説明

トリグリセリド及びコレステロールの蓄積に結びつけられる疾病の治療方法

本発明は、組織及び血液中のトリグリセリドの蓄積に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は非ヒト動物の組織及び血液中のトリグリセリド及びコレステロールの蓄積に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、肥満状態を有する又は顕在肥満状態への危険を有するヒト又は非ヒト動物における体脂肪量の減少のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高脂血症及び肥満は、西洋社会の人々のますます増える割合を悩まし、且つ冠状動脈性心臓病、肝臓の脂肪症(すなわち、脂肪肝)及び2型糖尿病(すなわち、非インスリン依存性糖尿病; NIDDM)の臨床的症状を結局もたらしうる。
【0004】
肥満に関して、それは、減少した寿命及び多数の医学的問題に関連付けられている慢性病である。特に、肥満は、インスリン耐性、2型糖尿病、肝臓の脂肪症、高脂血症(血漿トリグリセリド、コレステロール及び遊離脂肪酸の高い濃度を含む)、胆石症、高血圧症及び他の心循環器疾患の危険を増加させる。
【0005】
2型糖尿病は、世界的におよそ1億5000万人に影響する益々一般的な状態である。それは、十分に機能を果たさないインスリン作用及び分泌に起因する不均質且つ進行性の状態である。2型糖尿病の病因におけるその重要な役割に加えて、肥満によって悪化するインスリン抵抗性がまた、増加した心血管危険及び高血圧症に関連付けられる。それはまた、高められたトリグリセリド、量的に正常であるが小型で、比重が重い低密度リポタンパク質(small, dense LDL)粒子、及び比重が低い高密度リポタンパク質(low HDL)コレステロール濃度によって特徴付けられる異常脂肪血症(dyslipemia)に関連付けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、脂質及び炭水化物に富む食事によって引き起こされる体脂肪量の増加を効率的に減少させる又は阻害する、肥満のための治療を提供することが本発明の1つの目的である。
【0007】
肥満を防止すること、及び一旦治療が始められると、肥満の結果である又は2次的である疾病、例えばインスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝、脂肪性肝炎及び心循環器疾患の進行を防ぐこと又は開始を停止することが本発明の更なる別の目的である。
【0008】
従って、インスリンに対する抵抗性を効率的に緩和する又は感受性を取り戻す、2型糖尿病のための治療を提供することが本発明の別の目的である。
【0009】
本発明の別の目的は、アディポネクチンの血中濃度を増加させることである。
【0010】
含脂肪細胞によって分泌されるアディポネクチンは、インスリン感作ホルモンであり、その血液濃度は、肥満並びに2型糖尿病及びインスリン抵抗性において減少する。げっ歯動物における組み換えアディポネクチンの投与が、筋肉におけるグルコース取り込み及び脂肪酸化を増加させ、肝臓における肝臓のグルコース生産を減少させ、及び全身インスリン抵抗性を改善したことが観察された。しかしながら、正確な受容体及び信号システムは未知である(Heilbronn等, 2003年,Curr Pharm Des, 第9巻:第1411〜8頁)。
【0011】
他の点では、肥満状態に結びつけられている又は結びつけられていない身体における脂肪(血液中のトリグリセリド及びコレステロールを含む)の過剰が、心循環器疾患、例えば狭心症、心筋梗塞症及び高血圧症のための危険因子であることが知られている。高血圧症は、様々な、不快な且つ危険な副作用を有することができ、及びそれは、冠状動脈性心臓病に関して主な危険因子と考えられている。高血圧症に原因がある特定の病気は、心不全、心筋梗塞症、脳における血管の破裂又は血栓、及び腎臓障害を含む。
【0012】
従って、体脂肪の濃度、特に血液中の脂質を低下させるための治療、及び/又はコレステロール及びトリグリセリドの高い血中濃度による危険にある人々における予防手段を提供することが本発明のまた別の目的である。
【0013】
コレステロール及び他の脂質は、リポタンパク質と呼ばれる円形の粒子の形で血流を介して輸送される。コレステロールの輸送において意味される2つの最も一般的に知られているリポタンパク質は、低密度リポタンパク質(LDL)及び高密度リポタンパク質(HDL)である。
【0014】
LDLコレステロールは、「悪い」コレステロールと一般に呼ばれている。それは、血管壁上にコレステロールを沈殿させることによってアテローム性動脈硬化症プラークの形成に寄与しうる。HDLコレステロールは、「良い」コレステロールと一般に呼ばれており、そして逆のコレステロール輸送(すなわち、肝臓への輸送のために、周辺組織からコレステロールを除去する)を助けることよって、アテローム性動脈硬化症プラークの形成を防止する脂質の一種である。
【0015】
それ故に、HDLコレステロールに有利にコレステロールの血中濃度をバランスさせることは興味がある。これは、HDLコレステロールよりもLDLを減少させること(コレステロールの総量の減少を生じる)、又はLDL及びHDLコレステロールを減少させるがHDLコレステロールに有利にバランスさせること(すなわち、LDLがHDLよりも減少する)のいずれかによって達成されうる。これはまた、LDLコレステロールよりもHDLコレステロールを増加させること、又はHDL及びLDLコレステロールを増加させるがHDLコレステロールに有利にバランスさせること(すなわち、HDLがLDLよりも増加する)のいずれかによって達成されうる。
【0016】
ヒト又は非ヒト動物におけるHDLコレステロール不足のコレステロールの血中濃度の不均衡に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための方法を提供することがまた本発明の目的である。
【0017】
すなわち、β-アミノイソ酪酸を用いた長期間の治療は、HDLコレステロールへのコレステロールの血中濃度のバランスを与えることが観察された。
【0018】
肝臓における脂肪の蓄積(すなわち、肝臓の脂肪症、肝脂肪とも呼ばれる)は、様々な機構、例えば脂肪組織からの脂肪酸の過剰な可動化、肝臓の脂肪酸の減少した酸化、脂肪酸及びトリグリセリドの増加した合成、並びに肝臓からのリポタンパク質の減少した流出によって引き起こされうる(Fromenty B., Pessayre D., 1995 年,Pharmacol. Ther. 第67巻:第101〜154頁)。種々のメカニズムが同じ個体に共存しうることは注目に値する。
【0019】
肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び異常脂肪血漿(高脂血症を含む)は、主として肝細胞におけるトリグリセリドの蓄積であるマクロ液胞(macrovacuolar)脂肪症を引き起こしうる。長期(すなわち、数年以上)で、脂肪症は、脂肪性肝炎及び肝硬変に発展しうる。脂肪性肝炎は、脂肪症(マクロ液胞及び微小空胞の両方)、壊死(又はアポトーシス)、炎症及び線維症の組み合わせによって特徴づけられる。脂肪性肝炎は、肝硬変、肝不全、肝細胞癌、及び患者の死に結びつきうる潜在的に厳しい肝疾患である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ベータ-アミノイソ酪酸(β-アミノイソ酪酸、「BAIBA」とも呼ばれる)は、肥満の(ob/ob)及び痩せた(スイス)マウスの脂質ホメオスタシスに対する有益な効果を示すことがいま見つけられた。
【0021】
特に、β-アミノイソ酪酸を用いて治療された痩せたマウスにおける給餌実験において、特に6週間において、該結果は、β-アミノイソ酪酸が標準の食餌又は西洋型(高カロリーの)食餌を給餌されたスイスマウスにおける体脂肪量の増加を減少させることを示す。これら実験において、β-アミノイソ酪酸が、標準の食餌を給餌されたマウスにおいて55%だけ、及び高カロリーの食餌を給餌されたマウスにおいて20%だけ体脂肪量の増加を有意に減少させる。これは、β-アミノイソ酪酸を肥満の治療及び/又は予防のための効き目のある活性な剤にする。
【0022】
さらに、β-アミノイソ酪酸は、肝臓トリグリセリドを減少させ、並びに高トリグリセリド血症及び高コレステロール血症を減少させるために有効であることが示された。この観点で、β-アミノイソ酪酸が、肝臓における脂肪酸のミトコンドリアのベータ酸化を増加させることが最初に観察された。特に、β-アミノイソ酪酸は、高カロリーの食餌を給餌されたマウスにおける肝臓及び血漿トリグリセリドを減少させ、並びに標準の食餌を給餌された遺伝的に肥満のob/obマウスにおける肝臓トリグリセリド及び血漿リン脂質及びコレステロールを減少させることが観察された。
【0023】
β-アミノイソ酪酸(BAIBA)は、肥満の(ob/ob)マウスにおけるインスリン抵抗性に対する有益な効果を示すことがまた見つけられた。
【0024】
6週間、β-アミノイソ酪酸で治療された肥満のマウスにおける給餌実験の組では、結果は、β-アミノイソ酪酸が標準の食餌を給餌された肥満のマウスにおけるインスリン抵抗性を部分的に緩和することを示した。それら実験では、β-アミノイソ酪酸は、約20%だけグルコース血漿濃度及び約35%だけインスリン血漿濃度を減少させる傾向があった。その上、実験の他の組では、肥満のマウスにおけるβ-アミノイソ酪酸の投与が、約35%だけアディポネクチンの血漿濃度を有意に増加させたことが示された。要するに、ob/obマウスにおいて得られたデータは、β-アミノイソ酪酸の投与が血漿グルコース及びインスリンを減少させる傾向があり、及び治療の6週間後に、血漿アディポネクチンを増加させる傾向があったことを示す。げっ歯動物及びヒトにおいて、増加した血漿アディポネクチンが、増加したインスリン感受性と関連付けられていることは注目に値する(Berg A. H., Combs T. P. and Scherer P. E., 2002年, Trends in Endocrinology & Metabolism 第13巻: 第84〜89頁)。
【0025】
すべてのこれら結果は、下記の実験の部においてより正確に示される。
【0026】
従って、β-アミノイソ酪酸は、高脂血漿の状態の治療に特に有用であるよう思われ、及びコレステロール及びトリグリセリドの高い血中濃度による危険を有する、及び/又は組織及び血液中のトリグリセリド及びコレステロールの蓄積に結びつけられる何らかの型の疾病に病む人々における予防措置として使用されうる。
【0027】
従って、本発明は、組織及び血液中のトリグリセリド及びコレステロールの蓄積に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0028】
より特には、本発明は、コレステロール及び/又はトリグリセリドの血中濃度を低下させるための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0029】
本発明はまた、組織及び血液中のHDLコレステロール不足のコレステロールの不均衡に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0030】
特に、本発明は、HDLコレステロールに有利に総コレステロールの血液及び/又は組織をバランスさせるための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0031】
疾病は、高脂血症(すなわち、高トリグリセリド血症及び/又は高コレステロール血症)、肝臓の脂肪症、脂肪性肝炎及び関連する肝臓疾病、インスリン抵抗性、2型糖尿病、シンドロームX(すなわち、代謝シンドローム)、高血圧症、狭心症及び心筋梗塞症でありうる。語「代謝症候群」は、なかんずく高血糖症、中心性肥満(すなわち、内臓脂肪の蓄積)、肝臓の脂肪症、異常脂肪血漿及び/又は高血圧症によって特徴づけられる。
【0032】
本発明のさらなる観点は、体脂肪の増加の減少又は阻害のための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0033】
本発明の他の観点は、トリグリセリドの肝臓濃度を低下させるための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0034】
本発明のさらなる観点は、肥満状態の治療又は予防のための方法であって、前記方法が、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0035】
本発明はまた、インスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0036】
特に、本発明は、2型糖尿病状態及び関連する血管疾患の治療又は予防のための方法であって、前記方法は、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0037】
本発明の他の観点は、インスリン及び/又はグルコースの血中濃度を低下させるための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0038】
他の観点では、本発明は、アディポネクチンの血中濃度を増加させるため治療の方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0039】
β-アミノイソ酪酸は、チミン及びバリン代謝の間に生成される天然のβ-アミノ酸であり、及びまた、メチルマロン酸セミアルデヒド、プロピオニルコエンザイムA、メチルマロニルコエンザイムA及びスクシニルコエンザイムAのような代謝物において主に肝臓及び胃腸の組織によってイン ビボ(in vivo)で代謝される(Griffith O. W., 1986年, Annu. Rev. Biochem. 第55巻:第855〜878頁)。
【0040】
β-アミノイソ酪酸は活性な剤として直接的に使用されてよく、又はそのプロドラッグ(例えばチミンのような)又はその中間代謝物の一つの投与後にイン ビボ(in vivo)で生成されうる。
【0041】
本発明はまた、β-アミノイソ酪酸の誘導体の使用に及ぶ。
【0042】
語「誘導体」は、β-アミノイソ酪酸の無機若しくは有機塩、エステル又はアミドを含む。
【0043】
β-アミノイソ酪酸の末端カルボキシル基は、特に、エステル、例えば低級のアルキルエステル(特に、C〜C10)の又はアミドの形でありうる。
【0044】
より一般的に、その塩は、例えばアセテートのようなカルボキシルの有機酸との付加塩だけでなく、例えばトリフルオロ酢酸のような他の付加塩、並びに無機酸との付加塩、例えばサルフェート、塩酸塩などを含む。該誘導体はまた、カルボキシル基の唾液分泌に起因する塩、及び特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、例えばナトリウムの又はカルシウムの塩を含む。
【0045】
本発明の観点では、語「代謝物」は、BAIBAの代謝に起因する任意の物質であると考えられる。
【0046】
本発明の観点では、語「プロドラッグ」は、BAIBAの薬理的に活性な状態を生じる任意の物質(しかしながら、それ自身活性でない)を言うと意図される。しかしながら、それは特に、「プロドラッグ」の定義から、アミノ酸残基としてBAIBAを含む任意のペプチド又はBAIBAと非ペプチド物体、例えばヒスタミンとのカップリングから生じる偽ペプチド(pseudopeptide)を除外する。
【0047】
特に、活性な剤は、β-アミノイソ酪酸である。それは、L(すなわち、S)若しくはD(すなわち、R)配置、又はL及びD配置の混合物でありうる。
【0048】
語「肥満」は通常、動物が異常に高い体重指数(BMI)を生じる異常に高い体脂肪量を有する状態をいう。例として、大人のヒトのBMIが30 kg/m2以上である場合、彼らは肥満と考えられる。
【0049】
肥満に関して、語「治療」は、疾病の重大さの減少(例えば、体脂肪量を減少することによって)をいう。体脂肪量は、生命体における脂質の総量をいう。これら脂質は、トリグリセリド、遊離脂肪酸、コレステロール及びコレステロールエステル並びにリン脂質を含む。
【0050】
肥満に関して、語「予防」は、肥満が生じることを防ぐこと、すなわちβ-アミノイソ酪酸が、肥満状態の開始前に投与されることをいう。これは、本発明の化合物が、体脂肪の増加を妨げるために、予防剤として使用されうることを意味する。
【0051】
語「2型糖尿病」は通常、体内インスリンが有効に作用しないときに生じる慢性の、一生の疾病をいう。この疾病は、インスリン抵抗性に関連し、及び肥満及び高コレステロールをしばしば伴う。
【0052】
2型糖尿病に関して、語「インスリン抵抗性」は、インスリン刺激されたグルコース輸送における欠陥をいう。
【0053】
2型糖尿病に関して、語「予防」は、2型糖尿病が生じるのを防ぐこと、すなわちβ-アミノイソ酪酸が、2型糖尿病状態の開始に先立って投与されることをいう。これは、本発明の化合物がインスリンに対する抵抗性を妨害するために、予防剤として使用されうることを意味する。
【0054】
語「動物」は、哺乳動物、例えばヒト及び農場(農業)動物、特に、経済的に重要な動物、例えば家禽類の鳥、牛、羊、山羊及び豚哺乳動物、特にヒトの消費に適した製品、例えば肉、卵及び乳を生産するそれらを含む。さらに、該語は、魚及び貝、例えば鮭、鱈、テラピア、クラム(clam)及びオイスターを含む。該語はまた、家畜、例えば犬及び猫を含む。該語はまた、げっ歯動物、例えばマウス、ラット、モルモット又はハムスターを含むがこれらに制限されない実験動物をいうために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
上記に示された方法に従い、好ましい実施態様は以下の通りである:前記動物が、ヒト、農業動物、実験動物及び/又は家畜若しくはペット動物である。
【0056】
治療は、治療上有効な量のβ-アミノイソ酪酸を、その投与の期間中にそのような治療を必要とする動物に血液中に投与することを含む。
【0057】
本発明のさらなる観点は、組織及び血液中のトリグリセリド及び/又はコレステロールの蓄積に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための医薬組成物の調製のために、治療的に有効な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体を使用する方法に関する。
【0058】
本発明のさらなる観点は、HDLコレステロール不足のコレステロールの血中及び/又は組織中濃度の不均衡に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための医薬組成物の調製のために、治療的に有効な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体を使用する方法に関する。
【0059】
本発明のさらなる観点は、インスリン及び/又はグルコースの蓄積、及び/又はアディポネクチンの減少に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のために、治療的に有効な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体を使用する方法に関する。
【0060】
本発明のさらなる観点は、インスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すために意図された医薬組成物の調製のために、治療的に有効な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体を使用する方法に関する。
【0061】
本発明のさらなる観点は、2型糖尿病の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のために、治療的に有効な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体を使用する方法に関する。
【0062】
本発明に従う医薬調製物は、より特には、高脂血症(すなわち、高トリグリセリド血症及び/又は高コレステロール血症)、肝臓の脂肪症、脂肪性肝炎、糖尿病、代謝シンドローム(シンドロームX)、高血圧症、狭心症及び心筋梗塞の治療及び/又は予防に向けられる。
【0063】
本発明のさらなる観点は、組織及び血液中のコレステロール及びトリグリセリドの蓄積に結びつけられる疾病の予防及び/又は治療のため特に有益な医薬組成物であって、治療的に活性な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を少なくとも含む医薬組成物に関する。
【0064】
本発明のさらなる観点は、HDLコレステロール不足のコレステロールの血中及び/又は組織中濃度の不均衡に結びつけられる疾病の予防及び/又は治療のために特に有益な医薬組成物に関する。
【0065】
本発明に従う医薬組成物は、高血圧症、脂肪肝及び代謝シンドローム及び肥満状態の治療又は予防のためにより特に有益である。
【0066】
本発明に従う医薬組成物は、2型糖尿病の治療又は予防のためにより特に有益である。
【0067】
本発明のさらなる観点は、インスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すために特に有益である医薬組成物に関する。
【0068】
本発明のさらなる観点は、インスリン及び/又はグルコースの血中濃度を低下させるために特に有益である医薬組成物に関する。
【0069】
本発明の他の観点は、アディポネクチンの血中濃度を増加させるために特に有益である医薬組成物に関する。
【0070】
好ましくは、該医薬組成物が、β-アミノイソ酪酸と医薬的に許容可能な担体又は賦形剤との混合物を含む。
【0071】
本発明はまた、栄養的な活性剤として、ヒト又は非ヒト動物における全身脂肪量の増加を減少するために又は防止するために有効なβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の量を含む栄養組成物、並びに脂肪量の減少を必要とするヒト又は非ヒト動物において脂肪量の減少を生み出すための方法であって、前記栄養組成物の有効量をそれらに投与することを含む方法に関する。
【0072】
本発明の他の観点は、インスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すために有効なβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の量を、栄養的な活性剤として含む栄養組成物、並びにインスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すことを必要とするヒト又は非ヒト動物においてインスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すための方法であって、前記栄養組成物の有効量をそれらに投与することを含む方法に関する。
【0073】
本発明の他の観点は、HDLコレステロールに有利にコレステロールの血中及び/又は組織中濃度をバランスさせるために有効なβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の量を、栄養的な活性剤として含む栄養組成物、並びにHDLコレステロールに有利に血液及び/又は組織コレステロールをバランスさせることを必要とするヒト又は非ヒト動物においてHDLコレステロールに有利に血液及び/又は組織コレステロールをバランスさせるための方法であって、前記栄養組成物の有効量をそれらに投与することを含む方法に関する。
【0074】
該栄養組成物は、任意の食品組成物であってよい。特に、それは、飲料、又はそのような飲料を生成するために戻されうる粉末であってよい。それは、ビタミン、安定剤、酸化防止剤、乳化剤、風味剤のような他の栄養成分を含んでよい。
【0075】
好ましい実施態様は、動物が肥満状態にすでになっている、又は低エネルギーに適応されている状態に関する。
【0076】
語「低エネルギーに適応されている」は、動物が低いエネルギー消費を有する、すなわち通常よりも低いエネルギー消費の状態をいう。
【0077】
医薬品として、本発明の化合物は、非経口的、鼻腔内的、経口的を含む任意の適切な技術によって又は皮膚を介する吸収によって、動物に直接的に投与されてよい。それらは、局所的に又は全身的に投与されうる。各剤の投与の特定の経路は、例えば動物の病歴に依存するだろう。
【0078】
非経口的な投与の例は、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内及び腹腔内の投与を含む。
【0079】
語「有効な量」は、予期された効果、すなわち組織及び血液中のトリグリセリド及び/又はコレステロールの濃度に対する低減効果、及び/又はHDLコレステロールに有利にコレステロールの血中濃度のバランスを保つ効果;及び/又は血液中のインスリン及び/又はグルコースの減少;及び/又は血液中のアディポネクチンの増加を観察するために必要な最小量を意味する。
【0080】
特に、それは、患者体重の約5 mg/kg/日〜1000 mg/kg/日、特に約50 mg/kg/日〜500 mg/kg/日の範囲でありうる。
【0081】
一般に、配合は、本発明の該化合物夫々を均一に及び緊密に、液体担体若しくは細かく分けられた固体担体又は両方に接触させることによって調製される。
【0082】
さらに、本発明の化合物は、本発明に従い考えられる疾病及び/又は肥満を治療する又は予防するための他の治療と組み合わせて適切に投与されてよい。
【0083】
本発明は、下記実施例への参照によってより十分に理解されうるだろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を制限することによって構成されるべきでない。
【0084】
図1は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌され、そしてDEXA測定(すなわち、治療の開始後、2及び6週間)の前に48時間断食されたスイスマウスにおける体脂肪量に対するBAIBAの効果を示す。結果が、対照値のパーセントとして表される。アスタリスク()は、グループの間の有意差(p<0.01)を示す。
【0085】
図2は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウス(各グループに8匹)における体脂肪量(DEXAによって評価された)の増加に対するBAIBAの効果を示す。試験の全期間(T0〜T6週間)について観察された変化がまた示される。結果が、グラムで表される。アスタリスク()は、グループの間の有意差(p<0.01)を示す。
【0086】
図3は、西洋型食餌(WD)を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウス(各グループに8匹)における体脂肪量(DEXAによって評価された)の増加に対するBAIBAの効果を示す。比較のために、該実験は、標準の食餌(SD)を給餌されたマウスのグループ(n=8)を含んだ。試験の全期間(T0〜T6週間)について観察された変化がまた示される。結果が、グラムで表される。アスタリスク()は、対照-WD及びBAIBA-WDマウスの間の有意差(p<0.01)を示す。
【0087】
図4は、西洋型食餌(WD)を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウスにおける肝臓脂質に対するBAIBAの効果を示す。比較のために、該実験は、標準の食餌(SD)を給餌されたマウスのグループを含んだ。この実験におけるマウスは、図3において研究されたそれらであり、しかし最後のDEXA測定後(すなわち、6週間後)、動物は48時間断食され、そして肝臓の脂質測定のために殺された。総脂質(mg/全肝臓)及びトリグリセリド(mg/全肝臓)が、対照-SD、対照-WD及びBAIBA-WDマウスにおいて、夫々7、8及び8匹のマウスで測定された。アスタリスク()は、対照-WD及びBAIBA-WDマウスの間の有意差(p<0.05)を示す。
【0088】
図5は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて(10匹のマウス)又は用いないで(7匹のマウス)給餌された肥満の(ob/ob)マウスにおける肝臓トリグリセリドに対するBAIBAの効果を示す。6週間の実験後、動物は、48時間断食され、そして肝臓の脂質測定のために殺された。結果が、mg/全肝臓、及びmg/脂質gとして表される。アスタリスク()は、対照マウス及びBAIBAを受けとるマウスの間の有意差(p<0.01)を示す。
【0089】
図6は、西洋型食餌(WD)を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウスにおける血漿脂質に対するBAIBAの効果を示す。比較のために、該実験は、標準の食餌(SD)を給餌されたマウスのグループを含んだ。この実験におけるマウスは、図3及び図4において研究されたそれらである(すなわち、治療及び最後のDEXA測定の6週間後、肝臓の脂質測定のために殺される前に、断食されたマウスにおいて、血液が集められた)。血漿トリグリセリド(TG)、リン脂質(Ph.L)、総コレステロール(Chol)及びエステル化されていない脂肪酸(NEFA)が、各グループ(対照-SD、対照-WD及びBAIBA-WD)の8匹のマウスにおいて測定された。
【0090】
図7は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて(10匹のマウス)又は用いないで(7匹のマウス)給餌された遺伝的に肥満の(ob/ob)マウスにおける血漿脂質に対するBAIBAの効果を示す。6週間後、マウスは、48時間断食され、そして血液が、血漿トリグリセリド(TG)、リン脂質(Ph. L)及び総コレステロール(Chol)の測定のために集められた。この実験におけるマウスは、図5において研究されたそれらである。アスタリスク()は、対照ob/obマウス及びBAIBAを受けたob/obマウスの間の有意差(p<0.05)を示す。
【0091】
材料及び方法
28及び32グラムの重さである、6〜8週齢の雄(Crl:CD-l(ICR)BR)スイスマウス及び6〜10週齢の雄RjOrlスイスマウス(すなわち、やせたマウス)が、Depre(Saint Doulchard、フランス)から購入された。40〜44グラムの重さである10〜12週齢のob/ob雄(C57BL/6-ob)マウス(すなわち、肥満のマウス)が、Janvier(Le-Genest-St-Isle、フランス)から購入された。1つの実験では、25〜26グラムの重さであるより若いob/obマウス(5〜6週齢)がまた試験された。遺伝学的に肥満のob/obマウスにおいて、レプチンの遺伝子上の変異がこのホルモンの正常な生産を妨げ、従って食欲を増加させ及びエネルギー消費を減少させる(Friedman J. M., Halaas J. L., 1998年, Nature第395巻: 第763〜770頁)。従って、ob/obマウスは、厳しい(すなわち、「病的な」)肥満、重い脂肪症、インスリン抵抗性及び糖尿病を示す(Friedman and Halaas, 1998年、前を参照; Koteish A., Diehl A. M., 2001年, Semin. Liver Dis. 第21巻: 第89〜104頁)。該動物は、実験の開始の1〜2週間前に、馴化させられた。
【0092】
我々の研究では、2種類の食餌が使用された:1.3%の脂質を含み及びkg当たり2900 kcalをもたらす標準の食餌(UARからのA04食餌);2.16%の脂質を含み及びkg当たり4300 kcalをもたらす西洋型食餌(またUARから)。
【0093】
D,L-β-アミノイソ酪酸(BAIBA)が、Sigma-Aldrichから購入された。BAIBAが、本実験に従い、6週間、2ヶ月又は4ヶ月の間、100 mg/kg/日又は500 mg/kg/日の用量で飲料水中に与えられた。
【0094】
麻酔されたマウスにおける体脂肪量のイン ビボ(in vivo)測定が、「DEXA」(二重エネルギーX線吸収測定法:Dual Energy X-ray Absorptiometry)によって実行された(PietriobelliA., Formica C., Wang Z., Heymsfield S. B., 1996年, Am.J. Physiol. 第271巻 (Endocrinol. Metab. 第34巻):E941-E951))。従って、我々の研究では、体脂肪量は、DEXAによって定量される動物(その頭を除く)当たりの脂質の総量(グラムで)である。DEXAはまた、各調査された動物について、身体(頭を除く)における水及びタンパク質の総量(グラムで)であるその除脂肪量(lean mass)を与えることは注目に値する。それ故に、所与の動物について、DEXAは、その体脂肪量をその身体の除脂肪量及び脂肪量の合計で割るところの体脂肪のパーセント(脂肪量/(除脂肪量+脂肪量))の決定を可能にする。「DEXA」装置は、Lunarコーポレーション(Madison、ウィスコンシン州)からのPiximus(商標)だった。マウスは、キシラジン及びケタミンの混合物によって麻酔された。
【0095】
この研究では、2つのタイプの手順が、「DEXA」測定の時に動物の栄養状態に従い使用された:
手順1:動物が、DEXA研究の前に断食されなかった。第1のDEXA測定が、研究の開始の一日前(T0)に実行された。後に、DEXA測定が、治療の開始後、2週間(T2)及び6週間後(T6)に夫々実行された。この手順を用いて、動物の各グループにおいて、T0及びT2、並びにT2及びT6の夫々の間のいくつかのパラメーター(例えば、脂肪量、体重)の進展を決定することが可能であった。従って、これら進展の比較が、T0〜T2、T2〜T6、及びT0〜T6について実行された。
手順2:動物がDEXA測定前の48時間断食され、DEXA測定は治療を開始後の2週間(T2)及び6週間(T6)に実行された。この手順において、治療の開始前にDEXA測定が実行されていなかった。両方のグループの間の種々のパラメーター(例えば、脂肪量、体重)の比較が、T2及びT6において実行された。
【0096】
動物の肝臓における総脂質及びトリグリセリドが、(Letteron P., Fromenty B., Terris B., Degott C., Pessayre D., 1996年, J. Hepatol. 第24巻: 第200〜208頁)によって部分的に報告された手順に従い評価された。手短に言えば、動物を殺した後、肝臓が除去され、そして滅菌水中でホモジナイズされた。かくして、肝臓の脂質は、クロロホルム及びメタノール(2/1;v/v)の混合物によって抽出された。水層の除去後、有機層(脂質を含むクロロホルム)が蒸発され、そして脂質の量が重量測定によって決定された。引き続き、脂質が、イソプロパノール(最終濃度、約10 mg/mL)中で再懸濁された。水酸化アルミニウム水和物を使用することによってリン脂質を除去した後に、トリグリセリドが、過ヨウ素酸塩及びNash試薬(アセチルアセトン、酢酸アンモニウム及びイソプロパノールを含む)を使用することによって比色分析的に決定された。該反応は、分光分析(λ=410 nm)によってアッセイされるジアチルジヒドロルチジンを生成する。
【0097】
血漿脂質(トリグリセリド、総コレステロール、リン脂質)が、自動分析器(Hitachi 717(商標))で測定された。この分析器上でトリグリセリド、総コレステロール及びリン脂質を評価するために使用される市販キットは、全てbio Merieuxからであった(夫々、参照番号61238、61219及び61491)だった。血漿非エステル化脂肪酸(NEFA)が、市販キット(和光、参照番号994-75409)を使用することによって評価された。肝臓の及び血漿脂質が、48時間断食された動物における治療の6週間の最後で実行された。トリグリセリド及びHDLコレステロールがまた、(給餌された状態で)2ヶ月後、又は治療の4ヶ月後(一晩断食後)に評価された。
【0098】
血漿HDLコレステロール及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が、市販キット(Olympus Diagnostica GmbH、夫々、参照番号OSR6187及びOSR6107)を用いた自動分析器(Olympus AU400(商標))で測定された。
【0099】
血漿グルコースが、市販キット(BeckmanからのキットNO.472500)を用いた自動分析器(Beckman CoulterからのSynchron LX20)で測定された。
【0100】
血漿インスリン、アディポネクチン及びレプチンが、放射免疫測定(RIA)によって測定された。インスリンが、Cis Bio International(Gif-sur-Yvette、フランス)からのInsulin-CTキットを用いて測定され、一方血漿レプチン及びアディポネクチンが、Linco Research Inc.(St Charles、ミズーリ州)からのキットを用いて評価された。これら動物は遺伝学的にレプチン欠損である(Friedman J. M., Halaas J. L., 1998年, Nature第395巻: 第763〜770頁)故に、レプチンがob/obマウスにおいて測定されなかった。インスリンに関する結果が、キット製造者によって推奨されるように表された。
【0101】
最後に、肝臓組織学が、通常の手順に従い実行された。脂肪症及び線維症が、夫々オイルレッドO染色法及びマッソン三色染色法により評価され、一方壊死及び炎症が、HPS(ヘマトキシリン−フロキシン−サフラン)染色、又はHE(ヘマトキシリン−エオシン)染色により決定された。1つの実験では、類洞周囲(perisinusoidal)線維症が、シリウスレッド染色を用いて評価された。
【0102】
結果が、平均±SEM(平均の標準誤差)として表される。スチューデント(Student)のt-検定が、対照グループ及びBAIBAで治療されたマウスのグループについて得られた値の間の統計差を探すために使用された。この差は、p<0.05の値について統計的に有意であると考えられた。括弧の間に示された数は、実験において使用された動物の数を表わす。
【実施例1】
【0103】
体脂肪に対するBAIBAの有益な効果
a)絶食期間後の痩せたマウスにおけるBAIBAの効果
実験の第1の系では、体脂肪に対する100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)の効果が、標準の食餌(A04 chow)を給餌され且つDEXA測定前に48時間断食されたスイス(痩せた)マウスにおいて研究された。マウスは、実験の開始時に6〜8週齢であった。DEXAは、治療の開始後、2回実行された。この実験では、BAIBAが、治療の2及び6週間後に夫々、31%及び25%だけ体脂肪量を減少させた。図1の結果は下記を示す:
− 2週後、体脂肪量は、対照マウス(n=7)、BAIBAを受け取るマウス(n=7)において夫々、2.63±0.23及び1.80±0.11グラムだった;
− 6週後、体脂肪量は、対照マウス、BAIBAを受け取るマウスにおいて、夫々3.40±0.27及び2.56±0.32グラムだった。
【0104】
この実験では、体重が、治療の2及び6週間後、対照マウス及びBAIBAを受け取るマウスの間で有意に差がなかった(データは示されていない)。
【0105】
b)絶食に付されていない痩せたマウスにおけるBAIBAの効果
実験の第2の系では、我々は、100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)がDEXA測定前に絶食に付されていないスイスマウスにおいて体脂肪を減少するかどうかを決定したかった。マウスは、実験の開始時に6〜8週齢だった。この実験では、DEXAが、治療の開始一日前(T0)、その後実験の開始後2及び6週(夫々、T2及びT6)に実行された。これは、我々が各動物について、治療の種々の期間(T0〜T2、T2〜T6、及びT0〜T6)について体脂肪量の変化を決定することを可能にした。この実験では、我々は、BAIBAがスイスマウスにおいて体脂肪量の増加を減少させ、且つこの効果が治療の第2の期間(T2〜T6)においてよりはっきりされたことを見つけた。BAIBAのこの効果が、図2において提示される。それは、以下を示す:
− T0〜T2期間に亘って、対照マウス(n=8)は0.76±0.06グラムの体脂肪を増加させ、一方BAIBAを受け取るマウス(n=8)は0.56±0.12グラム増加した。
− T2〜T6期間に亘って、対照マウス(n=8)は1.10±0.07グラムの体脂肪を増加させ、一方BAIBAを受け取るマウスは0.28±0.12グラム増加した。
− 全体として、実験の全期間(T0〜T6)について、BAIBAが55%だけ脂肪量の増加を減少させ、一方対照マウス及びBAIBAを受け取るマウスが夫々1.86±0.11及び0.84±0.18グラムの脂肪量を増加した。
【0106】
この実験では、BAIBAが、6週の治療の間、体重の増加を遅くした。確かに、T0〜T6期間に亘って、BAIBAは、12%だけ体重の増加を有意に(p<0.01)減少させた。なぜならば、対照マウス及びBAIBAを受け取るマウスは、夫々10.30±0.34及び9.02±0.42グラム増加したからである。
【0107】
c)西洋型食餌を給餌された痩せたマウスにおけるBAIBAの効果
実験の第3の系では、我々は、100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)が西洋型食餌(すなわち、高カロリー食餌)を給餌されたスイスマウスにおける体脂肪量を減少することができるかどうかを決定したかった。この目的のために、若い(T0で4週齢)スイスマウスが、高カロリーの西洋型食餌(WD)を用い、飲料水中にBAIBAを用いて又は用いないで(各グループにおいて8匹のマウス)給餌された。比較のために、実験は、標準の食事(SD)を給餌されたマウスのグループ(n=8)を含んだ。DEXAが、治療の開始一日前(T0)、及びその後実験の開始後2、4及び6週(夫々、T2、T4及びT6)に実行された。これは、我々が、治療の種々の期間(T0〜T2、T2〜T4、T4〜T6、及びT0〜T6)について身体パラメータ(例えば、脂肪量、体重)の変化を各動物について決定することを可能にした。これら4つのDEXA決定(T0〜T6)について、マウスは測定前に絶食されなかった。この実験では、BAIBAが、西洋型食餌を給餌されたスイスマウスにおける体脂肪量の増加を減少させ、及びこの有益な効果が、BAIBA投与の4週目から観察された。この効果が、図3において示される。それは、以下を示す:
− T4〜T6期間の間、西洋型食餌を給餌された対照マウスは1.06±0.34グラムの体脂肪を増加させ、一方同じ食餌を給餌され且つBAIBAを受け取るマウスは0.45±0.30グラムの体脂肪を失った(有意差、p<0.05)。
− 治療の全期間(T0〜T6)を通じて、体脂肪量の増加が西洋型食餌を給餌され且つBAIBAを受け取るマウスにおいて20%だけ減少された。確かに、T0〜T6期間の間に、西洋型食餌を給餌された対照マウス(対照-WD)は体脂肪の4.88±0.83グラムを減少させ、一方同じ食餌を給餌され且つBAIBAを受け取るマウス(BAIBA-WD)は3.91±0.59グラムの体脂肪量を増加させた。比較のために、標準の食餌を給餌されたマウス(対照-SD)は、実験の全期間(T0〜T6)の間、3.18±0.34グラムの体脂肪量を増加させた。
− 治療の終了時(T6)、体脂肪量は、マウスの対照-SD、対照-WD及びBAIBA-WDグループ夫々について、4.48±0.33、6.21±0.85、及び5.25±0.60グラムだった(対照-WD及びBAIBA-WDの間で15%減少)。体脂肪のパーセント((脂肪量)/(脂肪量+除脂肪量))は、この時点で、対照-SD、対照-WD及びBAIBA-WDグループにおいて、夫々13.23±0.86、17.96±2.04、及び15.76±1.53%だった。結局は、これら結果は、西洋型食餌が6週間に亘るスイスマウスにおける体脂肪量を増加させ、及びBAIBAが体脂肪のこの異常な増加を抑制することができたことを示す。
【0108】
この実験では、BAIBAが、西洋型食餌を給餌されたマウスにおける体重を減少する傾向であった。確かに、治療の6週間後、体重は、対照マウス(対照-WD)及びBAIBAを受け取るマウス(BAIBA-WD)において、夫々37.9±1.14及び37.0±0.76グラムだった。
【0109】
最後に、我々は、絶食が体脂肪量に対するBAIBAの有益な効果を促進することができるかどうかについてまさに同じ動物で決定したかった。すなわち、第4回目のDEXA測定(すなわち、T6でのDEXA決定)後、マウスは、約2日間の麻酔から回復することを許され、次に48時間の絶食に付された。次に、最後のDEXA測定が、断食されたマウスにおいて実行された。我々の結果は、絶食がBAIBAの有益な効果を増加させなかったことを示した。確かに、絶食期間後、標準の食餌を給餌された対照マウス(対照-SD)、西洋型食餌を給餌された対照マウス(対照-WD)、及び西洋型食餌を用い且つBAIBAを受け取るマウス(BAIBA-WD)において夫々、体脂肪量が3.10±0.30、5.40±0.75、4.79±0.56グラムだった。すなわち、6週間の西洋型食餌を給餌された動物において、BAIBAが、給餌中の及び絶食された状態において夫々、体脂肪の15%及び11%パーセントだけ減少した(T6で又は数日後に測定された)。これら結果は、食餌の摂取の減少が、体脂肪に対するBAIBAの好ましい効果に対してさらに利点を与えないことを示す。絶食期間の最後で、体重は、マウスの対照-SD(n=8)、対照-WD(n=8)、及びBAIBA-WD(n=8)グループにおいて、夫々32.0±0.6、34.2±1.1、及び33.6±0.9グラムだった。
【0110】
d)遺伝的に肥満のob/obマウスにおけるBAIBAの効果
最後の実験の系では、我々は、100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)が、遺伝的に肥満のob/obマウスにおいて体脂肪量を減少させることができるかどうかを決定したかった。これら研究では、6週齢及び10〜12週齢のob/obマウスが標準の食餌を給餌され、そしてDEXA測定が治療の開始一日前(T0)に、及びその後実験の開始後2及び6週間(夫々、T2及びT6)に実行された。DEXAは、絶食マウスで実行された。我々の結果は、BAIBAがより年寄りの動物(10〜12週齢)においてのみ体脂肪に対するわずかな有益な効果を表したことを示した。確かに、これらマウスにおいて、対照マウス(n=6)及び治療されたマウス(n=6)は夫々、5.20±0.63及び4.65±0.35グラム増加した(有意的に差はない)故に、BAIBAは、治療の最初の2週間において体脂肪の11%減少を与えた。BAIBAのこの有益な効果は、T2〜T6期間の間にもはや観察されず、そして全体のT0〜T6期間の間に、対照及び治療されたマウスは夫々、体脂肪の7.43±0.51及び7.30±0.61グラムを増加した。治療の6週間の最後でob/obマウスにおける体脂肪量に対するBAIBAの制限された効果にもかかわらず、さらなる研究は、BAIBAが、研究の6週間後に肝臓トリグリセリド及び血漿コレステロールの比例したより強い減少を与えることを示すことは注目に値する(以下を参照)。
【実施例2】
【0111】
肝臓脂質に対するBAIBAの有益な効果
a)西洋型食餌を給餌された痩せたマウスにおけるBAIBAの効果
肝臓脂質が、西洋型食餌(WD)を給餌され、飲料水中の100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を受け取る又は受け取らないマウス(各グループにおいて8匹)において評価された。比較のために、実験がまた、標準の食餌(SD)を給餌されたマウスのグループ(n=8)を含んだ。これら動物は、DEXAによって体脂肪の決定のために使用されたそれらであった(上記を参照、段落I-c)が、最後のDEXA測定後(すなわち、治療の6週間後)に、マウスが、約2日間の麻酔から回復することを許され、次に48時間の絶食に付された。この断食期間の最後で、DEXAが再び実行され(上記を参照)、そして次にマウスは肝臓脂質決定のために殺された。西洋型食餌は、標準の食餌を給餌されたマウスと比較して、肝臓脂質における増加の原因だった。西洋型食餌を給餌された動物では、BAIBAが、総脂質及びトリグリセリドを24及び17%だけ夫々減少させることが分かった。この結果が図4に示され、これは、
− 肝臓脂質が、標準の食餌を給餌された対照マウス(対照-SD、7匹のマウス)、西洋型食餌を給餌された対照マウス(対照-WD、8匹のマウス)及び西洋型食餌を給餌され且つBAIBAを受け取るマウス(BAIBA-WD、8匹のマウス)において、夫々119±16、142±13及び108±7 mg/全肝臓だった;
− 肝臓トリグリセリドが、対照-SD、対照-WD及びBAIBA-WDグループにおいて、夫々36±10、40±8及び33±6 mg/全肝臓だった。総合すれば、これら結果は、西洋型食餌が研究の6週間の間に穏やかに肝臓脂質及びトリグリセリドのみを増加させるけれども、BAIBA投与は、この期間の間、肝臓における脂質蓄積を完全に妨げることができたこと
を示す。
【0112】
b)遺伝的に肥満のob/obマウスにおけるBAIBAの効果
肝臓トリグリセリドが、6週間、標準の食餌を給餌され且つ飲料水中の100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を受け取る又は受け取らないob/obマウスにおいて評価された。マウスは、実験の開始時で10週齢だった。これら動物(7匹の対照及び10匹のBAIBAで治療された)は、給餌された状態においてDEXAによる体脂肪を決定するために使用されたそれらと異なった(上記を参照、段落I−d)。治療の6週の最後で、マウスは、48時間の断食に付された。この断食期間の最後で、マウスは、肝臓トリグリセリドの評価のために殺された。肥満のob/obマウスは、肝臓中にトリグリセリドの大量の蓄積を示し、そしてBAIBAが肝臓のトリグリセリド濃度を減少させることがわかった。確かに、値が、mg/全肝臓で又はmg/脂質gで示されるとき、肝臓トリグリセリドは夫々16及び12%だけ減少された。結果が図5に提示され、これは、BAIBAが肝臓トリグリセリドの709±18から625±14 mg/脂質gまでの有意な減少(p<0.01)を与えたことを示す。肝臓のトリグリセリドの減少は緩やかであったけれども、これら結果は、BAIBAがob/obマウス、すなわち病的肥満及び重い肝臓の脂肪症のモデルにおいて幾つかの有益な効果を示すことを示唆する。
【0113】
c)治療の4ヶ月後のob/obマウスにおける肝臓組織学に対するβ-アミノイソ酪酸の効果
肝臓組織学が、標準の食餌を給餌され、飲料水中のβ-アミノイソ酪酸を受け取る(11匹のマウス)又は受け取らない(10匹のマウス)ob/obマウスにおいて最初に検査された。この実験では、マウスは、殺す前に48時間の断食、そして肝臓検査に付された。
【0114】
対照ob/obマウスの肝臓は、重大な脂肪症によって特徴づけられる。確かに、対照群では、10匹のマウスのうち8匹(80%)が、脂肪で充たされたほとんど全ての肝細胞(90〜100%の間)を有した。β-アミノイソ酪酸で治療されたグループでは、11匹のマウスのうちの3匹(27%)だけが、脂肪を抱えた肝細胞の90〜100%を有した。
【0115】
対照ob/obマウスでは、類洞周囲線維症、壊死及び炎症が、動物の夫々60、80及び80%で観察された。しかしながら、治療されたグループでは、これら病変が、動物の夫々45、63及び63%で観察された。
【0116】
この実験では、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(すなわち、肝臓傷の結果としてその血漿濃度が増加しうる酵素)が、β-アミノイソ酪酸で治療されたマウスにおいて減少されなかった。
【0117】
実験の第2の系では、肝臓組織学が、4ヶ月間、通常の投与量(100 mg/kg/日)又はより高い投与量(500 mg/kg/日)のいずれかでβ-アミノイソ酪酸で治療されたob/obマウスにおいて研究された。この実験では、肝臓検査が、犠牲前に絶食期間に付されていないマウスにおいて実行された。研究された動物の数は、対照グループにおいて並びに100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸で治療されたグループにおいて、夫々6、7及び8匹だった。
【0118】
対照のob/obマウスの肝臓は、重大な脂肪症(6匹のうち6匹)、類洞周囲線維症(6匹のうち6匹)、門脈又は肝静脈(小葉中心性)線維症(6匹のうち6匹)、壊死(6匹のうち6匹)、及び炎症(6匹のうち6匹)によって特徴付けられた(この実験において、壊死及び炎症は別々に記録されたことに注意せよ)。すなわち、対照のob/obマウスでは、脂肪症、類洞周囲線維症、門脈又は肝静脈線維症、壊死及び炎症が、動物の100 %で観察された。
【0119】
100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸で治療されたob/obマウスの肝臓は、脂肪症のほぼ同程度を示した。しかしながら、材料及び方法に記載されるように肝臓トリグリセリドが測定されたとき、より低いトリグリセリドへのわずかな傾向が観察された。確かに、肝臓トリグリセリドは、対照ob/obマウスにおいて及び100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を用いて治療されたob/obマウスにおいて、736±31、721±16、707±29 mg/脂質gだった。
【0120】
脂肪症と対照的に、他の肝臓病変は、β-アミノイソ酪酸で治療されたマウスにおいて、明らかにより低い頻度で観察された。確かに、対照ob/obマウスの100%(上記を参照)に対して、100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウスについて、類洞周囲線維症は29%、門脈又は肝静脈線維症は29%、壊死は43%、及び炎症は43%だった。この実験では、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が、治療の最後(すなわち、4ヶ月後)で、治療されたマウスにおいて減少される傾向だった。確かに、ALTは、対照マウスにおいて、及び100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウスにおいて、夫々311±42、290±61及び258±27 U/Lだった。
【0121】
総合すれば、これらデータは、脂肪性肝炎を定義する肝臓の病変(すなわち、線維症、壊死及び炎症)が、ob/obマウスにおいてやや穏やかである(重大な脂肪症以外)けれども、β-アミノイソ酪酸は、肥満、糖尿病及び脂肪症のマウスモデルにおいてこれら病変の出現を低減させるにおいて幾分の有益な結果を与えうることを示す。
【実施例3】
【0122】
治療の6週間後の血漿脂質に対するBAIBAの有益な効果
a)標準の食餌を給餌された痩せたマウスにおけるBAIBAの効果
血漿脂質が、6週間、標準の食餌を給餌され及び飲料水中の100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を受け取る又受け取らない痩せたマウスにおいて評価された。グループ当たり、6匹の動物だった。治療の6週の最後で、マウスは絶食されず、次に血液のサンプルが血漿トリグリセリド及び総コレステロールの評価のために集められた。この実験では、血漿トリグリセリド及び総コレステロールが、BAIBAによってわずかに減少された。確かに、血漿トリグリセリドは、対照及び治療されたマウスにおいて、夫々3.18±0.23及び2.95±0.21 mmol/Lであり、一方血漿総コレステロールは、対照及び治療されたマウスにおいて、夫々5.35±0.35及び5.23±0.28 mmol/Lだった。
【0123】
b)西洋型食餌を給餌された痩せたマウスにおけるBAIBAの効果
血漿脂質が、西洋型食餌(WD)を給餌され及び飲料水中の100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を受け取る又は受け取らないマウスにおいて(各グループにおいて8匹)評価された。比較のために、実験がまた、標準の食事(SD)を給餌されたマウスのグループ(n=8)を含んだ。これら動物は、DEXAによる体脂肪、及び肝臓の脂質の決定のために使用されたそれらだった(上記を参照、夫々段落I-c及びII-a)。最後のDEXA測定後(治療の6週間後)に、マウスは、約2日間の麻酔から回復することを許され、次に48時間の断食に付された。この断食期間の最後で、血液のサンプルがDEXA測定の前に(球後洞(retroorbitalsinus)から)集められ、引き続き血漿トリグリセリド、リン脂質、総コレステロール及びエステル化されていない脂肪酸(NEFA)が決定された。6週間後、西洋型食餌が、総血漿脂質の増加の原因だった。しかし、最も影響を受けた脂質は、トリグリセリドだった。結果が、図6に示される。
【0124】
興味深いことに、BAIBAは、西洋型食餌を給餌されたマウスにおける血漿トリグリセリドを22%だけ減少し、しかしながら差は、対照と治療されたマウスの間で有意でなかった。確かに、血漿トリグリセリドは、標準の食餌を給餌された対照マウス(対照-SD)、西洋型食餌を給餌された対照マウス(対照-WD)、及び西洋型食餌を給餌され及びBAIBAを受け取るマウス(BAIBA-WD)において、夫々0.88±0.07、1.96±0.45及び1.54±0.13mmol/Lだった。西洋型食餌はまた、血漿NEFAの増加の原因であり、BAIBAはこの食餌を給餌されたマウスにおいてNEFAを16 % だけ減少させる傾向だった(図6)。確かに、血漿NEFAは、対照-SD、対照-WD及びBAIBA-WDグループにおいて、夫々0.81±0.09、1.05±0.08及び0.88±0.06 mmol/Lだった。最後に、BAIBAは、西洋型食餌を給餌されたマウスにおいて、4%だけ総コレステロールを減少させる傾向だった(6.98±0.64から6.71±0.27 mmol/Lまで)(図6)。総じて、これら結果は、これら脂質が西洋型食餌によって異常に増加されるとき、BAIBAが血漿トリグリセリドを減じうることを示唆する。
【0125】
c)遺伝的に肥満のob/obマウスにおけるBAIBAの効果
血漿脂質が、6週間、標準の食餌を給餌され且つ飲料水中のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を受け取る又は受け取らないob/obマウスにおいて評価された。これら動物(対照の7匹、及びBAIBAで治療された10匹)は、肝臓の脂質の決定のために使用されたそれらだった(上記を参照、項目II-b)。治療の6週の最後で、マウスは、断食の48時間に付された。次に、血液のサンプルが、血漿トリグリセリド、リン脂質及び総コレステロールの評価のために(球後洞(retroorbitalsinus)から)集められ、引き続きマウスが、肝臓トリグリセリドの評価のために殺された(上記を参照)。この実験において、BAIBAは、血漿トリグリセリド、リン脂質及び総コレステロールを、夫々5、23及び19%だけ減少した。結果が、図7に提示される。それらは、下記を示す:
−血漿トリグリセリドは、対照及び治療されたob/obマウスにおいて、夫々1.39±0.22及び1.32±0.14 mmol/Lだった;
−血漿リン脂質が、5.27±0.32から4.07±0.26 mmol/LへBAIBAによって有意に減少された(p<0.01);
−血漿総コレステロールが、6.13±0.34から4.98±0.34 mmol/LへBAIBAによって有意に減少された(p<0.05)。
【0126】
実験の第2の系では、血漿脂質が、6週間、標準の食事を給餌され且つ飲料水中の100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を受け取る又は受け取らないob/obマウスにおいて評価され、しかし実験の最後で、15時間だけ絶食された(すなわち、一晩の絶食)。次に、血液のサンプルが、血漿トリグリセリド、総コレステロール及びHDLコレステロールの評価のために、対照マウス(n=4)において及びBAIBAで治療されたマウス(n=5)において集められた。この実験では、BAIBAが、血漿トリグリセリド及び総コレステロールを夫々10及び8%だけ減少した。確かに、血漿トリグリセリドは、対照及び治療されたob/obマウスにおいて、夫々1.35±0.07及び1.22±0.06 mmol/Lであり、一方血漿総コレステロールは、対照及び治療されたマウスにおいて、夫々6.78 ±0.51及び6.24±0.11 mmol/Lだった。興味深いことに、BAIBAで治療されたマウスにおいて、より高いHDLコレステロールへの傾向があった。確かに、HDLコレステロールは、対照及び治療されたマウスにおいて、夫々4.73±0.31及び4.92±0.24 mmol/Lだった。
【0127】
要するに、これら結果は、BAIBAがob/obマウスにおいて血漿脂質に対する有利な効果を有することを示唆する。しかしながら、ob/obマウスが著しい高トリグリセリド血症(Lombardo Y. B., Hron W. T., Sobocinski K. A., Menahan L. A., 1983年, Horn Metabol. Res. 第16巻:第37〜42頁)を示さなかったことは注目に値する。従って、血漿トリグリセリドは、本研究ではob/obマウスにおいて1.35及び1.39 mmol/Lであり、一方はるかに高い濃度(1.96 mmol/L)が、西洋型食餌を給餌されたスイスマウスにおいて見つけられた(上記を参照)。すなわち、脂質濃度がある閾値よりも上であるとき、血漿脂質に対するBAIBAの有益な効果がより顕著になる可能がある。この概念と一致して、BAIBAは、西洋型食餌を給餌されたマウスにおける血漿トリグリセリドを22%だけ減少させた(図6)。その上、我々は、血漿脂質に対するBAIBAの有益な効果が、血漿脂質のより低い濃度を示す非常に若いob/obマウス(上記実験の10〜12週と対照的に、研究の開始で6週間[図7])においてそれ程明らかでないことを見つけた。確かに、我々は、血漿トリグリセリドが不変であり(対照[n=8]及び治療された[n=8]グループにおいて、夫々1.07±0.06及び1.07±0.03 mmol/L)、一方BAIBAは、血漿リン脂質を4%だけ(4.51±0.09から4.35±0.11 mmol/Lへ)及び総コレステロールを5%だけ(5.24±0.11から4.96±0.15 mmol/Lへ)わずかにのみ減少させた。
【実施例4】
【0128】
治療の4ヶ月の間の、血漿HDLコレステロール及びトリグリセリドに対するBAIBAの有益な効果
この実験の系では、血漿脂質、特にHDLコレステロールが治療の4ヶ月の間に、ob/obマウスにおいて評価された。マウスは、標準の食餌を給餌された。ob/obマウスは、通常の投与量(100 mg/kg/日)又はより高い投与量(500 mg/kg/日)のいずれかでβ-アミノイソ酪酸で4ヶ月間治療された。2ヶ月後、測定が給餌状態において行われ、一方治療の最後で(すなわち、4ヶ月後)、血漿パラメーターが、一晩の絶食期間(すなわち、15時間)後に評価された。対照群における1匹のマウスが、治療の3ヶ月と4ヶ月の間に死んだ。
【0129】
実験の最後でマウスの数は、対照グループ並びに100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を用いて治療されたグループにおいて、夫々6、7及び8匹だった。この実験において研究された動物は、肝臓検査のために使用されたそれらと同じだった(従って、最後の血液回収後に、マウスは2日間食べることを許され、そして組織学的研究のために犠牲にされた)ことを注記する。
【0130】
2ヶ月後(給餌された状態)、HDLコレステロールの増加への傾向が観察された。確かに、HDLコレステロールは、対照マウス並びに100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を用いて治療されたマウスにおいて、夫々3.26±0.33、3.45±0.31及び3.64±0.31 mmol/Lだった。血漿トリグリセリドは、治療されたマウスにおいて減少される傾向だった。確かに、トリグリセリドは、対照マウス並びに100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を用いて治療されたマウスにおいて、夫々1.37±0.13、1.09±0.06及び1.25±0.17 mmol/Lだった。
【0131】
4ヶ月後(断食された状態)、HDLコレステロールの増加への傾向が再び観察された。確かに、HDLコレステロールは、対照マウス並びに100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を用いて治療されたマウスにおいて、夫々3.89±0.49、4.01±0.30及び3.98±0.31 mmol/Lだった。血漿トリグリセリドは、対照マウス並びに100及び500 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を用いて治療されたマウスにおいて、夫々1.37±0.08、1.34±0.08及び1.26±0.07 mmol/Lだった。
【0132】
6週の治療手順を用いて得られたデータに加えて、血漿コレステロール及び顕著にHDLコレステロールに関する結果が、4ヶ月の期間に亘り投与されたとき、β-アミノイソ酪酸はHDLコレステロールに有利にコレステロールの血中濃度の平衡を保つ傾向があることを示唆する。
【実施例5】
【0133】
グルコース、インスリン、アディポネクチン及びレプチンに対するBAIBAの有益な効果
a)標準の食餌を給餌された痩せたマウスにおけるBAIBAの効果
グルコース、インスリン、アディポネクチン及びレプチンが、6週間、標準の食餌を給餌され且つ飲料水中の100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を受け取る(13匹のマウス)又は受け取らない(12匹のマウス)の痩せたマウスにおいて評価された。
【0134】
治療の6週の最後で、マウスは48時間断食に付された。血漿グルコース、インスリン及びアディポネクチンは、治療されたマウスにおいて変化されなかったが、より低いレプチン濃度への傾向が観察された。確かに、血漿レプチンが、対照マウス(n=12)及びβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウス(n=13)において、夫々3.72±0.59及び3.14±0.34 ng/mlだった。レプチンは脂肪組織によって主に分泌されるアディポカインであり、そしてヒト及びマウスにおけるその血漿濃度は、全脂肪(adipose)組織量に高度に関連付けられる(Friedman J. M. and Hallas J. L., 1998年, Nature 第395巻: 第763〜770頁)。すなわち、血漿レプチンに関するデータは、β-アミノイソ酪酸が痩せたマウスにおける体脂肪蓄積を制限するという観察と一致する。
【0135】
実験の第2の系では、血漿グルコースは、6週間、標準の食餌を給餌され且つ飲料水中の100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸を受け取る(6匹のマウス)又は受け取らない(6匹のマウス)痩せたマウスにおいて評価され、しかし実験の最後で、マウスは断食されなかった。この実験では、血漿グルコースが、BAIBAによってわずかに減少された。確かに、血漿グルコースは、対照及び治療されたマウスにおいて、夫々11.5±0.8及び10.7±0.4 mmol/Lだった。
【0136】
b)遺伝的に肥満のob/obマウスにおけるBAIBAの効果
6週間、100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸で治療され、そして最後の48時間断食された肥満のob/obマウス(10〜12週齢)において、グルコース及びインスリンのより低い血漿濃度への傾向があった。確かに、血漿グルコースは、対照ob/obマウス(n=6)及びβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウス(n=8)において、夫々11.1±1.4及び9.0±0.9 mmol/Lだった。血漿インスリンは、対照マウス(n=4)及びβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウス(n=5)において、夫々37±19及び24±6 μU/mlだった。興味深いことに、インスリンの血漿濃度はまた、給餌された状態においても減少される傾向だった。確かに、インスリンは、対照マウス(n=5)及びβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウス(n=5)において、夫々83±13及び64±7 μU/mlだった。
【0137】
c)非常に若い遺伝的に肥満のob/obマウスにおけるBAIBAの効果
他の実験では、非常に若いob/obマウス(5〜6週齢)が、6週間、100 mg/kg/日のβ-アミノイソ酪酸で治療され、そして最後の48時間、断食された。血漿グルコースは治療されたマウスにおいて減少されなかったけれども、より低いインスリン及びより高いアディポネクチンへの明らかな傾向があった。確かに、血漿インシュリンは、対照マウス(n=7)及びβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウス(n=7)において、夫々56±9及び37±5 μU/ml (p=0.08)だった。血漿アディポネクチンは、対照マウス(n=7)及びβ-アミノイソ酪酸で治療されたマウス(n=7)において、夫々8.0±1.1及び10.9±1.2μg/ml (p=0.08)だった。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌され、そしてDEXA測定(すなわち、治療の開始後、2及び6週間)の前に48時間断食されたスイスマウスにおける体脂肪量に対するBAIBAの効果を示す図である。
【図2】図2は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウス(各グループに8匹)における体脂肪量(DEXAによって評価された)の増加に対するBAIBAの効果を示す図である。
【図3】図3は、西洋型食餌(WD)を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウス(各グループに8匹)における体脂肪量(DEXAによって評価された)の増加に対するBAIBAの効果を示す図である。
【図4】図4は、西洋型食餌(WD)を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウスにおける肝臓脂質に対するBAIBAの効果を示す図である。
【図5】図5は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて(10匹のマウス)又は用いないで(7匹のマウス)給餌された肥満の(ob/ob)マウスにおける肝臓トリグリセリドに対するBAIBAの効果を示す図である。
【図6】図6は、西洋型食餌(WD)を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて又は用いないで給餌されたスイスマウスにおける血漿脂質に対するBAIBAの効果を示す図である。
【図7】図7は、標準の食餌を用い、飲料水中にβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)を用いて(10匹のマウス)又は用いないで(7匹のマウス)給餌された遺伝的に肥満の(ob/ob)マウスにおける血漿脂質に対するBAIBAの効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織及び血液中のトリグリセリドの蓄積に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項2】
組織及び血液中のHDLコレステロール不足のコレステロールの不均衡に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項3】
トリグリセリドの血中濃度を低下させるための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項4】
HDLコレステロールに有利に総コレステロールの血中及び/又は組織中濃度をバランスさせるための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項5】
高血圧症を治療又は予防するための請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
肝臓トリグリセリド濃度を低下させるための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項7】
肝臓の脂肪症及び関連する肝臓疾病を治療又は予防するための請求項6に記載の方法。
【請求項8】
肥満状態の治療又は予防のための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項9】
体脂肪の増加の減少又は阻害のための治療方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項10】
インスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すための方法であって、その必要のあるヒト又は非ヒト動物に、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効量を投与するステップを少なくとも含む方法。
【請求項11】
インスリン及び/又はグルコースの血中濃度を低下させるための請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アディポネクチンの血中濃度を増加させるための請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
2型糖尿病及び関連する心臓血管疾患を治療する又は予防するための請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
β-アミノイソ酪酸誘導体が、その有機塩若しくは無機塩、エステル又はアミドである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
β-アミノイソ酪酸が、L若しくはD配置、又はL及びD配置の混合物の形態である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
動物がヒトである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
動物が農業動物である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
動物が家畜である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
動物が実験動物である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
組織及び血液中のトリグリセリドの蓄積に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のために、治療的に活性な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体を使用する方法。
【請求項21】
HDLコレステロール不足のコレステロールの血中及び/又は組織中濃度の不均衡に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のために、治療的に活性な剤として、β-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体を使用する方法。
【請求項22】
高血圧症、狭心症、心筋梗塞症及び/又は高脂血症の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のための請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
肝臓の脂肪症、脂肪性肝炎及び/又は糖尿病の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のための請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項24】
シンドロームX(すなわち、代謝シンドローム)の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のための請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項25】
インスリン若しくはグルコースの蓄積、及び/又はアディポネクチンの減少に結びつけられる疾病の治療及び/又は予防のために意図された医薬組成物の調製のために、治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸を使用する方法。
【請求項26】
インスリンに対する抵抗性を緩和する又は感受性を取り戻すために意図された医薬組成物の調製のための請求項25に記載の方法。
【請求項27】
2型糖尿病の予防及び/又は治療のために意図された医薬組成物の調製のための請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
β-アミノイソ酪酸が請求項14又は請求項15に定義されているものである、請求項20〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
治療的に活性な剤としてβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の少なくとも有効な量を含む医薬組成物。
【請求項30】
高血圧症、脂肪肝及び代謝シンドロームの治療及び/又は予防のための請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
肥満状態の治療及び/又は予防のための請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
2型糖尿病の治療及び/又は予防のための請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項33】
β-アミノイソ酪酸が請求項14又は請求項15に定義されているものである、請求項29〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、請求項29〜33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
栄養的な活性剤として、ヒト又は非ヒト動物における全身脂肪量の増加を減少するために又は防止するために有効なβ-アミノイソ酪酸、その誘導体、プロドラッグ、代謝物又は複合体の有効な量を含む栄養組成物。
【請求項36】
β-アミノイソ酪酸が請求項14又は請求項15に定義されているものである、請求項35に記載の栄養組成物。
【請求項37】
脂肪量の減少を必要とするヒト又は非ヒト動物において脂肪量の減少を生み出すための方法であって、請求項35に従う栄養組成物の有効量をヒト又は非ヒト動物に投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−523672(P2006−523672A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506481(P2006−506481)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001166
【国際公開番号】WO2004/091599
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505386960)アンスティテュト ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム) (8)
【Fターム(参考)】