説明

トレイ及び画像記録装置

【課題】装置に挿抜可能なトレイにおいて、上面に設けられた蓋のがたつきを低減して、トレイを容易に操作できる手段を提供する。
【解決手段】上側に開口73を有し、シートが開口73を通じて収容可能なトレイ本体20と、開口73を覆う排紙トレイ23と、第1端128側が左右方向9を軸としてトレイ本体20に回動可能に連結され、第2端129側が左右方向9を軸として排紙トレイ23の後側に回動可能に連結され、排紙トレイ23を開口73を覆った閉塞状態と開口73を開放した開放状態とに支持するリンク130とを備える。リンク130は、排紙トレイ23が閉塞状態であるときの第1姿勢と、排紙トレイ23が開放状態であるときの姿勢であり第2端129が第1姿勢のときよりも後側に位置する第2姿勢との間でトレイ本体20に対して回動可能である。また、第1姿勢でリンク130をトレイ本体20に固定するロック部100を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを収容可能なトレイ、及び当該トレイを備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内部においてシートを搬送可能な装置がある。当該装置の一例としては、複写機やプリンタなどの画像記録装置がある。画像記録装置には、記録部に給送するためのシートを収容可能であって画像記録装置に対して進退動可能なトレイを備えるものがある。特許文献1には、シート収容部及び蓋を有する給紙トレイが開示されている。シート収容部の上側には開口が設けられており、開口を通じてシート収容部内にシートが収容される。蓋としての排紙トレイが、開口のうち、シート収容部のシート給送向きの上流側の領域を覆うようにシート収容部の上側に配置されている。なお、開口のうち、シート給送向き下流側の領域は、シート収容部に収容されたシートを当該装置の内部へ給送するためにシートに圧接されるローラが配置されるため開放されている。
【0003】
当該給紙トレイにおいては、排紙トレイは、リンクの一端に回動可能に連結されている。また、リンクの他端は、給紙トレイに回動可能に連結されている。これにより、排紙トレイを給紙トレイに対して開いた際に、排紙トレイは、給紙トレイからリンクを介してより上方に位置するようになり、トレイにシートを収容させやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−083951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蓋とトレイとがリンクを介して連結された場合、蓋を開いた状態で、さらにリンクが蓋が閉じられているときの状態から回動していると、蓋がトレイに対して不安定となってしまう。詳細には、リンクは、その両端において蓋及びトレイと回動可能に連結され、いずれとも固定されていない状態であるために、リンクが蓋に連動して回動した状態、すなわち蓋を大きく開いた状態では、リンクが蓋及びトレイに対してがたついてしまう。リンクががたつくことによって、リンクと回動可能に連結されている蓋もトレイに対してがたつくこととなり、ユーザがトレイ及び蓋を開いて用紙を収容する等操作する際に、操作しにくくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上側の開口を通じてシートが収容可能で当該開口に蓋が設けられ、シートを搬送可能な装置に挿抜可能なトレイにおいて、蓋のがたつきを低減して、トレイの操作を容易に行うことができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、シートを搬送可能な装置に給送されるシートを収容するトレイである。上記トレイは、上側に開口を有し、上記装置に給送されるシートが上記開口を通じて内部に収容可能なトレイ体と、上記開口のうち上記給送向き下流側の領域を除く領域を覆う蓋と、第1端側が、上記給送向きに直交しシートの載置面に沿った幅方向を軸として上記トレイ体に回動可能に連結され、上記第1端と反対側の第2端側が、上記幅方向を軸として上記蓋の上記給送向き下流側に回動可能に連結され、上記蓋を、上記開口を覆った閉塞状態と、上記開口を開放した開放状態とに支持するリンクと、を備える。上記リンクは、上記蓋が上記閉塞状態であるときの姿勢である第1姿勢と、上記蓋が上記開放状態であるときの姿勢であり上記第2端が上記第1姿勢のときよりも上記給送向き下流側に位置する第2姿勢と、の間で上記トレイ体に対して回動可能である。上記トレイは、上記第1姿勢で上記リンクを上記トレイ体に固定するロック部を備えている。
【0008】
上述の構成においては、リンクは、ロック部によって第1姿勢でトレイ体に固定可能である。これにより、リンクが第1姿勢においてトレイ体に対してがたつくことが、低減できる。すると、リンクと回動可能に連結されている蓋がトレイ体に対してがたつくことが、低減できる。
【0009】
(2) 上記リンクは、上記第1端から上記給送向き上流側に延出され、かつ上側に屈曲されて上記第2端まで延出されている。
【0010】
給送向き上流側からトレイ体にシートを収容する際には、蓋が開けられた際にトレイ体と蓋との間が大きい程、シートを収容し易い。トレイ体と蓋との間を大きくするために、リンクを長くすることが考えられる。リンクを長くすると、蓋が開いた状態において、シートがトレイ体へ挿入される部分の高さが高くなる。これにより、蓋が給送向き上流側へ配置されていても、トレイ体へシートを収容し易くなる。しかし、リンクが長くなると、リンクの強度が低下してリンクが破損する可能性が高くなる。また、リンクが長くなると、リンクのがたつきが大きくなってしまう。
【0011】
そこで、上述の構成においては、リンクが屈曲されている。そのため、リンクにおいて、屈曲部分からリンク両端へ延びている部分のそれぞれの長さを、リンクが真っ直ぐな場合の両端間の長さよりも短くできる。これにより、リンクの強度の低下を抑えることができる。蓋がトレイ体に対して開かれたときに、第1端から屈曲部分までが上向きに延びた状態になると、屈曲部分から第2端までが先端側に延びた状態となる。つまり、第2端に連結されている蓋は、給送向き下流側に位置する。これにより、蓋が開けられた際に開口の開放されている部分の面積を大きくでき、シートを収容し易くなる。以上より、リンクが屈曲されることにより、強度を下げることなく、しかも蓋が開放されたときにシートをトレイ体に収容し易くできる。
【0012】
(3) 上記リンクは、上記第1端から上記給送向き上流側に延出され、かつ上側に湾曲されて上記第2端まで延出されている。
【0013】
このように、リンクが湾曲されている場合であっても、上述の(2)におけるリンクが屈曲されている場合と同様に、リンクの強度の低下を抑えることができ、また、シートがトレイ体へ挿入される空間を大きくすることができる。
【0014】
(4) 上記ロック部は、上記リンクに形成された係合部と、上記トレイ体に形成された被係合部と、で形成され、上記係合部は、上記第1端と上記第2端との間の位置に設けられている。第1端と第2端との間にロック部が配置されると、ロック部の形成が容易となる。
【0015】
(5) 上記係合部及び上記被係合部のいずれか一方には、他方を誘い込むための誘い込み部が形成されている。この構成により、係合部と被係合部とが円滑に係合できる。
【0016】
(6) 上記トレイ体は、上記リンクの上記幅方向における端部と当接し、上記リンクの上記幅方向への移動を制止する第1ストッパを備えている。
【0017】
リンクは、トレイ体及び蓋のいずれとも固定されていないために、がたつきやすい。そして、リンクは、回動方向だけでなく、上下左右あらゆる方向にがたつくおそれがある。上述の構成においては、トレイ体が第1ストッパを備えているため、リンクの幅方向への移動が制止される。つまり、リンクの幅方向へのがたつきが防止可能である。
【0018】
(7) 上記トレイ体は、上記リンクが上記第2姿勢をとった状態で、上記リンクが所定量回動したときに当接し、上記リンクの上記トレイ体に対する上記給送向き下流側への回動を制止する第2ストッパを備えている。
【0019】
リンクが必要以上に回動可能であると、ユーザが蓋を操作させづらくなるおそれがある。また、回動されたリンクの第2端側がトレイ体に衝突して、リンクが破損するおそれもある。しかし、上述の構成においては、第2ストッパによってトレイ体の回動が所定位置で制止されるため、蓋の操作性を良くするとともに、リンクの破損を防止できる。
【0020】
(8) 上記トレイ体は、シートを収容可能な第1収容部と、上記第1収容部に対して上記給送方向上流側へ伸長及び上記給送方向下流側へ収縮可能にスライドし、上記第1収容部に対して伸長された状態で上記第1収容部と協働してシートを収容可能な第2収容部と、で構成されている。上記蓋は、上記開口のうち上記第1収容部の上側に位置する領域を覆う第1蓋部と、上記第1蓋部に対して伸縮可能にスライドし、上記開口のうち上記第2収容部が上記第1収容部に対して伸長した状態で上記第2収容部の上側に位置する領域を覆う第2蓋部と、で構成されている。上記第1蓋部は、上記第2蓋部が収縮可能な状態において、上記リンクに収縮向き上流側から当接し、上記第1蓋部の回動を規制する第1当接部を備えている。
【0021】
リンクが第1当接部と当接されていると、リンクの回動は第1当接部によって制止される。また、第2蓋部が第1蓋部に対して収縮可能な状態であるとき、第1蓋部に設けられた第1当接部はリンクの収縮向き上流側の面と当接している。よって、当該収縮時に、蓋がリンクに対して誤って不要な方向に回動してしまうことが防止可能である。
【0022】
(9) 上記蓋は、上記開放状態から上記閉塞状態へ回動する過程において、上記リンクの上記第2姿勢から上記第1姿勢に向かう回動向き上流側から上記リンクに当接し、上記蓋の回動に連動して上記リンクを上記第1姿勢に回動させる第2当接部を備えている。
【0023】
上述の構成においては、蓋の開放状態から閉塞状態への回動過程において蓋と第2当接部が当接すると、リンクは蓋の回動に追随して回動する。つまり、蓋を回動させるだけでリンクを自動的に第1姿勢に姿勢変化させることができるため、トレイの操作性を向上させることができる。
【0024】
(10) 上記蓋は、上記ロック部の固定を解除し上記リンクを回動させるために操作される操作部を備えている。
【0025】
ユーザは、蓋に操作部が形成され、その操作部を操作することによって、リンクの回動軸から遠い位置でリンクのロックを解除し容易に回動させることができる。つまり、操作部を備えることによって、トレイの操作性を向上させることができる。
【0026】
(11) 本発明は、上記トレイと、上記トレイから給送されたシートに画像を記録する記録部と、を備えた画像記録装置として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明においては、リンクが、ロック部によって第1姿勢でトレイに固定可能である。これにより、リンクが第1姿勢においてトレイに対してがたつくことが、低減できる。すると、リンクと回動可能に連結されている蓋がトレイに対してがたつくことが低減でき、トレイの操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、リンク130が第1姿勢で排紙トレイ23が閉塞状態である給紙トレイ22であり、(A)には斜視図が示されており、(B)には縦断面図が示されている。
【図4】図4は、リンク130が第1姿勢で排紙トレイ23が開放状態である給紙トレイ22であり、(A)には斜視図が示されており、(B)には縦断面図が示されている。
【図5】図5は、リンク130が第2姿勢で排紙トレイ23が開放状態である給紙トレイ22であり、(A)には斜視図が示されており、(B)には縦断面図が示されている。
【図6】図6は、給紙トレイ22を正面斜め上から見た斜視図である。
【図7】図7は、排紙トレイ23が開放状態から閉塞状態に移行する過程における給紙トレイ22の縦断面図である。
【図8】図8は、第2収容部72が第1収容部71に対して伸長した状態における給紙トレイ22の縦断面図である。
【図9】図9は、変形例2における給紙トレイ22の縦断面図であり、(A)にはリンク130が第1姿勢である状態が示されており、(B)にはリンク130が第2姿勢である状態が示されている。
【図10】図10は、変形例2におけるリンク130の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。また、給紙トレイ21,22については、複合機10に装着された状態(図1の状態)を基準として、上下方向7、前後方向8及び左右方向9を定義する。
【0030】
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、上部にスキャナ部12、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11(本発明の装置の一例、及び当該装置としての画像記録装置の一例)が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、プリント機能以外の機能の有無は任意である。
【0031】
プリンタ部11の正面側に開口13が形成されている。プリンタ部11は、給紙トレイ21,22(本発明のトレイの一例)と、記録部40(本発明の記録部の一例、図2参照)とを備えている。プリンタ部11は、開口13を通じて、給紙トレイ21、22を前後方向8に挿抜可能である。なお、プリンタ部11は、給紙トレイ21,22が前後方向8にスライドしないように構成されていてもよい。例えば、給紙トレイ21,22がプリンタ部11に固定されていてもよい。また、給紙トレイ21,22は、プリンタ部11から中途まで引き出し可能な構成であってもよい。
【0032】
給紙トレイ21,22には、記録用紙50(本発明のシートの一例)が収容される(図2参照)。プリンタ部11においては、記録用紙50が、給紙トレイ21又は給紙トレイ22からプリンタ部11内へ選択的に供給される。供給された記録用紙50は、記録部40によって画像が記録された後に給紙トレイ22の上面23に排出される。上面23は、排紙トレイ23(本発明の蓋の一例)として機能する。
【0033】
図1及び図2に示されるように、給紙トレイ21と給紙トレイ22とは、給紙トレイ22を上側として上下二段に配置されている。2つの給紙トレイ21,22が設けられることによって、それぞれにサイズや紙種が異なる記録用紙50が保持され得る。給紙トレイ21,22については後述される。
【0034】
[搬送路17,18,19及び供給部28,38]
図2に示されるように、給紙トレイ22の傾斜板24の上側には、湾曲状に形成された搬送路18が設けられている。プリンタ部11に給紙トレイ22が装着されると、傾斜板24が搬送路18の下方に配置され、かつ給紙トレイ22の上側に第1供給部28が配置される。第1供給部28は、給紙ローラ25、アーム26及び軸27を有している。給紙ローラ25は、アーム26の先端側に回転可能に設けられている。アーム26は、プリンタ部11の筐体に支持された軸27に回動可能に設けられている。アーム26は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙トレイ22側へ回動付勢されている。第1供給部28は、給紙トレイ22から記録用紙50をピックアップして搬送路18に給送する。第2供給部38は、第1供給部28と同様の構成である。つまり、第2供給部38は、給紙ローラ35、アーム36及び軸37を有しており、給紙トレイ21から記録用紙50をピックアップして搬送路17に給送する。
【0035】
プリンタ部11の内部には、搬送路17及び搬送路18と連続する搬送路19が設けられている。搬送路19は、搬送路17又は搬送路18に沿って搬送された記録用紙50が搬送される経路であり、搬送路17と搬送路18とが合流する位置から複合機10の正面側へ向けて排紙トレイ23の上方まで延出されている。
【0036】
[記録部40]
図2に示されるように、記録部40は、記録ヘッド42を搭載して主走査方向(図2の紙面に垂直な方向)へ往復移動するキャリッジ41を備えている。記録ヘッド42には、インクカートリッジ(不図示)からシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。記録ヘッド42は、その下面に設けられたノズルから、各インクを微小なインク滴として吐出する。キャリッジ41が主走査方向へ往復動することにより、記録ヘッド42が記録用紙に対して走査され、記録部40の下方に記録部40と対向して設けられているプラテン43上を搬送される記録用紙に画像が記録される。プラテン43は、搬送路19に沿って搬送される記録用紙を支持する部材である。
【0037】
[搬送ローラ対59及び排出ローラ対64]
図2に示されるように、記録部40よりも記録用紙50の搬送向き6の上流側に搬送ローラ対59が設けられている。搬送ローラ対59は、搬送ローラ60及びピンチローラ61からなる。搬送ローラ60は、搬送路19の上側に配置されており、搬送モータ(不図示)からの駆動力を受けて回転する。ピンチローラ61は、搬送路19を挟んで搬送ローラ60の下側に回転自在に配置されており、搬送ローラ60へ向けてバネによって付勢されている。
【0038】
記録部40よりも記録用紙50の搬送向き6の下流側に排出ローラ対64が設けられている。排出ローラ対64は、排紙ローラ62及び拍車63からなる。排紙ローラ62は、搬送路19の下側に配置されており、上記搬送モータからの駆動力を受けて回転する。拍車63は、搬送路19を挟んで排紙ローラ62の上側に回転自在に配置されており、排紙ローラ62へ向けてバネによって付勢されている。
【0039】
給紙トレイ21または給紙トレイ22から第1供給部28または第2供給部38によって前側から後側の向き(本発明の給送向きに相当)に給送された記録用紙50は、搬送ローラ対59によって記録部40へ案内され、記録部40で画像が記録される。その後、排出ローラ対64によって排紙トレイ23に排出される。
【0040】
[給紙トレイ21,22]
図1及び図2に示されるように、給紙トレイ21,22は、プリンタ部11に装着された状態において、記録部40の下方に配置されている。給紙トレイ21,22は、傾斜板24が設けられている側を先端として、後向きに開口13に挿し込まれることでプリンタ部11に装着される(図1及び図2の状態)。これにより、給紙トレイ21,22に収容された記録用紙50がプリンタ部11の搬送路17,18へ供給可能となる。給紙トレイ21,22は、上記先端と反対側の後端から前向きに開口13から引き出されることでプリンタ部11から取り出される。これにより、給紙トレイ21,22への記録用紙50の補充が可能となる。給紙トレイ21及び給紙トレイ22は、同様の構成を有している。このため、以下において、給紙トレイ22の構成について説明し、給紙トレイ21の構成についてはその説明を省略する。
【0041】
図3に示されるように、給紙トレイ22は、平面視で挿抜方向(本実施形態では前後方向8)へ長い矩形の皿状に概ね形成されている。給紙トレイ22は、第1収容部71(本発明の第1収容部の一例)及び第2収容部72(本発明の第2収容部の一例)よりなるトレイ本体20(本発明のトレイ体の一例)と、排紙トレイ23(本発明の蓋の一例)とを備えている。
【0042】
[第1収容部71]
図3に示されるように、第1収容部71は、記録用紙50が載置される本体底板75と、本体底板75の後端から立設された傾斜板24と、本体底板75の左右方向9(本発明の幅方向に相当)の両端から立設された第1側壁81と、を備えている。第1収容部71は、上面が開放されている。換言すると、第1収容部71は、上面に開口73(図4参照)を有している。記録用紙50は、開口73を通じて給紙トレイ22の内部に収容される。換言すると、記録用紙50は本体底板75に載置される。
【0043】
傾斜板24は、第1収容部71の左右方向9に長い板状部材である。給紙トレイ22に収容されている記録用紙50の先端が傾斜板24に当接すると、その先端が傾斜板24に沿って斜め上方の搬送路18へ案内される(図2参照)。第1側壁81は、前後方向8へ延びるように設けられている。
【0044】
図4に示されるように、第1側壁81の内側には、側端ガイド111が前後方向8に並べられている。側端ガイド111は、断面が逆U字形状に構成されている。側端ガイド111に、第2収容部72の第2側壁98が挿入される。これにより、後述する第2収容部72の第1収容部71に対するスライドの方向が、前後方向8に規制される。
【0045】
[第2収容部72]
図8に示されるように、第2収容部72は、記録用紙50が載置される拡張底板82と、拡張底板82の前端から立設された前板83と、拡張底板82の左右方向9の両端から立設されて前後方向8へ延設された一対の第2側壁98とを備えている。なお、図8において、拡張底板82は、第2側壁98よりも左側(図8の紙面下側)であり、図8においては見えないため、指示線が破線で示されている。
【0046】
第2収容部72は、第1収容部71に対してスライドすることにより、第1収容部71に対して伸縮可能に構成されている。第2収容部72のスライド方向は、上述したように、前後方向8、つまり記録用紙50の給送方向に規制されている。給紙トレイ22に大きいサイズの記録用紙50が収容される場合、第2収容部72は、第1収容部71に対して伸長された位置(図8参照)にスライドされる。これにより、記録用紙50の載置面が伸長され、第2収容部72は、第1収容部71と協働して、大きいサイズの記録用紙50を収容可能となる。一方、給紙トレイ22に小さいサイズの記録用紙50が収容される場合、第2収容部72は、第1収容部71に対して収縮された位置(図3(B)参照)にスライドされる。これにより、記録用紙50の載置面が収縮される。
【0047】
[排紙トレイ23]
図3及び図8に示されるように、排紙トレイ23は、第1蓋部95(本発明の第1蓋部の一例)及び第2蓋部96(本発明の第2蓋部の一例)を有する。
【0048】
第1蓋部95は、平面視で左右方向9へ長い矩形に概ね形成されている。図3に示されるように、第2蓋部96は、第1蓋部95に覆い被さるように設けられている。第1蓋部95の上面には、前後方向8に沿ってレール(不図示)が形成され、第2蓋部96の下面の当該レールに対向する位置には、レール溝(不図示)が形成されている。レールとレール溝が嵌合されることで、第2蓋部96は、第1蓋部95に対して前向きへスライドされ、図3に示される状態から図8に示される状態に伸長される。また、第2蓋部96は、第1蓋部95に対して後向きへスライドされ、図8に示される状態から図3に示される状態に収縮される。つまり、第2蓋部96は、第1蓋部に対して伸縮可能である。
【0049】
図3に示されるように、第1蓋部95は、後述するリンク130を介して第1収容部71と連結されている。リンク130は、第1側壁81から上方へ突設されており、突端付近に第1支持孔138が設けられている。また、本実施形態においては、リンク130は、第1収容部71における前後方向8の概ね中央から突設されている。第1蓋部95の後端の両側には、左右方向9の外側へ突出する軸91が設けられている。軸91は、第1支持孔138に挿通される。これにより、第1蓋部95は、リンク130によって回動可能に連結され、軸91を中心として、図3(B)の矢印140の方向に回動される。
【0050】
図4に示されるように、第2蓋部96の下面における前端かつ左右方向9の両側には、第1凹部92が設けられている。第1凹部92は、第2収容部72の第2側壁98の上面に設けられている第1凸部74と対応する位置及び形状に形成されている。トレイ本体20に対して排紙トレイ23が倒伏され、図4に示される状態から図3に示される状態になることにより、第1凸部74が第1凹部92に収容される。この状態で、第2蓋部96は、第2側壁98に支持される。これにより、図3に示された状態において、第2収容部72が第1収容部71に対してスライドされると、これに連動して第2蓋部96が第1蓋部95に対してスライドされ、図8に示された状態となる。
【0051】
図3に示されるように、排紙トレイ23がトレイ本体20に対して倒伏された状態においては、トレイ本体20の上面である開口73(図4参照)のうちリンク130よりも前側の領域は、排紙トレイ23によって覆われている。つまり、排紙トレイ23は、開口73のうち記録用紙50の給送向きの下流側の領域を除く領域を覆う。換言すると、排紙トレイ23は、トレイ本体20の上面の一部を覆う。この状態が本発明の閉塞状態に相当する。なお、排紙トレイ23は、トレイ本体20の上面の全部を覆うように構成されていてもよい。
【0052】
図8に示されるように、第2収容部72が第1収容部71に対して伸長した状態であって、排紙トレイ23が第1収容部71及び第2収容部72に対して倒伏された状態においては、第1収容部71の上面のうちリンク130よりも前側の領域は、第1蓋部95によって覆われている。また、第2収容部72の上面の領域は、第2蓋部96によって覆われている。この状態も本発明の閉塞状態に相当する。
【0053】
また、排紙トレイ23が、図3に示された状態から矢印144の向きに回動された状態、或いは図8に示された状態から矢印144の向きに回動された状態においては、トレイ本体20(第1収容部71及び第2収容部72)の上面である開口73(図4参照)が開放される。この状態が本発明の開放姿勢に相当する。
【0054】
[リンク130]
図3〜5、図7、図8に示されるように、リンク130は、棒状であり、かつ略中央において略垂直に屈曲された概ねL字形状の部材である。
【0055】
リンク130は、第1側壁81の内側、つまり本体底板75の右端から立設された第1側壁81の左側と、本体底板75の左端から立設された第1側壁81の右側とに配置される。このとき、リンク130は、左側から見たときに逆L字形状に見え、右側から見たときにL字形状に見えるように配置される。なお、図3〜5において、リンク130は左側から右側に見られているため、逆L字形状に見える。つまり、図3〜5に示されるように、リンク130は、第1端128(本発明の第1端に相当)から前側に延出され、中央部127において上側に屈曲されて第2端129(本発明の第2端に相当)まで延出されている。なお、リンク130は、屈曲した位置において、左右方向9の中央側によるよう形成されている。すなわち、リンク130に支持される箇所の排紙トレイ23の左右方向9における長さは、トレイ本体20よりも短く形成されており、リンク130は、上側だけでなく左右側にも屈曲している。
【0056】
図3〜5、及び図7のようにリンク130が配置された状態において、リンク130の第1端128に、外側に突出した軸131、つまり左右方向9に延びた軸131が設けられている。また、第1側壁81の前後方向8における中央やや後側、かつ上下方向7における上端近傍に、第2支持孔139が設けられている。そして、軸131が第2支持孔139に挿通されることにより、リンク130は、第1側壁81の内側において、第1側壁81によって回動可能に連結、つまり支持される。
【0057】
一方、上述したように、リンク130の突端付近、つまり第2端129に、第1支持孔138が設けられている。そして、左右方向9に延びた軸91が第1支持孔138に挿通されることにより、第1蓋部95は、リンク130によって、閉塞状態及び開放状態に回動可能となるように連結、つまり支持される。
【0058】
[ロック部100]
図3に示されるように、リンク130は、以下で説明するロック部100によって、図3に示される姿勢(本発明の第1姿勢に相当)で、第1収容部71に固定される。
【0059】
図5及び図8に示されるように、リンク130の中央部127に、外側に突出した、つまり左右方向9に延びた突起132(本発明の係合部の一例)が設けられている。また、第1側壁81において、第2支持孔139の前方に、孔141(本発明の被係合部の一例)が設けられている。第1側壁81に形成された第2支持孔139から孔141の距離は、リンク130に形成された軸131から突起132の距離と同一である。また、孔141の形状は、突起132の形状と相対する形状である。さらに、突起132の先端は、第1側壁81の内側面に対して左右方向9において外側に位置するよう形成されている。以上より、リンク130が図3に示される姿勢であるときに、突起132と孔141とが嵌合され、リンク130が第1収容部71の第1側壁81に固定される。
【0060】
本実施形態において、突起132は、リンク130に近接している程に太く、リンク130から離間して突端に近付く程に細くなる。つまり、突起132は、先細り形状であり、リンク130から矩形状の2つの面が形成され、それぞれの面が突端側にて合流する。従って、前後方向8から見ると、2つの傾斜面のそれぞれの一辺と側壁とによって、三角形が形成されることとなる。突起132の矩形状の2つの面は、突端側に向かって傾斜面(本発明の誘い込み部の一例)を形成している。突起132の側面が傾斜面となっていることにより、突起132は、孔141に嵌り易くなる。なお、本発明の誘い込み部は、このような構成に限らず、例えば、孔141の側面が傾斜面を形成していてもよい。また、傾斜面は、それぞれ同じ形状でなくても良い。また、リンク130の軸131を中心とした回動の軌跡に合わせた傾斜面となっていても良い。
【0061】
[第3側壁84]
図6に示されるように、トレイ本体20は、第1側壁81の内側、つまり右側の第1側壁81の左側、及び左側の第1側壁81の右側に、第3側壁84(本発明の第1ストッパの一例)を備えている。第3側壁84は、第1側壁81と所定間隔を空けて、第1側壁81と平行に配置されている。ここで、所定間隔は、リンク130の左右方向9の幅と略同一である。
【0062】
リンク130が図3に示される姿勢(図3参照)である場合、図6に示されるように、リンク130は、第1側壁81と第3側壁84とに挟まれた状態となる。詳細には、少なくともリンク130の第1端128から中央部127までが、第1側壁81と第3側壁84とに挟まれた状態となる。これにより、リンク130の左右方向9の両側面が、第1側壁81及び第3側壁84と当接する。
【0063】
[第1当接面99]
図8に示されるように、第1蓋部95は、図3に示される状態においてリンク130の前側となる面133に対して、前側(第2蓋部96が収縮される向きの上流側)から当接可能な第1当接面99(本発明の第1当接部の一例)を備えている。ここで、第1当接面99は、第2蓋部96が第1蓋部95に対して伸縮可能な状態において、面133と当接可能となっている。当該伸縮可能な状態は、例えば、図3に示されるように、第2蓋部96が第1蓋部95に対して収縮しており且つ伸長可能な状態、或いは、図8に示されるように、第2蓋部96が第1蓋部95に対して伸長しており且つ収縮可能な状態である。
【0064】
[リンク130の第1姿勢から第2姿勢への姿勢変化]
以下、排紙トレイ23の開閉に伴うリンク130の姿勢変化について説明する。なお、以下においては、第2収容部72が第1収容部71に対して収縮した状態である場合が説明されるが、第2収容部72が第1収容部71に対して伸長した状態であっても、リンク130は収縮した状態の場合と同様に姿勢変化する。
【0065】
図3に示されるように、排紙トレイ23がトレイ本体20に対して倒伏された状態において、排紙トレイ23は、トレイ本体20の上面の一部を覆っている。この状態において、第1凸部74(図4参照)が第1凹部92(図4参照)に収容されている。これにより、排紙トレイ23は、トレイ本体20によって支持される。また、排紙トレイ23の後端部はリンク130と連結されている。つまり、排紙トレイ23は、リンク130及びトレイ本体20によって、閉塞状態に支持されている。
【0066】
また、排紙トレイ23が閉塞状態であるとき、リンク130は、ロック部100によって、左側から見て逆L字状となる姿勢に固定される。リンク130の当該姿勢、つまり図3に示される姿勢が、本発明の第1姿勢に相当する。
【0067】
この状態において、排紙トレイ23がユーザによって軸91を中心として矢印144の向きに回動されると、図4に示される状態となる。つまり、排紙トレイ23が、後側に回動されて上面と下面とが反転された結果、トレイ本体20の開口73が開放された状態となる。つまり、排紙トレイ23は、閉塞状態から開放状態となる。
【0068】
図4に示されるように、排紙トレイ23が開放状態となると、上下方向7及び左右方向9に拡がる面97(本発明の操作部の一例)が、給紙トレイ22の前方から視認可能な状態となる。なお、排紙トレイ23が閉塞状態の場合、面97は排紙トレイ23の後側に位置するため、給紙トレイ22の前方から視認できない。
【0069】
面97は、図4に黒色で示されるように、左右方向9において、排紙トレイ23の両端部に設けられている。ここで、ユーザが面97を後向きに押すと、排紙トレイ23に後向きの力がかかる。これにより、排紙トレイ23と連結されているリンク130にも後向きの力がかかる。この後向きの力によって、リンク130が軸131を中心に回動するため、突起132と孔141との嵌合が外れるようリンク130または第1側壁81に力が作用する。すなわち、リンク130と第1側壁81とが、左右方向9において離れる方向に力が作用する。そして、リンク130または第1側壁81が変形、もしくは移動することにより、突起132(図5参照)と孔141(図5参照)との嵌合が解除される。つまり、リンク130が第1収容部71に固定された状態が解除される。
【0070】
すると、突起132が第1側壁81の内側面と摺動しながら、リンク130は、第1収容部71に対して、軸131を中心として、図4の矢印142の向きに回動される。これにより、リンク130は、図5に示される姿勢となる。つまり、リンク130において、他方の端部が、一方の端部よりも後方に位置する状態となる。また、リンク130が図5に示される姿勢をとっている場合、排紙トレイ23は開放状態を維持している。リンク130の当該姿勢、つまり図5に示される姿勢が、本発明の第2姿勢に相当する。以上より、リンク130は、第1収容部71に対して、第1姿勢から第2姿勢へ回動可能である。なお、リンク130が第2姿勢をとっているときの第2端129の位置は、リンク130が第1姿勢をとっているときの第2端129の位置よりも後側、つまり記録用紙50の給送向きの下流側である。
【0071】
本実施形態において、リンク130は、第2姿勢から更に矢印142(図4参照)の向きへ回動することはできない。例えば、図5に示されるように、第1側壁81において、リンク130と連結されている部分の後方に、内側(右側の第1側壁81の左側、及び左側の第1側壁81の右側)へ突出する制止部材85(本発明の第2ストッパの一例)が設けられている。これにより、リンク130は、第2姿勢まで回動したときに、後側の面が制止部材85と当接する。よって、リンク130は、それ以上、矢印142の向きへ回動されない。
【0072】
[リンク130の第2姿勢から第1姿勢への姿勢変化]
図5に示される状態において、開放状態の排紙トレイ23が、矢印143の向きへ回動されるとする。つまり、排紙トレイ23が、開放状態から閉塞状態へ移行するように回動されるとする。すると、図7に示されるように、当該回動過程において、第1当接面99が、矢印143の向きの上流側から、換言すると当該回動の向きの上流側から面133と当接した状態となる。この状態において、排紙トレイ23が、更に矢印143の向きへ回動されようとすると、第1当接面99が面133を押す。換言すると、第1当接面99から面133の向き(図7の矢印144の向き)へ圧力がかかる。すると、当該圧力によって、リンク130も、軸131を中心として、矢印143の向きへ回動される。つまり、リンク130は、第2姿勢から第1姿勢へ姿勢変化を開始する。その後、リンク130は、排紙トレイ23の回動に追随して回動し、排紙トレイ23が閉塞状態になると、リンク130も第1姿勢となる(図3参照)。リンク130の突起132は、第1側壁81の内側面よりも左右方向9において外側に向かって突出している。そのため、排紙トレイ23またはリンク130が、リンク130が第1姿勢となるよう押し込まれることによって、リンク130と第1側壁81とが左右方向9において離れる方向に力が作用する。これにより、リンク130または第1側壁81が変形、もしくは移動することにより突起132が第1側壁81の内側面と摺動しながら、孔141と嵌合するよう姿勢変化する。以上より、第1当接面99は、本発明の第2当接部の一例である。なお、第1側壁81とリンク130とは、樹脂によって形成されているため、変形可能となっている。
【0073】
なお、本実施形態では、第1当接面99が第1当接部と第2当接部の双方の一例である構成について説明したが、第1当接部に相当する面と、第2当接部に相当する面とが、別個に設けられていてもよい。
【0074】
[実施形態の効果]
上述の実施形態においては、リンク130は、ロック部100によって第1姿勢でトレイ本体20に固定可能である。これにより、リンク130が第1姿勢において第1収容部71に対してがたつくことが、低減できる。すると、リンク130と回動可能に連結されている排紙トレイ23がトレイ本体20に対してがたつくことが、低減でき、給紙トレイ22の操作を容易に行うことができる。
【0075】
前側からトレイ本体20に記録用紙50が収容される際には、排紙トレイ23が開けられた際に、排紙トレイ23とリンク130の連結部分が給紙トレイ22の後側である程、記録用紙50を収容し易い。しかし、逆に、排紙トレイ23とリンク130との連結部分が給紙トレイ22の前側となってしまうことがある。以下、その一例について詳述する。
【0076】
近年、給紙トレイ22に収容可能な記録用紙50の最大枚数の増加が求められているところ、当該最大枚数が多くなると、給紙トレイ22の高さが高くなる。また、給紙トレイ22の開放された上面のうち、給紙トレイ22の後側の領域には、記録用紙50に圧接される給紙ローラ25が配置されている。ここで、給紙ローラ25が回転可能に取り付けられているアーム26は、本体底板75に対して所定角度で、給紙ローラ25から前側へ向かって斜め上向きに延設され、給紙トレイ22の上方に設けられたプリンタ部11のフレームなどに回動可能に取り付けられている。ここで、当該所定角度は、給紙ローラ22の記録用紙50に対する圧力が一定に維持されることが好ましいことから、変更されることは好ましくない。よって、上述したように給紙トレイ22の高さが高くなると、アーム26を長くする必要がある。つまり、アーム26は、更に前側へ向かって延設されることになる。これにより、排紙トレイ23は、アーム26との接触を避けるために、より前側に配置される必要がある。その結果、排紙トレイ23とリンク130との連結部分が前側となってしまう。このような場合に、給紙トレイ22に小サイズの記録用紙50が収容される場合、記録用紙50は給送向き下流側(つまりプリンタ11の後側)を基準として収容されることから、前側から記録用紙50を収容することが困難となってしまう。
【0077】
このような問題を解決するために、リンク130を長くすることが考えられる。リンク130を長くすると、排紙トレイ23の開放状態において、記録用紙50がトレイ本体20へ挿入される部分の高さが高くなる。これにより、排紙トレイ23が前側へ配置されていても、トレイ本体20へ記録用紙50を収容し易くなる。しかし、リンク130が長くなると、リンク130の強度が低下してリンク130が破損する可能性が高くなる。また、リンク130が長くなると、リンク130のがたつきが大きくなってしまう。
【0078】
そこで、上述の実施形態においては、リンク130が屈曲されている。そのため、リンク130において、屈曲部分(中央部127)からリンク130の両端(第1端128及び第2端129)へ延びている部分のそれぞれの長さを、リンク130が真っ直ぐな場合の両端間の長さよりも短くできる。これにより、リンク130の強度の低下を抑えることができる。また、リンク130が屈曲されていると、図5に示されるように、排紙トレイ23が開放状態となったときに、第1端128から中央部127までが上向きに延びた状態になると、中央部127から第2端129までが後側に延びた状態となる。つまり、第2端129に連結されている排紙トレイ23は、後側に位置する。これにより、排紙トレイ23が開放状態となった際に、トレイ本体20の上面の開放部分の面積が大きくなり、記録用紙50を収容し易くなる。以上より、リンク130が屈曲されることにより、強度を下げることなく、しかも排紙トレイ23が開放されたときに記録用紙50をトレイ本体20に収容し易くできる。
【0079】
また、上述の実施形態においては、第1端128と第2端129との間にロック部100が配置されているため、ロック部100を容易に形成することができる。
【0080】
また、上述の実施形態においては、突起132に傾斜面が設けられているため、突起132と孔141とが円滑に係合できる。
【0081】
また、上述の実施形態においては、トレイ本体20が第3側壁84を備えているため、リンク130の左右方向9への移動が制止される。つまり、リンク130の左右方向9へのがたつきが防止可能である。
【0082】
リンク130が必要以上に回動可能であると、ユーザが排紙トレイ23を操作させづらくなるおそれがある。また、回動されたリンク130の第2端129側がトレイ本体20に衝突して、リンク130が破損するおそれもある。しかし、上述の実施形態においては、制止部材85によってトレイ本体20の回動が第2姿勢で制止され、それ以上矢印142の向きに回動されないため、排紙トレイ23の操作性を良くするとともに、リンク130の破損を防止できる。
【0083】
また、上述の実施形態においては、リンク130が第1当接面99と当接されていると、リンク130の回動は第1当接面99によって制止される。また、第2蓋部96が第1蓋部95に対して収縮可能な状態であるとき、第1蓋部95に設けられた第1当接面99はリンク130の面133と当接している。よって、当該収縮時に、排紙トレイ23がリンク130に対して誤って不要な方向に回動してしまうことが防止可能である。
【0084】
また、上述の実施形態において、排紙トレイ23が開放状態から閉塞状態への回動しているときに、排紙トレイ23の第1当接面99がリンク130の面133と当接すると、リンク130は排紙トレイ23の回動に追随して回動する。つまり、排紙トレイ23を回動させるだけでリンク130を自動的に第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させることができるため、トレイ130の操作性を向上させることができる。
【0085】
また、上述の実施形態においては、排紙トレイ23に面97が形成されている。そのため、ユーザは、面97を押すことによって、リンク130の軸131から遠い位置でリンク130のロックを解除し容易に回動させることができる。つまり、面97を備えることによって、給紙トレイ22の操作性を向上させることができる。
【0086】
[実施形態の変形例1]
上述の実施形態において、リンク130は、屈曲された概ねL字形状の部材である構成について説明したが、リンク130は、図7に破線で示されるように、屈曲する代わりに湾曲されていてもよい。
【0087】
リンク130が湾曲されている場合であっても、上述の実施形態におけるリンク130が屈曲されている場合と同様に、リンク130の強度の低下を抑えることができ、また、記録用紙50がトレイ本体20へ挿入される空間を大きくすることができる。
【0088】
[実施形態の変形例2]
上述の実施形態において、ロック部100は、リンク130が屈曲している中央部127に設けられている構成について説明したが、ロック部100が設けられる箇所は、リンク130の第1端128と第2端129との間(第1端128と第2端129を含む。)であれば、リンク130が屈曲している中央部127に限らない。例えば、図10に示されるように、ロック部100の係合部の一例である突起132が、軸131と兼用されており、図9に示されるように、ロック部100の被係合部の一例である孔141が、第2支持孔139と兼用されていてもよい。
【0089】
この場合、図10に示されるように、軸131は、外周上の1箇所に弾性変形可能な第2凸部134を備えている。また、図9に示されるように、第2支持孔139は、内周上の少なくとも1箇所に第2凹部135を備えている。変形例2において、第2凹部135は2箇所(第2凹部135A及び第2凹部135B)に設けられている。第2凹部135は、第2凸部134と嵌合可能である。当該嵌合によって、リンク130はロックされる。
【0090】
第2凸部134は、図9(A)に示される状態、つまり上述の実施形態における図3に示される状態に対応する状態において、第2凹部135Aと嵌合される。リンク130が第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化されるとき、軸131は回転する。このとき、軸131が回転する力によって、第2凸部134と第2凹部135Aの嵌合が解除される。そして、第2凸部134は、第2支持孔139の内周に沿って摺動し、第2凹部135Aと嵌合された状態から第2凹部135Bと嵌合された状態に移行する(図9(B)参照)。なお、第2凸部134は、第2凹部135Aと第2凹部135Bとの間の内周面に沿って摺動している間、軸131の中心に向かって縮むように弾性変形している。このため、当該摺動が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10:複合機
11:プリンタ部
22:給紙トレイ
23:排紙トレイ
40:記録部
71:第1収容部
72:第2収容部
84:第3側壁
85:制止部材
95:第1蓋部
96:第2蓋部
97:面
99:第1当接面
100:ロック部
130:リンク
132:突起
141:孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送可能な装置に給送されるシートを収容するトレイであって、
上側に開口を有し、上記装置に給送されるシートが上記開口を通じて内部に収容可能なトレイ体と、
上記開口のうち上記給送向き下流側の領域を除く領域を覆う蓋と、
第1端側が、上記給送向きに直交しシートの載置面に沿った幅方向を軸として上記トレイ体に回動可能に連結され、上記第1端と反対側の第2端側が、上記幅方向を軸として上記蓋の上記給送向き下流側に回動可能に連結され、上記蓋を、上記開口を覆った閉塞状態と、上記開口を開放した開放状態とに支持するリンクと、を備え、
上記リンクは、上記蓋が上記閉塞状態であるときの姿勢である第1姿勢と、上記蓋が上記開放状態であるときの姿勢であり上記第2端が上記第1姿勢のときよりも上記給送向き下流側に位置する第2姿勢と、の間で上記トレイ体に対して回動可能であり、
上記第1姿勢で上記リンクを上記トレイ体に固定するロック部を備えているトレイ。
【請求項2】
上記リンクは、上記第1端から上記給送向き上流側に延出され、かつ上側に屈曲されて上記第2端まで延出されている請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
上記リンクは、上記第1端から上記給送向き上流側に延出され、かつ上側に湾曲されて上記第2端まで延出されている請求項1に記載のトレイ。
【請求項4】
上記ロック部は、上記リンクに形成された係合部と、上記トレイ体に形成された被係合部と、で形成され、上記係合部は、上記第1端と上記第2端との間の位置に設けられている請求項1から3のいずれかに記載のトレイ。
【請求項5】
上記係合部及び上記被係合部のいずれか一方には、他方を誘い込むための誘い込み部が形成されている請求項4に記載のトレイ。
【請求項6】
上記トレイ体は、上記リンクの上記幅方向における端部と当接し、上記リンクの上記幅方向への移動を制止する第1ストッパを備えている請求項1から5のいずれかに記載のトレイ。
【請求項7】
上記トレイ体は、上記リンクが上記第2姿勢をとった状態で、上記リンクが所定量回動したときに当接し、上記リンクの上記トレイ体に対する上記給送向き下流側への回動を制止する第2ストッパを備えている請求項1から6のいずれかに記載のトレイ。
【請求項8】
上記トレイ体は、
シートを収容可能な第1収容部と、
上記第1収容部に対して上記給送方向上流側へ伸長及び上記給送方向下流側へ収縮可能にスライドし、上記第1収容部に対して伸長された状態で上記第1収容部と協働してシートを収容可能な第2収容部と、で構成され、
上記蓋は、
上記開口のうち上記第1収容部の上側に位置する領域を覆う第1蓋部と、
上記第1蓋部に対して伸縮可能にスライドし、上記開口のうち上記第2収容部が上記第1収容部に対して伸長した状態で上記第2収容部の上側に位置する領域を覆う第2蓋部と、で構成され、
上記第1蓋部は、上記第2蓋部が収縮可能な状態において、上記リンクに収縮向き上流側から当接し、上記第1蓋部の回動を規制する第1当接部を備えている請求項1から7のいずれかに記載のトレイ。
【請求項9】
上記蓋は、上記開放状態から上記閉塞状態へ回動する過程において、上記リンクの上記第2姿勢から上記第1姿勢に向かう回動向き上流側から上記リンクに当接し、上記蓋の回動に連動して上記リンクを上記第1姿勢に回動させる第2当接部を備えている請求項1から8のいずれかに記載のトレイ。
【請求項10】
上記蓋は、上記ロック部の固定を解除し上記リンクを回動させるために操作される操作部を備えている請求項1から9のいずれか記載のトレイ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のトレイと、上記トレイから給送されたシートに画像を記録する記録部と、を備えた画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−1315(P2012−1315A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137891(P2010−137891)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】