説明

トルク伝達装置、トルクを伝達するために2つの機能領域を有する構成部分を製造するための方法、及びジョイント軸

【課題】等速固定ジョイントの経済的でかつ品質的に高価値の製造方法を提供する。
【解決手段】トルクを伝達するために2つの機能領域を有する少なくとも1つの構成部分を有し、前記構成部分にそれぞれ異なる一体成形された、トルク流を形状接続的な係合で形成する2つの機能領域を介して、トルクが伝達されるようになっており、前記機能領域の一方が長手方向プロフィール、例えば長手方向歯であるトルク伝達装置において、前記構成部分が長手方向プロフィールを形成する前に拡散プロセスと結合された硬化プロセスによってより高い硬度にもたらされ、長手方向プロフィールの領域にて拡散層が少なくとも部分的に除去されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク伝達装置、例えば対抗軌道ジョイントとしての球等速ジョイントであって、
(イ)外軌道を有するジョイント外部分と、
(ロ)内軌道を有するジョイント内部分と、
(ハ)外軌道と内軌道とから成る軌道対に受容された、トルクを伝達する球と、
(ニ)球が保持されるケージ窓を備えた球ケージとを有し、
(ホ)第1の外軌道が第1の内軌道と第1の軌道対を形成し、該軌道対内に第1の球が保持されており、
(ヘ)第2の外軌道が第2の内軌道と第2の軌道対を形成し、該軌道対内に第2の球が保持されており、
(ト)第1の軌道対と第2の軌道対とが逆向きの湾曲を備えた球接触線を形成しており、
(チ)外軌道と内軌道とが外側と内側の軌道底によって制限されている
形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばDE10220715号明細書に記載されているような対抗軌道ジョイントにおいては、球走行軌道もしくは溝は実地においては切削加工で形成されている。
【0003】
DE10209933A1号明細書によれば、すでに外側軌道もしくは溝を非切削加工で形成することが既に提案されている。
【0004】
DE10220715号明細書による切削による製造は、まず費用がかさみ、高価な機械と長い加工時間とを必要とする。又、前記製造は著しい廃棄物と強度に関する品質低下をもたらす。何故ならば鍛造によって前成形品として製造されたジョイント内又は外部分における材料流動線が切削加工によって切断されるからである。
【0005】
DE10209933号明細書のジョイントの場合のように、球走行軌道を非切削で製造するためには公知技術は、例えば熱間−冷間プロセスもしくは半熱間−冷間プロセスを用いる可能性を提供する。この場合には例えば鍛造過程の内部で前成形品が製造され、冷間カリブレートプロセスにて、必要な精度が達成されることができる。
【0006】
対抗軌道ジョイントであることに応じて、このようなプロセスのためには既に前成形品の製造のために、それぞれ逆向きの球走行軌道を有する種々異なる工具が存在しなければならない。この場合にはピッチ精度は機械の案内精度によっても低減される。
【0007】
さらに前成形品における回避できないピッチ精度は、後続する加工ステップでももはや除去することはできない。
【0008】
カリブレートプロセスのためには同様に、異なる球走行軌道の各々のために、同じ不精度を有するそれぞれ1つの工具が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE10220715号明細書
【特許文献2】DE10209933号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は前記欠点を回避し、費用のかかる、高価な機械のための投資費用を回避し、工具摩擦を減少させかつ短い加工時間を保証し、品質を、特に高いトルク伝達値の達成に関しても好適化することで、内及び/又は外ジョイント部分、ひいては等速固定ジョイントの経済的でかつ品質的に高価値の製造を提供することである。さらにピッチ精度が改善されかつ屑のない製造、特に高精度の球走行軌道が製造可能で、加工時間、特に運転及び操作時間が減じられるようにすることである。さらに支持性が高められかつ廃品が回避されるようにもしたい。
【0011】
さらに本発明は高い強度を有し、高精度で、つまり好適な嵌合と好適な真円回転で高いトルクの伝達を可能にし、価格的に有利な、合理的な製造を可能にするトルク伝達装置を提供し、このような構成部分を備えた装置、機械及び設備の寿命が高められるようにすることである。
【0012】
課題の第1の部分は本発明によれば、軌道底の湾曲が、その軸方向の経過で見て、少なくとも部分的に球接触線の湾曲とは異なるようにジョイント外部分及び/又はジョイント内部分とが構成されていることによって解決された。この場合、「線」という概念には軌道もしくは走行溝における面状の領域又は線及び面の組合わせを含んでいる。この場合には軌道底が、軸方向で見て、部分的にかつ少なくともほぼ軸平行に延びていると有利である。
【0013】
換言すれば本発明によれば軌道は全軸方向の区間に亙って完全に変形される必要はなく、球接触線を達成するために変形が必要であるところだけでしか変形される必要はなくなる。有利にはジョイント内及び/又はジョイント外部分は前成形体として成形工具内で非研削加工で製造されかつ少なくともほぼ軸平行に延在する溝と突起とを、前成形された、球接触線を形成するための輪郭として備えている。
【0014】
前成形は例えば鍛造、例えば冷間及び/又は熱間鍛造方法で製造できるが、他の形状付与法、例えば焼結で製造されることもできる。
【0015】
ジョイント内部分とジョイント外部分とはいずれも、成形工具にて突起もしくは溝を非切削加工で形成することで形成されることができる。この変形は球走行溝もしくは球接触線が幾何学的に最終成形され、これらが切削加工される必要がなくなるカリブレート工具内で行なうことができる。
【0016】
ジョイントが屈曲する場合に球が沿って動く球接触もしくは走行線を製造する場合には有利には、前成形体を製造する場合に形成された溝又は溝底もしくは切欠きの所定の軸方向の領域がカリブレート工具によって変形されず、したがってその領域の少なくともほぼ軸方向に延びる構造が部分的に、ジョイント外もしくはジョイント内部分の完成した外軌道もしくは内軌道の軸方向に経過に亙って維持されたままに保たれる。これはなかんづくわずかな変形作業の利点をもたらす。
【0017】
さらに本発明はジョイント外部分及び/又はジョイント内部分の軌道が前成形技術的に、つまり冷間及び/又は熱間変形で製作され、その際、まず少なくともほぼ軸平行な切欠きを製作し、次いで球走行軌道を逆向きに、有利には同様に変形技術によって、例えばプレスもしくはカリブレート過程で幾何学的に少なくともほぼ完全に、切削加工を必要とすることなしで形成する。
【0018】
この場合には前成形も球接触線の逆向きの経過もそれぞれ1つの作業過程で製作され、しかも冷間及び/又は熱間変形で製作される。この場合には、続いて行なわれる作業過程がカリブレート過程であると有利である。この場合には少なくともジョイント部分の球走行軌道は(硬化方法、例えば浸炭硬化のあとでも)もはや切削加工される必要はなくなる。
【0019】
少なくともほぼ軸方向に平行に延びる切欠きを有する前成形体をまず製作し、次いでこれを球の接触もしくは走行線を有する球走行軌道に変形することによって廃棄物のない製作が保証され、ひいては安価で、合理的な製作と高いピッチ精度が、しかも工具自体によって達成される。機械自体は精度の高い案内は必要としない。何故ならば前成形体において少なくともほぼ軸平行に延びる突起もしくは溝が唯一の工具によってあらかじめ与えられ、球走行溝を仕上げ成形する場合に、工具の成形フィンガ自体が実地において通されるからである。
【0020】
特別な利点は既に述べたように、前成形体が唯一の工具にて製造されると有利である。何故ならば部分のピッチ精度は工具のピッチ精度と同じ精度で得られ、工具が分割されていないためにきわめて高くなるからである。
【0021】
さらにこのような作業のためには、分割された工具の場合には各工具半部のために必要である案内は不要になる。
【0022】
さらに前成形体から交差部、ひいては球走行軌道もしくは溝を形成するカリブレート作業に際しても工具の案内は互いに、既に存在する、正確に分割された前成形体で行なうことができ、したがって特別な案内精度を有する機械は不要である。さらに前成形体自体は狙ってカリブレート工具に挿入される必要はない。何故ならば例えば8つの軌道全部が当初同じでありかつこの同じ物から、カリブレート工具にて、異なったものが製造されるからである。
【0023】
さらにDE10209933C2号明細書(その内容とDE10209933A1号明細書の内容は本願に統合されている)によって保護されたジョイント外部分におけるケージセンタリング面を本発明に従って構成するかもしくは製造することも有利である。
【0024】
外ジョイントにおける前記ケージセンタリング面は、それぞれ隣り合う第1と第2のケージセンタリング面の間で軸方向に延びる溝もしくは凹部が設けられるように構成されていることができる。この場合、前記溝もしくは凹部の底の湾曲度はその軸方向の経過にてケージセンタリング面の湾曲と異なることができる。さらにこの軌道底も、軸方向で見て、少なくとも部分的に少なくともほぼ軸平行に延びることができる。
【0025】
球接触線又は走行軌道のための溝と突起のように前成形体におけるケージセンタリング面も成形工具内で非切削加工で、間に少なくともほぼ軸平行に延びる溝を備えた隣接する半径方向の突起として製作されていることができる。この場合、両方の突起はそれぞれ2つの隣接する走行軌道の間に設けられていることができる。
【0026】
この前成形体は例えば同様に鍛造によって製造されていることができる。ケージセンタリング面は有利には非切削の変形、例えばそれぞれ1つの溝に隣接する突起を成形するカリブレート加工によって仕上げ変形される。この場合には互いに隣接するケージセンタリング面の一方は一方の、例えば駆動側の端部から発して、被駆動側の端部に向かって延び、その際、外ジョイントの軸線に近づき、第2のケージセンタリング面は被駆動側の端部から発して駆動側の端部に向かって延び、その隣、内ボス軸線に近づく。
【0027】
走行軌道と関連して記述したのと同じ形式でこの場合にも、前成形体の溝もしくは突起は少なくとも部分的に維持されることができる。
【0028】
本発明のさらなる構成は、トルクを伝達するために少なくとも1つの構成部材を有するトルク伝達ユニットに関し、前記構成部材に一体成形された、他のエレメントとの形状接続的な係合によってトルク流を形成するそれぞれ2つの機能領域を介してトルクを伝達する。この場合、両方の機能領域の少なくとも一方は成形部、例えば長手方向歯として構成されている。
【0029】
このようなトルク伝達ユニットは例えばDE10220715A1号明細書によって側方軸と関連して公知でありかつDE102371172B3号明細書によって長手方向軸と関連して公知である。
【0030】
DE10220715A1号明細書では側方軸の両端に設けられた球等速ジョイントは、このような構成部分を2つ有し、構成部分にはそれぞれ異なった、各構成部分に一体成形された機能領域が設けられ、該機能領域が形状接続的な係合によりトルク流を形成しかつ該機能領域の一方が長手方向歯として構成されている。
【0031】
この場合、一方の構成部分は形状接続的な係合によるトルク流を形成する一方の機能領域がジョイント外部分に設けられた、一体成形された長手方向歯を有する接続ジャーナルであり、トルクを伝達する他方の機能領域はジョイント外部分における、ジョイントの球のための走行軌道である。
【0032】
同様にトルクを伝達するために2つの機能領域を有する第2の構成部材は、一方の機能領域として中央の内領域に一体に成形された長手方向歯を有し、他方の機能領域としてジョイント内部分に一体成形された球走行軌道を有する。
【0033】
DE10237172B3号明細書によるトルク伝達ユニットではそこに含まれた3つのジョイントの各々のために、同様にトルクを伝達するために2つの機能領域を有するそれぞれ1つの構成部分が設けられている。すなわち、一体成形された長手方向もしくは差込み歯を一方の機能領域としてかつ一体成形された球走行軌道を他方の機能領域として有している。
【0034】
このような構成部分、すなわち例えばジョイント部分においては、内歯は通常はブローチ加工され外歯は通常は立削りされるかフライス加工されるか転造されるか又は圧延されるかして製作されかつ球走行軌道は切削加工又は非切削加工で製作される。
【0035】
十分なトルクを伝達できるためには少なくとも球走行軌道は硬化されている。この走行軌道は誘導的に硬化されることができ、残った領域は、つまり長手方向歯を含めて、基本硬度に保っておくことができる。これは長手方向歯を形成するためには好適であるが、多くの場合に必要となる高い伝達トルク値と所望される耐用年限とを達成することはできない。
【0036】
しかし、例えば誘導硬化された球走行軌道は部分的な硬化に際して発生するひずみに基づき、硬化後、必要な精度に達するために硬く加工されなければならない。つまり、硬くフライス加工又は研磨されなければならない。
【0037】
他の公知の可能性はまず歯をやわらかい状態で製作し、全体を、つまり一体成形された長手方向歯と共に浸炭硬化することである。しかし、この場合には歯にも差込み歯にも硬化ひずみが発生し、この硬化ひずみは長手方向歯の場合だけ付加的な高い費用でしか除去することができない。すなわち、硬い層において相応する、高価な特殊な機械と工具で硬ブローチ加工される必要がある。
【0038】
本発明の別の課題は、トルクを伝達するために2つの機能領域を有する少なくとも1つの構成部分を有し、一方の機能領域が長手方向プロファイリングとして、特に長手方向歯として構成されているトルク伝達ユニットにおいて、構成部分を全体として硬化するが長手方向歯が他方の機能領域よりもわずかな硬さを有するがジョイント外部分又は内部分の基本硬さよりも高い硬度を有し、したがって長手方向歯が球走行軌道よりもわずかな硬度を有するが基本硬さを上回る硬さを少なくともその半径方向の寸法の部分領域に亙って有している。
【0039】
この場合、硬化としては、少なくとも所定の硬化深さが生じる硬化、つまり工作物の基準硬さを少なくともほぼ歯の高さを越えて高める硬化が有利である。この場合に特に有利であるのは拡散プロセスと結合された硬化プロセス、例えば費用的に好適な表面硬化、例えば後続の冷却と焼戻しを伴う浸炭硬化の形の表面硬化である。この硬化プロセスは高い縁硬度及び、少なくともここで対象となっている構成部分の場合には、縁部硬度を有する領域の内部に位置する領域における比較的に低い硬度、核硬度をもたらす。
【0040】
さらに縁硬度を有する領域を少なくともほぼ除去することは、例えば施削プロセスにより、歯が形成される軸方向の領域にて、やわらかい、硬化されていない材料の加工と同様の機械と工具とで実地において同じ条件で、つまり例えば従来のブローチ、フライス、立削り又は類似した機械で行なうことができることが示された。
【0041】
第2の機能領域、この場合には球走行軌道は周知のように縁硬度のゾーンの内部に硬フライス及び/又は研磨されることができる。しかし、全く特別な、独自でかつ独立した発明的な構想は、少なくとも1つがトルク伝達装置に設けられた構成部分であって、それぞれ当該構成部分に一体成形された、形状接続的な係合を介してトルク流を形成する2つの異なる機能領域を有し、一方の機能領域が長手方向歯として構成されかつ他方の機能領域が例えばジョイントの球のための走行軌道であり、構成部分が、特に機能領域の一方が非切削加工で製作され、次いで冒頭に記述したように硬化され、特に表面硬化され、さらに構成部材が、一体成形された球走行軌道が切削加工されていないかもしくはされないことで優れており、したがって球走行軌道が硬化過程のあとで、組込まれた状態にある構成部分を提供し、このような構成部分を製作する方法を提供することにある。このようなジョイントのためには請求項に述べた処置及び/又は明細書に述べた処置を適用することができる。
【0042】
このような構成部分を製造するためには構成部分全体を表面硬化、特に浸炭硬化し、次いで冷却及び焼戻し過程を実行することが有利である。このあとで、長手方向歯を設けようとする軸方向の領域にて硬い領域、つまり縁層と場合によっては移行領域が部分的に除去、例えば切削加工で、すなわち例えば施削によって除去され、次いで硬化過程とこれに続く焼戻しとによっていわゆるコア硬度にもたらされた領域に長手方向歯が形成される。
【0043】
この長手方向歯は既に述べたように、特に切削加工によって、例えばブローチ加工によってしかも軟ブローチ加工によって、すなわち普通の工具と機械で行なうことができる。なぜならば前記工具と機械はブローチ加工を、単に基準硬さを有する部分が許すのと同じ形式で許すからである。
【0044】
本発明は比較的に低いコストで特殊な機械の調達を必要とすることなしに長手方向歯の迅速でかつ合理的な製造を、十分な硬さと相応に高い強度で、熱間ブローチを使用する可能性によって保証する。
【0045】
以下、本発明を図1から図18に基づき詳細に説明する。図1から8にはまず等速ジョイントもしくはその結合が公知技術による長手方向軸を例として示してある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】2つの部分軸とほぼ中央に配置された駆動ジョイントとを有する自動車の駆動装置を示した図。
【図2】図3のA−A線に沿った断面に相応する駆動ジョイントの横断面図。
【図3】図2のE−E線に沿った断面図。
【図4】図2のC−C線に沿った断面図。
【図5】図2のD−D線に沿った断面図。
【図6】図2のB−B線に沿った断面図。
【図7】図3を矢印Xの方向から見た図。
【図8】図3を矢印Yの方向から見た図。
【図9】素材と完成品としてのジョイント内部分を示した図。
【図10】素材と完成品としてのジョイント内部分を示した図。
【図11】素材と完成品としてのジョイント内部分を示した図。
【図12】素材と完成品としてのジョイント内部分を示した図。
【図13】素材と完成品としてのジョイント外部分を示した図。
【図14】素材と完成品としてのジョイント外部分を示した図。
【図15】素材と完成品としてのジョイント外部分を示した図。
【図16】素材と完成品としてのジョイント外部分を示した図。
【図17】素材と完成品としてのジョイント外部分を示した図。
【図18】別の発明対象であるトルク伝達ユニットを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に示した駆動軸は自動車の長手方向駆動軸として構成されており、自由端部に接続部材4,5を保持する2つの部分軸2と3を有している。この接続部材4,5はゴムジョイント円板として構成されているが、その部位で駆動ジョイントは前記部分軸2と3にDE10237172B3号又はDE10032853C2号明細書に記載されているように固定されていることができる。
【0048】
両方の部分軸2と3は駆動装置1のほぼ中央で駆動ジョイント8で互いに結合されている。この駆動ジョイント8は図2から8までに種々の断面図で示されている。さらに図1は左側の部分軸2が中間軸受6とこれに配置された保持体7とを介して自動車の下底に固定可能であることが示されている。
【0049】
駆動ジョイント8は部分軸2と3と結合されずに示す特に図2から図6までと図9による断面図から判るように、駆動ジョイントはまず内ボス10が同軸に配置されている、ほぼ中空円筒形の外ボス16から成っている。第1の部分軸2がその外差込み歯で内ボス10の内差込み歯11内に差込み可能である一方、外ボスと第2の部分軸3との結合はこの実施例では溶接結合で行なわれる。このためには連行ケーシング9に溶接フランジ12が構成されている。連行ケーシング内には外ボス16が受容され、しかも受容領域17に形状接続で閉じ込められている。
【0050】
外ボス16の内側には球14の第1の列のための第1の外側の球走行溝19と球14aの第2の列のための別の球走行溝19aとが設けられている。その間にはそれぞれウェブ20が存在する。
【0051】
内ボス10の外側には球14の第1の列のための第1の内側の球走行溝18と球14aの第2の列のための別の内側の球走行溝18aが設けられている。これらの球走行トラックの間にはそれぞれウェブ28が存在する。
【0052】
符号18′,19′及び18a′,19a′ではそれぞれ球走行溝のトラック底が示されている。
【0053】
内ボス10は内ボス軸線1と外面24とを有している。特に図3,7,8から判るように第1の走行溝18と第2の走行溝18aはここでは内軸線1を中心として交互に分配されて配置されている。この場合、ここでは第1の内走行溝18は駆動側の端部2aから発して被駆動側の端部3aに向かって延び、内走行溝とそのトラック底18′は内ボス軸線1から遠ざかる。つまり、特に図4と7,8とから判るようにこの場合には第2の内走行溝18aは被駆動側の端部3aから駆動側の端部2aに向かって延びる。この場合、第2の走行溝18とそのトラック底は内ボス軸線1から遠ざかる。しかし、第1と第2の内走行溝はその向かい合った第1と第2の走行溝と、互いに交互に配置されている順序とは異なる順序で配置されていることができ、ここに記述しかつ記述したのとは異なる経過を有していること、例えば該当する軸線から遠ざかり、次いで再び接近する経過を有していることもできる。
【0054】
外ボス16は外ボス軸線11と内輪部を有し、この内輪部には球14の第1の列のための第1の外側の球走行溝もしくはトラック19と球14aの第2の列のための第2球走行溝もしくはトラック19aとが外ボス軸線11を中心として交互に分配されて配置されており、それぞれ第1の内走行溝18が第1の走行溝19に向き合いかつそれぞれ第2の内走行溝18aが第2の外走行溝19aに向き合いかつそれぞれ1つの対偶を形成している。この場合、第1の走行溝19は駆動側の端部3aから延び、外走行溝19とそのトラック底19′とは外ボス軸線11に近づき、さらにこの場合には第2の走行溝19aは被駆動側の端部3aから発して駆動側の端部2aに向かう方向に延び、第2の外走行溝19aはそのトラック底19a′で外ボス軸線11に近づく(図3と4)。
【0055】
少なくとも区分的に球状の外面26(特に図2,5及び6を参照)を有し、内ボス10と外ボス16との間に配置されているリング状のケージ15内には球14,14aもしくは走行溝18,18a,19,19aの数に相応して半径方向の窓27が設けられ、この窓27内で球14,14aが案内されている(図3,4をも参照)。外ボス16はその外面26を介して正確には両方のセンタリング領域26aを介してセンタリングされている。
【0056】
外ボス16の内面には、既に述べたように、球の間にウェブ20が設けられている。このウェブ20は特に図3,5,7及び8から判るように、一方の端部、ここでは駆動側の端部2aからかつ周方向で見て、まず球14のための球走行溝19の両側に設けられた導入輪郭16aを、ケージ15を外ボス16内に軸方向で導入するために有している。導入輪郭16aは駆動側の端部2aで、少なくともほぼケージ15の外径に相応する直径から発している。
【0057】
軸方向で見て、ジョイントの駆動側の端部2aから発して、前記導入輪郭は少なくともほぼ半分の軸方向のあとで、ジョイント外部分におけるケージのためのケージセンタリング面16bに移行しかつケージセンタリング軸線IIIに向かって傾けられている(図3,5,7,8を参照)。この場合、ケージセンタリング面16bは球ケージの球状に構成された接触面に対応して球面状に調整されている。
【0058】
軸方向で見て、ジョイントの被駆動側の端部3aから発して、導入輪郭16cは少なくともケージの半分の軸方向の長さのあとで外ボスにおけるケージのための第2のケージセンタリング面16bへ移行する。そこから導入輪郭はケージセンタリング軸線IIIに向かって傾斜して延びる。この場合、第2のケージセンタリング面16bは球ケージの球状に構成された第1の接触面26bに相応して球形に調整されている。
【0059】
図9から12には、すでに述べたように、ジョイント内部分が素材部分R10と完成部分F10として示され、図13から17にはジョイント外部分が素材部材R16と完成部分F16として示されている。
【0060】
図9による素材部分R10は周方向に均等に分配された、少なくともほぼ均等に構成された4対の突起もしくはウェブR10,R20aを有する鍛造部分である。突起もしくはウェブR20,R20aの間には少なくともほぼ軸平行に延びる溝底R18′とR18a′を有する溝もしくはノッチR18,R18aが設けられている。
【0061】
素材部分R10はしかし、既に述べたように、熱間もしくは冷間もしくは半熱間−冷間プロセスで製作できるが焼結部分としても製作することもできる。
【0062】
突起もしくはウェブR20,R20aからは図10,11,12から判る走行溝F18,F18aが、逆向きに延びるポンチを有する2つの工具半部から成る工具におけるカリブレートにより、逆向きに延びる走行溝F18,F18aに変形され、しかも冷間変形方法、特にカリブレート加工により変形される。
【0063】
その際、溝底R18′とR18a′は図9に示されているようにカリブレート後にも少なくとも部分的に維持されかつ同様に図10から12に示されているように先きに前成形品R10に含まれていた側面R18″とR18a″からの部分領域F18″,F18a″も維持される。この場合には前成形されるのは特に図10に示されているハッチングの施された区分F18′′′とF18a′′′である。この場合、面F18′′′とF18a′′′とは球走行もしくは球接触線F18bとF18b′とが発生するように成形される。この球走行もしくは球接触線F18bとF18b′とに沿って球はジョイントの屈折に際して移動する。
【0064】
さらに特に図12と関連して、球走行路F18bとF18b′と溝底F18′とF18a′とが異なる湾曲を有していることが判る。
【0065】
図13から17においては外ジョイントの素材部分R19もしくは完成部分F19が示されている。この場合、図16と17には図15のA−A線及びB−B線に沿った断面図が示されている。
【0066】
図13に示された素材部分16は、半径方向内方に達する第1と第2の突起もしくはウェブR28,R28a並びにR28′,R28a′を有する鍛造部分として製造されている。少なくともほぼ軸平行に延びる突起R28,R28aは少なくともほぼ鏡像的に構成され、突起R28′とR28a′も同様である。
【0067】
突起R28とR28aとは間にそれぞれ1つの、少なくとも軸平行に設けられた第1の溝もしくはノッチR19を画成する。同様に突起R28′とR28a′とはその間にそれぞれ1つの第2の溝もしくはノッチR19aを画成する。
【0068】
突起R28aとR28′並びにR28a′とR28はその間にそれぞれ第3の溝R31を画成する。
【0069】
溝R19とR19aはそれぞれ溝底R19とR19a′とを有し、溝R31はそれぞれ溝底R31′を有している。
【0070】
溝底R19とR19aはさらに側面R19″とR19a′とを有する。
【0071】
カリブレート過程によってジョイント外部分は完成部分F16として製作される。この場合、図13の側面R19″とR19a″からは図14から17の第1と第2の球走行溝F19とF19aとが成形される。
【0072】
カリブレート過程によってジョイント下部分は完成部分F16として製作される。この場合には図13の側面R19″とR19a″からは図14から17の第1と第2の球走行溝F19とF19aとが変形される。
【0073】
図13の溝底R19′,R19a′はトラック底F19′としてその軸方向の寸法にほぼ亘って維持されている。側面R19″とR18a″とからは単に図16と17とにおいてハッチングを施され示された区分F19′′′とF19a′′′とが変形され、その際、球接触線又は球走行領域F19bとF19b′とが形成される。
【0074】
さらに溝底F19′の湾曲は接触線F19bとF19b′との湾曲とは異っていることが判る。
【0075】
第1の走行溝F19と同じ形式で第2の溝F19aも製作されているが、しかし逆向きに、つまり溝F19に対して交差させられて製作されている。
【0076】
第1の突起R28とR28aとからは溝F19の両側にそれぞれ少なくともほぼ軸方向に延びる導入輪郭F16aが、有利には輪郭F19,F19a,F19′′′,F19a′′′,F16b,F16b′も形成される同一のカリブレート過程によって製作される。
【0077】
導入輪郭F16bの別の軸方向の経過では、各溝F19の両側にケージセンタリング領域F16bが設けられている。この場合には輪郭F16bとF16aとの間に階段状の突起もしくは移行領域が存在している。
【0078】
ケージセンタリング領域F16bとF16dとは球ケージ15の球状の接触面26bに調整される。
【0079】
しかし、同じ形式で逆向きの交差でケージセンタリング面F16dと導入面F16cを溝F19aの両側に製作するかもしくは構成することができる。
【0080】
図18には例えばDE10237172B3号明細書に開示されているような等速ジョイントに基づき発明の別の思想が示されている。
【0081】
等速固定ジョイント101は公知の形式で球走行トラック103を有するジョイント内部分102と、一体成形された球走行トラック105を有するジョイント外部分104とを有している。ジョイント内部分と外部分102と104の球走行トラック103と105の間には球106が設けられている。この球106はトルクを内部分と外部分との間で伝達する。ケージ107は球を案内するために役立つ。
【0082】
ジョイント内部分はしたがってトルク伝達のために一方では長手方向歯108の形をした機能領域を有し、他方では球走行トラック103の形をした機能領域を有する。
【0083】
ジョイント内部分は有利には歯を形成するために設けられた中央の切欠き108aを有する鍛造部分である。球走行トラック103は例えば切削加工によって又は非切削加工で製作されることでできる。
【0084】
ジョイント内部分はまず全体として表面処理に、急冷とこれに続く焼なましを共なう浸入硬化プロセスに晒らされる。歯108を形成する前に切欠き108aの硬度の大きい領域が除去、例えば旋削のような切削加工によって除去される。そのあとで同様に切削加工によって内歯108が例えばブローチ加工できわめて簡単にかつ安価にかつ高精度を保証する作業ステップで製作される。
【0085】
球走行トラック103は歯を形成する前又はその後で研磨されることができる。
【0086】
同じ形式で本発明によりジャーナルの上に設けられた外歯を有するジョイント外部分も製作することができる。この場合、外歯は同様に安価で高強度と高トルク伝達値とを保証する形式で切削又は変形加工で製作すること、例えば先きに硬化されかつ歯を形成する前に最も硬い領域が除かれる領域にて例えば押込み、フライス加工、ローラ加工、圧延又はそれに類似した加工によって製作することができる。同様にジョイント内部分においてジャーナルが外歯を有するか又はジョイント外部分が内歯を有することができる。
【0087】
本発明はここで特別に述べたトルク伝達装置に限定されるものではなく、1つの構成部分が他のエレメントとの形状接続的な係合によってトルクを伝達するために2つの機能領域を有している他のトルク伝達装置をも含むものである。
【符号の説明】
【0088】
1 駆動軸
2,3 部分軸
4,5 接続部材
6 中間軸受
7 保持体
8 駆動ジョイント
9 連行ケーシング
10 内ボス
11 内挿入歯
12 溶接フランジ
14 球
15 ケージ
16 外ボス
17 受容領域
18 内走行溝
19 外走行溝
20 ウェブ
101 等速ジョイント
102 ジョイント内部分
103 球走行軌道
104 ジョイント外部分
105 球走行軌道
106 球
108 歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを伝達するために2つの機能領域を有する少なくとも1つの構成部分を有し、前記溝成分にそれぞれ異なる一体成形された、トルク流を形状接続的な係合によって形成する2つの機能領域を介して、トルクが伝達されるようになっており、前記機能領域の一方が長手方向プロフィール、例えば長手方向歯であるトルク伝達装置において、前記構成部分が長手方向プロフィールを形成する前に拡散プロセスと結合された硬化プロセスによってより高い硬度にもたらされ、長手方向プロフィールの領域にて拡散層が少なくとも部分的に除去されていることを特徴とする、トルク伝達装置。
【請求項2】
形成しようとする長手方向プロフィールの領域において拡散層が切削加工で除去されている、請求項1記載のトルク伝達装置。
【請求項3】
拡散層が浸炭層である、請求項1又は2記載のトルク伝達装置。
【請求項4】
前記構成部分が浸炭硬化されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項5】
前記構成部分が急冷硬化されかつ焼もどされている、請求項1から4までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項6】
形成しようとする長手プロフィールの領域にて浸炭層が少なくとも部分的に除去されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項7】
浸炭された縁層並びに核硬さと縁層との間の移行領域の少なくとも1部が除去されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項8】
長手方向プロフィールが核硬さを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項9】
2つの機能領域を有する構成部分であって、該構成部分が該構成部分に一体成形された、トルク流を形状接続的な係合によって形成する機能領域を介してトルクを伝達し、機能領域の一方が長手方向歯として構成されている構成部分を製造する方法において、構成部分全体を表面硬化し、次いで長手方向歯を形成しようとする軸方向の領域にて、最も硬度の高い領域を除去し、例えば切削で除去し、例えば旋削し、次いで長手方向歯を、切削加工によって、例えばブローチ削り、立て削り、フライス削り又はそれに類似したもので形成し、歯が歯頭直径から発して、少なくともほぼ歯の半径方向の寸法に亘って、他の機能領域よりも低い硬度を有していることを特徴とする、トルクを伝達するために2つの機能領域を有する構成部分を製造するための方法。
【請求項10】
構成部分として請求項1〜9のいずれか1項記載の構成部分を有し、前記構成部分がジョイント軸のジョイント内部分であって、該ジョイント内部分が2つのトルク伝達領域を有し、該トルク伝達領域の一方がジョイント内部分の外側領域に一体成形された球走行軌道により形成されており、該球走行軌道に球が受容され、該球がジョイント外部分の内側領域に一体成形された球走行軌道とトルク伝達ジョイントを形成し、ジョイント内部分の第2のトルク伝達領域が歯によって形成され、該歯が間接的に又は直接的にジョイント軸と結合されており、歯が球走行軌道よりもわずかな硬さを有していることを特徴とする、ジョイント軸。
【請求項11】
構成部分として請求項1〜9のいずれか1項記載の構成部分を有し、前記構成部分がジョイント軸のジョイント外部分であって、該ジョイント外部分が2つのトルク伝達領域を有し、一方のトルク伝達領域がジョイント外部分の内領域に一体成形された球走行軌道により形成されており、該球走行軌道に球が受容されており、該球がジョイント内部分の外側領域の上に一体成形された球走行軌道とトルク伝達ジョイントを形成しており、ジョイント内部分の第2のトルク伝達領域が歯によって形成され、該歯が間接的又は直接的にジョイント軸と結合されており、前記歯が球走行軌道よりもわずかな硬度を有していることを特徴とするジョイント軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−29202(P2013−29202A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216507(P2012−216507)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2009−516895(P2009−516895)の分割
【原出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(506272792)ノイマイアー テクフォア ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Neumayer Tekfor Holding GmbH
【住所又は居所原語表記】Wilhelm−Zangen−Str. 9, D− 77756 Hausach, Germany