トンネルセグメント
【課題】 セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持しながら、安い設置コストで、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止し易くする。
【解決手段】 金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状の金属製ケーシング3を形成し、ケーシングの内部にコンクリート4を充填して、その充填した充填コンクリート層10側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、充填コンクリート層を枠体のトンネル内方側端面9よりもトンネル内方側に突出するように形成して、充填コンクリート層の端面よりも突出している突出部分11の外周部と端面とにより段部12を形成し、ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う段部間に防食材13を装着可能に設けてある。
【解決手段】 金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状の金属製ケーシング3を形成し、ケーシングの内部にコンクリート4を充填して、その充填した充填コンクリート層10側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、充填コンクリート層を枠体のトンネル内方側端面9よりもトンネル内方側に突出するように形成して、充填コンクリート層の端面よりも突出している突出部分11の外周部と端面とにより段部12を形成し、ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う段部間に防食材13を装着可能に設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
上記トンネルセグメントは、箱状の金属製ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置できるので、金属製ケーシング内側の腐食を充填コンクリート層で防止できるとともに、セグメントのトンネル内方側を円滑面に形成して、トンネル内を通過する空気や水の摩擦損失を軽減できる利点があるが、従来、枠体のトンネル内方側端面をトンネル内方に向けて露出させる状態で設置可能に構成してあるので(例えば、特許文献1参照)、枠体のトンネル内方側端面から腐食が進行し易く、この枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止しながら、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持できるように、設置現場でセグメント内面に更にコンクリート層を形成する2次覆工を実施している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−277697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止できるように2次覆工するための設置コストが高くなる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持しながら、安い設置コストで、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、前記充填コンクリート層を前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、前記充填コンクリート層の前記端面よりも突出している突出部分の外周部と前記端面とにより段部を形成し、前記ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う前記段部間に防食材を装着可能に設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
充填コンクリート層を枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、枠体のトンネル内方側端面と、その端面よりも突出している充填コンクリート層の突出部分の外周部とにより段部を形成し、ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う段部間に防食材を装着可能に設けてあるので、ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、充填コンクリート層よりもトンネル内方側に突出しないように、隣り合う段部間に防食材を装着することができ、従来のような設置現場での2次覆工を特に実施することなく、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持しながら、安い設置コストで、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、前記枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、前記充填コンクリート層と一体形成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、充填コンクリート層と一体形成してあるので、従来のような設置現場での2次覆工を特に実施することなく、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持しながら、安い設置コストで、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止し易い。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、充填コンクリート層と一体に打設したコンクリートで、前記防食部を形成してある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、充填コンクリート層と一体に打設したコンクリートで形成してあるので、充填コンクリート層と一体の防食部を簡便に形成できる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記充填コンクリート層と一体に設けてある弾性材で、前記防食部を形成してある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、充填コンクリート層と一体に設けてある弾性材で形成してあるので、セグメントの運搬や設置などの取り扱い時に、充填コンクリート層の枠体端面よりも突出している突出部分の外周部側が他物に接触しても破損しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、下水や雨水などを流すトンネルを設けるために設置する本発明によるトンネルセグメントAを示し、金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状に形成してあるダクタイル鋳鉄や鋼などの金属製ケーシング3を設け、そのケーシング3の内部にコンクリート4を充填して、その充填コンクリート層10側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してある。
【0014】
前記枠体1は、トンネル周方向端部を形成する二枚の端板1aと、トンネル長手方向端部を形成する二枚の扇形側板1bとで、平面視で略矩形、かつ、トンネル長手方向視で扇形に一体形成してあり、この枠体1のトンネル外周側をトンネル長手方向視で円弧状の底板材2で塞いで、枠体1の内側が全面に亘ってトンネル内周側に開口している矩形凹部5を備えたケーシング3を形成し、ケーシング3の内側、つまり、矩形凹部5をトンネル周方向に沿う横桁板6と、トンネル長手方向に沿う縦桁板7とで補強してある。
【0015】
そして、矩形凹部5に多数の鉄筋8を縦横に配筋して、その矩形凹部5にコンクリート4を全面に亘って枠体1のトンネル内方側端面(以下、枠体端面という)9よりも突出するように厚肉に打設して、充填コンクリート層10を枠体端面9よりもトンネル内方側に突出するように形成し、その充填コンクリート層10の枠体端面9よりも突出している突出部分11の外周部と枠体端面9とにより、段部12をセグメントAの全周に亘って形成して、図4に示すように、ケーシング3の複数が隣り合うように設置した状態で、枠体端面9の腐食を防止できるように、隣り合うセグメントAの段部12間に、弾性エポキシ樹脂やエチレンプロピレンゴム(EPDM)やスチレンブタジエンゴム(SBR)製の防食材13を装着可能に設けてある。
【0016】
前記端板1aには、トンネル長手方向に沿う蟻溝1cをその端部が開口するように設けて、トンネル周方向で隣り合うセグメントAの端板1aどうしを突き合わせた状態で、トンネル周方向で互いに対向する蟻溝1cに亘って楔状の連結具(図外)を押し込んで、トンネル周方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0017】
前記側板1bの一方には、抗口側に設置済みのセグメントAに対する連結用の複数のジョイント金具14aを設け、他方の側板1bには、切羽側に設置するセグメントAのジョイント金具14aを抜け止め状態で嵌合させる複数のジョイント受け口14bを設けて、トンネル長手方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0018】
また、枠体1の全周に亘って一連のシール溝15をセグメント厚さ方向の前後に設けて、各シール溝15に装着した帯状シール材16で、セグメントAどうしの突合せ部を通した地下水などの漏水を防止できるようにしてある。
【0019】
〔第2実施形態〕
図5は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、セグメントAの運搬や設置などの取り扱い時に、充填コンクリート層10の枠体端面9よりも突出している突出部分11の外周部が他物に接触しても欠けにくいように、その外周部に、枠体端面9よりも間隔を隔てて内側に入り込んでいる状態で充填コンクリート層10の外面に対して略垂直な垂直面部17と、垂直面部17と枠体端面9とに対して傾斜している傾斜面部18とを形成して段部12を設けてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0020】
〔第3実施形態〕
図6は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、防食材13の装着容積が小さくなるように、枠体1の内側上端部を傾斜面19に形成して、この傾斜面19を覆うように打設したコンクリート4で充填コンクリート層10を設けてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0021】
〔第4実施形態〕
図7は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、枠体端面9を覆う防食部20を、セグメント全面に亘って枠体端面9よりも突出するように打設したコンクリート4で、充填コンクリート層10と一体形成して、枠体端面9の腐食を防止できるようにしてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0022】
〔第5実施形態〕
図8,図9は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、枠体端面9のうちの、平面視で互いに直交する一方のL字状端面部分、つまり、一方の端板1aにおける枠体端面9と一方の側板1bにおける枠体端面9とに亘るL字状端面部分にのみ、その端面部分を覆う防食部20を、充填コンクリート層10と一体に打設したコンクリート4で、枠体1の側面よりも突出するように一体形成して、セグメントAの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う枠体端面9のうちの防食部20を形成していない一方のL字状端面部分を、他方のL字状端面部分を覆っている防食部20の、枠体1の側面よりも突出している部位で被覆できるように設けてある。
その他の構成は第4実施形態と同様である。
【0023】
〔第6実施形態〕
図10,図11は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、枠体端面9のうちの、平面視で互いに直交する一方のL字状端面部分、つまり、一方の端板1aにおける枠体端面9と一方の側板1bにおける枠体端面9とに亘るL字状端面部分にのみ、その端面部分を覆う防食部20を、充填コンクリート層10と一体に打設したコンクリート4で、枠体1の側面よりも突出するように一体形成してある。
【0024】
また、充填コンクリート層10のうちの他方のL字状端面部分、つまり、防食部20を一体形成していない端面部分に沿ってその端面部分よりも突出している突出部分11の外周部に、枠体端面9と略面一の扁平面部21とその扁平面部21に対して略垂直な垂直面部22とを備えた段部23を設けてある。
【0025】
そして、セグメントAの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う枠体端面9のうちの防食部20を形成していない一方のL字状端面部分を、他方のL字状端面部分を覆っている防食部20の、枠体1の側面よりも突出している部位で被覆できるように設けるとともに、防食部20と段部23との隙間に、弾性エポキシ樹脂やエチレンプロピレンゴム(EPDM)やスチレンブタジエンゴム(SBR)などからなるコーキング材24を充填できるように構成してある。
その他の構成は第4実施形態と同様である。
【0026】
〔第7実施形態〕
図12は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、矩形凹部5にコンクリート4を、全面に亘って枠体端面9よりも突出するように厚肉に打設して、充填コンクリート層10を枠体端面9よりもトンネル内方側に突出するように形成するとともに、枠体端面9を覆う防食部20を、充填コンクリート層10に対してアンカー部材25で一体に設けてある弾性エポキシ樹脂やゴムなどの弾性材で構成してある。
【0027】
このように、防食部20を弾性材で構成することにより、枠体端面9の腐食を防止できるだけでなく、セグメントAの運搬や設置などの取り扱い時に、充填コンクリート層10の枠体端面9よりも突出している突出部分11の外周部が他物に接触しても欠けにくくなる。
その他の構成は第4実施形態と同様である。
【0028】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるトンネルセグメントは、充填コンクリート層を、枠体端面の一部を覆う状態で、その枠体端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、充填コンクリート層の枠体端面よりも突出している突出部分の外周部と枠体端面とにより段部を形成してあっても良い。
2.本発明によるトンネルセグメントは、金属製枠体に、コルゲート状に形成してある底板部を一体に設けて、箱状の金属製ケーシングを形成してあっても良い。
3.本発明によるトンネルセグメントは、鋼製板材を溶接で一体に接続して金属製ケーシングを形成してあっても良い。
4.本発明によるトンネルセグメントは、下水や雨水用トンネルのセグメントに限定されず、道路や鉄道用トンネルのセグメント、電力や通信ケーブルなどの敷設用トンネルのセグメントなどであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】トンネルセグメントのトンネル周方向に沿う側面図
【図2】トンネルセグメントのトンネル長手方向に沿う側面図
【図3】トンネルセグメントをトンネル内方側から見た一部切欠き平面図
【図4】トンネルセグメントの接続状態を示す断面図
【図5】第2実施形態の接続状態を示す要部断面図
【図6】第3実施形態の接続状態を示す要部断面図
【図7】第4実施形態を示す断面図
【図8】第5実施形態の接続状態を示す断面図
【図9】第5実施形態を説明する概略平面図
【図10】第6実施形態の接続状態を示す要部断面図
【図11】第6実施形態を説明する概略平面図
【図12】第7実施形態の接続状態を示す要部断面図
【符号の説明】
【0030】
1 枠体
2 底板材
3 ケーシング
4 コンクリート
9 トンネル内方側端面
10 充填コンクリート層
11 突出部分
12 段部
13 防食材
20 防食部
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
上記トンネルセグメントは、箱状の金属製ケーシングの内部にコンクリートを充填して、その充填した充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置できるので、金属製ケーシング内側の腐食を充填コンクリート層で防止できるとともに、セグメントのトンネル内方側を円滑面に形成して、トンネル内を通過する空気や水の摩擦損失を軽減できる利点があるが、従来、枠体のトンネル内方側端面をトンネル内方に向けて露出させる状態で設置可能に構成してあるので(例えば、特許文献1参照)、枠体のトンネル内方側端面から腐食が進行し易く、この枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止しながら、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持できるように、設置現場でセグメント内面に更にコンクリート層を形成する2次覆工を実施している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−277697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止できるように2次覆工するための設置コストが高くなる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持しながら、安い設置コストで、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、前記充填コンクリート層を前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、前記充填コンクリート層の前記端面よりも突出している突出部分の外周部と前記端面とにより段部を形成し、前記ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う前記段部間に防食材を装着可能に設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
充填コンクリート層を枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、枠体のトンネル内方側端面と、その端面よりも突出している充填コンクリート層の突出部分の外周部とにより段部を形成し、ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う段部間に防食材を装着可能に設けてあるので、ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、充填コンクリート層よりもトンネル内方側に突出しないように、隣り合う段部間に防食材を装着することができ、従来のような設置現場での2次覆工を特に実施することなく、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持しながら、安い設置コストで、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、前記枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、前記充填コンクリート層と一体形成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、充填コンクリート層と一体形成してあるので、従来のような設置現場での2次覆工を特に実施することなく、セグメントのトンネル内方側を円滑面に維持しながら、安い設置コストで、枠体のトンネル内方側端面における腐食を防止し易い。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、充填コンクリート層と一体に打設したコンクリートで、前記防食部を形成してある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、充填コンクリート層と一体に打設したコンクリートで形成してあるので、充填コンクリート層と一体の防食部を簡便に形成できる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記充填コンクリート層と一体に設けてある弾性材で、前記防食部を形成してある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、充填コンクリート層と一体に設けてある弾性材で形成してあるので、セグメントの運搬や設置などの取り扱い時に、充填コンクリート層の枠体端面よりも突出している突出部分の外周部側が他物に接触しても破損しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、下水や雨水などを流すトンネルを設けるために設置する本発明によるトンネルセグメントAを示し、金属製枠体1に金属製底板材2を一体に設けて箱状に形成してあるダクタイル鋳鉄や鋼などの金属製ケーシング3を設け、そのケーシング3の内部にコンクリート4を充填して、その充填コンクリート層10側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してある。
【0014】
前記枠体1は、トンネル周方向端部を形成する二枚の端板1aと、トンネル長手方向端部を形成する二枚の扇形側板1bとで、平面視で略矩形、かつ、トンネル長手方向視で扇形に一体形成してあり、この枠体1のトンネル外周側をトンネル長手方向視で円弧状の底板材2で塞いで、枠体1の内側が全面に亘ってトンネル内周側に開口している矩形凹部5を備えたケーシング3を形成し、ケーシング3の内側、つまり、矩形凹部5をトンネル周方向に沿う横桁板6と、トンネル長手方向に沿う縦桁板7とで補強してある。
【0015】
そして、矩形凹部5に多数の鉄筋8を縦横に配筋して、その矩形凹部5にコンクリート4を全面に亘って枠体1のトンネル内方側端面(以下、枠体端面という)9よりも突出するように厚肉に打設して、充填コンクリート層10を枠体端面9よりもトンネル内方側に突出するように形成し、その充填コンクリート層10の枠体端面9よりも突出している突出部分11の外周部と枠体端面9とにより、段部12をセグメントAの全周に亘って形成して、図4に示すように、ケーシング3の複数が隣り合うように設置した状態で、枠体端面9の腐食を防止できるように、隣り合うセグメントAの段部12間に、弾性エポキシ樹脂やエチレンプロピレンゴム(EPDM)やスチレンブタジエンゴム(SBR)製の防食材13を装着可能に設けてある。
【0016】
前記端板1aには、トンネル長手方向に沿う蟻溝1cをその端部が開口するように設けて、トンネル周方向で隣り合うセグメントAの端板1aどうしを突き合わせた状態で、トンネル周方向で互いに対向する蟻溝1cに亘って楔状の連結具(図外)を押し込んで、トンネル周方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0017】
前記側板1bの一方には、抗口側に設置済みのセグメントAに対する連結用の複数のジョイント金具14aを設け、他方の側板1bには、切羽側に設置するセグメントAのジョイント金具14aを抜け止め状態で嵌合させる複数のジョイント受け口14bを設けて、トンネル長手方向で隣り合うセグメントAどうしを連結できるように構成してある。
【0018】
また、枠体1の全周に亘って一連のシール溝15をセグメント厚さ方向の前後に設けて、各シール溝15に装着した帯状シール材16で、セグメントAどうしの突合せ部を通した地下水などの漏水を防止できるようにしてある。
【0019】
〔第2実施形態〕
図5は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、セグメントAの運搬や設置などの取り扱い時に、充填コンクリート層10の枠体端面9よりも突出している突出部分11の外周部が他物に接触しても欠けにくいように、その外周部に、枠体端面9よりも間隔を隔てて内側に入り込んでいる状態で充填コンクリート層10の外面に対して略垂直な垂直面部17と、垂直面部17と枠体端面9とに対して傾斜している傾斜面部18とを形成して段部12を設けてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0020】
〔第3実施形態〕
図6は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、防食材13の装着容積が小さくなるように、枠体1の内側上端部を傾斜面19に形成して、この傾斜面19を覆うように打設したコンクリート4で充填コンクリート層10を設けてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0021】
〔第4実施形態〕
図7は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、枠体端面9を覆う防食部20を、セグメント全面に亘って枠体端面9よりも突出するように打設したコンクリート4で、充填コンクリート層10と一体形成して、枠体端面9の腐食を防止できるようにしてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0022】
〔第5実施形態〕
図8,図9は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、枠体端面9のうちの、平面視で互いに直交する一方のL字状端面部分、つまり、一方の端板1aにおける枠体端面9と一方の側板1bにおける枠体端面9とに亘るL字状端面部分にのみ、その端面部分を覆う防食部20を、充填コンクリート層10と一体に打設したコンクリート4で、枠体1の側面よりも突出するように一体形成して、セグメントAの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う枠体端面9のうちの防食部20を形成していない一方のL字状端面部分を、他方のL字状端面部分を覆っている防食部20の、枠体1の側面よりも突出している部位で被覆できるように設けてある。
その他の構成は第4実施形態と同様である。
【0023】
〔第6実施形態〕
図10,図11は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、枠体端面9のうちの、平面視で互いに直交する一方のL字状端面部分、つまり、一方の端板1aにおける枠体端面9と一方の側板1bにおける枠体端面9とに亘るL字状端面部分にのみ、その端面部分を覆う防食部20を、充填コンクリート層10と一体に打設したコンクリート4で、枠体1の側面よりも突出するように一体形成してある。
【0024】
また、充填コンクリート層10のうちの他方のL字状端面部分、つまり、防食部20を一体形成していない端面部分に沿ってその端面部分よりも突出している突出部分11の外周部に、枠体端面9と略面一の扁平面部21とその扁平面部21に対して略垂直な垂直面部22とを備えた段部23を設けてある。
【0025】
そして、セグメントAの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う枠体端面9のうちの防食部20を形成していない一方のL字状端面部分を、他方のL字状端面部分を覆っている防食部20の、枠体1の側面よりも突出している部位で被覆できるように設けるとともに、防食部20と段部23との隙間に、弾性エポキシ樹脂やエチレンプロピレンゴム(EPDM)やスチレンブタジエンゴム(SBR)などからなるコーキング材24を充填できるように構成してある。
その他の構成は第4実施形態と同様である。
【0026】
〔第7実施形態〕
図12は本発明によるトンネルセグメントAの別実施形態を示し、矩形凹部5にコンクリート4を、全面に亘って枠体端面9よりも突出するように厚肉に打設して、充填コンクリート層10を枠体端面9よりもトンネル内方側に突出するように形成するとともに、枠体端面9を覆う防食部20を、充填コンクリート層10に対してアンカー部材25で一体に設けてある弾性エポキシ樹脂やゴムなどの弾性材で構成してある。
【0027】
このように、防食部20を弾性材で構成することにより、枠体端面9の腐食を防止できるだけでなく、セグメントAの運搬や設置などの取り扱い時に、充填コンクリート層10の枠体端面9よりも突出している突出部分11の外周部が他物に接触しても欠けにくくなる。
その他の構成は第4実施形態と同様である。
【0028】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるトンネルセグメントは、充填コンクリート層を、枠体端面の一部を覆う状態で、その枠体端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、充填コンクリート層の枠体端面よりも突出している突出部分の外周部と枠体端面とにより段部を形成してあっても良い。
2.本発明によるトンネルセグメントは、金属製枠体に、コルゲート状に形成してある底板部を一体に設けて、箱状の金属製ケーシングを形成してあっても良い。
3.本発明によるトンネルセグメントは、鋼製板材を溶接で一体に接続して金属製ケーシングを形成してあっても良い。
4.本発明によるトンネルセグメントは、下水や雨水用トンネルのセグメントに限定されず、道路や鉄道用トンネルのセグメント、電力や通信ケーブルなどの敷設用トンネルのセグメントなどであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】トンネルセグメントのトンネル周方向に沿う側面図
【図2】トンネルセグメントのトンネル長手方向に沿う側面図
【図3】トンネルセグメントをトンネル内方側から見た一部切欠き平面図
【図4】トンネルセグメントの接続状態を示す断面図
【図5】第2実施形態の接続状態を示す要部断面図
【図6】第3実施形態の接続状態を示す要部断面図
【図7】第4実施形態を示す断面図
【図8】第5実施形態の接続状態を示す断面図
【図9】第5実施形態を説明する概略平面図
【図10】第6実施形態の接続状態を示す要部断面図
【図11】第6実施形態を説明する概略平面図
【図12】第7実施形態の接続状態を示す要部断面図
【符号の説明】
【0030】
1 枠体
2 底板材
3 ケーシング
4 コンクリート
9 トンネル内方側端面
10 充填コンクリート層
11 突出部分
12 段部
13 防食材
20 防食部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
前記充填コンクリート層を前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、前記充填コンクリート層の前記端面よりも突出している突出部分の外周部と前記端面とにより段部を形成し、
前記ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う前記段部間に防食材を装着可能に設けてあるトンネルセグメント。
【請求項2】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
前記枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、前記充填コンクリート層と一体形成してあるトンネルセグメント。
【請求項3】
前記充填コンクリート層と一体に打設したコンクリートで、前記防食部を形成してある請求項2記載のトンネルセグメント。
【請求項4】
前記充填コンクリート層と一体に設けてある弾性材で、前記防食部を形成してある請求項2記載のトンネルセグメント。
【請求項1】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
前記充填コンクリート層を前記枠体のトンネル内方側端面よりもトンネル内方側に突出するように形成して、前記充填コンクリート層の前記端面よりも突出している突出部分の外周部と前記端面とにより段部を形成し、
前記ケーシングの複数が隣り合うように設置した状態で、隣り合う前記段部間に防食材を装着可能に設けてあるトンネルセグメント。
【請求項2】
金属製枠体に金属製底板材を一体に設けて箱状の金属製ケーシングを形成し、前記ケーシングの内部にコンクリートを充填して充填コンクリート層とし、その充填コンクリート層側をトンネル内方に向けて設置可能に構成してあるトンネルセグメントであって、
前記枠体のトンネル内方側端面を覆う防食部を、前記充填コンクリート層と一体形成してあるトンネルセグメント。
【請求項3】
前記充填コンクリート層と一体に打設したコンクリートで、前記防食部を形成してある請求項2記載のトンネルセグメント。
【請求項4】
前記充填コンクリート層と一体に設けてある弾性材で、前記防食部を形成してある請求項2記載のトンネルセグメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−144297(P2006−144297A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333423(P2004−333423)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]