説明

トリコテセン−欠失糸状菌変異体細胞において異種ポリベプチドを生成するための方法

【課題】ポリペプトドの製造のための新規な方法の提供。
【解決手段】(a)親糸状菌細胞の変異体を前記ポリペプチドの生成の助けとなる条件下で培養し、ここで(i)前記変異体が、前記ポリペプチドをコードする第1核酸配列及びトリコテセンの生成に関与する遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る第2核酸配列を含んで成り、そして(ii)前記変異体が、同じ条件下で培養される場合、親糸状菌細胞よりもトリコテセンを少なく生成し;そして(b)前記培養培地から前記ポリペプチドを単離することを含んで成る、ポリペプチドを生成するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリコテセン−欠失糸状菌変異体細胞における異種ポリペプチドの生成方法に関する。本発明はまた、糸状菌細胞のそのような変異体細胞、及びその変異体細胞を得るための方法にも関する。本発明はまた、単離されたトリコジエンシンターゼ、及びそのトリコジエンシンターゼをコードする単離された核酸配列にも関する。本発明はまた、核酸構造体、ベクター、及びそれらの核酸配列を含んで成る宿主細胞、並びにトリコジエンシンターゼを生成するための方法にも関する。さらに、本発明は、遺伝子のマーカーフリー修飾を含んで成る変異体細胞、及びそのような変異体細胞を得るための及び使用するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
関連文献の記載:
トリコテセンは、最初のトリコテセンが単離された菌類トリコセシウム・ロゼウム(Trichothecium roseum)にちなんで命名されたセスキテルペンエポキシドである。トリコテセンT−2トキシン、ジアセトキシスシルペノール及びデオキシニバレノールが、フサリウム種により感染された農業製品に最も通常見出される。それらの化合物における興味は、食物及び食品のトリコテセン汚染がヒト及び動物において有害である発見に主によるものである。
【0003】
トリコテセンは、酵素トリコジエンシンターゼによるトランス,トランス−ファルネシルピロリン酸の環化から生成される、トリコジエンから誘導する一連の酸素化、異性化、環化及びエステル化により生成される(Desjardins, Hohn, and McCormick, 1993, Microbiological Reviews 57: 595-604)。
【0004】
トリコジエンシンターゼ遺伝子(tri5又はtox5)は、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)(Hohn and Beremand, 1989, Gene 79: 131-138);ギベレラ・プリカリス(Gibberella pulicaris)(Hohn and Pesjardins, 1992, Molecular Plant-Microbe Interactions 5: 249-256);ギベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)(Proctor など., 1995, Molecular Plant-Microbe Interactions 4: 593-601);ミロテシウム・ロリジン(Myrothecium roridin)(Trapp, など., 1995, Journal of Cellular Biochemistry Supplement 198:154);及びフサリウム・ポアエ(Fusarium poae)(Fekete など., 1997, Mycopathologia 138: 91-97)からクローン化された。
【0005】
トリコテセンを生成しない、ギベレラ・プリカリス(Hohn and Desjardins, 1992, 前記)及びぎギベレラ・ゼアエ(Proctor など., 1995, 前記)のTri5変異体が生成されている。
【0006】
トリコラセン生合成路における他の遺伝子、たとえばフサリウム・スポトリキオイデスからの、15−O−アセチルトランスフェラーゼをコードするtri3遺伝子(McCormickなど., 1996, Applied and Environmental Microbiology 62: 353-359);フサリウム・スポトリキオイデスからの、シトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードするtri4遺伝子(Hohnなど., 1995, Molecular and General Genetics 248:95-102);フサリウム・スポトリキオイデスからの、トリコテセン生合成の調節に関与する亜鉛フィンガータンパク質をコードするtri6遺伝子(Proctorなど., 1995, Applied and Environmental microbiology 61: 1923-1930);
【0007】
フサリウム・スポトリキオイデスからの、C−15ヒドロキシル化のために必要とされるシトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードするtri11遺伝子(Alexander など., 1997, Applied and Environmental Microbiology 64: 221-225);フサリウム・スポトリキオイデスからの、トリコテセン生成に関与する見掛け輸送タンパク質をコードするtri12遺伝子(Alexander など., 1997, Cereal Research Communications 25: 347-347);及びフサリウム・スポトリキオイデスからの、3−O−アセチルトランスフェラーゼをコードするtri101遺伝子(Kimura など., 1998, Journal of Biological Chemistry 272: 1654-1661)は、クローン化されている。
【発明の概要】
【0008】
変異体細胞においてポリペプチドを生成するための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
発明の要約:
本発明は、(a)親糸状菌細胞の変異体細胞を前記異種ポリペプチドの生成の助けとなる条件下で培養し、ここで(i)前記変異体細胞が、前記異種ポリペプチドをコードする第1核酸配列及びトリコテセンの生成に関与する遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る第2核酸配列を含んで成り、そして(ii)前記変異体細胞が、同じ条件下で培養される場合、親糸状菌細胞よりもトリコテセンを少なく生成し;そして(b)前記培養培地から前記異種ポリペプチドを単離する;
ことを含んで成る、異種ポリペプチドの生成方法に関する。本発明はまた、糸状菌細胞の変異体細胞、及び変異体細胞を得るための方法にも関する。
【0010】
本発明はまた、単離されたトリコジエンシンターゼをコードする単利された核酸配列にも関する。さらに、本発明は、核酸構造体、ベクター及び核酸配列を含む宿主細胞、並びにトリコジエンシンターゼの生成方法にも関する。
【0011】
本発明はまた、
(a)第1ポリペプチドをコードする第1核酸配列を有する親細胞中に、選択マーカーとしての硝酸レダクターゼ及び前記第1核酸配列の修飾を含んで成る第1核酸構造体を導入し、ここで前記第1構造体が親細胞のゲノム中に組み込み、同じ条件下で培養される場合、親細胞に比較して、前記第1ポリペプチドの低められた生成をもたらす前記修飾された第1核酸配列により前記内因性第1核酸配列を置換し;そして
(b)前記硝酸レダクターゼ遺伝子の存在、及び前記第1ポリペプチドの低められた生成について、段階(a)から変異体細胞を選択する;
ことを含んで成る、変異体細胞を得るための方法にも関する。
【0012】
好ましい態様においては、変異体細胞を得るための方法はさらに、
(c)硝酸レダクターゼ遺伝子が欠失されている培養条件下で段階(b)からの変異体細胞を選択する;
ことをさらに含んで成る。
もう1つの好ましい態様においては、変異体細胞を得るための方法はさらに、
(c)段階(b)からの変異体細胞中に、修飾された第1核酸配列の5’及び3’側領域を含んで成る第2核酸配列を含んで成るが、しかし硝酸レダクターゼ遺伝子を欠いている第2核酸構造体を導入し、ここで前記第2構造体が親細胞のゲノム中に組み込み、前記第2核酸配列により前記修飾された第1核酸配列を置換し;そして
(d)硝酸レダクターゼ遺伝子が欠失されている培養条件下で段階(c)からの変異体細胞を選択する;
ことを含んで成る。
本発明はさらに、そのような方法から得られる変異体細胞、及びそのような変異体細胞によるポリペプチドの生成方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、フサリウム種におけるトリコテセン生合成路を示す。
【図2A】図2Aは、フサリウム・ベネナタムATCC20334トリコジエンシンターゼのゲノム核酸配列及び推定されるアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1及び2)を示す。
【図2B】図2Bは、フサリウム・ベネナタムATCC20334トリコジエンシンターゼのゲノム核酸配列及び推定されるアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1及び2)を示す。
【0014】
【図2C】図2Cは、フサリウム・ベネナタムATCC20334トリコジエンシンターゼのゲノム核酸配列及び推定されるアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1及び2)を示す。
【図2D】図2Dは、フサリウム・ベネナタムATCC20334トリコジエンシンターゼのゲノム核酸配列及び推定されるアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1及び2)を示す。
【図2E】図2Eは、フサリウム・ベネナタムATCC20334トリコジエンシンターゼのゲノム核酸配列及び推定されるアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1及び2)を示す。
【0015】
【図3】図3は、pDM181の制限地図を示す。
【図4】図4は、pJRoy36の制限地図を示す。
【図5】図5は、pJRoy40の制限地図を示す。
【図6】図6は、pBANe20の制限地図を示す。
【図7】図7は、pLC30の制限地図を示す。
【0016】
【図8】図8は、pJRoy41の構成を示す。
【図9】図9は、tri5遺伝子の欠失及びamdS選択マーカーの除去のためのプロトコールを示す。
【図10】図10は、pJRoy40の制限地図を示す。
【図11】図11は、pJRoy47の制限地図を示す。
【図12】図12は、pLC31bの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の特定の記載:
トリコテセン−欠失変異体細胞
本発明は、
(a)親糸状菌細胞の変異体細胞を前記異種ポリペプチドの生成の助けとなる条件下で培養し、ここで(i)前記変異体細胞が、トリコテセンの生成に関与する1又は複数の遺伝子の修飾、たとえば破壊又は欠失による親細胞に関し、そして(ii)前記変異体細胞が、同じ条件下で培養される場合、トリコテセンの生成が親糸状菌細胞よりも少なく;そして
(b)前記変異体細胞の培養培地から前記異種ポリペプチドを単離する;
ことを含んで成る、異種ポリペプチドの生成方法に関する。
【0018】
用語“トリコテセン”とは、トリコジエンからより複雑なトリコテセンに導く一連の酸素化、異性化、環化及びエステル化により生成されるセスキテルペンエポキシドのファミリーとして本明細書において定義される。トリコテセンは次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:2−ヒドロキシトリコジエン、12, 13−エポキシ−9, 10−トリコエン−2−オール、イソトリコジオール、イソトリコトリオール、トリコトリオール、イソトリコデルモール、イソトリコデルミン、15−デカロネクトリン、3, 15−ジデカロネクトリン、デオキシニバレノール、3−アセチルデオキシニバレノール、カロネクトリン、3, 15−ジアセトキシスシルペノール、3, 4, 15−トリアセトキシスシルペノール、4, 15−ジアセトキシスシルペノール、3−アセチルネオソラニオール、アセチルT−2トキシン及びT−2トキシン;並びにそれらの誘導体類。トリコテセン生合成路は、図1に示されている(Desjardins, Hohn, and McCormick, 1993, 前記)。
【0019】
用語“トリコテセンの生成”とは、トリコテセンの生成に関与するいずれかの段階、たとえば生合成、生合成の調節、輸送及び分泌(但し、それらだけには限定されない)を包含する本明細書において定義される。
【0020】
本発明に方法においては、糸状菌細胞は、野生型細胞又はその変異体であり得る。さらに、糸状細胞は、いずれの検出できるトリコテセンも生成しないが、しかしトリコテセンをコードする遺伝子を含む細胞であり得る。好ましくは、糸状菌細胞は、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコッカス、フィリバシジウム、フサリウム、ギベレラ(、ヒューミコラ、マグナポルセ、ムコル、ミセリオプソラ、ミロセシウム、ネオカリマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、ピロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ細胞である。
【0021】
好ましい態様においては、糸状菌細胞は、アスペルギラス・アキュレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギラス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギラス・ホエチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギラス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギラス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)細胞である。
【0022】
もう1つの好ましい態様においては、糸状菌細胞は、次のものである:フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)(フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)の同意語)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearium)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、
【0023】
フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusariumu roseum)、フサリウム・サムブシウム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロサム(Fusarium torulosaum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)又はフサリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)細胞。
【0024】
もう1つの好ましい態様においては、糸状菌細胞は次のものである:ギベレラ・プリカリス(Gibberella pulicaris)、ギベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、ヒュミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオプラソ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ミセロセシウム・ロリジン(Myrothecium roridin)、ネウロスポラ・クラサ(Neurospora crassa)又はペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)細胞。
【0025】
もう1つの好ましい態様においては、糸状菌細胞は、トリコダーマ・ハルジアナル(Trichoderma harzianum)、トリコダーマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコダーマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコダーマ・レセイ(Trichoderma reesei)又はトリコダーマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である。
【0026】
より好ましい態様においては、フサリウム・ベネナタム細胞は、フサリウム・グラミネアラムATCC 20334として最初に寄託され、そして最近、Yoder and Christianson, 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 62-80及びO’Donnell など., 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 57-67 によりフサリウム・ベネナタムとして再分類されている、フサリウム・ベネナタムA3/5;及び現在知られている種名称にもかかわらず、フサリウム・ベネナタムの分類学的同等物である。もう1つの好ましい態様においては、フサリウム・ベネナタム細胞は、WO97/26330号に記載されるように、フサリウム・ベネナタムA3/5又はフサリウム・ベネナタムATCC 20334の形態学的変異体である。
【0027】
本発明の方法においては、トリコテセンの生成に関与する糸状菌細胞のいずれかの遺伝子、たとえばtri3, tri4, tri5, tri6, tri11, tri12及び/又はtri101が修飾され得る。好ましい態様においては、前記遺伝子はtri5である。より好ましい態様においては、遺伝子は、配列番号1の核酸配列を有するフサリウム・ベネナタムtri5遺伝子である。
【0028】
トリコテセン−欠失糸状菌変異体細胞は、当業界において良く知られている方法、たとえば挿入、分解、置換又は欠失を用いて、本明細書に記載される1又は複数の遺伝子の発現を低めるか又は排除することによって構成され得る。修飾されるか又は不活性化される遺伝子は、活性のために必須のコード領域又はその一部であり、又はその遺伝子はコード領域の発現のために必要とされる調節要素を含むことができる。そのような調節又は制御配列の例は、プロモーター配列、又はその機能的部分、すなわち核酸配列の発現をもたらすために十分である部分であり得る。可能な修飾のための他の制御配列は、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター及び転写活性化因子を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0029】
遺伝子の修飾又は不活性化は、親細胞を突然変異誘発にゆだね、そして遺伝子の発現が低められるか又は排除されている変異体細胞についてスクリーンすることによって行われ得る。特異的であるか又はランダムであり得る突然変異誘発は、適切な物理的又は化学的突然変異誘発剤の使用により、適切なオリゴヌクレオチドの使用により、又はDNA配列をPCR生成された突然変異誘発にゆだねることによって行われ得る。さらに、突然変異誘発は、それらの突然変異誘発方法のいずれかの組み合わせの使用により行われ得る。
【0030】
本発明のための適切な物理的又は化学的突然変異誘発剤の例は、紫外(UV)線、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、O−メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸及びヌクレオチド類似体を包含する。
そのような剤が使用される場合、突然変異誘発は典型的には、選択の突然変異誘発剤の存在下で突然変異誘発される親細胞を、適切な条件下でインキュベートし、そして低められた又は遺伝子の発現を示すか又は発現を示さない変異体細胞について選択することによって行われる。
【0031】
遺伝子の修飾又は不活性化はまた、遺伝子における1又は複数のヌクレオチド、又はその転写又は翻訳のために必要とされる調節要素の挿入、置換又は除去により達成され得る。たとえば、ヌクレオチドが、停止コドンの導入、開始コドンの除去又は読み取り枠の変更をもたらすために、挿入され又は除去され得る。そのような修飾又は不活性化は、当業界において知られている方法に従って、特定部位の突然変異誘発又はPCR生成突然変異誘発により達成され得る。原則的に、修飾はインビボで、すなわち修飾される遺伝子を発現する細胞に対して直接的に行われ得るが、好ましくは、修飾は下記に例示されるように、インビトロで行われ得る。
【0032】
選択の糸状菌細胞によりトリコテセンの生成を不活性化するか又は低める便利な手段の例は、遺伝子置換、遺伝子欠失又は遺伝子破壊の技法に基づかれている。たとえば、遺伝子破壊方法においては、興味ある内因性遺伝子又は遺伝子フラグメントに対応する核酸配列が、欠陥遺伝子を生成するために、親細胞中に形質転換される欠陥核酸配列の生成のためにインビトロで突然変異誘発される。相同組換えにより、欠陥核酸配列により、内因性遺伝子又は遺伝子フラグメントが置換される。所望には、欠陥遺伝子又は遺伝子フラグメントはまた、核酸配列が修飾されているか又は破壊されている形質転換体の選択のために使用され得るマーカーをコードする。
【0033】
選択マーカー遺伝子は、破壊を達成するために使用され得る。欠陥核酸配列は、選択マーカー遺伝子による内因性配列の単純な破壊であり得る。他方では、欠陥核酸配列は、選択マーカー遺伝子による破壊の他に、内因性配列又はその一部の挿入又は欠失を含むことができる。さらに、欠陥核酸配列は、内因性配列又はその一部の挿入又は欠失を含むことができ、そして選択マーカー遺伝子はその修飾には包含されないが、しかし欠陥遺伝子を含む形質転換体を同定するための選択マーカーとして使用される。
【0034】
他方では、遺伝子の修飾又は不活性化は、遺伝子の核酸配列に対して相補的なヌクレオチド配列を用いて、確立されているアンチセンス技法により行われ得る。より特定には、糸状菌細胞による遺伝子の発現は、細胞において転写され得、そして細胞において生成されるmRNAに対してハイブリダイズすることができる、遺伝子の核酸配列に対して相補的なヌクレオチド配列を導入することによって、低められるか又は排除され得る。相補的アンチセンスヌクレオチド配列のmRNAへのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、翻訳されるタンパク質の量が低められ、又は排除される。
【0035】
糸状菌細胞におけるトリコテセンの生成に関与する遺伝子の核酸配列に対して相同であるか又は相補的である核酸配列が、トリコテセンを生成する他の微生物源から得られる。フサリウム・ベネナタムの配列番号1の核酸配列に対して相補的な又はそれに対して相同の核酸配列を有するtri5遺伝子のための好ましい源は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:フサリウム・スポロトリキオイデス(Hohn and Beremand, 1989, 前記);ギベレラ・プリカリス(Hohn and Desjardins, 1992, 前記);ギベレラ・ゼアエ(Proctor など., 1995, 前記);ミロセシウム・ロリジン(Trappなど., 1995, 前記);及びフサリウム・ポアエ(Feketeなど., 1997, 前記)。
【0036】
糸状菌細胞の対応する遺伝子の核酸配列に対して相補的であるか又は相同であり得るトリコテセン生合成路における好ましい他の遺伝子源は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:フサリウム・スポロトリキオイデスからのtri3遺伝子(McCormickなど., 1996, 前記);フサリウム・スポロトリキオイデスからのtri4遺伝子(Hohnなど., 1995, 前記);フサリウム・スポロトリキオイデスからのtri6遺伝子(Proctorなど., 1995, 前記);フサリウム・スポロトリキオイデスからのtri11遺伝子(Alexanderなど., 1997, 前記);フサリウム・スポロトリキオイデスからのtri12遺伝子(Alexanderなど., 1997, 前記);及びフサリウム・グラミネアラムからのtri101遺伝子(Kimura など., 1998, 前記)。さらに、核酸配列は、糸状菌細胞に対して生来であり得る。
【0037】
好ましい態様においては、変異体糸状菌細胞におけるトリコテセンの生成に関与する遺伝子の修飾は、選択マーカーにより特徴づけられていない。
選択マーカー遺伝子の除去は、逆選択培地上での培養により選択され得る。選択マーカー遺伝子がその5’及び3’側末端を端に有する反復体を含む場合、反復体は、変異体細胞が逆選択に提供される場合、相同組換えによる選択マーカー遺伝子のループ化の解除を促進するであろう。選択マーカー遺伝子はまた、欠陥遺伝子の5’及び3’側領域を含んで成るが、しかし選択マーカー遺伝子を欠いている核酸フラグメントを変異体細胞中に導入し、続いて、逆選択培地上で選択することによって、相同組換えにより除去され得る。相同組換えにより、選択マーカー遺伝子を含む欠陥遺伝子が、選択マーカー遺伝子を欠いている核酸フラグメントにより置換される。当業界において知られている他の方法がまた使用され得る。
【0038】
変異体糸状菌細胞を得るための本発明の方法は特定の順序に限定されないことが理解されるであろう。トリコテセンの生成に関与する遺伝子の修飾は、異種ポリペプチドの生成のための細胞の構成においていずれの段階ででも親細胞中に導入され得る。糸状菌変異体は、異種ポリペプチドをコードする遺伝子の導入の前、トリコテセン−欠失性にすでに去れていることが好ましい。
【0039】
本発明の変異体糸状菌細胞により生成されるトリコテセンのレベルは、当業界において良く知られている方法を用いて決定され得る(たとえば、Roodなど., 1988, Journal of Agricultural and Food Chemistry 36: 74-79; Romer, 1986, Journal of the Association of Official Analytical Chemists 69: 699-703; McCormick など., 1990, Applied and Environmental Microbiology 56: 702-706を参照のこと)。
【0040】
変異体糸状菌細胞は好ましくは、同一の条件下で培養される場合、その対応する親糸状菌細胞に比較して、少なくとも約25%低く、より好ましくは少なくとも約50%低く、さらにより好ましくは少なくとも約75%低く、最も好ましくは少なくとも約95%低くトリコテセンを生成し、そしてさらに最も好ましくはまったく生成しない。親及び変異体細胞が、興味あるポリペプチドの生成を助ける条件下で、又はトリコテセンの生成を助ける条件下で、トリコテセンの生成に関して比較され得る。
【0041】
変異体糸状菌細胞は、当業界において知られている方法を用いて、興味ある異種ポリペプチドの生成のために適切な栄養培地において培養される。たとえば、細胞は、適切な培地を有する実験室又は産業的発酵器において、及び異種ポリペプチドの発現及び/又は単離を可能にする条件下で、振盪フラスコ培養、又は小規模又は大規模発酵(たとえば、連続、バッチ、供給−バッチ、又は固体状態発酵)により培養され得る。培養は、炭素及び窒素源、及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地において、当業界において知られている方法を用いて行われる。適切な培地は、商業的供給者から入手でき、又は公開された組成(たとえば、American Type Culture Collection のカタログにおける)に従って調製され得る。異種ポリペプチドは、分泌される場合、培地から直接的に回収され得る。
【0042】
異種ポリペプチドは、ポリペプチドに対して特異的である、当業界において知られている方法を用いて検出され得る。それらの検出方法は、特異的抗体の使用、酵素生成物の形成、酵素基質の消出、SDS−PAGE、又は当業界に知られているいずれか他の方法を包含することができる。たとえば、酵素アッセイが、異種ポリペプチドの活性を決定するために使用され得る。酵素活性を決定するための方法は、多くの酵素に関して、当業界において知られている。
【0043】
得られる異種ポリペプチドは、当業界において知られている方法により単離され得る。たとえば、ポリペプチドは、従来の方法、たとえば遠心分離、濾過、抽出、噴霧−乾燥、蒸発又は沈殿(但し、それらだけには限定されない)により、栄養培地から単離され得る。次に単離されたポリペプチドは、当業界において知られている種々の方法、たとえばクロマトグラフィー(たとえば、イオン交換、親和製、疎水性、クロマトファーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(たとえば、分離用等電点電気泳動)、示差溶解性(たとえば、硫酸アンモニア沈殿)、又は抽出(但し、それらだけには限定されない)によりさらに精製され得る(たとえば、Protein Purification. J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)。
【0044】
ポリペプチドは、変異体糸状菌細胞に対して異種のいずれかのポリペプチドであり得る。用語“ポリペプチド”とは、特定の長さのコードされた生成物を言及することを本明細書においては意味せず、そして従って、ペプチド、オリゴヌクレオチド及びタンパク質を包含する。用語“異種ポリペプチド”は、糸状菌細胞に対して生来ではないポリペプチドとして、本明細書において定義される。変異体糸状菌細胞は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列の1又は複数のコピーを含むことかできる。
【0045】
好ましくは態様においては、異種ポリペプチドは、ホルモン、ホルモン変異体、酵素、受容体又はその一部、抗体又はその一部、又はレポーターである。より好ましい態様においては、異種ポリペプチドは、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼである。
【0046】
さらにより好ましい態様においては、異種ポリペプチドは、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターぜ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、又はキシラナーゼである。
【0047】
本発明の方法においては、異種ポリペプチドはまた、ポリペプチドの構築された変異体でもあり得る。
糸状菌細胞に発現され得る異種ポリペプチドをコードする核酸配列は、いずれかの原核、真核又は他の源から得られる。本発明の目的のためには、用語“〜から得られる”とは、一定の源に関して本明細書において使用される場合、ポリペプチドが、前記源により、又は前記源からの遺伝子が挿入されている細胞により生成されることを意味するであろう。
【0048】
本発明の方法においては、変異体糸状菌細胞はまた、その細胞に生来であるポリペプチドの組換え生成のためにも使用され得る。生来のポリペプチドは、たとえばポリペプチドの発現を増強するために、シグナル配列の使用により細胞外への興味ある生来のポリペプチドの輸送を促進するために、及び細胞により通常生成されるポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を高めるために、異なったプロモーターの制御下でポリペプチドをコードする遺伝子を配置することによって組換え的に生成され得る。本発明はまた、糸状菌細胞に対して生来の内因性ポリペプチドのそのような組換え生成を、そのような発現が細胞に対して生来ではない遺伝子要素の使用、又は宿主細胞において通常存在しない態様で機能するよう操作された生来の要素の使用を包含する程度まで、用語“異種ポリペプチド”の範囲内で包含する。
【0049】
異種ポリペプチドをコードする核酸配列を単離し、又はクローン化するために使用される技法は、当業界において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製又はそれらの組み合わせを包含する。そのようなゲノムDNAからの核酸配列のクローニングは、良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)を用いることによってもたらされ得る。たとえば、Innisなど., 1990, PCR Protocols: A Guide to Method and Application, Academic Press, New Yorkを参照のこと。
【0050】
他の核酸増幅方法、たとえばリガーゼ鎖反応(LCR)、連結された活性化転写(LAT)及び核酸配列に基づく増幅(NASBA)が使用され得る。クローニング方法は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中への前記フラグメントの挿入、及び核酸配列の複数コピー又はクローンが複製されるであろう変異体糸状菌細胞中への組換えベクターの組み込みを包含することができる。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起原、又はそれらのいずれかの組み合わせのものであり得る。
【0051】
本発明の方法においては、異種ポリペプチドはまた、もう1つのポリペプチドがポリペプチド又はそのフラグメントのN−末端又はC−末端で融合されている融合された又はハイブリッドポリペプチドも包含することができる。融合されたポリペプチドは、1つのポリペプチドをコードする核酸配列(又はその一部)を、もう1つのポリペプチドをコードする核酸配列(又はその一部)に融合することによって生成される。
【0052】
融合ポリペプチドを生成するための技法は、当業界において知られており、そしてポリペプチドをコードする配列を、それらが読み取り枠を整合して存在し、そして融合されたポリペプチドが同じプロモーター及びターミネーターの制御下にあるよう連結することを包含する。ハイブリッドポリペプチドは、少なくとも2つの異なったポリペプチド(それらの1又は複数のポロペプチドは変異体糸状菌細胞に対して異種であり得る)から得られる部分的又は完全なポリペプチド配列の組み合わせを含んで成ることができる。
【0053】
興味ある異種ポリペプチドをコードする単離された核酸配列が、ポリペプチドの発現を提供するために種々の手段で操作され得る。発現は、ポリペプチドの生成に関与するいずれかの段階、たとえば転写、後−転写修飾、翻訳、後−翻訳修飾及び分泌を包含することが理解されているが、但しそれだけには限定されない。ベクター中への挿入の前、核酸配列の操作が、発現ベクターに依存して、所望され、又は必要である。クローニング方法を用いての核酸配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
【0054】
“核酸構造体”は、本明細書においては、天然に存在する遺伝子から単離され、又は他方では、天然に存在しない態様で組み合わされ、そして並置される、核酸のセグメントを含むように修飾されている、一本鎖又は二本鎖核酸分子として定義される。用語“核酸構造体”は、核酸構造体がコード配列の発現のために必要とされるすべての制御配列を含む場合、用語“発現カセット”と同じ意味である。
【0055】
用語“コード配列”とは、本明細書において定義される場合、mRNAに転写され、そしてポリペプチドに翻訳される配列である。ゲノムコード配列の境界は、一般的に、mRNAの5’末端で読み取り枠のすぐ上流に位置するATG開始コドン、及びmRNAの3’末端で読み取り枠のすぐ下流に位置する転写ターミネーター配列により決定される。コード配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成、組換え又はそれらのいずれかの組み合わせを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0056】
用語“制御配列”とは、異種ポリペプチドの発現のために必要であるか、又はそのために好都合であるすべての成分を包含するよう定義される。個々の制御配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して生来であっても又は外来性であっても良い。そのような制御配列は、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーターシグナル配列、及び転写ターミネーターを包含するが、但しそれらだけには限定されない。最少で、制御配列は、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを包含する。
【0057】
制御配列は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域と制御配列との連結を促進する特定の制限部位を導入するためにリンカーを提供され得る。用語“作用可能に連結される”とは、本明細書においては、制御配列が、それが異種ポリペプチドの生成を方向づけるよう、DNA配列のコード配列に対して有利な位置に適切に配置される形状として定義される。
【0058】
制御配列は、適切なプロモーター配列、すなわち核酸配列の発現のために糸状菌細胞により認識される核酸配列であり得る。プロモーター配列は、異種ポリペプチドの発現を仲介する転写制御配列を含む。プロモーターは、糸状菌細胞において転写活性を示すいずれかの核酸配列、たとえば変異体の、切断された、及びハイブリッドのプロモーターであり得、そして細胞に対して相同であるか又は異種である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。
【0059】
本発明の方法における核酸構造体の転写を方向づけるための適切なプロモーターの例は、次の酵素をコードする遺伝子から得られるプロモーターである:アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、アスペルギラス・オリザエ アルカリプロテアーゼ、アスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアセトアミダーゼ、アスペルギラス・オリザエアセトアミダーゼ、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ(アメリカ特許第4,288,627号)及びそれらの変異体の切断され、及びハイブリッドのプロモーター。
【0060】
特に好ましいプロモーターはグルコアミラーゼ、TAKAアミラーゼ及びNA2−tpiプロモーター(アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)である。
【0061】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結するよう糸状菌細胞により認識される配列でもあり得る。ターミネーター配列は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列の3’側末端に作用可能に連結される。糸状菌細胞において機能的であるいずれかのターミネーターが、本発明において使用され得る。
【0062】
好ましいターミネーターは、次の酵素をコードする遺伝子から得られる:アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランス アントラニル酸シンターゼ、アスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼ及びフサリウム・オキシスポラム トリプシン−様プロテアーゼ。
【0063】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち、糸状菌細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列の5’側末端に作用可能に連結される。糸状菌細胞において機能低であるいずれかのリーダー配列が、本発明に使用され得る。
好ましいリーダーは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ及びアスペルギラス・ニジュランス トリオースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子から得られる。
【0064】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわち核酸配列の3’末端に作用可能に連結され、そして転写される場合、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためにシグナルとして糸状菌細胞により認識される配列であり得る。糸状菌細胞において機能するいずれかのポリアデニル化配列が、本発明において使用され得る。
好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミアーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ及びアスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼをコードする遺伝子から得られる。
【0065】
対照配列はまた、異種ポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードし、そしてそのコードされたポリペプチドを細胞の分泌路中に方向づけるシグナルペプチドコード領域でもあり得る。核酸配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたポロペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。
【0066】
他方では、コード配列の5’側末端は、そのコード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。通常、そのコード配列がシグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。しかしながら、糸状菌細胞の分泌路中に発現された異種ポリペプチドを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0067】
糸状菌細胞のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、次の酵素のための遺伝子から得られたシグナルペプチドコード領域である:アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、ヒューミコラ・インソレンスセルラーゼ、及びヒューミコラ・ラヌギノサリパーゼ。
【0068】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端で位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般的に不活性であり、そしてプロポリペプチドからプロペプチドの触媒又は自己触媒分解により成熟した活性ポリペプチドに転換され得る。プロペプチドコード領域は、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ遺伝子、又はミセリオプソラ・サーモフィリア ラッカーゼ遺伝子から得られる(WO95/33836号)。
【0069】
シグナルペプチド及びプロペプチド領域の両者がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、そのプロペプチド領域は、ポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、そしてシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
【0070】
核酸構造体はまた、異種ポリペプチドの発現を方向づけるために好都合である1又は複数の因子、たとえば転写活性化因子(たとえば、トランス−作用因子)、カペロン(chaperone)及びプロセッシング プロテアーゼをコードする1又は複数の核酸配列を含んで成ることができる。糸状菌細胞において機能的であるいずれかの因子が本発明において使用され得る。1又は複数のそれらの因子をコードする核酸は、異種ポロペプチドをコードする核酸配列とタンデムに必ずしも存在する必要はない。
【0071】
糸状菌細胞の増殖に関して、異種ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。TAKAα−アミラーゼプロモーター、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター及びアスペルギラス・オリザエグルコアミラーゼプロモーターが、調節配列として使用さえ得る。調節配列の他の列は、遺伝子増幅を可能にするそれらの配列、たとえば重金属により増幅されるメタロチオネイン遺伝子である。それらの場合、異種ポリペプチドをコードする核酸配列が、調節配列により作用可能に連結される。
【0072】
細胞に内因性である核酸配列の発現はまた、内因性核酸配列の発現を変更するために必要な最少数の成分を含む核酸構造体を用いて変更され得る。1つの態様においては、核酸構造体は好ましくは、(a)標的化配列、(b)調節配列、(c)エキソン、及び(c)スプライス−ドナー部位を含む。細胞中への核酸構造体の導入に基づいて、その構造体は、相同組換えにより、内因性核酸配列部位で細胞ゲノム中に挿入する。
【0073】
標的化配列は、要素(b)−(d)が内因性核酸配列に作用可能に連結されるように、その内因性核酸配列中への前記要素(a)−(d)の組み込みを方向づける。もう1つの態様においては、核酸構造体は、(a)標的化配列、(b)調節配列、(c)エキソン、(d)スプライス−ドナー部位、(e)イントロン、及び(f)スプライス−受容体部位を含み、ここで標的化配列が、要素(b)−(f)が内因性核酸配列に作用可能に連結されるように、要素(a)−(f)の組み込みを方向づける。しかしながら、前記構造体は、追加の成分、たとえば選択マーカーも含むことができる。
【0074】
両態様においては、それらの成分の導入は、内因性核酸配列の発現が変更されている新規転写単位の生成をもたらす。本質的には、その新規転写単位は、標的化構造体及び内因性核酸配列により導入される配列の融合生成物である。内因性核酸配列が変更される1つの態様においては、核酸配列が活性化される。この態様においては、相同組換えが、対応する親細胞における現象によりも高いレベルでの核酸配列の発現を引き起こす調節配列の挿入を通して親細胞の内因性核酸配列に通常関係する調節領域を置換し、破壊し、又は無能化するために使用される。活性化された核酸配列はさらに、当業界においてよく知られている方法を用いて、構造体における増幅できる選択マーカー遺伝子の包含により増幅され得る(たとえば、アメリカ特許第5,641,670号を参照のこと)。内因性核酸配列が変更されているもう1つの態様においては、遺伝子の発現が低められる。
【0075】
標的化配列は、内因性核酸配列内に、核酸配列に隣接して、上流の遺伝子内に、又は内因性核酸配列の上流及びその配列から一定の距離に存在することができる。1又は複数の標的化配列が使用され得る。たとえば、環状プラスミド又はそのDNAフラグメントは好ましくは、単一の標的化配列を使用し、そして線状プラスミド又はそのDNAフラグメントは好ましくは、2種の標的化配列を使用する。
構造体の調節配列は、1又は複数のプロモーター、エンハンサー、骨格−結合領域又はマトリックス結合部位、負の調節要素、転写結合部位、又はそれらの配列の組み合わせから構成され得る。
【0076】
構造体はさらに、内因性核酸配列の1又は複数のエキソンを含む。エキソンは、エキソン配列が内因性核酸配列のコード領域と整合して存在するように、RNAにコピーされ、そして成熟mRNA分子に存在するDNA配列として定義される。エキソンは、本来、1又は複数のアミノ酸をコードし、そして/又はアミノ酸を部分的にコードするDNAを含むことができる。他方では、エキソンは、5’側非コード領域に対応するDNAを含む。外因性エキソン又はエキソ類が1又は複数のアミノ酸及び/又はその一部をコードする場合、核酸構造体は、転写及びスプライシングに基づいて、読み取り枠が内因性核酸配列のコード領域と整合して存在し、その結果、第2エキソンに由来するmRNAの一部の適切な読み取り枠が変化していないように企画される。
【0077】
構造体のスプライス−ドナー部位は、1つのエキソンのスプライシングをもう1つのエキソンに方向づける。典型的には、第1のエキソンは第2のエキソンの5’側に存在し、そしてその3’側上の第1のエキソンをオーバーラップし、そしてそれを端に有するスプライス−ドナー部位は、第2のエキソンの5’側上の第2のエキソンを端に有するスプライス−受容体部位を認識する。スプライス−ドナー部位のように、スプライス−受容体部位は、1つのエキソンのスプライシングをもう1つのエキソンに方向づける配列である。スプライス−ドナー部位に関連して作用する場合、スプライシング装置は、イントロンの除去をもたらすためにスプライス−受容体部位を使用する。
【0078】
上記の種々の核酸及び制御配列は、1又は複数の便利な制限部位で異種ポリペプチドをコードする核酸配列の挿入又は置換を可能にするためにそれらの部位を含むことができる組換え発現ベクターを生成するために一緒に連結され得る。他方では、異種ポリペプチドをコードする核酸配列は、前記配列又は前記配列を含んで成る核酸構造体を、発現のための適切なベクター中に挿入することによって発現され得る。発現ベクターを創造する場合、そのコード配列はベクターに位置し、その結果、コード配列は発現及びたぶん分泌のための適切な制御配列により作用可能に連結される。
【0079】
組換え発現ベクターは、組換えDNA方法に便利にゆだねられ得、そして異種ポリペプチドをコードする核酸配列の発現をもたらすことができるいずれかのベクター(たとえば、プラスミド又はウィルス)であり得る。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される予定である糸状菌細胞とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは、線状又は閉環された環状プラスミドであり得る。ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち染色体存在物として存在するベクター(その複製は染色体複製には無関係である)、たとえばプラスミド、染色体外要素、ミニクロモソーム又は人工染色体であり得る。
【0080】
ベクターは自己複製を確かめるためのいずれかの手段を含むことができる。他方では、ベクターは、糸状菌細胞中に導入される場合、ゲノム中に組み込まれ、そしてそれが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであり得る。ベクターシステムは、糸状菌細胞のゲノム中に導入される全DNA又はトランスポゾンを一緒に含む、単一のベクター又はプラスミド、又は複数のベクター又はプラスミドであり得る。
【0081】
ベクターは好ましくは、形質転換された糸状菌細胞の容易な選択を可能にする1又は複数の選択マーカーを含む。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。
【0082】
糸状菌宿主細胞に使用するための選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない;amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びに他の種からの同等物。アスペルギラス・ニジュランス又はアスペルギラス・オリザエのamdS及びpyrG遺伝子及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのbar遺伝子が、糸状菌細胞への使用のために好ましい。
【0083】
ベクターは好ましくは、糸状菌細胞ゲノム中へのベクターの安定した組み込み、又は細胞のゲノムに無関係に細胞におけるベクターの自律的複製を可能にする要素を含む。
“導入”とは、核酸配列を含んで成るベクターを糸状菌細胞中に導入することを意味し、その結果、前記ベクターは染色体組み込み体として、又は自己複製染色体ベクターとして維持される。組み込みは一般的に、核酸配列が細胞中に安定して維持される場合、好都合であると思われる。染色体中へのベクターの組み込みは、相同組換え、非相同組換え又はトランスポジションにより起こる。
【0084】
糸状菌細胞中への発現ベクターの導入は、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体既知の態様での細胞壁の差異性から成る方法を包含することができる。アスペルギラス宿主細胞の形質転換のための適切な方法は、ヨーロッパ特許第238023及びYeltonなど., 1984, Proceedings of the National of sciences USA 81: 1470-1474に記載される。フサリウム種を形質転換するための適切な方法は、Malardierなど., 1989, Gene 78; 147-156, 及びWO96/00787号により記載される。
【0085】
糸状菌細胞のゲノム中への組み込みのためには、ベクターは、相同又は非相同組換えによるゲノム中へのベクターの安定した組み込みのためのベクター中の異種ポリペプチド、又はいずれか他の要素をコードする核酸配列に依存する。他方では、ベクターは、糸状菌細胞のゲノム中への相同組換えによる組み込みを方向づけるための追加の核酸配列を含むことができる。その追加の核酸配列は、染色体における正確な位置でのゲノム中へのベクターの組み込みを可能にする。
【0086】
正確な位置での組み込みの可能性を高めるために、組み込み要素は好ましくは、相同組換えの可能性を高めるために対応する標的配列と高い相同性を示す十分な数の核酸、たとえば100〜1,500個の塩基対、好ましくは400〜1,500個の塩基対、及び最も好ましくは800〜1,500個の塩基対を含むべきである。組み込み要素は、糸状菌細胞のゲノムにおける標的配合と相同であるいずれかの配列であり得る。さらに、組み込み要素は、非コード又はコード核酸配列であり得る。他方では、ベクターは非相同組換えにより細胞のゲノム中に組み込まれ得る。
【0087】
自律複製のためには、ベクターはさらに、問題の糸状菌細胞におけるベクターの自律的複製を可能にする複製の起点を含むことができる。
組換え発現ベクターを構成するために本明細書に記載される要素を連結するために使用される方法は、当業者に良く知られている(たとえば、J. Sambrook, E.F. Fritsch, and T. Maniatus, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor, New York を参照のこと)。
【0088】
本発明のもう1つの観点においては、変異体糸状菌細胞はさらに、興味ある異種ポリペプチドの生成、回収及び/又は適用に対して有害であり得るタンパク質をコードする1又は複数の核酸配列の修飾を含むことができる。その修飾は、同じ条件下で培養される場合、第3核酸配列の修飾を伴わないで、変異体細胞よりも一層の異種ポリペプチドを生成する変異体細胞をもたらす1又は複数の第3核酸配列の発現を低めるか又は排除する。
【0089】
前記第3核酸配列は、いずれかのタンパク質又は酵素をコードすることができる。たとえば、前記酵素は、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターぜ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、又はキシラナーゼである。第3核酸配列は、好ましく、タンパク質分解酵素、たとえばアミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ又はプロテアーゼをコードする。
【0090】
発明はまた、
(a)トリコテセンの生成に関係するする遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る核酸配列を、親糸状菌細胞中に導入し;そして
(b)同じ条件下で培養される場合、トリコテセンの生成が前記変異体細胞の親糸状菌細胞よりも低い、修飾された核酸配列を含んで成る変異体を、前記段階(a)から同定する;
ことを含んで成る、トリコテセン−欠失糸状菌変異体細胞を得るための方法に関する。
【0091】
本発明はまた、異種ポリペプチドをコードする第1核酸配列、及びトリコテセンの生成に関与する遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る第2核酸配列を含んで成る、異種ポリペプチドを生成するための糸状菌細胞のトリコテセン−欠失変異体にも関し、ここで前記変異体細胞は、同じ条件下で培養される場合、変異体細胞の親糸状菌細胞よりもトリコテセンを低く生成する。
【0092】
トリコジエンシンターゼ及びそれをコードする核酸
本発明はまた、単離されたトリコジエンシンターゼにも関する。
第1の態様においては、本発明は、配列番号2に対して少なくとも約97%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたトリコジエンシンターゼ(この後、“相同ポリペプチド”と称する)に関する。好ましい態様においては、相同ペプチドは、配列番号2と5個のアミノ酸で、好ましくは4個のアミノ酸で、より好ましくは3個のアミノ酸で、さらにより好ましくは2個のアミノ酸で、及び最も好ましくは1個のアミノ酸で異なるアミノ酸配列を有する。
【0093】
本発明のためには、2個のアミノ酸配列間の同一性の程度は、同一性表及び次の複数の照準パラメーターを伴って、LASERGENE(商標)MEGALIGN(商標)ソフトウェア(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を用いて、Clustal方法(Higgins, 1989, CABIOS 5: 151-153)により決定される:10のギャップペナルティー及び10ギャップ長さペナルティー。対様照準パラメーターは、Ktuple=1、ギャップペナルティー=3、ウィンドウ=5及び対角線=5である。
【0094】
好ましくは、本発明のトリコジエンシンターゼは、配列番号2のアミノ酸配列又はその対立遺伝子変異体;又はトリコジエンシンターゼ活性を有するそのフラグメントを含んで成る。より好ましい態様においては、本発明のトリコジエンシンターゼは、配列番号2のアミノ酸配列を含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、本発明のトリコジエンシンターゼは、配列番号2のアミノ酸配列又はその対立遺伝子変異体;又はトリコジエンシンターゼ活性を有するそのフラグメントから成る。もう1つの好ましい態様においては、本発明のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列から成る。
【0095】
配列番号2のフラグメントは、このアミノ酸のアミノ及び/又はカルボキシル末端から欠失される1又は複数のアミノ酸を有するポリペプチドである。好ましくは、フラグメントは、少なくとも290個のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも320個のアミノ酸残基、及び最も好ましくは少なくとも350個のアミノ酸残基を含む。
【0096】
対立遺伝子変異体は、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子のいずれか複数の二者択一形を示す。対立遺伝子変動は、天然においては、突然変異を通して生じ、そして集団内の多型現象をもたらす。遺伝子突然変異はサイレンであり(コードされたポリペプチドの変化がない)、又は変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。ペオペプチドの対立遺伝子変異体は、遺伝子の対立遺伝子変異体によりコードされるポリペプチドである。
【0097】
第2の態様においては、本発明は、
(i)配列番号1のヌクレオチド2521-3686、
(ii)配列番号1のヌクレオチド2521-3686に含まれるcDNA配列、
(iii)上記(i)もしくは(ii)の副配列、又は
(iv)上記(i), (ii)もしくは(iii)の相補的鎖;
と非常に低い緊縮条件、好ましくは低い緊縮条件、より好ましくは中位の緊縮条件、より好ましくは中位の高い緊縮条件、さらにより好ましくは高い緊縮条件そして最も好ましくは非常に高い緊縮条件下でハイブリダイズする核酸プローブと、上記の同じ条件下でハイブリダイズする核酸配列によりコードされる単離されたトリジェンシンターゼに関する(J. Sambrook, E.F. Fritsch, and T. Maniatus, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor, New York)。
【0098】
配列番号1の副配列は、少なくとも100個のヌクレオチド又は好ましくは少なくとも200個のヌクレオチドであり得る。さらに、その副配列は、トリコジエンシンターゼ活性を有するポリペプチドフラグメントをコードすることができる。そのポリペプチドはまた、トリコジエンシンターゼ活性を有するポリペプチドの対立遺伝子変異体又はそのフラグメントでもあり得る。
【0099】
配列番号1の核酸配列又はその副配列、及び配列番号2のアミノ酸配列又はそのフラグメントは、当業界において良く知られている方法に従って、異なった属又は種の株からのトリコジエンシンターゼをコードするDNAを同定し、そしてクローン化するための核酸プローブを企画するために使用され得る。特に、そのようなプローブは、そこにおける対応する遺伝子を同定し、そして単離するために、標準のサザンブロット方法に従って、興味ある属又は種のゲノム又はcDNAとのハイブリダイゼーションのために使用され得る。
【0100】
そのようなプローブは、完全な配列よりも相当に短いが、しかし少なくとも15個、好ましくは少なくとも25個及びより好ましくは少なくとも35個の長さのヌクレオチドであるべきである。より長いプローブもまた使用され得る。DNA及びRNAの両プローブが使用され得る。プローブは典型的には、対応する遺伝子を検出するためにラベルされる(たとえば、32P, 3H, 35S, ビオチン、アビジン、フルオレセイン又はジゴキシゲニンにより)。そのようなプローブは、本発明により包含される。
【0101】
従って、そのような他の生物から調製されたゲノムDNA又はcDNAライブラリーは、本明細書に記載されるプローブとハイブリダイズし、そしてトリコジエンシンターゼをコードするDNAについてスクリーンされ得る。そのような生物からのゲノム又は他のDNAは、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、又は他の分離技法により分離され得る。ライブラリーからのDNA又は分解されたDNAが、ニトロセルロース又は他の適切なキャリヤー材料に移行され、そしてその上に固定され得る。
【0102】
配列番号1と相同であるクローンもしくはDNA、又はその副配列を同定するためには、キャリヤー材料がサザンブロットに使用される。本発明のためには、ハイブリダイゼーションは、核酸配列が、非常に低い〜非常に高い緊縮条件下で、配列番号1に示されるヌクレオチド配列、その相補的鎖、又はその副配列に対応するラベルにされた核酸プローブにハイブリダイズすることを示す。核酸プローブがそれらの条件下でハイブリダイズする分子は、X−線フィルムを用いて検出される。
【0103】
好ましい態様においては、核酸プローブは、配列番号2のポリペプチド又はその副配列をコードする核酸配列である。もう1つの好ましい態様においては、核酸プローブは配列番号1である。もう1つの好ましい態様においては、核酸プローブは、配列番号1のヌクレオチド2521-3686である。もう1つの好ましい態様においては、核酸プローブは、E.コリNRRL B−30029に含まれるプラスミドpTri5に含まれる核酸配列であり、ここで核酸配列はトリコジエンシンターゼをコードする。もう1つの好ましい態様においては、核酸プローブは、E.コリNRRL B−30029に含まれるプラスミドpTri5に含まれる成熟ポリペプチドコード領域である。
【0104】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドの長さのプローブに関して、非常に低い〜非常に高い緊縮条件は、標準のサザンブロット方法に従っての、5×SSPE, 0.3%SDS, 200μg/ml の剪断され、そして変性されたサケ精子DNA、及び25%ホルムアミド(非常に低い及び低い緊縮に関して)、35%ホルムアミド(中位い及び中位の高い緊縮に関して)、又は50%ホルムアミド(高い及び非常に高い緊縮に関して)における42℃でのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションとして定義される。
【0105】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドの長さプローブに関しては、キャリヤー材料は最終的に、2×SSC, 0.2%SDS溶液を用いて、好ましくは少なくとも45℃(非常に低い緊縮)、より好ましくは少なくとも50℃(低い緊縮)、より好ましくは少なくとも55℃(中位の緊縮)、より好ましくは少なくとも60℃(中位の高い緊縮)、さらにより好ましくは少なくとも65℃(高い緊縮)、および最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高い緊縮)で、それぞれ15分間、3度洗浄される。
【0106】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、緊縮条件は、0.9MのNaCl、0.09Mのトリス−HCl, pH7.6, 6mM のEDTA, 0.5のNP-40, 1×Denhardt’s溶液、1mMのピロリン酸ナトリウム、1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、0.1mMのATP及び0.2mgの酵母RNA(ml当たり)における、Bolton and McCarthy(1962、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48: 1390)に従って計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度での標準のサザンブロット方法に従ってのプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及び後−ハイブリダイゼーション洗浄として定義される。
【0107】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、キャリヤー材料は、6×SSC及び0.1%SDSにより15分間、1度、及び6×SSCを用いて、計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度でそれぞれ15分間、2度、洗浄される。
第3の態様においては、本発明は、1又は複数のアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入を含んで成る、配列番号2のアミノ酸配列を有するトリコリジンシンターゼの変異体に関する。
【0108】
変異体ポリペプチドのアミノ酸配列は、1又は複数のアミノ酸残基の挿入又は欠失、及び/又は異なったアミノ酸残基による1又は複数のアミノ酸残基の置換により、配列番号2のアミノ酸配列又はその成熟ポリペプチドと異なることができる。好ましくは、アミノ酸変更は、マイナーな性質のもの、すなわちタンパク質の折りたたみ及び/又は活性に有意に影響を及ぼさない保存性アミノ酸置換;典型的には1〜約30個のアミノ酸の小さな欠失;小さなアミノ−又はカルボキシ−末端−、たとえばアミノ−末端のメチオニン残基の延長;約20〜25個までの残基の小さなリンカーペプチドの延長;又は実効電荷又は他の機能、たとえばポリ−ヒスチジン系、抗原性エピトープ又は結合ドメインを変更することにより精製を促進する小さな延長のものである。
【0109】
保存性置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小さなアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン及びメチオニン)のグループ内である。
【0110】
一般的に、非活性を変更しないアミノ酸置換は当業界において知られており、そしてたとえば、H. Neurath and R.L. Hill, 1979, The Proteins, Academic Press, New York により記載されている。最も通常生じる交換は次のものである: Ala/Ser, Val/Ile, Asp/Glu, Thr/Ser, Ala/Gly, Ala/Thr, Ser/Asn, Ala/Val, Ser/Gly, Tyr/Phe, Ala/ Pro, Lys/Arg, Asp/Asn, Leu/Ile, Leu/Val, Ala/Glu及びAsp/Gly並びにそれらの逆。
【0111】
本発明のポリペプチドは、配列番号2の成熟ポリペプチドのトリコジエンシンターゼ活性の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも100%を有する。
好ましい態様においては、本発明のトリコジエンシンターゼは、フサリウム・ベネナタム株、及びより好ましくは、フサリウム・ベネナタムATCC20334又はその変異体株、たとえば配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドから得られる。
【0112】
本明細書において定義される場合、“単離された”トリコジエンシンターゼは、SDS−PAGEにより決定される場合、他のポリペプチドを実質的に有さないポリペプチド、たとえば少なくとも約20%の純度、好ましくは少なくとも40%の純度、より好ましくは約60%の純度、さらに好ましくは約80%の純度、最も好ましくは約90%の純度及びさらに最も好ましくは約95%の純度のポリペプチドである。
【0113】
本発明は、本発明のトリコジエンシンターゼをコードする単離された核酸配列にも関する。好ましい態様においては、核酸配列は、配列番号1で示される。もう1つの好ましい態様においては、核酸配列は、E.コリNRRL B−30029に含まれるプラスミドpTri5に含まれる配列である。もう1つの好ましい態様においては、核酸配列は、配列番号1の成熟ポリペプチドコード領域である。もう1つの好ましい態様においては、核酸配列は、E.コリNRRL B−30029に含まれるプラスミドpTri5に含まれる成熟ポリペプチドコード領域である。本発明はまた。遺伝子コードの縮重により配列番号1とは異なる、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を包含する。本発明はまた、トリコジエンシンターゼ活性を有する、配列番号2のフラグメントをコードする配列番号1の副配列にも関する。
【0114】
配列番号1の副配列は、配列番号1により包含される核酸配列であるが、但し5’及び/又は3’側末端からの1又は複数のヌクレオチドが欠失されている。好ましくは、副配列は、少なくとも870個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも960個のヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも1050個オヌクレオチドを含む。
本発明はまた、配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列における少なくとも1つの突然変異を含んで成る変異体核酸配列にも関し、ここで前記変異体核酸配列は配列番号2のアミノ酸1〜380から成るポリペプチドをコードする。
【0115】
ポリペプチドをコードする核酸配列を単離し又はクローン化するために使用される技法が本明細書において記載されている。核酸配列は、フサリウムの株、又は他の又は関連する生物からクローン化され、そして従って、核酸配列のポリペプチドコード領域の対立遺伝子又は種変異体であり得る。
用語“単離された核酸配列”とは、本明細書において使用される場合、アガロース電気泳動により決定される場合、他の核酸配列を実質的に有さず、たとえば少なくとも約20%純度、好ましくは少なくとも約40%の純度、より好ましくは少なくとも約60%の純度、さらにより好ましくは少なくとも約80%の純度、及び最も好ましくは少なくとも約90%の純度である核酸配列を言及する。たとえば、単離された核酸配列は、それが再生されるであろう異なった部位にその天然の位置から核酸配列を再配置するために遺伝子工学に使用される標準のクローニング方法により得られる。
【0116】
クローニング方法は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中へのフラグメントの挿入、及び核酸配列の複数コピー又はクローンが複製されるであろう宿主細胞中への組換えベクターの組み込みを包含する。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源、又はそれらのいずれかの組み合わせのものであり得る。
【0117】
本発明はまた、トリコジエンシンターゼをコードする、配列番号1のヌクレオチド2521-3686に対して少なくとも約97%の相同生の程度を有する核酸配列にも関する。本発明のためには、2個の核酸配列間の相同性の程度は、同一性表及び次の複数の照準パラメーターを伴って、LASERGENE(商標)MEGALIGN(商標)ソフトウェア(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を用いて、Wilbur-Lipman 方法(Wilbur and Lipman, 1983, Proceedings of the National Academy of Science USA 80:726-730)により決定される:10のギャップペナルティー及び10のギャップ長さペナルティー。対様照準パラメーターは、Ktuple=3、ギャップペナルティー=3及びウィンドウ=20である。
【0118】
本発明のトリコジエンシンターゼをコードする核酸配列の修飾は、トリコジエンシンターゼに実質的に類似するポリペプチドの合成のために必要である。用語、トリコジエンシンターゼに“実質的に類似する”とは、ポリペプチドの天然に存在しない形を言及する。それらのポリペプチドは、その天然源から単離されたトリコジエンシンターゼとは、いくつかの構築された態様で異なり、たとえば非活性、熱安定性、pH最適性又は同様のものにおいて異なる変異体であり得る。
【0119】
変異体配列は、配列番号1のポリペプチドコード部分として提供される核酸配列、たとえばその副配列に基づいて、及び/又は核酸配列によりコードされるポリペプチドのもう1つのアミノ酸配列を生ぜしめないが、しかし酵素の生成のために意図された宿主生物のコドン使用法に対応するヌクレオチド置換の導入により、又は異なったアミノ酸配列を生ぜしめることができるヌクレオチド置換の導入により構成され得る。ヌクレオチド置換の一般的記載のためには、Fordなど., 1991, Protein Expression and Purification 2:95-107を参照のこと。
【0120】
そのような置換は、分子の機能に対して決定的である領域外で行われ、そしてさらに活性ポリペプチドをもたらすことは、当業者に明らかであろう。本発明の単離された核酸配列によりコードされるポリペプチドの活性に必須であり、そして従って、好ましくは置換を受けやすくないアミノ酸残基は、当業界において知られている方法、たとえば特定部位の突然変異誘発又はアラニン−走査突然変異誘発に従って同定され得る(たとえば、Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085を参照のこと)。
【0121】
後者の技法においては、突然変異は分子における正に荷電された残基ごとに導入され、そしてその得られる変異体分子は、分子の活性に対して決定的であるアミノ酸残基を同定するためにトリコジエンシンターゼ活性について試験される。基質−酵素相互作用の部位はまた、核磁気共鳴分析、クリスタログラフィー又は光親和性ラベリングのような技法により決定されるように、立体構造体の分析により決定され得る(たとえば、de Vos など., 1992, Science 255: 306-312; Smith など., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899-904; Wlodaver など., 1992, FEBS Letters 309: 59-64を参照のこと)。
【0122】
本発明はまた、配列番号1の核酸配列又はその相補的鎖と同じ条件下でハイブリダイズする核酸プローブと、非常に低い緊縮条件、好ましくは低い緊縮条件、より好ましくは中位の緊縮条件、より好ましくは中位の高い緊縮条件、さらにより好ましくは高い緊縮条件及び最も好ましくは非常に高い緊縮条件下でハイブリダイズする。本発明のトリコジエンシンターゼをコードする単離された核酸配列;上記で定義されたような又はその対立遺伝子変異体及び副配列にも関する(Sambrook など., 1989, 前記)。
【0123】
本発明はまた、
(a)非常に低い、低い、中位の、中位の高い、高い又は非常に高い緊縮条件下で、(i)配列番号1のヌクレオチド2521-3686,(ii)配列番号1のヌクレオチド2521-3686に含まれるcDNA配列、(iii)上記(i)もしくは(ii)の副配列、又は(iV)上記(i), (ii)もしくは(iii)の相補的鎖、によりDNAをハイブリダイズせしめ;そして
(b)核酸配列を単離することによって生成される、単離された核酸配列にも関する。副配列は好ましくは、少なくとも100個のヌクレオチドの配列、たとえばトリコジエンシンターゼ活性を有するポリペプチドフラグメントをコードする配列である。
【0124】
好ましい態様においては、トリコジエンシンターゼをコードする単離された核酸配列はフサリウム・ベネナタムから得られ、そしてより好ましい態様においては、その核酸配列はフサリウム・ベネナタムATCC 20334, たとえば配列番号1に示される核酸配列から得られる。もう1つのさらに好ましい態様においては、核酸配列は、E.コリNRRL B-30029に含まれるプラスミドpTri5に含まれる配列である。本発明はまた、遺伝子コードの縮重により配列番号1とは異なる核酸配列も包含する。
【0125】
核酸配列は、現在知らされている種の名称にもかかわらず、Yoder and Christianson,1998, 前記及びO’Donnellなど., 1998, 前記により定義されるように、フサリウム・ベネナタムの分類学的同等物である微生物から得られる。
本発明はさらに、配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列又はその副配列中に少なくとも1つの突然変異を導入することを含んで成る。変異体核酸配列を生成するための方法に関し、ここで前記変異体核酸配列は、トリコジエンシンターゼ活性を有する、配列番号2のアミノ酸1−380又はそのフラグメントから成るポリペプチドをコードする。
【0126】
1つのヌクレオチドをもう1つのヌクレオチドにより交換するためへの核酸配列中への突然変異の導入は、当業界において知られているいずれかの方法を用いて、特定部位の突然変異誘発により達成され得る。興味ある挿入体を有する、超らせん二本鎖DNAベクター及び所望する突然変異を含む2種の合成プライマーを用いる方法が特に有用である。ベクターの反対鎖に対してそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、Pfu DNAポリメラーゼによる温度サイクリングの間、延長する。
【0127】
プライマーの組み込みに基づいて、付着されたニッケルを含む突然変異誘発されたプラスミドが生成される。温度サイクリングに続いて、生成物は、親DNA鋳型を消化し、そして突然変異−含有の合成されたDNAについて選択するために、メチル化され、そしてヘミメチル化されたDNAに対して特異的であるDpnIにより処理される。当業界において知られている他の方法もまた使用され得る。
【0128】
本発明はまた、核酸構造体、組換え発現ベクター、及び配列番号1の核酸配列、その副配列又は相同体を含む、配列の発現のための宿主細胞にも関する。構造体及びベクターは、本明細書に記載のようにして構成され得る。宿主細胞は核酸配列の発現のために適切ないずれかの細胞である。用語“宿主細胞”とは、複製の間に生じる突然変異により親細胞とは同一でない親細胞のいずれかの子孫を包含する。宿主細胞の選択は、ポリペプチドをコードする遺伝子及びその源にかなりの程度、依存するであろう。
宿主細胞は、真核生物、たとえば哺乳類、昆虫、植物、又は菌類細胞であり得る。
【0129】
好ましい態様においては、宿主細胞は菌類細胞である“菌類”とは、本明細書において使用される場合、門アスコミコタ(Ascomycota)、バシジオミコタ(Basidiomycota)、キトリジオミコタ(Chytridiomycota)及びヅイゴミコタ(Zygomycota)(Hawksworth など., Ainsworth and Bisby’s Dictionary of the Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKにより定義される)、及びオーミコタ(Oomycota)(Hawksworth など., 1995, 前記、171ページに引用される)、並びに栄養胞子菌(Hawksworh など., 1995, 前記)を包含する。
【0130】
より好ましい態様においては、菌類宿主細胞は酵母細胞である“酵母”とは、本明細書において使用される場合、子嚢胞子酵母(Endomycetals)、担子胞子酵母、及び不完全菌類(Blastomycetes)に属する酵母を包含する。酵母の分類は未来において変化し得るので、本発明のためには、酵母は、Biology and Activities of Yeast (Skinner, F.A., Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds. Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No. 9, 1980) に記載のようにして定義されるであろう。
【0131】
さらにより好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hunsenula)、クレベロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)又はヤロウィア(Yarrowia)である。
【0132】
最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyses cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイビリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensisi)、又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)細胞である。もう1つの最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、来るべろミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)である。もう1つの最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。
【0133】
もう1つのより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は糸状菌細胞である。“糸状菌”とは、ユーミコタ(Eumycota)及びオーミコタ(Oomycota)のすべての糸状形を包含する(Hawksworthなど., 1995, 前記により定義されるような)。糸状菌は一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合多糖類から構成される菌子体壁により特徴づけられる。成長増殖は、菌子拡張によってであり、そして炭素代謝は絶対好気性である。対照的に、酵母、たとえばサッカロミセス・セレビシアエによる成長増殖は、単細胞葉状体の発芽によってであり、そして炭素代謝は発酵性である。
【0134】
さらにより好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、フサリウム(Fusarium)、ヒューミコラ(Humicola)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ネウロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicilium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコダーマ(Trichoderma)の種の細胞であるが、但しそれらだけには限定されない。
【0135】
最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アスペルギラス・アワモリ、アスペルギラス・ホエチダス、アスペルギラス・ジャポニカ、アスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・オリザエ細胞である。
【0136】
もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、フサリウム・バクトリジオイデス、フサリウム・クロックウェレンズ 、フサリウム・セレアリス、フサリウム・クルモラム、フサリウム・グラミネアラム、フサリウム・グラミナム、フサリウム・ヘテロスポラム、フサリウム・ネグンジ、フサリウム・オキシスポラム、フサリウム・レチキュラタム、フサリウム・ロゼウム、フサリウム・サムブシウム、フサリウム・サルコクロウム、フサリウム・ソラニ、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・スルフレウム、フサリウム・トルロサム、フサリウム・トリコセシオイデス又はフサリウム・ベネナタム細胞である。
【0137】
さらに最も好ましい態様においては、糸状菌親細胞は、フサリウム・ベネナタム(Nirenberg sp. nov.)細胞である。さらに最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、ヒューミコラ・インソレンス、ヒューミコラ・ラヌギノサ、ムコル・ミエヘイ、ミセリオプソラ・サーモフィリア、ネウロスポラ・クラサ、ペニシリウム・プルプロゲナム、チエラビア・テレストリス、トリコダーマ・ハルジアナム、トリコダーマ・コニンギ、トリコダーマ・ロンジブラキアタム、トリコダーマ・レセイ又はトリコダーマ・ビリデ細胞である。
【0138】
糸状菌細胞は、本明細書に記載される方法を用いて形質転換され得る。酵母は、Becker and Guarente. In Abelson, J.N. and Simon, M.I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York; Ito など, 1983, Journal of Bacteriology 153: 163; 及びHinnen など, 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75; 1920により記載される方法を用いて形質転換され得る。
【0139】
本発明はまた、
(a)トリコジエンシンターゼを含んで成る上清液を生成するために、その野生型において、ポリペプチドを生成できる菌株を培養し;そして
(b)トリコジエンシンターゼを回収する;
ことを含んで成る、本発明のトリコジエンシンターゼを生成するための方法にも関する。好ましくは、前記菌株は、フサリウム属の株、及び好ましくは、フサリウム・ベネナタムである。
【0140】
本発明はまた、
(a)トリコジエンシンターゼの生成を助ける条件下で宿主細胞を培養し;そして
(b)トリコジエンシンターゼを回収する;
ことを含んで成る、本発明のトリコジエンシンターゼを生成するための方法にも関する。
【0141】
本発明はさらに、
(a)内因性核酸配列によりコードされるトリコジエンシンターゼの生成のために適切な条件下で、調節配列、エキソン、及び/又は細胞に対して内因性である本発明の核酸配列の第2エキソンに作用可能に連結されるスプライスドナーを含んで成る新規転写単位をそこに組み込んでいる、相同組換え細胞を培養し;そして
(b)トリコジエンシンターゼを回収する;
ことを含んで成る、トリコジエンシンターゼを生成するための方法にも関する。前記方法は、アメリカ特許第5,641,670号に記載されるように、遺伝子活性化技法の使用に基づかれる。
【0142】
本発明の生成方法においては、細胞は、本明細書に記載されるような当業界において知られている方法を用いて、トリコジエンシンターゼの生成のために適切な栄養培地において培養される。トリコジエンシンターゼは、その酵素に対して特異的な、当業界において知られている方法を用いて検出され得る(たとえば、Hohmand Beremand, 1989, Applied and Enviroment Microbiology 55: 1500-1503を参照のこと)。得られるトリコジエンシンターゼは、本明細書に記載のような当業界において知られている方法により回収され、そして精製され得る。
【0143】
硝酸レダクターゼ選択マーカーフリー変異体細胞
本発明はまた、細胞における遺伝子生成物の生成を低めるか又は排除するために、標的遺伝子又はDNA要素を修飾するための選択マーカーとしての硝酸レダクターゼ遺伝子の使用を開示する。次に、硝酸レダクターゼ遺伝子が、選択マーカーを有さない細胞を生成するために細胞から欠失され得る。
【0144】
従って、本発明はまた、
(a)遺伝子生成物をコードする核酸配列を有する親細胞中に、選択マーカーとしての硝酸レダクターゼ及び前記核酸配列の修飾を含んで成る核酸構造体を導入し、ここで前記構造体が親細胞のゲノム中に組み込み、同じ条件下で培養される場合、親細胞に比較して、前記遺伝子生成物の低められた生成をもたらす前記修飾された核酸配列により前記内因性核酸配列を置換し;そして
(b)前記硝酸レダクターゼ遺伝子の存在、及び前記遺伝子生成物の低められた生成について、段階(a)から変異体細胞を選択する;
ことを含んで成る、変異体細胞を得るための方法にも関する。
【0145】
硝酸レダクターゼは、単独の窒素源としての硝酸塩に基づいての細胞の増殖を可能にする亜硝酸塩への硝酸塩の転換を触媒する。単独の窒素源として硝酸塩を使用する可能性を欠いているか又は単に使用する非常に制限された能力を有する細胞に関しては、原則として硝酸レダクターゼ遺伝子は、硝酸塩が細胞により取られる場合、選択マーカーとして使用され得る。硝酸レダクターゼ遺伝子は好ましくは、選択の細胞において優性である。硝酸レダクターゼをコードするDNAは、酵素の機能的形を生成する、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源、又はそれらのいずれかの組み合わせのものであり得る。
【0146】
硝酸レダクターゼ遺伝子は、本明細書に記載されているか又は当業界において知られているいずれかの組換え方法を用いて、いずれかの源から得られる。好ましい態様においては、硝酸レダクターゼ遺伝子は、菌類源から、及びより好ましくは酵母又は糸状菌株から得られる。より好ましい態様においては、硝酸レダクターゼ遺伝子は、ニューロスポラ・クラサから得られる(nit3; Fu and Marzluf, 1987, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 84: 8243-8247を参照のこと)。
【0147】
もう1つのより好ましい態様においては、硝酸レダクターゼ遺伝子は、アスペルギラス株(niaD)、たとえばアスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー、アスペルギラス・オリザエ及びアスペルギラス・パラシチカスから得られる。もう1つのより好ましい態様においては、硝酸レダクターゼ遺伝子は、フサリウム株(nia)、たとえばフサリウム・オキシスポラムから得られる。
【0148】
標的核酸配列の修飾は、本明細書に記載されるか又は当業界において知られている遺伝子挿入、破壊、置換又は欠失のための方法を用いて達成され得る。遺伝子修飾は、1又は複数のヌクレオチド変更、たとえば標的核酸配列又はその一部、たとえばコード領域、シグナル配列、プロモーター、ターミネーター、イントロン又は調節DNA配列(但し、それらだけには限定されない)の挿入、欠失及び/又は置換であり得る。
【0149】
従って、標的核酸配列又はその一部の修飾されたバージョンを含んで成る核酸構造体は、核酸配列の発現の低下または排除のために構成される。次に、その構造体は、欠陥核酸配列を生成するために親細胞中に形質転換され、ここで相同組換えにより、欠陥配列が標的配列又はその一部を置換する。その構造体は、細胞中の導入のためのベクター上に含まれ得る。硝酸レダクターゼ遺伝子は、欠陥核酸配列を含む形質転換体を同定するための選択マーカーとして使用さえる。
【0150】
欠陥核酸配列は、硝酸レダクターゼ遺伝子による標的配列の単純な破壊であり得る。他方では、欠陥核酸配列は、硝酸レダクターゼ遺伝子により行われる破壊の他に、標的配列又はその一部の挿入、置換及び/又は欠失を含むことができる。さらに、欠陥核酸配列は、標的配列、又はその一部の挿入、置換、及び/又は欠失を含むことができ、ここで硝酸レダクターゼ遺伝子は修飾には関与しないが、しかし後者は欠陥配列と隣接する。
【0151】
核酸構造体はさらに、硝酸レダクターゼ遺伝子の結果的な欠失を促進するために、硝酸レダクターゼ遺伝子の5’及び3’側末端で1又は複数の反復体配列を含むことができる。その反復体は、染色体内相同組換えを促進するのに適切ないずれかの核酸配列であり得る。マーカー欠失の頻度は、染色体内相同組換えを受ける遺伝子の能力を高めることによって実質的に高められる。
【0152】
硝酸レダクターゼの有用な性質は、塩素酸塩を、細胞に対して毒性である亜塩素酸塩に転換できることである。本発明のもう1つの観点のための基礎、すなわち硝酸レダクターゼ選択マーカーを有さない形質転換体の生成を形成することがこの性質である。塩素酸塩転換性質は、形質転換された細胞の逆選択を可能にする。硝酸レダクターゼ遺伝子を含む選択された形質転換体は、硝酸レダクターゼ遺伝子を失っているそれらの生存形質転換体を同定するために単独の窒素源として塩素酸塩を含む培地上で増殖される。生存形質転換体のいくつかは、硝酸レダクターゼ遺伝子自体に突然変異を有する。従って、硝酸レダクターゼ遺伝子の欠失は、サザンハイブリダイゼーションにより確かめられるべきである。
【0153】
従って、変異体細胞を得るための方法はさらに、
(c)硝酸レダクターゼ遺伝子が欠失されている培養条件下で、段階(b)からの変異体細胞を選択する;
ことを含んで成る。
【0154】
他方では、変異体細胞を得るための方法はさらに、
(c)修飾された核酸配列の5’及び3’側領域を含んで成る第2核酸配列を含んで成るが、しかし硝酸レダクターゼ遺伝子を欠いている第2核酸構造体を、段階(b)からの変異体細胞中に導入し、ここで前記第2構造体は親細胞のゲノム中に組み込み、修飾された核酸配列を第2核酸配列により置換し;そして
(d)段階(c)からの変異体細胞を、硝酸レダクターゼ遺伝子が欠失されている培養条件下で選択する;
ことを含んで成る。
両者の場合、培養条件は、塩素酸塩を含んで成る、硝酸レダクターゼのための逆選択培地を包含する。
【0155】
選択マーカーとして硝酸レダクターゼ遺伝子を欠失するための好ましい構造体は、5’側から3’側の方向に順に次の要素を含む:欠失されるべき遺伝子の3’側配列に直接的に融合される、欠失されるべき遺伝子の5’側配列、続いて下流に機能的硝酸レダクターゼ遺伝子、続いて下流に欠失されるべき遺伝子の3’側配列。この場合、欠失されるべき遺伝子の3’側の両配列は、それらが選択マーカー遺伝子を両端に有する反復体を形成するよう選択される。
【0156】
この核酸構造体の形質転換、及び欠失されるべき遺伝子の5’及び3’側配列に交差点を有する核酸構造体による、欠失されるべき遺伝子の染色体コピーの続く置換は、遺伝子の欠失をもたらす。選択マーカー遺伝子を端に有する反復体間の続く染色体内組換え、及びそれらの形質転換体の逆選択は最終的に、選択マーカーを有さない株をもたらす。5’及び3’側反復体は、単一の交差組み込みにより遺伝子を欠失するために使用され得る。構造体は、硝酸レダクターゼ遺伝子の欠失の後、外来性硝酸レダクターゼ遺伝子DNAが形質転換された細胞の染色体に残存しないような手段で構成さえ得る。
【0157】
構造体はベクターに含まれ得る。構造体及びベクターは、本明細書に記載のようにして調製され得る。
本発明の方法は、特に、標的遺伝子生成物がタンパク質又は化合物の生成、回収及び/又は適用に対して有害である場合、興味あるタンパク質(又は化合物)の生成において所望しない1又は複数の標的遺伝子生成物の生成を低めるか又は排除するために使用され得る。この発明はまた、抗生物質及び他の生物活性化合物の生合成を低めるか又は排除するためにも使用され得る。
【0158】
前記細胞は、単細胞微生物、たとえば原核生物、又は非単細胞微生物、たとえば真核生物、たとえば哺乳類、昆虫、植物又は菌類細胞であり得る。
好ましい態様においては、宿主細胞は、菌類細胞、たとえば酵母又は糸状菌細胞である。酵母又は菌類細胞は、本明細書に記載される細胞のいずれかであり得る。
【0159】
有用な単細胞は、細菌細胞、たとえば次のグラム陽性細菌バチルス・アルカロフィラス、バチルス・アミロリクエファシエンス、バチルス・ブレビス、バチルス・サーキュランス、バチルス・クラウシ、バチルス・コアギランス、バチルス・ラウタス、バチルス・レンタス、バチルス・リケニホルミス、バチルス・メガテリウム、バチルス・ステアロサーモフィラス、バチルス・スブチリス及びバチルス・スリンギエンシス、又はストレプトミセス細胞、たとえばストレプトミセス・リビダンス又はストレプトミセス・ムリナス、又は次のグラム陰性細菌:E.コリ及びプソイドモナスsp.(但し、それらだけには限定されない)である。
【0160】
細菌細胞中への構造体の導入はたとえば、コンピテント細胞(たとえば、Young and Spizizin, 1961, Journal of Bacteriology 81: 823-829, 又はDubnau and Davidoff-Abelson, 1971, Journal of Molecular Biology 56: 209-221 を参照のこと)を用いてプロトプラスト形質転換(たとえば、Changand Cohen, 1979, Molecular General Genetics 168: 111-115)、エレクトロポレーション(たとえば、Shigekawa and Dower, 1988, Biotechniques 6: 742-751を参照のこと)又は接合(たとえば、Koehler and Thorne, 1987, Journal of Bacteriology 169: 5771-5278を参照のこと)によりもたらされ得る。
【0161】
本発明はまた、そのような方法により生成される変異体細胞にも関する。本発明の変異体細胞は、その変異体細胞に対して生来の又は外来生のポリペプチドの生成のために使用され得る。ポリペプチドは、いずれかのポリペプチド、たとえば本明細書に記載されるそれらのポリペプチドであり得る。本発明の変異体細胞におけるポリペプチドの発現は、本明細書に記載される方法を用いて達成され得る。
【0162】
本発明はまた、(a)ポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成るそのような変異体細胞を、前記ポリペプチドの生成の助けとなる条件下で培養;そして(b)変異体細胞の培養培地からポリペプチドを単離すること含んで成る、ポリペプチドを生成するための方法にも関する。変異体の培養及びポリペプチドの単離のための方法は、本明細書に記載されている。
本発明はさらに、次の例により記載されるが、但しそれらの例は本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0163】
材料:
緩衝液及び基質として使用される化学物質は、少なくとも試薬グレードの市販の製品であった。
【0164】
株:
現在、フサリウム・ベネナタムとして再分類されたフサリウム株A3/5(Yoder and Christianson, 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 62-80; O’Donnellなど., 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 57-67)を、Dr. Anthony Trinci, University of Masachester, Manchester, England から,又はフサリウム株ATCC20334として、American Type Culture Collection, Manassas, VAから得た。フサリウム・ベネナタム株#93(BBA64537)を、Biologische Bundensanstalt fur Land-und Fortswirtscharft, Berlin, Germany から得た。
【0165】
CC1-1, CC1-2, CC1-3, CC1-5, CC1-8, CC2-3, MC3-2, MC3-5, MC3-6及びMC-3-9として命名されたフサリウム・ベネナタムA3/5の形態学的変異体(Wiebeなど., 1992, Mycological Research 96: 555-562; Wiebeなど., 1991, Mycological Research 95; 1284-1288; Wiebe など., 1991, Mycological Research 96: 555-562)は、高く枝分かれされたコロニー変異体である。
【0166】
次の株のすべては、フサリウム・ベネナタムA3/5形態学的変異体CC1-3から誘導された:フサリウム・ベネナタムMLY3(CC1-3に対する同一の相補性特性を有するCC1-3の誘導体);フサリウム・ベネナタムJRoy36-19B(CC1-3, キシラナーゼ-、bar-):フサリウム・ベネナタムLyMC4 (CC1-3, tri5-欠失された、amdS-, bar-,キシラナーゼ-);フサリウム・ベネナタムLyMC4.B (CC1-3, tri5-欠失された、amdS+,bar+,キシラナーゼ-,LyMC4の単一胞子単離物);フサリウム・ベネナタムLyMC4.C (CC1-3, tri5-欠失された、amdS-, bar+,キシラナーゼ,LyMC4の単一胞子単離物);フサリウム・ベネナタムLyMC19 (CC1-3, tri5-欠失された、amdS-, bar-,キシラナーゼ+);
【0167】
フサリウム・ベネナタムLyMC19.2(CC1-3, tri5-欠失された、amdS-, bar+,キシラナーゼ+,LyMC19の単一胞子単離物); フサリウム・ベネナタムLyMC19.5 (CC1-3, tri5-欠失された、amdS+, bar+,キシラナーゼ+,LyMC19の単一胞子単離物);フサリウム・ベネナタムLyMC1(MLY3, tri5−欠失された);フサリウム・ベネナタムLyMC1A (MLY3, tri5-欠失された、amdS, 単一胞子単離物);フサリウム・ベネナタムLyMC1B (MLY3, tri5-欠失された、amdS, 単一胞子単離物);及びフサリウム・ベネナタムLyMC1C (MLY3, tri5-欠失された、amdS, 単一胞子単離物)。
【0168】
培地及び溶液:
AMG微量金属溶液は、1l当たり、14.3gのZnSO4・7H2O, 2.5gのCuSO4・5H2O, 0.5gのNiC2, 13.8gのFeSO4, 8.5gのMnSO4及び3.0gのクエン酸から構成された。
ビオチン原液は、50%エタノール100ml中、ビオチン5mgから構成された。
COVE微量金属溶液は、1l当たり、0.04gのNaB4O7・10H2O, 0.4gのCuSO4・5H2O, 1.2gのFeSO4・7H2O, 0.7gのMnSO4・H2O,0.8gのNa2MoO2・2H2O及び10gのZnSO4・7H2Oから構成された。
50×COVE塩溶液は、1lあたり、26gのKCl、26gのMgSO4・7H2O, 76gのKH2PO4及び50mlのCOVE微量金属から構成された。
【0169】
COVE培地は、1l当たり、342.3gのスクロース、20mlの50×COVE塩溶液、1mMのアセトアミド、1.5mMのCsCl2及び25gのNoble寒天から構成された。
50×Vogels培地は、1l当たり、150gのクエン酸ナトリウム、250gのKH2PO4, 10gのMgSO4・7H2O, 10gのCaCl2・2H2O, 2.5mlのビオチン原液、及び5.0mlのAMG微量金属溶液から構成された。
COVE上部アガロースは、1l当たり、20mlの50×COVE塩、0.8Mのスクロース、15mMの塩化セシウム、10mMのアセトアミド、及び10gの低溶融アガロース(0.6に調節されたpH)から構成された。
【0170】
NY50培地は、1l当たり、62.5gのNutriose 725, 2gのMgSO4・7H2O, 10gのKH2PO4, 2gのK2SO4, 2gのクエン酸、10gの酵母抽出物、2gのウレア、0.5gのCaCl2・2H2O及び0.5mlのAMG微量金属(pH6.0)から構成された。
NYU35培地は、1l当たり、35gのマルトデキストリン、1gのMgSO4・7H2O, 2gのKH2PO4, 2gのクエン酸、4gの酵母抽出物、1gのウレア、及び0.25mlのAMG微量金属(pH6.0)から構成された。
【0171】
RA胞子形質培地は、1l当たり、50gの琥珀酸、12.1gのNaNO3, 1gのグルコース、20mlの50×Vogels及び0.5mlの10mg/mlのNaMoO4原液(pH6.0)から構成された。
YEG培地は、1l当たり、5gの酵素抽出物及び20gのグルコースから構成された。
YEP培地は、1l当たり、10gの酵素抽出物及び20gのペントンから構成された。
YEOG培地は、1l当たり、10gの酵母抽出、20gのペプトン及び20gのグルコーズから構成された。
【0172】
最少培地は、1l当たり、6gのNaNO3、0.52gのKCl, 1.52gのKH2PO4, 1mlのCOVE微量金属溶液、1gのグルコース、500mgのMgSO4・7H2O, 342.3gのスクロース、及び20gのNoble寒天(pH6.5)から構成された。
STCは、0.8Mのソルビトール、25mMのトリス(pH8)、25mMのCaCl2から構成された。
SPTCは、40%のPEG4000、0.8Mのソルビトール、25mMのトリス(pH8)、25mMのCaCl2から構成された。
【0173】
M400Da培地は、1l当たり、50gのマルトデキストリン、2gのMgSO4・7H2O, 2gのKH2PO4, 4gのクエン酸、8gの酵母抽出物、2gのウレア及び1mlのCOVE微量金属溶液から構成された。
胞子形成III培地は、1l当たり、20mlの50×Vogels, 4g のグルコース、0.8gのNaNO3及び1mlの10mg/mlのNaMoO4原液から構成された。
BASTA(商標)を含むVogels培地(第1段階の種子接種)は、1l当たり、20mlの50×Vogels,5%のグルコース、16.5g/mlの一塩基性リン酸アンモニウム、及び5mg/mlのBASTA(商標)(pH6.5)から構成された。
【0174】
niaD変異体の選択のための塩素酸カリウム培地は、1l当たり、20mlの50×COVE塩溶液、61.28gの塩素酸カリウム、0.3gのウレア、25gのNoble寒天、及びオートクレーブ処理の後に添加される2%グルコースから構成された。
フルオロアセトアミド培地は、1l当たり、12g酢酸ナトリウム、2g塩化ナトリウム、0.5gのMgSO4, 3gのKH2PO4, 0.3gのウレア、2gのフルオロアセトアミド、1mlのVogels塩及び15gのNoble寒天(pH6.1)から構成された。
TAE緩衝液は、1l当たり、4.84gのトリス塩基、1.14mlの氷酢酸及び2mlの0.5MのEDTA(pH8.0)から構成された。
【0175】
例1フサリウム・ベネナタムATCC20334のゲノムDNA抽出
フサリウム・ベネナタムATCC20334を、25mlのYEG培地において、28℃及び150rpmで24時間、増殖した。次に、菌糸体を、Miracloth (Calbiochem, La Jolla, CA) を通しての濾過により集め、そして10mMのトリス−EDTA (TE) 緩衝液25mlにより1度洗浄した。過剰の緩衝液を排水し、続いて、菌糸体を液体窒素において凍結した。凍結された菌糸体を、電気コーヒーミルにより微粉末に粉砕し、そしてその粉末を、使い捨てプラスチック遠心分離管における20mlのTE緩衝液及び5mlの20%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に添加した。
【0176】
その混合物を数回、軽く逆さにし、混合を確実にし、そして等体積のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1 v/v/v)により2度抽出した。酢酸ナトリウム(3M液体)を添加し、0.3Mの最終濃度にし、そして核酸を2.5体積の氷冷却されたエタノールにより沈殿せしめた。管を15,000×gで30分間、遠心分離し、そしてペレットを、30分間、空気乾燥せしめ、その後、0.5mlのTE緩衝液に再懸濁した。DNアーゼ−フリーのリボヌクレアーゼを添加し、100mg/mlの濃度にし、そしてその混合物を37℃で30分間インキュベートした。
【0177】
次に、プロティナーゼK(200mg/ml)を添加し、そしてその混合物をさらに1時間37℃でインキュベートした。最終的に、混合物を、フェノオール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1 v/v/v)により2度抽出し、その後、標準方法に従って、酢酸ナトリウム及びエタノールによりDNAを沈殿せしめた。DNAペレットを真空下で乾燥せしめ、TE緩衝液に再懸濁し、そして4℃で貯蔵した。
【0178】
例2フサリウム・ベネナタムATCC 20334トリコジエンシンターゼプローブの調製
フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・ポアエ及びギベレラ・プリカリスからのトリコジエンシンターゼの保存されたアミノ酸配列に基づいて、下記に示されるオリゴヌクレオチドプローブを、製造業者の説明書に従って、Applied Biosystems Model349 DNA/RNA Synthesizerにより合成し、フサリウム・ベネナタムATCC20334ゲノムDNAからのトリコジエンシンターゼ遺伝子フラグメントをPCR増幅した:
プライマー1:5’-GGCTGCTCATCACTTTGCTC-3’
プライマー2:5’-TGCATGAAGCACTCAATCGT-3’
【0179】
増幅反応(50μl)を、鋳型として、例1に記載のようにして調製された、約0.8μlのフサリウム・ベネナタムゲノムDNAを用いて調製した。個々の反応は次の成分を含んだ:0.8μgのゲノムDNA、40pモルのプライマー1、40pモルのプライマー2、200μMの個々のdATP, dCTP, dGTP及びdTTP, 1×Taq DNAポリメラーゼ緩衝液(Perkin-Elmer Corp., Branchburg, NJ)、及び2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer Corp., Branchburg, NJ)。反応を、それぞれ、95℃で3分、58℃で2分及び72℃で2分、30サイクル プログラムされたPerkin-Elmer Model 480 Thermal Cyclerにおいてインキュベートした。
【0180】
反応生成物を1.5%アガロースゲル(Eastman Kodak, Rochester, NY)上で単離し、ここで812bpの生成物バンドをゲルから切除し、そしてQiae×IIQiagen, Chatsworth, CA) を用いて、製造業者の説明書に従って精製した。続いて、精製されたPCR生成物をpCRIIベクター(Invitrogen, San Diego, CA) 中にクローン化し、そしてDNA配列をlac前方向及び逆方向プライマー(New England BilLabs, Beverly, MA)を用いて決定した。
【0181】
DNA配列分析は、増幅された遺伝子フラグメントが、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・ポアエ及びギベレラ・プリカリストリコジエンシンターゼ遺伝子配列との配列比較に基づいて、その対応するフサリウム・ベネナタムトリコジエンシンターゼ遺伝子の一部をコードすることを示した。トリコジエンシンターゼ遺伝子フラグメント(812kb)を、DIG Kit (Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, IN) を用いて、製造業者の説明書に従って、ジゴキシゲニンによりPCR−ラベルし、フサリウム・ベネナタムゲノムDNAライブラリーをプローブした。
【0182】
例3DNAライブラリー及びtri5クローンの同定
ゲノムDNAライブラリーを、組換えバクテリオファージのプレート化及び精製のための宿主としてのE.コリY1090ZL細胞(Life Technologies, Gaithersburg, MD)、及び個々のpZL1-tri5クローンの切除のためのE.コリDH10Bzip (Life Technologies, Gaithersbaurg, MD) と共に、バクテリオファージクローニングベクターλZipLox (Life Technologies, Gaithersburg, Md) を用いて構成した。全細胞DNAを、Tsp5091により部分的に消化し、そして1%アガロースゲル上でサイズ分別した。3〜8kbのサイズ範囲で移動するDNAフラグメントを切除し、そしてQiaex (Qiagen Inc., Chatsworth, CA) を用いてゲルから溶離した。
【0183】
溶離されたDNAフラグメントを、EcoRI−切断され、そして脱リン酸化されたλZipLoxベクターアーム(Life Technologies, Gaithersburg, MD)により連結し、そしてその連結混合物を市販のパッケージング抽出物(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて包装した。包装されたDNAライブラリーをプレートし、そしてE.コリY1090ZL細胞(Life Technologies, Gaithersburg, MD)において増幅した。増幅されたゲノムライブラリーは、1.4×107 pfu/ml を含んだ。ライブラリーからの約30,000のプラークを、標準の方法を用いて、例2に記載される非放射性ジゴキシゲニンによるプラーク−ハイブリダイゼーションによりスクリーンした(Sambrookなど., 1989, 前記を参照のこと)。
【0184】
プローブに強くハイブリダイズした3個の陽性クローンを取り、そしてその2個をE.コリY1090ZL細胞において2度精製した。続いてそれらの2個のtri5クローン、すなわちpSMO129及びpSMO130を、pZL1-tri5クローンとしてλZipLoxベクターから切除した(D’Alessioなど., 1992, Focus(商標)14: 76)。
【0185】
例4フサリウム・ベネナタムtri5遺伝子のDNA分析
tri5クローン、すなわちpSMO129及びpSMO130のDNA配列決定を、Applied Biosystems Model 373A Automated DNA Sequencer (Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA) により行った。lac−前方向及びlac−逆方向プライマーの他に、特定のオリゴヌクレオチド配列プライマーを、Applied Biosystems Model 394 DNA/RNA Synthesizer上で、製造業者の説明書に従って合成した。
pSMO129及びpSMO130と称するクローンのDNA配列決定は、クローンは遺伝子の完全な配列も、完全な遺伝子のDNA配列を含むオーバーラッピング配列も含まなかったことを示した。2種の配列の組み合わされたDNA配列は、図2に示される読み取り枠を示した(配列番号1)。
【0186】
完全な遺伝子フラグメントを含む単一のクローンを、2種のオーバーラップするクローンpSO130及びpSO129から構成した。PSO129及びpSO130を、制限酵素SacIにより消化し、そして1%アガロースゲル上で試験した。次に、適切なフラグメントを、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen, Chatsworth, CA)を用いて単離し、そして標準の方法を用いて14℃で一晩連結し、pTri5を生成した。次に、その連結物を用いて、標準の方法によりE.コリ株DH5αを形質転換した。推定上の十分な長さのクローンからのプラスミドDNAを、Qiagen Maxi Prep キット(Qisagen, Chatsworth, CA)を用いて単離し、そしてDNAをApplied Biosystems Model 373A Automated DNA Sequencerを用いて配列決定し、その配列が配列番号1と同一であることを確かめた。クローンをE.コリDH5αpTri5と命名した。
【0187】
フサリウム・ベネナタムATCC 20334トリコジエンシンターゼ遺伝子内のイントロン及びエキソンの位置を、対応するフサリウム・ポアエトリコジエンシンターゼ遺伝子生成物(配列番号2)に対する推定されるアミノ酸配列(配列番号2)の一列配列に基づいて割り当てた。この比較に基づけば、フサリウム・ベネナタムATCC20334トリコジエンシンターゼ遺伝子は、1つの小さなイントロン(470-528bp)により中断される2つのエキソン(1-469bp及び529-1203bp)から構成された。
【0188】
イントロンのサイズ及び組成は、それがコンセンサススプライスドナー及び受容体配列、及び個々の介在配列の3’側末端近くのコンセンサス捕獲配列(PuCTPuAC)を含むことにおいて、他の菌類遺伝子のそれらのサイズ及び組成と一致した(Gurrなど., 1987, Kinghorn, J.R. (ed.), Gene Structure in Eukaryotic Microbes, pp. 93-139, IRL Press, Oxford)。
【0189】
トリコジエンシンターゼは、380個のアミノ酸(MW=44562)から構成される酸性タンパク質(計算された等電点=5.37)である。
トリコジエンシンターゼの推定されるアミノ酸配列の比較配列を、同一性表及び次の複数の照準パラメーター:10のギャップペナルティー及び10のギャップ長さペナルティーを伴って、LASERGENE(商標)MEGALIGN(商標)ソフトウェア(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を用いて、Clustal方法(Higgins, 1989, CABIOS5: 151-153) により企てた。対合様照準パラメーターは、Ktuple=1、ギャップペナルティー=3、ウィンドウ=5及び対角線=5であった。
【0190】
その比較配列は、フサリウム・ベネナタムATCC 20334トリコジエンシンターゼの推定されるアミノ酸配列が、フサリウム・ポアエ トリコジンシンターゼと約96.3%の同一性を共有したことを示した(Feketeなど., 1997, Mycopathologia 138: 91-97)(配列番号3)。
【0191】
例5pJRoy36の構成
pJRoy36を、フサリウム・ベネナタムにおけるサーモミセス・ラヌギノサす(以前は、ヒューミコラ・ラヌギノサとして命名されている)キシラナーゼの発現を得るために構成した。
【0192】
pDM181を、1.1kbのフサリウム・オキシスポラムトリプシンターミネーター(SP387)に1.2kbのフサリウム・オキシスポラムトリプシンプロモーターを融合するために、スプライスオーバーラップ延長技法を用いて構成した。SwaI, KpnI及びPacI制限部位を含むポリリンカーを、オーバーラッピングPCR技法の一部として、プロモーターとターミネーターとの間に挿入した。プロモーターの5’末端で、XhoI部位を付加し、そして生来のEcoRI部位を保存した。ターミネーターの3’末端で、EcoRI, HindIII及びNsiI部位を、PCR反応により組み込んだ。
【0193】
フサリウム・オキシスポラム トリプシンプロモーターの−1280〜−1及び25個の塩基対のポリリンカーを含むPCRフラグメントを、次のプライマーを用いて、プラスミドpJRoy 20 (Royer など., 1995, Biotechnology 13: 1479-1483)から生成した:
【0194】
【化1】

【0195】
100μlのPCR反応は、IX Pwo緩衝液(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN), 200μMの個々のdATP, dCTP, dGTP及びdTTP, 10ngのpHRoy20, 及び5単位のPwo DNAポリメラーゼ(Boehiringer Mannheim, Indianapolis, IN)を含んだ。使用されるPCR条件は、95℃で3分、続いて、それぞれ95℃で30秒、50℃で1分、及び72℃で1分の25サイクルであった。最終延長サイクルは、72℃で5分であった。
【0196】
同じPCR条件を用いて、フサリウム・オキシスポラム トリプシンプロモーターのbp−5〜−1、25塩基対のポリリンカー、及びフサリウム・オキシスポラム トリプシン遺伝子の3’側の未翻訳領域の1060個の塩基対(ターミネーター領域)を含む第2PCRフラグメントを、次のプライマーを用いて、プラスミドpJRoy20から生成した:
【0197】
【化2】

【0198】
フサリウム・オキシポラム トリプシンプロモーターの−1208〜−1、25個塩基対のポリリンカー及びフサリウム・オキシスポラム トリプシンターミネーターの1060個の塩基対を含む最終の2.3kbのオーバーラッピングPCRフラグメントを、0.2μlの第1PCR(プロモーター)反応及び3μlの第2(ターミネーター)反応を鋳型及びプライマー1及び4として用いて得た。使用されるPCR条件は、95℃で3分、続いて、それぞれ、95℃で30秒、62℃で1分及び72℃で3分の30サイクルであった。最終延長サイクルは72℃で5分であった。pwo DNAポリメラーゼをまた、この反応のために使用した。
【0199】
トリプシンプロモーター、ポリリンカー及びトリプシンターミネーターを含む、その得られる2.3kbのフラグメントを、EcoRIにより消化し、そしてbar遺伝子(WO97/26330号)を含む、EcoRIにより消化されたベクターpMT1612中に連結し、pDM181を創造した(図3)。
キシラナーゼフラグメントをまた、PCRにより生成した。サーモミセス・ラヌギノサス キシラナーゼ遺伝子のcDNAを含むプラスミドpHD414(WO93/11249号)を、鋳型として使用した。次のPCRプライマー5及び6を用いて、キシラナーゼコード配列の5’末端での配列CCACC及び3’末端でのPacI部位を導入した:
プライマー5(センス):
【0200】
5’-CCACCATGGTCGGCTTTACCCCCGTT-3’
プライマー6(アンチセンス):
5’-GGTTAATTAATTAGCCCACGTCAGCAACGGT-3’
使用されるPCR条件は、95℃で3分、続いて、それぞれ、95℃で1分、62℃で1分及び72℃で3分の25サイクルであった。反応体積は前に記載の通りであった。DMSOは、5%(v/v)で含まれた。
得られる0.7kbのキシラナーゼフラグメントを、PacIにより消化し、そしてSwaI/PacIにより消化されたpDM181に連結し、プラスミドpJRoy36を生成した(図4)。
【0201】
例6フサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bの構成及びキシラナーゼ遺伝子の発現
フサリウム・ベネナタムCC1−3の胞子を、2.5%のグルコース及び2.5mMの硝酸ナトリウムにより補充された1×Vogels培地プレート(2.5%のNoble寒天)からの10個のプラグにより500mlのRA胞子形成培地を含むフラスコを接種し、そして28℃、150rpmで2〜3日間インキュベートすることによって生成した。胞子をMiracloth (Calbiochem, San Diego, CA)を通して収穫し、そしてSorvall RC-5B遠心分離機(E.I. Dupont De Nemours and Co., Wilmington, DE)により7000rpmで20分間、遠心分離した。ペレット化された胞子を、無菌蒸留水により2度洗浄し、少量の水に再懸濁し、そして次に、血球計数器を用いて計数した。
【0202】
プロトプラストを、フサリウム・ベネナタムCC1−3の4×107個の胞子により100mlのYEPG培地を接種し、そして24℃及び150rpmで16時間インキュベートすることによって調製した。培養物を、Sorvall RT6000D (E.I. DuPont De Nemours and Co., Wilmington, DE) により、3500rpmで7分間、遠心分離した。ペレットを、30mlの1MのMgSO4により2度洗浄し、そして1Mの硫酸マグネシウム中、15mlの5mg/mlのNOVOZYME234(商標)(バッチPPM4356, Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark) に再懸濁した。培養物を、プロトプラストが形成するまで、24℃及び150rpmでインキュベートした。
【0203】
35mlの体積の2Mソルビトールをプロトプラスト消化物に添加し、そしてその混合物を2500rpmで10分間、遠心分離した。ペレットを再懸濁し、STCにより2度洗浄し、そして2000rpmで10分間、遠心分離し、プロトプラストをペレット化した。プロトプラスト血球計数器により計数し、そしてSTC:SPTC:DMSOの8:2:0.1溶液に再懸濁し、1.25×107個のプロトプラスト/mlの最終濃度にした。プロトプラストを、Nalgene Cryo 1℃ Freezing Container (VWR Scientific, Inc., San Francisco, CA) における調節された速度での凍結の後、−80℃で貯蔵した。
【0204】
フサリウム・ベネナタムCC1−3の凍結されたプロトプラストを氷上で融解した。5μgの例5に記載されるpJRoy36及び5μlのヘパリン(STC 1ml 当たり5mg)を、50mlの無菌ポリプロピレン管に添加した。100μlのプロトプラストを添加し、軽く混合し、そして氷上で30分間インキュベートした。1mlのSPTCを添加し、そして室温で20分間インキュベートした。10mMのアセトアミド及び10mMの塩化セシウムの代わりに10−25mMの硝酸ナトリウムにより補充された40℃のCOVE上部アガロース25mlの添加の後、その混合物を、空の150mm直径のプレートに注ぎ、そして室温で一晩インキュベートした。
【0205】
次に、10mMのアセトアミド及び10mMの塩化セシウムの代わりに10−25mMの硝酸ナトリウムにより補充され、そして1ml当たり10mgのBASTA(商標)を含む40℃のCOVE上部アガローズの追加の25mlをプレートの上部に注ぎ、そして室温で14日までの間インキュベートした。除草剤BASTA(商標)における活性成分は、ホスフィノトリシンである。BASTA(商標)をAgrEvo (Hoechst Schering, Rodovre, Denmark) から得、そして使用前、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)により2度、及びクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)により1度抽出した。
【0206】
形質転換体のプレート(上記のように、COVEアンターレイ及びCOVE−BASTA(商標) オーバーレイを有する)からのプラグを、30mlのM400 Da 培地を含む振盪フラスコ#に接種し、そして30℃、150rpmで7日間インキュベートした。フラスコを7日目でサンプリングし、そして上清液をキシラナーゼ活性についてアッセイした。
【0207】
キシラナーゼ活性を次の通りにして決定した。反応を、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に適切に希釈された10μlの個々の酵素サンプル溶液に、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中、0.5%AZO−WAX(商標)(Megazyme, Dublin, Ireland) を含む基質溶液90μlを添加することによって開始した。反応を50℃で30分間インキュベートし、そして次に、0.55μlの濃HClにより酸性化されたエタノール500μlの添加により急冷した。得られる混合物を室温で少なくとも10分〜60分間、静置した。次に、サンプルを12,000rpmで2分間、遠心分離した。個々の上清液の200μlアリコートをマイクロタイタープレートに移し、そして吸光度を600nmで測定した。
【0208】
活性を、10, 20, 40, 60, 80, 90及び100μlの体積で添加される標準1ml当たり1.0 FXUにより生成される標準曲線を用いて、NOVO Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark から得られたBIOFEED WHEAT(商標) 標準に対して計算した。このためには、10FXU/mlの標準が最初に調製され、そして次に、使用標準としての使用のために0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)により1:10に希釈された。ブランク(酵素のための代用の緩衝液)を、線状回帰を用いての標準曲線の生成のために包含した。
フサリウム・ベネナタムpJRoy36-19.Bと命名された単一の形質転換されたコロニーを、キシラナーゼアッセイ結果に基づいて選択した。
【0209】
例7pJRoy40の構成
Bgl II 部位により連結されるフサリウム・ベネナタムtri5遺伝子の約1.5kbの5’側フランキングDNA及び1.5kbの3’側フランキングDNAを含む欠失プラスミドpJRoy40を創造した。例3に記載されるpSO129及びpSO130を、NotI及びBgl IIの両者により消化した。ベクターpZL1及びtri5 DNAのbp0-1694を含むpSO130の5.5kbのフラグメントを、tri5 DNAのbp5413-6946及び少量のポリリンカーに対応する、pSO129の1.5kbフラグメントに連結した。これは、1.5kbのtri5の5’側DNA及び1.7kbのtri5の3’側DNAを含むpJRoy40 (図5)をもたらした。Tri5のためのコード領域は、bp2475-3678であった。完全なtri5コード領域を包含する、約3.7kbのDNAが除去されていた。
【0210】
例8tri5の構成:amdS欠失フラグメント
pJRoy40を、5’側流域と3’側領域との間に連結を形成するBgl IIにより消化した。それらの末端を、Sambrookなど., 1989, 前記に従って、クレノウフラグメントによりフィルインし、そして線状化されたベクターを、TAE緩衝液を用いての1%アガロースゲル電気泳動及びアガラーズ処理により精製した。次に、ベクターを、Sambrook など., 1989, 前記に従って、ウシ腸アルカリホスファターゼにより処理した。amdS遺伝子をpBANe20から単離し(図6)、そしてpJRoy40のBgl II部位中にブラントフラグメントとして挿入し、pLC30をもたらした(図7)。
【0211】
tri5欠失カセットを含む5670bpのEcoRIフラグメントを、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて、ゲル精製によりpLC30から単離した。ゲル精製された欠失フラグメントを用いて、フサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bのプロトプラストを形質転換した。
【0212】
例9tri5ハイブリダイゼーションプローブの構成
DIG−ラベルされたプローブを、PCR増幅により得た。5’側プローブ(“tri5フランキングプローブ)に関しては、増幅反応は次の成分を含んだ:50ngのpSO130, 100μMの個々のDIG−ラベルされたdATP, dCTP, dGTP及びdTTP, 50pモルの個々のプライマーtri5の5’-AACTGGAAAGACCTGTGGGC-3’ (bp928-947)及びpSO130の5’側の1442プローブ5’-GGGAAATAGTGTCACGCGGTA-3’ (bp1379-1399)、2単位のTag DNAポリメラーゼ及び1×Taq DNAポリメラーゼ緩衝液。反応を、それぞれ、95℃で1分、55℃で1分及び72℃で90秒、30サイクル プログラムされたPerkin-Elmer Thermal Cycler においてインキュベートした。得られるフラグメント(“tri5フランキングプローブ”)を、GenElute Spin Columns (Supelco, Bellefonate, CA) を用いてゲル単離し、そして製造業者の説明書に従って、DIG Quantification Test Strip (Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN) により定量化した。
【0213】
読み取り枠プローブ(“tri5読み取り枠プローブ”)の生成のための条件は同一であったが、但し、次のプライマーを使用した:プライマー970590 5’-GGACAACAGCCGAACTCAAAC-3’ (bp 2036-2057) 及びプライマー970478 5’-GTGCTGCGGATAAGGTTC-3’ (bp 2919-2937)。得られるフラグメント(“tri5読み取り枠プローブ”)を単離し、そして上記のようにして定量化した。
フルオレセイン−ラベルされたプローブを、上記と同じPCR生成物を増幅することによって製造した。生成物を、QIAquick Gel Extraction Kit を用いて、製造業者の説明書に従ってゲル精製した。精製されたフラグメントを、Fluorimagerのための“Random Prime Labeling Module”を用いて、製造業者の説明書に従って、フルオレセインラベルした。
【0214】
例10欠失フラグメントによるフサリウム・ベネナタムJRoy36-19B生来のtri5遺伝子の置換
フサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bの胞子を、1ml中り5mgのBASTA(商標)を含む寒天プレートからの10個のプラグにより、RA胞子形質培地500mlを含むフラスコを接種し、そして28℃及び150rpmで2〜3日間インキュベートすることによって生成した。胞子をMiracloth を通して収穫し、そしてSorvall RC-5B遠心分離機により7000rpmで20分間、遠心分離した。ぺレット化された胞子を、無菌蒸留水により2度洗浄し、少量の水に再懸濁し、そして次に、血球計数器を用いて計数した。
【0215】
プロトプラストを、フサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bの4×107個の胞子により100mlのYEPG培地を接種し、そして24℃及び150rpmで16時間インキュベートすることによって調製した。培養物を、Sorvall RT6000Dにより、3500rpmで7分間、遠心分離した。ペレットを、30mlの1MのMgSO4により2度洗浄し、そして1Mの硫酸マグネシウム中、20mlの5mg/mlのNOVOZYME234(商標)に再懸濁した。培養物を、プロトプラストが形成するまで、24℃及び150rpmでインキュベートした。
【0216】
35mlの体積の2Mソルビトールをプロトプラスト消化物に添加し、そしてその混合物を2500rpmで10分間、遠心分離した。ペレットを再懸濁し、STCにより2度洗浄し、そして2000rpmで10分間、遠心分離し、プロトプラストをペレット化した。プロトプラスト血球計数器により計数し、そしてSTC:SPTC:DMSOの8:2:0.1溶液に再懸濁し、1.25×107個のプロトプラスト/mlの最終濃度にした。プロトプラストを、Nalgene Cryo 1℃ Freezing Container における調節された速度での凍結の後、−80℃で貯蔵した。
【0217】
フサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bの凍結されたプロトプラストを氷上で融解した。例8に記載される、ゲル精製されたtri5欠失フラグメント5μgを、50mlの無菌ポリプロピレン管に添加した。100μlのプロトプラストを添加し、軽く混合し、そして氷上で30分間インキュベートした。1mlのSPTCを添加し、そして室温で20分間インキュベートした。25mlの40℃のCOVE上部アガロースの添加の後、その混合物を、150mmの直径のCOVE寒天プレート上に注いだ。形質転換プレートを、室温で14日までの間インキュベートした。
【0218】
窒素源としてアセトアミドを使用する能力を必要とし、そして従って、amdS遺伝子の組み込みを示した形質転換体を、COVEプレート上での増殖により選択した。145以上の形質転換体(合計20の形質転換からの)がCOVEプレート上で増殖し、そしてそれらの形質転換のうち20を、4, 15−ジアセトキシスシルペノール(DAS)生成について試験した。
【0219】
DAS生成を次のプロトコールに従って誘発した。胞子ストックを、最少培地プレートから切断された12の寒天プラグ(5×5mm)による、2lのFernbach振盪フラスコ中の500mlのRA胞子形成培地の接種により生成した。そのFernbach振盪フラスコを28℃及び150prmで40時間インキュベートした。次に、培養物を無菌Miracloth を通して、無菌の50ml Falcon管中に収穫し、そしてそれらの濃度を、血球計数器スライドを用いての計数の後、2×107個の胞子/mlに調節した。
【0220】
胞子ストックをすぐに使用するか、又は5℃で1又は2週間、貯蔵した。2mlの2×107個の胞子/mlの胞子ストック(新しく生成されているか又は1又は2週間後の)を、250mlの3個のガラス振盪フラスコにおける50mlのMYRO培地中に接種した。その振盪フラスコを、28℃及び220rpmで、光の条件下で7日間インキュベートした。7日後、個々の振盪フラスコの内容物を、無菌Miraclothを通して濾過し、それらのpHを測定し、そしてDAS分析の前、−20℃で貯蔵した。
【0221】
DASを、わずかな変性を伴ってのMcCormick など., 1990, 前記の方法により抽出し、そして定量化した。細胞フリーのフサリウム・ベネナタムブイヨンサンプル(1.0ml)を、2体積の酢酸エチル(2.0ml)により抽出した。組み合わされた有機抽出物を、窒素ガス流下で蒸発乾燥せしめ、そして50μlのTriSil/TBT (Pierce Chemical Co., Rockford, IL)により80℃で60分間、誘導体化した。次に、最終サンプル体積を、ヘキサンにより0.5mlに調節した。
【0222】
1μlの個々のサンプルを、30mのDB−1カラム(J&W Scientific, Folsom, CA; 250μmの直径、0.25μmのフィルムの厚さ)及びFID検出器を備えたHewlett-Packard 6890ガスクロマトグラフィー上で分析した。注入方法は、260℃の入口及び1.2ml/分の窒素キャリヤーガス流を伴って連続的態様を使用した。オーブンプログラムは、180℃の初期温度;30℃/分での210℃までの加熱;5℃/分での260℃までの加熱;及び温度での2分間の維持であった。ジアセトキシスシルペノール同定及び定量化は、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO) から得られた標準の材料に基づかれた。それらの条件下で、検出の限界は、DASに関して2ppmであった。
【0223】
試験された20の形質転換のうち12個は、いずれの検出できるDASをも形成しなかった。それらの12の形質転換のCOVEプレートからのプラグを、キシラナーゼ活性についての次のプロトコールに従って、3個の振盪フラスコ中に接種した。種子増大方法を用いて、振盪フラスコ培養物を接種した。1ml当たり5mgのBASTA(商標) により補充されたVogels培地30mlを、試験される個々の株の新鮮なプレートからの寒天プラグにより接種し、そして次に、28℃及び200rpmで3日間インキュベートした。
【0224】
次に、100及び50μlの個々の培養物を用いて、5mg/mlのBASTA(商標) を含む30mlのNY50の培地を接種した。28℃及び200rpmでの2日間の増殖の後個々の培養物1.5mlを、BASTA(商標) を含まない30mlのNYU35培地に移し、そして同じ条件下で4〜7日間インキュベートした。フラスコを4〜7日目でサンプリングし、そして上清液をキシラナーゼ活性について分析した。次に、3個の最高のキシラナーゼ生成物をサザン分析にゆだね、tri5遺伝子が欠失されたことを確かめた。
【0225】
サザンハイブリダイゼーションを、Vistra Kit (Amersham, Arlington, IL) 及びRapid Hyb Kit (Amersham, Arlington, IL) を用いて、製造業者の説明書に従って行った。フサリウム・ベネナタムJRoy36-19B推定欠失体からの菌類ゲノムDNAを、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen, Chatsworth, CA) を用いて、製造業者の説明書に従って調製した。1μgのゲノムDNAを、Sph I及びDra Iにより消化し、そしてアガロースゲル上で電気泳動した。
【0226】
変性及び中和の後、ゲノムDNAを、Turboblotter (Schleicher & Schuell, Keene, NH) を用いて、Hybond-N+膜(Amersham, Arlington, IL)に移した。60℃でのRapid Hybによるプレハイブリダイゼーションの後、膜を変性されたプローブ(下記を参照のこと)により60℃で一晩ハイブリダイズした。膜を、製造業者の説明書に従って進行せしめ、そしてSTORM860 (Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA) を用いて、製造業者の説明書に従って走査した。
【0227】
“tri5フランキングプローブ”(フルオレセイン−ラベルされた、例9)は、amdS挿入の765個のヌクレオチド上流の5’側フランキング領域においてハイブリダイズした。“tri5読み取り枠プローブ”(フルオレセイン−ラベルされた、例9)は、tri5 ATGの約450個のヌクレオチドの下流でハイブリダイズした。
【0228】
サザンハイブリダイゼーション分析の結果は、3種のDAS−陰性の高いキシラナーゼ生成形質転換体フサリウム・ベネナタムLyMC4、LyMC19及びLyMC21におけるtri5遺伝子の欠失を確かめた。Tri5の5’フランキング領域にハイブリダイズしたプローブは、欠失構造体のサイズに対応するバンドにハイブリダイズし、そして生来のtri5遺伝子に対応するバンドにはハイブリダイズせず、このことは、欠失構造体による前記領域の置換を示した。さらに、tri5の読み取り枠に結合したプローブはそれらの株いおいてハイブリダイズせず、このことは、遺伝子の損失を示す。
【0229】
例11ホスフィノトリシン耐性選択により増殖されたフサリウム・ベネナタムLyMC4, LyMC19及びLyMC21のキシラナーゼ生成
フサリウム・ベネナタムLyMC4、LyMC19及びLyMC21を、5mg/mlのBasta(商標)を含むプレート上に、例10に記載されるオリジナルCOVE形質転換プレートから継代培養し、そして28℃で7〜10日間インキュベートした。それらの単離物のBASTA(商標)プレートからのプラグを用いて、例10に既略されるキシラナーゼアッセイについてのプロトコールに従って、3個の振盪フラスコを接種した。フラスコを、4, 5, 6及び7日目でサンプリングし、そして上清液をアッセイした。
【0230】
フラスコから4, 5, 6及び7日目に取られたサンプルからのキシラナーゼ活性を、例6に記載のようにして決定した。フサリウム・ベネナタムLyMC4及びLyMC19は、親株のフサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bに等しいか又はそれよりも高い量のキシラナーゼを生成し、そしてそれらの株をさらに分析した。
【0231】
例12高キシラナーゼ−生成欠失フサリウム・ベネナタムLyMC4及びLyMC19の分析
2種の高−生成フサリウム・ベネナタム株LyMC4及びLyMC19からの単一胞子単離物を、例6に記載のようにして、BASTA(商標)培地上で選択した。それぞれからの5個の単一胞子単離物を、ホスフィノトリシン耐性選択上で維持した。
サガンハイブリダイゼーション分析を、例10に記載のようにして、5個の単一胞子単離物から得られたゲノムDNAに対して行った。
【0232】
サザンハイブリダイゼーションは、すべての単一胞子単離物においてtri5遺伝子欠失を確かめた。Tri5遺伝子の欠失された領域の上流を結合するフルオレセイン−ラベルされたプローブ(“tri5フランキングプローブ”)によりプローブされる場合、すべての株は、フサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bの生来のtri5領域のサイズに比較して、欠失カセットのサイズに対応するバンドを有した。親株フサリウム・ベネナタムLyMC19は、野生型tri5遺伝子に対応する薄いバンドを有し、このことは、たぶん、小集団の核が欠失されたことを示した。しかしながら、その株から得られたすべての単一胞子単離物は、欠失を有した。
【0233】
それらの同じ株がtri5読み取り枠に結合するフルオレセイン−ラベルされたプローブ(“tri5読み取り枠プローブ”)によりハイブリダイズされる場合、フサリウム・ベネナタムJRoy36-19B及びフサリウム・ベネナタムLyMC19のみが、tri5の読み取り枠に対応するバンドを有した。フサリウム・ベネナタムLyMC19からのバンドは非常に薄く、そしてその株からの単一胞子単離物のどれもバンドを有さず、このことは、単一胞子の精製の前でさえ、大部分の核がたぶんtri5遺伝子から欠失されたことを示す。両ハイブリダイゼーションからのデータは、tri5読み取り枠がすべての単一胞子単離物においてamdS欠失カセットにより置換されたことを示した。
例13フサリウム・ベネナタムLyMC4−及びLyMC19−由来の株のDASアッセイ
単一胞子単離物フサリウム・ベネナタムLyMC4.B, LyMC4.C, LyMC19.2及びLyMC19.5, 親株フサリウム・ベネナタムLyMC4及びLyMC19、及び対照株を、例10に記載されるプロトコールを用いて、DAS生成について分析した。
すべての菌株を3個の振盪フラスコにおいて増殖し、そして同じ試験でアッセイした。個々のアッセイの結果は下記表1に示されており、そして平均DAS収量が最終列に示されている。Tri5−欠失された株のいずれも、野生型フサリウム・ベネナタム#93(BBA64537, Biologische Bundensanstalt fur Land-und Fortswirtschaft, Berlin, Germany)において高いレベルで誘発された条件下で、検出できる量のDASを生成しなかった。
【0234】
【表1】

【0235】
例14フサリウム・ベネナタムLyMC4.B, LyMC4.C, LyMC19.2及びLyMC19.5の発酵
フサリウム・ベネナタムLyMC4.B, LyMC4.C, LyMC19.2及びLyMC19.5の発酵を、1l当たり、20gのスクロース、2.0gのMgSO4・7H2O, 2.0gのKH2PO4, 2.0gのクエン酸、2.0gのCaCl2・2H2O, 0.5mlのAMG微量金属(殺菌の前、pHは4.5に調整された)から成る培地、及び培地の殺菌及び冷却の後に添加される、1l当たり、2.5gのウレア及び30mlの大豆ビタミン混合物から成るフィルター殺菌された混合物を含む2lの発酵器において30℃で8日間、行った。
すべての単一胞子単離物は、フサリウム・ベネナタムJRoy36-19Bの類似する発酵に比較して、同量のキシラナーゼを生成した。
【0236】
例15フサリウム・ベネナタムN−2の構成
フサリウム・ベネナタム株N−2は、塩素酸カリウム培地上での選択により、フサリウム・ベネナタムCC1−3形態学的変異体から生成された。この菌株は、2%のグルコース及び10mMの亜硝酸ナトリウム、酒石酸アンモニウム、ヒポキサンチン又は尿酸のいずれかにより補充された1×Vogels培地上での増殖するその能力、及び2%のグルコース及び10mMの硝酸ナトリウムにより補充された1×Vogels培地上で増殖するその無能力により、そのniaD表現型を有することが確認された。
【0237】
例16tri5欠失構造体pJRoy41の構成
pJRoy40をBgl IIにより消化し、そして末端を、Sambrook など., 1989, 前記に従って、クレノウフラグメントによりフィルインした。線状化されたベクターを、TAE緩衝液及びアガラーゼ処理を用いて、1%アガロースゲル電気泳動により精製した。次にベクターを、ウシ腸アルカリホスファターゼにより、Sambrookなど., 1989, 前記に従って処理した。ニューロスポラ・クラサのnit3遺伝子を、Not I及びSrf Iによる消化によりpNit3(Fu and Marzluf, 1987, 前記)から除去した。制限反応を、クレノウフラグメントにより処理し、そしてTAE緩衝液を用いての1%アガロースゲル電気泳動にゆだねた。nit3遺伝子を含む4886bpのフラグメントを、アガラーゼにより単離した。
【0238】
nit3遺伝子フラグメントを、pJRoy40のフィルインされたBgl II部位中にクローン化し、pJRoy41を創造した(図8)。このベクターにおいては、フサリウム・ベネナタムゲノムにtri5遺伝子を含む3.7kbのフラグメントが、ニューロスポラ・クラサnit3遺伝子を含む4.9kbのフラグメントにより置換されている。
【0239】
例17フサリウム・ベネナタムN−2の形質転換及び形質転換の分析
フサリウム・ベネナタムN−2のプロトプラストの生成のためのバイオマスを、2つの異なった手段で調製した。バッチ1に関しては、50mlのYEPG培地を、フサリウム・ベネナタムN−2の5個の寒天プラグ(1cm)により接種し、そして26℃及び150rpmで3日間、培養した。この培養物10mlを用いて、YEPGのもう1つの100ml培養物を接種し、これを、プロトプラスト生成の前、28℃および200rpmで20時間インキュベートした。バッチ2のプロトプラストの調製に関しては、フサリウム・ベネナタムN−2の寒天プラグを、硝酸ナトリウムの代わりに0.1MのNa2HPO4及び0.1MのNH4H2PO4, 及び0.05%のグルコースを含むRA胞子形成培地中に接種した。
【0240】
培養物を28℃及び200rpmで4日間、増殖した。1l当たり、10gの琥珀酸、0.1MのNH4H2PO4, 0.1MのK2HPO4, 1×COVE塩及び0.5gのグルコースから構成される培地500mlを含むFernbachフラスコを、第1の培養物10mlにより接種し、そして26℃及び150rpmで65時間インキュベートした。約108個の胞子をこの培養物から得た。この胞子を用いて、YEPG培地50mlを接種し、これを24℃及び150rpmで13.5時間増殖した。プロトプラストを例6に記載のようにして調製し、そして−80℃で貯蔵した。
【0241】
フサリウム・ベネナタムN−2のプロトプラストを、pJRoy41により形質転換した(切断されていないか、ポリリンカーにおけるNot I部位で線状化されているか、又は3’側フランクに置けるNhe I部位で線状化された)。形質転換を例6に記載のようにして、pJRoy41により行った。但し、反応物は、1×COVE塩、0.8Mのスクロース、25mMの硝酸ナトリウム及び1%の低溶融アガロースを含むオーバーレイ培地(40℃)50mlを含む空の150mmプレート上にプレートされた。
4個の形質転換を、Not I消化されたpJRoy41から得、2個をNhe Iにより消化されたpJRoy41から得、そして32個を消化されているプラスミドから得た。
【0242】
例18推定上のフサリウム・ベネナタムtri5欠失された形質転換体のゲノムDNA調製
ゲノムDNAを、次のプロトコールを用いて、例17に記載される推定上のフサリウム・ベネナタムtri5欠失形質転換から調製した。形質転換体を25mlのYEG培地において、30℃及び250rpmで72時間、増殖した。次に、菌糸体をMiracloth を通してこの濾過により集め、そして10mMのトリス−1mlのEDTA(TE)緩衝液25mlにより1度洗浄した。過剰の緩衝液を菌糸体から除き、続いて液体窒素により凍結した。
【0243】
凍結された菌糸体を電気コーヒーミルにより微粉末に粉砕し、そしてその粉末を、使い捨てプラスチック遠心分離管における20mlのTE緩衝液及び5mlの20%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に添加した。その混合物を数回、軽く逆さにし、混合を確かめ、そして等体積のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1, v/v/v)により2度、抽出した。酢酸ナトリウム(3Mの溶液)を添加し、0.3Mの最終濃度にし、続いて2.5体積の氷冷却されたエタノールを添加し、核酸を沈殿せしめた。次に、核酸を、15,000×gで30分間、管を遠心分離することによってペレット化した。
【0244】
ペレットを30分間、空気乾燥せしめ、その後、0.5mlのTE緩衝液に再懸濁した。DNアーゼ−フリーリボヌクレアーゼAを添加し、100mg/mlの濃度にし、そしてその混合物を37℃で30分間インキュベートした。次に、プロティナーゼKを200mg/mlの濃度で添加し、そしてその混合物を37℃でさらに1時間インキュベートした。最終的に、混合物をフェノール:イソアミルアルコール(25:24:1, v/v/v)により2度抽出し、その後、前記のようにして、酢酸ナトリウム及びエタノールによりDNAを沈殿せしめた。DNAペレットを真空下で乾燥せしめ、TE緩衝液に再懸濁し、そしてさらなる使用まで、4℃で貯蔵した。
【0245】
例19tri5遺伝子の欠失についてのPCRスクリーニング
予備PCRスクリーンを行い、例17において単離された形質転換におけるtri5遺伝子の欠失について試験した。反応を、損なわれていないtri5 DNAからの1.1kbのバンドを増幅するが、しかしtri5コード領域がnit3遺伝子により置換されているDNAからのバンドを生成しないプライマーを用いて企画した。
【0246】
PCR反応を、プライマー551 5’-CGGTATCGAATGTACTCGAG-3’ (tri5 bp2524-2544) 及び510 5’-CCCATGGTGTGAACACC-3’ (tri5 bp 1379-1414) により行った。その反応は、2.5μlのDMSO, 1μlのTag DNAポリメラーゼ、5μlのそれぞれ2.5mMのdATP, dCTP, dGTP及びdTTP, 5μlの10×PCR緩衝液、0.5〜1μgの形質転換体ゲノムDNA(例18)、50pモル/μlでの上記個々のプライマー2μl、及び全体を50μlにするための適切な量の水を含んだ。反応を、97℃で5分、55℃で1分及び72℃で1分、1サイクル、続いてそれぞれ、97℃で1分、55℃で1分及び72℃で1分、30サイクル行った。
【0247】
損なわれていないtri5遺伝子に対応する1.1kbのバンドを生成しなかった形質転換体を、25mMのNaNO3により補充された液体Vogels培地において培養し、そして例10に記載のようにしてDAS分析にゆだねた。いくつかの形質転換体はそれらの増殖条件下で検出できるレベルのDASを生成しないが、ところが陽性の対照は約10ppmのDASを持続して生成した(表2)。
【0248】
【表2】

【0249】
診断PCR反応において1.1kbのバンドを生成しなかった株をまた、サザン分析にゆだねた。例18に記載のようにして調製された、推定上のフサリウム・ベネナタムtri5欠失ゲノムを、Dra I/Sph I により制限消化した。フラグメントを、TAE緩衝液を用いて、1%アガロースゲル上での電気泳動により分離した。DNAを、吸い上げ緩衝液として5×SSCを用いて、Ngtran Plus 膜に一晩、移行した。膜を、DIG Easy Hybにおいて65℃で2時間プレハイブリダイズした。
【0250】
ハイブリダイゼーションを、DIG−ラベルされた“tri5フランキングプローブ”により行った(例9)。続いて、膜を、それぞれ室温で15分間、2×SSC−0.1%SDSにより2℃洗浄し、続いてそれぞれ68℃で15分間0.1×SSC−0.1%SDSにより2度洗浄した。洗浄された膜を、標準のDIGプロトコールに従って展開し、そしてKodak X-OMAT ARフィルムに室温で約1時間、感光し、続いてKonica QX-70自動フィルム処理機を用いて、製造業者の説明書に従って現像した。
【0251】
Dra I/Sph Iにより消化されたゲノムDNAは、野生型株における5932bpのハイブリダイズするバンド、及びDIG−ラベルされた“tri5フランキングプローブ”が用いられる場合、欠失プラスミドにおける7100bpのハイブリダイズするバンドを含んだ。5.9kbのバンドは野生型tri5遺伝子に対応し、そして7.1kbのバンドは、nit3遺伝子がtri5遺伝子を置換しているDNAに対応した。いくつかの形質転換体は、損なわれていないtri5遺伝子及び欠失プラスミドの両者に対応する2つのバンドを生成した。それらの株においては、欠失が異所的に組み込み、tri5遺伝子の欠失をもたらさなかった。しかしながら、フサリウム・ベネナタム形質転換体N2-1, N2-8, N2-113, N2-103, N2-106 及びN2-118はそれぞれ、欠失プラスミドを示す単一の7.1kbのバンドを含んだ。
【0252】
それらの推定上の欠失からのゲノムDNAをまた、DIG−ラベルされた“tri5読み取り枠プローブ”によりハイブリダイズせしめた(例9)。すべてではないが、しかし1つの場合、5’プローブとのハイブリダイゼーションの間、欠失プラスミドを示す単一バンドを示した株は、tri5の読み取り枠プローブとハイブリダイズしたバンドを含まなかった。表3から、DAS分析によりtri5欠失として同定された大部分の株は、サザン分析によりtri5欠失として同定された。そのデータは、フサリウム・ベネナタム株H2-1, N2-8, N2-113, N2-103及びN2-106がtri5遺伝子において欠失されたことを示した。
【0253】
例20フサリウム・ベネナタム株におけるnit3マーカーフリーtri5欠失の生成
欠失フサリウム・ベネナタムN2-8からのnit3遺伝子の除去を、欠失構造体pJRoy41からの5’及び3’側フランキングDNAを含むEcoR I フラグメントにより前記株を形質転換することによって達成した(例7)。プロトプラスト及び形質転換は、例10に記載の通りにして行われた。形質転換反応を、オズモチカム(osmoticum)としての0.8Mのスクロースにより補充されたYEPF培地10mlの添加後、室温で24時間の再生を可能にした。
【0254】
次に、再生されたプロトプラストを濃縮し、そして遠心分離(10分、2000×g)により無菌水により洗浄し、そして5×106/mlの密度で、塩素酸カリウム培地上にプレートした。数百のコロニーがその塩素酸塩培地上で増殖した。それらのコロニーのうち100を、亜硝酸ナトリウム、酒石酸アンモニウム、ヒポキサンチン及び尿酸上で増殖するそれらの能力、及び硝酸ナトリウム上で増殖するそれらの無能性に基づいて分析した。約50のniaD変異体が同定された。
【0255】
それらの変異体の12個を、例9に記載のようにして、“tri5フランキングプローブ”を用いてサザン分析にゆだねた。1つの形質転換体(N2-8-1)は、nit3遺伝子の欠失を示すバンドを含んだ。サザンハイブリダイゼーションを、niaD変異体(N2),nit3/tri5置換された株N2-8, 及び推定上の切断された株N2-8-1に関して反復した。それらの株からのDNAをNhe I及びNru 1により消化し、そして“tri5フランキングプローブ”によりプローブした。その結果は、野生型tri5遺伝子と一致する、N2株における6436bpのバンドの存在、及びnit3によるtri5遺伝子の置換と一致する、nit/tri5置換された株N2-8における7604bpのバンドの存在を示した。nit3遺伝子の切除と一致する、切断された株N2-8-1におけるハイブリダイズするバンドのサイズの2718bpへの低下が存在した。
【0256】
例21フサリウム・ベネナタム株MLY3におけるamdSマーカーフリーtri5欠失の生成
フサリウム・ベネナタム発現宿主NLY3のゲノムにおける非マーカーtri5欠失を、図9に示されるようにして、最初に、tri5遺伝子を欠失し、そしてそれを、アスペルギラス・オリザエpyrG遺伝子の上流領域から単離された反復されたDNA配列を端に有するamdS遺伝子により置換することによって生成した(WO98/12300号)。次に、amdS遺伝子により回復された単離物を、フルオロアセトアミドを含むプレート上での増殖により選択した。
【0257】
プラスミドpLC31bを、アスペルギラス・ニジュランスamdS遺伝子の両端(flank)で反復体を直接的に導入し、そして得られるamdSカセットをtri5欠失ベクターpJRoy41中にサブクローニングすることによって構成した(例5)。
初期段階は、Pac I及びXba I部位がSwa I部位により置換されているpNEB193 (New England Biolabs) から構成されるpJRoy43の創造であった。これを達成するためには、5’末端上にBam HI部位、中間にSwa I部位及び3’末端上にSal I部位を含むリンカーを、次の2種のオリゴを一緒にアニーリングすることによって創造した:
【0258】
5’-GATCGATTTAAAT-3’
5’-TCGAATTTAAATC-3’
得られるリンカーを、Bam HI及びSal Iにより消化されたpNEB193中に連結し、pJRoy43を創造した。
【0259】
次に、アスペルギラス・オリザエpryG遺伝子の上流の230bp領域を、フサリウム・ベネナタムにおける反復配列として選択した。この領域を、次の2種のプライマー対、すなわちプライマー3及び4、及び5及び6を用いて、アスペルギラス・オリザエpyrGプラスミドpJaL335 (WO98/12300号) からの2種の異なった生成物として増幅した:
プライマー3:5’-CGAATTTCATATTTAAATGCCGACCAGCAGACGGCCCTCG-3’
プライマー4:5’-GCGATATCATGATCTCTCTGGTACTCTTCG-3’
プライマー5:5’-GCGATATCATCGACCAGCAGACGGCCCTCG-3’
プライマー6:5’-GCGTTTAAACATGATCTCTCTGGTACTCTTCG-3’
【0260】
増幅反応(50μl)を、鋳型として、DNeasy Plant Mini Kit を用いて調製された約40〜50ngのゲノムDNAを用いて調製した。個々の反応は次の成分を含んだ:40〜50ngのゲノムDNA、50pモル個々のプライマー3及び4、又はプライマー5及び6、200μMの個々のdATP, dCTP, dGTP及びdTTP, 1×Tag DNA ポリメラーゼ緩衝液、及び2.5単位のTag DNAポリメラーゼ。反応を、次のようにプログラムされたPerkin-Elmer Model 480 Thermal Cycler においてインキュベートした:94℃で2.5分及び72℃で2.5分、サイクル1;それぞれ、94℃で45秒、50℃で45秒及び72℃で2分、サイクル2−26;及び94℃で45秒、50℃で45秒及び72℃で10分、サイクル27。
【0261】
反応生成物を、1%アガロースゲル上で単離し、約230bpのフラグメントを単離した。第1のPCR生成物(約230bpのフラグメント)は5’末端でSwa I部位及び3’末端でEcoRV部位を含み、そして第2のPCR生成物(約230bpのフラグメント)は、5’末端でEcoRV部位及び3’末端でPme I部位を含んだ。それらの2つの精製された反復体フラグメントをまず、EcoRVにより消化し、そして一緒に連結した。精製(フェノール−クロロホルム抽出及びエタノール沈殿)の後、連結生成物をPme I及びSwa Iにより消化し、約500bpのフラグメントを生成し、これをアガロースゲル電気泳動及びアガラーゼ処理により精製した。
【0262】
得られるフラグメントを、Pme I及びSwa Iにより消化されたpJRoy43中にクローン化し、pJRoy44を創造した(図10)。このベクターは、EcoRV部位により分離され、そしてSwa I及びPme I部位を両端に有する2つの230bp反復体を含む。
【0263】
amdS遺伝子及び調節領域を含むEcoRIフラグメントを、p3SR2 (Kelly and Hynes, 1985, EMBO Journal 4: 475-479) のサブクローンから単離し、クレノウフラグメントによりブラント化し、そしてEcoRV消化されたpJRoy44中に連結し、pJRoy47を創造した(図11)。このベクターを、Pme I及びSwa Iにより消化、そして上記の直接的な反復体を端に有するamdS遺伝しを含むフラグメントを、Bgl II 消化され、クレノウ処理されたJRoy40中に連結し、pLC31bを創造し(図12)、ここでtri5コード領域を含む3.7kbのフラグメントが、230bpの反復体を端に有するアスペルギラス・ニジュランスamdS遺伝子を含む3kbのフラグメントにより置換されている。
【0264】
次に、得られるプラスミドpLC31bを、EcoRIにより消化し、そしてこのtri5欠失カセットを含む6.1kbのEcoRIフラグメントを、形質転換の前、Qiaquich Gel Extraction Kit (Qiagen, Chatsworth, CA) を用いてゲル精製した。
フサリウム・ベネナタムMLY3プロトプラストを調製し、そして例6に記載のようにして、ゲル精製された6.1kbのEcoRI欠失フラグメントにより形質転換した。形質転換体をCOVEプレート上にプレートし、amdS遺伝子の組み込みについて選択した。欠失カッセトによる生来のtri5遺伝子の置換を、3個の得られる形質転換体において、サザンハイブリダイゼーションにより確かめた。
【0265】
サザンハイブリダイゼーションを、製造業者により提供されるAmersham (Arlington, IL) Vistra and Rapid Hyb プロトコール又はBoehringer Mannheim DIG System プロトコールを用いて行った。推定上の欠失の菌類ゲノムDNAを、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen Chatsworth, CA) を用いて調製した。膜を製造業者の説明書に従って展開し、そしてフルオレセイン−ラベルされたプローブについて、STORM 860 (Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA) を用いて走査するか、又はDIG−ラベルされたプローブについてフィルムに感光せしめた。“tri5フランキングプローブ”は、amdS挿入の765nt上流の5’側フランキング領域においてハイブリダイズする。
【0266】
すべての3個の形質転換体を胞子形成せしめ、そして単一の胞子をマイクロマニプレーターを用いて単離した。3個の欠失された形質転換体(合計9個の株)の3個の単一胞子単離物を再び胞子形成せしめた。amdSマーカーの欠失についての選択は、フルオロアセトアミド培地を含む、9個のプレート上に、確認されたtri5欠失の1×106個の胞子を広げることによって生じた。それらのプレートを室温で2週間までインキュベートした。得られるコロニーを、COVEプレート上で新しいフルオロアセトアミドプレート上で継代培養した。
【0267】
フルオロアセトアミド上で良く増殖し、そしてCOVE上で不十分に増殖するか又はまったく増殖しないコロニーをさらに分析した。フルオロアセトアミド(FA+)上で増殖することができる308個の単離物のうち、3個の単離物はCOVE上で増殖することができず(COVE-)、そして1つの単離物はCOVE上でほとんど増殖しないが、しかしフルオロアセトアミド上では良く増殖した。サザンハイブリダイゼーションは、3個のCOVE-株がamdS遺伝子をまだ含むが、しかしCOVE上での不完全な増殖を示す1つは、“ループ−アウト(loop-out)”の予測されるサイズに対応するバンドを有したことを示した。
【0268】
LyMC1と称するこの欠失体を胞子形成せしめ、そして単一胞子に由来する3個の単離物を得た。サザンブロットの結果は、1つの形質転換における、及びその形質転換体に由来する3個の胞子−精製された単離物LyMC1A, LyMC1B及びLyMC1Cにおける、tri5の欠失及びamdS遺伝子の欠失を確かめた。すべての3個の形質転換体の胞子を例6に記載のようにして生成し、但しVogels硝酸塩培地が使用され、そして培養物は24℃で72時間インキュベートされた。単一胞子を、マイクロマニプレーションを用いて単離した。
【0269】
反復された配列間の相同組換えは、完全なamdS遺伝子の欠失をもたらすべきである。完全な欠失を確かめるために、欠失領域を、tri5遺伝子の3’及び5’側フランキング領域にハイブリダイズする次のプライマーを用いてPCR増幅した:
GAGa3.3:5’-GGTAGCACGAGTGTCTGG-3’
Tox5’-AACTGGAAAGACCTGTGGGC-3’
【0270】
増幅反応(50μl)を、鋳型として、DNeasy Plant Mini Kit を用いて調製された約40〜50ngのゲノムDNAを用いて調製した。個々の反応は次の成分を含んだ:40〜50ngのゲノムDNA、50pモルの前方向プライマー、50pモルの逆方向プライマー、200μMの個々のdATP, dCTP, dGTP及びdTTP, 1×Tag DNA ポリメラーゼ緩衝液、及び2.5単位のTag DNAポリメラーゼ。反応を、次のようにプログラムされたPerkin-Elmer Model 480 Thermal Cycler においてインキュベートした:94℃で2.5分及び72℃で2.5分、サイクル1;それぞれ、94℃で45秒、50℃で45秒及び72℃で2分、サイクル2−26;及び94℃で45秒、50℃で45秒及び72℃で10分、サイクル27。
【0271】
反応生成物を、1%アガロースゲル上で単離し、ここで990bpの生成物バンドを切除し、そしてTOPO TA Cloing Kit (Invitrogen, Carlsbad, CA) からのpCR2.1中に、その製造業者の説明書に従ってクローン化し、次にそれを用いて、One Shot TOP10細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を形質転換した。DNAを、得られる形質転換体からQiagen OIAprep-Kit を用いて調製し、そしてEcoRIを用いての制限消化により分析した。プラスミドをABI PRISM377DNA Sequincer (ABI, Foster City, CA) 上で配列決定した。欠失領域のPCR−増幅及び配列決定は、完全なループ−アウトが生じ、そして単一の230bp反復体のみがそのtri5遺伝子座で存続することを示した。この反復体は、5’反復体の5’末端、及び3’反復体の3’末端を含み、このことは、相同組換えが2つの反復体間で生じたことを示す。
【0272】
3個の胞子−精製された欠失体フサリウム・ベネナタムMLY3、及び野生型フサリウム・ベネナタム株BBA64537からのDAS生成を、例10に記載のようにして決定し、但しVogels 硝酸塩培地が胞子を生成するために使用された。表3は、この分析からのDAS結果を示す。3種のtri5欠失体LyMC1A, LyMC1B又はLyMC1Cのどれも、いずれの検出できるDASを生成せず、ところが野生型フサリウム・ベネナタム株BBA64537及びフサリウム・ベネナタムMLY3は検出できる量のDAS生成した。
【0273】
【表3】

【0274】
生物学的材料の寄託:
次の生物学的材料を、Agriculture Research Service Patent Culture Collection, Northern Regional Research Center (NRRL), Peoria, Illinois に、ブタペスト条件に基づいて寄託し、そして次の受託番号を付与された:
寄託物:E.coli DH5αpTri5
受託番号:NRRL B-30029
寄託日:1998年5月6日
【0275】
前記株は、培養物への接近が、37 C.F.R.§1.14.及び35 U.S.C.§122下で特許及び(商標)局長により決定される本特許出願の係属の間、利用できることを保証する条件下で寄託された。寄託物は、寄託された株の実質的に純粋な培養物を示す。寄託物は、本出願の対応物又はその子孫が出願される国々における外国特許法により要求される場合、利用できる。しかしながら、寄託物の入手可能性は、政府の指令により許される特許種の低下において本発明を実施する許可を構成しないことが理解されるべきである。
【0276】
本明細書に記載される発明は、本明細書に開示される特許の態様により範囲を限定されるものではない。何故ならば、それらの態様は本発明のいくつかの観点を例示するものである。いずれかの同等の態様が本発明の範囲内で意図される。実際、本明細書に示され、そして記載されるそれらの修飾の他に、本発明の種々の修飾は、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾はまた本発明の範囲内にある。
種々の文献が本明細書に引用されており、それらの開示は引用により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドの生成方法であって、
(a)親糸状菌細胞の変異体を前記ポリペプチドの生成の助けとなる条件下で培養し、ここで(i)前記変異体が、前記ポリペプチドをコードする第1核酸配列及びトリコテセンの生成に関与する遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る第2核酸配列を含んで成り、そして(ii)前記変異体が、同じ条件下で培養される場合、親糸状菌細胞よりもトリコテセンを少なく生成し;そして
(b)前記培養培地から前記ポリペプチドを単離することを含んで成る方法。
【請求項2】
前記糸状菌細胞が、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フサリウム(Fusarium)、ギベレラ(Gibberella)、ヒューミコラ(Humicola)、マグナポルセ(Magnaporthe)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ミロセシウム(Myrothecium)、ネオカリマスチックス(Neocallimastix)、ネウロスポラ(Neurospora)、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ピロミセス(Piromyces)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコダーマ(Trichoderma)株である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記糸状菌細胞がフサリウムの株である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記フサリウム細胞がフサリウム・ベネナタム(Fusarium Venenatum)細胞である請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記フサリウム・ベネナタム細胞がフサリウム・ベネナタムATCC 20334である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記フサリウム・ベネナタム細胞が形態学的変異体である請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記フサリウム・ベネナタム細胞がフサリウム・ベネナタムATCC 20334の形態学的変異体である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子がtri3, tri4, tri5, tri6, tri11, tri11, tri12及びtri101から成る群から選択される請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子がtri5又はトリコジエンシンターゼ(trichodiene syntase)遺伝子である請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記遺伝子がtri3遺伝子である請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子がtri4遺伝子である請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子がtri6遺伝子である請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子がtri11遺伝子である請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子がtri12遺伝子である請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子がtri101遺伝子である請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記変異体細胞が、同一の条件下で培養される場合、トリコテセンの生成が親糸状菌細胞よりも少なくとも約25%低い請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記変異体細胞がトリコテセンを生成しない請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記糸状菌細胞が、前記第1核酸配列の少なくとも2つのコピーを含んで成る請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記異種ポリペプチドが、ホルモン、ホルモン変異体、酵素、受容体もしくはその一部、抗体もしくはその一部、又はレポーターである請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記酵素がオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼである請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記酵素が、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターぜ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、又はキシラナーゼである請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記変異体細胞が1又は複数の第3核酸配列の1又は複数の修飾をさらに含んで成り、ここで前記修飾が前記1又は複数の第3核酸配列の発現を低めるか又は排除する請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記1又は複数の第3核酸配列が、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターぜ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、又はキシラナーゼから成る群から選択された酵素を独立してコードする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記1又は複数の第3核酸配列が、アミンペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ又はプロテアーゼを独立してコードする請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記トリコテセンの生成に関与する少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る前記第2核酸配列が、選択マーカーによりマークされていない請求項1〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
異種ポリペプチドをコードする第1核酸配列、及びトリコテセンの生成を担当する遺伝子の少なくとも1つの修飾を含んで成る第2核酸配列を含んで成る、糸状菌細胞のトリコテセン−欠失変異低細胞であって、同じ条件下で培養される場合、トリコテセンの生成が変異体細胞の親糸状菌細胞よりも少ないことを特徴とする変異体細胞。
【請求項27】
前記糸状菌細胞が、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコッカス、フィリバシジウム、フサリウム、ギベレラ、ヒューミコラ、マグナポルセ、ムコル、ミセリオプソラ、ミロセシウム、ネオカリマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、ピロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ株である請求項26記載の変異体細胞。
【請求項28】
前記糸状菌細胞がフサリウム株である請求項26記載の変異体細胞。
【請求項29】
前記フサリウム細胞がフサリウム・ベネナタム(Fusarium Venenatum)細胞である請求項28記載の変異体細胞。
【請求項30】
前記フサリウム・ベネナタム細胞がフサリウム・ベネナタムATCC20334である請求項29記載の変異体細胞。
【請求項31】
前記フサリウム・ベネナタム細胞が形態学的変異体である請求項29記載の変異体細胞。
【請求項32】
前記フサリウム・ベネナタム細胞がフサリウム・ベネナタムATCC 20334の形態学的変異体である請求項31記載の変異体細胞。
【請求項33】
前記遺伝子がtri3, tri4, tri5, tri6, tri11, tri11, tri12及びtri101から成る群から選択される請求項26〜32のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項34】
前記遺伝子がtri5又はトリコジンシンターゼ遺伝子である請求項26〜33のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項35】
前記遺伝子がtri3遺伝子である請求項26〜34のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項36】
前記遺伝子がtri4遺伝子である請求項26〜35のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項37】
前記遺伝子がtri6遺伝子である請求項26〜36のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項38】
前記遺伝子がtri11遺伝子である請求項26〜37のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項39】
前記遺伝子がtri12遺伝子である請求項26〜38のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項40】
前記遺伝子がtri101遺伝子である請求項26〜39のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項41】
前記変異体細胞が、同一の条件下で培養される場合、トリコテセンの生成が親糸状菌細胞よりも少なくとも約25%低い請求項26〜40のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項42】
前記変異体細胞がトリコテセンを生成しない請求項26〜41のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項43】
前記糸状菌細胞が、前記第1核酸配列の少なくとも2つのコピーを含んで成る請求項26〜42のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項44】
前記異種ポリペプチドが、ホルモン、ホルモン変異体、酵素、受容体又はその一部、抗体又はその一部、又はレポーターである請求項26〜43のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項45】
前記酵素がオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼである請求項44記載の変異体細胞。
【請求項46】
前記酵素が、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターぜ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、又はキシラナーゼである請求項45記載の変異体細胞。
【請求項47】
前記変異体細胞が1又は複数の第3核酸配列の1又は複数の修飾をさらに含んで成り、ここで前記修飾が前記1又は複数の第3核酸配列の発現を低めるか又は排除する請求項26〜46のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項48】
前記1又は複数の第3核酸配列が、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターぜ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、又はキシラナーゼから成る群から選択された酵素を独立してコードする請求項47記載の変異体細胞。
【請求項49】
前記1又は複数の第3核酸配列が、アミンペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ又はプロテアーゼを独立してコードする請求項47記載の変異体細胞。
【請求項50】
前記トリコテセンの生成に関与する少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る前記第2核酸配列が、選択マーカーによりマークされていない請求項26〜49のいずれか1項記載の変異体細胞。
【請求項51】
請求項26〜50のいずれか1項記載の変異体細胞を得るための方法であって、
(a)トリコテセンの生成を担当する遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の修飾を含んで成る核酸配列を、親糸状菌細胞中に導入し;そして
(b)同じ条件下で培養される場合、前記変異体細胞の親糸状菌細胞よりもトリコテセンを低く生成する変異体を、前記段階(a)から同定することを含んで成る方法。
【請求項52】
フサリウム・ベネナタム株から得られる単離されたトリコジエンシンターゼであって、
(a)配列番号2と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を有するトリコジエンシンターゼ;
(b)1又は複数のアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入を含んで成る、配列番号2のアミノ酸配列を有するトリコジエンシンターゼの変異体;
(c)上記(a)又は(b)の対立遺伝子変異体;及び
(d)トリコジエンシンターゼ活性を有する、(a)又は(c)のフラグメント;
から成る群から選択されるトリコジエンシンターゼ。
【請求項53】
配列番号2と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を有する請求項52記載のトリコジエンシンターゼ。
【請求項54】
配列番号2のアミノ酸配列又はそのフラグメントを含んで成る請求項52記載のトリコジエンシンターゼ。
【請求項55】
配列番号2のアミノ酸配列を含んで成る請求項52記載のトリコジエンシンターゼ。
【請求項56】
フサリウム・ベネナタムATTC 20334から得られる請求項52〜55のいずれか1項記載のトリコジエンシンターゼ。
【請求項57】
E.コリNRRL B−30029に含まれるプラスミドpTri5に含まれる核酸配列によりコードされる請求項52記載のトリコジエンシンターゼ。
【請求項58】
請求項52〜57のいずれか1項記載のトリコジエンシンターゼをコードする核酸配列を含んで成る単離された核酸配列。
【請求項59】
適切な発現宿主におけるトリコジエンシンターゼの生成を指令する1又は複数の制御配列に作用可能に連結された請求項58記載の核酸配列を含んで成る核酸構造体。
【請求項60】
請求項59記載の核酸構造体を含んで成る組換え発現ベクター。
【請求項61】
請求項59記載の核酸構造体を含んで成る組換え宿主細胞。
【請求項62】
請求項52〜57のいずれか1項記載のトリコジエンシンターゼを生成するための方法であって、
(a)トリコジエンシンターゼを含んで成る上清液を生成するためにフサリウム・ベネナタムの株を培養し;そして
(b)トリコジエンシンターゼを回収する;
ことを含んで成る方法。
【請求項63】
トリコジエンシンターゼを生成するための方法であって、
(a)トリコジエンシンターゼの生成のための適切な条件下で請求項61記載の宿主細胞を培養し;そして
(b)トリコジエンシンターゼを回収する;
ことを含んで成る方法。
【請求項64】
変異体細胞を得るための方法であって、
(a)第1遺伝子生成物をコードする第1核酸配列を有する親細胞中に、選択マーカーとしての硝酸レダクターゼ及び前記第1核酸配列の修飾を含んで成る第1核酸構造体を導入し、ここで前記第1構造体が親細胞のゲノム中に組み込まれ、同じ条件下で培養される場合、親細胞に比較して、前記第1遺伝子生成物の低められた生成をもたらす前記修飾された第1核酸配列により内因性第1核酸配列が置換され;そして
(b)前記硝酸レダクターゼ遺伝子の存在、及び前記第1遺伝子生成物の低められた生成について、段階(a)から変異体細胞を選択する;
ことを含んで成る方法。
【請求項65】
(c)硝酸レダクターゼ遺伝子が欠失されている培養条件下で段階(b)からの変異体細胞を選択することをさらに含んで成る請求項64記載の方法。
【請求項66】
(c)段階(b)からの変異体細胞中に、修飾された第1核酸配列の5’及び3’側領域を含んで成る第2核酸配列を含んで成るが、しかし硝酸レダクターゼ遺伝子を欠いている第2核酸構造体を導入し、ここで前記第2構造体が親細胞のゲノム中に組み込まれ、前記第2核酸配列により前記修飾された第1核酸配列が置換され;そして
(d)硝酸レダクターゼ遺伝子が欠失されている培養条件下で段階(c)からの変異体細胞を選択する;
ことをさらに含んで成る請求項64記載の方法。
【請求項67】
請求項64〜66のいずれか1項記載の方法により得られる変異体細胞。
【請求項68】
ポリペプチドの生成方法であって、
(a)ポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る請求項67記載の変異体細胞を、前記ポリペプチドの生成を助ける条件下で培養し;そして
(b)前記変異体細胞の培養培地から前記ポリペプチドを単離することを含んで成る方法。
【請求項69】
細胞に含まれる標的核酸配列中に変更を導入するための方法であって;
(a)マーカーカセットを形成するために、ヌクレオチド配列反復体を端に有する硝酸レダクターゼ選択マーカー遺伝子を含んで成る核酸構造体を、親細胞中に導入することによって親細胞の変異体細胞を得、ここで前記反復体は標的DNAの5’側に隣接するヌクレオチド配列又は3’側に隣接するヌクレオチド配列から成り;そしてさらに、
前記端に接するヌクレオチド配列反復体が標的DNAの5’側ヌクレオチド配列から成る場合、前記核酸構造体がさらに、前記マーカーカセットの3’側に、及びそのカセットに隣接して、前記標的DNA配列の3’側のヌクレオチド配列から成る追加のヌクレオチド配列を含んで成り;そして
前記端に接するヌクレオチド配列反復体が標的DNAの3’側ヌクレオチド配列から成る場合、前記核酸構造体がさらに、前記マーカーカセットの5’側に、及びそのカセットに隣接して、前記標的DNA配列の5’側のヌクレオチド配列から成る追加のヌクレオチド配列を含んで成り;
(b)前記硝酸レダクターゼ遺伝子の存在について選択することによって、段階(a)から変異体細胞選択し;
(c)前記選択された変異体細胞を、前記端に接するヌクレオチド配列反復体間での組換えによる前記硝酸レダクターゼ遺伝子の欠失をもたらす条件下で培養し;そして
(d)前記硝酸レダクターゼ遺伝子が前記変異体細胞から欠失されている標的核酸配列における変更を有する変異体細胞を選択する;
ことを含んで成る方法。
【請求項70】
請求項69記載の方法により得られる変異体細胞。
【請求項71】
ポリペプチドを生成するための方法であって、
(a)ポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る請求項70記載の変異体細胞を、前記ポリペプチドの生成を助ける条件下で培養し;そして
(b)前記変異体細胞の培養培地から前記ポリペプチドを単離することを含んで成る方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−291207(P2009−291207A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−190191(P2009−190191)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【分割の表示】特願2000−549743(P2000−549743)の分割
【原出願日】平成11年5月20日(1999.5.20)
【出願人】(500175602)ノボザイムス,インコーポレイティド (26)
【Fターム(参考)】