トロイダル変圧器の製造
本発明はトロイダル変圧器に関して、より詳細にはトロイダル変圧器を製造する新しい効率的な方法、トロイダル変圧器製造用のボビン、およびトロイダル変圧器の該製造方法を実行するシステムに関する。トロイダル変圧器の該製造方法は自動化量産に優れた特性を有し、該方法は、細長い形状のフレキシブル材料から成る少なくとも1つの中空ボビンの周囲にコイルを配備するステップと、ボビンの両端部が互いに向き合わされ、該ボビンの端部の一方が開口を画成するように、該少なくとも1つのボビンを該コイルと共に折曲するステップと、リボンが基本的に該ボビン10の内部空洞全体を充填して、コアを形成するまで、該ボビン内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるよう、該開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップとから成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダル変圧器に関するものであり、より詳細に述べると、トロイダル変圧器を製造する新しく効率的な方法、トロイダル変圧器製造用のボビン、およびトロイダル変圧器の該製造方法を実行するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
巻回された円形のコアと、コアを囲んだ巻線とを有するトロイダル変圧器を提供する提案が数多くなされている。従来技術における提案の大部分は、従来の巻線機の使用によって、連続的なトロイダル形状のコアにコイルが巻回される巻線工程を有する。通常、コイルは変圧器の空の中央孔を介して繰返し挿通される。また、例えば米国特許第4,771,975号明細書に示されているようなスレーブローラを用いる方法もある。
【0003】
あるいは、連続する、もしくはほぼ連続するコア材料を前もって成形された巻線にいかに供給するかについての提案もいくつかなされている。そうした取り組みにおける早期の一例が米国特許第2,191,393号に示されている。また他の例が米国特許第6,145,774号、同第4,765,861号明細書、および同第4,896,893号明細書に示されている。
【0004】
米国特許第4,779,812号明細書においては、高圧の巻線が複数の楔形の束に巻かれている。次にこれは、各々が変圧器の約2分の1に相当する、2つの前もって成形された半円形の変圧器部分に配備される。各楔形部分は巻回されており、連続するワイヤから形成されているが、電圧コイル全長の30パーセントから50パーセントだけ、連続するワイヤから巻き取り可能である。単一の、連続するリボン状ストリップ、あるいは平行に配列された複数のストリップが、半円形部分の隣接する端部間のギャップを介して供給され、該部分で形成されたアーチ形の細長い通路内において適所に巻かれ、磁気コアを形成する。該アーチ形の細長い通路内にそれが巻かれているとき、該磁気コアの半径方向外向きの巻線と係合するベルト手段が用いられ、該コアの巻きを容易にする。
【0005】
米国特許第4,779,812号明細書に示されたデバイスは、アダプタといったような小さい電気機器には適用できない大きなトロイドの製造を主に意図したものである。さらに、複数の楔形の束の個々の巻回、および該アーチ形の細長い通路が形成されるようにそれらを配備、そしてこれに続く、該通路へのリボン供給は面倒で、比較的手間がかかり、時間消費の工程であり、50VAまでの小さい変圧器の自動化量産には適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アダプタといった電気機器の使用に適する50VAまでの小さな変圧器の自動化量産に特に適合する、低生産コストで効率的にトロイダル変圧器を製造することの可能な方法が明らかに必要とされる。
【0007】
本発明の主要目的は、上に記載を行ったタイプに関連する制限を軽減することである。
【0008】
本発明の目的は、自動化量産に優れた特性を有する、主として50VAまでの小さなトロイダル変圧器を製造する方法およびシステムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、低生産コスト、低無負荷損失、高効率、低重量、および少容積を特徴とする、特にアダプタといった電気機器の使用に適合させたトロイダル変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一態様に従い、トロイダル変圧器の製造方法に関して、該方法は、細長い形状であって、かつフレキシブル材料から成る、少なくとも1つの中空のボビンの周囲にコイルを配備するステップと、ボビンの両端部が互いに向き合わされて、該ボビンの端部の一方が開口を画成するように、該少なくとも1つのボビンを該コイルと共に折曲するステップと、リボンが、基本的に該ボビン10の内部空洞全体を充填し、それによってコアを形成するまで、該ボビン内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるよう、該開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップとから成る。
【0011】
本発明は、従来の巻線機を用いて、連続するトロイダルコアにコイルを巻回することに関連する従来技術における問題を解決する。従来技術において通常2つの異なる巻線工程がある。第一に、最も一般的にコイルは変圧器の空の中央孔を介して繰返し挿通される。第二に、例えば米国特許第4,771,957号明細書に示されているようにスレーブローラを用いる方法がある。本発明において、このスレーブローラは、真直ぐなボビンの周囲にまず最初にコイルを巻回する工程に取って代わる。このアプローチは、従来技術において公知の両方の方法と比較して、コイルの巻回を著しく単純化し、迅速にする。
【0012】
さらに、真直ぐなボビンの周囲にコイルを巻回する本発明に従う工程により、迅速な一工程でコイル全体の巻回を可能にする。これは、米国特許第4,779,812号明細書に提示されているような解決方法、つまり、楔形部分が一般に電圧コイルの全長の30パーセントから50パーセントのみを、連続するワイヤから巻回させるといった、変圧器の効率を低下させる方法とは異なる。
【0013】
さらに、本発明は、変圧器の空の中央孔の相対寸法を減じるのを可能にする。なぜなら、本発明に基づく方法を用いる際、原理的に、巻線工程を行うためにこの孔を必要としないからである。中央孔の寸法を減じることで、磁路長(MPL)が短くなる。これは、コイル巻線の巻回をより少なくでき、容易に高流量に達し得る。またこれにより、変圧器全体の寸法を減じることが可能となり、様々な電気機器の使用にさらに適したものとする。
【0014】
本発明に従う方法の望ましい実施形態に基づいて、該開口を介して該リボンを供給した後、該リボンを所望の長さにカットする追加ステップを有する。該開口を介して該リボンを供給した後に該リボンをカットするステップは、供給ステップを開始する前に、必ずしもリボンを事前カットしておく必要がないという特別な長所をもたらす。これは、前もって適した長さにリボンを事前カットしなくてはならない場合に比較し、かなり時間の節約となることを意味する。さらに正確には、仕入先からリボンがきたら直接リボンロールを用いて、本発明に従い供給ステップを実行することが可能である。これは、本発明がより安価で、かつ扱いやすく、より量産に適していることを意味する。
【0015】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該開口を介して最初に供給されることが意図される該リボンの端部を予備曲げする追加ステップを有する。リボンを予備曲げするステップは、ボビンの中央(すなわち空洞の内部カーブ)にリボンを進行させることに寄与する。言い換えると、予備曲げステップは緩みを減じて、ボビン内にてリボンが容易に巻回できるようにする。こうして、詰まりや高すぎる摩擦、もしくは同様の理由によって、リボンが壊れたり、つっかえたりするリスクを減じる。
【0016】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、リボンが該ボビン内に巻かれる間、該リボンの滑りを良くするために、ボビン内に最初に供給される該リボンの、基本的に、ボビン内部の中空の空洞の内部カーブに面する側の、該ボビン内に最初に巻かれる該リボンの巻線に相当する部分に、低摩擦係数の層を提供する追加ステップを有する。この低摩擦層は主に、従来技術に基づいてリボンを巻回する際にしばしば生じるリボンの停止あるいは詰まりに関連する障害を減じるように作用する。
【0017】
またさらに、該層は好ましくは、低摩擦係数の第一サイドと接着性の第二サイドを有する接着テープ、低摩擦係数のコーティング、および流体のうちの少なくとも1つによって提供される。これらの全ての表面は容易に適合可能であり、こうして自動化量産に特に適したものである。
【0018】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、リボンの最内部の巻線と連続協働するようにフレキシブル送り部材を配備する追加ステップを有し、該リボンが該ボビン内に巻かれる間、該リボンの滑りをさらに良くして、コアを形成する。フレキシブル送り部材は、けん引力または押す力のいずれか、もしくはこの両方の力を伝えることによって、ボビン内のリボンの充填度を改善するように作用する。さらに、該フレキシブル送り部材は、糸、ワイヤ、鎖、接着テープ、ベルト、磁気力、ロール部品、および、メッシュ部品の少なくとも1つから成る。その場合であっても、該フレキシブル送り部材は再利用可能であって、配備が容易であることから、該フレキシブル送り部材は自動化量産に適している。
【0019】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該フレキシブル送り部材と該リボンとの協働を仲介する、該リボンと連接する仲介手段を配備する追加ステップを有し、該仲介手段は、該ボビン最内部の該リボン巻線の少なくともほんの少しの部分に当たる距離だけ該フレキシブル送り部材と係合している。
【0020】
該仲介手段は好ましくは、接着テープ、接着コーティング、接着剤、溝、メッシュ部品の少なくとも1つから成る。仲介手段がリボンとフレキシブル送り部材の両方と係合するようになっていることから、フレキシブル送り部材の動きがリボンに伝わり、ボビン内への巻回をさらに容易にする。仲介手段がこのように構成されていることから、大きな摩擦力を処理することができる。
【0021】
望ましい実施形態において、該仲介手段は、前記の層の部分からはみ出る該リボンから成る。これは特に、本発明の一実施形態において、該層が、開口を介して最初にボビン内に供給されることが意図されるリボンの部分に固定された接着テープによって提供されている場合に当たる。該テープは、この場合好ましくは糸もしくはワイヤから成るフレキシブル送り部材との係合をフリーにして、テープ接着側の部分がリボン外側にはみ出すように固定されている。
【0022】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップはさらに、該コイルと共に該折曲ボビンを回転させ、そして、基本的に即座に該コイルと共に該折曲ボビンの回転を停止するステップを有する。この工程の主な長所は、リボン40が開口30を通ってボビン10内に進入することが強いられ、そして、量産目的に適合が容易な方法にて、単一工程で該ボビン10内にリボン自体が巻回する効果による、慣性モーメントの原理を有用できることである。
【0023】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップはさらに、該開口を介して媒体を注入し、それにより折曲位置にある該中空ボビンの内部の外側カーブと該リボン間に可変のギャップを作り出すステップと、該中空のボビンから該媒体を導出するステップを有する。
【0024】
該媒体は主に、リボンがボビン内に巻回されているとき、中空のボビンの内部空洞の外側のカーブとリボン間の摩擦力を低減するように作用すべきである。加えて、該媒体は、注入媒体の動きによってリボンに及ぼされる圧縮力の助けにより、リボンをさらに内側に押そうとする長所を有する。該媒体は好ましくはガスおよび流体のうちの少なくとも1つから成る。しかし場合によりパウダーのような固体の媒体も同様にあり得る。
【0025】
さらに、望ましい実施形態において、本発明に従ってトロイダル変圧器を製造する方法は磁界にて実行される。磁界は好ましくは可変磁界であり、これは、従来技術との比較において少なくとも主に2つの長所をもたらす。第一に、磁界がリボンの巻線に接着特性をもたらすことで、リボンがボビン内にて巻回されている間、巻線が互いに密着する。これは、好ましい電磁特性を有するコアを密に形成することに寄与する。第二に、磁界は該リボンに回転力を生じて、コアの形成をさらに容易にする。これは、折曲ボビンに沿う異なる部分にて、磁界にまた別の力がもたらされ、主軸回りにトロイドを回転させる場合に特に当てはまる。
【0026】
本発明の他の態様に従って、該細長いチューブがフレキシブル材料から作られて、折曲可能になっていることから、該細長いチューブの両端が互いに向かい合わせられ、該細長いチューブの該端部の一方が開口を画成することを特徴とし、かつ該細長いチューブが基本的に中空内部の矩形断面を有することを特徴とする、基本的に該細長いチューブから成る、トロイダル変圧器の製造用のボビンに関する。
【0027】
該ボビンの主な長所は、従来の巻線機を用いてコイルの巻回を可能にすることである。なぜならば、ボビンが真直ぐな状態にあり、該巻回が真直ぐで直線的に行えるためである。一方、伝統的にトロイダル変圧器の製造では、コイルの巻回がドーナツ型のコアの周囲になされており、この欠点については上に記載を行った。本発明に従うボビンの他の長所は、ボビンが、本発明の方法に従って製造される最終的に組立部にされるトロイダル変圧器の部分として残ることから、トロイダル変圧器におけるコアとコイル巻線間の電圧ストレスに十分に耐える絶縁を可能にすることである。
【0028】
さらに、ボビンはフレキシブル材料から作られ、ボビンの両端を互いに向かい合わせできるよう折曲可能となっている。フレキシブル材料は例えばプラスチック材料あるいはラバーであって、プラスチック成形もしくは同様の方法により継ぎ目のないボビンを製造することが可能である。一実施形態において、該フレキシブル材料は低摩擦材料である。特に、この低摩擦材料により、ボビンの内部空洞におけるリボンの巻回を容易にする。あるいは、ボビンの中空の空洞内は低摩擦コーティングにて被覆される。
【0029】
コア材料が平らな矩形の断面を有するリボンの形状となる場合、このコア材料をボビンが受取り、収容出来るように、ボビンの内部の中空断面は基本的に矩形であり、よって該リボンがボビン内に密に巻かれていると、基本的に矩形断面のコアが形成される。
【0030】
本発明の他の態様に従って、トロイダル変圧器を製造するシステムに関して、該システムはトロイダル変圧器の該製造方法を実行する手段から成る。該システムから得られる長所は、前に論じた本発明に従うトロイダル変圧器の該製造方法の長所、および本発明に従うトロイダル変圧器製造用の該ボビンの長所に一致する。
【0031】
本発明の他の態様に従って、上記方法により製造されるトロイダル変圧器に関する。このような変圧器は、アダプタといった電気機器において使用可能である。
図面を参照することで本発明のフィーチャがより明らかになろう。
【実施例】
【0032】
本発明について、例示の方法により、かつ図解のみを目的に、図面を参照にしてさらなる詳述を行う。
【0033】
図1は、トロイダル変圧器の製造に使用される、本発明に従うボビン10の一実施形態を示した斜視図である。
【0034】
ボビン10は基本的にフレキシブル材料の細長いチューブから成る。該フレキシブル材料は例えばプラスチック材料もしくはラバーであり、加えて、ボビン10は折曲可能になっており、該細長いチューブの両端を互いに向かい合わせられる。また、ボビン10は、本発明の方法に従って製造される、最終的にアセンブリされるトロイダル変圧器の部分として残ることから、トロイダル変圧器のコアとコイル巻線間の電圧ストレスに十分に耐える絶縁の追加の長所をもたらす。さらに、プラスチック成形もしくは同様の方法で、該フレキシブル材料により継ぎ目のないボビンを製造することが可能である。一実施形態において、該フレキシブル材料は低摩擦材料である。特に、この低摩擦材料により、ボビン10の内部空洞におけるリボンの巻回を容易にする。あるいは、ボビン10の中空の空洞内は低摩擦コーティングにて被覆される。
【0035】
コア材料が平らな矩形の断面を有するリボンの形状となる場合、このコア材料をボビン10が受取り、収容出来るように、ボビン10の内部の中空断面11は基本的に矩形であり、よって該リボンがボビン内に密に巻かれていると、基本的に矩形断面のコアが形成される。
【0036】
さらに、図1は、1次巻線用の第一部分14と2次巻線用の第二部分15から成るボビン10の実施形態を示す。しかし他の実施形態においては、ボビン10は、1次巻線と2次巻線が互いの上にかさねて巻かれ、両方が細長いボビン全体に巻かれた1つの部分のみから成る。従って、この場合は、ボビン10の中間に分割部分はない。この全部のケースにおいて、ボビンが折曲される前に巻線がなされる。
【0037】
図2は、トロイダル変圧器の製造に使用される、本発明に従うボビン10の一実施形態を示した、部分拡大図を含む斜視図であり、ここで、特定フューチャとして、好ましくは、一操作で両端が互いに連結できるようにされた連結手段12をボビン両端に備え、それによりボビンの両端を互いにしっかりと固定する。これにより、コイルがボビン10周囲に巻回された後、トロイダル形状を形成して、この形状の確保することが可能となる。これらの連結手段12は例えば、ボビンのプラスチック成形で形成されるクリップ装置から成り、図2に示すようにボビンそれ自体の部分であるか、もしくは接着コーティングを追加に含むかである。リボンが供給されるボビン両端間のスペースを残して、ホール21は供給工程の間使用される。ボビン内部が十分に充填されると、ホール22を使用してトロイダルリングを完全に閉じる。
【0038】
図3は、前記のフレキシブル送り部材50をガイドする、該ボビン内に配置される少なくとも1つのスロットから成るスロットセット13を具備した、本発明に従うボビン10の他の実施形態を示した、部分的にカットした斜視図である。該スロットセット13は、折曲部分となる前記の中空のボビンの内部の外側のカーブに沿ってらせん状に配置されている。スロットセット13はフレキシブル送り部材を受取るようになっており、これが締め付けられて仲介手段にもっていかれる前に、これを適所に導く。このようにスロット13はフレキシブル送り部材の適用をより容易にする。
【0039】
図4は、本発明に従う方法の第一メインステップS10に対応する、ボビン周囲に配備されるコイル20を有する、図1のボビンを示した斜視図である。図4において、コイル20は第一部分14の周りに巻回される1次巻線と、第二部分15の周りに巻回される2次巻線から成る。最も有利には、コイル巻線は、従来の巻線機により自動で行われる。
【0040】
図5は、図7の第二メインステップS20に対応する、上記コイル20と共に折曲された図2のボビン10を示した斜視図である。左側は折曲される直前のボビン10を、右側は折曲された形状のボビン10を示しており、ボビンの両端は互いに向かい合わせにされ、該ボビンの両端の一方は開口30を画成する。
【0041】
図6は、図7における第三メインステップS30に対応する、コイル巻線20を有する図3の折曲ボビン10の斜視図であり、リボン40が、基本的に該ボビン10の内部空洞全体を充填してコアを形成するまで、該ボビン10内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるように、前記開口30を介して供給されている磁気材料の該リボン40を示している。
【0042】
図6はフレキシブル送り部材50も示しており、該フレキシブル送り部材50は該リボン40と協働するように配置されており、該ボビン内への巻回の間、該コアの形成をさらに容易にする。
【0043】
上に述べたように、フレキシブル送り部材50は、けん引力または押す力のいずれか、もしくはこの両方の力を伝えることによって、ボビン10内のリボン40の充填度を改善するように作用する。好ましくは、該フレキシブル送り部材50は、全供給ステップの間、コアの最内部のリボン巻線と継続協働する。これは、リボンがボビン内に巻回されているとき、該フレキシブル送り部材50が、コアの増していく直径を調整する必要がないことを意味する。またこれは、巻線工程の間常に、いわゆるベルト手段が最外部のコア巻線と係合するように配備された、例えば米国特許番号第4,779,812号と比較して、よりシンプルな工程であることを意味する。
【0044】
さらに、該フレキシブル送り部材50は最も好ましくは糸もしくはワイヤから成る。しかし、他の実施形態においては、フレキシブル送り部材50は、鎖、接着テープ、ベルト、磁気力、ロール部品、および、メッシュ部品の少なくとも1つから成る。どの場合であっても、該フレキシブル送り部材は再利用可能であって、配備が容易であることから、該フレキシブル送り部材は自動化量産に適している。
【0045】
フレキシブル送り部材の配置を図10にも示しており、ステップS24の説明との関連において以下にさらに詳述する。
【0046】
図7は、本発明に従うトロイダル変圧器の製造方法における特定の一実施形態に対応するフローチャートである。以下の詳細説明において、方法ステップを示す以外の参照符号は、前の図面の図1から図6、およびこれに続く図8から図10における参照符号と同様である。
【0047】
ステップS10において、フレキシブル材料の細長い形状の中空ボビン10の周囲にコイル20が配備される。コイル20は従来の巻線機を用いて適所に配備される。
【0048】
その後、ステップS20において、ボビン10はその周囲に巻回されるコイル20と共に折曲されることで、ボビンの両端は互いに向かい合わせにされ、該ボビンの両端の一方は、コア材料を供給することの可能な開口30を画成する。
【0049】
本発明の望ましい実施形態において、折曲ステップは、ボビン10が挿通される、第1直線部分と基本的に円形の第2部分とを有する複数のバーもしくはチューブから成る装置もしくはシステムによって実行される。該バーもしくはチューブはボビン10に異なる温度を伝えるようにされており、それによってボビンが該バーもしくはチューブの第1直線部分に挿通されると温まり、これが第2円形部分に進行する際、より折曲に適した状態となる。第2円形部分に完全に挿通されることでトロイダル形状となると、ボビン10がクールダウンすることによりボビンのトロイダル形状の形成および維持に寄与する。ボビン10の冷却後、これはバーもしくはチューブ装置から取り除かれ、次の工程ステップへと移る。
【0050】
ステップS30において実行される該方法の次の主工程は、リボン40が、基本的に該ボビン10の内部空洞全体を充填してコアを形成するまで、該ボビン10内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるように、上記開口30を介して磁気材料の該リボン40を供給することである。
【0051】
しかし、図7に概略を示した本発明の特定の実施形態において、供給ステップS30に関連して複数の追加ステップS21からS25も実行される。これら全てが様々な方法によりボビン10へのリボン40の供給を用意し、それを容易にする。これについては以下においてより詳細に論じる。さらに、以降にさらなる詳細を明らかにするように、ステップS31からS36もさまざまな方法にてボビン10へのリボン40の供給を容易にするよう寄与する。
【0052】
よって、ステップS21において、ボビン10がその周りのコイル20と共に折曲された後、リボン40は、開口30を介して初めに供給が意図されるその端部がまず予備曲げされる。
【0053】
予備曲げ工程は好ましくは、開口30の外側に配備されたロール装置によって行われ、その原理を図11に示している。該ロール装置はプッシュ装置の役目も果たし、リボン40を開口30方向に、かつ開口30を介してボビン10内に押し入れ、さらにボビン内へのコア材料の巻回を容易にする。巻回中、予備曲げ工程により、リボンがボビンの中央方向(すなわち空洞の内部カーブ)にうまく進行するようになっている。言い換えると、予備曲げステップは緩みを減じて、ボビン内にてリボンが容易に巻回できるようにする。こうして、詰まりや高すぎる摩擦、もしくは同様の理由によって、リボンが壊れたり、つっかえたりするリスクを減じる。
【0054】
その後、ステップS22において、リボン40が該ボビン内に巻かれる際、該リボン40の滑りを良くするために、ボビン10内に最初に供給される該リボン40の特定の部分に低摩擦係数の層が提供される。ここで、該部分とは基本的に、ボビン10内部の中空の空洞の内部カーブに面する該リボン40の側の、該ボビン10内に最初に巻かれる該リボン40の巻線に相当する。
【0055】
これにより、あり得るリボン40の停止もしくは詰まりに関連する障害が減じられる。さらに、該層は、ねじり力を保持力に変えることに寄与し、それによって、例えば米国特許番号第4,779,812号にあるように、リボンの最内部の巻線を固定するために、リボンに溶接接合を施すといった必要がなくなる。ついでに述べると、これは、その周囲に巻回されたコイルと共に折曲されたボビンの閉構造構成により、本発明に従う方法には適さないか、あるいは可能性さえない。
【0056】
さらに、最初にボビンに供給される該リボンの該部分は好ましくは、基本的に該ボビン内にて最初に巻かれる該リボンの巻線に相当する。これは基本的に、直接的かつ能動的にボビンと密に接触しているボビンの最内部の巻線である。上記の低摩擦面を追加の巻線に適用すると、実際にボビン内での巻線の連続的な締め付けを妨げ、それによってリボンが詰まるリスクがあり、リボンは十分密に巻回されない。
【0057】
またさらに、最も望ましい実施形態において、前記の層は、低摩擦係数の第一サイド、および接着される第二サイドを有する接着テープにより提供される。しかし、他の実施形態においては、該層は低摩擦係数のコーティングおよび流体の少なくとも1つから成る。
【0058】
ステップS23において、フレキシブル送り部材50が、該リボン40の最内部の巻線と連続協働できるように配備され、それにより、該ボビン10内に巻回されている間、該リボン40の滑りをさらに良くして、コアの形成に寄与する。
【0059】
ステップS24において、図6に示すように、該リボン40と連接する仲介手段が配備され、該フレキシブル送り部材50と該リボン40との協働を仲介する。該仲介手段は、図6に示すように、該リボン40の該ボビン10最内部の巻線の少なくともほんの少しの部分に当たる距離だけ該フレキシブル送り部材50と係合している。仲介手段がリボン40とフレキシブル送り部材50の両方と係合するようになっていることから、フレキシブル送り部材50の動きがリボン40に伝わり、ボビン10内への巻回をさらに容易にする。仲介手段がこのように構成されていることから、大きな摩擦力を処理することができる。
【0060】
本発明の最も望ましい実施形態において、図10に示すように、該仲介手段100は、ステップ22にて提供された前記の層の部分からはみ出る該リボン40から成る。これは特に、該層が、開口30を介して最初にボビン10内に供給されることが意図されるリボン40の部分に固定された接着テープにより提供されている場合に当たる。該テープは、この場合好ましくは糸もしくはワイヤから成るフレキシブル送り部材50との係合をフリーにして、テープの接着側の部分がリボン40の外側にはみ出すように固定されている。従い、該仲介手段100は最も好ましくは、接着テープの接着側から成る。しかし、他の実施形態においては、接着コーティング、接着剤、溝、メッシュ部品の少なくとも1つから成る仲介手段を含む。
【0061】
図7に示した特定の実施形態において、該方法は磁界にて実行され、これをS25に提示している。図8にも示している磁界は好ましくは可変磁界であり、これは、磁界を生成するデバイス81によってもたらされ、従来技術との比較において、この存在により少なくとも主に2つの長所がもたらされる。第一に、磁界80がリボン40の巻線に接着特性をもたらすことで、リボンがボビン内にて巻回されている間、巻線が互いに密着する。これは、好ましい電磁特性を有するコアを密に形成することに寄与する。第二に、磁界80は該リボンに回転力を生じ、コアの形成をさらに容易にする。これは、折曲ボビン10に沿う異なる部分にて、磁界にまた別の力がもたらされ、主軸回りにトロイドを回転させる場合に特に当てはまる。
【0062】
もう一度図7に戻り、ステップS31にて、該開口30を介して媒体が注入され、それにより、該折曲ボビン10の内部の外側カーブと該リボン40間に可変のギャップが作り出される。
【0063】
ステップS32にて、ステップS31で注入された媒体がボビン10から導き出される。実際、ステップS31およびS32は全体供給ステップの間、平行して、かつ、おおよそ連続して実行される。該媒体はリボンがボビン10内に巻回されているとき、中空のボビン10の内部空洞の外側のカーブとリボン40間の摩擦力を低減するように作用する。加えて、該媒体は、注入媒体の動きによってリボン40に及ぼされる圧縮力の助けにより、リボン40をさらに内側に押そうとする長所を有する。該媒体は好ましくはガスおよび流体のうちの少なくとも1つから成る。しかし場合によりパウダーのような固体の媒体も同様にあり得る。
【0064】
ステップS33において、リボン40は開口30を介してボビン10に供給された後、所望の長さにカットされ、コアが形成される。
【0065】
ステップ34において、ステップS23にて配備されたフレキシブル送り部材50が取り除かれる。
【0066】
ステップ35において、コイル20を有した折曲ボビン10が回転装置に配置され、高速回転される。その後、突然、ステップS36において、該コイル20を有した該折曲ボビン10の回転が基本的に即座に停止される。これらの工程(すなわちステップS35およびS36)が連続するシーケンスにて実行されることから、リボン40が開口30を通ってボビン10内に進入することが強いられ、量産目的に適合が容易な方法で、単一工程にて該ボビン10内にリボン自体が巻回する効果による、慣性モーメントの原理を有用できる。
【0067】
好ましくは、回転と停止のステップが、開口30を介してリボン40を供給した後に所望の長さにリボン40をカットするステップの後に実行されることで、ボビン10の外側にまだ残っているリボン40の部分をボビン10内に入り込ませることができる。これにより、トロイダル変圧器の効率を低下させるもの、未使用スペースをボビン10に残すことなく、ボビン10にコア材料を完全に充填することが可能となる。さらに、リボン40の部分が、コイル巻線の外側のボビンの開口から突き出ると、変圧器の性能が十分でなく、絶縁要求も満たさないというリスクを有する。
【0068】
この実施形態において、該回転装置は、それの上にボビン10が配備されたホルダから成る。基本的に該ホルダは例えば、圧搾空気のような媒体を徐々に充填することの可能なグロメットから成り、ボビン10を固定する(また、これを空にしてホルダからボビン10を離す)。該ホルダは、その命令により高速回転を行うようにされており、かつ、基本的に即座に停止するようにされている。
【0069】
この工程も図9に示しており、部分断面図を有する上からの透視図によって示されており、左から右に、状態Aでは製造中の変圧器がホルダ90に配備されており、加圧媒体91が充填されている。状態Bでは該変圧器が回転されており、かつ、状態Cでは該変圧器が即座に停止され、それによりリボン40がボビン10内の適所で完全に巻回されることで、慣性モーメントの原理を用いてコアを形成している。
【0070】
本発明は上記理解に限定されないことを指摘する必要がある。これまでの議論は本発明の実施形態の例示説明にすぎない。請求項に明確にされているような本発明の精神から逸脱することなく、様々な変更や修正が可能であることは当業者にとって容易に理解されよう。
【0071】
例えば、本発明に従って実行される方法を考察するために、3つの主なステップS10、S20、およびS30を除いて、必ずしも上記ステップ全てを実行しなくてはならないといったわけではない。他のステップのいずれかを完全に、あるいは部分的に削除するか、もしくは修正することが可能である。さらに、これらのステップを上記の順序に従って実行する必要はなく、これらステップを互いに様々な組合せにおいて実行することが可能である。
【0072】
さらに、ボビンは、連結して完全なボビン10を形成するように意図され、別々に製造された少なくとも2つのピースから成りうる。例として、少なくとも1ピースの一方は1次巻線を保持することが可能であり、また、少なくとも2ピースの他方は2次巻線を保持することが可能である。少なくとも2つのボビンのピースは、巻線工程の前または後のいずれかに、図2において詳細に示された連結手段に類似する手段により相互連結可能である。この場合も、巻線は、連結された、あるいは連結されていない真直ぐなボビンのピースの周囲になされる。
【0073】
他の可能な修正例に、ボビン周囲のコイル巻線が従来の巻線機によって実行される以外に、これも手作業で実行されるといったことがある。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】トロイダル変圧器の製造に使用される、本発明の一実施形態によるボビンを示した斜視図である。
【図2】ボビンの両端に連結手段を含む本発明によるボビンの一実施形態を示した部分拡大図を含む斜視図である。
【図3】スロットセットを配備した本発明に従うボビンの他の実施形態を示す、部分的に切除した斜視図である。
【図4】ボビン周囲にコイルが巻回された、図1のボビンを示した斜視図である。
【図5】ボビン両端が互いに向かい合わせになって、該ボビン端部の一方が開口を画成するように、前記コイルと共に折曲されている該ボビンを示した斜視図である。
【図6】前記開口を介して供給されてコアを形成する磁気材料のリボンと、該リボンと協働するように配置されて該コアの形成をさらに容易にするフレキシブル送り部材とを示した、図3の折曲ボビンの斜視図である。
【図7】本発明に従うトロイダル変圧器の製造方法の一実施形態に対応するフローチャートである。
【図8】磁界にて実行される、本発明の一実施形態に従う方法の略図である。
【図9】左から右に、本発明の一実施形態に従う変圧器の回転と停止の工程を示したものである。
【図10】ボビン(透明に示している)内に供給される磁気材料のリボンと、仲介手段を介して該リボンと協働するように配備されたフレキシブル送り部材とを示した斜視図である。
【図11】予備曲げ工程を実行する、ボビンの外側に配備されたロール部品の原理を示した略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダル変圧器に関するものであり、より詳細に述べると、トロイダル変圧器を製造する新しく効率的な方法、トロイダル変圧器製造用のボビン、およびトロイダル変圧器の該製造方法を実行するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
巻回された円形のコアと、コアを囲んだ巻線とを有するトロイダル変圧器を提供する提案が数多くなされている。従来技術における提案の大部分は、従来の巻線機の使用によって、連続的なトロイダル形状のコアにコイルが巻回される巻線工程を有する。通常、コイルは変圧器の空の中央孔を介して繰返し挿通される。また、例えば米国特許第4,771,975号明細書に示されているようなスレーブローラを用いる方法もある。
【0003】
あるいは、連続する、もしくはほぼ連続するコア材料を前もって成形された巻線にいかに供給するかについての提案もいくつかなされている。そうした取り組みにおける早期の一例が米国特許第2,191,393号に示されている。また他の例が米国特許第6,145,774号、同第4,765,861号明細書、および同第4,896,893号明細書に示されている。
【0004】
米国特許第4,779,812号明細書においては、高圧の巻線が複数の楔形の束に巻かれている。次にこれは、各々が変圧器の約2分の1に相当する、2つの前もって成形された半円形の変圧器部分に配備される。各楔形部分は巻回されており、連続するワイヤから形成されているが、電圧コイル全長の30パーセントから50パーセントだけ、連続するワイヤから巻き取り可能である。単一の、連続するリボン状ストリップ、あるいは平行に配列された複数のストリップが、半円形部分の隣接する端部間のギャップを介して供給され、該部分で形成されたアーチ形の細長い通路内において適所に巻かれ、磁気コアを形成する。該アーチ形の細長い通路内にそれが巻かれているとき、該磁気コアの半径方向外向きの巻線と係合するベルト手段が用いられ、該コアの巻きを容易にする。
【0005】
米国特許第4,779,812号明細書に示されたデバイスは、アダプタといったような小さい電気機器には適用できない大きなトロイドの製造を主に意図したものである。さらに、複数の楔形の束の個々の巻回、および該アーチ形の細長い通路が形成されるようにそれらを配備、そしてこれに続く、該通路へのリボン供給は面倒で、比較的手間がかかり、時間消費の工程であり、50VAまでの小さい変圧器の自動化量産には適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アダプタといった電気機器の使用に適する50VAまでの小さな変圧器の自動化量産に特に適合する、低生産コストで効率的にトロイダル変圧器を製造することの可能な方法が明らかに必要とされる。
【0007】
本発明の主要目的は、上に記載を行ったタイプに関連する制限を軽減することである。
【0008】
本発明の目的は、自動化量産に優れた特性を有する、主として50VAまでの小さなトロイダル変圧器を製造する方法およびシステムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、低生産コスト、低無負荷損失、高効率、低重量、および少容積を特徴とする、特にアダプタといった電気機器の使用に適合させたトロイダル変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一態様に従い、トロイダル変圧器の製造方法に関して、該方法は、細長い形状であって、かつフレキシブル材料から成る、少なくとも1つの中空のボビンの周囲にコイルを配備するステップと、ボビンの両端部が互いに向き合わされて、該ボビンの端部の一方が開口を画成するように、該少なくとも1つのボビンを該コイルと共に折曲するステップと、リボンが、基本的に該ボビン10の内部空洞全体を充填し、それによってコアを形成するまで、該ボビン内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるよう、該開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップとから成る。
【0011】
本発明は、従来の巻線機を用いて、連続するトロイダルコアにコイルを巻回することに関連する従来技術における問題を解決する。従来技術において通常2つの異なる巻線工程がある。第一に、最も一般的にコイルは変圧器の空の中央孔を介して繰返し挿通される。第二に、例えば米国特許第4,771,957号明細書に示されているようにスレーブローラを用いる方法がある。本発明において、このスレーブローラは、真直ぐなボビンの周囲にまず最初にコイルを巻回する工程に取って代わる。このアプローチは、従来技術において公知の両方の方法と比較して、コイルの巻回を著しく単純化し、迅速にする。
【0012】
さらに、真直ぐなボビンの周囲にコイルを巻回する本発明に従う工程により、迅速な一工程でコイル全体の巻回を可能にする。これは、米国特許第4,779,812号明細書に提示されているような解決方法、つまり、楔形部分が一般に電圧コイルの全長の30パーセントから50パーセントのみを、連続するワイヤから巻回させるといった、変圧器の効率を低下させる方法とは異なる。
【0013】
さらに、本発明は、変圧器の空の中央孔の相対寸法を減じるのを可能にする。なぜなら、本発明に基づく方法を用いる際、原理的に、巻線工程を行うためにこの孔を必要としないからである。中央孔の寸法を減じることで、磁路長(MPL)が短くなる。これは、コイル巻線の巻回をより少なくでき、容易に高流量に達し得る。またこれにより、変圧器全体の寸法を減じることが可能となり、様々な電気機器の使用にさらに適したものとする。
【0014】
本発明に従う方法の望ましい実施形態に基づいて、該開口を介して該リボンを供給した後、該リボンを所望の長さにカットする追加ステップを有する。該開口を介して該リボンを供給した後に該リボンをカットするステップは、供給ステップを開始する前に、必ずしもリボンを事前カットしておく必要がないという特別な長所をもたらす。これは、前もって適した長さにリボンを事前カットしなくてはならない場合に比較し、かなり時間の節約となることを意味する。さらに正確には、仕入先からリボンがきたら直接リボンロールを用いて、本発明に従い供給ステップを実行することが可能である。これは、本発明がより安価で、かつ扱いやすく、より量産に適していることを意味する。
【0015】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該開口を介して最初に供給されることが意図される該リボンの端部を予備曲げする追加ステップを有する。リボンを予備曲げするステップは、ボビンの中央(すなわち空洞の内部カーブ)にリボンを進行させることに寄与する。言い換えると、予備曲げステップは緩みを減じて、ボビン内にてリボンが容易に巻回できるようにする。こうして、詰まりや高すぎる摩擦、もしくは同様の理由によって、リボンが壊れたり、つっかえたりするリスクを減じる。
【0016】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、リボンが該ボビン内に巻かれる間、該リボンの滑りを良くするために、ボビン内に最初に供給される該リボンの、基本的に、ボビン内部の中空の空洞の内部カーブに面する側の、該ボビン内に最初に巻かれる該リボンの巻線に相当する部分に、低摩擦係数の層を提供する追加ステップを有する。この低摩擦層は主に、従来技術に基づいてリボンを巻回する際にしばしば生じるリボンの停止あるいは詰まりに関連する障害を減じるように作用する。
【0017】
またさらに、該層は好ましくは、低摩擦係数の第一サイドと接着性の第二サイドを有する接着テープ、低摩擦係数のコーティング、および流体のうちの少なくとも1つによって提供される。これらの全ての表面は容易に適合可能であり、こうして自動化量産に特に適したものである。
【0018】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、リボンの最内部の巻線と連続協働するようにフレキシブル送り部材を配備する追加ステップを有し、該リボンが該ボビン内に巻かれる間、該リボンの滑りをさらに良くして、コアを形成する。フレキシブル送り部材は、けん引力または押す力のいずれか、もしくはこの両方の力を伝えることによって、ボビン内のリボンの充填度を改善するように作用する。さらに、該フレキシブル送り部材は、糸、ワイヤ、鎖、接着テープ、ベルト、磁気力、ロール部品、および、メッシュ部品の少なくとも1つから成る。その場合であっても、該フレキシブル送り部材は再利用可能であって、配備が容易であることから、該フレキシブル送り部材は自動化量産に適している。
【0019】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該フレキシブル送り部材と該リボンとの協働を仲介する、該リボンと連接する仲介手段を配備する追加ステップを有し、該仲介手段は、該ボビン最内部の該リボン巻線の少なくともほんの少しの部分に当たる距離だけ該フレキシブル送り部材と係合している。
【0020】
該仲介手段は好ましくは、接着テープ、接着コーティング、接着剤、溝、メッシュ部品の少なくとも1つから成る。仲介手段がリボンとフレキシブル送り部材の両方と係合するようになっていることから、フレキシブル送り部材の動きがリボンに伝わり、ボビン内への巻回をさらに容易にする。仲介手段がこのように構成されていることから、大きな摩擦力を処理することができる。
【0021】
望ましい実施形態において、該仲介手段は、前記の層の部分からはみ出る該リボンから成る。これは特に、本発明の一実施形態において、該層が、開口を介して最初にボビン内に供給されることが意図されるリボンの部分に固定された接着テープによって提供されている場合に当たる。該テープは、この場合好ましくは糸もしくはワイヤから成るフレキシブル送り部材との係合をフリーにして、テープ接着側の部分がリボン外側にはみ出すように固定されている。
【0022】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップはさらに、該コイルと共に該折曲ボビンを回転させ、そして、基本的に即座に該コイルと共に該折曲ボビンの回転を停止するステップを有する。この工程の主な長所は、リボン40が開口30を通ってボビン10内に進入することが強いられ、そして、量産目的に適合が容易な方法にて、単一工程で該ボビン10内にリボン自体が巻回する効果による、慣性モーメントの原理を有用できることである。
【0023】
該方法の他の望ましい実施形態に従って、該開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップはさらに、該開口を介して媒体を注入し、それにより折曲位置にある該中空ボビンの内部の外側カーブと該リボン間に可変のギャップを作り出すステップと、該中空のボビンから該媒体を導出するステップを有する。
【0024】
該媒体は主に、リボンがボビン内に巻回されているとき、中空のボビンの内部空洞の外側のカーブとリボン間の摩擦力を低減するように作用すべきである。加えて、該媒体は、注入媒体の動きによってリボンに及ぼされる圧縮力の助けにより、リボンをさらに内側に押そうとする長所を有する。該媒体は好ましくはガスおよび流体のうちの少なくとも1つから成る。しかし場合によりパウダーのような固体の媒体も同様にあり得る。
【0025】
さらに、望ましい実施形態において、本発明に従ってトロイダル変圧器を製造する方法は磁界にて実行される。磁界は好ましくは可変磁界であり、これは、従来技術との比較において少なくとも主に2つの長所をもたらす。第一に、磁界がリボンの巻線に接着特性をもたらすことで、リボンがボビン内にて巻回されている間、巻線が互いに密着する。これは、好ましい電磁特性を有するコアを密に形成することに寄与する。第二に、磁界は該リボンに回転力を生じて、コアの形成をさらに容易にする。これは、折曲ボビンに沿う異なる部分にて、磁界にまた別の力がもたらされ、主軸回りにトロイドを回転させる場合に特に当てはまる。
【0026】
本発明の他の態様に従って、該細長いチューブがフレキシブル材料から作られて、折曲可能になっていることから、該細長いチューブの両端が互いに向かい合わせられ、該細長いチューブの該端部の一方が開口を画成することを特徴とし、かつ該細長いチューブが基本的に中空内部の矩形断面を有することを特徴とする、基本的に該細長いチューブから成る、トロイダル変圧器の製造用のボビンに関する。
【0027】
該ボビンの主な長所は、従来の巻線機を用いてコイルの巻回を可能にすることである。なぜならば、ボビンが真直ぐな状態にあり、該巻回が真直ぐで直線的に行えるためである。一方、伝統的にトロイダル変圧器の製造では、コイルの巻回がドーナツ型のコアの周囲になされており、この欠点については上に記載を行った。本発明に従うボビンの他の長所は、ボビンが、本発明の方法に従って製造される最終的に組立部にされるトロイダル変圧器の部分として残ることから、トロイダル変圧器におけるコアとコイル巻線間の電圧ストレスに十分に耐える絶縁を可能にすることである。
【0028】
さらに、ボビンはフレキシブル材料から作られ、ボビンの両端を互いに向かい合わせできるよう折曲可能となっている。フレキシブル材料は例えばプラスチック材料あるいはラバーであって、プラスチック成形もしくは同様の方法により継ぎ目のないボビンを製造することが可能である。一実施形態において、該フレキシブル材料は低摩擦材料である。特に、この低摩擦材料により、ボビンの内部空洞におけるリボンの巻回を容易にする。あるいは、ボビンの中空の空洞内は低摩擦コーティングにて被覆される。
【0029】
コア材料が平らな矩形の断面を有するリボンの形状となる場合、このコア材料をボビンが受取り、収容出来るように、ボビンの内部の中空断面は基本的に矩形であり、よって該リボンがボビン内に密に巻かれていると、基本的に矩形断面のコアが形成される。
【0030】
本発明の他の態様に従って、トロイダル変圧器を製造するシステムに関して、該システムはトロイダル変圧器の該製造方法を実行する手段から成る。該システムから得られる長所は、前に論じた本発明に従うトロイダル変圧器の該製造方法の長所、および本発明に従うトロイダル変圧器製造用の該ボビンの長所に一致する。
【0031】
本発明の他の態様に従って、上記方法により製造されるトロイダル変圧器に関する。このような変圧器は、アダプタといった電気機器において使用可能である。
図面を参照することで本発明のフィーチャがより明らかになろう。
【実施例】
【0032】
本発明について、例示の方法により、かつ図解のみを目的に、図面を参照にしてさらなる詳述を行う。
【0033】
図1は、トロイダル変圧器の製造に使用される、本発明に従うボビン10の一実施形態を示した斜視図である。
【0034】
ボビン10は基本的にフレキシブル材料の細長いチューブから成る。該フレキシブル材料は例えばプラスチック材料もしくはラバーであり、加えて、ボビン10は折曲可能になっており、該細長いチューブの両端を互いに向かい合わせられる。また、ボビン10は、本発明の方法に従って製造される、最終的にアセンブリされるトロイダル変圧器の部分として残ることから、トロイダル変圧器のコアとコイル巻線間の電圧ストレスに十分に耐える絶縁の追加の長所をもたらす。さらに、プラスチック成形もしくは同様の方法で、該フレキシブル材料により継ぎ目のないボビンを製造することが可能である。一実施形態において、該フレキシブル材料は低摩擦材料である。特に、この低摩擦材料により、ボビン10の内部空洞におけるリボンの巻回を容易にする。あるいは、ボビン10の中空の空洞内は低摩擦コーティングにて被覆される。
【0035】
コア材料が平らな矩形の断面を有するリボンの形状となる場合、このコア材料をボビン10が受取り、収容出来るように、ボビン10の内部の中空断面11は基本的に矩形であり、よって該リボンがボビン内に密に巻かれていると、基本的に矩形断面のコアが形成される。
【0036】
さらに、図1は、1次巻線用の第一部分14と2次巻線用の第二部分15から成るボビン10の実施形態を示す。しかし他の実施形態においては、ボビン10は、1次巻線と2次巻線が互いの上にかさねて巻かれ、両方が細長いボビン全体に巻かれた1つの部分のみから成る。従って、この場合は、ボビン10の中間に分割部分はない。この全部のケースにおいて、ボビンが折曲される前に巻線がなされる。
【0037】
図2は、トロイダル変圧器の製造に使用される、本発明に従うボビン10の一実施形態を示した、部分拡大図を含む斜視図であり、ここで、特定フューチャとして、好ましくは、一操作で両端が互いに連結できるようにされた連結手段12をボビン両端に備え、それによりボビンの両端を互いにしっかりと固定する。これにより、コイルがボビン10周囲に巻回された後、トロイダル形状を形成して、この形状の確保することが可能となる。これらの連結手段12は例えば、ボビンのプラスチック成形で形成されるクリップ装置から成り、図2に示すようにボビンそれ自体の部分であるか、もしくは接着コーティングを追加に含むかである。リボンが供給されるボビン両端間のスペースを残して、ホール21は供給工程の間使用される。ボビン内部が十分に充填されると、ホール22を使用してトロイダルリングを完全に閉じる。
【0038】
図3は、前記のフレキシブル送り部材50をガイドする、該ボビン内に配置される少なくとも1つのスロットから成るスロットセット13を具備した、本発明に従うボビン10の他の実施形態を示した、部分的にカットした斜視図である。該スロットセット13は、折曲部分となる前記の中空のボビンの内部の外側のカーブに沿ってらせん状に配置されている。スロットセット13はフレキシブル送り部材を受取るようになっており、これが締め付けられて仲介手段にもっていかれる前に、これを適所に導く。このようにスロット13はフレキシブル送り部材の適用をより容易にする。
【0039】
図4は、本発明に従う方法の第一メインステップS10に対応する、ボビン周囲に配備されるコイル20を有する、図1のボビンを示した斜視図である。図4において、コイル20は第一部分14の周りに巻回される1次巻線と、第二部分15の周りに巻回される2次巻線から成る。最も有利には、コイル巻線は、従来の巻線機により自動で行われる。
【0040】
図5は、図7の第二メインステップS20に対応する、上記コイル20と共に折曲された図2のボビン10を示した斜視図である。左側は折曲される直前のボビン10を、右側は折曲された形状のボビン10を示しており、ボビンの両端は互いに向かい合わせにされ、該ボビンの両端の一方は開口30を画成する。
【0041】
図6は、図7における第三メインステップS30に対応する、コイル巻線20を有する図3の折曲ボビン10の斜視図であり、リボン40が、基本的に該ボビン10の内部空洞全体を充填してコアを形成するまで、該ボビン10内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるように、前記開口30を介して供給されている磁気材料の該リボン40を示している。
【0042】
図6はフレキシブル送り部材50も示しており、該フレキシブル送り部材50は該リボン40と協働するように配置されており、該ボビン内への巻回の間、該コアの形成をさらに容易にする。
【0043】
上に述べたように、フレキシブル送り部材50は、けん引力または押す力のいずれか、もしくはこの両方の力を伝えることによって、ボビン10内のリボン40の充填度を改善するように作用する。好ましくは、該フレキシブル送り部材50は、全供給ステップの間、コアの最内部のリボン巻線と継続協働する。これは、リボンがボビン内に巻回されているとき、該フレキシブル送り部材50が、コアの増していく直径を調整する必要がないことを意味する。またこれは、巻線工程の間常に、いわゆるベルト手段が最外部のコア巻線と係合するように配備された、例えば米国特許番号第4,779,812号と比較して、よりシンプルな工程であることを意味する。
【0044】
さらに、該フレキシブル送り部材50は最も好ましくは糸もしくはワイヤから成る。しかし、他の実施形態においては、フレキシブル送り部材50は、鎖、接着テープ、ベルト、磁気力、ロール部品、および、メッシュ部品の少なくとも1つから成る。どの場合であっても、該フレキシブル送り部材は再利用可能であって、配備が容易であることから、該フレキシブル送り部材は自動化量産に適している。
【0045】
フレキシブル送り部材の配置を図10にも示しており、ステップS24の説明との関連において以下にさらに詳述する。
【0046】
図7は、本発明に従うトロイダル変圧器の製造方法における特定の一実施形態に対応するフローチャートである。以下の詳細説明において、方法ステップを示す以外の参照符号は、前の図面の図1から図6、およびこれに続く図8から図10における参照符号と同様である。
【0047】
ステップS10において、フレキシブル材料の細長い形状の中空ボビン10の周囲にコイル20が配備される。コイル20は従来の巻線機を用いて適所に配備される。
【0048】
その後、ステップS20において、ボビン10はその周囲に巻回されるコイル20と共に折曲されることで、ボビンの両端は互いに向かい合わせにされ、該ボビンの両端の一方は、コア材料を供給することの可能な開口30を画成する。
【0049】
本発明の望ましい実施形態において、折曲ステップは、ボビン10が挿通される、第1直線部分と基本的に円形の第2部分とを有する複数のバーもしくはチューブから成る装置もしくはシステムによって実行される。該バーもしくはチューブはボビン10に異なる温度を伝えるようにされており、それによってボビンが該バーもしくはチューブの第1直線部分に挿通されると温まり、これが第2円形部分に進行する際、より折曲に適した状態となる。第2円形部分に完全に挿通されることでトロイダル形状となると、ボビン10がクールダウンすることによりボビンのトロイダル形状の形成および維持に寄与する。ボビン10の冷却後、これはバーもしくはチューブ装置から取り除かれ、次の工程ステップへと移る。
【0050】
ステップS30において実行される該方法の次の主工程は、リボン40が、基本的に該ボビン10の内部空洞全体を充填してコアを形成するまで、該ボビン10内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるように、上記開口30を介して磁気材料の該リボン40を供給することである。
【0051】
しかし、図7に概略を示した本発明の特定の実施形態において、供給ステップS30に関連して複数の追加ステップS21からS25も実行される。これら全てが様々な方法によりボビン10へのリボン40の供給を用意し、それを容易にする。これについては以下においてより詳細に論じる。さらに、以降にさらなる詳細を明らかにするように、ステップS31からS36もさまざまな方法にてボビン10へのリボン40の供給を容易にするよう寄与する。
【0052】
よって、ステップS21において、ボビン10がその周りのコイル20と共に折曲された後、リボン40は、開口30を介して初めに供給が意図されるその端部がまず予備曲げされる。
【0053】
予備曲げ工程は好ましくは、開口30の外側に配備されたロール装置によって行われ、その原理を図11に示している。該ロール装置はプッシュ装置の役目も果たし、リボン40を開口30方向に、かつ開口30を介してボビン10内に押し入れ、さらにボビン内へのコア材料の巻回を容易にする。巻回中、予備曲げ工程により、リボンがボビンの中央方向(すなわち空洞の内部カーブ)にうまく進行するようになっている。言い換えると、予備曲げステップは緩みを減じて、ボビン内にてリボンが容易に巻回できるようにする。こうして、詰まりや高すぎる摩擦、もしくは同様の理由によって、リボンが壊れたり、つっかえたりするリスクを減じる。
【0054】
その後、ステップS22において、リボン40が該ボビン内に巻かれる際、該リボン40の滑りを良くするために、ボビン10内に最初に供給される該リボン40の特定の部分に低摩擦係数の層が提供される。ここで、該部分とは基本的に、ボビン10内部の中空の空洞の内部カーブに面する該リボン40の側の、該ボビン10内に最初に巻かれる該リボン40の巻線に相当する。
【0055】
これにより、あり得るリボン40の停止もしくは詰まりに関連する障害が減じられる。さらに、該層は、ねじり力を保持力に変えることに寄与し、それによって、例えば米国特許番号第4,779,812号にあるように、リボンの最内部の巻線を固定するために、リボンに溶接接合を施すといった必要がなくなる。ついでに述べると、これは、その周囲に巻回されたコイルと共に折曲されたボビンの閉構造構成により、本発明に従う方法には適さないか、あるいは可能性さえない。
【0056】
さらに、最初にボビンに供給される該リボンの該部分は好ましくは、基本的に該ボビン内にて最初に巻かれる該リボンの巻線に相当する。これは基本的に、直接的かつ能動的にボビンと密に接触しているボビンの最内部の巻線である。上記の低摩擦面を追加の巻線に適用すると、実際にボビン内での巻線の連続的な締め付けを妨げ、それによってリボンが詰まるリスクがあり、リボンは十分密に巻回されない。
【0057】
またさらに、最も望ましい実施形態において、前記の層は、低摩擦係数の第一サイド、および接着される第二サイドを有する接着テープにより提供される。しかし、他の実施形態においては、該層は低摩擦係数のコーティングおよび流体の少なくとも1つから成る。
【0058】
ステップS23において、フレキシブル送り部材50が、該リボン40の最内部の巻線と連続協働できるように配備され、それにより、該ボビン10内に巻回されている間、該リボン40の滑りをさらに良くして、コアの形成に寄与する。
【0059】
ステップS24において、図6に示すように、該リボン40と連接する仲介手段が配備され、該フレキシブル送り部材50と該リボン40との協働を仲介する。該仲介手段は、図6に示すように、該リボン40の該ボビン10最内部の巻線の少なくともほんの少しの部分に当たる距離だけ該フレキシブル送り部材50と係合している。仲介手段がリボン40とフレキシブル送り部材50の両方と係合するようになっていることから、フレキシブル送り部材50の動きがリボン40に伝わり、ボビン10内への巻回をさらに容易にする。仲介手段がこのように構成されていることから、大きな摩擦力を処理することができる。
【0060】
本発明の最も望ましい実施形態において、図10に示すように、該仲介手段100は、ステップ22にて提供された前記の層の部分からはみ出る該リボン40から成る。これは特に、該層が、開口30を介して最初にボビン10内に供給されることが意図されるリボン40の部分に固定された接着テープにより提供されている場合に当たる。該テープは、この場合好ましくは糸もしくはワイヤから成るフレキシブル送り部材50との係合をフリーにして、テープの接着側の部分がリボン40の外側にはみ出すように固定されている。従い、該仲介手段100は最も好ましくは、接着テープの接着側から成る。しかし、他の実施形態においては、接着コーティング、接着剤、溝、メッシュ部品の少なくとも1つから成る仲介手段を含む。
【0061】
図7に示した特定の実施形態において、該方法は磁界にて実行され、これをS25に提示している。図8にも示している磁界は好ましくは可変磁界であり、これは、磁界を生成するデバイス81によってもたらされ、従来技術との比較において、この存在により少なくとも主に2つの長所がもたらされる。第一に、磁界80がリボン40の巻線に接着特性をもたらすことで、リボンがボビン内にて巻回されている間、巻線が互いに密着する。これは、好ましい電磁特性を有するコアを密に形成することに寄与する。第二に、磁界80は該リボンに回転力を生じ、コアの形成をさらに容易にする。これは、折曲ボビン10に沿う異なる部分にて、磁界にまた別の力がもたらされ、主軸回りにトロイドを回転させる場合に特に当てはまる。
【0062】
もう一度図7に戻り、ステップS31にて、該開口30を介して媒体が注入され、それにより、該折曲ボビン10の内部の外側カーブと該リボン40間に可変のギャップが作り出される。
【0063】
ステップS32にて、ステップS31で注入された媒体がボビン10から導き出される。実際、ステップS31およびS32は全体供給ステップの間、平行して、かつ、おおよそ連続して実行される。該媒体はリボンがボビン10内に巻回されているとき、中空のボビン10の内部空洞の外側のカーブとリボン40間の摩擦力を低減するように作用する。加えて、該媒体は、注入媒体の動きによってリボン40に及ぼされる圧縮力の助けにより、リボン40をさらに内側に押そうとする長所を有する。該媒体は好ましくはガスおよび流体のうちの少なくとも1つから成る。しかし場合によりパウダーのような固体の媒体も同様にあり得る。
【0064】
ステップS33において、リボン40は開口30を介してボビン10に供給された後、所望の長さにカットされ、コアが形成される。
【0065】
ステップ34において、ステップS23にて配備されたフレキシブル送り部材50が取り除かれる。
【0066】
ステップ35において、コイル20を有した折曲ボビン10が回転装置に配置され、高速回転される。その後、突然、ステップS36において、該コイル20を有した該折曲ボビン10の回転が基本的に即座に停止される。これらの工程(すなわちステップS35およびS36)が連続するシーケンスにて実行されることから、リボン40が開口30を通ってボビン10内に進入することが強いられ、量産目的に適合が容易な方法で、単一工程にて該ボビン10内にリボン自体が巻回する効果による、慣性モーメントの原理を有用できる。
【0067】
好ましくは、回転と停止のステップが、開口30を介してリボン40を供給した後に所望の長さにリボン40をカットするステップの後に実行されることで、ボビン10の外側にまだ残っているリボン40の部分をボビン10内に入り込ませることができる。これにより、トロイダル変圧器の効率を低下させるもの、未使用スペースをボビン10に残すことなく、ボビン10にコア材料を完全に充填することが可能となる。さらに、リボン40の部分が、コイル巻線の外側のボビンの開口から突き出ると、変圧器の性能が十分でなく、絶縁要求も満たさないというリスクを有する。
【0068】
この実施形態において、該回転装置は、それの上にボビン10が配備されたホルダから成る。基本的に該ホルダは例えば、圧搾空気のような媒体を徐々に充填することの可能なグロメットから成り、ボビン10を固定する(また、これを空にしてホルダからボビン10を離す)。該ホルダは、その命令により高速回転を行うようにされており、かつ、基本的に即座に停止するようにされている。
【0069】
この工程も図9に示しており、部分断面図を有する上からの透視図によって示されており、左から右に、状態Aでは製造中の変圧器がホルダ90に配備されており、加圧媒体91が充填されている。状態Bでは該変圧器が回転されており、かつ、状態Cでは該変圧器が即座に停止され、それによりリボン40がボビン10内の適所で完全に巻回されることで、慣性モーメントの原理を用いてコアを形成している。
【0070】
本発明は上記理解に限定されないことを指摘する必要がある。これまでの議論は本発明の実施形態の例示説明にすぎない。請求項に明確にされているような本発明の精神から逸脱することなく、様々な変更や修正が可能であることは当業者にとって容易に理解されよう。
【0071】
例えば、本発明に従って実行される方法を考察するために、3つの主なステップS10、S20、およびS30を除いて、必ずしも上記ステップ全てを実行しなくてはならないといったわけではない。他のステップのいずれかを完全に、あるいは部分的に削除するか、もしくは修正することが可能である。さらに、これらのステップを上記の順序に従って実行する必要はなく、これらステップを互いに様々な組合せにおいて実行することが可能である。
【0072】
さらに、ボビンは、連結して完全なボビン10を形成するように意図され、別々に製造された少なくとも2つのピースから成りうる。例として、少なくとも1ピースの一方は1次巻線を保持することが可能であり、また、少なくとも2ピースの他方は2次巻線を保持することが可能である。少なくとも2つのボビンのピースは、巻線工程の前または後のいずれかに、図2において詳細に示された連結手段に類似する手段により相互連結可能である。この場合も、巻線は、連結された、あるいは連結されていない真直ぐなボビンのピースの周囲になされる。
【0073】
他の可能な修正例に、ボビン周囲のコイル巻線が従来の巻線機によって実行される以外に、これも手作業で実行されるといったことがある。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】トロイダル変圧器の製造に使用される、本発明の一実施形態によるボビンを示した斜視図である。
【図2】ボビンの両端に連結手段を含む本発明によるボビンの一実施形態を示した部分拡大図を含む斜視図である。
【図3】スロットセットを配備した本発明に従うボビンの他の実施形態を示す、部分的に切除した斜視図である。
【図4】ボビン周囲にコイルが巻回された、図1のボビンを示した斜視図である。
【図5】ボビン両端が互いに向かい合わせになって、該ボビン端部の一方が開口を画成するように、前記コイルと共に折曲されている該ボビンを示した斜視図である。
【図6】前記開口を介して供給されてコアを形成する磁気材料のリボンと、該リボンと協働するように配置されて該コアの形成をさらに容易にするフレキシブル送り部材とを示した、図3の折曲ボビンの斜視図である。
【図7】本発明に従うトロイダル変圧器の製造方法の一実施形態に対応するフローチャートである。
【図8】磁界にて実行される、本発明の一実施形態に従う方法の略図である。
【図9】左から右に、本発明の一実施形態に従う変圧器の回転と停止の工程を示したものである。
【図10】ボビン(透明に示している)内に供給される磁気材料のリボンと、仲介手段を介して該リボンと協働するように配備されたフレキシブル送り部材とを示した斜視図である。
【図11】予備曲げ工程を実行する、ボビンの外側に配備されたロール部品の原理を示した略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い形状であって、かつフレキシブル材料から成る、少なくとも1つの中空ボビンの周囲回りにコイルを配備するステップと、ボビンの両端部が互いに向き合わされて、該ボビンの端部の一方が開口を画成するように、前記少なくとも1つのボビンを前記コイルと共に折曲するステップと、前記リボンが実質的に該ボビン10の内部空洞全体を充填し、それによってコアを形成するまで、前記ボビン内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるよう、前記開口を介して磁気材料のリボンを供給するステップとを含むトロイダル変圧器の製造方法。
【請求項2】
前記開口を介して前記リボンを供給した後、前記リボンを所望の長さにカットする追加ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開口を介して最初に供給されることが意図される前記リボンの端部を予備曲げする追加ステップを有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
最初に前記ボビン内に供給される前記リボンの一部分であって、前記ボビン内に最初に巻かれる該リボンの巻線に本質的に相当する一部分に前記ボビン内に巻かれる間に前記リボンの滑りを良くするための低摩擦係数の層を、前記ボビン内部の中空の空洞の内部カーブに面する側に提供する追加ステップを有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記層は、低摩擦係数の第一サイドと接着性の第二サイドを有する接着テープ、低摩擦係数のコーティング、および流体のうちの少なくとも1つによって提供されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
リボンの最内部の巻線と連続協働するようにフレキシブル送り部材を配備し、前記リボンが前記ボビン内に巻かれる間に前記リボンの滑りを容易に行わせ、かつコアを形成する追加のステップを有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フレキシブル送り部材と該リボンとの協働を仲介するための前記リボンと連接する仲介手段を配備する追加ステップを有し、前記仲介手段は、前記ボビン最内部の前記リボン巻線の少なくともほんの少しの部分に当たる距離を越えて前記フレキシブル送り部材と係合していることを特徴とする請求項5乃至6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記仲介手段は、前記層の部分からはみ出る前記リボンから成ることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記開口を介して前記磁気材料のリボンを供給するステップが、さらに、前記コイルと共に該折曲ボビンを回転させるステップと、本質的に即座に前記コイルと共に前記折曲ボビンの回転を停止するステップを有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップが、さらに、前記開口を介して媒体を注入し、それにより折曲位置にある前記中空ボビンの内部の外側カーブと前記リボンとの間に可変のギャップを作り出すステップと、前記中空のボビンから前記媒体を導出するステップを有することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が磁界にて実行されることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
本質的に細長いチューブを含むトロイダル度圧器の製造用ボビンであって、
前記細長いチューブがフレキシブル材料から作られかつ折曲可能になっていて、前記細長いチューブの両端が互いに向かい合わせられ、前記細長いチューブの端部の一方が開口を画成し、かつ前記細長いチューブが本質的に中空内部の矩形断面を有することを特徴とするボビン。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項に記載されたトロイダル変圧器の前記製造方法を実行する手段を含む、トロイダル変圧器を製造するシステム。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項に記載されたトロイダル変圧器の前記製造方法によって製造されたトロイダル変圧器。
【請求項15】
アダプタのような電気機器において、請求項14に記載のトロイダル変圧器の使用法。
【請求項1】
細長い形状であって、かつフレキシブル材料から成る、少なくとも1つの中空ボビンの周囲回りにコイルを配備するステップと、ボビンの両端部が互いに向き合わされて、該ボビンの端部の一方が開口を画成するように、前記少なくとも1つのボビンを前記コイルと共に折曲するステップと、前記リボンが実質的に該ボビン10の内部空洞全体を充填し、それによってコアを形成するまで、前記ボビン内に密に充填される巻線の必要回転量だけ巻回されるよう、前記開口を介して磁気材料のリボンを供給するステップとを含むトロイダル変圧器の製造方法。
【請求項2】
前記開口を介して前記リボンを供給した後、前記リボンを所望の長さにカットする追加ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開口を介して最初に供給されることが意図される前記リボンの端部を予備曲げする追加ステップを有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
最初に前記ボビン内に供給される前記リボンの一部分であって、前記ボビン内に最初に巻かれる該リボンの巻線に本質的に相当する一部分に前記ボビン内に巻かれる間に前記リボンの滑りを良くするための低摩擦係数の層を、前記ボビン内部の中空の空洞の内部カーブに面する側に提供する追加ステップを有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記層は、低摩擦係数の第一サイドと接着性の第二サイドを有する接着テープ、低摩擦係数のコーティング、および流体のうちの少なくとも1つによって提供されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
リボンの最内部の巻線と連続協働するようにフレキシブル送り部材を配備し、前記リボンが前記ボビン内に巻かれる間に前記リボンの滑りを容易に行わせ、かつコアを形成する追加のステップを有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フレキシブル送り部材と該リボンとの協働を仲介するための前記リボンと連接する仲介手段を配備する追加ステップを有し、前記仲介手段は、前記ボビン最内部の前記リボン巻線の少なくともほんの少しの部分に当たる距離を越えて前記フレキシブル送り部材と係合していることを特徴とする請求項5乃至6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記仲介手段は、前記層の部分からはみ出る前記リボンから成ることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記開口を介して前記磁気材料のリボンを供給するステップが、さらに、前記コイルと共に該折曲ボビンを回転させるステップと、本質的に即座に前記コイルと共に前記折曲ボビンの回転を停止するステップを有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記開口を介して該磁気材料のリボンを供給するステップが、さらに、前記開口を介して媒体を注入し、それにより折曲位置にある前記中空ボビンの内部の外側カーブと前記リボンとの間に可変のギャップを作り出すステップと、前記中空のボビンから前記媒体を導出するステップを有することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が磁界にて実行されることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
本質的に細長いチューブを含むトロイダル度圧器の製造用ボビンであって、
前記細長いチューブがフレキシブル材料から作られかつ折曲可能になっていて、前記細長いチューブの両端が互いに向かい合わせられ、前記細長いチューブの端部の一方が開口を画成し、かつ前記細長いチューブが本質的に中空内部の矩形断面を有することを特徴とするボビン。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項に記載されたトロイダル変圧器の前記製造方法を実行する手段を含む、トロイダル変圧器を製造するシステム。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項に記載されたトロイダル変圧器の前記製造方法によって製造されたトロイダル変圧器。
【請求項15】
アダプタのような電気機器において、請求項14に記載のトロイダル変圧器の使用法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−527607(P2007−527607A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518581(P2006−518581)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001007
【国際公開番号】WO2005/004181
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506002753)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001007
【国際公開番号】WO2005/004181
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506002753)
【Fターム(参考)】
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