説明

トンネルの掘削方法

【課題】本発明は、鉄道の営業線の直下を掘削する施工方法の改良を目的とし、充分な土かぶりがない状態でも施工が可能な地下施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上面に工事桁12を支える支持アーム7と、上面より上方の土砂を掘削可能な掘削手段であるショベル8とを有する、トンネルを掘削するためのシールド掘進機6と、表面に電車が走行可能なようにレールが設けられた、鉄道のレールの長手方向に所定の長さを有する工事桁12を用いてトンネルを掘削する方法である。工事桁12の先端部付近の裏面を掘削予定の地山で支持し、支持地盤として安全な距離Lを保ちつつ、前記シールド掘進機6を作動させてその前面及び支持アーム7の前方の土砂を掘削し、支持部材7をスライド手段によりスライドさせながらシールド掘進機6を前進させ、シールド掘進機6が工事桁の先端部に近づいたときは、シールド掘進機6の前進を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土かぶりの浅い場合の鉄道の地下化施工法のうち、トンネルの掘削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道において、営業線を地下化する場合や駅改良に伴う地下工事は、両側に山留杭を打ち、それまでの営業線を工事桁で受け替えてから、線路下を掘削される。しかし、この工事を行うには十分な土かぶりを必要とするため、浅い土かぶりの場合、施工は困難になる。
【0003】
また、シールド掘進機による掘削は一般に、掘削高さと同程度の土かぶりが必要とされている。下記特許文献1では、浅い土被りのシールド掘進機として掘削断面を二分割することにより土被りが掘削高さと同等以上ない場合の掘削も可能としているが、鉄道直下を掘削するときに、土かぶりが一切確保できない場合、施工は困難になる。従って、特許文献1のようなシールド掘進機を用いた場合であっても、鉄道の営業に用いるレールについては、トンネル工事を行っている箇所から離れた場所に移動して新たに敷設する必要があった。
【特許文献1】特開2005−180177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鉄道の営業線の直下を掘削する施工方法の改良を目的とし、さらに詳しくは、充分な土かぶりがない状態でも施工が可能な地下施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のトンネル掘削方法は、トンネルを掘削するためのシールド掘進機と、鉄道のレールの長手方向に所定の長さを有する工事桁とを用いてトンネルを掘削するための方法である。
【0006】
前記シールド掘進機は、上面に前記工事桁を支える支持部材と、上面より上方の土砂を掘削可能な掘削手段とを有し、前記工事桁は、表面に電車が走行可能なようにレールが設けられ、裏面に前記シールド掘進機の支持部材が長手方向にスライドできるようにスライド手段が設けられている。
【0007】
そして、本発明のトンネル掘削方法は、施工予定のレールに代えて前記工事桁を電車が走行可能なように敷設すると共に、前記工事桁の先端部付近の裏面を掘削予定の地山で支持し、前記工事桁の後端部付近の裏面を前記支持部材で支持する支持工程と、前記工事桁の先端部付近の前記地山による支持を保った状態で、前記シールド掘進機を作動させてその前面及び前記支持部材の前方の土砂を掘削し、前記保持部材を前記スライド手段によりスライドさせながら前記シールド掘進機を前進させ、前記シールド掘進機が前記工事桁の先端部に近づいたときは、シールド掘進機の前進を停止させる掘削工程とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明のトンネルの掘削方法によれば、前記支持行程により前記工事桁が前記シールド
掘進機の支持部材と掘削予定の地山とにより長手方向の2箇所で保持されるため、前記掘削行程におけるシールド掘進機による掘削作業中に、土かぶりが浅く、掘削面付近の工事桁下方の地山が崩れてきた場合であっても、前記工事桁の表面にあるレールが歪むことはない。また、鉄道の営業時間中においても、前記シールド掘進機が前記支持部材により前記工事桁を支持しているため、前記工事桁に設けられたレール上を通過することができる。従って、従来のようにトンネル工事中にレールを他の箇所に移動させる必要がない。このように、本発明によれば、前記支持行程と、前記掘削行程とを繰り返すことにより、鉄道の地下のトンネル工事を行うことができる。
【0009】
また、本発明のトンネル掘削方法においては、前記支持部材は前記シールド掘進機の幅方向に2箇所設けられており、前記スライド手段は、前記支持部材の幅と同一の幅で2箇所設けられた案内溝であり、前記掘削工程において、前記支持部材が前記案内溝に案内されてスライドされることが好ましい。このように、前記支持部材を2箇所とすることにより、前記工事桁を安定して支持することができる。また、前記スライド手段を案内溝とすることにより、簡易な構成で前記スライド手段を構成することができる。
【0010】
また、本発明のトンネル掘削方法においては、前記シールド掘進機は、前面が上下2段に分かれており、上段に前記シールド掘進機の上面よりも上方に突出可能なショベルが設けられ、下段に全面で掘削が可能なカッタが設けられており、前記掘削工程において、前記ショベルにより前記上段の前面及び前記支持部材の前方の土砂を掘削し、前記カッタにより前記下段の前面の土砂を掘削することが好ましい。このように、前記シールド掘進機の上方は前記ショベルにより掘削できる。また、前記シールド掘進機の前方はシールド掘進機の幅及び高さ分だけ掘削できればよいので、前記シールド掘進機の下段は前記カッタとすることが好ましい。
【0011】
また、前記トンネルの掘削方法に用いられるシールド掘進機は、前記支持部材を、前記工事桁の裏面を支える位置を上下方向に移動可能とすることが好ましい。レール等は、カーブの箇所等で高さが変化するものであるため、前記支持部材の位置を上下方向に移動可能とすることにより、このようなレール等の高さの変化にも容易に対応することができる。また、掘削の深度が変わる場合にも容易に対応することができる。
【0012】
また、前記シールド掘進機の支持部材は、前記工事桁の裏面に当接する箇所に前記工事桁の長手方向に転がり自在なベアリングを備えていることが好ましい。このベアリングによって、前記掘削工程でのシールド掘進機の前進方向への抵抗を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の鉄道の地下化施工法の実施形態の一例について、図を参照して説明する。図1は本発明のトンネルの掘削方法が行われる鉄道のすりつけ区間とトンネル掘削区間を示す説明図であり、図2は本発明のトンネル掘削方法のシールド掘進機による掘削開始位置を示す説明図であり、図3は本発明で使用されるシールド掘進機の説明図であり、図4は本発明で使用される工事桁を示す説明図であり、図5及び図6は本発明のトンネル掘削方法を示す説明図である。
【0014】
本発明のトンネルの掘削方法は、鉄道を地下化する場合のトンネル部分1を施工する非開削工法である。地上からトンネルまでの区間をすりつけ区間2とする。そして、すりつけ区間2は開削工法で行うこととする。このとき、すりつけ区間の端部3を発進立坑4とする。発進立坑の側近に副立坑5を構築し、そこでシールド掘進機6の組立を行い、発進立坑4にスライドさせる。
【0015】
シールド掘進機6は上下2段になっていて、上面には工事桁12を支持するための支持アーム7が付属している。支持アームは油圧ジャッキにより伸縮が可能になっている。シールド掘進機6の上方はシールド内部より突出したショベル8により開放した状態で掘削し、下方はカッタ9により密閉した状態で掘削を行う。掘削土の排出はスクリューコンベア10とベルトコンベア11を用いて行う。
【0016】
工事桁12は上にレール13が設置されているPC桁を使用する。PC桁には掘進機より突出した支持アーム7で支持するための案内溝14がついている。この案内溝14の裏面には、支持アーム7が長手方向にスライドできるようにベアリングが設けられている。PC桁は、図5及び図6に示すように、2本つなげて使用する。2本のPC桁は、中間で固定してある。
【0017】
本発明のトンネルの掘削方法は、以下のように支持工程と掘削工程とを繰り返す施工方法である。まず、図5に示すように、PC桁2本分のレールを除去してPC桁に置き換える。PC桁の先端部付近の裏面を掘削予定の地山で支持し、後端部付近の裏面をシールドから突出した支持アーム7で支持する。これにより、支持工程が終了する。
【0018】
次に、掘削工程に移る。掘削工程では、図5及び図6に示すように、シールド掘進機6の上段にあるショベル8を使用してシールド掘進機6の上段の前面、及び支持アーム7の前面の土砂を掘削する。同時に、下段にあるカッタで9で下段の前面の土砂を掘削する。シールド掘進機6により組み立てられた後方の地下トンネルはセグメント15の組み立てが終わった順に埋土し、埋土を完了した工事桁12は、順にレールと枕木と置き換えていく。組み立てられたセグメント15から反力を得ることによりシールド掘進機6は油圧ジャッキ16により前進する。このとき、土かぶりが浅く、掘削面付近の工事桁12下方の地山が崩れてきても、工事桁12を2点で支持しているため、レールが歪むことはない。そして、図6に示すように、掘削が進んでPC桁の先端部付近まで掘削され、支持地盤として安全な距離Lを残した状態となった時点でシールド掘進機6の作動を停止させる。このように、掘削を進めるにあたって支持地盤として安全な距離Lは必ず残すようにする。
【0019】
次に、再度支持工程を行う。支持工程では、図5及び図6で使用したPC桁以外の新たなPC桁を用いて工事桁12の延伸を行う。工事桁12の延伸にはクレーンなどを使用する。本発明では、このように支持工程と掘削工程とを交互に行うことにより、トンネルの掘削を行うことができる。
【0020】
なお、本発明においては、支持工程で、新たなPC桁を用いて工事桁12の延伸を行っているが、これに限らず、図6の状態から、後方のPC桁を前方のPC桁から分割し、前方のPC桁の前方に配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のトンネルの掘削方法が行われる鉄道のすりつけ区間とトンネル掘削区間を示す説明図
【図2】本発明のトンネル掘削方法のシールド掘進機による掘削開始位置を示す説明図
【図3】本発明で使用されるシールド掘進機の説明図
【図4】本発明で使用される工事桁を示す説明図
【図5】本発明のトンネル掘削方法を示す説明図
【図6】本発明のトンネル掘削方法を示す説明図
【符号の説明】
【0022】
1 本発明により施工可能となる区間
2 開削工法によって施工されるすりつけ区間
3 すりつけ区間端部
4 発進立坑
5 副立坑
6 シールド掘進機
7 支持アーム
8 ショベル
9 掘削カッタ
10 スクリューコンベア
11 ベルトコンベア
12 工事桁
13 レール
14 案内溝
15 セグメント
16 油圧ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを掘削するためのシールド掘進機と、鉄道のレールの長手方向に所定の長さを有する工事桁とを用いてトンネルを掘削するための方法であって、
前記シールド掘進機は、上面に前記工事桁を支える支持部材と、上面より上方の土砂を掘削可能な掘削手段とを有し、
前記工事桁は、表面に電車が走行可能なようにレールが設けられ、裏面に前記シールド掘進機の支持部材が長手方向にスライドできるようにスライド手段が設けられており、
施工予定のレールに代えて前記工事桁を電車が走行可能なように敷設すると共に、前記工事桁の先端部付近の裏面を掘削予定の地山で支持し、前記工事桁の後端部付近の裏面を前記支持部材で支持する支持工程と、
前記工事桁の先端部付近の前記地山による支持を保った状態で、前記シールド掘進機を作動させてその前面及び前記支持部材の前方の土砂を掘削し、前記保持部材を前記スライド手段によりスライドさせながら前記シールド掘進機を前進させ、前記シールド掘進機が前記工事桁の先端部に近づいたときは、シールド掘進機の前進を停止させる掘削工程とを備えていることを特徴とするトンネルの掘削方法。
【請求項2】
前記支持部材は前記シールド掘進機の幅方向に2箇所設けられており、
前記スライド手段は、前記支持部材の幅と同一の幅で2箇所設けられた案内溝であり、
前記掘削工程において、前記支持部材が前記案内溝に案内されてスライドされることを特徴とする請求項1に記載のトンネルの掘削方法。
【請求項3】
前記工事桁は、第1工事桁と第2工事桁が長手方向に着脱自在に連結されたものであり、
前記掘削工程を、前記支持部材が前記第1又は第2の工事桁のいずれか後方に配置された一方の工事桁を通過して他方の工事桁を支持する状態まで行い、
その後、前記支持工程において、前記一方の工事桁を前記他方の工事桁の前方に移設することを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネルの掘削方法。
【請求項4】
前記シールド掘進機は、前面が上下2段に分かれており、上段に前記シールド掘進機の上面よりも上方に突出可能なショベルが設けられ、下段に全面で掘削が可能なカッタが設けられており、
前記掘削工程において、前記ショベルにより前記上段の前面及び前記支持部材の前方の土砂を掘削し、前記カッタにより前記下段の前面の土砂を掘削することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトンネルの掘削方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトンネルの掘削方法に用いられるシールド掘進機。
【請求項6】
前記シールド掘進機の支持部材は、前記工事桁の裏面を支える位置を上下方向に移動可能としたことを特徴とする請求項5に記載のシールド掘進機。
【請求項7】
前記シールド掘進機の支持部材は、前記工事桁の裏面に当接する箇所に前記工事桁の長手方向に転がり自在なベアリングを備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載のシールド掘進機。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトンネルの掘削方法に用いられる工事桁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−174244(P2009−174244A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16189(P2008−16189)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(307046132)
【Fターム(参考)】