説明

トルク検出システム

【課題】自動変速機を介して駆動源と駆動輪との間で伝達されるトルクの伝達方向を検出する。
【解決手段】ヘリカルギア4の回転を検出するセンサ6を、ヘリカルギア4の側面に配置すると共に、センサ6のセンサ面を、ヘリカルギア4のスラスト方向(軸方向)からヘリカルギア4の歯4aの側面4a1に対向させ、制御装置7が、センサ6から出力されるパルス信号の振幅から、トルクの伝達方向に応じてスラスト方向(軸方向)に変位するヘリカルギア4と、センサ6との距離(ギャップ)を求めると共に、求めた距離(ギャップ)から、トルクの大きさと方向を検出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動力が伝達される歯車の変速機構において、歯面に対して垂直に設けられたセンサにより、入力軸から出力軸までの間のトータルの軸捩れ量をセンサ位相量として検出し、検出したセンサ位相量に基づいて、入力軸と出力軸の間で伝達されるトルクを求めることが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−031727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のものは、入力軸と出力軸の間で伝達されるトルクの伝達方向を知ることはできない。
そのため、動力が伝達される歯車の変速機構が車両用の自動変速機である場合、自動変速機を介して、駆動源側から駆動輪側にトルクが入力されている場合(ドライブ時)と、駆動輪側から駆動源側にトルクが入力されている場合(エンジンブレーキ時)とを、区別することができない。
【0005】
そこで、自動変速機を介して駆動源と駆動輪との間で伝達されるトルクの伝達方向を検出できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力側と出力側のヘリカルギアの間で伝達されるトルクを検出するトルク検出システムにおいて、少なくとも出力側のヘリカルギアの歯部側面に配置され同ギアの回転を検出するセンサと、同センサの出力信号に基づいて、前記出力側のヘリカルギアへ伝達されるトルクを検出するトルク検出手段と、を備え、前記トルク検出手段が前記センサと前記出力側のヘリカルギアとの距離に基づいて、前記出力側のヘリカルギアへ伝達されるトルクの大きさおよび方向を検出することを特徴とするトルク検出システムとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入力側と出力側のヘリカルギアの間でトルクが伝達されると、入力側のヘリカルギアと出力側のヘリカルギアには、ヘリカルギアを軸方向に変位させようとする力と、ヘリカルギアを回転軸に対して傾けようとする力とが作用して、入力側のヘリカルギアと出力側のヘリカルギアは、トルクの伝達方向に応じて決まるスラスト方向に移動するので、ヘリカルギアとこのヘリカルギアの側面に配置されたセンサとの距離(ギャップ)が、トルクの伝達方向に応じて変化する。
よって、センサと出力側のヘリカルギアとの距離に基づいて、出力側のヘリカルギアの変位方向が判るので、変位方向からトルクの伝達方向を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態にかかるトルク検出システムの概略構成図である。
【図2】ギア間で伝達されるトルクの大きさと位相差との関係を説明する図である。
【図3】ギア間で伝達されるトルクの大きさとセンサの出力信号の変化を説明する図である。
【図4】位相差と伝達されるトルクとの関係を示す特性グラフである。
【図5】ギア間で伝達されるトルクの伝達方向とギアのスラスト方向への移動を説明する図である。
【図6】ギア間で伝達されるトルクの伝達方向による回転センサの出力信号の変化を説明する模式図である。
【図7】クリープ走行時の推定トルクに基づくパルス信号の位相差の補正を説明する図である。
【図8】ギア間で伝達されるトルクの大きさと位相差との関係を説明する図である。
【図9】第2の実施形態にかかるトルク検出システムの概略構成図である。
【図10】トルク伝達による回転センサとヘリカルギアとのギャップと、回転センサの出力信号を説明する図である。
【図11】トルク伝達による回転センサとヘリカルギアとのギャップと、回転センサの出力信号を説明する図である。
【図12】ドライブ時とコースト時に回転センサから出力されるパルス信号を説明する図である。
【図13】トルクの伝達がないときに回転センサから出力されるパルス信号を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、駆動源(エンジンおよび/またはモータ)と駆動輪との間で回転駆動力の伝達を行う自動変速機に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0010】
図1に示すように、自動変速機の動力伝達経路上で、ヘリカルギア3とヘリカルギア4とが、外周の歯3a、4a同士を噛合させて設けられている。
ヘリカルギア3は、ギア軸1と一体回転可能に設けられており、ヘリカルギア4は、ギア軸2と一体回転可能に設けられている。
ヘリカルギア3とヘリカルギア4は、歯数と径が同じギアであり、動力伝達経路上で隣接して設けられている。
【0011】
駆動源側から車輪(駆動輪)側にトルクが伝達されるドライブ時には、ギア軸1に入力された回転駆動力(回転トルク)は、ヘリカルギア3とヘリカルギア4とを介して、ギア軸2に伝達される。
【0012】
車輪(駆動輪)側から駆動源側にトルクが伝達されるエンジンブレーキ時には、車輪(駆動輪)側からギア軸2に入力された回転駆動力(回転トルク)は、ヘリカルギア4とヘリカルギア3とを介して、ギア軸1に伝達される。
【0013】
ヘリカルギア3の周方向外側には、ヘリカルギア3の回転を検出するセンサ5(回転センサ)が設けられている。
センサ5は、ギア軸1に直交する向きで、歯先の回転円周面に近接して配置されている。このセンサ5は、ヘリカルギア3のラジアル方向(周方向)から、ヘリカルギア3の歯面にセンサ面を対向させている。
【0014】
センサ5は、ヘリカルギア3の歯の凹凸に応じたパルス信号を出力する。具体的には、図3に示すように、歯3aがセンサ5の正面に位置している場合にはON信号を、歯3aがセンサ5の正面に位置していない(歯溝部3bが正面に位置している)場合には、OFF信号を出力する。
よって、ヘリカルギア3が回転している場合には、図3の(a)に示すような連続するON信号とOFF信号からなるパルス信号が、センサ5から出力される。
【0015】
図1に示すように、ヘリカルギア4の側方には、ヘリカルギア4の回転を検出するセンサ6(回転センサ)が設けられている。
センサ6は、ギア軸2に対して平行となる向きで、ヘリカルギア4の外周縁近傍の側方に、ヘリカルギア4に近接して配置されている。このセンサ6は、ヘリカルギア4のスラスト方向(直交方向)から、ヘリカルギア4の歯4aの側面4a1にセンサ面を対向させている。
【0016】
センサ6は、ヘリカルギア4の歯4aの凹凸に応じたパルス信号を出力する。具体的には、歯4aの側面4a1がセンサ6の正面に位置している場合にはON信号を、歯4aの側面4a1がセンサ6の正面に位置していない場合には、OFF信号を出力する。
よって、ヘリカルギア4が回転している場合には、図3の(a)に示すような連続するON信号とOFF信号からなるパルス信号が、センサ6から出力される。
【0017】
これらセンサ5、6からのパルス信号は、演算装置(例えば、自動変速機の制御装置7(ATCU))に入力され、ギア軸1とギア軸2の間で伝達されるトルク(入力トルク)の検出や、トルクの伝達方向の検出に利用される。
【0018】
ここで、センサ5、6からのパルス信号に基づくトルクの検出を説明する。
ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でのトルクの伝達は、互いに噛み合う歯3a、4aを介して行われる。そのため、トルクが伝達される際には、ヘリカルギア3の歯3aとヘリカルギア4の歯4aの噛み合い部分に力(トルク)が集中する。
そして、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間で伝達されるトルクが大きくなって、歯3a、4aの噛み合い部分に作用する力が大きくなると、噛み合い部分の歯3a、4aの各々が、図2の(b)に示すように、回転軸回りの周方向に、僅かに倒れる(撓む)ことになる。
【0019】
例えば、ヘリカルギア3、4の歯3a、4aが、それぞれ、本来の位置を基準として、角度α1、α2ずつ倒れると、センサ6では、歯3a、4aが倒れたことに起因して、基準位置41にある歯が、所定角度(α1+α2)分だけ遅れて検知される。
この遅れは、伝達されるトルクの大きさに応じて変化し、トルクが大きくなるほど、遅れが大きくなる。
【0020】
そうすると、センサ5から出力されるパルス信号とセンサ6から出力されるパルス信号との間に、歯3a、4aの倒れに起因する位相差α、α’が生じることになる(図3参照)。そして、この位相差α、α’は、伝達されるトルクが大きくなるにつれて大きくなる(α<α’)。
【0021】
ここで、伝達されるトルクの大きさと、歯の傾きに起因する位相差との間には、一定の関係がある。実施の形態では、制御装置7の図示しない記憶手段に、実験により予め求めたトルクの大きさと位相差との関係を規定するデータ(マップデータ:図4の(a)参照)が記憶されている。
よって、歯3a、4aの倒れに起因する位相差α、α’が検出されると、このマップを参照して、伝達されるトルクの大きさβ、β’(入力トルクの大きさ)が求められるようになっている。
【0022】
次に、センサ6からのパルス信号に基づく、トルクの方向(伝達方向)の判定を説明する。
図5は、ヘリカルギア3、4間で伝達されるトルクの伝達方向とヘリカルギア3、4のスラスト方向への移動を説明する図である。この図では、歯3aと歯4aの噛み合い部分が、歯に沿って切断した断面で模式的に示されている。
図6は、ヘリカルギア3、4間で伝達されるトルクの伝達方向によるセンサ6の出力信号の変化を説明する図である。
【0023】
実施の形態の場合、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でのトルクの伝達には、駆動源からギア軸1に入力されたトルク(回転駆動力)が、ギア軸2を介して車輪(駆動輪)に伝達される場合(以下、ドライブ時ともいう)と、車輪(駆動輪)からギア軸2に入力されたトルク(回転駆動力)が、ギア軸1を介して駆動源側に伝達される場合(以下、エンジンブレーキ時ともいう)と、がある。
【0024】
外周の歯3a、4a同士を互いに噛合させたヘリカルギア3、4間でトルクの伝達が行われる場合、回転するヘリカルギア3、4には、回転軸X1、X2方向のスラスト力と、ヘリカルギア3、4を回転軸X1、X2に対して傾けようとする力と、が作用する。
そして、これら力の作用する方向は、トルクの伝達方向に応じて決まる。
【0025】
そのため、例えばエンジンブレーキ時には、トルクの伝達により作用するこれらの力により、ヘリカルギア4の歯4aがセンサ6から離れる方向に移動し、ドライブ時には、ヘリカルギア4の歯4aがセンサ6に近づく方向に移動するというように、トルクの伝達方向に応じて、ヘリカルギア4の歯4aとセンサ6との距離(ギャップ)が変化する。
【0026】
よって、例えばドライブ時に図5の(a)に示す位置にあったヘリカルギア4が、エンジンブレーキ時に図5の(b)に示すようにセンサ6から離れる方向に移動すると、図6に示すように、センサ6とヘリカルギア4との距離が大きくなった分だけ、センサ6からのパルス信号の振幅h(h1、h2)が小さくなる。
【0027】
実施の形態では、ドライブ時とエンジンブレーキ時とを区別するための閾値となる振幅(閾値振幅Th1)が、制御装置7の図示しない記憶手段に記憶されている。
よって、センサ6から出力されたパルス信号の振幅hが、閾値振幅Th1以上である場合には、駆動源からギア軸1に入力されたトルクがギア軸2側に伝達されている(ドライブ時)と判定される。一方、閾値振幅Th1未満である場合には、変速機構側からギア軸2に入力されたトルクがギア軸1側に伝達されている(エンジンブレーキ時)と判定される。
【0028】
以上の通り、実施の形態では、ヘリカルギア4の回転を検出するセンサ6を、ヘリカルギア4の側面に配置すると共に、センサ6のセンサ面を、ヘリカルギア4のスラスト方向(軸方向)からヘリカルギア4の歯4aの側面4a1に対向させ、制御装置7が、センサ6から出力されるパルス信号の振幅から、トルクの伝達方向に応じてスラスト方向(軸方向)に変位するヘリカルギア4と、センサ6との距離(ギャップ)を求めると共に、求めた距離(ギャップ)から、トルクの大きさと方向を検出する構成とした。
【0029】
これにより、外周の歯同士を互いに噛合させて設けられたヘリカルギア3、4間で伝達されるトルクの検出に用いられていた従来のセンサの取付位置を変更するだけで、トルクの検出だけではなく、トルクの伝達方向まで判断できることになる。
すなわち、従来のセンサをそのまま利用して、センサの数を増やさずに、トルクの伝達方向を検出できるようになる。これにより、伝達方向を検出するための専用のセンサなどを別途設ける必要がないので、コストの上昇を抑えることができる。
【0030】
さらに、自動変速機に入力されるトルクを瞬時に検出して、トルクダウン制御や油圧の最適化を行うことが可能になる。よって、自動変速機を搭載した車両の燃費の向上や、油圧の最適化による自動変速機のユニット耐久性の向上が期待できる。
さらに、ドライブ側とエンジンブレーキ側のトルクを識別できるので、ハイブリット自動車(HEV)や電気自動車(EV)での回生効率の向上が期待できる。
【0031】
また、センサ6の出力信号は、センサ6とヘリカルギア4との距離に対応する振幅のパルス信号であり、制御装置7がパルス信号の振幅に基づいてトルクの方向および大きさを検出する構成とした。
【0032】
このように構成すると、センサの6出力信号を確認するだけで、自動変速機に入力されるトルクの方向および大きさを瞬時に検出することができるので、トルクダウン制御や油圧の最適化を行うことが可能になる。
【0033】
さらに、制御装置7が、センサ5が出力するパルス信号と、センサ6が出力するパルス信号との位相差から、トルクの伝達により生じたヘリカルギア3とヘリカルギア4の回転の位相差を求め、求めた位相差から、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間で伝達されるトルクの大きさを検出する構成とし、位相差は、ヘリカルギア3の歯3aとヘリカルギア4の歯4aが、噛み合い部分において、伝達されるトルクの大きさに応じて、ヘリカルギア3、4の回転方向に傾くことで発生したものである構成とした。
【0034】
これにより、センサ5が出力するパルス信号と、センサ6が出力するパルス信号とを比較するだけで、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間で伝達されるトルクの大きさを検出できる。
【0035】
ここで、ヘリカルギア3、4は、歯数と径が同じヘリカルギアであり、他の歯車を介さずに、外周の歯3a、4a同士を互いに噛合させて設けられて、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間のトルクの伝達が直接行われるように構成した。
これにより、ヘリカルギア3、4は同じ回転速度で回転するので、センサ5、6から出力されるパルス信号を単純にそのまま比較するだけで位相差を求めることができる。
【0036】
さらに、センサ6は、ヘリカルギア3の歯3aとヘリカルギア4の歯4aとの噛み合い部分から離れた位置で、検出対象のヘリカルギア4の歯4aの側面4a1に対向して設けられている構成とし、特に、センサ6が、回転中心軸X2を挟んで噛み合い部分の反対側となる位置に設けられている構成とした。
【0037】
これにより、ヘリカルギア3、4の歯3a、4aの倒れ、すなわちヘリカルギア3、4の間でトルクが伝達される際に生ずる歯3a、4aの回転軸回りの周方向の倒れに起因する位相差を適切に検出できるので、トルクの検出精度を向上させることができる。
特に、センサ6が、回転中心軸X2を挟んで噛み合い部分の反対側となる位置に設けられていると、かかる位置では、ヘリカルギア3、4の間でトルクが伝達される際に、歯4aの側面4a1とセンサ6とのギャップが大きく変化するので、トルクの伝達方向をより確実に検出できる。
【0038】
実施の形態では、ヘリカルギア3、4の回転を検出するセンサ5、6のうちの一方のセンサ6を、ヘリカルギア4の側方に配置して、ヘリカルギア4のスラスト方向(直交方向)からヘリカルギア4の回転を検出するようにした場合を例示した。
ここで、センサ5、6のうちの少なくとも一方が、ヘリカルギアのスラスト方向から回転を検出するように配置されていれば、ヘリカルギア3、4の間で伝達されるトルクの大きさとその伝達方向を検出できる。
よって、センサ5とセンサ6の両方を、ヘリカルギアのスラスト方向から回転を検出するように配置しても良い。また、センサ5をヘリカルギアのスラスト方向から回転を検出するように配置すると共に、センサ6をヘリカルギアのラジアル方向から回転を検出するように配置しても良い。
【0039】
実施の形態では、センサ5、6から出力されるパルス信号の位相差をそのまま用いて、入力トルクを求める場合を例示した。
ここで、ギアの経時的な摩耗などの位相差への影響を考慮して、パルス信号の位相差を補正するようにしても良い。
例えば、定常低トルクとなるクリープ走行時の推定トルクに基づいて、パルス信号の位相差を補正するようにしても良い。
【0040】
具体的には、ヘリカルギアが経時的に摩耗や変形すると、摩耗や変形が生じていない場合の位相差との間にズレが生じる。そのため、パルス信号の位相差をそのままマップに当てはめると、求められるトルクが大きく/小さくなってしまう。
そこで、図7に示すように、定常低トルクとなるクリープ走行時の推定トルクを与える位相差αBを記憶手段に記憶しておく。そして、実際に車両がクリープ走行をしている時のセンサ5、6から出力されるパルス信号の位相差αAとの差Δα(αB−αA)を補正量として決定し、以降得られるパルス信号の位相差をこの補正量Δαで補正する。これにより、補正後の位相差を用いてマップを参照して、入力トルクを求めることで、ヘリカルギアの経時的に摩耗や変形による影響を緩和することができ、より正確なトルクを求めることができるようになる。
【0041】
このように、トルク算出手段が、クリープ走行時の推定トルクを与える位相差と、クリープ走行時にセンサ5、6から出力されるパルス信号の位相差との差に基づいて、クリープ走行時以外のヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクの伝達が行われている際にセンサ5、6から出力されるパルス信号の位相差を補正し、補正後の位相差に基づいてトルクを算出する構成とした。
【0042】
これにより、ヘリカルギアの経時的に摩耗や変形による影響を緩和することができ、より正確なトルクを求めることができるようになる。
【0043】
なお、補正量(位相差αAと位相差αBとの差Δα)ごとに対応する複数のマップを記憶手段に記憶させておき、クリープ走行時に補正量が決定されると、以降補正量に応じて決まるマップに基づいて、トルクを求めるようにしても良い。
【0044】
前記した実施の形態では、トルクが伝達される際のヘリカルギア4の移動方向(スラスト方向における移動方向)を、ヘリカルギア4の側方に配置したセンサ6とヘリカルギア4との距離D(D1、D2)に基づいて検出し、検出したヘリカルギア4の移動方向からトルクの伝達方向を検出する場合を例示した。
【0045】
ここで、ヘリカルギア3、4の間でトルクが伝達される際には、前記したように、互いに噛合する歯3a、4a同士が伝達されるトルクの大きさに応じて傾くことで、ヘリカルギア3、4の間に位相差が生ずるので、この位相差に基づいて、トルクの伝達方向を特定するようにしても良い。
【0046】
図8は、トルクが伝達される際に生ずるヘリカルギア3とヘリカルギア4の間の位相差を説明する図であって、(a)はドライブ時における位相差を、(b)はエンジンブレーキ時における位相差を説明する図である。
【0047】
図8に示すように、ドライブ時とエンジンブレーキ時とではトルクの伝達方向が異なり、ヘリカルギア3、4が回転する方向もトルクの伝達方向に応じて異なる。
そのため、例えばドライブ時には、ヘリカルギア3、4の歯3a、4aが、それぞれ、本来の位置を基準として、角度α1、α2ずつ倒れ、センサ6では、歯3a、4aが倒れたことに起因して、基準位置41にある歯が、所定角度(α1+α2)分だけ遅れて検知される(位相差A)。
これに対してエンジンブレーキ時には、ヘリカルギア3、4の歯3a、4aが、それぞれ、本来の位置を基準として、ドライブ時とは反対方向に角度α1’、α2’ずつ倒れ、センサ6では、歯3a、4aが倒れたことに起因して、基準位置41にある歯が、所定角度(α1’+α2’)分だけ先に検知される(位相差B)。
【0048】
よって、トルクの伝達方向に応じて、方向が異なる位相差A、Bとなるので、基準位置にあるヘリカルギア4の歯4aが、基準位置にあるヘリカルギア3の歯3aよりも先に検出されるのか、それとも後に検出されるのかに基づいて、トルクの伝達方向を特定することが可能となる。このようにすることによっても、前記実施の形態の場合と同様に、トルクの大きさの検出だけではなく、トルクの伝達方向まで判断できることになる。
【0049】
このように、ヘリカルギア3を検出対象歯車とするセンサ5(第1のセンサ)と、ヘリカルギア4を検出対象歯車とするセンサ6(第2のセンサ)と、ヘリカルギア3、4の間で伝達されるトルクを検出するトルク検出手段とを備え、
トルク検出手段が、ヘリカルギア3、4の噛み合い部分の歯3a、4aの歯3a、4aの傾きの大きさα1、α2、α1’、α2’を、センサ5、6の出力信号の位相差(α1+α1’、α2+α2’)から検出し、位相差の方向に基づいて、ヘリカルギア3、4の間で伝達されるトルクの方向を検出する構成とし、位相差は、ヘリカルギア3、4の噛み合い部分の歯3a、4aが、伝達されるトルクの大きさに応じて、回転方向に傾くことにより発生したものである構成とした。
【0050】
このように構成すると、センサ5、6の出力信号からヘリカルギア3、4の位相差を求めるだけで、伝達されるトルクの大きさと方向を検出できる。
特に、従来のセンサをそのまま利用して、センサの数を増やさずに、トルクの伝達方向を検出でき、専用のセンサなどを別途設ける必要がないので、コストの上昇を抑えることができる。
【0051】
本発明の第2の実施形態を説明する。
図9は、第2の実施形態にかかるトルク検出システムの概略構成図である。
図10は、トルク伝達による回転センサとヘリカルギアとのギャップと、回転センサの出力信号を説明する図である。
【0052】
第2の実施形態では、自動変速機の動力伝達経路上で、外周の歯3a、4a同士を噛合させて隣接して設けられたヘリカルギア3とヘリカルギア4の側方に、ひとつのセンサ6A(ギャップセンサ)が設けられている。
センサ6Aは、ギア軸1、2に対して平行となる向きで、ヘリカルギア3の歯3aとヘリカルギア4の歯4aとの噛み合い部分の側方に配置されている。このセンサ6Aは、ヘリカルギア3とヘリカルギア4のスラスト方向(直交方向)から、歯3aと歯4aとの噛み合い部分の側面3a1、4a1に、センサ面を対向させている。
【0053】
そのため、ヘリカルギア3、4が回転して、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達されると、センサ6Aのセンサ面の正面を、歯3aの側面3a1と歯4aの側面4a1とが交互に通過するようになっている。
【0054】
さらに、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達されていないときには、ヘリカルギア3の歯3aの側面3a1とセンサ6Aとの距離と、ヘリカルギア4の歯4aの側面4a1とセンサ6Aとの距離とが同じになるように、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の軸方向の位置が設定されている。
【0055】
前記したように、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達される際には、ヘリカルギア3とヘリカルギア4とをそれぞれ回転軸(ギア軸1、ギア軸2)に対して傾けようとする力と、ヘリカルギア3とヘリカルギア4をスラスト方向に移動させようとする力が作用する。
【0056】
ここで、トルクの伝達方向に応じてこれらの力が作用する向きが異なるので、図10の(a)に示すように、トルクの伝達方向に応じて、歯3aの側面3a1とセンサ6との距離D4と、歯4aの側面4a1とセンサ6との距離D3とが変化する。
例えば、図10の(a)に示す位置関係に歯3a、4aとセンサ6Aとがある場合、センサ6Aから出力されるパルス信号は、歯3aの側面3a1に起因する山aと、歯4aの側面4a1に起因する谷bとが交互に繰り返されるパルス信号10となる。
なお、第2の実施形態では、センサ6Aから離れた位置にある歯の側面が、パルス信号における山になるように、センサ6Aの出力信号が処理されている。
【0057】
ここで、山aと谷bとの高さの差(Gap)は、歯3aの側面3a1と、歯4aの側面4a1とのギャップ(Gap)に応じて決まる。
実施の形態では、トルクが伝達される際に、ヘリカルギア3とヘリカルギア4とが互いに異なる方向(ギャップが広がる方向)に移動する。そのため、ヘリカルギア3とヘリカルギア4に作用する力が小さくて、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の変位量(移動量)が小さくても、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との相対的な移動量が大きくなるので、検出能(分解能)が向上して、トルクの検出精度が向上するようになっている。
【0058】
第2の実施形態では、制御装置7が、パルス信号10(図10の(b)参照)に基づいて、パルス信号の周期Tと、ヘリカルギア3、4とセンサ6Aとの距離とを求める。そして、求めた周期Tと距離に基づいて、制御装置7の図示しない記憶手段に記憶されたマップを参照して、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の回転数(回転速度)と、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間で伝達されるトルクの大きさとが特定される。
【0059】
次に、第2の実施形態の変形例を説明する。
図11は、第2の実施形態の変形例の場合における、トルク伝達によるセンサ6Aとヘリカルギア3、4とのギャップと、回転センサの出力信号を説明する図である。図11の(a)は、ヘリカルギア3、4の歯3a、4a同士が噛合した部分の拡大図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図であり、(c)は、センサ6Aが出力するパルス信号を説明する図であり、(d)は、(a)における符号Bで囲んだ領域の拡大図である。
【0060】
この変形例にかかるトルク検出システムでは、ヘリカルギア4の歯4aの側面4a1に凹部42が設けられている。
凹部42は、ヘリカルギア4の総ての歯4aにおいて、センサ6Aとの対向面(側面4a1)に設けられている。これら凹部42は、ヘリカルギア4を側面から見て、ヘリカルギア4の回転中心(図示せず)を中心とした半径rの仮想円上に位置するように形成されている。さらに、これら凹部42は、ヘリカルギア4の側面側から見た形状が、総て同じ形状(矩形形状)であり、凹部42の深さD5(図11の(d)参照)も総て同じとなっている。
この変形例では、ヘリカルギア3からヘリカルギア4にトルクが伝達されているときに、出力側となるヘリカルギア4に凹部42が設けられている。そして、このヘリカルギア4における凹部42が設けられている面は、トルクが伝達されているときに倒れる側の面(変位が大きい側の面)に相当する。
【0061】
ヘリカルギア3、4が、図11の(a)に示す位置関係にある場合に、センサ6Aから出力されるパルス信号を説明する。
ヘリカルギア3、4が回転して、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達される場合、センサ6Aの正面を歯4aの凹部42が通過すると、凹部42の深さD5の分だけ、センサ6Aとの距離が変動する。
そのため、センサ6Aから出力されるパルス信号では、歯3aの側面に起因する山aと、歯4aの側面4a1に起因する谷bとが交互に繰り返されると共に、谷bの途中に、凹部42に起因する小さい山cが出現する。よって、図11の(c)に示すようなパルス信号10Aが出力されることになる。
【0062】
これにより、制御装置7が、パルス信号10A(図11の(c)参照)に基づいて、パルス信号の周期Tと、ヘリカルギア3、4とセンサ6Aとの距離とを求める。そして、求めた周期Tと距離に基づいて、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の回転数(回転速度)と、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間で伝達されるトルクの大きさとが特定される。
【0063】
さらに、パルス信号10Aにおいて、小さい山cが出現している山または谷が、ヘリカルギア4の歯4aの側面4a1に起因するものであることが判るので、センサ6Aから出力されるパルス信号の山と谷が、何れのヘリカルギア3とヘリカルギア4の何れの歯3a、4aの側面3a1、4a1に起因するものであるのかが特定できる。
【0064】
実施の形態では、小さい山cが出現するパルス信号に基づいて、トルクの伝達方向を特定できるようになっている。
以下、トルクの伝達方向の特定を説明する。
【0065】
図12は、図11の(a)に示す構成のヘリカルギア4が採用されている場合に、ドライブ時とエンジンブレーキ時にセンサ6Aから出力されるパルス信号を説明する図である。
図12の(a)は、駆動源側から入力された回転駆動力(トルク)が駆動輪側に伝達されるドライブ時のヘリカルギア3、4の位置関係と、センサ6Aから出力されるパルス信号を示す図である。(b)は、駆動輪側から入力された回転駆動力(トルク)が駆動源側に伝達されるエンジンブレーキ時のヘリカルギア3、4の位置関係と、センサ6Aから出力されるパルス信号を示す図である。
図13は、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達されてないために、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の回転軸方向の位置が略同じになった場合のパルス信号を説明する図である。
【0066】
なお、以下の説明は、ドライブ時には、ヘリカルギア3の歯3aがセンサ6Aから離れると共にヘリカルギア4の歯4aがセンサ6Aに近づき、エンジンブレーキ時には、ヘリカルギア3の歯3aがセンサ6Aに近づくと共にヘリカルギア4の歯4aがセンサ6Aから離れる場合(図12参照)について説明をする。
【0067】
図12の(a)に示すように、ドライブ時には、センサ6Aから出力されるパルス信号は、センサ6Aからの距離が遠いほうの歯3aの側面3a1に起因する山aと、センサ6Aに近いほうの歯4aの側面4a1に起因する谷bとが交互に繰り返すパルス信号であって、谷bの途中に、歯4aの凹部42に起因する小さい山cが出現するパルス信号10Bとなる。
【0068】
一方、図12の(b)に示すように、エンジンブレーキ時には、センサ6Aから出力されるパルス信号は、センサ6Aからの距離が遠いほうの歯4aの側面4a1に起因する山bと、センサ6Aに近いほうの歯3aの側面3a1に起因する谷aとが交互に繰り返すパルス信号であって、山bの途中に、歯4aの凹部42に起因する小さい山cが出現するパルス信号10Cとなる。
【0069】
これにより、制御装置7では、パルス信号10B、10Cから求めたパル信号の周期Tと、ヘリカルギア3、4とセンサ6Aとの距離に基づいて、回転数と伝達トルクの大きさとが特定される。
【0070】
さらに、パルス信号10B、10Cにおいて、小さい山cが出現している山が、ヘリカルギア4の歯4aの側面4a1に起因するものであることが判るので、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の何れが、センサ6Aに近い位置にあるのかが特定できる。
前記したように、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の位置関係はトルクの伝達方向に応じて決まるので、制御装置7において、特定した位置関係に基づいてトルクの伝達方向を特定できることになる。
【0071】
ちなみに、図13に示すように、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達されない場合、ヘリカルギア3とヘリカルギア4の回転軸方向の位置が略同じになる。
かかる場合には、歯3aの側面3a1と歯4aの側面4a1とのギャップ(Gap)が略ゼロになるので、センサ6Aから出力されるパルス信号10Dでは、山と谷が明確に区別できなくなる。
しかし、このような場合であっても、歯4aの凹部42に起因する小さい山cが、パルス信号10Dに出現する。
よって、かかる場合には、制御装置7において、小さい山cの周期Tに基づいて、ヘリカルギア3、4の回転数(回転速度)を求めることができるようになっている。
【0072】
なお、上記の変形例では、ヘリカルギア4に凹部42が設けられている場合を例に挙げて説明をしたが、凹部の変わりに凸部を設けるようにしても良い。このようにすることによっても、上記の変形例の場合と同様の作用効果が奏されることになる。
【0073】
さらに、第2の実施形態およびその変形例では、ヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達されていないときに、歯3aの側面3a1とセンサ6Aとのギャップ(距離)と、歯4aの側面4a1とセンサ6Aとのギャップ(距離)とが、同じとなるようにヘリカルギア3とヘリカルギア4とが設けられている。
しかし、トルクが伝達されていないときに、側面3a1とセンサ6Aとのギャップと、側面4a1とセンサ6Aとのギャップとが異なるように、ヘリカルギア3とヘリカルギア4とをスラスト方向(軸方向)にずらして配置するようにしても良い。このようにすると、少なくともドライブ時とエンジンブレーキ時の一方において、センサ6Aから出力されるパルス信号のギャップが大きくなるので、かかる場合におけるトルクの検出精度を向上させることができる。
【0074】
また、ヘリカルギア4に凹部または凸部を設けた場合には、例えばヘリカルギア3とヘリカルギア4との間でトルクが伝達されていないときにセンサ6Aにより検出されるセンサと凹部または凸部とのギャップと、予め求めたトルクが伝達されていないときのギャップとの差を求めて、以降、この求めた差に基づいて、センサ6Aにより検出されるギャップを補正するようにしても良い。このようにすると、トルクの検出精度を向上させることができる。
【0075】
以上の通り、第2の実施形態およびその変形例では、入力側の歯車(ヘリカルギア3)から出力側の歯車(ヘリカルギア4)にトルクを伝達する場合に、ヘリカルギア3、4の歯3a、4aの噛み合い部分の側方にセンサ6Aを配置し、軸方向のスラスト力が働く歯車の歯の側面(歯3a、4aの側面3a1、4a1)と歯車の変位量を測定するギャップセンサ(センサ6A)を設け、歯の側面(3a1、4a1)とギャップセンサとの間の距離に基づいて、歯車(ヘリカルギア3、4)が伝達するトルクを検出すると共に、ギャップセンサが検出する距離の変動周期(T)に基づいて、歯車の回転速度を検出する構成のトルク検出装置とした。
【0076】
このような構成にすると、ギャップセンサは、ひとつのセンサで、伝達されるトルクに応じて変化する歯車の側面の変位量を検出することができる。そして、その変位量に基づいて歯車が伝達するトルクを検出することができる。
【0077】
また、ギャップセンサは、歯車の歯の側面とギャップセンサとの距離を検出するようにしているので、一方の歯車の側面が存在しない部分と、一方の歯車の歯の側面が存在する部分との距離は異なり、距離は歯車の回転と共に周期的に変化する。この周期的な変化に基づき、歯車の回転速度を検出することができる。つまり、ひとつのセンサで、歯車の伝達するトルクと、歯車の回転速度を検出することができる。
【0078】
さらに、前記ギャップセンサは、入力側の歯車と出力側の歯車が噛み合う位置で、各歯車の側面の変位量を測定する構成とした。
【0079】
このように構成すると、ギャップセンサは、伝達されるトルクに応じて作用するスラスト力によって、互いに逆方向に変位する歯車の側面と、ギャップセンサの距離を検出することができる。このように、互いに逆方向に変位する歯車の側面を測定することで、歯車が伝達するトルクが同じで、それに伴う歯車の変位量が同じであっても、ギャップセンサが検出する検出値を大きくすることができ、トルクの検出精度を向上することができる。
【0080】
前記歯車の歯の側面であって、前記ギャップセンサと対向する側の側面には、凸部または凹部が形成されている構成とした。
【0081】
このように構成すると、ギャップセンサは、互いの歯車の側面がトルクにより変位しなくても、歯車の回転による歯車の側面との距離が周期的に変化して、歯車の回転速度を検出することができる。また、歯車に形成した凸部または凹部と歯車の側面とのギャップに基づいて、歯車の側面の位置の変位量を補正することにより、変位量の検出精度を向上させることができる。
【0082】
側面に凹部が形成される歯車は、出力側の歯車であり、かつ入力側から出力側へトルクが伝達されている状態で、歯車が倒れる側の面に凹部が形成されている構成とした。
【0083】
このように構成すると、凸部を形成する場合に比べ、ギャップセンサと歯車との距離を近くに設定することができ、ギャップセンサの検出精度の向上と、センサの搭載性を向上させることができる。
【0084】
なお、歯車は、ギャップセンサ側で、軸方向に対して、互いの歯車の側面がずれるように配置されている構成としても良い。
【0085】
このように構成すると、歯車の側面に凸部や凹部を設けなくても、伝達トルクがない状態、すなわち、スラスト力が働かず、歯車の軸方向の変位がない状態でも、ギャップセンサの出力に歯の側面の位置ズレによる周期的な変位が表れるので、歯車の回転速度を検出することができる。
【0086】
さらに、ギャップセンサは、一方の歯車の歯のみを検出する位置に配置した構成としても良い。
【0087】
このように構成すると、歯の側面に凸部や凹部を設けなくても、歯の形状(歯と歯溝)のみで、歯車の回転速度を検出できる。
さらに、この場合において、トルクの受け渡し部分、すなわち歯車の歯と歯の噛み合い部分に近い部分に、ギャップセンサを配置することが好ましい。このように構成すると、歯の倒れ(歯の側面の位置変位量)が大きいところで、歯車の倒れ量を検出することができるので、他の部分で検出する場合に比べて、トルクの検出精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ギア軸(第1の回転軸)
2 ギア軸(第2の回転軸)
3 ヘリカルギア(入力側の歯車)
4 ヘリカルギア(出力側の歯車)
5 センサ(第1のセンサ)
6 センサ(第2のセンサ)
6A センサ
7 制御装置(トルク検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側と出力側のヘリカルギアの間で伝達されるトルクを検出するトルク検出システムにおいて、
少なくとも出力側のヘリカルギアの歯部側面に配置され同ギアの回転を検出するセンサと、
同センサの出力信号に基づいて、前記出力側のヘリカルギアへ伝達されるトルクを検出するトルク検出手段と、を備え、
前記トルク検出手段が前記センサと前記出力側のヘリカルギアとの距離に基づいて、前記出力側のヘリカルギアへ伝達されるトルクの大きさおよび方向を検出することを特徴とするトルク検出システム。
【請求項2】
前記センサは、前記入力側と前記出力側のヘリカルギアとの噛み合い部分の側方に配置され、同センサと入力側および出力側のヘリカルギアとの各々の距離に基づいてトルクの方向および大きさを検出することを特徴とする請求項1に記載のトルク検出システム。
【請求項3】
前記センサの出力信号は、前記センサと前記入力側および出力側のヘリカルギアの少なくとも一方との距離に対応する振幅のパルス信号であり、
前記トルク検出手段は、前記パルス信号の振幅に基づいてトルクの大きさおよび方向を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトルク検出システム。
【請求項4】
入力側の歯車と出力側の歯車との間で伝達されるトルクを検出するトルク検出システムにおいて、
前記入力側の歯車を検出対象歯車とする第1のセンサと、
前記出力側の歯車を検出対象歯車とする第2のセンサと、
前記入力側の歯車と前記出力側の歯車との間で伝達されるトルクを検出するトルク検出手段とを備え、
前記トルク検出手段が、
前記入力側の歯車と前記出力側の歯車の歯の傾きに基づいて、前記入力側の歯車と前記出力側の歯車との間で伝達されるトルクの大きさおよび方向を検出することを特徴とするトルク検出システム。
【請求項5】
前記トルク検出手段は、
前記歯の傾きの大きさを、前記第1および第2のセンサの出力信号の位相差から検出し、
前記位相差の方向に基づいて、前記入力側の歯車と前記出力側の歯車との間で伝達されるトルクの方向を検出することを特徴とする請求項4に記載のトルク検出システム。
【請求項6】
前記位相差は、前記入力側の歯車と前記出力側の歯車の噛み合い部分の歯が、伝達されるトルクの大きさに応じて、歯車の回転方向に傾くことにより発生したものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のトルク検出システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−211859(P2012−211859A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78251(P2011−78251)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)