説明

トンネル内装板取付け部の補修方法

【課題】 現在取付けられている内装板を無駄にせず、短時間で簡単に、かつ、古いものの廃棄による環境汚損などをしなくて済むようにしたトンネル内装板取付け部の補修方法の提供。
【解決手段】 断面略L字状の二面を有するように形成した第一補修部材1の縦方向面10側を両内装板50、50の表側面55に当て、両内装板50、50の裏側面56に当てたアングル材2と第一補修部材1の縦方向面10との間を隙間66部分でボルト・ナット7で締結してアングル材2と縦方向面10との間に両内装板50、50の縦縁部53、54を挟持した状態で両内装板50、50を連結固定し、かつ、第二補修部材3の横方向面13側の取付け座14をトンネル壁面60に打設したアンカーボルト6に固定し、取付け座18と抑え金具4との間を隙間66部分でボルト・ナット8で締結して取付け座18と抑え金具4との間に両内装板50、50の縦縁部53、54を挟持した状態で両内装板50、50を連結固定してトンネル壁面60に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルに設置された内装板の取付け部が腐食して弱体化したものを、簡単に補修できるようにした補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などに付属するトンネルには、図11、12に示すように、内部の照明効率を増すように内装板が設置されている。
【0003】
図13はこの従来の内装板のトンネル内取付け構造を示しており、このように内装板50は薄いパネル状であるから、トンネル壁面60に上段、中段、下段などに分けて横胴縁61,62,63を配置し、前記内装板50の上水平端縁部51を上段の横胴縁61に沿って、また下側水平端縁部52は下段の横胴縁63に沿ってそれぞれ補修部材64,65で覆うようにして固定している。
【0004】
また、内装板50の中ほどは、その隣接する内装板との間に設けられた隙間66から露出した中段配置の横胴縁62に対し、両内装板の縦縁部53,54同士を押えた押え金具67で固定することにより、取付けられている。
【0005】
図中68は壁面60に打ち込んだアンカーボルト、69はこのアンカーボルトに固定した取付け座であって、前記横胴縁はこの取付け座69にボルト固定70されている。
【0006】
そして、このような横胴縁61,62,63、補修部材64,65、押え金具66などは、SS材を亜鉛メッキ処理してから使用されているのであるが、冬場に散布された凍結防止剤や排気ガスに晒されて錆が発生し、長年月経過後は厚さが減少して弱体化し落下の危険性が考えられる。
【0007】
また、外観も大変見苦しいものとなっているから、そのように腐食した取付け部材は適宜取り換えていかなければならない。
【0008】
従来、このようなトンネルに内装板を設置している取付け部材の補修方法は、内装板そのものは腐食していないが、その取り外し時に破損してしまうことがあることから、予め、現在設置している内装板およびその取付け部材と同じように製作してきたものを、現場で一切取り換えてしまうというものであった(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平7−26925号公報
【特許文献2】特開平7−158391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の補修方法や補修用取付け部材にあっては以下に述べるような問題があった。
1.大きな内装板を着脱するのは余分な人手も必要となるし、その分、余分な費用も必要となる。
2.また、上記のように内装板の着脱、搬送時には交通規制する必要があったり、時間的に制約されることもある。
3.内装板を新製作するので不経済であるし、古い内装板や取付け部材の廃棄は環境汚損の原因となる。その搬出にも無駄な費用が必要となる。
4.古い内装板の取り外しと新しい内装板の取付けとの二つの作業があるから、取付け完了までに長時間掛る。
【0010】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、現在取付けられている内装板を無駄にせず、短時間で簡単に、かつ、古いものの廃棄による環境汚損などをしなくて済むようにしたトンネル内装板取付け部の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明請求項1記載のトンネル内装板取付け部の補修方法では、トンネル壁面に沿って設けられた横胴縁に幅方向に所定の隙間を開けた状態で配置される内装板の上下両水平端縁部の裏側を沿わせると共にその表側に補修部材を沿わせて固定することにより、前記内装板をトンネル壁面に沿って設置させている内装板取付け部の補修方法であって、隣合う両内装板の下側水平端縁部で、該両内装板相互間に開けられた前記隙間部分において、断面略L字状の二面を有するように形成した第一補修部材の縦方向面側を両内装板の表側面に当て、両内装板の裏側面に当てた裏当て部材と補修部材の縦方向面との間を隙間部分でボルトで締結して裏当板材と縦方向面との間に両内装板の縦縁部を挟持した状態で両内装板を連結固定し、かつ補修部材の横方向面側をトンネル壁面に固定することにより前記内装板をトンネル壁面に固定するようにしたことを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明請求項1記載のトンネル内装板取付け部の補修方法では、隣合う両内装板の下側水平端縁部で、該両内装板相互間に開けられた隙間部分において、断面略L字状の二面を有するように形成した補修部材の縦方向面側を両内装板の表側面に当て、両内装板の裏側面に当てた裏当て部材と補修部材の縦方向面との間を隙間部分でボルトで締結して裏当板材と縦方向面との間に両内装板の縦縁部を挟持した状態で両内装板を連結固定し、かつ補修部材の横方向面側をトンネル壁面に固定して内装板をトンネル壁面に固定するようにすることにより、即ち、古い取付け部材はそのまま残したまま新しい補修部材で新規な固定を行なうため、内装板を新製作する必要もなく、かつ内装板を着脱することもなく新規に固定された内装板をトンネル壁面に設けることができる。また、古い取付け部材の取り外しと搬出の手間も省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。
【実施例1】
【0014】
図1は本実施の形態のトンネル内装板補修後を示す側断面図、図2は第一補修部材を示す斜視図、図3はアングル材(裏当て部材)を示す斜視図、図4は第二補修部材を示す斜視図、図5は抑え金具を示す斜視図、図6は第一補修部材の取付部分を示す要部の表側面図、図7は第二補修部材の取付部分を示す要部の表側面図、図8は第二補修部材の取り付け方法を示す説明図である。
【0015】
図において、まず、50は内装板、51はこの内装板50の上水平端縁部、52は同じく内装板50の下側水平端縁部、53,54は内装板50の縦縁部、55は内装板50の表側面55、56は同じく内装板50の裏側面56、60はトンネル壁面、61はアングル材で形成した上段の横胴縁、62は同じく中段の横胴縁、63は同じく下段の横胴縁、64,65はアングル材で形成した補修部材、66は内装板50相互間の隙間(目地)、67は押え金具、68は前記内装板50をトンネル壁面60に適宜離して固定したアンカーボルト、69はその取付け座、70は固定ボルトであり、これらは前述した従来既設の内装板と取付け部材の構成であるから、その詳細な説明は省略する。
【0016】
次に、1は本実施の形態で使用する第一補修部材であり、内装板50の下側水平端縁部52の既設取付け部材の部分に配置させるものである。
【0017】
前記第一補修部材1は、左右両端縁部が両内装板50、50における縦縁部53、54の表側に当接係止するように両内装板50、50相互間の隙間66より広い幅を有するステンレス鋼板を断面略L字状に折り曲げて形成したものであり、10は縦方向面、11はこの縦方向面10の段差部であり、この段差部11の深さは、既設の補修部材65の厚さを十分カバーする寸法に設定されている。
【0018】
前記段差部11には、その幅方向中央部(隙間66相当部分)に貫通穴12が穿設されている。
【0019】
また、前記縦方向面10は、前記上下段の横胴縁63の一辺とボルト70の頭部高さを十分カバーする縦幅を有している。
【0020】
また、13は第一補修部材1の横方向面であり、その先端部にはステンレスのアングル材による取付け座14が、前記縦方向面10と逆方向、つまり表側から見て縦方向面10から露出した方向に設けられている。
【0021】
また、15はその取付け座14に穿設された貫通穴である。また、2は裏当て部材を構成するアングル材で、段差部11と対面する両内装板50、50の裏側に配置され、その幅方向中央部(隙間66相当部分)に貫通穴20が穿設されている。
【0022】
次に、3は第二補修部材であり、前記同様左右両端縁部が両内装板50、50の裏側に当接係止するように両内装板50、50相互間の隙間66より広い幅を有すステンレス鋼板の上下端縁部を逆方向(」と「)に折り曲げて形成したものであり、上向きの折り曲げ部の幅方向中途部に貫通穴17を穿設することにより、接合面16として形成されている。
【0023】
また、下向きの折り曲げ部には、その幅方向中央部に貫通穴19を穿設することにより、取付け座18として形成されている。
【0024】
また、4は押え金具で、取付け座18と対面する両内装板50、50の表側に配置され、その幅方向中央部(隙間66相当部分)に貫通穴9が穿設されている。
【0025】
5、6は新しくトンネル壁面に打設したアンカーボルトであり、軸長の長いものが使用される。
【0026】
次に、本実施の形態の第一補修部材1と第二補修部材3を使用したトンネル壁面60における内装板50取付け部の補修方法を説明する。
【0027】
まず、隣合う両内装板50、50の下側水平端縁部52側で、かつ、段差部11を横胴縁63からはずれた位置に配置させた状態にしてから、取付け座14の貫通穴15をガイドにして壁面60にけがきその位置をドリルで穿孔する。
【0028】
この穿孔後、その孔にアンカーボルト6を打設する。この打設したアンカーボルト6に、まず、ねじ部の奥の方まで受け側のナットをねじ込んでおいてから、貫通穴15を介して取付け座14を挿入し、前記段差部11が内装板50の表側面55に面号するように前記ナットを調整した後、その取付け座14の上から別のナットで締め付けることにより、取付け座14を固定する。
【0029】
次に、該両内装板50、50相互間に開けられた隙間66部分において、断面略L字状の二面を有するように形成した第一補修部材1の縦方向面10側を両内装板50、50の表側面55に当て、両内装板50、50の裏側面56に当てたアングル材2と第二補修部材3の縦方向面10との間を隙間66部分においてボルト・ナット7で締結してアングル材2と縦方向面10との間に両内装板50、50の縦縁部53、54を挟持した状態で両内装板50、50を連結固定する。
【0030】
前記内装板50下側水平端縁部52の取付け部に対する補修が終了後、内装板50の縦縁部53、54同士の補修を行なう。
【0031】
まず、中段の横胴縁62を避けた略中央位置で内装板50同士の間の隙間66部分のトンネル壁面60アンカーボルト5を打設後、まず、受用のナットを奥の方までねじ込んでおいてから、第二補修部材3を隙間66に沿って縦向きにしながら接合面16側から挿入する。この場合、図8に示すように、貫通穴19に前記アンカーボルト5の先を挿入し第二補修部材3を少し斜めにした状態で奥の方に押し込むとよい。そして、取付け座18を内装板50の裏側面56側にかわした後、取付け座18を内装板50の裏側面56に面号するように戻し、両内装板50、50における縦縁部53、54の表側面55に抑え金具4をあてがった状態で、取付け座18と抑え金具4をボルト・ナット8で締結して取付け座18と抑え金具4との間に両内装板50、50の縦縁部53、54を挟持した状態で両内装板50、50を連結固定する。
【0032】
次に、本実施の形態の作用および効果を説明する。
本実施の形態では、上述のように、断面略L字状の二面を有するように形成した第一補修部材1の縦方向面10側を両内装板50、50の表側面55に当て、両内装板50、50の裏側面56に当てたアングル材2と第一補修部材1の縦方向面10との間を隙間66部分でボルト・ナット7で締結してアングル材2と縦方向面10との間に両内装板50、50の縦縁部53、54を挟持した状態で両内装板50、50を連結固定し、かつ、第二補修部材3の横方向面13側の取付け座14をトンネル壁面60に打設したアンカーボルト6に固定し、取付け座18と抑え金具4との間を隙間66部分でボルト・ナット8で締結して取付け座18と抑え金具4との間に両内装板50、50の縦縁部53、54を挟持した状態で両内装板50、50を連結固定してトンネル壁面60に固定するようにすることにより、即ち、古い取付け部材である横胴縁61、62、63、補修部材64、65、アンカーボルト68、取付け座69などはそのまま残したまま、新しい第一補修部材1と第二補修部材3で新規な固定を行なうため、内装板50を新製作する必要もなく、かつ内装板50を着脱することもなく新規に固定された内装板50をトンネル壁面60に設けることができる。また、古い取付け部材の取り外しと搬出の手間も省くことができる。
【0033】
また、補修部材をステンレス材とすることで、補修後の腐食による強度低下を長期間に渡って避けることができるから、交通規制など他の活動体に悪影響を与える作業をそのトンネル自身の使用期間中において最少の補修回数で済ますことができる。
【0034】
第二補修部材3についても、内装板50同士の間の隙間66を介し、その内装板50の裏側面56側に配置させることができるから、内装板50を取り外さなくても、新たにトンネル壁面60に対し簡単に固定することができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態を図面により説明したが、具体的な構成は前記実施の形態に限定されることはない。
【0036】
例えば、第一補修部材1や第二補修部材3などの形状は任意に設定できるものであり、例えば、第二補修部材3は取付け座がそのまま隙間66に挿入できるように略T字状のものを折り曲げ形成し、接合面を内装板50の表側に面合させるようにしてもよい。 また、第一補修部材1は、図9に示すように、縦方向面10、段差部11、横方向面13、及び、取り付け座14を同じ幅で一体にプレス成形し、段差部11の幅方向中央部に穿設された貫通穴12とは幅方向に位置をずらした取り付け座14の左右2箇所に貫通穴15、15を穿設し、図10に示すように、第一補修部材1の縦方向面10側を両内装板50、50の表側面55に当て、両内装板50、50の裏側面56に当てたアングル材2と第一補修部材1の縦方向面10との間を隙間66部分でボルト・ナット7で締結してアングル材2と縦方向面10との間に両内装板50、50の縦縁部53、54を挟持した状態で両内装板50、50を連結固定し、新しくトンネル壁面に打設した2本のアンカーボルト6、6を貫通穴15、15に挿通して取り付け座14をナットで締結固定するようにしてもよい。
また、アンカーボルトの取付け数なども任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態のトンネル内装板補修後を示す側断面図である。
【図2】第一補修部材を示す斜視図である。
【図3】アングル材(裏当て部材)を示す斜視図である。
【図4】抑え金具を示す斜視図である。
【図5】第一補修部材の取付部分を示す要部の正面図である。
【図6】第二補修部材の取付部分を示す要部の正面図である。
【図7】第二補修部材を示す斜視図である。
【図8】第二補修部材の取り付け方法を示す説明図
【図9】第一補修部材の他の例を示す斜視図である。
【図10】第一補修部材の他の例の取付部分を示す要部の正面図である。
【図11】従来の内装板取付け状態を示す正面図である。
【図12】従来の内装板取付け状態を示す側面図である。
【図13】従来の内装板取付け状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 第一補修部材
2 アングル材(裏当て部材)
3 第二補修部材
4 抑え金具
5 新しく打設したアンカーボルト
6 新しく打設したアンカーボルト
7 ボルト・ナット
8 ボルト・ナット
9 貫通穴
10 補修部材の縦方向面
11 縦方向面の段差部
12 段差部の貫通穴
13 補修部材の横方向面
14 補修部材の取付け座
15 取付け座の貫通穴
16 第二補修部材の接合面
17 貫通穴
18 第二補修部材の取付け座
19 貫通穴
20 貫通穴
50 内装板
51 内装板の上側水平端縁部
52 内装板の下側水平端縁部
53 内装板の縦縁部
54 内装板の縦縁部
55 内装板の表側面
56 内装板の裏側面
60 トンネル壁面
61 横胴縁
62 横胴縁
63 横胴縁
64 補修部材
65 補修部材
66 内装板同士の隙間
67 抑え金具
68 アンカーボルト
69 取付け座
70 ボルト固定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面に沿って設けられた横胴縁に幅方向に所定の隙間を開けた状態で配置される内装板の上下両水平端縁部の裏側を沿わせると共にその表側に補修部材を沿わせて固定することにより、前記内装板をトンネル壁面に沿って設置させている内装板取付け部の補修方法であって、
隣合う両内装板の下側水平端縁部で、該両内装板相互間に開けられた前記隙間部分において、断面略L字状の二面を有するように形成した第一補修部材の縦方向面側を両内装板の表側面に当て、両内装板の裏側面に当てた裏当て部材と補修部材の縦方向面との間を隙間部分でボルトで締結して裏当板材と縦方向面との間に両内装板の縦縁部を挟持した状態で両内装板を連結固定し、かつ補修部材の横方向面側をトンネル壁面に固定することにより前記内装板をトンネル壁面に固定するようにしたことを特徴とするトンネル内装板取付け部の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−150792(P2010−150792A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329205(P2008−329205)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(508001431)西日本高速道路メンテナンス九州株式会社 (7)
【出願人】(506192803)大東金属株式会社 (5)
【Fターム(参考)】