説明

トレイ式苗移植機

【課題】苗トレイの供給および排出のための安定した作業スペースを確保するとともに、機体全長を最小限度に抑えたコンパクトな寸法で構成することができる乗用型のトレイ式苗移植機を提供する。
【解決手段】トレイ式苗移植機は、可撓性のトレイが供給側にUターンするように移送される屈曲移送経路5cを備えてそのトレイ給排部5aを一端側に形成するとともに同屈曲移送経路上に位置する苗取出部5bを他端側に形成した苗トレイ搬送装置5と、その苗取出部5bに臨んでトレイから苗を取出す苗取出装置6と、その苗を受けて圃場に苗を植付ける植付装置7と、これら移植用の各装置を装荷する走行用機体4とから構成され、上記苗トレイ搬送装置5を後方給排作業用に配置してそのトレイ給排部5aに臨んで作業者用の座席8を設けるとともに、同作業者用のフロア9を同苗トレイ搬送装置5の下方に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を収容したトレイを作業者が給排操作することによって苗を植付け走行するトレイ式苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、トレイ式苗移植機は、苗を収容したトレイがUターンしてトレイ供給側に戻される移送経路を備えてそのトレイ給排部を一端に、同経路上の苗取出部を他端に形成した苗トレイ搬送装置、その苗取出部に臨んでトレイから苗を取出す苗取出装置、およびその苗を受けて圃場に苗を植付ける植付装置を歩行操縦用の機体に装荷して構成される。
【0003】
上記後方給排配置の苗トレイ搬送装置は、その一端のトレイ給排部から苗トレイを受けるとUターン状に屈曲する苗トレイの移送経路により他端の苗取出部を経て苗トレイを元のトレイ給排部に移送し、その苗取出部に臨む苗取出装置は、苗トレイから苗を取出し、この苗は植付装置に受けて圃場に植付けされる。
この苗トレイの給排作業は、機体後部から歩行作業者によって行われることから、この歩行作業者の負担を軽減するために、乗用型のトレイ式苗移植機が検討されている。
【特許文献1】特開2001−314106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トレイ式苗移植機に乗用作業スペースを確保するためには、苗トレイ搬送装置の後方に作業者用の座席を含む給排作業スペースが必要となり、そのために機体全長の増大を招くという問題を避けることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、苗トレイの供給および排出のための安定した作業スペースを確保するとともに、機体全長を最小限度に抑えたコンパクトな寸法で構成することができる乗用型のトレイ式苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、可撓性のトレイが供給側にUターンするように移送される屈曲移送経路を備えてそのトレイ給排部を一端側に形成するとともに同屈曲移送経路上に位置する苗取出部を他端側に形成した苗トレイ搬送装置と、その苗取出部に臨んでトレイから収容苗を取出す苗取出装置と、その苗を受けて圃場に苗を植付ける植付装置と、これら移植用の各装置を装荷する走行用機体とからなるトレイ式苗移植機において、上記苗トレイ搬送装置を後方給排作業用に配置してそのトレイ給排部に臨んで作業者用の座席を設けるとともに、同作業者用のフロアを同苗トレイ搬送装置の下方に設けたことを特徴とする。
【0007】
後方給排配置の上記苗トレイ搬送装置は、その一端側のトレイ給排部から苗トレイを受けるとUターン状に屈曲する苗トレイの移送経路により他端側の苗取出部を経て苗トレイを元の側に戻し、その苗取出部に臨む苗取出装置は苗トレイから苗を取出し、この苗は植付装置に受けて圃場に植付けされ、苗トレイ搬送装置の直下のフロアおよび同装置の後端部に近接配置した座席により、その苗トレイの給排作業のための給排作業スペースが確保される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成のトレイ式苗移植機は、苗トレイ搬送装置の直下に構成したフロアと近接配置の座席とにより、苗トレイの供給および排出のための安定した作業スペースが確保されるとともに、機体全長を最小限度に抑えたコンパクトな構成によって植付性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係るトレイ式苗移植機の側面図である。トレイ式苗移植機は、左右の駆動輪2、2と機体の先端側を案内支持する左右の前輪3、3とを備えた機体フレーム4により圃場走行が可能な走行機体を構成する。その機体フレーム4には、投入した可撓性のトレイを再度同じ側に戻すように搬送する苗トレイ搬送装置5と、その苗取出部に臨んでトレイから苗を取出す苗取出装置6と、その苗を受けて圃場に苗を植付ける植付装置7とからなる移植部を機体前部に装荷する。
【0010】
また、苗トレイ搬送装置のトレイ給排部に近接して作業者用の座席8を設けるとともに、その着席作業者が給排作業をするために同苗トレイ搬送装置の下方にフロア9を設け、これら座席8とフロア9とによりトレイ給排のための作業スペースを形成する。
【0011】
詳細には、機体フレーム4は、座席8の下方のエンジン一体の変速伝動機構11と一体的に構成し、この変速伝動機構11の両側に並行配置されて左右の駆動輪2、2を支持しつつ駆動するクランクアーム状の左右の走行伝動支持部16,16を備え、また、機体前部に軸支した左右の前輪支持部3a、3aを介して左右の前輪3、3を支持する。
【0012】
上記機体フレーム4から、座席8の側方に乗降用ステップ9aを設けるとともに補助苗枠13を立設し、同機体フレーム4の後部には歩行操作用の操縦ハンドル14を延設する。このハンドル14は、その押し下げ動作によって機体前部を浮かすことにより機体の方向転換操作を可能に構成するとともに、走行クラッチ、エンジンスロットル、植付クラッチ等の操作のために、左右のクラッチレバー15,15を含む操作系を集中配置する。また、ハンドル14の基部を空トレイスペースAとして構成する。
【0013】
変速伝動機構11は、機体旋回操作の便宜のために、内設した左右のサイドクラッチにより左右の駆動輪2、2に対する動力伝達を制御可能に構成するとともに、左右の走行伝動支持部16,16と連結して傾斜調節するターンバックル付きのリンク16a、16aおよび左右の前輪支持部3a、3aと連結するイコライザ17aを介して両者の傾斜を調節するメインシリンダ17とからなる機体リフト機構を備えて機体の支持高さを調整可能に構成するほか、走行同期動力を移植部に供給するべく連結する。
【0014】
移植部の苗トレイ搬送装置5は、左右往復移動しつつトレイを移送するトレイ台5dを備え、このトレイ台5dには、その後端側にトレイ給排部5a、前端側に苗取出部5bを形成し、そのトレイ給排部5aから苗取出部5bを経て下面側から元の供給側にUターンする屈曲移送経路5cに沿って可撓性のトレイを移送するための移送機構5eを備えて構成される。
【0015】
この苗トレイ搬送装置5によるトレイ移送動作は、縦横配列の升目に苗をそれぞれ収容した可撓性トレイについて、横方向(幅方向)の升目ピッチで横移動動作させつつ、その移動側端で縦方向(前後方向)の升目ピッチで縦移動送りすることにより、トレイ給排部5aに投入したトレイの苗を順次、苗取出部5bに位置付けし、苗取出装置6が苗を抜き取った空のトレイを屈曲移送経路5cに沿って裏返し姿勢で供給側の下部位置に形成した排出位置まで搬送する。上記苗トレイ搬送装置5の苗取出部5bでは、位置づけされた苗トレイから苗取出装置6が苗を取出し、この苗は植付装置7に受けて圃場に植付けされる。
【0016】
上記トレイ式苗移植機は、苗トレイ搬送装置5を後方給排作業用に配置するとともに前下がり姿勢に構成することにより、苗トレイ搬送装置5の直下のフロア9および同装置の後端部に近接配置した座席8によって苗トレイの給排作業のためのスペースが確保される。
【0017】
したがって、上記構成のトレイ式苗移植機は、苗トレイ搬送装置5の直下に構成したフロア9と近接配置の座席8とにより、苗トレイの供給および排出のための安定した作業スペースが確保されるとともに、機体全長を最小限度に抑えたコンパクトな構成によって植付性能を向上することができる。
【0018】
また、苗トレイ搬送装置5の下方のフロア9には、機体の支持高さを調整する植付深さレバー18を配置し、そのレバー操作でメインシリンダ17の油圧を調節することにより車高を調節可能に構成する。さらに、必要により座席8をばね支持してその着座時の高さ位置の変化を検出する緩衝ガイドワイヤ8aを設け、この緩衝ガイドワイヤ8aを介して油圧を調節して着座と連動する車高調節装置を構成することにより、畝が高い場合でも容易に機体乗降が可能となる。
【0019】
(歩行型苗移植機)
次に、歩行型のトレイ式苗移植機の側面図を図2に示すように、移植部の別の構成例として、苗取出装置6は、苗をトレイから抜き取るために進退動作する苗取出爪21と、この苗取出爪21を保持して間歇的に揺動動作する保持体22とを備え、苗トレイ搬送装置5と植付装置7との間で苗取出爪21による苗の受け渡し可能に構成する。
【0020】
また、保持体22には苗の有無を検出するカメラ23を取付け、このカメラ23が苗トレイ側に向いたタイミングで間歇動作の苗取出爪21を停止するように構成することにより、カメラ23が苗取出し位置を確実に検出することができるので、植付欠株を防止することができる。
【0021】
また、苗トレイ搬送装置5には、その要部拡大図Bに示すように、搬送されるトレイの終端を検出してブザー等により発報をするためのトレイセンサ24をトレイの通過範囲に設けるとともに、このトレイセンサ24には、ハンドル14まで延びるスロットルワイヤ25の緩め動作でその検出動作を終了するように弾性支持する係合レバー26を構成する。
【0022】
上記トレイセンサ24は、機体走行中は、スロットルワイヤ25の緊張によりトレイの終端の検出によって発報がなされ、この時、従来のトレイ式苗移植機(例えば、特開平10―276518号等)におけるような発報を停止するための煩わしい操作を要することなく、苗補給するためにスロットルワイヤ25を緩めて機体走行を停止する操作に連動して発報を停止することができる。
【0023】
(周回テーブル型苗移植機)
次に、周回テーブル型苗移植機の側面図を図3に示すように、駆動輪2,2の伝動系を構成する左右の走行伝動支持部16,16は、変速伝動機構11から駆動輪2,2に伝動する不図示のチェーンを内設し、その左右の駆動側スプロケット軸16b、16bの一方に不図示の駐車ブレーキを設け、他方にベルコンと略称される無段変速機構32を設ける。
【0024】
上記無段変速機構32は、その変速操作用のコントロールアーム32aと連結する緩衝ガイドワイヤ33をハンドル14の左側部の作業者側に設けた変速レバー34まで配索して左右の回転差を増減調節可能に構成するとともに、機体上昇時の油圧を受けて上記コントロールアーム32aを中立位置に戻すように構成する。
【0025】
上記構成の左右の走行伝動支持部16,16により、片側集中構成(特開2000−6775号公報等)とするよりも機体の重量バランスを左右均衡することができる上に、互いに邪魔にならずにメンテナンスが容易となる。また、機体上昇に際して無段変速機構32の操作忘れがあっても、上記構成により上昇連動で中立に戻されて左右の回転差を防止することができる。
【0026】
次に、補助苗枠13には、バッテリ保持枠13aを吊り下げるように付設し、機体の略中央位置においてエンジン11aを覆うボンネット11bの上方にバッテリBを収容することにより、機体のコンパクト化とともに、重量バランスの適正化を図ることができることができるので、従来構成(特開平11−253015号公報等)における問題を解決することができる。
【0027】
(乗用周回テーブル型苗移植機)
次に、乗用周回テーブル型苗移植機の側面図を図4に示すように、苗移植機は、周回テーブル型搬送部41と植付部42とを備え、植付部42には、植付ホッパ43に設けた支点44aに略L字状のアーム44を軸支し、苗を後方に払いのけるようにアーム44を揺動動作するように構成することにより、その揺動動作が植付ホッパ43に対して適正な位置でなされることから、苗を適正に払うことができる。
【0028】
(操舵機構)
次に、乗用苗移植機の操舵機構の斜視図(a)および要部正面図(b)を図5に示すように、機体後部に装荷した移植部(不図示)に臨む後向き作業用の座席51を幅方向の中心位置に設けた前後方向軸52によって左右に傾動可能に軸支する。この座席51により、傾斜地等において座席51に着座した作業者が姿勢を容易に修正できるので、移植部への苗補給の作業性を向上することができる。また、その傾動した側に機体が転向するように操舵系を構成することにより、苗補給作業をしながら、走行方向を修正することができる。
【0029】
上記の場合の操舵系の構成については、リンク機構によって左右の前輪3,3を操舵する構成例を具体的に説明すると、左右傾動可能に支持した座席51の両側部51a、51aから左右の前輪3,3の操舵アーム53,53との間を傾斜するロッド54,54によってそれぞれ連結する。このように構成した座席51を着座した作業者が一側方に座席51を傾けると、傾斜姿勢の左右のロッド54,54によって左右の前輪3,3がそれぞれの操舵アーム53,53に回動力を受けることから、座席51の傾斜側に操舵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】トレイ式苗移植機の側面図
【図2】歩行型のトレイ式苗移植機の側面図
【図3】周回テーブル型苗移植機の側面図
【図4】乗用周回テーブル型苗移植機の側面図
【図5】乗用苗移植機の操舵機構の斜視図(a)および要部正面図(b)
【符号の説明】
【0031】
2 駆動輪
3 前輪
4 機体フレーム(走行用機体)
5 苗トレイ搬送装置
5a トレイ給排部
5b 苗取出部
5c 屈曲移送経路
5d トレイ台
5e 移送機構
6 苗取出装置
7 植付装置
8 座席
9 フロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のトレイが供給側にUターンするように移送される屈曲移送経路(5c)を備えてそのトレイ給排部(5a)を一端側に形成するとともに同屈曲移送経路上に位置する苗取出部(5b)を他端側に形成した苗トレイ搬送装置(5)と、その苗取出部(5b)に臨んでトレイから収容苗を取出す苗取出装置(6)と、その苗を受けて圃場に苗を植付ける植付装置(7)と、これら移植用の各装置を装荷する走行用機体(4)とからなるトレイ式苗移植機において、
上記苗トレイ搬送装置(5)を後方給排作業用に配置してそのトレイ給排部(5a)に臨んで作業者用の座席(8)を設けるとともに、同作業者用のフロア(9)を同苗トレイ搬送装置(5)の下方に設けたことを特徴とするトレイ式苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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