説明

トルク発生装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】 部品点数が少なく安価なトルク発生装置や画像形成装置を提供する。
【解決手段】 第1の部材10に移動可能に設けられた第2の部材6を押圧手段2で押し付けることで負荷トルクを発生させるトルク発生装置1であって、第1の部材10に、互いに対向しその間に間隔12を有する複数の面板部11、11を、第2の部材6に、間隔12に移動可能に挿入される板状のスライダー部7をそれぞれ設け、両者を係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の動きに対して負荷を与えるトルク発生装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉機構を有する各種装置には、種々のヒンジが用いられている。例えば、身近にも自動車のボンネットやドア、洋式トイレの蓋、ノートパソコン、携帯電話などがある。ヒンジの機構もある角度開いたところで止まる物(車のドア)、どんな角度でも止まる物(ノートパソコン)、決められた角度に開/閉しよとする物(携帯電話)、ダンパーを具備させて急激に閉じないようにしたもの(洋式トイレの蓋)など、開閉対象となる部材の重量や使われ方で様々なものがある。
特許文献1には、開閉体を支持するヒンジ部の構造に関し、開閉体と一体的に移動するカムプレートに複数の穴を設け、このカムプレートに対してカムと反対側からボールを押し付けることで、開閉体の動作に負荷トルクを与えるとともに、ボールがカムプレートの穴に係合することで、開閉体を任意の移動位置に保持する機構が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開閉10−47338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダンパーやフリーストップ機構を具備させると構成が複雑で高価になりがちであり、トルクの管理も1つ1つ手作り調整が必要となる場合もある。さらに、時間の経過や使用頻度が多いと、当初に設定した負荷トルクが維持できなくなってしまうものも多い。
特許文献1のものにおいては、ボールとカムプレートとが弾性的に接触することで負荷トルクが設定されているので、トルク調整をするのが難しいといった問題点がある。
本発明は、部品点数が少なく安価なトルク発生装置や画像形成装置を提供することを、その目的とする。さらに本発明は、トルク調整もユーザーが容易に実施可能なトルク発生装置や画像形成装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を設定するため、本発明が適用されたトルク設定装置は、第1の部材に移動可能に設けられた第2の部材を押圧手段で押し付けることで負荷トルクを発生させることを特徴としている。
【0006】
第1の部材としては互いに対向し、その間に間隔を有する複数の面板部を有し、第2の部材としては第1部材の間隔に移動可能に挿入される板状のスライダー部を有し、間隔または板状のスライダー部の幅が、第2の部材の移動方向に対して不均一としてもよい。
【0007】
押圧手段としては、少なくとも第1の部材に対して着脱可能に装着され、好ましくは第1の部材の面板部に対して着脱可能に装着され、装着状態において面板部をその外方側から挟み込むように形成された弾性体であるのが好ましい。
【0008】
本発明が適用された画像形成装置では、装置本体に開閉自在に支持された開閉体を有し、この開閉体を、上記の何れかに記載されたトルク発生装置の第2の部材に装着したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の部材に移動可能に設けられた第2の部材を押圧手段で押し付けることで負荷トルクを発生させるので、部品点数が少なく安価な構成で第2の部材や開閉体に負荷トルクを与えることができる。
本発明によれば、互いに対向しその間に間隔を有する複数の面板部を第1の部材が有し、第1の部材の間隔に移動可能に挿入される板状のスライダー部を第2の部材が有し、間隔または板状のスライダー部の幅を、第2の部材の移動方向に対して不均一としたので、間隔とスライダー部との摩擦抵抗に変化をつけることができ、第2の部材や開閉体への負荷トルクを容易に調整することができる。
本発明によれば、押圧手段が、少なくとも第1の部材に対して着脱可能に装着されているので、押圧部材の有無や、別な種類の押圧部材へ交換することができ、第2の部材や開閉体への負荷トルクを容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1において、符号1は本発明の要部となるトルク発生装置を示す。トルク発生装置1は、第1の部材としてのブレーキ部10と、ブレーキ部10に移動可能に設けられた第2の部材としてのディスク部6と、ブレーキ部10をディスク部6に押し付けることにより負荷トルクを発生させる押圧手段として弾性体である板バネ2とを備えている。ブレーキ部10は、互いに対向し、その間に間隔12を有し、レール部を構成する複数の面板部11,11を有し、ディスク部6は、間隔12に移動可能に挿入される板状のスライダー部7を有している。
【0011】
板バネ2は、少なくともブレーキ部10に対して着脱可能に装着されている。すなわち、板バネ2は、ブレーキ部10の複数の面板部11,11に対して着脱可能に装着され、装着状態において面板部11、11をその外方側から挟み込むように、図5(a)に示すように断面コ字状に形成されている。板バネ2の側面2A、2Bに形成された穴3は、プレーキ部2に設けられた突起4に装着時に挿入される。
【0012】
図2に示すように、ブレーキ部10は、平坦なベース10A上に、円板を1/4にカットした形状の面板部11,11が、その円弧面11Aが上方に位置し、互いの間に隙間12が形成されるように間隔ベース10Aに対して略直角に一体的に形成されている。ブレーキ部10には、面板部11,11とベース10Aとに接続して面板部11,11に強度を与える複数のリブ13・・が形成されている。面板部11,11には、互いに対向する部位に板バネ2を装着するための開口5がそれぞれ形成されている。開口5の幅W1は、板バネ2の幅Wとほぼ同一の寸法とされ、板バネ2が開口5内に挿入されて装着された際に、ピン4と相まって板バネ2を面板部11の両側から挟み込める部位に位置させる位置決め部を構成している。ピン4と板バネの穴3とは、板バネ2を開口5内に挿入して板バネの端部2Cを開口5の上縁5Aに位置させた際に、穴3がピン4に挿入する位置関係とされている。ブレーキ部10はディスク部6に対して支持体となるため、その基部10Aはトルク発生装置1を装着する機器の本体側にねじやボルトなどの締結部材によって着脱可能に固定される。
【0013】
図3に示すように、ディスク部6は、本体6Aと、円弧状のスライダー部7とを備えている。スライダー部7は、本体6Aに対して略直角に一体的に形成されている。スライダー部7の板厚tと間隔12の幅dはともに一定の幅と取れていて、スライダー部7をスムーズに移動可能としている。ディスク部6には、本体6Aとスライダー部7とに接続してスライダー部7に強度を与える複数のリブ14・・が形成されている。スライダー部7の両側には、円弧面11Aに沿うように接触する円弧状のガイド部7Aがそれぞれ形成されている。このため、ディスク部6は円弧面11Aの円周方向に移動可能とされる。本体6Aの上部6Bには、トルク発生装置1を装着する機器の本体側に開閉自在に設けられた図示しない開閉体を装着する装着部40が形成されている。
【0014】
このような構成のトルク発生装置1は、ブレーキ部10の間隔12にディスク部6のスタイダー部7を挿入し、両者を移動可能に一体化する。この状態で板バネ2を開口5へ挿入し、面板部11,11を外側から挟み込むように装着する。
【0015】
このようにセットした状態において、ディスク部6を面板部11,11の円弧面11Aの円周方向に往復移動すると、板バネ2の挟持力で面板部7、7が挟み込まれることで生じる、スライダー部7と間隔12の内部に位置する面板部7、7との摩擦によって負荷トルクを発生する。
【0016】
このように、ブレーキ部10に移動可能に設けられたディスク部6を板バネ2で押し付けるという簡単な構成で負荷トルクが発生するので、従来に比べて部品点数が少なく安価な構成でディスク部6に負荷トルクを与えることができる。また、板バネ2をブレーキ部2に対して着脱可能に装着したので、板バネ2の有無、種類や大きさを自動に選択することができるようになりディスク部6への負荷トルクを容易に調整することができる。
【0017】
本形態では、ブレーキ部10の面板部11の枚数は2枚、ディスク板6の板、すなわちスライダー部7の枚数は1枚であるが、面板部11の枚数をn枚、スライダー部7の数をn−1枚として、それぞれの板を交互に勘合させることでトルクを調整することも可能である。又、板バネ2が挟んでいる場所を開閉体支点位置から遠ざけることでトルクをアップさせることも可能である。
【0018】
図4は、ブレーキ部10の面板部11、11の間隔12に挿入されるスライダー部7の幅tを、ディスク部6の移動方向に対して不均一としたものである。本形体では、図1(c)に示すように、間隔12とスライダー7との挿入状態が少ない状態から、図1(b)に示す中間状態を経て、図1(a)に示す間隔12内にスライダー7が挿入完了したへと進むにしたがい、スライダー7の板厚がt1<t2となるように形成している。すなわち、図4において、矢印A1で示す方向にディスク部6が移動する場合には負荷トルクは徐々に低減し、矢印A2で示す方向にディスク部6が移動する場合には板バネ2を広げてゆく作用が発生するのでトルクも徐々に増大する。矢印A1方向を開方向、矢印A2方向を閉方向とすると、開く方向にディスク部6を移動させる場合には、その負荷トルクが徐々に低減し、閉じる方向にディスク部6を移動させる場合には、その負荷トルクが徐々に低減する。例えば、この装置1を洋式トイレの上ブタに適用した場合、蓋が水平に近づくに従って支点部分のトルクが増加し、開く場合には、トルクが低減するのでスムーズな開くことができる。すなわち、スライダー7の板厚を変化させることで負荷トルクを容易に調整することができるととともに、開閉角度がどの位置でも、所望の位置で停止させることも可能である。
【0019】
本形態では、トルク調整機構としてスライダー7の幅tを徐々に変化させたが、スライダー7の幅を多段的に変化させても良い。あるいは、スライダー7の幅ではなく間隔12の幅を変化させても同様な効果を得ることができる。
【0020】
上記形態では板バネ2は断面コの字状であり、その開放側を端部2cの幅よりも狭めているため、開口5に装着する際の装着し難い場合が想定されるので、図5(b)、図6に示すように、側面2A、2Bに、端部2cよりも外方に突出する脱着用の取手8をそれぞれ設ける。このことにより、板バネ2は、いわゆる洗濯バサミの形態を成し、ユーザーでも容易に板バネ2の脱着が可能となる。従って、ユーザーは自分の好みでトルクを調整することや、板バネ2を取り去ってトルク0とすることもできる。また、時間の経過や使用頻度が多くて板バネ2にへたりが発生し、当初のトルクが維持できなくなった場合でも、容易に新しいものと交換して調整が可能となる。
【0021】
上記形態において、板バネ2の使用個数は、1個とは限らず、例えば図7に示すように、複数個使用しても良い。図7の形態では、取手8付き板バネ2を、ディスク部6の移動方向に位置する面板部11,11の両端に装着したものである。1つは上記形態同様開口5に、もう一つは面板部11,11に、それぞれ穴3に挿入可能なピン30と位置決め突起31,32を形成して装着する。ディスク部6は、板バネ2がピン30と位置決め突起31,32とで位置決めされた際に、面板部11,11を各自に両側から挟み込めるように、その一部に凹部6Aを形成し、バネ装着部としている。このように、板バネ2の個数を調整してもユーザーの好みの負荷トルクに調整することができるようになる。
【0022】
図8は、トルク発生装置1を備えた画像形成装置を示す。この画像形成装置は、装置本体50の上部に開閉体としての上カバー51が支点部53で開閉自在に支持されている。装置本体51内には、複数のトナーボトル52が収納されていて、上カバー51を図8(b)に示す閉状態から図8(a)に示すように開状態とすることにより、トナーボルト52が装置外部に露呈し、交換することができるようになる。支点部53側に位置する上カバー51の端部51Aは、トルク発生装置1のディスク部6の装着部40に装着されて固定される。
【0023】
このような構成の画像形成装置によると、トルク発生装置1を支点部53に具備することで、上カバー51が急激に閉じることを防止することもできれば、任意の角度開いた位置で停止させることができる。また、上カバー51の停止位置は、ユーザーが板バネ2の位置を動かして負荷トルクを調整することで容易に行える。また、トルク発生装置1が画像形成装置に装備された場合であっても、板バネ2が着脱自在であるので、板バネ2にへたりが発生した場合でもユーザーが容易に交換を行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態であるトルク発生装置の構成と第2の部材となるディスク部の移動状態を示す斜視図である。
【図2】第1の部材となるブレーキ部の構成を示す図である。
【図3】第2の部材となるディスク部の構成を示す図である。
【図4】ディスク部に設けられる板状のスライダー部の変形例を示す斜視図である。
【図5】押圧手段としての板バネの構造と形態を示す斜視図である。
【図6】取手付き板バネが用いられたトルク発生装置の斜視図である。
【図7】板バネが複数用いられたトルク発生装置の斜視図である。
【図8】トルク発生装置が適用された画像形成装置の外観と、装置に設けた開閉体の開状態と閉状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 トルク発生装置
2 押圧手段
6 第2の部材
7 スライダー部
10 第1の部材
11 面板部
12 間隔
50 装置本体
51 開閉体
t スライダー部の幅
A1,A2 移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に移動可能に設けられた第2の部材を押圧手段で押し付けることで負荷トルクを発生させることを特徴とするトルク発生装置。
【請求項2】
請求項1記載のトルク発生装置において、
第1の部材は、互いに対向し、その間に間隔を有する複数の面板部を有し、第2の部材は、前記間隔に移動可能に挿入される板状のスライダー部を有し、
前記間隔または板状のスライダー部の幅が、第2の部材の移動方向に対して不均一とされていることを特徴とするトルク発生装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のトルク発生装置において、
前記押圧手段が、少なくとも第1の部材に対して着脱可能に装着されていることを特徴とするトルク発生装置。
【請求項4】
請求項2記載のトルク発生装置において、
前記押圧手段は、第1の部材の面板部に対して着脱可能に装着され、装着状態において前記面板部をその外方側から挟み込むように形成された弾性体であることを特徴とするトルク発生装置。
【請求項5】
装置本体に開閉自在に支持された開閉体を有する画像形成装置において、前記開閉体を、請求項1ないし4の何れかに記載のトルク発生装置の第2の部材に装着したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−3825(P2006−3825A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182739(P2004−182739)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】