説明

トルク計測装置

【課題】トルク計測装置の製造時等において、トルクセンサ部の記憶部に対して定格情報等の入力作業を容易に行うことができるトルク計測装置を提供すること。
【解決手段】トルク計測装置1は、ねじ締め機に取り付けられ該ねじ締め機の締め付けトルクを少なくとも計測可能なトルクセンサ部4を備えるとともに、表示部17と、トルクセンサ部4の性能を示す定格情報(トルクセンサ部情報)が記憶されるRAM31(第1記憶部)とを有して、トルクセンサ部4により計測された計測結果をRAM31に記憶された定格情報に基づいて処理し表示部17に表示するコントロール部13を備える。トルクセンサ部4は、EEPROM9(第2記憶部)を備える。コントロール部13は、操作可能な入力操作部18を備え、入力操作部18を操作することにより、定格情報等(トルクセンサ部情報)をEEPROM9へ書き込み可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対してナットを締め付けるナットランナ等のねじ締め機に取り付けて、ねじ締め機の締め付けトルクを計測等するトルク計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ねじ締め機が、トルク検出部および角度検出部を備え、ねじ締め機を制御するコントロール部(制御装置)が、トルク検出部および角度検出部からの検出信号を処理して、ねじ締め機の締め付けトルクと締めあがり角度とを計測し、計測結果をトルク時間波形又はトルク角度波形として表示部に表示する技術が記載されている。なお、トルク検出部および角度検出部により構成される部分をトルクセンサ部と称することとする。
【0003】
また、トルク検出部および角度検出部を有するトルクセンサ部と、トルクセンサ部からの検出信号を処理するコントロール部とを備えた持ち運び可能なトルク計測装置であって、トルクセンサ部をねじ締め機に取り付けてねじ締め機の締め付けトルク等を計測して表示部に表示するトルク計測装置が、従来から知られている。
【0004】
このようなトルク計測装置を用いて、ナットランナなどのねじ締めトルク等を正確に計測するためには、計測するナットランナに適切なトルクセンサ部を用い、そのトルクセンサ部の定格情報に基づいて、トルク計測装置のコントロール部が、トルクセンサ部からの検出信号を処理する必要がある。すなわち、コントロール部がトルクセンサ部からの検出信号を正しく処理するためには、コントロール部にトルクセンサ部の定格情報を認識させておく必要がある。そこで、このようなトルク計測装置に用いられるトルクセンサ部として、記憶部(ROM)を備え、その記憶部にトルクセンサ部の定格情報等が記憶されており、記憶部からトルクセンサ部の定格情報を読み出せるものが登場している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−155192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなトルク計測装置では、トルクセンサ部が備える記憶部に対して、トルク計測装置のコントロール部が情報を書き込むことができないため、トルクセンサ部の製造時に、トルク計測装置のコントロール部以外の書き込み装置(ROMライタ)を用いて、トルクセンサ部の記憶部に定格情報等を書き込む必要があり、トルクセンサ部への定格情報等の入力作業が煩雑であった。
【0007】
そこで本発明では、上記事情に鑑み、トルク計測装置の製造時等において、トルクセンサ部の記憶部に対して定格情報等の入力作業を容易に行うことができるトルク計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトルク計測装置は、ねじ締め機に取り付けられ該ねじ締め機の締め付けトルクを少なくとも計測可能なトルクセンサ部を備えるとともに、表示部と、前記トルクセンサ部の性能を示すトルクセンサ部情報が記憶される第1記憶部とを有して、前記トルクセンサ部により計測された計測結果を前記第1記憶部に記憶された前記トルクセンサ部情報に基づいて処理し前記表示部に表示するコントロール部を備えたトルク計測装置において、前記トルクセンサ部は、第2記憶部を備え、前記コントロール部は、操作可能な入力操作部を備え、該入力操作部を操作することにより、前記トルクセンサ部情報を前記第2記憶部へ書き込み可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、コントロール部の入力操作部を操作することにより、トルクセンサ部情報を、トルクセンサ部の記憶部(第2記憶部)へ書き込むことができる。したがって、別途書き込み装置(ROMライタ)を用いることなく、トルク計測装置の製造時等において、トルクセンサ部の記憶部(第2記憶部)に対して、定格情報等のトルクセンサ部情報の入力作業を容易に行うことができる。
【0010】
ここで、本発明のトルク計測装置では、当該トルク計測装置の作動時であって、前記第2記憶部に前記トルクセンサ部情報が記憶されているときは、前記コントロール部が、前記第2記憶部に記憶されている前記トルクセンサ部情報を、前記第2記憶部から読み出して前記第1記憶部に記憶するように構成することができる。
【0011】
トルク計測装置は、第1記憶部に記憶されたトルクセンサ部情報に基づいてトルクセンサ部により計測された計測結果を処理するところ、このような構成とすれば、トルク計測装置の作動時に、コントロール部により、トルクセンサ部情報が第2記憶部から読み出されて第1記憶部に書き込まれるため、トルク計測装置の使用者が自ら、コントロール部の第1記憶部にトルクセンサ部情報を入力する必要がない。
【0012】
さらに、本発明のトルク計測装置では、前記コントロール部が、前記第2記憶部から読み出して前記第1記憶部に記憶した前記トルクセンサ部情報に基づいて、前記トルク計測装置の作動時に、所定のキャリブレーション処理を行うように構成することができる。
【0013】
トルク計測装置は、トルクセンサ部のトルクセンサ部情報に基づいたキャリブレーション処理がなされていなければ、正しい計測をすることができないところ、このような構成とすれば、トルク計測装置の作動時に、コントロール部により第2記憶部から読み出されて第1記憶部に記憶されたトルクセンサ部使用情報に基づいたキャリブレーション処理がなされるので、キャリブレーション処理がなされないまま、誤って計測してしまう虞れを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コントロール部の入力操作部を操作することにより、トルクセンサ部情報を、トルクセンサ部の記憶部(第2記憶部)へ書き込むことができる。したがって、別途書き込み装置(ROMライタ)を用いることなく、トルク計測装置の製造時等において、トルクセンサ部の記憶部(第2記憶部)に対して、定格情報等のトルクセンサ部情報の入力作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のトルク計測装置の正面図である。
【図2】同トルク計測装置が備えるコントロール部(制御装置)の平面図である。
【図3】同コントロール部の底面図である。
【図4】同コントロール部の左側面図である。
【図5】同トルク計測装置の構成を示すブロック図である。
【図6】同トルク計測装置の表示部に表示される計測画面を示す図である。
【図7】同表示部に表示されるメインメニュー画面を示す図である。
【図8】同表示部に表示されるトルク時間特性の波形画面を示す図である。
【図9】同表示部に表示されるトルク角度特性の波形画面を示す図である。
【図10】同表示部に表示される計測設定画面を示す図である。
【図11】同表示部に表示される計測設定画面(第2計測設定画面)を示す図である。
【図12】同表示部に表示されるその他の設定画面を示す図である。
【図13】図12に示すその他の設定画面に重ねて表示された設定値書込画面を示す図である。
【図14】同表示部に表示されるシステム設定画面を示す図である。
【図15】同表示部に表示されるカレンダ設定画面を示す図である。
【図16】同表示部に表示されるEEPROM設定画面(書き込み禁止時)を示す図である。
【図17】同表示部に表示されるEEPROM設定画面(書き込み許可時)を示す図である。
【図18】同表示部に表示されるプリンタ出力画面を示す図である。
【図19】同表示部に表示されるUSB出力画面を示す図である。
【図20】同表示部に表示される自己診断画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.トルク計測装置の構造
本発明の一実施形態に係るトルク計測装置1について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、トルク計測装置1は、コントロール部(制御装置)13と、トルクセンサ部4とを備え、コントロール部13とトルクセンサ部4とは、ケーブル3により接続されている。
【0017】
トルクセンサ部4は、図示しないナットランナ等のねじ締め機の締め付け軸(回転軸)に取り付けられ、ナットランナ等のねじ締め機がワークに対してナット等を締め付ける際の締め付けトルク等を計測する。すなわち、トルク計測装置1は、ナットランナ等のねじ締め機がねじ締めを行ったとき、経過時間および締めあがり角度とともに締め付けトルクを計測し、計測結果を数値として表示し、又はグラフ化して表示して、ナットランナ等のねじ締め機が、設定した締め付けトルクの通りに正常に作動しているかを確認するものである。なお、トルクセンサ部4は、種々のねじ締め機の締め付け軸に取り付けることができるように、ねじ締め機の種類に応じて調整可能なアタッチメントを備えている。
【0018】
トルクセンサ部4は、図5に示すように、トルク検出部5と、角度検出部7と、EEPROM9(第2記憶部に相当する)とを備える。トルク検出部5は、ひずみゲージを備えて構成され、ナットランナ等のねじ締め機の締め付けトルクを示す検出信号を出力する。角度検出部7は、レゾルバを備えて構成され、ナットランナ等のねじ締め機の締めあがり角度を示す検出信号を出力する。
【0019】
EEPROM9は、書き込んだ情報を電気的に消去することができ、情報を何度でも書き換えることができるメモリである。EEPROM9は、定格情報等記憶部10を備えている。定格情報等記憶部10には、トルクセンサ部4内の定格情報等の内容が記憶されている。具体的には、後述する図16に示すように、定格情報等として、トルクセンサ部4の型式、シリアルNo(ナンバー)、定格、予備、年、月日、時分が記憶されている。なお、これらの定格情報等が、トルクセンサ部情報に相当する。
【0020】
コントロール部13は、図1,2,3,4に示すように、略直方体形状のハウジング14に、電気部品を内蔵した構成とされている。図1に示すように、コントロール部13の正面には、タッチパネル付きディスプレイ16の表示部17が配されている。タッチパネル付きディスプレイ16は、後述する制御部30(図5参照)への入力操作部18を構成する。
【0021】
図2に示すように、コントロール部13の平面(上面)には、トルクセンサ部4と接続するケーブル3の接続コネクタ19が配されている。また、コントロール部13の上面には、プリンタ出力用コネクタ20が配されている。また、コントロール部13の上面には、トルク計測装置1の電源のON/OFFなどを切り換える電源スイッチ21が設けられている。電源スイッチ21は、使用しない場合のOFFモード、ACアダプタ43を接続して使用する場合のACモード、ACアダプタ43を接続して後述する予備電源(バッテリー)42を充電したり、予備電源42によりトルク計測装置1を駆動させたりする場合のBAT/CHGモードを切り換えるものである。また、コントロール部13の上面には、コントロール部13を持ち運ぶ際に利用する把持部23が設けられている。
【0022】
図3に示すように、コントロール部13の底面(下面)には、USBメモリ46(図5参照)を接続するためのUSB端子25が配されている。図4に示すように、コントロール部13の左側面には、ACアダプタ43を接続するためのACアダプタ入力コネクタ26が配されている。なお、使用するACアダプタ43の定格値は、15V(ボルト)、3A(アンペア)である。また、コントロール部13の左側面には、トルク計測装置1を携帯する際に携帯用のベルトを通すためのフック金具27が配されている。
【0023】
2.トルク計測装置の電気系統
図5は、トルク計測装置1の電気系統のブロック図である。トルク計測装置1は、トルクセンサ部4と、コントロール部13とを備えている。トルクセンサ部4は、既に説明したように、定格情報等記憶部10を有するEEPROM9と、トルク検出部5と、角度検出部7とを備えている。
【0024】
コントロール部13は、制御部30を備えている。制御部30は、CPU、ROM、RAM(第1記憶部に相当する)31を備えたいわゆるワンチップマイコンにより構成されている。ROMには、トルク計測装置1を動作させるためのプログラムが記憶されている。トルク検出部5によって検出された締め付けトルク(電圧値として計測される情報)は、コントロール部13内に配された増幅回路34により増幅された後、AD変換回路35によりデジタル信号に変換されて、制御部30に入力される。また、角度検出部7によって検出された締めあがり角度(電圧値として計測される情報)は、コントロール部13内に配された角度情報変換回路37によりデジタル信号に変換されて、制御部30に入力される。制御部30に入力された締め付けトルク、及び締めあがり角度は、制御部30が有するRAM31に記憶される。トルクセンサ部4のEEPROM9は、制御部30に接続され、制御部30によって情報の読み出し及び書き込みをすることが可能となっている。例えば、EEPROM9内の定格情報等記憶部10には、トルクセンサ部4の定格情報が記憶されているが、トルク計測装置1によって締め付けトルク等を正確に解析するためには、トルクセンサ部4の定格情報に基づいてトルク検出部5および角度検出部7により検知した値を解析する必要があるところ、実施形態では、制御部30は、EEPROM9内の定格情報等記憶部10に記憶された定格情報を電源ON時に自動的に読み出して、RAM31に記憶する。そのため、実施形態のトルク計測装置1では、トルク計測装置1の使用者が自ら、コントロール部13の入力操作部18を操作して、制御部30のRAM31にトルクセンサ部4の定格情報を入力する必要がない。
【0025】
また、コントロール部13は、タッチパネル付きディスプレイ16を備えている。タッチパネル付きディスプレイ16は、制御部30に対する入出力装置となるものである。タッチパネル付きディスプレイ16は、表示部17(図1参照)に表示される釦画像(例えば図6の符号50参照)に触れることにより、制御部30に対して命令を入力できる。このように、タッチパネル付きディスプレイ16は、制御部30への入力操作部18となっている。また、タッチパネル付きディスプレイ16は、後述するように、トルク検出部5及び角度検出部7により検出され制御部30により処理された締め付けトルク(単位:N.m(ニュートンメートル))及び締めあがり角度(単位:deg(度))に関する値を、数値として、又は、波形画像として表示部17に表示する。なお、タッチパネル付きディスプレイ16は、主に表示部17を制御するディスプレイコントローラ39を介して制御部30に接続されるとともに、主に入力操作部18を制御するタッチパネルコントローラ40を介して制御部30に接続されている。
【0026】
また、コントロール部13は、電源回路41を備えている。電源回路41は、ACアダプタ43を介してトルク計測装置1に供給される電源を、各部を駆動するのに適した電圧及び電流に変換して、各部に供給するものである。電源回路41には、制御部30、AD変換回路35、角度情報変換回路37、ディスプレイコントローラ39、タッチパネルコントローラ40、及びトルク検出部5が接続されている。また、電源回路41は、ACアダプタ43を介して電源と接続することなくトルク計測装置1を駆動することができるように、充電可能なバッテリーで構成される予備電源42を備えている。
【0027】
なお、コントロール部13の制御部30は、プリンタ45およびUSBメモリ46を接続可能とされており、制御部30により処理された締め付けトルク等に関する情報は、トルク計測装置1の使用者による後述する所定の操作により、プリンタ45に出力したり、USBメモリ46に記憶したりすることができる。
【0028】
3.トルク計測装置の動作
次に図6〜20に基づいて実施形態のトルク計測装置1の動作について説明する。なお、図6〜20は、トルク計測装置1の表示部17に表示される画像を示している。
【0029】
ACアダプタ43を用いてトルク計測装置1を電源に接続し、トルク計測装置1の電源スイッチ21を、OFFモードからACモードへ切り替える(電源をONする)と、制御部30は、所定のキャリブレーション処理を実行した後、図6に示す計測画面を表示部17に表示する。ここで、所定のキャリブレーション処理とは、トルクセンサ部4により正確な計測を行うために、コントロール部13と接続されているトルクセンサ部4の定格情報に基づいて、コントロール部13の各計測パラメータ(締め付けトルクや締めあがり角度)の基準値を調整する処理である。実施形態のトルク計測装置1では、制御部30は、電源ON時にトルクセンサ部4の定格情報等記憶部10から定格情報を読み出してRAM31に記憶し、RAM31に記憶した定格情報に基づいてキャリブレーション処理を行う。
【0030】
制御部30は、図6に示す計測画面の左下部に、メインメニュー画面を表示させるためのメインメニュー釦50を表示する。制御部30は、トルク計測装置1の使用者がメインメニュー釦50に触れたことを検知すると、図7に示すメインメニュー画面を表示部17に表示する。メインメニュー画面では、制御部30は、計測画面を表示させる計測画面釦51、計測設定画面(図10参照)を表示させる計測設定釦52、システム設定画面(図14参照)を表示させるシステム設定釦53、プリンタ出力画面(図18参照)を表示させるプリンタ出力釦54、自己診断画面(図20参照)を表示させる自己診断釦55、USB出力画面(図19参照)を表示させるUSB出力釦56、を上から順に表示する。制御部30は、トルク計測装置1の使用者が各釦に触れたことを検知すると、その釦が指定する画面を表示部17に表示する。
【0031】
トルク計測装置1による締め付けトルクの計測は、制御部30により表示部17に計測画面を表示させて行う。制御部30が計測画面を表示している状態で、トルクセンサ部4がナットランナなどのねじ締め機のねじ締めトルクを検出すると、トルク検出部5及び角度検出部7により計測された信号が、制御部30に入力されるとともに、制御部30により、RAM31に記憶されている定格情報に基づいて処理されて、締め付けトルク(単位:N.m(ニュートンメートル))及び締めあがり角度(単位:deg(度))として表示部17に表示される。このとき、計測された値には、データNo.(ナンバー)が付される。なお、実施形態のトルク計測装置1では、締め付けトルク及び締めあがり角度は、スナッグトルクから測定した値である。
【0032】
制御部30は、計測画面では、下部中央に、図8に示す波形画面を表示させるための波形画面釦58を表示する。制御部30は、トルク計測装置1の使用者が波形画面釦58に触れたことを検知すると、図8に示す波形画面を表示部17に表示する。図8に示す波形画面では、制御部30は、トルクセンサ部4により計測した値を、トルク時間波形として表示する。このトルク時間波形は、横軸を時間(単位:ms(ミリセカンド))とし、縦軸を締め付けトルク(単位:N.m)として、計測した値をグラフ化して表示したものである。実施形態では、横軸は0ms〜2000msの値をとり、縦軸は50.0N.m〜100.0N.mの値をとっている。これは、後述するその他の設定画面(図12参照)を表示させて設定することができるトルク波形フルスケール73の設定値、計測時間75の設定値、及び、後述する第2計測設定画面(図11参照)を表示させて設定することができるスナッグトルク76の設定値に基づいて設定されるものである。なお、制御部30は、この波形画面の右上部に、トルクセンサ部4により計測した締めあがり角度を表示する。
【0033】
制御部30は、トルク時間波形の波形画面の下部に、計測画面を表示させるための計測画面釦51と、図9に示すトルク角度波形の波形画面を表示させるための時間⇔角度釦60を表示する。制御部30は、トルク計測装置1の使用者が時間⇔角度釦60に触れたことを検知すると、図9に示すトルク角度波形の波形画面を表示部17に表示する。トルク角度波形の波形画面では、制御部30は、トルクセンサ部4により計測した値を、トルク角度波形として表示する。このトルク角度波形は、横軸を角度(単位:deg)とし、縦軸を締め付けトルク(単位:N.m)として、計測した値をグラフ化して表示したものである。実施形態では、横軸は0deg〜720degの値をとり、縦軸は50.0N.m〜100.0N.mの値をとっている。これは、後述するその他の設定画面(図12参照)を表示させて設定することができるトルク波形フルスケール73の設定値、角度波形フルスケール74の設定値、及び、後述する第2計測設定画面(図11参照)を表示させて設定することができるスナッグトルク76の設定値に基づいて設定されるものである。なお、制御部30は、この波形画面の下部に、計測画面を表示させるための計測画面釦51と、図8に示すトルク時間波形の波形画面を表示させるための時間⇔角度釦60を表示する。
【0034】
また、制御部30は、メインメニュー画面(図7参照)において、トルク計測装置1の使用者が計測設定釦52に触れたことを検知すると、図10に示す計測設定画面を表示する。計測設定画面では、制御部30は、図11に示す計測設定画面(以下「第2計測設定画面」ともいう)を表示させるための計測設定釦61(以下「第2計測設定釦61」ともいう)と、図12に示すその他の設定画面を表示させるためのその他の設定釦62を表示する。
【0035】
制御部30は、計測設定画面(図10参照)において、トルク計測装置1の使用者が第2計測設定釦61に触れたことを検知すると、図11に示す第2計測設定画面を表示する。また、制御部30は、計測設定画面(図10参照)において、トルク計測装置1の使用者がその他の設定釦62に触れたことを検知すると、図12に示すその他の設定画面を表示する。図11に示す第2計測設定画面では、制御部30は、トルク上限値などの項目ごとに現在設定されている設定値を表示部17の左部に表示し、設定値を変更するための数値等入力釦としてのキー表示部48を表示部17の右部に表示する。第2計測設定画面では、トルク計測装置1の使用者は、項目名に触れることで設定を変更したい項目を選択し、キー表示部48を操作することで設定値を修正して入力することができる。制御部30は、設定値が修正された後、表示部17の下部に表示している戻る釦63(前に表示していた画面を表示するための釦)又は計測画面釦51に使用者が触れたことを検知すると、図示しない書き込み確認画面を表示して、設定値を変更してよいか否か確認し、YES(変更してよい)が選択されると、設定値を修正した値に変更する。
【0036】
図12に示すその他の設定画面では、制御部30は、トルク波形フルスケールなどの項目ごとに現在設定されている設定値を表示部17の左部に表示し、キー表示部48を表示部17の右部に表示する。その他の設定画面では、トルク計測装置1の使用者又は製造者(以下「使用者等」ともいう)は、EEPROM9に対して書き込みを許可するか否かを設定することができる。トルク計測装置1の使用者等が、キー表示部48を操作して、EEPROM設定許可の項目49を「1」に設定した場合には、制御部30は、EEPROM9への書き込みを許可する。また、トルク計測装置1の使用者等が、キー表示部48を操作して、EEPROM設定許可の項目49を「0」に設定した場合には、制御部30は、EEPROM9への書き込みを禁止する。制御部30は、設定値を変更された後、表示部17の下部に表示している戻る釦63又は計測画面釦51に、トルク計測装置1の使用者等が触れたことを検知すると、図14に示すように、設定値書込画面を、その他の設定画面に重畳して表示する。設定値書込画面では、制御部30は、トルク計測装置1の使用者等がYES釦65に触れたことを検出すると、変更された設定値を書き込み、トルク計測装置1の使用者等がNO釦66に触れたことを検出すると、変更された設定値を書き込まずに設定値を変更前に戻す。なお、このようにEEPROM9に対して書き込みを許可するか否か設定できるようにしているのは、EEPROM9の定格情報等記憶部10に記憶されている情報を変更した場合には、トルク計測装置1が正常に動作しなくなる虞れがあるからである。したがって、トルク計測装置1の製造者は、EEPROM設定許可の項目49を「0」に設定し、EEPROM9への書き込みを禁止して、トルク計測装置1の使用者が誤って変更しないようにしておくことが望ましい。
【0037】
また、制御部30は、メインメニュー画面(図7参照)において、トルク計測装置1の使用者がシステム設定釦53に触れたことを検知すると、図14に示すシステム設定画面を表示する。システム設定画面では、制御部30は、図15に示すカレンダ設定画面を表示するためのカレンダ設定釦67と、図6又は図17に示すEEPROM設定画面を表示するためのEEPROM設定釦68を表示する。制御部30は、システム設定画面(図14参照)において、トルク計測装置1の使用者がカレンダ設定釦67に触れたことを検知すると、図15に示すカレンダ設定画面を表示する。カレンダ設定画面では、トルク計測装置1の使用者は、現在の年月日及び現在時刻をキー表示部48を操作して設定することができる。制御部30は、システム設定画面(図14参照)において、トルク計測装置1の使用者がEEPROM設定釦68に触れたことを検知すると、その他の設定(図12参照)においてEEPROM設定許可の項目49が「0(禁止)」に設定されていれば、図16に示すEEPROM設定画面を表示し、その他の設定(図12参照)においてEEPROM設定許可の項目49が「1(許可)」に設定されていれば、図17に示すEEPROM設定画面を表示する。図16に示すEEPROM設定画面では、制御部30は、トルクセンサ部4内の定格情報等の内容を表示する。
【0038】
一方、図17に示すEEPROM設定画面では、制御部30は、トルクセンサ部4内の定格情報等の内容を表示部17の左部に表示するとともに、キー表示部48を表示部17の右部に表示する。EEPROM設定画面では、トルク計測装置1の使用者又は製造者は、トルクセンサ部4に関する情報として書き込みたい又は書き換えたい項目(例えば定格47)を選択して、キー表示部48を操作することにより、トルクセンサ部4に関する情報を変更することができる。なお、このEEPROM設定において誤って値を変更した場合、トルク計測装置1によって正確なトルク測定をすることができなくなる虞れがあるため、制御部30は、EEPROM9の設定を変更する際には図示しないパスワード入力画面を表示して、使用者等に対してパスワードの入力を求めるよう構成されている。このように、実施形態のトルク計測装置1では、コントロール部13の入力操作部18を操作することにより、コントロール部13に接続されたトルクセンサ部4が有するEEPROM9内の定格情報等記憶部10に情報を書き込んだり、書き換えたりすることができる。したがって、トルク計測装置1の製造時に、トルクセンサ部4が有するEEPROM9に情報を書き込む際、ROMライタなどの装置が別途必要ないので、EEPROM9への書き込み作業が容易となっている。
【0039】
なお、制御部30は、メインメニュー画面(図7参照)において、トルク計測装置1の使用者がプリンタ出力釦54に触れたことを検知すると、図18に示すプリンタ出力画面を表示する。プリンタ出力画面では、トルク計測装置1の使用者は、印刷したいデータNo.(ナンバー)を入力するなどして、トルク計測装置1による計測データを、コントロール部13に接続したプリンタ45により印刷することができる。また、メインメニュー画面(図7参照)において、トルク計測装置1の使用者がUSB出力釦56に触れたことを検知すると、図19に示すUSB出力画面が表示される。USB出力画面では、トルク計測装置1の使用者は、トルク計測装置1による全計測データや最新の波形データを、コントロール部13に接続したUSBメモリ46に書き込むことができる。
【0040】
また、制御部30は、メインメニュー画面(図7参照)において、トルク計測装置1の使用者が自己診断釦55に触れたことを検知すると、図20に示す自己診断画面を表示する。自己診断画面では、制御部30は、接続されたトルクセンサ部4による計測を行う際の各計測パラメータ(締め付けトルクや締めあがり角度)の基準値(換言すれば、原点となる値)を表示するとともに、強制零倍チェックのON釦70を表示する。ON釦70に触れると、制御部30は、所定のキャリブレーション処理を実行する。
【0041】
4.実施形態のトルク計測装置の効果
以上説明したように、実施形態のトルク計測装置1は、ねじ締め機に取り付けられ該ねじ締め機の締め付けトルクを少なくとも計測可能なトルクセンサ部4を備えるとともに、表示部17と、トルクセンサ部4の性能を示す定格情報(トルクセンサ部情報)が記憶されるRAM31(第1記憶部)とを有して、トルクセンサ部4により計測された計測結果をRAM31に記憶された定格情報に基づいて処理し表示部17に表示するコントロール部13を備えている。トルクセンサ部4は、EEPROM9(第2記憶部)を備え、コントロール部13は、操作可能な入力操作部18を備え、入力操作部18を操作することにより、定格情報等(トルクセンサ部情報)をEEPROM9へ書き込み可能に構成されている。
【0042】
実施形態のトルク計測装置1によれば、コントロール部13の入力操作部18を操作することにより、定格情報等を、トルクセンサ部4のEEPROM9へ書き込むことができる。したがって、別途書き込み装置(ROMライタ)を用いることなく、トルク計測装置1の製造時等において、トルクセンサ部4のEEPROM9に対して、定格情報等のトルクセンサ部情報の入力作業を容易に行うことができる。
【0043】
また、実施形態のトルク計測装置1は、トルク計測装置1の作動時(電源ON時)であって、EEPROM9(第2記憶部)に定格情報(トルクセンサ部情報)が記憶されているときは、コントロール部13は、EEPROM9に記憶されている定格情報を、EEPROM9から読み出してRAM31(第1記憶部)に記憶する。
【0044】
トルク計測装置1は、RAM31に記憶された定格情報に基づいてトルクセンサ部4により計測された計測結果を処理するところ、実施形態のトルク計測装置1によれば、トルク計測装置1の作動時(電源ON時)に、コントロール部13により、定格情報がEEPROM9から読み出されてRAM31に書き込まれるため、トルク計測装置1の使用者が自ら、コントロール部13のRAM31にトルクセンサ部4の定格情報を入力する必要がない。
【0045】
また、実施形態のトルク計測装置1では、コントロール部13は、EEPROM9(第2記憶部)から読み出してRAM31(第1記憶部)に記憶した定格情報(トルクセンサ部情報)に基づいて、トルク計測装置1の作動時に、所定のキャリブレーション処理を行う。
【0046】
トルク計測装置1は、トルクセンサ部4の定格情報に基づいたキャリブレーション処理がなされていなければ、正しい計測をすることができないところ、実施形態のトルク計測装置1によれば、トルク計測装置1の作動時に、コントロール部13によりEEPROM9から読み出されてRAM31に記憶された定格情報に基づいたキャリブレーション処理がなされるので、キャリブレーション処理がなされないまま、誤って計測してしまう虞れを低減できる。
【0047】
5.変更例
以下、変更例について説明する。なお、変更例の説明において、実施形態のトルク計測装置1と同様の構成については、実施形態のトルク計測装置1と同様の符号を付して説明を省略する。
【0048】
実施形態のトルク計測装置1では、第2記憶部は、EEPROM9を用いて構成したが、書き換え可能なメモリであれば、SDメモリカード(商標または登録商標)等、他の記憶媒体を用いて構成してもよい。
【0049】
また、実施形態のトルク計測装置1では、表示部は、タッチパネル付きディスプレイ16の表示部17を用いて構成したが、ドットマトリクス表示器など他の表示器を用いて構成してもよい。また、実施形態のトルク計測装置1では、入力操作部は、タッチパネル付きディスプレイ16が入力操作部18を備える構成としたが、押しボタンスイッチを並べて構成するキーボードなど、他の入力装置を用いて構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…トルク計測装置
4…トルクセンサ部
9…EEPROM(第2記憶部)
13…コントロール部
16…タッチパネル付きディスプレイ
17…表示部
18…入力操作部
31…RAM(第1記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ締め機に取り付けられ該ねじ締め機の締め付けトルクを少なくとも計測可能なトルクセンサ部を備えるとともに、
表示部と、前記トルクセンサ部の性能を示すトルクセンサ部情報が記憶される第1記憶部とを有して、前記トルクセンサ部により計測された計測結果を前記第1記憶部に記憶された前記トルクセンサ部情報に基づいて処理し前記表示部に表示するコントロール部を備えたトルク計測装置において、
前記トルクセンサ部は、第2記憶部を備え、
前記コントロール部は、操作可能な入力操作部を備え、該入力操作部を操作することにより、前記トルクセンサ部情報を前記第2記憶部へ書き込み可能に構成されていることを特徴とするトルク計測装置。
【請求項2】
当該トルク計測装置の作動時であって、前記第2記憶部に前記トルクセンサ部情報が記憶されているときは、前記コントロール部は、前記第2記憶部に記憶されている前記トルクセンサ部情報を、前記第2記憶部から読み出して前記第1記憶部に記憶することを特徴とする請求項1に記載のトルク計測装置。
【請求項3】
前記コントロール部は、前記第2記憶部から読み出して前記第1記憶部に記憶した前記トルクセンサ部情報に基づいて、前記トルク計測装置の作動時に、所定のキャリブレーション処理を行うことを特徴とする請求項2に記載のトルク計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−163364(P2012−163364A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21959(P2011−21959)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】