説明

トルクセンサ

【課題】歪検出部の検出感度や検出精度を向上させたトルクセンサを提供する。
【解決手段】負荷装置Pの負荷側シャフトP1が接続される負荷側端部2dと駆動力の入力される駆動側端部2cとの間で捻れを伴いながらトルクを伝達するトルク伝達軸2と、トルク伝達軸2を回転可能に支持する軸受5・5と、トルク入力によってトルク伝達軸2に生じる歪みを検出する歪検出部40とを有し、トルク伝達軸2の負荷側端部2dには、負荷側シャフトP1の内周側において負荷側シャフトP1に嵌合することにより互いの回転方向の位相関係をほぼ一定に維持する噛み合い構造をなす負荷側接続部2sが形成されており、トルク伝達軸2のうち負荷側接続部2sに近い方の軸受5と負荷側接続部2sとの間には、負荷側接続部2sのうち径方向の肉厚が最も薄いスプライン溝2s1よりも更に肉厚を薄くした薄肉部2tが周回して形成されており、薄肉部2tに歪検出部40が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出精度や検出感度を適正化したトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁作用により回転駆動するモータ等の駆動装置のシャフトに作用するトルクを検出するトルクセンサが知られている。例えば特許文献1には、中空軸状をなし軸方向両端がそれぞれ駆動装置のシャフト及び負荷装置のシャフトに接続され駆動側と負荷側との間で捩れを伴いながらトルクを伝達するカップリングとしてのトルク伝達軸と、トルク伝達軸の内部に中空空間を形成する内周面に取り付けられトルク入力によって内周面に生じる歪みを検出する歪ゲージ等の歪検出部と、中空空間に収納され歪検出部の検出結果を中空空間の外部に送信するテレメータ等の送信部と備え、送信部から受信した検出結果に基づいてトルク伝達軸に作用するトルクの大きさを算出する歪ゲージ式トルクセンサが開示されている。歪ゲージ式トルクセンサは、駆動装置に片持ち状態で取り付けられ又は一体に組み込まれるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51−131677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、モータ等の駆動装置の高速駆動化に伴い、例えば五万回転/毎分などの高速回転に対応したトルクセンサが望まれる。高速回転化に対応するためには、歪検出部の検出感度の向上が要求されることに加えて、遠心力によってトルク伝達軸が破壊されることを防止するためにトルク伝達軸の径を細くする必要がある。上記従来のようにトルク伝達軸内部に送信部を収納する歪ゲージ式トルクセンサでは、軸を細くするほど軸自体が撓みやすくなるうえ、送信部を収納するための空間を確保するためにトルク伝達軸の軸方向寸法をある程度確保しなければならないので、一般的な片持ち支持構造では成り立たず、軸方向に沿って複数配置した軸受を介してトルク伝達軸を回転可能に支持する構造にする必要がある。
【0005】
このような軸受支持構造において、例えば歪検出部を二つの軸受間に配置すると、軸受での摩擦(メカロス)が歪検出部に悪影響を与え、歪検出部での検出精度が損なわれてしまうことが考えられる。
【0006】
この悪影響を低減するために、トルク伝達軸の負荷側の軸端から負荷側の軸受の間に歪検出部を配置することが一つの有効な手段として考えられる。この構成において、トルク伝達軸の負荷側の軸端および負荷装置のシャフトにそれぞれスプライン溝を有する接続部を設け、この接続部同士を嵌合させてトルク伝達可能に両軸を接続する場合には、トルク伝達軸の接続部の近傍に歪検出部を配置することになる。この場合、接続部を構成する凹部又は凸部によって応力に偏りが発生し、トルク入力による歪みが歪検出部でバランス良く検出できずに、検出精度を損なうおそれが考えられる。
【0007】
上記以外に歪検出部の検出精度を損なう要因としては、回転に伴いトルク伝達軸に発生するコニカルモードの振動やパラレルモードの振動が挙げられる。このような振動の発生を抑制するためには、軸受間の距離を長くして可能な限りトルク伝達軸の軸端に近いところに軸受を配置することが望まれる。
【0008】
上記課題は、歪検出部として歪ゲージを用いた歪ゲージ式トルクセンサだけでなく、トルク伝達軸の外周面に歪みによって透磁率の変わる磁歪膜を設けた磁歪式トルクセンサでも同様のことが言え、また、トルク伝達軸と負荷装置のシャフトを接続するための接続部をスプライン溝で構成した場合だけでなく、例えばキー又はキー溝で接続部を構成した場合にも同様のことが言える。勿論、トルク伝達軸の駆動側の軸端から駆動側の軸受の間に歪検出部を配置する場合にも同様のことが言える。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、歪検出部の検出感度や検出精度を向上させたトルクセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明のトルクセンサは、負荷装置の負荷側シャフトを介して軸方向一端に負荷が入力され駆動装置の駆動側シャフトを介して軸方向他端に駆動力が入力されて負荷側と駆動側との間で捻れを伴いながらトルクを伝達するトルク伝達軸と、軸方向に沿って複数配置された軸受を介してトルク伝達軸を回転可能に支持する固定支持部と、トルク入力によって前記トルク伝達軸に生じる歪みを検出する歪検出部とを具備し、前記歪検出部の検出結果に基づき前記トルク伝達軸に作用するトルクの大きさを算出するトルクセンサであって、前記トルク伝達軸の負荷側端部又は駆動側端部の少なくとも一方には、接続相手となる前記シャフトの外周側又は内周側のいずれかにおいて当該シャフトに嵌合することにより互いの回転方向の位相関係をほぼ一定に維持する噛み合い構造をなす接続部が形成されており、前記トルク伝達軸のうち前記接続部に近い方の前記軸受と前記接続部との間には、前記接続部のうち径方向の肉厚が最も薄い部分よりも更に肉厚を薄くした薄肉部が周回して形成されており、当該薄肉部に前記歪検出部が配置されていることを特徴とする。
【0012】
互いに回転方向の位相関係をほぼ一定に維持するとは、同軸上に同期回転可能に取り付けられる場合のほか、回転方向の位相に多少のガタつきや位置ずれを許容した状態で一体回転可能に取り付けられる場合を意味する。この噛み合い構造をなす例としては、スプライン溝やキー溝などが挙げられる。
【0013】
このように、接続部を構成するスプライン溝といった凸凹部によって応力集中箇所に偏りが生じるものの、この応力集中化箇所の偏りによる影響を低減すべく、接続部のうち径方向の肉厚が最も薄い部位よりも更に肉厚を薄くした薄肉部が周回して形成され、この薄肉部に歪検出部を配置しているので、接続部の応力集中の偏りによる歪検出部への影響を低減することが可能となる。しかも、歪検出部を軸受よりも外側(負荷側又は駆動側)に配置しているので、軸受での摩擦(メカロス)が歪検出部に与える影響を低減して、歪検出部での検出精度を向上することができる。さらに、歪検出部の配置される部位は、周囲に比べて径方向の肉厚の薄い薄肉部であるので、他の部位に比べて応力が集中しやすく、歪検出部の検出感度を向上させることが可能となる。
【0014】
また、例えば、接続部がスプライン溝を有するスプライン軸又は軸受である場合、スプライン溝を形成するために必要な歯切り工具の逃げ部の軸方向寸法を、歪検出部の取り付け可能な程度の寸法まで広げるだけで、逃げ部を薄肉部として利用できるので、逃げ部とは別途に薄肉部を形成する場合に比べて軸端から軸受までの軸寸法(オーバーハング寸法)を低減でき、コニカルモードやパラレルモードでの振動の発生を抑制することも可能となる。
【0015】
複数の歪検出部の検出バランスを向上させて検出精度を向上させるためには、前記接続部は、円周方向に沿って一定間隔で配置された複数のスプライン溝を有し、歪検出部は、軸心回りに対称となる位置に対をなすように複数取り付けられ、前記歪検出部と前記スプライン溝との円周方向の位相関係は、全ての歪検出部で同一となるように設定されていることが効果的である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明したように、接続部における凹部や凸部によって生じる応力集中箇所の偏りによる影響を低減すべく、接続部のうち径方向の肉厚が最も薄い部位よりも更に肉厚を薄くした薄肉部が周回して形成され、この薄肉部に歪検出部を配置しているので、接続部の応力集中箇所の偏りによる歪検出部への影響を低減でき、歪検出部の検出精度を向上させることが可能となる。
【0017】
さらに、歪検出部の配置する部位は、周囲に比べて径方向の肉厚の薄い薄肉部であるので、他の部位に比べて応力が集中しやすく、歪検出部の検出感度を向上させることが可能となる。
【0018】
したがって、検出精度及び検出感度を向上させたトルクセンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るトルクセンサの構成を示す断面図。
【図2】同トルクセンサを適用したモータ等の駆動装置を模式的に示す図。
【図3】嵌合軸の構成図、並びに、トルク伝達軸と嵌合軸の嵌合状態を示す図。
【図4】トルク伝達軸と負荷装置との接続部分及びその近傍の構成を模式的に示す図。
【図5】トルク伝達軸の負荷側接続部を軸方向から視た図。
【図6】スプライン溝と歪検出部との位置関係を模式的に示す図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るトルクセンサの構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るトルクセンサを、図面を参照して説明する。
【0021】
トルクセンサTsは、図1に示すように、駆動装置Mと負荷装置Pとの間に介在するトルク伝達軸2に作用するトルクの大きさを測定する装置であり、略中空軸状をなし軸方向両端2c,2dがそれぞれ駆動側(駆動装置M)及び負荷側(負荷装置P)に接続され駆動側及び負荷側の間で捩れを伴いながらトルクを伝達するトルク伝達軸2と、トルク伝達軸2の内部に内部空間SP1を形成する内周面2aに取り付けられトルク伝達軸2に対するトルク入力によりトルク伝達軸2に生じる歪みに対応する検出信号(差動信号)を出力する歪ゲージを用いた歪検出部40と、歪検出部40の検出信号をトルク伝達軸2の外部に送信する送信部30と、送信部30からアンテナ部33を介して受信した検出信号に基づきトルク伝達軸2に作用するトルクの大きさを算出するトルク演算部31と、略中空軸状をなしトルク伝達軸2の内周側においてトルク伝達軸2に嵌合することによりトルク伝達軸2と共に二重の中空軸となる嵌合軸8とを有している。このトルクセンサTsは、図2に例示するように、トルク伝達軸2の軸方向一端2cと駆動力出力軸M3a(駆動側シャフト)とを接続してトルクセンサTsを備えたモータ等の駆動装置Mを構成するために利用される。なお、本明細書においては、軸方向をXとし、駆動側をX1とし、負荷側をX2として説明する。
【0022】
トルク伝達軸2は、図1に示すように、内部に内部空間SP1が形成された略中空軸状をなす鋼材で構成され、その内周面2aの横断面の形状は嵌合軸8の外周面8bの横断面に対応する形状にしてある。そして、この内部空間SP1に嵌合軸8を駆動側X1から圧入するしまりばめによって、嵌合軸8の外周面8bとトルク伝達軸2の内周面2aとを接触させた嵌合状態にしている。図1及び図4に示すように、トルク伝達軸2の軸方向一端2c(駆動側X1の端部2c)は、回転駆動するモータ等の駆動装置Mの駆動力出力軸M3a(シャフト)とスプライン接続により関連付けられて駆動装置Mにより駆動力が入力され、トルク伝達軸2の軸方向他端2d(負荷側X2の端部2d)は、負荷装置Pの負荷側シャフトP1とスプライン接続により関連付けられて負荷装置Pにより負荷が入力される。
【0023】
トルク伝達軸2は、図1及び図4に示すように、軸受5を介して固定支持部6に回転可能に支持されている。軸受5は、ボールベアリング等の転がり軸受を用いたもので、トルク伝達軸2を複数箇所(本実施形態では二箇所)で支持するように軸方向に沿って複数(本実施形態では二つ)配置されている。
【0024】
図4に示すように、トルク伝達軸2の負荷側端部2dには、接続相手となる負荷側シャフトP1の内周側において負荷側シャフトP1に嵌合することにより互いに回転方向の位相関係をほぼ一定に維持する噛み合い構造をなす負荷側接続部2sが設けられている。トルク伝達軸2の駆動側端部2cにも同様に出力軸M3a(駆動側シャフト)に接続するための駆動側接続部2rが設けられている。これら負荷側接続部2s及び駆動側接続部2rは、図5に示すように、トルク伝達軸2の外周面2bに円周方向に沿って一定間隔で形成された複数のスプライン溝2s1を有し、トルク伝達軸2が雄型のインボリュートスプライン軸をなしている。図4に示す負荷側シャフトP1は、これに対応する雌型のインボリュートスプライン軸受をなしている。図5に示すように、トルク伝達軸2の外周面2bは、スプライン溝2s1によって区分された歯部2s2を有し、スプライン溝2s1と歯部2s2とが周方向に沿って交互に形成されており、溝底が最も径方向の肉厚の薄い部分となっている。その溝底の径方向寸法をD1と表している。
【0025】
図4に示すように、トルク伝達軸2のうち負荷側接続部2sに近い方の軸受5と負荷側接続部2sとの間には、負荷側接続部2sのうち径方向の肉厚が最も薄い部分(スプライン溝2s1)よりも更に肉厚を薄くした薄肉部2tが周回して形成されている。すなわち、複数の軸受5の外側であって負荷側接続部2sの内側に、薄肉部2tが形成されているとも言える。この薄肉部2tは、その径方向寸法D2が、負荷側接続部2sを構成するスプライン溝2s1の径方向寸法D1よりも薄い括れ部とも呼べ、スプライン溝2s1をトルク伝達軸2に形成するために用いる歯切り工具などの切削工具の逃げでもあり、その軸方向寸法W1は、切削工具の逃げとして最低限必要な寸法W2よりも広くして歪検出部40の取付を許容する寸法に設定している。薄肉部2tと負荷側接続部2sとの境界部分は、軸方向に沿って滑らかに肉厚が変化するように縦断面形状が曲面にされ、応力集中を避けている。
【0026】
嵌合軸8は、図3(a)及び図3(c)に示すように、内部に中空空間SP0が形成された有底の略中空軸状をなすガラスエポキシ樹脂等の樹脂で構成されている。嵌合軸8の内部に設けられる中空空間SP0は、軸方向一端8c側(駆動側X1)が閉止される一方で、軸方向他端8d側(負荷側X2)が開口部8eを介して開放されている。嵌合状態においては、図1に示すように、開口部8eを介して、歪検出部40の配置されたトルク伝達軸2内部の内部空間SP1と、嵌合軸8内部の中空空間SP0とが連通している。この嵌合軸8において送信部30を収納するための中空空間SP0は、軸方向に沿った長尺状をなし、図3(a)に示すように、軸中心Cnを通り負荷側X2の端部8d(軸方向一端)から駆動側X1(軸方向他端)に向かう第一の穴8hと、図3(a)及び図3(d)に示すように、横断面において軸方向Xに直交する線Liを通り径方向X3に沿った貫通孔である第二の穴8hとを導通して形成されている。これら第一の穴8h及び第二の穴8hは、ドリル及びワイヤーカットなどの加工により空けられる。なお、図1に示すように、トルク伝達軸2との嵌合状態において、トルク伝達軸2の内周面2aに設けられた突状の嵌合軸支持部20と、嵌合軸8の軸方向他端8d(負荷側X2の端部8d)とを当接させることにより、軸方向における嵌合軸8の位置決めがなされる。
【0027】
図1に示すように、歪検出部40は、機械的な寸法の微小な変化を電気信号として検出するシート状の歪ゲージを用いたもので、トルク伝達軸2の内部に内部空間SP1を形成し且つ軸心Cnを中心とする円形に沿った内周面2aに接着剤を介して貼付されている。歪検出部40の貼付位置は、上記薄肉部の内周面2aに設定されている。本実施形態では、互いに軸心Cnを中心として対称となる位置に歪検出部40をそれぞれ取り付けて歪検出部40を一対又は複数対とし、複数の歪検出部を既知の4ゲージ法でホイートストンブリッジ回路を構成するように接続している。このブリッジ回路は、励起信号とも呼べる励起電圧が印加されている状態において、歪検出部40の歪みによって生じた抵抗値の変化を検出信号とも呼べる差動電圧として出力する。この差動電圧は、歪量に比例した大きさの電圧であり、歪みに対応する信号である。また、図6においてトルク伝達軸2の外周面2bと内周面2aとを展開して模式的に示すように、歪検出部40とスプライン溝2s1との円周方向RDの位相関係は、全ての歪検出部40で同一となるように設定されている。本実施形態では、図6に示すように、歪検出部40の受感領域の中心と、スプライン溝2s1の中心とが円周方向に重なるように設定されているが、これに限定されるものではない。
【0028】
送信部30は、図1及び図3(a)に示すように、プリント基板などの板状部位30aを有し、歪検出部40に励起電圧を印加し且つ歪検出部40から差動電圧をトルク伝達軸2の外部へ送信するテレメータを用いたもので、嵌合軸8における中空空間SP0内に配置されて、中空空間SP0の内面8aに設けられた取付部80に保持されている。
【0029】
取付部80は、図1及び図3(a)に示すように、送信部30の板状部位30aの端部を差し込み可能なスリットであり、中空空間SP0を形成する内面8aに複数形成されている。具体的には、図3(a)及び図3(c)に示すように、中空空間SP0を有底筒状の中空部とみなした場合に、底部に対応する内面8aに第一の取付部80aが形成されていると共に、開口部8e近傍の内周面8aに対をなす第二の取付部80b・80bが形成されており、これら第一及び第二の取付部80a・80bによって長尺状の送信部30を両持ち状態で支持している。
【0030】
図1に示すように、トルク伝達軸2の外周側には、アンテナ部33が設けられている。このアンテナ部33の軸方向両側には、二つの軸受5・5が配置されている。また、トルク伝達軸2の外部には、送信部30から送信された検出信号をアンテナ部33を介して受信してトルクの大きさを演算処理により算出するトルク演算部31と、送信部30に対して電力を非接触でアンテナ部33を介して供給する電力供給部32とが設けられている。
【0031】
すなわち、図1に示すように、電力供給部32からアンテナ部33を介して送信部30に電力が供給され、歪検出部40に励起電圧が印加される。そして、トルク伝達軸2にトルクが作用すると、トルク伝達軸2に捩れが生じ、この捩れがトルク伝達軸2の内周面2aに貼付された歪検出部40によって歪量として検出される。歪検出部40から出力される歪量に対応する検出信号(差動電圧)が送信部30からトルク演算部31に送信され、トルク演算部31が検出信号に基づいてトルクの大きさを算出する。
【0032】
固定支持部6は、図1に示すように、略有底円筒状をなし駆動側X1の基端部60aが駆動装置MのハウジングM1にボルト等の止着具を介して取り付けられる筒状支持部60と、筒状支持部60の負荷側X2の開口60kを閉止する蓋状支持部61とから構成されている。筒状支持部60及び蓋状支持部61により形成される内部空間SP2に軸受5が配置されており、固定支持部6は、筒状支持部60の底部60bt及び蓋状支持部61を軸方向Xに沿って貫通する位置に配置されたトルク伝達軸2を軸受5を介して回転可能に支持し、トルク伝達軸2及び嵌合軸8を一体に回転可能にしている。軸受5は、トルク伝達軸2の外周面2bに形成された突状の回転側軸受支持部64aと、蓋状支持部61及び筒状支持部60の底部60btを足場とする固定側軸受支持部64bとにより抱き込まれて軸方向に固定されている。
【0033】
図1に示すように、トルク伝達軸2の軸方向一端2c側(駆動側X1)から導入される冷媒を内部空間SP1に連通しないように軸受5に供給する冷媒供給路7が設けられている。具体的には、図3(a)、図3(b)及び図3(c)に示すように、嵌合軸8の外周面8bに、軸方向一端8c側(駆動側X1)から軸方向他端8d側(負荷側X2)に向けて延びる溝部81が設けられており、図1及び図3(d)に示すように、トルク伝達軸2及び嵌合軸8の嵌合状態において、溝部81とその溝部81の対向面(トルク伝達軸2の内周面2a)との間に、軸方向Xの一方から導入される冷媒を軸受5に供給するためのスラスト路71が形成されるようにしている。
【0034】
スラスト路71以外に冷媒供給路7を構成するものとして、図1及び図3(a)〜(c)に示すように、導入路70及び接続路72が設けられている。導入路70は、嵌合状態で内側となる嵌合軸8の軸中心Cnを通り軸方向一端8c(駆動側X1)から冷媒を導入する路であり、接続路72は、導入路70から外周に向けて延在し導入路70とスラスト路71とを接続する路である。スラスト路71には、各々の軸受5に冷媒を噴出する噴射路73が複数設けられており、スラスト路71を基幹路とし、噴射路73を分岐路として、各々の軸受5に冷媒を供給する流路が一つのスラスト路71から分岐して形成される。この噴射路73に対応して固定側軸受支持部64bは、噴射路73と径方向で重合する位置にあり、噴射路73から供給された冷媒を軸受5に案内する湾曲した案内面64xが形成されている。
【0035】
溝部81は、図3(d)に示すように、複数(本実施形態では二つ)設けられて対をなし、対をなす溝部81・81は軸中心Cn回りに対称となる位置に配置されており、図1に示すように、各々の接続路72を介して導入路70の先端部にある分岐部70aと接続されている。これにより、軸全体での荷重バランスをとっている。
【0036】
なお、図2に概念図を用いて模式的に示すように、駆動装置Mは周知のモータ等を用いたもので、ハウジングM1に固定され磁界を発生する固定子M2と、固定子M2に対して回転可能な状態でハウジングM1に支持され磁界を受けて回る回転子M3とを有し、固定子M2への通電制御により磁界を変化させ、固定子M2と回転子M3との間に反発力や吸引力等を作用させて回転子M3を回転させ、電気エネルギーから回転駆動力を出力するものである。回転子M3の駆動力出力軸M3a(シャフト)に上記トルク伝達軸2が接続されてトルク伝達軸2に駆動力が入力されるように構成するとともに、ハウジングM1に固定支持部6を取り付けてある。また、駆動装置Mを構成する駆動力出力軸M3aは、出力軸用の軸受M4により回転可能に支持されるとともに、内部に冷媒を通して出力軸用の軸受M4や図示しない発熱部を始めとする機構部品に冷媒を供給する流路M5の一部を構成するものであり、トルク伝達軸2の内部に形成される導入路70は、出力軸M3aから冷媒が導入されるように構成されている。勿論、トルク伝達軸2と駆動力出力軸M3a(シャフト)とを同一部材として一体に形成してもよく、また、固定支持部6とハウジングM1とを同一部材として一体に形成してもよい。この場合、トルクセンサ及び駆動装置を合わせた装置全体の軸方向寸法を小形化することも可能となる。図2に示す駆動装置Mは概念図で示したものにすぎず、この図示の駆動装置に限定されるものではない。また駆動装置にはモータ以外のものを用いてもよい。
【0037】
以上のように、本実施形態のトルクセンサTsは、負荷装置Pの負荷側シャフトP1を介して軸方向一端(2d)に負荷が入力され軸方向他端(2c)に駆動力が入力されて負荷側X2と駆動側X1との間で捻れを伴いながらトルクを伝達するトルク伝達軸2と、軸方向Xに沿って複数配置された軸受5・5を介してトルク伝達軸2を回転可能に支持する固定支持部6と、トルク入力によってトルク伝達軸2に生じる歪みを検出する歪検出部40とを具備し、歪検出部40の検出結果に基づきトルク伝達軸2に作用するトルクの大きさを算出するトルクセンサTsであって、トルク伝達軸2の負荷側端部2dには、接続相手となる負荷側シャフトP1の内周側において負荷側シャフトP1に嵌合することにより互いの回転方向の位相関係をほぼ一定に維持する噛み合い構造をなす負荷側接続部2sが形成されており、トルク伝達軸2のうち負荷側X2にある軸受5と負荷側接続部2sとの間には、負荷側接続部2sのうち径方向の肉厚が最も薄い部分(スプライン溝2s1)よりも更に肉厚を薄くした薄肉部2tが周回して形成されており、薄肉部2tに歪検出部40が配置されている。
【0038】
このように、負荷側接続部2sを構成するスプライン溝2s1や歯部2s2などによって応力集中箇所に偏りが生じるが、この応力集中化箇所の偏りによる影響を低減すべく、負荷側接続部2sのうち径方向の肉厚が最も薄い部位であるスプライン溝2s1の径方向寸法D1よりも更に肉厚を薄くした薄肉部2t(径方向寸法D2)が周回して形成されているので、負荷側接続部2sの応力集中の偏りによる歪検出部40への影響を低減することが可能となる。しかも、歪検出部40を軸受5よりも外側(負荷側X2)に配置しているので、軸受での摩擦(メカロス)が歪検出部40に与える影響を低減して、歪検出部40での検出精度を向上させることが可能となる。さらに、歪検出部40の配置される部位は、周囲に比べて径方向の肉厚の薄い薄肉部2tであるので、他の部位に比べて応力が集中しやすく、歪検出部40の検出感度を向上させることが可能となる。
【0039】
例えば、本実施形態のように負荷側接続部2sがスプライン溝2s1を有するスプライン軸又は軸受である場合、スプライン溝2s1を形成するために必要な歯切り工具の逃げ部の軸方向寸法W2を、歪検出部40の取り付け可能な程度の軸方向寸法W1まで広げるだけで、逃げ部を薄肉部2tとして利用できるので、逃げ部とは別途に薄肉部を形成する場合に比べて軸端から軸受までの軸寸法(オーバーハング寸法)を低減でき、コニカルモードやパラレルモードでの振動の発生を抑制することも可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、負荷側接続部2sは、円周方向RDに沿って一定間隔で配置された複数のスプライン溝2s1を有し、歪検出部40は、軸心Cn回りに対称となる位置に対をなすように複数取り付けられ、歪検出部40とスプライン溝2s1との円周方向RDの位相関係は、全ての歪検出部40で同一となるように設定されているので、歪検出部40での検出バランスを向上させ、検出精度を向上させることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0042】
例えば、本実施形態では、トルクセンサTsは、駆動装置Mに組み込まれて構成されているが、単独で構成することも可能である。また、本実施形態では、トルク伝達軸2の負荷側端部2dに負荷側接続部2sを設け、トルク伝達軸2のうち負荷側接続部2sに近い方の軸受5と負荷側接続部2sとの間に薄肉部2tを設けているが、トルク伝達軸2の駆動側端部2cに駆動側接続部を設け、トルク伝達軸のうち駆動側接続部に近い方の軸受と駆動側接続部との間に薄肉部を設けて、この薄肉部に歪検出部を配置してもよい。勿論、トルク伝達軸の両端部に接続部及び薄肉部を設けてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、トルク伝達軸2又は負荷側シャフトP1のいずれか一方をスプライン軸受とし、他方をスプライン軸とした噛み合い構造によって、互いの回転方向の位相関係をほぼ一定に維持するようにしているが、スプライン接続に限定されるものではない。例えば、トルク伝達軸又は負荷側シャフトのいずれか一方にキー溝を設け、他方にキーを設けてキー構造によりトルク伝達可能に構成してもよい。
【0044】
さらに、本実施形態では、トルク伝達軸2は、負荷側シャフトP1の内周側において負荷側シャフトP1に嵌合する雄型のスプライン軸受であるが、図7(a)に示すように、トルク伝達軸102を、負荷側シャフトP1の外周側において負荷側シャフトP1と嵌合する雌型にしてもよい。この場合、負荷側接続部102sのうち最も薄い部分であるスプライン溝の径方向寸法がD3であり、薄肉部102tの径方向寸法D4は、D3よりも薄く形成されている。
【0045】
さらにまた、本実施形態では、歪検出部40は、薄肉部2tの内周面2aに設けてられているが、薄肉部2tの外周面に設けてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、歪検出部40として歪ゲージを例に挙げて説明しているが、トルク伝達軸に生じる歪みを検出できるものであれば歪ゲージ以外のものでもよい。例えば、図7(b)に示すように、トルク伝達軸202に、上記と同様にスプライン溝を有する接続部202sと、括れ部たる薄肉部202tとを形成するとともに、薄肉部202tの外周面202bに歪みによって透磁率の変わる磁歪膜241を設け、励磁用コイル242及び検出用コイル243によって磁歪膜241の透磁率の変化を読み取ってトルク検出する磁歪式トルクセンサにも適用することができる。
【0047】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
2…トルク伝達軸
2c…駆動側端部
2d…負荷側端部
2s…負荷側接続部(接続部)
2r…駆動側接続部(接続部)
2s1…スプライン溝
2t…薄肉部
40…歪検出部
5…軸受
6…固定支持部
P…負荷装置
P1…負荷側シャフト
X…軸方向
X1…駆動側
X2…負荷側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷装置の負荷側シャフトを介して軸方向一端に負荷が入力され駆動装置の駆動側シャフトを介して軸方向他端に駆動力が入力されて負荷側と駆動側との間で捻れを伴いながらトルクを伝達するトルク伝達軸と、軸方向に沿って複数配置された軸受を介してトルク伝達軸を回転可能に支持する固定支持部と、トルク入力によって前記トルク伝達軸に生じる歪みを検出する歪検出部とを具備し、前記歪検出部の検出結果に基づき前記トルク伝達軸に作用するトルクの大きさを算出するトルクセンサであって、
前記トルク伝達軸の負荷側端部又は駆動側端部の少なくとも一方には、接続相手となる前記シャフトの外周側又は内周側のいずれかにおいて当該シャフトに嵌合することにより互いの回転方向の位相関係をほぼ一定に維持する噛み合い構造をなす接続部が形成されており、前記トルク伝達軸のうち前記接続部に近い方の前記軸受と前記接続部との間には、前記接続部のうち径方向の肉厚が最も薄い部分よりも更に肉厚を薄くした薄肉部が周回して形成されており、当該薄肉部に前記歪検出部が配置されていることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記接続部は、円周方向に沿って一定間隔で配置された複数のスプライン溝を有し、歪検出部は、軸心回りに対称となる位置に対をなすように複数取り付けられ、前記歪検出部と前記スプライン溝との円周方向の位相関係は、全ての歪検出部で同一となるように設定されている請求項1に記載のトルクセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−15459(P2013−15459A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149476(P2011−149476)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)