説明

トレッドが熱可塑性エラストマーを含むタイヤ

本発明は、トレッドが、少なくとも1種のジエンエラストマー、例えば、SBR;補強用充填剤、例えば、シリカ;およびポリエーテルブロックアミド(PEBA)熱可塑性エラストマーを含むゴム組成物を含むタイヤに関する。
そのような組成物は、低下した生状態粘度を有し、従って、トレッドの加工性を増進させると同時に、良好なレベルの乾燥道路把握性および転がり抵抗性を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド、およびそのようなタイヤトレッドの製造において使用することのできる、ジエンエラストマーと熱可塑性エラストマーをベースとするゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、タイヤは、しばしば相反する多くの技術的要件を満たさなければならず、これらのうちには、高摩耗強度、低転がり抵抗性並びに乾燥および湿潤道路双方上での高い道路把握性あある。
諸性質の、特に転がり抵抗性および道路把握性の見地からのこの妥協点は、近年、特に自家用車を意図するエネルギー節減性の“グリーンタイヤ”において、“補強用充填剤”と称する特定の無機充填剤、特に、補強力の点から、通常のタイヤ級カーボンブラックと対抗し得る高分散性シリカ(HDS)によって主として補強されていることを特徴とする新規な低ヒステリシスゴム組成物の使用によって改良し得ていた。
【0003】
にもかかわらず、そのような無機充填剤、特に、HDSシリカを含有するゴム組成物の生状態における使用(または“加工性”)は、カーボンブラックを通常に充填したゴム組成物よりも困難なままである。この困難性は、知られている通り、無機充填剤粒子の高い表面反応性、ひいては、これら粒子が一緒に凝結し、従って、充填剤のゴムマトリックス中での分散性を低下させる高い自然性向に基づいている。
【0004】
この加工性は、補強用充填剤の含有量を相当量増大させてゴム組成物の補強レベル、特に、その磨耗強度およびその道路把握性をさらに増進させることを望む場合、なお一層困難である。
従って、高含有量の補強用充填剤を含むタイヤトレッドのゴム組成物の加工性の改良は、依然としてタイヤ設計者の不変の最大の関心事である。
【発明の概要】
【0005】
研究の過程において、本出願人等は、改良された生状態の加工性を有するタイヤトレッドを得ることを可能にする、ジエンエラストマー、特定の熱可塑性エラストマーおよび補強用充填剤をベースとする新規なゴム組成物を見出した。
従って、本発明は、トレッドが、少なくとも1種のジエンエラストマー、補強用充填剤、ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーを含むゴム組成物を含むタイヤに関する。
【0006】
本発明のタイヤは、特に、自家用車、SUV (スポーツ用多目的車)類のような自動車;二輪車(特に、オートバイ);航空機;バン類、重量物運搬車(即ち、地下鉄車両、バス、道路輸送車両(トラック、トラクターまたはトレーラー)、農機機械または土木工事機械のような道路外車両)から選ばれる産業用車両)および他の輸送または作業車両から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
【0007】
本発明および本発明の利点は、以下の説明および実施例に照せば明確に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
I‐使用する測定および試験法
本発明に従うタイヤにおいて使用するゴム組成物は、以下で示すように、硬化の前後において特性決定する。
I.1‐ムーニー可塑度
フランス規格NF T 43‐005(1991年)に記載されているような振動(oscillating)稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:生状態(即ち、硬化前)の組成物を100℃に加熱した円筒状の室内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験標本中で2rpmにて回転し、この運動を維持するために必要なトルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1 + 4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0009】
I.2‐引張試験
これらの試験は、弾性拘束(elasticity constraint)および破断点諸性質を測定するのに使用する。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46‐002に従って実施する。10%伸びでの公称割線モジュラス(即ち、MPaでの見掛け応力)を、2回目の伸びにおいて(即ち、その測定自体において想定した伸びの度合に対しての順応サイクル後に)測定する(MA10と記す)。また、破断点伸びも測定する(ARと記す、%で)。これらの引張測定は、全て、フランス規格NF T 40‐101 (1979年12月)に従い、温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)の標準条件下に実施する。
【0010】
I.3‐動的特性
動的特性は、規格ASTM D 5992‐96に従い、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。0.7MPaの一定応力下、温度掃引中に、10Hzの周波数において、端準名交互剪断中の正弦応力に供した加硫組成物のサンプル(厚さ4mmおよび400mm2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録し、例えば20℃および40℃において観察したtan(δ)の値(即ち、それぞれ、tan(δ)20℃およびtan(δ)40℃)を記録する。
【0011】
II‐本発明を実施するための条件
本発明に従うタイヤトレッドは、少なくとも1種のジエンエラストマー、補強用充填剤およびポリエーテルブロックアミド(またはPEBA)熱可塑性エラストマーを含むエラストマー組成物を含む。
“pce”は、エラストマー全体(即ち、上記ポリエーテルブロックアミドエラストマーを含む)の100質量部当りの質量部を意味する。
【0012】
本説明においては、他で明確に断らない限り、示す全て百分率(%)は、質量パーセントである。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、“a”から“b”に至る値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0013】
II.1‐ジエンエラストマー
本発明に従うタイヤトレッドは、少なくとも1種のジエンエラストマーを含む第1の本質的特徴を有するゴム組成物を含む。
“ジエン”タイプのエラストマー(または“ゴム”;この2つは同義であるとみなす)なる用語によっては、理解すべきことは、知られている通り、ジエンモノマー(共役型または非共役型の二個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)であることを思い起こされたい。
【0014】
ジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。用語“本質的に不飽和”は、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン起源(共役ジエン)単位含有量を有する、共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味する。従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα‐オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に属さず、特に、“本質的に飽和”のジエンエラストマー(常に15%未満である低いまたは極めて低いジエン起原単位含有量)と称し得る。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、用語“高不飽和”ジエンエラストマーは、特に、50%よりも多いジエン起源(共役ジエン類)の単位含有量を有するジエンエラストマーを意味する。
【0015】
これらの定義を考慮すると、さらに詳細には、下記を、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーとして意図する:
(a) 4〜12個の炭素原子を含有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 共役型である1種以上のジエンを一緒にまたは8〜20個の炭素原子を含有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレン、3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、特に、例えば、1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレン、プロピレンから得られるエラストマー;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0016】
本発明は、任意のタイプのジエンエラストマーに当てはまるけれども、タイヤ分野における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、特に上記のタイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーと一緒に使用するものであることを理解されたい。
【0017】
使用に特に適する共役ジエンとしては、1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3-ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ビス(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、2,4‐ヘキサジエンがある。使用するのに適するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;市販“ビニル‐トルエン”混合物;パラ‐tert‐ブチルスチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレンがある。
【0018】
上記のコポリマー類は、99質量%と20質量%の間のジエン単位と1質量%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含有し得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量の関数である任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型化剤或いは官能化剤によってカップリング形および/または星型形であり得或いは官能化し得る。カーボンブラックにカップリングさせるには、挙げることのできる例としては、C‐Sn結合を含む官能基、または、例えば、アミノベンゾフェノンのようなアミノ官能基がある;シリカのような補強用無機充填剤にカップリングさせるには、挙げることのできる例としては、シラノールまたはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号、US 6 013 718号またはWO2008/141702号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボン酸基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号、US 6 503 973号、WO 2009/000750号またはWO 2009/000752号に記載されているような)を挙げることができる。また、そのような官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0019】
ポリブタジエン、特に4%と80%の間の‐1,2単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のTg(ガラス転移温度、ASTM D3418に従い測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分‐1,2結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−5℃と−50℃の間のTgを有するコポリマーは、使用するのに適している。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分‐1,2単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分‐1,2+‐3,4単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−5℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0020】
要するに、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から優先的に選ばれる。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選ばれる。
【0021】
1つの特定の実施態様によれば、上記組成物は、50pceと100pceの間の量のSBRエラストマー(エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれか)を含む。
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、SBR/BRブレンド(混合物)である。
他の可能性ある実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、SBR/NR (またはSBR/IR)、BR/NR (またはBR/IR)或いはSBR/BR/NR (またはSBR/BR/IR)ブレンドである。
【0022】
SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中程度のスチレン含有量または例えば35〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4結合を有するBRとの混合物として使用し得る。
【0023】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、イソプレンエラストマーである。用語“イソプレンエラストマー”は、知られているとおり、イソプレンホモポリマーまたはイソプレンコポリマー、換言すれば、可塑化または解凝固し得る天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマー類およびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味する。イソプレンコポリマーのうちでは、特に、イソブテン/イソプレン(ブチルゴム;IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)の各コポリマーを挙げることができる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは、90%よりも多い、さらに好ましくは98%よりも多いシス‐1,4結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0024】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、−70℃と0℃の間のTgを有する1種以上の“高Tg”ジエンエラストマーと−110℃と−80℃、より好ましくは−105℃と−90℃の間のTgを有する1種以上の“低Tg”ジエンエラストマーとのブレンドを含む。高Tgエラストマーは、好ましくは、SSBR、ESBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%よりも多いシス‐1,4配列含有量(モル%)を有する)、BIR、SIR、SBIRおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選択する。低Tgエラストマーは、好ましくは、ブタジエン単位を少なくとも70%に等しい含有量(モル%)で含む。低Tgエラストマーは、好ましくは、90%よりも多いシス‐1,4配列含有量(モル%)を有するポリブタジエン(BR)からなる。
【0025】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、例えば30pceと100pceの間、特に50pceと90pceの間の量の高Tgエラストマーを、低Tgエラストマーとのブレンドとして含む。
【0026】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、90%よりも多いシス‐1,4配列含有量(モル%)を有するBR(低Tgエラストマーとして)と1種以上のSSBRまたはESBR(高Tgエラストマーとして)とのブレンドを含む。
本発明の組成物は、1種のみのジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含み得る。
【0027】
II.2‐ポリエーテルブロックアミド(または“PEBA”)熱可塑性エラストマー
本発明に従うタイヤトレッドは、ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーを含むという他の本質的な特性を有するゴム組成物を含む。
【0028】
ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーは、ポリエーテルブロックとオリゴアミドブロックを含むブロックポリマーであり、ポリエーテルブロックアミドとしても知られている。これらのポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーは、ポリアミド(PA6、PA11、PA12タイプの)のカルボン酸末端基とポリエーテル(PTMG (ポリテトラメチレングリコール)またはPEG (ポリエチレングリコール)タイプの)のアルコール末端基との重縮合によって得られる。
【0029】
ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーの一般的な化学構造は、知られている通り、HO−(CO−PA−CO−O−PE−O)n−H (式中、PAはポリアミドを意味し、PEはポリエチレンを意味する)である。
ポリアミドブロックは、構造剛性を与え、柔軟性および弾力性を付与するポリエーテルブロックと交互している。
【0030】
上記ゴム組成物は、好ましくは5pceよりも多いポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマー、より好ましくは10pceと50pceの間のそのようなエラストマーを含む。
ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーは周知であり、商業的に入手可能であって、例えば、Arkema社から品名Pebaxとして販売されている。
【0031】
II.3‐補強用充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0032】
任意のカーボンブラック、特に、タイヤ級ブラック類は、カーボンブラックとして適している。後者のうちでは、100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級、例えば、ブラック類N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375)が、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN722)も挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0033】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号、WO‐A‐2006/069793号、WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0034】
本出願においては、用語“補強用無機充填剤”とは、定義によれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”としてまたは“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強機能において置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその天然または合成起源にかかわらず)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0035】
補強用無機充填剤が存在する物理的状態は、粉末、微細真珠形、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、用語“補強用無機充填剤”は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味する。
【0036】
使用するのに特に適する補強用無機充填剤は、シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)である。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(HDSとして知られている)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0037】
使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m2/gと400m2/gの間、より好ましくは60m2/gと300m2/gの間のBET表面積を有する。
【0038】
好ましくは、補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の総含有量は、50pceと200pceの間、より好ましくは100pceと150pceの間の量である。
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、50pceと150pceの間、より好ましくは50pceと120pceの間の無機充填剤、特にシリカと、任意構成成分としてのカーボンブラックとを含む補強用充填剤を使用する;カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20pce未満、より好ましくは10pce未満(例えば、0.1pceと10pceの間)の含有量で使用する。
【0039】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合を与えることを意図する少なくとも二官能性であるカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性のオルガノシロキサンまたはポリオルガノシラン類を使用する。
特に、例えば出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”のポリスルフィドシランを使用する。
【0040】
以下の定義に限定されることなく、使用するのに特に適しているのは、下記の一般式(I)に相応する“対称形”ポリスルフィドシランであるポリスルフィドシランである:
(I) Z ‐ A ‐ Sx ‐ A ‐ Z
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素系基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】


(式中、基R1は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
基R2は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであって、C1〜C18アルコキシまたはC5〜C18シクロアルコキシ基(好ましくは、C1〜C8アルコキシおよびC5〜C8シクロアルコキシから選ばれる基、さらにより好ましくはC1〜C4アルコキシから選ばれる基、特にメトキシおよびエトキシ)を示す)]。
【0041】
上記式(I)に相応するポリスルフィドアルコキシシラン類の混合物、特に、通常の商業的に入手可能な混合物の場合、“x”の平均値は、好ましくは2と5の間の、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、ジスルフィドアルコキシシラン(x = 2)によっても有利に実施し得る。
【0042】
ポリスルフィドシランの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのような、ビス(C1〜C4)アルコキシ(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキルのポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(またはUS 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0043】
ポリスルフィドアルコキシシラン類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式VIIIにおいて、R2 = OH)、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは4phrと8phrの間の量である。
【0044】
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4pceと12pceの間、より好ましくは4pceと8pceの間である。
【0045】
当業者であれば、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、充填剤とエラストマー間の結合を確立させるためにカップリング剤の使用を必要とするその表面官能部位(特にヒドロキシル)を含むかを条件として使用し得ることを理解されたい。
【0046】
II.4‐各種添加剤
また、本発明に従うタイヤトレッドのゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;上述した可塑剤以外の可塑剤;疲労防止剤;補強用樹脂;メチレン受容体(例えば、ノボラックフェノール樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤および加硫活性化剤のような、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全てまたは数種も含む。
【0047】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤;無機充填剤を被覆するための薬剤;知られている通り、ゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改良し組成物の粘度を低下させることによって、生状態において使用されるべき組成物の能力を改良することのできるより一般的な加工補助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル;第一級、第二級または第三級アミン類;或いはヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
【0048】
また、1つの好ましい実施態様によれば、本発明に従う組成物は、可塑剤も含む。好ましくは、この可塑剤は、固形炭化水素系樹脂、液体可塑剤またはこれら2つの混合物であり得る。
総可塑剤含有量は、好ましくは10pceよりも多く、より好ましくは10pceと100pceの間、特に20pceと80pceの間、例えば、20pceと70pceの間の量である。
【0049】
本発明の第1の好ましい実施態様によれば、この可塑剤は、“低Tg”可塑剤として知られている20℃において液体の可塑剤である、即ち、この可塑剤は、定義によれば、−20℃よりも低い、好ましくは−40℃よりも低いTgを有する。
【0050】
ジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の増量剤オイルおよび任意の液体可塑剤を使用し得る。室温(20℃)において、これらの可塑剤またはこれらのオイルは、多かれ少なかれ粘稠であり、特に室温では本来固体である炭化水素系可塑化用樹脂とは対照的に、液体(即ち、注釈として、その容器の形状を時間と共にとる能力を有する物質)である。
【0051】
ナフテン系オイル(高粘度または低粘度を有し、特に、水素化されているまたは水素化されていない)、パラフィン系オイル、MES(中度抽出溶媒和物(medium extracted solvate))オイル、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物(treated distillate aromatic extract))オイル、鉱油、植物油、可塑化用エーテル、可塑化用エステル、可塑化用ホスフェート、可塑化用スルホネート、並びにこれらの化合物の混合物から選ばれる液体可塑剤は、使用するのに特に適している。
【0052】
挙げることができる可塑化用ホスフェートとしては、例えば、12個と30個の間の炭素原子を含有する可塑化用ホスフェート、例えば、リン酸トリオクチルがある。特に挙げることができる可塑化用エステルの例としては、特に、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセリントリエステルおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる化合物がある。上記トリエステルの中では、特に、好ましくは不飽和C18、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物からなる群から選ばれる不飽和脂肪酸から主として(50質量%よりも多くまで、より好ましくは80質量%よりも多くまで)なるグリセリントリエステルを挙げることができる。さらに好ましくは、合成起原または天然起原(この場合は、例えば、ヒマワリまたはナタネ植物油)のいずれであれ、使用する脂肪酸は、50質量%よりも多くまでの、さらにより好ましくは80質量%よりも多くまでのオレイン酸からなる。高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレアート)は周知であり、例えば、特許出願WO 02/088238号に、タイヤトレッド中の可塑化剤として記載されている。
【0053】
本発明のもう1つの実施態様によれば、液体可塑剤の含有量は、5pceと50pceの間、好ましくは10pceと40pceの間、より好ましくは10pceと35pceの間である。
もう1つの好ましい実施態様によれば、この液体可塑剤は、そのTgが、0℃よりも高い、好ましくは+20℃よりも高い炭化水素系樹脂である。
【0054】
当業者にとっては知られている通り、用語“樹脂”は、本出願においては、定義によれば、オイルのような液体可塑化剤とは対照的に、室温(23℃)で固体である熱可塑性化合物について使用する。
【0055】
好ましくは、上記熱可塑性炭化水素系可塑化用樹脂は、少なくとも下記の特徴のいずれか1つを示す:
・20℃よりも高い、より好ましくは30℃よりも高いTg
・400g/モルと2000g/モルの間、より好ましくは500g/モルと1500g/モルの間の数平均分子量(Mn);
・3よりも低い、より好ましくは2よりも低い多分散性指数(Ip) (注:Ip = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量である)。
さらに好ましくは、この炭化水素系可塑化用樹脂は、上記好ましい特徴の全部を有する。
【0056】
上記炭化水素系樹脂のマクロ構造(Mw、MnおよびIp)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する:溶媒 テトラヒドロフラン;温度 35℃;濃度 1g/l;流量 1ml/分;注入前に0.45μmの有孔度を有するフィルターにより濾過した溶液;ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正;直列の3本Watersカラムセット(Styragel HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(Waters 2410)およびその関連操作ソフトウェア(Waters Empower)による検出。
【0057】
上記炭化水素系樹脂は、脂肪族または芳香族或いは脂肪族/芳香族タイプであり得る、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。これらの炭化水素系樹脂は、天然または合成であり得、必要に応じて石油系であり得る(その場合、石油樹脂の名称でも知られている)。
使用するのに適する芳香族モノマーの例としては、スチレン;α‐メチルスチレン;オルソ‐、メタ‐またはパラ‐メチルスチレン;ビニルトルエン;パラ‐tert‐ブチルスチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼン;ビニルナフタレン;C9留分(または、より一般的にはC8〜C10留分)に由来する任意のビニル芳香族モノマーがある。好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、スチレンまたはC9留分(または、より一般的にはC8〜C10留分)に由来するビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、当該コポリマー中では、モル画分として表して、小量モノマーである。
【0058】
1つの特定の好ましい実施態様によれば、上記炭化水素系可塑化用樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペン‐フェノールのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、α‐メチルスチレンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる;これらの炭化水素系可塑化用樹脂炭化水素系可塑化用樹脂は、単独でまたは液体可塑剤、例えば、MESまたはTDAEオイルと組合せて使用し得る。
【0059】
用語“テルペン”は、この場合、知られている通り、α‐ピネンモノマー、β‐ピネンモノマーおよびリモネンモノマーを包含する。好ましくは、リモネンモノマーを使用する;この化合物は、知られている通り、3種の可能性ある異性体の形で存在する:L‐リモネン(左旋性鏡像体)、D‐リモネン(右旋性鏡像体)或いはジペンテン、即ち、右旋性鏡像体および左旋性鏡像体のラセミ体。特に、上記炭化水素系可塑化用樹脂のうちでは、α‐ピネン、β‐ピネン、ジペンテンまたはポリリモネンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂が挙げられる。
【0060】
上記の好ましい樹脂は、当業者にとって周知であり、商業的に入手可能であって、例えば、下記に関しては販売されている:
・ポリリモネン樹脂:DRT社から品名Dercolyte L120 (Mn=625g/モル;Mw=1010g/モル;Ip=1.6;Tg=72℃)として、またはArizona社から品名Sylvagum TR7125C (Mn=630g/モル;Mw=950g/モル;Ip=1.5;Tg=70℃)として;
・C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、特に、C5留分/スチレンまたはC5留分/C9留分:Neville Chemical Company社から品名Super Nevtac 78、Super Nevtac 85またはSuper Nevtac 99として、Goodyear Chemicals社から品名Wingtack Extraとして、Kolon社から品名Hikorez T1095およびHikorez T1100として、さらに、Exxon社から品名Escorez 2101およびECR 373として;
・リモネン/スチレンコポリマー樹脂:DRT社から品名Dercolyte TS 105として、またはArizona Chemical Company社から品名ZT115LTおよびZT5100として。
【0061】
また、他の好ましい樹脂の例として、フェノール変性α‐メチルスチレン樹脂も挙げることができる。これらのフェノール変性樹脂を特性決定するためには、知られている通り、“ヒドロキシル価”(規格ISO 4326に従って測定し、mg KOH/gで表す)として知られる指数を使用することを思い起すべきである。α‐メチルスチレン樹脂、特に、フェノール変性樹脂は、当業者にとって周知であり、商業的に入手可能であって、例えば、Arizona Chemical社から品名Sylvares SA 100 (Mn=660g/モル;Ip=1.5;Tg=53℃);Sylvares SA 120 (Mn=1030g/モル;Ip=1.9;Tg=64℃);Sylvares 540 (Mn=620g/モル;Ip=1.3;Tg=36℃;ヒドロキシル価=56mg KOH/g);Sylvares 600 (Mn=850g/モル;Ip=1.4;Tg=50℃;ヒドロキシル価=31mg KOH/g)として販売されている。
【0062】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、上記炭化水素系可塑化用樹脂の含有量は、5pceと50pceの間、好ましくは10pceと40pceの間、さらにより好ましくは10pceと35pceの間の量である。
【0063】
II‐5. ゴム組成物の製造
本発明のタイヤトレッドにおいて使用する組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階)、および、その後の、典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度まで機械加工する第2の段階(“生産”段階)を使用して製造し;その仕上げ段階において、架橋系を混入する。
【0064】
そのような組成物の調製方法は、例えば、下記の段階を含む:
・ジエンエラストマー中に、第1段階(“非生産”段階)において、少なくとも1種の補強用充填剤とポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーを混入し、全てを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的にブレンドする段階(例えば、1回以上);
・混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
・次に、第2段階(“生産”段階)において、架橋系を混入する段階;
・全てを110℃よりも低い最高温度までブレンドする段階。
【0065】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械的段階で実施し、その間に、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサーに、第1工程において、全ての必須ベース構成成分(ジエンエラストマー、補強用充填剤、ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマー)を投入し、その後、第2工程において、例えば1〜2分ブレンドした後、架橋系を除いた他の添加剤、任意構成成分としての充填剤を被覆するための薬剤または加工助剤を導入する。この非生産段階における総ブレンド時間は、好ましくは1分と15分の間の時間である。
【0066】
そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、低温(例えば、40℃と100℃の間の)に維持したロールミルのような開放ミキサー内に導入する。その後、全体を、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
【0067】
実際の架橋系は、好ましくは、イオウと、一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この加硫系を、各種既知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)等でもって補完し、上記非生産第1段階および/または上記生産段階において混入する。イオウの含有量は、好ましくは、0.5pceと3.0pceの間の量であり、また、一次促進剤の含有量は、好ましくは、0.5pceと5.0pceの間の量である。
【0068】
イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、チウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を、促進剤(一次または二次)として使用し得る。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“DCB”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“TBBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンイミド(“TBSI”と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛 (“ZBEC”と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
【0069】
その後、そのようにして得られた最終組成物は、特に実験室での特性決定のための、例えば、シート、プレートの形にカレンダー加工するか、或いは、押出加工して、例えば、トレッドの製造において使用するゴム形状物を形成させる。
本発明は、生状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方の上記タイヤに関する。
【0070】
III‐本発明の実施例
III.1‐組成物の製造
以下の試験を、以下の方法で実施する:ジエンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマー、補強用充填剤(シリカおよび/またはカーボンブラック)、さらにまた、加硫系を除いた各種他の成分を、初期容器温度がおよそ60℃である密閉ミキサー(最終充填度:およそ70容量%)内に連続して導入する。その後、熱機械的加工(非生産段階)を1段階で実施し、この段階は、165℃の最高“落下”温度に達するまで合計で約3〜4分間続く。
【0071】
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、イオウとスルフェンアミドタイプの促進剤とを30℃のミキサー(ホモ・フィニッシャー)内で混入し、全体を適切な時間(例えば、5分と12分の間の時間)混合する(生産段階)。
【0072】
そのようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプレート(2〜3mm厚)または薄ゴムシートの形にカレンダー加工するか、或いはトレッドの形に押出加工する。
【0073】
III.2‐試験
下記の試験は、対照トレッド組成物と比較しての、本発明に従うタイヤトレッド組成物の生状態の加工性の改良を証明する。
【0074】
このことを実施するため、4通りのトレッドゴム組成物、即ち、本発明に従う3通りの組成物(以下C.2〜C.4で示す)および本発明に従わない組成物(対照、以下C.1で示す)を、上述したようにして製造した。
これら組成物の配合を、下記の表1に示す。
【0075】
組成物C.1は、自家用車用の“グリーンタイヤ”トレッドにおいて使用し得るSBRをベースとする対照組成物である。
組成物C.2〜C.4は、SBRおよびポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーをベースとする。これらの組成物は、それぞれ10、20、30pceのSBRをポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーで置換えたことのみで、対照組成物C.1と異なっている。4つの組成物を、極めて高含有量の補強用充填剤によって特性決定する。また、それら組成物は、炭化水素系樹脂(ポリリモネン樹脂)、液体可塑剤(グリセリンのオレイン酸トリエステル)およびMESオイルを含む可塑剤混合物も含む。
【0076】
硬化(加硫)前後の組成物の諸性質を、下記の表2に示す。
予期に反して、組成物C.2〜C.4は、対照組成物C.1のムーニー粘度値よりも極めて低い値を有し、これらの値は、生状態におけるこれら組成物の加工性の相当の改良を意味していることに注目されたい。
さらにまた、組成物C.2〜C.4は、未架橋状態と架橋状態間の諸性質の大いに改良された妥協点を有することにも注目されたい。特に、生組成物のムーニー粘度が低下しているのに対し、小変形(MA10)での硬化組成物の剛性は、対照組成物の剛性に対して実質的に増進している。さらに、破断点伸び(AR)は、本発明に従うトレッドの組成物C.2〜C.4において改良されている。
【0077】
最後に、道路把握および転がり抵抗特性は、20℃および40℃において測定したtan(δ)値によって証明されているように、認識しえるほどには変化していない。
要するに、ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーの使用は、本発明に従うトレッドゴム組成物の加工能力を、タイヤの道路把握および転がり抵抗特性を認識し得るほど損なうことなく大きく改良することを可能にしている。
【0078】
表1

(1) SSBR溶液 (乾燥SBRとして表す含有量):40%のスチレン、12%のポリ(1,2‐ブタジエン)単位および48%のポリ(1,4‐ブタジエン)単位) (Tg = −28℃);
0.5%の1,2‐単位、1.2%のトランス‐単位、98.3%のシス‐1,4‐単位を含むBR (Tg = −106℃);
(2) ポリエーテルブロックアミドTPE (Arkema社からのPebax 2533);
(3) シリカ (Degussa社からのUltrasil 7000 GR);
(4)カップリング剤TESPT (Degussa社からのSi69);
(5) カーボンブラック、N234;
(6) グリセリンのオレイン酸トリエステル (Novance社からのLubrirob Tod 1880)、ポリリモネン樹脂(DRT社からの“Dercolyte L120”)およびSBR増量剤オイル(MES)の混合物;
(7) N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン(Flexsys社からの“Santoflex 6‐PPD”);
(8) DPG = ジフェニルグアニジン (Flexsys社からの“Perkacit DPG”);
(9) 酸化亜鉛 (工業級;Umicore社から);
(10) Stearine (Uniquema社からの“Pristerene”);
(11) N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS)。
【0079】
表2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドが、少なくとも1種のジエンエラストマー、補強用充填剤およびポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーを含むゴム組成物を含むことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
ポリエーテルブロックアミド熱可塑性エラストマーの含有量が、5pceよりも多く、より好ましくは10〜50pceの範囲内である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
可塑剤も含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項5】
可塑剤含有量が、10pceよりも多い、請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記可塑剤が、ガラス転移温度(Tg)が0℃よりも高い熱可塑性炭化水素系樹脂である、請求項4または5記載のタイヤ。
【請求項7】
前記熱可塑性炭化水素系樹脂が、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンフェノールのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、α‐メチルスチレンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる、請求項6記載のタイヤ。
【請求項8】
可塑剤が、20℃で液体であり、−20℃よりも低いガラス転移温度(Tg)を有する、請求項4または5記載のタイヤ。
【請求項9】
前記液体可塑剤が、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、可塑化用エステル、可塑化用エーテル、可塑化用ホスフェート、可塑化用スルホネートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項8記載のタイヤ。
【請求項10】
請求項6または7記載の炭化水素系樹脂と請求項8または9記載の液体可塑剤を含む、請求項4または5記載のタイヤ。
【請求項11】
前記補強用充填剤が、カーボンブラック、シリカ、またはカーボンブラックとシリカの混合物を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項12】
補強用充填剤の総含有量が、50pceと200pceの間の量である、請求項11記載のタイヤ。
【請求項13】
補強用充填剤の総含有量が、100pceと150pceの間の量である、請求項12記載のタイヤ。

【公表番号】特表2013−521360(P2013−521360A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555388(P2012−555388)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052963
【国際公開番号】WO2011/107446
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】