化合物に言及する場合に、本明細書で使用される「安定度」という用語は、K.A.Connors,Chemical Kinetics:The Study of Reaction Rates in Solution,Chapter 2,VCH,New York,1990に記載のように、擬一次速度式を用いて計算することができる、室温(つまり、20〜25℃)で化合物の50重量%を酸化するのに必要な時間の長さ(t1/2)を意味する。
【0073】
本明細書において使用される、「スルフィニル」という用語は、式−(SO)−を有する二価の基を意味する。
【0074】
本明細書において使用される、「スルホニル」という用語は、式−SO2−を有する二価の基を意味する。
【0075】
本明細書において使用される、「スルホ」という用語は、式−SO3Hを有する一価の基を意味する。
【0076】
本明細書において使用される、「チオ」という用語は、式−S−を有する二価の基を意味する。
【0077】
本明細書において使用される、「トリアルキルゲルマノ」という用語は、式−Ge(Ar)2(Arは、アリール基である)を有する基を意味する。
【0078】
本明細書において使用される、「トリアルキルシロキシ」という用語は、式−OSiR3(Rは、アルキルである)を有する一価の基を意味する。
【0079】
組成物
増感化合物の非存在下においてトリアリールスルホニウム塩は一般に、可視光線に暴露された場合に、重合反応のための開始ラジカルを生成することができない。可視光線を用いて活性化することができる光開始剤系は、一部の用途には好ましくない。可視光源は一般に、紫外線源よりもコストが低く、危険が少ない。さらに、紫外線と比較して、可視光線は一般に、ポリマー材料などの様々な基材を容易に透過することができる。
【0080】
本発明の一態様は、アリールスルフィン酸塩およびトリアリールスルホニウム塩を含有する組成物を提供する。この組成物は、ラジカル重合反応のための光開始剤系として機能することができる。理論に束縛されないが、アリールスルフィン酸塩は化学線を吸収して、励起したアリールスルフィン酸塩を形成することができると考えられる。励起したアリールスルフィン酸塩は、電子をトリアリールスルホニウム塩に伝達し、その結果、アリールスルフィン酸ラジカルが形成される。アリールスルフィン酸ラジカルは、ラジカル重合反応を開始することができる。一部の場合には、還元されたトリアリールスルホニウム塩が光分解して、他の開始ラジカルを生成することができる。
【0081】
組成物の1つの成分は、アリールスルフィン酸塩である。アリールスルフィン酸塩は、式I
【化3】

のアニオンと、少なくとも1つの炭素原子および正に荷電した窒素原子または正に荷電したリン原子のいずれかを有するカチオンと、を有する。式IにおけるAr1基は、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールである。置換Ar1基は、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有することができる。
【0082】
アリールスルフィン酸塩は一般に、ラジカル重合反応を受けることができるモノマーおよび様々な非極性および極性溶媒に可溶性である。本明細書で使用される、「可溶性」という用語は、溶媒またはモノマーなどの所定の材料に、少なくとも0.05モル/リットルに等しい量、少なくとも0.07モル/リットルに等しい量、少なくとも0.08モル/リットルに等しい量、少なくとも0.09モル/リットルに等しい量、または少なくとも0.1モル/リットルに等しい量で溶解する化合物を意味する。
【0083】
一部のアリールスルフィン酸塩において、Ar1基は、置換フェニル、または炭素環式芳香族環を有する非置換もしくは置換C7-30アリール基である。アリール基は、単一の炭素環式芳香族環を有するか、または炭素環式芳香族環に縮合または連結した更なる炭素環式環を有する。縮合または連結した環は、飽和または不飽和であることができる。アリールは、5個までの環、4個までの環、3個までの環、2個までの環、または1個の環を含有する場合が多い。アリール基は通常、30個までの炭素原子、24個までの炭素原子、18個までの炭素原子、12個までの炭素原子、または6個の炭素原子を有する。単一環または複数の縮合環を有するアリール基の例としては、限定されないが、フェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、フェナントレニル、ペリレニル、およびアントラセニルが挙げられる。単結合、メチレン基(つまり、−C(Rb2−(Rbがそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリールである))、カルボニル基(つまり、−(CO)−)、またはその組み合わせは、複数の環を連結することができる。複数の連結された環を有するアリール基の例としては、限定されないが、アントラキノニル、アントロニル、ビフェニル、テルフェニル、9,10−ジヒドロアントラセニル、およびフルオレニルが挙げられる。
【0084】
他のアリールスルフィン酸塩において、式IのAr1基は、環においてS、O、N、またはその組み合わせから独立して選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含有する5〜7員芳香族環を有する非置換もしくは置換ヘテロアリールであることができる。ヘテロアリールは、単一環を有するか、共に連結または縮合された複数の環を有する。その他の連結環または縮合環は、炭素環式であるか、またはヘテロ原子を含有することができ、飽和もしくは不飽和であることができる。ヘテロアリール基は、5個までの環、4個までの環、3個までの環、2個までの環、または1個の環を含有する場合が多い。ヘテロアリールは一般に、30個までの炭素原子を含有する。一部の実施形態において、ヘテロアリールは、20個までの炭素原子、10個までの炭素原子、または5個までの炭素原子を含有する。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾメルカプトフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、フタラジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、フェナジニル、フェナントリジニル、アクリジニル、アザフェナントレニル、およびインダゾリルが挙げられる。
【0085】
一部の実施形態において、式IにおけるAr1は、電子吸引基、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基で置換されない。電子供与基は、例えば第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、またはその組み合わせから選択することができる。電子吸引基は、例えばハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択することができる。
【0086】
一部の実施形態において、Ar1基は、スルフィナート基に共役する電子吸引基を含む。例えば、Ar1基は、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基で置換されたフェニルであることができる。一部のアリールスルフィン酸アニオンにおいて、電子吸引基は、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される。他のアリールスルフィン酸アニオンにおいて、電子吸引基はハロ基である。さらに他の実施形態において、Ar1基置換基は、電子供与基に加えて、電子吸引基を含む。例えば、Ar1基置換基は、アルキルおよび電子吸引基を含むことができる。
【0087】
式Iのアリールスルフィン酸アニオンの具体的な例としては、限定されないが、4−クロロベンゼンスルフィナート、4−シアノベンゼンスルフィナート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、1−ナフタレンスルフィナート、2−ナフタレンスルフィナート、および1−アントラキノンスルフィナートが挙げられる。
【0088】
アリールスルフィン酸塩は、少なくとも1つの炭素原子および正に荷電した窒素原子または正に荷電したリン原子のいずれかを有するカチオンを有する。一部の実施形態において、アリールスルフィン酸塩のカチオンは、式II
【化4】

(式中、R1は、アルキルまたはアリールであり、R4はそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリールである)のカチオンである。R1およびR4基は、非置換であるか、または置換することができる。アルキル基は、ヒドロキシで置換することができる。アリールは、アルキル、ヒドロキシ、またはその組み合わせで置換することができる。
【0089】
式IIのいくつかの例において、R1および各R4基は独立して、非置換であるか、またはヒドロキシで置換されるC2-30アルキルである。例えば、R1および各R4は独立して、炭素原子を20個まで、10個まで、8個まで、6個まで、または4個まで有するアルキル基であることができる。アルキル基は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも6個、または少なくとも8個の炭素原子を有する場合が多い。アルキル基は、いくつかの化合物において、炭素原子4〜30、8〜30、3〜10、4〜10、4〜8、または4〜6個を有することができる。具体的な例において、アリールスルフィン酸塩のカチオンは、テトラブチルアンモニウムイオンである。
【0090】
式IIの他の実施例において、R1および2つのR4基はそれぞれ独立して、非置換であるか、またはヒドロキシで置換することができるC2-30アルキルである。残りのR4基は水素である。さらに他の例において、R1および1つのR4基はそれぞれ独立して、非置換であるか、またはヒドロキシで置換することができるC4-30アルキルであり;残りの2つのR4基は水素である。さらに他の例において、R1は、非置換であるか、またはヒドロキシで置換されるC8-30アルキルであり;R4基は水素である。
【0091】
式IIにおけるR1基およびR4基のそれぞれは独立して、非置換であるか、またはアルキルもしくはヒドロキシで置換されたアリール基である。例示的なカチオンは、テトラフェニルアンモニウムイオンである。他の例において、R1および1つのR4は独立して、非置換であるか、またはアルキルもしくはヒドロキシで置換されたアリール基であり;残りの2つのR4基は水素である。例示的なカチオンは、ジフェニルアンモニウムイオンである。
【0092】
他の実施形態において、アリールスルフィン酸塩のカチオンは、正に荷電した窒素原子を有する、4〜12員複素環式基を含む環構造である。複素環式基は、飽和または不飽和であり、窒素、酸素、硫黄またはその組み合わせから選択される3個までのヘテロ原子を含有することができる(つまり1つの正に荷電した窒素原子、および窒素、酸素、硫黄またはその組み合わせから選択される2個までの他のヘテロ原子が存在する)。その環構造は非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせから選択される置換基を有することができる。
【0093】
カチオン環構造における複素環式基は、単一環、二環式であることができ、あるいは他の環式基または二環式基に縮合することができる。縮合された環式または二環式基は、飽和または不飽和であり、ヘテロ原子0〜3個を有することができる。環構造は、30個までの炭素原子、24個までの炭素原子、18個までの炭素原子、12個までの炭素原子、6個までの炭素原子、または4個までの炭素原子、および6個までのヘテロ原子、4個までのヘテロ原子、2個までのヘテロ原子、または1個のヘテロ原子を含有することができる。一部の実施形態において、その環構造は、ヘテロ原子0〜3個を有する芳香族環に縮合する、4〜12員複素環式基である。
【0094】
正に荷電した窒素原子を含有する5員複素環式基の適切な例としては、限定されないが、ピロリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、イソキサゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、イソチアゾリウムイオン、オキサジアゾリウムイオン、オキサトリアゾリウムイオン、ジオキサゾリウムイオン、およびオキサチアゾリウムイオンが挙げられる。これらのイオンは、非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせで置換することができる。一部の用途では、そのカチオンは、非置換であるか、または置換されたイミダゾリウムまたはオキサゾリウムイオンである。
【0095】
5員複素環式基は、他の環式基に縮合することができる。一部の例示的な環構造において、5員複素環式基は、芳香族基に縮合される。例示的な環構造としては、限定されないが、インドールイオン、インダゾリウムイオン、ベンゾピロリジニウムイオン、ベンズイミダゾリウムイオン、ベンゾトリアゾリウムイオン、ベンズイソオキサゾリウムイオン、ベンゾオキサゾリウムイオン、ベンゾチアゾリウムイオン、ベンズイソチアゾリウムイオン、ベンズオキサジアゾリウムイオン、ベンズオキサトリアゾリウムイオン、ベンゾジオキサゾリウムイオン、ベンズオキサチアゾリウムイオン、カルボゾリウムイオン、およびプリニウムイオンが挙げられる。これらのイオンは、非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせで置換することができる。一部の用途において、そのカチオンは、非置換であるか、または置換されたベンゾオキサゾリウムイオンまたはベンゾチアゾリウムイオンである。
【0096】
正に荷電した窒素原子を含有する6員複素環式基の適切な例としては、限定されないが、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピペラジニウムイオン、トリアジニウムイオン、オキサジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、オキサチアジニウムイオン、オキサジアジニウムイオン、およびモルホリニウムイオンが挙げられる。これらのイオンは、非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、またはカルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせで置換することができる。一部の用途において、そのカチオンは、非置換であるか、または置換されたピリジニウムイオンまたはモルホリニウムイオンである。
【0097】
6員複素環式基は、他の環式基に縮合することができる。一部の例示的な環構造において、6員複素環式基は、芳香族基に縮合される。例示的な環構造としては、限定されないが、イソキノリニウムイオン、キノリニウムイオン、シノリニウム(cinnolinium)イオン、キナゾリニウムイオン、ベンゾピラジニウムイオン、ベンゾピペラジニウムイオン、ベンゾトリアジニウムイオン、ベンズオキサジニウムイオン、ベンゾピペリジニウムイオン、ベンズオキサチアジニウムイオン、ベンズオキサジジニウムイオン、ベンゾモルホリニウムイオン、ナフチリジニウムイオン、およびアクリジニウムイオンが挙げられる。これらのイオンは、非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、またはカルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせで置換することができる。
【0098】
正に荷電した窒素原子を含有する7員複素環式基の適切な例としては、例えば、アゼピニウムイオンおよびジアゼピニウムイオンが挙げられる。これらのイオンは、非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせで置換することができる。
【0099】
二環式である複素環式基の例としては、限定されないが、非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせで置換された、N−アルキル化またはN−プロトン化1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよびN−アルキル化またはN−プロトン化1−アザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
【0100】
他の実施形態において、アリールスルフィン酸塩のカチオンは、式III
【化5】

(式中、R2がそれぞれ独立して、非置換であるか、または置換されたアルキルまたはアリールである)の正に荷電したリン原子を含有する。アルキル基は、ヒドロキシで置換することができる。アリールは、アルキル、ヒドロキシ、またはその組み合わせで置換することができる。
【0101】
式IIIの一部の例において、R2基のすべてがアリール基である。例えば、カチオンは、テトラフェニルホスホニウムイオンである。他の例では、R2基のうち1つ、2つ、または3つがアリールであり、残りのR2基(1つまたは複数)は、C2-30アルキルである。
【0102】
アリールスルフィン酸塩のいくつかは、式IV
【化6】

のアニオン、および正に荷電した窒素原子を含有するカチオンを有する。式IVにおいて、R3は、ベンゼン環のオルト、パラ、またはメタ位にあり、かつハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、またはアミノカルボニルから選択される電子吸引基である。一部の化合物において、R3は、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、またはアミノカルボニルから選択される。他の化合物において、R3は、ハロ、シアノ、またはアルコキシカルボニル基である。
【0103】
式IV(式中、R3は、フェニル環のパラ位に位置する)の具体的な例としては、4−シアノベンゼンスルフィナート、4−クロロベンゼンスルフィナート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、および4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナートが挙げられる。式中、R3がフェニル環のメタ位に位置する、具体的な例としては、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナートが挙げられる。
【0104】
一部の用途では、アリールスルフィン酸塩は、式IVのアニオンと、テトラアルキルアンモニウムイオンであるカチオンと、を含む。テトラアルキルアンモニウムイオンのアルキル基は、同一または異なり、一般に炭素原子2〜30個を含有する。例えば、そのアルキル基は、炭素原子4〜30個、炭素原子8〜30個、炭素原子3〜10個、炭素原子4〜10個、炭素原子4〜8個、または炭素原子4〜6個を含有することができる。アリールスルフィン酸塩の具体的な例としては、限定されないが、テトラブチルアンモニウム4−クロロベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、およびテトラブチルアンモニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナートが挙げられる。
【0105】
アリールスルフィン酸塩の他の具体的な例としては、限定されないが、テトラブチルアンモニウム1−ナフタレンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム2−ナフタレンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム1−アントラキノンスルフィナート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム4−シアノベンゼンスルフィナート、N,N−モルホリニウム4−シアノベンゼンスルフィナート、3−エチル−2−メチルベンゾオキサゾリウム4−シアノベンゼンスルフィナート、1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン4−シアノベンゼンスルフィナート、およびN−ヘキサデシルピリジニウム4−シアノベンゼンスルフィナートが挙げられる。
【0106】
一部の実施形態において、アリールスルフィン酸塩は有色であり、可視光線を吸収する。例えば、アリールスルフィン酸塩は黄色を有することができる。有色アリールスルフィン酸塩の例としては、限定されないが、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基で置換されたベンゼンスルフィナートであるカチオンを有するアリールスルフィン酸塩が挙げられる。他の有色アリールスルフィン酸塩としては、例えば、1−ナフタレンスルフィナート、2−ナフタレンスルフィナート、および1−アントロキノンスルフィナートなどの複数の縮合環を有するカチオンを有するアリールスルフィン酸塩が挙げられる。
【0107】
一部のアリールスルフィン酸塩は、銀/硝酸銀参照電極に対して、0.0〜+0.4ボルト、+0.08〜+0.4ボルト、+0.08〜+0.3ボルト、または+0.08〜+0.3ボルトのN,N−ジメチルホルムアミドにおける酸化電位を有する。酸化電位は、サイクリックボルタンメトリーを使用して決定することができる。対象の化合物は一般に、支持電解質(つまり、0.1モル/リットルのヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム)を含有する非水性溶媒(つまり、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解する。得られた溶液は、アルゴンなどの不活性ガスでパージされる。作用電極(つまり、ガラス状炭素電極)、参照電極(つまり、アセトニトリルに溶解された硝酸銀の0.01モル/リットル溶液中の銀線)、および対電極(つまり、白金線)を含む3電極構造が使用される。酸化電位は、酸化反応の極大電流に相当する電圧である。
【0108】
組成物のその他の成分は、トリアリールスルホニウム塩である。トリアリールスルホニウムイオンは一般に、式V
【化7】

(式中、Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり;Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;pは、1以上の整数であり;mは、0または1に等しい整数である)のイオンである。アリールスルホニウムイオンは、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、Ge、Te、またはSeから選択される10個までのヘテロ原子で置換することができる。一部の例示的なトリアリールスルホニウムイオンにおいて、置換基は存在しない。他の例示的なトリアリールスルホニウムイオンでは、置換基は、ヘテロ原子を5個まで、3個まで、または1個まで有する。置換基における炭素原子数は、例えば、20個まで、10個まで、8個まで、6個まで、4個まで、または3個までである。カチオンの電荷は、置換基に応じて変化させることができる。一部の実施形態において、pは1または2に等しい。
【0109】
Ar3およびAr4はそれぞれ、単一環または多環を有する芳香族基である。単一環の芳香族基の例としては、限定されないが、フェニル、チエニル、またはフラニルが挙げられる。多環の芳香族基としては、限定されないが、ナフチル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ベンゾフラニル、およびジベンゾフラニルが挙げられる。環は、非置換であるか、または置換することができる。
【0110】
式Vの一部の実施形態において、芳香族基2つの間に結合基Lは存在しない(つまり、mは0に等しい)。結合基を欠くトリアリールスルホニウムイオンの具体的な例は、トリフェニルスルホニウムである。結合基を有するトリアリールスルホニウムイオン(つまり、mは1に等しい)の具体的な例としては、限定されないが、
【化8】

が挙げられる。
【0111】
一部のトリアリールスルホニウムイオンでは、そのカチオンは互いに反応して、より高い分子量を有するカチオンを形成することができる。例えば、トリフェニルスルホニウム塩は、
【化9】

またはその組み合わせを含み得る。適切なアリールスルホニウム塩は、米国特許第2,807,648号明細書、同第4,069,054号明細書および同第4,216,288号明細書;米国特許出願第10/328,520号明細書にさらに記述されている。
【0112】
アリールスルホニウムイオンに適した置換基としては、限定されないが、アルキル(例えば、メチル、エチル、ブチル、ドデシル、およびテトラコサニル);アルキルカルボニルオキシ(例えば、アセトキシおよびシクロヘキサンカルボニルオキシ);アルキニル(例えば、エチニル);アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、およびブトキシ);アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニル);アルキルチオ(例えば、メチルチオおよびエチルチオ);アリールチオ(例えば、フェニルチオ);アラルキル(例えば、ベンジル);アルケニル(例えば、エテニルおよびアリル);アリール(例えば、シクロペンタジエニル、フェニル、トリル、ナフチル、インデニル、アントラセニル、フェナントレニル、およびペリレニル);アリールカルボニルオキシ(例えば、ベンゾイルオキシ);アリールカルボニルアミド(例えば、ベンズアミド);アリールオキシ(例えば、フェノキシ);アリールオキシカルボニル(例えば、フェノキシカルボニル);アルコキシスルホニル(例えば、メトキシスルホニルおよびブトキシスルホニル);アリールオキシスルホニル(例えば、フェノキシスルホニル);アルキルスルホンアミド(例えば、エチルスルホンアミド);N−アルキルアミノカルボニル(例えば、N−メチルアミノカルボニル、N,N−ジメチルアミノカルボニル);N−アリールアミノカルボニル(例えば、N−フェニルアミノカルボニル);N−アルキルスルファミル(例えば、N−メチルスルファミル);N−アリールスルファミル(例えば、N−フェニルスルファミル);アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル);アリールスルホニル(例えば、フェニルスルホニル);パーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、およびパーフルオロブチル);パーフルオロアルキルスルホニル(例えば、トリフルオロメチルスルホニル、パーフルオロエチルスルホニル、およびパーフルオロブチルスルホニル);アゾ;ボリル;ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード、およびフルオロ);ヒドロキシ;メルカプト;ジアリールアルシノ(例えば、ジフェニルアルシノ);ジアリールスチビノ(例えば、ジフェニルスチビノ);トリアルキルゲルマノ(例えば、トリメチルゲルマノ);トリアルキルシロキシ(例えば、トリメチルシロキシ);その組み合わせが挙げられる。
【0113】
一部の実施形態において、トリアリールスルホニウムイオンは、非置換であるか、またはアシル、アルキル、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルカルボニルアミド、アリール、アルコキシ、ハロ、アリールオキシ、またはその組み合わせで置換される。
【0114】
トリアリールスルホニウムイオンの具体的な例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルナフチルスルホニウム、トリトリルスルホニウム、アニシルジフェニルスルホニウム、4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−クロロフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−フェノキシフェニル)スルホニウム、4−アセトニルフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−チオメトキシフェニル)スルホニウム、4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0115】
トリアリールスルホニウム塩のアニオンは一般に、アルコール、エチレン性不飽和モノマー、またはその組み合わせなどの種々の溶媒中での適切な溶解度が得られるように選択される。一部の用途では、トリアリールスルホニウム塩は、少なくとも0.05モル/リットル、少なくとも0.07モル/リットル、少なくとも0.08モル/リットル、少なくとも0.09モル/リットル、または少なくとも0.1モル/リットルの、アルコールまたはエチレン性不飽和モノマーにおける溶解度を有する。トリアリールスルホニウム塩の適切なアニオンとしては、限定されないが、AsF6-、SbF6-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、HC(SO2CF32-、C(SO2CF33-、N(SO2CF32-、テトラフェニルホウ酸塩、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ホウ酸塩、p−トルエンスルホネート等が挙げられる。一部の実施形態において、アニオンは、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、またはその組み合わせから選択される。他の実施形態において、アニオンは、上記の式Iによるアリールスルフィン酸である。
【0116】
トリアリールスルホニウム塩は、溶液状態で市販されている場合が多い。例えば、トリアリールスルホニウムSbF6-は、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.,Midland MI)(UVI−6974)から、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Company,Exton,PA)(CD−1010)から、炭酸プロピレン中の50重量%溶液として市販されている。トリアリールスルホニウムPF6-は、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.,Midland MI)(UVI−6990)から、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Company,Exton,PA)(CD−1011)から、炭酸プロピレン中の50重量%溶液として市販されている。
【0117】
この組成物はさらに、ラジカル重合反応を用いて重合することができるモノマーを含有する。そのモノマーは一般に、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を含有する。モノマーは、例えば、モノアクリレート、ジアクリレート、ポリアクリレート、モノメタクリレート、ジメタクリレート、ポリメタクリレート、またはその組み合わせであることができる。例示的なモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、およびトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメチルアクリレートが挙げられる。そのモノマーは、平均分子量(Mn)200〜500を有するポリエチレングリコールのビスアクリレートおよびビスメタクリレート;米国特許第4,652,274号明細書に記載のモノマーなどのアクリル化モノマー、米国特許第4,642,126号明細書に記載のモノマーなどのアクリル化モノマー、メチレンビス−アリールアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス−アクリルアミドなどの不飽和アミド、およびβ−メタクリルアミノエチルメタクリレートの重合性混合物;スチレン、フタル酸ジアリル、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、およびフタル酸ジビニルなどのビニルモノマー;であることもできる。所望の場合には、2種類以上のモノマーの混合物を使用することができる。
【0118】
一部の実施形態において、この組成物は、ヒドロキシ含有材料を含む。ヒドロキシ含有材料は、例えば、アルコール、ヒドロキシ含有モノマー、またはその組み合わせであることができる。一部の用途では、ヒドロキシ含有材料は、光重合性組成物を漂白する傾向があり;このような漂白組成物は、可視光ではなく、紫外線を使用して活性化することができる場合が多い。
【0119】
トリアリールスルホニウム塩およびアリールスルフィン酸はどちらも、モノマーまたはモノマー混合物中での溶解性が得られるように選択することができる。トリアリールスルホニウムおよびアリールスルフィン酸塩は、エチレン性不飽和モノマーのラジカル重合を可能にするのに有効な量で存在することができる。各塩の量は、光重合反応の速度論に影響を及ぼす。重合反応の速度は一般に、塩の濃度が増加するにしたがって高くなる。
【0120】
一部の用途では、トリアリールスルホニウム塩およびアリールスルフィン酸塩はそれぞれ、モノマーの重量を基準にして、4重量%までの量で存在する。塩の量は、同一または異なる。一部の実施形態において、トリアリールスルホニウム塩およびアリールスルフィン酸塩はそれぞれ、モノマーの重量を基準にして、3重量%まで、2重量%まで、1重量%まで、または0.5重量%までの量で存在する。例えば、トリアリールスルホニウム塩およびアリールスルフィン酸塩はそれぞれ、モノマーの重量を基準にして、0.1〜4重量%、0.1〜3重量%、0.1〜2重量%、または0.5〜1重量%の量で存在することができる。
【0121】
本発明の他の態様は、ラジカル重合反応を受けることができるモノマー(つまり、エチレン性不飽和モノマー)およびトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩を含む組成物を提供する。トリアリールスルホニウムおよびアリールスルフィン酸イオンは、さらに詳細に上述されるものと同じである。
【0122】
この組成物は、重合材料の所望の用途に応じて、多種多様な添加剤を含有することができる。適切な添加剤としては、溶媒、希釈剤、樹脂、バインダー、可塑剤、無機および有機強化充填剤または増量充填剤、チキソトロープ剤、紫外線吸収剤、薬物等が挙げられる。一部の実施形態において、これらの材料は、アリールスルフィン酸塩を励起するのに必要な化学線を競争的に吸収しないように選択される。
【0123】
一部の実施形態において、組成物の成分は、硬化速度、硬化度(cure depth)および貯蔵寿命の有用な組み合わせが得られるように選択される。一部の組成物は、多量の充填剤が添加された場合でさえ、十分に硬化することができる。この組成物を用いて、発泡体、成形物品、接着剤、充填材入りまたは強化複合材、研摩材、コーキングおよびシーリング配合物、注型用および成形用配合物、注封用および封入用配合物、含浸用およびコーティング用配合物等を形成することができる。
【0124】
組成物の適切な用途としては、限定されないが、グラフィックアートイメージング(例えば、カラープルーフシステム、硬化性インク、および銀を含まないイメージング)、印刷版(例えば、投影板およびレーザー板用)、フォトレジスト、プリント回路基板用のはんだマスク、塗布研磨材、磁気媒体、光硬化性接着剤(例えば、歯科矯正および一般的な接着用途の)、光硬化性複合材(例えば、車体修理および歯の修復用)、保護コーティング、および耐摩耗性コーティングが挙げられる。この組成物は、高強度/ショートパルスレーザーが、適切な染料および共反応物(co−reactant)と併せて使用され、イメージング、微細複製およびステレオリソグラフ用途に有用な重合性組成物が生成される、多光子過程での使用にも適している。この組成物は、当業者に公知の他の用途で使用することもできる。
【0125】
重合法
本発明は、ラジカル重合反応を用いて、エチレン性不飽和モノマーを光重合する方法も提供する。
【0126】
光重合法は、光重合性組成物がゲル化または硬化するまで、光重合性組成物に化学線を照射することを含む。光重合性組成物は、ラジカル重合反応を受けることができるモノマー(つまり、エチレン性不飽和モノマー)と、光開始剤系とを含む。光開始剤系は、トリアリールスルホニウム塩およびアリールスルフィン酸塩を含む。光開始剤系の一部の用途において、その成分は、共に混合され、使用前に少なくとも1日保存することができる。
【0127】
アリールスルフィン酸塩は、式I
【化10】

のアニオンと、少なくとも1つの炭素原子および正に荷電した窒素原子または正に荷電したリン原子のいずれかを含有するカチオンと、を有する。式IにおけるAr1基は、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールである。置換Ar1基は、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有することができる。適切なアリールスルフィン酸塩は上記に記載されている。
【0128】
一部の実施形態において、アリールスルフィン酸塩は、置換ベンゼンスルフィナート、1−ナフタレンスルフィナート、2−ナフタレンスルフィナート、または1−アントラキノンスルフィナートであるアニオンと、テトラアルキルアンモニウムイオンであるカチオンと、を有する。アリールスルフィン酸アニオン上の置換基は、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基であることができる。例示的なアリールスルフィン酸としては、限定されないが、テトラブチルアンモニウム4−クロロベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム1−ナフタレンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム2−ナフタレンスルフィナート、およびテトラブチルアンモニウム1−アントラキノンスルフィナートが挙げられる。
【0129】
アリールスルフィン酸塩の他の具体的な例としては、限定されないが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム4−シアノベンゼンスルフィナート、N,N−モルホリニウム4−シアノベンゼンスルフィナート、3−エチル−2−メチルベンゾオキサゾリウム4−シアノベンゼンスルフィナート、1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン4−シアノベンゼンスルフィナートおよびN−ヘキサデシルピリジニウム4−シアノベンゼンスルフィナートが挙げられる。
【0130】
トリアリールスルホニウムイオンは、式V
【化11】

(式中、Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり;Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;pは、1以上の整数であり;mは、0または1に等しい整数である)のイオンである場合が多い。アリールスルホニウムイオンは、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換することができ、各置換基は、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有する。置換基は、例えば、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択することができる。適切なトリアリールスルホニウム塩は、さらに詳細に上述されている塩である。
【0131】
例示的なトリアリールスルホニウム塩は、非置換であるか、またはアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせで置換された、
【化12】

またはその組み合わせから選択されるカチオンを有することができる。トリアリールスルホニウム塩の適切なアニオンとしては、限定されないが、AsF6-、SbF6-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、HC(SO2CF32-、C(SO2CF33-、N(SO2CF32-、テトラフェニルホウ酸塩、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、およびテトラ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ホウ酸塩、p−トルエンスルホネート等が挙げられる。一部の実施形態において、アニオンは、PF6-、AsF6-、SbF6-、またはその組み合わせから選択される。
【0132】
適切なモノマーは、ラジカル重合反応を受けることができるモノマーであり、一般に、モノアクリレート、モノメタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはその組み合わせなどのエチレン性不飽和モノマーを含む。
【0133】
トリアリールスルホニウム塩は一般に、化学線の非存在下ではアリールスルフィナート電子供与体とは直接反応せず、少なくとも室温では反応しない。光開始剤系は、光重合性組成物を化学線に暴露することによって活性化することができる。化学線は一般に、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも425、または少なくとも450ナノメートルの波長を有する。化学線は一般に、1000ナノメートル未満、900ナノメートル未満、850ナノメートル未満、または800ナノメートル未満の波長を有する。例えば、化学線は、約250〜1000ナノメートル、300〜1000ナノメートル、350〜1000ナノメートル、300〜850ナノメートル、350〜800ナノメートル、250〜850ナノメートル、250〜800ナノメートル、400〜800ナノメートル、425〜800ナノメートル、または450〜800ナノメートルの範囲である。
【0134】
化学線の吸収によって、開始ラジカルが形成される。開始ラジカルはエチレン性不飽和モノマーと反応して、高分子量のラジカルを形成し、そのラジカルは、他のモノマーと反応し、その結果さらに高分子量のラジカルが形成され、それによってポリマー材料が形成される。一部の場合には、ポリマー材料は架橋される。
【0135】
一部の実施形態において、可視光を使用して、アリールスルフィン酸塩を励起し、光開始剤系を活性化することができる。これは、比較的安価な光源を使用することができることから有利である。電磁スペクトルの可視領域において発する光源は、例えば紫外領域において発する光源よりも費用がかからない傾向がある。紫外線または紫外線と可視光線との組み合わせを含む他の光源を使用することができる。一般的な光源としては、限定されないが、水銀蒸気放電ランプ、炭素アーク、タングステンランプ、キセノンランプ、太陽光、レーザー、発光ダイオード等が挙げられる。
【0136】
本発明の他の態様は、光重合性組成物がゲル化または硬化するまで、光重合性組成物に化学線を照射することを含む光重合法を提供する。光重合性組成物は、ラジカル重合反応を受けることができるモノマー(つまり、エチレン性不飽和モノマー)およびトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩を含有する。
【0137】
一部の実施形態において、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、式I
【化13】

(式中、Ar1は、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールである)によるアニオンを有する。置換Ar1基は、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有することができる。トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩のカチオンは、式V
【化14】

(式中、Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり;Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;pは、1以上の整数であり;mは、0または1に等しい整数である)によるカチオンである。アリールスルホニウムイオンは、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換することができ、各置換基は、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有する。置換基は、例えば、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択することができる。適切なトリアリールスルホニウムイオンは、さらに詳細に上述されているイオンである。
【0138】
トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換された、
【化15】

または、その組み合わせから選択されるカチオンを有することができる。適切な置換基としては、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせが挙げられる。
【0139】
トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩の例示的なアニオンとしては、置換ベンゼンスルフィナート、1−ナフタレンスルフィナート、2−ナフタレンスルフィナート、または1−アントラキノンスルフィナート、またはその組み合わせが挙げられる。アリールスルフィン酸上の置換基としては、電子吸引基、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基が挙げられる。電子供与基は、例えば、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、その組み合わせから選択することができる。電子吸引基は、例えば、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択することができる。
【0140】
例示的なアリールスルフィン酸アニオンとしては、限定されないが、4−クロロベンゼンスルフィナート、4−シアノベンゼンスルフィナート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、1−ナフタレンスルフィナート、2−ナフタレンスルフィナート、および1−アントラキノンスルフィナートが挙げられる。
【0141】
光開始剤系は、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも425、または少なくとも450ナノメートルの波長を有する化学線に光重合性組成物を暴露することによって活性化することができる。その化学線は一般に、1000ナノメートル未満、900ナノメートル未満、850ナノメートル未満、または800ナノメートル未満の波長を有する。例えば、化学線は、約250〜約1000ナノメートル、300〜1000ナノメートル、350〜1000ナノメートル、300〜850ナノメートル、350〜800ナノメートル、250〜850ナノメートル、250〜800ナノメートル、400〜800ナノメートル、425〜800ナノメートル、または450〜800ナノメートルの範囲である。
【0142】
化合物
本発明の他の態様は、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩を提供する。そのトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、式I
【化16】

のアニオンを有する。式Iにおいて、Ar1基は、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールである。置換Ar1基は、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有することができる。式Iのアリールスルフィン酸イオンに適したAr1基は上記に記載されている。
【0143】
電子供与基は、例えば、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、またはその組み合わせから選択することができる。電子吸引基は、例えば、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択することができる。
【0144】
一部の実施形態において、式Iのアリールスルフィン酸イオンとしては、限定されないが、非置換であるか、あるいは電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基で置換された、1−ナフタレンスルフィナート、2−ナフタレンスルフィナート、および1−アントラキノンスルフィナートが挙げられる。他の実施形態において、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、式IV
【化17】

(式中、R3は、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基である)によるアニオンを有する。電子吸引基R3は、例えばベンゼン環のオルト位またはパラ位に位置する。具体的な例としては、4−シアノベンゼンスルフィナート、4−クロロベンゼンスルフィナート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、および4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナートが挙げられる。他の例では、R3は、ベンゼン環のメタ位に位置する。具体的な例としては、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナートが挙げられる。
【0145】
適切なトリアリールスルホニウムイオンは、上記に記載されている。トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は一般に、式V
【化18】

(式中、Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり;Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;pは、1以上の整数であり;mは、0または1に等しい整数である)によるカチオンを有する。そのアリールスルホニウムイオンは非置換であるか、または置換することができる。トリアリールスルホニウムイオンは、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換することができ、各置換基は、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有する。適切な置換基としては、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせが挙げられる。
【0146】
一部の実施形態において、トリアリールスルホニウムイオンは、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換された、
【化19】

またはその組み合わせから選択される。適切な置換基としては、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせが挙げられる。
【0147】
具体的な化合物としては、限定されないが、トリフェニルスルホニウム4−シアノベンゼンスルフィナート、トリフェニルスルホニウム4−シアノベンゼンスルフィナート、トリフェニルスルホニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、トリフェニルスルホニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、トリフェニルスルホニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、トリフェニルスルホニウム1−ナフタレンスルフィナート、トリフェニルスルホニウム2−ナフタレンスルフィナート、およびトリフェニルスルホニウム2−アントラキノンスルフィナートが挙げられる。
【0148】
トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は一般に、様々な溶媒およびエチレン性不飽和モノマー中で少なくとも0.05モル/リットル、少なくとも0.07モル/リットル、少なくとも0.08モル/リットル、少なくとも0.09モル/リットル、または少なくとも0.1モル/リットルの溶解度を有する。このように、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、アルコールなどの多量(例えば、30〜70重量%)の共溶媒を有する水性配合物または水性系を含む用途に限定されない場合が多い。
【0149】
トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、250〜1000ナノメートル、300〜1000ナノメートル、350〜1000ナノメートル、250〜850ナノメートル、250〜800ナノメートル、400〜800ナノメートル、425〜800ナノメートル、または450〜800ナノメートルの範囲の波長を有する化学線に暴露することによって活性化することができる。理論に束縛されないが、アリールスルフィン酸イオンは一般に、化学線を吸収して、励起したアリールスルフィン酸イオンを形成することができると考えられる。励起したアリールスルフィン酸イオンは、電子をトリアリールスルホニウムイオンに伝達し、その結果、アリールスルフィン酸ラジカルが形成される。アリールスルフィン酸ラジカルは一般に、光分解し、ラジカル重合反応を開始することができるラジカルを形成することができる。
【0150】
一部の実施形態において、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩は、酸化的分解を受けることなく、室温でそのままの化合物として保存することができる。例えば、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩の一部は、1日を超える、2日を超える、1週間を超える、2週間を超える、または1ヶ月を超える期間、保存することができる。室温(つまり、20℃〜25℃)で化合物の50%を酸化するのに必要な時間(t1/2)を用いて、種々のトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩の酸化的分解の相対的な容易さを比較することができる。t1/2は、K.A.Connors,Chemical Kinetics:The Study of Reaction Rates in Solution,chapter 2,VCH,New York,1990に記載のように擬一次速度式に基づいて計算される。
【実施例】
【0151】
別段の指定がない限り:
溶媒および試薬は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)から入手され、または入手することができ、または公知の方法によって合成することもできる;
サイクリックボルタンメトリーの電気化学測定器は、テネシー州オークリッジのプリンストン・アプライド・リサーチ社(Princeton Applied Research,Oak Ridge,TN)から入手した;
N,N−ジメチルホルムアミドは、ニュージャージー州ギブスタウンのEMサイエンス社(EM Science,Gibbstown,NJ)から入手した;
本明細書において使用される、「SR339」という用語は、2−フェノキシエチルアクリレートを意味し、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Co.,Inc.,Exton,PA)から入手した;
本明細書において使用される、「SR238」という用語は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを意味し、サートマー社(Sartomer Co.,Inc)から入手した;
トリアリールスルホニウムクロリドは、ニューヨーク州レイクサクセスのアセト社(Aceto Corp.,Lake Success,NY)から水溶液として入手した。
【0152】
酸化電位の測定
プリンストン・アプライド・リサーチ(Princeton Applied Research)モデル179デジタル電量計およびモデル178電位計を備えた、プリンストン・アプライド・リサーチ(Princeton Applied Research)モデル173ポテンシオスタット/ガルバノスタットに接続されたEG&G PARCモデル175ユニバーサルプログラマ(Universal Programmer)を使用して、例示的なアリールスルフィナートの電気化学測定を行った。モデルDI−151R5Waveform記録システム(オハイオ州アクロンのDATAQインスツルメンツ社(DATAQ Instruments,Inc.,Akron,OH)から市販されている)を使用して、信号をデジタル化し、次いでそれを保存し、デル社のオプティプレックス(Dell OptiPlex)XM590パーソナルコンピュータで解析した。スキャン速度100mV/秒でスキャンを行った。
【0153】
電気化学測定は、3電極構造:参照電極、作用電極、および対電極を使用して行った。参照電極は、アセトニトリル中の0.01M AgNO3で充填され、かつ直径1mm、長さ約19cmの銀線を備えたガラス(fritted)電極(イリノイ州バッファローグローヴのサージェント・ウェルチ社(Sargent Welch,Buffalo Grove,IL)から入手)であった。対電極は、コイル直径約10mm、コイル長さ約7.5cmを有するコイルに形成された、直径1.0mm、長さ(全長)16cmの白金線であった。作用電極は、直径約3.5mmのガラス状炭素電極(インディアナ州ウェストラフィエットのBAS社(BAS,Inc.,West Lafayette,Indiana)から入手)であった。最初に3.0ミクロンの酸化アルミニウム粉末/脱イオン水スラリーを使用し、次いでαアルミナ粉末/脱イオン水スラリーを使用して、ガラス状炭素電極を研磨した。研磨用粉末は、イリノイ州エバンストンのビューラーLTD社(Buehler LTD,Evanston,IL)から入手した。
【0154】
セルは、50mL4つ口丸底フラスコであった。適切なサイズのゴム製セプタムを使用してフラスコ内に各電極を封入した。第4の入口を使用して、アルゴンパージを導入し、酸素を除去し、セルに大気水分が入らないようにした。
【0155】
支持電解質は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBA PF6)(テキサス州オースチンのサウスウェスタン・アナリティカル・ケミカルズ社(Southwestern Analytical Chemicals,Inc.,Austin,TX)から入手)であった。それぞれの実験前に、TBA PF6を80〜90℃にて真空オーブン内で一晩乾燥させた。溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であり、さらに精製することなく、それをそのまま使用した。大気水分の取り込みを極力抑えるために、アルゴン雰囲気下にてシリンジによって、溶媒を電気化学セルに移した。
【0156】
最初に、DMF中のTBA PF6の0.1モル溶液を調製することによって、電気化学測定を行った。アルゴンがセルを通って流れる際に、小さな磁気撹拌子を含むセルに、その溶液を加えた。参照電極および対電極を測定器に接続した後に、作用電極を上述のように研磨し、次いでセル内に挿入した。例示的な化合物をセルに添加する前に、バックグラウンドスキャンを行った。次いで、化合物約10mgをセルに添加し、それが溶解した後に、測定を行って酸化電位を記録した。最初のスキャンにおいてピーク電流での電圧として、電位を決定した。この構造において、同一の電解質溶液におけるフェロセンの酸化電位は、参照電極に対して+0.1ボルトで現れた。
【0157】
トリアリールスルホニウム塩の調製
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートおよびトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを複分解手順を用いて製造し、その手順では、市販のトリアリールスルホニウムクロリド水溶液を、アルカリ金属またはアンモニウムヘキサフルオロホスフェートまたはアンチモネートの水溶液と混合した。次いで、その混合物を塩化メチレンで抽出し、CaSO4などの固形乾燥剤によって抽出物を乾燥させ、次いで回転蒸発器を使用して、濃縮して乾燥状態にした。生成物をさらに、真空オーブンを使用して乾燥させた。
【0158】
調製例1
4−シアノベンゼンスルホニルクロリドの調製
再密封可能なプラスチック製バッグ内で固体を合わせ、バッグを手でこね、振り混ぜることによって、4−カルボキシベンゼンスルホンアミド(188g)とPCl5(430g)との均質な混合物を製造した。磁気撹拌子と窒素ガス源に接続されたホースアダプターとを備えた丸底フラスコに、混合物を移した。油浴中でフラスコをゆっくりと60℃に加熱し、混合物を攪拌しながら、60℃で5時間維持した。次いで、ドライアイスで冷却されたトラップを介して、ホースアダプターを水流吸引器に接続し、油浴の温度を110℃に上げ、フラスコを真空にし、トラップ内に液体を蒸留した。蒸留速度が遅くなった場合には、ホースアダプターを再度、窒素源に接続し、油浴の温度を155℃に上げた。さらに13時間後、ホースアダプターを再度、トラップを介して水流吸引器に接続し、さらに液体を蒸留した。次いで、反応フラスコを室温に冷却し、その間に茶色の生成物が固化した。クーゲルロール蒸留装置を使用して、温度150℃、圧力0.07mmHgにて、氷浴中で冷却された捕集バルブ内に粗生成物を真空蒸留した。捕集バルブからの黄色の固体留出物をCH2Cl2で洗浄し、その溶液を回転蒸発器で濃縮して乾燥状態にし、生成物167.4gを得た。
【0159】
調製例2
カリウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルホネートの調製
脱イオン水(1200mL)中のナトリウム4−カルボキシベンゼンスルホネート(75g)の混合物を、固体が溶解するまで60℃に加熱した。脱イオン水、濃HClおよび脱イオン水で順次洗浄することによって酸性化された強酸性イオン交換樹脂のカラム(ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Co.,Philadelphia,PA)から商標名アンバーライト(AMBERLITE)IR−120(PLUS)で市販されている)に、溶出液のpHが約5.5になるまで、この溶液を通した。次いで、合計2Lの溶出液を回収するまで、カラムを脱イオン水で洗浄した。脱イオン水を回転蒸発器で除去し、得られた中間体を50℃にて真空オーブン内で一晩乾燥させた。
【0160】
次いで、磁気撹拌子、凝縮器、および窒素ガス源に取り付けられたホースアダプターを備えた丸底フラスコ内で、中間体を無水エタノール1Lに溶解した。この溶液を攪拌し、100℃の油浴で一晩加熱した。さらにエタノール500mlをフラスコに添加し、加熱および攪拌をさらに4時間続けた。溶液を室温に冷却し、アルコール系KOHでブロモチモールブルー終点まで中和した。生成物が溶液から沈殿し、その生成物を真空濾過により単離し、無水エタノールで洗浄した。固体を室温で一晩乾燥させて、生成物75.1gを得た。
【0161】
調製例3
4−エトキシカルボニルベンゼンスルホニルクロリドの調製
磁気撹拌子と窒素ガス源に取り付けられたホースアダプターとを備えた丸底フラスコに、アセトニトリル(300mL)とスルホラン(100mL)との3:1(v/v)混合物に溶解されたカリウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルホネート(75.1g)の溶液を装入した。溶液を攪拌しながら、POCl3(55mL)をゆっくりと添加し、攪拌混合物を窒素雰囲気下にて75℃で3時間加熱した。不均一な反応混合物を室温に冷却し、次いで回転蒸発器を使用して濃縮した。次いで、フラスコを氷浴中で冷却し、フラスコ内の混合物に氷を加えた。生成物が白色の固体として結晶化し、それを濾過し、冷たい脱イオン水で洗浄した。室温および3mmHgにて真空下で生成物を2時間乾燥させ、白色の固体76gを得た。
【0162】
調製例4〜5
置換ベンゼンスルフィン酸ナトリウムの調製
調製例1および2に記載のように調製された置換ベンゼンスルホニルクロリドを加水分解することによって、ベンゼンスルフィン酸ナトリウムを調製した。丸底フラスコ中で脱イオン水1ミリリットル当たり置換ベンゼンスルホニルクロリド0.2gの濃度で、Na2SO32.5当量およびNaHCO32.5当量で、脱イオン水中で75℃にて、各置換ベンゼンスルホニルクロリドを3時間攪拌した。次いで、各反応混合物を室温に冷却し、次いで冷蔵庫内で10℃に冷却した。pHが1未満になるまで、各冷溶液を濃硫酸で酸性化した。
【0163】
各沈殿固体を酢酸エチル中に抽出し、次いで回転蒸発器を使用して、有機相を乾燥状態まで蒸発させ、無色の固体として置換ベンゼンスルフィン酸を得た。固体の置換ベンゼンスルフィン酸のそれぞれをメタノールに溶解し、約10重量%の溶液を得た。次いで、沈殿物が形成するまで、脱イオン水を各溶液に一滴ずつ添加した。次いで、固体すべてが溶解するまで、十分なメタノールを溶液に添加した。表1に示すように、各メタノール水溶液をアルカリ金属水酸化物の1M水溶液で中和し、置換ベンゼンスルフィナートのアルカリ金属塩を得た。それを回転蒸発器を用いて溶媒を除去することによって単離した。そのデータを表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
調製例6〜7
置換テトラブチルアンモニウムベンゼンスルフィナートの調製
相当するアルカリ金属スルフィン酸塩から、テトラブチルアンモニウムベンゼンスルフィナートを調製した。各アルカリ金属スルフィン酸塩を脱イオン水に溶解して、0.1M溶液を生成し、それを濃硫酸で酸性化して、無色の沈殿物としてスルフィン酸を得た。各混合物を酢酸エチル中に抽出し、次いで回転蒸発器を使用して、有機溶液を蒸発させて乾燥状態にした。得られたそれぞれの固体を50%(v/v)メタノール水溶液に溶解し、この溶液を水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液で滴定した。回転蒸発器を使用して、各混合物を乾燥状態まで蒸発させて、黄色のオイルとして生成物を得た。各化合物の1Hおよび13C NMRスペクトルは、指定の構造と一致した。これらの製造の詳細および各化合物の酸化電位を表2に示す。
【0166】
【表2】

【0167】
調製例8
テトラブチルアンモニウムナフタレン−1−スルフィナートの調製
1−ナフタレンスルホニルクロリド20.0g、Na2SO333.36g、NaHCO322.24gおよび脱イオン水350mLを、丸底フラスコに装入した。混合物を攪拌し、窒素雰囲気下にて65℃に2時間加熱し、その後、混合物を室温に冷却し、次いで冷蔵庫内でさらに冷却した。冷たい混合物を濃H2SO4で酸性化し、その結果、沈殿物が形成した。その混合物を酢酸エチル100mLで3回抽出した。有機抽出物を合わせ、溶媒を回転蒸発器で除去して無色の固体が得られ、それをビーカー中の1:1(v/v)メタノール−脱イオン水240mLに直ちに溶解した。溶液のpHが7.2になるまで、40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液で溶液を滴定した。溶媒を回転蒸発器で除去し、生成物をさらに、室温にて真空オーブン内で乾燥させて、黄色の蝋質固体36.4gを得た。
【0168】
調製例9
テトラブチルアンモニウムナフタレン−2−スルフィナートの調製
2−ナフタレンスルホニルクロリド24.73g、Na2SO341.25g、NaHCO341.25gおよび脱イオン水350mLを、丸底フラスコに装入した。混合物を攪拌し、窒素雰囲気下にて65℃に2時間加熱し、その後、混合物を室温に冷却し、次いで冷蔵庫内でさらに冷却した。冷たい混合物を濃H2SO4で酸性化し、その結果、沈殿物が形成した。
【0169】
その混合物を酢酸エチル100mLで3回抽出した。有機抽出物を合わせ、溶媒を回転蒸発器で除去して無色の固体が得られ、それをビーカー中の1:1(v/v)メタノール−脱イオン水240mLに直ちに溶解した。溶液のpHが7.2になるまで、40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液で溶液を滴定した。溶媒を回転蒸発器で除去し、生成物をさらに、室温にて真空オーブン内で乾燥させて、黄色の蝋質固体46.9gを得た。
【0170】
調製例10
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの調製
機械攪拌機、温度計および乾燥管を有する還流冷却器を備えた500mL三つ口丸底フラスコに、ジフェニルスルホキシド(20.2g)およびベンゼン(200mL)を装入した。攪拌された混合物に、数回に分けてAlCl3(80.1g)を添加し、この混合物を攪拌し、加熱して、23時間還流した。次いで、反応混合物をゆっくりと室温に冷却し、ビーカー中の濃HCl水溶液(150mL)と氷との混合物にゆっくりと注いだ。次いで、この混合物を濾過し、濾液の水層を分離した。水層をベンゼン(50mL)で4回抽出した。水相を分離し、磁気攪拌子を備えたフラスコに移した。水溶液を激しく攪拌しながら、NaSbF6(28.5g)を数回に分けてフラスコに添加した。得られた沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、空気中で3日間乾燥させて、生成物14.0gを得た。
【0171】
実施例1〜2
置換ベンゼンスルフィナート塩と共にトリアリールスルホニウム塩を使用した光重合
1重量%のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートおよび調製例6または7の置換テトラブチルアンモニウムベンゼンスルフィナートのそれぞれと、SR339との2種類の異なる混合物を調製した。実施例1では、テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィナート1.1重量%を使用し、実施例2では、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート1.0重量%を使用した。GG400モデルロングパスフィルター(ニュージャージー州オークリッジのエスコ・プロダクツ社(Esco Products,Oak Ridge,NJ)から市販されている)にかけられた、100W中圧水銀ランプからの光を用いたDSC2920モデル熱量計(デラウェア州ニューキャッスルのTAインスツルメンツ社(TA Instruments,New Castle,DE)から市販されている)を使用した光示差走査熱量測定(光−DSC)によって、各試料を硬化速度および硬化度について評価した。この結果を表3に示す。
【0172】
【表3】

【0173】
比較例1
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを使用した光重合
SR339と、Ar3+SbF6-1重量%との混合物を調製した。GG400モデルロングパスフィルター(ニュージャージー州オークリッジのエスコ・プロダクツ社(Esco Products,Oak Ridge,NJ)から市販されている)にかけられた、100W中圧水銀ランプからの光を用いたDSC2920モデル熱量計(デラウェア州ニューキャッスルのTAインスツルメンツ社(TA Instruments,New Castle,DE)から市販されている)を使用した光示差走査熱量測定(光−DSC)によって、各試料を硬化速度および硬化度について評価した。この結果を表4に示す。
【0174】
【表4】

【0175】
比較例2〜3
置換テトラブチルアンモニウムベンゼンスルフィナートを使用した光重合
1.0重量%の調製例6または7のテトラブチルアンモニウムベンゼンスルフィナートそれぞれと、SR339との2種類の異なる混合物を調製した。比較例1の方法に従って、光示差走査熱量測定によって、各試料を硬化速度および硬化度について評価した。この結果を表5に示す。
【0176】
【表5】

【0177】
実施例3
広域光およびトリアリールスルホニウム塩を置換ベンゼンスルフィナート塩と共に使用した塊状光重合
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.0重量%およびテトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィナート1.0重量%と、SR339との混合物をねじ蓋バイアル内で調製した。その混合物を窒素ガスで45秒間パージし、次いでバイアルを密閉し、光源の約2cm前にバイアルを保持し、ゆっくりと攪拌することによって、100W石英−タングステン−ハロゲン(QTH)光源(フロリダ州ジャクソンビルのキューバ・ファイバーオプティックス社(Cuda Fiberoptics,Jacksonville,FL)から市販のモデルI−100)を試料に照射した。光源シャッターは完全に開いていた。硬化時間は、バイアルを攪拌するにしたがって、溶液の粘度が増加し、その結果液体がバイアル内でもはや流動しなくなる時間であるとみなした。混合物は5秒で硬化した。
【0178】
比較例4
ベンゼンスルフィナート塩を使用せず、広域光およびトリアリールスルホニウム塩を使用した塊状光重合
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.0重量%と、SR339との混合物をねじ蓋バイアル内で調製した。その混合物を窒素ガスで45秒間パージし、次いでバイアルを密閉し、実施例3に記載のように試料に照射した。硬化時間は、バイアルを攪拌するにしたがって、溶液の粘度が増加し、その結果液体がバイアル内でもはや流動しなくなる時間であるとみなした。混合物は24秒で硬化した。
【0179】
実施例4
青色光およびトリアリールスルホニウム塩を置換ベンゼンスルフィナート塩と共に使用した塊状光重合
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.0重量%およびテトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィナート1.0重量%と、SR339との混合物をねじ蓋バイアル内で調製した。その混合物を窒素ガスで45秒間パージし、次いでバイアルを密閉し、光源の約2cm前にバイアルを保持し、ゆっくりと攪拌することによって、モデル5560歯科用硬化ライト(dental curing light)(ミネソタ州セントポールの3M社(3M Company,St.Paul,MN)から市販されている)を試料に照射した。硬化時間は、バイアルを攪拌するにしたがって、溶液の粘度が増加し、その結果液体がバイアル内でもはや流動しなくなる時間であるとみなした。混合物は40秒で硬化した。
【0180】
比較例5
置換ベンゼンスルフィナート塩を使用せず、青色光およびトリアリールスルホニウム塩を使用した塊状光重合
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.0重量%と、SR339との混合物をねじ蓋バイアル内で調製した。その混合物を窒素ガスで45秒間パージし、次いでバイアルを密閉し、実施例4に記載のように試料に照射した。硬化時間は、バイアルを攪拌するにしたがって、溶液の粘度が増加し、その結果液体がバイアル内でもはや流動しなくなる時間であるとみなした。混合物は硬化しなかった。40秒後、混合物はバイアル内でまだ流動した。
【0181】
実施例5
トリアリールスルホニウム4−シアノベンゼンスルフィナートの調製
回転蒸発器を使用し、次いで真空オーブンを使用して、市販のトリアリールスルホニウムクロリドの水溶液を乾燥させた。乾燥トリアリールスルホニウムクロリド(1.0g)と無水エタノール(10mL)との混合物を40℃で1時間磁気攪拌した。次いで、ガラス濾過漏斗において、濾過助剤(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee WI)から商品名セライト(CELITE)として市販されている)のパッドを通して、その混合物を濾過した。無水エタノール(10mL)中のナトリウム4−シアノベンゼンスルフィナート(0.52g)の溶液を濾液に添加し、この混合物を室温で1時間、磁気攪拌した。混合物を濾過し、回転蒸発器を使用して、溶媒を除去した。残渣を塩化メチレンに溶解し、この溶液を濾過した。回転蒸発器を使用して、溶媒を除去し、吸湿性の固体として生成物1.54gを得た。
【0182】
実施例6〜7
トリアリールスルホニウム4−シアノベンゼンスルフィナートを使用した光重合
1重量%のトリアリールスルホニウム4−シアノベンゼンスルフィナートそれぞれと、SR339との2つの個々の混合物を調製した。フィルターにかけられていない、または表3のデータに従ってGG400モデルロングパスフィルター(ニュージャージー州オークリッジのエスコ・プロダクツ社(Esco Products,Oak Ridge,NJ)から市販されている)にかけられた、100W中圧水銀ランプからの光を用いたDSC2920モデル熱量計(デラウェア州ニューキャッスルのTAインスツルメンツ社(TA Instruments,New Castle,DE)から市販されている)を使用した光示差走査熱量測定(光−DSC)によって、各試料を硬化速度および硬化度について評価した。この結果を表3に示す。
【0183】
【表6】

【0184】
実施例8
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびテトラブチルアンモニウムナフタレン−1−スルフィナートを使用した塊状光重合
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート1.0重量%およびテトラブチルアンモニウムナフタレン−1−スルフィナート1.0重量%と、SR238との混合物をねじ蓋バイアル内で調製した。その溶液を窒素ガスで45秒間パージし、次いでバイアルを密閉し、実施例4に記載のように試料を照射した。混合物は6秒で硬化した。
【0185】
実施例9
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびテトラブチルアンモニウムナフタレン−2−スルフィナートを使用した塊状光重合
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート1.0重量%およびテトラブチルアンモニウムナフタレン−2−スルフィナート1.0重量%と、SR238との混合物をねじ蓋バイアル内で調製した。その溶液を窒素ガスで45秒間パージし、次いでバイアルを密閉し、実施例4に記載のように試料を照射した。混合物は7秒で硬化した。
【0186】
実施例10〜13
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびテトラブチルアンモニウムナフタレンスルフィナートを使用した光重合
1重量%の炭酸プロピレンそれぞれ、および調製例8または9の1重量%のナフタレンスルフィナートそれぞれと、SR339との4つの個々の混合物を調製した。実施例10および11については、トリフェニルスルホニウムナフタレン−1−スルフィナートを使用し、実施例12および13では、トリフェニルスルホニウムナフタレン−2−スルフィナートを使用した。実施例6〜7の方法を使用して、光示差走査熱量測定(光−DSC)によって、各試料を硬化速度および硬化度について評価した。この結果を表4に示す。
【0187】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、Ar1が、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールであり、前記置換Ar1が、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有する)のアニオンを有し、かつ少なくとも1つの炭素原子および正に荷電した窒素原子または正に荷電したリン原子のいずれかを含有するカチオンを有する、アリールスルフィン酸塩;および
トリアリールスルホニウム塩;
を含む組成物。
【請求項2】
アリールスルフィン酸塩の前記Ar1基が、アントリル、ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、フェナントレニル、ペリレニル、アントラセニル、アントラキノニル、アントロニル、ビフェニル、テルフェニル、9,10−ジヒドロアントラセニル、またはフルオレニルであり、前記Ar1基が、非置換であるか、あるいは電子吸引基で、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基で置換される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アリールスルフィン酸塩の前記Ar1基が、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾメルカプトフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、フタラジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、フェナジニル、フェナントリジニル、アクリジニル、またはインダゾリルであり、前記Ar1基が、非置換であるか、あるいは電子吸引基で、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基で置換される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アリールスルフィン酸塩の前記Ar1基が、置換フェニル、非置換もしくは置換ナフチル、または非置換もしくは置換アントラキノニルであり、前記置換Ar1基が、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
アリールスルフィン酸塩の前記Ar1基が、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基で置換されたフェニルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
アリールスルフィン酸塩の前記アニオンが、4−クロロベンゼンスルフィナート、4−シアノベンゼンスルフィナート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、1−アントラキノンスルフィナート、1−ナフタレンスルフィナート、または2−ナフタレンスルフィナートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
アリールスルフィン酸塩の前記カチオンが、正に荷電した窒素原子を有する4〜12員複素環式基を含む環構造であり、前記複素環が、飽和または不飽和であり、かつ酸素、硫黄、窒素、またはその組み合わせから選択される3個までのヘテロ原子を有し、前記環構造が、非置換であるか、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはその組み合わせから選択される置換基で置換される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記複素環式基が、二環式である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記複素環式基が、飽和または不飽和であり、かつヘテロ原子0〜3個を有する環式または二環式基に縮合する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記複素環式基が、ヘテロ原子0〜3個を有する芳香族環に縮合する、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
アリールスルフィン酸塩の前記カチオンが、式II
【化2】

(式中、
1は、非置換アルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、非置換アリール、またはアルキル、ヒドロキシ、もしくはその組み合わせで置換されたアリールであり;
4がそれぞれ独立して、水素、非置換アルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、非置換アリール、またはアルキル、ヒドロキシ、もしくはその組み合わせで置換されたアリールである)のカチオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
アリールスルフィン酸塩の前記カチオンが、テトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
アリールスルフィン酸塩の前記カチオンが、式III
【化3】

(式中、R2がそれぞれ独立して、非置換アルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、非置換アリール、またはアルキル、ヒドロキシ、もしくはその組み合わせで置換されたアリールである)のカチオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
アリールスルフィン酸塩の前記アニオンが、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基で置換されたベンゼンスルフィナートであり、かつアリールスルフィン酸塩の前記カチオンが、テトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記アリールスルフィン酸塩が、テトラブチルアンモニウム4−クロロベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム1−ナフタレンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム2−ナフタレンスルフィナート、またはテトラブチルアンモニウム1−アントラキノンスルフィナートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記アリールスルフィン酸塩が、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナートまたはテトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィナートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記トリアリールスルホニウム塩が、式V
【化4】

(式中、
Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり、各置換基は、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有し;
Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;
pは、1以上の整数であり;
mは、0または1に等しい整数である)によるカチオンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記トリアリールスルホニウム塩が、AsF6-、SbF6-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、HC(SO2CF32-、C(SO2CF33-、N(SO2CF32-、テトラフェニルホウ酸塩、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、およびテトラ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ホウ酸塩、p−トルエンスルホネート、またはその組み合わせから選択されるアニオンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記トリアリールスルホニウム塩が、非置換であるか、またはアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択される1つまたは複数の置換基で置換された、
【化5】

またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記トリアリールスルホニウム塩が、非置換であるか、またはアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択される1つまたは複数の置換基で置換された、
【化6】

またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記トリアリールスルホニウム塩が、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルナフチルスルホニウム、トリトリルスルホニウム、アニシルジフェニルスルホニウム、4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−クロロフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−フェノキシフェニル)スルホニウム、4−アセトニルフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−チオメトキシフェニル)スルホニウム、または4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムから選択されるカチオンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
エチレン性不飽和モノマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記エチレン性不飽和モノマーが、モノアクリレート、モノメタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはその組み合わせを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記アリールスルフィン酸塩が、銀/硝酸銀参照電極に対して、N,N−ジメチルホルムアミドにおける酸化電位0.0〜+0.4ボルトを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
エチレン性不飽和モノマーと、式I
【化7】

(式中、Ar1は、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールであり、前記置換Ar1が、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有する)のアニオン;および
トリアリールスルホニウムカチオン;を含むトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩と、を含む組成物。
【請求項26】
前記トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩が、式V
【化8】

(式中、
Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり、各置換基は、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有し;
Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;
pは、1以上の整数であり;
mは、0または1に等しい整数である)によるカチオンを有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩の前記アニオンのAr1基が、置換フェニル、非置換もしくは置換ナフチル、または非置換もしくは置換アントラキノニルであり、前記置換Ar1基が、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記トリアリールスルホニウム塩が、非置換であるか、またはアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択される1つまたは複数の置換基で置換された、
【化9】

またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
光重合性組成物がゲル化または硬化するまで、光重合性組成物に化学線を照射することを含む、光重合方法であって、前記光重合性組成物が:
エチレン性不飽和モノマー;
式I
【化10】

(式中、Ar1が、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールであり、前記置換Ar1が、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有する)のアニオンを有し、かつ少なくとも1つの炭素原子および正に荷電した窒素原子または正に荷電したリン原子のいずれかを含有するカチオンを有するアリールスルフィン酸塩;
トリアリールスルホニウム塩;
を含む、光重合方法。
【請求項30】
前記化学線が、250〜1000ナノメートルの範囲である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化学線が、250〜850ナノメートルの範囲である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記アリールスルフィン酸塩が、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基で置換されたベンゼンスルフィナートであるアニオンを有し、かつアリールスルフィン酸塩の前記カチオンが、テトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
アリールスルフィン酸塩の前記Ar1基が、非置換であるか、あるいは電子吸引基で、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基で置換されたナフチルまたはアントラキノニルである、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記アリールスルフィン酸塩が、テトラアルキルアンモニウムイオンであるカチオンを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記トリアリールスルホニウム塩が、式V
【化11】

(式中、
Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり、各置換基は、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有し;
Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;
pは、1以上の整数であり;
mは、0または1に等しい整数である)によるカチオンを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記トリアリールスルホニウム塩が、非置換であるか、あるいはアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択される1つまたは複数の置換基で置換された、
【化12】

またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記トリアリールスルホニウム塩が、AsF6-、SbF6-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、HC(SO2CF32-、C(SO2CF33-、N(SO2CF32-、テトラフェニルホウ酸塩、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、およびテトラ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ホウ酸塩、p−トルエンスルホネート、またはその組み合わせから選択されるアニオンを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
光重合性組成物がゲル化または硬化するまで、光重合性組成物に化学線を照射することを含む、光重合方法であって、前記光重合性組成物が:
エチレン性不飽和モノマー;
式I
【化13】

(式中、Ar1が、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールであり、前記置換Ar1が、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有する)のアニオンを有し、かつトリアリールスルホニウムイオンであるカチオンを有するアリールスルフィナートトリアリールスルホニウム塩;
を含む、光重合方法。
【請求項39】
トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩の前記カチオンが、
式V
【化14】

(式中、
Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり、各置換基が、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有し;
Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;
pは、1以上の整数であり;
mは、0または1に等しい整数である)によるカチオンを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
トリアリールスルホニウムアリールスルフィナートの前記カチオンが、非置換であるか、あるいはアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択される1つまたは複数の置換基で置換された、
【化15】

またはその組み合わせから選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩が、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基で置換されたベンゼンスルフィナートであるアニオンを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩のAr1基が、非置換であるか、あるいは電子吸引基で、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基で置換されたナフチルまたはアントラキノニルである、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
式I
【化16】

(式中、Ar1が、置換フェニル、非置換もしくは置換C7-30アリール、または非置換もしくは置換C3-30ヘテロアリールであり、前記置換Ar1が、電子吸引基であるか、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基である置換基を有する)のアニオン;および
式V
【化17】

(式中、
Ar3およびAr4はそれぞれ独立して、非置換であるか、または1つまたは複数の置換基で置換されたC6-30アリールまたはC3-30ヘテロアリールであり、各置換基は、30個までの炭素原子およびN、S、O、P、As、Si、Sb、B、またはGeから選択される10個までのヘテロ原子を有し;
Lは、単結合、オキソ、チオ、スルフィニル、カルボニル、スルホニル、メチレン、またはイミノから選択される二価結合基であり;
pは、1以上の整数であり;
mは、0または1に等しい整数である)によるカチオン;
を含む、トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩。
【請求項44】
アリールスルフィン酸塩の前記Ar1基が、置換フェニル、非置換もしくは置換ナフチル、または非置換もしくは置換アントラキノニルであり、前記Ar1が、電子吸引基、または電子供与基と結合した状態の電子吸引基を有する、請求項43に記載のトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩。
【請求項45】
アリールスルフィン酸アニオンの前記Ar1基が、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、パーフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはその組み合わせから選択される電子吸引基で置換されたフェニルである、請求項43に記載のトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩。
【請求項46】
前記トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩が、4−クロロベンゼンスルフィナート、4−シアノベンゼンスルフィナート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、1−アントラキノンスルフィナート、1−ナフタレンスルフィナート、または2−ナフタレンスルフィナートから選択されるアニオンを有する、請求項43に記載のトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩。
【請求項47】
前記トリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩が、非置換であるか、あるいはアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキル、アルケニル、アリール、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニルアミド、アルキルカルボニルアミド、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホンアミド、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アルキルスルファミル、N−アリールスルファミル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルキルスルホニル、アゾ、ボリル、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ジアリールアルシノ、ジアリールスチビノ、トリアルキルゲルマノ、トリアルキルシロキシ、またはその組み合わせから選択される1つまたは複数の置換基で置換された、
【化18】

またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する、請求項43に記載のトリアリールスルホニウムアリールスルフィン酸塩。

【公表番号】特表2007−506836(P2007−506836A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527986(P2006−527986)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/025281
【国際公開番号】WO2005/034885
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】