説明

トリプルコーン型同期装置

【目的】 組付性の良いトリプルコーン型同期装置を提供する。
【構成】 ギヤ22にアウタリング27,ミドルリング28およびインナリング29を組付けてなるギヤサブアッシーAとクラッチハブ21にキースプリング23とインデックスキー24とハブスリーブ25を組付けてなるクラッチハブサブアッシーBを軸方向に組み合わせる時に、アウタリング27の係合部27bがクラッチハブ21の切欠溝21aに係合する以前に、インナリング29の係合爪部29cがクラッチハブ21の係合穴21bに係合するよう、インナリング29の係合爪部29c長さを軸方向に長くした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トリプルコーン型同期装置に関する。
【0002】
【従来の技術】トリプルコーン型同期装置は、例えば実開平2−34833号公報に示されているように、シャフト上に互いに相対回転可能に組付けられるクラッチハブとギヤ間にてアウタリングおよびインナリングを配置してこれら両リングを前記クラッチハブに一体回転可能に連結するとともに、これら両リング間にミドルリングを配置して前記ギヤに一体回転可能に連結し、これら3つのリングおよび前記ギヤ間に3つのテーパコーンクラッチを形成したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した公報のトリプルコーン型同期装置においては、前記ギヤに前記アウタリング,ミドルリングおよびインナリングを組付けてなるギヤサブアッシーと前記クラッチハブにキースプリングとインデックスキーとハブスリーブを組付けてなるクラッチハブサブアッシーを軸方向に組み合わせる時に、前記アウタリングの係合部(切欠凹所)が前記インデックスキーに係合するのと殆ど同時に、前記インナリングの係合凸部が前記クラッチハブの切欠溝に係合するように前記インナリングの係合凸部の軸方向長さが設定されている。このため、作業者は、前記ギヤサブアッシーと前記クラッチハブサブアッシーを軸方向に組み合わせる以前に、前記アウタリングの係合部(切欠凹所)と前記インナリングの係合凸部との周方向相対位置を、前記インデックスキーと前記クラッチハブの切欠溝との周方向相対位置と一致させておく必要があり、組付性が悪い。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した問題に対処すべくなされたものであり、シャフト上に互いに相対回転可能に組付けられるクラッチハブとギヤ間にてアウタリングおよびインナリングを配置してこれら両リングを前記クラッチハブに一体回転可能に連結するとともに、これら両リング間にミドルリングを配置して前記ギヤに一体回転可能に連結し、これら3つのリングおよび前記ギヤ間に3つのテーパコーンクラッチを形成してなるトリプルコーン型同期装置において、前記ギヤに前記アウタリング,ミドルリングおよびインナリングを組付けてなるギヤサブアッシーと前記クラッチハブにキースプリングとインデックスキーとハブスリーブを組付けてなるクラッチハブサブアッシーを軸方向に組み合わせる時に、前記アウタリングの係合部が前記クラッチハブまたはインデックスキーに係合する以前に、前記インナリングの係合爪部が前記クラッチハブの係合部に係合するよう、前記インナリングの係合爪部長さを軸方向に長くしたことを特徴とする。
【0005】
【発明の作用・効果】本発明によるトリプルコーン型同期装置においては、ギヤサブアッシーとクラッチハブサブアッシーを軸方向に組み合わせる時、インナリングの係合爪部が上方となるようにしたギヤサブアッシーの上にクラッチハブの係合部が下方となるようにしたクラッチハブサブアッシーを任意に乗せてギヤサブアッシーに対して回転させれば、インナリングの係合爪部とクラッチハブの係合部が一致した位置にてクラッチハブサブアッシーが軸方向に移動してインナリングの係合爪部とクラッチハブの係合部が係合し、またかかる状態にて更にクラッチハブサブアッシーを回転させれば、ミドルリングを介してギヤと一体となって停止しているアウタリングに対してクラッチハブサブアッシーとインナリングが一体的に回転して、クラッチハブまたはインデックスキーとアウタリングの係合部が一致した位置にてクラッチハブサブアッシーが軸方向に移動してクラッチハブまたはインデックスキーとアウタリングの係合部が係合し、ギヤサブアッシーとクラッチハブサブアッシーの軸方向での組み合わせが完了する。
【0006】このように、本発明によるトリプルコーン型同期装置においては、ギヤサブアッシーの上にクラッチハブサブアッシーを任意に乗せて回転させるだけで、インナリングの係合爪部とクラッチハブの係合部及びクラッチハブまたはインデックスキーとアウタリングの係合部を順次自動的に係合させることができて、ギヤサブアッシーとクラッチハブサブアッシーの軸方向での組み合わせ作業を短時間にしかも容易に行うことができる。また、本発明はインナリングの形状を変更するだけで実施できるものであるため、コストアップが殆どなく経済的な効果も期待できる。
【0007】
【実施例】以下に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明によるトリプルコーン型同期装置を示していて、この同期装置はシャフト10上にスプライン結合されて一体的に回転するクラッチハブ21と、シャフト10上にベアリング11を介して回転自在に組付けられてクラッチハブ21に対して相対回転可能なギヤ22と、クラッチハブ21に組付けたキースプリング23,インデックスキー24及びハブスリーブ25と、ギヤ22に一体的に組付けたスプラインピース26と、クラッチハブ21とギヤ22間に配置されて3つのテーパコーンクラッチを形成するアウタリング27,ミドルリング28及びインナリング29によって構成されている。
【0008】アウタリング27は、図1及び図2にて示したように、内周にテーパコーン部27aを有していて、外周に形成した凸部27bにてクラッチハブ21の外周に形成した切欠溝21aに軸方向にて係合しており、クラッチハブ21に一体回転可能に連結されている。ミドルリング28は、図1にて示したように、外周及び内周にテーパコーン部28a,28bを有していて、大径側に形成した軸方向に延びる係合爪部28cにてスプラインピース26の溝26aに軸方向にて係合しており、スプラインピース26すなわちギヤ22に一体回転可能に連結されている。インナリング29は、図1及び図2にて示したように、外周及び内周にテーパコーン部29a,29bを有していて、小径側に形成した軸方向に延びる所定長さの係合爪部29cにてクラッチハブ21に設けた係合穴21bに軸方向にて係合しており、クラッチハブ21に一体回転可能に連結されている。
【0009】上記したトリプルコーン型同期装置は、クラッチハブ21にキースプリング23,インデックスキー24及びハブスリーブ25を組付けてクラッチハブサブアッシーBとするとともに、ギヤ22にスプラインピース26とアウタリング27,ミドルリング28及びインナリング29を組付けてギヤサブアッシーAとし、これらクラッチハブサブアッシーBとギヤサブアッシーAを軸方向に組み合わせることにより組み立てられていて、かかる組立体がシャフト10上に組付けられて図1のように構成されている。
【0010】ところで、クラッチハブサブアッシーBとギヤサブアッシーAを軸方向に組み合わせる時には、図4R>4(a)〜(c)にて示したように、インナリング29の係合爪部29cが上方となるようにしたギヤサブアッシーAの上にクラッチハブ21の係合穴21bが下方となるようにしたクラッチハブサブアッシーBを任意に乗せてギヤサブアッシーAに対して回転させれば、インナリング29の係合爪部29cとクラッチハブ21の係合穴21bが一致した位置にてクラッチハブサブアッシーBが軸方向に移動してインナリング29の係合爪部29cとクラッチハブ21の係合穴21bが係合し、またかかる状態にて更にクラッチハブサブアッシーBを回転させれば、ミドルリング28を介してスプラインピース26及びギヤ22と一体となって停止しているアウタリング27に対してクラッチハブサブアッシーBとインナリング29が一体的に回転して、クラッチハブ21の切欠溝21aとアウタリング27の係合凸部27bが一致した位置にてクラッチハブサブアッシーBが軸方向に移動してクラッチハブ21の切欠溝21aとアウタリング27の係合凸部27bが係合し、ギヤサブアッシーAとクラッチハブサブアッシーBの軸方向での組み合わせが完了する。
【0011】このように、本実施例のトリプルコーン型同期装置においては、ギヤサブアッシーAの上にクラッチハブサブアッシーBを任意に乗せて回転させるだけで、インナリング29の係合爪部29cとクラッチハブ21の係合穴21b及びクラッチハブ21の切欠溝21aとアウタリング27の係合凸部27bを順次自動的に係合させることができて、ギヤサブアッシーAとクラッチハブサブアッシーBの軸方向での組み合わせ作業を短時間にしかも容易に行うことができる。また、上記した作用効果はインナリング29の形状を変更するだけで得られるものであるため、コストアップが殆どなく経済的な効果も期待できる。
【0012】上記実施例においては、クラッチハブ21の切欠溝21aとアウタリング27の係合凸部27bが係合するクラッチハブインデックスタイプの同期装置に本発明を実施したが、本発明は図5にて示したようにインデックスキー124とアウタリング127の係合凹部127bが係合するキーインデックスタイプの同期装置にも同様に実施することができる。なお、図5に示した同期装置のその他の構成は上記実施例と実質的に同じであるため、類似符号を付してその説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるトリプルコーン型同期装置の一実施例を示す縦断側面図である。
【図2】 図1に示したアウタリング,ミドルリング及びインナリングの正面図である。
【図3】 図1に示したクラッチハブの背面図である。
【図4】 図1に示したトリプルコーン型同期装置の組立工程図である。
【図5】 本発明によるトリプルコーン型同期装置の他の実施例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
10…シャフト、21…クラッチハブ、21b…係合穴(係合部)、22…ギヤ、23…キースプリング、24…インデックスキー、25…ハブスリーブ、26…スプラインピース、27…アウタリング、27b…係合凸部(係合部)、28…ミドルリング、29…インナリング、29c…係合爪部、A…ギヤサブアッシー、B…クラッチハブサブアッシー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シャフト上に互いに相対回転可能に組付けられるクラッチハブとギヤ間にてアウタリングおよびインナリングを配置してこれら両リングを前記クラッチハブに一体回転可能に連結するとともに、これら両リング間にミドルリングを配置して前記ギヤに一体回転可能に連結し、これら3つのリングおよび前記ギヤ間に3つのテーパコーンクラッチを形成してなるトリプルコーン型同期装置において、前記ギヤに前記アウタリング,ミドルリングおよびインナリングを組付けてなるギヤサブアッシーと前記クラッチハブにキースプリングとインデックスキーとハブスリーブを組付けてなるクラッチハブサブアッシーを軸方向に組み合わせる時に、前記アウタリングの係合部が前記クラッチハブまたはインデックスキーに係合する以前に、前記インナリングの係合爪部が前記クラッチハブの係合部に係合するよう、前記インナリングの係合爪部長さを軸方向に長くしたことを特徴とするトリプルコーン型同期装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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