説明

トレッド用ゴム組成物

【課題】石油外資源の含有比率を高めることで、地球に優しく、将来の石油の供給量の減少に備え、ウェット路面およびドライ路面において充分な走行性能を示すタイヤのトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴムおよび/またはエポキシ化天然ゴムを80重量%以上含むゴム成分100重量部に対して、8重量部以上のレジン、および白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有するトレッド用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油枯渇時を想定したトレッド用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が重視されるようになり、CO2排出抑制の規制が強化され、また、石油原料は有限であって供給量が年々減少している。このことから、将来的に石油価格の高騰が予測され、スチレンブタジエンゴムやカーボンブラックなどの石油資源からなる原材料の使用には限界がみられる。そのため、将来石油が枯渇したときを想定すると、天然ゴムやシリカ、炭酸カルシウム等の白色充填剤のような石油外資源を使用していくことが必要となる。しかし、天然ゴムを主体としたトレッド配合では、ウェット路面およびドライ路面における走行性能は、通常使用されるスチレンブタジエンゴムに対して劣る。そこで、充填剤としてシリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの白色充填剤を使用することでウェット路面における走行性能を改善する方法があるが、その場合、ドライ路面における走行性能が不充分となる。
【0003】
特許文献1には、石油が枯渇したときを想定したタイヤ用原材料を示す技術が開示されているが、ウェット路面およびドライ路面において充分な走行性能を示すトレッド用ゴム組成物については開示されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−63206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、石油外資源の含有比率を高めることで、地球に優しく、将来の石油の供給量の減少に備え、ウェット路面およびドライ路面において充分な走行性能を示すタイヤのトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天然ゴムおよび/またはエポキシ化天然ゴムを80重量%以上含むゴム成分100重量部に対して、8重量部以上のレジン、および白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有するトレッド用ゴム組成物に関する。
【0007】
前記レジンは天然由来であることが好ましい。
【0008】
前記エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が12モル%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、石油外資源の含有比率を高めることで地球に優しく、将来の石油の供給量の減少に備えたタイヤに用いるトレッド用ゴム組成物を提供することができ、さらに該ゴム組成物から得られるタイヤは、ウェット路面およびドライ路面において優れた走行性能を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分、レジンおよび充填剤からなる。
【0011】
本発明のトレッド用ゴム組成物におけるゴム成分は、天然ゴム(NR)および/またはエポキシ化天然ゴム(ENR)からなる。
【0012】
エポキシ化天然ゴムは、市販のエポキシ化天然ゴムを用いてもよいし、天然ゴムをエポキシ化して用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては、とくに限定されるものではなく、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行なうことができる。たとえば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。
【0013】
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率の平均は12モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましい。エポキシ化率の平均が12モル%未満では、ウェットおよびドライ路面における摩擦係数が低くなる傾向がある。また、エポキシ化率の平均は50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。エポキシ化率の平均が50モル%をこえると、レジンとの併用によりガラス転移点が上昇し、低温での脆化性能が劣る傾向がある。
【0014】
ゴム成分中における天然ゴムおよび/またはエポキシ化天然ゴムの含有率は80重量%以上、好ましくは90重量%以上である。含有率が80重量%未満では、石油外資源の比率が小さくなる。ゴム成分中における天然ゴムおよび/またはエポキシ化天然ゴムの含有率は、特に100重量%であることが好ましい。
【0015】
ゴム成分としては、天然ゴムおよびエポキシ化天然ゴム以外にもスチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などのゴムを用いることができるが、石油外資源から得られることから、天然ゴムおよびエポキシ化天然ゴムからなることが好ましい。
【0016】
本発明のトレッド用ゴム組成物に使用される充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイト、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、クレーなどが挙げられる。本発明のトレッド用ゴム組成物としては、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイトなどの白色充填剤を用いることが好ましい。これらの白色充填剤を用いることで、カーボンブラックなどの充填剤の場合と異なり、転がり抵抗が低減し、石油外資源の比率が上昇するという効果が得られる。
【0017】
充填剤中の白色充填剤の含有率は80重量%以上、好ましくは90重量%以上である。含有率が80重量%未満では、石油外資源の比率が低下し、好ましくない。白色充填剤の含有率は100重量%であることが好ましい。
【0018】
白色充填剤としてシリカを使用する場合、シランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0019】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して4〜20重量部とすることが好ましい。配合量が4重量部未満では、耐摩耗性が悪くなる傾向があり、20重量部をこえると、その場合も耐摩耗性が悪くなる傾向がある。
【0020】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、可塑剤としてレジンを含有する。
【0021】
一般的にゴムの加工性を向上させるため、あるいはグリップ性能をさらに発揮させるために、ミネラルオイルや石油材料であるアロマチックオイル、パラフィンオイルなどの可塑剤を使用する。また、ゴム工業において通常使用される老化防止剤およびワックスの量を増量することでゴムを可塑化し、グリップ性能を向上することができる。可塑剤、老化防止剤およびワックスは、アセトン溶媒で抽出されるため、アセトン抽出分とされる。アセトン抽出分をある程度以上使用することで、グリップ特性を向上することができる。さらにアセトン抽出分としてガラス転移点を向上させることができるレジンを使用することで、大幅にドライ路面における走行性能を改善することができる。
【0022】
レジンとしては、芳香族系石油樹脂(C9留分による樹脂)、クマロンインデン樹脂(石炭クマロンインデン樹脂など)、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂(天然芳香族テルペンなど)、ロジン樹脂、フェノール系樹脂、石油系レジン(C5留分による樹脂)などがあげられる。なかでも、天然芳香族テルペン、石炭クマロンインデン樹脂などの石油以外の天然資源をもとに得られる(天然由来の)レジンが好ましい。
【0023】
レジンの軟化点は50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。軟化点が50℃未満では、製造工程での粘着性が強くなり、タイヤの製造における作業が困難である傾向がある。また、レジンの軟化点は150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましい。軟化点が150℃をこえると、ウェットグリップ性能が不充分となり、レジンを配合するメリットがなくなる傾向がある。
【0024】
レジンの含有量は、ゴム成分100重量部に対して8重量部以上、好ましくは10重量部以上である。含有量が8重量部未満では、グリップ性能の改善効果が小さくなる。また、含有量は50重量部以下、好ましくは35重量部以下である。含有量が50重量部をこえると、硬度が増大する。
【0025】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、レジン以外の可塑剤としてアロマチックオイルやミネラルオイルなどの軟化剤を用いることができる。
【0026】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、ゴム工業において一般的に用いられているワックスおよび老化防止剤を配合することができる。
【0027】
本発明のトレッド用ゴム組成物中のアセトン抽出分(可塑剤、老化防止剤およびワックスの総量)の含有率は、ゴム組成物中において8重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、13重量%以上であることがさらに好ましい。含有率が8重量%未満では、ドライ路面およびウェット路面における走行性能が不充分となる傾向がある。また、アセトン抽出分の含有率は、25重量%以下であることが好ましく、22重量%以下であることがより好ましい。含有率が25重量%をこえると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0028】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、前記ゴム成分、充填剤、レジン、シランカップリング剤、ワックスおよび老化防止剤以外にも、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤および加硫促進剤を配合することができる。
【0029】
本発明のトレッド用ゴム組成物のガラス転移点は−50℃以上であることが好ましく、−40℃以上であることがより好ましい。ガラス転移点が−50℃未満では、ドライ路面およびウェット路面における走行性能が不充分となる傾向がある。また、ガラス転移点は0℃以下であることが好ましく、−5℃以下であることがより好ましい。ガラス転移点が0℃をこえると、脆化温度が高くなり、低温路面においてタイヤが割れる可能性がでてくる。
【0030】
本発明のゴム組成物は、タイヤ部材の中でもトレッドに用いられる。
【0031】
本発明のトレッド用ゴム組成物を用いて、通常の方法により、該ゴム組成物からなるトレッドを含有するタイヤを製造することができる。すなわち、必要に応じて前記薬品を配合した本発明のトレッド用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例】
【0032】
実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0033】
以下に実施例において使用した各種薬品を詳細に説明する。
NR:RSS#1
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol 1502
ENR−25:GATHRIE POLYMER SDN. BHD社製のエポキシ化天然ゴム(エポキシ化率:25モル%)
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN220
シリカ:テグッサ社製のウルトラシル VN3(BET比表面積:175m2/g)
シランカップリング剤:テグッサ社製のSi−69
アロマチックオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
ミネラルオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPA32
植物油:日清製油(株)製の精製パーム油J(S)
石油系レジン:新日本石油化学(株)製のネオポリマー140(軟化点:140℃)
天然芳香族テルペン:ヤスハラケミカル(株)製のTO115(軟化点:115℃)
石炭クマロンインデン樹脂:新日鐵化学(株)製のエスクロンG90(軟化点:90℃)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
老化防止剤:精工化学(株)製のオゾノン6C
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0034】
これら薬品のうち石油外資源は、NR、ENR、シリカ、硫黄、シランカップリング剤、植物油、天然芳香族テルペン、石炭クマロンインデン樹脂、ステアリン酸、酸化亜鉛である。
【0035】
実施例1〜10および比較例1〜4
表1に記載する硫黄および加硫促進剤以外の各種薬品を(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーに充填し、77rpmで145℃に到達するまで混練した。
【0036】
得られた混練物に対して、硫黄および加硫促進剤を表1に示す量配合し、オープンロールで80℃で6分間混練し、未加硫物を得た。
【0037】
前記未加硫物をタイヤ成型機上でトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼りあわせて未加硫タイヤを作製した。それを160℃で20分間加硫することにより、タイヤを製造した。得られたタイヤを使用して、以下の試験をおこなった。
【0038】
(制動テスト)
得られたタイヤを車に装着し、ドライアスファルト路面およびウェットアスファルト路面において、時速100kmからの制動停止距離を測定し、その測定値から、摩擦係数μを求めた。比較例1のμを100として指数表示した。指数が大きいほど性能は良好である。
【0039】
結果を表1に示す。なお、表1のアセトン抽出分とは、ゴム組成物中におけるアセトン抽出分(石油系レジン、天然芳香族テルペン、石炭クマロンインデン樹脂、ワックスおよび老化防止剤)の含有率を示し、石油外比率とは、ゴム組成物中における石油外資源の含有率を示す。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよび/またはエポキシ化天然ゴムを80重量%以上含むゴム成分100重量部に対して、
8重量部以上のレジン、および
白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有するトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
レジンが天然由来である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が12モル%以上である請求項1または2記載のトレッド用ゴム組成物。

【公開番号】特開2006−63093(P2006−63093A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243464(P2004−243464)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】