説明

トンネルのひび割れ位置検知システム

【課題】 トンネルのひび割れの位置を特定することができるトンネルのひび割れ位置検知システムを提供する。
【解決手段】 トンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、トンネル1に形成されるハシゴ型の導電回路パターン2を備え、このハシゴ型の導電回路パターン2に接続される4端子(A〜D)のそれぞれの端子を組み合わせ、この端子間の抵抗値の変化に基づいてトンネル1のひび割れ位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルのひび割れの位置を検知するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野のひび割れ検知システムとしては、以下に示すようなものがあった。
【0003】
図7はかかる従来のひび割れ検知システムの模式図であり、図7(a)はひび割れなしの場合を、図7(b)はひび割れありの場合を示している。
【0004】
例えば、トンネル101の内面壁102に配線状導電塗料103を塗布して、その配線状導電塗料103の両端にテスター104からのリード線105を接続するようにしている。そこで、図7(a)に示すように、トンネル101の内面壁102にひび割れがない場合には、テスター104の抵抗値Rは初期値を維持している。一方、図7(b)に示すように、トンネル101の内面壁102にひび割れ106が発生すると、配線状導電塗料103は破断されてテスター104の抵抗値Rは増大する。
【0005】
したがって、テスター104により検出される抵抗値Rが増大することによって、ひび割れ106が発生したことを検知することができる。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来のひび割れ検知システムは、ひび割れが発生したか否かを検知するシステムであり、トンネルのひび割れの位置を特定することはできないといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、トンネルのひび割れの位置を特定することができるトンネルのひび割れ位置検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕トンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、トンネルに形成されるハシゴ型の導電回路パターンを備え、このハシゴ型の導電回路パターンに接続される4端子のそれぞれの端子を組み合わせ、この端子間の抵抗値の変化に基づいてトンネルのひび割れ位置を特定することを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載のトンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、前記ハシゴ型の導電回路パターンは前記トンネルの内面部と外面部とそれらの間を接続するように構成することを特徴とする。
【0010】
〔3〕上記〔1〕記載のトンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、前記ハシゴ型の導電回路パターンは導電塗料又は導電テープからなることを特徴とする。
【0011】
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載のトンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、前記トンネルのひび割れ位置が天端部、肩部、脚部と異なることによって前記ハシゴ型の導電回路パターンの端子間の抵抗値が変化し、それによって生成される電圧の変化を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トンネルのひび割れの位置を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のトンネルのひび割れ位置検知システムは、トンネルに形成されるハシゴ型の導電回路パターンを備え、このハシゴ型の導電回路パターンに接続される4端子のそれぞれの端子を組み合わせ、該端子間の抵抗値の変化に基づいてトンネルのひび割れ位置を特定する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施例を示すトンネルのひび割れ位置検知システムの原理図である。
【0016】
この図において、1はトンネル、2はそのトンネル1の厚み方向に形成されたハシゴ型の導電回路パターン、Aは第1の端子、Bは第2の端子、Cは第3の端子、Dは第4の端子であり、各端子にテスターのリード線を接続して計測する。
【0017】
このように構成することにより、第1の端子Aと第2の端子B間の抵抗RA-B 、第1の端子Aと第3の端子C間の抵抗RA-C 、第1の端子Aと第4の端子D間の抵抗RA-D 、第2の端子Bと第3の端子C間の抵抗RB-C 、第2の端子Bと第4の端子D間の抵抗RB-D 、第3の端子Cと第4の端子D間の抵抗RC-D をそれぞれ計測することができ、ひび割れ位置を正確に検知することができる。
【0018】
次に、実験装置について説明する。
【0019】
図2は本発明の実施例を示す大型覆工模型実験装置の構成図、図3はその大型覆工模型実験装置の要部を示す図である。
【0020】
これらの図において、トンネル覆工模型(トンネル)11には導電塗料で形成されるハシゴ型の導電回路パターン12が形成されており、そのトンネル覆工模型11は地盤ばね治具13と反力フレーム14とトンネルの天端に圧力を印加する載荷用油圧ジャッキ15とトンネルの肩部及び脚部を押圧するための反力用油圧シリンダ16とを備えている。図3から明らかなように、トンネル覆工模型(トンネル)11の内面17と外面18とそれらの間を接続する箇所に導電塗料で形成されるハシゴ型の導電回路パターン12が設けられている。なお、上記実施例ではハシゴ型の導電回路パターン12は導電塗料で形成するようにしているが、導電塗料に代えて導電テープを用いるようにしてもよい。
【0021】
この実験装置は、トンネル覆工模型(トンネル)11に上載荷重を与え、強制的にひび割れを発生させることができる。
【0022】
次に、この大型覆工模型実験装置を用いて行った実験結果について説明する。
【0023】
図4はトンネルで発生したひび割れの4つのフェーズを示す図、図5はそのひび割れ位置検知の結果を示す図である。
【0024】
図4(a)はトンネルの第1のフェーズを示す断面図であり、天端下端21にひび割れが発生した場合、図4(b)はトンネルの第2のフェーズを示す断面図であり、天端下端21と左肩部22にひび割れが発生した場合、図4(c)はトンネルの第3のフェーズを示す断面図であり、天端下端21と左肩部22と左脚部23と右肩部24にひび割れが発生した場合、図4(d)はトンネルの第4のフェーズを示す断面図であり、天端下端21と左肩部22と左脚部23と右肩部24と天端上端25とにひび割れが発生した場合を示している。
【0025】
図5に第1の端子Aと第2の端子B間の抵抗RA-B の電圧、第1の端子Aと第3の端子C間の抵抗RA-C の電圧、第1の端子Aと第4の端子D間の抵抗RA-D の電圧、第2の端子Bと第3の端子C間の抵抗RB-C の電圧、第2の端子Bと第4の端子D間の抵抗RB-D の電圧、第3の端子Cと第4の端子D間の抵抗RC-D の電圧をそれぞれの時間の経過とともに表している。
【0026】
この図から、10時48分にトンネルの第1のフェーズのひび割れ検知が、10時51分にトンネルの第2のフェーズのひび割れ検知が、10時55分にトンネルの第3のフェーズのひび割れ検知が、11時22分にトンネルの第4のフェーズのひび割れ検知が行われたことが明らかである。
【0027】
上記実施例では、トンネル覆工模型(トンネル)の断面にハシゴ型の導電回路パターンを形成するようにしたが、トンネルの軸方向の内面部にハシゴ型の導電回路パターン形成するようにしても、同様にトンネルのひび割れ検知は可能である。
【0028】
図6は本発明の山岳トンネル覆工等への適用例を示す図である。
【0029】
この適用例では、トンネル31の内面32にハシゴ型の導電回路パターン33を形成し、トンネル31の内面32の下端部34に第1−4の端子A′〜D′を配置するようにしている。
【0030】
図2〜図5では、トンネル覆工模型(トンネル)を断面にハシゴ型の導電回路パターンを形成するようにしたが、図6に示すように、トンネルの軸方向の内面部にハシゴ型の導電回路パターン形成するようにしても、トンネルのひび割れ検知は可能である。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のトンネルのひび割れ位置検知システムは、トンネルの保守や補修に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例を示すトンネルのひび割れ位置検知システムの原理図である。
【図2】本発明の実施例を示す大型覆工模型実験装置の構成図である。
【図3】本発明の実施例を示す大型覆工模型実験装置の要部を示す図である。
【図4】トンネルで発生したひび割れの4つのフェーズを示す図である。
【図5】トンネルのひび割れ位置検知の結果を示す図である。
【図6】本発明の山岳トンネル覆工等への適用例を示す図である。
【図7】従来のひび割れ検知システムの模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1,31 トンネル
2,12,33 ハシゴ型の導電回路パターン
A,A′ 第1の端子
B,B′ 第2の端子
C,C′ 第3の端子
D,D′ 第4の端子
11 トンネル覆工模型(トンネル)
13 地盤ばね治具
14 反力フレーム
15 載荷用油圧ジャッキ
16 反力用油圧シリンダ
17 トンネル覆工模型(トンネル)の内面
18 トンネル覆工模型(トンネル)の外面
21 天端下端
22 左肩部
23 左脚部
24 右肩部
25 天端上端
32 トンネルの内面
34 トンネルの内面の下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トンネルに形成されるハシゴ型の導電回路パターンを備え、
(b)該ハシゴ型の導電回路パターンに接続される4端子のそれぞれの端子を組み合わせ、該端子間の抵抗値の変化に基づいてトンネルのひび割れ位置を特定することを特徴とするトンネルのひび割れ位置検知システム。
【請求項2】
請求項1記載のトンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、前記ハシゴ型の導電回路パターンは前記トンネルの内面部と外面部とそれらの間を接続するように構成することを特徴とするトンネルのひび割れ位置検知システム。
【請求項3】
請求項1記載のトンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、前記ハシゴ型の導電回路パターンは導電塗料又は導電テープからなることを特徴とするトンネルのひび割れ位置検知システム。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のトンネルのひび割れ位置検知システムにおいて、前記トンネルのひび割れ位置が天端部、肩部、脚部と異なることによって前記ハシゴ型の導電回路パターンの端子間の抵抗値が変化し、それによって生成される電圧の変化を検知することを特徴とするトンネルのひび割れ位置検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−31189(P2009−31189A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197225(P2007−197225)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(592180225)株式会社楢崎製作所 (9)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】