トンネルセグメントとその接続構造
【課題】 トンネル内で火災が発生した場合に、セグメント全体としての耐久性を維持できるようにする。
【解決手段】 金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状の金属製ケーシング3を形成し、ケーシングの内部にコンクリート4を充填して、その充填した充填コンクリート層20側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体のトンネル内方側端面9と充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層10を設けてある。
【解決手段】 金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状の金属製ケーシング3を形成し、ケーシングの内部にコンクリート4を充填して、その充填した充填コンクリート層20側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体のトンネル内方側端面9と充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層10を設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントとその接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記トンネルセグメントは、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて形成してある箱状の金属製ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置できるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくく、その強度が低下しにくい利点があるが、従来、充填コンクリート層と、枠体のトンネル内方側端面とをトンネル内方に向けて露出させる状態で設置可能に構成してある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−277697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、トンネル内で火災が発生した場合に、底板材の強度が低下しにくいものの、トンネル内方に向けて露出している枠体と充填コンクリート層は熱影響を受けて強度が低下し易く、セグメント全体としての耐久性が損なわれる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、トンネル内で火災が発生した場合に、セグメント全体としての耐久性を維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記枠体のトンネル内方側端面と前記充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を設けてあるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくいことに加えて、枠体と充填コンクリート層に対する熱影響を耐火性断熱層で緩和することができ、セグメント全体としての耐久性を維持し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記耐火性断熱層と前記充填コンクリート層とを、同材質の耐火性コンクリートを打設して構成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
耐火性断熱層と充填コンクリート層とを、同材質の耐火性コンクリートを打設して構成してあるので、枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とに対して略全面に亘って密接する耐火性断熱層を容易に設けることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記耐火性断熱層を、前記枠体のトンネル内方側端面と前記
充填コンクリート層とを覆う耐火性断熱板で構成してある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を、枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とを覆う耐火性断熱板で構成してあるので、耐火性断熱板の材質や厚さを適宜選択することにより、所望の耐火性と断熱性とを備えた耐火性断熱層を容易に設けることができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記充填コンクリート層に前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリートと前記枠体のトンネル内方側端面に装着した加熱発泡式耐火材とからなる耐火性断熱層を設けてある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、充填コンクリート層に枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリートと、枠体のトンネル内方側端面に装着した加熱発泡式耐火材とからなる耐火性断熱層を設けてあるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくいことに加えて、充填コンクリート層に対する熱影響を耐火性コンクリートで緩和することができるとともに、枠体に対する熱影響は、火災の発生に伴う加熱により発泡した加熱発泡式耐火材で緩和することができ、セグメント全体としての耐久性を維持し易い。
また、加熱発泡式耐火材は火災の発生に伴う加熱により発泡して体積が増大するので、セグメントどうしを枠体が隣り合うように設置するときに、隣り合う加熱発泡式耐火材どうしが特に密接するように設置しなくても、つまり、枠体のトンネル内方側端面の一部がトンネル内方に向けて露出していても、火災の発生に伴う加熱発泡式耐火材の体積増大でその露出部分も被覆することができ、トンネルセグメントを簡便に設置できる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントどうしを、前記枠体が隣り合うように接続してあるトンネルセグメントの接続構造であって、前記充填コンクリート層におけるトンネル内方側を耐火性コンクリートで被覆するとともに、前記隣り合う枠体のトンネル内方側端面を、前記枠体よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材で被覆して、トンネル内方から前記枠体側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
充填コンクリート層におけるトンネル内方側を耐火性コンクリートで被覆するとともに、隣り合う枠体のトンネル内方側端面を、枠体よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材で被覆し、その耐火性被覆材でトンネル内方から枠体のトンネル内方側端面側への気体流通に抵抗を付与可能に設けて、トンネルセグメントどうしを枠体が隣り合うように接続してあるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくいことに加えて、充填コンクリート層に対する熱影響を耐火性コンクリートで緩和することができるとともに、枠体のトンネル内方側端面を被覆している耐火性被覆材が、高温ガスの枠体側への流入に抵抗を与えて、枠体に対する熱影響も緩和することができ、セグメント全体としての耐久性を維持し易い。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記トンネルセグメント毎に、前記耐火性コンクリートを前記枠体のトンネル内方側端面を覆うように打設して、前記耐火性被覆材を構成してある点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
トンネルセグメント毎に、耐火性コンクリートを枠体のトンネル内方側端面を覆うように打設して、枠体側への気体流通に抵抗を与える耐火性被覆材を構成してあるので、充填コンクリート層におけるトンネル内方側を被覆する耐火性コンクリートに、耐火性被覆材を一体に設けることができ、高温ガスの枠体側への流入に抵抗を与え易い。
【0017】
本発明の第7特徴構成は、互いに接続する前記トンネルセグメントのうちの、一方のトンネルセグメントの前記耐火性コンクリートを、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能に打設して、前記耐火性被覆材を構成してある点にある。
【0018】
〔作用及び効果〕
互いに接続するトンネルセグメントのうちの、一方のトンネルセグメントの耐火性コンクリートを、隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能に打設して、耐火性被覆材を構成してあるので、一方のセグメントの充填コンクリート層におけるトンネル内方側を被覆する耐火性コンクリートに、隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能な耐火性被覆材を一体に設けることができるとともに、耐火性被覆材と他方のセグメント及び隣り合う双方の枠体におけるトンネル内方側端面との対向部が鈎状に形成され、高温ガスの枠体側への流入に抵抗を与え易い。
【0019】
本発明の第8特徴構成は、前記耐火性被覆材を前記耐火性コンクリートとは別体に構成して、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って、前記トンネル内方側から装着してある点にある。
【0020】
〔作用及び効果〕
耐火性被覆材を、充填コンクリート層におけるトンネル内方側を被覆する耐火性コンクリートとは別体に構成して、隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って、トンネル内方側から装着してあるので、耐火性被覆材の材質や厚さを適宜選択することにより、所望の耐火性と断熱性とを備えた耐火性被覆材を容易に装着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3は、金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状に形成してあるダクタイル鋳鉄や鋼などの金属製ケーシング3を設け、そのケーシング3の内部にコンクリート4を充填して、その充填コンクリート層20側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してある道路用の本発明によるトンネルセグメントAを示す。
【0022】
前記枠体1は、トンネル周方向端部を形成する二枚の端板1aと、トンネル長手方向端部を形成する二枚の扇形側板1bとで、平面視で略矩形、かつ、トンネル長手方向視で扇形に一体形成してあり、この枠体1のトンネル外周側をトンネル長手方向視で円弧状の底板材2で塞いで、枠体1の内側が全面に亘ってトンネル内周側に開口している矩形凹部5を備えたケーシング3を形成し、ケーシング3の内側、つまり、矩形凹部5をトンネル周方向に沿う横桁板6と、トンネル長手方向に沿う縦桁板7とで補強してある。
【0023】
前記金属製ケーシング3をダクタイル鋳鉄による鋳造成形体で構成する場合は、端板1a,側板1b,底板材2,横桁板6,縦桁板7は互いに一体的に鋳造成形され、金属製ケーシング3を鋼材による組み立て体で構成する場合は、これらの板材1a,1b,2,6,7はそれぞれ溶接接合により一体化される。
【0024】
そして、矩形凹部5に多数の鉄筋8を縦横に配筋して、その矩形凹部5に耐火性コンクリート4を、図4,図5に示すように、枠体1のトンネル内周側全面又は略全面に亘って枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル内方へ向けて突出するように厚肉に打設して、枠体1のトンネル内方側端面9を全周に亘って覆い、もって、充填コンクリート層20を設けると共に、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体1のトンネル内方側端面9と充填コンクリート層20の外面とを略全面に亘って被覆する耐火性断熱層10を、充填コンクリート層20と同材質の耐火性コンクリート4で一体に設けてある。
【0025】
前記枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル内方へ向けて突出する耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10の厚さtは、セグメントの使用条件にもよるが、10〜100mm程度である。
また、耐火性コンクリート4としては、ポリプロピレン繊維混入コンクリート(ポリプロピレン繊維混入量:0.5〜5kg/m3 )やポリアセタール繊維混入コンクリート(ポリアセタール繊維混入量:0.05〜0.5vol%),ビニロン繊維混入コンクリート(ビニロン繊維混入量:0.5〜5重量%)などを打設してあるが、その他の耐火性コンクリート4、例えばアルミナセメント(石灰源とアルミナ源(アルミナ,ボーキサイト)等を溶融・焼成して製造されたセメント)を使用して打設してあっても良い。
【0026】
前記端板1aには、トンネル長手方向に沿う蟻溝12をその端部が開口するように設けて、トンネル周方向で隣り合うセグメントAの端板1aどうしを突き合わせた状態で、トンネル周方向で互いに対向する蟻溝12に亘って楔状の連結具(図外)を押し込んで、トンネル周方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0027】
前記側板1bの一方には、抗口側に設置済みのセグメントAに対する連結用の複数のジョイント金具13を設け、他方の側板1bには、切羽側に設置するセグメントAのジョイント金具13を抜け止め状態で嵌合させる複数のジョイント受け口14を設けて、トンネル長手方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0028】
尚、図1,図3,図5では、金具13と受け口14は簡略化して図示しているが、実際には金具13と受け口14はアンカー構造により抜け止め嵌合されるようになっている。
【0029】
また、枠体1の全周に亘って一連のシール溝15をセグメント厚さ方向の前後に設けて、各シール溝15に装着した帯状シール材16で、セグメントAどうしの突合せ部を通した地下水などの漏水を防止できるようにしてある。
【0030】
図4は、上記トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造を示し、セグメントA毎に枠体1のトンネル内方側端面9を覆うように打設してある耐火性コンクリート部分を、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17に構成し、その耐火性被覆材17で各枠体1におけるトンネル内方側端面9を略全周に亘って被覆して、トンネル内方から枠体1側への高温ガスなどの気体流通に抵抗を付与できるように接続してある。
【0031】
〔第2実施形態〕
図6は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体1で囲まれる空間内に充填された充填コンクリート層20部分におけるセグメント内面11側にのみ、つまり、枠体1におけるセグメント内方側端面9を覆わないように、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリート4と、枠体1におけるセグメント内方側端面9側に装着した加熱発泡式耐火材18とからなる耐火性断熱層10を設けてある。
【0032】
つまり、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出する耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10の周面とセグメント内方側端面9に接着される状態で、加熱発泡式耐火材18はセグメント内方側端面9側に装着されている。
【0033】
前記加熱発泡式耐火材18は、成分内に水を結晶水の状態で含む物質を含有し、火災に伴う加熱によって、この結晶水が蒸発しながら膨張することにより、蒸発潜熱による吸熱作用と、体積増加による断熱層の形成が可能なモルタル状断熱材で構成してある。
【0034】
その他の構成は上記実施形態と同様であるが、図7に示すように、耐火性コンクリート4を、枠体1におけるセグメント内方側端面9の一部を覆うように打設して、残りの枠体1における内方側端面9側に加熱発泡式耐火材18を装着して、耐火性断熱層10を構成しても良い。
【0035】
つまり、耐火性断熱層10が枠体1の内方側端面9の一部を覆うように形成されており、耐火性断熱層10の周面とセグメント内方側端面9に接着される状態で、加熱発泡式耐火材18がセグメント内方側端面9側に装着されている。
【0036】
〔第3実施形態〕
図8は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、乾燥ウエットフェルトなどで形成してある耐火性断熱板19を金属製のビスやアンカー材などで充填コンクリート層20に固定して、枠体1と充填コンクリート層20とを略全面に亘って被覆する耐火性断熱層10を設けてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0037】
〔第4実施形態〕
図9,図10は、トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造の別実施形態を示し、充填コンクリート層20におけるトンネル内方側に耐火性コンクリート4を、略全面に亘って枠体1のトンネル内周側端面9よりも突出するように厚肉に打設して耐火性断熱層10を形成するとともに、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9を、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17で被覆して、トンネル内方から枠体1側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある。
【0038】
前記耐火性被覆材17は、図9,図10に示すように、互いに接続するセグメントAのうちの、一方のセグメントAの耐火性コンクリート4を、枠体1のトンネル内方側端面9のうちの平面視で互いに直交する一対の端面9、つまり、一方の端板1aにおける端面9と一方の側板1bにおける端面9とに亘るL字状部分に沿って、枠体1の側面よりも突出するように打設して、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9の双方に亘って被覆できるように設けてある。
【0039】
つまり、耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10は、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出するとともに、一方の端板1aにおける端面9と一方の側板1bにおける端面9とに亘るL字状部分に沿って、枠体1の側面よりも外方へ突出するように形成されている
。
そして、耐火性断熱層10は、他方の端板1a’における端面9と他方の側板1b’における端面9とに亘るL字状部分に沿っては、前記とは逆に、枠体1の側面よりも内方へ退入するように形成されている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0040】
〔第5実施形態〕
図11は、トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造の別実施形態を示し、充填コンクリート層20におけるトンネル内方側を耐火性コンクリート4で被覆するとともに、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9を、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17で被覆して、トンネル内方から枠体1側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある。
【0041】
前記セグメントAは、枠体1で囲まれる空間内に充填された充填コンクリート層20部分におけるセグメント内面11側にのみ、つまり、枠体1におけるセグメント内方側端面9を覆わないように、耐火性コンクリート4を枠体1よりもトンネル内方に向けて突出するように打設して、充填コンクリート層20におけるトンネル内方側を被覆する耐火性断熱層10を形成し、枠体1のトンネル内方側端面9を全周に亘って露出させてある。
【0042】
つまり、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出する耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10の周面と枠体1のトンネル内方側端面9により段部4bが形成される。
そして、隣接するセグメントAのそれぞれの段部4b,4bにより形成される間隙4cに耐火性被覆材17が充填される。
【0043】
前記耐火性被覆材17は、耐火性コンクリート層20とは別体の、乾燥ウエットフェルトなどで形成してある耐火性断熱材の帯板で構成してあり、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9の双方に亘って、トンネル内方側から装着して、金属製のビスなどで固定してあるが、第2実施形態で示した加熱発泡式耐火材18で構成してあっても良い。
【0044】
尚、耐火性被覆材17を間隙4cへ充填するのは、トンネル施工現場において各セグメントAがトンネル地山に設置され、隣接するセグメントが締結接合された後に行われる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0045】
〔第6実施形態〕
図12,13は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示しており、このセグメントAは、セグメントAのトンネル軸方向視において、底板材2と両側板1b,1bが、底板材2の中央部でトンネル内方へ凹む波形形状をなすコルゲート型セグメントである。
つまり、枠体1の内側を、トンネル外側に向けて開口する外向き凹溝部21と、その左右両側でトンネル内側に向けて開口する内向き凹溝部22とをトンネル周方向に沿わせた円弧溝状に一体に形成してある、いわゆるコルゲート型の底板材2で塞ぐと共に、外向き凹溝部21を形成している底板部分2aを枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル外周側に入り込ませて、枠体1の内側が全面に亘ってトンネル内周側に開口している矩形凹部5を備えたケーシング3を形成してある。
【0046】
前記外向き凹溝部21と内向き凹溝部22の内側をトンネル長手方向に沿わせる縦リブ23で補強するとともに、矩形凹部5に多数の鉄筋8をトンネル長手方向に配筋して打設した耐火性コンクリート4で充填コンクリート層20を設け、外向き凹溝部21にも耐熱コンクリート4を充填してある。
【0047】
そして、矩形凹部5に打設する耐火性コンクリート4を、第1実施形態と同様に、枠体1のトンネル内周側略全面に亘って枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル内方へ向けて突出するように厚肉に打設して、枠体1のトンネル内方側端面9を全周に亘って覆い、もって、充填コンクリート層20を設けると共に、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体1のトンネル内方側端面9と充填コンクリート層20の外面とを略全面に亘って被覆する耐火性断熱層10を一体に設けてある。
【0048】
図13は、上記トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造を示し、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17を、セグメントA毎に枠体1のトンネル内方側端面9を覆うように打設してある耐火性コンクリート部分で構成し、その耐火性被覆材17で隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9を被覆して、トンネル内方から枠体1側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある。
【0049】
その他の構成は第1実施形態と同様であるが、上述の耐火性断熱層10やトンネルセグメントの接続構造に代えて、第2〜第5実施形態で示した耐火性断熱層10やトンネルセグメントの接続構造を設けて実施しても良い。
【0050】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるトンネルセグメントは、充填コンクリート層を構成するコンクリートよりも耐火性が高い耐火性コンクリートを充填コンクリート層とは別に打設して、耐火断熱層を設けてあっても良い。
2.本発明によるトンネルセグメントは、道路用のトンネルセグメントに限定されず、鉄道用のトンネルセグメントや、電力や通信ケーブルなどの敷設用のトンネルセグメントなどであっても良い。
3.セグメント間の締結は、蟻溝と楔状の連結具や、ジョイント金具とジョイント受け口に代えて、ボルトとナットの結合によっても良い。この場合は、ナットはセグメントに埋め込み、ボルト挿入側のセグメントにはボルト挿入用のボルトポケットを設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】トンネルセグメントのトンネル周方向に沿う側面図
【図2】トンネルセグメントのトンネル長手方向に沿う側面図
【図3】トンネルセグメントをトンネル内方側から見た一部切欠き平面図
【図4】トンネルセグメントの接続構造を示す断面図
【図5】トンネルセグメントの要部の一部切欠き側面図
【図6】第2実施形態を示す断面図
【図7】第2実施形態の別例を示す要部拡大断面図
【図8】第3実施形態を示す断面図
【図9】第4実施形態を示す断面図
【図10】第4実施形態を説明する概略平面図
【図11】第5実施形態を示す断面図
【図12】第6実施形態を示す断面図
【図13】第6実施形態の接続構造を示す要部断面図
【符号の説明】
【0052】
1 枠体
2 底板材
3 ケーシング
4 耐火性コンクリート
9 トンネル内方側端面
10 耐火性断熱層
11 セグメント内面
17 耐火性被覆材
18 加熱発泡式耐火材
19 耐火性断熱板
20 充填コンクリート層
A トンネルセグメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントとその接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記トンネルセグメントは、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて形成してある箱状の金属製ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置できるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくく、その強度が低下しにくい利点があるが、従来、充填コンクリート層と、枠体のトンネル内方側端面とをトンネル内方に向けて露出させる状態で設置可能に構成してある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−277697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、トンネル内で火災が発生した場合に、底板材の強度が低下しにくいものの、トンネル内方に向けて露出している枠体と充填コンクリート層は熱影響を受けて強度が低下し易く、セグメント全体としての耐久性が損なわれる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、トンネル内で火災が発生した場合に、セグメント全体としての耐久性を維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記枠体のトンネル内方側端面と前記充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を設けてあるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくいことに加えて、枠体と充填コンクリート層に対する熱影響を耐火性断熱層で緩和することができ、セグメント全体としての耐久性を維持し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記耐火性断熱層と前記充填コンクリート層とを、同材質の耐火性コンクリートを打設して構成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
耐火性断熱層と充填コンクリート層とを、同材質の耐火性コンクリートを打設して構成してあるので、枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とに対して略全面に亘って密接する耐火性断熱層を容易に設けることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記耐火性断熱層を、前記枠体のトンネル内方側端面と前記
充填コンクリート層とを覆う耐火性断熱板で構成してある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を、枠体のトンネル内方側端面と充填コンクリート層とを覆う耐火性断熱板で構成してあるので、耐火性断熱板の材質や厚さを適宜選択することにより、所望の耐火性と断熱性とを備えた耐火性断熱層を容易に設けることができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記充填コンクリート層に前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリートと前記枠体のトンネル内方側端面に装着した加熱発泡式耐火材とからなる耐火性断熱層を設けてある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、充填コンクリート層に枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリートと、枠体のトンネル内方側端面に装着した加熱発泡式耐火材とからなる耐火性断熱層を設けてあるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくいことに加えて、充填コンクリート層に対する熱影響を耐火性コンクリートで緩和することができるとともに、枠体に対する熱影響は、火災の発生に伴う加熱により発泡した加熱発泡式耐火材で緩和することができ、セグメント全体としての耐久性を維持し易い。
また、加熱発泡式耐火材は火災の発生に伴う加熱により発泡して体積が増大するので、セグメントどうしを枠体が隣り合うように設置するときに、隣り合う加熱発泡式耐火材どうしが特に密接するように設置しなくても、つまり、枠体のトンネル内方側端面の一部がトンネル内方に向けて露出していても、火災の発生に伴う加熱発泡式耐火材の体積増大でその露出部分も被覆することができ、トンネルセグメントを簡便に設置できる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントどうしを、前記枠体が隣り合うように接続してあるトンネルセグメントの接続構造であって、前記充填コンクリート層におけるトンネル内方側を耐火性コンクリートで被覆するとともに、前記隣り合う枠体のトンネル内方側端面を、前記枠体よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材で被覆して、トンネル内方から前記枠体側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
充填コンクリート層におけるトンネル内方側を耐火性コンクリートで被覆するとともに、隣り合う枠体のトンネル内方側端面を、枠体よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材で被覆し、その耐火性被覆材でトンネル内方から枠体のトンネル内方側端面側への気体流通に抵抗を付与可能に設けて、トンネルセグメントどうしを枠体が隣り合うように接続してあるので、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル外方側の底板材が熱影響を受けにくいことに加えて、充填コンクリート層に対する熱影響を耐火性コンクリートで緩和することができるとともに、枠体のトンネル内方側端面を被覆している耐火性被覆材が、高温ガスの枠体側への流入に抵抗を与えて、枠体に対する熱影響も緩和することができ、セグメント全体としての耐久性を維持し易い。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記トンネルセグメント毎に、前記耐火性コンクリートを前記枠体のトンネル内方側端面を覆うように打設して、前記耐火性被覆材を構成してある点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
トンネルセグメント毎に、耐火性コンクリートを枠体のトンネル内方側端面を覆うように打設して、枠体側への気体流通に抵抗を与える耐火性被覆材を構成してあるので、充填コンクリート層におけるトンネル内方側を被覆する耐火性コンクリートに、耐火性被覆材を一体に設けることができ、高温ガスの枠体側への流入に抵抗を与え易い。
【0017】
本発明の第7特徴構成は、互いに接続する前記トンネルセグメントのうちの、一方のトンネルセグメントの前記耐火性コンクリートを、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能に打設して、前記耐火性被覆材を構成してある点にある。
【0018】
〔作用及び効果〕
互いに接続するトンネルセグメントのうちの、一方のトンネルセグメントの耐火性コンクリートを、隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能に打設して、耐火性被覆材を構成してあるので、一方のセグメントの充填コンクリート層におけるトンネル内方側を被覆する耐火性コンクリートに、隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能な耐火性被覆材を一体に設けることができるとともに、耐火性被覆材と他方のセグメント及び隣り合う双方の枠体におけるトンネル内方側端面との対向部が鈎状に形成され、高温ガスの枠体側への流入に抵抗を与え易い。
【0019】
本発明の第8特徴構成は、前記耐火性被覆材を前記耐火性コンクリートとは別体に構成して、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って、前記トンネル内方側から装着してある点にある。
【0020】
〔作用及び効果〕
耐火性被覆材を、充填コンクリート層におけるトンネル内方側を被覆する耐火性コンクリートとは別体に構成して、隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って、トンネル内方側から装着してあるので、耐火性被覆材の材質や厚さを適宜選択することにより、所望の耐火性と断熱性とを備えた耐火性被覆材を容易に装着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3は、金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状に形成してあるダクタイル鋳鉄や鋼などの金属製ケーシング3を設け、そのケーシング3の内部にコンクリート4を充填して、その充填コンクリート層20側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してある道路用の本発明によるトンネルセグメントAを示す。
【0022】
前記枠体1は、トンネル周方向端部を形成する二枚の端板1aと、トンネル長手方向端部を形成する二枚の扇形側板1bとで、平面視で略矩形、かつ、トンネル長手方向視で扇形に一体形成してあり、この枠体1のトンネル外周側をトンネル長手方向視で円弧状の底板材2で塞いで、枠体1の内側が全面に亘ってトンネル内周側に開口している矩形凹部5を備えたケーシング3を形成し、ケーシング3の内側、つまり、矩形凹部5をトンネル周方向に沿う横桁板6と、トンネル長手方向に沿う縦桁板7とで補強してある。
【0023】
前記金属製ケーシング3をダクタイル鋳鉄による鋳造成形体で構成する場合は、端板1a,側板1b,底板材2,横桁板6,縦桁板7は互いに一体的に鋳造成形され、金属製ケーシング3を鋼材による組み立て体で構成する場合は、これらの板材1a,1b,2,6,7はそれぞれ溶接接合により一体化される。
【0024】
そして、矩形凹部5に多数の鉄筋8を縦横に配筋して、その矩形凹部5に耐火性コンクリート4を、図4,図5に示すように、枠体1のトンネル内周側全面又は略全面に亘って枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル内方へ向けて突出するように厚肉に打設して、枠体1のトンネル内方側端面9を全周に亘って覆い、もって、充填コンクリート層20を設けると共に、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体1のトンネル内方側端面9と充填コンクリート層20の外面とを略全面に亘って被覆する耐火性断熱層10を、充填コンクリート層20と同材質の耐火性コンクリート4で一体に設けてある。
【0025】
前記枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル内方へ向けて突出する耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10の厚さtは、セグメントの使用条件にもよるが、10〜100mm程度である。
また、耐火性コンクリート4としては、ポリプロピレン繊維混入コンクリート(ポリプロピレン繊維混入量:0.5〜5kg/m3 )やポリアセタール繊維混入コンクリート(ポリアセタール繊維混入量:0.05〜0.5vol%),ビニロン繊維混入コンクリート(ビニロン繊維混入量:0.5〜5重量%)などを打設してあるが、その他の耐火性コンクリート4、例えばアルミナセメント(石灰源とアルミナ源(アルミナ,ボーキサイト)等を溶融・焼成して製造されたセメント)を使用して打設してあっても良い。
【0026】
前記端板1aには、トンネル長手方向に沿う蟻溝12をその端部が開口するように設けて、トンネル周方向で隣り合うセグメントAの端板1aどうしを突き合わせた状態で、トンネル周方向で互いに対向する蟻溝12に亘って楔状の連結具(図外)を押し込んで、トンネル周方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0027】
前記側板1bの一方には、抗口側に設置済みのセグメントAに対する連結用の複数のジョイント金具13を設け、他方の側板1bには、切羽側に設置するセグメントAのジョイント金具13を抜け止め状態で嵌合させる複数のジョイント受け口14を設けて、トンネル長手方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0028】
尚、図1,図3,図5では、金具13と受け口14は簡略化して図示しているが、実際には金具13と受け口14はアンカー構造により抜け止め嵌合されるようになっている。
【0029】
また、枠体1の全周に亘って一連のシール溝15をセグメント厚さ方向の前後に設けて、各シール溝15に装着した帯状シール材16で、セグメントAどうしの突合せ部を通した地下水などの漏水を防止できるようにしてある。
【0030】
図4は、上記トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造を示し、セグメントA毎に枠体1のトンネル内方側端面9を覆うように打設してある耐火性コンクリート部分を、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17に構成し、その耐火性被覆材17で各枠体1におけるトンネル内方側端面9を略全周に亘って被覆して、トンネル内方から枠体1側への高温ガスなどの気体流通に抵抗を付与できるように接続してある。
【0031】
〔第2実施形態〕
図6は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体1で囲まれる空間内に充填された充填コンクリート層20部分におけるセグメント内面11側にのみ、つまり、枠体1におけるセグメント内方側端面9を覆わないように、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリート4と、枠体1におけるセグメント内方側端面9側に装着した加熱発泡式耐火材18とからなる耐火性断熱層10を設けてある。
【0032】
つまり、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出する耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10の周面とセグメント内方側端面9に接着される状態で、加熱発泡式耐火材18はセグメント内方側端面9側に装着されている。
【0033】
前記加熱発泡式耐火材18は、成分内に水を結晶水の状態で含む物質を含有し、火災に伴う加熱によって、この結晶水が蒸発しながら膨張することにより、蒸発潜熱による吸熱作用と、体積増加による断熱層の形成が可能なモルタル状断熱材で構成してある。
【0034】
その他の構成は上記実施形態と同様であるが、図7に示すように、耐火性コンクリート4を、枠体1におけるセグメント内方側端面9の一部を覆うように打設して、残りの枠体1における内方側端面9側に加熱発泡式耐火材18を装着して、耐火性断熱層10を構成しても良い。
【0035】
つまり、耐火性断熱層10が枠体1の内方側端面9の一部を覆うように形成されており、耐火性断熱層10の周面とセグメント内方側端面9に接着される状態で、加熱発泡式耐火材18がセグメント内方側端面9側に装着されている。
【0036】
〔第3実施形態〕
図8は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、乾燥ウエットフェルトなどで形成してある耐火性断熱板19を金属製のビスやアンカー材などで充填コンクリート層20に固定して、枠体1と充填コンクリート層20とを略全面に亘って被覆する耐火性断熱層10を設けてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0037】
〔第4実施形態〕
図9,図10は、トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造の別実施形態を示し、充填コンクリート層20におけるトンネル内方側に耐火性コンクリート4を、略全面に亘って枠体1のトンネル内周側端面9よりも突出するように厚肉に打設して耐火性断熱層10を形成するとともに、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9を、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17で被覆して、トンネル内方から枠体1側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある。
【0038】
前記耐火性被覆材17は、図9,図10に示すように、互いに接続するセグメントAのうちの、一方のセグメントAの耐火性コンクリート4を、枠体1のトンネル内方側端面9のうちの平面視で互いに直交する一対の端面9、つまり、一方の端板1aにおける端面9と一方の側板1bにおける端面9とに亘るL字状部分に沿って、枠体1の側面よりも突出するように打設して、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9の双方に亘って被覆できるように設けてある。
【0039】
つまり、耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10は、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出するとともに、一方の端板1aにおける端面9と一方の側板1bにおける端面9とに亘るL字状部分に沿って、枠体1の側面よりも外方へ突出するように形成されている
。
そして、耐火性断熱層10は、他方の端板1a’における端面9と他方の側板1b’における端面9とに亘るL字状部分に沿っては、前記とは逆に、枠体1の側面よりも内方へ退入するように形成されている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0040】
〔第5実施形態〕
図11は、トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造の別実施形態を示し、充填コンクリート層20におけるトンネル内方側を耐火性コンクリート4で被覆するとともに、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9を、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17で被覆して、トンネル内方から枠体1側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある。
【0041】
前記セグメントAは、枠体1で囲まれる空間内に充填された充填コンクリート層20部分におけるセグメント内面11側にのみ、つまり、枠体1におけるセグメント内方側端面9を覆わないように、耐火性コンクリート4を枠体1よりもトンネル内方に向けて突出するように打設して、充填コンクリート層20におけるトンネル内方側を被覆する耐火性断熱層10を形成し、枠体1のトンネル内方側端面9を全周に亘って露出させてある。
【0042】
つまり、枠体1よりもトンネル内方に向けて突出する耐火性コンクリート4の耐火性断熱層10の周面と枠体1のトンネル内方側端面9により段部4bが形成される。
そして、隣接するセグメントAのそれぞれの段部4b,4bにより形成される間隙4cに耐火性被覆材17が充填される。
【0043】
前記耐火性被覆材17は、耐火性コンクリート層20とは別体の、乾燥ウエットフェルトなどで形成してある耐火性断熱材の帯板で構成してあり、隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9の双方に亘って、トンネル内方側から装着して、金属製のビスなどで固定してあるが、第2実施形態で示した加熱発泡式耐火材18で構成してあっても良い。
【0044】
尚、耐火性被覆材17を間隙4cへ充填するのは、トンネル施工現場において各セグメントAがトンネル地山に設置され、隣接するセグメントが締結接合された後に行われる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0045】
〔第6実施形態〕
図12,13は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示しており、このセグメントAは、セグメントAのトンネル軸方向視において、底板材2と両側板1b,1bが、底板材2の中央部でトンネル内方へ凹む波形形状をなすコルゲート型セグメントである。
つまり、枠体1の内側を、トンネル外側に向けて開口する外向き凹溝部21と、その左右両側でトンネル内側に向けて開口する内向き凹溝部22とをトンネル周方向に沿わせた円弧溝状に一体に形成してある、いわゆるコルゲート型の底板材2で塞ぐと共に、外向き凹溝部21を形成している底板部分2aを枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル外周側に入り込ませて、枠体1の内側が全面に亘ってトンネル内周側に開口している矩形凹部5を備えたケーシング3を形成してある。
【0046】
前記外向き凹溝部21と内向き凹溝部22の内側をトンネル長手方向に沿わせる縦リブ23で補強するとともに、矩形凹部5に多数の鉄筋8をトンネル長手方向に配筋して打設した耐火性コンクリート4で充填コンクリート層20を設け、外向き凹溝部21にも耐熱コンクリート4を充填してある。
【0047】
そして、矩形凹部5に打設する耐火性コンクリート4を、第1実施形態と同様に、枠体1のトンネル内周側略全面に亘って枠体1のトンネル内周側端面9よりもトンネル内方へ向けて突出するように厚肉に打設して、枠体1のトンネル内方側端面9を全周に亘って覆い、もって、充填コンクリート層20を設けると共に、設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面11に、枠体1のトンネル内方側端面9と充填コンクリート層20の外面とを略全面に亘って被覆する耐火性断熱層10を一体に設けてある。
【0048】
図13は、上記トンネルセグメントAどうしを、枠体1が隣り合うように接続してある本発明によるトンネルセグメントの接続構造を示し、枠体1よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材17を、セグメントA毎に枠体1のトンネル内方側端面9を覆うように打設してある耐火性コンクリート部分で構成し、その耐火性被覆材17で隣り合う枠体1におけるトンネル内方側端面9を被覆して、トンネル内方から枠体1側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてある。
【0049】
その他の構成は第1実施形態と同様であるが、上述の耐火性断熱層10やトンネルセグメントの接続構造に代えて、第2〜第5実施形態で示した耐火性断熱層10やトンネルセグメントの接続構造を設けて実施しても良い。
【0050】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるトンネルセグメントは、充填コンクリート層を構成するコンクリートよりも耐火性が高い耐火性コンクリートを充填コンクリート層とは別に打設して、耐火断熱層を設けてあっても良い。
2.本発明によるトンネルセグメントは、道路用のトンネルセグメントに限定されず、鉄道用のトンネルセグメントや、電力や通信ケーブルなどの敷設用のトンネルセグメントなどであっても良い。
3.セグメント間の締結は、蟻溝と楔状の連結具や、ジョイント金具とジョイント受け口に代えて、ボルトとナットの結合によっても良い。この場合は、ナットはセグメントに埋め込み、ボルト挿入側のセグメントにはボルト挿入用のボルトポケットを設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】トンネルセグメントのトンネル周方向に沿う側面図
【図2】トンネルセグメントのトンネル長手方向に沿う側面図
【図3】トンネルセグメントをトンネル内方側から見た一部切欠き平面図
【図4】トンネルセグメントの接続構造を示す断面図
【図5】トンネルセグメントの要部の一部切欠き側面図
【図6】第2実施形態を示す断面図
【図7】第2実施形態の別例を示す要部拡大断面図
【図8】第3実施形態を示す断面図
【図9】第4実施形態を示す断面図
【図10】第4実施形態を説明する概略平面図
【図11】第5実施形態を示す断面図
【図12】第6実施形態を示す断面図
【図13】第6実施形態の接続構造を示す要部断面図
【符号の説明】
【0052】
1 枠体
2 底板材
3 ケーシング
4 耐火性コンクリート
9 トンネル内方側端面
10 耐火性断熱層
11 セグメント内面
17 耐火性被覆材
18 加熱発泡式耐火材
19 耐火性断熱板
20 充填コンクリート層
A トンネルセグメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記枠体のトンネル内方側端面と前記充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を設けてあるトンネルセグメント。
【請求項2】
前記耐火性断熱層と前記充填コンクリート層とを、同材質の耐火性コンクリートを打設して構成してある請求項1記載のトンネルセグメント。
【請求項3】
前記耐火性断熱層を、前記枠体のトンネル内方側端面と前記充填コンクリート層とを覆う耐火性断熱板で構成してある請求項1記載のトンネルセグメント。
【請求項4】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記充填コンクリート層に前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリートと前記枠体のトンネル内方側端面に装着した加熱発泡式耐火材とからなる耐火性断熱層を設けてあるトンネルセグメント。
【請求項5】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントどうしを、前記枠体が隣り合うように接続してあるトンネルセグメントの接続構造であって、
前記充填コンクリート層におけるトンネル内方側を耐火性コンクリートで被覆するとともに、
前記隣り合う枠体のトンネル内方側端面を、前記枠体よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材で被覆して、トンネル内方から前記枠体側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてあるトンネルセグメントの接続構造。
【請求項6】
前記トンネルセグメント毎に、前記耐火性コンクリートを前記枠体のトンネル内方側端面を覆うように打設して、前記耐火性被覆材を構成してある請求項5記載のトンネルセグメントの接続構造。
【請求項7】
互いに接続する前記トンネルセグメントのうちの、一方のトンネルセグメントの前記耐火性コンクリートを、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能に打設して、前記耐火性被覆材を構成してある請求項5記載のトンネルセグメントの接続構造。
【請求項8】
前記耐火性被覆材を前記耐火性コンクリートとは別体に構成して、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って、前記トンネル内方側から装着してある請求項5記載のトンネルセグメントの接続構造。
【請求項1】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記枠体のトンネル内方側端面と前記充填コンクリート層とを被覆する耐火性断熱層を設けてあるトンネルセグメント。
【請求項2】
前記耐火性断熱層と前記充填コンクリート層とを、同材質の耐火性コンクリートを打設して構成してある請求項1記載のトンネルセグメント。
【請求項3】
前記耐火性断熱層を、前記枠体のトンネル内方側端面と前記充填コンクリート層とを覆う耐火性断熱板で構成してある請求項1記載のトンネルセグメント。
【請求項4】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
設置状態でトンネル内方に向けるセグメント内面に、前記充填コンクリート層に前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方に向けて突出するように打設した耐火性コンクリートと前記枠体のトンネル内方側端面に装着した加熱発泡式耐火材とからなる耐火性断熱層を設けてあるトンネルセグメント。
【請求項5】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントどうしを、前記枠体が隣り合うように接続してあるトンネルセグメントの接続構造であって、
前記充填コンクリート層におけるトンネル内方側を耐火性コンクリートで被覆するとともに、
前記隣り合う枠体のトンネル内方側端面を、前記枠体よりも熱伝導率が低い耐火性被覆材で被覆して、トンネル内方から前記枠体側への気体流通に抵抗を付与可能に設けてあるトンネルセグメントの接続構造。
【請求項6】
前記トンネルセグメント毎に、前記耐火性コンクリートを前記枠体のトンネル内方側端面を覆うように打設して、前記耐火性被覆材を構成してある請求項5記載のトンネルセグメントの接続構造。
【請求項7】
互いに接続する前記トンネルセグメントのうちの、一方のトンネルセグメントの前記耐火性コンクリートを、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って被覆可能に打設して、前記耐火性被覆材を構成してある請求項5記載のトンネルセグメントの接続構造。
【請求項8】
前記耐火性被覆材を前記耐火性コンクリートとは別体に構成して、前記隣り合う枠体におけるトンネル内方側端面の双方に亘って、前記トンネル内方側から装着してある請求項5記載のトンネルセグメントの接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−291598(P2006−291598A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114638(P2005−114638)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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