説明

トレイ扉開閉機構及びディスク記録及び/又は再生装置

【課題】筐体とトレイ蓋との間の隙間を小さくすることで防塵性を向上し、かつ部品点数も低減する。
【解決手段】光ディスクが載置されるトレイ11と、そのトレイ11が出し入れされる出入口3を有する筐体と、出入口3から出し入れするようにトレイ11を直線的に進退移動させるトレイ搬送機構と、筐体に回動可能に支持されると共に出入口3を開閉可能とされたトレイ扉18と、トレイ11の直線運動をトレイ扉18の回動運動に変換して出入口を開閉させる運動変換機構と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の開口部を開閉するトレイ扉をトレイの移動によって開閉動作させるトレイ扉開閉機構、及び、そのトレイ扉開閉機構を備えたディスク記録及び/又は再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種のトレイ扉開閉機構としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、トレー機構および光ディスク装置に関するものが記載されている。この特許文献1に記載されたトレー機構は、「筐体に設けられた細長形状の開口部を介して該筐体の内部と外部にわたって出没可能に設けられたトレー本体と、前記トレー本体の前端に取着され前記開口部に対応した細長形状のトレーベースと、前記トレーベースに前記トレー本体の前記出没する方向に移動可能に取着され前記トレー本体が前記筐体内に引込まれた状態で前記開口部を覆うとともに該開口部の周囲の筐体箇所に当接する細長形状のトレー蓋とを備え、前記トレーベースにはばね部がトレーベースと一体に設けられ、前記ばね部は、前記トレーベースから突出する基部と、前記基部に連結され前記トレーベースの長手方向に細長形状を呈して延在しこの延在方向と直交する方向に弾性変形可能な細長形状部とで構成され、前記トレー蓋には前記細長形状部と係合する係合部が設けられ、前記トレーベースと前記トレー蓋とは、前記細長形状部と前記係合部とが係合されることにより前記トレー蓋と前記トレーベースとが互いに近接する方向に付勢された状態で取着されている」ことを特徴としている。
【0003】
このような構成を有するトレー機構(以下「第1の従来例」という。)によれば、「構成を簡素化して低コスト化、小型化を図るとともに、組み立て時の作業性を向上する上で有利なトレー機構および光ディスク装置を提供することができる」(明細書の段落[0019])という効果が期待される。
【0004】
また、従来の、この種の光ディスク装置としては、例えば、特許文献2に記載されているようなものもある。特許文献2には、装置前面より引き出し収納されるディスクトレー上に光記録媒体を載置することによって光記録媒体の交換を行うローディングトレー方式の光ディスク装置に関するものが記載されている。この特許文献2に記載された光ディスク装置は、「回転させた光ディスクに光ビームを照射して情報の記録あるいは再生を行う光ディスク装置において、前面に第1の開口部が形成された外部筐体と、前記外部筐体の内部で前記外部筐体にインシュレータを介して支持され、前面に第2の開口部が形成され、内部に前記光ディスクの回転駆動部および光学ピックアップ部が設けられた内部筐体と、前記光ディスクを着脱可能に載置し、前記第1の開口部および前記第2の開口部を介して前記内部筐体から引き出し収納自在に駆動され、前端部に前記第2の開口部を覆う板状部材が形成され、前記内部筐体内に収納された状態において前記板状部材によって前記第2の開口部を閉止し前記内部筐体を密閉するディスクトレーと、を有する」ことを特徴としている。
【0005】
このような構成を有する光ディスク装置(以下「第2の従来例」という。)によれば、「外部筐体の構造に関係なく内部筐体のみでディスクドライブ部を防塵することが可能であり、外部からの衝撃によって内部筐体が外部筐体に対して大きく変位した場合も内部筐体の防塵機能が損なわれない」(明細書の段落[0035])という効果が期待される。
【0006】
更に、従来の、この種の記録再生装置としては、例えば、特許文献3に記載されているようなものもある。特許文献3には、メディア挿入口の前面に配置されてそのメディア挿入口を開閉するメディア扉を有する記録再生装置に関するものが記載されている。この特許文献3に記載された記録再生装置は、「メディア挿入口にメディア扉を備えた記録再生装置であって、所定のメディアを挿入しようとする操作によって前記メディア扉が前記メディア挿入口内に潜り込んで前記メディア挿入口を開口させる開閉手段を設けた」ことを特徴としている。
【0007】
このような構成を有する記録再生装置(以下「第3の従来例」という。)によれば、「メディア扉がメディア挿入口の内部に入り込みメディア挿入口が大きく開くように構成されているので、メディアの挿入に際して指の動きの妨げにならず、またメディア扉が開口されたときにはメディア扉が上部に位置するので、メディアの出し入れをガイディングすることができる」(明細書の段落[0082])という効果が期待される。
【特許文献1】特開2004−259316号公報
【特許文献2】特開2001−266441号公報
【特許文献3】特開2001−101736号公報
【0008】
しかしながら、上述した従来技術のうち、第1の従来例のトレー機構の場合には、トレーの先端にトレー扉を固定し、トレーを後退動作させたときに、その先端に固定したトレー扉で開口部を閉じる構成となっていた。そのため、開口部を有するフロントパネルとトレーとの位置関係を精度良く形成することが困難であり、開口部とトレー蓋との間に隙間ができて防塵性が悪いという不十分な点があった。更に、開口部をトレー蓋で完全に覆う必要があることから、トレー蓋が開口部よりも大きく形成されており、そのため、大きなトレー蓋によるデザインへの制約が大きいという問題もあった。
【0009】
また、第2の従来例の光ディスク装置の場合には、フロントパネルに設けた開口部の下辺にシャッターがヒンジによって回動可能に支持されており、このシャッターを捩りばねで付勢して開口部を閉じる構成となっていた。そして、トレーの移動によってシャッターを前方へ押し倒し、開口部を開放させてトレーを所定位置まで押し出すようになっている。そのため、フロントパネルの開口部の下縁周辺には、トレーの移動軌跡上からシャッターを退避させるためのスペースと、ヒンジを固定するためのスペースとが必要となり、開口部周辺においてデザイン上の制約を受けているという問題があった。
【0010】
これら第1及び第2の従来例の問題点を解決するために、第3の従来例の記録再生装置が開発されたが、この記録再生装置の場合には、電動モータを動力源として使用して、トレー蓋を跳ね上げ式に回動させて開口部を開放する構成となっていた。そのため、使用する部品点数が多くなることからコスト高になるばかりでなく、モータの駆動制御が必要になり、構造も複雑になるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、従来のトレイ扉開閉機構では、開口部とトレー蓋との間に隙間ができて防塵性が悪く、トレー蓋が開口部よりも大きいために、大きなトレー蓋によるデザインへの制約が大きいという問題があった。また、トレーの移動軌跡上からシャッターを退避させるためのスペースと、ヒンジを固定するためのスペースが必要となり、開口部周辺においてデザイン上の制約を受けているという問題もあった。更に、使用する部品点数が多くなることからコスト高になるばかりでなく、モータの駆動制御が必要になるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のトレイ扉開閉機構は、搬送対象物が載置されるトレイと、そのトレイが出し入れされる出入口を有する筐体と、出入口から出し入れするようにトレイを直線的に進退移動させるトレイ搬送機構と、筐体又は筐体に固定される筐体側部材に回動可能に支持されると共に出入口を開閉可能とされたトレイ扉と、トレイの直線運動をトレイ扉の回動運動に変換して出入口を開閉させる運動変換機構と、を設けたことを最も主要な特徴とする。
【0013】
また、本発明のディスク記録及び/又は再生装置は、ディスク状記録媒体が載置されるトレイと、そのトレイが出し入れされる出入口を有する筐体と、出入口から出し入れするようにトレイを直線的に進退移動させるトレイ搬送機構と、筐体又は筐体に固定される筐体側部材に回動可能に支持されると共に出入口を開閉可能とされたトレイ扉と、トレイの直線運動をトレイ扉の回動運動に変換して出入口を開閉させる運動変換機構と、トレイに載置されて搬送されることにより供給されるディスク状記録媒体に対して情報信号の記録及び/又は再生を行うディスクドライブ装置と、を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトレイ扉開閉機構及びディスク記録及び/又は再生装置によれば、筐体に設けた出入口とトレイ扉との隙間を小さくすることが可能であり、防塵性能を向上させることができると共に、出入口周囲の美観を向上させ、デザイン上の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
トレイ扉を筐体又は筐体に固定される筐体側部材に回動可能に支持し、トレイ搬送機構により搬送されるトレイの直線運動を運動変換機構によってトレイ扉の回動運動に変換し、トレイ扉を回動させて出入口を開閉させる構成とすることにより、出入口を確実に開閉動作させることができるトレイ扉開閉機構及びディスク記録及び/又は再生装置を、簡単な構成によって実現した。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1〜図8は、本発明の実施の形態の例を示すものである。即ち、図1は本発明のディスク記録及び/又は再生装置の第1の実施の例を示す外観斜視図、図2は同じく蓋体を開いた状態を示す外観斜視図、図3は同じく正面図、図4は図3のX−X線断面図、図5は本発明に係るトレイ扉開閉機構の分解斜視図、図6は出入口をトレイ扉で閉じた状態の説明図、図7は出入口を途中まで開いた状態の説明図、図8は出入口を完全に開いた状態の説明図である。
【0017】
図1及び図2は、本発明のトレイ扉開閉機構を用いて好適な電子機器の第1の実施の例を示すトレイ搬送方式のディスク記録再生装置である。このディスク記録再生装置1は、外装ケースである筐体2と、この筐体2内に収納された図示しないディスクドライブ装置と、筐体2に設けた開口部からなる出入口3を開閉するトレイ扉開閉機構4等を備えて構成されている。このディスク記録再生装置1は、ディスク状記録媒体の一具体例を示す記録及び再生が可能な光ディスクを情報記録媒体として使用して、光ディスクの情報記録面に予め記録されている情報を読み出して再生したり、情報記録面に新たな情報を書き込んで記録したりするものである。光ディスクが、搬送対象物の一具体例を示している。
【0018】
しかしながら、本発明のトレイ扉開閉機構は、情報信号の再生のみを可能とした光ディスク再生装置や、情報信号の記録のみを可能とした光ディスク記録装置に適用できることは勿論である。更に、光ディスク以外の磁気ディスクを情報記録媒体とした磁気ディスク再生装置、磁気ディスク記録装置、磁気ディスク記録再生装置に適用することができ、また、光磁気ディスクを情報記録媒体とした光磁気ディスク再生装置、光磁気ディスク記録装置、光磁気ディスク記録再生装置に適用することができるものである。また、本発明のトレイ扉開閉機構が適用可能な電子機器としては、この実施例等で説明するディスク記録及び/又は再生装置に限定されるものではなく、トレイを用いて搬送対象物を搬送すると共にそのトレイが出入口を出入りするトレイ搬送方式を用いた装置、機械等であれば、適用できるものである。
【0019】
図1に示すように、ディスク記録再生装置1の筐体2は、直方体の中空容器からなる本体5と、この本体5の前面の一部を開閉可能に覆う蓋体6とからなっている。筐体2は、直方体で上面が開口されたベースパネル7と、このベースパネル7の上面の前部に重ね合わされ且つ下面と背面が開口されたフロントパネル8と、ベースパネル7の上面の後部に重ね合わされ且つ下面と前面が開口されたリアパネル9とから構成されている。このベースパネル7とフロントパネル8とリアパネル9の組合せによって1個の直方体をなす中空容器からなる筐体2が構成されており、その内部に、光ディスクを情報記録媒体として情報信号を記録・再生する図示しないディスクドライブ装置と、そのための制御装置と、その他の必要な装置・機器等が収容されている。
【0020】
図2に示すように、フロントパネル8の前面に蓋体6が配置され、その蓋体6が一対のアームリンク10L,10Rによって前方へ移動可能に支持されている。フロントパネル8の前面部8aは横長の長方形をなす平面形状を有しており、その前面部8aの略中央部に、同じく横長の長方形に形成された出入口3が設けられている。この出入口3は、筐体2の内外にトレイ11を出し入れさせるための開口部であり、トレイ11を移動方向から見た面形状よりも少し大きく形成されている。更に、前面部8aの出入口3の周囲には、イジェクトボタン12と第1のボタン群13と第2のボタン群14等が配置されている。そして、イジェクトボタン12及び第1のボタン群13との接触を避けるために、これらに対向される蓋体6の背面にボタン逃げ凹部15が設けられている。
【0021】
イジェクトボタン12は、トレイ11を出入口3から出し入れさせるために図示しないトレイ搬送機構を動作させるスイッチ手段である。このイジェクトボタン12には、例えば、プッシュ・プッシュ方式の切換スイッチを適用することができる。このイジェクトボタン12を、例えば、1回押圧操作することにより、トレイ11を出入口3から所定量だけ飛び出させるようにトレイ搬送機構が動作される。このイジェクトボタン12を続けて押圧操作すると、トレイ11を出入口3から完全に引き込むようにトレイ搬送機構が動作される。トレイ11の上面には、光ディスクを載置するための環状の凹部からなるディスク収納部16が設けられている。
【0022】
なお、第1のボタン群13としては、例えば、電源ボタン、メニューボタン、画面表示ボタン等を挙げることができる。また、第2のボタン群14としては、例えば、録画ボタン、再生ボタン、早送りボタン、巻戻しボタン等を挙げることができる。
【0023】
更に、フロントパネル8の前面部8aの長手方向の両側部には、一対のアームリンク10L,10Rを突出させるための貫通穴17L,17Rが設けられている。各貫通穴17L,17Rは、前面部8aの長手方向と直交する幅方向に延在されており、その幅方向である上下方向に各アームリンク10L,10Rが所定の範囲内で移動可能とされている。各アームリンク10L,10Rは、複数のリンクを組み合わせてパンタグラフ構造のように構成したリンク機構からなっている。
【0024】
一対のアームリンク10L,10Rのそれぞれの一端は、蓋体6の背面の長手方向の両端にそれぞれ固定されている。そして、各アームリンク10L,10Rのそれぞれの他端は、筐体2の内部において当該筐体2にそれぞれ固定されている。この一対のアームリンク10L,10Rは、筐体2の固定側を基準として蓋体6の自由端側が、フロントパネル8の前面部8aからその前側下方へ回動変位可能に構成されている。この一対のアームリンク10L,10Rの動作を介して蓋体6は、図1に示すようにフロントパネル8の前面部8aに重ね合わされて出入口3を閉じる閉鎖状態と、図2に示すようにフロントパネル8の前側下方へ回動変位して出入口3を開く開放状態とを選択的に取ることができる。
【0025】
図4に示すように、フロントパネル8の前面部8aの背面には、出入口3の長手方向の両側部において互いに平行をなして後方へ突出するように軸受壁部8b,8cが設けられている。これら軸受壁部8b,8cの内側に、出入口3を開閉することができるトレイ扉18が回動可能に支持されていると共に、筐体側部材の一具体例を示す支持板19が固定されている。
【0026】
図5に示すように、支持板19は、短冊状をなす長方形板材の長手方向の両端を同方向へ折り曲げるように形成されたコ字状の部材からなっている。これにより、支持板19には、所定の間隔をあけて対向するように配置された2つの固定片19a,19bと、両固定片19a,19b間を連結する連結片19cが設けられている。第1の固定片19aの略中央部には軸受穴21aが設けられ、また、一方の対角線方向に対向する2つの角部にはねじ止め用の挿通孔22,22が設けられている。同様に、第2の固定片19bの略中央部には軸受穴21bが設けられ、また、他方の対角線方向に対向する2つの角部にはねじ止め用の挿通孔22,22が設けられている。第1の固定片19aの軸受穴21aと第2の固定片19bの軸受穴21bは、同一軸心線上に設定されている。
【0027】
更に、支持板19の第2の固定片19bには、ばね受け片23と支持軸24が設けられている。ばね受け片23は、第2の固定片19bの軸受穴21bの斜め上方に配置されており、第2の固定片19bの一部を内側へ鉤状に折り出すことによって形成されている。このばね受け片23は、第2の固定片19bにピンを取り付けることによって形成することもできる。支持軸24は、第2の固定片19bの軸受穴21bの斜め下方に配置されていて、内側へ突出する軸部として形成されている。この支持軸24に、トレイ11の進退移動によって回動される操作レバー25が回動自在に軸支されている。操作レバー25には、扇形に形成された駆動ギア26が一体に設けられている。これにより、駆動ギア26は、操作レバー25と一体に回動される。
【0028】
図5に示すように、トレイ扉18は、出入口3を開閉する蒲鉾形状の扉部18aと、この扉部18aの長手方向の両端において互いに対向するように設けられた第1のアーム部18b及び第2のアーム部18cを有するコ字状の部材として形成されている。トレイ扉18の扉部18aが蒲鉾形状をなしている理由は、このトレイ扉18が上下方向に回動して出入口3を開閉する構造となっていることから、出入口3を開閉する際に扉部18aが開閉動作の妨げとなるのを防止すると共に、外観上の美感を向上させるためである。
【0029】
トレイ扉18の第1のアーム部18bの外面には、外側へ突出する第1の回動軸27aが設けられている。この第1の回動軸27aは、支持板19の第1の固定片19aに設けた軸受穴21aを回動自在に貫通すると共に、フロントパネル8の軸受壁部8bに設けた軸受穴28aに回動自在に支持されている。同様に、第2のアーム部18cの外面には、外側へ突出する第2の回動軸27bが設けられている。この第2の回動軸27bは、支持板19の第2の固定片19bに設けた軸受穴21bを回動自在に貫通すると共に、フロントパネル8の軸受壁部8cに設けた軸受穴28bに回動自在に支持されている。第1の回動軸27aと第2の回動軸27bは、互いの軸心線が同一軸心線上に重なり合うように配置されている。
【0030】
更に、第2のアーム部18cの外面には外側へ突出するばね受けピン29が設けられ、第2のアーム部18cの内面には内側へ突出するように従動ギア31が設けられている。ばね受けピン29は、第2のアーム部18cの扉部18aに近い位置に配置されている。また、従動ギア31は、第2のアーム部18cの第2の回動軸27bと同軸上に配置されていると共に、接着剤やねじ止め等の固着手段によって第2のアーム部18cに固定されている。この従動ギア31は、支持板19に支持されている駆動ギア26と常時噛合するように取り付けられる。
【0031】
図4に示すように、上述したような構成を有する支持板19は、連結片19cを下方へ向けた状態で左右の固定片19a,19bを固定ねじ32で左右の軸受壁部8b,8cに固定することによって取り付けられている。この支持板19の左右の固定片19a,19bの間にトレイ扉18が配置され、左右方向の両側に突出した回動軸27a,27bを左右の軸受壁部8b,8cに設けた軸受穴28a,28bに回動自在に嵌合することにより、上下方向へ回動可能に支持されている。このトレイ扉18の第2のアーム部18cと支持板19の一方の固定片19bとの間に、弾性部材の一具体例を示す捩りばね33が介在されている。
【0032】
捩りばね33は、図5等に示すように、リング状に巻回されたコイル部33aと、このコイル部33aの両端に連続して形成された扉側ばね片33b及び支持側弾性片33cとを有している。捩りばね33のコイル部33aには第2の回動軸27bが挿通されている。捩りばね33の扉側ばね片33bはトレイ扉18のばね受けピン29に係止され、支持側弾性片33cが支持板19のばね受け片23に係止されている。この捩りばね33のばね力により、図6に示すように、トレイ扉18が出入口3を閉じる方向へ常時付勢されている。
【0033】
上述した操作レバー25と駆動ギア26と従動ギア31とによって、トレイ11の直線運動をトレイ扉18の回動運動に変換する運動変換機構が構成されている。この駆動ギア26と従動ギア31とからなるギア列を介してトレイ11の移動力がトレイ扉18に回転力として伝達される。その結果、トレイ扉18の扉部18aが、出入口3を閉じる第1の位置と、上方から後方へ移動して出入口3を開く第2の位置とに選択的に移動される。
【0034】
図6〜図8は、出入口3に対するトレイ扉18の開閉動作を説明するものである。即ち、図6は、トレイ扉18の扉部18aで出入口3を閉じた状態を示す図である。このとき、トレイ11はトレイ扉開閉機構4の後方に後退しており、トレイ扉18は捩りばね33のばね力で、同図において時計方向へ付勢されている。そのため、トレイ扉18の扉部18aが出入口3に内側から嵌り込み、その出入口3を確実に閉じることができる。これにより、扉部18aで出入口3を閉じて、塵や埃等が出入口3から筐体2の内部に入り込むのを十分に防止することができる。このときのように、トレイ11が筐体2内に収納された状態において、図示しないディスクドライブ装置による情報信号の記録や再生が実行される。
【0035】
その後、ディスクドライブ装置による情報信号の記録や再生が終了したことによって光ディスクを取り出したり、新たな光ディスクを使用する等のために、例えば、イジェクトボタン12を操作することによってトレイ扉18の開放動作が実行される。まず、イジェクトボタン12を押圧操作すると、トレイ搬送機構の動作が開始され、トレイ11が出入口3側に直線的に移動される。このトレイ11の移動軌跡の前方には、運動変換機構の操作レバー25の入力部である操作部25aが突出されている。そのため、トレイ11の先端部が操作レバー25の操作部25aに当接され、トレイ11の移動力によって操作レバー25が、図7において支持軸24を回動中心として時計方向に回動される。
【0036】
このとき、操作レバー25と一体に設けられた駆動ギア26には従動ギア31が噛合しているため、従動ギア31が第2の回動軸27bを回動中心として反時計方向に回動される。これにより、捩りばね33のばね力に抗してトレイ扉18が、同じく図7において反時計方向に回動される。その結果、トレイ扉18の扉部18aが、図6に示す出入口3を閉じた状態(第1の位置)から図7に示す出入口3を開くように上方へ回動される。そして、トレイ11が所定量だけ前方に移動すると、図8に示すように、出入口3を完全に開いた状態(第2の位置)となる位置まで扉部18aが回動される。
【0037】
このトレイ扉18の完全な開放状態は、トレイ11が操作レバー25の操作部25aを通過したときに達成される。その後は、操作部25aの上面をトレイ11が滑って移動するだけであるため、トレイ扉18が更に反時計方向へ回動されることはない。そして、トレイ11が所定量だけ出入口3から突出されることによってディスク収納部16が露出される。これにより、ディスク収納部16に収納されている光ディスクを取り出したり、そのディスク収納部16に新たな光ディスクを収納することが可能となる。
【0038】
一方、トレイ扉18による出入口3の閉鎖動作は、前述した開放動作と逆の動作によって実行される。即ち、トレイ11が筐体2内へ入り込む方向へ移動することにより、まず、操作レバー25が、図8において反時計方向へ回動される。これにより、操作レバー25と一体の駆動ギア26が反時計方向へ回動され、これと噛合する従動ギア31が時計方向へ回動される。その結果、トレイ扉18と一体の従動ギア31が、図7において時計方向へ回動され、その扉部18aが出入口3の内側に入り込む。そして、トレイ11が操作レバー25から離れる後方まで移動すると、図6に示すように、捩りばね33のばね力によって出入口3が扉部18aで完全に閉じられる。
【0039】
なお、上述した実施例では、トレイ扉18の回動を制御可能なダンパを設けていないが、そのようなダンパを設ける構成とすることもできる。前記機構にダンパを加えることにより、例えば、トレイ扉の開閉動作をゆっくりとさせて、閉まり動作の品位を向上させることが可能となる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、トレイの先端に蓋を固定する構造に比べて、筐体にトレイ蓋を直接組み込むことができるため、筐体とトレイ蓋との間の隙間を小さくすることができ、防塵性の向上を図ることができると共に、美感を高めてデザイン上有利なものとすることができる。また、モータ駆動方式の扉開閉機構と比べて、部品点数が少なく、構造を簡素化できると共に、コストを低減させ、品質の安定化に寄与することができる。また、下ヒンジによる扉開閉機構に比べて、扉下部のスペースを必要としないことから、このトレイ扉開閉機構が用いられる電子機器におけるフロント面のデザインの自由度を高めることができる。更に、出入口の開放時、トレイ扉は筐体内で移動するのみであるため、電子機器の外観が大きく変化して煩雑になることがない。
【0041】
また、前記実施例においては、支持板19を設け、この支持板19に立設した支持軸24に操作レバー25と駆動ギア26を支持する構成としたが、例えば、支持軸24を軸受壁部8cに直接設け、これに操作レバー25と駆動ギア26を回動自在に支持する構成とすることもできる。更に、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施の例においては、電子機器の一具体例としてディスク記録及び/又は再生装置を適用した例について説明したが、トレイの移動によって出入口の扉を開閉するトレイ扉開閉機構を備えたものであれば、各種の電子機器に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のディスク記録及び/又は再生装置の第1の実施の例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明のディスク記録及び/又は再生装置の第1の実施の例を示すもので、蓋体を開いた状態の外観斜視図である。
【図3】本発明のディスク記録及び/又は再生装置の第1の実施の例を示す正面図である。
【図4】図3に示すX−X線部分を断面した説明図である。
【図5】本発明のディスク記録及び/又は再生装置の第1の実施の例を示す分解斜視図である。
【図6】本発明のトレイ扉開閉機構の動作を説明するもので、トレイ扉で出入口を閉じた状態を断面して示す説明図である。
【図7】本発明のトレイ扉開閉機構の動作を説明するもので、トレイ扉を途中まで回動させて出入口を途中まで開いた状態を断面して示す説明図である。
【図8】本発明のトレイ扉開閉機構の動作を説明するもので、トレイ扉を最後まで回動させて出入口を完全に開いた状態を断面して示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1…ディスク記録再生装置(電子機器)、 2…筐体、 3…出入口、 4…トレイ扉開閉機構、 5…本体、 6…蓋体、 7…ベースパネル、 8…フロントパネル、 8a…前面部、 8b,8c…軸受壁部、 10L,10R…アームリンク、 11…トレイ、 12…イジェクトボタン、 18…トレイ扉、 18a…扉部、 18b、18c…アーム部、 19…支持板(筐体側部材)、 19a,19b…固定片、 21a,21b…軸受穴、 24…支持軸、 25…操作レバー、 25a…操作部(入力部)、 26…駆動ギア、 27a,27b…回動軸、 28a,28b…軸受穴、 29…ばね受けピン、 31…従動ギア、 33…捩りばね(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が載置されるトレイと、
前記トレイが出し入れされる出入口を有する筐体と、
前記出入口から出し入れするように前記トレイを直線的に進退移動させるトレイ搬送機構と、
前記筐体又は当該筐体に固定される筐体側部材に回動可能に支持されると共に前記出入口を開閉可能とされたトレイ扉と、
前記トレイの直線運動を前記トレイ扉の回動運動に変換して前記出入口を開閉させる運動変換機構と、を設けた
ことを特徴とするトレイ扉開閉機構。
【請求項2】
前記運動変換機構は、
前記トレイの移動軌跡上に突出される入力部を有し且つ当該トレイの進退移動によって回動される操作レバーと、
前記操作レバーの回動に基づき前記トレイ扉を回動させて当該トレイ扉を前記出入口を閉じる第1の位置と前記出入口を開く第2の位置とに移動させるギア列と、
前記トレイ扉を前記第1の位置側に付勢する弾性部材と、を有する
ことを特徴とする請求項1記載のトレイ扉開閉機構。
【請求項3】
前記ギア列は、前記操作レバーに設けられ且つ前記筐体又は前記筐体側部材に回動可能に支持される駆動ギアと、前記駆動ギアに噛合されると共に前記トレイ扉に固定される従動ギアと、を有する
ことを特徴とする請求項2記載のトレイ扉開閉機構。
【請求項4】
前記トレイ扉は、前記出入口を閉じる扉部と、前記扉部の背面に連続されると共に当該背面と略垂直をなす方向に延在されたアーム部と、を有し、
前記アーム部に前記従動ギアを設けた
ことを特徴とする請求項3記載のトレイ扉開閉機構。
【請求項5】
ディスク状記録媒体が載置されるトレイと、
前記トレイが出し入れされる出入口を有する筐体と、
前記出入口から出し入れするように前記トレイを直線的に進退移動させるトレイ搬送機構と、
前記筐体又は当該筐体に固定される筐体側部材に回動可能に支持されると共に前記出入口を開閉可能とされたトレイ扉と、
前記トレイの直線運動を前記トレイ扉の回動運動に変換して前記出入口を開閉させる運動変換機構と、
前記トレイに載置されて搬送されることにより供給される前記ディスク状記録媒体に対して情報信号の記録及び/又は再生を行うディスクドライブ装置と、を設けた
ことを特徴とするディスク記録及び/又は再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−37708(P2009−37708A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203470(P2007−203470)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】